JP2007254289A - 免疫グロブリンを有効成分とする自己免疫疾患治療剤 - Google Patents

免疫グロブリンを有効成分とする自己免疫疾患治療剤 Download PDF

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Abstract

【課題】 単球の樹状細胞への分化を抑制する方法及びIVIgを有効成分として含有する自己免疫疾患治療薬を提供する。
【解決手段】 静脈注射用免疫グロブリン製剤(IVIg)を用いて、ヒト単球の未成熟樹状細胞への分化に関与するCDla及び未成熟樹状細胞の成熟樹状細胞への分化に関与するCD40、CD80及びCD49dの発現を抑制する方法、IVIgを有効成分として含有するヒト単球の樹状細胞への分化抑制剤及びIVIgを有効成分として含有する自己免疫疾患治療剤。
【選択図】 なし

Description

本願発明は、静脈注射用免疫グロブリン製剤(IVIg)を用いた自己免疫疾患治療剤に関する。詳細には、静脈注射用免疫グロブリン製剤(IVIg)を用いてヒト単球の未成熟樹状細胞への分化及び未成熟樹状細胞の成熟樹状細胞への分化を抑制することにより、とりわけ細胞性免疫応答による慢性炎症を主な原因として起こる再発性の自己免疫疾患を治療するための医薬品に関する。
自己免疫疾患は、免疫系が内因性抗原に対する自己抗体を作り出すことで起こる疾患で、外部環境の急激な変化、特に複合汚染、食生活の変化、多様なストレス等により引き起こされる。自己免疫疾患は、臓器特異的自己免疫疾患と臓器非特異的自己免疫疾患に大きく2つに分けられる。臓器特異的自己免疫疾患には、慢性甲状腺炎(橋本病)、原発性粘液水腫、甲状腺中毒症、悪性貧血、グッドパスチャー症候群、急性進行性糸球体腎炎、重症筋無力症、尋常性天疱瘡、水疱性類天疱瘡、インスリン抵抗性糖尿病、若年性糖尿病、アジソン病、萎縮性胃炎(自己免疫性萎縮性胃炎)、男性不妊症、早発性更年期、水晶体原性ぶどう膜炎、多発性硬化症、潰瘍性大腸炎、原発性胆汁性肝硬変、慢性活動性肝炎、自己免疫性溶血性貧血、発作性血色素尿症(発作性ヘモグロビン尿症)、特発性血小板減少性紫斑病などがある。
現在は、自己免疫疾患を治療するために、T細胞、B細胞、抗原提示細胞及び顆粒球の分化や機能を抑制する薬剤が用いられている。例えば、慢性関節リウマチに対して、抗TNFα抗体や、抗IL-6抗体、抗IL-6レセプター抗体や抗ICAM-1抗体などの生物製剤の投与が有効との報告がある。しかしながら、これらの細胞上の標的分子に対する単クローン抗体製剤は、顕著な薬効を示す一方で、感染症や脳炎の発症が見られるなど、いくつかの問題をかかえている。
一方、古くから静脈注射用免疫グロブリン製剤(IVIg)を大量投与することにより、自己免疫疾患の改善が見られることが経験的に知られていた(例えば、非特許文献7参照)が、その作用機序は明らかにされていない。
自己免疫疾患は、以下のメカニズムにより引き起こされる。すなわち、ヒト単球は、未成熟樹状細胞を経て、クラスII主要組織適合遺伝子複合体クラスII分子(MHCクラスII分子)とともに共刺激分子であるCD40やCD80を過剰に発現した抗原提示能を持つ成熟樹状細胞に分化する。成熟樹状細胞は、分化の過程において接着因子の一つα4-インテグリン(CD49d)をその細胞表面上に発現することによって、血管壁を通過して臓器や脳脊髄関門を通過して中枢神経系内に浸潤し、そこに存在する自己反応性T細胞と結合してこれを活性化する(例えば、非特許文献1参照)。活性化したT細胞から放出される炎症性サイトカインは、慢性的に自己組織と反応して自己免疫疾患を誘発する。したがって、CD40、D80及びCD49dなどの過剰発現を抑える方法は、自己免疫疾患を治療する上で有効な方法と考えられる。
1994年に末梢血単核球の付着細胞分画を顆粒球・マクロファージ-コロニー刺激因子(GM-CSF)およびインターロイキン4(IL-4)で6〜7日間培養すると樹状細胞に分化することが報告された(例えば、非特許文献2参照)。樹状細胞の誘導法の中で最も簡便であるため現在最もよく用いられている方法である。GM-CSFとIL-4で誘導された樹状細胞は未成熟樹状細胞と認識されており、その後成熟化を促す因子として、LPSやTNF-α、Type 1 IFN (IFN-α、β)、CpG、monocyte conditioned medium、サイトカインカクテル(PGE2、IL-1β、TNF-α、IL-6)、OK-432、Poly I:C、CD40 ligand(CD40L)で刺激することにより成熟樹状細胞へと分化することが知られているが、いずれの方法が最も良いかについては結論が出ていない(例えば、非特許文献3参照)。
BaryJらは、近年強力な抗原提示細胞として注目を集めるようになった樹状細胞について、自己免疫疾患発症との関連性を想定し、樹状細胞の分化に及ぼすIVIgの影響について報告した(例えば、非特許文献4参照)。その中で彼らは、in vitroのヒト末梢血単球由来樹状細胞分化系を用いて、LPS刺激に伴う共刺激分子(CD40、CD80)の発現、未成熟樹状細胞が糖脂質を取り込む際に必要なCD1aの発現、及び成熟樹状細胞がT細胞を活性化するときに必要な分子(CD83)の発現が、IVIgの添加によって僅かに抑制されることを明らかにした。さらに、未成熟樹状細胞をLPSで刺激して成熟樹状細胞に分化する系において、IVIgの添加によりIL-12の産生が抑制され、IL-10の産生が促進されることを述べている。
モノカイン(IL-1β+TNF-α)で刺激した場合、2日間で成熟樹状細胞への分化が起こり、このときCD40及びCD80の発現量の増加とともに、活性化したリンパ球、マクロファージ、樹状細胞などが脳脊髄関門を通過するために必要な接着分子であるα4-インテグリン(CD49d)(例えば、非特許文献5参照)の急激な発現誘導が認められる。LPSで刺激した場合も同様の現象が認められるが、IVIgには抗LPS抗体が含まれており、それによるLPSの中和という機序が作用している可能性が否定できない(例えば、非特許文献6)。それ故、LPSで刺激して樹状細胞を分化させる系では、樹状細胞の移動に及ぼすIVIgの作用機序を明確に評価できないと考えられる。また彼等の報告では、CD40やCD80の発現誘導も僅かであり、IVIgの及ぼす影響を評価することは困難である。
したがって、BaryJらの報告は、IVIgの添加により樹状細胞によるT細胞とくにTH1型のナイーブT細胞の活性化が抑制されることを示唆すものではあるが、樹状細胞の誘導にLPSを用いている点で生体内での現象とかけ離れており、投与されたIVIgが生体内で同様な作用機序を示す可能性は低く、自己免疫疾患の抑制に結びつきにくい。また、活性化した樹状細胞の体内での移動に関わる分子について全く検討されていないので、彼等の結果は、多発性硬化症のような末梢で活性化した免疫担当細胞が中枢神経内へ移動して炎症を引き起こす自己免疫疾患における有効性を示すものとは言い難く、さらにCD49dに及ぼす効果についても明らかにされていない。
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上述したように、種々のサイトカインに対する抗体が自己免疫疾患の治療薬として使用されているが、感染症や脳炎の発症の問題があり、より安全性を高めた治療薬の開発が求められる。本願発明は、より生体内の環境に近い状況下で単球の未成熟樹状細胞や樹状細胞への分化を抑制することにより、結果として、成熟樹状細胞の疾患部位への移動及びサイトカイン産生細胞の活性化を阻止し、自己免疫疾患の発症を抑制することを課題とする。すなわち、本願発明の目的は、単球の未成熟樹状細胞または成熟細胞への分化、活性化を抑制することができる、IVIgを有効成分として含有する自己免疫疾患治療剤を提供することにある。
本願発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意研究を進めた結果、単球の樹状細胞への分化を行なう際に単球の段階からIVIgを加えることにより、(1)CD86の発現に殆ど影響しない、(2)CD40及びCD80の発現を強く抑制する、(3)未成熟樹状細胞のマーカーであるCD1aの発現を部分的に抑制する、及び(4)未成熟樹状細胞から成熟樹状細胞への分化に関与する接着因子CD49d(α4-インテグリン)の発現をほぼ完全に抑制する、ことを見出し、本願発明を完成するに至った。
したがって、本願発明は、以下に示す単球の樹状細胞への分化を抑制する方法、IVIgを有効成分として含有するヒト単球の樹状細胞への分化抑制剤、及びIVIgを有効成分として含有する自己免疫疾患治療薬を提供するものである。
1.免疫グロブリンを用いることを特徴とする、ヒト単球の未成熟樹状細胞への分化又は該未成熟樹状細胞の成熟樹状細胞への分化を抑制する方法。
2.未成熟樹状細胞表面上のCDlaの発現を抑制することからなる、上記1の方法。
3.成熟樹状細胞表面上のCD40、CD80及びCD49dの少なくとも一つの発現を抑制することからなる、上記1の方法。
4.免疫グロブリンが静脈注射用免疫グロブリン(IVIg)である、上記1ないし3の何れかの方法。
5.免疫グロブリンを有効成分として含有する、ヒト単球の未成熟樹状細胞への分化又は該未成熟樹状細胞の成熟樹状細胞への分化抑制剤。
6.未成熟樹状細胞表面上のCDlaの発現を抑制することを特徴とする、上記5の分化抑制剤。
7.成熟樹状細胞表面上のCD40、CD80及びCD49dの少なくとも一つの発現を抑制することを特徴とする、上記5の分化抑制剤。
8.免疫グロブリンが静脈注射用免疫グロブリン(IVIg)である、上記5ないし7の何れかの分化抑制剤。
9.免疫グロブリンを有効成分として含有する、自己免疫疾患の治療剤。
10.ヒト単球の未成熟樹状細胞への分化又は該未成熟樹状細胞の成熟樹状細胞への分化に伴う自己免疫疾患である、上記9の治療剤。
11.自己免疫疾患が臓器特異的自己免疫疾患である、上記9又は10の何れかの治療剤。
12.臓器特異的自己免疫疾患が多発性硬化症である、上記11の治療剤。
13.免疫グロブリンが静脈注射用免疫グロブリン(IVIg)である、上記9ないし12の何れかの治療剤。
本願発明に従えば、ヒト単球の未成熟樹状細胞への分化又は該未成熟樹状細胞から成熟樹状細胞への分化を抑制する方法が提供される。当該方法は、CDla、CD40、CD80及びCD49dが関与するヒト単球の樹状細胞への分化のメカニズムを研究するのに有用である。また、本願発明の方法に従えば、IVIgを有効成分として含有する臓器特異的自己免疫疾患を治療するための医薬品が提供される。好ましくは、本願発明の方法は、単球由来樹状細胞上のCD40やCD80のような共刺激分子の発現が関与する自己免疫疾患特に再発を繰り返す疾患の治療、及びCD40及びCD80を発現した樹状細胞が、CD49dを発現し、脳脊髄関門を通過するような疾患たとえば多発性硬化症の再発防止に利用される。
本願発明の方法は、ヒト単球が未成熟樹状細胞へ、更に成熟樹状細胞へと分化する過程において、種々の蛋白の発現を抑制する免疫グロブリンの利用によって特徴付けられる。
樹状細胞の誘導法として、骨髄あるいは末梢血のCD34陽性前駆細胞から主にGM-CSFとTNF-αを用いて誘導する方法、単球からGM-CSFとIL-4を用いて誘導する方法および末梢血単核球より直接分離する方法が知られており、何れの方法を用いても良い。本願発明では、健常人ドナーの末梢血単球由来の樹状細胞が使用される。
ヒト単球の単離方法としては、比重遠心法やプラスチックディッシュ付着法、エルトリエーター法等が上げられるが、何れの方法を用いても良い。本願発明では、プラスチックディッシュ付着法が使用される。具体的には、ヒト末梢血をRosetteSep Monocyte(ベリタス社)を用いて、添付のプロトコールに従って、単球を含む画分を濃縮し、その後プラスチック培養プレート内で5%ヒトAB型血清を含むRPMI1640中に1x106/mLで浮遊させ、5%CO2、37℃、1.5時間インキュベートすることによりプラスチック面に付着させ、非付着性の細胞を除去することにより単球を得ることができる。このとき用いる培地としては、通常リンパ球の培養に使用される培地、例えば、RPMI1640、MEM、DMEMなど何れも使用できるが、好ましくは、RPMI1640である。実際に培養するときには、血清、アミノ酸、ビタミン、糖、抗生物質、PH調整用緩衝液などを添加したものが使用される。培地のpHは6〜8、培養温度は30℃〜39℃の範囲が設定される。培地の量、添加物及び培養時間は、培養スケールに合わせて適宜調節される。
上記のプラスチック培養プレートに付着した細胞を、顆粒球・マクロファージ-コロニー刺激因子(GM-CSF)とインターロイキン4(IL-4)と共に6〜7日間培養することにより、未成熟樹状細胞へと分化させることができる。GM−CSF及びIL-4は、0.5〜2x106細胞に対して、それぞれ500〜1000U/mL及び50〜200U/mLの濃度で使用される。より具体的には、GM-CSF(800U/mL)とIL-4(100U/mL)を3%牛胎児血清(以下FBSと略す)を含むRPMI1640にとともに約1x106の付着性細胞に加え、2日間隔で30%の培地を交換し、7日目に非付着性細胞を回収することにより取得することができる。更に、この未成熟樹状細胞を成熟樹状細胞に分化させる場合は、LPSやTNF-α、Type 1 IFN (IFN-α, β)、CpG、monocyte conditioned medium、サイトカインカクテル(PGE2, IL-1β, TNF-α, IL-6)、OK-432、Poly I:C、CD40 ligand(CD40L)で刺激される。好ましくは、モノカイン(IL-1β)と腫瘍壊死因子α(TNF-α)が使用される。IL-1βとTNF-αは、それぞれ1〜50ng/mL及び10ng/mL〜50ng/mLの濃度で使用される。培地は、前記と同じもの用いれば良い。具体的には、50ng/mLのIL-1βと50ng/mLのTNF-αを添加した3%FBS含有RPMI1640と約1x106の未成熟樹状細胞とを混合し、5%CO2、37℃で2日間の培養が行なわれる。
ヒト単球から未成熟樹状細胞への分化及び未成熟樹状細胞から成熟樹状細胞への分化を抑制する免疫グロブリンの効果は、フローサイトメトリー(FACS)法により、各細胞の表面抗原(細胞表面マーカー)の発現状態を解析することにより行なわれる。すなわち、細胞表面マーカーを認識する標識抗体で、細胞表面を染色した後、FACScan(ベクトンディッキンソン社)により測定し、得られたデータ−の解析が行なわれる。
FACSに使用される抗体として、ヒト単球の未成熟樹状細胞への分化、あるいは未成熟樹状細胞の成熟樹状細胞への分化の際に、細胞表面に発現する種々の特異抗原に対する抗体が使用される。このような特異抗原として、CD40、CDla、CD80、CD49dが見出されている。抗体は、ポリクローナル抗体及びモノクローナル抗体の何れであっても良いが、好ましくは、モノクローナル抗体である。特異抗原に対するモノクローナル抗体は、未成熟樹状細胞の成熟樹状細胞で免疫した動物から脾細胞もしくはリンパ球等の抗体産生細胞を採取し、Milsteinらの方法(Method Enzymol., 73, 3−46, 1981)に従って、ミエローマ細胞株等と融合し、特異抗原に対する抗体を産生するハイブリドーマを作製することにより得られる。また、ファージディスプレイ技術を利用した抗体作製技術(PHage Display of Peptides and Proteins: A Laboratory Manual Edited by Brian K. Kay et al.、Antibody Engineering: A PRACTICAL APPROACH Edited by J.McCAFFERTY et al.、ANTIBODY ENGINEERING second edition edited by Carl A. K. BORREBAECK)により特異抗原と結合する抗体を作製することもできる。こうして得られる抗体は、蛍光標識、RI、ビオチン化などの方法により標識される。何れもキット化されて市販されているのでこれらを利用すれば良い。既に標識された特異抗原に対する標識抗体が市販されている場合はこれを用いれば良い。本願発明では、蛍光標識した抗CD40抗体、抗CD80抗体、抗CD49dが使用される。
ヒト単球の分化の過程に免疫グロブリンを培地に添加することにより、その免疫グロブリンの分化の抑制効果を見ることができる。本願発明に使用される免疫グロブリンは、未修飾及び化学修飾(例えば、スルホ化)のいずれであっても良い。斯かる免疫グロブリンは、公知の手法、例えば、ポリエチレングリコール処理(特許公開平7-61935)、イオン交換樹脂処理(特許公開昭55-98117)、低温アルコール処理(特許公開平9-249580、特許公開平10-7588)などにより製造される。製剤化に際して、通常医薬品に用いられる賦形剤や安定化剤等を含有してもよい。例えば、添加剤として、グルコース等の単糖類、サッカロース、マルトース等の二糖類、マンニトール、ソルビトール等の糖アルコール、塩化ナトリウム等の中性塩、グリシン等のアミノ酸、アルブミン、ポリソルベート80、マクロゴール4000等が例示される。本願発明に使用される免疫グロブリンは、静脈内投与できるものが好ましい。このような製剤として、乾燥ペプシン処理人免疫グロブリン及び乾燥スルホ化人免疫グロブリン(化血研)が例示される。
斯かる免疫グロブリン製剤をヒトに投与するときは、体重1kg当たり免疫グロブリンとして100〜1000mg/日を、1〜数日間連日静脈内投与することが標準的であるが、症状、性別、体重等に応じて投与量は増減される。好ましくは、血液中に、完全型IgGとして20mg/mLの濃度が維持されるように投与される。
以下、本願発明をより詳細に説明するため、実施例を挙げるが、本願発明はこれらの実施例になんら限定されるものではない。
IgGによる樹状細胞表面上のCD1a発現抑制
RosetteSep Monocyte(ベリタス社)を用いて、添付のプロトコールに従って、健常人ドナー末梢血から単球を含む画分を得た。約1x106/mLの単球含有画分を、5%ヒトAB型血清を含むRPMI1640培地に懸濁後、6ウェルのプラスチック培養プレートに浮遊させ、5%CO2下に、37℃、1.5時間インキュベートした。プラスチック面に付着しなかった細胞を培地と共に吸引、除去した後、新たに、GM-CSF(800U/mL)、IL-4(100U/mL)及び3%FBS含有RPMI1640培地(以下「分化用培地A」という)、または終濃度4mg/mL、8mg/mL、20mg/mLとなるようにIVIg(ヒトIgG)を添加した分化用培地Aを各ウェルにそれぞれ加え、同条件下に7日間培養した。7日目に非付着性細胞を回収し、一部を蛍光標識した抗CD1a抗体(ベクトンディッキンソン社)と添付のプロトコールに従って反応させた。簡単には非付着性細胞を遠心沈殿して集め、蛍光標識抗CD1a抗体と4℃、30分反応後FACScanによりフローサイトメトリー解析を行い、細胞表面のCD1aを検出した。残りの細胞は、一旦、RPMI1640培地で洗浄後、IL1β(50ng/mL)とTNF-α(50ng/mL)及び3%FBS含有RPMI1640培地(以下「分化用培地B」という)または上記の各濃度のIVIgを添加した分化用培地Bを加え、さらに2日間培養し、同様に蛍光標識した抗CDla抗体と反応させた後、フローサイトメトリー解析を行った。その結果を図1に示す。培養開始と同時にIgGを添加した群では、7日目におけるCD1aの発現頻度が添加していない群に比べて有意に低下した。また、9日目においても同様にIgG添加群でCD1aの発現頻度は有意に低下した。
IgGによる樹状細胞表面上の発現抑制
実施例1と同様の方法に従って、培養7日目の非付着性細胞及び9日目の細胞について、フローサイトメトリー解析を行った。細胞表面の蛋白を検出する抗体として、蛍光標識した抗CD1a抗体の代わりに、蛍光標識した抗CD40抗体(ベクトンディッキンソン社)を用いた。その結果を図2に示す。7日目のCD40の発現は70%程度であったが、IL1βとTNF-αを加えて2日間培養することで100%近くまで増加した。このときIgG添加群では、発現頻度の増加が抑制された。
IgGによる樹状細胞表面上のCD80発現抑制
実施例1と同様の方法に従って、培養7日目の非付着性細胞及び9日目の細胞について、フローサイトメトリー解析を行った。細胞表面の蛋白を検出する抗体として、蛍光標識した抗CD1a抗体の代わりに、蛍光標識した抗CD80抗体(ベクトンディッキンソン社)を用いた。その結果を図3に示す。CD80は培養時間の経過とともに発現し、7日目では、約40%、9日目では約90%まで増加した。培養開始と同時にIgGを添加した群では、7日目におけるCD80の発現頻度が添加していない群に比べて有意に低下した。また、9日目においても同様にIgG添加群でCD80の発現頻度は有意に低下した。
IgGによる樹状細胞表面上のCD49d発現抑制
実施例1と同様の方法に従って、培養7日目の非付着性細胞及び9日目の細胞について、フローサイトメトリー解析を行った。細胞表面の蛋白を検出する抗体として、蛍光標識した抗CD1a抗体の代わりに、蛍光標識した抗CD49d抗体(ベクトンディッキンソン社)を用いた。その結果を図4に示す。CD49dは培養開始時では90%以上の頻度で発現していたが、培養時間の経過とともに低下し約40%にまで低下した。その後IL1βとTNF-αを加えて2日間培養することにより増加し、9日目には約70%近くにまで達した。培養開始と同時にIgGを添加した群では、7日目におけるCD49dの発現頻度は添加していない群に比べてほぼ同じであったが、9日目においてCD49dの発現頻度は有意に低下した。
本願発明により、自己免疫疾患治療薬としての免疫グロブリンの利用方法が提供される。
IgGにより、CD1aの発現が抑制されることを示した図。
nは実験に用いた個体数、縦軸は全体の細胞数に占める陽性細胞数の比率(%)、横軸は培養日数を表す。
IgGにより、樹状細胞上のCD40の発現が抑制されることを示した図。nは実験に用いた個体数、縦軸は全体の細胞数に占める陽性細胞数の比率(%)、横軸は培養日数を表す。 IgGにより、樹状細胞上のCD80の発現が抑制されることを示した図。nは実験に用いた個体数、縦軸は全体の細胞数に占める陽性細胞数の比率(%)、横軸は培養日数を表す。 IgGにより、樹状細胞上のCD49dの発現が抑制されることを示した図。nは実験に用いた個体数、縦軸は全体の細胞数に占める陽性細胞数の比率(%)、横軸は培養日数を表す。

Claims (13)

  1. 免疫グロブリンを用いることを特徴とする、ヒト単球の未成熟樹状細胞への分化又は該未成熟樹状細胞の成熟樹状細胞への分化を抑制する方法。
  2. 未成熟樹状細胞表面上のCDlaの発現を抑制することからなる、請求項1記載の方法。
  3. 成熟樹状細胞表面上のCD40、CD80及びCD49dの少なくとも一つの発現を抑制することからなる、請求項1記載の方法。
  4. 免疫グロブリンが静脈注射用免疫グロブリン(IVIg)である、請求項1ないし3の何れか一項記載の方法。
  5. 免疫グロブリンを有効成分として含有する、ヒト単球の未成熟樹状細胞への分化又は該未成熟樹状細胞の成熟樹状細胞への分化抑制剤。
  6. 未成熟樹状細胞表面上のCDlaの発現を抑制することを特徴とする、請求項5記載の分化抑制剤。
  7. 成熟樹状細胞表面上のCD40、CD80及びCD49dの少なくとも一つの発現を抑制することを特徴とする、請求項5記載の分化抑制剤。
  8. 免疫グロブリンが静脈注射用免疫グロブリン(IVIg)である、請求項5ないし7の何れか一項記載の分化抑制剤。
  9. 免疫グロブリンを有効成分として含有する、自己免疫疾患の治療剤。
  10. ヒト単球の未成熟樹状細胞への分化又は該未成熟樹状細胞の成熟樹状細胞への分化に伴う自己免疫疾患である、請求項9記載の治療剤。
  11. 自己免疫疾患が臓器特異的自己免疫疾患である、請求項9又は10の何れか一項記載の治療剤。
  12. 臓器特異的自己免疫疾患が多発性硬化症である、請求項11記載の治療剤。
  13. 免疫グロブリンが静脈注射用免疫グロブリン(IVIg)である、請求項9ないし12の何れか一項記載の治療剤。
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