JP2007254407A - 遺体保存用固定液及び遺体保存固定方法 - Google Patents

遺体保存用固定液及び遺体保存固定方法 Download PDF

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Abstract

【課題】遺体の腐敗及び遺族或いは遺体の清浄処理を行う業者の細菌感染を防止するだけでなく、簡便な操作で遺体をできるだけ生前に近い状態で保存するための技術を提供する
【解決手段】アルコール濃度が38〜85容量%である低級アルコール、グルタルアルデヒド1.2〜10容量%及び水を含む遺体保存用固定液において、固定液のpHが5.0〜6.8であることを特徴とする、遺体保存用固定液。
【選択図】図1

Description

本発明は、遺体を一定期間保存するための遺体保存用固定液及び遺体保存・固定方法に関する。
本発明の固定液は、特にエンバーミングに好ましく適用できる。
エンバーミングは、遺体を1〜2週間或いはそれ以上の期間保存し、遺体の腐敗及び遺族の細菌感染を防止し、葬儀を円滑にすすめるための技術である。また、遺体を長距離移送させる場合や、事故等により遺体が損傷を受けている場合にも必要とされる。
遺体の保存のために、棺を冷却する方法が知られているが(特許文献1)、この方法では長期間の保存は困難であり、また、遺体は棺の中で保存する必要があり、遺族が遺体に触れることは難しくなる。
エンバーミングの手法として、腐敗しやすい内臓を摘出する方法や、ホルマリン固定液を血管からポンプで圧入し、血液を固定液で置換する方法が知られているが(特許文献2)、この方法では、内臓を遺体から取り出す際に感染が起こる危険性があり、また、エンバーミング処置が大がかりなものになる。さらに、ホルマリンは薬品臭が強く、遺体の保存・固定に時間がかかり、腐食が進むだけでなく、遺体が硬くなるため、遺族が遺体に触れたときの感触が生前の状態とは異なるものになる欠点がある。
アルコールとグルタルアルデヒドを併用した遺体固定液が特許文献3に開示されているが、この固定液は十分な遺体の固定は行えないものである。
特開平9-285507号公報 特開平6-24901号公報 特表平9-506352
本発明は、遺体の腐敗及び遺族或いは遺体の清浄処理を行う業者の細菌感染を防止するだけでなく、簡便な操作で、遺体をできるだけ生前に近い状態で保存するための技術を提供することを目的とする。
本発明者は、上記課題に鑑み検討を重ねた結果、固定剤としてグルタルアルデヒドと特定濃度のアルコールを組み合わせた保存液を使用し、遺体に注入することで、遺体を生前に近い状態で保存することができ、遺体の腐敗や感染のリスクを実質的に抑制できることを見出し、本発明を完成した。
本発明は以下の固定液及び固定化方法に関する。
1. アルコール濃度が38〜85容量%である低級アルコール、グルタルアルデヒド1.2〜10容量%及び水を含む遺体保存用固定液において、固定液のpHが5.0〜6.8であることを特徴とする、遺体保存用固定液。
2. 低級アルコールがエタノールである項1に記載の固定液。
3. エタノールの濃度が38〜75容量%である項1または2に記載の固定液。
4. グルタルアルデヒドの濃度が1〜5容量%である項1〜3のいずれかに記載の固定液。
5. 水が緩衝液である項1〜4のいずれかに記載の固定液。
6. 界面活性剤をさらに含む項1〜5のいずれかに記載の固定液。
7. 固定液のpHが5.6〜6.5である項1〜6のいずれかに記載の固定液。
8. 項1〜7のいずれかに記載の固定液を遺体に注入することを特徴とする遺体を保存及び固定する方法。
9. 項1〜7のいずれかに記載の固定液を腹腔内に注入する項7に記載の方法。
10. 固定液の注入量が、遺体の体重kg当たり10mL〜100mLである項8または9に記載の方法。
11. アルコール濃度が38〜85容量%、グルタルアルデヒド濃度が1.2〜10容量%及び水を含む遺体保存用固定液のpHを5.0〜6.8に調整することを特徴とする遺体固定液の安定化方法。
本発明によれば、遺体の腐敗を1〜2週間またはそれ以上(好ましくは3週間以上)、真夏の時期においてもほとんど腐敗臭を感じない程度にまで保存することができる。
また、グルタルアルデヒドとアルコールを併用し、pHを特定の範囲に調整することで遺体の固定・保存を速やかに行うことができ、死後2日程度経過した遺体であっても、十分にエンバーミング処置を行い、遺体に触れる遺族等が細菌感染する危険性を実質的に回避できる。また、固定液を長期間保存した場合にも、グルタルアルデヒドの分解を低く抑えることができる。
本発明の遺体を固定ないし保存する方法では、固定液を注入するだけでよく、大規模な設備は必要なく感染のおそれもない。
さらに、遺体に触れたときの感触が生前と同じかそれに近く、従来のエンバーミング処置した遺体のように硬くないので、遺族が心情的に受け入れやすい状態に保存することができる。
本発明によれば、固定後の遺体について、必要があればさらに解剖を行い病因の特定が可能であるため、例えば大規模災害などにも対応できる。
本発明では、遺体の固定・保存にグルタルアルデヒドと特定濃度のアルコールを併用する。グルタルアルデヒドは、ホルマリンに比較して保存・固定化のための処置の時間が短いため、死後24時間程度経過した遺体であっても、本発明の固定液を注入することにより、遺体からの腐敗臭の発生を抑制することができる。グルタルアルデヒドの濃度は、1.2〜10容量%程度、好ましくは1.2〜5容量%程度、より好ましくは1.3〜2容量%程度である。グルタルアルデヒドが1.2容量%未満であると、遺体を固定・保存することが不十分になる。また、グルタルアルデヒド濃度が10容量%を超えると、薬品臭が発生し、遺体が硬くなり過ぎるからである。なお、グルタルアルデヒド濃度は、通常は、1.3〜2容量%程度であるが、胸水や腹水のたまった遺体、あるいは溺死(海、河、池、あるいは浴槽など)により多量の水分を飲んだ遺体などでは、通常の固定液を注入すると体内で希釈されて固定が不十分になる場合があるので、このような遺体では2〜10容量%あるいはそれ以上の濃度のグルタルアルデヒドを含む固定液を使用するのが望ましい。
本発明の固定液に使用される低級アルコールとしては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノールなどの炭素数1〜3のアルコールが挙げられ、好ましくはエタノールである。
本発明の固定液は、pHを5〜6.8,好ましくは5.6〜6.5に調整する。pHが7を超えると、グルタルアルデヒドの分解が進むため、pHは6.8以下に調整される。また、グルタルアルデヒドは、pHが低すぎても分解する傾向がある。
本発明の固定液に含まれる水としては、水道水、蒸留水、イオン交換水等の任意の水を使用でき、緩衝液を使用することも可能である。緩衝液としては、pHが5〜6.8,好ましくはpHが5.6〜6.5の範囲で緩衝能を有するものであればよく、特に限定されないが、例えばリン酸緩衝液、クエン酸緩衝液、酢酸緩衝液、コハク酸緩衝液、などが挙げられ、具体的にはClark-Lubsの緩衝溶液、Mcllvaine緩衝溶液(クエン酸−Na2HPO4-NaOH)、Sorensen緩衝溶液、Walpole緩衝液、クエン酸ナトリウム-水酸化ナトリウム、コハク酸-ホウ砂緩衝液、クエン酸水素カリウム-ホウ砂緩衝液などが挙げられる。などが使用できる。水として、緩衝剤の他に生理食塩水などの塩類(例えば塩化ナトリウム)を含む溶液を使用することもできる。水の浸透圧としては、体液に近い状態を保つことが望ましい。体液は、ヒトの遺体を対象とした場合には0.9g/L(0.145mol/L)であるので、その前後、例えば0.7〜1.1g/L、特に0.8〜1.0g/Lが望ましい。
本発明の固定液である水、アルコールとグルタルアルデヒドの混合物は、必要であれば水、アルコール及びグルタルアルデヒドを任意の順序で配合して調製することができる。
本発明の固定液において、アルコール濃度は38〜85容量%、好ましくは40〜80容量%、より好ましくは42〜75容量%、さらに好ましくは45〜70容量%である。アルコール濃度が38容量%未満であると、十分量(例えば1.25容量%)のグルタルアルデヒドを使用しても遺体が未固定のままとなる。一方、アルコール濃度が85容量%を超えると、組織の軽度の崩れが認められる。水の配合量は、1重量%以上、好ましくは3重量%以上であり、60重量%以下、好ましくは55重量%以下、特に50重量%以下が望ましい。
本発明の固定液には界面活性剤を配合することができる。使用可能な界面活性剤の種類に特に制限はなく、具体的には、Tween 20、Tween 80、Triton X100、ソルビタンモノオレエート等が挙げられる。界面活性剤は、通常5容量%以下、好ましくは0.05〜3容量%程度配合できる。
本発明の固定液には、さらに着色剤を配合することもできる。例えば赤、ピンク、オレンジ系の着色剤を配合しておけば、該着色剤が皮膚に拡散し、赤みの差した外観になるため好ましい。
本発明の固定液は、体内に注入することで、遺体の保存・固定化処理を行うことができる。注入部位としては、腹腔、胸腔、皮下、消化管等が挙げられ、これらの1箇所または複数箇所に注入することができる。注入は、本発明の固定液が腐食しやすい内臓全体を固定できるような量及び部位に行うのが特に好ましい。なお、筋肉組織は、一般的に腐食が遅く、腐敗臭の発生は少ないため、固定液の注入は必ずしも必要ないが、遺体の保存が長期間にわたる場合や、夏などの気温の高い時期或いは場所で遺体を保存する場合には筋肉組織等の内臓以外の部位についても固定液を注入することができる。但し、注入液を過度に注入すると、遺体からの液漏れが起こる可能性があるため、注入量に注意する必要がある。
注射痕については、基本的には処理する必要はないが、大きい注射針を用いた場合には、医療用ボンド(医療用瞬間接着剤)を併用しても良い。こうすることで、体内からの液漏れを防ぐことが出来る。特に、胸腔内または直接心臓内に入れる場合が発生した際には有効である。
腹水・胸水のある遺体、溺死した遺体では、グルタルアルデヒドの濃度を例えば通常(1.3容量%〜2容量%)の1.5倍以上、特に1.5倍〜2倍程度使用することも可能である。溺死した遺体、腹水・胸水のある遺体などの水分を多く含む遺体では、腹水・胸水、あるいは溺死の際に飲み込んだ水分を抜き出した後に固定化するのが好ましい。体内の過剰な水分の排除が困難である場合には、その分だけ固定液中のグルタルアルデヒド濃度を濃くする(例えば3〜10容量%、あるいは5〜10容量%)のが好ましい。腹水は回盲部周辺、左右の悸肋部周辺、臍周辺から抜くことができる。胸水は左右の背部から10cm程度の位置の第二〜五肋間、第八〜十二肋間辺りから抜くことができ、好ましくは第三肋間、第十肋間である。抜き終わった後、注射痕を利用して固定液を注入するのがよい。
浴槽などで溺死した遺体の場合、腹腔内に固定液を注入するだけでは、身体全体のガスの発生を抑えるのが難しい場合がある。溺死遺体では表皮下の脂肪織内にガスが発生する場合があり、これを抑制するためには、皮下にも少量ずつ万遍なく固定液を注入するのが望ましい。例えば溺死した遺体では、胸部および腹部を圧迫して、可能な限りの水分等を体外に排出し、胸部その後、腹部に回盲部周辺および左右の悸肋部周辺などから固定液を注入するが、頭部(鼻からの泡沫状のガスの発生を抑える)、前胸部(胸部がガスの発生によりふくらむのを防止する)などにも固定液を注入し、これらの部位からのガスの発生を抑えるのが望ましい。
例えば、死後10日以上経過した高度腐敗の遺体は、身体のいたるところから浸出液による水疱がみられ、身体は脂肪融解でやわらかく、体色はうっ血によって黒化し、ガスの発生も見られる。このような場合、通常の濃度の固定液ではなく、高濃度の固定液(例えば2〜10容量%、あるいは3〜10容量%)を使用するのがよい。また、その際には必ず、ガス抜きを行ってから固定液を注入する。
固定液が注入される遺体は、ヒト(成人及び乳幼児を含む)、哺乳動物(イヌ、ネコ、サル、リス、リスザル、ブタ、ハムスター、モルモット、ウシ、ウマ、フェレット、ウサギ、ヤギ、ヒツジ、ペンギンなど)、家禽類(ニワトリ、チャボ、ダチョウ、アヒル、インコ、ブンチョウなど)、爬虫類(カメ、ワニ、カメレオン、トカゲなど)等の動物の遺体が挙げられる。
本発明の固定液の注入量は、動物の種類ないし大きさ、死後の経過時間等により変動するが、通常体重kg当たり10〜100mL程度、好ましくは15〜50mL程度、より好ましくは25〜40mL程度である。
本発明の固定液は、ヒトを含む対象動物の体格に合わせて慣用の注射針を適宜用いることによって遺体に注入することができる。例えばヒトの場合は、通常18G(ゲージ)または21Gの注射針を用いるのが好ましく、顔等の見える箇所には、26Gまたは27Gの注射針を用いることが好ましい。また小動物(ネコ、ネズミ等)の場合は、通常は21Gまたは23Gの注射針を用いるのが好ましい。必要であれば、ディスポーザブル注射針を用いることができる。注射後は注入口を縫合してもよいが、医療用の接着剤で注入口を塞ぐのが便利である。固定液の注入には、必要があればポンプを用いることも可能である。
本発明の固定液は安定で、通常の冷蔵保存であれば調製後数ヶ月単位で保存可能である。従って、通常は配合液を事前に調製して使用するのが便利である。しかし、必要であれば、用時調製して使用することもできる。
固定液は、一度に注入するのが好ましいが、断続的に注入しても支障はない。
1つの好ましい実施形態において、本発明の固定液を遺体に注入する前に、遺体全体を強酸性の電解水などを含む布で拭いて清潔にし、細菌感染を防ぐ措置を施しておくのが好ましい。
以下、本発明を実施例及び比較例を用いてより詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
なお、固定液の作成には、以下には下記の薬品を使用した。
(固定液の原料)
エタノール:99.5%以上合成(一級)
グルタルアルデヒド:25%水溶液(一級)
1,2−プロパンジオール:99.0%(一級)
2−フェノキシエタノール:98.0%(一級)
グリセリン:99.0%以上(一級)
塩化チタン(III)溶液:20%以上(一級)
PBS:pH=7.40調整済み
クエン酸バッファー:pH=6.00調整済み

pHメーター:HORIBA Navi pH METER F-52
遺体の固定化は、全ての実施例において、以下の方法を用いた。
(固定化方法) 死亡直後のマウスの腹腔内にそれぞれ作成した固定液を5mlシリンジにて注入した。すべての実験において同じ操作を繰り返した。
実施例1(固定液の安定性に対するpHの影響)
緩衝液として下記表1に示した各pHのSorensen緩衝液を用いた。
Figure 2007254407
グルタルアルデヒド(25%)10mL、エタノール45mL、上記表の各pHの緩衝液45mLを加え、各pHの固定液を調整した。
各pHの固定液10mLずつをガラス試験管(褐色)10mL用に入れ密栓し、安定性試験用の検体とした。
得られた検体を40℃で0,15及び30日間保存した。
グルタルアルデヒド濃度は、下記のガスクロマトグラフ法により測定した
測定法
本品5mLを正確に量り、内標準溶液1mLを正確に加えて試料溶液とする。別に標準として25%グルタルアルデヒド溶液2mLを正確に量り、50%エタノールを加えて正確に20mLとする。この液5mLを正確に量り、内標準溶液1mLを正確に加えて標準溶液とする。試料溶液、標準溶液の1μLにつき、次の条件でガスクロマトグラフ法により試験を行い、内標準物質に対するグルタルアルデヒドのピーク面積比QT及びQSを求める。
固定液中のグルタルアルデヒド量(%)
=標準グルタルアルデヒド量(%)×(QT/QS)×1/10
なお、内標準溶液は、1-ペンタノール1mLを正確に量り、50%エタノールを加えて正確に20mLとして調製した。
結果を表2に示す。
Figure 2007254407
上記の結果から、pH5.0〜6.8、特にpH5.6〜6.5で、十分な安定性を有することが明らかになった。
実施例2
グルタルアルデヒド(25%)5mL、エタノール22.5mL 各緩衝液(実施例1と同様に調製、pHは各々4.56、5.49、6.51、7.43)22.5mLを加えて4種類の固定液を調製した。
各固定液は、グルタルアルデヒド2.5%、エタノール44.8%を含む。
該固定液を用いてマウスの遺体を固定化した結果を図1に示す。
図1の結果から、固定液のpHの相違による固定化作用への影響は、肉眼的にも組織学的にも見られなかった。
従来、殺菌・消毒などに使用されているグルタルアルデヒド溶液は、弱アルカリ性(pH7.4〜8程度)あるいは酸性(pH4前後)で使用されるのが通常であった。これは、これらのpH領域でグルタルアルデヒドの生理学的効果が高くなるからである。遺体固定化に対しては、pHの効果は認められなかったことと、実施例1の結果を考慮すると、本発明の遺体固定液では、弱酸性(pH5.0〜6.8、特にpH5.6〜6.5)で保存するのがよいことが明らかになった。
実施例3
実施例2の固定液のグルタルアルデヒド(2.5%)を100%とし、このグルタルアルデヒド量を段階的に低下させて(表3)、固定化可能な範囲を検討した。
遺体固定液として以下の組成のもの(pHは緩衝液で7.4に調整した)を使用し、マウスの遺体の固定化を行った。
結果を図2(80〜40%)、図3(30〜20%)に示す。
80%:グルタルアルデヒド(25%)4mL+エタノール23mL+緩衝液(pH7.4)23mL
65%:グルタルアルデヒド(25%)3.25mL+エタノール23.375mL+緩衝液(pH7.4)23.375mL
50%:グルタルアルデヒド(25%)2.5mL+エタノール23.75mL+緩衝液(pH7.4)23.75mL
40%:グルタルアルデヒド(25%)2mL+エタノール24mL+緩衝液(pH7.4)24mL
30%:グルタルアルデヒド(25%)1.5mL+エタノール24.25mL+緩衝液(pH7.4)24.25mL
20%:グルタルアルデヒド(25%)1mL+エタノール24.5mL+緩衝液(pH7.4)24.5mL
グルタルアルデヒドの残存量が50%以上(グルタルアルデヒド1.25%以上)では、肉眼的にも組織学的にも遺体の固定が可能であることが明らかになった。
実施例4
75歳 男性 死因:癌性腹膜炎(胃ガン後)
表情:皮膚は。やせ型で頬はこけていた。浮腫、うっ血は見られなかった。
処置:50mLシリンジ+18G注射針、50mLシリンジ+18Gスパイナル針を使い分けて、回盲部周辺、臍周辺、左右の悸肋部周辺から合計約2.5L抜いた。同様の器具を使用して左右の第三肋間、第十肋間から右は合計約1.2L、左は合計約1.0L抜いた。その後、注射痕を利用して高濃度の固定液(グルタルアルデヒド2.5容量%)(以下実施例4における固定液はこの濃度を示すものとする)を腹部に1.5L、左右の肺に各500mLずつ注入した。第二肋間胸骨の左縁と右縁からも50mLシリンジ+18Gスパイナル針で固定液を各100mL注入した。
下顎骨下縁との耳介部分下縁の周辺にあるくぼみから、30mLシリンジ+18Gスパイナル針で穿刺を行い、脳幹部分に固定液を約50mL注入した。また、スパイナル針を引き戻しながら首の後ろの部分に固定液を約100mL注入した。さらに、左右の首から肩の部分(僧帽筋の周辺)に30mLシリンジ+18Gスパイナル針を用いて固定液を各約100mL注入した。
舌の部分には、30mLシリンジ+18Gスパイナル針を用いて固定液を約50mL注入した。
顔全体には、10mLシリンジ+26G注射針を用いて固定液を約100mL注入した。
ネラトンカテーテルを用いて気管内に固定液を約50mL、食道に固定液を約50mL注入した。
セーフティーセットを用いて、肛門・気管・食道に高感度のジェルを入れた。
左右の手掌部分の浮腫が強かったので、30mLシリンジ+21G注射針を用いて固定液を各約20mL注入した。
左右の足の土踏まずの周辺にも30mLシリンジ+21G注射針を用いて固定液を各約20mL注入した。
固定液の総使用料は約3.5Lであった。
結果:上記の固定術によって、腐敗臭の発生もなく、皮膚は柔らかいまま11日間保存することができた。変化としては、10日目あたりから軽度の眼球の陥没が見られた程度であった。腹水と胸水を可能な限り抜いたことに加えて、高濃度(グルタルアルデヒド2.5容量%)のものを使用したことで、固定液が大幅に希釈されず、固定がうまく行ったことと思われる。
実施例5
76歳 男性 死因:心疾患(推定)(死後10日以上経過)
表情:うっ血によって顔は黒くなっており、軽度のガスの発生で全体がふくらんでいた。眼球の突出はなかったが、舌は軽度突出していた。しかし、入れ歯のため口腔内に収納されていた。腐敗が高度に進行していたためが、口からでた胃内容が固まっていた。身体全体が柔らかく、背部にかけて多数の浸出液による水疱が見られ、ガスも発生していた。かなりの腐敗臭があった。
処置:18Gの注射針を使用して、身体にたまったガスは腹部を圧迫しながら抜いた。その注射痕を利用して、50mLシリンジ+18Gスパイナル針を使用して、高濃度(グルタルアルデヒド2.5容量%)(以下実施例5における固定液はこの濃度を示すものとする)の固定液を腹部全体に1L注入した。
50mLシリンジ+18Gスパイナル針を使用して、固定液を左右の肺に各400mLずつ注入した。
左右の下顎骨下縁との耳介部分下縁の周辺にあるくぼみから、30mLシリンジ+18Gスパイナル針で穿刺を行い、脳幹部分に固定液を約50mL注入した。また、スパイナル針を引き戻しながら首の後ろの部分に固定液を約100mL注入した。さらに、左右の首から肩の部分(僧帽筋の周辺)に30mLシリンジ+18Gスパイナル針を用いて固定液を各約100mL注入した。
舌の部分には、30mLシリンジ+18Gスパイナル針を用いて固定液を約50mL注入した。
顔全体には、10mLシリンジ+26G注射針を用いて固定液を約200mL注入した。
ネラトンカテーテルを用いて気管内に固定液を約50mL、食道に固定液を約50mL注入した。
セーフティーセットを用いて、肛門・気管・食道に高感度のジェルを入れた。
左右の手掌部分には、30mLシリンジ+21G注射針を用いて固定液を各約30mL注入した。
左右の鼡径部から、30mLシリンジ+18Gスパイナル針を用いて固定液を約100mLずつ注入した。
左右の足の土踏まずの周辺にも30mLシリンジ+21G注射針を用いて固定液を各約50mL注入した。
固定液の総使用料は約2.8Lであった。
結果:上記処置によって、腐敗臭は著しく軽減され、固定ができた。顔については黒色に変化したものは軽減されなかったが、表情は生前に近い状態に回復できた。
考察:上記結果をふまえて、今後体内に水分が含まれた遺体に対しては、高濃度(グルタルアルデヒド2.5容量%)のものが有効であることが分かった。さらに、首から肩にかけての部分を固定することが、重要であることが分かった。
実施例2の結果を示す。 実施例3のグルタルアルデヒド(80%,65%,50%,40%)の結果を示す。 実施例3のグルタルアルデヒド(30%,20%)の結果を示す。

Claims (11)

  1. アルコール濃度が38〜85容量%である低級アルコール、グルタルアルデヒド1.2〜10容量%及び水を含む遺体保存用固定液において、固定液のpHが5.0〜6.8であることを特徴とする、遺体保存用固定液。
  2. 低級アルコールがエタノールである請求項1に記載の固定液。
  3. エタノールの濃度が38〜75容量%である請求項1または2に記載の固定液。
  4. グルタルアルデヒドの濃度が1〜5容量%である請求項1〜3のいずれかに記載の固定液。
  5. 水が緩衝液である請求項1〜4のいずれかに記載の固定液。
  6. 界面活性剤をさらに含む請求項1〜5のいずれかに記載の固定液。
  7. 固定液のpHが5.6〜6.5である請求項1〜6のいずれかに記載の固定液。
  8. 請求項1〜7のいずれかに記載の固定液を遺体に注入することを特徴とする遺体を保存及び固定する方法。
  9. 請求項1〜7のいずれかに記載の固定液を腹腔内に注入する請求項7に記載の方法。
  10. 固定液の注入量が、遺体の体重kg当たり10mL〜100mLである請求項8または9に記載の方法。
  11. アルコール濃度が38〜85容量%、グルタルアルデヒド濃度が1.2〜10容量%及び水を含む遺体保存用固定液のpHを5.0〜6.8に調整することを特徴とする遺体固定液の安定化方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2015086190A (ja) * 2013-10-31 2015-05-07 国立大学法人 大分大学 死体保存用注入液
CN106719598A (zh) * 2016-11-28 2017-05-31 张家港市德仁科教仪器设备有限公司 一种组合物以及用该组合物制备的环保标本保存液
CN111280161A (zh) * 2018-12-06 2020-06-16 西安培华学院 一种生物标本保存液及其制备方法

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