JP2007334645A - 摩擦を解析する摺動解析方法、プログラム、摺動解析システムおよび接触解析方法 - Google Patents

摩擦を解析する摺動解析方法、プログラム、摺動解析システムおよび接触解析方法 Download PDF

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Abstract

【課題】潤滑されつつ摺動する面間の摩擦を解析する。
【解決手段】摺動解析では、第1摺動面および第2摺動面が複数の第1面要素および複数の第2面要素に分割され、第1面要素と第2面要素との摺動の関係を維持しつつ第2面要素が置換平滑面に置換され、第1面要素が置換粗面に置換される。置換粗面の微小突起の高さの分布において、微小突起851が置換平滑面に凝着する凝着ゾーン、微小突起852,853上の潤滑物質の吸着膜858が維持される境界潤滑ゾーン、微小突起と置換平滑面との間に潤滑物質が存在する一般的な状態を示す潤滑ゾーンが設定されており、各ゾーンの演算が確率的に適用されつつ第1面要素と第2面要素との間の圧力およびせん断応力が求められ、さらに、第1摺動面と第2摺動面との間の摩擦力および摩耗量が求められる。
【選択図】図9

Description

本発明は、潤滑物質を介して相対的に摺動する複数の対象物における摩擦力や摩耗量等の摩擦に関する解析を行う技術、および、潤滑物質を介して接触する複数の対象物における接触状態の解析を行う技術に関する。
従来より、潤滑されていない状態での摺動における摩擦力を計算機にてシミュレートする方法が研究されており、例えば、非特許文献1のCEBモデルや非特許文献2のKEモデルでは、粗面の微小凹凸の弾塑性変形を考慮して計算が行われる。また、非特許文献3および4では、無次元の形式にて定量的に摩耗量を求める方法が開示されている。一方、潤滑に関しては、表面粗さの影響を反映した粗面間の動圧を求めるために、非特許文献5および非特許文献6では平均流レイノルズ方程式が提案されている。
Chang, W. R., Etsion, I. and Bogy, D. B., 1988, "Static Friction Coefficient Model for Metallic Rough Surfaces", ASME Journal of Tribology, Vol. 110, pp. 57-63 Kogut, L. and Etsion, I., 2004, "A Static Friction Model for Elastic-Plastic Contacting Roughness Surfaces", ASME Journal of Tribology, Vol. 126, pp. 34-40 Holm, R., 1946, "Electric Contacts", Almqvist and Wiksells, Stockholm, p. 214 Archard, J. F., 1953, "Contact and Rubbing of Flat Surfaces", Journal of Applied Physics, Vol. 24, pp. 981-989 Patir, N. and Cheng, H. S., 1978, "An Average Flow Model for Determining Effects of Three Dimensional Roughness on Partial Hydrodynamic Lubrication", ASME Journal of Lubrication Technology, Vol. 100, pp. 12-17 Patir, N. and Cheng, H. S., 1979, "Application of Average Flow Model to Lubrication Between Rough Sliding Surfaces", ASME Journal of Lubrication Technology, Vol. 101, pp. 220-230
上記のように、潤滑されていない状態での摩擦力や摩耗に関する多くの研究がなされているが、潤滑された状態における摩擦力や摩耗の摺動解析は行われていない。しかしながら、例えば、モータに用いられる流体動圧軸受や産業設備に用いられる各種スライダやピストン等のように、現実の機械要素では多くの場合潤滑されつつ摺動が行われる。
本発明は上記課題に鑑みなされたものであり、潤滑された状態での摩擦力や摩耗を解析する方法を提供することを目的としている。
請求項1に記載の発明は、潤滑物質を介して互いに対向するとともに相対的に摺動する第1の面と第2の面との間における摩擦を解析する摺動解析方法であって、a)前記第1の面および前記第2の面を互いに対向する複数の第1面要素および複数の第2面要素に分割する工程と、b)各第1面要素の微小凹凸を示す表面性状統計量と、対向する第2面要素の微小凹凸を示す表面性状統計量とから、前記各第1面要素と前記対向する第2面要素との摺動の関係を維持しつつ前記対向する第2面要素を置換平滑面に置換した場合の前記各第1面要素の置換粗面の表面性状統計量であって、突起先端の半径R、突起面密度N、突起高さ標準偏差σおよび表面粗さ、または、これらに相当するものを含むものを求める工程と、c)前記各第1面要素を構成する材料の物性値と前記対向する第2面要素を構成する材料の物性値とから、前記各第1面要素と前記対向する第2面要素との間の摺動の関係を維持しつつ前記対向する第2面要素を前記置換平滑面に置換した場合の前記置換粗面の材料物性値であって、ヤング率、硬度およびポアソン比を含むものを求める工程と、d)前記第1の面を有する第1対象物および/または前記第2の面を有する第2対象物の初期時刻における運動条件を設定し、前記第1対象物および/または前記第2対象物の運動方程式を設定する工程と、e)前記運動方程式を解く工程と、f)前記各第1面要素の前記置換粗面の突起の高さの分布において、前記対向する第2面要素の前記置換平滑面に突起が凝着する凝着ゾーンと、前記置換粗面と前記置換平滑面との間に前記潤滑物質が介在する潤滑物質介在ゾーンとが設定されており、前記運動方程式の解、前記置換粗面の前記表面性状統計量、前記置換粗面の前記材料物性値、および、前記潤滑物質の粘度に基づいて、前記各第1面要素と前記対向する第2面要素との間に作用する圧力および/またはせん断応力を前記凝着ゾーンおよび前記潤滑物質介在ゾーンのそれぞれにおいて求め、さらに、前記第1の面と前記第2の面との間における摩擦力および摩耗量の少なくともいずれかを求める工程と、g)前記圧力および前記せん断応力に基づいて前記運動方程式の前記第1対象物および/または前記第2対象物の運動条件の設定を前回の時刻から微小時間だけ経過した時刻のものへと更新して前記e)工程へと戻る工程とを備える。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の摺動解析方法であって、前記潤滑物質介在ゾーンが、前記潤滑物質からの圧力およびせん断応力が作用する潤滑ゾーンと、前記潤滑物質の吸着膜を介して前記置換平滑面から圧力が作用する境界潤滑ゾーンとを含み、前記f)工程において、前記各第1面要素と前記対向する第2面要素との間に作用する圧力および/またはせん断応力が、前記凝着ゾーン、前記潤滑ゾーンおよび前記境界潤滑ゾーンのそれぞれにおいて求められる。
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の摺動解析方法であって、前記置換粗面の平均面から前記置換平滑面に至る距離をdとし、前記置換粗面における前記潤滑物質の吸着膜の厚さをtとし、吸着膜が維持される最大許容変形量をωとして、前記突起の高さδの前記分布において、(d+ω<δ<∞)の範囲が前記凝着ゾーンとして設定され、(δ<d)の範囲が前記潤滑ゾーンとして設定され、(d−t<δ<d+ω)の範囲が前記境界潤滑ゾーンとして設定される。
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の摺動解析方法であって、0.1nm≦t≦15nm、および、0≦ω≦10t、が満たされる。
請求項5に記載の発明は、請求項2ないし4のいずれかに記載の摺動解析方法であって、前記潤滑物質介在ゾーンが、突起から受ける圧力により変化する前記潤滑物質の粘度および突起の弾性変形を考慮した弾性流体潤滑ゾーンをさらに含み、前記f)工程において、前記各第1面要素と前記対向する第2面要素との間に作用する圧力および/またはせん断応力が、前記凝着ゾーン、前記潤滑ゾーン、前記境界潤滑ゾーンおよび前記弾性流体潤滑ゾーンのそれぞれにおいて求められる。
請求項6に記載の発明は、請求項1ないし5のいずれかに記載の摺動解析方法であって、前記初期時刻において、前記第1対象物および前記第2対象物が静止している。
請求項7に記載の発明は、請求項6に記載の摺動解析方法であって、前記d)工程において、前記初期時刻における前記第1対象物および/または前記第2対象物の母材の変形量が求められる。
請求項8に記載の発明は、請求項1ないし7のいずれかに記載の摺動解析方法であって、解析終了時刻より前の時刻において、前記第1対象物および前記第2対象物が相対的に運動しており、前記解析終了時刻において、前記第1対象物および前記第2対象物が静止している。
請求項9に記載の発明は、請求項1ないし8のいずれかに記載の摺動解析方法であって、前記第1対象物および前記第2対象物により軸受機構が構成され、前記第1の面および前記第2の面が前記軸受機構内の摺動面を含む。
請求項10に記載の発明は、請求項1ないし9のいずれかに記載の摺動解析方法であって、前記a)工程の前に、前記第1の面の微小凹凸を測定して前記各第1面要素の前記表面性状統計量を求め、前記第2の面の微小凹凸を測定して前記対向する第2面要素の前記表面性状統計量を求める工程をさらに備える。
請求項11に記載の発明は、請求項1ないし10のいずれかに記載の摺動解析方法であって、前記f)工程において、前記各第1面要素と前記対向する第2面要素との間における動摩擦係数が求められ、前記摺動解析方法が、前記動摩擦係数を表示する工程をさらに備える。
請求項12に記載の発明は、請求項1ないし11のいずれかに記載の摺動解析方法であって、前記初期時刻からの前記第1対象物と前記第2対象物との間の相対運動の経過を表示する工程をさらに備える。
請求項13に記載の発明は、潤滑物質を介して互いに対向するとともに相対的に摺動する第1の面と第2の面との間における摩擦をコンピュータにより解析するプログラムであって、前記プログラムを前記コンピュータにて実行することにより、前記コンピュータが、a)前記第1の面および前記第2の面を互いに対向する複数の第1面要素および複数の第2面要素に分割する工程と、b)各第1面要素の微小凹凸を示す表面性状統計量と、対向する第2面要素の微小凹凸を示す表面性状統計量とから、前記各第1面要素と前記対向する第2面要素との摺動の関係を維持しつつ前記対向する第2面要素を置換平滑面に置換した場合の前記各第1面要素の置換粗面の表面性状統計量であって、突起先端の半径R、突起面密度N、突起高さ標準偏差σおよび表面粗さ、または、これらの相当するものを含むものを求める工程と、c)前記各第1面要素を構成する材料の物性値と前記対向する第2面要素を構成する材料の物性値とから、前記各第1面要素と前記対向する第2面要素との間の摺動の関係を維持しつつ前記対向する第2面要素を前記置換平滑面に置換した場合の前記置換粗面の材料物性値であって、ヤング率、硬度およびポアソン比を含むものを求める工程と、d)前記第1の面を有する第1対象物および/または前記第2の面を有する第2対象物の初期時刻における運動条件を設定し、前記第1対象物および/または前記第2対象物の運動方程式を設定する工程と、e)前記運動方程式を解く工程と、f)前記各第1面要素の前記置換粗面の突起の高さの分布において、前記対向する第2面要素の前記置換平滑面に突起が凝着する凝着ゾーンと、前記置換粗面と前記置換平滑面との間に前記潤滑物質が介在する潤滑物質介在ゾーンとが設定されており、前記運動方程式の解、前記置換粗面の前記表面性状統計量、前記置換粗面の前記材料物性値、および、前記潤滑物質の粘度に基づいて、前記各第1面要素と前記対向する第2面要素との間に作用する圧力および/またはせん断応力を前記凝着ゾーンおよび前記潤滑物質介在ゾーンのそれぞれにおいて求め、さらに、前記第1の面と前記第2の面との間における摩擦力および摩耗量の少なくともいずれかを求める工程と、g)前記圧力および前記せん断応力に基づいて前記運動方程式の前記第1対象物および/または前記第2対象物の運動条件の設定を前回の時刻から微小時間だけ経過した時刻のものへと更新して前記e)工程へと戻る工程とを実行する。
請求項14に記載の発明は、潤滑物質を介して互いに対向するとともに相対的に摺動することが予定される第1対象物上の第1の面と第2対象物上の第2の面との間の摩擦を解析する摺動解析システムであって、前記第1の面の微小凹凸および前記第2の面の微小凹凸を測定する測定装置と、測定結果に基づいて、前記第1の面と前記第2の面とが摺動した際の摩擦力および摩耗量の少なくともいずれかを求める演算装置とを備え、前記演算装置が、a)演算用のモデル上において前記第1の面および前記第2の面を互いに対向する複数の第1面要素および複数の第2面要素に分割する工程と、b)前記測定結果に基づいて、各第1面要素の微小凹凸を示す表面性状統計量と、対向する第2面要素の微小凹凸を示す表面性状統計量とを求める工程と、c)前記各第1面要素の前記表面性状統計量と、前記対向する第2面要素の前記表面性状統計量とから、前記各第1面要素と前記対向する第2面要素との摺動の関係を維持しつつ前記対向する第2面要素を置換平滑面に置換した場合の前記各第1面要素の置換粗面の表面性状統計量であって、突起先端の半径R、突起面密度N、突起高さ標準偏差σおよび表面粗さ、または、これらに相当するものを含むものを求める工程と、d)前記各第1面要素を構成する材料の物性値と前記対向する第2面要素を構成する材料の物性値とから、前記各第1面要素と前記対向する第2面要素との間の摺動の関係を維持しつつ前記対向する第2面要素を前記置換平滑面に置換した場合の前記置換粗面の材料物性値であって、ヤング率、硬度およびポアソン比を含むものを求める工程と、e)前記第1の面を有する第1対象物および/または前記第2の面を有する第2対象物の初期時刻における運動条件を設定し、前記第1対象物および/または前記第2対象物の運動方程式を設定する工程と、f)前記運動方程式を解く工程と、g)前記各第1面要素の前記置換粗面の突起の高さの分布において、前記対向する第2面要素の前記置換平滑面に突起が凝着する凝着ゾーンと、前記置換粗面と前記置換平滑面との間に前記潤滑物質が介在する潤滑物質介在ゾーンとが設定されており、前記運動方程式の解、前記置換粗面の前記表面性状統計量、前記置換粗面の前記材料物性値、および、前記潤滑物質の粘度に基づいて、前記各第1面要素と前記対向する第2面要素との間に作用する圧力および/またはせん断応力を前記凝着ゾーンおよび前記潤滑物質介在ゾーンのそれぞれにおいて求め、さらに、前記第1の面と前記第2の面との間における摩擦力および摩耗量の少なくともいずれかを求める工程と、h)前記圧力および前記せん断応力に基づいて前記運動方程式の前記第1対象物および/または前記第2対象物の運動条件の設定を前回の時刻から微小時間だけ経過した時刻のものへと更新して前記f)工程へと戻る工程とを実行する。
請求項15に記載の発明は、潤滑物質を介して互いに対向するとともに相対的に摺動可能な第1面要素と第2面要素との間における摩擦を解析する摺動解析方法であって、a)前記第1面要素の微小凹凸を示す表面性状統計量と、前記第2面要素の微小凹凸を示す表面性状統計量とから、前記第1面要素と前記第2面要素との摺動の関係を維持しつつ前記第2面要素を置換平滑面に置換した場合の前記第1面要素の置換粗面の表面性状統計量であって、突起先端の半径R、突起面密度N、突起高さ標準偏差σおよび表面粗さ、または、これらに相当するものを含むものを求める工程と、b)前記第1面要素を構成する材料の物性値と前記第2面要素を構成する材料の物性値とから、前記第1面要素と前記第2面要素との間の摺動の関係を維持しつつ前記第2面要素を前記置換平滑面に置換した場合の前記置換粗面の材料物性値であって、ヤング率、硬度およびポアソン比を含むものを求める工程と、c)前記置換粗面の突起の高さの分布において、前記置換平滑面に突起が凝着する凝着ゾーンと、前記置換粗面と前記置換平滑面との間に前記潤滑物質が介在する潤滑物質介在ゾーンとが設定されており、前記第1面要素と前記第2面要素との位置関係および相対速度(相対速度が実質的に0の場合を含む)、前記置換粗面の前記表面性状統計量、前記置換粗面の前記材料物性値、並びに、前記潤滑物質の粘度に基づいて、前記第1面要素と前記第2面要素との間に作用する圧力および/またはせん断応力を前記凝着ゾーンおよび前記潤滑物質介在ゾーンのそれぞれにおいて求める工程とを備える。
請求項16に記載の発明は、潤滑物質を介して互いに対向するとともに相対的に摺動可能な第1の面と第2の面との間における接触状態を解析する接触解析方法であって、a)前記第1の面および前記第2の面を互いに対向する複数の第1面要素および複数の第2面要素に分割する工程と、b)各第1面要素の微小凹凸を示す表面性状統計量と、対向する第2面要素の微小凹凸を示す表面性状統計量とから、前記各第1面要素と前記対向する第2面要素との接触の関係を維持しつつ前記対向する第2面要素を置換平滑面に置換した場合の前記各第1面要素の置換粗面の表面性状統計量であって、突起先端の半径R、突起面密度N、突起高さ標準偏差σおよび表面粗さ、または、これらに相当するものを含むものを求める工程と、c)前記各第1面要素を構成する材料の物性値と前記対向する第2面要素を構成する材料の物性値とから、前記各第1面要素と前記対向する第2面要素との間の接触の関係を維持しつつ前記対向する第2面要素を前記置換平滑面に置換した場合の前記置換粗面の材料物性値であって、ヤング率、硬度およびポアソン比を含むものを求める工程と、d)前記第1の面を有する第1対象物および/または前記第2の面を有する第2対象物の初期の釣り合い条件を設定し、前記第1対象物および/または前記第2対象物の釣り合いの式を設定する工程と、e)前記釣り合いの式を解く工程と、f)前記各第1面要素の前記置換粗面の突起の高さの分布において、前記対向する第2面要素の前記置換平滑面に突起が凝着する凝着ゾーンと、前記置換粗面と前記置換平滑面との間に前記潤滑物質が介在する潤滑物質介在ゾーンとが設定されており、前記釣り合いの式の解、前記置換粗面の前記表面性状統計量、前記置換粗面の前記材料物性値、および、前記潤滑物質の粘度に基づいて、前記各第1面要素と前記対向する第2面要素との間に作用する圧力を前記凝着ゾーンおよび前記潤滑物質介在ゾーンのそれぞれにおいて求める工程と、g)前記圧力に基づいて前記釣り合いの式の前記第1対象物および/または前記第2対象物の釣り合い条件の設定を更新する工程と、h)前記釣り合いの式が有する誤差が許容範囲外の場合に前記e)工程へと戻り、許容範囲内の場合に演算を終了する工程とを備える。
請求項1ないし14の発明によれば、潤滑されつつ摺動する第1の面と第2の面との間の摩擦力または摩耗量を求めることができる。また、請求項2ないし5、並びに、請求項7の発明では、摺動解析をより精度よく行うことができる。請求項15の発明では、潤滑されつつ摺動する(または摺動開始直前の)第1面要素と第2面要素との間の圧力および/またはせん断応力を求めることができる。請求項16の発明では、潤滑物質を介して接触する第1対象物と第2対象物との位置関係および圧力を求めることができる。
図1は本発明の一の実施の形態に係る摺動解析システム1を示す図である。摺動解析システム1は測定装置11および演算装置であるコンピュータ12を備え、これらは互いに接続される。測定装置11は、対象物9が載置されるステージ111を備え、ステージ111の上方には、例えば、光干渉や原子間力を利用して対象物9の表面の微小凹凸を測定する測定器112が設けられる。ステージ111は水平方向および上下方向に移動可能とされ、対象物9上の所望の位置の表面の微細形状を測定することが可能とされる。測定結果はコンピュータ12へと送られ、後述する摺動解析が行われる。
コンピュータ12は、図2に示すように、各種演算処理を行うCPU201、基本プログラムを記憶するROM202および各種情報を記憶するRAM203をバスラインに接続した一般的なコンピュータシステムの構成となっている。バスラインにはさらに、情報記憶を行うハードディスク装置204、各種情報の表示を行うディスプレイ205、操作者からの入力を受け付けるキーボード206aおよびマウス206b、光ディスク、磁気ディスク、光磁気ディスク等のコンピュータ読み取り可能な記録媒体8から情報の読み取りを行う読取装置207、並びに、通信網を介して他のコンピュータと通信を行う通信部208が、適宜、インターフェイス(I/F)を介する等して接続される。
コンピュータ12には、事前に読取装置207を介して記録媒体8からプログラムが読み出され、ハードディスク装置204に記憶される。そして、プログラム241がRAM203に読み出されるとともにCPU201がプログラム241に従って演算処理を実行することにより(すなわち、コンピュータがプログラムを実行することにより)、コンピュータ12が摺動解析装置としての動作を行う。
図3は、本実施の形態にて解析の対象とされる軸受機構90を示す縦断面図であり、断面内の平行斜線は省略している。軸受機構90は、ハードディスク装置用のスピンドルモータの一部であり、スリーブ92にシャフト91が挿入された構造を有する。シャフト91はモータのハブ93に取り付けられ、シャフト91の先端にはスラストプレート94が取り付けられる。また、スリーブ92には、スラストプレート94に対向するカウンタプレート95が取り付けられる。すなわち、軸受機構90は、スリーブ92およびカウンタプレート95が組み合わされた第1対象物90aとシャフト91、ハブ93およびスラストプレート94が組み合わされた第2対象物90bとにより構成され、第1対象物90aと第2対象物90bとの間の隙間には、オイルである潤滑物質98が充填される。そして、シャフト91およびスリーブ92には、流体動圧溝が形成される。具体的には、スリーブ92の内側面のハブ93側およびスラストプレート94側にヘリングボーン溝81a,81bが形成され、スリーブ92のハブ93側の端面にスパイラル溝82が形成される。
図4は、軸受機構90の構造のモデル化の例を示す図である。コンピュータ12による実際の演算では、軸受機構90の設計データから第1対象物90aおよび第2対象物90bの摺動に係る部位が複数のブロックとして演算用にモデル化されて準備される。図4では、第1対象物90aは固定されているため、潤滑物質が介在する部位だけモデル化が行われ、第2対象物90bはほぼ全体がモデル化される。図4では、第1対象物90aにおいて潤滑物質に接して摺動に影響を与える第1の面85(以下、「第1摺動面」と呼ぶが、摺動する面を含むのであれば摺動に影響を与えない部分を含んでもよい。)、および、第2対象物90bにおいて潤滑物質に接して摺動に影響を与える第2の面86(以下、「第2摺動面」と呼ぶが、摺動する面を含むのであれば摺動に影響を与えない部分を含んでもよい。)を太線にて示している。換言すれば、第1摺動面85および第2摺動面86は、潤滑物質を介して互いに対向するとともに相対的に摺動する面となっている。第1摺動面85および第2摺動面86は、第1対象物90aおよび第2対象物90bにおいてそれぞれ連続する1つの面として設けられる必要はなく、複数の面により構成されてもよい。例えば、中心軸に沿ってシャフト91に複数の摺動面が完全に分離して設けられてもよい。
図5は第1摺動面85と第2摺動面86との間における摩擦を解析する摺動解析システム1の全体動作の流れを示す図である。摺動解析システム1にて実行される摺動解析方法では、まず、測定装置11のステージ111上に第1対象物90aが載置され、図4のモデル化における第1摺動面85の各ブロックに対応する部位の微小凹凸が測定される。なお、測定困難な箇所は、第1対象物90aを分解または切断して測定が行われる。次に、ステージ111上に第2対象物90bが載置され、図4のモデル化における第2摺動面86の各ブロックに対応する部位の微小凹凸が測定される(ステップS11)。潤滑物質を介して互いに対向するとともに相対的に摺動することが予定される(仮想的に予定されている場合を含む。)第1対象物90a上の第1摺動面85と第2対象物90b上の第2摺動面86に対して測定が行われるのであれば、必ずしも実際に摺動するものを測定する必要はなく、例えば、試験用に擬似的に製作されたものであってもよい。
測定結果は、コンピュータ12に入力され、第1摺動面85の各ブロックに対応する部位の表面性状統計量と第2摺動面86の各ブロックに対応する部位の表面性状統計量とが求められる(ステップS12)。なお、この処理は後述の第1摺動面85および第2摺動面86を分割した各面要素の表面性状統計量を求めることと同等である。表面性状統計量としては、第1摺動面85の表面の微小凹凸における突起先端の半径(平均曲率半径)Rs1、突起面密度Ns1、突起平均面の高さs、突起高さ標準偏差σs1、表面粗さ標準偏差σ、並びに、第2摺動面85の表面の微小凹凸の突起先端の半径Rs2、突起面密度Ns2、突起平均面の高さs、突起高さ標準偏差σs2、表面粗さ標準偏差σが求められる。なお、突起平均面の高さs、sはRs1、Rs2、Ns1、Ns2、σs1、σs2からおよそ求めることができることから、これらの値は省略されてもよい。
一方、コンピュータ12では既述のように軸受機構90の形状データが入力され(ステップS13)、図4に示す演算用のモデル上において第1摺動面85が微細な複数の第1面要素に分割(メッシング)され、第2摺動面86も微細な複数の第2面要素に同様に分割され、複数の第1面要素のそれぞれは複数の第2面要素の対応するものと同じ大きさで対向する(ステップS14)。
なお、第2摺動面86の第2面要素への分割は実際には明示的には行われない。第2摺動面86の分割は第1摺動面85を分割して得られた第1面要素に対向する領域を決定しているだけであり、第2対象物90bが回転しても第2面要素の周方向の位置は変更されない。実際の演算では、例えば、第2摺動面86のラジアル軸受面が円筒面とみなされ、この円筒面と第1面要素との間で摺動解析を行うことにより、第2摺動面86が第2面要素に分割された場合と同等の処理が行われる。ただし、理解を容易とするために、以下、第2摺動面86が第2面要素に分割されるものとして説明する。
コンピュータ12にはさらに、第1対象物90aの各ブロックの材料物性値および第2対象物90bの各ブロックの材料物性値や潤滑物質であるオイルの粘度および密度、さらに必要ならば圧力粘度係数が入力され、重力の方向、回転速度、温度といった動作環境も入力される(ステップS15)。材料物性値には、ヤング率、硬度、ポアソン比等が含まれ、各ブロックの材料物性値の設定は、実質的に各第1面要素および各第2面要素の材料物性値の設定に相当する。動作環境は時間と共に変化するものであってもよく、例えば、時間と共に変化する外部からのトルクや電磁気力、回転速度の昇降率等が定められてもよい。これにより、後述の摺動解析において回転および停止を繰り返す場合の摺動を解析することも可能となる。
続いて、第1摺動面85の各第1面要素の微小凹凸を示す表面性状統計量と、対応する(すなわち、対向する)第2面要素の微小凹凸を示す表面性状統計量とから、これらの第1面要素と第2面要素との摺動の関係(第1面要素に対して第2面要素が静止かつ接触している場合の接触の関係を含む。)を維持しつつ第2面要素を平滑面に置換した場合の第1面要素の表面性状統計量が求められる(ステップS16)。以下、置換後の第1面要素を「置換粗面」と呼び、置換後の第2面要素を「置換平滑面」と呼ぶ。置換平滑面の集合体では第2摺動面86のテーパ等の凹凸は維持されており、微視的な凹凸が平滑な状態へと変換された面となっている。置換粗面の表面性状統計量としては、突起先端の半径(平均曲率半径)R、突起面密度N、突起高さ標準偏差σ、表面粗さ標準偏差σ等が求められる。表面性状統計量はこれらを含むものには限定されず、これらに相当するもの、例えば、実際の演算に用いられる、(Nσ)や(σ/R)を含むものであってもよい。また、表面粗さとしては表面粗さ標準偏差以外のものが利用されてもよい。
突起先端の半径Rは、数1または数2により求められ、突起面密度Nは数3により求められ、突起高さ標準偏差σは、数4により求められ、表面粗さ標準偏差σは数5により求められる。
Figure 2007334645
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Figure 2007334645
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また、解析にて採用する後述の式の種類に応じて、第1摺動面85および第2摺動面86を測定して得られた粗さ高さδ、δから数6により置換粗面の粗さ高さδを求め、数7および数8により、突起の方向性パラメータであるPeklenik数γおよびBhushan数γが求められてもよい。
Figure 2007334645
Figure 2007334645
Figure 2007334645
ここで、数7のλ0.5x、λ0.5yは、正規化した自己相関係数R(λ)が0.5以下に低下する場合のx,y方向に関する相関距離であり、自己相関関係数R(λ)を求めるための自己相関関数R(λ)は数9にて示され(ただし、θはxまたはyである。)、自己相関係数R(λ)は数10により求められる。
Figure 2007334645
Figure 2007334645
コンピュータ12では、さらに、各第1面要素を構成する材料の物性値と、対向する第2面要素を構成する材料の物性値とから、第1面要素と第2面要素との間の摺動の関係(第1面要素に対して第2面要素が静止かつ接触している場合の接触の関係を含む。)を維持しつつ第2面要素を置換平滑面に置換した場合の第1面要素である置換粗面の材料物性値が求められる(ステップS17)。材料物性値には、ヤング率、硬度およびポアソン比が含まれ、置換粗面のヤング率Eは、第1面要素のヤング率Eおよびポアソン比ν、並びに、第2面要素のヤング率Eおよびポアソン比νから数11により求められる。
Figure 2007334645
置換粗面の硬度には第1面要素および第2面要素の硬度のうち小さい方の値が採用され、置換平滑面の硬度は無限大とみなされる。置換粗面のポアソン比には第1面要素および第2面要素のポアソン比のうち大きい方の値が採用され、置換平滑面のポアソン比は0とみなされる。
以上の準備が完了すると、次に、演算による摩擦力、摩耗量(摩耗深さや摩耗体積)、第2対象物90bの動き等の摺動解析が行われ(ステップS2)、解析結果が出力されて摺動の良否が判断される(ステップS18)。解析結果の例については後述するが、例えば、初期時刻からの第1対象物90aと第2対象物90bとの間の相対運動の経過が表示されたり、軸受機構90の各部位での摩耗体積が表示されたり、各第1面要素と対向する第2面要素との間における動摩擦係数の表示(すなわち、動摩擦係数の分布の表示)が行われる。
図6および図7は摺動解析の流れを示す図である。摺動解析では、まず、初期時刻における第2対象物90bの運動条件がコンピュータ12に入力される(ステップS201)。この運動条件はステップS15でまとめて入力されてもよい。運動条件としては、第2対象物90bのX,Y,Z軸方向の位置およびこれらの軸を中心とする向き(基準姿勢からの回転角度)、並びに、X,Y,Z軸方向への速度およびこれらの軸を中心とする回転速度が含まれ、さらに、各置換粗面と対向する置換平滑面との間の接触圧および(流体)動圧(または第2対象物90bに作用する圧力)も設定される。初期時刻において第2対象物90bが回転している場合は、摺動により第2対象物90bに作用するモーメントも初期の運動条件に含められてよい。なお、第1対象物90aは固定されているため第1対象物90aの運動条件は設定されないが、第1対象物90aも運動する場合は、第1対象物90aの運動条件も入力される。
初期時刻において(第1対象物90aおよび)第2対象物90bに外力が作用せずに静止している場合は、摺動により第2対象物90bに作用するモーメントや動圧は設定されない。また、摺動解析システム1では、このような場合に、第2対象物90bの位置や置換粗面に作用する接触圧等の他の運動条件を暫定的なものから正確なものへと別途求める機能が設けられている。以下、摺動解析の主な演算を説明する前に、暫定的な初期時刻の運動条件から初期時刻の正確な運動条件を求める繰り返し演算について、図6中の細い矢印にて示す流れに沿って説明する。この繰り返し演算では、第2対象物90bは運動しないため、運動方程式は釣り合いの式となっている。
まず、各置換粗面の接触圧pを積分して第2対象物90bに作用する接触力fが求められ、あるいは、予め入力されている接触力fを含む初期の釣り合いの条件(運動条件)に従って、第2対象物90bの6自由度の釣り合いの式(運動方程式)が設定される(ステップS202)。この時点での釣り合いの条件は暫定的なものであるため、釣り合いの式には通常、大きな誤差が含まれる。そして、誤差が許容値を超えることが確認された上で、釣り合いの式がBFGS法(Broyden-Fletcher-Goldfarb-Shanno method)にて解かれる(ステップS204,S205)。次に、釣り合いの式の解に含まれる第2対象物90bのX,Y,Z軸方向の位置および回転角度が所定の記憶領域に読み込まれ(ステップS211)、各置換粗面の平均面と対向する置換平滑面との間の距離dが求められる(ステップS212)。
距離dが求められると、ステップS16,S17にて求められた各置換粗面の表面性状統計量および材料物性値、距離d(すなわち、釣り合いの式の解)、潤滑物質の粘度等に基づいて、各置換粗面と対向する置換平滑面との間の接触圧pが求められる(ステップS213の一部)。このとき、置換粗面の微小突起と置換平滑面とが凝着する場合の演算と、微小突起と置換平滑面との間に潤滑物質の吸着膜が維持される場合の演算とが確率的に適用される。これらの演算の詳細については後述する。各置換粗面と対向する置換平面との間の(以下、適宜、「各面要素に作用する」と表現する)接触圧pは積分されることにより、第2対象物90b全体への接触力fがさらに求められる(ステップS215の一部)。
新たな接触力fが求められると、ステップS202に戻って接触力fに基づいて釣り合いの式の第2対象物90bの釣り合い条件の設定が更新され、釣り合いの式に含まれる誤差が許容範囲内(例えば、最大項に対する割合の無次元量で、10−3以下)か確認される。許容範囲外である場合は再度、釣り合いの式が解かれる(ステップS203〜S205)。そして、第2対象物90bの位置および回転角度から各置換粗面の平均面と対向する置換平滑面との間の距離dが求められ、各面要素に作用する接触圧pおよび第2対象物90bに作用する接触力fが順に求められる(ステップS211〜S215)。その後、第2対象物90bの釣り合いの式が再度設定されて誤差が許容範囲内か確認される(ステップS202,S204)。
接触力fの算出を繰り返すことにより、やがて釣り合いの式の誤差が許容値以下となり、これにより、潤滑物質を介して接触する第1対象物90aと第2対象物90bとの位置関係および各面要素に作用する接触圧pが正確に求められ、第1対象物90aの第1摺動面85と第2対象物90bの第2摺動面86との間における接触状態を解析する演算が終了する(ステップS204)。その後、第2対象物90bが運動する図7のステップS221以降の摺動解析へと移行する。
なお、静止時の(すなわち、初期時刻における)第2対象物90bの位置および各面要素に作用する接触圧pを求めるに際して、第1対象物90a(第2対象物90bであってもよい。)が樹脂等の弾性変形しやすい材料にて形成される場合や第2対象物90bに大きな力が加わる場合、ステップS212,S213が、第1対象物90aおよび第2対象物90bの母材の変形量を考慮した演算とされてもよい(一方を剛体とみなして第1対象物90aまたは第2対象物90bの母材の変形量のみが求められてもよい。)。この場合、接触力fを求める繰り返し演算の中に、置換粗面の平均面と対向する平滑面との間の距離d、接触圧p、母材の変形量hを求める繰り返し演算がさらに設けられる。
母材の変形を考慮する場合、まず、母材を半無限大弾性板とみなして接触圧pに基づいて圧縮解析が行われて母材の暫定的な弾性変形量hが求められ、変形量の変化に緩和係数(0〜1.0)を掛けてより収束解に近いであろう弾性変形量hに修正される。そして、弾性変形量hにより微小突起の変形量が修正されて、母材および微小突起の変形に起因する力と接触圧pとの釣り合いの式が設定され、この釣り合いの式に含まれる誤差が許容値以上であれば、ステップS212に戻ってこの釣り合いの式を解いて距離dが求められる。弾性変形量hを求めながらステップS212,S213が繰り返されることにより、やがて釣り合いの式の誤差が許容値未満となり、各置換粗面の平均面と対向する置換平滑面との間の距離d、接触圧p、および、母材の弾性変形量hの正確な値(正しくは、誤差を含む釣り合いの式の解に対応する値)が求められる。
以上、第2対象物90bが静止している場合の初期時刻における第2対象物90bの正確な位置を求める処理について説明したが、次に、図6および図7の太い矢印にて示す流れに沿って第2対象物90bが運動する場合の摺動解析の流れについて説明する。
まず、時刻tが微小時間だけ経過した時刻へと更新され(図7:ステップS221)、終了時刻T未満であることが確認された上で(ステップS222)、ルンゲクッタ法(Runge-Kutta method)により(第2対象物90bが運動状態の)運動方程式が解かれる(ステップS223)。ただし、図6および図7では正確に示されていないが、ここではステップS223よりも前に、3次元の位置および回転角度並びに速度および回転速度に対して成り立つ初期の更新後の6自由度の運動方程式が予め設定されている。
運動方程式の解に含まれる第2対象物90bのX,Y,Z軸方向の位置および回転角度は所定の記憶領域に読み込まれ(図6:ステップS211)、各置換粗面の平均面から対向する置換平滑面に至る距離dが求められる(ステップS212)。
距離dが求められると、ステップS16,S17にて求められた各置換粗面の表面性状統計量および材料物性値、距離d等に基づいて、各置換粗面と対向する置換平滑面との間の接触圧pおよび接触により生じる接触せん断応力τ求められる(ステップS213)。このとき、静止時の演算と同様に、置換粗面の微小突起と置換平滑面とが凝着する場合の演算と、微小突起と置換平滑面との間に潤滑物質の吸着膜が維持される場合の演算とが確率的に適用される。これらの演算の詳細については後述する。
そして、接触せん断応力τを接触圧pで除算することにより、各第1面要素と対向する第2面要素との間における動摩擦係数μが求められる(ステップS214)。なお、最初の時刻の更新では極めて微小な時間だけ更新が行われる。これにより、置換粗面と置換平滑面との間の相対速度が実質的に0とされ、最大静止摩擦係数が求められることとなる。また、接触圧pや接触せん断応力τを求める場合と同様のパラメータを用いて各置換粗面と対向する置換平滑面との間の接触面積(単位面積当たりの接触面積)aが求められ、接触面積aおよび滑り距離に比例するものとして摩耗高さhが求められ、摩耗高さhを摩耗領域全体で積分することにより摩耗体積Vも求められる。例えば、ラジアル軸受における摩耗高さhは数12で求められ、数12中のaにバーを付したものは無次元化した接触面積であり、Rはラジアル軸受の半径、Φは周方向の角度であり、kは実験的に求められる係数である。さらに、摩耗エネルギーに相当する値であるμpV(p:面圧、V:相対速度)も求められる(ステップS216)。接触面積aを求める演算の詳細については後述する。
Figure 2007334645
各面要素に作用する接触圧pおよび接触せん断応力τは積分されることにより、第2対象物90b全体への接触力fおよび接触モーメントmが求められる(ステップS215)。
一方、ステップS12にて求められた第1摺動面85の各第1面要素および第2摺動面86の対向する第2面要素の突起平均面の高さs,sの合計が、置換粗面の突起平均面粗さsとして求められ、潤滑解析に用いられる隙間h(以下、「潤滑隙間」と呼ぶ。)が(d+s)として求められる(ステップS225)。そして、運動方程式を解いて求められた第2対象物90bのX,Y,Z軸方向の速度およびこれらの軸を中心とする回転速度が所定の記憶領域に読み込まれ(ステップS224)、潤滑隙間hを用いて、潤滑物質による動圧により各面要素に垂直に作用する(各置換粗面と対向する置換平滑面との間に生じる)圧力pおよび動圧によるせん断応力τが求められる(ステップS226)。以下の説明では、pを単に「動圧」と呼び、τを「動圧せん断応力」と呼ぶ。
このとき、十分に存在する潤滑物質の潤滑により力が作用する場合の演算と、微小突起が近接することにより潤滑物質から置換粗面および置換平滑面が力を受ける演算とが確率的に適用されるが、後述するように、微小突起が近接する場合の影響は図3の軸受機構90の場合は小さく、かつ、演算量が多いため、実際の演算では微小突起が近接する影響は考慮されていない。微小突起の近接を考慮しない潤滑により作用する一般的な力を求める演算の詳細については後述する。
動圧pおよび動圧せん断応力τが求められると、これらの力が全ての置換平滑面で積分されることにより、第2対象物90b全体に作用する動圧力fおよび動圧モーメントmが求められる(ステップS227)。
次に、ステップS202に戻って、ステップS215で求められた接触力f、接触モーメントm、ステップS227で求められた動圧力f、動圧モーメントmを用いて(すなわち、各面要素に対して求められた圧力およびせん断応力に基づいて)運動方程式が前回の時刻から微小時間だけ経過した時刻のものへと更新される(ステップS202)。このとき、外力等の他の運動条件の設定も微小時間だけ経過したものへと更新される。そして、時刻tに微小時間が加えられて(ステップS203,S221)終了時刻に至っていないことが確認された上で(ステップS222)、運動方程式が解かれる(ステップS223)。これにより、微小時間経過後の第2対象物90bの位置および回転角度(すなわち、6自由度の位置)並びに速度および回転速度(すなわち、6自由度の速度)が求められ、再び、ステップS211〜S213により各面要素に作用する接触圧pおよび接触せん断応力τが求められ、ステップS214,S216により動摩擦係数μ、摩耗高さh、摩耗体積VおよびμpV値が求められ、ステップS215により接触力fおよび接触モーメントmが求められる。また、ステップS225〜S227により動圧p、動圧せん断応力τ、動圧力fおよび動圧モーメントmが求められる。
時刻tを微小時間経過したものへと更新しつつ上記演算を繰り返すことにより、第2対象物90bの運動状態の時間の経過による変化、各面要素に作用する圧力やせん断応力の大きさおよびその変化、各置換粗面での摩耗高さhやμpV値の時間変化、摩耗体積Vの変化が取得される。
やがて時刻tが終了時刻Tを超えると、繰り返し演算が停止して摺動解析が終了する(ステップS222)。
次に、ステップS213,S226における、第2対象物90bに作用する力およびモーメント(摩擦力に対応する。)を求める具体的演算について説明する。既述のように、ステップS213,S226では置換粗面における微小突起の高さと対向する置換平滑面との間の距離に応じて異なる演算が採用される。もちろん、置換粗面には無数の微小突起が存在するため、これらの演算は確率的に適用される。
図8は、第1対象物90aの第1摺動面85と第2対象物90bの第2摺動面86との間の間隙の様子を極めて拡大して示す図である。図8中に符号871を付す円にて示す領域は、第1摺動面85と第2摺動面86とが強く接触して突起が塑性変形しつつ互いに凝着している様子を示している。符号872を付す円にて示す領域は、第1摺動面85および第2摺動面86の表面に潤滑物質の分子が吸着した膜が維持されているが、実質的に両者が接触して力が作用している状態を示している。符号873を付す円にて示す領域は、第1摺動面85と第2摺動面86との間に十分な潤滑物質が存在する様子を示している。
図9は、第1摺動面85の第1面要素および第2摺動面86の第2面要素を置換粗面および置換平滑面に置き換えた場合の図8の(一部の)領域に相当する関係を説明するための図である。図9において、横軸は置換粗面の平均面を擬似的に示し、縦軸は置換粗面の微小突起の高さδを示す。縦軸の左側に示すグラフ850は、微小突起の高さの分布を示す。また、破線861は置換平滑面の高さ(位置)を示し、符号851〜854は表面に潤滑物質の吸着膜858を有する微小突起を示している。
左側の微小突起851は、置換平滑面に対して十分に突出し、微小突起851が置換平滑面と強く当接して凝着する状態を示しており、図8中の符号871にて示す状態に相当する。左から3番目の微小突起853は、潤滑物質の吸着膜858と置換平滑面の高さとが一致した状態を示しており、微小突起853と置換平滑面との間に力が作用しない限界の距離を示している。図8においてtは吸着膜858の厚さであり、実際の演算は(0.1nm≦t≦15nm)を満たす値に設定される。微小突起853の高さが増大した場合、吸着膜858が薄くなるとともに微小突起853も弾性変形する。左から2番目の微小突起852は、吸着膜858が維持される限界の高さに位置するものを示しており、微小突起852の先端は置換平滑面を超えているが実際には微小突起852が弾性変形して突起先端と置換平滑面との高さが一致した状態となる。
すなわち、図9において微小突起852の先端と平滑面との間の距離ωは、吸着膜858が維持できる最大許容変形量を示しており、演算ではωは(0≦ω≦10t)を満たす値に設定される。置換粗面の平均面と置換平滑面との間の距離をdとして、突起高さδが、(d−t)よりも大きく、(d+ω)よりも小さい場合に吸着膜858が維持される当接状態となり、(d+ω)を超える場合に微小突起が置換平滑面に凝着することとなる。以下の説明では、突起の高さδの分布において、(d+ω<δ<∞)の範囲を「凝着ゾーン」と呼び、潤滑物質の吸着膜を介して置換平面から圧力が作用する(d−t<δ<d+ω)の範囲を「境界潤滑ゾーン」と呼ぶ。
一方、右側の微小突起854のように、微小突起853の場合よりも置換平滑面から離れているが、依然近接している場合には、微小突起854から受ける圧力により潤滑物質の粘度が変化し、この変化に起因して微小突起が弾性変形する現象が生じる(micro-EHL(elastohydrodynamic lubrication)と呼ばれる。)。そこで、突起の高さδの分布における(δ<d−t)の範囲を「弾性流体潤滑ゾーン」と呼ぶ。また、潤滑物質が介在し、潤滑物質から圧力およびせん断応力が作用する一般的な範囲として、(δ<d)の範囲を「潤滑ゾーン」と呼ぶ。
プログラムに従ったコンピュータ12による摺動解析では、ステップS213において、運動方程式の解(第1面要素と第2面要素との位置関係でもある。)、置換粗面の表面性状統計量および材料物性値、並びに、潤滑物質の粘度に基づいて、凝着ゾーンおよび境界潤滑ゾーンのそれぞれに従った理論の演算により各ゾーンにおける接触圧pおよび接触せん断応力τが求められ、さらに、ステップS216において接触面積aが求められて摩耗高さh、摩耗体積V等の摩耗量が求められる。また、ステップS226では、運動方程式の解(第1面要素と第2面要素との位置関係でもある。)、置換粗面の表面性状統計量および材料物性値、並びに、潤滑物質の粘度に基づいて、潤滑ゾーンに従った理論の演算により潤滑物質から作用する動圧pおよび動圧せん断応力τが求められる。なお、プログラムでは、圧力により変化する潤滑物質の粘度および突起の弾性変形を考慮する弾性流体潤滑ゾーンに従った理論に基づく演算による動圧pおよび動圧せん断応力τを求める処理が挿入可能とされているが、実際の演算では計算量の削減を優先して弾性流体潤滑ゾーンにおけるpおよびτは0とされる。弾性流体潤滑ゾーンにて演算を行う場合は、例えば、圧力粘度係数を利用する点接触EHL圧力式および摩擦力方程式の採用が考えられる。
凝着ゾーンにおける接触圧pの算出は、数13に従って行われる。もちろん、数13および以下に説明する他の式は離散化された上で処理される。数13において、Eは置換粗面のヤング率であり、N、R、σは、ステップS16にて求められた突起面密度、突起先端の半径および突起高さ標準偏差である。ωにバーが付されたものは突起の弾性変形が許容される最大変形量であるωをσで除したものであり、無次元化されたωである。ωは数14にて示され、数14中のKは硬度係数、Hは硬度であり、Kは数15または数16にて求められる。数16中のζは数17の解であり、Yは第1対象物90aおよび第2対象物90bの母材の降伏強度のうち小さい方である。νは置換粗面のポアソン比である。数13中のW(d)は、数18にて示され、ωは(δ−d)、すなわち、突起の変形量であり、φ(δ)は突起高さδの分布関数である。φ(δ)は正規分布に近似されてもよく、測定により得られた実際の分布がそのまま用いられてもよい。
Figure 2007334645
Figure 2007334645
Figure 2007334645
Figure 2007334645
Figure 2007334645
Figure 2007334645
もちろん、採用する理論を変更することにより、数13および数18は様々に修正されたり変更されてよく、例えば、数18に代えて数19が採用されてもよい。
Figure 2007334645
凝着ゾーンにおける接触せん断応力τの算出は、数20に従って行われ、T(d)は、数21により求められる。
Figure 2007334645
Figure 2007334645
接触せん断応力τを求める他の式としては、数22および数23を例示することができる。ωは破壊場所が変化するときの変位量であり、(0<ω<ω)となる。
Figure 2007334645
Figure 2007334645
数23においてμ,μは数24および数25により求められ、数24、数25のζは数17の解である。ただし、数24、数25中の((πY/2E)(Rs/σs)(1/ωバー))は((Y/KH(ω/ω))に対応する。
Figure 2007334645
Figure 2007334645
凝着ゾーンにおける摩耗高さhを求めるために利用される接触面積aの算出は、数26に従って行われ、A(d)は、数27により求められる。
Figure 2007334645
Figure 2007334645
数27に代えて、数28が用いられてもよい。
Figure 2007334645
境界潤滑ゾーンにおける接触圧pの算出は、数29および数30に従って行われる。既述のように境界潤滑ゾーンでは(d−t<δ<d+ω)の範囲で演算が行われる。
Figure 2007334645
Figure 2007334645
また、境界潤滑ゾーンでは、接触せん断応力τは0とされ、接触面積aも0とされる。もちろん、境界潤滑ゾーンに採用される理論を変更して接触せん断応力τが求められてもよい。
潤滑ゾーンにける動圧pおよび動圧せん断応力τを求めるに際しても様々な理論に基づく式が採用されてよい。数31は、ラジアル軸受部分における動圧pを求めるための方程式である。
Figure 2007334645
ここで、Φ,Zはそれぞれ周方向および軸方向の座標であり、左辺のRはラジアル軸受の半径、hはステップS225で求められる潤滑隙間、ηは潤滑物質の粘度であり、φpΦは数32により求められ、φpZは数33により求められる。数32、数33において、γは置換粗面の方向性パラメータ(Peklenik数)であり(数7参照)、Hは(h/σ)(σは置換粗面の表面粗さ標準偏差であり、数5参照)、γ,Hと係数C,αとの関係は表1に示す通りである。
Figure 2007334645
Figure 2007334645
Figure 2007334645
数31の右辺のΩは回転角速度、tは時刻、hは第1面要素と第2面要素との間のランダム距離、すなわち、ランダムなばらつきを持つ値である。G(h)は数34にて示され、F(h)は数35にて示すF(h)のnを1としたものである。
Figure 2007334645
Figure 2007334645
また、φsΦは数36にて示され、数36中のΦsは数37で示され、γ,Hと係数A,α,α,α,Aとの関係は表2の通りである。γ,γはそれぞれ第1面要素、第2面要素における粗面の方向性パラメータである。
Figure 2007334645
Figure 2007334645
Figure 2007334645
数38は、スラスト軸受部分における動圧pを求めるための方程式である。数38において、Φ,rは円筒座標であり、ρは潤滑物質の密度である。φprには数33のZをrに置き換えたものが適用される。
Figure 2007334645
なお、数38に代えて、数39が採用されてもよい。数39におけるφcrは、慣性(遠心)流れへの粗さの影響を考慮した修正係数であり、粗面流れのシミュレーションにより求められるが、便宜上、数33のZをrに置き換えたものが適用される。
Figure 2007334645
数40はラジアル軸受における動圧せん断応力τを求める式である。φは数41で示され、G(1/h)はランダム分布である(1/h)の期待値を表し、Gは数34と同様である。φfpは数42で示され、γ,Hと係数D,sとの関係は表3に示す通りである。
Figure 2007334645
Figure 2007334645
Figure 2007334645
Figure 2007334645
φfsは数43で示され、数43のΦfsは数44で示され、γと係数A,α,α,αとの関係は表4に示す通りである。
Figure 2007334645
Figure 2007334645
Figure 2007334645
スラスト軸受における動圧せん断応力τは、数45にて求められる。
Figure 2007334645
なお、潤滑ゾーンでは、当然に接触面積aは0とされる。
以上のように摺動解析システム1では、ステップS213,ステップS226において、突起の高さの分布において凝着ゾーン、境界潤滑ゾーン、潤滑ゾーン(さらには、弾性流体潤滑ゾーン)が設定されており、運動方程式の解(または釣り合いの式の解)、置換粗面の表面性状統計量、置換粗面の材料物性値、および、潤滑物質の粘度に基づいて、各第1面要素と対向する第2面要素との間に作用する圧力(p,p)および/またはせん断応力(τ,τ)が各ゾーンにおいて求められる。すなわち、各ゾーンが摺動(または接触)に与える影響が確率的に適用される。また、第1摺動面85と第2摺動面86との間における摩擦力が第2対象物90bに作用するモーメントとして求められ、ステップS216では接触面積aに基づいて摩耗高さhや摩耗体積V等の摩耗量に関する値が求められる。そして、各面要素に作用する圧力およびせん断応力に基づいて第2対象物90bの運動方程式の運動条件の設定を前回の時刻から微小時間だけ経過した時刻のものへと更新してステップS213,S226が繰り返されることにより、潤滑物質が介在する状態での摺動を精度よく解析することが実現される。
図10は、第2対象物90bがサインカーブに沿って静止状態から漸次回転速度を上げていくという運動条件(以下、「起動時」と呼ぶ。)での解析終了前の時刻におけるラジアル軸受(図3の2つのラジアル動圧溝群のうちの一方)の動摩擦係数μ(ステップS214参照)の分布、すなわち、各第1面要素と対向する第2面要素との間における動摩擦係数の表示例を示す図である。図10において、およそ横方向にのびる筋は、動圧溝に対応する。図10より、接触領域の中央よりも境界の方が動摩擦係数が大きくなることが判る。図11は、起動時のラジアル軸受およびスラスト軸受における摩耗体積(ステップS216参照)を示す図であり、白抜きのグラフは塗りつぶされたグラフよりも表面粗さを改善した場合を示す。今回の解析ではシャフトが横置きにされるため、スラスト軸受では摩耗は生じていない。
図12は、外部からある振幅の2Hz揺動を与えた場合の起動時の第2対象物90bの軌跡、すなわち、初期時刻からの第1対象物90aと第2対象物90bとの間の相対運動の経過の表示例を示す図であり、ε,εはシャフトに垂直なx方向およびy方向におけるシャフトの偏心率、すなわち、軸受最小隙間に対する偏心量の比率を示す。符号701,702,703はそれぞれシャフトの固定端側、自由端側、第2対象物90bの重心の軌跡を示す。なお、軌跡と外枠の円とが接する状態が、(摩耗を考慮しない場合における)シャフトとスリーブとが接触している状態に対応する。図13は、外部から5Hzの揺動を与えた場合の起動時の第2対象物90bの軌跡を示し、符号711,712,713はそれぞれシャフトの固定端側、自由端側、第2対象物90bの重心の軌跡を示す。これらの軌跡は解析において第2対象物90bの運動方程式を解くことにより求められる(ステップS223参照)。
また、摺動解析システム1では摺動の条件の一部だけを容易に変更できるため、比較シミュレーションを極めて容易に行うことができる。図14は表面粗さ標準偏差σを変更した場合の起動時の第2対象物90bの軌跡を比較したものであり、符号721,722は表面粗さ標準偏差σが62nmでのシャフトの固定端側および自由端側の軌跡を示しており、符号731,732は表面粗さ標準偏差σが124nmでのシャフトの固定端側および自由端側の軌跡を示している。図15は、表面粗さ(平均粗さ)Raを変更した場合の摩耗体積の比較を示す。
図16は、軸受機構の構造のモデル化を変更した場合の各軸受部の軸損Pの比較を例示する図である。図16中のタイプ1は図3に対応し、タイプ2はタイプ1のスリーブ92のスラストプレート94側の面に流体動圧溝を追加したものであり、タイプ3はラジアル軸受およびスラスト軸受の溝を第2対象物90b側に変更したものであり、タイプ4はタイプ3と同構造で細部をさらに最適化したものである。なお、「上側スラスト」はシャフト91の固定端側のスラスト軸受に対応し、「下側スラスト」は自由端側のスラスト軸受に対応する。軸損はμpV値(ステップS216参照)に基づいて求められる。その他、動圧溝の形状を変更した場合の摺動も摺動解析システム1により容易に解析することができる。
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、様々な変形が可能である。
既述のように、初期時刻において第1対象物90aおよび第2対象物90bが相対的に運動しており、図6および図7の太線の流れに従って演算が繰り返され、解析終了時刻において、第1対象物90aおよび第2対象物90bが静止する停止時の摺動解析が行われてもよい。この場合、運動条件として回転速度でなく、第2対象物90bに作用するトルク(モーメント)を設定することもでき、停止時の運動の変化をより適切にシミュレートすることができる。また、トルクに代えて回転エネルギーが設定されてもよい。また、起動時および停止時の摺動解析を繋げることにより、定格回転と停止とを繰り返す場合の摺動解析も可能である。
突起高さの分布の複数のゾーンへの分け方は、凝着ゾーンと置換粗面と置換平面との間に潤滑物質が介在する潤滑物質介在ゾーン(上記実施の形態における、境界潤滑ゾーン、潤滑ゾーン、弾性流体潤滑ゾーンに対応する。)とに少なくとも分けて潤滑物質を考慮した解析が行われるのであれば、他の分け方が採用されてもよい。例えば、境界潤滑ゾーンが省略されてもよく、潤滑ゾーンと境界潤滑ゾーンとをまとめた理論が潤滑物質介在ゾーンに設定されてもよい。潤滑物質もオイルに限定されるものではなく、気体でもよい。
また、摺動時の解析結果として得られる情報は、摩擦力または摩耗量(摩耗高さもしくは摩耗体積)のみあってもよい。
上記実施の形態では、第1対象物90aが静止しているが、既述のように第1対象物90aおよび第2対象物90bが運動してもよい。例えば、第1対象物90aがOリング等の弾性体で支持されている場合は、外部からの振動や第2対象物90bからの力により第1対象物90aも運動することとなる。この場合は、ステップS202で第1対象物90aおよび第2対象物90bの運動方程式が設定される。なお、シャフト固定型の軸受機構のように、第1対象物90aが運動し、第2対象物90bが静止している場合の摺動解析も可能である。
上記実施の形態では、解析の対象となる対象物の数が2つであるが、対象物は3以上であってもよい。この場合において、3つの対象物が全て運動する場合は各対象物に関する運動方程式(静止時の接触解析の場合は釣り合いの方程式)が設定されることとなる。この場合においても、任意の2つの対象物に注目した場合、運動方程式を設定する際に残りの1つの対象物からの力を受けるという点を除いて、図6および図7の流れと全く同様の処理が行われることとなる。
上記説明では省略したが、本摺動解析では、軸損から潤滑物質、第1対象物90aおよび第2対象物90bのおよその温度上昇を求めることもできる。これにより、温度上昇による潤滑物質の粘度の変化を反映することも実現できる。
また、上記摺動解析は、経時変化を伴わない演算にも利用することができる。すなわち、凝着ゾーンと潤滑物質介在ゾーンとに分けて行う第1面要素と対向する第2面要素との間の演算を一般的な摺動に適用することにより(第1面要素および第2面要素は大きな面であってもよい。)、第1面要素と第2面要素との間における圧力および/またはせん断応力を精度よく求めることが実現される。具体的には、ステップS16と同様に第1面要素および第2面要素を置換粗面および置換平滑面に変換して置換粗面の表面性状統計量を求め、ステップS17と同様に置換粗面の材料物性値を求め、第1面要素と第2面要素との位置関係(距離)および相対速度、置換粗面の表面性状統計量および材料物性値、並びに、潤滑物質の粘度に基づいて、上述の式を利用して第1面要素と第2面要素との間に作用する圧力および/またはせん断応力を凝着ゾーンおよび潤滑物質介在ゾーンのそれぞれにおいて求めることができる。
ここで、既述の摺動解析における最初の微小時間を極めて微小にするのと同様に、相対速度を実質的に0とみなせる程度に極めて微小として演算を行うことにより、第1面要素と第2面要素との間の摺動開始直前の圧力および/またはせん断応力(さらには、最大静止摩擦力または最大静止摩擦係数)を求めることも可能となる。
測定対象となる第1対象物90aや第2対象物90bに意図的に表面性状を変更する加工を施すことにより、摺動の実験結果と解析結果とを比較して解析精度を向上する作業が行われてもよい。このような加工としては、例えば、フェムト秒レーザにより微細溝を対象物に形成する手法が採用可能である。
摺動解析の対象は、ラジアル軸受やスラスト軸受には限定されず、例えば、摺動箇所を有するテーパ間隙であってもよい。さらには、軸受機構以外に、様々な産業設備に利用されるシリンダやスライダ等の潤滑摺動解析にも利用することができる。
摺動解析システムを示す図である。 コンピュータを示すブロック図である。 軸受機構の縦断面図である。 モデル化された軸受機構を示す図である。 摺動解析システムの動作の流れを示す図である。 摺動解析の流れを示す図である。 摺動解析の流れを示す図である。 第1摺動面と第2摺動面との間の間隙を示す図である。 置換粗面と置換平滑面との関係を示す図である。 動摩擦係数の分布を示す図である。 摩耗体積を示す図である。 第2対象物の軌跡を示す図である。 第2対象物の軌跡を示す図である。 第2対象物の軌跡を示す図である。 摩耗体積を示す図である。 軸損を示す図である。
符号の説明
1 摺動解析システム
11 測定装置
12 コンピュータ
85 第1摺動面
86 第2摺動面
90 軸受機構
90a 第1対象物
90b 第2対象物
98 潤滑物質
241 プログラム
S11,S12,S14,S16〜S18 ステップ
S201,S202,S213,S214,S216,S222〜S224,S226 ステップ

Claims (16)

  1. 潤滑物質を介して互いに対向するとともに相対的に摺動する第1の面と第2の面との間における摩擦を解析する摺動解析方法であって、
    a)前記第1の面および前記第2の面を互いに対向する複数の第1面要素および複数の第2面要素に分割する工程と、
    b)各第1面要素の微小凹凸を示す表面性状統計量と、対向する第2面要素の微小凹凸を示す表面性状統計量とから、前記各第1面要素と前記対向する第2面要素との摺動の関係を維持しつつ前記対向する第2面要素を置換平滑面に置換した場合の前記各第1面要素の置換粗面の表面性状統計量であって、突起先端の半径R、突起面密度N、突起高さ標準偏差σおよび表面粗さ、または、これらに相当するものを含むものを求める工程と、
    c)前記各第1面要素を構成する材料の物性値と前記対向する第2面要素を構成する材料の物性値とから、前記各第1面要素と前記対向する第2面要素との間の摺動の関係を維持しつつ前記対向する第2面要素を前記置換平滑面に置換した場合の前記置換粗面の材料物性値であって、ヤング率、硬度およびポアソン比を含むものを求める工程と、
    d)前記第1の面を有する第1対象物および/または前記第2の面を有する第2対象物の初期時刻における運動条件を設定し、前記第1対象物および/または前記第2対象物の運動方程式を設定する工程と、
    e)前記運動方程式を解く工程と、
    f)前記各第1面要素の前記置換粗面の突起の高さの分布において、前記対向する第2面要素の前記置換平滑面に突起が凝着する凝着ゾーンと、前記置換粗面と前記置換平滑面との間に前記潤滑物質が介在する潤滑物質介在ゾーンとが設定されており、前記運動方程式の解、前記置換粗面の前記表面性状統計量、前記置換粗面の前記材料物性値、および、前記潤滑物質の粘度に基づいて、前記各第1面要素と前記対向する第2面要素との間に作用する圧力および/またはせん断応力を前記凝着ゾーンおよび前記潤滑物質介在ゾーンのそれぞれにおいて求め、さらに、前記第1の面と前記第2の面との間における摩擦力および摩耗量の少なくともいずれかを求める工程と、
    g)前記圧力および前記せん断応力に基づいて前記運動方程式の前記第1対象物および/または前記第2対象物の運動条件の設定を前回の時刻から微小時間だけ経過した時刻のものへと更新して前記e)工程へと戻る工程と、
    を備えることを特徴とする摺動解析方法。
  2. 請求項1に記載の摺動解析方法であって、
    前記潤滑物質介在ゾーンが、前記潤滑物質からの圧力およびせん断応力が作用する潤滑ゾーンと、前記潤滑物質の吸着膜を介して前記置換平滑面から圧力が作用する境界潤滑ゾーンとを含み、
    前記f)工程において、前記各第1面要素と前記対向する第2面要素との間に作用する圧力および/またはせん断応力が、前記凝着ゾーン、前記潤滑ゾーンおよび前記境界潤滑ゾーンのそれぞれにおいて求められることを特徴とする摺動解析方法。
  3. 請求項2に記載の摺動解析方法であって、
    前記置換粗面の平均面から前記置換平滑面に至る距離をdとし、前記置換粗面における前記潤滑物質の吸着膜の厚さをtとし、吸着膜が維持される最大許容変形量をωとして、前記突起の高さδの前記分布において、(d+ω<δ<∞)の範囲が前記凝着ゾーンとして設定され、(δ<d)の範囲が前記潤滑ゾーンとして設定され、(d−t<δ<d+ω)の範囲が前記境界潤滑ゾーンとして設定されることを特徴とする摺動解析方法。
  4. 請求項3に記載の摺動解析方法であって、
    0.1nm≦t≦15nm、および、0≦ω≦10t、が満たされることを特徴とする摺動解析方法。
  5. 請求項2ないし4のいずれかに記載の摺動解析方法であって、
    前記潤滑物質介在ゾーンが、突起から受ける圧力により変化する前記潤滑物質の粘度および突起の弾性変形を考慮した弾性流体潤滑ゾーンをさらに含み、
    前記f)工程において、前記各第1面要素と前記対向する第2面要素との間に作用する圧力および/またはせん断応力が、前記凝着ゾーン、前記潤滑ゾーン、前記境界潤滑ゾーンおよび前記弾性流体潤滑ゾーンのそれぞれにおいて求められることを特徴とする摺動解析方法。
  6. 請求項1ないし5のいずれかに記載の摺動解析方法であって、
    前記初期時刻において、前記第1対象物および前記第2対象物が静止していることを特徴とする摺動解析方法。
  7. 請求項6に記載の摺動解析方法であって、
    前記d)工程において、前記初期時刻における前記第1対象物および/または前記第2対象物の母材の変形量が求められることを特徴とする摺動解析方法。
  8. 請求項1ないし7のいずれかに記載の摺動解析方法であって、
    解析終了時刻より前の時刻において、前記第1対象物および前記第2対象物が相対的に運動しており、前記解析終了時刻において、前記第1対象物および前記第2対象物が静止していることを特徴とする摺動解析方法。
  9. 請求項1ないし8のいずれかに記載の摺動解析方法であって、
    前記第1対象物および前記第2対象物により軸受機構が構成され、前記第1の面および前記第2の面が前記軸受機構内の摺動面を含むことを特徴とする摺動解析方法。
  10. 請求項1ないし9のいずれかに記載の摺動解析方法であって、
    前記a)工程の前に、前記第1の面の微小凹凸を測定して前記各第1面要素の前記表面性状統計量を求め、前記第2の面の微小凹凸を測定して前記対向する第2面要素の前記表面性状統計量を求める工程をさらに備えることを特徴とする摺動解析方法。
  11. 請求項1ないし10のいずれかに記載の摺動解析方法であって、
    前記f)工程において、前記各第1面要素と前記対向する第2面要素との間における動摩擦係数が求められ、
    前記摺動解析方法が、前記動摩擦係数を表示する工程をさらに備えることを特徴とする摺動解析方法。
  12. 請求項1ないし11のいずれかに記載の摺動解析方法であって、
    前記初期時刻からの前記第1対象物と前記第2対象物との間の相対運動の経過を表示する工程をさらに備えることを特徴とする摺動解析方法。
  13. 潤滑物質を介して互いに対向するとともに相対的に摺動する第1の面と第2の面との間における摩擦をコンピュータにより解析するプログラムであって、前記プログラムを前記コンピュータにて実行することにより、前記コンピュータが、
    a)前記第1の面および前記第2の面を互いに対向する複数の第1面要素および複数の第2面要素に分割する工程と、
    b)各第1面要素の微小凹凸を示す表面性状統計量と、対向する第2面要素の微小凹凸を示す表面性状統計量とから、前記各第1面要素と前記対向する第2面要素との摺動の関係を維持しつつ前記対向する第2面要素を置換平滑面に置換した場合の前記各第1面要素の置換粗面の表面性状統計量であって、突起先端の半径R、突起面密度N、突起高さ標準偏差σおよび表面粗さ、または、これらの相当するものを含むものを求める工程と、
    c)前記各第1面要素を構成する材料の物性値と前記対向する第2面要素を構成する材料の物性値とから、前記各第1面要素と前記対向する第2面要素との間の摺動の関係を維持しつつ前記対向する第2面要素を前記置換平滑面に置換した場合の前記置換粗面の材料物性値であって、ヤング率、硬度およびポアソン比を含むものを求める工程と、
    d)前記第1の面を有する第1対象物および/または前記第2の面を有する第2対象物の初期時刻における運動条件を設定し、前記第1対象物および/または前記第2対象物の運動方程式を設定する工程と、
    e)前記運動方程式を解く工程と、
    f)前記各第1面要素の前記置換粗面の突起の高さの分布において、前記対向する第2面要素の前記置換平滑面に突起が凝着する凝着ゾーンと、前記置換粗面と前記置換平滑面との間に前記潤滑物質が介在する潤滑物質介在ゾーンとが設定されており、前記運動方程式の解、前記置換粗面の前記表面性状統計量、前記置換粗面の前記材料物性値、および、前記潤滑物質の粘度に基づいて、前記各第1面要素と前記対向する第2面要素との間に作用する圧力および/またはせん断応力を前記凝着ゾーンおよび前記潤滑物質介在ゾーンのそれぞれにおいて求め、さらに、前記第1の面と前記第2の面との間における摩擦力および摩耗量の少なくともいずれかを求める工程と、
    g)前記圧力および前記せん断応力に基づいて前記運動方程式の前記第1対象物および/または前記第2対象物の運動条件の設定を前回の時刻から微小時間だけ経過した時刻のものへと更新して前記e)工程へと戻る工程と、
    を実行することを特徴とするプログラム。
  14. 潤滑物質を介して互いに対向するとともに相対的に摺動することが予定される第1対象物上の第1の面と第2対象物上の第2の面との間の摩擦を解析する摺動解析システムであって、
    前記第1の面の微小凹凸および前記第2の面の微小凹凸を測定する測定装置と、
    測定結果に基づいて、前記第1の面と前記第2の面とが摺動した際の摩擦力および摩耗量の少なくともいずれかを求める演算装置と、
    を備え、
    前記演算装置が、
    a)演算用のモデル上において前記第1の面および前記第2の面を互いに対向する複数の第1面要素および複数の第2面要素に分割する工程と、
    b)前記測定結果に基づいて、各第1面要素の微小凹凸を示す表面性状統計量と、対向する第2面要素の微小凹凸を示す表面性状統計量とを求める工程と、
    c)前記各第1面要素の前記表面性状統計量と、前記対向する第2面要素の前記表面性状統計量とから、前記各第1面要素と前記対向する第2面要素との摺動の関係を維持しつつ前記対向する第2面要素を置換平滑面に置換した場合の前記各第1面要素の置換粗面の表面性状統計量であって、突起先端の半径R、突起面密度N、突起高さ標準偏差σおよび表面粗さ、または、これらに相当するものを含むものを求める工程と、
    d)前記各第1面要素を構成する材料の物性値と前記対向する第2面要素を構成する材料の物性値とから、前記各第1面要素と前記対向する第2面要素との間の摺動の関係を維持しつつ前記対向する第2面要素を前記置換平滑面に置換した場合の前記置換粗面の材料物性値であって、ヤング率、硬度およびポアソン比を含むものを求める工程と、
    e)前記第1の面を有する第1対象物および/または前記第2の面を有する第2対象物の初期時刻における運動条件を設定し、前記第1対象物および/または前記第2対象物の運動方程式を設定する工程と、
    f)前記運動方程式を解く工程と、
    g)前記各第1面要素の前記置換粗面の突起の高さの分布において、前記対向する第2面要素の前記置換平滑面に突起が凝着する凝着ゾーンと、前記置換粗面と前記置換平滑面との間に前記潤滑物質が介在する潤滑物質介在ゾーンとが設定されており、前記運動方程式の解、前記置換粗面の前記表面性状統計量、前記置換粗面の前記材料物性値、および、前記潤滑物質の粘度に基づいて、前記各第1面要素と前記対向する第2面要素との間に作用する圧力および/またはせん断応力を前記凝着ゾーンおよび前記潤滑物質介在ゾーンのそれぞれにおいて求め、さらに、前記第1の面と前記第2の面との間における摩擦力および摩耗量の少なくともいずれかを求める工程と、
    h)前記圧力および前記せん断応力に基づいて前記運動方程式の前記第1対象物および/または前記第2対象物の運動条件の設定を前回の時刻から微小時間だけ経過した時刻のものへと更新して前記f)工程へと戻る工程と、
    を実行することを特徴とする摺動解析システム。
  15. 潤滑物質を介して互いに対向するとともに相対的に摺動可能な第1面要素と第2面要素との間における摩擦を解析する摺動解析方法であって、
    a)前記第1面要素の微小凹凸を示す表面性状統計量と、前記第2面要素の微小凹凸を示す表面性状統計量とから、前記第1面要素と前記第2面要素との摺動の関係を維持しつつ前記第2面要素を置換平滑面に置換した場合の前記第1面要素の置換粗面の表面性状統計量であって、突起先端の半径R、突起面密度N、突起高さ標準偏差σおよび表面粗さ、または、これらに相当するものを含むものを求める工程と、
    b)前記第1面要素を構成する材料の物性値と前記第2面要素を構成する材料の物性値とから、前記第1面要素と前記第2面要素との間の摺動の関係を維持しつつ前記第2面要素を前記置換平滑面に置換した場合の前記置換粗面の材料物性値であって、ヤング率、硬度およびポアソン比を含むものを求める工程と、
    c)前記置換粗面の突起の高さの分布において、前記置換平滑面に突起が凝着する凝着ゾーンと、前記置換粗面と前記置換平滑面との間に前記潤滑物質が介在する潤滑物質介在ゾーンとが設定されており、前記第1面要素と前記第2面要素との位置関係および相対速度(相対速度が実質的に0の場合を含む)、前記置換粗面の前記表面性状統計量、前記置換粗面の前記材料物性値、並びに、前記潤滑物質の粘度に基づいて、前記第1面要素と前記第2面要素との間に作用する圧力および/またはせん断応力を前記凝着ゾーンおよび前記潤滑物質介在ゾーンのそれぞれにおいて求める工程と、
    を備えることを特徴とする摺動解析方法。
  16. 潤滑物質を介して互いに対向するとともに相対的に摺動可能な第1の面と第2の面との間における接触状態を解析する接触解析方法であって、
    a)前記第1の面および前記第2の面を互いに対向する複数の第1面要素および複数の第2面要素に分割する工程と、
    b)各第1面要素の微小凹凸を示す表面性状統計量と、対向する第2面要素の微小凹凸を示す表面性状統計量とから、前記各第1面要素と前記対向する第2面要素との接触の関係を維持しつつ前記対向する第2面要素を置換平滑面に置換した場合の前記各第1面要素の置換粗面の表面性状統計量であって、突起先端の半径R、突起面密度N、突起高さ標準偏差σおよび表面粗さ、または、これらに相当するものを含むものを求める工程と、
    c)前記各第1面要素を構成する材料の物性値と前記対向する第2面要素を構成する材料の物性値とから、前記各第1面要素と前記対向する第2面要素との間の接触の関係を維持しつつ前記対向する第2面要素を前記置換平滑面に置換した場合の前記置換粗面の材料物性値であって、ヤング率、硬度およびポアソン比を含むものを求める工程と、
    d)前記第1の面を有する第1対象物および/または前記第2の面を有する第2対象物の初期の釣り合い条件を設定し、前記第1対象物および/または前記第2対象物の釣り合いの式を設定する工程と、
    e)前記釣り合いの式を解く工程と、
    f)前記各第1面要素の前記置換粗面の突起の高さの分布において、前記対向する第2面要素の前記置換平滑面に突起が凝着する凝着ゾーンと、前記置換粗面と前記置換平滑面との間に前記潤滑物質が介在する潤滑物質介在ゾーンとが設定されており、前記釣り合いの式の解、前記置換粗面の前記表面性状統計量、前記置換粗面の前記材料物性値、および、前記潤滑物質の粘度に基づいて、前記各第1面要素と前記対向する第2面要素との間に作用する圧力を前記凝着ゾーンおよび前記潤滑物質介在ゾーンのそれぞれにおいて求める工程と、
    g)前記圧力に基づいて前記釣り合いの式の前記第1対象物および/または前記第2対象物の釣り合い条件の設定を更新する工程と、
    h)前記釣り合いの式が有する誤差が許容範囲外の場合に前記e)工程へと戻り、許容範囲内の場合に演算を終了する工程と、
    を備えることを特徴とする接触解析方法。
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Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2010227953A (ja) * 2009-03-26 2010-10-14 Honda Motor Co Ltd 微細凹部加工システム、微細凹部加工方法、微細凹部加工用プログラム
JP2014102798A (ja) * 2012-11-22 2014-06-05 Fujitsu Ltd 設定方法、及び情報処理装置
CN111075920A (zh) * 2020-01-13 2020-04-28 重庆大学 基于fft和润滑影响的rv减速器摆线针轮残余应力求解方法

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