JP2007291009A - 血管内膜肥厚抑制剤 - Google Patents

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昌一 山岸
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Abstract

【課題】血管再狭窄を予防できる薬剤を提供すること。
【解決手段】本発明の血管内膜肥厚抑制剤は、(a)色素上皮由来因子;(b)該色素上皮由来因子(a)と機能的に同等な特性を有する、該因子の変異体;(c)該因子(a)または該変異体(b)をコードする核酸分子;および(d)該核酸分子(c)を含むベクター;からなる群から選択される活性因子からなる。この血管内膜肥厚抑制剤は、血管再狭窄予防剤としても使用できる。
【選択図】なし

Description

本発明は、血管再狭窄の防止に有用な血管内膜肥厚抑制剤に関する。
現在、冠動脈狭窄の治療として行われている経皮的血管形成術(PTA)、特に、経皮的冠動脈形成術(PTCA)では、ステントやロータブレータなどのニューデバイスが使用され、予後が大変よくなっている。しかし、これらの処置による再狭窄の問題が残されている。この再狭窄(主に、新生内膜肥厚および平滑筋細胞の増殖)は、生体反応としての血栓、炎症反応などが、その原因と考えられている。特に、糖尿病を合併した冠動脈疾患患者に対するPTCAでは、再狭窄率が高く、心筋梗塞の発症や再血行再建術の頻度が増加することが報告されている。
再狭窄予防のために採られている対策の1つとして、放射線実照射が挙げられる。ステント挿入後に、10Gy以上の放射線を照射することによって血管再狭窄を防止する技術である。現在、多くの治験が行われ、有効性が証明されている。
エストロゲン補充療法もまた行われている。その作用機序は解明されていないが、エストロゲン補充療法を受けていた更年期の女性では、ステント挿入後の再狭窄の予防効果が高かったと報告されている(非特許文献1)。
再狭窄予防のための他の対策として、ステント表面に薬剤を塗布した薬剤溶出冠動脈ステントの使用が注目されている。ステントが血管内に留置された後、ステントに塗布された薬剤が溶出され、再狭窄を予防し得る。このために使用される薬剤としては、タキソール、ラパマイシン、AP23573、およびNFκBデコイオリゴが公知である。
タキソール(パクリタキセル)は、卵巣がん治療薬として認可されている。微小管機能を阻害し、細胞分裂および遊走を予防することから、再狭窄予防の効果があると考えられている。
ラパマイシンは、抗生物質であり、腎臓移植用薬剤として認可されている。成長因子やサイトカイン刺激による細胞増殖を抑制し、同種移植や血管形成術モデルにおける血管過形成を抑制する。細胞サイクル抑制によって、効果を発現していると考えられている。
AP23573は、mTOR阻害薬であり、ARIAD Pharmaceutical社により開発された薬剤である。
NFκBデコイオリゴは、NFκBに作用する核酸薬であり、アンジェスMG株式会社が、アメリカの医療デバイスメーカー・グッドマンと提携して開発中で現在、前臨床段階にある。
また、全身投与用薬剤として、プロブコールおよびResten-NGも注目されている。
プロブコールは、抗酸化剤であり、LDLコレステロール低下作用および接着因子抑制作用から血管リモデリング抑制に有効であると考えられている。しかし、再狭窄予防に十分な効果は出ていない。
Resten-NGは、血管再狭窄に関与する遺伝子c-mycのmRNAを標的としたアンチセンス薬である。AVIO BioPharma社が開発中で現在、第II相にある。
血管再狭窄の予防または治療に有用な血管内膜肥厚抑制剤として、特許文献1には、上皮成長因子ファミリー(EGFファミリー)に属し、上皮成長因子レセプターへの結合能を有する細胞成長因子が記載されている。
ところで、色素上皮由来因子(PEDF)は、セリンプロテアーゼ阻害物質のスーパーファミリーに属する糖タンパク質であり、強力なヒト網膜芽細胞腫神経分化活性を有する因子としてヒト網膜色素上皮細胞の馴化培地から初めて精製された(非特許文献2)。これまでに、PEDFは、血管新生および癌における関与が考察されている。PEDFは、NADPHオキシダーゼ活性を抑制することにより、糖尿病やアテローム性動脈硬化症のような血管障害の治療および予防に用いられ得ることが見出されている(特許文献2)。また、PEDFは、腫瘍血管形成を抑制し、癌細胞においてアポトーシスを誘発し、そして悪性黒色腫などの癌細胞の増殖を抑制することから、癌の予防または治療に有効であることが見出されている(特許文献3)。
特開2002−161049号公報 特開2005−336159号公報 特開2005−298473号公報 米国特許第6319687号明細書 国際公開第03/059248号パンフレット 国際公開第93/24529号パンフレット Journal of the American College of Cardiology, 28巻, 1111-1118頁 (1997年) Tombran-Tink, J.ら、Exp. Eye Res., 53巻, 411-414頁 (1991年) Steel, F.R.ら、Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 90巻(4)号, 1526-1530頁 (1993年) Yamagishi, S.ら、Biochem. Biophys. Res. Commun., 296巻(4)号, 877-882頁 (2002年)
本発明は、血管再狭窄を予防できる薬剤を提供することを目的とする。
本発明は、血管内膜肥厚抑制剤を提供し、これは
(a)色素上皮由来因子;
(b)該色素上皮由来因子(a)と機能的に同等な特性を有する、該因子の変異体;
(c)該因子(a)または該変異体(b)をコードする核酸分子;および
(d)該核酸分子(c)を含むベクター;
からなる群から選択される活性因子からなる。
本発明はさらに、血管再狭窄予防剤を提供し、これは
(a)色素上皮由来因子;
(b)該色素上皮由来因子(a)と機能的に同等な特性を有する、該因子の変異体;
(c)該因子(a)または該変異体(b)をコードする核酸分子;および
(d)該核酸分子(c)を含むベクター;
からなる群から選択される活性因子からなる。
本発明はさらに、上記血管再狭窄予防剤を付加させたステントを提供する。
本発明によれば、血管内膜肥厚抑制剤が提供される。本発明の血管内膜肥厚抑制剤は、血管再狭窄の予防に有用である。
(1)血管内膜肥厚抑制剤
(1−1)タンパク質
本発明において、単に「色素上皮由来因子」または「PEDF」と称する場合は、色素上皮由来因子タンパク質を意味する。PEDFは、血管の内膜肥厚を抑制する活性を有する。さらに、PEDFは、内膜での細胞増殖を抑制する活性を有する。PEDFは、その抗酸化活性、増殖抑制作用、および遊走抑制作用により、中膜からの血管平滑筋細胞の遊走を抑え、新生内膜での細胞増殖を抑制し得る。
本発明において、PEDFとしては、ヒト、イヌ、ネコ、ウシ、およびウマのような哺乳類由来のPEDFを含み、ヒト由来のPEDFが好ましい。ヒトPEDFのアミノ酸配列およびこれをコードする核酸配列は、非特許文献3に記載されており、GenBank/EMBLデータベースにaccession no. M76979で登録されている。
PEDFは、Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 第2版, Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, NY, (1989年)のような多くの出版物および参考文献に記載の手順に従って、該タンパク質をコードするDNAを発現させることにより産生することができる。より具体的には、該タンパク質をコードするDNAを適切な発現ベクター(例えば、pBK-CMV)に挿入することによって、発現プラスミドを構築する。そして、その発現プラスミドを適切な宿主細胞に導入し、形質転換細胞を得る。宿主細胞の例としては、大腸菌のような原核生物、酵母のような単細胞性真核生物、ならびに昆虫および動物のような多細胞性真核生物の細胞が挙げられる。発現プラスミドは、リン酸カルシウム法、電気穿孔法、リポフェクチン法などのような当業者が通常用いる方法により宿主細胞へ導入することができる。所望のタンパク質は、当業者が通常用いる方法に従い、適切な培地中で該形質転換体を培養することにより産生される。このようにして得られたタンパク質は、標準的生化学的手法に従って、単離精製することができる。
本明細書で用いる場合、「PEDFと機能的に同等な特性を有するPEDFの変異体」には、ヒトPEDFと機能的に同等な特性を有するすべての種類のPEDF変異体が含まれる。PEDFの変異体は、例えば、特許文献4〜6などに記載されている。
PEDF変異体の好ましい例には、ヒトPEDFのアミノ酸配列(例えば、上記非特許文献3に記載のアミノ酸配列)に対して、1つまたは複数のアミノ酸残基の置換、欠失、および/または付加を有するアミノ酸配列を含み、かつヒトPEDFと機能的に同等な特性を有するPEDFの変異体が含まれる。当業者であれば、例えば、部位特異的変異導入法などの当業者が通常用いる手法を用いて、適宜置換、欠失、および/または付加変異を導入することにより、タンパク質の構造を改変することができる。本発明において、置換、欠失、および/または付加することができるアミノ酸残基数は、通常120以下、例えば100以下、80以下、50以下、あるいは20以下、好ましくは16以下、より好ましくは5以下、さらに好ましくは0〜3アミノ酸残基である。また、アミノ酸の変異は自然界において生じることもあるので、人工的にアミノ酸を変異したタンパク質のみならず、自然界においてアミノ酸が変異したタンパク質も、ヒトPEDFと機能的に同等な特性を有する限り、本発明に使用することができる。
上記ヒトPEDFのアミノ酸配列(例えば、上記非特許文献3に記載のアミノ酸配列)と相同性を有するアミノ酸配列を有するタンパク質も、ヒトPEDFと機能的に同等な特性を有する限り、本発明に使用することができる。PEDF変異体は、好ましくは、上記ヒトPEDFのアミノ酸配列と少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、なおより好ましくは少なくとも95%、さらにより好ましくは少なくとも99%の相同性を有するアミノ酸配列を有するタンパク質であり得る。タンパク質の相同性(ホモロジー)検索は、例えば、SWISS-PROT、PIR、DADなどのタンパク質のアミノ酸配列に関するデータベース、DDBJ、EMBL、GenBankなどのDNA配列に関するデータベース、DNA配列を元にした推定アミノ酸配列に関するデータベースなどを対象に、BLAST、FASTAなどのデータ解析プログラムを利用して、例えば、インターネットを通じて行うことができる。このようなPEDF変異体もまた、上述の組換え技術によって調製することができる。
ヒトPEDFと機能的に同等な特性とは、ヒトPEDFと同等の血管の内膜肥厚を抑制する活性を有すること、またはヒトPEDFと同等に、内膜での細胞増殖を抑制する活性を有することを意味する。これらの活性は、明細書で後述する実施例に従って証明することができる。例えば、血管内膜肥厚抑制効果は、血管内膜肥厚抑制剤を、カテーテルまたは留置ステントへ付加するなどによって局所投与または全身投与することにより、確認することができる。例えば、ラットなどの頚動脈をバルーン損傷し(PTCA後再狭窄の動物モデル)、血管内膜肥厚抑制剤またはプラセボを局所投与または全身投与し、処置後14日目に、処置頚動脈を剖検し、血管断面の病理切片を調製して比較評価することができる。
(1−2)核酸分子およびベクター
本明細書中で使用する「核酸分子」という用語は、一本鎖または二本鎖であり得るDNAおよびRNAを含む。核酸分子は、典型的なDNA合成または遺伝子工学的方法、例えば、Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 第2版, Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, NY, (1989)のような標準テキストに記載の方法によって容易に調製される。
ヒトPEDFをコードする核酸分子は、上述したように、その配列が非特許文献3に記載されており、GenBank/EMBL accession no. M76979で登録されている。好ましくは、この非特許文献3に記載の核酸配列を有する核酸分子が、本発明に用いられる。
本発明に用いられる核酸分子としては、上記(1−1)のヒトPEDFと機能的に同等な特性を有するタンパク質をコードする核酸分子も挙げられる。当業者であれば、非特許文献3に記載の核酸配列に部位特異的変異導入法などの当業者が通常用いる手法を用いて、適宜置換、欠失、および/または付加変異を導入することによりポリヌクレオチドのホモログを得ることが可能である。
このような核酸分子は、被験体においてPEDFまたはその変異体が発現されて血管の内膜肥厚を抑制する活性または内膜での細胞増殖を抑制する活性を示すように、被験体に投与され得る。この目的のために、核酸分子はベクターに組み込まれてインビボ投与され得る。
核酸分子を組み込むためのベクターとしては、従来から使用されている遺伝子治療に有用なベクターを使用できる。このようなベクターとしては、例えば、レトロウイルス、アデノウイルス、アデノ関連ウイルス、ヘルペスウイルス、ワクシニアウイルス、ポックスウイルス、ポリオウイルスあるいはシンドビスウイルスのようなDNAまたはRNAウイルスに核酸分子を組み込んで細胞に導入するウイルスベクターが挙げられる。これらの中で、レトロウイルス、アデノウイルス、アデノ関連ウイルスあるいはヘルペスウイルスを使用するものは、特に好適である。ベクターの具体的な例としては、pAd/CMV/V5-DEST Gatewayベクター(Invitrogen)などが挙げられる。
例えば、PEDFを含むベクターは、以下の手順により生成され得る。PEDFのcDNAを、例えば、非特許文献4に記載のように、ヒト胎盤cDNAライブラリー(例えば、Clontech, Palo Alto, CAより入手可能)より単離し得る。これを市販のアデノウイルスベクター(例えば、pAd/CMV/V5-DEST Gatewayベクター(Invitrogen))に、当業者が通常用いる方法を用いて組み込み得る。PEDF遺伝子が組み込まれた市販のベクターもまた、PEDFまたはその変異体の投与のために用いられ得る。
本発明によれば、上記ベクターが細胞などに導入されることで、PEDF(もしくはその機能的に同等の変異体)またはそれらの遺伝子を含む形質転換体である細胞医薬も提供され得る。
上で説明した血管内膜肥厚抑制剤は、血管再狭窄予防剤としても使用できる。
(2)医薬組成物
PEDFまたはその機能的に同等の変異体(タンパク質、該タンパク質をコードする核酸、該核酸を含むベクター、該ベクターで形質転換された細胞などのいずれの形態でも)は、単独で血管内膜肥厚抑制剤または血管再狭窄予防剤として使用することができる。あるいは、それ自体公知の薬理学に許容される他の成分とともに医薬組成物として使用することもできる。
使用法としては、血管内膜損傷部に直接、注射器、カテーテルなどで注入あるいは塗布する方法、あるいは血管周囲に注入する方法、さらには、ステントなどの器具に付加(例えば、薬剤を含浸させたポリマーをステント表面に塗布する)して患部に留置するなどの方法が可能である。
本発明の血管内膜肥厚抑制剤または血管再狭窄予防剤を含む医薬組成物は、当業者が通常用いる溶液または固体製剤調製方法を採用し、投与形態の必要に応じて製剤分野において通常用いられる担体、賦形剤などを用いて調製することができる。溶液製剤は、本発明の血管内膜肥厚抑制剤または血管再狭窄予防剤を、例えば注射剤に用いられる無菌の水溶液に溶解するか、または上記の担体、賦形剤などと混合・懸濁して調製することができる。さらには、乳化してリポソームに包埋させた状態に調製することもできる。固体製剤は、本発明の血管内膜肥厚抑制剤または血管再狭窄予防剤に、マンニトール、トレハロース、ソルビトール、ラクトース、グルコース、マルトース、サッカロース、澱粉、ステアリン酸マグネシウムなどの賦形剤を加え、凍結乾燥物として調製され得る。さらに、これを粉体化して用いることもできる。ゲル化剤は、本発明の血管内膜肥厚抑制剤または血管再狭窄予防剤を、グリセリン、ポリエチレングリコール、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸などの増粘剤あるいは多糖に溶解した状態で調製され得る。
本発明の血管内膜肥厚抑制剤または血管再狭窄予防剤を含む医薬組成物は、本発明の目的を損なわない範囲であれば、さらに他の成分を含有し得る。このような成分としては、ヒト血清アルブミン、ヒト免疫グロブリン、αマクログロブリン、アミノ酸などが挙げられる。また、分散剤または吸収促進剤として活性成分の生理活性を損なわない範囲で、アルコール、糖アルコール、イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤などを添加することができる。また、微量金属や有機酸塩も必要に応じて加えることができる。
さらに、PEDFを特定部位に送達する方法として、PEDFと他のタンパク質との融合タンパク質を利用することが考えられる。遺伝子工学的手法によってPEDFに血管組織への親和性を付与するように設計し、融合タンパク質の形として製造することが可能である。例えば、コラーゲン結合性やフィブリン親和性のあるペプチド配列との融合タンパク質は、血管損傷部に存在するコラーゲンやフィブリンに結合して、長期にわたるPEDFの効果を発揮する可能性がある。
本発明の血管内膜肥厚抑制剤もしくは血管再狭窄予防剤、または該剤を含む医薬組成物は、患者の年齢、体重、投与対象疾患、症状、投与形態、投与経路などに応じて投与量が適宜決定される。活性成分がタンパク質の場合、代表的には、0.0001mg〜1000mg、好適には0.001mg〜100mg、より好適には0.01mg〜10mg、核酸の場合、代表的には、0.0001mg〜100mg、好適には0.001mg〜10mg、より好適には0.01mg〜1mg、またはベクターの場合、代表的には、1×10〜1×1011pfu、好適には5×10〜1×1010pfu、より好適には1×10〜5×10pfuの活性成分を、毎日(日に1回から数回に分けて投与することができる)、あるいは数日毎から数ヶ月毎に投与または適用する。したがって、医薬組成物中の活性成分は、このような投与または適用が可能な量になるように、製剤中に含有される。
本発明の血管内膜肥厚抑制剤もしくは血管再狭窄予防剤、または該剤を含む医薬組成物は、例えば、バイパス手術などの血管移植後、ステント留置後、PTA(PTCAを含む)後または虚血後の、血管内膜の細胞の過増殖を抑制または血管内膜の肥厚を抑制して、血管再狭窄を防止する効果を有する。また、血管炎、関節炎、リウマチなどの細胞増殖性血管に対する予防薬および治療薬としても有用であり得る。
以下に示す実施例によって本発明をさらに詳しく説明するが、これらの実施例は本発明を制限するものではない。
(参考例:組換えヒトPEDFアデノウイルスの調製方法)
ヒトPEDFを発現する組換えアデノウイルスを、AdenoVec-hPEDF(Invivogen, San Diego, USA)を293T細胞にトランスフェクションすることによって生成した。保存するウイルスをCsCl遠心分離によって精製した。精製したウイルスをスクロース(2%wt/vol)およびMgCl2(2mmol/L)を加えたPBSに懸濁させ、セファロースCL4Bクロマトグラフィー(Pharmacia)で脱塩し、5%グリセロールを加えて−80℃で保存した。組換えアデノLacZ遺伝子(Ad-LacZ;Invitrogenより入手)も同様に調製した。ウイルス調製物を、293T細胞におけるプラーク形成アッセイによって検定した。細胞1個あたりのウイルス粒子の数をpfuとして測定した。
(実施例1:バルーン損傷処理後の血管内皮形態)
雄のSprague-Dawleyラット(350〜400g)(Charles River Breeding Laboratories, Yokohama, Japan)をバルーン損傷モデルに使用した。すべての実験は、株式会社生体資源研究所の動物実験委員会によって定められたガイドラインに従って行った。
ラットをペントバルビタール(50mg/kg;腹腔内投与)で麻酔した。頚部中央の切開後、左頚動脈およびその分岐部を露出させた。術中の急性血栓症を回避するため、バルーン損傷術前に、200IU/kgのヘパリンナトリウムを静脈内に投与した。左頚動脈を、2F Fogaty catheter(Edwards Lifesciences)を用いて、3回バルーン処理した。バルーン処理を行わないこと以外は同様に処置した群も用意した(バルーン損傷非施術群)。2個の血管クリップを、施術した動脈の遠位末端と中ほどとに置き、24ゲージのカニューレを頚動脈に挿入した。2個のクリップの間の手術部位の管腔をPBSで2回洗浄した。その後、150μlのPBS(バルーン損傷後PBS処理群)あるいは上記参考例で調製したヒトPEDFを発現するアデノウイルス(バルーン損傷施術後PEDF発現ベクター処理群)またはLacZ遺伝子発現アデノウイルス(バルーン損傷施術後LacZ処理群)(いずれも5×10pfu/ml)を、クリップの間の動脈に入れ、20分間インキュベートした。次に、動脈のバルーン損傷部位を生理食塩水で還流し、頚部を縫合した。その後、ラットを14日間自由摂食・自由飲水で飼育した後、麻酔し、屠殺後、バルーン損傷部位を切開した。
上記部位の組織を4%パラホルムアルデヒドで固定化し、パラフィンに埋め込んだ。損傷部中央から3つの独立した区画(3μm)を切り出し、ヘマトキシリン/エオシン(H.E.)染色した(n=5)。ヘマトキシリン/エオシン(H.E.)染色した血管組織を光学顕微鏡で観察した。さらに領域の大きさを、コンピュータを用いたデジタルイメージ分析システムで測定した。
図1は、ヘマトキシリン/エオシン(H.E.)染色後の血管の横断面における内皮細胞を表す顕微鏡写真および該血管の形態を数値化したグラフである。図中、「SHAM」は、バルーン損傷非施術群、「BI」は、バルーン損傷施術後PBS処理群、「LacZ」は、バルーン損傷施術後LacZ処理群、「PEDF」は、バルーン損傷施術後PEDF発現ベクター処理群を表す。また、「M」は中膜を表し、「I」は内膜を表す。
固定した血管組織のヘマトキシリン/エオシン(H.E.)染色の結果を示す顕微鏡写真を図1の上段および中段に示す。上段のバー=5mmの写真では、バルーン損傷(BI)により内皮が肥厚化し、LacZ処理群(LacZ)では肥厚化が抑制されないのに対し、PEDF発現群(PEDF)では内皮の肥厚が抑制されたことがわかる。
図1の中段に示すバー=100μmの写真は、中膜(M)および内膜(I)の内皮細胞の形態をより明瞭に示す。中膜および内膜の領域の肥厚化をより明確にするために、画像的に定量化し、I/M比を表したグラフを右下に示す。このグラフでは、縦軸は、バルーン損傷非施術群のI/M比を100とした場合の割合(%)を表す。写真およびグラフの結果から、バルーン損傷群(BI)およびLacZ処理群(LacZ)では内膜が肥厚化しているが、PEDF発現群(PEDF)では、内膜の肥厚化が抑制されたことが分かる。
さらに、画像的に内腔の面積を測定し、内腔面積測定値(mm2)を左下のグラフに、そしてバルーン損傷非施術群に対する面積比(%)を中下のグラフに表した。これらのグラフからも、バルーン損傷により減少した内腔面積が、PEDFによって有意に増加したことが分かった。
(実施例2.バルーン損傷後の内皮における細胞増殖マーカーおよび酸化ストレスマーカーを用いた検討)
実施例1に記載のように処理(バルーン損傷非施術、バルーン損傷後PBS処理、バルーン損傷後LacZ処理、またはバルーン損傷後PEDF発現ベクター処理)を施したラットをペントバルビタール麻酔し、左頚動脈を2.5%リン酸緩衝化グルタルアルデヒドで還流固定し、摘出した。頚動脈をパラフィン包埋し、4μmの区画に切り分け、ガラススライドに固定した。内在的なペルオキシダーゼ活性を阻害するために、固定した組織を、30分間、0.3%の過酸化水素メタノール中でインキュベートした。ウサギ血清の非特異的結合を回避するために、前もって、0.1%のヤギ血清と30分間インキュベートした。次に、ガラススライドを、ポリクローナルウサギ抗p22-phox、ヤギ抗gp91-phox、またはマウス抗PCNA(増殖細胞核抗原)(これらはいずれもDAKO, Glostrup, Denmarkより入手)と濃度比1:200、4℃で一晩インキュベートした。PBS洗浄後、ガラススライドを、ビオチン化したヤギ抗ウサギIgG結合セイヨウワサビペルオキシダーゼ(Dako Japan Co)あるいはHISTOFINE MAX-PO(Nichirei Corporation, Tokyo, Japan)と一緒に、室温で60分間インキュベートした。ガラススライドをPBSで洗浄し、HISTOFINE DAB(Nichirei Corporation, Tokyo, Japan)で染色し、可視化した。対照群については、同様の手順を用いて、非免疫性ウサギIgGと一緒に1:200の濃度比でインキュベートした。
(2−1.細胞増殖マーカーである増殖細胞核抗原(PCNA)を用いた検討)
細胞増殖マーカーであるPCNAについて染色した結果を、図2の上側の写真に示す(バー=100μmの写真)。図2中の用語および符号は、図1と同じである。SHAM群ではほとんど染色せず増殖細胞は見られなかったが、バルーン損傷群(BI)およびLacZ処理群(LacZ)では内膜域に多くの染色部分が見られた。一方、PEDF発現群(PEDF)では、染色部分は見られたがその程度は小さく、細胞増殖の程度が低いことが分かった。
染色されたPCNA陽性細胞を実施例1と同様に画像的に定量した。全細胞に対するPCNA陽性細胞の比を図2下のグラフに示す。このグラフからも、PEDF発現群(PEDF)では、バルーン損傷群(BI)よりも有意に細胞増殖が抑制されていることが明らかとなった。
上記結果は、バルーン損傷により血管の内皮細胞が傷害を受け、中膜から血管平滑筋細胞が遊走して内膜で生じる異常増殖が、PEDF処理により抑制されたことを示唆する。
(2−2.酸化ストレスマーカーであるgp91およびp22を用いた検討)
酸化ストレスマーカーgp91は、BI群およびLacZ群の肥厚化した内膜(I)を染色したが、SHAM群およびPEDF群では染色はあまり見られなかった。酸化ストレスマーカーp22も同様の結果を示した。このように、SHAM群およびPEDF群では、内膜に酸化ストレスは認められず、BI群およびLacZ群では、内膜に激しい酸化ストレスが観察された。
各処理において、血管内膜組織中のこれらのマーカータンパク質の量を、ポリアクリルアミドゲル電気泳動により分析した。グリセロアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼ(GAPDH)を内皮細胞マーカーとして使用した。図3は、電気泳動により得られた各タンパク質のバンドの染色の程度を示す写真である。gp91については、BI群およびLacZ群で特に濃いバンドが観察され、マーカータンパク質が大量に存在することが示された。SHAM群およびPEDF群ではその量は少なかった。また、p22についても、BI群およびLacZ群で特に濃いバンドが観察され、マーカータンパク質が大量に存在することが示された。SHAM群およびPEDF群ではその量は少なかった。したがって、PEDF群では酸化ストレスがあまりないことがわかった。
本発明によれば、血管再狭窄の予防に有用な血管内膜肥厚抑制剤が提供される。この血管内膜肥厚抑制剤は、例えば、PTA(PTCAを含む)後、ステント留置後、バイパス手術による血管または人工血管移植後、虚血後などに生じる、血管再狭窄や動脈硬化の予防に有用である。また、本発明の血管内膜肥厚抑制剤は、内膜の細胞増殖を抑制し得るので、血管炎、関節炎、リウマチなどの細胞増殖性血管に対する予防薬および治療薬としても有用であり得る。
バルーン損傷非施術群、バルーン損傷施術後PBSにて処理した群、バルーン損傷施術後LacZ処理群、およびバルーン損傷施術後PEDF発現ベクター処理群の処理後14日の血管における、内皮の形態を示す顕微鏡写真ならびに内腔面積およびI/M比を示すグラフである。 バルーン損傷非施術群、バルーン損傷施術後PBSにて処理した群、バルーン損傷施術後LacZ処理群、およびバルーン損傷施術後PEDF発現ベクター処理群の処理後14日の血管における、内皮の細胞増殖マーカーPCNA陽性細胞を示す顕微鏡写真および内皮の全細胞に対するPCNA陽性細胞の割合を示すグラフである。 バルーン損傷非施術群、バルーン損傷施術後PBSにて処理した群、バルーン損傷施術後LacZ処理群、およびバルーン損傷施術後PEDF発現ベクター処理群の処理後14日の血管における、内皮の酸化ストレスマーカーgp91およびp22の発現を示す電気泳動写真である。

Claims (3)

  1. 以下:
    (a)色素上皮由来因子;
    (b)該色素上皮由来因子(a)と機能的に同等な特性を有する、該因子の変異体;
    (c)該因子(a)または該変異体(b)をコードする核酸分子;および
    (d)該核酸分子(c)を含むベクター;
    からなる群から選択される活性因子からなる、血管内膜肥厚抑制剤。
  2. 以下:
    (a)色素上皮由来因子;
    (b)該色素上皮由来因子(a)と機能的に同等な特性を有する、該因子の変異体;
    (c)該因子(a)または該変異体(b)をコードする核酸分子;および
    (d)該核酸分子(c)を含むベクター;
    からなる群から選択される活性因子からなる、血管再狭窄予防剤。
  3. 請求項2に記載の血管再狭窄予防剤を付加させたステント。
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