JP2007504162A - 脊椎椎間板疾患を治療するための架橋試薬 - Google Patents

脊椎椎間板疾患を治療するための架橋試薬 Download PDF

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Abstract

本発明による力学的崩壊に対するコラーゲン状組織の抵抗性を向上させる方法は、有効量の架橋試薬にコラーゲン状組織の少なくとも一部を接触させる工程を含む。コラーゲン架橋を増加させることによって、脊柱側弯症の脊柱中の椎間板を安定化させるための身体自体の努力を強化する方法及び装置。この安定性の強化は、屈曲ヒステリシスを減少し、及び脊柱側弯症の脊柱の屈曲剛性を増加することによって、脊柱側弯症の湾曲に関わる椎間板の凸状の側に非毒性架橋を注入することによって引き起こされる。あるいは、組織と架橋試薬との接触は、標的組織中又は標的組織上に徐放送達系を直接配置することによって行われる。椎間板の透過性を増加するために、椎間板への流体流動を向上させるために、及び椎間板内の細胞の生物学的生存性を増加するために、架橋剤を使用する方法及び装置が提供される。
【選択図】 なし

Description

関連出願の相互参照
本願は、Ampac Biotechnology, Inc./STTR−NIAMS(NIH)のグラントによって、一部支援を受けて行われた。従って、米国政府は、一定の権利を有する。
本願は、2003年8月28日に出願された米国仮出願第60/498,790号の利益を主張し、2004年2月24日に出願された米国一般特許出願第10/786,861号の利益も主張する。
発明の背景
<発明の分野>
本発明は、有害な力学的負荷環境が組織の崩壊に寄与する組織(例えば、コラーゲン状組織)を治療するための方法に関する。一実施形態において、本発明は、疲労抵抗を改善するために、変性された椎間板を治療する方法、及び効果的な披露阻害剤である非毒性架橋試薬に関する。
第二の実施形態において、本発明は、脊柱側弯症における持続的変形力及び湾曲の進行に抵抗するために、椎間板及び周囲組織を治療する方法及び装置に関する。
第三の実施形態において、本発明は、椎間板の外側領域の透過性、より具体的には、拡散性を増加させることによって、椎間板の中央領域における生物学的活性の環境を改善するための方法及び装置に関する。
<関連技術の説明>
有害な力学的負荷環境は、様々な様式で、コラーゲン状組織の崩壊に寄与する。例えば、疲労とは、繰り返し与えられるストレスによって、物体が弱くなることである。疲労破壊とは、単純に、本来の最高ストレスレベルを下回るレベルで物体が破壊するように、反復的なストレスが、物体を弱める疲労である。骨では、生物学的修復と疲労という2つのプロセスが対立しており、一般的には、修復が勝っている。椎間板では、後輪状部の力学的な崩壊が多く見られる(Osti 1992)ので、疲労が優越するプロセスであると推測される。積極的な組織応答(適応、修復)は、成熟した椎間板輪状物質の場合には、大きな役割を果たしていない。基本的に無血管構造であるため、その限られた数の生細胞への栄養に関して、椎間板は拡散に依拠している。加齢に関連する変化は、拡散を妨害し、おそらく、細胞の生存可能性と生合成機能を低下させる(Buckwalter et al. 1993, Buckwalter 1995)。加齢に関連する細胞数及び細胞機能の低下は、マトリックスに対する力学的損傷を修復する細胞の能力を損なわせる。一貫性はないが(Deutman 1992)、酵素的分解の後、核内でのマトリックスの再生が達成される一方、機能的な輪状物質の再生は、いまだ実現されていない。
このように修復能又は再生能が限られていることのほかに、後椎間板組織は、非外傷性の生理的な繰り返し負荷が与えられたときに、崩壊及び疲労破壊に対して脆弱であることが研究によって示されている。穏やかな生理的繰り返し負荷が与えられた後椎間板組織の弾力性−可塑性(Hedman 99)及び粘弾性的(Hedman 00)素材特性が劣化することが、従来の研究によって示されている。最高抗張力の30%の規模の繰り返し負荷によって、僅か2000サイクルで、素材特性に顕著な劣化が生じた。Green(1993)は、外側輪状標本の対応付けられたペアの最高抗張力と疲労寿命を調べた。Greenらは、垂直引張サイクルピークが対応付けられたペア対照の最高引張応力の45%を超えると、10,000サイクル未満で、疲労破壊が起こり得ることを見出した。さらに、Panjabiら(1996)は、破壊を引き起こさない程度の単一サイクルの負担を膝の前十字靭帯に与えることによって、靭帯の弾性特性(荷重ひずみ)が変化することを見出した。Osti(1992)は、輪の裂傷及び亀裂は、主に、椎間板の後側方領域中に見られることを見出した。Adams(1982)は、過屈曲されたときに、僅かに変性された椎間板が前方に突出する傾向があることを実証し、外側後部輪は、屈曲の際に激しい負荷を受けると、垂直方向へ過度に引き伸ばされるので、疲労破壊が腰部椎間板に生じ得ることを示した。分析研究では、層間剥離を引き起こすことができる層間剪断応力は、椎間板の後側方領域中で最も高いことが明らかとされている(Goel 1995)。これらの従来データは、1)後部椎間板及び後部縦靭帯には、変性的な変化を受けるリスクがあること、及び2)変性の機序には、屈曲疲労が関与し得ることを示している。
脊柱側弯症では、異なる種類の、コラーゲン状組織の力学的崩壊が起こる。脊柱側弯症とは、脊柱の、主として側方への異常な湾曲若しくは変形、又はその他の異常な湾曲若しくは変形を表す。重度の湾曲及び継続的な湾曲の進行は、呼吸機能の障害など(これらに限定されない。)、他の多くの健康異常を引き起こし得る。さらに、そのライフスタイルも、悪影響を受け、身体的な美しさが失われる場合がある。多くの人々(女性の約2%、男性の0.5%)が、脊柱側弯症に罹患している。脊柱側弯症の80%超は、原因が不明である(すなわち、突発性)。突発性脊柱側弯症の約80%は、若い思春期の成人に発症する。湾曲の進行を制限するための既存の保守的アプローチは、不恰好であるか、又は窮屈であり、価値に疑問が持たれている。重度の湾曲の外科的矯正は、回復期間が長い集中的なものとなることがあり、術後のギプスが必要で、その他の数多い術後トラブルが伴う。
脊柱側弯症の現行の治療は、ギプスと手術からなる。整形外科ギブスの目的は、脊柱の変形の増大を防ぐことであり、既存の変形を矯正することではない。ギプスは、予測される量の骨格成長が残存しており、湾曲規模が25度から40度の範囲にある児童に使用されるのが一般的である。外部ギプスが、治療の標準として、一般に使用されている。しかし、脊柱側弯症に対する外部ギプスの有効性については賛否両論がある。胴体に与えられたギプスの負荷に対応して脊柱に与えられる力の規模は、直接定量することができない。胴体に与えられた力がより大きくなると、ギプスに接触している組織に対して、ギプスによって病変が誘導され得る。幾つかの研究は、罹患した子供の約80%で、ギプスが湾曲の進行を停止させるのに有効であることを示唆する。しかし、湾曲の進行を観察する以外の選択肢がないことは不適当なので、自力で、又は他の因子によって進行を停止するこれらの湾曲のパーセントは、一般に受け入れられていない。 自然に存在するコラーゲン架橋は、コラーゲン状組織、特に、椎間板を安定化させる上で重要な役割を果たしている。脊柱側弯症の椎間板の凹んだ側より、凸状の側に、還元可能な(新しく形成された)架橋の量が著しく多いことが明らかとなっている(Duance, et al. 1998)。同様に、Greveら(1988)は、同時に、湾曲が増大している脊柱側弯症のニワトリの椎間板で、還元可能な架橋の量が統計的に増加することを見出した。このことは、上昇した引張環境に応じて、脊柱側弯症の椎間板の凸状の側に、細胞によって媒介される何らかの形態の自然的な架橋増強が存在することを示唆している。Greveは、脊柱側弯症のニワトリの軟骨では、発育の極めて初期の段階において、還元可能な架橋の数が少ないことも見出した。Greveらは、発育のさらに後期段階では架橋の数がさらに少なかったので、コラーゲン架橋の差が原因ではないと思われると結論付けた。実際、その後、脊柱側弯症の湾曲が進行しているときには、おそらくは湾曲に応答して、コラーゲン架橋の数が統計的に有意に増加していた。Greveの結論ではないが、このことは、脊柱側弯症の湾曲の進行を引き起こすのに十分長い期間、発育過程で架橋が十分枯渇されており、脊柱側弯症の湾曲は、架橋のレベルを正常より高くする細胞応答によって後に修繕されたものと解釈することができる。これらの研究は、天然に存在するコラーゲン架橋の存在が、脊柱側弯症の脊椎において進行する崩壊を抑制するのに必須であり、椎間板組織の力学的安定性にとって不可欠であり得ることを示唆している。
内在性(天然に存在する−酵素によって誘導される、年齢とともに増加する非酵素的)のコラーゲン架橋及び外在性コラーゲン架橋が、コラーゲン状の負荷支持組織の強度と剛性を増加させることが、多くの文献に記載されている(Wang 1994, Chachra 1996, Sung 1999a, Zeeman 1999, Chen 2001)。Sung(1999b)は、天然に存在する架橋因子であるゲニピンが、他の架橋試薬と比較したときに、最高引張強度と靭性を増大させることを見出した。ゲニピンは、より一般的に使用される他の架橋因子に比較して、細胞毒性が有意に低いことも実証された。粘弾性特性に関して、Lee(1989)は、アルデヒド固定が、ウシの心膜における応力緩和とずれを低減することを見出した。細菌、天然に存在するコラーゲン架橋は、組織を保護し、且つエネルギーを浪費する「犠牲的結合」を与えると記載された(Thompson, et al. 2001)。現在まで、外在性架橋が、ヒステリシスの粘弾性特性を減少させる能力、又はコラーゲン状組織がエネルギーを貯蔵する能力を増加させる能力については、公知の文献が存在しない。従って、コラーゲン架橋を増加することによって、脊柱側弯症の脊柱中の椎間板を安定化するための身体自身の努力を強化する生化学的方法を見出す必要が存在する。
椎間板の中央領域中の生物学的活性に対する環境が不良であれば、コラーゲン状組織の力学的崩壊も起こり得る。崩壊、損傷又はその他の破壊を受けた組織の修復及び再生において、細胞、サイトカインと呼ばれる特殊なタンパク質、並びに合成及び野生型のマトリックス又は足場を使用することを目的として、再生医療が急速に発展しつつある分野となっている。椎間板に関しては、再生医療のような生物学的解決法は、穏やかに変性した椎間板の厳しい無血管(存在したとしても、直接的な血液供給は極めて少ない)環境によって妨げられている。椎間板は、主として、繊維輪を介した拡散、及び、骨が多く、血管が豊富な脊椎骨に椎間板を接続する軟骨性終板を介した拡散によって、栄養素を受け取り、細胞老廃産物を廃棄することが知られている。椎間板の軟骨性終板は石灰化によって透過性を緩ませるのに対して、椎間板自体は、分解されたマトリックス分子と細胞の老廃産物が蓄積して、塞がった状態となる。椎間板の透過性のこのような喪失は、椎間板の内部中央領域である髄核内の細胞への栄養素の流れを効果的に減らす。椎間板への栄養の流れがこのように失われることによって、細胞機能の喪失、細胞の老化が引き起こされるとともに、pHレベルも下降して、細胞機能がさらに損なわれ、細胞死を引き起こすこともある(Buckwalter 1995, Horner and Urban 2001)。HornerとUrbanは、グルコース供給の低下が生細胞の減少を導くように、栄養的な制約によって、生細胞の密度が制御されることを示した。Boyd−WhiteとWilliams (1996)は、基底膜の架橋が、血清アルブミン、架橋されたアルブミン、及び4つの異なる分子サイズの一連のフルオレセインイソチオシアネートデキストランなど巨大分子に対する膜の透過性を増加させることを示した。次いで、椎間板の繊維輪の架橋の増加は、椎間板の内部領域に存在する細胞へのグルコースの流れを増加させ、これにより、細胞の生存性を向上させると仮定するのが合理的である。
しかしながら、現在まで、コラーゲン状組織への力学的崩壊を軽減することができる治療は存在しない。実際、他のコラーゲン状組織疲労の阻害剤は提案されていない。従って、ヒト体内のコラーゲン状組織の疲労に対する抵抗性を向上させる方法、その他、ヒトのコラーゲン状組織(特に、椎間板の後輪状部領域)の力学的崩壊を軽減する方法に対する要望が存在する。さらに、脊柱側弯症の椎間板の伸長側(凸状側)に対する適切な領域の治療によって、脊柱側弯症の湾曲の進行に対する抵抗を増加させ、椎間板輪全体の透過性と椎間板の中央部分内の細胞への栄養の流れを向上させる必要性が存在する。
本発明のさらなる利点及び新しい特徴の一部が、以下の記述中に記載されており、以下の説明を検討することによって、当業者に明らかとなり、又は本発明の実施によって理解されるであろう。本発明の利点は、添付の特許請求の範囲に具体的に指摘されている手段、組み合わせ、組成物、方法、装置及び適用トレイを使用することによって、実現及び達成することができる。
発明の概要
ヒトの体内のコラーゲン状組織を架橋試薬に接触させることによって、力学的崩壊に対する前記組織の抵抗性を向上させる方法を提供することが本発明の一つの目的である。
コラーゲン架橋を増加することによって老齢の椎間板を安定化する身体自体の努力を強化することによって、椎間板組織の進行性の力学的崩壊を抑える方法を提供することも本発明の別の目的である。
生きたヒトの体内の組織への架橋試薬の直接接触を促進するために、通常のアルデヒド固定剤に比べて毒性が大幅に低い架橋試薬を使用する方法を提供することも、本発明の別の目的である。
ゲニピン(ゲニポシド)又はプロアンスロシアニジン(バイオフラボノイド)などの、適切な濃度の無毒な架橋試薬(又は架橋試薬の混合物)に生きたヒト椎間板組織を直接接触させることによって、椎間板輪状組織の架橋を増加することが、本発明の別の目的である。
選択した組織中への針を用いた直接注入又は担体ゲル若しくは膏薬、若しくは被処理膜若しくはパッチなどの徐放送達系の標的組織中又は標的組織上への直接配置など、非細胞毒性架橋試薬の最小侵襲性送達のための治療法を提供することが本発明の別の目的である。
効果的な疲労阻害剤として使用することができる非毒性架橋試薬から構成される組成物も、本発明の別の目的である。
本発明によれば、有害な力学的負荷環境が組織の崩壊に寄与する組織を治療するための方法が提供される。有害な力学的負荷環境は、疲労の別名でも知られる正常な生理的反復負荷、又は、ずれとして知られる正常な持続的若しくは姿勢負荷(同じく性質上通例反復的であり、従って、疲労の一形態である。)からなり得る。本発明は、疲労抵抗性を向上させるために、変性した椎間板を治療する方法を提供する。本発明は、有効な疲労阻害剤である非毒性架橋組成物も提供する。
力学的崩壊に対するコラーゲン状組織の抵抗性を向上させる本発明の方法は、コラーゲン状組織の少なくとも一部を有効量の架橋試薬に接触させる工程を含む。架橋試薬には、ゲニピン及び/又はプロアンスロシアニジンなどの架橋剤が含まれる。さらに、前記架橋試薬には、担体培地中の架橋剤が含まれ得る。架橋試薬に接触すべきコラーゲン状組織は、好ましくは、椎間板又は輪状軟骨の一部である。前記組織と前記架橋試薬との接触は、針を使用して、選択した組織中に直接注入することによって実施される。あるいは、前記組織と前記架橋試薬との接触は、ゲル若しくは膏薬、又は被処理膜若しくはパッチなどの徐放送達系の標的組織中又は標的組織上への直接配置によって実施される。接触は、例えば、浸漬又は噴霧によって実施することもできる。
コラーゲン架橋を増加することによって、脊柱側弯症の脊柱中の椎間板を安定化するための身体自身の努力を強化する生化学的方法を提供することが、本発明の別の目的である。
非毒性架橋試薬を脊柱側弯症の湾曲に関与する椎間板の凸状側に注入することによって、脊柱側弯症の脊柱の変形された関節の角度を増加する屈曲ヒステリシス(完全な負荷−除荷サイクルで失われるエネルギー)を減少することによって、すなわち、変形を増加する負荷からの「回復」特性を増加することによって、かかる安定性の増強を引き起こすことが、本発明の別の目的である。
非毒性架橋試薬を脊柱側弯症の湾曲に関与する椎間板の凸状側に注入することによって、脊柱側弯症の脊柱の屈曲剛性(変形を増加させる屈曲に対する抵抗性)を増加させることによって、かかる安定性の増強を引き起こすことが、本発明の別の目的である。
変形を増加させる屈曲において失われるエネルギーが少ないこと、又は既存の変形を増加させる方向での屈曲サイクルにおけるヒステリシスが少ないことは、より大量のエネルギーが貯蔵されたこと、及び屈曲前の形状の即座の回復という形態で回復できることを意味する。ヒステリシスが大きいほど、負荷前の形状への回復が遅くなり、従って、変形された関節に対する変形モーメントが増加する傾向が大きくなり(変形が増加するほど、変形モーメントが増大する。)、従って、変形が増大する傾向が大きくなる。
本発明は、脊柱側弯症の脊柱における椎間板の安定性を向上させて、外部ギプスに対する必要性をなくし、又は増大させるための、ゲニピン又はプロアンソシアニジン、バイオフラビノイド、又はリボース若しくはトレオースなどの糖、又はリジルオキシダーゼ(LO)酵素、又はLOプロモーター、又はエポキシ又はカルボジイミドなどの非細胞毒性架橋試薬に関する。注入のための適切な位置は、当業者であれば可能であるように、罹患組織の三次元的復元を使用し、持続的な脊柱側弯症湾曲の進行を最大限抑制するために、これらの試薬の最適な配置を推奨するアルゴリズムとこれらの復元を組み合わせて、決定されるであろう。架橋剤を適用するのに好ましい位置のこのような三次元的描写は、あらゆる種類の利用可能な患者の医療画像を取り込む特注コンピュータソフトウェアで作製するのが最善であり得、ラップトップコンピュータ又は専門機器などのコンピュータによって駆動される表示装置上に表示するのが最善であり得る。椎間板、又は隣接する骨性組織、関節包組織若しくは靭帯組織上の適切な領域への試薬の適用を促進するために、関節鏡タイプの誘導可能なさらなる装置を開発することができる。
コラーゲン架橋を増加させることによって、椎間板の外側領域、繊維輪の透過性を増大させ、これにより、椎間板の中心領域又は髄核への流体流動及び椎間板の中心領域又は髄核からの流体流動を改善することが、本発明の別の目的である。
コラーゲン架橋を増加させることによって、外側椎間板透過性を増加させ、及び椎間板の中心領域への流体流動を増加させて、前記中心領域中の細胞への栄養素の流れを増大させながら、椎間板の中心領域からの細胞老廃産物及び分解されたマトリックス分子の流れを増大させることも、本発明の別の目的である。
コラーゲン架橋を増加させることによって、椎間板の中心領域中の細胞の生物学的生存性を増加させることも、本発明の別の目的である。
次いで、本発明は、椎間板の外側領域の透過性を向上させて、椎間板の中央領域への及び中央領域からの流体及び溶質の流動増加を与え、これにより、この中央領域中の細胞への栄養及び該領域からの老廃物の流出を向上させるための、ゲニピン又はプロアンソシアニジン、バイオフラビノイド、又はリボース若しくはトレオースなどの糖、又はリジルオキシダーゼ(LO)酵素、又はLOプロモーター、又はエポキシ又はカルボジイミドなどの非細胞毒性架橋試薬の新規使用にも関する。これらの試薬は、椎間板の外側輪状領域の大半に注入され、又はその他の方法で適用されるのが好ましい。椎間板の適切な領域への試薬の適用を促進するために、誘導可能なさらなる関節鏡タイプの装置を開発することができる。
発明の詳細な説明
本発明は、コラーゲン状組織の少なくとも一部を有効量の架橋試薬に接触させる工程を含む、力学的崩壊に対するヒト体内のコラーゲン状組織の抵抗性を向上させる方法を提供する。本発明の一実施形態において、本発明の方法は、コラーゲン架橋を増加することによって老齢の椎間板を安定化する身体自体の努力を強化することによって、椎間板組織の進行性力学的崩壊を抑える方法も提供する。本実施形態において、この力学的崩壊は、生理的レベルの反復負荷に応答して生じ得る。
本発明の第二の実施形態において、本発明の方法は、コラーゲン架橋を増加させることによって、脊柱側弯症の脊柱における椎間板を安定化する。脊柱側弯症における脊柱の湾曲の進行には、脊柱の分節の無負荷湾曲の増加を伴う。このように湾曲が増加するにつれて、脊柱に対する、重力によって誘導された屈曲モーメントも付随して増加し、既に罹患したこれらの関節の湾曲を増加させるように作用する。これは、持続的又は静止したタイプの負荷と考えることもでき、負荷の期間がある日の直立活動の期間に等しいが、脊柱側弯症の湾曲の進行に伴う「反復的」又は疲労負荷は、日々の重力による負荷と、受動及び能動筋肉及び結合組織によって作動される負荷と、何日にもわたって脊柱に与えられるそれらの有効モーメントとから構成される。変形が増加すると、「モーメントアーム」(与えられた力がモーメントを生成する距離)が増加するにつれて変形モーメントが増加する。本発明は、脊柱側弯症の脊柱の持続的湾曲を抑制するために使用され、残りの椎間板を矯正の喪失に対して安定化するための矯正手術に対する補助として使用されるであろう。本発明は、単独で、又は外部ギブスとともに使用することができる。
本発明の第三の実施形態において、本発明の方法は、椎間板の透過性及び椎間板への栄養の流れを増加する。椎間板の中央部分への拡散の減少は、椎間板中の細胞機能の喪失及び椎間板の変性と強い関連がある。この拡散能の喪失は、椎間板の軟骨性終板(上及び下)及び椎間板の外側領域である繊維輪の両方に影響を与える。本発明は、椎間板の外側領域(繊維輪)の架橋の増加によって与えられる、椎間板の中央領域(すなわち、髄核)中及び中央領域外への流体流動の増加を示すように、椎間板の様々な領域の水分補給の変化を増加させる。
本発明の架橋試薬は、特に、制限されない。実質的に無細胞毒性であり、コラーゲン物質の効果的な架橋物質であることが知られた任意の架橋試薬を使用し得る。架橋試薬は、生きたヒト体内中の組織への架橋試薬の直接接触を促進するために、実質的に非細胞毒性であることが必要である。好ましくは、架橋試薬は、一般的なアルデヒド固定剤と比べて、大幅に低い細胞毒性を示す。より好ましくは、非細胞毒性架橋試薬が使用される。
ヒトで使用する前に、候補架橋試薬の細胞毒性が最小であることを確認するために、適切な細胞毒性検査が使用されるであろう。好ましくは、椎間板の繊維状及びゼラチン状組織に近い組織から得られた細胞株を使用する、細胞毒性の組織特異的インビトロ検査、マウスの結合組織(F895−84(2001)e1 Standard Test Method for Agar Diffusion Cell Culture Screening for Cytotoxicity)、又はチャイニーズハムスター卵巣(ASTM E1262−88(1996) Standard Guide for Performance of the Chinese Hamster Ovary Cell/Hypoxanthine Guanine Phosphoribosyl Transferase Gene Mutation Assay)に与えられる標準形態の組織特異的インビトロ検査は、最小の細胞毒性を有することが知られた任意の具体的な架橋試薬の組み合わせの毒性レベルを評価するために実施すべきである。これらのインビトロ検査に続いて、ヒトで使用する前に、同様に、インビボ動物検査を行うべきである。
架橋試薬は、少なくとも一つの架橋剤を含む。本発明に従って選択された架橋剤が、コラーゲン状物質の効果的な架橋物質である。架橋試薬中に使用される場合、有効な架橋物質とは、架橋物質がコラーゲン状組織の一部と接触されたときに、コラーゲン状組織中の架橋の数を増加させる架橋物質である。効果的な架橋物質は、被処理組織の疲労抵抗性を向上させ、反復的生理的負荷から生じる物質特性崩壊を減少させ、又は疲労負荷に起因する被処理組織の粘弾性的特性の増加を減少させる。同様に、効果的な架橋物質は、被処理組織の疲労負荷に起因する弾力性−可塑性特性の減少を低下させ得る。本発明の一実施形態において、前記架橋剤は、実質的に非毒性の、天然に存在する架橋剤であるゲニピンである。ゲニピンは、ガルデニア・ジャスミノイデス(Gardenia jasminoides)の果実から単離され得る親化合物ゲニポシドから得られる。ゲニピンは、「Challenge Bioproducts Co., Ltd., 7 Alley 25, Lane 63, TzuChiang St. 404 Taichung Taiwan R.O.C., Tel 886−4−3600852」から市販されており、入手し得る。本発明の別の実施形態において、前記架橋剤は、ビオフラボノイドであり、より具体的には、該ビオフラボノイドはプロアンスロシアニジンである。プロアンスロシアニジンを含有する混合物は、「MegaNatural Gold from Polyphenolics, Inc, 22004 Rd. 24, Medera, CA 93638, Tel 559−637−5961」から得ることができる。2以上の架橋剤を使用することができる。適切な架橋試薬には、リボース又はトレオースなどの糖、リジルオキシダーゼ(LO)酵素、LOプロモーター、エポキシ及びカルボジイミドも含まれるであろう。
前記架橋試薬には、架橋剤の他に、担体媒体を含み得る。前記架橋剤は、架橋試薬を形成するために、担体媒体中に溶解され、又は懸濁され得る。一実施形態において、架橋剤は、無細胞毒性且つ生体適合性の担体媒体中に溶解される。担体媒体は、組織又は周辺組織への実質的な損傷なしに、生きたヒト体内中の組織への架橋試薬の接触を媒介するために、実質的に非細胞毒性であることが必要である。好ましくは、選択された担体媒体は水であり、より好ましくは、生理的食塩水溶液である。好ましくは、前記担体媒体のpHは、組織環境と同じ又は類似するように調整される。より好ましくは、前記担体媒体は緩衝化される。本発明の一実施形態では、前記担体媒体は、リン酸緩衝生理的食塩水(PBS)である。
架橋剤が担体媒体中に溶解されれば、担体媒体中の架橋剤の濃度は特に限定されない。この濃度は、組織の架橋を増加させるのに有効であり、同時に、実質的に非細胞毒性であり続ける任意の量であり得る。
本発明によれば、前記架橋試薬は、コラーゲン状組織の一部と接触される。本明細書において使用されるコラーゲン状組織は、相当量のコラーゲンから構成される身体中の構造組織又は負荷支持組織と定義される。例には、椎間板、関節軟骨、靭帯、腱、骨及び皮膚が含まれるであろう。一般に、架橋試薬と接触されるべきコラーゲン状組織の部分は、負荷が与えられる組織の部分である。さらに、コラーゲン状組織の少なくとも幾らかの崩壊が起こる場合には、架橋試薬と接触されるべき組織の部分は、崩壊された前記組織の少なくとも前記部分である。好ましくは、負荷が与えられる全体部分、又は崩壊されている全体部分が、前記架橋試薬に接触される。さらに、負荷が与えられるコラーゲン状組織の組織隣接部分も、架橋試薬と接触させ得る。本発明に従って特に使用できるコラーゲン状組織には、椎間板及び関節軟骨又は膝半月板などの繊維軟骨が含まれる。コラーゲン状組織が椎間板である場合には、架橋試薬によって好ましく接触される椎間板の部分は、後繊維輪及び後外側繊維輪である。
コラーゲン状組織の選択された部分は、非毒性の架橋試薬の有効量と接触されなければならない。「有効量」とは、処置された組織の部分に対して力学的な効果を有するのに十分な架橋試薬の量である。具体的には、架橋試薬の「有効量」とは、被処理組織の疲労抵抗性を向上させ、反復される生理的負荷から得られる物体特性の崩壊を減少させ、又は疲労負荷による被処理組織の粘弾性特性の増加を低減させ、又は疲労負荷による被処理組織の弾性−可塑性特性の減少を低減させるのに十分な量である。実施例1及び2に関して本明細書に記載されている、粘弾性検査及び/又は弾性−可塑性検査に従って、有効量を決定することができる。
本発明の方法は、コラーゲン状組織の少なくとも一部を、有効量の架橋試薬と接触させることを含む。接触は、数多くの方法で実施することができる。好ましくは、コラーゲン状組織の接触は、非細胞毒性架橋試薬を最小の侵襲性で送達するための手段によって実施される。好ましくは、前記組織と前記架橋試薬との接触は、針を使用して、選択した組織中に直接注入することによって実施される。好ましくは、前記組織と前記架橋試薬との接触は、単一の注入位置又は最少数の注入位置からの注入によって実施される。好ましくは、架橋溶液の量は、針及び注射器を用いて、標的とされた組織中に直接注入される。好ましくは、十分な数の注入は、処理すべきコラーゲン状組織の部分が完全に含まれるように、処理すべき組織の部分に沿って行われる。
あるいは、前記組織と前記架橋試薬との接触は、前記標的組織中又は標的組織上に徐放送達系を直接配置することによって実施される。使用し得る一つの徐放送達系は、処理が施された膜又はパッチである。試薬含有パッチは、シリンダー中に巻き込まれ、カニューレを通じて組織部位に経皮的に挿入され、広げられ、生物学的接着又は吸収性固定装置(縫合又は錨)を用いて、標的とされる組織の周辺に接着される。
使用し得る別の徐放送達系は、ゲル又は軟膏である。ゲル又は軟膏は、標的とされる組織の外部に適用することができる分解可能な粘着性の担体である。
接触は、ある量の架橋溶液を関節包又は滑液小嚢中に注入できる、浸漬又は噴霧(関節包内の浸漬又は噴霧など)によって実施することができる。
ここで処理された方法及び組成物は、ヒト体内のコラーゲン状組織の力学的崩壊に対する抵抗性を恒久的に向上させる必要はないことを銘記すべきである。ある者が一日当たり2から20回の垂直前方屈曲を経験すると仮定すると、コラーゲン状組織の架橋試薬との接触に付随して増加された疲労に対する抵抗性は、時間が経過するにつれて、減少し得る。しかしながら、好ましくは、疲労に対する増加された抵抗性は、生理的な力学的崩壊なしに、数ヶ月から数年の期間にわたって持続する。このような状況下では、前記記載された処理は、疲労抵抗性に対する増加された抵抗性を維持するのに十分な期間で繰り返すことが可能である。上記仮定を用いると、前記接触は、疲労に対する抵抗性の増加を維持するために、周期的に反復し得る。幾つかの処理については、接触の間隔は、幾つかの個体に対しては約1年に対応すると推定される。従って、単一の処理又は反復注入/処理を用いて、本発明の方法は、長期間にわたって、コラーゲン状組織の力学的崩壊を最小限に抑える。
本発明の第二の実施形態は、コラーゲン架橋を増加することによって、脊柱側弯症の脊柱中の椎間板を安定化するための身体自身の努力を強化する方法及び装置を提供する。椎間板に対する力学的崩壊の一形態は、脊柱の脊柱側弯症の一部として起こる。脊柱側弯症における脊柱の湾曲の進行には、脊柱の分節の無負荷湾曲の増加を伴う。このように湾曲が増加するにつれて、脊柱に対する、重力によって誘導された屈曲モーメントも付随して増加し、既に罹患したこれらの関節の湾曲を増加させるように作用する。これは、持続的又は静止したタイプの負荷と考えることもでき、負荷の期間がある日の直立活動の期間に等しいが、脊柱側弯症の湾曲の進行に伴う「反復的」又は疲労負荷は、日々の重力による負荷と、受動及び能動筋肉及び結合組織によって作動される負荷と、何日にもわたって脊柱に与えられるそれらの有効モーメントとから構成されるであろう。変形が増加すると、「モーメントアーム」(与えられた力がモーメントを生成する距離)が増加するにつれて変形モーメントが増加する。脊柱側弯症のギブスの基礎を成す論拠は、これらの変形力及びモーメントに抵抗して、骨及び結合組織中の細胞の負荷環境に影響を与えること、及び湾曲の進行に抵抗することである。本発明は、脊柱側弯症の脊柱の持続的湾曲を抑制するために、旧来のアプローチにおいて使用することが可能であり、残りの椎間板を矯正の喪失に対して安定化するための矯正手術に対する補助として使用することが可能であろう。本発明は、単独で、又は外部ギブスとともに使用することができる。
本実施形態の一側面は、脊柱側弯症脊柱中の椎間板組織を非毒性架橋試薬と接触させることによって、脊柱側弯症脊柱中の椎間板組織の安定性を向上させ、湾曲の伸長(凸状)側のコラーゲン架橋を増加する細胞の努力を補助する方法を提供する。本方法は、生きたヒトの体内の組織への架橋試薬の直接接触を促進するために、通常のアルデヒド固定剤に比べて細胞毒性が大幅に低い架橋試薬の特異的製剤を使用するであろう。ビオフラビノイド及びゲニポシドが、最少の細胞毒性を有する効果的な架橋剤であることが示されている。同様に、糖(例えば、リボース又はトレオース)溶液は、非酵素的糖化によって産生された架橋(天然に産生された架橋、ペントシジンが一例である。)の数を増加させることが示されている。リジルオキシダーゼは、未成熟及び成熟内在性(天然に存在する)コラーゲン架橋の形成に関与する、天然に産生される酵素である。椎間板輪状組織の架橋を増加させるために使用される方法には、生きたヒト椎間板組織を、最小限の細胞毒性の架橋試薬(ゲニピン(ゲニポシド)又はプロアンソシアニジン(ビオフラビノイド)又はリボース若しくはトレオースなどの糖、又はリジルオキシダーゼ(LO)酵素、又はLOプロモーター、又はエポキシ又はカルボジイミドなど)の適切な濃度と直接接触させることが含まれ得る。
本実施形態において、有効量の架橋試薬とは、変形を増加させる屈曲ヒステリシスの少なくとも一つが減少され、変形を増加させる屈曲剛性が増加されるように、(好ましくは、脊柱側弯症の湾曲の先端又は先端付近にある椎間板の凸状側の)標的組織に架橋を生成する量である。
好ましくは、本実施形態に係る方法は、適切な組織を、適切な濃度の非毒性架橋試薬と接触させるために、罹患した椎間板及び隣接する骨、関節包または靭帯組織の伸長(凸状)側への、非細胞毒性架橋試薬の最少侵襲性送達(一連の注入など)を使用する。
注入のための適切な位置は、既存の技術で可能であるように、罹患組織の三次元的復元を使用し、持続的な脊柱側弯症湾曲の進行を最大限抑制するために、これらの試薬の最適な配置を推奨するアルゴリズムとこれらの復元を組み合わせて、決定される。架橋剤を適用するのに好ましい位置のこのような三次元的描写は、患者の医療画像を取り込む特注コンピュータソフトウェアで作製するのが最善であり得、ラップトップコンピュータ又は専門機器などのコンピュータによって駆動される表示装置上に表示するのが好ましい。本発明の本側面は、脊柱側弯症の脊柱の持続的湾曲を抑制するために、旧来のアプローチにおいて使用され、残りの椎間板を矯正の喪失に対して安定化するための矯正手術に対する補助として使用される。これは、単独で、又は外部ギブスとともに使用される。
好ましくは、本実施形態に係る治療方法は、標的組織中又は標的組織上への徐放送達系(埋め込まれた丸薬又は徐放カプセル、又は被処理膜若しくはパッチなど)の直接配置など、非細胞毒性架橋試薬を最小限の侵襲性で送達するための手段を取り込む。椎間板、又は隣接する骨性組織、関節包組織又は靭帯組織上の適切な領域への試薬の適用を促進するために、関節鏡タイプの誘導可能な追加の装置を開発することができる。本発明の本側面は、脊柱側弯症の脊柱の持続的湾曲を抑制するために、旧来のアプローチにおいて使用され、残りの椎間板を矯正の喪失に対して安定化するための矯正手術に対する補助として使用される。これは、単独で、又は外部ギブスとともに使用することができる。
本発明の第三の実施形態は、コラーゲン架橋を増加することによって、椎間板透過性を増加させるための方法及び装置を提供する。
本実施形態の一側面は、椎間板の外側領域、繊維輪の透過性を増大させ、これにより、コラーゲン架橋を増加することによって、椎間板の中心領域、すなわち髄核への流体流動及び椎間板の中心領域又は髄核からの流体流動を改善する方法を提供する。
本実施形態の第二の側面は、コラーゲン架橋を増加させることによって、外側椎間板の透過性を増加させ、及び椎間板の中心領域への流体流動を増加させて、前記中心領域中の細胞への栄養素の流れを増大させながら、椎間板の中心領域からの細胞老廃産物及び分解されたマトリックス分子の流れを増大させる方法を提供する。
本実施形態の第三の側面は、コラーゲン架橋を増加させることによって、椎間板の中心領域中の細胞の生物学的生存性を増加させる方法を提供する。
本実施形態は、椎間板の中央領域からの老廃産物の流出を改善させながら、椎間板の中央領域への栄養素の流れを改善する方法を提供する。このような流れの改善は、架橋試薬のこの外側領域への適用によって産生される椎間板の外側領域の透過性を増大させることによってもたらされる。
本実施形態に係る方法は、一連の注射、又は標的組織中若しくは標的組織上への徐放送達系(埋め込まれた丸薬又は徐放カプセル、又は被処理膜若しくはパッチなど)の直接配置など、非細胞毒性架橋試薬の最少侵襲性送達を使用する。適切な標的領域への試薬の適用を促進するために、誘導可能なさらなる関節鏡タイプの装置を開発することができる。これらの送達方法は、外側領域(すなわち、椎間板の輪)の架橋処理によって、椎間板の中央領域への流体の流れ、溶質の輸送、栄養素の供給及び老廃物の除去を増加させるための旧来のアプローチにおいて使用される。これらの送達方法は、埋め込まれた細胞又はその他の処理が施された細胞の生存性を向上させるための、椎間板の再生医療処置に不可欠な補助として機能する。さらに、これらの送達方法は、再生医療型の治療が適用されない場合に、核の中央領域への拡散を増加させるための助けを得て使用されるであろう。
本発明の別の側面は、椎間板の安定化を向上させるため、力学的崩壊に対するコラーゲン状組織の抵抗性を向上させるため、椎間板の透過性を増大させるため、椎間板への流体の流れ及び椎間板からの流体の流れを向上させるため、並びに椎間板中の細胞の生物学的生存性を増加させるために、装置又は「試薬及び適用トレイ」として上記架橋剤を使用することに関する。
「試薬及び適用トレイ」は無菌であり、無菌のパッケージ内に含有される。必要且つ適切で、予め測定された試薬、溶媒及び使い捨て送達装置の全ては、適切な包装された無菌「試薬及び適用トレイ」を含有する外部パッケージの中に、一緒に梱包される。試薬、溶媒及び送達装置を含有するこの無菌トレイは、内表面上が無菌であるプラスチックケース中に含有される。このトレイは、適切な適用位置を示唆するために必要とされるコンピュータハードウェア及びソフトウェアパッケージとは分離して入手できるようにされ得る。
〔実施例1および実施例2〕
10個の4月齢のウシ脊柱から、33の腰部椎間関節を得た。この椎間関節を、非処置対象−12試料、ゲニピン処置1(G1)−6試料及びゲニピン処置2(G2)−13試料という3つのグループに、無作為に分けた。G1処置では、0.033%濃度のゲニピンを加えたPBS中に、試料全体を72時間浸した。同様に、G2処置では、0.33%濃度のゲニピンを加えたPBS中に、試料全体を72時間浸した。PBS中の0.33%のゲニピンは、50mLの10×PBS(リン酸緩衝生理的食塩水)を蒸留水で10倍に希釈して、500mmL(500g)のPBSとし、1.65グラムのゲニピン中に混合して、0.33%(wt%、グラム/グラム)溶液を得ることによって作製される。心膜及び腱組織試料を用いた以前の試験には、組織を架橋することによって、組織の膨潤(浸透圧による組織中への水の流入)が減少することが実証された。一部の対照は、疲労試験の前に、浸漬を行わなかった。他の対照は、生理的食塩水溶液中に、72時間浸漬した。ゲニピン浸漬と0.9%生理的食塩水浸漬対照との間で、外側輪の水和が等しいことを確定するために、水塊喪失実験を行った。処置の選択は、脊椎及びレベルによって無作為化された。次いで、力学的検査を容易にするために、試料の脊椎末端をポリウレタン中に入れた。圧痕試験及び圧縮/屈曲疲労のサイクルは、表1に示されている順序で実施した。
Figure 2007504162
負荷計画中の所定の時点で、以下のように粘弾性的特性を明らかとするために、圧痕試験を使用した。応力緩和データは、直径3mmの半球形圧痕装置を10Nになるように傾斜負荷した後、生じた応力の減少(応力緩和と称される。)を記録しながら、その変位を60秒維持することによって集めた。圧痕試験は、傾斜負荷データから得た硬度指数(圧痕に対する抵抗性)を計算することによって、弾力可塑特性を決定するためにも使用した。硬度測定値を記録する前に、組織に10回圧痕を繰り返す(60秒/サイクル、最初の10N負荷での変位に対する)。
この試験プロトコールは、2つの原理に基づいている。第一に、粘弾性効果は、反復負荷とともに、無症候性に減少する。第二に、硬度測定値は、組織の負荷歴に対して感受性がある。しかしながら、この効果は、10回の負荷サイクルの後に、ごく僅かになる。これらの効果を最小限に抑えるために、予め圧痕されていない組織から、粘弾性データ(応力緩和)を集めた。交互に、反復して負荷された(前処置が施された)組織から、弾力可塑データ(硬度)を集めた。この場合、反復圧痕は、変化する粘弾性特性が硬度測定に対して及ぼす望ましくない効果(すなわち、反復可能性の欠如)を減少することが予定された。これらの試験の手順は、負荷歴及び位置を変更しながら行った、測定の反復可能性に対する数回の予備実験から得られた。
最初の圧痕試験の後、200N、3000サイクル、0.25Hzの速度の屈曲−圧縮で、試料に反復して負荷を与えた。横断面中の試料の中間点に対して40mm前方の位置で、横断面に対して垂直に負荷を与えた。次いで、疲労サイクルに続いて、二巡目の圧痕試験データを集める。2つの疲労負荷サイクルのために、この手順を踏んだ。全ての検査の間、試料の水分含量を維持するために、生理的食塩水で湿らせたガーゼにこの試料を包んだ。疲労サイクル及び非破壊的圧痕試験は、MTS Test Starデータ収集システムを備えた、MTS858.02 二軸の卓上10kN能サーボ水圧式物体検査ステーション(MTS,Eden Prarie,MN)上で行った。結果の有意性を評価するために、幾つかの統計的指標を計算した。処理及び疲労サイクルの数に起因する効果を確認するために、入れ子式二元配置分散分析(ANOVA)を使用した。データの性質がノンパラメトリックなので、処理が、1)組織のサイクリング前の力学的パラメータに影響を与えなかった、又は2)疲労負荷に起因する、弾性−可塑性及び粘弾性力学的パラメータの変化(崩壊)の量に影響を与えなかったという帰無仮説を評価するために、Mann−Whitneyのノンパラメトリック順位和検定を使用した。統計的有意性に対する信頼レベルは、p<0.05に設定した。
入れ子式二元配置分散分析によって、粘弾性(応力緩和)及び弾力性−可塑性(硬度)力学的パラメータは、疲労サイクル及び処理のタイプによって、独立に影響を受けることが決定された。これらの統計結果は、表2に示されている。
応力緩和検査の結果は、図1にグラフで示されている。
架橋処理によって引き起こされた応力緩和曲線の下方シフトが、当初存在した。応力緩和が高いほど、より激しく崩壊した組織が付随するので、これは、有益な効果を表しているであろう(Lee 1989)。G1及びG2処理群の最初の前疲労応力緩和は、対照の前疲労応力緩和より、それぞれ26%及び19%低かった(p=0.009及びp=0.026)。6000の非外傷性負荷サイクル後の応力緩和の変化によって実証されたところによると、疲労抵抗性も劇的に改善した。G2処理された椎間板に対する6000の疲労サイクルに起因する応力緩和の変化は、対照における変化の1/3未満であった(p=0.044)。しかしながら、これより低い濃度のゲニピンは、疲労抵抗性の同じ改善をもたらさなかった。
硬度検査の結果は、図2にグラフで示されている。G2架橋処理によって引き起こされた高度データの当初上方シフトが、当初存在した。硬度の喪失は組織中の構造的完全性の喪失を示唆するので、これは、有益な効果を表すであろう。G2処置群の当初の疲労前硬度は、対照群より17%大きかった(p=0.026)。しかしながら、この有益な効果は、3000の疲労サイクルの前に徐々に損なわれるようであり、3000と6000サイクルの間の、硬度の変化は、2つの群で実質的に同じである(G2=−0.94、対照=−1.01)。
Figure 2007504162
上記データは、非外傷性の反復負荷に起因する、椎間板組織の弾性的及び粘弾性的な力学的崩壊を定量する。これらの実験の結果は、非毒性架橋試薬がコラーゲン状組織(すなわち、椎間板)中の物質特性の疲労関連崩壊を減少することを確定する。0.33g/mol濃度のゲニピン中のウシ椎間板組織を浸漬することによって、粘弾性的崩壊の1/3を超える減少がもたらされた。検査される製剤は、弾性的な力学的特性(硬度)の向上を3000検査サイクルまで維持することができなかった。
平均的なヒトが、その脊椎円板に対する同等量の損耗を経験するのに要する時間を正確に推測することが困難である。確かに、記載した検査によって課される力学的崩壊に加えて、検査環境に起因する、これらの死亡した組織の(自然の)崩壊がさらに存在する。負荷を与えられていない対照は、このような物質特性の「自然の」崩壊が著しくないことを示した。検査を通じて試料を湿った状態に保ち、負荷頻度を加速することによって、この自然の崩壊を最小限に抑える措置を取った。同時に、組織の過熱を防ぐために、負荷頻度を生理的な限界以内に保った。これらの措置は、死後組織のインビトロ力学的検査に対する標準的なプロトコールに寄与することに留意すべきである。ヒトが、直立、前方屈曲を一日に2から20回行うと仮定すると、これらのデータは、概ね、数ヶ月から数年の生理的な力学的崩壊に対応する。
記載した処置は、この負荷規模で、例えば、3000回の疲労サイクルによって相当する期間で反復することができた。
上記仮定を使用すると、このサイクル数は、幾つかの個体に対する約1年に相当すると推定することができる。従って、単一の処理又は反復注入/処理を用いて、個体は、長期間にわたって、それらの椎間板の力学的崩壊を最小限に抑えることが可能であるかもしれない。別の選択肢には、直接に適用される被処理パッチ、ゲル又は軟膏などの徐放送達系が含まれるであろう。
〔実施例3a及び実施例3b〕
処置前と比較した、組織の側方屈曲安定性に作用させるために、細胞毒性が最少である公知の架橋試薬の様々な製剤を椎間板輪状組織に片側性に適用する効果を評価する実験を行った。
実験では、それぞれの分節が3つの腰部椎間関節(運動分節)、4つの椎骨及び介在する3つの椎間板から構成される5つのウシ脊柱分節を使用した。茎を切断し、後方突起を除去した。分節を、0.33%重量%のゲニピン架橋された群、0.5%のゲニピン群、0.66%のゲニピン群及び0.66%ゲニピン+0.1%プロアンソシアニジン群へと無作為に分割した。各群は、1つの3運動分節試料からなった。前処理された各脊柱は、それ自体の対照として使用された。測定の反復可能性を決定するために、幾つかの非処置試料及び処置試料に対して反復検査を行った。ある組織の文献に報告された細胞毒性に基づいて、細胞毒性が最少の公知の架橋試薬の適切な濃度と組み合わせがさらに選択されるであろう。これに関して、糖溶液は実質的に非細胞毒性であると予想される。組織崩壊を防ぐために適切な無菌操作と抗生物質を用いて、凍結−非凍結動物組織に対して同様の検査が行われるであろう。非酵素的糖化架橋を誘導するために、無菌インキュベーションの期間中、新鮮な椎間板の中に糖溶液が片側性に注入されるであろう。
4点側方屈曲検査は、負荷及び変位をデジタルに記録しながら、特注の備品を有するMTS 858物質検査システムを用いて行った。まず、この試料から、筋肉及び他の無負荷支持組織を除去した後、末端の脊椎を、四角の鋳型中でそれらの高さの半分までポリエチレン中に入れた。次いで、脊柱の側方が垂直面に配置されるように、容器に入れた前記脊柱分節を、底の2つのローラー上に置いた。屈曲負荷は、中央の2つの分節の脊椎と接触された2つの上方ローラーによって作動された。ローラー上での試料の処置前及び処置後の位置が同様になるように、注意を払った。4点屈曲の属性として、被検試料の中央領域(2つの上方ローラー間の中央椎間板を含む。)は、均一に分配される剪断負荷及び屈曲モーメントを有する。100N(0.5mm/秒)までの傾斜負荷は、処置の前及び架橋処置後の両方に、各脊柱への右及び左側方屈曲に与えた。
架橋試薬は、脊柱の一つの側方に2から3の注入を行うことによって、各脊柱試料中の各椎間板に送達された。各注入は、1ccの試薬から構成された。26ゲージの皮下針を使用した。最終検査の前に、湿ったペーパータオルの中に包んだ閉じた容器中に、処置された前記分節を36時間置いた。検査後、試薬によって接触された組織の領域を視覚的に実証するために、椎間板を縦に切断した。
側方屈曲及び側方屈曲安定性に対する抵抗性は、2つの措置(一方は弾性可塑性、他方は粘弾性)によって評価された。最初は、0.1から100Nの変形力の変形の量によって明らかとされる中性ゾーン(低負荷)屈曲剛性であった。第二は、組織によって失われ、又は貯蔵されなかったヒステリシス又は屈曲エネルギーであった。ヒステリシスが小さいほど、変形された位置に残存せず、屈曲から回復する能力が大きいことに対応する。ヒステリシスが小さいことは、より粘性の高い応答と比較して、弾性的なバネ様応答がより大きいことも反映する。
注入は、椎間板輪の約半分(右半分又は左半分)に架橋試薬を効果的に分配した。表3を参照。中性域の屈曲剛性は、処置された側が引っ張られた状態にあるときのみ、処置によって一貫して増加した。剛性増加の平均規模は12%であり、0.1%のプロアンソシアニジンを加えた0.66%ゲニピン処置の場合には、26%増加した。ヒステリシスは、処置された側が引っ張られた状態にあるときのみ、処置によって一貫して減少した。ヒステリシスの平均減少は31%であり、0.1%のプロアンソシアニジンを加えた0.66%ゲニピン処置の場合には、37%減少した。
Figure 2007504162
これらの結果は、最小限の非毒性架橋試薬による架橋増強は、脊柱側弯症の脊柱において予想されるような変形力に対する椎間板の不安定性を効果的に軽減することを示している。安定化効果は、0.1%プロアンソシアニジンを加えた0.66%ゲニピン処置で、より大きいことが観察された。従って、屈曲エネルギーの粘弾性的散逸を減少させ、及び椎間板の回復を増加させる(ヒステリシスの低下)ことによって、並びに脊柱の被処置側を引っ張られた状態に置く方向に屈曲剛性を増加させることによって、注入可能な無毒の架橋増強が、効果的に、脊柱側弯症の屈曲の進行に抵抗する。
〔実施例4〕
浸漬期間の前及び後に、椎間板の異なる領域(髄核、内側輪及び外側繊維輪)の水和状態の変化を測定することによって、持続的な圧縮負荷及び再浸漬、異なる領域への流体流動及び異なる領域からの流体流動を決定することができる。対照椎間板と、最少の細胞毒性を有することが知られている架橋試薬で処理された椎間板との間で、これらの測定を比較することによって、本発明者らは、流体の流動及び透過性に対する架橋処置の効果を認める。
合計24のウシ(4月齢ウシ)椎間板を本研究のために使用した。椎間板組織の3つの異なる領域(髄核、内側繊維輪及び外側繊維輪)の水分含量を検査した。水和状態の変化は、微量天秤(検出感度0.1mg)を用いて試料を秤量することによって測定した。水分含量(M)は、以下のようにして計算した。
M=(湿潤重量−乾燥重量)/湿潤重量=gHO/g湿潤重量
乾燥手順は、90℃の制御された温度のオーブン中に、試料を24時間置くことからなった。
試料を4つの検査に分割した。
1.群A:3つの試料がこの群に属した。これは、対照群としての役割を果たした。PBS(リン酸緩衝生理的食塩水)中に試料を1日間浸漬した後、水和分析を行った。
2.群B1:4つの試料がこの群に属した。一日のPBS浸漬の他に、対照より2日多く、試料をPBS中に浸漬した後、水和分析を行った。
群B2:5つの試料がこの群に属した。一日のPBS浸漬の他に、0.33%のゲニピン溶液中に試料を2日間浸漬した後、水和分析を行った。
3.群C、一定した昼間の少量の圧縮負荷(ずれ)をシミュレートした。
C1.3つの試料がこの群に属した。試料をPBS中に3日間浸漬した後、物体検査機によって、750Nの圧縮を1時間与えた。前記物体検査機の負荷ピストンに付着された2つのローラーによって生じる5度の伸長姿勢で、椎間板を圧縮した。ずれを負荷した直後に、水和分析を行った。
C2.3つの試料がこの群に属した。1日のPBS浸漬後に、0.33%のゲニピン溶液中に試料を2日間浸漬し、750Nの圧縮負荷を用いて、同一のずれ負荷を行った。ずれを負荷した直後に、水和分析を行った。
4.群Dでは、ヒトが横臥姿勢にある際の夜間に通例起こる圧縮負荷の期間後における水の吸収をシミュレートした。
D1:試料を3日間PBS溶液中に浸漬した後、1時間の750Nのずれ負荷を与えた。ズレ負荷の後、1 PBS中の容器中に、さらに一日間試料を配置した後、水和分析を行った。
D2:3つの試料を含め、PBS浸漬の一日後に、0.33%ゲニピン溶液中に二日間浸漬した。次いで、一時間にわたる750Nのズレ負荷を与えた。さらに一日、この試料をPBS中に置き、続いて、水和分析を行った。
表4を参照。一般に、ズレ負荷は、流体を組織から放出させ、ズレの後、流体の再吸収が起こる。本発明に関する結果は、ゲニピン架橋試薬処置された椎間板中の中央核領域中への流体流動及び中央領域からの流体流動が対照に比べて、計64%の増加が存在するというものであった。
Figure 2007504162
これらの結果は、椎間板組織の架橋の増強が、椎間板の中央領域中への流体流動及び中央領域からの流体流動の増加をもたらすことを実証している。このような椎間板核への流体流動は、この処置が椎間板の中央領域中の細胞に供給された栄養素の増加をもたらし、細胞及びマトリックス老廃産物の除去を増加させたことを示す。
本発明の基本的概念が想定され得る様々な様式のうちごく一部を代表する一定の好ましい実施形態及び代替実施形態の観点から、本発明を記載してきた。当業者が想到し得る、本発明の概念の実施に対するある種の修飾又は変形は、添付の特許請求によって定義されている本発明の範囲及び均等物に属する。
参考文献
Figure 2007504162
Figure 2007504162
図1は、後部椎間板応力緩和に対するゲニピン架橋処理(G1=0.033g/mol、G2=0.33g/mol)の効果を示す、応力緩和(N)とサイクル数のグラフである。 図2は、後部椎間板の硬度又は貫通に対する抵抗性に対するゲニピン架橋処理(G1=0.033g/mol、G2=0.33g/mol)の効果を示す、ブリンネルの硬度指数とサイクル数のグラフである。

Claims (30)

  1. 脊柱側弯症の脊柱の屈曲ヒステレシスを減少させることにより無脊椎動物の椎間板の安定化を向上させる方法であって:
    椎間板内のコラーゲン状組織の少なくとも一部を、有効量の架橋試薬に接触させる工程を含んでなる方法。
  2. 脊柱側弯症の脊柱の屈曲ヒステレシスを増加させることにより無脊椎動物の椎間板の安定化を向上させる方法であって:
    椎間板内のコラーゲン状組織の少なくとも一部を、有効量の架橋試薬に接触させる工程を含んでなる方法。
  3. 前記架橋試薬が、脊柱側弯症の脊柱中に含まれる椎間板の凸状側に注入される、請求項1又は2に記載の方法。
  4. 椎間板を安定化するために矯正手術を実施することをさらに含む、請求項1又は2に記載の方法。
  5. 椎間板を安定化するために外部ギプスを身に付けることをさらに含む、請求項1又は2に記載の方法。
  6. 前記架橋試薬が、ゲニピン、プロアンソシアニジン、リボース、トレオース、及びリジルオキシダーゼからなる群から選択される、請求項1又は2に記載の方法。
  7. 椎間板に隣接する組織内のコラーゲン状組織の少なくとも一部を有効量の架橋試薬に接触させる工程をさらに含む、請求項1又は2に記載の方法。
  8. 前記コラーゲン状組織と前記架橋試薬との接触が、前記コラーゲン状組織の前記一部の中又は上に、徐放送達系を直接配置することによって実施される、請求項1又は2に記載の方法。
  9. 前記架橋試薬に接触させる前記コラーゲン状組織の場所を決定するために、コラーゲン状組織の三次元的復元を使用することをさらに含む、請求項1又は2に記載の方法。
  10. 脊柱側弯症の脊柱の屈曲ヒステレシスを減少させることにより無脊椎動物の椎間板の安定化を向上させる装置であって:
    架橋試薬を備えてなる装置。
  11. 脊柱側弯症の脊柱の屈曲剛性を増加させることにより無脊椎動物の椎間板の安定化を向上させる装置であって:
    架橋試薬を備えてなる装置。
  12. 前記架橋試薬を注入するための注射器及び針をさらに備えてなる、請求項10又は11に記載の装置。
  13. 前記架橋試薬の徐放送達系をさらに備えてなる、請求項10又は11に記載の装置。
  14. 前記架橋試薬が、脊柱側弯症の脊柱に含まれる椎間板の凸状側に注入される、請求項12に記載の装置。
  15. 前記架橋試薬が、ゲニピン、プロアンソシアニジン、リボース、トレオース、及びリジルオキシダーゼからなる群から選択される、請求項10又は11に記載の装置。
  16. 前記徐放送達系が、埋め込まれた丸薬、徐放カプセル、処理された膜、パッチ、ゲル及び軟膏からなる群から選択される、請求項13に記載の装置。
  17. 脊柱側弯症の脊柱の屈曲ヒステレシスを減少させることにより無脊椎動物の椎間板の安定化を向上させるための、滅菌された内面を有する包装に封入された無菌の試薬及び適用トレイであって:
    有効量の架橋試薬を含有する容器;
    架橋試薬を溶解するための、予め測定された量の溶媒を含有する容器;
    針付き注射器、又は架橋試薬を注入するためのその他の手段;
    架橋試薬を放出するための徐放カプセル;
    架橋試薬の送達を補助するための徐放カプセル挿入装置;
    架橋試薬を含むゲル又は軟膏の容器;
    架橋試薬を適用するためのゲル又は軟膏適用装置;
    架橋試薬を含む被処理パッチ;
    被処理パッチ、ゲル、軟膏、徐放カプセル又は注射物質を介して架橋試薬を適用するための最小侵襲性装置;
    のうち一又は複数を備えてなる無菌の試薬及び適用トレイ。
  18. 脊柱側弯症の脊柱の屈曲剛性を増加させることにより無脊椎動物の椎間板の安定化を向上させるための、滅菌された内面を有する包装に封入された無菌の試薬及び適用トレイであって:
    有効量の架橋試薬を含有する容器;
    架橋試薬を溶解するための、予め測定された量の溶媒を含有する容器;
    針付き注射器、又は架橋試薬を注入するためのその他の手段;
    架橋試薬を放出するための徐放カプセル;
    架橋試薬の送達を補助するための徐放カプセル挿入装置;
    架橋試薬を含むゲル又は軟膏の容器;
    架橋試薬を適用するためのゲル又は軟膏適用装置;
    架橋試薬を含む被処理パッチ;
    被処理パッチ、ゲル、軟膏、徐放カプセル又は注射物質を介して架橋試薬を適用するための最小侵襲性装置;
    のうち一又は複数を備えてなる無菌の試薬及び適用トレイ。
  19. 椎間板の中心領域(すなわち、髄核)への流体流動及び椎間板の中心領域(すなわち、髄核)からの流体流動が改善されるように、椎間板の外側領域(繊維輪)の透過性を増大させる方法であって:
    椎間板内のコラーゲン状組織の少なくとも一部を、有効量の架橋試薬に接触させる工程を含んでなる方法。
  20. 椎間板の中心領域内の細胞への栄養素の流れが増加され、並びに椎間板の中心領域内の細胞からの細胞老廃産物及び分解されたマトリックス分子の流れが増加されるように、椎間板の透過性を増加し、椎間板の中央領域への流体流動を増加させる方法であって:
    椎間板内のコラーゲン状組織の少なくとも一部を有効量の架橋試薬に接触させる工程を含む方法。
  21. 椎間板の中心領域中の細胞の生物学的生存可能性を増大させる方法であって:
    椎間板内のコラーゲン状組織の少なくとも一部を有効量の架橋試薬に接触させる工程を含んでなる方法。
  22. 椎間板の中心領域(すなわち、髄核)への流体流動及び椎間板の中心領域(すなわち、髄核)からの流体流動が改善されるように、椎間板の外側領域(繊維輪)の透過性を増大させるための装置であって:
    架橋試薬を備えてなる装置。
  23. 椎間板の中心領域内の細胞への栄養素の流れが増加され、並びに椎間板の中心領域内の細胞からの細胞老廃産物及び分解されたマトリクス分子の流れが増加されるように、椎間板の外側領域、繊維輪の透過性を増大させるための装置であって:
    架橋試薬を備えてなる装置。
  24. 椎間板の中心領域中の細胞の生物学的生存可能性を増大させるための装置であって:
    架橋試薬を備えてなる装置。
  25. 前記架橋試薬を注入するための注射器及び針をさらに備えてなる、請求項22、23又は24に記載の装置。
  26. 前記架橋試薬の徐放送達系をさらに備えてなる、請求項22、23又は24に記載の装置。
  27. コラーゲン状組織の機械的崩壊に対する抵抗性を向上させるための、滅菌された内面を有する包装に封入された無菌の試薬及び適用トレイであって:
    有効量の架橋試薬を含有する容器;
    架橋試薬を溶解するための、予め測定された量の溶媒を含有する容器;
    針付き注射器、又は架橋試薬を注入するためのその他の手段;
    架橋試薬を放出するための徐放カプセル;
    架橋試薬の送達を補助するための徐放カプセル挿入装置;
    架橋試薬を含むゲル又は軟膏の容器;
    架橋試薬を適用するためのゲル又は軟膏適用装置;
    架橋試薬を含む被処理パッチ;
    被処理パッチ、ゲル、軟膏、徐放カプセル又は注射物質を介して架橋試薬を適用するための最小侵襲性装置;
    のうち一又は複数を備えてなる無菌の試薬及び適用トレイ。
  28. 椎間板の中心領域(すなわち、髄核)への流体流動及び椎間板の中心領域(すなわち、髄核)からの流体流動が改善されるように、椎間板の外側領域(繊維輪)の透過性を増大させるための滅菌された内面を有する包装に封入された無菌の試薬及び適用トレイであって:
    有効量の架橋試薬を含有する容器;
    架橋試薬を溶解するための、予め測定された量の溶媒を含有する容器;
    針付き注射器、又は架橋試薬を注入するためのその他の手段;
    架橋試薬を放出するための徐放カプセル;
    架橋試薬の送達を補助するための徐放カプセル挿入装置;
    架橋試薬を含むゲル又は軟膏の容器;
    架橋試薬を適用するためのゲル又は軟膏適用装置;
    架橋試薬を含む被処理パッチ;
    被処理パッチ、ゲル、軟膏、徐放カプセル又は注射物質を介して架橋試薬を適用するための最小侵襲性装置;
    のうち一又は複数を備えてなる無菌の試薬及び適用トレイ。
  29. 椎間板の中心領域内の細胞への栄養素の流れが増加され、並びに椎間板の中心領域内の細胞からの細胞老廃産物及び分解されたマトリックス分子の流れが増加されるように、椎間板の透過性を増加させ、及び椎間板の中心領域への流体流動を増大させるための、滅菌された内面を有する包装に封入された無菌の試薬及び適用トレイであって:
    有効量の架橋試薬を含有する容器;
    架橋試薬を溶解するための、予め測定された量の溶媒を含有する容器;
    針付き注射器、又は架橋試薬を注入するためのその他の手段;
    架橋試薬を放出するための徐放カプセル;
    架橋試薬の送達を補助するための徐放カプセル挿入装置;
    架橋試薬を含むゲル又は軟膏の容器;
    架橋試薬を適用するためのゲル又は軟膏適用装置;
    架橋試薬を含む被処理パッチ;
    被処理パッチ、ゲル、軟膏、徐放カプセル又は注射物質を介して架橋試薬を適用するための最小侵襲性装置;
    のうち一又は複数を備えてなる無菌の試薬及び適用トレイ。
  30. 椎間板の中心領域中の細胞の生物学的生存可能性を増大させるための、無菌の内面を有する包装に封入された無菌の試薬及び適用トレイであって:
    有効量の架橋試薬を含有する容器;
    架橋試薬を溶解するための、予め測定された量の溶媒を含有する容器;
    針付き注射器、又は架橋試薬を注入するためのその他の手段;
    架橋試薬を放出するための徐放カプセル;
    架橋試薬の送達を補助するための徐放カプセル挿入装置;
    架橋試薬を含むゲル又は軟膏の容器;
    架橋試薬を適用するためのゲル又は軟膏適用装置;
    架橋試薬を含む被処理パッチ;
    被処理パッチ、ゲル、軟膏、徐放カプセル又は注射物質を介して架橋試薬を適用するための最小侵襲性装置;
    のうち一又は複数を備えてなる無菌の試薬及び適用トレイ。
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