JP2007334111A - 光ファイバ、およびそれを用いた光ファイバ心線 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】ガラス光ファイバの外周に少なくともヤング率が3Mpa以下の軟質被覆層とヤング率が500Mpa以上の硬質被覆層を被覆した光ファイバにおいて、前記軟質被覆層の吸水率を内側からCp1、Cp2・・・Cpn、半径をrp1、rp2・・・rpn、前記硬質被覆層の吸水率を内側からCs1、Cs2・・・Csn、半径をrs1、rs2・・・rsnとしたとき前記軟質被覆層の吸水率と半径の積の和Rp=Cp1×rp1+Cp2×rp2+・・・+Cpn×rpnと前記硬質被覆層の吸水率と半径の積の和Rs=Cs1×rs1+Cs2×rs2+・・・+Csn×rsnがRp>Rsの関係を満たすことを特徴とする。
【選択図】 図1
Description
光ファイバケーブルには様々な構造のものがあるが、光ファイバの外周に、着色層を施した光ファイバ着色心線とし、さらにこれを複数本平面状に平行に配列してテープ層となる紫外線硬化型樹脂で一括被覆して光ファイバテープ心線とし、この光ファイバテープ心線をケーブルの中に収容したリボンスロット型の光ファイバケーブルが、広く用いられている。
なお、本明細書において、光ファイバの外周に着色層を施したものを光ファイバ心線と呼ぶ。
しかし、従来のような各層界面の接着性のバランスを取りながら、上記のような問題に対処することには限界がある。
また、着色層の吸水率を低下させ、光ファイバに到達する水分をより少なくする方法が、特許文献2に開示されている。
また、特許文献2に記載の方法であっても、光ファイバを水に浸漬した場合に光ファイバに到達する水分を完全に遮断することはできないため、浸漬条件によってはマイクロベンドによる損失増加が発生してしまう。
以上のように、光ファイバの伝送損失の増加を抑制する極めて有効な手段が得られていないのが現状である。
このようにしてなる本発明の請求項2記載の光ファイバによれば、前述した請求項1記載の光ファイバにおける作用効果を確実に得ることができる。
このようにしてなる本発明の請求項3記載の光ファイバによれば、マイクロベンドによる伝送損失の増加を抑制した光ファイバが低コストで実現できる。
このようにしてなる本発明の請求項4記載の光ファイバによれば、2層目の軟質被覆層と硬質被覆層の吸水率の差を調整することなく、比較的容易にマイクロベンドによる伝送損失の増加を抑制した光ファイバとすることができる。
このようにしてなる本発明の請求項5記載の光ファイバによれば、マイクロベンドによる伝送損失の増加を抑制し、かつ信頼性の高い光ファイバが比較的容易かつ低コストで実現できる。
このようにしてなる本発明の請求項6記載の光ファイバによれば、軟質被覆層における吸水率を容易に大きくすることができ、ガラス光ファイバと軟質被覆層界面での剥離を効果的に抑えることができる。
また、本発明の請求項8記載の光ファイバは、前記ポリエチレングリコールの分子量が200以上であることを特徴とする。
このようにしてなる本発明の請求項7および8記載の光ファイバによれば、前述した請求項6記載の光ファイバにおける作用効果を確実に得ることができる。
また、本発明の請求項10記載の光ファイバテープ心線は、請求項9記載の光ファイバ着色心線を複数本平面状に平行に配列し、一括被覆したことを特徴とする。
このようにしてなる本発明の請求項9に記載の光ファイバ着色心線および本発明の請求項10に記載の光ファイバテープ心線によれば、マイクロベンドによる伝送損失の増加を抑制した光ファイバ着色心線および光ファイバテープ心線が実現できる。
図1は軟質被覆層および硬質被覆層がそれぞれ1層からなるものを示し、図2は軟質被覆層が2層からなり硬質被覆層が1層からなるものを示す。軟質被覆層および硬質被覆層は何層からなっていてもよいが、製造コストや歩留まりを考慮すると層の数は一般的には少ない方がよい。
本発明の光ファイバにおける軟質被覆層および硬質被覆層としては主に紫外線硬化型の樹脂組成物(以下、単にUV樹脂という)が用いられ、硬化速度の観点からウレタン−アクリレート系やエポキシ−アクリレート系のオリゴマーを主成分としたものが最適である。
吸水率C=(m2−m1)/m1×100(%) ・・・(1)
ここで、m1は初期乾燥後の浸漬前の試験片質量(mg)であり、m2は浸漬後の試験片質量(mg)である。また、試料は35μm厚のフィルム状とし、水浸漬条件を60℃×24時間とした。
また、同様に吸水量は(1)式のm2−m1で現される値である。
光ファイバに水分が到達した場合、次のような二つの作用が競合する。
一つは吸水により被覆層が膨張する作用である。この際、一般に広く光ファイバに用いられている軟質被覆層材と硬質被覆層材とでは分子間の密度が軟質被覆層材の方が小さいため、吸水量に大きな差ができ、ほとんどの場合軟質被覆層の吸水量の方が高く、膨張率も大きい。そのため、硬質被覆層によって封止されている軟質被覆層は硬質被覆層から圧縮応力を受けることになる。
上記の仮定を元に、(2)式を変形し、内圧=界面での応力Piを求める式に変換していくと次のようになる。
2層被覆光ファイバでは軟質被覆層と硬質被覆層に発生する界面での応力は、(3)式を用いて、それぞれ次のように表すことができる。
ここで、ガラス光ファイバと軟質被覆層との間に圧縮応力が作用するために必要な条件は、
Pp+Ps<0 ・・・(6)
の場合である。
us=Cs・rs−Cp・rp ・・・(7)
ここで、Cs、Cpはそれぞれ硬質被覆層と軟質被覆層の吸水率によって与えられる半径方向の膨張率で、吸水率の平方根に比例する数字である。なぜならば、無限長の厚肉円筒=被覆層の微小断面での体積変化では、長手方向の変位量は無視し得るほど小さいからである。
(7)式より、ガラス光ファイバと軟質被覆層との間に圧縮応力が作用するための必要条件は、
us=Cs・rs−Cp・rp<0 即ち Cs・rs<Cp・rp ・・・(8)
である。
軟質被覆層に水分が浸透してきた際、軟質被覆層に水分を留めおくことで軟質被覆層の吸水率を硬質被覆層よりも高く保持することができる。そこで、発明者らは水に親和性の高いアルコール類に着目した。アルコール性水酸基を有する化合物は、他の親水性官能基を有する化合物と比べて水に対する親和性が相対的に高く、主骨格の分子量を高くしてやることで被覆層を構成する樹脂材質とも親和性を付与することができる。一方、アルコール性水酸基を有する化合物は水に対して易溶であるため、溶出成分ともなりうる。しかし、これも主骨格の分子量を高くし、被覆層材質との絡み合いを多くすることで、被覆層材質中に留めおくことが可能となる。このような化合物はポリオールと総称され、例えば、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリカプロラクトンポリオールおよびその他のポリオールを挙げることができる。これらのポリオールは単独で、あるいは2種以上を組合せて使用することができる。これらのポリオールの構造単位の重合様式には特に制限はない。ランダム重合、ブロック重合およびグラフト重合のいずれであってもよい。さらに、ポリエーテルポリオールとしては、例えば、ポリエチレングリコール、他のポリプロピレングリコール、他のポリプロピレングリコール−エチレングリコール共重合体、ポリテトラメチレングリコール、ポリヘキサメチレングリコール、ポリヘプタメチレングリコール、ポリデカメチレングリコール等が使用可能である。
但し、ポリオール等のアルコール分子が被覆層を構成する樹脂の高分子骨格に留め置かれる効果は分子量のみに依存するわけではなく、アルコール類の構造中に側鎖官能基が存在し、それらと被覆層樹脂の高分子骨格が相互作用するような場合には、分子量が150以下のアルコール類でも吸水率を高める効果を有することは十分に予想される。
ガラス光ファイバと1次軟質被覆層との間の密着力を改善するに当たっては、シランカップリング剤の配合が最も効果的な手法として知られている。シランカップリング剤は、密着力の改善を図るために軟質被覆層を構成する被覆材に対してある一定割合以上の配合量を必要とするが、軟質被覆層を構成する成分の中では比較的高価で必要量を配合することで材料コストを押し上げてしまう。さらに、シランカップリング剤自体が樹脂成分と結合することで被覆の硬化性を低下させたり、架橋密度を低下させたりすることがあるため、信頼性を損なう場合がある。しかるに、1次軟質被覆層の厚さを2層目以降の軟質被覆層の厚さの合計よりも薄く配設することにより、良好な密着力を有し、かつコストを低く抑え、信頼性を確保できる光ファイバを形成することができる。このような観点から、1次軟質被覆層の厚さは最大で10μm以下が好ましい。
[実施例1]
表1に示す光ファイバ1〜6を作製した。これらは、図1に示すような軟質被覆層と硬質被覆層をそれぞれ1層ずつ有する2層構造のシングルモード光ファイバである。それぞれの光ファイバの軟質被覆層2には、表1に示すベース組成を記載した量(重量部)で組み合わせたものを用い、さらに吸水率調整添加剤としてそれぞれ異なるポリオールを添加した。表1のポリオールの添加量は、該ベース組成100に対する部数を示す。また、硬質被覆層4には、吸水率2.0の被覆材を利用した。尚、光ファイバにおけるガラス光ファイバ1の外径は約125μm、軟質被覆層2の外径は約200μm、硬質被覆層4の外径は約250μmとした。
[ガラス光ファイバ/軟質被覆層との間の剥離率]
60℃の温水に60日浸漬したファイバから5cmを切り出し、顕微鏡で観察する。観察長に対して、剥離箇所の長さと個数から剥離箇所の面積を求め、光ファイバの全面積に対する割合を剥離率(%)と定義した。尚、剥離箇所は円形もしくは楕円形で成長するので、個々の形状に応じて円形状もしくは楕円形状で面積を算出し、積算して剥離箇所の面積とした。
[60℃×15日温水浸漬後の伝送損失増加量]
60℃の温水に15日間浸漬し、浸漬前の光ファイバの伝送損失に対する浸漬後の光ファイバの伝送損失増加量を波長1550nmで測定した。
さらにポリオールの分子量に着目すると、分子量が高いポリプロピレングリコールでは、相対的に分子量が低いポリエチレングリコールA及びBに比べて少ない配合量で同等以上の効果を発揮している。これらの結果より、ポリオールの分子量が軟質被覆層の吸水率を調整する上で一つの重要な因子であることが明らかである。
次に、表2に示す光ファイバ7〜10を作製した。これらは図2に示すように、軟質被覆層を2層、硬質被覆層を1層有する3層構造のシングルモード光ファイバである。1次軟質被覆層2には、表2に示すベース組成を記載した量(重量部)で組み合わせたものを用い、さらに吸水率調整添加剤としてそれぞれ異なるポリオールを添加した。表2のポリオールの添加量は、該ベース組成100に対する部数を示す。また、2層目の軟質被覆層3(以降、2次軟質被覆層3と呼ぶ)には表1に記載の光ファイバ4の軟質被覆層と同じ樹脂組成物を用いた。また、硬質被覆層4には、吸水率2.0の被覆材を利用した。尚、光ファイバにおけるガラス光ファイバ1の外径は約125μm、1次軟質被覆層2の外径は約130μm、2次軟質被覆層3の外径は約200μm、硬質被覆層4の外径は約250μmとした。 さらにこれらの光ファイバに対し、実施例1と同じ条件で浸水試験後のガラス光ファイバと軟質被覆層との間での剥離性及び60℃温水浸漬15日後の伝送損失増加量を評価した。
一方、分子量の低いアルコール、ジオール類の場合には、吸水量を増加させ、ガラス光ファイバ上界面での密着力を向上させる効果はを有するものの、一方では自身が溶出成分となって、軟質被覆層の溶出量を多くしてしまい、結果として、ガラス光ファイバと軟質被覆層との間の剥離を助長する作用をもたらすようになってしまう。
さらに被覆層の厚さ等の設計値が同じであり、本実施例に用いたシングルモード光ファイバと類似の光ファイバにおいては、応力指数の大小によらず、吸水率の大小をもって、剥離を抑制する効果の大小を比較することができる。したがって、応力指数の計算によらずとも、吸水率の結果をもって簡易的に剥離抑制に効果を有する材料かどうかの判定が可能となる。尚、簡易的な判定をする上での指標として、剥離を効果的に抑制するには軟質被覆層の吸水率の和と硬質被覆層の吸水率の和の差が、0.5質量%以上であることが望ましい。
次に表1および表2に記載の光ファイバ1、光ファイバ4および光ファイバ7を用いて、図3に示す光ファイバ着色心線を3種類(着色心線1、着色心線2、着色心線3と呼ぶ)、および図4に示す光ファイバテープ心線を3種類(テープ心線1、テープ心線2、テープ心線3と呼ぶ)を作製した。具体的には図3に示すように、硬質被覆層4上にさらに紫外線硬化型樹脂組成物からなる厚さ約5μmの着色層5を設けて光ファイバ着色心線(以降、単に着色心線と呼ぶ)とし、さらに図4に示すようにこの着色心線8本を平面状に並行に並べ、これに紫外線硬化型樹脂組成物を用いてテープ層6を施し、通常使用されている8心の光ファイバテープ心線(以降、単にテープ心線と呼ぶ)を得た。着色材は識別のために8色(赤、青、白、緑、黄、紫、橙、灰)を用いたが、これらは顔料組成以外は全て同一である。
また、着色心線1、およびテープ心線1には光ファイバ1を、着色心線2、およびテープ心線2には光ファイバ7を、着色心線3、およびテープ心線3には光ファイバ4を用いた。
これらの着色心線及びテープ心線に対して、実施例1と同条件で浸水試験後のガラス光ファイバと軟質被覆層との間での剥離性及び60℃温水浸漬15日後の伝送損失増加量を評価した。試験結果を表3に示す。
一方、光ファイバの軟質被覆層の吸水率と半径の積の和Rpが硬質被覆層の吸水率と半径の積の和Rsより小さい光ファイバを用いた着色心線やテープ心線では、ガラス光ファイバと軟質被覆層との間での剥離を抑え込むことができず、剥離を生じて、マイクロベンドによる伝送損失増加を引き起こしている。
2 (1次)軟質被覆層
3 (2次)軟質被覆層
4 硬質被覆層
5 着色層
6 テープ層
Claims (11)
- ガラス光ファイバの外周に少なくともヤング率が3MPa以下の軟質被覆層とヤング率が500MPa以上の硬質被覆層を被覆した光ファイバにおいて、
前記軟質被覆層の少なくとも1つが前記ガラス光ファイバ表面上に被覆され、且つ前記軟質被覆層の吸水率を内側からCp1、Cp2・・・Cpn、半径をrp1、rp2・・・rpn、前記硬質被覆層の吸水率を内側からCs1、Cs2・・・Csn、半径をrs1、rs2・・・rsnとしたとき、
前記軟質被覆層の吸水率と半径の積の和Rp=Cp1×rp1+Cp2×rp2+・・・+Cpn×rpnと前記硬質被覆層の吸水率と半径の積の和Rs=Cs1×rs1+Cs2×rs2+・・・+Csn×rsnがRp>Rsの関係を満たすことを特徴とする光ファイバ。 - ガラス光ファイバの外周表面に密接してヤング率が3MPa以下の軟質被覆層が被覆され、さらにその外周に密接してヤング率が500MPa以上の硬質被覆層が被覆された光ファイバにおいて、
前記軟質被覆層の吸水率をCp1、Cp2・・・Cpn、半径をrp1、rp2・・・rpn、
前記硬質被覆層の吸水率を内側からCs1、Cs2・・・Csn、半径をrs1、rs2・・・rsnとしたとき、
前記軟質被覆層の吸水率と半径の積の和Rp=Cp1×rp1+Cp2×rp2+・・・+Cpn×rpnと前記硬質被覆層の吸水率と半径の積の和Rs=Cs1×rs1+Cs2×rs2+・・・+Csn×rsnがRp>Rsの関係を満たすことを特徴とする光ファイバ。 - 前記軟質被覆層の吸水率と半径の積の和Rpと前記硬質被覆層の吸水率と半径の積の和Rsの差が、5以上であることを特徴とする請求項1記載の光ファイバ。
- 前記軟質被覆層と前記硬質被覆層はそれぞれ1層からなることを特徴とする請求項1または2記載の光ファイバ。
- 前記軟質被覆層は2層からなり、前記硬質被覆層は1層からなることを特徴とする請求項1または2記載の光ファイバ。
- 前記軟質被覆層のうち、最も内側の軟質被覆層の厚さは3μm以上10μm以下であることを特徴とする請求項4記載の光ファイバ。
- 前記軟質被覆層のうち、最も内側の軟質被覆層の吸水率調整用添加剤としてポリオールあるいはポリオール混合物を用いたことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1に記載の光ファイバ。
- 前記ポリオールとしてポリエチレングリコールを用いたことを特徴とする請求項6に記載の光ファイバ。
- 前記ポリエチレングリコールの分子量が200以上であることを特徴とする請求項7記載の光ファイバ。
- 請求項1〜8のいずれか1に記載の光ファイバに着色層を被覆してなる光ファイバ着色心線。
- 請求項9に記載の光ファイバ着色心線を複数本平面状に平行に配列し、一括被覆したことを特徴とする光ファイバテープ心線。
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