JP2007312649A - 再構築された感染性レトロウイルスゲノムクローンdna及びそれを含む微生物ならびにそれらの製造方法 - Google Patents

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亙 杉浦
Tomoyuki Ueda
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Abstract

【課題】簡便に効率よくHIVのようなレトロウイルスの感染性クローンを作製する手法を開発し、AIDSのようなレトロウイルス疾患の病態の解明及び有効な治療薬の選択等に有用なレトロウイルスの感染性クローン及び試験方法等を提供する。
【解決手段】5以上に分割されたレトロウイルス全長ゲノムの各フラグメントから再構築された感染性レトロウイルスゲノムクローンDNA。
【選択図】なし

Description

本発明はレトロウイルスゲノム、特にHIVゲノムの感染性クローンDNA、それを含むベクター及び微生物、ならびにそれらの製造方法等に関する。
後天性免疫不全症候群(AIDS)の病態の詳細な理解のためには、その原因であるヒト免疫不全ウイルス(HIV)、特に主要なウイルスであるI型のHIV(HIV−1)の感染性クローンを感染者から回収し、解析することが求められている。
しかし、HIV感染性クローンの作製は、その組換え効率、DNAの安定性等の問題のため、容易ではない。
現在、感染性クローンの作製は、細胞からのウイルス分離、又はウイルスRNAからのRT−PCRによる増幅産物のクローニングにより行なわれている。
感染細胞からのHIV分離はウイルス回収技術として用いられるが、この方法で得られるウイルスはクローンではない。また、同じ感染細胞を用いて分離を行なった場合でも、回収されるウイルスはその都度異なり、同じウイルスを回収することは不可能である。
また、RT−PCR、すなわちHIV感染者血漿中から抽出したRNAを逆転写することによってcDNAを得る方法では、一度にHIVのゲノムすべてをPCRによって増幅することは困難である。その理由としては、第一に、HIVのゲノムの両端に長い末端反復配列(long terminal repeat;LTR)が存在することが挙げられる。この相同な配列が存在することによって、両端からのPCRが阻害されてしまうため、PCRに用いることが出来るプライマーセットが存在しないことになる。第二に、HIVは非常に多様性があり、感染者ごと、また、サブタイプごとにHIVの塩基配列が異なっており、すべてのウイルスに対して使用出来るプライマーセットが限られている点がある。第三に、数kbに及ぶRT−PCRでは、テンプレートとして、純度が高く、濃度が高いRNAが要求されるが、感染者由来のRNAは、その質、量共にまちまちであるため、常に好条件でDNAを増幅出来るとは限らず、サンプルごとに条件が異なる。
そのため、RT−PCRに基づいて感染者からHIVの全長ゲノムをクローニングするためには、主にいくつかの領域を断片的にクローニングし、後に制限酵素を用いて段階的にゲノムを再構築する手法が取られている。その際の断片化は、その後の操作を簡単にするためになるべく少なくする必要がある。したがって、従来得られてきたいくつかのHIVクローンは、いずれも2又は3のフラグメントを再構築したものである。
しかし、PCRによって長いフラグメントを増幅した場合、10%程度の高い確率で変異が入ることが知られている。この方法では、長いフラグメントを増幅出来るDNAポリメラーゼを用いてPCRを行うが、増幅する長さが伸びるにつれてフィデリティが低くなる傾向があり、変異が入りやすいため、得られたクローンが感染者のものと同一である可能性は低くなる。HIVの場合、プロテアーゼ阻害剤(PI)や逆転写酵素阻害剤(RTI)のような薬剤に対する薬剤耐性のように、一塩基異なっただけでも劇的に表現型が変わる場合があり、DNAに変異が入ることによって正確な病態及び遺伝子の解析が出来なくなるおそれがある。
一方、高いフィデリティを保つDNAポリメラーゼは長いフラグメントを増幅出来ず、せいぜい数kb程度のいくつものフラグメント化されたクローンしか得ることができないため、ゲノムの再構築が困難となる。
つまり、HIVの全長ゲノムのクローニングは、操作を簡便にするために長い領域を増幅したい一方で、高いフィデリティを保つために短い領域しか増幅できないというジレンマに陥っているのである。
HIVのDNAクローニングのツールとしては、一般的に大腸菌が使われてきた。大腸菌を使うメリットとしては、操作が最適化されおり、誰もが簡便かつ確実に核酸の操作を行える点がある。また、細胞生物学的研究が進んでおり、多分野で様々な研究材料として活用されている実績がある。しかし、大腸菌は、DNAの変異や欠失等が起こりやすく、長いDNAによる形質転換効率が低いため、長い分子のクローニングに適さない。
同等に細胞生物学的研究が進んでいるグラム陽性細菌として、枯草菌(B. subtilis)がある。枯草菌もまた、大腸菌と同様にタンパク質の合成にも利用出来、他分野で様々な研究材料として活用されている実績があり、バイオツールとして有用性が高い。HIVの研究においても、過去にpolを発現し、RTの回収を行う研究に用いられていた。枯草菌は、大腸菌にない特徴として、容易にDNAの形質転換を行える能力を有する。
この高いDNA形質転換能を利用したクローニング方法として、柘植・板谷らによる「Ordered Gene Assembly in B. subtilis」(OGAB法)が以前に報告されている。この方法は、いくつものフラグメントに分断されたDNAと枯草菌のプラスミドとを、一度に直線状にライゲーションし、それを枯草菌に導入して一連の遺伝子を一度にクローニングする方法である。この方法は、特に配列に制限がなく、50kb以上の大きさのDNAのクローニングについても利用できるとされている。
しかし、OGAB法は、LTRを有するウイルスゲノムへの応用は行なわれていなかった。その要因として、多様性を保持したままのHIVゲノムの断片化設計が難しかったことと、ゲノム両端の相同配列であるLTRが組み換えの基点になってしまうことが危惧されていたこと等が挙げられる。
上記でHIVについて説明したような背景は、LTRを有する他のウイルス、即ち他のレトロウイルスについても同様であり、このようなウイルスについて全長ゲノムを含む感染性クローンを容易に取得することが求められてきた。
特開2002−17350号公報 特開2003−250563号公報 特開2004−129654号公報 Virology, 345(2006) 328-336 AIDS Research and Human Retroviruses, vol.20, No.9, 2004, pp.1015-1018 Virology, 326(2004) 329-339 AIDS Research and Human Retroviruses, vol.18, No.8, 2002, pp.585-589 Vaccine 20(2002) 1181-1185 AIDS Research and Human Retroviruses, vol.16, No.12, 2000, pp.1175-1178 Virology 278, 103-110(2000) Nature Medicine, vol.5, No.2 (1999) pp.239-242 J. Virol. 1997, pp.5140-5147 Tsuge, K. et.al., Nucl. Acids Res. 2003 Vol 31:No 21: e133 Gene, 55 (1987) 95-103
本発明は、簡便に効率よくHIVのようなレトロウイルスの感染性クローンを作製する手法を開発し、AIDSのようなレトロウイルス疾患の病態の解明及び有効な治療薬の選択等に有用なレトロウイルスの感染性クローン及び試験方法等を提供することを目的とする。
本発明者らは、枯草菌をはじめとするバチルス属細菌(Bacillus sp.)の保持する高い遺伝子組換え能力を活用して、OGAB法に基づいて両端にLTRを含むウイルスゲノムの全長を容易にクローニングできることを見出し、本発明を完成した。
即ち、本発明は、
〔1〕 5以上に分割されたレトロウイルス全長ゲノムの各フラグメントから再構築された感染性レトロウイルスゲノムクローンDNA;
〔2〕 前記5以上に分割されたレトロウイルス全長ゲノムのフラグメントが、各フラグメントの両端に、各フラグメントがゲノムにおける順序と同じ順序で連結しうるように選択された制限酵素配列を有するフラグメントである、前記〔1〕記載の感染性レトロウイルスゲノムクローンDNA;
〔3〕 前記5以上に分割されたレトロウイルス全長ゲノムのフラグメントが、2以上のレトロウイルス株から由来する、前記〔1〕又は〔2〕記載の感染性レトロウイルスゲノムクローンDNA;
〔4〕 前記〔1〕〜〔3〕のいずれか1項記載の感染性レトロウイルスゲノムクローンDNAを含むベクター;
〔5〕 前記〔1〕〜〔3〕のいずれか1項記載の感染性レトロウイルスゲノムクローンDNAから得られた感染性レトロウイルスウイルス粒子;
〔6〕 5以上のゲノムフラグメントから再構築された感染性レトロウイルスゲノムクローンDNAを含む形質転換用タンデムリピートDNAを作製する方法であって、
1)5以上に分割されたレトロウイルス全長ゲノムの各フラグメントを、各フラグメントの両端に各フラグメントがゲノムにおける順序と同じ順序で連結しうるように選択された制限酵素配列を有するフラグメントとして用意し、
2)前記各フラグメントとバチルス属細菌のベクターとの連結反応を行なって、
3)ゲノムにおける順序と同じ順序で連結した前記各フラグメントからなるレトロウイルス全長ゲノムとバチルス属細菌のベクターとが直鎖状に連結したユニットを2以上含むタンデムリピートDNAを得ること、
を含む方法;
〔7〕 前記5以上のゲノムフラグメントが、2以上のレトロウイルス株から由来するものである、前記〔6〕記載の方法;
〔8〕 前記〔6〕又は〔7〕記載の方法によって作製された形質転換用タンデムリピートDNA;
〔9〕 5以上のゲノムフラグメントから再構築された感染性レトロウイルスゲノムクローンDNAを含むベクターを作製する方法であって、前記〔8〕記載のタンデムリピートDNAをバチルス属細菌のコンピテント細胞に導入して、再構築されたレトロウイルスゲノムクローンDNAを含むベクターを回収することを含む方法;
〔10〕 前記〔9〕記載の方法によって作製された感染性レトロウイルスゲノムクローンDNAを含むベクター;
〔11〕 前記〔1〕〜〔3〕のいずれか1項記載の感染性レトロウイルスゲノムクローンDNA、前記〔4〕記載のベクター、前記〔5〕記載のウイルス粒子、前記〔8〕記載のタンデムリピートDNA及び前記〔10〕記載のベクターからなる群から選択されるいずれか1つを含む微生物;
〔12〕 前記〔1〕〜〔3〕のいずれか1項記載の感染性レトロウイルスゲノムクローンDNA、前記〔4〕記載のベクター、前記〔5〕記載のウイルス粒子、前記〔8〕記載のタンデムリピートDNA及び前記〔10〕記載のベクターからなる群から選択されるいずれか1つを、哺乳類細胞又はレトロウイルス感受性細胞に添加して培養し、この細胞中又は培養液中のレトロウイルスタンパクの発現又は活性を検出又は測定することを含む、感染性レトロウイルスゲノムクローン又はその遺伝子の特性の試験方法、
を提供する。
本発明のクローニング方法は、OGAB法に基づいている。したがって、OGAB法の原理として、全長ゲノムをフラグメントの末端配列の組み合わせの数(三塩基突出末端の場合、4/2+1=33個)までのDNAフラグメントとしてそれを順番に繋ぎ合わせることが出来る。本発明によれば、HIVなどのレトロウイルス感染者からの全長ウイルスゲノムクローニングの問題点の一つである、様々な条件のRNAから長いフラグメントをクローニングしなくてはならないという問題が回避され、短いフラグメントからレトロウイルスゲノムの感染性クローン全長を含むプラスミドを容易に得ることができる。短いフラグメントであれば、質の悪いRNAからもクローニングすることが出来るため、例えば数十年が経過した感染者血漿からRT-PCRによってフラグメントを分離し、それを最終的に集積して感染クローンとして構築することが可能となる。
また、本発明のクローンDNAは、各フラグメントの作製時に変異が入り難いため、感染者におけるゲノム配列を正確に反映するものとなる。また、培養細胞株を用いた種々の実験に使用することができるため、実際の感染性クローンの各遺伝子と病態との関係などについての詳細な解析が可能となる。
さらに、遺伝子ごと、あるいは特定の領域ごとにライブラリーを作製し、それを自由に組み合わせることによって、種々の組合せの遺伝子をもつゲノムを自由に創出することができ、このようなゲノムのクローンは、これまで解析が困難であったウイルス遺伝子同士の相互作用の研究に有効なツールとして活用することができる。
例えば、gag、pro、RTなどの特定の領域のライブラリーから所望の組合せの遺伝子をもつ感染性クローンを作製し、薬剤耐性を調べることができ、その結果、患者のクローンに合わせてより効果的な薬剤の組合せを選択することができる。
また、多くの研究から、PIやRTIによって生じた薬剤耐性が外の遺伝子にも変異を促していることが明らかになりつつあり、薬剤耐性ウイルスの出現のメカニズムを探る上では、様々な配列の組み合わせを作る必要がある。組み合わせる領域がある程度決まっているのであれば、その領域をクローニングしたものをいくつも用意し、総当たりで組み合わせを作っていくことが出来る。このような膨大な数の組み合わせを作るのには大変な労力を必要とするが、本発明の方法を利用することによって短時間かつ省スペースで実行することが出来る。
さらに、バチルス属細菌、特に枯草菌を利用することにより、以下のような効果がある。枯草菌の取り扱いは大腸菌とほとんど同じであり、試薬や培地、設備を共用出来る。したがって、大腸菌を取り扱える環境であるならば、本発明の方法の導入の際の初期投資はごくわずかであり、しかも使用する試薬が安価なものが多いため、一つの実験にかかる費用も低く抑えることが出来る。また、胞子形成させることにより、高温、乾燥、放射線など厳しい環境においてもDNAを安定的に保存することが出来る。そのため、プラスミドやそれで形質転換した大腸菌を保存できるようなフリーザーがないような場所においても、サンプルを安定的に保存することが出来る。また、胞子の保存には数cm2の濾紙があれば良いので、狭いスペースで多くのサンプルを保存することが出来る。したがって、本発明のクローン等及び方法は、非常に経済性が高く、これはレトロウイルス、特にHIV感染者の多くが住む発展途上国においては特に重要な効果である。
本発明においては、レトロウイルス全長ゲノムは、5以上のフラグメントから再構築される。再構築されるべきレトロウイルスゲノムは、LTRを有するものであれば特に限定されない。レトロウイルスとしては、例えばレンチウイルス(Lentivirus)に属するもの、例えばHIV(human immunodeficiency virus type)1型及び2型、SIV(Simian immunodeficiency virus) Chimpanzee, Sooty Mangabey, African green monkey, Macaque, Mandrill, Syke's monkey、FIV(Feline immunodeficiency virus)、EIAV(Equine inectious anemia virus);HTLV/BLVに属するもの、例えばHTLV−1(Human T-cell Leukemia virus type 1)、BLV(Bovine Leukemia virus);スプマウイルス(Spumavirus)に属するもの、例えばHFV(Human Foamy Virus);マウス白血病関連ウイルス(Murine Leukemia virus-related)に属するもの、例えばMSV/MLV(Murine sarcoma and leukemia virus)が挙げられる。感染例の多さ及び医学・公衆衛生学的な重要性などの点からはHIV、特にHIV−1が典型的に用いられる。また、野生型株、変異型株のいずれであってもよく、臨床検体に由来する株であってもよい。
本発明においては、特に、再構築されるゲノムが、2以上の異なる株に由来するフラグメントを連結してなるものが有利である。本発明の方法によれば、特定の領域に関するフラグメントのライブラリーを作製しておいて、各フラグメントのランダムな組合せのゲノムを容易に得ることができ、このようなキメラゲノムを用いてウイルス粒子を産生させたり、酵素活性を測定したりすることによって、ある領域のある変異が表現型に及ぼす影響を簡便に調べることができる。
ここで、「株」は天然に存在するもの(例えば臨床検体から分離されたウイルスが有する塩基配列)であってもよく、また、天然の配列に基づいて所望の変異を導入したものであってもよい。
ゲノムを分割して得られるこれらの各フラグメントは、1つのゲノムを構成するすべてのフラグメントがゲノムにおける順序と同じ順序で次々に連結されるように制限酵素配列を、各フラグメントの両端に有するように設計される。したがって、1つのゲノムを分割可能な最大数は、制限酵素によって異なり、例えば3塩基突出末端を生じる制限酵素を利用する場合、4/2+1=33個である。
制限酵素としては、目的のレトロウイルスゲノム配列内で単一なもの(その部分だけに存在し、他には同一の配列のないユニークな配列)であれば特に制限されない。例えば、本発明の方法において使用可能な制限酵素であって、3塩基突出末端を生じるものの例としては、以下の制限酵素が挙げられる(カッコ内は制限部位の配列を表す):Bgl I(GCCNNNN/NGGC)、AlwN I(CAGNNN/CTG)、BsaX I(/(N)ACNNNNNCTCC(N)10/)、Bsl I(CCNNNNN/NNGG)、Dra III(CACNNN/GTG)、Mwo I(GCNNNNN/NNGC)、PflM I(CCANNNN/NTGG)、Sfi I(GGCCNNNN/NGGCC)、BstAP I(GCANNNN/NTGCO)。
特に、BsaXIは、認識配列の外側を切断するという特徴的な制限酵素であり、これによりPCRによって組み込まれた配列が全く残らないDNAのフラグメントを作ることが出来るので好ましい。BsaX Iと他の3’−3塩基突出の末端を作る制限酵素(例えばBgl I及びSfi I)とを組み合わせることにより、再構築した際に全く制限酵素配列を残さないクローンを作ることが出来る。また、BsaX Iは、その特徴からあらゆる場所を継ぎ目にすることが出来るため、クローニング対象のゲノムにある制限酵素配列上からPCRを行なわなくても、後にBsaX Iの配列を加えることによって所望の位置でライゲーションを行なうことが出来る点でも有利である。
本発明においては、このような各フラグメントを1度のライゲーション反応で順番どおりに連結させることにより、全長ゲノムを含むDNAに再構築する。また、このライゲーションの際に適切な制限酵素で線状化したベクターをライゲーション混合物中に含ませることにより、全長ゲノムとベクターとの連結したユニットを含む形質転換用のタンデムリピートDNAを形成させる。このライゲーションは、公知の方法で一般的な条件下で行なうことができるが、各フラグメント及びベクターのそれぞれが、互いに2倍程度の差以内のモル濃度で含まれるようにすると効率よくタンデムリピートDNAを得ることができる。
ここで、「タンデムリピートDNA」は、少なくとも2以上のユニットをタンデムに連なった状態で含んでいる必要がある。これは組換えを起こすためには相同領域が必要だからである。
ベクターとしては、バチルス属細菌において有効な複製起点を有するベクター(線状プラスミドベクター)であればよい。本発明において使用されるバチルス属細菌としては、例えば、枯草菌(B. subtilis)、巨大菌(B. megaterium)、脾脱疽菌(B. anthracis)、B. cereusB. brevisB. amyloliquefaciensB. licheniformisB. stearothermophilusなどが挙げられる。DNA取り込み能力及び組換え能力の点、ならびに入手や維持の容易性などの点から、枯草菌が特に好ましい。したがって、ベクターとしては、これらの細菌において複製可能なものであればよいが、クローニング後の大量調製等の操作の便宜のためには、大腸菌においても複製可能なシャトルベクターが好ましい。
ベクターの具体例としては、pHY300PLK DNA(TaKaRaカタログ番号3060)、pGETS103(J Bacteriol. 2001 Sep;183(18):5453-8.)、pGETS109(Nucleic Acids Res. 2003 Nov 1;31(21):e133.)、pGETS113(Appl Environ Microbiol. 2004 Apr;70(4):2508-13.)、pGETS118(J Mol Biol. 2005 Jun 24;349(5):1036-44.)が挙げられる。
上記のようにして作製した形質転換用のタンデムリピートDNAをバチルス属細菌のコンピテント細胞に公知の方法で導入することにより、細菌内で環状プラスミドとして回収されるようにする。このようにして、本発明のタンデムリピートDNA及び感染性レトロウイルスゲノムクローンDNA、それらを含むベクターは、DNAの形態で、又はそれを含む大腸菌、枯草菌などのバチルス属細菌のような微生物の形態で、適宜維持・保存することができる。
こうして得たプラスミドを哺乳類細胞に遺伝子導入することにより、プラスミド中にクローニングされたレトロウイルスゲノムからウイルス粒子を産生させることができる。使用できる哺乳類細胞としては培養細胞であればよく、例えばHIVについては293T細胞、HeLa細胞、COS細胞などの付着系細胞が挙げられるが、これに限らない。
また、産生されたウイルス粒子は、そのウイルスに感受性の細胞に感染させて増殖させることが可能である。例えば、HIV感受性細胞としては、HIVの標的となりうることが公知のヒト由来の培養細胞、特に免疫系の細胞、例えば、Jurkat細胞、MT2細胞、MT4細胞、M8166細胞等の樹立株細胞が挙げられるが、これらに限らない。
本発明によれば、タンデムリピートDNA、感染性レトロウイルスゲノムクローンDNA又はそれらを含むベクターを哺乳類細胞に導入するか、あるいは感染させた細胞の培養上清などから回収したウイルス粒子を上記のようなレトロウイルス感受性細胞に添加して、これらの細胞を培養し、この細胞中又は培養液中のレトロウイルスタンパクの発現又は活性を検出又は測定することにより、細胞に導入された感染性レトロウイルスゲノムクローン又はその遺伝子がどのような特性のものであるかを調べることができる。ここで用いるレトロウイルスゲノムは、単一の株由来のものであっても、2以上の株由来のフラグメントの混成物であるキメラゲノムであってもよい。また、検出又は測定する対象としては、例えばHIVについてはRT活性、p24産生、HIV−RNAコピー数などが挙げられるが、目的のレトロウイルスの機能又は構造に関するものであれば特に制限はされない。
このことを利用して、例えば臨床検体から本発明の方法によってクローニングした全長レトロウイルス(例えばHIV)ゲノムがどのようなRT活性、増殖力等を持っているかを調べ、その患者における病態とそのレトロウイルスクローンの配列やgag、pro、RTなどの特定の遺伝子の変異とを関連づけることができる。
また、多数のフラグメントのライブラリーから合成した種々の組み合せの遺伝子からなるキメラゲノムのレトロウイルス又は患者検体由来のレトロウイルス株を用いて感染させた細胞を、種々の薬剤の存在下で培養することにより、各レトロウイルスの薬剤耐性を調べることができ、さらにはその薬剤耐性に寄与している配列を同定することができる。この場合、添加する薬剤としては、レトロウイルスに対する効果が公知のものであっても未知のものであってもよい。薬剤として、公知のレトロウイルス治療薬を用いて上記の試験を行うことにより、患者の感染しているレトロウイルスゲノムのタイプに応じて有効な最適な治療薬を選択することができる。一方、薬剤として、そのレトロウイルスに対する効果が未知の物質(例えば単離された新規化合物、漢方エキスのような混合物など)を用いることにより、新規なレトロウイルス治療薬のスクリーニングを行なうことができる。
キメラゲノムのレトロウイルスを用いて感染させた細胞について、レトロウイルスタンパクの発現又は活性を検出又は測定することにより、これまで解析が困難であったレトロウイルス(例えばHIV)遺伝子同士の相互作用を解明することができる。また、多くの研究から、PIやRTIによって生じた薬剤耐性が外の遺伝子にも変異を促していることが明らかになりつつあるが、本発明の方法を用いて様々な配列の組み合わせのゲノムを調べることにより、薬剤耐性ウイルスの出現のメカニズムを探ることが容易になる。また、様々な配列の組み合わせの中から多剤耐性、強度耐性キメラウイルスを選択することにより、耐性ウイルスに効果のある新薬開発の標的ウイルスとしても利用することが可能である。
以下においてはHIV−1を例として本発明をさらに説明する。
1.HIV−1ゲノム(HXB2株)の再構築及び枯草菌への導入
野性株であるHXB2を用いて全長ゲノムの再構築及び枯草菌への導入を行なった。
1)細菌株及び培地
組換えプラスミドの構築には、枯草菌(B. subtilis)RM125 ΔspoIIIAA [arg-15 leuA8 hsdR- hsdM- spoIIIAA::pUCspc]を用いた。
HXB2ゲノムフラグメントのクローニングには、大腸菌(E. coli)TOP10 [F- mcrA Δ(mrr-hsdRMS-mcrBC) f3 80lacZΔM15 lacX74 recA1 deoR araD139 Δ(ara-leu)7697 galU galK rpsL (StrR) endA1 nupG]を用いた。
再構築されたHXB2ゲノムプラスミドの増幅(大量調製)には、大腸菌(E. coli)Stbl4 [hmcrA Δ(mcrBC-hsdRMS-mrr) recA1 endA1 gyrA96 gal- thi-1 supE44 λ- relA1 delta(lac-proAB)/F' proAB+ lacIqZΔM15 Tn10 (TetR )](Invitrogen)を用いた。
細菌培養用の培地としては、Luria-Bertani(LB)培地、Luria-Bertani (LB)寒天培地、Antibioticmedium3(AIII)(BD DIFCO)、及びモディファイド・コンピテンス(Modified Competence;MC)培地を用いた。培地に添加した選択抗生物質は、大腸菌については25μg/ml アンピシリン(ampicillin;Amp)であり、枯草菌については10μg/ml テトラサイクリン(tetracycline;Tet) 及び100μg/ml スペクチオマイシン(spectionmycin;Spc)であった。
各細菌は、大腸菌は30℃、枯草菌は37℃で生育させた。
2)プラスミド
プラスミドとしては、柘植らによって構築された大腸菌−枯草菌シャトルベクター、pGETS109SfiIを用いた(Nucleic Acids Res. 2003 Nov 1;31(21):e133.)。
HXB2ゲノムの供給源としてはHXB2cvを用いた。HXB2cvは、先に記載されたHXB2バックボーン上に構築されたHIV−1ゲノムDNAクローニングベクタープラスミド(Wataru Sugiura et al., Antimicrobial Agents and Chemotherapy, 46, p708-715, 2002)であった。
3)HXB2フラグメントのクローニング
HXB2ゲノムのフラグメントは、再構築してつなぎ合わせた際に元の配列と全く同じになるように、PCRを行なう際に加える制限酵素配列を設計して、図2に示すようにHXB2のゲノム全長9.7kbpを以下の5つのフラグメント(FG1〜FG5)に分割して増幅した。各フラグメントの長さと制限酵素配列は以下のとおりであった:
FG1(5’LTR): 837bp (BsaX I);
FG2(gag−pol): 1.9kbp (Bgl I);
FG3(pol−env): 3.8kbp (BsaX I);
FG4(env−rev): 1.4kbp (BsaX I);
FG5(rev−3’LTR): 2.1kbp (Sfi I)。
元の配列上にBsaX Iの認識配列があるFG2とFG5は、制限酵素で処理した際に切り出される外側の部分にPCRで認識配列が組み込まれるように、また、フラグメントを切り出した際には元の配列と同じ配列が残るように設計した。その他のフラグメント(FG1、FG3、FG4)は、切断面が一致するようにBsaX Iの認識配列がPCRで組み込まれるように設計した。
HXB2cvをテンプレートとして、FG1、FG2、FG4及びFG5についてはKOD DNAポリメラーゼ(TOYOBO、大阪、日本)、FG3についてはLA−Taq(TaKaRa、カタログ番号RR002A)をそれぞれ用い、それぞれ以下のプライマー対を用いてPCRによって両端に制限酵素配列を組み込み、増幅した。
FG1:
p16147_BX-F (5' AAA ATC ATC CCA AAC TTC CCC TCC CAT ACC CAC TTA CTT GGC CTG C)(配列番号1)及び
WGPF_BX-R (5' TTT GGC GTA CTC AGG AGT CGC CGT CCC TCG CCT CTT)(配列番号2);
FG2:
WGPF2_BG1-F (5' TTG CTG AAG CGC GCA GCC CAA GAG GC)(配列番号3)及び
DRPRO6_BG1-R (5' ATT GCC TCA ATG GCC ATT GTT TAA CTT TTG GGC CAT CCA T)(配列番号4);
FG3:
DRPRO_BX-F (5' ATG GAT GGC CCA ACA GTT ACT CCA TGG CCA TTG)(配列番号5)及び
env6498_BX-R (5' TTT TCT GTC ACA ACT ACC ACT CCT ACT TCT TGT)(配列番号6);
FG4:
env6443_BX-F (5' TGT GTA CCC ACA CTC CCC AAC CCA CA)(配列番号7)及び
env7874_BX-R (5' ACT GCA CTA TAC CGG AGA ATA AGT GTC TGG CCT GTA)(配列番号8)
FG5:
env7823_SF-F (5' TCA ATG ACG CTG GCC GTA CAG GCC)(配列番号9)及び
p9929_SF-R (5' TAT GGC CTA GAC GGC CTT AAT TGA ATT CTA GAT AG)(配列番号10)。
PCR条件は、KOD DNAポリメラーゼを用いた場合は98℃で1分の後、98℃で10秒及び68℃で30秒を30サイクル、68℃で1分、La−Taqを用いた場合は92℃で1分の後、92℃で1分と55℃で1分と72℃で5分とからなる30サイクルであった。
増幅されたPCR産物を、それぞれ、FG1、FG2、FG4及びFG5のシークエンシング用には「Zero Blunt TOPO PCR Cloning Kit」(Invitrogen、カタログ番号K2800-20)を用い、FG3用には「TOPO XL PCR Cloning Kit」(Invitrogen、カタログ番号K4700-10)を各々のキットに添付の指示書にしたがって用いて、それぞれ大腸菌TOP10にクローニングした。それぞれのフラグメントをクローニングしたクローンを、pCR−BluntII−FG1、pCR−BluntII−FG2、pCR−XL−TOPO−FG3、pCR−BluntII−FG4、pCR−BluntII−FG5と名付けた。
大腸菌からのプラスミドの少量調製(miniprep preparation)は、Wizard Plus SV Minipreps DNA Purification System(Promega、カタログ番号A1330)を用いて行なった。
調製したプラスミドをシークエンスした結果、予想されたとおりの領域のフラグメントがクローニングされたことが確認された。
4)HXB2の全長分子クローンの再構築
FG1及びFG5の上記大腸菌クローンからそれぞれ得たプラスミドpCR−BluntII−FG1及びpCR−BluntII−FG5、及び枯草菌−大腸菌シャトルベクターであるpGETS109SfiI(特開2004−129654、〔0039〕に記載のもの)を、Sfi Iで消化した。クローンFG2から得たプラスミドpCR−BluntII−FG2はBgl Iで、クローンFG3及びFG4からそれぞれ得たプラスミドpCR−XL−TOPO−FG3及びpCR−BluntII−FG4はBsaX Iで、それぞれ消化した。
これらの各DNAを、TAE緩衝液(40mM Tris−acetate(pH8)、1mM EDTA)中で0.7%低融点アガロースゲル(SIGMA type IV)を用いたアガロースゲル電気泳動で泳動し、目的のフラグメントを切り出して精製した。
精製されたフラグメントの濃度は、段階的に希釈したフラグメントを1%アガロースゲルで泳動し、エチジウム・ブロマイドで染色したバンドの濃さを視覚的に比較することによって決定した。モル濃度は、DNAの各フラグメントの分子量から算出した。これらの各フラグメントが同じモル濃度になるように適当な容量で混合した。
上記で混合したフラグメントの等モル溶液を、「線状連結システム(linear ligation system)」によって連結した。このシステムは、2倍高濃度の緩衝液(132mM Tris−HCl(pH7.6)、13.2mM MgCl、20mM ジチオスレイトール、0.2mM ATP、300mM NaCl、20%(w/v)ポリエチレングリコール6000(Wako pure chmical)含有)及びT4−DNAリガーゼ(ToYoBo)を用いた。
その結果、高分子量タンデムリピートDNAが生成されたことが電気泳動によって確認された(図3)。
5)枯草菌のトランスフォーメーション及び再構築プラスミドの調製
枯草菌のコンピテント細胞をMC培地培養で調製した。上記のようにして得られた高分子量タンデムリピートDNAを、コンピテント細胞を含む500μLのMC培地に添加し、37℃で30分間、インキュベートした。このインキュベート後のコンピテント細胞に、1mLのAIII培地を添加し、37℃で1時間インキュベートした。
この培養物を、選択のためにテトラサイクリンを含有するLBプレート上に展開して、一晩培養した。続いて、出現したコロニーを、テトラサイクリン含有LB培地に接種し、37℃で一晩インキュベートした。
枯草菌からのプラスミドの調製は、アルカリ−SDS(alkaline-sodium dodecyl sulfate)法を用いて行なった。抽出したプラスミドをHind IIIで切断し、そのパターンを電気泳動で確認した。
その結果、シークエンスから予想される位置にバンドが出現し、フラグメント化したDNAを順番どおりに再構築することに成功したことが確認された(図4)。このプラスミドを、pGHXB2と名付けた。
6)大腸菌Stbl4の形質転換及びプラスミドの大量調製
再構築されたプラスミドを大量調製するために、枯草菌によって再構築されたプラスミド(pGHXB2)で、BTX electro cell manipulator 600(BTX、BT600、Rev.6)を用いた電気穿孔法(1.5kV、25μF)によって大腸菌(エレクトロマックスStbl4(登録商標);Invitrogen)を形質転換した。
形質転換後、培養物を、アンピシリン含有LBプレート上に展開し、一晩培養した。続いて、出現したコロニーを、アンピシリン含有LB培地に接種して、37℃で一晩培養した。大腸菌からのプラスミドの大量調製は、Hispeed Plasmid Maxi Kit(QIAGEN、カタログ番号12663)を用いて行なった。得られたプラスミドを、枯草菌の場合と同様にHind IIIで切断し、そのパターンを電気泳動で確認した。
その結果、シークエンスから予想される位置にバンドが出現し、大腸菌においても再構築したプラスミドを増幅出来ることが確認された(図5及び図6)。また、このプラスミドの配列を決定した結果、予想される配列のとおりであることが確認された(データは示していない)。
2.HIV−1感染者由来フラグメントとHXB2株由来フラグメントとからなるHIV−1ゲノムの再構築
HIV−1感染者由来のgag−pro(FG2に相当する)領域のフラグメントと上記でクローニングしたHXB2の各フラグメント(FG1、FG3、FG4、FG5)とを結合した。
国立感染症研究所で収集したHIV感染者血漿2検体より抽出したHIV−RNAをテンプレートとし、前記と同じプライマー対を用いて、RT−PCRでFG2に相当する領域の遺伝子フラグメントを増幅した。増幅後、このフラグメントを上記と同様にしてクローニング(TOPOクローニング)し、塩基配列を確認した後、制限酵素Bgl Iで切り出したこのフラグメントを、HXB2の各フラグメント(FG1、FG3、FG4、FG5)及び直鎖状にしたpGETS109SfiI(Nucleic Acids Res. 2003 Nov 1;31(21):e133.)と、上記と同様に混合してDNAリガーゼでライゲーションした。
電気泳動による確認によって、ライゲーション産物(タンデムリピートDNA)が臨床検体1、2のいずれにおいても認められた(図7)。
タンデムリピートDNAを上記と同様にして枯草菌に取り込ませ、pGET109SfiIとともに環状になったHIV全長ゲノムを含むクローンを回収した。これを上記と同様に大腸菌で増やした。
図8は、寒天培地上での臨床検体のDNAを取り込ませた枯草菌トランスフォーメーションコロニーの形成を示す図である。「W.T」はHXB2cv、「Case1」は臨床検体1、「Case2」は臨床検体2をそれぞれ用いてトランスフォーメーションしたプレートである。「No−DNA」はコントロール(DNAなし)である。
これらの感染性クローンのプラスミドをHind IIIで切断し、そのパターンを電気泳動で確認した(図9)。図9において、「1」はpGHXB2、「2」「3」は同じ臨床検体1より得られた異なるクローンであり、それぞれHind III切断サンプルである。pGHXB2、臨床検体1について同じパターンであった。
枯草菌より回収し、大腸菌で増やした感染性クローンのHind III切断パターンは、HXB2cv、臨床検体1について同じであった。
臨床検体1については、FG2領域の塩基配列解析を行ない、臨床検体1由来のフラグメントがHXB2由来フラグメントと組み換えられたことを確認した。
3.再構築されたHIVゲノムからのウイルスの確認
1)細胞株及び培地
以下の実験において、HIV感受性培養細胞としては、293T、MT2及びM8166細胞株を用いた。用いた培地は、10%ウシ胎児血清(FBS)を添加したRoswell Park Memorial Institute(RPMI)1640培地であった。培養細胞は、5%COの存在下で37℃で培養した。培地に添加した抗生物質は、10units/mlのペニシリンG(Pc)及び10μg/mlのストレプトマイシン(Sm)であった。
2)pGHXB2での293T細胞のトランスフェクション
再構築されたクローンのウイルス粒子形成を確認するために、4μgの再構築されたpGHXB2を、CalPhos Mammalian Transfection Kit (CLONETECH)をキットの指示書にしたがって用いて5×10個の293T細胞に導入した。比較のため、プラスミドHXB2cvを用いて同様にトランスフェクションした。24時間後、培地を収穫して、2日ごとに新鮮な培地と交換した。培養上清を、p24 ELISAによってアッセイした。また、収穫した上清を、MT2細胞における複製動態のアッセイに用いた。
3)p24 ELISAアッセイ
100μLの培養上清を、900μLのPBS及び1μLの溶解緩衝液(lysis buffer)と混合した。RETRO-TEK HIV-1p24 Antigen ELISA(ZeptoMetrix)をキットの指示書にしたがって用いて、p24 ELISAアッセイを行なった。
その結果、HXB2cv、pGHXB2共にHIVウイルスを産生することが確認された(図10)。
p24産生量(ng/ml)は、HXB2cvの方が高かった。その原因としては、おそらく、HXB2cvのベクターがpGHXB2よりも約5kb小さいため、トランスフェクションの効率に差があったこと、そしてHXB2cvはLTR以外にSV40をプロモーターとして持つため、トランスフェクション後のウイルスの発現量に差が出たことが考えられる。
しかし、pGHXB2によって産生されたウイルスの量は、実用的には十分な量であり、この産生量の差は問題とはならない結果である。
4)MT2細胞株におけるpGHXB2の複製動態
再構築されたウイルスの生育動態を評価するために、上記で収穫した1mLの293T細胞の上清を用いて、1.5mLのマイクロチューブ内で37℃で2時間のインキュベーションによって3×10個のMT2細胞を感染させた。インキュベーション後、感染したMT2細胞を洗浄し、予め温めた9mLの10% RPMI1640培地を含むT12.5培養フラスコ(BD Falcon、カタログ番号353107)に移した。2〜3日ごとに培地の半分を新鮮な培地と交換した。培養上清を、以下のようにしてRT活性についてアッセイした。
5μLの培養上清を、25μLのRT反応混合物(0.13μg/mlオリゴdT、4.2μg/ml ポリA、50mM Tris(pH7.8)中、63mM KCl、4.2mM MgCl、0.85mM EDTA、0.08% Nonidet P-40、及び0.5μCiの[32P]dTTP(400Ci/mmol))と混合した。37℃で120分間のインキュベーションの後、5μLの反応液をDEAEイオン交換紙上にスポットし、2×SSC(1×のSSCは、0.15M NaCl及び0.015Mクエン酸ナトリウム)中で3回洗浄し、取り込まれなかった[32P]dTTPを除去した。紙をシンチレーションカウンターでカウントした。
その結果、pGHXB2の生育曲線はHXB2cvと同じパターンで同等の増殖を示し、形質転換によって全く同じウイルスが産生されたことが確認された(図11)。
図1は、本発明において使用したOGAB法の原理を説明する図である。 図2は、HIV−1(HXB2株)の全長ゲノムと、それを挿入するべきプラスミドpGETS109SfiIの構成を示す図である。「FG1」はLTR、「FG2」は構造タンパクGag及びプロテアーゼ、「FG3」は逆転写酵素(RT、インテグラーゼ、Vif、Vpr、Tat、Rev、Vpu、「FG4」はエンベロープタンパクgp120、FG5はgp41、nef及びLTRを、それぞれ含む。 図3は、ライゲーションの前後の遺伝子フラグメントの変化を示すゲル電気泳動像である。「1000bp ladder」はマーカー、「Ligation前」はライゲーション前、「Ligation後」はライゲーション後のサンプルをそれぞれ示す。「Tandem repeat ligation products」は連結産物である。ライゲーション前に見られたフラグメントと受け手であるベクターのバンドは、ライゲーション後はほとんど確認できなくなり、その代わりに大きな遺伝子(「Tandem repeat ligation products」)が認められるようになり、遺伝子フラグメントが直鎖状に連結したことが確認された。 図4は、枯草菌から回収されたpGHXB2をHind IIIで消化して生じた各フラグメントのゲル電気泳動像を示す図である。pGHXB2は目的のHIV−1ゲノムの全フラグメントを含むことが確認された。 図5は、大腸菌で増幅させたpGHXB2をHind IIIで消化して生じた各フラグメントのゲル電気泳動像を示す図である。大腸菌に導入されたpGHXB2は目的のHIV−1ゲノムの全フラグメントを含み、大腸菌からも同様にプラスミドを回収できることが確認された。 図6は、電気泳動により、枯草菌から回収されたHIV全長ゲノムクローン(pGHXB2)と今回の実験で模擬的に用いたHXB2ゲノムのHind III切断によるフィンガープリンティング像を比較した図である。「Marker」はマーカー、「HXB2cv/Hind III」はHXB2cvをHind IIIで切断したもの、「pGHXB2(B.subtilis)/Hind III」は枯草菌から回収したpGHXB2をHind IIIで切断したもの、「pGHXB2(E.coli)/Hind III」は枯草菌から回収後、改めて大腸菌で増殖し回収したpGHXB2をHind IIIで切断したものをそれぞれ示す。 ベクターのバンド以外は、両者のHind III切断パターンは一致している。 図7は、HXB2及び臨床検体のリニアライゲーションを示す電気泳動像である。「1」及び「2」はHXB2、「3」及び「4」は臨床検体1、「5」及び「6」は臨床検体2の、それぞれFG1、FG2、FG3、FG4、FG5のライゲーション前及びライゲーション後のサンプルである。 HXB2cvと同じように、HIV/AIDS感染者の血液より増幅したフラグメントを用いた場合においても、ライゲーション反応後、5つのフラグメントが結合した大きな遺伝子産物(「Tandem repeat ligation products」)が認められる。 図8は、寒天培地上での臨床検体のDNAを取り込ませた枯草菌トランスフォーメーションコロニーの形成を示す図である。「W.T」はHXB2cv、「Case1」は臨床検体1、「Case2」は臨床検体2をそれぞれ用いてトランスフォーメーションしたプレートである。「No−DNA」はコントロール(DNAなし)である。 図9は、大腸菌に導入した臨床検体1のプラスミドの確認を示す電気泳動像である。「1」はpGHXB2、「2」及び「3」は臨床検体1の、それぞれHind III切断サンプルである。枯草菌より回収し、大腸菌で増やした感染性クローンのHind III切断パターンは、HXB2及び臨床検体1の両方について同じであった。 図10は、p24アッセイの結果を示す図である。枯草菌で再構築されたHIV全長ゲノムクローン(pGHXB2)は、オリジナルのHXB2cvと同様に粒子形成することが可能であった。 図11は、MT2細胞でのウイルスの増殖を示す図である。枯草菌で再構築されたHIV全長ゲノムクローン(pGHXB2)(●)は、MT2細胞でオリジナルのHXB2cv(△)と同等の増殖を示した。

Claims (12)

  1. 5以上に分割されたレトロウイルス全長ゲノムの各フラグメントから再構築された感染性レトロウイルスゲノムクローンDNA。
  2. 前記5以上に分割されたレトロウイルス全長ゲノムのフラグメントが、各フラグメントの両端に、各フラグメントがゲノムにおける順序と同じ順序で連結しうるように選択された制限酵素配列を有するフラグメントである、請求項1記載の感染性レトロウイルスゲノムクローンDNA。
  3. 前記5以上に分割されたレトロウイルス全長ゲノムのフラグメントが、2以上のレトロウイルス株から由来する、請求項1又は2記載の感染性レトロウイルスゲノムクローンDNA。
  4. 請求項1〜3のいずれか1項記載の感染性レトロウイルスゲノムクローンDNAを含むベクター。
  5. 請求項1〜3のいずれか1項記載の感染性レトロウイルスゲノムクローンDNAから得られた感染性レトロウイルスウイルス粒子。
  6. 5以上のゲノムフラグメントから再構築された感染性レトロウイルスゲノムクローンDNAを含む形質転換用タンデムリピートDNAを作製する方法であって、
    1)5以上に分割されたレトロウイルス全長ゲノムの各フラグメントを、各フラグメントの両端に各フラグメントがゲノムにおける順序と同じ順序で連結しうるように選択された制限酵素配列を有するフラグメントとして用意し、
    2)前記各フラグメントとバチルス属細菌のベクターとの連結反応を行なって、
    3)ゲノムにおける順序と同じ順序で連結した前記各フラグメントからなるレトロウイルス全長ゲノムとバチルス属細菌のベクターとが直鎖状に連結したユニットを2以上含むタンデムリピートDNAを得ること、
    を含む方法。
  7. 前記5以上のゲノムフラグメントが、2以上のレトロウイルス株から由来するものである、請求項6記載の方法。
  8. 請求項6又は7記載の方法によって作製された形質転換用タンデムリピートDNA。
  9. 5以上のゲノムフラグメントから再構築された感染性レトロウイルスゲノムクローンDNAを含むベクターを作製する方法であって、請求項8記載のタンデムリピートDNAをバチルス属細菌のコンピテント細胞に導入して、再構築されたレトロウイルスゲノムクローンDNAを含むベクターを回収することを含む方法。
  10. 請求項9記載の方法によって作製された感染性レトロウイルスゲノムクローンDNAを含むベクター。
  11. 請求項1〜3のいずれか1項記載の感染性レトロウイルスゲノムクローンDNA、請求項4記載のベクター、請求項5記載のウイルス粒子、請求項8記載のタンデムリピートDNA及び請求項10記載のベクターからなる群から選択されるいずれか1つを含む微生物。
  12. 請求項1〜3のいずれか1項記載の感染性レトロウイルスゲノムクローンDNA、請求項4記載のベクター、請求項5記載のウイルス粒子、請求項8記載のタンデムリピートDNA及び請求項10記載のベクターからなる群から選択されるいずれか1つを、哺乳類細胞又はレトロウイルス感受性細胞に添加して培養し、この細胞中又は培養液中のレトロウイルスタンパクの発現又は活性を検出又は測定することを含む、感染性レトロウイルスゲノムクローン又はその遺伝子の特性の試験方法。
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