JP2007325525A - タンパク質分泌・輸送機構に関与する分泌・輸送機構関連タンパク質、ならびにこれらの同定・機能解析方法 - Google Patents

タンパク質分泌・輸送機構に関与する分泌・輸送機構関連タンパク質、ならびにこれらの同定・機能解析方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 本発明は、タンパク質分泌・輸送機構に関与する分泌・輸送機構関連タンパク質の同定・機能解析方法を提供することを目的とする。
【解決手段】
本発明のタンパク質分泌・輸送機構に関与する分泌・輸送機構関連タンパク質の同定・機能解析方法は、
(a)分泌・輸送機構関連タンパク質をコードする遺伝子を含む一群の対象遺伝子の塩基配列情報、あるいは分泌・輸送機構関連タンパク質を含む一群の対象タンパク質のアミノ酸配列情報に基づいて、前記対象遺伝子及び/又は対象タンパク質の機能を阻害する阻害物質を調製し、そして
(b)前記阻害物質を、前記対象タンパク質を発現する細胞に導入し、当該細胞の表現型の変化に基づいて前記分泌・輸送機構関連タンパク質を同定・機能解析する
工程を含むことを特徴とする。
【選択図】 なし

Description

本発明は、細胞外へのタンパク質分泌・輸送機構(以下、単なるタンパク質分泌・輸送機構あるいはタンパク質分泌系と呼ぶことがある)に関与する分泌・輸送機構関連タンパク質、ならびにこれらの同定・機能解析方法に関する。
真核細胞の膜系タンパク質や分泌系タンパク質は、小胞体(endoplasmic reticulum ; 以下、ERと表記する場合がある)で生合成された後、膜小胞に包まれてゴルジ体に輸送される。そして、ゴルジ体において糖鎖の付加やジスルフィド結合等の修飾を受け、その後、機能を発現する目的地(具体的には細胞外やオルガネラ)に輸送される。これらのタンパク質が目的地で確実に機能を発現するためには、分泌するタンパク質の選別、膜小胞への包み込み、当該膜小胞の目的地への輸送等が適切に制御される必要がある。言い換えると、タンパク質の分泌には、輸送される分泌系タンパク質(これをカーゴタンパク質と呼ぶことがある)の成熟化制御と、輸送等を担う膜系タンパク質の制御とが密接に絡み合い、これらが統合されて機能する必要がある。このように、タンパク質分泌は、極めて複雑な分子機構を必要とする。以下においては、このような分子機構を、タンパク質分泌・輸送機構と呼ぶ。タンパク質分泌・輸送機構には種々の分子が関与するが、ここでは当該分子のうち、特に、タンパク質分泌・輸送機構に関与するタンパク質について説明する。
以下においては、生合成され、小胞体の機能による成熟化を受け、最終目的地に運ばれるタンパク質を、「カーゴ分泌系タンパク質」と呼び、「膜系タンパク質」と区別する。「カーゴ分泌系タンパク質」は、小胞体からゴルジ体に排出されてその後に細胞外やオルガネラ等の目的地に分泌されるタンパク質であり、言い換えれば、小胞体で処理される全てのタンパク質(折畳まれていないもの、N型糖鎖を含む)である。また、「膜系タンパク質」とは、内膜系に局在するタンパク質である。ここでは特に、内膜系の一種である小胞体に関連する膜系タンパク質を、「小胞体関連タンパク質」と呼ぶ。小胞体関連タンパク質は、カーゴ分泌系タンパク質が有さない小胞体残留シグナル(具体的には、「KDEL」、「HDEL」など)を有しており、当該シグナルによって、小胞体関連タンパク質がカーゴ分泌系タンパク質とは異なる挙動を示す(例えば、非特許文献1参照)。
小胞体は、真核細胞の細胞質内に広がる細胞内膜系の一種であり、膜系タンパク質で構成される膜経路と、当該膜経路で囲まれた閉塞空間である管腔経路とを有する。小胞体膜の表面ではタンパク質が機能的に発現しており、シグナル認識粒子(SRP)受容体、トランスロコン(Ttranslocon;いわゆる小胞体の「タンパク質輸送チャンネル」または「タンパク質透過チャンネル」)、シグナルペプチダーゼ等が存在する。そして、これらのタンパク質の機能によって、分泌系タンパク質の膜透過、シグナル鎖の切断、オリゴ糖トランスフェラーゼによるN結合型糖鎖の付加等が行われて品質管理やトランスロケーションが実現される。
小胞体の機能について説明すると、例えば、リボソームで合成された分泌系タンパク質は、小胞体において折り畳まれて立体構造(高次構造)を形成する。このような立体構造の形成は、フォールディング(folding)と呼ばれる。立体構造を形成したタンパク質のうち、正しく折り畳まれた(すなわち「フォールド(fold)」された)ものが、小胞体から輸送小胞として出芽しゴルジ体に到達する。一方、折り畳みに失敗して正しい構造が形成されなかったもの(すなわち「ミスフォールド(misfold)」した異常タンパク質)は、小胞体に停留し管腔経路内に蓄積する。小胞体では、ミスフォールドした異常タンパク質が蓄積すると、小胞体では、1)小胞体内のシャペロンタンパク質により正しい立体構造が改めて形成されるようにフォールディングに関与する分子の誘導を行う(これを「unfolded protein response; UPR」と呼ぶ)か、2)タンパク質の翻訳を停止させるか、3)異常タンパク質を細胞質に排出してユビキチン・プロテアソーム系により分解する(これを「ER−associated degradation system; ERAD」と呼ぶ)、のいずれかの反応が生じ、異常タンパク質の蓄積による小胞体の負荷の低減化が図られる。このように、小胞体には、正常なタンパク質と異常なタンパク質とを識別し適宜適切に処置する機構が存在している。当該機構は、小胞体におけるタンパク質の品質管理機構(いわゆる「ER quality control system」)と呼ばれる(例えば、非特許文献2参照)。
例えば、細胞が過度な小胞体ストレスを受けると、タンパク質分泌・輸送機構に制御不全が生じる。それにより、小胞体で生合成されるタンパク質の多くはミスフォールドし、場合によってはこれらが凝集する。また、遺伝子疾患などでタンパク質のアミノ酸配列に異常が生じる場合にも、当該異常の為に正しくフォールドできないことがある。これらの場合、このようにミスフォールドした異常タンパク質が小胞体に顕著に蓄積すると、小胞体において上記1)〜3)の品質管理機構が充分に機能せず、その結果、細胞はアポトーシス(細胞死)する。特に、近年では、立体構造の変化により生じる異常タンパク質に起因したいわゆる「コンフォメーション疾患」(または「フォールディング疾患」)の概念が提唱されており、具体的には、神経変性疾患と小胞体ストレスとの関係が注目されている。神経変性疾患としては、例えば、アルツハイマー病、パーキンソン病、ポリグルタミン病(具体的例としてハンチントン病等)、家族性筋萎縮性側索硬化症、多系統萎縮症、プリオンタンパク質の蓄積が関与する疾患等が挙げられる(例えば、非特許文献3および非特許文献4参照)。小胞体におけるタンパク質の立体構造形成機構や品質管理機構を解明することは、これらの疾患の予防、治療等においても有効である。また、小胞体におけるこられの機構を医療分野へ応用する発明に関し種々の出願がされている(例えば、特許文献1〜特許文献4参照)。
タンパク質分泌に関与する分子機構は、相互に関連する複数の機能単位からなり、かかる分子機構については、例えば、70年代後半から米国でR.Sheckmanが、分泌に関与するタンパク質をコードする遺伝子の研究を開始した。当該研究では、タンパク質の分泌異常を生じたパン酵母(Sacharomyces cerevisia)の変異株を正常に戻す遺伝子を探索し、その結果から、タンパク質の分泌(具体的には、輸送)に関与する分子を網羅的に解明している(例えば、非特許文献5参照)。当該研究で解明されたタンパク質分泌の基本となる分子機構は、酵母のような下等真核生物から哺乳類のような高等真核生物までの間で良好に保存されており、それゆえ、現在に至るまで、遺伝子産物(タンパク質)の分子レベルで貴重な知見をもたらしている。
しかしながら、タンパク質分泌の分子機構については、未だに解明されていない部分が多く残されており、特に、タンパク質の立体構造形成と小胞体からの輸送との関連については、更なる解明が望まれている。また、タンパク質の生合成、成熟、および輸送に重要な役割を果たす小胞体に関しては、物理的に不安定な小胞体の網状構造の保持を可能にする機構についてほとんど解明されておらず、小胞体の構造異常がタンパク質分泌・輸送機構に悪影響を及ぼす可能性を鑑みると、小胞体自体の構造およびそれを実現する為の分子機構についても解明が望まれる。
タンパク質分泌・輸送機構について未解明な部分が多く残る一因として、種属間、具体的には下等真核生物と高等真核生物との間における分子機構の相違が挙げられる。例えば、前述の小胞体における品質管理機構は、パン酵母から哺乳類に至る真核細胞に普遍的に存在するが、当該機構を構成する反応にはこれらの種間で相違を有する。具体的に、哺乳類の小胞体品質管理機構では、カルネキシン(以下、CNXと略す)/カルレティキュリン(以下、CRT略す)によるモノグルコシル化糖鎖の認識が行われ、CNX/CRTがいわゆる糖鎖依存的な分子シャペロンとして機能して高次構造不全糖タンパク質の凝集を防ぐとともに正常な高次構造の獲得を促進する。このようなCNX/CRTで実現される反応系は、カルネキシンサイクルと呼ばれる。一方、パン酵母の小胞体品質管理機構では、CNXのオルソログにモノグルコシル糖鎖を認識する能力がなく、哺乳類のようなカルネキシンサイクルは存在しない。また、哺乳類では、小胞体における品質管理機構のERADにより分解されるタンパク質が細胞質に排出され、当該タンパク質の糖鎖部分がFbs1/2(Fbx2とそのパラログ)と呼ばれるユビキチンリガーゼによって認識されるとともに、プロテアソームによる分解の認識タグであるユビキチン化が起こるが、一方、下等真核細胞では、この経路に関する明確なオルソログが見当たらない(非特許文献6および非特許文献7)。さらに、小胞体自体の構造についても、パン酵母と哺乳類とでは大きく異なっている。このように、種属間における分子機構の相違が存在していることから、前述のパン酵母の研究結果およびそれから取得される知見以外に、個々の種についてそれぞれ解析を行うことが望ましい。特に、哺乳類のタンパク質分泌・輸送機構に関与する分子の解明は、前述のコンフォメーション疾患との関連から、創薬等につながる知見を与えるので有効である。これまでのところ、上記のパン酵母変異体解析以外に、哺乳類細胞核オルガネラでのプロテオミックな解析が進行しているが(例えば、非特許文献8参照)、充分な解析結果が得られていない。
特表2002−528412号 特開2004−81143号 特開2005−65692号 特開2005−204516号 Munro,S.:Cell 48,899(1987) Sherman,M.Y.:Neuron 29,15−32(2001) Rao,R.V et al.:J.Biol.Chem.276,33869−33874(2001) Imai,Y.et al.:Cell 105,891−902(2001) Novick,P. et al.:Cell 21,205−215(1980) Spiro RG: Cell Mol.Life Sci.61,1025−1041(2004) Helenius A,Aebi M :Annu.Rev.Biochem.73,1019−1049(2004) Yates III et al.:Nat Rev Mol Cell Biol,6(9),(2005) Yokoyama,M., et al., DNA Res. 3 (5), 311−320 (1996) Kai, M. et al., J Biol Chem, 272, 24572−24578, (1997) Hua,X. et al., Cell 87 (3), 415−426 (1996) Christopher A. Ross and Michelle A. Poirier., Nature Review Cell and Moleculer Biology, vol. 6(11) pp891−898 (2005) Bridges JP., et al., J Biol Chem., 278(52), pp.52739−52746 (2003) Banno T, Kohno K. J Comp Neurol., Jun 3;369(3):462−71 (1996) Flores−Diaz MJ et al., Biol Chem., 279(21):21724−31 (2004) Toyofuku K, et al., FASEB J., Oct;15(12):2149−61 (2001)
本発明は、タンパク質分泌・輸送機構に関与する分泌・輸送機構関連タンパク質、ならびにこれらの同定・機能解析方法を提供することを目的する。特に、タンパク質分泌・輸送機構に関与するタンパク質として、小胞体構造自体および/または小胞体の機能に関与するタンパク質を同定・機能解析の対象とする。
本発明者らは、タンパク質分泌機能の探求において、タンパク質分泌・輸送機構には特に小胞体が深く関与していることに着目した。そして、小胞体の構造および/または機能に関与するタンパク質(すなわち小胞体関連タンパク質)がタンパク質分泌・輸送機構の一端を担うとの知見の下、種々の小胞体関連タンパク質について網羅的に発現阻害実験を行いこの時の表現型解析を行った。そして、鋭意検討の結果、以下の本発明に至った。
本発明は、以下の態様1−14を含む。
態様1: タンパク質分泌・輸送機構に関与する分泌・輸送機構関連タンパク質の同定・機能解析方法であって、
(a)小胞体の構造及び/または機能に関与する一群の小胞体関連タンパク質をコードする一群の対象遺伝子の塩基配列情報、あるいは小胞体の構造及び/または機能に関与する一群の小胞体関連タンパク質(対象タンパク質)のアミノ酸配列情報に基づいて、前記対象遺伝子及び/又は対象タンパク質の機能を阻害する阻害物質を調製し、そして
(b)前記阻害物質を、前記対象タンパク質を発現する細胞に導入し、当該細胞の表現型の変化に基づいて前記分泌・輸送機構関連タンパク質を同定・機能解析する
工程を含むことを特徴とする方法。
態様2: 前記阻害物質が以下のものから選択される、態様1又は2に記載の方法
1)遺伝子プロモータのリプレッサー及びアクチベーター阻害因子からなるグループから選択される、転写レベルでの発現阻害物質;
2)リボザイム、アンチセンスRNA前駆体、siRNA、shRNA及びmiRNAからなるグループから選択される、翻訳レベルでの発現阻害物質;あるいは
3)抗体及び低分子化合物からなるグループから選択される、タンパク質レベルでの発現阻害物質。
態様3: 前記阻害物質が核酸である、態様1又は2に記載の方法。
態様4: 前記阻害物質が、前記対象遺伝子を標的遺伝子としてRNA干渉を生じさせるRNA干渉核酸である、態様1ないし3のいずれか1項に記載の方法。
態様5: 前記(a)阻害物質を調製する工程は、RNA干渉核酸を選択する工程を含み、当該RNA干渉核酸選択工程では、前記標的遺伝子たる対象タンパク質のコード遺伝子の塩基配列情報中から取得される下記(1)〜(5)の規則に従う規定配列と同一の塩基配列を含むRNA干渉核酸を選択する、態様4に記載の方法。
(1) 3’末端の塩基が、アデニン、チミンまたはウラシルであり;
(2) 5’末端の塩基が、グアニンまたはシトシンであり;
(3) 3’末端の7塩基の配列において、アデニン、チミンおよびウラシルからな
る群より選ばれる一種または二種以上の塩基がリッチであり;
(4) 塩基数が、細胞毒性を生じさせずにRNA干渉を生じさせ得る数であり;
(5) 前記阻害物質が導入される細胞の全遺伝子の塩基配列のうち、前記標的遺伝子以外の他の遺伝子の塩基配列中に、前記規定配列と90%以上の同一性を有する配列が含まれない。
態様6: タンパク質分泌・輸送機構に関与する分泌・輸送機構関連タンパク質の同定・機能解析に用いるRNA干渉核酸であって、小胞体の構造及び/または機能に関与する一群の小胞体関連タンパク質をコードする一群の対象遺伝子を標的遺伝子とし、当該標的遺伝子の塩基配列中に含まれる下記(1)〜(5)の規則に従う規定配列と同一の塩基配列を含むセンス鎖と、当該センス鎖に相補的な塩基配列を含むアンチセンス鎖とが二重鎖を形成して構成されることを特徴とする、RNA干渉核酸。
(1) 3’末端の塩基が、アデニン、チミンまたはウラシルであり;
(2) 5’末端の塩基が、グアニンまたはシトシンであり;
(3) 3’末端の7塩基の配列において、アデニン、チミンおよびウラシルからな
る群より選ばれる一種または二種以上の塩基がリッチであり;
(4) 塩基数が、細胞毒性を生じさせずにRNA干渉を生じさせ得る数であり;
(5) 当該RNA干渉核酸が導入される細胞の全遺伝子の塩基配列のうち、前記標的遺伝子以外の他の遺伝子の塩基配列中に、当該記規定配列と90%以上の同一性を有する配列が含まれない。
態様7: 図1に示す小胞体関連タンパク質をコードする遺伝子を前記標的遺伝子とする、態様6に記載のRNA干渉核酸。
態様8: 前記センス鎖および前記アンチセンス鎖が、図1に示す配列番号7−99、あるいは、配列番号100−192の塩基配列のいずれかを有する、態様7に記載のRNA干渉核酸。
態様9: 前記センス鎖および前記アンチセンス鎖の二重鎖領域における少なくとも一方の鎖が、RNAとDNAとからなり、当該一方の鎖の上流側9〜13ヌクレオチドがRNAである、態様6〜8のいずれか一項に記載のRNA干渉核酸。
態様10: 態様6〜9のいずれか一項に記載のRNA干渉核酸を含むことを特徴とする、タンパク質分泌・輸送機構に関与する分泌・輸送機構関連タンパク質の同定・機能解析用キット。
態様11: 下記(1)〜(4)のいずれか1つに記載の分泌・輸送機構関連タンパク質;
(1)配列番号1記載のアミノ酸配列を含むタンパク質;
(2)配列番号1記載のアミノ酸配列において一または複数のアミノ酸が置換、欠失、付加、および/または挿入されたアミノ酸配列を含み、分泌・輸送機構に関与する生物学的機能を奏するタンパク質;
(3)配列番号2記載の塩基配列でコードされるアミノ酸配列を含むタンパク質;並びに
(4)配列番号2記載の塩基配列でコードされるアミノ酸配列において一または複数のアミノ酸が置換、欠失、付加、および/または挿入されたアミノ酸配列を含み、分泌・輸送機構に関与する生物学的機能を奏するタンパク質。
態様12: 下記(1)〜(4)のいずれか1つに記載の分泌・輸送機構関連タンパク質;
(1)配列番号3記載のアミノ酸配列を含むタンパク質;
(2)配列番号3記載のアミノ酸配列において一または複数のアミノ酸が置換、欠失、付加、および/または挿入されたアミノ酸配列を含み、分泌・輸送機構に関与する生物学的機能を奏するタンパク質;
(3)配列番号4記載の塩基配列でコードされるアミノ酸配列を含むタンパク質;並びに
(4)配列番号4記載の塩基配列でコードされるアミノ酸配列において一または複数のアミノ酸が置換、欠失、付加、および/または挿入されたアミノ酸配列を含み、分泌・輸送機構に関与する生物学的機能を奏するタンパク質。
態様13: 下記(1)〜(4)のいずれか1つに記載の分泌・輸送機構関連タンパク質;
(1)配列番号5記載のアミノ酸配列を含むタンパク質;
(2)配列番号5記載のアミノ酸配列において一または複数のアミノ酸が置換、欠失、付加、および/または挿入されたアミノ酸配列を含み、分泌・輸送機構に関与する生物学的機能を奏するタンパク質;
(3)配列番号6記載の塩基配列でコードされるアミノ酸配列を含むタンパク質;並びに
(4)配列番号6記載の塩基配列でコードされるアミノ酸配列において一または複数のアミノ酸が置換、欠失、付加、および/または挿入されたアミノ酸配列を含み、分泌・輸送機構に関与する生物学的機能を奏するタンパク質。
態様14: 図2に示す9種類の小胞体関連タンパク質の機能阻害を抑制することを含む、タンパク質分泌・輸送機構の制御方法。
本発明によればタンパク質分泌・輸送機構に関与するタンパク質、特に、小胞体の構造および/または機能に関与するタンパク質とその機能の同定・機能解析が可能となる。
発明を実施するための形態
以下、本発明の実施の形態を、実施例を挙げながら詳細に説明する。
実施の形態および実施例に特に説明がない場合には、J. Sambrook, E. F. Fritsch & T. Maniatis (Ed.), Molecular cloning, a laboratory manual (3rd edition), Cold Spring Harbor Press, Cold Spring Harbor, New York (2001); F. M. Ausubel, R. Brent, R. E. Kingston, D. D. Moore, J.G. Seidman, J. A. Smith, K. Struhl (Ed.), Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons Ltd.などの標準的なプロトコール集に記載の方法、あるいはそれを修飾、改変した方法を用いる。また、市販の試薬キットや測定装置を用いている場合には、特に説明が無い場合、それらに添付のプロトコールを用いる。
なお、本発明の目的、特徴、利点、およびそのアイデアは、本明細書の記載により、当業者には明らかであり、本明細書の記載から、当業者であれば、容易に本発明を再現できる。以下に記載された発明の実施の形態および具体的な実施例などは、本発明の好ましい実施態様を示すものであり、例示または説明のために示されているのであって、本発明をそれらに限定するものではない。本明細書で開示されている本発明の意図並びに範囲内で、本明細書の記載に基づき、様々な改変並びに修飾ができることは、当業者にとって明らかである。
本明細書中、「タンパク質分泌・輸送機構」、「カーゴ分泌系タンパク質」、「膜系タンパク質」、「小胞体関連タンパク質」の定義は、背景技術において前述した通りである。
また、「小胞体関連タンパク質」のうち、特に、小胞体膜に関連するタンパク質を「小胞体膜関連タンパク質」と呼ぶ。ここで、「小胞体膜に関連する」とは、小胞体の構造(例えば、網状構造の形成や保持等)や、小胞体の膜経路における機能(例えば、品質管理機構やトランスロケーション等)に関連する意である。例えば、実施例では、後述のように、Heraデータベースに登録されている499種のタンパク質が「小胞体関連タンパク質」に相当し、そのうちの93種の膜系タンパク質(ここでは、シグナルアンカー膜タンパク質とそれ以外の膜タンパク質とを含む)が「小胞体膜関連タンパク質」に相当する。また、チロシナーゼ(以下、Tyr−YFPと略す)が「カーゴ分泌系タンパク質」に相当する。
また、「真核細胞」とは、特に断りがない限り、酵母や原生生物といった下等な単細胞真核生物の細胞から、菌類、植物、動物といった高等な多細胞真核生物の細胞を包含する。また、「分泌系タンパク質の成熟」とは、生合成された分泌系タンパク質が目的地で所望の機能を発現可能な状態になることであり、例えば、小胞体における糖鎖付加等の修飾や立体構造の形成、ゴルジ体における修飾等により成熟する。小胞体において成熟した分泌系タンパク質は、小胞体膜からなる膜小胞に取り込まれ、ゴルジ体に向け細胞質内(すなわち、小胞体―ゴルジ体中間区画)を輸送される。そして、ゴルジ体に到達すると糖鎖付加等の修飾が適宜行われ、更に、細胞外やオルガネラの所望の場所に輸送(分泌)される。
また、「RNA干渉」とは、機能阻害したい遺伝子の特定領域と相同な、好ましくは同一の塩基配列を有するセンス鎖と、当該センス鎖と相補的な塩基配列を有するアンチセンス鎖とからなる二本鎖RNAが標的遺伝子の転写産物であるmRNAの相同な部分を干渉破壊するという現象である。
<1.タンパク質分泌・輸送機構に関与する分子の同定・機能解析方法>
以下においては、本発明に係る、タンパク質分泌・輸送機構に関与する分泌・輸送機構関連タンパク質の同定・機能解析方法について説明する。
本発明の方法は、
(a)小胞体の構造及び/または機能に関与する一群の小胞体関連タンパク質をコードする一群の対象遺伝子の塩基配列情報、あるいは小胞体の構造及び/または機能に関与する一群の小胞体関連タンパク質(対象タンパク質)のアミノ酸配列情報に基づいて、前記対象遺伝子及び/又は対象タンパク質の機能を阻害する阻害物質を調製し、そして
(b)前記阻害物質を、前記対象タンパク質を発現する細胞に導入し、当該細胞の表現型の変化に基づいて前記分泌・輸送機構関連タンパク質を同定・機能解析する
工程を含むことを特徴とする。
本明細書において、「分泌機構関連タンパク質」とは、細胞内において小胞体で生合成された種々の分泌系タンパク質を成熟化し目的地に運搬する、という上述したタンパク質分泌及び/又は輸送のための機構を維持及び/又は制御する機能を有するタンパク質を意味する。後述するように、「分泌・輸送機構関連タンパク質」には、「膜系タンパク質」(より具体的には、前述の「小胞体膜関連タンパク質」)が一例として包含される。一方、「カーゴ分泌系タンパク質」は、分泌・輸送機構関連タンパク質の作用機序により取得される産生物に相当する。
本発明の方法は、解析対象とする分泌・輸送機構関連タンパク質を発現可能な系であれば、いずれの発現系にも適用可能である。例えば、発現系は、下等真核細胞から哺乳動物細胞に至る全ての真核細胞に対して適用可能であり、パン酵母、線虫、昆虫、哺乳類等の細胞に任意に適用可能である。
また、解析対象は特には限定されず、分泌・輸送機構関連タンパク質をコードする遺伝子を含む(と予測される)一群の遺伝子又は分泌・輸送機構関連タンパク質を含む(と予測される)一群のタンパク質が対象となる。好ましくは、分泌・輸送機構関連タンパク質を高い確率で含むと予測される、小胞体の構造及び/または機能に関与する一群の小胞体関連タンパク質、またはこれらのタンパク質をコードする遺伝子が対象となる。
本明細書において後述する実施例では、分泌・輸送機構関連タンパク質の一例として、小胞体関連タンパク質(より詳細には、小胞体膜関連タンパク質)を対象としている。かかる対象となる分泌・輸送機構関連タンパク質は、機能が未知および既知のいずれであってもよい。機能未知のものを対象とした場合には、新たに機能を同定することが可能となり、一方、機能既知のものを対象とした場合には、機能の確認および本発明の方法の有効性の実証が可能となる。
本発明に係る方法の一態様について説明すると、まず、公開されているデータベース等の情報源から、分泌・輸送機構関連タンパク質をコードする遺伝子を含む一群の対象遺伝子(対象タンパク質コード遺伝子)の塩基配列情報、あるいは分泌・輸送機構関連タンパク質を含む一群の対象タンパク質のアミノ酸配列情報を取得する。情報源は任意であり、例えば、対象タンパク質のアミノ酸配列または塩基配列に関する情報を格納したデータベース等を用いることができる。これらの情報が得られたタンパク質又は遺伝子のうち1つ又は複数を、分泌・輸送機構関連タンパク質の候補である対象タンパク質又は対象タンパク質コード遺伝子(対象遺伝子)として、本発明の解析の対象とする。
本発明の方法では、このような情報源を利用して対象タンパク質又は対象遺伝子の配列情報、例えば対象遺伝子のDNAまたはRNAの塩基配列を取得する。本発明においては、対象タンパク質コード遺伝子の少なくとも一部の領域の塩基配列を取得できればよく、当該一部の領域は、一つのコード領域であっても複数のコード領域であってもよい。例えば、<2>で後述するRNA干渉核酸を発現阻害物質として利用する場合、取得される対象タンパク質コード遺伝子の塩基配列情報は、後述するように、RNA干渉核酸の標的となる規定配列を取得可能であれば塩基長、位置等について特には限定されず、スプライシング前および後のいずれの塩基配列に関するものであってもよい。
例えば、後述の実施例では、分泌・輸送機構関連タンパク質を含みうるソース(対象タンパク質)として、一群の小胞体関連タンパク質を解析した。この場合、例えば、McGill Universityが提供する、ヒト細胞の小胞体関連タンパク質に関する公共のデータベース「Human ER Apercu (Hera)」(http://www.mcb.mcgill.ca/〜hera/ db_access/参照)を利用しうる。かかるデータベースは、ヒト細胞の小胞体に存在する499種の小胞体関連タンパク質に関する情報を格納している。実施例では、図1に示すように、Heraに収納された小胞体関連タンパク質のうち、特に、小胞体膜関連タンパク質93種を解析の対象としている。そして、これらについて解析を行った結果、特に、図2に示す9種の小胞体関連膜タンパク質がタンパク質分泌・輸送機構へ関与することが明らかとなった。
あるいは、小胞体関連タンパク質以外を本発明の解析方法の対象とする場合には、例えば、以下のような情報源から、対象タンパク質または対象遺伝子の配列情報を得ることができる。
本発明の方法では、先ず、工程(a)において、小胞体の構造及び/または機能に関与する一群の小胞体関連タンパク質をコードする一群の対象遺伝子の塩基配列情報、あるいは小胞体の構造及び/または機能に関与する一群の小胞体関連タンパク質(対象タンパク質)のアミノ酸配列情報に基づいて、前記対象遺伝子及び/又は対象タンパク質の機能を阻害する阻害物質を調製する。そして、対象タンパク質の発現系(具体的には細胞)にこの阻害物質を導入して当該遺伝子由来のタンパク質の機能を阻害し、かかる阻害により生じる表現型の変化を解析する。このようにして得られた表現型の結果に基づいて、解析対象とした分泌・輸送機構関連タンパク質の機能を同定する。
阻害物質は、対象タンパク質コード遺伝子又は対象タンパク質の発現又は生物学的機能の発揮を阻害可能な物質であれば特には限定されない。塩基配列情報及び/又はアミノ酸配列の情報が入手できれば、当業者は、公知の手法を用いて当該配列を有する遺伝子またはタンパク質に特異的な阻害物質を調製することが可能である。阻害物質は、例えば下記のものから選択することが可能である:
1)遺伝子プロモータのリプレッサー及びアクチベーター阻害因子からなるグループから選択される、転写レベルでの発現阻害物質;
2)リボザイム、アンチセンスRNA前駆体、siRNA、shRNA及びmiRNAからなるグループから選択される、翻訳レベルでの発現阻害物質;あるいは
3)抗体及び低分子化合物からなるグループから選択される、タンパク質レベルでの発現阻害物質。
これらの組成物は、公知技術を適宜用いることによって調製したものを利用することができる。転写レベルでの発現阻害物質である遺伝子プロモータのリプレッサー及びアクチベーター阻害因子は、対象遺伝子の塩基配列情報を利用し、公知の方法を用いて調製することができる。翻訳レベルでの発現阻害物質である、例えばリボザイム、アンチセンスRNA前駆体等は例えば、対象遺伝子の塩基配列情報を利用し、公知の方法を用いて調製することができる。RNA干渉核酸であるsiRNA、shRNA、miRNAは本明細書において後述する方法を用いて調製することができる。また、タンパク質レベルでの発現阻害物質である抗体及び低分子化合物は、対象タンパク質のアミノ酸配列情報を利用し、公知の方法を用いて調製することができる。
調製が比較的簡便に可能であること、一度に多種、多数の対象を解析できることから、阻害物質は好ましくは核酸である。特に、本発明に係る方法で用いる阻害物質は、阻害効果が高く取り扱いが簡便であり、かつ対象タンパク質コード遺伝子に特異的である(言い換えれば、解析対象以外のタンパク質への阻害効果、すなわちoff−target効果が低い)点から、対象遺伝子を標的遺伝子としてRNA干渉を生じさせる、siRNA、shRNA等のRNA干渉核酸である。このような発現阻害物質たるRNA干渉核酸については、詳細を<2>で説明するが、特に、以下のようなRNA干渉核酸選択工程により選択したRNA干渉核酸を用いることが好ましい。それにより、発現抑制効果が高くoff−target効果が低い、特に優れたRNA干渉核酸を発現阻害物質として用いることが可能となる。
RNA干渉核酸の選択について具体的に説明する。ここでは、前記阻害物質を用意する工程が、RNA干渉核酸選択工程を含み、当該RNA干渉核酸選択工程では、前に工程で取得した対象タンパク質コード遺伝子の情報(ここではDNAまたはRNAの塩基配列情報)の中からさらに選択的に取得される後述の「規定配列」と相同な、好ましくは同一の塩基配列を含むRNA干渉核酸を選択する。具体的には、この「規定配列」と相同な、好ましくは同一の塩基配列を含むセンス鎖と、当該センス鎖に相補的な塩基配列を含むアンチセンス鎖とが二重鎖を形成してなるRNA干渉核酸を選択する。
ここで、「規定配列」とは、対象タンパク質コード遺伝子の塩基配列中に含まれる塩基配列であって、下記(1)〜(5)の規則;
(1) 3’末端の塩基が、アデニン、チミンまたはウラシルであり;
(2) 5’末端の塩基が、グアニンまたはシトシンであり;
(3) 3’末端の7塩基の配列において、アデニン、チミンおよびウラシルからな
る群より選ばれる一種または二種以上の塩基がリッチであり;
(4) 塩基数が、細胞毒性を生じさせずにRNA干渉を生じさせ得る数である
に従う規定配列と相同な、好ましくは同一の塩基配列からなり;
前記阻害物質が導入される細胞の全遺伝子の塩基配列のうち、RNA干渉の標的である対象タンパク質コード遺伝子(すなわち標的遺伝子)以外の他の遺伝子の塩基配列中に、当該規定配列と90%以上の同一性を有する配列が含まれない、に従う配列である。
かかる規定配列は、RNA干渉の標的となる塩基配列である。規定配列については、<2>で詳述するので、ここでは説明を省略する。なお、RNA干渉核酸の構造、「同一性」や「相補」の定義等の詳細についても、<2>において述べるので、ここでは省略する。
本発明の方法は、次いで工程(b)において、調製された阻害物質を、前記対象タンパク質を発現する細胞に導入し、当該細胞の表現型の変化に基づいて前記分泌・輸送機構関連タンパク質を同定・機能解析する
本発明の方法において、阻害物質の発現系(細胞)への導入は、阻害物質の種類等に応じ、常法から適切な方法を適宜選択できる。例えば、実施例のように、阻害物質としてRNA干渉核酸(具体的にはsiRNA)を導入する場合には、常法に従い、トランスフェクション、エレクトロポレーション、リポフェクションなどによってRNA干渉核酸を直接細胞内に取り込ませてもよい。また、転写産物としてsiRNAを与えることが可能な発現ベクターを作製し、同様の方法によって細胞内に導入することもできる(WO01/36646、WO01/49844)。
阻害物質がRNA干渉核酸以外の核酸の場合も、同様にトランスフェクション等によって細胞内へ導入することが可能である。
阻害物質がタンパク質の場合は、阻害物質タンパク質の細胞の培養系への直接の添加、阻害物質タンパク質をコードする遺伝子を含む発現ベクターを用いた細胞の形質転換等によって阻害物質を細胞内へ導入することができる。
阻害物質は、対象遺伝子及び/又は対象タンパク質の機能を阻害することができる物質であれば特に限定されない。「対象遺伝子及び/又は対象タンパク質の機能を阻害する」とは、対象遺伝子の発現を阻害する、対象タンパク質の発現を阻害する、及び/又は対象タンパク質の機能を阻害することを含む。
「対象遺伝子の発現を阻害する」とは、対象遺伝子の転写及び/又は翻訳を阻害し、結果として、対象タンパク質の発現を減少または阻止することを意味する。「対象タンパク質の発現を阻害する」とは、対象遺伝子の発現を阻害することまたは翻訳後の適切な修飾を阻害することによってタンパク質の発現を減少または阻止することを意味する。「対象タンパク質の機能を阻害する」とは、発現した対象タンパク質の生物学的機能を減少または阻止することを意味する。好まし態様としては、対象遺伝子または対象タンパク質の発現を阻害することにより、細胞内における生物学的に活性な対象タンパク質の存在量を減少させることを意味する。
例えば、通常、阻害対象となる対象タンパク質コード遺伝子由来のmRNA量が減少すれば、当該タンパク質自身の生成が抑制(阻害)されることから、mRNA量が実質的に減少していれば、その変化の幅の大小にかかわらず、対象タンパク質の発現阻害が実現されているとみなせる。本発明の一態様として、詳細は実施例で後述するが、対象タンパク質コード遺伝子に対する発現阻害物質を導入すると、図3〜5に示すように、当該遺伝子由来のmRNA量が減少して当該遺伝子の発現が阻害された。それにより、解析対象であるタンパク質の機能が阻害され、図7および8に示すように発現系において表現型に変化が生じる場合がある。
阻害物質の被導入体である発現系(細胞)において、その変化を解析すべき表現型は特には制限されない。例えば、被導入体の形態、被導入体内物質量、被導入体が分泌する物質量、被導入体内物質の動態、被導入体間接着、被導入体の運動、被導入体の寿命等を解析してもよい。
阻害物質の導入により、これらのいずれかの表現型が変化する場合には、阻害物質の標的となった対象タンパク質を、分泌・輸送機構関連タンパク質と同定する。さらに、表現型の変化の種類、程度等に応じて、分泌・輸送機構関連タンパク質と同定されたタンパク質の機能を解析することが可能である。限定されるわけではないが、分泌・輸送機構関連タンパク質であるとの同定は、例えば、その分子のRNA干渉法による発現抑制によりカーゴ分泌系タンパク質(TYR−YFPあるいはゴルジ膜タンパク質)が小胞体に蓄積した時、あるいは、下記に記する通り、小胞体ネットワークの三叉構造の減少として定義される。
各表現型を解析する手段としては、表現型の変化を検出して変化の有無を確認・評価し、それにより、対象タンパク質の機能阻害の影響および効果を評価可能であれば、特には限定されない。各表現型に応じて、適切な従来のアッセイ方法を適宜用いることが可能である。例えば、後述の実施例では、表現型として、発現系(細胞)における小胞体の網状構造の変化と、カーゴ分泌系タンパク質(Tyr)の動態変化とを見ている。これらの変化は、蛍光プローブを用いその蛍光シグナルを利用して顕微鏡あるいは肉眼により検出可能である。例えば、実施例のように、共焦点レーザ顕微鏡により検出を行ってもよい。図7、8および10に示すように、解析対象タンパク質の阻害物質であるsiRNA導入体で現れる表現型の変化は、対象タンパク質コード遺伝子の発現阻害およびそれに伴う解析対象タンパク質の機能阻害の結果生じるものである。したがって、当該変化から、解析対象タンパク質の機能がその表現型に関与するものであると同定することが可能である。
表現型の解析には、検出および評価の精度向上や簡便化等の為、プローブ等を適宜用いることが好ましい。例えば、小胞体構造の変化を顕微鏡観察により検出する場合には、蛍光プローブや発光プローブを用いこれらのシグナルを検出して表現型の変化を解析してもよい。プローブとして、例えば、公知の蛍光タンパク質や発光タンパク質を用いることができる。より具体的には、実施例のようにYFP(黄色蛍光タンパク質)を用いてもよく、あるいは、EGFP(強化緑色蛍光タンパク質)、HcRed(近赤外蛍光タンパク質)、Luc(ルシフェラーゼタンパク質)等を用いてもよい。これらのプローブのシグナル検出および解析には、従来のアッセイ方法を適用することが可能である。
実施例1では、図6〜8に示すように、小胞体の構造変化検出の為のプローブとしてYFPを用いている。また、実施例2では、図10に示すように、分泌系タンパク質の動態変化検出の為のプローブとしてYFPを用いている。実施例1および実施例2では、YFPを安定発現するHeLa細胞およびCOS細胞が発現系として用いられる。これらの発現系は、YFPをコードするDNAが挿入されるとともにプロモータ等の領域を適切に有するベクターを導入することにより得られる。導入に使用するベクターや導入方法については、従来のものを適用可能である。例えば、ベクターは被導入体である細胞に応じて適宜選択できるが、レトロウィルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノ関連ウイルスベクター、ワクシニアウイルスベクター、レンチウイルスベクター、ヘルペスウイルスベクター、アルファウイルスベクター、EBウイルスベクター、パピローマウイルスベクターフォーミーウイルスベクター等や、カチオニックリポソーム、リガンドDNA複合体、ジーンガン等の非ウイルスベクター等が挙げられる。また、ウイルスベクターではなく、ダンベル型DNA、ヌクレアーゼ耐性を有する修飾DNA、またはnaked plasmidも好適に用いることができる。なお、これらのベクターは、<2>で後述するRNA干渉核酸(具体的にはshRNA)の作製にも使用可能である。
実施例1で後述するが、YFPを安定発現するHeLa細胞では、図6〜9に示すように、細胞内で発現したYFPが小胞体膜に取り込まれ、それにより、小胞体が蛍光を発する。ここでは、小胞体膜に取り込まれ小胞体膜において発現するYFPをERm−YFPと呼ぶ。ERm−YFPが発現するHeLa細胞において、図1に示す小胞体膜関連タンパク質の機能を阻害するsiRNAをそれぞれ導入すると、解析対象である小胞体膜関連タンパク質の発現が阻害されその機能が抑制される。そして、図6〜9に示すように、機能が阻害されたタンパク質が分泌・輸送機構に関与するタンパク質である場合には、小胞体の構造、特に網状構造に変化が生じ、当該変化をERm−YFPの蛍光シグナルにより視覚的に検出することが可能となる。「網状構造の変化」とは、siRNAの導入前後を比較して認められる任意の形態変化であり、例えば、網状構造自体の消失、管腔経路の狭小化または閉塞化、網状構造の基本単位となる三叉構造の切断(消失)による網密度の低下等が挙げられる。
また、実施例2ではCOS細胞を用い、カーゴ分泌系タンパク質であるチロシナーゼ(Tyr)がYFPと一体的に発現する発現系を実現している。ここでは、このように一体的に発現するタンパク質をTyr−YFPと呼ぶ。このようなTyr−YFPを安定発現する細胞は、TyrをコードするDNAとYFPをコードするDNAとが挿入されるとともにプロモータ等の領域を適切に有するベクターを導入することにより得られる。この場合のベクターや導入方法については、上記のERm−YFP導入の場合と同様である。Tyr−YFPが発現するCOS細胞においては、非許容温度(39度以上42度以下)での培養により、Tyr−YFPはミスフォールディングして小胞体に繋留する。この状態で、図1に示す小胞体膜関連タンパク質の発現を阻害するsiRNA(配列番号7−99)をそれぞれ導入すると、解析対象である小胞体膜関連タンパク質の発現が阻害されその機能が抑制される。そして、許容温度(37度以下20度以上)では、未処理の細胞ではTyr−YFPのフォールディングが完了して小胞体から出て、リソソーム系に移行する。図10に示すように、機能阻害されたタンパク質が分泌・輸送機構に関与するタンパク質である場合には、Tyr−YFPの動態、具体的には分布(局在状態)に変化が生じ、当該変化をTyr−YFPの蛍光シグナルにより視覚的に検出することが可能となる。また、分泌・輸送機構に関与するタンパク質が機能阻害されると、Tyr−YFPの成熟、特に、小胞体における立体構造形成や品質管理機構に異常が生じ、小胞体管腔経路ないにYFPが蓄積する。そして、それに伴い、小胞体構造(特に網状構造)に変化が生じる。
上記のように、小胞体の網状構造の変化、すなわち、小胞体膜関連タンパク質の機能阻害による小胞体網状構造の異常は、その発生要因に応じて、以下の二つに大別することができる。まず一つは、機能阻害する小胞体膜関連タンパク質が、小胞体の網状構造の形成および保持に直接的に関与するタンパク質であり、当該タンパク質の機能阻害が直接的に小胞体構造に影響して異常を生じる場合である。一方、小胞体の網状構造の形成および保持に直接的には関与しないが、分泌系タンパク質の立体構造形成等の成熟過程や輸送過程において制御等で関与する小胞体膜関連タンパク質であり、当該タンパク質の機能阻害により分泌系タンパク質の成熟過程や輸送過程に異常が生じ、その二次的結果として、小胞体において構成成分の形態や局在に異常が生じて小胞体構造に異常を生じる場合である。
小胞体網状構造の変化を検出する方法の一つに、例えば、三叉構造の定量に基づく検出方法が挙げられる。「三叉構造」とは、分岐して異なる三方向に延在する小胞体の三つの管腔経路が一点で交わって形成される構造であり、このような三叉構造が複数存在することによって、複雑に分岐した網状構造が形成される。例えば、実施例1および実施例2において、小胞体膜関連タンパク質の機能を阻害した場合(すなわちsiRNAを導入した場合)と機能を阻害しない場合(すなわちsiRNAを導入しないコントロールの場合に相当する)とについて、顕微鏡で観察される小胞体(すなわち、図6〜8、10において蛍光を示す部分)の所定領域における三叉の数をそれぞれ定量し、各々の場合における三叉の数を比較する。コントロールにおける三叉の数を基準とし、当該コントロールと比較して三叉の数が有意に減少していたら、小胞体の網状構造に異常が生じていると判断する。有意な減少とは、例えば、コントロールに対して40%減少、好ましくは50%減少、より好ましくは60%減少している場合をさす。このような三叉構造に基づく構造異常の検出・評価では、複数の前記「所定領域」について三叉を定量することが好ましい。例えば、小胞体を直径5μmの円で5〜10つの領域に区画し、各領域における三叉の数を定量することが好ましい。定量の方法は特には限定されないが、例えば、目視、計算機による処理等を用いることが可能であり、視覚的検査および数学的計算により実現される。
また、本発明の方法では、上記のような蛍光シグナルの検出において、蛍光消光回復法(FRAP法)や蛍光相関分光法(FCS法)を利用することが可能である。FRAP法やFCS法により、細胞内での分子の拡散状態を解析することが可能となる。例えば、これらの方法を用いて、構造異常の分泌系タンパク質(例えば、実施例2におけるミスフォールドしたTyr−YFP)の検出を行ってもよい。なお、FRAP法やFCS法による拡散解析の手法については、「FCSとFRAPによる細胞内分子の拡散、結合解析」、著:和田他、羊土社「バイオイメージングがわかる(2005)」、Kamada et al.,J.Biol.Chem ,279(20)21533−21542,2004、Kato−Homma et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,102(43),15688−15693,2005に記載された公知の手法を用いることができ、ここでは説明を省略する。本発明ではこれらの方法を常法に従って利用することができる。
例えば、小胞体の網状構造の変化が三叉構造の切断によるものであるか否かを解析するのにFRAP法を利用してもよい。FRAP法では、まず、YFPを発現した細胞の一部にレーザ光を照射して不可逆的に蛍光を消失させていわゆるブリーチ領域を形成する。そして、ブリーチ後におけるYFPの移動に伴う当該ブリーチ領域での蛍光の回復を検出することにより、YFPの拡散状態を解析する。三叉構造が切断されずに正常に形成されていれば、小胞体の網状構造に沿ってYFPが移動するので、蛍光強度はブリーチ前の強度に回復する。一方、三叉構造が切断されていれば、YFPが移動不可(immobile)である為、蛍光強度の回復は少なくなる。したがって、FRAP法の結果に基づき、小胞体網状構造の異常が三叉構造の切断によるものである否かを検出することが可能となる。例えば、後述するオルファクトメジン(OLFM)(Yokoyama,M., et al., Identification and cloning of neuroblastoma−specific and nerve tissue−specific genes through compiled expression profiles DNA Res. 3 (5), 311−320 (1996))の機能阻害による小胞体網状構造の異常では、ブリーチ後の蛍光強度がブリーチ前の蛍光強度と同程度に回復することから、YFPの移動が可能な状態、すなわち三叉構造が切断されていない状態であると解される。したがって、網状構造の異常は、三叉構造の切断以外の要素に起因すると推察される。
あるいは、カーゴ分泌系タンパク質の成熟化異常を検出するために、ゴルジ膜タンパク質の局在を利用しても良い。ゴルジ膜タンパク質は、検出を容易にするためにGFPと融合させたものを細胞に発現させたものを用いる。正常な成熟化が起きる場合には、核の近傍に特有のリボン状構造を作る。これが正しい成熟化が起こらない場合には、小胞体への滞留が起きる(図15、16)。
オルファクトメジン(OLFM)の場合と同様に、PAP2B(Kai, M., Wada, I., Imai, S., Sakane, F. and Kanoh, H. (1997) Cloning and characterization of two human isozymes of Mg2+−independent phosphatidic acid phosphatase. J Biol Chem, 272, 24572−24578)の発現抑制によっても、TYR−YFPの成熟化の異常と、ゴルジ膜タンパク質の小胞体への滞留が認められる。 以上のように、本発明に係る方法によれば、タンパク質分泌・輸送機構における様々なレベルでの異常を検出することが可能となる。この方法では、従来のようなタンパク質分泌の有無やアポトーシス発生の有無に基づきその分子のタンパク質分泌・輸送機構への関与を二者択一的に解析する方法とは異なり、精度が高くより詳細な解析を実現することが可能となる。また、本発明の方法では、既存のデータベースを利用しその情報に基づき全てのタンパク質分泌・輸送機構関連タンパク質について解析することが可能である為、容易に効率良くかつ網羅的に解析を行うことが可能となる。本発明は、一群の対象タンパク質の中から、分泌機能関連タンパク質を新たに同定することが可能であるだけでなく、既に、分泌機能に関連することが示唆されているタンパク質について、より具体的な生物学的機能の解析も可能にするものである。よって、分泌・輸送機構関連タンパク質として公知のタンパク質の機能解析も本発明の範囲に含まれる。
なお、上記においては小胞体膜関連タンパク質を解析対象とする場合を説明したが、これ以外のタンパク質について本発明を適用可能であることは言うまでもない。また、本発明の方法で使用するデータベースは、上記のHera以外でも適用可能であることは言うまでもない。
また、本発明の方法は、発現量の少ないタンパク質であっても解析対象とすることが可能であり、それゆえ、発現量が少ない解析対象に対して見落としが生じるマイクロアレイ等に比べて、より精度の高い良好な解析が可能となる。また、本発明の方法によれば、分泌・輸送機構に関与するタンパク質の一つ一つについて各々独立別個に解析を行うことができるので、各タンパク質の個別の機能について同定が可能になるとともに、種々のタンパク質について網羅的に解析を行うことにより、分泌・輸送機構におけるタンパク質相互の関連を解析することが可能となる。また、例えば、複数のタンパク質の機能を同時にまたはタイミングをずらして阻害することにより、タンパク質相互の関連を明らかにすることが可能となり、その結果、分子同士が相互に複雑に機能して実現されるタンパク質分泌・輸送機構をより詳細に解明することが可能となる。例えば、RNA干渉核酸を被導入体である細胞に一種単独で導入した場合には、当該RNA干渉核酸の標的となる分泌・輸送機構関連タンパク質を同定し、個別に機能を解析することが可能となる。一方、それぞれ異なるタンパク質を標的とするRNA干渉核酸複数種類を、同時またはタイミングをずらして導入した場合には、複数種類の分泌・輸送機構関連タンパク質を総括的に機能阻害することが可能となり、その結果、分泌・輸送機構関連タンパク質の相互作用を解析することが可能となる。
さらに、本発明の方法は、下等な真核細胞から高等な真核細胞に至るまで所望の細胞に適用可能である為、例えばパン酵母から哺乳動物に至るまで幅広い種の各々についてそれぞれタンパク質分泌・輸送機構を解析することが可能である。したがって、これまでは種属間の相違から有意な知見が得られていなかったタンパク質分泌・輸送機構についても有意な知見の取得が可能となる。
本発明の方法により得られたタンパク質分泌・輸送機構に関する知見は、種々の用途に用いることが可能である。例えば、疾患に関連する分泌系タンパク質の機構について得られた知見は、疾患の予防や治療に有意である。特に、疾患との関連性が深いフォールディングに関する知見は、背景技術において前述したフォールディング異常に関わる各種疾患における創薬につながるブレークスルーとなり得るので有意である。
<2>タンパク質分泌・輸送機構に関与する分泌・輸送機構関連タンパク質の同定・機能解析に用いるRNA干渉核酸
本発明に係るタンパク質分泌・輸送機構に関与する分泌・輸送機構関連タンパク質の同定・機能解析に用いる阻害物質は、好ましくはRNA核酸である。本発明のRNA干渉核酸は、分泌・輸送機構関連タンパク質をコードする遺伝子を標的遺伝子とし、当該標的遺伝子の塩基配列中に含まれる、下記(1)〜(5)の規則に従う規定配列と相同な、好ましくは同一の塩基配列を含むセンス鎖と、当該センス鎖に相補的な塩基配列を含むアンチセンス鎖とが二重鎖を形成して構成される。
(1) 3’末端の塩基が、アデニン、チミンまたはウラシルであり;
(2) 5’末端の塩基が、グアニンまたはシトシンであり;
(3) 3’末端の7塩基の配列において、アデニン、チミンおよびウラシルからな
る群より選ばれる一種または二種以上の塩基がリッチであり;
(4) 塩基数が、細胞毒性を生じさせずにRNA干渉を生じさせ得る数であり;
(5) 当該RNA干渉核酸が導入される細胞の全遺伝子の塩基配列のうち、前記標的遺伝子以外の他の遺伝子の塩基配列中に、当該規定配列と90%以上の同一性を有する配列が含まれない。
RNA干渉核酸は、siRNA等の二本鎖型であってもよく、ヘアピン構造を有するRNA(short hairpin RNA:shRNA)等の一本鎖型であってもよい。shRNAは、二重鎖領域における一方の鎖の3'末端と、当該二重鎖領域における他方の鎖の5'末端とがループ部で連結して一本鎖を構成するものである。かかるshRNAは、一本鎖RNAの5'末端または3'末端に一重鎖の状態で突出したオーバーハング部を有していても良い。このようなshRNAは、WO01/49844等、公知の手法に従って設計することができる。
なお、これらの核酸は、その名称にRNAが含まれることに関わらず、RNAから成っていても、DNAから成っていても、RNAとDNAの両方から成っていてもよい。そして、天然のヌクレオチドあるいは人工のヌクレオチドのいずれから構成されてもよく、また、これらの核酸の複数種類の混成であってもよい。人工のヌクレオチドとしては、例えば、天然のヌクレオチドの塩基の一部に化学修飾がなされているような核酸アナログでもよい。化学修飾としては、例えば、リン酸結合、リボース、核酸塩基、3’および/または5’末端等の化学修飾が挙げられる。
RNA干渉の標的となる標的遺伝子の塩基配列は、分泌・輸送機構関連タンパク質をコードする遺伝子から転写される転写産物が有する塩基配列であって、上記(1)〜(5)の規則を満たすものであれば、遺伝子のどの部分でもかまわない。ここで、転写産物は、スプライシング前のhnRNAでも、スプライシング後のmRNAでもよい。本発明に係るRNA干渉核酸に関し、特に二重鎖領域におけるヌクレオチド構成は、RNA型、DNA型、ハイブリッド型、キメラ型のいずれであってもよい。ここで、「RNA型」は、RNAからなる核酸、「DNA型」は、DNAからなる核酸、「ハイブリッド型」は核酸が二重鎖領域を有するとき、二重鎖領域における一方の鎖がRNAで、もう一方の鎖がDNAから成る核酸、「キメラ型」は、二重鎖領域においてRNAとDNAが同一鎖に含まれている核酸をいう。例えば、ハイブリッド型構造は、被導入体に導入した際に標的遺伝子の発現を抑制する活性を有するものであれば構造は特には限定されないが、センス鎖がDNAで構成されアンチセンス鎖がRNAで構成された二本鎖ポリヌクレオチドであることが好ましい。
また、キメラ型構造は、被導入体に導入した際に標的遺伝子の発現を抑制する活性を有するものであれば構造は特には限定されない。RNA干渉に用いられる核酸は、構造上、機能的なアシンメトリー性(非対称性)を有する傾向が認められることから、RNA干渉を生じさせるという目的からすると、センス鎖の5'末端側の半分、アンチセンス鎖の3'末端側の半分はRNAで構成されることが望ましい。キメラ構造を有する核酸では、被導入体内おける安定性や製造コスト等の点から、RNAの含量をできるだけ少なくすることが好ましい。そこで、高い標的遺伝子の発現抑制効果を維持しつつRNA含量を低減可能なRNA干渉核酸について鋭意検討したところ、二重鎖領域において、センス鎖の5’末端から9〜13ポリヌクレオチドの部分、およびアンチセンス鎖の3’末端から9〜13ポリヌクレオチドの部分(例えば、センス鎖およびアンチセンス鎖の前記各末端から11ポリヌクレオチド、好ましくは10ポリヌクレオチド、さらに好ましくは9ポリヌクレオチドの部分)はRNAで構成されることが望ましく、特に、アンチセンス鎖の3’末端側が当該構成を有することが望ましい。なお、センス鎖のRNA部分とアンチセンス鎖のRNA部分とは、必ずしも、その位置が一致して相補的に結合していなくてもよい。このようなRNA干渉核酸に関しては、WO03/044188で詳細を開示している。
本明細書中では、規定配列がDNAの配列であればチミンが、RNAの配列であればウラシルが対応する。また、「相補的な配列」とは、水素結合によって結合できる塩基対の並びによって構成される配列である。例えば、グアニンとシトシンとの相補的な水素結合(G−C水素結合)においては三つの水素結合部位が形成されるのに対し、アデニンとチミンまたはウラシルとの相補的水素結合(A−(T/U)水素結合)においては二つの水素結合部位が形成される。このため、G−C水素結合に対し、A−(T/U)水素結合のほうが結合力は弱い。上述のように、「相補的な配列」には、これらの天然の塩基によって構成される配列だけでなく、イノシンや塩基アナログなどの人工的な塩基によって構成される配列も含む。したがって、相補的な水素結合は、二つあるいは三つに限らず、一つでも四つ以上でも構わない。なお、本発明において、センス鎖とアンチセンス鎖とが「相補である」とは、両鎖の塩基配列間で全ての配列が水素結合を形成する完全相補状態はもちろんのこと、ここでは、RNA干渉を生じさせるという機能を失わない範囲であれば、両鎖間に部分的に水素結合を形成しない領域が存在する状態も含める(言い換えれば、対合するセンス鎖およびアンチセンス鎖の二重鎖領域は、完全に対合しているものに限定されず不対合部分を含む)。具体的に、例えば、一方の鎖の塩基と相補でない塩基が他方の鎖の相当部分に含まれるいわゆるミスマッチ(対応する塩基が相補的でない)場合や、一方の鎖の塩基に相当する塩基が存在しないいわゆるバルジ(対応する塩基が欠失している)場合等が挙げられる。
また、「規定配列と相同な塩基配列」とは、標的遺伝子配列(またはその一部)に中程度または高程度にストリンジェントな条件下でハイブリダイズすることが可能な塩基配列のことであり、規定配列を有する遺伝子に対し、その配列を有するポリヌクレオチドがRNA干渉を生じさせることができることが好ましい。
「ストリンジェントな条件下」とは、中程度または高程度にストリンジェントな条件においてハイブリダイズすることを意味する。具体的には、中程度にストリンジェントな条件は、例えば、DNAの長さに基づき、一般の技術を有する当業者によって、容易に決定することが可能である。基本的な条件は、Sambrookら,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,第3版,第6−7章,Cold Spring Harbor Laboratory Press,2001に示され、そしてニトロセルロースフィルターに関し、5×SSC、0.5% SDS、1.0mM EDTA(pH8.0)の前洗浄溶液、約40−50℃での、約50%ホルムアミド、2×SSC−6×SSC(または約42℃での約50%ホルムアミド中の、スターク溶液(Stark’s solution)などの他の同様のハイブリダイゼーション溶液)のハイブリダイゼーション条件、および約60℃、0.5×SSC、0.1% SDSの洗浄条件の使用が含まれる。好ましくは中程度にストリンジェントな条件は、約50℃、6×SSCのハイブリダイゼーション条件を含む。高ストリンジェントな条件もまた、例えばDNAの長さに基づき、当業者によって、容易に決定することが可能である。一般に、こうした条件は、中程度にストリンジェントな条件よりも高い温度および/または低い塩濃度でのハイブリダイゼーション(例えば、約65℃、6×SSCないし0.2×SSC、好ましくは6×SSC、より好ましくは2×SSC、最も好ましくは0.2×SSCのハイブリダイゼーション)および/または洗浄を含み、例えば上記のようなハイブリダイゼーション条件、およびおよそ68℃、0.2×SSC、0.1% SDSの洗浄を伴うと定義される。ハイブリダイゼーションおよび洗浄の緩衝液では、SSC(1×SSCは、0.15M NaClおよび15mM クエン酸ナトリウムである)にSSPE(1×SSPEは、0.15M NaCl、10mM NaHPO、および1.25mM EDTA、pH7.4である)を代用することが可能であり、洗浄はハイブリダイゼーションが完了した後で15分間行う。
当業者に知られていて、以下にさらに記載するように、ハイブリダイゼーション反応と二本鎖の安定性を支配する基本原理を適用することによって望ましい度合いのストリンジェンシーを達成するためには、洗浄温度と洗浄塩濃度を必要に応じて調整することが可能であると理解すべきである(例えば、Sambrookら、2001を参照されたい)。核酸を未知配列の標的核酸へハイブリダイズさせる場合、ハイブリッドの長さはハイブリダイズする核酸のそれであると仮定される。既知配列の核酸をハイブリダイズさせる場合、ハイブリッドの長さは核酸の配列を並列し、最適な配列相補性をもつ単数または複数の領域を同定することによって決定可能である。50塩基対未満の長さであることが予測されるハイブリッドのハイブリダイゼーション温度は、ハイブリッドの融解温度(T)より5−25℃低くなければならず、Tは、以下の等式により決定される。長さ18塩基対未満のハイブリッドに関して、T(℃)=2(A+T塩基数)+4(G+C塩基数)。18塩基対を超える長さのハイブリッドに関しては、T=81.5℃+16.6(log10[Na])+41(モル分率[G+C])−0.63(%ホルムアミド)−500/nであり、ここで、Nはハイブリッド中の塩基数であり、そして[Na]は、ハイブリダイゼーション緩衝液中のナトリウムイオン濃度である(1×SSCの[Na]=0.165M)。
核酸の解離温度は、例えばその核酸の長さや核酸を構成する各塩基の割合等に依存するため、ストリンジェントな条件は、用いる核酸によって、個々に決定されなければならないが、当業者であれば、その条件を容易に決定することが可能である。
通常、中程度または高程度にストリンジェントな条件においてハイブリダイズする配列は、規定配列と50〜100%の同一性を有する。RNA干渉を生じさせるという機能を失わない範囲であれば、塩基配列の一部に欠失、置換、挿入などの変異を含んでもよい。なお、許容される変異の程度としての同一性を算出する場合、同一の検索アルゴリズムを用いて算出された数値どうしを比較することが望ましい。検索アルゴリズムは特に限定されないが、局所的な配列の検索に適したものが好適であり、より具体的にはBLAST searchなどを好適に用いることができる。
より詳細には、核酸(ポリヌクレオチド)の同一性は、視覚的検査および数学的計算によって決定することが可能である。またはより好ましくは、この比較はコンピュータ・プログラムを使用して配列情報を比較することによってなされる。代表的な、好ましいコンピュータ・プログラムは、遺伝学コンピュータ・グループ(GCG;ウィスコンシン州マジソン)のウィスコンシン・パッケージ、バージョン10.0プログラム「GAP」である(Devereuxら、1984、Nucl.Acids Res.12:387)。ここで、「GAP」プログラムの好ましいデフォルトパラメーターには:(1)ヌクレオチドについての(同一物について1、および非同一物について0の値を含む)一元(unary)比較マトリックスのGCG実行と、SchwartzおよびDayhoff監修「ポリペプチドの配列および構造のアトラス(Atlas of Polypeptide Sequence and Structure)」国立バイオ医学研究財団、353−358頁、1979により記載されるような、Gribskov and Burgess,Nucl.Acids Res.14:6745,1986の加重アミノ酸比較マトリックス;または他の比較可能な比較マトリックス;(2)アミノ酸の各ギャップについて30のペナルティと各ギャップ中の各記号について追加の1のペナルティ;またはヌクレオチド配列の各ギャップについて50のペナルティと各ギャップ中の各記号について追加の3のペナルティ;(3)エンドギャップへのノーペナルティ:および(4)長いギャップへは最大ペナルティなし、が含まれる。当業者により使用される他の配列比較プログラムでは、例えば、国立医学ライブラリーのウェブサイhttp://www.ncbi.nlm.nih.gov/blast/bl2seq/bls.htmlにより使用が利用可能なBLASTNプログラム、バージョン2.2.7、またはUW−BLAST2.0アルゴリズムが使用可能である。UW−BLAST2.0についての標準的なデフォルトパラメーターの設定は、以下のインターネットサイト:http://blast.wustl.eduに記載されている。さらに、BLASTアルゴリズムは、BLOSUM62アミノ酸スコア付けマトリックスを使用し、使用可能である選択パラメーターは以下の通りである:(A)低い組成複雑性を有するクエリー配列のセグメント(WoottonおよびFederhenのSEGプログラム(Computers and Chemistry,1993)により決定され;WoottonおよびFederhen,「配列データベースにおける組成編重領域の解析(Analysis of compositionally biased regions in sequence databases)」Methods Enzymol.266:544−71, 1996も参照されたい)、または、短周期性の内部リピートからなるセグメント(ClaverieおよびStates(COMPUTERS5 and Chemistry,1993)のXNUプログラムにより決定される)をマスクするためのフィルターを含むこと、および(B)データベース配列に対する適合を報告するための統計学的有意性の閾値、またはE−スコア(KarlinおよびAltschul,1990)の統計学的モデルにしたがって、単に偶然により見出される適合の期待確率;ある適合に起因する統計学的有意差がE−スコア閾値より大きい場合、この適合は報告されない);好ましいE−スコア閾値の数値は0.5であるか、または好ましさが増える順に、0.25、0.1、0.05、0.01、0.001、0.0001、1e−5、1e−10、1e−15、1e−20、1e−25、1e−30、1e−40、1e−50、1e−75、または1e−100である。
好ましくは、センス鎖は下記(1)〜(5)の規則に従う規定配列と同一の塩基配列を含む。
規則(3)において、「リッチ」とは特定の塩基が現れる頻度が高いことを意味し、規定配列における3'末端側の5〜10塩基、好ましくは7塩基の配列中にアデニン、チミンおよび/またはウラシルからなる群より選ばれる一種または二種以上が、少なくとも40%以上、より好ましくは50%以上含まれることを意味する。例えば約19塩基程度の規定配列の場合を例に挙げると、3'末端側の7塩基のうち好ましくは少なくとも3塩基以上、より好ましくは4塩基以上、特に好ましくは5塩基以上が、アデニン、チミンおよびウラシルからなる群より選ばれる一種または二種以上である。
規則(4)について、規定配列の鎖長は、数塩基から転写産物の全長まで、いずれの長さであってもよい。しかし、生物種などの条件により、塩基数があまりに大きすぎる核酸(例えば、siRNA)が細胞毒性を生じるため、極端に長い核酸は使えない場合がある。規定配列の塩基数の上限は、RNA干渉を生じさせようとする生物の種類などにより異なるが、例えば、siRNAの場合、哺乳動物由来の細胞においては、30塩基数以上の鎖長を有するsiRNAを導入するとインターフェロン応答が生じるため、siRNAの塩基数は、30以下、より好ましくは28以下である。さらに好ましくは24以下、より好ましくは22以下、さらに好ましくは20以下である。また、下限は、RNA干渉を生じさせる核酸を取得可能な限りにおいて特に制限されるものではないが、好ましくは13以上、より好ましくは15以上、さらに好ましくは18以上、より好ましくは20以上である。よって、規則(4)において、標的遺伝子の規定配列は塩基数が13〜28であることが好ましい。特に、哺乳動物由来の細胞等に導入する場合には、13〜28、好ましくは15〜23、さらに好ましくは19〜21塩基数である。標的遺伝子の規定配列は、かかる上限および下限をふまえた塩基数であることが特に好ましく、最も好ましくは19塩基である。この19塩基中、(3)の規則に鑑みると、規定配列の3’末端側の7塩基のうち好ましくは少なくとも3塩基以上、より好ましくは4塩基上、特に好ましくは5塩基以上が、A、Tおよび/またはUである。
本発明に係るRNA干渉核酸において、二重鎖領域の両端は平滑末端であっても、オーバーハング部を有していてもよいが、両端に3’末端が突出したオーバーハング部を有しているのが好ましい。オーバーハング部とは、二重鎖領域の端に存在する、一本鎖の状態で突出する部分である。オーバーハング部は、生物種などにもよるが、塩基数2であることが好ましい。オーバーハング部の塩基配列は、基本的には任意であるが、例えば、TTあるいはUU等が好適に用いられる。
さらに、本発明の核酸において、標的遺伝子の規定配列は、さらに下記(5)の規則:
(5)当該RNA干渉核酸が導入される細胞の全遺伝子の塩基配列のうち、前記標的遺伝子以外の他の遺伝子の塩基配列中に、当該規定配列と90%以上の同一性を有する配列が含まれない
に従う配列であることが好ましい。言い換えると、(5)の規則は、標的遺伝子と関係のない遺伝子におけるRNA干渉(これをオフターゲット効果と呼ぶ)を抑制するために、標的遺伝子の上記(1)〜(4)に従う規定配列は、これと同一または類似の配列が他の遺伝子に含まれていない塩基配列であることが好ましいことを規定したものである。かかる規則を満たす規定配列を選択することにより、標的遺伝子のみに特異的にRNA干渉を生じさせることができ、オフターゲット効果の低いRNA干渉を実現することが可能となる。規定配列またはその相補配列と同一/類似の配列を検索する方法としては、一般的なホモロジー検索を行うソフトウェア等を用いた方法が挙げられる。
例えば、BLAST等を利用して標的遺伝子の規定配列と同一または類似の配列を他の遺伝子について検索し、当該他の遺伝子に塩基配列のミスマッチ数が小さい類似配列が存在するという検索結果が得られた場合には、このような標的遺伝子の規定配列は除外する。
それにより、標的遺伝子に対する特異性の高い配列を選別することができる。具体的に、標的遺伝子の規定配列の塩基数が19である場合には、他の遺伝子にミスマッチが2塩基以下、より好ましくは3塩基以下、さらに好ましくは4塩基以下の類似配列が存在する配列を規定配列から除外することが好ましい。類似性判断の閾値となるミスマッチ数の値の増加に伴って、特異性が高くなる。また、標的遺伝子の規定配列のみならずこれと相補的な配列の両方についても検索を行うことにより、さらに特異性の高い配列が得られる。
便宜上、塩基配列の類似性を判断する基準となるミスマッチ数を同一性で規定し、(5)の規則に従う配列であるかどうか、検索することにより類似性を判断して塩基配列を選別することが好ましい。かかる同一性は適宜設定されるものであり、当業者は、所望により規定配列と85%以上、80%以上、75%以上のように適宜設定することが可能である。ここで、規定配列との同一性を低く設定するほど標的配列と類似する他の遺伝子が存在しないこととなる。
さらに、センス鎖のセンス配列は、上記(1)〜(4)あるいは(1)〜(5)の規則の他、下記(6)の規則に従う標的遺伝子の規定配列に相同な、好ましくは同一の塩基配列を有することが好ましい。
(6)10塩基以上GまたはCが連続する配列を含まない。ここで、当該(6)の規則において、10塩基以上グアニンおよび/またはシトシンが連続するというのは、例えば、グアニンまたはシトシンの一方のみが連続する場合と、グアニンおよびシトシンとが混在する配列となっている場合の双方を含み、具体的には、GGGGGGGGGG(配列番号197)、CCCCCCCCCC(配列番号198)のほか、GおよびCの混合配列であるGCGGCCCGCG(配列番号199)なども含まれる。
なお、前述のように、上記(1)〜(4)の規則は、Ui−Teiらによるガイドラインに基づくものであり、PCT/JP2003/014893(WO2004/048566)にも詳細に記載されている。また、上記(5)および(6)の規則については、PCT/IB20035/001647明細書に、詳細に記載されている。
標的遺伝子の規定配列は、上記のような塩基配列上の規則だけでなく、これ以外の点に鑑みて適宜選択されてもよい。例えば、上記(1)〜(6)等の規則を満たす規定配列を標的遺伝子から複数選択した後、さらに、当該選択された規定配列の中から、別の条件を付加して配列の選択を行ってもよい。本発明に係る核酸を設計するための規定配列の検索および選択は、例えば、上記の(1)〜(6)の規則に従う部分を検索可能なプログラムを搭載するコンピュータを用いることにより、効率的な検出および選択が実行可能である。このような核酸の設計により、RNA干渉効果の高い核酸分子を、高い確率でしかも容易に設計することができる。なお、本発明に係るRNA干渉核酸は、遺伝子組み換え技術(具体的な一例としては、所定の配列を有するDNA鎖を作製し、これを鋳型として転写酵素を用いて一本鎖RNAを合成し、一本鎖RNAを二本鎖化するなどの手法)、化学的または酵素的合成等の公知技術を適宜用いることによって製造することができる。
RNA干渉核酸の塩基配列設計に関しては、種々ガイドラインが公表されているが、上記構成を有する本発明のRNA干渉核酸によれば、標的遺伝子である対象タンパク質コード遺伝子に対し効率よくRNA干渉を生じさせることができる為、効率よく、また簡便に当該タンパク質の発現を阻害することが可能となる。そして、ひいては、かかる発現阻害により、当該タンパク質の機能を阻害することが可能となる。このような効果を奏する本発明のRNA干渉核酸を用いて上記<1>記載の方法を実施することにより、<1>で前述したように分泌・輸送機構関連タンパク質について種々の有意な知見を取得することが可能となる。また、分泌・輸送機構関連タンパク質の過剰発現によりタンパク質分泌・輸送機構に異常が生じる場合には、本発明のRNA干渉核酸を導入することにより、過剰発現する当該タンパク質の機能阻害を実現でき、それによってタンパク質分泌・輸送機構を正常な状態に制御することが可能となる。
本発明のRNA干渉核酸の標的となる対象タンパク質コード遺伝子は、タンパク質分泌・輸送機構に関与する分泌・輸送機構関連タンパク質の候補遺伝子あれば任意である。例えば、小胞体関連タンパク質コード遺伝子が好ましい。一例として、後述の実施例では、図1および2に示すように、小胞体膜関連タンパク質をコードする遺伝子を標的としており、当該標的に対して図1および2に示す塩基配列を有するsiRNAを用いている。これらのsiRNAでは、19塩基数のセンス配列の3’末端に2塩基のオーバーハング部が設けられて21塩基から成るセンス鎖が構成され、19塩基数のアンチセンス配列の3’末端に2塩基のオーバーハング部が設けられて21塩基から成るアンチセンス鎖が構成されている。
図3〜5に示すように、これらのsiRNAをHeLa細胞に導入することにより、図1および2の小胞体膜関連タンパク質の発現および機能を抑制することが可能となる。その結果、図7および8に示すように、siRNAを導入した細胞の表現型が変化する場合が観察されうる。例えば、小胞体膜関連タンパク質の機能阻害により小胞体構造自体に異常が発生すると、図7に示す小胞体の収縮(すなわち内腔の容積減少)や、図8に示す小胞体網状構造の変化または三叉構造の減少等が表現型における変化として観察される。また、図10に示すように、siRNAをCOS細胞に導入することにより、分泌系タンパク質の成熟過程における異常、例えば、当該タンパク質の立体構造の異常や輸送プロセスにおける異常が生じると、図10に示すように、小胞体の形態変化および/または膜系構成成分の局在異常として表現型に現れる。したがって、<1>で前述したように、このような表現型の変化を検出して解析することにより、RNA干渉核酸の標的となった図1および2の小胞体膜関連タンパク質の機能解析を行うことが可能となる。
よって、本発明のRNA干渉核酸において、好ましくは、センス鎖は図1に示す配列番号7−99のいずれかであり、アンチセンス鎖は配列番号100−192の塩基配列のいずれかの塩基配列を有する。
好ましくは、センス鎖およびアンチセンス鎖の二重鎖領域における少なくとも一方の鎖が、RNAとDNAとからなり、当該一方の鎖の上流側9〜13ヌクレオチドがRNAである。
なお、実施例では本発明に係るRNA干渉核酸をヒトHeLa細胞およびサルCOS細胞に適用する場合について説明したが、本発明のRNA干渉核酸は、様々な生物種、例えば、酵母、菌類、植物、動物に適用可能であり、また、細胞、組織、器官、個体のいずれにも適用可能である。そして、これらのいずれにおいても、上述の優れたRNA干渉効果を奏することが可能である。
<3.タンパク質分泌・輸送機構に関与する分泌・輸送機構関連タンパク質の同定・機能解析用キット>
本発明に係るタンパク質分泌・輸送機構に関与する分泌・輸送機構関連タンパク質の同定・機能解析用キットは、本発明の分泌・輸送機構関連タンパク質の同定・機能解析に使用可能な、対象遺伝子及び/又は対象タンパク質の機能を阻害する阻害物質を含む。
本発明のキットは好ましくは、上記<2>記載の本発明に係るRNA干渉核酸を含む。キットに含まれるRNA干渉核酸は、一種類および複数種類のいずれであってもよい。このような本発明のキットによれば、上記<1>記載の本発明に係る方法を実現することが可能となる。すなわち、RNA干渉核酸により解析対象である対象タンパク質及び又は遺伝子の発現および機能を阻害する。かかる阻害により生じる表現型の変化に基づいて分泌関連タンパク質の同定及び/又は分泌関連タンパク質機能解析を実現できる。
本発明のキットの構成は、前述の作用機序により解析を実現できる構成であれば特には限定されず、RNA干渉核酸以外の構成要素を適宜含んでもよい。例えば、表現型における変化を検出する為のプローブ等を含んでもよく、あるいは、実施例のように、各種プローブ(例えば、YFP)を安定して発現可能な発現系(具体的には細胞)を含むキットであってもよい。また、RNA干渉核酸によるタンパク質の機能阻害を検出するための手段として、酵素標識抗体および/または該酵素の基質を含んでもよく、あるいは、当該タンパク質のmRNA量を測定するための試薬、例えばPCRの場合、TAQポリメラーゼおよび/またはプライマーを含んでもよい。さらに、かかるキットは、バッファー等の試薬類を含んで構成される。
本発明のキットに含まれるRNA干渉核酸の標的となる対象遺伝子は、分泌・輸送機構関連タンパク質をコードする遺伝子を含む1又は複数の遺伝子であれば特に限定されず、任意である。例えば、本発明に係るキットの具体的な一態様として、図1に示すsiRNAをRNA干渉核酸として含む構成であってもよい。これらのsiRNAは、ヒトHeLa細胞の小胞体膜関連タンパク質をRNA干渉の標的とするものであり、当該タンパク質の発現阻害ひいては機能阻害によって、タンパク質分泌・輸送機構における当該タンパク質の機能を網羅的に同定・解析することが可能となる。
<4.分泌・輸送機構関連タンパク質>
本発明はまた、本発明の方法によって同定及び/又は機能解析された分泌機能関連タンパク質を提供する。
本発明の分泌機能関連タンパク質は、好ましくは、小胞体構造に関与するタンパク質である。
後述の実施例1及び2において、下記の9種類の小胞体関連タンパク質が、小胞体の構造に関与するタンパク質として同定された。よって本発明の分泌機能関連タンパク質は、好ましくは下記の9種類のタンパク質である。
(1)Sec63L、(2)GlucosidaseI、(3)PAP2B、(4)ERdj5、(5)OLFM、(6)SSR2、(7)GlucosidaseII、(8)SCAP、及び(9)EDEM。
本発明の一態様において、分泌機能関連タンパク質は、下記(1)〜(4)のいずれか1つから選択される:
(1)配列番号1記載のアミノ酸配列を含むタンパク質;
(2)配列番号1記載のアミノ酸配列において一または複数のアミノ酸が置換、欠失、付加、および/または挿入されたアミノ酸配列を含み、分泌・輸送機構に関与する生物学的機能を奏するタンパク質;
(3)配列番号2記載の塩基配列でコードされるアミノ酸配列を含むタンパク質;並びに
(4)配列番号2記載の塩基配列でコードされるアミノ酸配列において一または複数のアミノ酸が置換、欠失、付加、および/または挿入されたアミノ酸配列を含み、分泌・輸送機構に関与する生物学的機能を奏するタンパク質。
上記(1)のタンパク質は、ヒトのいわゆるオルファクトメジン1(Olfactomedin1:以下、「OLFM」と表記することがある)である(Yokoyama,M., et al., Identification and cloning of neuroblastoma−specific and nerve tissue−specific genes through compiled expression profiles DNA Res. 3 (5), 311−320 (1996))。OLFMについて、そのアミノ酸配列(配列番号1)がNCBI refseq:NP_055094として登録されており、また、これをコードする塩基配列(配列番号2)を含むmRNAの塩基配列がNM_014279.2として登録されている。
OLFMは、小胞体に局在するタンパク質として、あるいは、脳で顕著に発現するタンパク質として知られているが、その機能については、これまでのところ未知であった。OLFMの由来となる生物種としては、例えば、哺乳動物(ヒト、サル、マウス、ラット、モルモット、ブタ、ウシ等)、酵母、昆虫等が挙げられる。なお、本発明では、登録された公知のOLFMと機能的に同等なタンパク質を包含する。このようなタンパク質には、例えば、OLFMの変異体、アレル、バリアント、ホモログ、オルファクトメジンの部分ペプチド、または他のタンパク質との融合タンパク質等が挙げられるが、これらに限定されない。
OLFMの変異体としては、配列番号1記載のアミノ酸配列において一若しくは複数のアミノ酸が置換、欠失、挿入、および/または付加したアミノ酸配列からなる天然由来のタンパク質であって、配列番号1記載のアミノ酸配列からなるタンパク質と機能的に同等なタンパク質を挙げることができる。また、配列番号2記載の塩基配列でコードされるタンパク質であって、配列番号2記載のアミノ酸配列からなるタンパク質と機能的に同等なタンパク質も、OLFMの変異体として挙げることができる。ここでは、変異するアミノ酸数は限定されないが、通常、30アミノ酸以内であり、好ましくは15アミノ酸以内であり、さらに好ましくは5アミノ酸以内(例えば、3アミノ酸以内)であると考えられる。変異するアミノ酸残基においては、アミノ酸側鎖の性質が保存されている別のアミノ酸に変異されることが望ましい。例えば、アミノ酸側鎖の性質としては、疎水性アミノ酸(A,I,L,M,F,P,W,Y,V)、親水性アミノ酸(R,D,N,C,E,Q,G,H,K,S,T)、脂肪族側鎖を有するアミノ酸(G,A,V,L,I,P),水酸基含有側鎖を有するアミノ酸(S,T,Y)、硫黄原子含有側鎖を有するアミノ酸(C,M)、カルボン酸およびアミド含有側鎖を有するアミノ酸(D,N,E,Q)、塩基含有側鎖を有するアミノ酸(R,K,H)、芳香族含有側鎖を有するアミノ酸(H,F,Y,W)を挙げることができる(括弧内はいずれもアミノ酸の一文字を表す)。あるアミノ酸配列に対する一または複数個のアミノ酸残基の欠失、付加および/または他のアミノ酸による置換により修飾されたアミノ酸配列を有するポリペプチドがその生物学的活性を維持することは当業者に公知である。また、「機能的に同等」とは、対象となるタンパク質が、OLFMと同等の生物学的機能や生化学的機能を有することを意図する。
OLFMの変異体は、配列番号1に記載のアミノ酸配列と、少なくとも約70%、好ましくは約80%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上、最も好ましくは98%以上の同一性を有する。
アミノ酸の同一性パーセントは、視覚的検査及び数学的計算により決定してもよい。あるいは、2つのタンパク質配列の同一性パーセントは、Needleman,S.B.及びWunsch,C.D.(J.Mol.Biol.,48:443−453,1970)のアルゴリズムに基づき、そしてウィスコンシン大学遺伝学コンピューターグループ(UWGCG)より入手可能なGAPコンピュータープログラムを用い配列情報を比較することにより、決定してもよい。GAPプログラムの好ましいデフォルトパラメーターには:(1)Henikoff,S及びHenikoff,J.G.(Proc.Natl.Acad.Sci.USA,89:10915−10919,1992)に記載されるような、スコアリング・マトリックス、blosum62;(2)12のギャップ加重;(3)4のギャップ長加重;及び(4)末端ギャップに対するペナルティなし、が含まれる。
当業者に用いられる、配列比較の他のプログラムもまた、用いてもよい。同一性のパーセントは、例えばAltschulら(Nucl.Acids.Res.25.,p.3389−3402,1997)に記載されているBLASTプログラムを用いて配列情報と比較し決定することが可能である。当該プログラムは、インターネット上でNational Center for Biotechnology Information(NCBI)、あるいはDNA Data Bank of Japan(DDBJ)のウェブサイトから利用することが可能である。BLASTプログラムによる相同性検索の各種条件(パラメーター)は同サイトに詳しく記載されており、一部の設定を適宜変更することが可能であるが、検索は通常デフォルト値を用いて行う。
本発明において、好ましくは、OLFMは、配列番号1又は配列番号1と少なくとも70%の同一のアミノ酸配列を有しており、そして、当該OLFMの生物学的機能を有する。
同一の機能を有するタンパク質であっても、由来する品種の相違によって、そのアミノ酸配列に相違が存在しうることは当業者にとって周知の事実である。OLFMの機能を有する限り、OLFM遺伝子は配列番号2の塩基配列のこのような相同体、変異体も含みうる。よって、OLFMは、配列番号2記載の塩基配列でコードされるアミノ酸配列を含むタンパク質、あるいは配列番号2記載の塩基配列と、少なくとも約70%、好ましくは約80%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上、最も好ましくは98%以上の同一性を有する塩基配列でコードされるアミノ酸配列を含み、OLFMの生物学的機能を奏するタンパク質を含む。塩基配列の同一性(相同性)の算出手法は、RNA干渉核酸について上述した通りである。
「OLFMの機能」とは、具体的には、発明者が見出した、分泌・輸送機構に関与する機能、特に、当該タンパク質の小胞体網状構造形成および/または維持に関する機能である。実施例で後述する図8および10に示すように、OLFMの発現および機能を阻害すると、小胞体の網状構造に異常が生じる。この場合の網状構造の異常とは、視覚的に網密度の減少や空隙率の増加等として確認できる。さらに、カーゴ分泌系タンパク質の正しい細胞内移行及び分泌が妨げられる。
別の態様において本発明に係るタンパク質の分泌・輸送機構に関与する小胞体関連タンパク質は、下記(1)〜(4)のいずれか1つから選択される:
(1)配列番号3記載のアミノ酸配列を含むタンパク質;
(2)配列番号3記載のアミノ酸配列において一または複数のアミノ酸が置換、欠失、付加、および/または挿入されたアミノ酸配列を含み、分泌・輸送機構に関与する生物学的機能を奏するタンパク質;
(3)配列番号4記載の塩基配列でコードされるアミノ酸配列を含むタンパク質;並びに
(4)配列番号4記載の塩基配列でコードされるアミノ酸配列において一または複数のアミノ酸が置換、欠失、付加、および/または挿入されたアミノ酸配列を含み、分泌・輸送機構に関与する生物学的機能を奏するタンパク質。
上記(1)のタンパク質は、ヒトホスファチジル酸ホスファターゼ2B型(Phosphatidic acid phosphatase type 2B:以下、「PAP2B」と表記することがある)である(Kai, M., Wada, I., Imai, S., Sakane, F. and Kanoh, H. (1997) Cloning and characterization of two human isozymes of Mg2+−independent phosphatidic acid phosphatase. J Biol Chem, 272, 24572−24578)。PAP2Bについて、そのアミノ酸配列(配列番号3)がNCBI refseq:NP_003704として登録されており、また、これをコードする塩基配列(配列番号4)を含むmRNAの塩基配列がNM_003713.3として登録されている。
PAP2Bは、小胞体に局在するタンパク質であり、リン脂質ヒドロラーゼファミリーのメンバーであり、親油性化合物に対して幅広い基質特異性を示す。この幅広い基質スペクトラムのため、細胞内及び細胞間のシグナル伝達におけるその機能が示唆されている。しかしながら本発明前は、その生理学的な機能は長年の研究にかかわらず明らかにされていなかった。
PAP2Bの由来となる生物種としては、例えば、哺乳動物(ヒト、サル、マウス、ラット、モルモット、ブタ、ウシ等)、酵母、昆虫等が挙げられる。なお、本発明では、登録された公知のPAP2Bタンパク質と機能的に同等なタンパク質を包含する。このようなタンパク質には、例えば、PAP2の変異体、アレル、バリアント、ホモログ、オルファクトメジンの部分ペプチド、または他のタンパク質との融合タンパク質等が挙げられるが、これらに限定されない。
PAP2Bの変異体としては、配列番号3記載のアミノ酸配列において一若しくは複数のアミノ酸が置換、欠失、挿入、および/または付加したアミノ酸配列からなる天然由来のタンパク質であって、配列番号3記載のアミノ酸配列からなるタンパク質と機能的に同等なタンパク質を挙げることができる。また、配列番号4記載の塩基配列でコードされるタンパク質であって、配列番号4記載のアミノ酸配列からなるタンパク質と機能的に同等なタンパク質も、PAP2Bの変異体として挙げることができる。変異するアミノ酸数、アミノ酸の種類等は、OLFMと同様である。
あるアミノ酸配列に対する一または複数個のアミノ酸残基の欠失、付加および/または他のアミノ酸による置換により修飾されたアミノ酸配列を有するポリペプチドがその生物学的活性を維持することは当業者に公知である。また、「機能的に同等」とは、対象となるタンパク質が、PAP2Bと同等の生物学的機能や生化学的機能を有することを意図する。
PAP2Bの変異体は、配列番号3に記載のアミノ酸配列と、少なくとも約70%、好ましくは約80%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上、最も好ましくは98%以上の同一性を有する。アミノ酸の同一性パーセントの算出手法は上述した通りである。
本発明において、好ましくは、PAP2Bは、配列番号3又は配列番号3と少なくとも70%の同一のアミノ酸配列を有しており、そして、当該PAP2Bの生物学的機能を有する。
同一の機能を有するタンパク質であっても、由来する品種の相違によって、そのアミノ酸配列に相違が存在しうることは当業者にとって周知の事実である。PAP2Bの機能を有する限り、PAP2B遺伝子は配列番号4の塩基配列のこのような相同体、変異体も含みうる。よって、PAP2Bは、配列番号4記載の塩基配列でコードされるアミノ酸配列を含むタンパク質、あるいは配列番号4記載の塩基配列と、少なくとも約70%、好ましくは約80%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上、最も好ましくは98%以上の同一性を有する塩基配列でコードされるアミノ酸配列を含み、PAP2Bの生物学的機能を奏するタンパク質を含む。塩基配列の同一性(相同性)の算出手法は、RNA干渉核酸について上述した通りである。
「PAP2Bの機能」とは、具体的には、発明者が見出した、分泌・輸送機構に関与する機能である。具体的には例えば、実施例で後述するように、PAP2Bの発現及び活性阻害においても、OLFMと同様に、TYR−YFPの32度での小胞体への蓄積と、ゴルジ膜タンパク質の小胞体への局在が起きる。
また別の態様において本発明に係るタンパク質の分泌・輸送機構に関与する小胞体関連タンパク質は、下記(1)〜(4)のいずれか1つから選択される:
(1)配列番号5記載のアミノ酸配列を含むタンパク質;
(2)配列番号5記載のアミノ酸配列において一または複数のアミノ酸が置換、欠失、付加、および/または挿入されたアミノ酸配列を含み、分泌・輸送機構に関与する生物学的機能を奏するタンパク質;
(3)配列番号6記載の塩基配列でコードされるアミノ酸配列を含むタンパク質;並びに
(4)配列番号6記載の塩基配列でコードされるアミノ酸配列において一または複数のアミノ酸が置換、欠失、付加、および/または挿入されたアミノ酸配列を含み、分泌・輸送機構に関与する生物学的機能を奏するタンパク質。
上記(1)のタンパク質は、SREBP切断活性化タンパク質(SREBP cleavage−activating protein:以下、「SCAP」と表記することがある)である(Hua,X., Nohturfft,A., Goldstein,J.L. and Brown,M.S.Sterol resistance in CHO cells traced to point mutation in SREBP cleavage−activating protein, Cell 87 (3), 415−426 (1996))。SCAPについて、そのアミノ酸配列(配列番号5)がNCBI refseq:NP_036367として登録されており、また、これをコードする塩基配列(配列番号6)を含むmRNAの塩基配列がNM_012235.2として登録されている。
SCAPは、小胞体に局在するタンパク質であり、コレステロール合成に必要な一群の遺伝子のための膜固着転写因子であるSREBPのためのエスコートタンパク質である。SCAPは、小胞体膜中におけるコレステロールの濃度を、コレステロールに結合して構造を直接変化させ、次いでSec24に対するその親和性を減ずることによって探知する。この膜タンパク質は、合成直後にSREBPと作用し、Sec24に結合する。SCPAの助けで運び出されたSREBPは、タンパク質分解によって加工され、次いで放出された転写因子が核内に入りコレステロール合成を活性化する。
SCAPの由来となる生物種としては、例えば、哺乳動物(ヒト、サル、マウス、ラット、モルモット、ブタ、ウシ等)、酵母、昆虫等が挙げられる。なお、本発明では、登録された公知のSCAPタンパク質と機能的に同等なタンパク質を包含する。このようなタンパク質には、例えば、SCAPの変異体、アレル、バリアント、ホモログ、オルファクトメジンの部分ペプチド、または他のタンパク質との融合タンパク質等が挙げられるが、これらに限定されない。
SCAPの変異体としては、配列番号5記載のアミノ酸配列において一若しくは複数のアミノ酸が置換、欠失、挿入、および/または付加したアミノ酸配列からなる天然由来のタンパク質であって、配列番号5記載のアミノ酸配列からなるタンパク質と機能的に同等なタンパク質を挙げることができる。また、配列番号6記載の塩基配列でコードされるタンパク質であって、配列番号6記載のアミノ酸配列からなるタンパク質と機能的に同等なタンパク質も、SCAPの変異体として挙げることができる。変異するアミノ酸数、アミノ酸の種類等は、OLFM等と同様である。
あるアミノ酸配列に対する一または複数個のアミノ酸残基の欠失、付加および/または他のアミノ酸による置換により修飾されたアミノ酸配列を有するポリペプチドがその生物学的活性を維持することは当業者に公知である。また、「機能的に同等」とは、対象となるタンパク質が、SCAPと同等の生物学的機能や生化学的機能を有することを意図する。
SCAPの変異体は、配列番号5に記載のアミノ酸配列と、少なくとも約70%、好ましくは約80%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上、最も好ましくは98%以上の同一性を有する。アミノ酸の同一性パーセントの算出手法は上述した通りである。
本発明において、好ましくは、SCAPは、配列番号5又は配列番号5と少なくとも70%の同一のアミノ酸配列を有しており、そして、当該SCAPの生物学的機能を有する。
同一の機能を有するタンパク質であっても、由来する品種の相違によって、そのアミノ酸配列に相違が存在しうることは当業者にとって周知の事実である。SCAPの機能を有する限り、SCAP遺伝子は配列番号6の塩基配列のこのような相同体、変異体も含みうる。よって、SCAPは、配列番号6記載の塩基配列でコードされるアミノ酸配列を含むタンパク質、あるいは配列番号6記載の塩基配列と、少なくとも約70%、好ましくは約80%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上、最も好ましくは98%以上の同一性を有する塩基配列でコードされるアミノ酸配列を含み、SCAPの生物学的機能を奏するタンパク質を含む。塩基配列の同一性(相同性)の算出手法は、RNA干渉核酸について上述した通りである。
「SCAPの機能」とは、具体的には、発明者が見出した、分泌・輸送機構に関与する機能、特に、当該タンパク質の小胞体網状構造形成および/または維持に関する機能である。具体的には例えば、実施例で後述するように、SCAPの発現及び活性阻害においても、OLFMと同様に、TYR−YFPの32度での小胞体への蓄積が起きる。
<5.タンパク質分泌・輸送機構の制御方法>
本発明に係るタンパク質分泌・輸送機構の制御方法は、本発明において同定された分泌・輸送機構関連タンパク質の機能阻害を抑制することを含む。好ましくは、図2に示す9種類の小胞体膜関連タンパク質のうちいずれかの機能阻害を抑制するものである。
実施例で後述するが、図2に示す小胞体膜関連タンパク質の機能が阻害されると、当該小胞体膜関連タンパク質の発現系では、<1>で前述したように、小胞体自体の構造(具体的には、網状構造)の形成および保持に関わる機構や、分泌系タンパク質の成熟(具体的には、立体構造形成や輸送等)に関わる機構に異常が生じる。その結果、図7、8および10に示すように、当該異常に起因する表現型の変化、具体的には小胞体構造の異常、が生じる。このような小胞体膜関連タンパク質の機能阻害に伴う異常は、タンパク質分泌・輸送機構に負の影響を与え、機構の制御不全等が生じて正常なタンパク質分泌が行われなくなる。そして、このような分泌異常は、疾患を引き起こすおそれもある。
例えば、「小胞体膜関連タンパク質の機能障害」として広く知られた疾患の例は、アルツハイマーやパーキンソンやハンチングトン病等の神経変性疾患である(Christopher A. Ross and Michelle A. Poirier. What is the role of protein aggregation in neurodegeneration? Nature Review Cell and Moleculer Biology, vol. 6(11) pp891−898,(2005))。神経系以外でも間質性肺炎(Bridges JP, Wert SE、 Nogee LM, Weaver TE,Expression of a human surfactant protein C mutation associated with interstitial lung disease disrupts lung development in transgenic mice. J Biol Chem. 2003;278(52):52739−52746)等、分泌がうまく起こらず細胞内に蓄積する疾患の多くと関連している。これらは主に特定遺伝子に凝集しやすい変異が起きることで引き起こされる場合である、あるいは、虚血、即ち、血液循環不全によっても、小胞体の構造自体に変化が起こり(Banno T, Kohno K. J Comp Neurol. 1996 Jun 3;369(3):462−71. Conformational changes of smooth endoplasmic reticulum induced by brief anoxia in rat Purkinje cells.)、分泌不全を引き起こす事(例えばJ Biol Chem. 2004 279(21):21724−31. A cellular UDP−glucose deficiency causes overexpression of glucose/oxygen−regulated proteins independent of the endoplasmic reticulum stress elements. Flores−Diaz M, Higuita JC, Florin I, Okada T, Pollesello P, Bergman T, Thelestam M, Mori K, Alape−Giron A.)等が知られている。また、本明細書の実施例で用いたチロシナーゼ自体も、メラニン合成異常疾患(眼・皮膚白皮症)の原因遺伝子で、これらの疾患では小胞体へのチロシナーゼの蓄積が起こる(Toyofuku K, Wada I, Valencia JC, Kushimoto T, Ferrans VJ, Hearing VJ. Oculocutaneous albinism types 1 and 3 are ER retention diseases: mutation of tyrosinase or Tyrp1 can affect the processing of both mutant and wild−type proteins., FASEB J. 2001 Oct;15(12):2149−61.)。
本発明では、機能阻害によりタンパク質分泌・輸送機構に異常を生じさせるような、図2の小胞体膜関連タンパク質の機能阻害について、その機能阻害を抑制し、当該タンパク質機能の正常化を図る。それにより、タンパク質分泌・輸送機構を正常な状態に調整することが可能となり、タンパク分泌の正常化が図られる。このような効果を奏する本発明の方法は、例えば、タンパク質分泌・輸送機構の異常に起因する疾患の予防および治療等に応用することができる。
タンパク質機能の阻害を抑制する手段は、特には限定されず、公知手段の中から適切な手段を適宜用いることができる。例えば、タンパク質の機能阻害は、当該タンパク質をコードする遺伝子の異常(欠失、置換、付加等)により、タンパク質が発現が喪失または減少する、あるいはタンパク質の生物学的機能が喪失する、ことによって生じうる。このような場合、正常なアミノ酸配列を有する分泌・輸送機構関連タンパク質を発現可能なように、正常な遺伝子を含む構成された発現ベクター等により導入してもよい。組換えタンパク質の発現は公知の方法によって行うことが可能である。ベクターの導入によりタンパク質を正常に発現および機能させることが可能となり、それにより、タンパク質分泌・輸送機構の正常化が図られる。あるいは、本発明の組換えタンパク質を、好ましくは医薬組成物として、分泌・輸送機構タンパク質の生物学的機能が喪失することに起因する疾患を予防又治療するために、対象に投与してもよい。
<6.医薬組成物>
本発明によって、タンパク質分泌・輸送機構に関与する分泌・輸送機構関連タンパク質及び当該タンパク質をコードする遺伝子が、新たに同定された。本発明のタンパク質及び/又は遺伝子は、医薬組成物として使用可能である。
本発明の医薬組成物は、例えば、上述したような<5.タンパク質分泌・輸送機構の制御方法>に記載したような、タンパク質分泌・輸送機構の異常に起因する疾患を、予防および治療する方法のために使用することができる。
本発明の医薬組成物は、分泌・輸送機構関連タンパク質を含んでよく、あるいは、組換え分泌・輸送機構関連タンパク質を発現させるために、分泌・輸送機構関連タンパク質をコードする遺伝子を含んだ発現ベクターを含んでもよい。
本発明の医薬組成物は、全身または局所的に、好ましくは静脈内、皮下、皮内、筋肉内に非経口的に、あるいは経口的に投与しうる。非経口的に投与可能な本発明の医薬組成物の調製は、pH、等張性、安全性等を考慮し、当業者の技術範囲内において行い得る。
本発明の医薬組成物の用量用法は、医薬組成物の作用、例えば、患者の症状の性質および/または重度、体重、性別、食事、投与の時間、並びに他の臨床的作用を左右する種々の因子を考慮し、診察する医師により決定される。当業者は、これらの要素に基づき、本発明の組成物の用量を決定することができる。
本発明の医薬組成物は、所望により医薬的に受容可能な希釈剤、担体、賦形剤等を含んでよい。例えば、これらは液体希釈剤および/または担体を含む組成物、例えばしばしば非経口投与の為に注射可能な形態をとり、そしてその為に滅菌され発熱物質を含まない、水性又は油性の溶液、懸濁液若しくは乳液として適用しても良い。経口投与目的の医薬組成物は、液体希釈剤若しくは担体を含んでいても良いが、固体、例えば澱粉、ラクトース、デキストリン若しくはステアリン酸マグネシウムのような慣用された固体担体物質、を使用するのが更に一般的である。このような固体組成物は、例えば錠剤、カプセル(スパンスルを含む)等のように、適宜に成型されたものであっても良い。本発明の医薬組成物は、さらに防腐剤、湿潤剤、乳化剤、分散別または安定化剤(例えばアルギニン、アスパラギン酸など)などの補助剤を含んでいてもよい。
このようにして得られる医薬組成物の剤形としては、使用する用途に応じて決めればよく、上記のような添加物と混合し、錠剤、丸剤、散剤、顆粒剤、液剤、乳剤等の形態により添付することができる。
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、これらは本発明の技術的範囲を限定するためのものではない。当業者は本明細書の記載に基づいて容易に本発明に修飾・変更を加えることができ、それらも本発明の技術的範囲に含まれる。
以下、実施例に基づき、本発明についてさらに詳細に説明する。なお、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
実施例1
実施例1では、蛍光プローブであるYFPを膜構成成分として含む小胞体を有するHeLa細胞(ヒトの子宮頸癌細胞)を発現系として用いた。当該細胞において、図1に示すように、siRNAにより、各種の小胞体膜関連タンパク質の機能阻害を行った。そして、かかる機能阻害により生じる表現型の変化(具体的には、小胞体の構造変化)から、小胞体膜関連タンパク質の機能の同定・解析を行った。以下、詳細を述べる。
<1>ERm−YFPを発現するHeLa細胞の調製
YFPをコードする遺伝子(以下、「YFP遺伝子」と呼ぶ)が外部から導入され当該YFP遺伝子を安定発現するHeLa細胞を発現系として用いた。このHeLa細胞では、導入したYFP遺伝子由来のYFPが、小胞体の膜構成タンパク質として発現する。YFPを発現するHeLa細胞の調製に際しては、pEYFPベクター(Clontech社製)をLipofectamineおよびPlus reagent(登録商標)(Invitrogen社製)を用いてHeLa細胞に導入した。
<2>細胞培養
上記<1>で得られたYFPを発現するHeLa細胞の培養は、10%ウシ胎児血清(FBS:Invitrogen社製)を添加したDulbecco’s modified Eagle’s medium(DMEM)で培養した。この培地は、Dulbecco’s modified Eagle’s medium(Sigma社製)、MEM Non−Essential Amino Acid solution(Invitrogen社製)、および炭酸水素ナトリウム(ナカライテスク社製)を混合して調製される。このような培地中で、HeLa細胞を37℃、5%CO存在下で培養した。
<3>siRNAの作製
ここではまず、データベース「Hera」(http://www.mcb.mcgill.ca/〜hera/ db_access/参照)より、図1に示す小胞体膜関連タンパク質情報、特に、当該タンパク質をコードする遺伝子の情報を取得した。そして、得られた遺伝子情報に基づき、本発明のRNA干渉核酸である図1のsiRNA(株式会社RNAi社製)を用意した。具体的には、図1に示すように、各小胞体膜関連タンパク質について、RNA干渉の最適標的である規定配列を選択し、かかる規定配列に基づいて、図1の塩基配列を有するセンス鎖およびアンチセンス鎖から構成されるsiRNAを用意した。また、ネガティブコントロール(以下、単に「コントロール」と呼ぶ)として、下記塩基配列を有するsiRNAを用意するとともに、YFPに対してRNA干渉を生じさせる下記塩基配列を有するsiRNA(YFP−siRNA)を用意した。
ネガティブコントロールsiRNA
センス鎖(5’→3’)
GUACCGCACGUCAUUCGUAUC (配列番号193)
アンチセンス鎖(5’→3’)
UACGAAUGACGUGCGGUACGU (配列番号194)
YFPに対するsiRNA
センス鎖(5’→3’)
GACGUAAACGGCCACAAGUUC (配列番号195)
アンチセンス鎖(5’→3’)
ACUUGUGGCCGUUUACGUCGC (配列番号196)
使用するsiRNAは、センス鎖とアンチセンス鎖とを、10mMのTris−HCl(pH7.5)、20mMのNaCl反応溶液中、90℃で3分間加熱し、そして、37℃で1時間インキュベートした後に、室温になるまで放置して会合させることにより作製した。これらのsiRNAについては、2%アガロースゲルで電気泳動させることにより、センス鎖とアンチセンス鎖との会合を確認した。
<4>siRNAのHeLa細胞への導入
各wellの底部にカバーガラスを予め配置した24wellプレートに、HeLa細胞を5×10細胞/wellの密度で播いた。そして、1/1000コラーゲンを含む上記の10%FBSを添加したDMEM培地を用い、前述の細胞培養条件でHeLa細胞を24時間培養した。その後、培地を置換して2時間維持し、1wellにつき、25nMのsiRNAを導入した。導入に際しては、導入試薬としてOligofectamine(登録商標)(Invitrogen社製)を用い、当該試薬とsiRNAとを含むOpti−MEM培地(Invitrogen社製)を細胞培地へ添加して37℃で3日間培養した。
<5>リアルタイムRT−PCR法による解析
siRNA導入から24時間後に細胞を回収し、リアルタイムRT−PCR法により、図1の各小胞体膜関連タンパク質をコードする遺伝子(すなわち対象タンパク質コード遺伝子)の発現を調べた。ここでは、RNeasy Mini kit(Qiagen社製)を用いて全RNAを抽出し、Superscript II(Invitrogen社製)と適切なプライマー対とを用いて、逆転写により対象タンパク質コード遺伝子由来のcDNAを取得してPCRで増幅させて発現を測定した(95℃30秒、60℃30秒、72℃30秒を40cycle)。リアルタイムRT−PCRにおける測定データの収集および分析は、ABI PRIZM7900HT(Applied Byosystems社製)を用い、これらをマニュアルに従って操作し定量的PCRを行った。この場合、HeLa細胞の内在遺伝子であるGAPDHを内部コントロールとして利用し、GAPDHについて対象タンパク質コード遺伝子の場合と同様の操作を行った。そして、GAPDHの検出結果に基づき、対象タンパク質コード遺伝子の測定結果を標準化した。
<6>顕微鏡観察
siRNA導入から3日後の細胞を回収し、当該細胞を、共焦点レーザ顕微鏡(LSM510META ConfoCor2:Carl Zeiss社製)を用いた蛍光顕微鏡観察に供した。この場合、プレートのwell底部に配置したカバーガラスに付着させた状態でカバーガラスごと細胞を回収し、当該カバーガラスと別途用意したカバーガラスとの間に細胞を挟持させて顕微鏡観察を行った。観察では、励起波長458nm、蛍光波長514nmの下、YFPが生じる蛍光シグナルを検出することにより行った。
<7>結果
図3〜図5は、siRNA導入後に実施したリアルタイムRT−PCRの結果を示す図である。詳細には、図3はBAPについて、図4はKinectin1(KTN1)について、図5はOlfactomedin(OLFM)についてそれぞれ示している。図3〜図5において、縦軸は、コントロールにおけるmRNA量を1とした相対値を示す。図3〜図5に示すように、対象タンパク質コード遺伝子であるBAP、KTN1およびOLFMは、siRNA導入により、当該遺伝子に由来するmRNAが顕著に減少する。このことから、これらの対象タンパク質コード遺伝子、ひいては小胞体膜関連タンパク質は、siRNAによりその発現が阻害されることが明らかとなった。
また、後述の実施例3及び図13に示すように、BAP、KTN1およびOLFM以外の図1記載の小胞体膜関連タンパク質8種についても、mRNA量の減少が顕著に確認された。
以上のことから、図1、図13に示すように、配列番号7〜配列番号99に示す各siRNAは、対応する小胞体膜関連タンパク質について、その発現を有意に阻害することが明らかとなった。
図6〜図8は、siRNA導入後に実施した顕微鏡観察の結果を示す図である。図6はBAPについて示しており、図7はKTN1について示しており、図8はOLFMについて示している。これら各図において、左図(a)は、ネガティブコントロールsiRNAを導入した場合を示しており、一方、右図(b)は、各対象タンパク質コード遺伝子BAP、KTN1、OLFMに対応するsiRNAを導入した場合について示している。これらの図において、白く表示されている部分が蛍光で現れている部分である。前述のように、蛍光シグナルは小胞体膜で発現するYFPに由来するものであることから、蛍光シグナルを検出することにより、小胞体の形態、具体的には、小胞体網状構造や小胞体管腔経路の状態等を可視化して視覚的にとらえることが可能となる。また、図中において、蛍光を示す小胞体に囲まれ黒く表示されている略円形の部分は、各細胞の核である。ここでは、蛍光シグナルから把握される小胞体の形態を、コントロールの場合(左図(a)参照)と目的タンパク質阻害の場合(右図(b)参照)とで比較することにより、BAP、KTN1およびOLFMの発現を阻害した場合に生じる小胞体の形態変化(言い換えれば、表現型の変化)が明らかとなる。
図6(a)および(b)に示すように、BAPについては、その発現阻害の有無に関わらず、有意な小胞体の形態変化が見られなかった。かかる結果と、図3で前述したリアルタイムRT−PCRの発現阻害結果、ならびに、小胞体構造の変化が小胞体構造の形成・維持の異常または分泌系タンパク質の成熟過程の異常に起因することをふまえると、小胞体膜関連タンパク質の一つであるBAPは、小胞体構造の形成・維持や分泌系タンパク質の成熟過程への関与が少ないことが示唆された。
一方、図7(a)および(b)に示すように、KTN1については、その発現を阻害すると、小胞体の縮小(具体的には、網状構造の広がりの抑制や管腔経路の縮小・閉塞等)が有意に生じた。したがって、小胞体膜関連タンパク質の一つであるKTN1は、小胞体構造の形成・維持に関与する分子であることが示唆された。
また、図8(a)および(b)に示すように、OLFMについては、その発現を阻害すると、小胞体網状構造に異常(具体的には、網状構造における網密度の減少や空隙率の増加等)が有意に生じた。したがって、小胞体膜関連タンパク質の一つであるOLFMは、小胞体構造の形成・維持や分泌系タンパク質の成熟過程に関与する分子であることが示唆される。
ところで、ここではYFPの蛍光シグナルに基づいて小胞体の形態を検知することから、蛍光シグナルの分布状態や消失の有無は、非常に重要である。例えば、解析対象とするタンパク質の発現阻害により小胞体構造に異常が生じて蛍光シグナルが消失するのであれば、当該消失に基づき小胞体構造へのタンパク質の関与を確認することができるが、解析対象とするタンパク質の発現阻害とは関係無く蛍光シグナルの消失が生じると、当該消失にゆえに小胞体構造へのタンパク質の関与を誤判断するおそれがある。例えば、目的タンパク質の阻害の為に導入したsiRNAが当該タンパク質以外にYFPに対しても阻害(いわゆるoff−target効果)を生じる場合には、蛍光シグナルから検出される小胞体構造の変化が目的タンパク質の阻害効果を正確に反映せず、よって、当該タンパク質の機能を正確に同定・解析することができない。
そこで、YFP蛍光シグナルの分布の変化・消失が、阻害を目的とする小胞体膜関連タンパク質のRNA干渉に起因するものであるか否かを確認する為、YFP自体に対応するsiRNAを用いてYFPの発現阻害を行った。図9は、YFPの発現を阻害した場合の顕微鏡観察結果を示す図である。図9に示すように、siRNAによりYFPの発現を阻害すると(下図)、YFPに対する阻害を行わない場合(上図:ここでは、ネガティブコントロールを導入した場合に相当)に比べて、蛍光が顕著に消失する。このYFP発現阻害による蛍光の消失は、図6(b)、図7(b)および図8(b)に示す前述のBAP、KTN1およびOLFMの発現阻害による蛍光状態の変化とは明らかに異なっている。このことから、BAP、KTN1およびOLFMの発現阻害による蛍光状態の変化は、YFP発現阻害の影響を受けない、BAP、KTN1およびOLFMの小胞体構造への関与に起因するものであることが確認された。
なお、ここでは結果の図示を省略しているが、図1記載の93種の小胞体膜関連タンパク質についてsiRNAによる発現阻害およびそれに伴う小胞体構造の変化の観察を行ったところ、特に、OLFM及びKTN1の発現を阻害した場合に、小胞体構造に有意な変化が生じることが明らかとなり、その他91種タンパク質の発現阻害による表現型の変化は見出されなかった。このことから、これらのタンパク質は、タンパク質分泌・輸送機構における小胞体構造の形成・維持に関与するタンパク質であることが示唆された。特に、OLFMの発現を阻害した場合に小胞体網状構造に生じる異常が顕著であることが明らかとなった。このように、本発明により、これまでは機能が未知であったOLFMが、小胞体構造に関与してタンパク質分泌機能を担うことが示唆された。
実施例2
実施例2では、蛍光プローブであるYFPと一体的にチロシナーゼ(Tyr)が発現するよう構築された、COS細胞(サルの腎臓細胞)を発現系として用いた。当該細胞において、実施例1の場合と同様、図1に示すように、各siRNAにより各小胞体膜関連タンパク質の機能阻害を行った。そして、かかる機能阻害により生じる表現型の変化(具体的には、Tyrの細胞内局在部位)から小胞体膜関連タンパク質の機能の同定・解析を行った。図12に、本実施例の模式図を示す。
以下、詳細を述べる。
<1>Tyr−YFPを発現するCOS細胞の調製
一体的に発現するよう構築したYFPをコードする遺伝子(以下、「YFP遺伝子」と呼ぶ)とTyrをコードする遺伝子(以下、「Tyr遺伝子」と呼ぶ)とを、COS細胞に外部から導入し、YFPとTyrとが一体的に発現する、言い換えれば、蛍光プローブであるYFPが付加されたTyr(以下、「Tyr−YFP」と表す)を安定発現するCOS細胞を調製した。Tyr−YFPを発現するCOS細胞の調製に際しては、ベクターを用いてYFP遺伝子およびTyr遺伝子の導入を行った。
具体的には、まず、Tyr遺伝子(Accession No:M27160)のコード領域における503−2092に相当する塩基配列をpEYEPベクター(Clontech社製)も挿入して構築した。
続いて、構築したベクターを、Lipofectamine 2000(登録商標)(Invitrogen社製)を用いてCOS細胞に導入した。
<2>細胞培養
上記<1>で得られたYFP−Tyrを発現するCOS細胞の培養は、実施例1の<2>細胞培養で前述した培地により培養を用いた。培養条件は、39℃、5%CO存在下とした。
<3>siRNAの作製
実施例1と同様、図1に示す小胞体膜関連タンパク質の発現をそれぞれ抑制する各siRNA、ネガティブコントロールのsiRNA、YFPに対するsiRNAを用いた。これらのsiRNAの作製については、実施例1の<3>で前述した通りである。
<4>siRNAのCOS細胞への導入
siRNAの導入については、以下の点を除いて、実施例1の<4>で前述した通りである。異なる点のみ説明すると、実施例2では、導入試薬としてLipofectamine2000(登録商標)(Invitrogen社製)を用い、当該試薬とsiRNAとを含むOpti−MEM培地(Invitrogen社製)を細胞培地へ添加して39℃で3日間培養した。そして、当該培養後、さらに32℃で5時間培養した。
<5>リアルタイムRT−PCR法による解析
上記32℃での5時間培養後に細胞を回収し、実施例1と同様にしてリアルタイムRT−PCR法による解析を行った。リアルタイムRT−PCR法の操作等については、実施例1の<5>で前述した通りである。
<6>顕微鏡観察
上記32℃での5時間培養後に細胞を回収し、実施例1と同様にして蛍光顕微鏡観察を行った。観察方法の詳細については、実施例1の<6>で前述した通りである。
<7>結果
図10は、siRNA導入後に実施した顕微鏡観察の結果を示す図である。図10の「Control siRNA」は、ネガティブコントロールsiRNAの結果を示している。また、図10のその他は、小胞体膜関連タンパク質に対応するsiRNAの結果を示しており、具体的には、順に、CLN8、EDEM、ERdj5、GlucosidaseI、GlucosidaseII、Olfactomedin1(OLFM)、PAP2B、SCAP、Sec63L、及びSSR2の結果である。
これらの図において、白く表示されている部分が蛍光で現れている部分である。また、図中において、蛍光を示す小胞体に囲まれそのほぼ中央に黒く表示されている円形の部分は、各細胞の核である。前述のように、蛍光シグナルはTyrと一体的に発現するYFP、すなわち、分泌系タンパク質たるTyr−YFPに由来するものである。このようなTyr−YFPは、リボゾームで生合成され、小胞体で立体構造形成等の処理を受けた後、小胞を形成して出芽する。出芽した小胞は、細胞質内を輸送されてゴルジ体に到達し、さらにここで糖修飾等の処理を適宜受ける。このような生合成後の一連の工程は成熟工程(あるいは成熟化)と呼ばれ、成熟したものは分泌顆粒として細胞膜へ到達し、さらに細胞外へ分泌される。小胞体膜関連タンパク質の発現が阻害されずそれゆえタンパク質分泌・輸送機構が正常に機能すると、Tyr−YFPは正常な生合成、成熟および分泌工程を経る。
ここでは、いずれの小胞体膜関連タンパク質の発現も阻害しない場合、すなわちネガティブコントロールsiRNAを用いた場合を、タンパク質分泌・輸送機構が正常に機能した(言い換えれば、正常にTyr−YFPが分泌されリソソームへ移行した)と判断する。そして、この場合のTyr−YFPの蛍光シグナルの状態を基準とし、当該基準に基づいて、目的タンパク質の発現阻害を行った場合における相違を検出する。ここでは、蛍光シグナルより検出されるTyr−YFPの局在状態の変化が、表現型の変化に相当する。
具体的には、正常にTyr−YFPが分泌されるネガティブコントロールsiRNAの場合、Tyr−YFPの蛍光シグナルは、図10の左上に示す分布となる。詳細には、タンパク質分泌・輸送機構が正常に機能してTyr−YFPが正常に分泌されると、リソソームへ移行し、核の周辺領域に明らかなドット状の蛍光シグナルとして、Tyr−YFPが観察される。ここでは、図10のネガティブコントロールsiRNAに示す蛍光シグナルの状態を基準とし、当該基準との比較に基づいて、以下のように小胞体膜関連タンパク質の機能を同定・解析している。
例えば、図10中の、小胞体膜関連タンパク質の一つであるCLN8を発現阻害した場合では、図10のネガティブコントロールsiRNAの蛍光シグナル状態に近い結果が示された。この結果から、CLN8を発現阻害しても、タンパク質分泌・輸送機構は正常に機能することが示唆され、よって、CLN8のタンパク質分泌・輸送機構への関与は少ないことが示唆された。
これに対して、図10の他の9種の小胞体膜関連タンパク質、即ち、EDEM、ERdj5、GlucosidaseI、GlucosidaseII、Olfactomedin1(OLFM)、PAP2b、SCAP、Sec63L、及びSSR2の各々を発現阻害した場合では、図10のネガティブコントロールsiRNAとは視覚的に明らかに異なる、細胞核周辺を取り囲む蛍光シグナル状態が示された。このような蛍光シグナルの状態は、Tyr−YFPの小胞体内(具体的には、小胞体管腔経路内)への蓄積および局在化に起因すると推定される。図10の結果から、上記各小胞体膜関連タンパク質を発現阻害すると、タンパク質分泌・輸送機構が正常に機能しなくなると推定され、よって、これらの小胞体膜関連タンパク質がタンパク質分泌・輸送機構へ有意に関与することが示唆された。
ここでは結果の図示を省略しているが、図1記載の93種の小胞体膜関連タンパク質についてsiRNAによる発現阻害を行って顕微鏡観察したところ、図2記載の9種の小胞体膜関連タンパク質以外の発現阻害については、Tyr−YFPの分布に有意な変化が見られなかった。したがって、当該9種以外の小胞体膜関連タンパク質は、当該9種類に比べて、タンパク質分泌・輸送機構への有意な関与が少ないことが示唆された。
なお、図1記載の93種の小胞体膜関連タンパク質のうちの数種について、siRNAによる発現阻害(具体的には、mRNA量の減少)をRT−PCR法で調べたところ、図1記載の各siRNAにより各タンパク質の発現が有意に阻害されることが明らかとなった(実施例3、図13)。
以上のことから、Tyr−YFPの細胞内移行異常(すなわちタンパク質分泌・輸送機構の異常)は、上記9種の各小胞体膜関連タンパク質の発現阻害により生じるタンパク質の機能阻害によるものであることが明らかとなった。したがって、これら9種の小胞体膜関連タンパク質は、タンパク質分泌・輸送機構(より詳細には、当該機構のTyr成熟工程)に有意に関与することが明らかとなった。
Tyr−YFPの分泌が正常に行われない要因としては、例えば、小胞体膜関連タンパク質の機能阻害により、1)小胞体構造自体の異常(網状構造が正常に形成または維持されない)、2)タンパク質の立体構造形成が正常に行われない、3)ミスフォールドしたタンパク質の分解が正常に行わない、4)小胞体からのタンパク質排出が正常に行われない、のいずれかに起因してTyr−YFPの成熟が正常に行われない等が挙げられる。また、2)〜4)については、小胞体膜関連タンパク質の機能阻害により、例えば分子シャペロンや酵素等の機能が阻害されるためと推定される。
また、実施例2においても、実施例1と同様に、YFP蛍光シグナルの分布の変化・消失が、阻害を目的とする小胞体膜関連タンパク質のsiRNAに起因するものでないか否かを確認する為、YFP自体に対応したsiRNAを用いてYFPの発現阻害を行った。図11(a)〜(c)は、YFBの発現阻害における顕微鏡観察結果を示す図である。図11(a)および(b)に示すように、siRNAによりYFPの発現を阻害すると((a)図)、当該阻害を行わない場合((b)図)に比べて、蛍光が顕著に消失する。図11(b)に示すYFP発現阻害による蛍光の消失は、図10(ネガティブコントロール、CLN8以外)に示す前述の各小胞体膜関連タンパク質の発現阻害による蛍光状態とは明らかに異なっている。このことから、これらの各小胞体膜関連タンパク質の発現阻害による蛍光状態は、YFPの発現阻害の影響を受けない、小胞体膜関連タンパク質の関与に起因するものであることが確認された。
さらに、Tyrの温度感受性について調べた結果を説明する。図11(a)は、COS細胞を39℃で培養した場合の顕微鏡観察結果を示しており、図11(c)は、当該細胞を32℃で培養した場合の顕微鏡観察結果を示している。図11(a)と図11(c)との比較、ならびに、図11(a)および図11(c)と図10(a)との比較から明らかなように、Tyrは温度感受性が高く、それゆえ、Tyrの発現系であるCOS細胞を39℃で培養すると、Tyrの立体構造形成が正常に行われず(いわゆるミスフォールド)、小胞体の管腔経路内に蓄積される(図11(a))。この為、Tyr−YFPが正常に分泌される図10(a)の場合とは異なるTyr−YFPの蛍光シグナルを示す。一方、39℃で培養したCOS細胞を32℃の培養条件下に移すと、Tyrの立体構造が正常に形成し直され、小胞体からゴルジ体への速やかな排出が促進される。それゆえ、図11(c)に示すように、図11(a)の場合に比べて、図10(a)に示す正常な場合の分布に近くなる。
実施例3 mRNA発現の定量
本実施例では、図1に記載の数種類のsiRNAを用いた場合の、mRNAの発現量を調べた。
1)RNAは、ABI PRISM6700 Automated Nucleic Acid Workstation(Applied Biosystems, Foster City,CA)を用いて、HeLa細胞又はCOS7細胞から抽出した。cDNAは、SuperscriptII(Invitrogen)又はHigh−Capacity cDNA Archive Kit(Applied Biosystems)で、ランダムヘキサマープライマーを用いて、全RNAから合成した。
リアルタイムPCRのために調製されたcDNAを、ABI PRISM 7900HT(95℃30秒、60℃30秒、及び72℃30秒を40サイクル)を使用して、リアルタイムPCR用試薬であるSYBR Green Master Mix(Applied Biosystems)を用いて、3回実施した。本分析に使用したプライマー配列は下記の通りである。
内部標準グリセルアルデヒド―3―ホスフェートデヒドロゲナーゼ(GAPDH)
Forward primer
AAGGTGAAGGTCGGAGTCAA (配列番号199)
Reverse primer
CATGGGTGGAATCATATTGG (配列番号200)
BAP
Forward primer
CCAGCTCCAGTTTGGAAGAG (配列番号201)
Reverse primer
CCCATTGATCACCACTTGAA (配列番号202)
KTN1
Forward primer
CAAGTTCGTGAGCAGATGGA (配列番号203)
Reverse primer
TCTGCAGACTGCTTGCTTTC (配列番号204)
OLFM
Forward primer
CAGACGTCGGAAGAAACTCC (配列番号205)
Reverse primer
CATTGCCTCGCCTCTTTAGT (配列番号206)
EDEM
Forward primer
TTCACAGGGCTCAGGGTTAT (配列番号207)
Reverse primer
ATTCCTCTGCCTTGCAGAAA (配列番号208)
ERdj5
Forward primer
GGCTTAGTGGCATGTTGGAT (配列番号209)
Reverse primer
TGGCTCCAGGAGGAAAATAA (配列番号210)
GlucosidaseI
Forward primer
CCACTCTGGCTCTGAAGGAC (配列番号211)
Reverse primer
AGGGCTATGTGGGATGACAG (配列番号212)
GlucosidaseII
Forward primer
GAGCATGCAGACAACCTGAG (配列番号213)
Reverse primer
AGGCACAGACCCATACAAGG (配列番号214)
PAP2B
Forward primer
TCAGAAGGAGCCAGAGAAGC (配列番号215)
Reverse primer
GGCTCAACCCCAAGACAATA (配列番号216)
SCAP
Forward primer
GGATGACCCTGACTGAAAGG (配列番号217)
Reverse primer
GCAGGCTAAGATGCAGAACC (配列番号218)
Sec63
Forward primer
AGGCAAACAATGGCTGAAGT (配列番号219)
Reverse primer
TCTGTTGCCATCCTCCTTTT (配列番号220)
SSR2
Forward primer
AGGTGCTTTCCAGACTCCAA (配列番号221)
Reverse primer
GACTCCTAGGGCTGGTCCTT (配列番号222)
結果を、図13示す。図13は、3回の実験の平均の結果を、標準誤差のバーとともに示してある。図13に示したように、各siRNAは有意に各遺伝子のmRNAの発現を抑制している。
2)さらに、COS7細胞中のOLFM mRNAの発現を、標準的なPCR方法によって手引き通りに行った。COS7細胞からのRNA抽出はEASYprep RNA(TAKARA BIO, Ohtus, Japan)を使用した。標的cDNA(RQ)の量の相対値(最低検出レベルのn倍として表現)を、比較サイクル閾値法を用いて計算し、そして、校正遺伝子、グリセルアルデヒド−3−ホスフェートデヒドロゲナーゼに対して標準化した。その結果、COS細胞中で、OLFMが確かに発現していることが確認された。
実施例4 Tyr-YFPの成熟化に関するFRAP(fluorescence recovery after photobleaching)分析
本実施例では、許容温度の32℃において、タンパク質の折り畳みをモニターするために、小胞体中でのTyr-YFPの拡散運動を測定した。
実施例2と同様、YFPとTyrとが一体的に発現するTyr−YFP発現COS細胞を使用した。細胞の調製については実施例2の<1>に前述した通りである。また、細胞の培養およびsiRNAのCOS細胞への導入については、以下の点を除いて、実施例2<4>で前述した通りである。異なる工程は、実施例4では8ウェルチェンバープレートに、COS細胞を2.5×10細胞/wellの密度となるように播いた点である。
ネガティブコントロールsiRNAを細胞へトランスフェクションし、39℃で2日間培養した後、10μM ブレフェルディンA(BFA)を添加し、32℃で5時間インキュベーションした細胞をコントロールとして準備した。実施例2で分泌・輸送機構関連タンパク質と同定された9種類のsiRNAの各々をトランスフェクトした細胞についても同様に39℃で2日間培養した後、32℃で5時間維持した。その後、Tyr―YFPについてFRAP(fluorescence recovery after photobleaching)分析を行った。ズームファクターを15に設定し、レーザーの出力は最小、ピンホールセッティングは最大に調整してイメージを取得した。外部ヒーター(Bioptech)により温度制御した5%COチェンバー(Tokai Hit,Fujinomiya,Japan)を用いて、顕微鏡下で細胞を37℃に維持した。赤外線温度計TS−100(Tohsin,Tokyo、Japan)を用いて、温度を維持した。100のプレブリーチングイメージを記録した後に、選択された円状の領域(0.13μmのピクセルサイズの14ピクセル直径)を5回、光ブリーチした。
小胞体中のブリーチされた領域中の蛍光を定量化し、光ブリーチ直前に50イメージの平均蛍光に対して標準化した。各実験において、これらの標準化されたデータを平均化し、拡散係数の概算及び最大回復率を計算した。標準化された平均回復率を標準誤差とともに示した。結果の一部を、図14に示す。
図14に示したように、BFAで処理したコントロール細胞では、最大87%の回復率を示した。調べた9種類のsiRNAは、コントロールよりも有意に低い最大回復率を示した。特に5種類のsiRNA導入細胞におけるTyr−YFPの蛍光の最大回復率を図14の右図に示した。その中でも、カルネキシンサイクルのメンバーであるGlucosidaseI(図14、左図)およびII(データ未掲載)発現を阻害した細胞においては、Tyr−YFPの小胞体内での凝集に起因するimmobilizationにより、蛍光回復率が両者とも同等に最も低かった。またERdj5や、コレステロール生合成に関与するSREBPのエスコートタンパク質として知られるSCAPの発現をノックダウンした細胞においても、Glucosidaseと同等な蛍光回復率の著しい低下が観察され、小胞体からのTyr−YFP輸送の遅延、Tyr−YFPのmobility低下が示唆された(図14、中図)。さらに、OLFMおよびPAP2Bをターゲットとした発現抑制においても同様の結果が得られた。ここでは図を省略しているが、その他のsiRNA(EDEM、Sec63およびSSR2)を導入したTyr−YFP発現COS7細胞を使用したFRAP解析においても、コントロール細胞と比較して最大回復率は顕著に低い値であった。
これらの結果は、9種の小胞体膜タンパク質が、タンパク質の成熟(分泌・輸送)機構に必須の因子であることを強く示唆するものである。
実施例5 本発明の分泌・輸送機構関連タンパク質のゴルジ膜タンパク質への影響
本実施例では、OLFMを含む本発明で同定された各種分泌・輸送機構関連タンパク質を、対応するsiRNAによりノックダウンさせた細胞において、ゴルジ体が正しく構成されるかを調べた。
先ず、N−アセチルガラクトサミニルトランスフェラーゼ−21−114(GalNAc−T2)−GFP(ゴルジ膜タンパク質のGFP融合体)を安定的に発現するHeLa細胞を、OLFM siRNA又はGlucosidaseIおよび/またはII siRNAで処理した。具体的には、GalNAc−T2−GFPを発現しているHeLa細胞に、各siRNA(コントロールsiRNA、GlucosidaseI siRNA、GlucosidaseII siRNA、OLFM siRNA)をトランスフェクトした。細胞を37℃で48時間培養した後、メタノールを添加することで固定し、マウス抗−GM130抗体(Stressgen 社製)を添加した。マウス抗−GM130抗体の可視化は、Alexa594−標識抗−マウスIgG(Invitrogen)を用いて行った。
結果を図15に示す。GlucosidaseI siRNAおよびGlucosidaseII siRNAによる処理の場合、ゴルジ体の構造に変化は生じなかった。これに対し、OLFM siRNAによる処理の場合、有意な量のGalNAc−T2−GFPが小胞体中に滞留した。ただし、GM130抗体による染色の結果、ゴルジ体のパターンは正常であった。これらの結果は、OLFMノックダウンは、ゴルジ膜タンパク質の再分布を生じさせるが、OLFMの機能が折り畳みではないことを明確に示唆する。
本発明者らはさらに、Tyr−YFP成熟化の異常に関与する、本発明の他の分泌・輸送機構関連タンパク質の抑制が、GalNAc−T2−GFPの輸送に影響を与えるかを調べた。具体的には図15の場合と同様に、GalNAc−T2−GFPを発現しているHeLa細胞にsiRNAをトランスフェクトし、表現型を調べた。
結果を図16に示す。ERdj5及びPAP2Bのノックダウンは、小胞体中へのGalNAc−T2−GFPの滞留を引き起こした。ERdj5ノックダウン細胞では、実施例4のFRAP解析で示したように、Tyr−YFPの顕著なimmobilizationが観察されたので、GalNAc−T2−GFPに対しても同様な効果を示す可能性が考えられる。一方、Sec63、SSR2、SCAP又はEDEMのノックダウンは、明らかな表現型を示さなかった。
図1は、本発明に係る分泌・輸送機構関連タンパク質の同定・機能解析方法に供する小胞体関連タンパク質、および、当該タンパク質の機能阻害に用いる本発明に係るRNA干渉核酸(siRNA)を示す図である。 図1は、本発明に係る分泌・輸送機構関連タンパク質の同定・機能解析方法に供する小胞体関連タンパク質、および、当該タンパク質の機能阻害に用いる本発明に係るRNA干渉核酸(siRNA)を示す図である。 図1は、本発明に係る分泌・輸送機構関連タンパク質の同定・機能解析方法に供する小胞体関連タンパク質、および、当該タンパク質の機能阻害に用いる本発明に係るRNA干渉核酸(siRNA)を示す図である。 図2は、本発明に係る分泌・輸送機構関連タンパク質の同定・機能解析方法によりタンパク質分泌・輸送機構への関与が明らかとなった小胞体膜関連タンパク質、および、当該タンパク質の機能を阻害する本発明に係るRNA干渉核酸(siRNA)を示す図である。 図3は、本発明の実施例1における、小胞体関連タンパク質BAPの発現抑制効果を示す図である。 図4は、本発明の実施例1における、小胞体関連タンパク質KTN1の発現抑制効果を示す図である。 図5は、本発明の実施例1における、小胞体関連タンパク質OLFMの発現抑制効果を示す図である。 図6は、本発明の実施例1における、小胞体関連タンパク質BAPの機能阻害によるHeLa細胞表現型の変化を示す図である。 図7は、本発明の実施例1における、小胞体関連タンパク質KTN1の機能阻害によるHeLa細胞表現型の変化を示す図である。 図8は、本発明の実施例1における、小胞体関連タンパク質OLFMの機能阻害によるHeLa細胞表現型の変化を示す図である。 図9は、本発明の実施例1における、YFPの機能阻害によるHeLa細胞表現型の変化を示す図である。 図10は、本発明の実施例2における、図2記載の小胞体膜関連タンパク質およびCLN8の機能阻害によるHeLa細胞表現型の変化を示す図である。 図11は、本発明の実施例2における、Tyr温度感受性を示す図である。 図12は、本発明の実施例2の実施態様を模式的に示す図である。 図13は、各種siRNAを用いた場合のmRNAの発現量を、リアルタイムPCRの結果の相対値で示した図である。 図14は、各種siRNAを用いた場合のノックダウン細胞における、Tyr−YFPについてのFRAP分析の結果を示す。右欄はフォトブリーチ後の蛍光最大回復率を数値化したものである。 図15は、OLFM及びGlucosidaseI及びIIのsiRNAによるノックダウン細胞における、ゴルジ膜タンパク質への影響を示す。左欄は、GalNAc−T2−GFP、中欄は、抗GM130抗体により細胞を免疫染色した結果、右欄は、両者を重ね合わせた結果を示す。 図16は、本発明の分泌・輸送機構関連タンパク質のsiRNAによるノックダウン細胞における、ゴルジ膜タンパク質への影響を示す。GalNAc−T2−GFPによる蛍光の結果である。

Claims (14)

  1. タンパク質分泌・輸送機構に関与する分泌・輸送機構関連タンパク質の同定・機能解析方法であって、
    (a)小胞体の構造及び/または機能に関与する一群の小胞体関連タンパク質をコードする一群の対象遺伝子の塩基配列情報、あるいは小胞体の構造及び/または機能に関与する一群の小胞体関連タンパク質(対象タンパク質)のアミノ酸配列情報に基づいて、前記対象遺伝子及び/又は対象タンパク質の機能を阻害する阻害物質を調製し、そして
    (b)前記阻害物質を、前記対象タンパク質を発現する細胞に導入し、当該細胞の表現型の変化に基づいて前記分泌・輸送機構関連タンパク質を同定・機能解析する
    工程を含むことを特徴とする方法。
  2. 前記阻害物質が以下のものから選択される、請求項1又は2に記載の方法
    1)遺伝子プロモータのリプレッサー及びアクチベーター阻害因子からなるグループから選択される、転写レベルでの発現阻害物質;
    2)リボザイム、アンチセンスRNA前駆体、siRNA、shRNA及びmiRNAからなるグループから選択される、翻訳レベルでの発現阻害物質;あるいは
    3)抗体及び低分子化合物からなるグループから選択される、タンパク質レベルでの発現阻害物質。
  3. 前記阻害物質が核酸である、請求項1又は2に記載の方法。
  4. 前記阻害物質が、前記対象遺伝子を標的遺伝子としてRNA干渉を生じさせるRNA干渉核酸である、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の方法。
  5. 前記(a)阻害物質を調製する工程は、RNA干渉核酸を選択する工程を含み、当該RNA干渉核酸選択工程では、前記標的遺伝子たる対象タンパク質のコード遺伝子の塩基配列情報中から取得される下記(1)〜(5)の規則に従う規定配列と同一の塩基配列を含むRNA干渉核酸を選択する、請求項4に記載の方法。
    (1) 3’末端の塩基が、アデニン、チミンまたはウラシルであり;
    (2) 5’末端の塩基が、グアニンまたはシトシンであり;
    (3) 3’末端の7塩基の配列において、アデニン、チミンおよびウラシルからな
    る群より選ばれる一種または二種以上の塩基がリッチであり;
    (4) 塩基数が、細胞毒性を生じさせずにRNA干渉を生じさせ得る数であり;
    (5) 前記阻害物質が導入される細胞の全遺伝子の塩基配列のうち、前記標的遺伝子以外の他の遺伝子の塩基配列中に、前記規定配列と90%以上の同一性を有する配列が含まれない。
  6. タンパク質分泌・輸送機構に関与する分泌・輸送機構関連タンパク質の同定・機能解析に用いるRNA干渉核酸であって、小胞体の構造及び/または機能に関与する一群の小胞体関連タンパク質をコードする一群の対象遺伝子を標的遺伝子とし、当該標的遺伝子の塩基配列中に含まれる下記(1)〜(5)の規則に従う規定配列と同一の塩基配列を含むセンス鎖と、当該センス鎖に相補的な塩基配列を含むアンチセンス鎖とが二重鎖を形成して構成されることを特徴とする、RNA干渉核酸。
    (1) 3’末端の塩基が、アデニン、チミンまたはウラシルであり;
    (2) 5’末端の塩基が、グアニンまたはシトシンであり;
    (3) 3’末端の7塩基の配列において、アデニン、チミンおよびウラシルからな
    る群より選ばれる一種または二種以上の塩基がリッチであり;
    (4) 塩基数が、細胞毒性を生じさせずにRNA干渉を生じさせ得る数であり;
    (5) 当該RNA干渉核酸が導入される細胞の全遺伝子の塩基配列のうち、前記標的遺伝子以外の他の遺伝子の塩基配列中に、当該記規定配列と90%以上の同一性を有する配列が含まれない。
  7. 図1に示す小胞体関連タンパク質をコードする遺伝子を前記標的遺伝子とする、請求項6に記載のRNA干渉核酸。
  8. 前記センス鎖および前記アンチセンス鎖が、図1に示す配列番号7−99、あるいは、配列番号100−192の塩基配列のいずれかを有する、請求項7に記載のRNA干渉核酸。
  9. 前記センス鎖および前記アンチセンス鎖の二重鎖領域における少なくとも一方の鎖が、RNAとDNAとからなり、当該一方の鎖の上流側9〜13ヌクレオチドがRNAである、請求項6〜8のいずれか一項に記載のRNA干渉核酸。
  10. 請求項6〜9のいずれか一項に記載のRNA干渉核酸を含むことを特徴とする、タンパク質分泌・輸送機構に関与する分泌・輸送機構関連タンパク質の同定・機能解析用キット。
  11. 下記(1)〜(4)のいずれか1つに記載の分泌・輸送機構関連タンパク質;
    (1)配列番号1記載のアミノ酸配列を含むタンパク質;
    (2)配列番号1記載のアミノ酸配列において一または複数のアミノ酸が置換、欠失、付加、および/または挿入されたアミノ酸配列を含み、分泌・輸送機構に関与する生物学的機能を奏するタンパク質;
    (3)配列番号2記載の塩基配列でコードされるアミノ酸配列を含むタンパク質;並びに
    (4)配列番号2記載の塩基配列でコードされるアミノ酸配列において一または複数のアミノ酸が置換、欠失、付加、および/または挿入されたアミノ酸配列を含み、分泌・輸送機構に関与する生物学的機能を奏するタンパク質。
  12. 下記(1)〜(4)のいずれか1つに記載の分泌・輸送機構関連タンパク質;
    (1)配列番号3記載のアミノ酸配列を含むタンパク質;
    (2)配列番号3記載のアミノ酸配列において一または複数のアミノ酸が置換、欠失、付加、および/または挿入されたアミノ酸配列を含み、分泌・輸送機構に関与する生物学的機能を奏するタンパク質;
    (3)配列番号4記載の塩基配列でコードされるアミノ酸配列を含むタンパク質;並びに
    (4)配列番号4記載の塩基配列でコードされるアミノ酸配列において一または複数のアミノ酸が置換、欠失、付加、および/または挿入されたアミノ酸配列を含み、分泌・輸送機構に関与する生物学的機能を奏するタンパク質。
  13. 下記(1)〜(4)のいずれか1つに記載の分泌・輸送機構関連タンパク質;
    (1)配列番号5記載のアミノ酸配列を含むタンパク質;
    (2)配列番号5記載のアミノ酸配列において一または複数のアミノ酸が置換、欠失、付加、および/または挿入されたアミノ酸配列を含み、分泌・輸送機構に関与する生物学的機能を奏するタンパク質;
    (3)配列番号6記載の塩基配列でコードされるアミノ酸配列を含むタンパク質;並びに
    (4)配列番号6記載の塩基配列でコードされるアミノ酸配列において一または複数のアミノ酸が置換、欠失、付加、および/または挿入されたアミノ酸配列を含み、分泌・輸送機構に関与する生物学的機能を奏するタンパク質。
  14. 図2に示す9種類の小胞体関連タンパク質の機能阻害を抑制することを含む、タンパク質分泌・輸送機構の制御方法。
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