JP2007240460A - 光電変換rgbセンサ素子 - Google Patents
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Abstract
【課題】シリコン系フォトダイオードを用いた人工網膜用RGBセンサ素子には、応答速度が速すぎたり、カラーフィルタを付加する必要があったり、基板が剛直すぎたり、コストが掛かるといった種々の問題があった。
【解決手段】人工網膜用RGBセンサ素子として色素増感光電変換素子を用いる。色素を適切に選択することにより、R、G、Bの各波長域の光を吸収し、吸収した光の強度に応じた電気信号を出力するセンサを得ることができる。色素増感光電変換素子は、応答速度がミリ秒オーダーであるため、生体にそのまま使用することができる。また、プラスチック等の可撓性を有する基板上に素子を形成することも可能であり、コストも低廉である。
【選択図】図1
【解決手段】人工網膜用RGBセンサ素子として色素増感光電変換素子を用いる。色素を適切に選択することにより、R、G、Bの各波長域の光を吸収し、吸収した光の強度に応じた電気信号を出力するセンサを得ることができる。色素増感光電変換素子は、応答速度がミリ秒オーダーであるため、生体にそのまま使用することができる。また、プラスチック等の可撓性を有する基板上に素子を形成することも可能であり、コストも低廉である。
【選択図】図1
Description
本発明は、光電変換RGBセンサ素子に関する。
近年、人工網膜システムを人体に移植することによって失われた視覚を回復させようとする研究が世界中で行われており、研究機関によっては臨床試験を含めた実験も進められている。
人工網膜システムの方式には、例えば非特許文献1に記載されているように各種あるが、現在、最も多く採用されているのは網膜上刺激型の人工網膜である。これは、1つの画素ユニットが数十μm程度の大きさから成るシリコン系フォトダイオードを基板上に配列させたマイクロフォトダイオードアレイ(MPDA)を受光素子として用いるものである。この網膜上刺激型の人工網膜は、基本的に画像信号や電力を外部から供給する必要がなく、シンプルな構成であるというメリットがあるほか、網膜内の神経回路を利用した情報伝達が可能であるという特長がある。
"人工視覚システムのしくみ",[online],株式会社ニデック,[平成18年3月7日検索],インターネット<URL:http://www.nidek.co.jp/artificial_vision_5.html>
しかしながら、シリコン系フォトダイオードを人工網膜用センサとして使用するには、以下に挙げるような問題点があった。
・フォトダイオードの応答速度が生体の視覚神経系に比べて速すぎる(μ秒オーダー)ため、応答速度を遅延させるための回路を別途設ける必要がある
・受光素子自体に分光能がないため、色を識別させるために受光素子に分光用カラーフィルタを取り付ける必要がある
・素子作製時に高真空等の厳しい条件が要求される
・ガラス等を原料とした剛直な基板を用いる必要がある
・原料のシリコンが高価であるため、システムが高価となる
・フォトダイオードの応答速度が生体の視覚神経系に比べて速すぎる(μ秒オーダー)ため、応答速度を遅延させるための回路を別途設ける必要がある
・受光素子自体に分光能がないため、色を識別させるために受光素子に分光用カラーフィルタを取り付ける必要がある
・素子作製時に高真空等の厳しい条件が要求される
・ガラス等を原料とした剛直な基板を用いる必要がある
・原料のシリコンが高価であるため、システムが高価となる
本願発明者等は、上記のようなシリコン系フォトダイオードの有する問題を解決することを目的として研究を重ねた結果、人工網膜システムに利用可能なRGBセンサとして、色素増感光電変換素子が極めて好適であることを見いだした。
このようにして成された本発明に係る光電変換RGBセンサ素子は、
赤色波長域、緑色波長域、青色波長域の各波長域の光の強度に応じた信号を出力する色素増感光電変換素子から成る赤色受光部、緑色受光部、青色受光部を有することを特徴とする。
赤色波長域、緑色波長域、青色波長域の各波長域の光の強度に応じた信号を出力する色素増感光電変換素子から成る赤色受光部、緑色受光部、青色受光部を有することを特徴とする。
また、本発明の光電変換RGBセンサ素子は、好適には前記各受光部がセル基板上に設けられており、該セル基板が可撓性を有する構成とすることができる。
本発明に係る光電変換RGBセンサ素子は、以下のような優れた特長を備えている。
・原料が安価である
・増感色素の分子設計により応答波長を任意に設計可能
・セル基板の材料を選ばないため、プラスチック基板を用いたフレキシブルな素子を形成可能
・原料が安価である
・増感色素の分子設計により応答波長を任意に設計可能
・セル基板の材料を選ばないため、プラスチック基板を用いたフレキシブルな素子を形成可能
また、本発明の光電変換RGBセンサ素子を人工網膜用の光電変換RGBセンサ素子として利用する場合には、
・応答速度がミリ秒オーダーであり、生体の視覚神経系を構成する神経細胞の応答速度に近い。即ち、応答速度調節回路が不要である
というメリットがある。
・応答速度がミリ秒オーダーであり、生体の視覚神経系を構成する神経細胞の応答速度に近い。即ち、応答速度調節回路が不要である
というメリットがある。
以下、本発明に係る光電変換RGBセンサ素子について詳細に説明する。なお、本発明に係る光電変換RGBセンサ素子は、人工網膜用のRGBセンサ素子として利用するのが極めて好適であるが、その用途は人工網膜に特に限定されることはなく、一般的なRGBセンサとして利用可能である。
概念図である図1において示すように、本発明の素子は、赤色受光部1、緑色受光部2、青色受光部3から成る。各受光部は、セル基板上に設けるとよい。なお、以下において、本発明に係る「素子」という表現は各受光部を指して使用することもある。
各受光部は、それぞれの吸収波長域に対応する波長の光を吸収し、その強度に応じた電気信号を出力する。例えば、赤色受光部1では、赤色波長域の光のみを吸収してその光の強度に応じた電気信号(電流)を出力する。
各受光部は、それぞれの吸収波長域に対応する波長の光を吸収し、その強度に応じた電気信号を出力する。例えば、赤色受光部1では、赤色波長域の光のみを吸収してその光の強度に応じた電気信号(電流)を出力する。
本発明の素子を人工網膜として実際に使用する際には、図1に示すような赤色受光部1、緑色受光部2、青色受光部3から成る素子を一つのセルとし、複数のセルを平面(曲面も含む)上に多数配列させることもできる。なお、図1では、赤色受光部1、緑色受光部2、青色受光部3がセル基板の同一平面上に並べられているが、これらの各受光部の相対的な配置は特に制限されるものではなく、例えば各受光部が積層された構造としても構わない。すなわち、本発明において「受光部をセル基板上に設ける」とは、受光部をセル基板の平面上に配置するのみならず、セル基板を用いて受光部を積層する構成も含む概念である。
また、受光部の相対的な大きさや形状も同一である必要はなく、適宜に変更することが可能である。
セル基板には種々の材料を用いることができ、その種類は限定されないが、とりわけ、導電性が低く、光透過性を備え、可撓性を有する材料(高分子量ポリマーなど)を好適に利用することができる。
また、受光部の相対的な大きさや形状も同一である必要はなく、適宜に変更することが可能である。
セル基板には種々の材料を用いることができ、その種類は限定されないが、とりわけ、導電性が低く、光透過性を備え、可撓性を有する材料(高分子量ポリマーなど)を好適に利用することができる。
本発明の素子では、赤色受光部1、緑色受光部2、青色受光部3の各受光部に、従来より提案されている色素増感光電変換素子を用いる。代表的な色素増感光電変換素子には、色素増感太陽電池がある。最も一般的な色素増感太陽電池は、多孔質薄膜電極、増感色素、電解液、対極が層構造を成すもの(図2参照)であるが、本発明の素子はこの構成に限定されず、光によって増感色素を励起することにより電気信号を取り出すことが可能な構成である限り、適宜に変更を行ってもよい。
ここで、本発明の素子(色素増感太陽電池素子)の動作機構について、図2を参照しつつ説明する。
光吸収により増感色素のLUMO(Lowest Unoccupied Molecular Orbital:最低空軌道)に励起された電子は直ちに金属酸化物半導体の伝導帯に注入され、拡散によって金属酸化物半導体の伝導体内を移動し、導電性基板に到達する。一方で、光励起によって生成された増感色素カチオンは、電解液中の酸化還元対から電子を受け取ることにより元の基底状態に戻る。このとき、酸化還元対は酸化状態となるが、外部回路を通ってきた電子を対極から受け取ることによって、再び還元状態となる。このような電子移動サイクルによって、増感色素により吸収された光がエネルギー源となり、電気信号を取り出すことが可能となる。
光吸収により増感色素のLUMO(Lowest Unoccupied Molecular Orbital:最低空軌道)に励起された電子は直ちに金属酸化物半導体の伝導帯に注入され、拡散によって金属酸化物半導体の伝導体内を移動し、導電性基板に到達する。一方で、光励起によって生成された増感色素カチオンは、電解液中の酸化還元対から電子を受け取ることにより元の基底状態に戻る。このとき、酸化還元対は酸化状態となるが、外部回路を通ってきた電子を対極から受け取ることによって、再び還元状態となる。このような電子移動サイクルによって、増感色素により吸収された光がエネルギー源となり、電気信号を取り出すことが可能となる。
次に、各受光部の基本的な構成を説明する。
多孔質薄膜電極は、導電性基板上に金属酸化物半導体薄膜を焼結させることによって形成される。
導電性基板は、焼結過程を経るため、500℃程度の温度でも安定している必要がある。また、少なくとも受光部が検知を目的とする波長域において光透過性を有しており、且つ、導電性を備えている必要がある。このような性質を有する導電性基板には、FTO(Fluorine-doped Tin Oxide:フッ素ドープ酸化Sn)や、ITO(Indium Tin Oxide:インジウムスズ酸化物)等がある。
金属酸化物半導体には通常はTiO2が用いられるが、特にこれに限定されるものではなく、ZnO2、SnO2、WO3、Nb2O5なども使用可能である。
焼結後の金属酸化物半導体は多数の細孔を有するため、表面積が大きく、従って増感色素の吸着量が大きい。これにより、素子の光電変換特性、とりわけ短絡電流値Jscが向上する。
また、焼結後の金属酸化物半導体TiCl4を塗布し、その後焼結させるTiCl4処理を施すこともできる。これにより、金属酸化物半導体粒子間のネッキングがよくなり、電子輸送特性を向上する。即ち、光電変換効率が向上する。
多孔質薄膜電極は、導電性基板上に金属酸化物半導体薄膜を焼結させることによって形成される。
導電性基板は、焼結過程を経るため、500℃程度の温度でも安定している必要がある。また、少なくとも受光部が検知を目的とする波長域において光透過性を有しており、且つ、導電性を備えている必要がある。このような性質を有する導電性基板には、FTO(Fluorine-doped Tin Oxide:フッ素ドープ酸化Sn)や、ITO(Indium Tin Oxide:インジウムスズ酸化物)等がある。
金属酸化物半導体には通常はTiO2が用いられるが、特にこれに限定されるものではなく、ZnO2、SnO2、WO3、Nb2O5なども使用可能である。
焼結後の金属酸化物半導体は多数の細孔を有するため、表面積が大きく、従って増感色素の吸着量が大きい。これにより、素子の光電変換特性、とりわけ短絡電流値Jscが向上する。
また、焼結後の金属酸化物半導体TiCl4を塗布し、その後焼結させるTiCl4処理を施すこともできる。これにより、金属酸化物半導体粒子間のネッキングがよくなり、電子輸送特性を向上する。即ち、光電変換効率が向上する。
増感色素は、上記金属酸化物半導体薄膜の表面に担持される。増感色素が励起される光の周波数は、色素の種類によって異なる。そこで本発明では、この増感色素を適宜に選択、設計することにより、赤色受光部1、緑色受光部2、青色受光部3の各受光部で出力される信号(電流)が入射光の波長によって異なるようにする。すなわち、赤色受光部1に使用する増感色素は、赤色波長域(550〜650nm付近)のみに吸収波長域を有するものとし、緑色受光部2に使用する増感色素は緑色波長域(例えば500〜600nm付近)のみに吸収波長域を有するものとし、青色受光部3に使用する増感色素は青色波長域(例えば400〜500nm付近)のみに吸収波長域を有するものとする。
赤色受光部1の増感色素は、550〜650nm付近のみに吸収波長域を有するものであればどのようなものでも使用できるが、好適には、一般式
で示されるフタロシアニン誘導体を使用することができる。
なお、上記式中、Xは二価遷移金属、三価遷移金属、三価希土類金属、又は白金を表し、R1〜R16はそれぞれ、水素原子、カルボキシル基、カルボキシル基の誘導体、アミノ基、アミノ基の誘導体、スルホキシル基、スルホキシル基の誘導体、長鎖アルキル基、高級脂肪酸のうちのいずれかを表す。また、R1〜R16の少なくとも一つはカルボキシル基又はカルボキシル基の誘導体である。
また、上記フタロシアニン誘導体はダブルデッカーサンドイッチ構造を有していても良い。
なお、上記式中、Xは二価遷移金属、三価遷移金属、三価希土類金属、又は白金を表し、R1〜R16はそれぞれ、水素原子、カルボキシル基、カルボキシル基の誘導体、アミノ基、アミノ基の誘導体、スルホキシル基、スルホキシル基の誘導体、長鎖アルキル基、高級脂肪酸のうちのいずれかを表す。また、R1〜R16の少なくとも一つはカルボキシル基又はカルボキシル基の誘導体である。
また、上記フタロシアニン誘導体はダブルデッカーサンドイッチ構造を有していても良い。
特に、本発明に係る光電変換RGBセンサ素子における赤色受光部1用の増感色素として、構造式が
で表されるZnPcTCを好適にすることが可能である。このZnPcTCには、ダブルデッカーサンドイッチ構造のものも含む。ZnPcTCの合成方法の詳細は後述する。
緑色受光部2の増感色素としては、500〜600nm付近のみに吸収波長域を有するものであればどのようなものでも使用できるが、好適には、Eosin Y、MFP488、Alexa Fluor(登録商標) 488、Cy2、FITC(fluorescein isothiocyanate)等も使用することができる。
青色受光部3の増感色素としては、400〜500nm付近のみに吸収波長域を有するものであればどのようなものでも使用できるが、好適には、一般式
(式中、R21〜R36はそれぞれ、水素原子、カルボキシル基、カルボキシル基の誘導体、アミノ基、アミノ基の誘導体、スルホキシル基、スルホキシル基の誘導体、長鎖アルキル基、高級脂肪酸のうちのいずれかを表し、R21〜R36の少なくとも一つはカルボキシル基又はカルボキシル基の誘導体である。)
で示されるポルフィリン誘導体を使用することができる。
で示されるポルフィリン誘導体を使用することができる。
特に、本発明に係る光電変換RGBセンサ素子における青色受光部3用の増感色素として、構造式が
で示されるTCPP(Tetra(4-carboxyphenyl)porphyrin)を好適に使用することができる。TCPPには、モル吸光係数が非常に大きく、吸収バンドがブロード過ぎずシャープ過ぎないというメリットがある。
電解液は、酸化還元対と溶媒とから構成されている。多孔質薄膜電極や対極との電子の授受は酸化還元対によって行われる。酸化還元対にはヨウ素−ヨウ素化合物や臭素−臭素化合物を好適に用いることができる。
また、電解液の代わりとして、p型半導体であるCuI(ヨウ化銅)や、アリルアミン系導電性高分子PEDOT(poly-ethylenedioxy-thiophene)などの有機物の固体電解質を用いることも可能である。さらに、不揮発性のイオン性液体を利用しても構わない。
また、電解液の代わりとして、p型半導体であるCuI(ヨウ化銅)や、アリルアミン系導電性高分子PEDOT(poly-ethylenedioxy-thiophene)などの有機物の固体電解質を用いることも可能である。さらに、不揮発性のイオン性液体を利用しても構わない。
対極は、導電性が高いものであれば特に限定されないが、例えば導電性基板にPtをスパッタしたPt対極を好適に用いることができる。Ptは導電性が高く、(I-/I3 -)ヨウ素−ヨウ素化合物酸化還元対のI3 -をI-に還元する触媒作用も備えているというメリットがある。対極をカーボンによって構成してもよい。
以下、本発明に係る光電変換RGBセンサ素子の特性を確認するために本願発明者らが行った各種実験について説明する。
◆入射光に対する応答時間の検証◆
[P25-TiO2ペーストの調製]
P25(TiO2粉末;Anatase 80%+Rutile 20%)3.0gと蒸留水0.8ml、acetylacetone 0.2g、ZrO2ビーズ(粒径3mm)35gをプラスチック容器に入れて軽く振り混ぜた後、ペイントシェーカーにより10分間撹拌を行い、蒸留水1.0mlを加えてから、さらにペイントシェーカーにより20分間撹拌を行った。そして、蒸留水の少量(0.5〜1.0ml)添加とペイントシェーカーによる撹拌を繰り返し、6μm程度の膜厚のTiO2薄膜を作製できるようにTiO2の濃度を調整した後、ペイントシェーカーにより90分間撹拌を行った。その後、Triton X-100を0.1ml加えてから、さらにペイントシェーカーにより10分間撹拌し、脱泡処理を行ってP25-TiO2ペーストとした。
[P25-TiO2ペーストの調製]
P25(TiO2粉末;Anatase 80%+Rutile 20%)3.0gと蒸留水0.8ml、acetylacetone 0.2g、ZrO2ビーズ(粒径3mm)35gをプラスチック容器に入れて軽く振り混ぜた後、ペイントシェーカーにより10分間撹拌を行い、蒸留水1.0mlを加えてから、さらにペイントシェーカーにより20分間撹拌を行った。そして、蒸留水の少量(0.5〜1.0ml)添加とペイントシェーカーによる撹拌を繰り返し、6μm程度の膜厚のTiO2薄膜を作製できるようにTiO2の濃度を調整した後、ペイントシェーカーにより90分間撹拌を行った。その後、Triton X-100を0.1ml加えてから、さらにペイントシェーカーにより10分間撹拌し、脱泡処理を行ってP25-TiO2ペーストとした。
[TiO2を用いた封止セルの作製]
UV-O3処理を行ったFTO導電性ガラス基板上に、メンディングテープをスペーサとしてdoctor-blade法によりP25-TiO2ペーストを塗布し、450℃で30分間焼結させることで多孔質TiO2薄膜を作製した。その後、TiO2薄膜を適当な大きさ(4mm×4mm)に加工してから450℃で15分間加熱処理し、120℃まで放冷した後にN719 Ru色素溶液(濃度:3.0×10-4M、溶媒:acetonitrile:tert-BuOH=1:1)に浸漬させ、12時間放置することで色素担持を行った。色素担持後、acetonitrileで色素担持TiO2薄膜電極を洗浄し、対極としてPt対極、電解液、封止剤として三井・デュポンポリケミカル株式会社製ハイミラン(厚さ50μm)を用いて封止セルを作製した。電解液は、溶媒Mathoxyacetnitrile(MAN)、LiI:0.1M、DMPImI:0.3M、I2:0.05M、tert-Butylpyridine:0.54Mから成るものを使用した。
UV-O3処理を行ったFTO導電性ガラス基板上に、メンディングテープをスペーサとしてdoctor-blade法によりP25-TiO2ペーストを塗布し、450℃で30分間焼結させることで多孔質TiO2薄膜を作製した。その後、TiO2薄膜を適当な大きさ(4mm×4mm)に加工してから450℃で15分間加熱処理し、120℃まで放冷した後にN719 Ru色素溶液(濃度:3.0×10-4M、溶媒:acetonitrile:tert-BuOH=1:1)に浸漬させ、12時間放置することで色素担持を行った。色素担持後、acetonitrileで色素担持TiO2薄膜電極を洗浄し、対極としてPt対極、電解液、封止剤として三井・デュポンポリケミカル株式会社製ハイミラン(厚さ50μm)を用いて封止セルを作製した。電解液は、溶媒Mathoxyacetnitrile(MAN)、LiI:0.1M、DMPImI:0.3M、I2:0.05M、tert-Butylpyridine:0.54Mから成るものを使用した。
[封止セルの応答速度測定]
Diodeレーザ(波長λ=635nm)、Function Generator、電流増幅器、オシロスコープから成る測定系(図3)を構築し、封止セルの応答速度を測定した。
測定法として、封止セルの作用極側から一定強度のDiodeレーザ光を照射し、レーザ光強度をFunction Generatorにより微小に変化(増大)させたときの短絡電流値の変化(すなわち、外部負荷抵抗が0Ωのときの電流値)を、電流増幅器を介してオシロスコープで観測した。レーザの照射光強度はNDフィルタを用いることにより変化させた(NDフィルタを用いないときの照射光強度を100%とする)。
応答速度はステップ関数の光入力に対する立ち上がりの時間で規定し、素子の出力が定常値の10%から90%まで変化するのに要する時間(上昇時間tr)で表す。
なお、本来ならば、封止セルの作用極側からではなく対極側からDiodeレーザを照射する必要があるが、本実験では多孔質薄膜内部におけるレーザ光密度ならびに電子密度分布が均一になるような膜厚の多孔質薄膜を用いているため、照射光の入射方向による影響はないものとした。
Diodeレーザ(波長λ=635nm)、Function Generator、電流増幅器、オシロスコープから成る測定系(図3)を構築し、封止セルの応答速度を測定した。
測定法として、封止セルの作用極側から一定強度のDiodeレーザ光を照射し、レーザ光強度をFunction Generatorにより微小に変化(増大)させたときの短絡電流値の変化(すなわち、外部負荷抵抗が0Ωのときの電流値)を、電流増幅器を介してオシロスコープで観測した。レーザの照射光強度はNDフィルタを用いることにより変化させた(NDフィルタを用いないときの照射光強度を100%とする)。
応答速度はステップ関数の光入力に対する立ち上がりの時間で規定し、素子の出力が定常値の10%から90%まで変化するのに要する時間(上昇時間tr)で表す。
なお、本来ならば、封止セルの作用極側からではなく対極側からDiodeレーザを照射する必要があるが、本実験では多孔質薄膜内部におけるレーザ光密度ならびに電子密度分布が均一になるような膜厚の多孔質薄膜を用いているため、照射光の入射方向による影響はないものとした。
[封止セルの応答速度測定]
作製した封止セルを用いて測定した応答速度を図4に、レーザの照射光強度と応答速度との関係を図5にそれぞれ示す。
これらの結果から、レーザの照射光強度によって素子の応答速度が変化し、照射光強度が弱くなるにつれて応答速度が遅くなる傾向が示された。また、TiO2薄膜の膜厚が増大するにつれて応答速度が遅くなることがわかった。これらの応答速度は概してミリ秒オーダーであり、応答速度がマイクロ秒オーダーであるシリコン系受光素子(フォトダイオード)に比べて遅く、生体の視覚神経系を構成する神経細胞の応答速度に近いオーダーである。
作製した封止セルを用いて測定した応答速度を図4に、レーザの照射光強度と応答速度との関係を図5にそれぞれ示す。
これらの結果から、レーザの照射光強度によって素子の応答速度が変化し、照射光強度が弱くなるにつれて応答速度が遅くなる傾向が示された。また、TiO2薄膜の膜厚が増大するにつれて応答速度が遅くなることがわかった。これらの応答速度は概してミリ秒オーダーであり、応答速度がマイクロ秒オーダーであるシリコン系受光素子(フォトダイオード)に比べて遅く、生体の視覚神経系を構成する神経細胞の応答速度に近いオーダーである。
◆Zn(II) 2,9,16,23-phthalocyanine tetracarboxylic acid(ZnPcTC)の合成◆
本発明に係る光電変換RGBセンサ素子の赤色受光部に好適に使用することが可能な赤色波長域に鋭い吸収を有する増感色素として、フタロシアニン誘導体(ZnPcTC)を合成し、その特性を確認した。
本発明に係る光電変換RGBセンサ素子の赤色受光部に好適に使用することが可能な赤色波長域に鋭い吸収を有する増感色素として、フタロシアニン誘導体(ZnPcTC)を合成し、その特性を確認した。
[ZnPcTCの合成、精製]
ZnPcTCの合成と精製は、知られている以下の方法によって行った。
まず、原料としてZnSO4 3.88g(0.024mol)、trimellitic anhydride 16.91g(0.088mol)、urea 30.08(0.50mol)、NH4Cl 2.27g(0.042mol)、ammonium molybdate 0.039g(2.01×10-4mol)を混合し、細かくすり潰して粉末状にした後、三つ口フラスコ(500ml)に入れた。さらに、溶媒としてnitrobenzene 20mlを加え、185℃まで昇温させた後に185℃で4時間保持することにより、反応を進行させた。反応系を室温まで放冷させた後、生成した緑青色固体を細かく砕きながらMeOHで洗浄してnitrobenzeneを取り除いた。
生成物の精製は、塩酸による析出、NaOH水溶液による溶解とろ過、MeOHによる洗浄を繰り返すことにより行った。その精製過程を図6に示す。
ZnPcTCの合成と精製は、知られている以下の方法によって行った。
まず、原料としてZnSO4 3.88g(0.024mol)、trimellitic anhydride 16.91g(0.088mol)、urea 30.08(0.50mol)、NH4Cl 2.27g(0.042mol)、ammonium molybdate 0.039g(2.01×10-4mol)を混合し、細かくすり潰して粉末状にした後、三つ口フラスコ(500ml)に入れた。さらに、溶媒としてnitrobenzene 20mlを加え、185℃まで昇温させた後に185℃で4時間保持することにより、反応を進行させた。反応系を室温まで放冷させた後、生成した緑青色固体を細かく砕きながらMeOHで洗浄してnitrobenzeneを取り除いた。
生成物の精製は、塩酸による析出、NaOH水溶液による溶解とろ過、MeOHによる洗浄を繰り返すことにより行った。その精製過程を図6に示す。
[ZnPcTCの吸収スペクトル測定]
精製・乾燥後に得られた生成物をDMF(Dimethyl Formamide)に溶解させた後、吸収スペクトルの測定を行った。測定結果を図7に実線で示す。図7のグラフには、TCPP(b)とEosin Y(c)の各EtOH溶液の吸収スペクトルも示されている(破線)。
精製後の生成物のDMF溶液では、λ=682nm、617nm、342nmにそれぞれピークトップを示す吸収スペクトルが得られたことから、ZnPcTCが生成していることが示唆された。また、λ=682nmではQ-bandに由来する非常に鋭いピークを示し、λ=600〜750nmの赤色波長域において大きな吸収が確認されることから、ZnPcTCを赤色領域を特異的に吸収する増感色素として好適に適用可能であることが確認された。
精製・乾燥後に得られた生成物をDMF(Dimethyl Formamide)に溶解させた後、吸収スペクトルの測定を行った。測定結果を図7に実線で示す。図7のグラフには、TCPP(b)とEosin Y(c)の各EtOH溶液の吸収スペクトルも示されている(破線)。
精製後の生成物のDMF溶液では、λ=682nm、617nm、342nmにそれぞれピークトップを示す吸収スペクトルが得られたことから、ZnPcTCが生成していることが示唆された。また、λ=682nmではQ-bandに由来する非常に鋭いピークを示し、λ=600〜750nmの赤色波長域において大きな吸収が確認されることから、ZnPcTCを赤色領域を特異的に吸収する増感色素として好適に適用可能であることが確認された。
◆RGB三色配列セルの構築◆
赤色受光部用の色素としてZnPcTC、緑色受光部用の色素としてEosin Y、青色受光部用の色素としてTCPPを用いてRGB三色配列セルを作製し、受光部の各区画で得られた光の情報を独立した状態で電気信号として取り出せるかどうかの検討を行った。
赤色受光部用の色素としてZnPcTC、緑色受光部用の色素としてEosin Y、青色受光部用の色素としてTCPPを用いてRGB三色配列セルを作製し、受光部の各区画で得られた光の情報を独立した状態で電気信号として取り出せるかどうかの検討を行った。
[P25-TiO2ペーストの調製、多孔質TiO2薄膜の作製]
P25-TiO2粉末6.0gと蒸留水10ml、acetylacetone 0.6g(TiO2に対して10wt%)、ZrO2ビーズ(粒径3mm)70gをプラスチック容器に入れて軽く振り混ぜた後、ペイントシェーカーにより150分間撹拌を行った。撹拌後、P25-TiO2分散溶液を別のプラスチック容器に移し、蒸留水35mlを加えた。さらに、超音波ホモジナイザを用いての超音波処理(5分間)とスターラによる撹拌(5分間)をそれぞれ三回ずつ繰り返した。その後、エバポレータを用いて過剰な水を取り除き、界面活性剤Triton X-100を0.3g加え、均一になるまで振り混ぜてP25-TiO2ペーストとした(TiO2濃度は41wt%)。
次に、UV-O3処理したFTO導電性ガラス基板上に、メンディングテープをスペーサとしてdoctor-blade法によりP25-TiO2ペーストを塗布し、450℃で30分間焼結させることで多孔質TiO2薄膜を作製した。
P25-TiO2粉末6.0gと蒸留水10ml、acetylacetone 0.6g(TiO2に対して10wt%)、ZrO2ビーズ(粒径3mm)70gをプラスチック容器に入れて軽く振り混ぜた後、ペイントシェーカーにより150分間撹拌を行った。撹拌後、P25-TiO2分散溶液を別のプラスチック容器に移し、蒸留水35mlを加えた。さらに、超音波ホモジナイザを用いての超音波処理(5分間)とスターラによる撹拌(5分間)をそれぞれ三回ずつ繰り返した。その後、エバポレータを用いて過剰な水を取り除き、界面活性剤Triton X-100を0.3g加え、均一になるまで振り混ぜてP25-TiO2ペーストとした(TiO2濃度は41wt%)。
次に、UV-O3処理したFTO導電性ガラス基板上に、メンディングテープをスペーサとしてdoctor-blade法によりP25-TiO2ペーストを塗布し、450℃で30分間焼結させることで多孔質TiO2薄膜を作製した。
[色素の担持]
焼結後のTiO2薄膜を適当な大きさ(一区画は3mm×3mm)に加工し、各区画の間は導通を切るために導電面にキズを入れた。テスターで導通が切れているか確認した後に450℃で15分間加熱処理し、120℃前後まで放冷させてから色素担持を行った。
色素担持に用いた各色素溶液は、次に示す通りである。なお、deoxycholic acid(DCA)はTiO2薄膜表面に吸着したTCPP分子同士、もしくはZnPcTC分子同士の会合体形成を抑制するための共吸着剤として用いた。また、tert-butylpyridine(tBP)はZnPcTC分子同士の会合体形成を抑制するための添加剤として、dimethyl sulphoxide(DMSO)はZnPcTCをEtOHに可溶な状態にするための添加剤として用いた。
・0.1mM TCPP + 2mM DCA in EtOH溶液(TCPP-DCA溶液)
・0.3mM Eosin Y in EtOH溶液(Eosin Y溶液)
・0.05mM ZnPcTC + 50mM DCA + 7% tBP + 3% DMSO in EtOH溶液(ZnPcTC-DCA溶液)
焼結後のTiO2薄膜を適当な大きさ(一区画は3mm×3mm)に加工し、各区画の間は導通を切るために導電面にキズを入れた。テスターで導通が切れているか確認した後に450℃で15分間加熱処理し、120℃前後まで放冷させてから色素担持を行った。
色素担持に用いた各色素溶液は、次に示す通りである。なお、deoxycholic acid(DCA)はTiO2薄膜表面に吸着したTCPP分子同士、もしくはZnPcTC分子同士の会合体形成を抑制するための共吸着剤として用いた。また、tert-butylpyridine(tBP)はZnPcTC分子同士の会合体形成を抑制するための添加剤として、dimethyl sulphoxide(DMSO)はZnPcTCをEtOHに可溶な状態にするための添加剤として用いた。
・0.1mM TCPP + 2mM DCA in EtOH溶液(TCPP-DCA溶液)
・0.3mM Eosin Y in EtOH溶液(Eosin Y溶液)
・0.05mM ZnPcTC + 50mM DCA + 7% tBP + 3% DMSO in EtOH溶液(ZnPcTC-DCA溶液)
色素担持は、次のような方法で行った。初めにTCPP-DCA溶液に浸漬させ、増感色素とDCAが完全に吸着するまで暗所で放置することによりTCPPとDCAを担持させた。そして、三つの区画のうち一つを除いて0.1M NaOH水溶液を用いてTCPPを脱着させ、EtOHで洗浄して乾燥させた。次に、TCPP-DCAが担持している区画以外のTiO2薄膜をEosin Y溶液に浸漬させ、同様に暗所で放置することによりEosin Yを担持させた。さらに、EosinYを担持させた二つの区画のうち一つを除いて0.1M NaOH水溶液を用いてEosin Yを脱着させ、EtOHで洗浄して乾燥させた。最後に、残りの一区画のTiO2薄膜をZnPcTC-DCA溶液に浸漬させ、同様に暗所で放置することによりZnPcTCとDCAを担持させた。
[色素担持TiO2薄膜電極を用いたセルの作製と評価]
色素担持後、EtOHで色素担持TiO2薄膜を洗浄してから乾燥させ、対極としてPt対極、電解液としてHell 5、封止剤としてハイミラン(厚さ50μm)を用いて封止セルを作製し、光電変換効率(Incident Photon to Current conversion Efficiency:IPCE)の評価を行った。
図8に得られたIPCEの結果を示す。各増感色素の吸収ピーク波長付近でIPCE値が顕著に増大していることから、増感色素による分光増感現象が生じていることが確認できた。
色素担持後、EtOHで色素担持TiO2薄膜を洗浄してから乾燥させ、対極としてPt対極、電解液としてHell 5、封止剤としてハイミラン(厚さ50μm)を用いて封止セルを作製し、光電変換効率(Incident Photon to Current conversion Efficiency:IPCE)の評価を行った。
図8に得られたIPCEの結果を示す。各増感色素の吸収ピーク波長付近でIPCE値が顕著に増大していることから、増感色素による分光増感現象が生じていることが確認できた。
◆TiCl4処理による高効率化◆
セルのIPCE値を更に向上させることを目的として、焼結後の多孔質TiO2薄膜にTiCl4処理を施した。
セルのIPCE値を更に向上させることを目的として、焼結後の多孔質TiO2薄膜にTiCl4処理を施した。
[TiO2薄膜のTiCl4処理]
上記と同様の方法で、P25-TiO2ペーストから多孔質TiO2薄膜を作製した。焼結させたTiO2薄膜電極のTiO2薄膜以外の部分にマスキングを施した後、0.2M TiCl4水溶液をTiO2薄膜上に滴下し、そのままの状態で密閉容器内に12時間静置した。静置後、TiO2薄膜を脱イオン水で洗浄してからマスキングを取り除き、再度450℃で30分間焼結を行った。
上記と同様の方法で、P25-TiO2ペーストから多孔質TiO2薄膜を作製した。焼結させたTiO2薄膜電極のTiO2薄膜以外の部分にマスキングを施した後、0.2M TiCl4水溶液をTiO2薄膜上に滴下し、そのままの状態で密閉容器内に12時間静置した。静置後、TiO2薄膜を脱イオン水で洗浄してからマスキングを取り除き、再度450℃で30分間焼結を行った。
[色素担持TiO2薄膜電極を用いたセルの作製と評価]
焼結後あるいはTiCl4処理後のTiO2薄膜を適当な大きさ(一区画は3mm×3mm)に加工してから450℃で15分間加熱処理し、120℃まで放冷させてから各色素溶液に浸漬させ、増感色素が完全に吸着するまで暗所で放置し、色素担持を行った。色素担持に用いた各色素溶液は、次に示す通りである。
・0.1mM TCPP + 2mM DCA in EtOH溶液(TCPP-DCA溶液)
・0.3mM Eosin Y in EtOH溶液(Eosin Y溶液)
・0.05mM ZnPcTC + 50mM DCA + 7% tBP + 3% DMSO in EtOH溶液(ZnPcTC-DCA溶液)
焼結後あるいはTiCl4処理後のTiO2薄膜を適当な大きさ(一区画は3mm×3mm)に加工してから450℃で15分間加熱処理し、120℃まで放冷させてから各色素溶液に浸漬させ、増感色素が完全に吸着するまで暗所で放置し、色素担持を行った。色素担持に用いた各色素溶液は、次に示す通りである。
・0.1mM TCPP + 2mM DCA in EtOH溶液(TCPP-DCA溶液)
・0.3mM Eosin Y in EtOH溶液(Eosin Y溶液)
・0.05mM ZnPcTC + 50mM DCA + 7% tBP + 3% DMSO in EtOH溶液(ZnPcTC-DCA溶液)
色素担持後、EtOHとacetonitrileで色素担持TiO2薄膜を洗浄し、対極としてPt対極、電解液としてHell 5、封止剤としてハイミランを用いて封止セルとサンドイッチセルを作製し、ソーラーシミュレータによりI-V測定を行った。また、IPCEの評価も続けて行った。
[セル特性の評価]
I-V測定の結果を図9と図10に、IPCE測定の結果を図11にそれぞれ示す。多孔質TiO2薄膜にTiCl4処理を施すことで、光電流値(IscまたはJsc)とFFの大きな増加を主因とするI-V特性の向上が確認された。また、各増感色素の吸収ピーク波長におけるIPCE値も向上し、TiCl4処理によるI-V特性ならびにIPCE特性の向上を確認することができた。
I-V測定の結果を図9と図10に、IPCE測定の結果を図11にそれぞれ示す。多孔質TiO2薄膜にTiCl4処理を施すことで、光電流値(IscまたはJsc)とFFの大きな増加を主因とするI-V特性の向上が確認された。また、各増感色素の吸収ピーク波長におけるIPCE値も向上し、TiCl4処理によるI-V特性ならびにIPCE特性の向上を確認することができた。
なお、図11のIPCEスペクトル中において、Eosin Yを担持させたサンプル(EY-T、EY-N)の波長λ=400〜450nmに小さなピークが現れているが、これはTCPPを担持させた区画とEosin Yを担持させた区画との間の導通が完全には切れていなかったことに起因していると考えられる。各区画間の導通を完全に切断することによりこのピークは消滅し、各区画からRGBに関する正しい情報が得られるようになると考えられる。
◆RGB色感知センサとしての性能評価◆
光電変換セルの応答により取り出された電気信号を順に読み出してビデオ信号に変換してモニタに映し出すための電気回路を構築(図12)し、RGB各色に分割した状態でモニタリングすることにより、RGBの三原色に色分離されている様子を視覚的に観察した。
光電変換セルの応答により取り出された電気信号を順に読み出してビデオ信号に変換してモニタに映し出すための電気回路を構築(図12)し、RGB各色に分割した状態でモニタリングすることにより、RGBの三原色に色分離されている様子を視覚的に観察した。
先に述べた実験と同様の手順で作製したRGB三色配列セルを用い、白色蛍光灯を光源として、出力電流Iinが1μA程度になる距離付近にRGB三色配列セルを配置し、一連の読み出し回路を通じて変換されたビデオ信号をモニタに映し出した。光源の色調はカラーフィルタ等を用いて制御し、オペアンプに並列に接続している抵抗は、V=Iin×Rにより出力電圧が2V程度になるように抵抗値を決定した。また、ノイズ除去のために100μFの電解コンデンサを抵抗付近に接続した。
[出力電流からビデオ信号への変換]
光電変換セルから出力された光電流は、一連の出力読み出し回路と出力制御回路によりビデオ信号に変換される。具体的には、光電変換セルからの出力光電流はオペアンプと抵抗を用いた増幅回路によって出力電圧に変換され、マルチプレクサによって各区画からの出力電圧が電気信号として順に読み出される。読み出された出力電圧は、アナログ−ディジタル変換器を通してFPGA(Field Programmable Gate Array)に送られ、そこでビデオ信号に変換された後に出力されることによりモニタに映し出される。なお、マルチプレクサによる出力電圧の読み出しのタイミングは、FPGAで生成される制御信号A、Bによりコントロールされる。
光電変換セルから出力された光電流は、一連の出力読み出し回路と出力制御回路によりビデオ信号に変換される。具体的には、光電変換セルからの出力光電流はオペアンプと抵抗を用いた増幅回路によって出力電圧に変換され、マルチプレクサによって各区画からの出力電圧が電気信号として順に読み出される。読み出された出力電圧は、アナログ−ディジタル変換器を通してFPGA(Field Programmable Gate Array)に送られ、そこでビデオ信号に変換された後に出力されることによりモニタに映し出される。なお、マルチプレクサによる出力電圧の読み出しのタイミングは、FPGAで生成される制御信号A、Bによりコントロールされる。
[観察結果]
実際に映し出された画像を図13に示す。白色光(フィルタなし)と黄色光(λ>520nmを透過)では、混合色である入射光がRGBの三原色に色分離されて出力されていることがよくわかる。また、青色光(λ=350〜500nm付近を透過)や緑色光(λ=450〜650nm付近を主に透過)、赤色光(λ>590nmを透過)では、該当外の部分からも若干の応答が見えているものの、各増感色素の吸収ピーク波長に対応した形で光のRGBに関する情報が電気信号(ビデオ信号)に変換されている様子が確認された。
実際に映し出された画像を図13に示す。白色光(フィルタなし)と黄色光(λ>520nmを透過)では、混合色である入射光がRGBの三原色に色分離されて出力されていることがよくわかる。また、青色光(λ=350〜500nm付近を透過)や緑色光(λ=450〜650nm付近を主に透過)、赤色光(λ>590nmを透過)では、該当外の部分からも若干の応答が見えているものの、各増感色素の吸収ピーク波長に対応した形で光のRGBに関する情報が電気信号(ビデオ信号)に変換されている様子が確認された。
以上、本発明に係る光電変換RGBセンサ素子に関し、具体例を挙げて説明を行ったが、上記は一例であって、本発明の精神内において適宜変更・改良を行っても良いことは言うまでもない。
本発明の光電変換RGBセンサ素子は、適用が生体のみに限定されるものではない。ロボット等を含む各種機器用の視覚センサとして利用することもできる。
1…赤色受光部
2…緑色受光部
3…青色受光部
2…緑色受光部
3…青色受光部
Claims (9)
- 赤色波長域、緑色波長域、青色波長域の各波長域の光の強度に応じた信号を出力する赤色受光部、緑色受光部、青色受光部を備え、前記各受光部が色素増感光電変換素子から成ることを特徴とする光電変換RGBセンサ素子。
- 前記各受光部がセル基板上に設けられており、該セル基板が可撓性を有していることを特徴とする請求項1に記載の光電変換RGBセンサ素子。
- 前記赤色受光部に用いられる増感色素が、
で示されるフタロシアニン誘導体であることを特徴とする請求項1又は2に記載の光電変換RGBセンサ素子。 - 前記緑色受光部に用いられる増感色素が、Eosin Y、MFP488、Alexa Fluor(登録商標) 488、Cy2、FITCのうちのいずれかであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の光電変換RGBセンサ素子。
- 前記青色受光部に用いられる増感色素が、
で示されるポルフィリン誘導体であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の光電変換RGBセンサ素子。 - 前記赤色受光部に用いられる増感色素が、構造式が
- 前記青色受光部に用いられる増感色素が、構造式が
- 前記各受光部が、多孔質薄膜電極、増感色素、電解液、対極が層構造を成すことにより構成されていることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の光電変換RGBセンサ素子。
- 前記多孔質薄膜電極が、導電性基板と導電性基板上に焼結された金属酸化物半導体薄膜とから成り、
該金属酸化物半導体にTiCl4を塗布し、焼結させるTiCl4処理が施されていることを特徴とする請求項8に記載の光電変換RGBセンサ素子。
Priority Applications (1)
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---|---|---|---|
JP2006066669A JP2007240460A (ja) | 2006-03-10 | 2006-03-10 | 光電変換rgbセンサ素子 |
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JP2006066669A JP2007240460A (ja) | 2006-03-10 | 2006-03-10 | 光電変換rgbセンサ素子 |
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JP2009128402A (ja) * | 2007-11-20 | 2009-06-11 | Sony Corp | 表示装置 |
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2006
- 2006-03-10 JP JP2006066669A patent/JP2007240460A/ja active Pending
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JP4501995B2 (ja) * | 2007-11-20 | 2010-07-14 | ソニー株式会社 | 表示装置 |
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