JP2007263616A - 土壌中の化学物質測定方法及び装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 土壌の間隙水中に存在する、測定対象となる化学物質において、その酸化または還元反応に伴い生じる酸化還元電流が、当該間隙水中の化学物質濃度に比例することを用い、測定対象の化学物質を含む土壌中に導電性の電極を配置し、この電極の電位を、この土壌の間隙水中に含まれる当該化学物質の酸化反応の平衡電位より貴な電位、または還元反応の平衡電位より卑な電位に保ち、そのとき当該電極表面で進行する酸化または還元反応に伴い生じる酸化または還元電流を測定することにより、当該化学物質を検出しその濃度を定量する。
【選択図】図1
Description
土壌中に含まれる侵入要素に、溶媒を導入させる要素、侵入液を通した状態で電圧差を測定することにより化学成分を検出するシステムが知られている(特許文献1)。
又抽出液からイオン透過膜により抽出する電気透析することも知られている(特許文献2)。
土壌中に含まれる金属イオン濃度を定量する方法として、土壌を採取した後、目的とする金属イオンを化学的に抽出しうる抽出剤を加えた水溶液中にこれを分散させ、この金属イオンを水溶液中に抽出・溶解させた後、この水溶液を湿式分析やイオンセンサー、イオンクロマトグラフ等を用いる機器分析により金属イオンの分析を行う手法が通常、広く用いられていた。かかる従来例として、水酸化バリウム水溶液を用いてカリウム、カルシウム、マグネシウム濃度を測定する手法がある(特許文献3)。
この手法はまず、分析する土壌を採取し水酸化バリウム水溶液中に分散させ、往復振とう機により振とうした後、遠心分離、濾過し、土壌中のカリウム、カルシウム、マグネシウムイオンを抽出した抽出液を作成する。さらにこの抽出液に硫酸水溶液を加え、中和すると共に水溶液中のバリウムイオンを難溶性の硫酸バリウムとして析出させ濾過し、水溶液中のバリウムを除去したカリウム、カルシウム、マグネシウムイオン水溶液とする。これをマルチイオンメータで測定し、カリウム、カルシウム、マグネシウム濃度を同時に測定するものである。
又、複数個の土壌サンプルからイオン化成分を抽出する成分を抽出して、イオン化成分を測定する自動化装置が開発されている(特許文献4、5)。
これは土壌中にセンサーを挿入して測定をおこなうものの、土壌に注水するため土壌の間隙水中の化学物質濃度をそのまま定量するものではなく、また、測定対象は所謂土壌の肥沃さなどを対象とする測定対象物質に限られる。
また、土壌(砂、粘土等も含む)のほか、水溶液を含む汚泥、粉体試料等の内部に検出器本体を埋設して使用することができる。
図1は、一成分の化学物質の測定装置を説明する図を示す。
本発明の測定装置は、検出器本体6の内部を貫通して基準電極5が設けられており、その一方の端部には基準電極5を囲んで、導電性の電極(測定用電極8及び対極7が設けられている検出手段、基準電極5と目的の電位に保ち、電極表面に流れる酸化・還元電流を測定する電源及び信号処理装置2を結線する導線1により構成される測定手段から構成される。
同図では検出器は円筒状になっており、内部の空洞に基準電極が配置されているが、基準電極は検出器外部の測定用電極近傍に配置されてもよい。
この構成とは逆に測定用電極及び対極、或いはそのいずれか一方のみが検出器の円筒内面に配置されてもよい。この際、基準電極は円筒型検出器の内部、外部のいずれにおかれてもよい。
電極表面に流れる酸化・還元電流を測定する電源及び信号処理装置2は、さらに、記録手段によって測定結果を記録することができる。
検出器本体6は電気絶縁性の材料で構成される。
測定に際しては、この基準電極の先端、及び測定用電極、対極は同図に示すように、土壌9中に挿入される。同図では検出器は円筒状になっており、内部の空洞に基準電極が配置されているが、基準電極は検出器外部の測定用電極近傍に配置されてもよい。
本発明の測定装置は、検出器本体6の内部を貫通して基準電極5、14が設けられており、その一方の端部には基準電極5、基準電極B14を囲んで、導電性の電極(測定用電極8及び対極7)及び導電性の電極(測定用電極B15及び対極B13)が設けられている検出手段、基準電極5と目的の電位に保ち、電極表面に流れる酸化・還元電流を測定する電源及び信号処理装置2を結線する導線1により構成される測定手段、基準電極B14と目的の電位に保ち、電極表面に流れる酸化・還元電流を測定する電源及び信号処理装置10を結線する導線1により構成される測定手段から構成されている。
この構成とは逆に測定用電極及び対極、或いはそのいずれか一方のみが検出器の円筒内面に配置されてもよい。この際、基準電極は円筒型検出器の内部、外部のいずれにおかれてもよい。
電極表面に流れる酸化・還元電流を測定する電源及び信号処理装置2は、さらに、記録手段によって測定結果を記録することができる。
検出器本体6は電気絶縁性の材料で構成される。
測定に際しては、この基準電極の先端、及び測定用電極、対極は同図に示すように、土壌9中に挿入される。同図では検出器は円筒状になっており、内部の空洞に基準電極が配置されているが、基準電極は検出器外部の測定用電極近傍に配置されてもよい。
R(酸化を受ける化学物質の意味である)としては、金属及び、その金属化合物イオンとして、Co2+、Ag+、Mn2+、Tl+、Hg2 2+、Sn2+、Cu+、Tl+、Cr2+、U3+、等が、金属化合物以外のイオンとしてCl-、ClO3 -、Br-、CNS-、I-、SO3 2-、CN-、等がある。
また、電荷を持たない溶存分子としてI2、H2O2、H2、等がある。
O(還元を受ける化学物質の意味である)としては、金属及び、その金属化合物イオンとして、Mn3+、MnO4 -、Au3+、Cl2、Cr2O7 -、PdCl6 2-、AuCl4 -、Pd2+、Hg2+、Ag+、PtCl4 2-、PtCl6 2-、PdCl4 2-、UO2 +、BrO3 -、Cu+、Cu2+、Sn4+、Co(NH3)6 3+、UO2 2+、Sn2+、Pb2+、Ni2+、V3+、Co2+、Tl+、In3+、Cd2+、Cr3+、Fe2+、Ga3+、U4+、Zn2+、Cd(CN)4 2-、Mn2+、Zr4+、Ti2+、Al3+、等がある。金属化合物以外のイオンとしてClO3 -、ClO3 -、ClO4 -、IO3 -、ClO2 -、I3 -、ClO4 -、NO3 -、SO3 2-、SO4 2-、AsO2 -、等がある。また、電荷を持たない溶存分子としてCl2、Br2、O2、H2O2、I2、CO2、等がある。
この時の電位は電圧計4で測定され、監視される。この際、電極表面には式(1)のような酸化反応、及び式(2)のような還元反応が進行し、それぞれ式(3)、及び式(4)に示すような、電極表面の化学物質濃度に比例した電流が生じ、対極との間に電流が流れる。
R → R+ + e- (1)
O + e- → O- (2)
I1=AC1・exp{B(E-E1)/KT} (3)
I2=DC2・exp{-G(E-E2)/KT} (4)
ここに、Rは前記酸化を受ける化学物質、R+は前記その酸化により生成した化学物質、Oは還元を受ける化学物質、O-はその還元により生成した化学物質である。上記の化学物質には、各種イオンのほか、水中に溶解しているH2O2、O2、H 2等の本来電荷を持たない化学種も含まれる。
また、I1は上記式(1)の酸化反応により電極表面に発生する電流、A、Bは定数、C1は電極表面におけるRの濃度、Eは電極電位、E1は式(1)の反応に対する平衡電位(酸化電位)、Kは気体定数、Tは温度である。また、I2は上記式(2)の還元反応により電極表面に発生する電流、D、Gは定数、C2は電極表面におけるOの濃度、Eは電極電位、E2は式(2)の反応に対する平衡電位(還元電位)である。
2I- → I2 + 2e- (5)
Sn2+ → Sn4+ + 2e- (6)
また、式(2)の還元反応では、例えば式(7)、式(8)の反応により、間隙水中のFe2+イオンやO2が検出・定量できる。
Fe2+ + 2e- → Fe (7)
O2 + 2H2O + 4e- → 4OH- (8)
この模様を模式的に図3に示す。同図は最も卑な平衡電位を持つ化学物質1(平衡電位:V1)、次に卑な平衡電位を持つ化学物質2(平衡電位:V2)、最も貴な平衡電位を持つ化学物質3(平衡電位:V3)が間隙水中に存在する例を示すものである。
この場合、電極電位がV1においては電流が流れない(複数の化学物質が存在する場合、この電流が流れない電位V1は自然電位と呼ばれる)が、これより貴な電位とすると同図に示す如く酸化電流が流れるようになる。この電流は式(3)に従い増大し、電極電位がV2に達すると化学物質2による酸化反応も進行して同図の様にこの反応による電流も加わり、測定電流は増大する。
同様に電位がV3に達するとこの最も貴な平衡電位を持つ化学物質3の酸化反応による電流も加わり、測定電流は増大する。測定対象物質が化学物質2の場合には電流を測定しながら電位をV1より上昇させ、電位がV2に達したときの電流I2を測定する。さらに電位を上昇させ、このときの測定電流IをIとすると、V2とV3の間の電位領域においてはIとI2との差I-I2が式(3)に従うので、この値を求めることにより、間隙水中の測定対象化学物質濃度を検出・定量することができる。上記は酸化反応に基づき説明したが、これは還元反応においても同様に適用できる。
この例では、図1と同様に、検出器に、第1の化学物質を測定するための電源及び信号処理装置、基準電極、対極が装置されている他、もう一組、第2の化学物質を測定するための電源及び信号処理装置B 10、電流計B 11、電圧計B 12、対極B 13、基準電極B 14、測定用電極B 15が装置されている。測定に際してはこのそれぞれの測定用電極を、それぞれの基準電極に対し別個に、各化学物質の酸化反応の平衡電位より貴または還元反応の平衡電位より卑な電位に保ち、各々独立に測定された電流から、それぞれの化学物質を検出・定量する。図4の例では電源及び信号処理装置及び電極系が2組装置されているが、測定対象とする化学物質の種類が更に多い場合は、その化学物質の数に応じて電源及び信号処理装置、電極系の数を増やせば良い。
図1の装置を用いて粘土(ベントナイト)の間隙水中に含まれるFe2+イオン濃度の測定を行った。
Fe2+イオンを間隙水中に含むベントナイト(間隙水中のFe2+イオン濃度:1.8x10-3mol/kg;重量含水率:98%)中に、図1の検出器を挿入し、電位を平衡電位から卑方向に掃引する際にして流れる電流を測定した。
測定用電極及び対極として白金板、基準電極として塩化銀電極(Ag/AgCl)を使用した。
粘土(ベントナイト)の間隙水中に含まれるFe2+イオン還元に伴う電流−電位曲線の実際の測定結果を図5に示した。-600mVより卑な電位、好適には-700mV以下に測定用電極を保ち、その時流れる電流を測定したものであり、平衡電位(約-600mV)より卑な電位領域で前記式(7)の還元反応による還元電流が観測された結果を示すものである。
以上の結果から、ベントナイトの間隙水中に溶解しているFe2+イオンを検出・定量分析することができることがわかった。
2 電源及び信号処理装置
3 電流計
4 電圧計
5 基準電極
6 検出器本体
7 対極
8 測定用電極
9 土壌
10 電源及び信号処理装置B
11 電流計B
12 電圧計B
13 対極B
14 基準電極B
15 測定用電極B
Claims (8)
- 土壌の間隙水中に含まれる一種類の化学物質を検出・定量する方法において、測定対象の土壌の間隙水を含む土壌中に、導電性の電極を配置し、この電極の電位を、この土壌の間隙水中に含まれる当該化学物質の酸化反応の平衡電位(以下、酸化電位と呼ぶ)より貴な電位、または還元反応の平衡電位(以下、還元電位と呼ぶ)より卑な電位に保ち、そのとき当該電極表面で進行する酸化または還元反応に伴い生じる酸化または還元電流を測定することにより、当該化学物質を検出し濃度を定量することを特徴とする土壌の間隙水中に含まれる化学物質を検出・定量する方法。
- 土壌の間隙水中に含まれる二種類の化学物質を検出・定量する方法において、測定対象の土壌の間隙水を含む土壌中に導電性の電極を配置し、この電極の電位を自然電位より貴方向に、測定対象とする化学物質の酸化電位より貴な電位まで上昇させてこのとき当該電極表面に生じる酸化電流を測定し、測定対象とする化学物質の酸化電位より貴な電位領域における電流より、当該酸化電位以下かつ当該酸化電位傍における酸化電流を減じ、この差に相当する電流値から当該測定対象とする化学物質を検出し濃度を定量するか、或いはこの電極の電位を自然電位より卑方向に、測定対象とする化学物質の還元電位より卑な電位まで降下させてこのとき当該電極表面に生じる還元電流を測定し、測定対象とする化学物質の還元電位より卑な電位領域における電流から、当該還元電位以上かつ当該還元電位傍における還元電流を減じ、この差に相当する電流値から当該測定対象とする化学物質を検出し濃度を定量することを特徴とする土壌の間隙水中に含まれる化学物質を検出・定量する方法。
- 土壌の間隙水中に含まれる一種類の化学物質を検出・定量する装置において、検出器本体6の内部を貫通して測定対象の土壌の間隙水を含む土壌中に接触する基準電極5が設けられており、その一方の端部には前記基準電極5を囲んで、測定対象の土壌の間隙水を含む土壌中に接触する導電性の電極(測定用電極8及び対極7)が設けられている検出手段、基準電極5と目的の電位に保ち、電極表面に流れる酸化・還元電流を測定する電源及び信号処理装置2を結線する導線1により構成される測定手段から構成される検出器であることを特徴とする土壌の間隙水中に含まれる化学物質を検出・定量する装置。
- 土壌の間隙水中に含まれる二種類の化学物質を検出・定量する装置において、検出器本体6の内部を貫通して測定対象の土壌の間隙水を含む土壌中に接触する基準電極5、14が設けられており、その一方の端部には前記基準電極5、基準電極B14を囲んで、測定対象の土壌の間隙水を含む土壌中に接触する導電性の電極(測定用電極8及び対極7)及び測定対象の土壌の間隙水を含む土壌中に接触する導電性の電極(測定用電極B15及び対極B13)が設けられている検出手段、基準電極5と目的の電位に保ち、電極表面に流れる酸化・還元電流を測定する電源及び信号処理装置2を結線する導線1により構成される測定手段、基準電極B14と目的の電位に保ち、電極表面に流れる酸化・還元電流を測定する電源及び信号処理装置10を結線する導線1により構成される測定手段から構成され検出器であることを特徴とする土壌の間隙水中に含まれる二成分化学物質を検出・定量する装置。
- 測定対象とする化学物質が土壌中のFe2+イオンであり、導電性電極電位をの電位を塩化銀電極(Ag/AgCl)電位に対し-600mVより卑とした電位領域に設定し、このとき生じる還元電流からFe2+イオンを検出・定量することを特徴とする請求項1記載の化学物質測定方法。
- 測定対象とする化学物質が土壌中のFe2+イオンであり、導電性電極電位の電位を塩化銀電極(Ag/AgCl)電位に対し-600mVより卑とした電位領域に設定し、このとき生じる還元電流からFe2+イオンを検出・定量することを特徴とする請求項3記載の化学物質測定装置。
- 測定対象とする土壌が放射性廃棄物の地層処分技術において地下処分場に充填されるベントナイトであり、かつ測定対象とする化学物質が当該ベントナイト中のFe2+イオンであり、導電性電極電位をの電位を塩化銀電極(Ag/AgCl)電位に対し-600mVより卑とした電位領域に設定し、このとき生じる還元電流からFe2+イオンを検出・定量することを特徴とする請求項1記載の化学物質測定方法。
- 測定対象とする土壌が放射性廃棄物の地層処分技術において地下処分場に充填されるベントナイトであり、かつ測定対象とする化学物質が当該ベントナイト中のFe2+イオンであり、導電性電極電位の電位を塩化銀電極(Ag/AgCl)電位に対し-600mVより卑とした電位領域に設定し、このとき生じる還元電流からFe2+イオンを検出・定量することを特徴とする請求項3記載の化学物質測定装置。
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