JP2007297429A - 糖鎖ライブラリの作製方法及びその利用 - Google Patents

糖鎖ライブラリの作製方法及びその利用 Download PDF

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一郎 松尾
Yukinari Ito
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Abstract

【課題】種々の糖鎖の合成を可能とする方法の提供。
【解決手段】
下記式(I):
【化1】

〔式中、R、Rはそれぞれ、同一又は異なって、直線状又は分岐状の糖鎖であり、
は任意の糖残基であり、
、Sは、同一又は異なる糖残基であり、
Lは、結合、又は直線状の糖鎖であり、
Xは、存在しないか、又は存在する場合には所定の基を示し、
、Sの糖残基はそれぞれ、異なるエキソ型グリコシダーゼにより切断される〕で表される、保護された糖鎖化合物及びそのライブラリ、並びにそれらの製造方法;該保護された糖鎖化合物及びライブラリをグリコシダーゼで処理することを含む、糖鎖化合物の製造方法、並びにそのグリコシダーゼ分解物;該保護された糖鎖化合物の合成中間体;試薬及びキットなど。
【選択図】なし

Description

本発明は、保護された糖鎖化合物及びそのライブラリ、並びにそれらの製造方法;保護された糖鎖化合物及びそのライブラリをグリコシダーゼにより処理することを含む、糖鎖化合物の製造方法、並びにそのグリコシダーゼ分解物;保護された糖鎖化合物の合成中間体;保護された糖鎖化合物及びそのライブラリを含む試薬及びキットなどに関する。
糖鎖生物学において最近特に注目を集め世界各国で活発な研究が行われているものとして、糖鎖と細胞内レクチン/分子シャペロンとの相互作用による新生タンパク質の品質管理機構(quality control)が挙げられる。粗面小胞体においてタンパク質の多くはグルコース3個、マンノース9個、N−アセチルグルコサミン2個からなる14糖(Glc3Man9GlcNAc2)により修飾される。タンパク質に結合したこのような糖鎖は、グリコシダーゼにより分解されて12糖(GlcMan9GlcNAc2。下記参照)を生じ、次いで糖鎖部分は糖加水分解酵素によりトリミングに供されるが、このトリミング過程で生じる種々の糖鎖構造とポリペプチド部分を厳密に認識するレクチン様タンパク質が存在し、正しい高次構造をとっているタンパク質をゴルジ体へと送り出したり、未成熟タンパク質が正しい高次構造を取るまで小胞体へ留め置いたり、また高次構造を取れなかった不良タンパク質を小胞体関連分解へと導くと考えられている。この様に小胞体内ではグルコシダーゼ、グルコース転移酵素、レクチン様タンパク質等と糖鎖との相互作用が絡み合ってタンパク質の品質管理が行なわれていると考えられている。
現在、糖鎖の分離、分析技術の向上に伴い、天然物から多種類の糖鎖サンプルが得られるようになってきている。しかし、糖鎖の機能解析、あるいは種々の製品及び方法への応用を可能とするのに十分な量の目的糖鎖(例、以下に示される、グリコシダーゼ分解により高マンノース型糖鎖から生成する糖鎖)を、天然物から精製することは困難である。従って、天然に存在する種々の糖鎖(糖鎖ライブラリ)のより容易な入手を可能とする方法の開発が求められている。
これまでに、糖鎖ライブラリを作製する方法としては、酵素を用いる方法が知られている。例えば、非特許文献1には、酵素により糖鎖ライブラリを作製する方法として、グリコシダーゼとグリコシルトランスフェラーゼとを組み合わせて、アスパラギン結合型糖鎖の限定分解および糖鎖伸長反応を繰り返すことにより種々の糖鎖へと変換することが記載されている。しかしながら、このような方法では、糖鎖化合物が、例えば、上述した高マンノース型糖鎖のように、その隣接する糖残基に同一の結合様式(α1−2結合)で結合している同種の糖残基(D−マンノース)を有する複数の非還元末端を有する場合、グリコシダーゼとグリコシルトランスフェラーゼを作用させても、当該複数の非還元末端において同様の反応が生じるため、先に示したような、高マンノース型糖鎖から生成する種々の天然糖鎖を特異的かつ系統的に製造できないという問題点がある。
Kajihara et al., Chemistry-A European Journal Vol.10: 971-985 (2004)
本発明の目的は、種々の糖鎖(糖鎖ライブラリ)のより容易な入手を可能とする新規方法論を提供することである。
本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、異なるグリコシダーゼにより選択的に除去可能な糖残基が糖鎖の各末端に導入されている、末端が糖残基により保護された糖鎖化合物を合成し、次いでこのように合成された糖鎖化合物を、グリコシダーゼによる加水分解反応に供することで、種々の糖鎖化合物を特異的かつ系統的に製造できることを見出した。天然糖鎖化合物を特異的かつ系統的に作製するため、天然糖鎖化合物と同一構造を有する糖鎖化合物の非還元末端に糖残基が導入された、天然糖鎖と非同一構造を有する糖鎖化合物をあえて有機合成することにより、グリコシダーゼによる切断特異性を確保するという思想は、これまでに全く知られていない。酵素法は容易に行うことができ、また、並行して同時に反応をかけることも可能である。従って、本発明者らの方法によれば、基盤となる糖鎖化合物(末端が糖残基により保護された糖鎖化合物)を一旦合成しさえすれば、種々の糖鎖化合物への変換(ライブラリの構築)を容易に行うことが可能となる。さらに、還元末端部分に蛍光物質等のタグを導入した非天然型糖鎖の製造にも応用でき、糖鎖プローブライブラリの構築も可能となる。本発明者らはこのような種々の利点を有する方法の開発に成功し、以って本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、以下の発明などを提供する:
[1]保護された糖鎖化合物又はその塩であって、
下記式(I):
〔式中、R、Rはそれぞれ、同一又は異なって、糖残基数1〜10の直線状の糖鎖であるか、又は糖残基数が1〜10である、保護用糖残基を末端に有する分岐状の糖鎖であり、
は任意の糖残基であり、
、Sは、同一又は異なる糖残基であり、
Lは、結合、又は糖残基数1〜5の直線状の糖鎖であり、
Xは、(i)存在しないか、(ii)Lが存在する場合にはLを構成する還元末端側の糖残基中の任意のヒドロキシル基、又はLが存在しない場合にはSの糖残基中の任意のヒドロキシル基に結合しているヒドロキシル保護基、アミノ酸残基又は機能性物質を示すか、あるいは(iii)Lが存在する場合にはLを構成する還元末端側の糖残基中の任意のヒドロキシル基、又はLが存在しない場合にはSの糖残基中の任意のヒドロキシル基がアミノ基に置換されている構造を示すか、あるいは置換された該アミノ基に結合しているアミノ保護基又は機能性物質を示し、
、Sの糖残基、及びR、Rにおける該保護用糖残基はそれぞれ、異なるエキソ型グリコシダーゼにより切断される〕で表される、糖鎖化合物又はその塩。
[2]以下(a)〜(d)から選ばれる1以上の特徴を有する、上記[1]の糖鎖化合物又はその塩:
(a)R、Rが直線状の糖鎖であり、かつS、Sが互いに異なる糖残基である;
(b)R、Rの一方又は双方が、保護用糖残基を末端に有する分岐状の糖鎖であり、かつ保護用糖残基、及びS、Sの糖残基がそれぞれ異なる;
(c)R、Rが直線状の糖鎖であり、かつRにおけるSと隣接する糖残基及びSの糖残基が互いに異なり、RにおけるSと隣接する糖残基及びSの糖残基が互いに異なる;
(d)R、Rの一方又は双方が、保護用糖残基を末端に有する分岐状の糖鎖であり、かつ保護用糖残基及びそれと隣接する糖残基が互いに異なり、RにおけるSと隣接する糖残基及びSの糖残基が互いに異なり、RにおけるSと隣接する糖残基及びSの糖残基が互いに異なる。
[3]以下(a)〜(c)から選ばれる1以上の特徴を有する、上記[1]の糖鎖化合物又はその塩:
(a)R、Rが直線状の糖鎖であり、かつR、Rが1種の糖残基から構成される;
(b)R、Rの一方又は双方が、保護用糖残基を末端に有する分岐状の糖鎖であり、かつR、Rが、保護用糖残基を除いて、1種の糖残基から構成される;
(c)RにおけるSと隣接する糖残基、RにおけるSと隣接する糖残基が、同一のエキソ型グリコシダーゼにより切断される。
[4]R、Rにおける糖残基数がそれぞれ3〜8である、上記[1]の糖鎖化合物又はその塩。
[5]R、Rがそれぞれ、同一又は異なって、下記式(v)、(v14
〔式(v)におけるS〜S、式(v14)におけるS〜Sは任意の糖残基であり、式(v14)におけるST1は保護用糖残基である〕のいずれかである、上記[1]の糖鎖化合物又はその塩。
[6]式(I)におけるS、Sの糖残基、式(v)におけるS〜Sの糖残基、式(v14)におけるS〜S、ST1の糖残基が、D−グルコース、D−マンノース、D−ガラクトース、D−キシロース、N−アセチル−D−グルコサミン、N−アセチル−D−ガラクトサミン、L−フコース及びシアル酸からなる群より選ばれる、上記[5]の糖鎖化合物又はその塩。
[7]保護された糖鎖化合物が、下記式(Ia):
〔式中、S〜Sは、任意の糖残基であり、
、S、Sは、同一又は異なる糖残基であり、
Lは、結合、又は糖残基数1〜5の直線状の糖鎖であり、
Xは、(i)存在しないか、(ii)Lが存在する場合にはLを構成する還元末端側の糖残基中の任意のヒドロキシル基、又はLが存在しない場合にはSの糖残基中の任意のヒドロキシル基に結合しているヒドロキシル保護基、アミノ酸残基又は機能性物質を示すか、あるいは(iii)Lが存在する場合にはLを構成する還元末端側の糖残基中の任意のヒドロキシル基、又はLが存在しない場合にはSの糖残基中の任意のヒドロキシル基がアミノ基に置換されている構造を示すか、あるいは置換された該アミノ基に結合しているアミノ保護基又は機能性物質を示し、
、S、Sの糖残基はそれぞれ、異なるエキソ型グリコシダーゼにより切断される〕で表される化合物である、上記[1]の糖鎖化合物又はその塩。
[8]保護された糖鎖化合物が、下記式(II)で表される化合物である、上記[1]の糖鎖化合物又はその塩:
〔式中、ManはD−マンノースを示し、GlcNAcはN−アセチル−D−グルコサミンを示し、
、S、Sは、同一又は異なる糖残基であり、
Xは、(i)存在しないか、(ii)GlcNAc中の任意のヒドロキシル基に結合しているヒドロキシル保護基、アミノ酸残基又は機能性物質を示すか、あるいは(iii)GlcNAc中の任意のヒドロキシル基がアミノ基に置換されている構造を示すか、あるいは置換された該アミノ基に結合しているアミノ保護基又は機能性物質を示し、
、S、Sの糖残基はそれぞれ、異なるエキソ型グリコシダーゼにより切断される〕。
[9]Man間、GlcNAc間及びManとGlcNAcとの間の全ての結合様式が、天然の高マンノース型糖鎖化合物と同一の結合様式である、上記[8]の糖鎖化合物又はその塩。
[10]S、S、Sの糖残基がそれぞれ異なる糖残基である、上記[8]の糖鎖化合物又はその塩。
[11]SがD−グルコースである、上記[8]の糖鎖化合物又はその塩。
[12]2種以上の保護された糖鎖化合物又はその塩を含むライブラリであって、
該糖鎖化合物が、下記式(I)及び(I’):
〔式中、R、R、R’、R’はそれぞれ、同一又は異なって、糖残基数1〜10の直線状の糖鎖であるか、又は糖残基数が1〜10である、保護用糖残基を末端に有する分岐状の糖鎖であり、
、S’は、同一の糖残基であり、
、S、S’、S’はそれぞれ、同一又は異なる糖残基であり、
Lは、結合、又は糖残基数1〜5の直線状の糖鎖であり、
Xは、(i)存在しないか、(ii)Lが存在する場合にはLを構成する還元末端側の糖残基中の任意のヒドロキシル基、又はLが存在しない場合にはS又はS’の糖残基中の任意のヒドロキシル基に結合しているヒドロキシル保護基、アミノ酸残基又は機能性物質を示すか、あるいは(iii)Lが存在する場合にはLを構成する還元末端側の糖残基中の任意のヒドロキシル基、又はLが存在しない場合にはS又はS’の糖残基中の任意のヒドロキシル基がアミノ基に置換されている構造を示すか、あるいは置換された該アミノ基に結合しているアミノ保護基又は機能性物質を示し、
、Sの糖残基、及びR、Rにおける該保護用糖残基はそれぞれ、異なるエキソ型グリコシダーゼにより切断され、
’、S’の糖残基、及びR’、R’における該保護用糖残基はそれぞれ、異なるエキソ型グリコシダーゼにより切断される〕で表される、ライブラリ。
[13]R、R’が同一の糖鎖であり、R、R’が同一の糖鎖であり、かつS、S’が互いに異なる糖残基であり、S、S’が互いに異なる糖残基である、上記[12]のライブラリ。
[14]以下(a)又は(b)の特徴を有する、上記[12]のライブラリ:
(a)R、R、R’、R’が直線状の糖鎖であり、かつS、S’、S、S’の糖残基がそれぞれ異なる;
(b)R、R、R’、R’のうち少なくとも1つが、保護用糖残基を末端に有する分岐状の糖鎖であり、かつ保護用糖残基、及びS、S’、S、S’の糖残基がそれぞれ異なる。
[15]下記式(I’’):
〔式中、R’’、R’’はそれぞれ、同一又は異なって、糖残基数1〜10の直線状の糖鎖であるか、又は糖残基数が1〜10である、保護用糖残基を末端に有する分岐状の糖鎖であり、
’’は、S、S’と同一の糖残基であり、
’’は、S、S’と異なる糖残基であり、S’’は、S、S’と異なる糖残基であり、
Lは、結合、又は糖残基数1〜5の直線状の糖鎖であり、
Xは、(i)存在しないか、(ii)Lが存在する場合にはLを構成する還元末端側の糖残基中の任意のヒドロキシル基、又はLが存在しない場合にはS’’の糖残基中の任意のヒドロキシル基に結合しているヒドロキシル保護基、アミノ酸残基又は機能性物質を示すか、あるいは(iii)Lが存在する場合にはLを構成する還元末端側の糖残基中の任意のヒドロキシル基、又はLが存在しない場合にはS’’の糖残基中の任意のヒドロキシル基がアミノ基に置換されている構造を示すか、あるいは置換された該アミノ基に結合しているアミノ保護基又は機能性物質を示し、
’’、S’’の糖残基、及びR’’、R’’における該保護用糖残基はそれぞれ、異なるエキソ型グリコシダーゼにより切断される〕で表される、保護された糖鎖化合物をさらに含む、上記[13]のライブラリ。
[16]上記式(I)で表される保護された糖鎖化合物又はその塩を、グリコシダーゼで処理して糖鎖化合物を得ることを含む、糖鎖化合物の製造方法。
[17]上記式(I)及び(I’)で表される、2種以上の保護された糖鎖化合物又はその塩を含むライブラリを、グリコシダーゼで処理することを含む、糖鎖化合物の製造方法。
[18]天然に存在する糖鎖と同一構造を有する糖鎖の非還元末端に少なくとも1つの糖残基が導入されている、保護された糖鎖化合物を合成し、合成された糖鎖化合物をグリコシダーゼで処理して糖鎖化合物を得ることを含む、糖鎖化合物の製造方法。
[19]糖鎖化合物又はその塩であって、
上記式(II)で表される保護された高マンノース型糖鎖化合物を、グリコシダーゼにより分解することにより得られ、かつ
(a)S、Sの糖残基の一方又は双方を保持する化合物;又は
(b)Sとして、α−D−グルコース以外の糖残基を保持する化合物。
[20]下記式(IIa1)〜(IIa4)、(IIa8)、(IIb4)〜(IIb5)、(IIb14)のいずれかの糖鎖化合物又はその塩:
〔式中、ManはD−マンノースを示し、GlcNAcはN−アセチル−D−グルコサミンを示し、
Xは、(i)存在しないか、(ii)GlcNAc中の任意のヒドロキシル基に結合しているヒドロキシル保護基、アミノ酸残基又は機能性物質を示すか、あるいは(iii)GlcNAc中の任意のヒドロキシル基がアミノ基に置換されている構造を示すか、あるいは置換された該アミノ基に結合しているアミノ保護基又は機能性物質を示し、
、S、Sの糖残基はそれぞれ異なって、D−グルコース、D−ガラクトース、D−キシロース、N−アセチル−D−グルコサミン、N−アセチル−D−ガラクトサミン、L-フコース、シアル酸からなる群より選ばれる糖残基である〕。
[21]糖鎖化合物又はその塩であって、
下記式(I):
〔式中、R、Rはそれぞれ、同一又は異なって、糖残基数1〜10の直線状の糖鎖であるか、又は糖残基数が1〜10である、保護用糖残基を末端に有する分岐状の糖鎖であり、
は任意の糖残基であり、
、Pは、互いに異なるヒドロキシ保護基であり、
Lは、結合、又は糖残基数1〜5の直線状の糖鎖であり、
Xは、(i)存在しないか、(ii)Lが存在する場合にはLを構成する還元末端側の糖残基中の任意のヒドロキシル基、又はLが存在しない場合にはSの糖残基中の任意のヒドロキシル基に結合しているヒドロキシル保護基、アミノ酸残基又は機能性物質を示すか、あるいは(iii)Lが存在する場合にはLを構成する還元末端側の糖残基中の任意のヒドロキシル基、又はLが存在しない場合にはSの糖残基中の任意のヒドロキシル基がアミノ基に置換されている構造を示すか、あるいは置換された該アミノ基に結合しているアミノ保護基又は機能性物質を示す〕で表される、糖鎖化合物又はその塩。
[22]上記[1]の糖鎖化合物又はその塩、上記[12]のライブラリあるいはそれらのグリコシダーゼ分解物又はその塩、あるいは上記[20]の糖類化合物又はその塩を含む、試薬又はキット。
[23]以下(a)及び(b)を含む、キット:
(a)上記[1]の糖鎖化合物又はその塩、又は上記[12]のライブラリ;
(b)1以上のグリコシダーゼ。
本発明の保護された糖鎖化合物及びその塩、並びにそれらを含むライブラリは、種々の糖鎖化合物の特異的かつ系統的な製造などを可能にするため有用である。
本発明の保護された糖鎖化合物及びその塩、並びにそれらを含むライブラリをグリコシダーゼで処理することにより得られる糖鎖化合物及びその塩、並びにそれらを含むライブラリは、生理活性を有する天然糖鎖の生成反応における中間体又はその集合体などとして有用である。
本発明の合成中間体は、本発明の保護された糖鎖化合物及びその塩、並びにそれらを含むライブラリの容易な作製などを可能にするため有用である。
本発明はまた、上述したような糖鎖化合物及びその塩、並びにそれらを含むライブラリの製造方法、並びにこのような糖鎖化合物及びその塩、並びにそれらを含むライブラリを含む試薬及びキットなどを提供する。
(1.保護された糖鎖化合物及びその製造方法)
本発明は、保護された糖鎖化合物又はその塩を提供する。
本明細書中で用いる場合、「保護された糖鎖化合物」における「保護」とは、異なるエキソ型グリコシダーゼにより選択的に除去可能な糖残基を糖鎖の各非還元末端に有することをいう。従って、本発明における保護された糖鎖化合物は、異なるエキソ型グリコシダーゼにより選択的に除去可能な糖残基を、2以上の糖鎖の非還元末端に有する糖鎖化合物であり得る。このような保護された糖鎖化合物としては、例えば、(a)異種の糖残基を2以上の糖鎖末端に有する糖鎖化合物、(b)同種の糖残基を2以上の糖鎖末端に有するが、該糖残基とその隣接する糖残基との間の結合様式がそれぞれ異なる糖鎖化合物、(c)上記(a)及び(b)の組合せを有する糖鎖化合物が挙げられる。
「保護された糖鎖化合物」における「糖鎖化合物」は、天然に存在する糖鎖と同一構造を共有する化合物(糖組成、糖配置パターン及び糖間結合様式が一致する構造からなる化合物、又はそのような構造を部分構造として含む化合物)、又は天然に存在しない、新たに設計された糖鎖化合物(それ故、任意の糖組成、糖配置パターン及び糖間結合様式を有し得る糖鎖化合物)であり得る。天然に存在する糖鎖としては、例えば、タンパク質(ペプチド)中に見出されるアスパラギン残基に結合するN結合型糖鎖(例、高マンノース型糖鎖、複合型糖鎖、混成型糖鎖)、タンパク質中に見出されるセリン又はスレオニン残基に結合するO結合型糖鎖(例、ムチン型糖鎖CORE1〜8、動物ジストログリカン糖鎖)、Notch糖鎖が挙げられる。
以下、本発明における保護された糖鎖化合物を、必要に応じて「本発明の保護化合物」と省略することがある。また、本発明の保護化合物における糖鎖末端(非還元末端)に存在する糖残基を、必要に応じて「末端糖残基」と省略することがある。例えば、末端糖残基は、後述するS、S(及び存在する場合、S、S)、並びに保護用糖残基を末端に有する分岐状の糖鎖(例、R、R)における保護用糖残基(例、ST1、ST2)であり得る。
詳細には、本発明の保護化合物は、例えば、上記式(I)で表される化合物であり得る。
上記式(I)中、R、Rはそれぞれ、同一又は異なって、直線状の糖鎖、又は保護用糖残基を末端に有する分岐状の糖鎖であり得る。「保護用糖残基を末端に有する分岐状の糖鎖」における「保護用糖残基」とは、エキソ型グリコシダーゼにより選択的に除去可能である、分岐鎖末端に存在する糖残基をいう(例、後述の(v)、(v13)、(v14)、(v27)におけるST1、ST2参照)。従って、「保護用糖残基を末端に有する分岐状の糖鎖」は、S、S、及び他の保護用糖残基(複数の分岐構造を有する場合)を選択的に除去可能なエキソ型グリコシダーゼと異なるエキソ型グリコシダーゼにより選択的に除去可能な糖残基が分岐鎖の末端に導入されている糖鎖であり得る。
、Rの糖鎖における糖残基数は特に限定されないものの、例えば、1〜20であり得る。該糖残基数の上限値は、好ましくは15以下、より好ましくは10以下、さらにより好ましくは8以下、最も好ましくは7、6又は5以下であり得る。該糖残基数の下限値は、1以上、好ましくは2以上、より好ましくは3、4又は5以上であり得る。
「保護用糖残基を末端に有する分岐状の糖鎖」は、1以上の分岐構造を有する糖鎖である限り特に限定されないが、有機合成の容易さの観点から分岐数はより少ないことが好ましく、例えば4以下、好ましくは3以下、より好ましくは2以下、最も好ましくは1であり得る。
より詳細には、R、Rは、以下(v)〜(v43)からなる群より選ばれる糖鎖構造を有するものであり得る。ここで、S〜Sは任意の糖残基であり、ST1又はST2は保護用糖残基であり得る。なお、下記の実施例では、R、Rにおける糖鎖構造として、(v)、(v14)を実際に作製している。従って、RとRとの組合せとしては、以下の糖鎖構造のうち、(v)と(v14)との組合せ、(v)と(v)との組合せ、(v14)と(v14)との組合せであることもまた好ましいが、天然糖鎖(例、高マンノース型糖鎖、複合型糖鎖、混成型糖鎖)と同一構造もまた好ましいという観点からは、(v)と(v14)との組合せ、(v14)と(v14)との組合せがより好ましい。また、天然糖鎖と同一構造が好ましいという観点からは、R、Rとして、(v)もまた好ましい。
例えば、上記式(I)で表される化合物は、天然に存在する糖鎖化合物と共通する糖鎖骨格を有する化合物であることもまた好ましい。このような化合物としては、上記式(Ia)で表される糖鎖化合物、下記式(Ib):
〔式中、S〜S11は、任意の糖残基であり、
、S、S、Sはそれぞれ、同一又は異なる糖残基であり、
Lは、結合、又は糖残基数1〜5の直線状の糖鎖であり、
Xは、(i)存在しないか、(ii)Lが存在する場合にはLを構成する還元末端側の糖残基中の任意のヒドロキシル基、又はLが存在しない場合にはSの糖残基中の任意のヒドロキシル基に結合しているヒドロキシル保護基、アミノ酸残基又は機能性物質を示すか、あるいは(iii)Lが存在する場合にはLを構成する還元末端側の糖残基中の任意のヒドロキシル基、又はLが存在しない場合にはSの糖残基中の任意のヒドロキシル基がアミノ基に置換されている構造を示すか、あるいは置換された該アミノ基に結合しているアミノ保護基又は機能性物質を示し、
、S、S、Sの糖残基はそれぞれ、異なるエキソ型グリコシダーゼにより切断される〕で表される化合物、あるいは
下記式(Ic):
〔式中、S〜Sは、任意の糖残基であり、
、Sは、同一又は異なる糖残基であり、
Lは、結合、又は糖残基数1〜5の直線状の糖鎖であり、
Xは、(i)存在しないか、(ii)Lが存在する場合にはLを構成する還元末端側の糖残基中の任意のヒドロキシル基、又はLが存在しない場合にはSの糖残基中の任意のヒドロキシル基に結合しているヒドロキシル保護基、アミノ酸残基又は機能性物質を示すか、あるいは(iii)Lが存在する場合にはLを構成する還元末端側の糖残基中の任意のヒドロキシル基、又はLが存在しない場合にはSの糖残基中の任意のヒドロキシル基がアミノ基に置換されている構造を示すか、あるいは置換された該アミノ基に結合しているアミノ保護基又は機能性物質を示し、
、Sの糖残基はそれぞれ、異なるエキソ型グリコシダーゼにより切断される〕で表される化合物であってもよい。
式(I)、(Ia)、(Ib)、(Ic)、(v)〜(v43)中、R、R、Lの糖鎖を構成する糖残基、並びにS、S、S、S、ST1、ST2、S〜S11の糖残基としては、例えば、ペントース、ヘキソース、ヘプトースが挙げられる。糖残基はまた、アルドース又はケトースであり得る。糖残基はさらに、D体又はL体であり得る。上記糖残基のなかでも、R、Rの糖鎖を構成する糖残基、並びにS、S、S、S、ST1、ST2、S〜S11の糖残基、特に、S、S、S、S、ST1、ST2の糖残基としては、これまでに種々の特異的エキソ型グリコシダーゼが単離されていることから、このようなエキソ型グリコシダーゼにより選択的に切断され得る、D−グルコース、D−マンノース、D−ガラクトース、N−アセチル−D−グルコサミン、N−アセチル−D−ガラクトサミン、L−フコース、D−キシロース、シアル酸が好ましい。
式(I)、(Ia)、(Ib)、(Ic)、(v)〜(v43)中、R、Rの糖鎖を構成する糖残基、並びにS、S、S、S、ST1、ST2、S〜S11の糖残基、特に、S、S、S、S、ST1、ST2の糖残基はまた、これらを切断するエキソ型グリコシダーゼの観点から特徴付けることができる。これらの糖残基を切断するエキソ型グリコシダーゼとしては特に限定されないが、例えば、グルコシダーゼ、マンノシダーゼ、ガラクトシダーゼ、キシラナーゼ、N−アセチルグルコサミニダーゼ(GlcNAcase)、N−アセチルガラクトサミニダーゼが挙げられる。また、R、Rの糖鎖を構成する糖残基、S〜S11の糖残基は、これを切断するエンド型グリコシダーゼの観点から特徴付けることもできる。これらの糖残基を切断するエンド型グリコシダーゼとしては特に限定されないが、例えば、エンドマンノシダーゼ、エンドN-アセチルグルコサミニダーゼが挙げられる。エキソ型及びエンド型グリコシダーゼについては、例えば、Ernst et al., 「Carbohydrates in Chemistry and Biology」Part II Biology of Saccharides, Vol.3, Biosynthesis and Degradation of Glycoconjugates, WILEY-VCHを参照のこと。
式(I)、(Ia)、(Ib)、(Ic)、(v)〜(v43)中、R、R、Lの糖鎖を構成する糖残基、並びにS、S、S、S、ST1、ST2、S〜S11の糖残基における糖間結合様式は、任意の結合様式でありα又はβ結合のいずれでもよい。上記のなかでも、R、Rの糖鎖を構成する糖残基、並びにS、S、S、S、ST1、ST2、S〜S11の糖残基、特にS、S、S、S、ST1、ST2の糖残基における糖間結合様式は、糖残基の種類に応じて所定のグリコシダーゼにより選択的に切断され得る結合様式である限り限定されない。より詳細には、このような結合様式としては、α1−2結合、α1−3結合、α1−4結合、α1−5結合、α1−6結合、β1−2結合、β1−3結合、β1−4結合、β1−5結合、β1−6結合が挙げられる。また、シアル酸等のケトースは2位のヒドロキシ基を結合に利用することから、結合様式としては、α2−2結合、α2−3結合、α2−4結合、α2−5結合、α2−6結合もまた挙げることができる。本発明の保護化合物は、例えば、天然糖鎖と同一の結合様式を有し得る。
式(I)、(Ia)、(Ib)、(Ic)中、Lの糖鎖を構成する糖残基は特に限定されないが、天然糖鎖との同一性の観点からは、N−アセチル−D−グルコサミンが好ましい。また、Lの糖鎖を構成する糖残基数は特に限定されず、例えば、0(即ち、結合)〜10個、好ましくは0〜5個、より好ましくは0〜3個であり得るが、天然糖鎖との同一性の観点からは0又は2個が好ましい。同様の観点から、Lの糖鎖を構成する糖残基間の結合様式としてはβ1−4結合が好ましい。
式(I)、(Ia)、(Ib)、(Ic)中、Xは、(i)存在しないか、(ii)Lが存在する場合にはLを構成する還元末端側の糖残基中の任意のヒドロキシル基、又はLが存在しない場合にはSの糖残基中の任意のヒドロキシル基に結合しているヒドロキシル保護基、アミノ酸残基又は機能性物質を示すか、あるいは(iii)Lが存在する場合にはLを構成する還元末端側の糖残基中の任意のヒドロキシル基、又はLが存在しない場合にはSの糖残基中の任意のヒドロキシル基がアミノ基に置換されている構造を示すか、あるいは置換された該アミノ基に結合しているアミノ保護基又は機能性物質を示す。上記(ii)におけるヒドロキシル保護基が結合するヒドロキシル基、上記(iii)におけるアミノ基に置換されるヒドロキシル基の数は特に限定されず、例えば1〜3個であり得るが、1又は2個が好ましく、1個がより好ましい。(ii)におけるヒドロキシル保護基、アミノ酸残基又は機能性物質が結合するヒドロキシル基、及び上記(iii)におけるアミノ基(アミノ保護基又は機能性物質が結合していてもよい)に置換されるヒドロキシル基の位置は特に限定されず、例えば6員環の糖残基については1位、2位、3位、4位及び6位のヒドロキシル基、5員環の糖残基については1位、2位、3位及び5位のヒドロキシル基が挙げられるが、例えば、天然糖鎖と同じ位置のヒドロキシル基を利用するという観点からは、式(Ia)、(Ib)、(Ic)ではそれぞれ1位のヒドロキシル基が利用され得る。
Xにおけるヒドロキシ保護基、アミノ保護基は、後述するものと同様であり得る。アミノ酸残基としては特に限定されるものではないが、天然物中に見出される糖鎖結合アミノ酸残基が好ましく、このようなアミノ酸残基としては、例えば、N結合型糖鎖が結合するアスパラギン、O結合型糖鎖が結合するセリン/スレオニンが挙げられる。機能性物質としては、例えば、標識用物質、親和性物質(例、ビオチン、ストレプトアビジン、ベンゾフェノン、メトトレキセート)、ペプチド(例、分泌ペプチド、塩基性ペプチド、酸性ペプチド)、並びにこれらの物質にリンカー(例えば、−NH−、−O−、C1−10(例、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル等のC1−6アルキル)及びこれらの組合せ)などを結合させた化合物が挙げられる。標識用物質としては、例えば、蛍光物質(例、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、FITC、FAM)、発色物質(例、パラニトロフェニル基)、放射性同位体(例、H、14C、32P、35S、123I)含有物、反応性置換基(例、ハロアミド基、チオール基)、光親和性置換基(例、ベンゾフェノン誘導体、ジアジリン誘導体、アジド基)が挙げられる。
一実施形態では、本発明の保護化合物は、エキソ型グリコシダーゼによる切断の選択性の観点より、末端糖残基の種類が異なるか、又は末端糖残基が同種であってもその結合様式が異なり得る。ここで、基本的には、結合様式が異なれば選択的な糖残基の除去は可能であるが、利用可能な酵素の選び易さの観点より、末端糖残基の種類が異なることが好ましい。従って、上記式(I)中、R、Rが直線状の糖鎖であるとき、S、Sは互いに異なる種類の糖残基であってもよい。R、Rの一方又は双方が1以上の保護用糖残基を末端に有する分岐状の糖鎖であるとき、該保護用糖残基及びS、Sのうち少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2つ、より好ましくは全ての糖残基が、それぞれ異なる種類の糖残基であってもよい。また、上記式(Ia)中、S、S、Sはそれぞれ、異なる種類の糖残基であってもよい。上記式(Ib)中、S、S、S、Sはそれぞれ、異なる種類の糖残基であってもよい。上記式(Ic)中、S、Sはそれぞれ、異なる種類の糖残基であってもよい。
別の実施形態では、本発明の保護化合物は、糖鎖の各末端に対して異なるグリコシダーゼ切断性を付与することにより末端を保護するという観点から、末端糖残基とそれと隣接する糖残基の種類が異なり得る。従って、上記式(I)中、R、Rが直線状の糖鎖であるとき、RにおけるSと隣接する糖残基及びSの糖残基、及び/又はRにおけるSと隣接する糖残基及びSの糖残基は互いに異なり得る。R、Rの一方又は双方が保護用糖残基を末端に有する分岐状の糖鎖であるとき、該保護用糖残基及びそれと隣接する糖残基の間、RにおけるSと隣接する糖残基及びSの糖残基の間、及びRにおけるSと隣接する糖残基及びSの糖残基の間のうち、少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2つ、より好ましくは全ての糖残基の間で、糖残基の種類が異なり得る。また、上記式(Ia)中、SとSとの間、SとSとの間、SとSとの間のうち、少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2つ、より好ましくは全ての糖残基の間で、糖残基の種類が異なり得る。上記式(Ib)中、SとSとの間、SとSとの間、SとSとの間、S11とSとの間のうち、少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2つ、より好ましくは全ての糖残基の間で、糖残基の種類が異なり得る。上記式(Ic)中、SとSとの間、及び/又はSとSとの間で、糖残基の種類が異なり得る。
別の実施形態では、本発明の保護化合物は、それに含まれる2以上の糖鎖(但し、末端糖残基を除く)において、糖組成及び/又は糖間結合様式が類似するものであり得る。従って、上記式(I)中、RとRとの間において、それらを構成する糖残基の種類及び/又は結合様式が全て一致する構造(完全同一構造)を有していてもよく、あるいは部分的に一致する構造(部分同一構造)を有していてもよい。また、上記式(Ia)中、a)S〜Sから構成される糖鎖、b)S〜Sから構成される糖鎖、c)S、S、Sから構成される糖鎖のうち少なくとも2つ、例えば全ての糖鎖において、完全又は部分同一構造を有していてもよい。上記式(Ib)中、a)S〜Sから構成される糖鎖、b)S、S、Sから構成される糖鎖、c)S〜Sから構成される糖鎖、d)S、S10、S11から構成される糖鎖のうち少なくとも2つ、例えば3つ又は全ての部分糖鎖において、完全又は部分同一構造を有していてもよい。上記式(Ic)中、S、Sもまた、同一の糖残基及び/又は結合様式を有していてもよい。エキソ型グリコシダーゼで処理すべき糖鎖化合物(未保護糖鎖化合物)が、糖残基の組成及び/又は結合様式において高い類似性を有する糖鎖を有する場合、グリコシダーゼ分解により種々の糖鎖化合物を特異的かつ系統的に製造することは困難である。一方、異なるエキソ型グリコシダーゼにより選択的に除去可能な糖残基により、このような糖鎖化合物を保護した場合、エキソ型グリコシダーゼを適宜活用することで、種々の糖鎖化合物を特異的かつ系統的に容易に製造することが可能となる。従って、本発明者らが開発した方法論は、糖残基の組成及び/又は結合様式において高い類似性を有する糖鎖を有する糖鎖化合物を対象とする場合、特にその利点を発揮し得る。
別の実施形態では、本発明の保護化合物は、それに含まれる2以上の糖鎖(但し、末端糖残基を除く)において、同一のエキソ型グリコシダーゼにより切断される糖残基を有するものであり得る。例えば、このような糖残基は、末端糖残基に隣接するものであり得る。従って、上記式(I)中、RにおけるSと隣接する糖残基、RにおけるSと隣接する糖残基(及び必要に応じて、R、Rの一方又は双方が保護用糖残基を末端に有する分岐状の糖鎖であるときはその保護用糖残基に隣接する糖残基)が、同一のエキソ型グリコシダーゼにより切断され得る。また、上記式(Ia)中、S、S、Sの糖残基のうち、少なくとも2つ、例えば全ての糖残基が、同一のエキソ型グリコシダーゼにより切断され得る。上記式(Ib)中、S、S、S、S11の糖残基のうち、少なくとも2つ、例えば少なくとも3つ又は全ての糖残基が、同一のエキソ型グリコシダーゼにより切断され得る。上記式(Ic)中、S、Sの糖残基が、同一のエキソ型グリコシダーゼにより切断され得る。本発明者らが開発した方法論は、このような糖鎖化合物を対象とする場合も、上記と同様の理由により、特にその利点を発揮し得る。
別の実施形態では、本発明の保護化合物は、共通する少数の糖残基から構成される2以上の糖鎖を有し得る。従って、上記式(I)中、R、Rが直線状の糖鎖であるとき、R、Rはそれぞれ、例えば3種以下、好ましくは2種以下、より好ましくは1種の共通する糖残基から構成される糖鎖であり得る。R、Rの一方又は双方が1以上の保護用糖残基を末端に有する分岐状の糖鎖であるとき、R、Rはそれぞれ、該保護用糖残基を除いて、例えば3種以下、好ましくは2種以下、より好ましくは1種の共通する糖残基から構成される糖鎖であり得る。また、上記式(Ia)中、a)S〜Sから構成される糖鎖、b)S〜Sから構成される糖鎖、c)S、S、Sから構成される糖鎖のうち少なくとも2つ、例えば全ての糖鎖が、2種以下、例えば1種の共通する糖残基から構成される糖鎖であり得る。上記式(Ib)中、a)S〜Sから構成される糖鎖、b)S、S、Sから構成される糖鎖、c)S〜Sから構成される糖鎖、d)S、S10、S11から構成される糖鎖のうち少なくとも2つ、例えば3つ又は全ての糖鎖が、2種以下、例えば1種の共通する糖残基から構成される糖鎖であり得る。上記式(Ic)中、S、Sもまた、共通する糖残基から構成される糖鎖であり得る。本発明者らが開発した方法論は、このような糖鎖化合物を対象とする場合も、上記と同様の理由により、特にその利点を発揮し得る。
より詳細には、上記式(Ia)で表される化合物は、上記式(II)で表される高マンノース型糖鎖、あるいは高マンノース型糖鎖及び複合型糖鎖の部分構造を有する混成型糖鎖が糖残基により保護された化合物であり得る。上記式(Ia)で表される化合物が、上記式(II)で表される高マンノース型糖鎖化合物である場合、Man間、GlcNAc間及びManとGlcNAcとの間の全ての結合様式は、天然の高マンノース型糖鎖化合物と同一の結合様式であり得る(例えば、背景技術を参照)。S、S、Sの糖残基は、それぞれ異なる糖残基であり得る。好ましくは、SはD−グルコースであり得る。S、Sとしては、D−マンノース以外の任意の糖残基が好ましい。より好ましくは、SがD−ガラクトースであり、SがN−アセチル−D−グルコサミンであり得る。
上記式(Ib)で表される化合物は、複合型糖鎖が糖残基により保護された化合物であり得る。従って、複合型糖鎖における糖組成、糖配置パターン及び結合様式は、図9Aに示されるものと一致し得る。S、S、S、Sの糖残基は、それぞれ異なる糖残基であり得る。好ましくは、S、S、S、Sは、α−D−ガラクトース(又はD−ガラクトース)以外の糖残基であり得る。
上記式(Ic)で表される化合物は、O結合型糖鎖が糖残基により保護された化合物であり得る。従って、O結合型糖鎖における糖組成、糖配置パターン及び結合様式は、図10Aに示されるCORE1〜8のいずれかと一致し得る。S、Sの糖残基は、互いに異なる糖残基であり得る。
本発明の糖鎖化合物の塩としては特に限定されないが、例えば無機塩基(例、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属;カルシウム、マグネシウムなどのアルカリ土類金属;アルミニウム、アンモニウム)、有機塩基(例、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ピリジン、ピコリン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジシクロヘキシルアミン、N,N−ジベンジルエチレンジアミン)、無機酸(例、塩酸、臭化水素酸、硝酸、硫酸、リン酸)、有機酸(例、ギ酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、フマル酸、シュウ酸、酒石酸、マレイン酸、クエン酸、コハク酸、リンゴ酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸)、塩基性アミノ酸(例、アルギニン、リジン、オルニチン)または酸性アミノ酸(例、アスパラギン酸、グルタミン酸)との塩などが挙げられる。
本発明の保護化合物は、自体公知の糖鎖合成方法を適宜組み合わせることにより容易に作製できる。例えば、式(I)で表される本発明の保護化合物は、(a)S及び/又はS含有糖ブロック化合物と、その相補糖ブロック化合物又はその相補単糖とを反応させるか、又は(b)S及び/又はSと、その相補糖ブロック化合物とを反応させることにより製造できる。本発明はまた、このような製造方法を提供する。「糖ブロック化合物」とは、2以上の糖残基を有する化合物をいう。また、「相補糖ブロック化合物」又は「相補単糖」における「相補」とは、最終生成物(例、上記式(I)で表される糖鎖化合物)の製造において、足りない部分構造を補うものであることを意味する。例えば、S含有糖ブロック化合物に対する相補糖ブロック化合物は、目的とする最終生成物が有する糖鎖構造のうち、S含有糖ブロック化合物が有しない部分糖鎖構造を有する糖鎖化合物であり得る。
本発明の製造方法はまた、上記式(Ia)、(Ib)又は(Ic)で表される化合物の製造方法であり得る。このような化合物の製造は、(a)少なくとも1つのS(nは、A、B、及び存在する場合、C、Dのうちのいずれかを示す)を含有する糖鎖ブロック化合物と、その相補糖ブロック化合物又はその相補単糖とを反応させるか、又は(b)Sと、その相補糖ブロック化合物とを反応させることにより製造できる。
本発明の保護化合物の製造は、糖鎖末端がヒドロキシ保護基で保護された糖鎖化合物(合成中間体)を一旦生成した後、各ヒドロキシ保護基を除去し、糖残基を付加することにより行われてもよい。このような合成中間体は、後述する複数種の本発明の保護化合物を含むライブラリを調製する際、特に有用である。本発明はまた、このような合成中間体を提供する。以下、製造方法における説明の便宜上、本発明の保護化合物及び合成中間体を包括的に下記式(I)で表わす。
〔式中、R、Rはそれぞれ、同一又は異なって、直線状の糖鎖であるか、又は保護用糖残基を末端に有する分岐状の糖鎖であり、
は任意の糖残基であり、
、Pは、所定の保護基(例、エキソ型グリコシダーゼにより選択的に除去可能である糖残基(例、S、S)、ヒドロキシ保護基)であり、
Lは、結合、又は直線状の糖鎖であり、
Xは、(i)存在しないか、(ii)Lが存在する場合にはLを構成する還元末端側の糖残基中の任意のヒドロキシル基、又はLが存在しない場合にはSの糖残基中の任意のヒドロキシル基に結合しているヒドロキシル保護基、アミノ酸残基又は機能性物質を示すか、あるいは(iii)Lが存在する場合にはLを構成する還元末端側の糖残基中の任意のヒドロキシル基、又はLが存在しない場合にはSの糖残基中の任意のヒドロキシル基がアミノ基に置換されている構造を示すか、あるいは置換された該アミノ基に結合しているアミノ保護基又は機能性物質を示す〕
(R、R、S、S、S、L、Xは上述したものと同様であり得る)
例えば、上記式(I)で表される化合物は、天然に存在する糖鎖化合物と共通する糖鎖骨格を有する化合物であることもまた好ましい。このような化合物としては、下記式(Ia)、(Ib)及び(Ic)で表される糖鎖化合物が挙げられる。
上記式(Ia)、(Ib)、(Ic)中、PはS又はヒドロキシ保護基であり得る(nは、A、B、及び存在する場合、C、Dのうちのいずれかを示す)。各記号はまた、上記式(Ia)、(Ib)、(Ic)のものと同様である。
特定の実施形態では、上記式(Ia)で表される化合物は、上記式(II)で表される化合物であり得る。
上記式(II)中、各記号は、上記式(Ia)のものと同様である。また、式(II)中、PがD−グルコースであり、P、Pがヒドロキシ保護基であることもまた好ましい。
本発明において使用される糖ブロック化合物は、最終生成物の糖鎖構造を構築するために、所定の位置に反応性置換基を有し、反応を避ける必要があるヒドロキシ基についてヒドロキシ保護基により、及び存在する場合にはアミノ基についてもアミノ保護基により保護されている化合物であり得る。
ヒドロキシ保護基とは、反応中にヒドロキシ基を保護する置換基をいい、例えば、それぞれ置換基を有していてもよいC1−6アルキル基(例、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、tert−ブチル)、フェニル、C7−11アリールアルキル基(例、ベンジル、p−メトキシベンジル基)、ホルミル、C1−6アシル基(例、アセチル、プロピオニル、ピバロイル基)、フェニルオキシカルボニル基、C7−11アラルキルオキシ−カルボニル基(例、ベンジルオキシカルボニル)、テトラヒドロピラニル、テトラヒドロフラニル、トリチル基、シリル、t−ブチルジメチルシリル基、トリエチルシリル基、t−ブチルジフェニルシリル基、メタンスルホニル基などが用いられる。これらの置換基としては、ハロゲン原子(例、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素)、C1−6アルキル基(例、メチル、エチル、tert−ブチル)、C7−11アラルキル基(例、ベンジル)、C6−10アリール基(例、フェニル、ナフチル)、ニトロ基などが用いられる。
アミノ保護基とは、反応中にアミノ基を保護する置換基をいい、例えば、アセトアミド、トリクロロアセトアミド等のアミド含有保護基、フタロイル等のイミド含有保護基、C1−6アルキル−カルボニル(例、アセチル、プロピオニル)、アリルカルバメート、C7−20アラルキルカルバメート(例、ベンジルカーバメート)等のカルバメート含有保護基、トリチルなどが用いられる。これらの置換基としては、ハロゲン原子(例、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素)、C1−6アルキル−カルボニル(例、アセチル、プロピオニル、バレリル)、ニトロ基などが用いられる。本発明で特に好ましく用いられるアミノ基の保護基はフタロイル基である。
以下、式(Ia)で表される化合物を例に挙げて、本発明の保護化合物及び中間体の合成の概略を示す。式(Ia)で表される化合物は、下記のスキーム及びその説明、実施例の記載及び当該分野における自体公知の方法に従って容易に製造できる。勿論、当業者は、他の糖鎖化合物も同様に容易に製造できる。本発明は、下記スキームに記載される化合物、実施例中に記載される化合物及びそれらの塩もまた提供する。
保護化反応、脱保護反応、脱アセチル化反応、糖付加反応等の有機合成反応は、自体公知の方法により行われ得る。さらに所望により、公知の脱保護反応、アシル化反応、アルキル化反応、水素添加反応、酸化反応、還元反応、炭素鎖延長反応、置換基交換反応を各々、単独あるいはその二つ以上を組み合わせて行うことにより、本発明の保護化合物を製造できる。これらの反応は、例えば、特開2004-244583号公報、実施例中に開示される文献、及びProtective groups in organic synthesis Jhon wiely & Sons Inc. 新実験化学講座 14[V] (丸善)などに記載されている。
また、天然糖鎖の全合成方法が知られているので、本発明の保護化合物の製造に際しては、そのような合成方法もまた参考にすることができる。例えば、高マンノース型糖鎖の全合成方法については特開2004-244583号公報及び実施例中に開示される文献、複合型糖鎖の全合成方法についてはSeifert et al., Angewandte Chemie International Edition 39: 531-534 (2000)、並びにO結合型糖鎖の全合成方法についてはNakahara et al., Tetrahedron Letter 35: 3321-3324 (1994) を参考にすることができる。混成型糖鎖の全合成は、高マンノース型糖鎖及び複合型糖鎖についての上記文献記載の方法を併用することで行われ得る。
なお、本発明の合成中間体の作製に際しては、式(I)、(Ia)、(Ib)、(Ic)、(II)で表される化合物における複数のP(nは、A、B、及び存在する場合、C、Dのうちのいずれかを示す)において、脱保護反応における反応性が異なるヒドロキシ保護基を用いることが好ましい。例えば、反応性が異なるヒドロキシ保護基としては、1)保護反応後にエーテル部分を形成するヒドロキシ保護基(以下、必要に応じて、エーテル系保護基と省略する:例、メトキシ置換ベンジル基、ニトロ基置換ベンジル基、トリチル基、ベンジル基、メトキシメチル基、メトキシエトキシメチル基)、2)アシル系保護基(例、アセチル基、クロロアセチル基、レブリノイル基)、3)シリル系保護基(例、TBDMS、TBDPS、TMS、TIPS基)が挙げられる。また、上述の同カテゴリーに属するヒドロキシ保護基であっても、脱保護条件が異なるものが存在するので、そのようなヒドロキシ保護基を利用することもできる。例えば、2種のヒドロキシ保護基を用いる場合、反応性が異なるヒドロキシ保護基の組合せとしては、a1)エーテル系保護基とアシル系保護基との組合せ、a2)エーテル系保護基とシリル系保護基との組合せ、a3)アシル系保護基とシリル系保護基との組合せ、a4)脱保護条件が異なる2種のエーテル系保護基の組合せ、a5)脱保護条件が異なる2種のアシル系保護基の組合せ、a6)脱保護条件が異なる2種のシリル系保護基の組合せが挙げられる。また、3種のヒドロキシ保護基を用いる場合、反応性が異なるヒドロキシ保護基の組合せとしては、b1)エーテル系保護基、アシル系保護基及びシリル系保護基の組合せ、b2)脱保護条件が異なる2種のエーテル系保護基、及びアシル系保護基又はシリル系保護基の組合せ、b3)脱保護条件が異なる2種のアシル系保護基、及びエーテル系保護基又はシリル系保護基の組合せ、b4)脱保護条件が異なる2種のシリル系保護基、及びエーテル系保護基又はアシル系保護基の組合せ、b5)脱保護条件が異なる3種のエーテル系保護基の組合せ、b6)脱保護条件が異なる3種のアシル系保護基の組合せ、b7)脱保護条件が異なる3種のシリル系保護基の組合せが挙げられる。
(2.ライブラリ及びその製造方法)
本発明はまた、2種以上の本発明の保護化合物を含むライブラリを提供する。本発明のライブラリは、上記式(I)及び(I’)で表される糖鎖化合物、必要に応じて、さらに式(I’’)及び/又は式(I)で表される糖鎖化合物を含み得る:
式(I’)、(I’’)、(I)中、R’、R’’、R1nはそれぞれ独立してRと同義であり得、R’、R’’、R2nはそれぞれ独立してRと同義であり得、S’、S’’、SAnはそれぞれ独立してSと同義であり得、S’、S’’、SBnはそれぞれ独立してSと同義であり得る。n(整数)は’数を示し(即ち、n+1が本発明のライブラリが含む異種の保護化合物数を意味する)、例えば1以上、2以上、3以上、4以上又は5以上であってもよい。nはまた、例えば、9以下、7以下又は5以下であり得る。
本発明のライブラリに含まれる、上記式(I)及び(I)(上記の通りnは2以上)で表される化合物は、R、R1nが同一の糖鎖、及び/又はR、R2nが同一の糖鎖であり得る。このような化合物はまた、S、Sが異なる糖残基、及び/又はS、Sが異なる糖残基であり得、S、S、SAn、SBnがそれぞれ異なる糖残基であることもまた好ましい。このような化合物はさらに、R、R1n、R、R2nの少なくとも1つが保護用糖残基を末端に有する分岐状の糖鎖である場合、保護用糖残基の少なくとも1つ、好ましくは2つ、より好ましくは3つ、最も好ましくは全て、及びS、S、SAn、SBnがそれぞれ異なる糖残基であり得る。(I)としては、例えば、(Ia)、(Ib)、(Ic)が挙げられる。
本発明のライブラリは、複数種の本発明の保護化合物を含むものである限り特に限定されず、例えば、複数種の本発明の保護化合物を同一溶液(例、グリコシダーゼ反応溶液)中に含むもの、複数種の本発明の保護化合物を同一容器(プレート、チューブ)の同一又は異なる区画に含むもの(例、マルチウェルプレートの異なるウェルにそれぞれ含むもの)、複数種の本発明の保護化合物を同一基板(例、平面状のプレート、粒子等の支持体)上に固定したもの、複数種の本発明の保護化合物が異なる基板上に固定されている基板の集合体、あるいは複数種の本発明の保護化合物が同一分子(例、ペプチド)に結合したもの(例、異なるアミノ酸残基に対して複数種の糖鎖化合物が結合しているペプチド、タンパク質)が挙げられる。
本発明のライブラリは、上記式(I)の糖鎖化合物と、上記式(I)(例、式(I’)、(I’’))の糖鎖化合物とを組合せることにより製造できる。本発明はまた、このような製造方法を提供する。
上記式(I)の糖鎖化合物と、上記式(I)の糖鎖化合物とを組合せる工程は、例えば、a)同一溶液又は容器の同一又は異なる区画に対する、複数種の保護化合物の添加、b)同一基板に対する、複数種の保護化合物の固定化、c)異なる基板に対する、複数種の保護化合物の固定化、及びこのような保護化合物が固定化された基板の集合化、d)同一分子に対する、複数種の保護化合物の結合化、あるいはe)複数種の保護化合物の重合(例、複数種の保護化合物と結合しているアミノ酸残基の重合による、糖ペプチド又は糖タンパク質の形成)などにより行われ得る。
(3.保護された糖鎖化合物からの所定の糖鎖化合物の製造方法、及び当該方法により得られる糖鎖化合物)
本発明はまた、本発明の保護化合物、又は2種以上の保護化合物を含むライブラリをグリコシダーゼにより処理することを含む、糖鎖化合物の製造方法を提供する。グリコシダーゼとしては、上述したエキソ型グリコシダーゼ、エンド型グリコシダーゼが挙げられる。また、本発明の保護化合物をグリコシダーゼで処理する場合、最初に反応させるグリコシダーゼとしては、エキソ型グリコシダーゼのみならず、2以上の糖単位を除去可能なエンド型グリコシダーゼもまた使用できる。例えば、本発明の保護化合物が式(II)で表される化合物である場合、2糖単位(例、S及びManから構成される2糖単位)を除去可能なエンドグリコシダーゼを反応させることもまた好ましい。本処理に供される保護化合物及びそれを含むライブラリは、単離及び/又は精製されたものであり得る。
グリコシダーゼによる、本発明の保護化合物、又は2種以上の保護化合物を含むライブラリの処理は、自体公知の方法により行われる。例えば、処理は、用いるグリコシダーゼが活性を示す、所望の産物が得られる適切な条件(例、pH、塩濃度、温度、反応時間)下で行われ得る。このような処理はまた、グリコシダーゼ固定化カラムを用いて行われてもよい。本発明の保護化合物、又は2種以上の保護化合物を含むライブラリをグリコシダーゼ固定化カラムに通し、次いで溶出液を回収することにより、所望の糖鎖化合物を容易に得ることができる。このような処理はさらに、同時に並行して行われてもよい。例えば、本発明の保護化合物を同一容器の異なる区画(例、マルチウェルプレートの異なるウェル)に分注し、次いで各区画に対して異なるグリコシダーゼ又はグリコシダーゼカクテルを添加することにより、所望の糖鎖化合物を得ることができる。
本発明はまた、このような製造方法により得られる糖鎖化合物(グリコシダーゼ分解物)及びこのような糖鎖化合物を2種以上含むライブラリを提供する。
例えば、本発明の糖鎖化合物は、本発明の保護化合物又はそのライブラリをグリコシダーゼにより処理することにより得られる、天然に存在しない糖鎖化合物であり得る。より詳細には、本発明の糖鎖化合物は、(a)(a1)式(II)で表されるS、Sの糖残基の一方又は双方を保持する、保護された高マンノース型糖鎖化合物のグリコシダーゼ分解物、(a2)式(II)で表される、SとしてD−グルコース以外の糖残基を保持する、保護された高マンノース型糖鎖化合物のグリコシダーゼ分解物、(b)式(Ib)〔式中、S〜S11、Lは、天然複合型糖鎖と同一であり、S、S、S、Sは任意の糖残基である〕で表される、S、S、S、Sのうちの少なくとも1つ、少なくとも2つ又は3つの糖残基を保持する、保護された複合型糖鎖化合物のグリコシダーゼ分解物、(c)式(Ic)〔式中、S〜S、Lは天然O結合型糖鎖と同一であり、S、Sは任意の糖残基である〕で表される、S、Sの糖残基の一方を保持する、保護されたO結合型糖鎖化合物のグリコシダーゼ分解物であり得る。本発明の保護化合物を一旦合成し、それをグリコシダーゼにより特異的に切断することで、糖鎖化合物を特異的かつ系統的に作製するという本発明者らのアイデアなしには、このような糖鎖化合物を作製する動機付けはない。一方、本発明者らの上記アイデアによれば、グリコシダーゼによる天然糖鎖生成反応における中間体として、このような糖鎖化合物を製造する動機付けが生まれる。
例えば、天然糖鎖生成反応における中間体としては、以下に示される糖鎖化合物が好ましい(S、S、S、Xは上述の通りである。但し、上記(a1)、(a2)のいずれかの条件を満たす)。
本発明はまた、本発明の保護化合物を合成し、次いで当該保護化合物をグリコシダーゼで処理することを含む、糖鎖化合物の製造方法を提供する。保護化合物の合成、及びグリコシダーゼによる本発明の保護化合物の処理は、上述の通り行われ得る。本発明の保護化合物は、例えば、天然に存在する糖鎖と同一構造を有する糖鎖の非還元末端に少なくとも1つの糖残基が導入されている、保護された糖鎖化合物であってもよい。導入される糖残基数は特に限定されるものではないが、天然に存在する糖鎖と同一構造を有する糖鎖の非還元末端数を上限とし、例えば、4以下、3以下、好ましくは1又は2であり得る。
天然に存在する糖鎖は、種々の生理活性を示し得る。例えば、天然に存在する糖鎖は、タンパク質の高次構造形成、タンパク質分解のシグナルなどの役割を担い、また、小胞体内でのタンパク質品質管理機構の異常は、タンパク質のフォールディング異常に起因する疾患(例、アルツハイマー病)に関与すると考えられており、さらには、疾患への糖鎖合成酵素欠損の関与もまた報告されている(例えば、Helenius et al., Science 291: 2364-2369 (2001); Ellgaard et al., Nature Reviews, Molecular Cell Biology 4: 181-191 (2003); McCracken et al., BioEssays 25: 868-877 (2003) 参照)。従って、このようなグリコシダーゼ分解物(天然に存在しない糖鎖化合物)は、例えば、天然に存在する上述の生理活性糖鎖の合成における中間体として有用である。
(4.試薬及びキット)
本発明は、本発明の保護化合物若しくはその塩又はそれらのライブラリ、あるいはそれらの任意のグリコシダーゼ分解物、あるいは本発明の保護化合物の合成中間体を含む、試薬及びキットを提供する。
例えば、本発明の試薬及びキットは、本発明の保護化合物及びライブラリ、又はそれらの任意のグリコシダーゼ分解物を含む場合、グリコシダーゼをさらに含んでいてもよい。本発明のキットに含まれるグリコシダーゼは、1種以上(例、2、3又は4種)である限り特に限定されないが、保護用糖残基を切断し得る異なるエキソ型グリコシダーゼを2種以上、好ましくは3種以上又は4種以上含んでいてもよい。
本発明の試薬及びキットは、例えば、糖鎖化合物の選択的かつ系統的な作製に有用である。
なお、本明細書中で使用される置換基、保護基および試薬の略語は次の通りである。
Bn:ベンジル
Ac: アセチル
All:アリル(allyl)
Phth: フタロイル
Bz: ベンゾイル
CA: モノクロロアセチル酢酸
AgOTf: 銀トリフラート
Me: メチル
本明細書中で挙げられた特許および特許出願明細書を含む全ての刊行物に記載された内容は、本明細書での引用により、その全てが明示されたと同程度に本明細書に組み込まれるものである。
以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、これらは単なる例示であって、本発明の範囲を何ら限定するものではない。
(材料)
以下の実験に用いたA. oryzae由来ガラクトシダーゼ、 Jack beans由来α-マンノシダーゼ、 Jack beans 由来GlcNAc’aseは、Sigmaから購入した。A. oryzae由来グルコシダーゼIIは、以下のようにして得た。Aspergillus oryzae RIB40(ATCC number: 42149)菌を 100 ml DPY (2% dextrin, 1% polypeptone, 0.5% yeast extract, 0.5% KH2PO4, 0.05% MgSO4・7H2O, pH 5.5) 培地にて30℃ 、18時間培養後、菌体を回収した。菌体を液体窒素で凍結後粉砕、6 ml の抽出バッファー (50 mM Tris (pH 7.5), 2 mM PMSF, 1:100 PIC (protein inhibitor cocktail))に溶かした。遠心分離 (3,000×g, 10分間, 4℃) にて不溶物を除去後、超遠心分離 (20,000×g, 20分間, 4℃) することにより膜画分を回収した。得られた膜画分を1% Triton X-100 を含む抽出バッファー600μLに溶かし、粗酵素液として使用した。
製造例1:[GlcNAc-マンノビオシル1-6(ガラクトシルマンノビオース)1-3マンノシル] 1-6グルコシル・トリマンノシル・コア・トリサッカリドの合成
標記化合物を、下記の方法に従い合成した。なお、参考文献は、以下の通りである。
1) Matsuo, I., Wada, M., Manabe, S., Yamaguchi, Y., Otake, K., Kato, K., Ito, Y. (2003) J. Am. Chem. Soc., 125, 3402.
2) Matsuo, I., Ito, Y. (2003) Carbohydr. Res., 338, 2163.
3) Matsuo, I., Kashiwagi, T., Totani, K., Ito, Y. (2005) Tetrahedron Lett., 46, 4197.
4) Ito, Y., Ohnishi, Y., Ogawa, T. (1998) Synlett, 1102.
5) Matsuo, I., Wada, M., Ito, Y. (2002) Tetrahedron Lett., 43, 3273.
6) Matsuo, I., Isomura, M., Miyazaki, T., Sakakibara, T., Ajisaka, K. (1998) Carbohydr Res., 305, 401.
7) Matsuo, I., Miyazaki, T., Isomura, M., Sakakibara, T., Ajisaka, K. (1998) J. Carbohydr. Chem., 17, 1249.
1.1.マンノビオース (mannobiose) の合成
乾燥トルエン (5 mL) 中のSMe-マンノースアクセプター (276.1 mg, 0.573 mmol)、AgOTf (288.2 mg, 1.12 mmol) 及びモレキュラーシーブ4A (5 g) の混合液を、-40℃で30分間攪拌した。乾燥トルエン (5 mL) 中のCl-ドナー (298.0 mg, 0.577 mmol) の溶液を加え、混合液を-10℃で1時間、周囲温度で12時間攪拌した。反応をTEA (1 mL) で停止した。反応混合液をEtOAcで希釈し、シリカゲルを通してろ過した。ろ液をNaHCO3水溶液及びブライン (brine) で連続して洗浄し、Na2SO4で乾燥させ、真空中で濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー (トルエン:EtOAc, 20:1〜9:1) により精製し、マンノビオース (310.7 mg, 57 %) を得た。
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 7.326-7.174 (m, 30H), 5.205 (bs, 1H), 5.136 (bs, 1H), 4.905 (d, 1H, J = 11.0 Hz), 4.832 (d, 1H, J = 10.7 Hz), 4.670-4.487 (m, 11H), 4.368 (bd, 1H, J = 11.7 Hz), 4.257 (dd, 1H, J = 5.3 and 11.7 Hz), 4.291-4.047 (m, 2H), 3.965-3.765 (m, 6H), 3.678 (bd, 1H, J = 11.2 Hz), 2.086 (s, 3H), 2.101 (s, 3H); MALDI-TOF mass calcd for C57H62O11SNa (M + Na)+977.4, found 977.9.
1.2.マンノビオースアクセプターの合成
THF:MeOH (4:1, 5 mL) 中のマンノビオース (310.7 mg, 0.325 mmol) の攪拌溶液に、1M NaOMe/MeOH (15μL) を0℃で加えた。混合液を1時間攪拌し、1N HCl (20μL) で中和した。反応混合液をEtOAcで希釈し、NaHCO3水溶液及びブラインで連続して洗浄し、Na2SO4で乾燥させ、真空中で濃縮し、マンノビオースアクセプター (279.7 mg, 94 %) を得た。
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 7.348-7.172 (m, 30H), 5.214 (bs, 1H), 5.130 (bs, 1H), 4.907 (d, 1H, J = 11.2 Hz), 4.822 (d, 1H, J = 10.4 Hz), 4.669-4.490 (m, 10H), 4.052 (bs, 1H), 3.930-3.686 (m, 11H), 2.093 (s, 3H); MALDI-TOF mass calcd for C55H62O11SNa (M + Na)+ 935.4, found 935.9.
1.3.マンノビオースアクセプター及びガラクトースドナーのカップリング
乾燥トルエン (5 mL) 中のマンノビオースアクセプター (279.7 mg, 0.306 mmol)、AgOTf (500.0 mg, 1.946 mmol) 及びモレキュラーシーブ4A (2 g) の混合液を、-40℃で30分間攪拌した。乾燥CH2Cl2(5 mL) 中のCl-ガラクトースドナー (317.2 mg, 0.516 mmol) の溶液を加え、混合液を-10℃で1時間及び40℃で24時間攪拌した。反応をTEA (1 mL) で停止した。反応混合液をEtOAcで希釈し、セライト (Celite) を通してろ過した。ろ液をNaHCO3 水溶液及びブラインで連続して洗浄し、Na2SO4で乾燥させ、真空中で濃縮した。残渣をPTLC (トルエン:EtOAc, 5:1) により精製し、ガラクトシルマンノビオースドナー (295.3 mg, 65 %) を得た。
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 8.104-7.151 (m, 50H), 5.598 (bd, 1H, J = 3.6 Hz), 5.891 (dd, 1H, J = 8.0 and 10.0 Hz), 5.580 (dd, 1H, J = 3.6 and 10.4 Hz), 5.199 (bs, 1H), 5.055 (bs, 1H), 4.802-4.772 (m, 2H), 4.663-4.261 (m, 14H), 4.102-3.674 (m, 11H), 2.118 (s, 3H); MALDI-TOF mass calcd for C89H86O19SNa (M + Na)+1513.54, found 1514.19.
1.4.マンノビオースアクセプター及びGlcNAcドナーのカップリング
乾燥CH2Cl2(5 mL) 中のCp2HfCl2 (269.5 mg, 0.710 mmol)、AgOTf (365.5 mg, 1.423 mmol)、及びモレキュラーシーブ4A (3 g) の攪拌混合液に、乾燥CH2Cl2 (10 mL) 中のマンノビオースアクセプター (541.1 mg, 0.593 mmol) 及びGlcNAc-ドナー (354.0 mg, 0.609 mmol) の溶液を-78℃で加えた。混合液を2時間及び-40℃で1時間攪拌した。シリカゲルを通すことにより不溶性物質を除去し、次いでろ液をEtOAcで希釈し、ブライン、NaHCO3水溶液及びブラインで連続して洗浄し、Na2SO4で乾燥させ、真空中でエバポレートした。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー (トルエン:EtOAc, 15:1〜10:1) により精製し、化合物GlcNAc-マンノビオースドナー (393.4 mg, 45 %) を得た。
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 7.347-6.830 (m, 49H), 5.246 (d, 1H, J = 8.4 Hz), 5.128 (bs, 1H), 4.934 (bs, 1H), 4.750-4.273 (m, 18H), 4.200 (bd, 1H, J =10.4Hz), 3.994 (m, 2H), 3.786-3.611 (m, 15H), 2.111 (s, 3H); MALDI-TOF mass calcd for C90H91O16NSNa (M + Na)+ 1496.6, found 1497.5.
1.5.3-アセチル化マンノースアクセプターの合成
6-CA-マンノース (533.6 mg, 1.008 mmol) をピリジン (0.8 mL) に溶解した。混合液に無水酢酸 (0.4 mL) を0℃で加え、2時間攪拌した。反応混合液を真空中で濃縮した。残渣をCH2Cl2(5 mL) 中のNBS (535.0 mg, 3.009 mmol) 及びDAST (135μL, 1.022 mmol) で-40℃にて処理した。反応混合液を-30℃で1時間、次いで周囲温度で攪拌した。12時間後、MeOH (0.5 mL) を加え、混合液をEtOAcで希釈し、NaHCO3 水溶液及びブラインで連続して洗浄した。有機層をNa2SO4で乾燥させ、真空中で濃縮した。残渣をDABCO (432 mg) で50℃にて2時間処理した。混合液をAmberlist 15 E [H+] で中和した。不溶性物質をろ過により除去し、ろ液を真空中で乾燥させた。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー (トルエン:EtOAc, 10:1〜4:1) により精製し、3-アセチル化マンノースアクセプター (117.3 mg, 28%) を得た。
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 7.377-7.282 (m, 10H), 5.525 (dd, 1H, J = 2.0 and 50.4 Hz), 5.216 (m, 1H), 4.745-4.617 (m, 4H), 4.092 (t, 1H, J = 9.6 Hz), 4.006 (bs, 1H), 3.863-3.758 (m, 3H), 1.976 (s, 3H); MALDI-TOF mass calcd for C22H25O6FNa (M + Na)+ 427.2, found 427.7.
1.6.GlcNAcマンノビオースドナー及び3-アセチル化マンノースアクセプターのカップリング
乾燥トルエン (20 mL) 中の3-アセチル化マンノースアクセプター (45.0 mg, 0.111 mmol)、GlcNAc-マンノビオースドナー (181.0 mg, 0.123 mmol)、及びモレキュラーシーブ4A (2 g) の溶液を0℃で1時間攪拌し、次いでClCH2CH2Cl中の1M MeOTf (0.2 mL, 0.2 mmol) を加えた。反応混合液を40℃で24時間攪拌した。反応をTEA (0.2 mL) で0℃にて停止させた。混合液をEtOAcで希釈し、セライトを通してろ過した。ろ液をNaHCO3水溶液及びブラインで洗浄した。有機層をNa2SO4で乾燥させ、真空中で濃縮した。残渣をPTLC (トルエン:EtOAc, 5/1) により精製し、GlcNAc-マンノビオシル3-アセチル化マンノース (172.8 mg, 84%) を得た。
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 7.361-6.840 (m, 59H), 5.750 (bd, 1H, J = 50.4 Hz), 5.240 (d, 1H, J = 8.4 Hz), 4.884-3.500 (m, 48H), 1.974 (s, 3H); MALDI-TOF mass calcd for C111H112O22NFNa (M + Na)+ 1854.06, found 1854.5.
1.7.GlcNAc-マンノビオシル3-OHマンノースアクセプターの合成
THF:MeOH (5:1, 6 mL) 中のGlcNAc-マンノシル3-アセチル化マンノース (172.8 mg, 0.932 mmol) の攪拌溶液に、1M NaOMe/MeOH (100μL) を0℃で加えた。混合液を1時間攪拌し、1N HCl (200μL) で中和した。反応混合液をEtOAcで希釈し、NaHCO3水溶液及びブラインで連続して洗浄し、Na2SO4で乾燥させ、真空中で濃縮し、GlcNAc-マンノビオシル3-OHマンノースアクセプター (98.0 mg, 58 %) を得た。
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 7.361-6.840 (m, 59H), 5.809 (bd, 1H, J = 49.2 Hz), 5.238 (d, 1H, J = 8.4 Hz), 4.904 (bs, 2H), 4.849-4.752 (m, 6H), 4.645-4.253 (m, 17H), 4.183 (bd, 1H, J = 10.8 Hz), 4.109 (bd, 1H, J = 9.2 Hz), 3.974-3.506 (m, 22H), 2.395 (bd, 1H, J = 9.6 Hz); MALDI-TOF mass calcd for C109H110O21NFNa (M + Na)+ 1810.8, found 1812.5.
1.8.GlcNAc-マンノビオシル3-OHマンノースアクセプター及びガラクトシルマンノビオースドナーのカップリング
乾燥トルエン (20 mL) 中のGlcNAc-マンノビオシル3-OHマンノースアクセプター (98.0 mg, 0.055 mmol)、ガラクトシル-マンノビオースドナー (182.0 mg, 0.122 mmol)、及びモレキュラーシーブ4A (2 g) の混合液を、0℃で1時間攪拌し、次いでClCH2CH2Cl中の1M MeOTf (0.6 mL, 0.6 mmol) を加えた。反応混合液を40℃で24時間攪拌した。反応をTEA (1 mL) で 0℃にて停止させた。混合液をEtOAcで希釈し、セライトを通してろ過した。ろ液をNaHCO3水溶液及びブラインで洗浄した。有機層をNa2SO4で乾燥させ、真空中で濃縮した。残渣をPTLC (トルエン: EtOAc, 7:1) により精製し、GlcNAc-マンノビオシル1-6(ガラクトシルマンノビオース)1-3マンノースドナー (93.3 mg, 44%) を得た。
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 8.104-6.804 (m, 109H), 5.959-5.916 (m, 2H), 5.683- 5.541 (m, 2H), 5.261-5.104 (m, 3H), 4.862-3.419 (m, 76H); MALDI-TOF mass calcd for C197H192O40NFNa (M + Na)+ 3253.29, found 3255.8.
1.9.3-OHトリマンノシル・コア・トリサッカリドアクセプターの合成
トリマンノシル・コア・トリサッカリド (trimannosyl core trisaccharide) (1.09 g, 0.422 mmol) (Matsuo et al., J. Am. Chem. Soc. 125: 3402 (2003) 参照) を、10% HF/ピリジンを含有するDMF (3 mL) 中に溶解し、3 mLテフロン反応容器に移した。これを、1.0 GPaまで加圧し、30℃で12時間放置した。混合液をEtOAcで希釈し、NaHCO3水溶液及びブラインで連続して洗浄した。有機層をNa2SO4で乾燥させ、真空中で濃縮した。合わせた混合液をシリカゲルカラムクロマトグラフィー (ヘキサン:EtOAc, 5:1〜1:1) により精製し、化合物3-OHトリマンノシル・コア・トリサッカリドアクセプター (0.939 g, 収率94 %) を得た。
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 7.855-6.707 (m, 73H), 5.640-5.543 (m, 1H), 5.336-5.173 (m, 5H), 5.008-4.794 (m, 8H), 4.687-3.361 (m, 66H), 3.278 (bd, 1H, J = 9.6 Hz), 3.177 (bd, 1H, J= 9.6 Hz), 2.893-2.831 (m, 1H), 2.011 (s, 3H); MALDI-TOF mass calcd for C154H160O34N2Na (M + Na)+ 2604.1, found 2603.7.
1.10.3-OHトリマンノシル・コア・トリサッカリドアクセプター及びグルコースドナーのカップリング
乾燥トルエン/エーテル (2:1, 15 mL) 中のCp2HfCl2(225.0 mg, 0.528 mmol)、AgOTf (319.0 mg, 1.056 mmol)、及びモレキュラーシーブ4A (2.6 g) の攪拌混合液に、乾燥トルエン (5 mL) 中の3-OHトリマンノシル・コア・トリサッカリドアクセプター (363.9 mg, 0.141 mmol) 及びグルコースドナー (257.3 mg, 0.440 mmol) の溶液を-40℃で加えた。混合液を2時間及び-10℃で12時間攪拌した。シリカゲルを通すことにより不溶性物質を除去し、次いでろ液をEtOAcで希釈し、ブライン、NaHCO3水溶液及びブラインで連続して洗浄し、Na2SO4で乾燥させ、真空中でエバポレートした。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー (トルエン:EtOAc, 15:1〜10:1) により精製し、化合物グルコシル・トリマンノシル・コア・トリサッカリド(glucosyl trimannosyl core trisaccharide) (295.5 mg, 67 %) を得た。
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 7.985-6.727 (m, 93H), 6.070 (t, 1H, J= 10.0 Hz), 5.641-5.522 (m, 2H), 3.367-5.332 (m, 2H), 5.220-5.514 (m, 3H), 5.006-4.703 (m, 5H), 4.674-3.359 (m, 66H), 3.278 (bd, 1H, J = 8.8 Hz), 3.175 (bd, 1H, J= 10.4 Hz), 2.903-2.843 (m, 1H), 1.999 (s, 3H); MALDI-TOF mass calcd for C188H188O42N2Na (M + Na)+ 3168.2, found 3169.5.
1.11.グルコシル・トリマンノシル・コア・トリサッカリドアクセプターの合成
乾燥CH3CN中のグルコシル・トリマンノシル・コア・トリサッカリド (237.1 mg, 0.075 mmol) の攪拌溶液に、p-トルエンスルホン酸・一水和物 (72.3 mg, 0.381 mmol) を加え、室温で1時間攪拌した。反応をTEA (0.1 mL) で停止させ、真空中で濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー (トルエン:EtOAc, 5:1) により精製し、グルコシル・トリマンノシル・コア・トリサッカリドアクセプター (221.8 mg, 96%) を得た。
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 7.221-6.715 (m, 91H), 6.020 (t, 1H, J=7.2 Hz), 5.651-5.541 (m, 2H), 5.367-3.171 (m, 85H), 2.939 (m, 1H), 1.965 (s, 3H); MALDI-TOF mass calcd for C182H180O42N2Na (M + Na)+ 3088.2, found 3089.9.
1.12.グルコシル・トリマンノシル・コア・トリサッカリドアクセプター及びGlcNAc-マンノビオシル1-6(ガラクトシルマンノビオース)1-3マンノースドナーのカップリング
乾燥トルエン (5 mL) 中のCp2HfCl2(22.7 mg, 0.060 mmol)、AgOTf (36.8 mg, 0.143 mmol)、及びモレキュラーシーブ4A (1.8 g) の攪拌混合液に、乾燥トルエン (10 mL) 中のグルコシル・トリマンノシル・コア・トリサッカリドアクセプター (104.6 mg, 0.0323 mmol) 及びGlcNAc-マンノビオシル1-6(ガラクトシルマンノビオース)1-3マンノースドナー (93.3 mg, 0.030 mmol) の溶液を-30℃で加えた。混合液を0℃まで徐々に温め、4時間攪拌した。反応をTEA (1 mL) で停止させた。セライトを通すことにより不溶性物質を除去し、ろ液をEtOAcで希釈し、ブライン、NaHCO3水溶液及びブラインで連続して洗浄した。溶液をNa2SO4で乾燥させ、真空中で濃縮した。残渣をPTLC (トルエン:EtOAc, 5:1) により精製し、[GlcNAc-マンノビオシル1-6(ガラクトシルマンノビオース)1-3マンノシル]1-6グルコシル・トリマンノシル・コア・トリサッカリド (42.7 mg, 23%) を得た。
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 8.064-6.596 (m, 197H), 6.089 (t, 1H, J = 9.6 Hz), 5.092 (d, 1H, J = 3.2 Hz), 3.834 (dd, 1H, J = 10.0 and 8.4 Hz), 5.611-5.466 (m, 3H), 5.339-5.142 (m, 9H), 4.985-3.164 (m, 155H), 3.051 (bd, 1H, J = 10 Hz), 2.109 (s, 3H); MALDI-TOF mass calcd for C379H371O82N3Na (M + Na)+6298.5, found 6300.2.
1.13.[GlcNAc-マンノビオシル1-6(ガラクトシルマンノビオース)1-3マンノシル] 1-6グルコシル・トリマンノシル・コア・トリサッカリドの脱保護
1 mLのエチレンジアミンを含有するn-ブタノール (2 mL) 中の[GlcNAc-マンノビオシル1-6(ガラクトシルマンノビオース)1-3マンノシル]1-6グルコシル・トリマンノシル・コア・トリサッカリド (42.7 mg, 0.0068 mmol) の溶液を、90℃で15時間攪拌した。揮発物を真空中でのエバポレーションにより除去し、残渣をピリジン (3 mL) に溶解した。溶液をAc2O (1.5 mL) で0℃にて5時間処理し、真空中でエバポレートした。残渣をEtOAcで希釈し、ブライン、1 N HCl、ブライン、NaHCO3水溶液及びブラインで連続して洗浄した。溶液をNa2SO4で乾燥させ、真空中で濃縮し、アセチル化化合物を得た。アセチル化化合物を、MeOH (10 mL) 中のPd(OH)2-C (20 wt. %, 50 mg) で室温にて24時間処理した。セライトを通して混合液をろ過した。ろ液を真空中で濃縮した。Sep-Pak C18カートリッジ (500 mg, Waters, H2O:MeOH, 100:0〜20:1) を用いて残渣を精製し、14糖であるTM (14 mg, 85%) を得た。
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 5.185 (bs, 3H), 5.127 (d, 1H, J = 3.6 Hz), 4.966 (bs, 1H), 4.934 (bs, 1H), 4.910 (bs, 1H), 4.898 (bs, 1H), 4.774 (bs, 1H), 4.266 (d, 1H, J = 8.4 Hz), 4.464 (d, 1H, J = 8.0 Hz), 4.374 (d, 1H , J = 7.6 Hz), 4.309 (d, 1H, J = 8.0Hz), 4.109 (bs, 2H), 3.990-3.247 (m, H), 1.946 (s, 3H), 1.940 (s, 3H), 1.902 (s, 3H), 1.410 (m, 1H), 0.735 (t, 3H, J = 7.6 Hz); MALDI-TOF mass calcd for C93H157O71N3Na (M + Na)+ 2474.9, found 2474.6.
製造例2:グリコシダーゼを用いる末端糖残基の選択的切断
糖鎖の非還元末端側に各々独立に除去できる保護基が導入された、糖鎖ライブラリに必要な全ての構造を含む出発糖鎖化合物を調製することにより、グリコシダーゼの選択性に依存することなく、該出発糖鎖化合物を目的糖鎖化合物へと変換することが可能になる。例えば、上記1.13.で製造された、糖鎖の非還元末端側に各々独立に除去できる保護基が導入された高マンノース型糖鎖 (14糖)、又はその誘導体 (例、上記1.12.で製造された化合物) を、グリコシダーゼにより戦略的に切断することで、糖鎖ライブラリを構築できる(図1)。上記1.13. (及び1.12.) で製造された高マンノース型糖鎖化合物は、図2に示されるグリコシダーゼ切断部位を有するので、各種のグリコシダーゼを適宜反応させることで、以下の表1〜4 (但し、一部の化合物は重複) に示されるような種々の糖鎖が生成可能である。
そこで、先ず、上記1.13.で製造された高マンノース型糖鎖の非還元末端に導入された保護基 (糖残基) が実際に、各々独立に除去できるかを検討した。
100μLの反応混合液 (14糖; 1 mg, Jack beans 由来GlcNAc’ase (5 U), A. oryzae 由来ガラクトシダーゼ (50 U) 又はA. oryzae由来グルコシダーゼII (A. oryzae膜画分200μL) のいずれかの酵素, DMNM (デオキシマンノノジリマイシン), 40mM 酢酸バッファー (pH 4.5)) を37℃にて、所定の日数インキュベートした。反応を、100℃で1分間加熱することにより停止させた。不溶性物質をultra-free (Millipore) によりろ過し、ろ液をSep-Pakカートリッジ (Waters, H2O:MeOH, 100:0〜70:30) により精製した(図3A〜B)。
その結果、高マンノース型糖鎖 (14糖) の非還元末端から、D-グルコースが除去された糖鎖化合物 (上記式 (IIb4’) で表される化合物)、D-ガラクトースが除去された糖鎖化合物 (上記式 (IIa4’) で表される化合物) 及びN-アセチル-D-グルコサミンが除去された糖鎖化合物 (上記式 (IIa1’) で表される化合物)の生成がそれぞれ確認された(図3B)。
・D-グルコースが除去された糖鎖化合物
C87H147N3O66K1 Calcd for 2328.8, Found 2328.4
・D-ガラクトースが除去された糖鎖化合物
C87H147N3O66Na1 Calcd for 2312.8, Found 2313.5
・N-アセチル-D-グルコサミンが除去された糖鎖化合物
C85H144N2O66Na1 Calcd for 2271.8, Found 2271.7
製造例3:GM9 (上記式 (IIa5’) で表される化合物) の作製
100μLの反応混合液 (14糖; 1 mg, Jack beans 由来GlcNAc’ase (0.3 U), A. oryzae 由来ガラクトシダーゼ (30 U), 10mM DMNM 1μL, 40mM 酢酸バッファー (pH 4.5)) を37℃で10日間インキュベートした。反応を、100℃で1分間加熱することにより停止させた。不溶性物質をultra-free (Millipore) によりろ過し、ろ液をSep-Pakカートリッジ (Waters, H2O:MeOH, 100:0〜70:30) により精製して、GM9 (1 mg, 収量)を得た。
・GM9 (上記式 (IIa5’) で表される化合物)
Matsuo et al., J. Am. Chem. Soc. 125: 3402 (2003) に記載の化合物とNMRおよびMSの値の一致を確認した。
製造例4:GM8B (上記式 (IIa9’) で表される化合物) の作製
100μLの反応混合液 (14糖; 1 mg, A. oryzae由来ガラクトシダーゼ (50U), 40mM酢酸バッファー (pH 4.5)) を37℃で7日間インキュベートした。混合液にα1-2 マンノシダーゼ (A. saitoi, 0.003 U) を加え、12時間インキュベートし、次いでGlcNAc’ase (Jack beans, 0.3 U) 及び10 mM DMN (デオキシノジリマイシン) 1μLを加えた。反応混合液を12時間インキュベートした。100℃で1分間加熱することにより反応を停止させた。不溶性物質をultra-free (Millipore) によりろ過し、ろ液をSep-Pakカートリッジ (Waters, H2O:MeOH, 100:0〜70:30) でろ過して、GM8B (1 mg, 収量)を得た(図4A〜C)。
・GM8B (上記式 (IIa9’) で表される化合物)
Matsuo et al., Carbohydr. Res. 338: 2163 (2003)に記載の化合物とNMRおよびMSの値の一致を確認した。
また、GM8Bの作製における中間体として、上記式 (IIa4’) 及び (IIa8’) で表される化合物の生成も確認された(図4B、C)。
・上記式 (IIa8’) で表される化合物
C81H137N3O61Na1 Calcd for 2150.8, Found 2151.5
製造例5:GM8C (上記式 (IIa6’) で表される化合物) の作製
100μLの反応混合液 (14糖; 1 mg, Jack beans由来GlcNAc’ase (0.3 U), A. saitoi由来α1-2 Mannosidase (0.001 U), 40mM 酢酸バッファー (pH 4.5)) を37℃で24時間インキュベートした。混合液に、A. oryzae由来ガラクトシダーゼ (30U) 及びDMNMを加えた。反応混合液を10日間インキュベートし、次いで100℃で1分間加熱することにより反応を停止させた。不溶性物質をultra-free (Millipore) によりろ過し、ろ液をSep-Pakカートリッジ (Waters, H2O:MeOH, 100:0〜70:30) により精製して、GM8C (1 mg, 収量) を得た。
・GM8C (上記式 (IIa6’) で表される化合物)
C73H124N2O56Na1 Calcd for 1947.7, Found 1948.9
また、GM8Cの作製における中間体として、上記式 (IIa1’) 及び (IIa2’) で表される化合物の生成も確認された。
・上記式 (IIa2’) で表される化合物
C79H134N2O61Na1 Calcd for 2109.7, Found 2109.9
製造例6:GM7 (上記式 (IIa10’) で表される化合物) の作製
100μLの反応混合液 (14糖; 1 mg, A. oryzae由来ガラクトシダーゼ (3 mg), Jack beans由来α-マンノシダーゼ (5μL), 40mM 酢酸バッファー (pH 4.5)) を37℃で7分間インキュベートした。混合液にJack beans 由来GlcNAc’ase (0.3 U) 及びA. saitoi由来α1-2マンノシダーゼ (0.001 U) を加え、24時間インキュベートした。100℃で1分間加熱することにより反応を停止させた。不溶性物質をultra-free (Millipore) によりろ過し、ろ液をSep-Pakカートリッジ (Waters, H2O:MeOH, 100:0〜70:30) により精製してGM7を得た(図5A〜C)。
・GM7 (上記式 (IIa10’) で表される化合物)
C67H114N2O51Na1 Calcd for 1785.6, Found 1787.2
また、GM7の作製における中間体として、上記式 (IIa4’)、(IIa8’)及び (IIa9’) で表される化合物の生成も確認された(図5B)。
製造例7:GM7C (上記式 (IIa7’) で表される化合物) の作製
100μLの反応混合液 (14糖; 1 mg, Jack beans由来GlcNAc’ase (0.3 U), Jack beans由来α-マンノシダーゼ (0.5 U), 40mM酢酸バッファー (pH 4.5)) を37℃で12時間インキュベートした。混合液にA. oryzae由来ガラクトシダーゼ (30 U) を加え、26日間インキュベートし、次いで100℃で1分間加熱することにより反応を停止させた。不溶性物質をultra-free (Millipore) によりろ過し、ろ液をSep-Pakカートリッジ (Waters, H2O:MeOH, 100:0〜70:30) により精製して、GM7Cを得た(図6A〜B)。
・GM7C (上記式 (IIa7’) で表される化合物)
C67H114N2O51Na1 Calcd for 1785.6, Found 1787.2
また、GM7Cの作製における中間体として、上記式 (IIa1’)、(IIa2’) 及び (IIa3’) で表される化合物の生成も確認された(図6B)。
・上記式 (IIa3’) で表される化合物
C73H124N2O56Na1 Calcd for 1947.7, Found 1945.3
製造例8:M6Cの作製
600μLの反応混合液 (14糖; 1 mg, Jack beans由来GlcNAc’ase (0.6 U), A. oryzae由来グルコシダーゼII(膜画分)500μL, 40mM酢酸バッファー (pH 4.5)) を37℃で4日間インキュベートした。混合液にA. saitoi由来α1-2マンノシダーゼ (0.001 U) を加え、24時間インキュベートした。混合液にA. oryzae由来ガラクトシダーゼ (30 U) を加え、4日間インキュベートし、次いで100℃で1分間加熱することにより反応を停止させた。不溶性物質をultra-free (Millipore) によりろ過し、ろ液をSep-Pakカートリッジ (Waters, H2O:MeOH, 100:0〜70:30) により精製して、GM6Cを得た(図7A〜B)。
・GM6C
C55H94N2O41Na1 Calcd for 1461.5, Found 1463.4
また、M6Cの作製における中間体として、上記式 (IIb4’)、(IIb5’) 及び (IIb14’)で表される化合物の生成も確認された(図7B)。
・上記式 (IIb5’) で表される化合物
C79H134N2O61Na1 Calcd for 2109.7, Found 2111.3
・上記式(IIb14’) で表される化合物
C61H104N2O46Na1 Calcd for 1623.6, Found 1625.8
製造例9:高マンノース型糖鎖から生成する天然糖鎖と同一構造を有するその他の糖鎖化合物の作製
グルコシダーゼII、ガラクトシダーゼ、GlcNAc’ase、α-マンノシダーゼ及びα1-2マンノシダーゼを、各酵素に応じた適切な反応条件(例、上記の糖鎖化合物の作製で用いた反応条件)において、下記表5に記載される組合せで用いることにより、高マンノース型糖鎖から生成する天然糖鎖と同一構造を有する糖鎖化合物(例、表1参照)を作製する。
酵素名は以下の通りである。
Gal:β−ガラクトシダーゼ;MII:α1−2マンノシダーゼ;M:マンノシダーゼ;GN:グルコシダーゼII;EM:エンドマンノシダーゼ
製造例10:複合型糖鎖から生成する天然糖鎖と同一構造を有する糖鎖化合物の作製
先ず、糖鎖の非還元末端側に各々独立に除去できる保護基が導入された複合型糖鎖を合成する。このような複合型糖鎖は、Seifert et al., Angewandte Chemie International Edition 39: 531-534 (2000) に記載される方法、及び当該分野において周知の方法を用いることにより、容易に合成できる。次いで、糖鎖の非還元末端側に各々独立に除去できる保護基が導入された複合型糖鎖化合物を、グリコシダーゼにより戦略的に切断することで、糖鎖ライブラリを構築する(図8)。複合型糖鎖化合物は、図9Aに示される糖残基間の結合様式を有し、図9Bに示されるグリコシダーゼ切断部位を有するので、これらのグリコシダーゼを適宜反応させることで、種々の糖鎖が生成される。
製造例11:天然O結合型糖鎖と同一構造を有する糖鎖化合物の作製
糖鎖の非還元末端側に各々独立に除去できる保護基が導入された、糖鎖ライブラリに必要な全ての構造を含む出発糖鎖化合物を調製することにより、グリコシダーゼの選択性に依存することなく、該出発糖鎖化合物を目的糖鎖化合物へと変換することが可能である。天然O結合型糖鎖は、図10Aに示されるCORE1〜8の構造を有し、図10Bに示されるグリコシダーゼ切断部位を有する。従って、図10Cに示されるような、糖鎖の非還元末端側に各々独立に除去できる保護基が導入されたO結合型糖鎖化合物を作製し、図10Dに示されるようにグリコシダーゼで選択的に切断することで、天然O結合型糖鎖と同一構造を有する糖鎖化合物を得ることができる。
また、糖鎖の非還元末端側に各々独立に除去できる保護基(糖残基)が導入された複数の種類のO結合型糖鎖化合物(O結合型糖鎖化合物の末端を保護する糖残基の組合せはそれぞれ異なる)を合成し、これらをアミノ酸(セリン又はスレオニン)の側鎖に結合させる。このように作製された、糖鎖化合物が結合したアミノ酸を、アミノ酸重合反応に供し、複数の種類のO結合型糖鎖化合物が結合した糖ペプチドを得る。糖鎖化合物が結合したアミノ酸の重合は、例えば、Nakahara et al., Tetrahedron Letter 35: 3321-3324 (1994) 記載の方法により行う。次いで、複数の種類のO結合型糖鎖化合物が結合した糖ペプチドを、グリコシダーゼにより選択的に切断することで、糖ペプチドライブラリを得る(図11)。
保護された高マンノース型糖鎖化合物からの種々の糖鎖化合物の構築の概要を示す図である。糖鎖末端の糖残基は、一時的な保護基を示す。 保護された高マンノース型糖鎖化合物におけるグリコシダーゼ切断部位を示す図である。糖鎖末端の糖残基は、一時的な保護基を示す。 GII:グルコシダーゼII;Gal:β−ガラクトシダーゼ;GN:GlcNAcase;MII:α1−2マンノシダーゼ;M:マンノシダーゼ グルコシダーゼII、ガラクトシダーゼ又はGlcNAcaseによる、保護された高マンノース型糖鎖における糖鎖末端の糖残基の選択的切断の概略を示す図である。 保護された高マンノース型糖鎖化合物における糖鎖末端の糖残基の選択的切断について、MALDI TOF MSによる確認を示す図である。 ガラクトシダーゼ、α1−2マンノシダーゼ及びGlcNAcaseによるGM8Bの製造の概略を示す図である。 保護された高マンノース型糖鎖化合物の選択的切断により製造されたGM8B、及びその中間体について、MALDI TOF MSによる確認を示す図である。 保護された高マンノース型糖鎖化合物の選択的切断により製造されたGM8B、及びその中間体について、NMRによる確認を示す図である。標品として用いた化学合成されたGM8Bについては、例えば、 Matsuo et al., Carbohydr. Res. 338: 2163 (2003) を参照のこと。 ガラクトシダーゼ、α1−2マンノシダーゼ及びGlcNAcaseによるGM7の製造の概略を示す図である。 保護された高マンノース型糖鎖化合物の選択的切断により製造されたGM7、及びその中間体について、MALDI TOF MSによる確認を示す図である。 保護された高マンノース型糖鎖化合物の選択的切断によるGM7の製造について、NMRによる確認を示す図である。標品として用いた化学合成されたGM7は、自ら合成したものを用いた。 ガラクトシダーゼ、α1−2マンノシダーゼ、マンノシダーゼ及びGlcNAcaseによるGM7Cの製造の概略を示す図である。 保護された高マンノース型糖鎖化合物の選択的切断により製造されたGM7C、及びその中間体について、MALDI TOF MSによる確認を示す図である。 グルコシダーゼII、GlcNAcase、ガラクトシダーゼ、α1−2マンノシダーゼ、及びガラクトシダーゼによるM6Cの製造の概略を示す図である。 保護された高マンノース型糖鎖化合物の選択的切断により製造されたM6C、及びその中間体について、MALDI TOF MSによる確認を示す図である。 保護された複合型糖鎖化合物からの種々の糖鎖化合物の構築の概要を示す図である。糖鎖末端の糖残基は、一時的な保護基を示す。 保護された複合型糖鎖化合物における糖残基間の結合様式を示す図である。 保護された複合型糖鎖化合物におけるグリコシダーゼ切断部位を示す図である。 天然O結合型糖鎖CORE1〜8における糖残基間の結合様式を示す図である。 天然O結合型糖鎖CORE1〜8を切断するグリコシダーゼを示す図である。 保護されたO結合型糖鎖の構造を示す図である。 保護されたO結合型糖鎖化合物からの種々の糖鎖化合物の構築の概要を示す図である。糖残基の記号は、図10A及び10Bと同じである。 糖ペプチドライブラリ構築の概要を示す図である。

Claims (23)

  1. 保護された糖鎖化合物又はその塩であって、
    下記式(I):

    〔式中、R、Rはそれぞれ、同一又は異なって、糖残基数1〜10の直線状の糖鎖であるか、又は糖残基数が1〜10である、保護用糖残基を末端に有する分岐状の糖鎖であり、
    は任意の糖残基であり、
    、Sは、同一又は異なる糖残基であり、
    Lは、結合、又は糖残基数1〜5の直線状の糖鎖であり、
    Xは、(i)存在しないか、(ii)Lが存在する場合にはLを構成する還元末端側の糖残基中の任意のヒドロキシル基、又はLが存在しない場合にはSの糖残基中の任意のヒドロキシル基に結合しているヒドロキシル保護基、アミノ酸残基又は機能性物質を示すか、あるいは(iii)Lが存在する場合にはLを構成する還元末端側の糖残基中の任意のヒドロキシル基、又はLが存在しない場合にはSの糖残基中の任意のヒドロキシル基がアミノ基に置換されている構造を示すか、あるいは置換された該アミノ基に結合しているアミノ保護基又は機能性物質を示し、
    、Sの糖残基、及びR、Rにおける該保護用糖残基はそれぞれ、異なるエキソ型グリコシダーゼにより切断される〕で表される、糖鎖化合物又はその塩。
  2. 以下(a)〜(d)から選ばれる1以上の特徴を有する、請求項1記載の糖鎖化合物又はその塩:
    (a)R、Rが直線状の糖鎖であり、かつS、Sが互いに異なる糖残基である;
    (b)R、Rの一方又は双方が、保護用糖残基を末端に有する分岐状の糖鎖であり、かつ保護用糖残基、及びS、Sの糖残基がそれぞれ異なる;
    (c)R、Rが直線状の糖鎖であり、かつRにおけるSと隣接する糖残基及びSの糖残基が互いに異なり、RにおけるSと隣接する糖残基及びSの糖残基が互いに異なる;
    (d)R、Rの一方又は双方が、保護用糖残基を末端に有する分岐状の糖鎖であり、かつ保護用糖残基及びそれと隣接する糖残基が互いに異なり、RにおけるSと隣接する糖残基及びSの糖残基が互いに異なり、RにおけるSと隣接する糖残基及びSの糖残基が互いに異なる。
  3. 以下(a)〜(c)から選ばれる1以上の特徴を有する、請求項1記載の糖鎖化合物又はその塩:
    (a)R、Rが直線状の糖鎖であり、かつR、Rが1種の糖残基から構成される;
    (b)R、Rの一方又は双方が、保護用糖残基を末端に有する分岐状の糖鎖であり、かつR、Rが、保護用糖残基を除いて、1種の糖残基から構成される;
    (c)RにおけるSと隣接する糖残基、RにおけるSと隣接する糖残基が、同一のエキソ型グリコシダーゼにより切断される。
  4. 、Rにおける糖残基数がそれぞれ3〜8である、請求項1記載の糖鎖化合物又はその塩。
  5. 、Rがそれぞれ、同一又は異なって、下記式(v)、(v14

    〔式(v)におけるS〜S、式(v14)におけるS〜Sは任意の糖残基であり、式(v14)におけるST1は保護用糖残基である〕のいずれかである、請求項1記載の糖鎖化合物又はその塩。
  6. 式(I)におけるS、Sの糖残基、式(v)におけるS〜Sの糖残基、式(v14)におけるS〜S、ST1の糖残基が、D−グルコース、D−マンノース、D−ガラクトース、D−キシロース、N−アセチル−D−グルコサミン、N−アセチル−D−ガラクトサミン、L−フコース及びシアル酸からなる群より選ばれる、請求項5記載の糖鎖化合物又はその塩。
  7. 保護された糖鎖化合物が、下記式(Ia):

    〔式中、S〜Sは、任意の糖残基であり、
    、S、Sは、同一又は異なる糖残基であり、
    Lは、結合、又は糖残基数1〜5の直線状の糖鎖であり、
    Xは、(i)存在しないか、(ii)Lが存在する場合にはLを構成する還元末端側の糖残基中の任意のヒドロキシル基、又はLが存在しない場合にはSの糖残基中の任意のヒドロキシル基に結合しているヒドロキシル保護基、アミノ酸残基又は機能性物質を示すか、あるいは(iii)Lが存在する場合にはLを構成する還元末端側の糖残基中の任意のヒドロキシル基、又はLが存在しない場合にはSの糖残基中の任意のヒドロキシル基がアミノ基に置換されている構造を示すか、あるいは置換された該アミノ基に結合しているアミノ保護基又は機能性物質を示し、
    、S、Sの糖残基はそれぞれ、異なるエキソ型グリコシダーゼにより切断される〕で表される化合物である、請求項1記載の糖鎖化合物又はその塩。
  8. 保護された糖鎖化合物が、下記式(II)で表される化合物である、請求項1記載の糖鎖化合物又はその塩:

    〔式中、ManはD−マンノースを示し、GlcNAcはN−アセチル−D−グルコサミンを示し、
    、S、Sは、同一又は異なる糖残基であり、
    Xは、(i)存在しないか、(ii)GlcNAc中の任意のヒドロキシル基に結合しているヒドロキシル保護基、アミノ酸残基又は機能性物質を示すか、あるいは(iii)GlcNAc中の任意のヒドロキシル基がアミノ基に置換されている構造を示すか、あるいは置換された該アミノ基に結合しているアミノ保護基又は機能性物質を示し、
    、S、Sの糖残基はそれぞれ、異なるエキソ型グリコシダーゼにより切断される〕。
  9. Man間、GlcNAc間及びManとGlcNAcとの間の全ての結合様式が、天然の高マンノース型糖鎖化合物と同一の結合様式である、請求項8記載の糖鎖化合物又はその塩。
  10. 、S、Sの糖残基がそれぞれ異なる糖残基である、請求項8記載の糖鎖化合物又はその塩。
  11. がD−グルコースである、請求項8記載の糖鎖化合物又はその塩。
  12. 2種以上の保護された糖鎖化合物又はその塩を含むライブラリであって、
    該糖鎖化合物が、下記式(I)及び(I’):

    〔式中、R、R、R’、R’はそれぞれ、同一又は異なって、糖残基数1〜10の直線状の糖鎖であるか、又は糖残基数が1〜10である、保護用糖残基を末端に有する分岐状の糖鎖であり、
    、S’は、同一の糖残基であり、
    、S、S’、S’はそれぞれ、同一又は異なる糖残基であり、
    Lは、結合、又は糖残基数1〜5の直線状の糖鎖であり、
    Xは、(i)存在しないか、(ii)Lが存在する場合にはLを構成する還元末端側の糖残基中の任意のヒドロキシル基、又はLが存在しない場合にはS又はS’の糖残基中の任意のヒドロキシル基に結合しているヒドロキシル保護基、アミノ酸残基又は機能性物質を示すか、あるいは(iii)Lが存在する場合にはLを構成する還元末端側の糖残基中の任意のヒドロキシル基、又はLが存在しない場合にはS又はS’の糖残基中の任意のヒドロキシル基がアミノ基に置換されている構造を示すか、あるいは置換された該アミノ基に結合しているアミノ保護基又は機能性物質を示し、
    、Sの糖残基、及びR、Rにおける該保護用糖残基はそれぞれ、異なるエキソ型グリコシダーゼにより切断され、
    ’、S’の糖残基、及びR’、R’における該保護用糖残基はそれぞれ、異なるエキソ型グリコシダーゼにより切断される〕で表される、ライブラリ。
  13. 、R’が同一の糖鎖であり、R、R’が同一の糖鎖であり、かつS、S’が互いに異なる糖残基であり、S、S’が互いに異なる糖残基である、請求項12記載のライブラリ。
  14. 以下(a)又は(b)の特徴を有する、請求項12記載のライブラリ:
    (a)R、R、R’、R’が直線状の糖鎖であり、かつS、S’、S、S’の糖残基がそれぞれ異なる;
    (b)R、R、R’、R’のうち少なくとも1つが、保護用糖残基を末端に有する分岐状の糖鎖であり、かつ保護用糖残基、及びS、S’、S、S’の糖残基がそれぞれ異なる。
  15. 下記式(I’’):

    〔式中、R’’、R’’はそれぞれ、同一又は異なって、糖残基数1〜10の直線状の糖鎖であるか、又は糖残基数が1〜10である、保護用糖残基を末端に有する分岐状の糖鎖であり、
    ’’は、S、S’と同一の糖残基であり、
    ’’は、S、S’と異なる糖残基であり、S’’は、S、S’と異なる糖残基であり、
    Lは、結合、又は糖残基数1〜5の直線状の糖鎖であり、
    Xは、(i)存在しないか、(ii)Lが存在する場合にはLを構成する還元末端側の糖残基中の任意のヒドロキシル基、又はLが存在しない場合にはS’’の糖残基中の任意のヒドロキシル基に結合しているヒドロキシル保護基、アミノ酸残基又は機能性物質を示すか、あるいは(iii)Lが存在する場合にはLを構成する還元末端側の糖残基中の任意のヒドロキシル基、又はLが存在しない場合にはS’’の糖残基中の任意のヒドロキシル基がアミノ基に置換されている構造を示すか、あるいは置換された該アミノ基に結合しているアミノ保護基又は機能性物質を示し、
    ’’、S’’の糖残基、及びR’’、R’’における該保護用糖残基はそれぞれ、異なるエキソ型グリコシダーゼにより切断される〕で表される、保護された糖鎖化合物をさらに含む、請求項13記載のライブラリ。
  16. 糖鎖化合物の製造方法であって、
    下記式(I):

    〔式中、R、Rはそれぞれ、同一又は異なって、糖残基数1〜10の直線状の糖鎖であるか、又は糖残基数が1〜10である、保護用糖残基を末端に有する分岐状の糖鎖であり、
    は任意の糖残基であり、
    、Sは、同一又は異なる糖残基であり、
    Lは、結合、又は糖残基数1〜5の直線状の糖鎖であり、
    Xは、(i)存在しないか、(ii)Lが存在する場合にはLを構成する還元末端側の糖残基中の任意のヒドロキシル基、又はLが存在しない場合にはSの糖残基中の任意のヒドロキシル基に結合しているヒドロキシル保護基、アミノ酸残基又は機能性物質を示すか、あるいは(iii)Lが存在する場合にはLを構成する還元末端側の糖残基中の任意のヒドロキシル基、又はLが存在しない場合にはSの糖残基中の任意のヒドロキシル基がアミノ基に置換されている構造を示すか、あるいは置換された該アミノ基に結合しているアミノ保護基又は機能性物質を示し、
    、Sの糖残基、及びR、Rにおける該保護用糖残基はそれぞれ、異なるエキソ型グリコシダーゼにより切断される〕で表される、保護された糖鎖化合物又はその塩を、グリコシダーゼで処理して糖鎖化合物を得ることを含む、方法。
  17. 糖鎖化合物の製造方法であって、
    2種以上の保護された糖鎖化合物又はその塩を含むライブラリを、グリコシダーゼで処理することを含み、
    該糖鎖化合物が、下記式(I)及び(I’):

    〔式中、R、R、R’、R’はそれぞれ、同一又は異なって、糖残基数1〜10の直線状の糖鎖であるか、又は糖残基数が1〜10である、保護用糖残基を末端に有する分岐状の糖鎖であり、
    、S’は、同一の糖残基であり、
    、S、S’、S’はそれぞれ、同一又は異なる糖残基であり、
    Lは、結合、又は糖残基数1〜5の直線状の糖鎖であり、
    Xは、(i)存在しないか、(ii)Lが存在する場合にはLを構成する還元末端側の糖残基中の任意のヒドロキシル基、又はLが存在しない場合にはS又はS’の糖残基中の任意のヒドロキシル基に結合しているヒドロキシル保護基、アミノ酸残基又は機能性物質を示すか、あるいは(iii)Lが存在する場合にはLを構成する還元末端側の糖残基中の任意のヒドロキシル基、又はLが存在しない場合にはS又はS’の糖残基中の任意のヒドロキシル基がアミノ基に置換されている構造を示すか、あるいは置換された該アミノ基に結合しているアミノ保護基又は機能性物質を示し、
    、Sの糖残基、及びR、Rにおける該保護用糖残基はそれぞれ、異なるエキソ型グリコシダーゼにより切断され、
    ’、S’の糖残基、及びR’、R’における該保護用糖残基はそれぞれ、異なるエキソ型グリコシダーゼにより切断される〕で表される、方法。
  18. 天然に存在する糖鎖と同一構造を有する糖鎖の非還元末端に少なくとも1つの糖残基が導入されている、保護された糖鎖化合物を合成し、合成された糖鎖化合物をグリコシダーゼで処理して糖鎖化合物を得ることを含む、糖鎖化合物の製造方法。
  19. 糖鎖化合物又はその塩であって、
    下記式(II):

    〔式中、ManはD−マンノースを示し、GlcNAcはN−アセチル−D−グルコサミンを示し、
    、S、Sはそれぞれ、同一又は異なる糖残基であり、
    Xは、(i)存在しないか、(ii)GlcNAc中の任意のヒドロキシル基に結合しているヒドロキシル保護基、アミノ酸残基又は機能性物質を示すか、あるいは(iii)GlcNAc中の任意のヒドロキシル基、又はLが存在しない場合にはSの糖残基中の任意のヒドロキシル基がアミノ基に置換されている構造を示すか、あるいは置換された該アミノ基に結合しているアミノ保護基又は機能性物質を示し、
    、S、Sの糖残基はそれぞれ、異なるエキソ型グリコシダーゼにより切断される〕で表される、保護された高マンノース型糖鎖化合物を、グリコシダーゼにより分解することにより得られ、かつ
    (a)S、Sの糖残基の一方又は双方を保持する化合物;又は
    (b)Sとして、α−D−グルコース以外の糖残基を保持する化合物。
  20. 下記式(IIa1)〜(IIa4)、(IIa8)、(IIb4)〜(IIb5)、(IIb14)のいずれかの糖鎖化合物又はその塩:

    〔式中、ManはD−マンノースを示し、GlcNAcはN−アセチル−D−グルコサミンを示し、
    Xは、(i)存在しないか、(ii)GlcNAc中の任意のヒドロキシル基に結合しているヒドロキシル保護基、アミノ酸残基又は機能性物質を示すか、あるいは(iii)GlcNAc中の任意のヒドロキシル基がアミノ基に置換されている構造を示すか、あるいは置換された該アミノ基に結合しているアミノ保護基又は機能性物質を示し、
    、S、Sの糖残基はそれぞれ異なって、D−グルコース、D−ガラクトース、D−キシロース、N−アセチル−D−グルコサミン、N−アセチル−D−ガラクトサミン、L-フコース、シアル酸からなる群より選ばれる糖残基である〕。
  21. 糖鎖化合物又はその塩であって、
    下記式(I):

    〔式中、R、Rはそれぞれ、同一又は異なって、糖残基数1〜10の直線状の糖鎖であるか、又は糖残基数が1〜10である、保護用糖残基を末端に有する分岐状の糖鎖であり、
    は任意の糖残基であり、
    、Pは、互いに異なるヒドロキシ保護基であり、
    Lは、結合、又は糖残基数1〜5の直線状の糖鎖であり、
    Xは、(i)存在しないか、(ii)Lが存在する場合にはLを構成する還元末端側の糖残基中の任意のヒドロキシル基、又はLが存在しない場合にはSの糖残基中の任意のヒドロキシル基に結合しているヒドロキシル保護基、アミノ酸残基又は機能性物質を示すか、あるいは(iii)Lが存在する場合にはLを構成する還元末端側の糖残基中の任意のヒドロキシル基、又はLが存在しない場合にはSの糖残基中の任意のヒドロキシル基がアミノ基に置換されている構造を示すか、あるいは置換された該アミノ基に結合しているアミノ保護基又は機能性物質を示す〕で表される、糖鎖化合物又はその塩。
  22. 請求項1記載の糖鎖化合物又はその塩、請求項12記載のライブラリあるいはそれらのグリコシダーゼ分解物又はその塩、あるいは請求項20記載の糖鎖化合物又はその塩を含む、試薬又はキット。
  23. 以下(a)及び(b)を含む、キット:
    (a)請求項1記載の糖鎖化合物又はその塩、又は請求項12記載のライブラリ;
    (b)1以上のグリコシダーゼ。
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