JP2007328245A - 弦楽器用糸巻装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】高品質であるのはもちろんのこと、軽量で音質の優れた弦楽器用糸巻装置を提供する。
【解決手段】糸巻き装置1は、金属製であるとともに、その内部に中空部31Aが形成された摘み30を備えている。摘み30は、内部に中空部31Aが形成されているので、軽量となるとともに肉厚が薄くなる。これにより、演奏中の弦の振動のレスポンスが速くなり、音色や音の余韻がよくなる。摘み30は金属製であるので、高級感を得ることができる。摘み30の鋳造の際、必要な溶湯が少量となるから、小さな湯口を用いることができるので、そこから溶湯を注入しても、成形された摘み30の表面に形成される痕を小さくすることができる。摘み30の肉厚が薄いから、鋳造によって成形された摘み30の内部にガスが含まれて巣が形成されることを抑制することができる等の効果が得られる。
【選択図】 図1

Description

本発明は、ギターなどの弦楽器の糸巻装置に係り、特に糸巻装置の摘みに関する。
ギターなどの弦楽器は、弦のチューニングを行うための糸巻装置を備えている。糸巻装置は、たとえば特許文献1に開示されているように、弦楽器のヘッドに設けられる本体と、この本体に回転自在に設けられたウォームギヤと、このウォームギヤの一端部に設けられるとともに、このウォームギヤを回転させるための摘みと、ウォームギヤにウォームホイールを介して接続された巻取軸とを備えている。このような糸巻装置では、巻取軸に弦を巻き、摘みを回転させて弦を巻き取ったり巻き解いたりすることによって、チューニングを行うようになっている。
ところで、弦楽器、特にエレキギターやフォークギター等に使用されている糸巻装置の多くの摘みは、金属製であり、亜鉛ダイキャストによって製造されている物が多く用いられている。摘みの製造では、図7に示すような割型101および割型102からなる金型100が用いられている。なお、図7において、(A)は金型100の上断面図、(B)は(A)のA−A線の側断面図である。金型100では、割型102の湯口100bから溶湯が注入され、割型101のガス排出口100cからキャビティ100a内部のガスが排出される。
しかしながら、糸巻装置の摘みは、金属製で重いため、演奏中の弦の振動のレスポンスが遅くなり、音色や音の余韻が不充分であった。また、上記のような摘みの鋳造の際、摘みの側面に割型101および割型102のパーティングラインの痕と湯口100bの痕ができるため、中・高級品で使用される物はエンドレスペーパー等にて手作業で除去し、ハンドポリッシュ(手バフ)にて表面を磨く必要があった。なお、ハンドポリッシュによる手作業に代えて回転ドラムを使用したバレル研磨で一度に多数の摘みを処理する方法もとられているが、摘みが重いため、互いにぶつかり合い、多くの傷がついてしまうという問題が発生する。加えて、摘みの肉厚が厚いため、鋳造中に摘み内部にガスが含まれて巣ができ、鋳造後にメッキ加工を行うと、巣に含まれていたガスが吹き出して、メッキ不良が生じるという問題があった。
実開昭56−102589号公報(要約)
以上のように、従来の金属製の摘みを用いた場合、高品質で音質の優れた糸巻装置を得ることができないという問題があった。なお、軽くて鋳造に起因する問題を含まないプラスチック製の摘みも提供されているが、プラスチック製では弦楽器に求められる高級感を得ることができない。
したがって、本発明は、高品質であるのはもちろんのこと、軽量で音質の優れた弦楽器用糸巻装置を提供することを目的としている。
本発明の弦楽器用糸巻装置は、弦楽器のヘッド部に取り付けられる本体と、この本体に回転自在に設けられたウォームギヤと、このウォームギヤの一端部に設けられるとともに、このウォームギヤを回転させるための金属製の摘みと、ウォームギヤにウォームホイールを介して接続された巻取軸とを備え、摘みの内部に中空部が形成されていることを特徴としている。
本発明の弦楽器用糸巻装置では、金属製の摘みの内部に中空部を形成したので、その摘みの重量が軽くなるとともに肉厚が薄くなる。これにより、演奏中の弦の振動のレスポンスが速くなり、音色や音の余韻がよくなる。また、摘みは金属製であるので、高級感を得ることができる。さらに、摘みの金属材料を低減することができるので、製造コストを低減することができる。加えて、摘みの鋳造の際、必要な溶湯が少量となるから、小さな湯口を用いることができるので、そこから溶湯を注入しても、成形された摘みの表面に形成される湯口の痕を小さくすることができる。さらに、摘みの肉厚が薄いから、鋳造によって成形された摘みの内部にガスが含まれて巣が形成されることを抑制することができる。これにより、鋳造後にメッキ加工を行っても、摘みの内部からのガスの吹き出しが少なくなり、メッキ不良が生じることを防止することができる。加えて、研磨をバレル研磨により行う場合、摘みの重量が軽いから、従来のように互いにぶつかり合っても傷が付くことを抑制することができる。これにより、一度のバレル研磨で多数の摘みの研磨を行うことができるので、製造コストをより低減することができる。
ここで、糸巻装置の摘みの製造を容易にするために種々の構成を採用することができる。たとえば、摘みは、内部が中空になされるとともに一端に開口を有するキャップ部と、このキャップ部の前記開口に着脱自在に設けられた蓋部とを備えることができる。
このような態様では、摘みの製造でキャップ部と蓋部とを個々に鋳造することができる。ここで、キャップ部の鋳造の際、下部割型と上部割型とからなる金型を用い、下部割型の上に上部割型を設けることによりキャビティを形成する。下部割型は、キャップ部の外周面に対応する形状の凹部を有する。上部割型は、キャップ部の内周面に対応する形状の凸部を有する。キャビティを形成する際、上部割型の凹部は下部割型の凹部に対向して設けられる。この場合、湯口は上部割型におけるキャップ部の側部底面の形成箇所に対応する一方の位置に設け、ガス排出口は上部割型におけるキャップ部の側部底面の形成箇所に対応するもう一方の位置に設ける。
上記のような金型を用い、湯口から溶湯を注入することにより、キャップ部を形成することができる。この場合、割型のパーティングラインは、キャップ部の側部底面に形成されるので、目立たない。また、このとき形成されるパーティングラインはエッジ形状をなすが、バレル研磨を施すことにより除去することができる。さらに湯口を目立たない位置に設けることができるので、湯口の痕が目立たなくなる。
また、摘みはネジを備えることができる。この場合、摘みのキャップ部および蓋部のそれぞれに孔が形成され、ネジは、キャップ部および蓋部の孔を通じて、蓋部およびキャップ部をウオームギヤの一端部に着脱自在に固定する。具体的には、ウォームギヤの一端部は蓋部の孔に挿通され、ウォームギヤの一端部にネジが螺合している。この場合、蓋部はキャップ部の内部に突出するボスを備え、このボスに孔が形成されているのが好ましい。さらに、キャップ部にボスと嵌合する凸部が設けられているのが好ましい。
本発明の弦楽器用糸巻装置によれば、金属製の摘みの内部に中空部を形成したので、その摘みの重量が軽くとなるとともに肉厚が薄くなる。これにより、鋳造時の材料の低減とメッキ時におけるガス噴出および取り扱い時の傷等の不良の大幅な減少とを図ることができるとともに、演奏中の弦の振動のレスポンスが速くなり、音色や音の余韻がよくなる等の効果が得られる。
(1)実施形態の構成
本発明の実施形態について図面を参照して説明する。図1は本発明の実施形態の糸巻装置1の概略構成を表す側面図である。なお、図1では、本体10の内部および摘み30の部分は断面構成で表している。図1では、本体10を覆うカバーの図示は省略している。
図1において、符号10は弦楽器のヘッドに取り付けられる本体、20は本体10に回転自在に支持されるウオームギヤ、30はウオームギヤ20の一端部に設けられるとともに、内部に中空部31Aを有する摘み、40は弦が巻き取られる巻取軸、50はウオームギヤ20に噛み合わされたウオームホイールである。本実施形態では、摘み30について詳述し、それ以外の構成および作用の説明は省略する。
本体10は、平らな基部11と、基部11の両側から立ち上がる軸受12とから概略構成されている。基部11には、巻取軸30を回転自在に支持する支持孔11aが形成されている。一方の軸受12には大径孔12aが形成され、他方の軸受12には小径孔12bが形成されている。
ウオームギヤ20は、軸受12の大径孔12aおよび小径孔12bに回転自在に支持されている。ウオームギヤ20はウオーム軸21を備え、ウオーム軸21にはウオーム22が形成されている。また、ウオーム軸22の先端部には、それよりも小径の取付部23が形成されている。取付部23の上部の中心にはネジ穴(図示略)が形成されている。
摘み30は、内部が中空になされるとともに一端に開口を有するキャップ部31と、キャップ部31の開口に着脱自在に設けられた蓋部32とを備えている。キャップ部31は、蓋部32により開口が蓋されるようにして、ネジ33によってウオーム軸21の取付部23に着脱自在に固定されている。
キャップ部31は、図2に示すように内部に中空部31Aを有する。図2はキャップ部31の概略構成を表し、(A)は(C)のA−A線断面図、(B)は(C)のB−B線断面図、(C)は上面図である。キャップ部31の中央部の上面には、ネジ33と嵌合する孔31aが形成されている。キャップ部31の中央部の下面には、蓋部32の取付部32Bと嵌合する固定部(凸部)31Bが形成されている。
蓋部32は、図3に示すように中央部32Aと、中央部32Aの上部に一体的に形成された取付部32Bと、中央部32Aの側部に一体的に形成された側部32Cとを有する。なお、中央部32Aと取付部32Bとはボスを構成している。図3は蓋部32を表す概略構成を表し、(A)は(C)のA−A線断面図、(B)は(C)のB−B線断面図、(C)は上面図である。中央部32Aの中心には、ウオームギヤ20の取付部23が摺動自在に挿通される孔32aが形成されている。取付部32Bの中心には、孔32aより小さな内径を有するとともに、内側にネジ33が挿通される孔32bが形成されている。側部32Cの下部の中心には、孔32aよりも大きな内径を有するとともにウオーム軸21の上端部の外径と略同一内径を有する孔32cが形成されている。ウオーム軸21は、孔32aと孔32cとの境界部により、孔32cの上端より上方に移動するのが防止されている。
ネジ33は、キャップ部31の上部から、キャップ部31の孔31a、蓋部32の孔32b,孔32aを通じて、ウオームギヤ20の取付部23上部の中心のネジ穴に螺合して固定されることにより、キャップ部31と蓋部32とが互いに嵌合してウオームギヤ20に取り付けられる。
巻取軸40の一端部には、鼓状に中央部が縮径した巻取面41が形成されている。巻取面41の中央部には、貫通孔42が形成され、そこに弦の端部を挿通して弦を巻き始めるようになっている。また、巻取軸40の上端部には小径の取付軸43が形成されている。
ウオームホイール50はウオーム22と噛み合わされて設けられている。ウオームホイール50の中央下端部には、巻取軸40の取付軸43が本体10の支持孔11aを通じて固定されている。ウオームホイール50は,ネジ51によって本体10の基部11を挟むようにして巻取軸40に取り付けられている。
(2)実施形態の製造方法
上記のような構成を有する糸巻装置1の摘み30のキャップ部31の製造方法について、主に図4を参照して説明する。図4は、図2の摘み30のキャップ部31の製造方法を説明するための図であり、金型60の側断面図である。
キャップ部31は、図4に示すような金型60を用いて鋳造する。金型60は、キャップ部31の外周面に対応する形状の凹部を有する下部割型61と、キャップ部31の内周面に対応する形状の凸部を有する上部割型62とを備えている。上部割型62の凹部は下部割型61の凹部に対向して設けることにより、キャビティ60aを形成する。この場合、湯口62aは上部割型62におけるキャップ部31の側部底面の形成箇所に対応する一方の位置に設け、ガス排出口62bは上部割型におけるキャップ部の側部底面の形成箇所に対応するのもう一方の位置に設ける。
上記のような構成を有する金型60を用い、湯口62aから溶湯を注入することにより、中空部31Aを有するキャップ部31を形成することができる。この場合、下部割型61および上部割型62のパーティングラインは、キャップ部31の側部底面に形成されるので、目立たない。また、このとき形成されるパーティングラインはエッジ形状をなすが、バレル研磨を施すことにより除去することができる。さらに湯口62aを目立たない位置に設けることができるので、湯口62aの痕が目立たなくなる。
本実施形態の弦楽器用糸巻装置1では、金属製の摘み30の内部に中空部31Aを形成したので、その摘み30の重量が軽くなるとともに肉厚が薄くなる。これにより、演奏中の弦の振動のレスポンスが速くなり、音色や音の余韻がよくなる。また、摘み30は金属製であるので、高級感を得ることができる。さらに、摘み30の金属材料を低減することができるので、製造コストを低減することができる。加えて、摘み30の鋳造の際、必要な溶湯が少量となるから、小さな湯口62aを用いることができるので、そこから溶湯を注入しても、成形された摘み30の表面に形成される痕を小さくすることができる。さらに、摘み30の肉厚が薄いから、鋳造によって成形された摘み30の内部にガスが含まれて巣が形成されることを抑制することができる。これにより、鋳造後にメッキ加工を行っても、摘み30の内部からのガスの吹き出しが少なくなり、メッキ不良が生じることを防止することができる。加えて、研磨をバレル研磨により行う場合、摘み30の重量が軽いから、従来のように互いにぶつかり合っても傷が付くことを防止することができる。これにより、一度のバレル研磨で多数の摘みの研磨を行うことができるので、製造コストをより低減することができる。
(3)変形例
以上、上記実施形態を挙げて本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。たとえば、摘みは内部に中空部を有すればよく、上記実施形態の摘み30に限定されるものではない。たとえば上記実施形態では、摘み30の蓋部32の中央部32A上部に取付部32Bを設け、取付部32Bをキャップ部31Aの固定部32Bと嵌合させるようにしたが、図5および図6(A)〜(C)に示す摘み230のように、蓋部32の中央部232A上部に上記実施形態の取付部32Bを設けず、中央部32Aの高さを低くして中央部232Aとする。この場合、中央部32Aの中心には、ウオームギヤ20の取付部23が摺動自在に挿通される孔232aが形成されている。
本発明の実施形態の糸巻装置の概略構成を表す側面図である。 本発明の実施形態の摘みのキャップ部の概略構成を表し、(A)は(C)のA−A線断面図、(B)は(C)のB−B線断面図、(C)は上面図である。 本発明の実施形態の摘みの蓋部を表す概略構成を表し、(A)は(C)のA−A線断面図、(B)は(C)のB−B線断面図、(C)は上面図である。 図2の摘みのキャップ部の製造方法を説明するための図であり、金型の側断面図である。 本発明の実施形態の糸巻装置の変形例の概略構成を表す側面図である。 本発明の実施形態の摘みの蓋部を表す概略構成図であり、(A)は(C)のA−A線断面図、(B)は(C)のB−B線断面図、(C)は上面図である。 従来の摘みの製造方法を説明するための図であり、(A)金型の上断面図、(B)は(A)のA−A線の側断面図である。
符号の説明
1…糸巻装置、10…本体、20…ウオームギヤ、30,230…摘み、31…キャップ部、31A…中空部、31B…固定部(凸部)、31a,32a,32b,32c,232a…孔、32,232…蓋部、32A…中央部(ボス)、32B…取付部(ボス)、33…ネジ、40…巻取軸、50…ウォームホイール

Claims (6)

  1. 弦楽器のヘッド部に取り付けられる本体と、
    この本体に回転自在に設けられたウォームギヤと、
    このウォームギヤの一端部に設けられるとともに、このウォームギヤを回転させるための金属製の摘みと、
    前記ウォームギヤにウォームホイールを介して接続された巻取軸とを備え、
    前記摘みの内部に中空部が形成されていることを特徴とする弦楽器用糸巻装置。
  2. 前記摘みは、内部が中空になされるとともに一端に開口を有するキャップ部と、このキャップ部の前記開口に着脱自在に設けられた蓋部とを備えていることを特徴とする請求項1に記載の弦楽器用糸巻装置。
  3. 前記摘みはネジを備え、
    前記摘みのキャップ部および蓋部のそれぞれには孔が形成され、
    前記ネジは、前記キャップ部および前記蓋部の孔を通じて、前記蓋部と前記キャップ部とを前記ウォームギヤの前記一端部に着脱自在に固定することを特徴とする請求項2に記載の弦楽器用糸巻装置。
  4. 前記ウォームギヤの一端部は前記蓋部の前記孔に挿通され、前記ウォームギヤの一端部に前記ネジが螺合していることを特徴とする請求項3に記載の弦楽器用糸巻装置。
  5. 前記蓋部は前記キャップ部の内部に突出するボスを備え、このボスに前記孔が形成されていることを特徴とする請求項4に記載の弦楽器用糸巻装置。
  6. 前記キャップ部に前記ボスと嵌合する凸部が設けられていることを特徴とする請求項5に記載の弦楽器用糸巻装置。
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