JP2007302870A - アフラトキシン等有害物質の分解用組成物 - Google Patents

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希見子 矢部
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Abstract

【課題】 農作物、食品、飼料等の性質などに影響を与えることなく、アフラトキシン関連物質などの有害物質を分解する技術を開発すること。
【解決手段】 ヘミン及び/又はヘム含有物質(ただし、ヘムタンパク質を除く)並びに過酸化水素を有効成分として含むことを特徴とするアフラトキシン関連物質及び芳香族有害化合物から選ばれた有害物質の分解用組成物、並びに、アフラトキシン関連物質及び芳香族有害化合物から選ばれた有害物質により汚染された農作物、食品又は飼料を、過酸化水素の存在下でヘミン及び/又はヘム含有物質(ただし、ヘムタンパク質を除く)と接触させることを特徴とする汚染された農作物、食品又は飼料の無毒化方法を提供する。
【選択図】 なし

Description

本発明は、アフラトキシン等有害物質の分解用組成物に関し、詳しくはヘミン及び/又はヘムタンパク質並びに過酸化水素を有効成分として含有するアフラトキシン等有害物質の分解用組成物に関する。
アフラトキシンは、アスペルギルス(Aspergillus)に属する一部のカビが生産する、自然界で最も発癌性が高い物質である。アフラトキシンには種々の誘導体が存在し、中でもアフラトキシンB1(以下、AFB1 と略称することがある。)は最も毒性が強く、穀類を中心とする農作物、食品、飼料等から検出される量も多いことが知られている。
穀物は世界的に流通する商品であるため、その汚染は深刻な問題となっている。そこで、アフラトキシン等による穀物汚染は、多くの先進国において調査され、当該汚染の規制値が決められており、常にアフラトキシンの汚染が監視され、規制値を越えたものは焼却等の方法で処分されている。
アフラトキシンは耐熱性で、熱分解させるには、250℃以上の高温が必要であり、通常の料理の温度(約180℃)よりも高い。このような高温で処理すると、穀物自体の性質が変化してしまう上に、高コストを要することから、実用化は困難である。
一方、アフラトキシンで汚染された穀物のアンモニア処理やアルカリ処理でアフラトキシンを分解する方法も提案されている(非特許文献1、2および特許文献1)が、処理後の穀物は性質が変わってしまうため、食料としての利用ができない。そのため、飼料用とする他に用途がないが、この場合も品質の劣化など新たな問題が生じることがある。
さらに、ポリカーボネート樹脂などの合成樹脂の原料や殺菌剤として用いられているビスフェノールA(BPA)などは、内分泌撹乱物質としての疑いが持たれており、水質汚染、土壌汚染、その他の環境に及ぼす影響が懸念されている。これまで、微生物によるBPAの分解法として、グラム陰性の好気性バクテリアを用いた例が報告されており、分解経路も推定されている(非特許文献3)。しかし、安価で、効率的な分解方法が求められている。
Park DL. 1993. Perspectives on mycotoxin decontamination procedures. Food Addit. Contam., 10, 49-60. Park DL, Lee LS, Price RL, Pohland AE. 1988. Review of the decontamination of aflatoxins by ammoniation: current status and regulation, J. Assoc. Off. Anal. Chem., 71, 685-703. 米国特許第3,429,709号明細書 Spivack,J., Leib,T.K., and Lobos,J.H.,J.Biol.Chem.,269, 7323-7329 (1994)
本発明の目的は、農作物、食品、飼料等の性質などに影響を与えることなく、アフラトキシン関連物質などの有害物質を分解する技術を開発することである。
そこで、本発明者らは、アフラトキシン関連物質及び芳香族有害化合物などの有害物質の分解方法、特に農作物、食品、飼料等の性質に悪影響を与えないでアフラトキシン関連物質を分解する方法及び芳香族有害化合物の効果的な分解方法について検討し、酵素的分解法に着目した。
その研究過程において、キノコや微生物由来の酵素や市販酵素などにアフラトキシン分解活性が見出されたが、これらの酵素を当該酵素が失活する温度で処理してもアフラトキシン分解活性が消失しないこと等が確認された。
そこで、補欠分子族であるヘムの構造のみでアフラトキシン分解活性があるものと想定し、試験を行ったところ、ヘムの構造のみでアフラトキシン分解活性を有することが分かった。さらに、ヘムを含有する物質も同様にアフラトキシン分解活性を有することを見出した。また、これらの物質は、芳香族有害化合物を分解する作用も有していることを見出した。本発明はかかる知見に基づいて完成されたものである。
請求項1記載の本発明は、ヘミン及び/又はヘム含有物質(ただし、ヘムタンパク質を除く)並びに過酸化水素を有効成分として含むことを特徴とするアフラトキシン関連物質及び芳香族有害化合物から選ばれた有害物質の分解用組成物である。
請求項2記載の本発明は、ヘム含有物質がポルフィリン鉄錯体である請求項1記載の有害物質の分解用組成物である。
請求項3記載の本発明は、アフラトキシン関連物質及び芳香族有害化合物から選ばれた有害物質により汚染された農作物、食品又は飼料を、過酸化水素の存在下でヘミン及び/又はヘム含有物質(ただし、ヘムタンパク質を除く)と接触させることを特徴とする、汚染された農作物、食品又は飼料の無毒化方法である。
請求項4記載の本発明は、ヘム含有物質がポルフィリン鉄錯体である請求項3記載の汚染された農作物、食品又は飼料の無毒化方法である。
本発明により、ヘミン及び/又はヘム含有物質(ただし、ヘムタンパク質を除く)並びに過酸化水素を有効成分として含むアフラトキシン関連物質及び芳香族有害化合物から選ばれた有害物質の分解用組成物が提供される。
また、本発明により、過酸化水素の存在下でヘミン及び/又はヘム含有物質と接触させることによって、アフラトキシン関連物質等により汚染された農作物、食品又は飼料を無毒化する方法が提供される。
そのため、本発明によれば、アフラトキシン等による汚染が原因で廃棄されている穀物などを減らして、これらを効率よく利用することができる。
さらに、本発明によれば、アンモニア処理やアルカリ処理によって穀物などの農作物、食品、飼料を変性させてしまい、食料として利用できなくなるという問題も解決できる。
上記の如く、請求項1記載の本発明は、ヘミン及び/又はヘム含有物質(ただし、ヘムタンパク質を除く)並びに過酸化水素を有効成分として含むことを特徴とするアフラトキシン関連物質及び芳香族有害化合物から選ばれた有害物質の分解用組成物である。
ヘミンは、ポルフィリンの鉄錯体であるヘムが酸化されて生じたFe(III)錯体に1個のCl-が配位した化合物で、クロロヘミンとも称される。ヘム部分がプロトヘムである場合、プロトヘミンと呼ばれ、その分子量は652である。
ヘミンの他に、ヘム含有物質も同様にアフラトキシン関連物質などの分解活性を有しており、これらも使用可能である。
ヘム含有物質としては、下記表1に示す物質などがあり、例えばヘモグロビン、ミオグロビン、カタラーゼ、チトクロム類、ペルオキシダーゼ、トリプトファンピロラーゼなどを挙げることができる。
Figure 2007302870
本発明の組成物中のヘミン及びヘム含有物質の量については、例えばアフラトキシン16μMを処理する際にはヘム濃度に換算して20〜200μM、好ましくは50〜100μMが適当である。
安定剤、賦形剤などの補助剤を、所望により組成物に添加することができる。なお、過酸化水素の添加は有効で、これを添加することにより良好な分解活性が得られる。
アフラトキシン関連物質としては、アフラトキシンBと、その誘導体、並びにアフラトキシン前駆体がある。具体的には、カビが生産する主要なアフラトキシン誘導体であるアフラトキシンB、アフラトキシンG、アフラトキシンG、牛乳中にしばしば検出されるアフラトキシンM、アフラトキシンMなどが挙げられる。また、アフラトキシン前駆体としてはステリグマトシスチン、ジヒドロステリグマトシスチン等を挙げることができる。
また、芳香族有害化合物としては、ビスフェノールA及びアルキルフェノール類であるノニルフェノール、4−オクチルフェノール等のフェノール性化合物が挙げられる。これらは内分泌撹乱物質(環境ホルモン)の疑いが持たれている。さらに、非フェノール性化合物では、ジベンゾチオフェンやアニリン等が挙げられる。前者は、原油や石炭中に存在し、石油精製時の触媒劣化の原因物質であると同時に、燃焼による大気汚染や酸性雨の原因となっている。後者は、水質や底質からしばしば検出される腐食性を有する環境汚染物質である。
アフラトキシン関連物質によって汚染される農作物、食品、飼料としては、ピーナッツ、ピスタチオナッツ、ごま等の種実類並びにこれらに由来する油類;コメ、ハトムギ、トウモロコシ、ソバ等の穀類;ナツメグ、唐辛子、パプリカ、白コショウ等の香辛料;ナチュラルチーズ、牛乳、黒糖などがある。さらに、乾燥トウモロコシなどの飼料や、有害物質で汚染された飼料を摂取した家畜の乳、当該家畜由来の乳製品、肉・内臓製品などの食品も挙げられる。中でもピスタチオナッツでは1998年にイラン産のものから高濃度のアフラトキシンが検出されたことから、厚生労働省では検疫所での検査方法を強化している。東南アジアなどにある穀物倉庫では、高温多湿の気象条件下で大量のアフラトキシン生産カビが発生しており、汚染による人的、経済的な被害は大きい。
また、芳香族有害化合物であるビスフェノールAは、ポリカーボネート製の哺乳瓶、子供用の抗菌剤入りポリカーボネート製食器等から検出されることがある。その他、エポキシ樹脂として缶(飲料、食品)の腐食防止用被覆剤としても使われているため、高温高圧殺菌処理された缶詰からもビスフェノールAが検出されることがある。
一方、アルキルフェノールは、塩ビ樹脂やスチレン樹脂の酸化防止剤として使われているため、スチレン製使い捨てカップや軟質塩ビ樹脂製ラップフィルムからノニルフェノールなどのアルキルフェノールが検出されている。したがって、ビスフェノールAやアルキルフェノールは日常生活の中で食品や飲料を通じて人体に取り込まれる可能性が高い。
本発明の無毒化方法において、農作物、食品、飼料をヘミン及び/又はヘム含有物質と共存させる態様としては、特に限定はされないが、通常はヘミン及び/又はヘム含有物質を水又はリン酸緩衝液(pH7.5)に懸濁したものを直接農作物、食品、飼料に添加する。これを室温以上の温度で保温すれば効果が認められ、特に50℃以上では6時間以内に有意な分解が確認される。分解の確認方法としては、クロロホルムや酢酸エチルで農作物、食品、飼料中に残存しているアフラトキシン等を抽出し、TLCまたはHPLCにて分析を行う方法がある。簡便な非破壊法としては、農作物、食品、飼料に紫外線を照射することにより、蛍光性のアフラトキシン類の存在を調べることができる。ただし、後者は微量検出には不適切である。本発明の別な態様として、有害物質によって汚染されていない農作物、食品、飼料等にヘミン及び/又はヘム含有物質を加えることにより、汚染を防止することができる。
なお、ヘミンなどを単独で用いるよりも、過酸化水素を併用することにより、アフラトキシン等の分解効率を向上させることができる。その場合、過酸化水素の添加量については、例えばアフラトキシン16μMを処理する際には、0.1〜5.0mM、好ましくは0.5〜1.0mMが適当である。
さらに、後述するように、ヘミンは Sepharoseゲルなどの担体に固定化することが可能である。また、ポリエチレングリコール(PEG)にヘミンを固定化すると、有機溶媒中でもペルオキシダーゼ活性を示すことが分かっている(Takahashi, K., Matsushima, A., Saito, Y., and Inada, Y., Biochem. Biophys. Res. Com., 138, 283-288 (1986))。
したがって、これら固定化ヘミンを食品等に有害物質の分解、汚染除去を目的として使用すれば、処理後のヘミンの分離が容易である。固定化ヘミンを充填したカラムに、汚染食品等を供給することにより、連続処理も可能になると思われる。
また、実際の食品等の汚染除去を考慮して、アフラトキシンMの分解を試みた。アフラトキシンMは、牛乳において検出されるアフラトキシン誘導体である。そこで、リン酸緩衝液を混合してpH7.5に調整した市販の牛乳にアフラトキシンMの標準物質を1μMとなるように添加して汚染牛乳を調製し、これにヘミン懸濁液を添加したところ、30℃、6時間の反応でアフラトキシンMは36%消失することが確認された。
一方、ヘミンなどによるアフラトキシン等の分解機構を推定するために、以下のような実験を行った。一般に、ペルオキシダーゼに過酸化水素を作用させると、Compound Iという中間体を形成し、Soret吸収と呼ばれる特定の波長領域の吸光度が減少する。さらに、この中間体にp-アミノ安息香酸などの基質を作用させると、Soret吸収が回復し、酵素が再生されることが知られている。
そこで、ヘミン等に過酸化水素を作用させたところ、Soret吸収が減少し、Compound Iに相当する中間体が生成されていることが示唆された。さらに、p-アミノ安息香酸を添加したところ、Soret吸収の回復が観察されたことから、ヘミン等にはペルオキシダーゼ活性があることが確認された。
そこで、ヘミン等に過酸化水素を作用させた後に、アフラトキシン等を添加したところ、同様にSoret吸収の減少と回復が観察された。したがって、ヘミン等によるアフラトキシン等の分解は、ペルオキシダーゼ活性によるものであることが示唆された。
以下に、本発明を実施例により詳しく説明するが、本発明はこれらにより限定されるものではない。
実施例1〔ヘミンによるAFBの分解〕
0.5mL容マイクロチューブに200mM リン酸緩衝液(pH7.5)25μL、界面活性剤(Tween80)の10%水溶液10μL、蒸留水38μL、50mM 過酸化水素水1μL、1.6mM AFBのDMSO溶液1μLをそれぞれ分取し、反応液を調製した。ここに、400μM ヘミン懸濁液25μLを添加し、30℃にて30分静置反応を行った。
反応後、AFBの分解と生成物の確認をHPLC及びTLCにより行った。反応液に等量の酢酸エチルを加え、ボルテックスミキサーで1分間抽出を行った。抽出後、10,000×gにて2分間遠心分離を行い、酢酸エチル層(上層)を新しい0.5mLマイクロチューブに回収した。
この抽出液を逐次HPLC分析に使用した。分離カラムとしては、シリカカラムShim-pack CLC-SIL(0.46×15cm)を使用し、移動相としては、トルエン:酢酸エチル:ギ酸:メタノール=89:7.5:2:1.5の混合液を使用し、流速は毎分1mLとした。
AFB及び分解産物の検出は、蛍光検出器(島津RF-535)を用い、励起波長365nm、検出波長425nmにより行った。
TLC分析は、酢酸エチルで抽出する前の反応液から5μLを分取し、シリカゲルプレートにスポットし、これをクロロホルム:酢酸エチル:90%ギ酸=6:3:1の移動相で展開し、AFB及び反応生成物のスポットを紫外線照射により可視化した。
反応液を酢酸エチルで抽出し、HPLC分析を行った結果、AFBの保持時間が9分であるのに対し、保持時間18分に反応生成物と思われるピークが見られた(図1参照)。また、反応液について、TLC分析を行ったところ、AFBが経時的に減少し、これに伴いAFBより極性の高い蛍光物質(Rf値=0.7)が新たに生成していることが確認された(図2参照)。
その後の検討の結果、HPLCにおいて保持時間18分に見られた反応生成物は、TLCで新たに確認された蛍光物質(Rf値=0.7)に該当することが確認された。そこで、この物質のスポットをTLCシリカゲルプレートから回収し、クロロホルムによる抽出を行い、さらにHPLCにより精製を行ったものについてMSスペクトルを測定した。
その結果、反応生成物の分子量は328であることが明らかになった。このスペクトルを図3に示す。
AFBは下記の構造式(1)で表され、その分子量が312であることから、反応生成物は、AFBに酸素原子が1つ導入された化合物であることが予想された。そのような誘導体は3種類存在するが、それぞれの標準物質とのHPLCでの保持時間の比較により、反応生成物はアフラトキシンQ(以下、AFQと略称することがある。)であることが確認された。すなわち、AFBはヘミンによって水酸化されていることが分かった。AFQの構造式(2)を以下に示す。
Figure 2007302870
Figure 2007302870
AFQは、AFBをヒトやサルの肝細胞に作用させたときに生成する。AFQの毒性については、既に報告があり、AFBのおよそ18分の1の毒性を有すること並びにAmes試験では変異原性を示さないことが分かっている。
また、AFQの分解は、熱により促進され、非酵素的に分解できることを確認している。すなわち、わさび由来ペルオキシダーゼ(HRP)は、ヘミンと同様に強力なAFB分解活性を示すが、AFQを1μMとなるようにリン酸緩衝液に添加し、30℃又は50℃で保温しても、HRP存在下と非存在下でAFQの分解速度に有意な差は見られなかった。一方、30℃と50℃の間では顕著な差が見られ、高温条件下で分解速度が早いという知見が得られた(図4参照)。
ヘミンは熱に対して安定であるから、本発明によりAFBを分解し、さらに生成したAFQも加熱することにより分解することができる。
実施例2〔AFB分解におけるヘミン添加量の影響〕
ヘミンの添加量を変化させたこと以外は実施例1と同様に、30℃で30分間のAFB分解反応を行った。
反応後、AFBの残量とAFQの生成量をHPLCで定量した。結果を図5に示す。
図5から明らかなように、ヘミンの添加量が多いほど、AFBの分解率も高い。ヘミンの添加量を200μMとした場合、30分間の反応で約25%のAFBを分解することができる。
実施例3〔ヘミンによるAFB分解における過酸化水素添加量の影響〕
過酸化水素添加量を変化させたこと以外は実施例1と同様に、30℃で30分間のAFB分解反応を行った。
反応後、AFBの残量とAFQの生成量をHPLCで定量した。結果を図6に示す。
図6から明らかなように、過酸化水素無添加の場合よりも、0.1〜1.0mMの過酸化水素を添加することにより有意な分解促進効果が見られ、AFBの分解率は高い値(20〜23%)を示した。また、図示していないが、1.0mMから10mMまでの過酸化水素を添加した場合には、濃度による効果の違いは見られなかった。
実施例4 〔AFB分解物における毒性試験〕
ヘミンによるAFB分解処理後のAFB分解物について変異原性試験を行った。実験には変異原性試験キット「ウムラック」(日本抗体研究所製)を使用した。ウムラックは品川(阪大微研)等により開発された短期変異原性試験 umu- テストをキット化したものである。この試験は、DNAへの損傷により誘発される一連の遺伝子群(SOS遺伝子)のうち突然変異に直接関与している umu遺伝子の発現をβ-galactosidase活性を指標として測定する方法であり、その結果は変異原性試験の主流として現在用いられているAmes試験や癌原性試験の結果とよく相関することが確認されている。
ヘミンによるAFB分解は、実施例1と同様の反応液組成とし、ヘミン添加とヘミン無添加のそれぞれについて50℃で6時間反応を行った。反応後のAFB分解物についてウムラックによる変異原性試験を行った。コントロールとしてAFBを含まない10%DMSO水溶液を使用して同様に変異原性試験を行った。結果を表2に示す。
表2において、変異原性の強さは OD620の値に反映されている。ヘミンを添加していない反応液では50℃で6時間処理を行った後でもOD620の値は1.185であり、変異原性が残っていると思われる。
これに対して、ヘミンを添加した反応液では OD620の値は0.523であり、AFBを添加していない DMSO水溶液の値(0.531)と有意な差がない。実際に、それぞれの反応液中におけるAFB残量をHPLCにて測定したところ、ヘミンを添加していない反応液中では12μMに相当するAFBが残存していたが、ヘミンを添加した反応液では0.16μM以下にまで減少(供与AFBの99%以上が分解)していることが確認された。
したがって、ヘミンによる50℃で6時間の処理により、変異原性を消失させることができた。
Figure 2007302870

*1 umu遺伝子の発現はβ-galactosidase活性を指標として、X-galを基質とした反応後、OD620の吸光度により測定した。umu遺伝子の発現の値が大きいもの程、変異原性が高いことを示す。コントロールの値は、全く変異原性がない場合の値を示す。
比較例1〔ヘムタンパクによるAFBの分解〕
ヘムタンパク質であるチトクロムC及びヘモグロビンについて、AFB分解活性を測定した。すなわち、AFB 16μM、過酸化水素 0.5mM、界面活性剤(Tween80)1%(w/v)を含むリン酸緩衝液(pH7.5)に所定量のチトクロムC又はヘモグロビンを添加して30℃にて30分間反応を行い、AFB分解量とAFQ生成量を測定した。結果を図7及び図8に示す。
図7から分かるように、10〜200μMのチトクロムCの添加によって、AFBを30分間で10〜30%分解できる。また、図8から10〜200μMのヘモグロビンの添加によって、AFBを30分間で5〜13%分解できることが分かる。なお、AFQの生成量は100〜200μMのチトクロムCを添加したときが最も多い。
実施例5〔固定化ヘミンによるAFBの分解〕
アフィニティークロマトグラフィーのリガンド固定化用カップリング担体として市販されているEAH Sepharose 4B (ファルマシア製)にヘミンを固定化した。1,4-ジオキサン40%(v/v)を含む50mM HEPES緩衝液(pH7.5)中でEAH Sepharose 4Bゲル1mLに対してヘミンを飽和濃度となるように添加し、EDC(1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド)を活性化剤として加えることにより、EAH Sepharose 4Bのアミノ基とヘミンのカルボキシル基の間にペプチド結合を形成させた。
図9に示すように、ヘミンを固定化させたゲル100μLを用いて16μMのAFBを過酸化水素0.5mM存在下で50℃にて3時間処理したところ、1回の処理で80%以上のAFBが除去されることが確認された。また、反応液中にはAFQが生成されていることも確認された。
そこで、ゲルを遠心分離により回収し、50%(v/v)エタノール水溶液で洗浄した後、再度AFB分解反応に使用したところ、約10%のAFBの減少が見られた。
以上の結果から、EAH Sepharose 4Bに固定化したヘミンは、有意なAFB分解活性を保持していることが確認された。固定化することにより、アフラトキシン分解後も容易にヘミンを回収することができる。
また、過酸化水素濃度などの反応条件を検討することで、さらに反応効率が上がることが予想される。以上より、固定化ヘミンは、AFB分解反応に再利用可能であることが示唆された。
実施例6〔ヘミンによるビスフェノールA(BPA)の分解〕
2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)を、ヘミンを用いて分解することを試みた。
0.5mL容マイクロチューブに200mM リン酸緩衝液(pH7.5)125μL、界面活性剤(Tween80)の10%水溶液50μL、蒸留水145μL、50mM 過酸化水素水5μL、4mM BPA水溶液50μLをそれぞれ分取し、反応液を調製した。ここに、400μM ヘミン懸濁液125μLを添加し、30℃にて静置反応を行った。
BPAの分解の確認はHPLCにより行った。所定時間反応後、反応液の一部(100μL)を分取し、等量の酢酸エチルを加え、ボルテックスミキサーで1分間抽出を行った。抽出後、10,000×gにて2分間遠心分離を行い、酢酸エチル層(上層)を新しい0.5mLマイクロチューブに回収した。
この抽出液を氷浴上に保存しながら、逐次HPLC分析に使用した。分離カラムとしてSTR ODS-II(0.46×15cm)を使用した。BPAの定量には移動相としてトリフルオロ酢酸0.1%を含む50%アセトニトリル水溶液を使用し、流速は毎分0.7mLとし、紫外−可視光光度検出器(島津SPD-6AV)において波長277nmの吸光度により検出した。
一方、BPA分解産物の検出には、移動相としてトリフルオロ酢酸0.1%を含む30%アセトニトリル水溶液を使用し、流速は毎分0.5mLとして、波長280nmの吸光度により検出した。
反応液についてHPLC分析を行った結果、BPA定量条件で保持時間6分にBPA由来のピークが見られた。図10に示すように、BPAはヘミンを添加しない反応液中では全く減少が見られなかったが、ヘミン存在下では経時的に減少し、6時間の反応で18%にまで減少した。一方、BPA分解産物分析条件下で、保持時間5.9分に反応生成物と思われるピークが見られた。そこで、この物質をHPLCにより精製し、MSスペクトルを測定したところ、分子量は134であることが判明した。この物質は、4−イソプロペニルフェノールと示唆された。したがって、ヘミンはBPAの分解にも有効であることが明らかになった。
反応液のHPLCクロマトグラムである。 反応液のTLC分析結果を示す。 AFB分解産物のマススペクトルである。 AFQ分解反応の経時変化を示すグラフである。 AFB分解におけるヘミン添加量の影響を示すグラフである。 ヘミンによるAFB分解における過酸化水素添加量の影響を示すグラフである。 チトクロムCによるAFB分解を示すグラフである。 ヘモグロビンによるAFB分解を示すグラフである。 EAH Sepharose 4B ゲルに固定化したヘミンによるAFB分解を示すグラフである。 ヘミンによるビスフェノールA分解を示すグラフである。

Claims (4)

  1. ヘミン及び/又はヘム含有物質(ただし、ヘムタンパク質を除く)並びに過酸化水素を有効成分として含むことを特徴とするアフラトキシン関連物質及び芳香族有害化合物から選ばれた有害物質の分解用組成物。
  2. ヘム含有物質がポルフィリン鉄錯体である請求項1記載の有害物質の分解用組成物。
  3. アフラトキシン関連物質及び芳香族有害化合物から選ばれた有害物質により汚染された農作物、食品又は飼料を、過酸化水素の存在下でヘミン及び/又はヘム含有物質(ただし、ヘムタンパク質を除く)と接触させることを特徴とする、汚染された農作物、食品又は飼料の無毒化方法。
  4. ヘム含有物質がポルフィリン鉄錯体である請求項3記載の汚染された農作物、食品又は飼料の無毒化方法。
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