JP2007308771A - 形状凍結性に優れた高強度鋼板 - Google Patents

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Abstract

【課題】フェライト組織を60%以上含む引張強度500MPa以上の高強度鋼板において、成形後のスプリングバック量を安定して低減できる形状凍結性に優れた高強度鋼板を提供する。
【解決手段】フェライト組織を60%以上含む引張強度500MPa以上の高強度鋼板において、歪量20%以上の変形後、該変形領域において一方向に並んだ転位セル構造が二方向以上に交差している組織を有するフェライト結晶粒が50%以上含むことを特徴とする形状凍結性に優れた高強度鋼板。
【選択図】なし

Description

本発明は、主として自動車用部品や機械・構造部品に適用される形状凍結性に優れた500MPa以上の高強度の鋼板に関する。
プレス加工して製造させる自動車や機械部品は、省エネルギー化の観点から軽量化が求められ、これに伴って鋼板の高強度化による薄肉化が求められている。特に、一部の自動車用部品では使われる鋼材部材の50%近くが高強度鋼板からなる場合もある。
一方、鋼板の高強度化に伴い、高強度鋼板を曲げ加工した際に、成形冶具を用いて加工した後の形状が、成形冶具を取り外した際に少し元の形状に戻るスプリングバック現象が顕著になってきた。このため、高強度鋼板をプレス加工する際には、鋼板強度、板厚および加工形状に応じて予めスプリングバック量を見込んで金型を設計し、選択しているのが現状である。このため、プレス加工による自動車部品等の製造における生産性を向上するためにスプリングバック量の少ない高強度鋼板の開発が求められている。
従来、鋼板のプレス加工時のスプリングバック量を低減する方法として、例えば、オーステナイト系ステンレス鋼板について、仕上げ焼鈍後の冷延板の圧延面に平行な面における{200}集合組織の集積度を1.5以上と大きくし、n値を大きくする方法(例えば特許文献1、参照)、が提案されている。
また、自動車用鋼板として広く用いられているフェライト組織鋼板については、例えば、鋼板中の{100}<011>〜{223}<110>方位群の集合組織を制御し、圧延方向と直角方向のr値の少なくとも1つをできるだけ低い値にすることで、スプリングバック量を抑制する技術が提案されている(例えば特許文献2、参照)。
上記従来技術のほとんどは、鋼板の集合組織を制御することにより鋼板のプレス成形時のスプリングバック量を低減する方法である。しかし、高強度鋼板では製造条件による集合組織制御は難しく、集合組織制御により安定してスプリングバック量を低減する効果を発揮することはできなかった。
特開平10−72644号公報 特開2002−363695号公報
本発明は、フェライト組織を60%以上含む引張強度500MPa以上の高強度鋼板において、成形後のスプリングバック量を安定して低減できる形状凍結性に優れた高強度鋼板を提供することを目的とする。
なお、上記形状凍結性に優れたとは、成形後のスプリングバック量を安定して低減できる加工特性を意味する。
本発明者らは、自動車用の高強度鋼板のプレス成形性に要求されるスプリングバックの抑制を克服するために、塑性変形後の組織のあるべき姿を追及し、その下部組織が重要な鍵を握っていることを発見するに至った。即ち、塑性変形後の下部組織の制御という新しい技術思想を提案する。ここで下部組織とは、集合組織制御が結晶粒単位の方位制御である点に対し、結晶粒の中に見られる下部組織としての転位組織構造を指す。
その要旨とするところは、以下の通りである。
(1)フェライト組織を60%以上含む引張強度500MPa以上の高強度鋼板において、歪量20%以上の変形後、該変形領域において一方向に並んだ転位セル構造が二方向以上に交差している組織を有するフェライト結晶粒が50%以上含むことを特徴とする形状凍結性に優れた高強度鋼板。
(2)上記鋼板が、質量%で、C:0.01〜0.25%、Mn:0.01〜3.0%、Si:0.1〜2.0%、Al:0.002〜1.2%を含有し、さらに、Ti:0.01〜0.2%、Nb:0.005〜0.2%以下、V:0.05〜0.2%、Cr:0.01〜0.1%、および、Mo:0.01〜0.1%のうちの1種または2種以上を含有し、残部はFe及び不可避的不純物よりなることを特徴とする上記(1)に記載の形状凍結性に優れた高強度鋼板。
(3)上記鋼板が、さらに、質量%で、Cu:0.1〜2.0%、および、Ni:0.1〜1.0%のうちの1種または2種を含有したことを特徴とする上記(1)または(2)に記載の形状凍結性に優れた高強度鋼板。
本発明によれば、フェライト組織を60%以上含む引張強度500MPa以上の高強度鋼板において、成形後のスプリングバック量を安定して低減できる形状凍結性に優れた高強度鋼板を提供することができる。
以下に本発明の実施形態を説明する。
本発明鋼板は、フェライト組織を60%以上含む引張強度500MPa以上の高強度鋼板を変形した後の鋼板の転位組織に着目し、塑性変形領域の特定転位組織を制御することにより、成形時のスプリングバック量が低い形状凍結性に優れた高強度鋼板の発明に至った。
まず、本発明のフェライト組織鋼板の塑性変形に伴いフェライト結晶粒内に形成される転位セル構造の概念について説明する。
フェライト鋼板に対して一定以上の応力を負荷して成形加工する場合には、鋼板の塑性変形に伴って鋼板のフェライト結晶粒内に転位が形成され歪みが増加する。塑性変形初期では、転位はフェライト結晶粒内に広く分布するが、変形量が増加に伴い転位も増殖され、さらには転位同士が絡み合ってフェライト結晶粒内に堆積される。この転位同士の反応に伴い、フェライト結晶粒内に、転位が集積した領域と転位が殆んど存在しない領域が形成され、これは一般に転位セル構造として理解されている。
本発明者を含む研究グループは、この転位セル構造を形成する組織形態が、鋼板のマクロな加工硬化挙動に関わる大きな支配要因の一つではないかと考え、塑性変形後のフェライト鋼板のミクロ組織について鋭意研究を進めた。
まず、基礎実験として、フェライト組織鋼の単結晶を作製し、単純せん断変形試験により上記転位セル構造が現れる支配因子を調べた。フェライト組織鋼の単結晶の作製は、Fe−17Cr組成の多結晶ステンレス鋼を用意して、1100℃で3日間熱処理をすることで数cm以上に各々の結晶粒を粗大化させた。この大きな結晶粒を含む鋼材の擬似単結晶から、X線ラウエ法を用いた結晶方位解析により目的の結晶方位を有する結晶を切り出し、それぞれの結晶に対して単純せん断変形試験を行った。
図1は、上記各種結晶方位を有するフェライト結晶に対し、単純せん断変形試験を用いて順方向に60%の歪みを与えた後、直ちに逆向きに、同様なせん断変形を加えた時の応力−歪み曲線を示す。
図1に示す応力−歪み曲線の挙動から大きく2集団に属するフェライト単結晶が存在することがわかった。
図1に示すCurveAを示す集団に属するフェライト結晶は順方向の変形後、逆方向の変形において応力増加が見られ、これは加工後に形状が戻る、スプリングバック現象が示された。一方、CurveBを示す集団に属するフェライト結晶は、逆方向の変形においてCurveAのような応力値の変化がほとんど見られず、スプリングバックが少ないことが示された。以上から、CurveAのようなフェライト結晶が鋼板のスプリングバック量、つまり、形状凍結性を支配していることを確認した。
さらに、透過電子顕微鏡を用いてスプリングバック現象を示したCurve Aに属する集団のフェライト結晶内の組織を観察したところ、図2に示すような一方向に並んだ転位セル構造の組織が多く観察されることが判った。一方、スプリングバックが抑制された上記Curve Bの属するフェライト単結晶内には、図3に示すような一方向に並んだ転位セル構造が二方向以上に交差している組織を有していることが判った。加工後のフェライト結晶内の組織が一方向に並んだ転位セル構造が二方向以上に交差している組織である場合にスプリングバック現象が抑制される理由の詳細は良く判らないが、を有する場合には、変形時の応力と逆向きにシアー変形が作用した場合に、交差したお互いの転位セル構造が転位の動きを抑制し、転位の移動を起こり難くし、このため形状が凍結されたのではないかと考えている。
以上の知見によれば、従来の集合組織制御法によらずとも、変形後の塑性変形領域における転位セル構造を、図3に示されるような一方向に並んだ転位セル構造が二方向以上に交差しているものとすることにより、鋼板の加工時のスプリングバック量を低減できることが期待される。
上記フェライト単結晶を用いた基礎試験結果を踏まえ、実際の多結晶材料であるフェライト組織を60%以上含む引張強度500MPa以上の高強度鋼板について、透過電子顕微鏡を用いて塑性変形後の塑性変形領域におけるフェライト結晶粒内の転位セル構造を確認した。
鋼板の塑性変形領域におけるフェライト結晶粒内に形成される転位セル構造は、フェライト結晶の結晶や各フェライト結晶粒にかかる応力の方向により変わるが、大きく以下の3形態に分類できることが判った。つまり、図2に示すような一方向に並んだ転位セル構造と、さらに、図3に示したように一方向に並んだ転位セル構造が二方向以上に交差している構造と、図4に示したように方向性を示さない形態に大別される。
なお、図2、3、4においてフェライト結晶粒内の直線部分または曲線部分の塑性変形によって転位が高密度に壁状に堆積して存在する領域を「転位セル壁」とし、一対の転位セル壁で仕切られた領域を「転位セル」と定義される。また、本発明では、図2、3に示される直線状に観察される一対の転位セル壁からなる転位セルを「一方向に並んだ転位セル構造」とし、図3に示される一方向に並んだ転位セル構造の転位セル壁が交差している組織を「一方向に並んだ転位セル構造が二方向以上に交差している組織」と定義する。なお、ここでいう「一方向に並んだ転位セル構造が二方向以上に交差している」とは、図3に示されるような直交する場合の他に、60°から90°の範囲で任意に交差している組織も含まれ、これらの組織は同等の作用効果を有することを確認している。
また、本発明者らは、図2および3に示される一方向に並んだ転位セル構造における転位セルの平均間隔は、鋼板の塑性変形領域の歪み量との間に良い対応関係があることを確認している。なお、転位セルの平均間隔とは、ひとつの転位セル構造に対し、複数箇所で転位セル壁間の間隔を測定した場合の平均間隔を意味し、透過電子顕微鏡を用いて転位セル構造を観察することにより測定することができる。
図5に引張試験における鋼板の変形領域の歪み量と一方向に並んだ転位セル構造の転位セルの平均間隔を透過電子顕微鏡で計測した結果を示す。
図5から、鋼板の変形領域の歪み量と一方向に並んだ転位セル構造の転位セルの平均間隔とは相関があり、例えば、転位セルの平均間隔が0.7μmの場合にはその塑性加工領域の歪み量は0.2(20%)、その間隔が0.5μmであれば、その部分の歪み量は0.3(30%)というように歪み量を評価できる。
この手法により、実際の鋼板の塑性加工を受けた局所領域の下部組織を透過電子顕微鏡で観察し、その部位での歪み量を予測することができる。
本発明鋼板は、フェライト組織を60%以上含む引張強度500MPa以上の高強度鋼板において、歪量20%以上の変形後、一方向に並んだ転位セル構造が二方向以上に交差している組織を有するフェライト結晶粒が、変形領域において60%以上の割合で存在することを特徴とするが、このような鋼板は、以下のようにして測定することができる。
先ず、鋼板の歪量20%以上の塑性加工を受けた領域を上記透過電子顕微鏡の観察による一方向に並んだ転位セル構造のおける転位セルの平均間隔の測定値により特定する。また、図5から鋼板の歪量20%以上の塑性加工を受けた領域は、上記転位セルの平均間隔が0.7μm以上の領域として特定される。
次に、上記透過電子顕微鏡の観察により、歪量20%以上の塑性変形領域において30個のフェライト結晶粒を任意に抽出し、フェライト結晶粒の中で一方向に並んだ転位セル構造が二方向以上に交差している組織を有するフェライト結晶粒の個数を測定し、その割合を求める。これにより、歪量20%以上の塑性変形領域における一方向に並んだ転位セル構造が二方向以上に交差している組織を有するフェライト結晶粒の割合が測定できる。
以下に、鋼板の歪量20%以上の変形領域における一方向に並んだ転位セル構造が二方向以上に交差している組織を有するフェライト結晶粒の割合と、スプリングバック量との関係について説明する。
鋼板のスプリングバック量の評価は、以下のように行うことができる。
例えば、ハット曲げ試験を用い、鋼板をハット型形状に加工した後、図6に示す90°曲げが施された2箇所の肩部において、それぞれ上部と垂直部で2mmの基準間隔を設け、点(1)と点(2)間の接線と点(3)と点(4)間の接線との交差角度を測定し、この角度測定値と90°との差を求め、2箇所の肩部における平均値を基にスプリングバック量を評価できる。
この評価方法では、上記角度測定値が10°以下である場合に鋼板変形時のスプリングバック量が小さいと評価される。
本発明鋼板は、鋼板組織中のフェライト組織は加工性を確保するために60%以上含有するが、引張強度500MPa以上の強度を確保するために、その他の組織として、マルテンサイト相やベイナイト相、またパーライト相などの硬質相を含有することができる。
図8に引張強度500MPa以上の高強度鋼板中のフェライト組織の含有割合と、上記ハット曲げ試験による鋼板のスプリングバック量との関係を示す。
図8から鋼板中のフェライト相の割合が60%未満になると、加工性が低下することに起因し、スプリングバック量を10°以下に低減することはできない。このため、本発明の鋼板中のフェライト組織の含有割合を60%以上とする。
しかし、図8に示されるように鋼板中のフェライト組織の含有割合が60%以上とすることにより、平均値評価ではスプリングバック量を10°以下に低減することができるが、なはらつきが大きく、必ずしもスプリングバック量が10°以下とならない場合が生じる。
このため、本発明では、上記鋼板中のフェライト組織の含有割合とともに、歪量20%以上の塑性変形領域における一方向に並んだ転位セル構造が二方向以上に交差している組織を有するフェライト結晶粒の割合を以下のように規定する必要がある。
図7にフェライト組織を60%以上含む引張強度500MPa以上の高強度鋼板について、歪量20%以上の変形領域における一方向に並んだ転位セル構造が二方向以上に交差している組織を有するフェライト結晶粒の含有割合と、上記ハット曲げ試験による鋼板のスプリングバック量との関係を示す。
図7から、歪量20%以上の変形領域における一方向に並んだ転位セル構造が二方向以上に交差している組織を有するフェライト結晶粒の含有割合を50%以上とすることにより、鋼板変形時のスプリングバック量を10°以下に安定して低減することができる。
以上から、本発明は、鋼板変形時のスプリングバック量を10°以下に安定して低減するために、フェライト組織を60%以上含む引張強度500MPa以上の高強度鋼板を対象とし、歪量20%以上の変形後、該変形領域において一方向に並んだ転位セル構造が二方向以上に交差している組織を有するフェライト結晶粒が50%以上含むこととする。
本発明鋼板は、目的とするフェライト組織を60%以上含む引張強度500MPa以上の高強度鋼板の変形時のスプリングバック量を低減するために上記変形領域に形成される転位組織構造が重要であるが、この鋼板の強度および組織を安定して得るためには、鋼板の成分組成とその製造方法をさらに規定することが好ましい。
以下に上記塑性変形領域の転位組織構造を特徴とする本発明鋼板を製造するための好ましい成分組成、及びその製造方法について以下に説明する。
先ず、本発明の鋼板の好ましい成分組成の限定理由について説明する。
なお、以下に示す「%」は特段の説明がない限り「質量%」を意味するものとする。
Cは、0.01%以上0.25%以下の範囲が好ましい。C含有量が0.01%未満となると、引張強度500MPa以上の高強度化を容易に達成するのが困難となる。一方、C含有量が0.25%を超える場合には、鋼中にセメンタイトの生成や、パーライトやマルテンサイトなどの変態組織の形成を促進し、本発明が目的とするフェライト相を60%以上とする鋼板組織を得るころが困難となるからである。
Mnは、鋼中に混入する不可避的不純物であるSと反応させて、MnSを形成することによりFeSの生成を抑制させ、鋼板製造時の高温割れや、中心偏析を抑制する役割を果たす。また、Mnは強力な固溶強化機能を有する。これらのMnの作用を十分に発揮させるためには、Mn含有量の下限を0.01%とするのが好ましい。一方で、Mn含有量が3.0%を超えると、鋼板の延性を低下させるため、その含有量の上限は3.0%とするのが好ましい。
Siは、0.1%以上2.0%以下の範囲が好ましい。Siは脱酸元素として有効であり、また、固溶強化元素として強度向上するために、この含有量の下限を0.1%以上とした。一方で、2.0%を超える過剰なSi添加は、鋼板の製造工程においてスケールを制御する観点から好ましくないため、2.0%以下が好ましい。
Alは、脱酸元素として有効であるので、0.002%以上の添加が好ましい。一方、過剰添加は余分な窒化物などの形成を引き起こし、材質制御が難しくなるため、Al含有量の上限は1.2%とすることが好ましい。
本発明において、鋼中のP、S、Nは不可避的不純物であり、不必要な炭化物を形成し、または、粒界割れなどを引き起こし、鋼板の延性を劣化させる可能性が生じるため、制限することがより好ましい。この理由から、P含有量は0.003%以下、S含有量は0.015%以下、N含有量は0.01%以下に制限することがより好ましい。
また、本発明において、鋼板の強度向上の目的で、Ti、Nb、V、Cr及びMoのうちのいずれか1種または2種以上の炭化物形成元素を添加することができる。これらの元素は、炭化物形成能や基本的な作用効果は共通する元素である。
Tiは、炭化物形成能の作用による強度向上効果を発現するためには0.01%以上が必要であるが、0.2%より添加すると、炭化物の粗大化が容易に起こるために、本発明の材料組織を実現するための製造条件が厳しくなる。このため、Ti含有量は0.01〜0.2%の範囲が好ましい。
Nbは、炭化物形成能の作用による強度向上効果を発現するためには、Nb含有量の下限を0.005%以上とするのが好ましい。一方で、Nb含有量が0.2%より多いと強度制御の点で、製造条件が厳しいものになる。したがって、Nb含有量は0.005〜0.2%の範囲が好ましい。
Vは、炭化物の析出がやや遅いので、炭化物形成能の作用による強度向上効果を発現するためには、V含有量の下限を0.05%以上とするのが好ましい。一方、0.2%よりも多くVを添加すると、やはり製造条件が厳しいものになる。したがって、V含有量は0.05〜0.2%の範囲が好ましい。
Cr及びMoは、いずれも炭化物形成能の作用による強度向上効果を発現するためには0.01質量%以上が好ましい。また、0.1質量%以上を添加すると製造コストの増大、及び炭化物の粗大化を引き起こす傾向があるので、好ましくない。したがって、これらの元素含有量は、0.01〜0.1%の範囲が好ましい。
また、本発明では、鋼板の強度向上の目的で、Cu及びNiを添加することができる。これらの元素は、炭化物は形成しないが、固溶強化、或いは析出物を形成して強化する共通の作用があるので、同様に扱うことができる。
しかし、それぞれの作用効果の程度、つまり、炭化物形成能の程度や鋼中における溶解度積などは厳密には異なるため、それぞれの含有量の範囲を規定することは好ましい。
Cuは、鋼中では単独析出して、強化に寄与する元素である。また固溶強化能力もあり、効果の発現のためには、0.1%以上含有することが望ましい。一方、Cuは2.0%を超えると、スケール制御などの観点で圧延制御が困難になるので、好ましくない。したがって、Cu含有量は0.1〜2.0%の範囲が好ましい。
Niは、Cu同様に固溶強化元素として活用できると共に、Cuと一緒に添加した場合は、そのスケール制御において活用できる元素である。その効果を発現するためには、0.1%以上が好ましい。一方で、1.0%よりも多く添加すると製造コストの増大、またCuとの組み合わせにおけるスケール制御の利点が損なわれるようになるので、好ましくない。従って、Ni含有量は0.1〜1.0%の範囲が好ましい。
以上の成分元素の他に、微量のB添加は、二次加工割れを抑制する効果があるので、鋼板成分として適用することができる。
Bは、0.0003%以上添加することで鋼板の二次加工割れを抑制することができるため、B含有量の下限は0.0003%とするのが好ましい。
一方で、B含有量が0.0015%より多くなると、圧延時の形状確保が難しくなるので、B含有量の上限を0.0015%に制限することが好ましい。
また、本発明の鋼板成分は、上記成分組成のみに限定されるものではなく、本願の目的および技術思想に反しない限り、上記以外の成分を含有することは可能である。
次に、上記特徴を有する引張強度が500MPa以上で、60%以上のフェライト組織を主体とするスプリングバック量の小さい高強度鋼板の製造方法について説明する。
本発明の鋼板は、本願発明が規定する上記特徴を有するものが製造できる限りにおいて、以下の場合のみに限定されるものではないが、好ましい実施形態として以下のような製造方法で製造できる。
まず、鋼片の加熱温度は、鋼材中に炭化物形成元素およびCを充分に分解溶解させるために、1200℃以上とすることが好ましい。また、鋼材を均一に加熱するためには、加熱保持時間を30分以上とするのが好ましい。鋼片は連続鋳造設備で製造した直後のスラブであっても良いし、電気炉で製造したものであってもよい。また溶鋼からの直接スラブ製造された後、加熱しないで上記温度に保持してもよい。
熱間圧延条件であるが、r値をむしろ高めない方が形状凍結性が優れ、Ar3点から50℃程度の温度範囲内で、熱延が終了するようなオーステナイト域圧延が望ましい。さらにその後の冷却速度は速いほうが、目的とする変形後の転位組織が得られる傾向にあり、熱延終了後、150℃/s以上の冷速で1秒以上冷却するような条件が好ましい。
また巻き取り温度は、炭素量が0.05質量%以上の成分系の鋼においては、マルテンサイトなどの硬質相とフェライト相との二相組織を実現する上で低温化が望ましく、400℃以下が好ましい。製造上の負荷は高まるが、300℃以下または室温で巻き取っても構わない。
上記の熱間圧延後、必要に応じて酸洗処理を施して冷間加工を施し、その後、再結晶焼鈍を750℃〜850℃の温度範囲で行い、冷延鋼板としても構わない。ただしこの場合、熱延後の組織と再結晶条件の兼ね合いで、r値が向上してしまうと本発明からはよくない方向にいく。もちろん、亜鉛めっき処理や、合金化溶融亜鉛めっき処理等を施しても、鋼板内部のフェライト粒の状態は変化しないので、本発明の効果を同様に得ることができる。
本発明の実施例を、比較例と共に説明する。
表1に示した成分組成を有する鋼を種々溶解し、得られた鋼材を鋼板の熱延工程に供した。なお、表1において、A〜Eが本発明の鋼板組織を安定して得るための好ましい成分組成を示し、FとGは好ましい炭素量の範囲からはずれた鋼材である。
Figure 2007308771
次に、各鋼に対して、表2に示す条件で熱延し、厚さ1.5mmの熱延鋼板を製造した。それぞれの鋼板より、JIS Z 2201に記載の5号試験片を加工して、JIS Z 2241に記載の試験方法にそって、引張り試験を行った。そこで得られた引張り強度を示す。単位はMPaである。本発明では、この引張り強度が500MPa以上の鋼板を対象とする。
さらに、得られた熱延鋼板を酸洗後、幅50mm、長さ270mmの試験片に加工し、ポンチ幅78mm、ポンチ肩:R5、ダイ肩:R5の金型を用いて、ハット曲げ試験を行った。曲げ試験を行った試験片については、三次元形状測定装置にて板幅中心部の形状を測定し、図6に示したように、点(1)と点(2)の接線と点(3)と点(4)の接線の交点の角度を求め、そこから90°を引いた値の左右での平均値をスプリングバック量とした。それぞれの点の間隔は2mmである。
次に、スプリングバック量の試験と平行して、塑性加工部位におけるフェライト粒の転位セル構造の組織形態に関する試験を行った。まず、試料Aを用いて、製造試験番号1の条件で作製した熱延鋼板から、圧延方向に平行となる単純せん断試験片を準備した。サイズは、30mm長さ×20mm幅×1.4mm厚みである。さらに、これらの試験片について単純せん断試験機を用いて、ひずみ量が0.1〜0.6の範囲で0.1毎となるように変形量を設定し単純せん断試験を実施した。公称相当歪み速度は、10-3/secである。
次に、単純せん断変形された試料片について、せん断方向に平行となる断面についてサンプリングを行った。まず、試料片の中心部から精密切断機などを用いてサイズ30mm長さ×1.4mm幅×0.2mm厚みの鋼板の断面を露出させた微小試料片を切り出した。切断された微小試料片からエメリー紙などの研磨紙を用いた機械研磨により、厚み100μm前後の試料片を作製した。この箔状の試料片から専用のパンチを用いて、3mm×1.4mmの短冊状のサンプルを準備した。続いて、直径3mmの円形上に打ち抜き、その後、過塩素酸5%−酢酸95%溶液を用いた電解研磨法により、透過電子顕微鏡観察用の薄片試料を作製した。
次に、上記の手順で作製を行った薄片試料を加速電圧200kVの透過電子顕微鏡に挿入し、フェライト結晶粒内に形成された転位セル構造について、像倍率が5000〜20000倍の範囲で観察を実施した。そして観察された転位セル構造を透過電子顕微鏡に装着された専用のCCDカメラを用いてデジタル画像として、パーソナルコンピューターに保存した。
次に、得られた転位セル構造の画像データをパーソナルコンピューター専用のモニターに表示し、市販されている顕微鏡画像の解析ソフトを用いて、一方向に並んだ転位セル構造についてセル間隔の測定を行いその平均値を求めた。測定箇所は20箇所である。この転位セルの平均間隔の計測を30個のフェライト結晶粒について計測を行い、その全体の平均値をひとつの試験片に対するデータとした。得られたデータを転位セルの平均間隔と歪み量との関係をグラフにまとめた。そのグラフを図5に示す。もちろん、この転位セル構造の間隔の測定は、電子顕微鏡写真から十分なN数を稼いで、目視で間隔測定を行ってもよい。
さて、前述のハット曲げ試験を行った加工材料について、スプリングバック量を測定したコーナー部分から、10mmx10mmx2mmサイズの試料を切り出し、その一部から、前述した方法と同様な方法で、透過電子顕微鏡で観察できるような薄片試料を作製した。
そして、観察部分のフェライト粒に見られる一方向性の転位セル構造の平均間隔を測定し、図5を利用して歪み量を評価した。一連の結果は、表2に示すが、塑性歪み量として、25%〜35%の変形を受けていることが判った。そして同時に、観察されるフェライト粒には、一方向性の転位セルが交差しているフェライト結晶粒が多数存在するので、その存在割合を求めた。その結果を、表2へ示す。さらに、そのような転位セルを有する結晶粒はたくさんあるが、30個以上のフェライト結晶粒母集団に対して、何割程度が交差した転位セル構造を有しているかを計測した。それらの結果を表2にまとめる。
次に、表2の各データについて、その概略を説明する。
試料Aを用いた試験1〜3において、試験1では圧延終了温度が高く、一方向性の転位セル構造を有するフェライト粒が大きく、スプリングバック量は11.7°と大きい。
試料Bを用いた試験4〜7においては、試験4の製造条件では、オーステナイト域圧延であり、フェライト粒が大きく成長し、塑性加工後は一方向性の転位セル構造を有するフェライト粒が多く、スプリングバック量は12.5°と大きい。
試料Cを用いた試験8〜10においては、やはり試験8の製造条件では、塑性加工後は一方向性の転位セル構造を有するフェライト粒が多く、スプリングバック量は12.2°と大きい。
試料Dを用いた試験11〜14においては、試験11、12では、硬質相の生成が増加し、フェライト粒の存在割合が25%、および55%と小さかった。その結果、スプリングバック現象の抑制は十分ではない。
試料Eを用いた試験15〜17においては、炭素量が多いため、製造条件の製鎖試験15の製造条件では、硬質相の割合が大きく、フェライト粒の存在割合が35%と小さい。また試験17においては、低温での巻取りが利きすぎて、やはり硬質相が出現し、十分なフェライト粒を確保することがない。
試料Fを用いた試験18と19においては、炭素量が好ましい範囲を超えているので、製造条件が困難なものとなる。試験18は焼入れ性の良い製造条件になっている。熱延後の冷却速度を100℃℃/secと急速加熱を行うことで、本発明のスプリングバック量の抑制に成功した。
Figure 2007308771
単純せん断変形試験で得られた単結晶鋼の応力−ひずみ曲線。 一方向に並んだ転位セル構造の形態を示す説明図である。 一方向に並んだ転位セル構造が交差した形態を示す説明図である。 方向性を有さない転位セル構造の形態を示す説明図である。 一方向性の転位セル構造のセル平均間隔と歪み量の関係を示すグラフ。 スプリングバック量を評価するための形状測定部位を示す説明図である。 塑性変形部のフェライト粒の中で交差する転位セル構造を有するフェライト結晶粒の存在割合に対するスプリングバック量の変化を示すグラフ。 塑性変形部のフェライト粒の存在割合に対するスプリングバック量の変化を示すグラフ。

Claims (3)

  1. フェライト組織を60%以上含む引張強度500MPa以上の高強度鋼板において、歪量20%以上の変形後、該変形領域において一方向に並んだ転位セル構造が二方向以上に交差している組織を有するフェライト結晶粒が50%以上含むことを特徴とする形状凍結性に優れた高強度鋼板。
  2. 前記鋼板が、質量%で、C:0.01〜0.25%、Mn:0.01〜3.0%、Si:0.1〜2.0%、Al:0.002〜1.2%を含有し、さらに、Ti:0.01〜0.2%、Nb:0.005〜0.2%以下、V:0.05〜0.2%、Cr:0.01〜0.1%、および、Mo:0.01〜0.1%のうちの1種または2種以上を含有し、残部はFe及び不可避的不純物よりなることを特徴とする請求項1に記載の形状凍結性に優れた高強度鋼板。
  3. 前記鋼板が、さらに、質量%で、Cu:0.1〜2.0%、および、Ni:0.1〜1.0%のうちの1種または2種を含有したことを特徴とする請求項1または2に記載の形状凍結性に優れた高強度鋼板。
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