JP2007238804A - 改質された高分子の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 ガラス転移温度の向上などといった熱的特性が高められ、さらにガラス転移温度以上といった高温域において弾性率低下の少ない高分子を得ることのできる高分子の製造方法およびこれに用いられる高分子改質剤を提供する。
【解決手段】 外径が0.5〜120nmであって、ラマン分光で測定される1580cm−1のシグナル(Id)に対する1350cm−1のシグナル(Ig)の強度比Id/Igが0.2以下である微細炭素繊維をラジカル生成剤で処理してなる微細炭素繊維からなる高分子改質剤および、この改質剤を高分子に含有させることを特徴とする改質高分子の製造方法である。
【選択図】 図2
【解決手段】 外径が0.5〜120nmであって、ラマン分光で測定される1580cm−1のシグナル(Id)に対する1350cm−1のシグナル(Ig)の強度比Id/Igが0.2以下である微細炭素繊維をラジカル生成剤で処理してなる微細炭素繊維からなる高分子改質剤および、この改質剤を高分子に含有させることを特徴とする改質高分子の製造方法である。
【選択図】 図2
Description
本発明は改質された高分子の製造方法およびこれに用いられる高分子改質剤に関する。本発明は、特に、ガラス転移温度の向上などといった熱的特性が高められ、さらにガラス転移温度以上といった高温域において弾性率低下の少ない高分子を得ることのできる高分子の製造方法およびこれに用いられる高分子改質剤に関する。
従来、耐熱性の高い高分子を得るために、高分子自体の分子設計による特性向上に加えて、各種の改質剤を高分子に添加することが広く行なわれている。
例えば、特許文献1には、ポリイミドとエポキシ含有アルコキシシラン部分縮合物の混合物を硬化させることで得られる耐熱化複合高分子をポリエステルフィルム基材の表面に形成してなる複合フィルムが開示されている。
しかしながら、特許文献1に開示される技術においては、アルコキシシランの縮重合反応が十分でないと低分子量体により耐熱性が逆に劣化する。巨大シリカ粒子の析出により硬化物が脆くなり、クラックが入りやすいといった問題点が生じる。
また、特許文献2には、エポキシ樹脂、シロキサン樹脂、フッ素樹脂などと織布補強材のプリプレグを加熱硬化させることで150℃以上の耐熱性を付与してなる積層板が開示されている。
しかしながら、特許文献2に開示される技術においては、当該プリプレグの使用により成型形状の自由度が低く、かつ織布補強材を用いることから射出成型のような効率的量産が適応できない。
特許文献3には、ポリ乳酸系ポリマーにリン酸エステルを混合することで加熱時の弾性率低下を妨げることが開示されている。さらに、同文献には、さらに、充填剤として、タルク、黒鉛またはシリカを添加する、あるいは脂肪酸アミドを添加することで、ポリ乳酸系ポリマーの結晶化をさらに促進して、荷重たわみ温度を向上させることが開示されている。
しかしながら、リン酸エステルによる耐熱性付与効果はポリ乳酸系ポリマーにのみに有効であり、他の高分子には適応できない。また、充填剤の添加についても、充填剤による補強効果は望めるものの他の高分子においては耐熱性向上は望みがたく、脂肪酸アミドの添加についても同様である。
特許文献4には、銅系熱安定剤をポリアミド樹脂に混合した組成物により、耐熱エージング特性(室温弾性率が半減するのに要する180℃加熱経過時間)の低下を低減させることが開示されている。
しかしながら、特許文献4に示される銅系熱安定剤は、アミド基に配位して熱解重合を防ぐものであるため、他の高分子には適用できない。
さらに、特許文献5〜11には、エポキシ、ポリウレタン、シリコーンゴム、もしくはポリイミドのそれぞれ前駆体とアルコキシシランの混合物を加熱し、高分子硬化反応とシリカ生成反応を同時に進行させることで、生成した複合体のガラス転移温度を向上させ、またガラス転移温度以上の加熱時の弾性率低下を抑制することが開示されている。
しかしながら、これらのオルガノポリシロキサン系のものは、アルコキシシランの縮重合反応が十分でないと低分子量体により耐熱性が逆に劣化する。また、巨大シリカ粒子の析出により硬化物が脆くなり、クラックが入りやすいという問題点があった。
特開2005−29746号公報
特開2005−42117号公報
特開2004−224990号公報
特開2004−143319号公報
特開2002−212262号公報
特開2002−220431号公報
特開2004−67948号公報
特開2003−200527号公報
特開2002−309087号公報
特許第3444287号公報
特許第3539633号公報
従って、本発明は、上記したような背景技術における問題点に鑑み、用途に応じた所望の高分子材料を用いるにあたって、その高分子の本来有する特性を活かしつつ、耐熱性等の特性を向上させる改質高分子の製造方法およびこれに用いられる高分子改質剤を提供することにある。さらに本発明は、多量に混合して所望の高分子材料の特性を減殺することなく、少量にて効果的であり、多種多様な高分子材料に対し、撹拌、溶融混練、その場重合など多様な複合化方法に適応できる高分子改質剤およびこれを用いた改質高分子の製造方法を提供することにある。
上記課題を解決する本発明は、外径が0.5〜120nmであって、ラマン分光で測定される1580cm−1のシグナル(Id)に対する1350cm−1のシグナル(Ig)の強度比Id/Igが0.2以下である微細炭素繊維をラジカル生成剤で処理してなる微細炭素繊維を、高分子に含有させることを特徴とする改質された高分子の製造方法である。
本発明はまた、外径が0.5〜120nmであって、ラマン分光で測定される1580cm−1のシグナル(Id)に対する1350cm−1のシグナル(Ig)の強度比Id/Igが0.2以下である微細炭素繊維をラジカル生成剤で処理してなる微細炭素繊維からなることを特徴とする高分子改質剤である。
本発明の改質された高分子の製造方法は、ラジカル生成剤と処理した、外径が0.5〜120nm、Id/Ig比が、0.2以下である微細炭素繊維をラジカル生成剤で処理してなる微細炭素繊維を用いることで、高分子の種類や複合化方法に制限無く耐熱性の向上した複合体を与える。従って所望の高分子に耐熱性を付与することでその利用範囲を拡大することが可能となる。
以下、本発明を具体的な実施の形態に基づき詳細に説明する。
<高分子改質剤>
a)微細炭素繊維
本発明に係る高分子改質剤を調製するのに用いられる微細炭素繊維は、単層、もしくは多層構造を有しており、その外径は0.5〜120nmの範囲、より好ましくは、0.6〜100nmの範囲のものである。
a)微細炭素繊維
本発明に係る高分子改質剤を調製するのに用いられる微細炭素繊維は、単層、もしくは多層構造を有しており、その外径は0.5〜120nmの範囲、より好ましくは、0.6〜100nmの範囲のものである。
後述するようなラジカル生成剤と反応させることにより、表面修飾されて、所期の改質効果を発揮する高分子改質剤とするためには、用いられる微細炭素繊維は、表面に不対電子が存在しており、空気中の水分、酸素、もしくは環境中の有機物で容易に失活されない安定不対電子を有していなければならない。
一般に、カーボンナノチューブに代表される微細炭素繊維は、従来、その表面に安定に不対電子が存在していなものと考えられていた。本発明者らは、鋭意研究の結果、微細炭素繊維を構成するグラフェンシートの結晶性が高く欠陥の少ないものである場合には、安定した不対電子が存在するものであることを見出し、このような結晶性の高い微細炭素繊維を用いることで、ラジカル生成剤との反応により有効な表面修飾が可能であるとの知見を得たものである。
すなわち、この安定性は、微細炭素繊維を構成するグラフェンシートの高い結晶性により発現される。この結晶性はラマン分光で観測される1580cm−1のシグナルに対する1350cm−1のシグナルの強度比(Id/Ig比)によって定量され、その値は0.2以下、より好ましくは0.1以下である。この場合、不対電子は結晶性の高いグラフェンシート上を非局在安定化されるが、この値を超えた場合は、グラフェンシートに存在する欠陥が多く、その部分で不対電子は局在化し、空気中の水分、酸素、もしくは環境中の有機物と反応し失活しやすくなる。このような安定不対電子の存在は、電子スピン共鳴装置などで炭素ラジカルに帰属される共鳴線が観測されることで容易に証明される。
本発明において用いられる微細炭素繊維としては、上述したように、外径が0.5〜120nm、Id/Ig比が、0.2以下であるものであれば、特に限定されることなく各種のものを用いることができる。
より具体的には、微細炭素繊維としては、例えば、一枚のグラフェンシートが筒状に丸まってできる直径数nm程度の単層カーボンナノチューブや、筒状のグラフェンシートが軸直角方向に積層した多層カーボンナノチューブ(多壁カーボンナノチューブ)、単層カーボンナノチューブの端部が円錐状で閉じたカーボンナノホーン、このカーボンナノホーンが直径100nm程度の球状の集合体となったカーボンナノホーン集合体等を例示することができる。さらに、炭素の六員環配列構造を有するカーボンオニオン等や、炭素の六員環配列構造中に五員環が導入されたフラーレンやナノカプセル等が包含される。なお、本発明においてこれらの微細炭素繊維は、上記したような種類の単独体とすることも、あるいは、2種以上の混合体とすることも可能である。
さらに、微細炭素繊維は、必要に応じ、粉砕処理を施されたものであっても良い。
本発明に係る高分子改質剤は、後述するように、微細炭素繊維にラジカル生成試薬を反応させることにより表面修飾し、そのラジカル的な表面特性によって、極微量の添加量にあっても高分子の改質を図ることのできるものであることから、その繊維長、アスペクト比といった繊維的特性としては、比較的自由度が高く、高分子中に均一に分散され得ることのできるものであれば良い。従って、微細炭素繊維のアスペクト比(粉砕処理されたものである場合には粉砕後の値)としては、特に限定されるものではないが、例えば、5〜5,000程度のもの、より好ましくは50〜1,000程度のものであることが、高分子中への分散という観点から望ましい。
これらの微細炭素繊維のうち、特に、筒状のグラフェンシートが軸直交断面が多角形状であるカーボンナノチューブを用いることが好ましい。カーボンナノチューブの軸直交断面が多角形状であることは、2500℃以上の温度にて熱処理を施すことに起因するものであるが、この熱処理により、カーボンナノチューブを繊維方向および積層方向の両方において緻密で欠陥の少ないものとし、表面に不対電子を安定に有するものとすることができる。
さらに、微細炭素繊維としては、以下に詳述するような所定構造を有する3次元ネットワーク状の炭素繊維構造体を用いることが好ましい。
本発明において好ましく用いられるこの炭素繊維構造体は、好ましくは外径15〜100nmの炭素繊維から構成される3次元ネットワーク状の炭素繊維構造体であって、前記炭素繊維構造体は、前記炭素繊維が複数延出する態様で、当該炭素繊維を互いに結合する粒状部を有している。
炭素繊維構造体を構成する炭素繊維の外径を、好ましくは15〜100nmの範囲のものとするのは、この範囲の場合に上記したように、炭素繊維の断面が多角形状となり、結晶性が高まるとともに、最終的に得られる表面修飾された微細炭素繊維(高分子改質剤)が添加された高分子中での当該微細炭素繊維の分散性を高めることができるためである。
なお、2400℃以上でアニール処理すると、積層したグラフェンシートの面間隔が狭まり真密度が1.89g/cm3から2.1g/cm3に増加するとともに、炭素繊維の軸直交断面が多角形状となり、この構造の炭素繊維は、積層方向および炭素繊維を構成する筒状のグラフェンシートの面方向の両方において緻密で欠陥の少ないものとなる。
そして本発明において好ましく用いられる上記炭素繊維構造体においては、このような所定外径を有する微細炭素繊維が3次元ネットワーク状に存在するが、これら炭素繊維は、当該炭素繊維の成長過程において形成された粒状部において互いに結合され、該粒状部から前記炭素繊維が複数延出する形状を呈しているものである。このように、微細炭素繊維同士が単に絡合しているものではなく、粒状部において相互に強固に結合されているものであることから、高分子中に配した場合に当該構造体が炭素繊維単体として分散されることなく、嵩高な構造体のままマトリックス中に分散配合されることができる。
当該粒状部は、上述するように炭素繊維の成長過程において形成されるものであるため、当該粒状部における炭素間結合は十分に発達したものとなり、正確には明らかではないが、sp2結合およびsp3結合の混合状態を含むと思われる。そして、生成後(後述する第一中間体および第二中間体)においては、粒状部と繊維部とが、炭素原子からなるパッチ状のシート片を貼り合せたような構造をもって連続しており、その後の高温熱処理後においては、図3(a)および(b)に示されるように、粒状部を構成するグラフェン層の少なくとも一部は、当該粒状部より延出する微細炭素繊維を構成するグラフェン層に連続するものとなる。本発明に係る炭素繊維構造体において、粒状部と微細炭素繊維との間は、上記したような粒状部を構成するグラフェン層が微細炭素繊維を構成するグラフェン層と連続していることに象徴されるように、炭素結晶構造的な結合によって(少なくともその一部が)繋がっているものであって、これによって粒状部と微細炭素繊維との間の強固な結合が形成されているものである。
なお、本願明細書において、粒状部から炭素繊維が「延出する」するとは、粒状部と炭素繊維とが他の結着剤(炭素質のものを含む)によって、単に見かけ上で繋がっているような状態をさすものではなく、上記したように炭素結晶構造的な結合によって繋がっている状態を主として意味するものである。
さらに、特に限定されるわけではないが、この粒状部の粒径は、図3(a)に示すように、前記微細炭素繊維の外径よりも大きいことが望ましい。具体的には、例えば、前記微細炭素繊維の外径の好ましくは1.3〜250倍、より好ましくは1.5〜100倍、さらに好ましくは2.0〜25倍である。なお、前記値は平均値である。なお、本明細書でいう「粒状部の粒径」とは、炭素繊維相互の結合点である粒状部を1つの粒子とみなして測定した値である。
また、本発明において好ましく用いられる炭素繊維構造体は、面積基準の円相当平均径が50〜100μm、より好ましくは60〜90μm程度程度であることが望ましい。ここで面積基準の円相当平均径とは、炭素繊維構造体の外形を電子顕微鏡などを用いて撮影し、この撮影画像において、各炭素繊維構造体の輪郭を、適当な画像解析ソフトウェア、例えばWinRoof(商品名、三谷商事株式会社製)を用いてなぞり、輪郭内の面積を求め、各繊維構造体の円相当径を計算し、これを平均化したものである。
この円相当平均径は、当該炭素繊維構造体を用いて調製された本発明に係る高分子改質剤が高分子中に配合された場合における当該高分子改質剤(炭素繊維構造体)の最長の長さを決める要因となるものであり、概して、高分子ないしそのモノマー組成物あるいは高分子溶液中へ配合する際に大きな粘度上昇が起こらず、混合分散性が良好であるという点より、円相当平均径が50〜100μmであることが好ましい。
さらに、本発明において好ましく用いられる炭素繊維構造体は、上記したように、3次元ネットワーク状に存在する炭素繊維が粒状部において互いに結合され、該粒状部から前記炭素繊維が複数延出する形状を呈しており、このため当該構造体は炭素繊維が疎に存在した嵩高な構造を有するが、具体的には、例えば、その嵩密度が0.0001〜0.05g/cm3、より好ましくは0.001〜0.02g/cm3であることが望ましい。
本発明において好適に用いられる前記炭素繊維構造体は、特に限定されるものではないが、例えば、次のようにして調製することができる。
基本的には、遷移金属超微粒子を触媒として炭化水素等の有機化合物をCVD法で化学熱分解して繊維構造体(以下、中間体という)を得、これをさらに高温熱処理する。
原料有機化合物としては、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの炭化水素、一酸化炭素(CO)、エタノール等のアルコール類などが使用できる。特に限定されるわけではないが、本発明に係る繊維構造体を得る上においては、炭素源として、分解温度の異なる少なくとも2つ以上の炭素化合物を用いることが好ましい。なお、本明細書において述べる「少なくとも2つ以上の炭素化合物」とは、必ずしも原料有機化合物として2種以上のものを使用するというものではなく、原料有機化合物としては1種のものを使用した場合であっても、繊維構造体の合成反応過程において、例えば、トルエンやキシレンの水素脱アルキル化(hydrodealkylation)などのような反応を生じて、その後の熱分解反応系においては分解温度の異なる2つ以上の炭素化合物となっているような態様も含むものである。
なお、熱分解反応系において炭素源としてこのように2種以上の炭素化合物を存在させた場合、それぞれの炭素化合物の分解温度は、炭素化合物の種類のみでなく、原料ガス中の各炭素化合物のガス分圧ないしモル比によっても変動するものであるため、原料ガス中における2種以上の炭素化合物の組成比を調整することにより、炭素化合物として比較的多くの組み合わせを用いることができる。
例えば、メタン、エタン、プロパン類、ブタン類、ペンタン類、へキサン類、ヘプタン類、シクロプロパン、シクロヘキサンなどといったアルカンないしシクロアルカン、特に炭素数1〜7程度のアルカン;エチレン、プロピレン、ブチレン類、ペンテン類、ヘプテン類、シクロペンテンなどといったアルケンないしシクロオレフィン、特に炭素数1〜7程度のアルケン;アセチレン、プロピン等のアルキン、特に炭素数1〜7程度のアルキン;ベンゼン、トルエン、スチレン、キシレン、ナフタレン、メチルナフタレン、インデン、フェナントレン等の芳香族ないし複素芳香族炭化水素、特に炭素数6〜18程度の芳香族ないし複素芳香族炭化水素、メタノール、エタノール等のアルコール類、特に炭素数1〜7程度のアルコール類;その他、一酸化炭素、ケトン類、エーテル類等の中から選択した2種以上の炭素化合物を、所期の熱分解反応温度域において異なる分解温度を発揮できるようにガス分圧を調整し、組み合わせて用いること、および/または、所定の温度領域における滞留時間を調整することで可能であり、その混合比を最適化することで効率よく本発明に係る炭素繊維構造体を製造することができる。
なお、雰囲気ガスには、アルゴン、ヘリウム、キセノン等の不活性ガスや水素を用いることができる。
また、触媒としては、鉄、コバルト、モリブデンなどの遷移金属あるいはフェロセン、酢酸金属塩などの遷移金属化合物と硫黄あるいはチオフェン、硫化鉄などの硫黄化合物の混合物を使用する。
後述する第一中間体の合成は、通常行われている炭化水素等のCVD法を用い、原料となる炭化水素および触媒の混合液を蒸発させ、水素ガス等をキャリアガスとして反応炉内に導入し、800〜1300℃の温度で熱分解する。これにより、外径が15〜100nmの繊維相互が、前記触媒の粒子を核として成長した粒状体によって結合した疎な三次元構造を有する炭素繊維構造体(中間体)が複数集まった数cmから数十センチの大きさの集合体を合成する。
原料となる炭化水素の熱分解反応は、主として触媒粒子ないしこれを核として成長した粒状体表面において生じ、分解によって生じた炭素の再結晶化が当該触媒粒子ないし粒状体より一定方向に進むことで、繊維状に成長する。しかしながら、本発明に係る炭素繊維構造体を得る上においては、このような熱分解速度と成長速度とのバランスを意図的に変化させる、例えば上記したように炭素源として分解温度の異なる少なくとも2つ以上の炭素化合物を用いることで、一次元的方向にのみ炭素物質を成長させることなく、粒状体を中心として三次元的に炭素物質を成長させる。もちろん、このような三次元的な炭素繊維の成長は、熱分解速度と成長速度とのバランスにのみ依存するものではなく、触媒粒子の結晶面選択性、反応炉内における滞留時間、炉内温度分布等によっても影響を受け、また、前記熱分解反応と成長速度とのバランスは、上記したような炭素源の種類のみならず、反応温度およびガス温度等によっても影響受けるが、概して、上記したような熱分解速度よりも成長速度の方が速いと、炭素物質は繊維状に成長し、一方、成長速度よりも熱分解速度の方が速いと、炭素物質は触媒粒子の周面方向に成長する。従って、熱分解速度と成長速度とのバランスを意図的に変化させることで、上記したような炭素物質の成長方向を一定方向とすることなく、制御下に多方向として、本発明に係るような三次元構造を形成することができるものである。なお、生成する中間体において、繊維相互が粒状体により結合された前記したような三次元構造を容易に形成する上では、触媒等の組成、反応炉内における滞留時間、反応温度、およびガス温度等を最適化することが望ましい。
このようにして、触媒および炭化水素の混合ガスを800〜1300℃の範囲の一定温度で加熱生成して得られた第一中間体は、炭素原子からなるパッチ状のシート片を貼り合わせたような(生焼け状態の、不完全な)構造を有し、ラマン分光分析をすると、Dバンドが非常に大きく、欠陥が多い。また、生成した中間体は、未反応原料、非繊維状炭化物、タール分および触媒金属を含んでいる。
従って、このような中間体からこれら残留物を除去し、欠陥が少ない所期の炭素繊維構造体を得るために、適切な方法で2400〜3000℃の高温熱処理する。
すなわち、例えば、この第一中間体を800〜1200℃で加熱して未反応原料やタール分などの揮発分を除去した後、2400〜3000℃の高温でアニール処理することによって所期の構造体を調製し、同時に繊維に含まれる触媒金属を蒸発させて除去する。なお、この際、物質構造を保護するために不活性ガス雰囲気中に還元ガスや微量の一酸化炭素ガスを添加してもよい。
前記中間体を2400〜3000℃の範囲の温度でアニール処理すると、炭素原子からなるパッチ状のシート片は、それぞれ結合して複数のグラフェンシート状の層を形成する。
また、このような高温熱処理前もしくは処理後において、炭素繊維構造体の円相当平均径を数cmに解砕処理する工程と、解砕処理された炭素繊維構造体の円相当平均径を50〜100μmに粉砕処理する工程とを経ることで、所望の円相当平均径を有する炭素繊維構造体を得る。なお、解砕処理を経ることなく、粉砕処理を行っても良い。また、本発明に係る炭素繊維構造体を複数有する集合体を、使いやすい形、大きさ、嵩密度に造粒する処理を行っても良い。
b)ラジカル生成剤
上記したような不対電子を有する微細炭素繊維は、ラジカル生成剤と反応させることでラジカル同士の再結合により、表面修飾される。
上記したような不対電子を有する微細炭素繊維は、ラジカル生成剤と反応させることでラジカル同士の再結合により、表面修飾される。
用いられるラジカル生成剤としては、特に限定されるものではなく、発生させるラジカル種としても、酸素ラジカル、窒素ラジカル、ヒドロキシラジカル、リンラジカル、硫黄ラジカル、ハロゲンラジカル、ケイ素ラジカルなどのいずれのものとすることもできる。
ラジカル生成剤としては、代表的には過酸化物およびアゾ系化合物を挙げることができるが、これ以外にも、オキサジアゾール化合物、過硫酸化合物、アセトフェノン系化合物、ベンゾフェノン系化合物、、ベンジル系化合物、ベンゾイン系化合物、ベンジルジメチルケタール系化合物、ベンゾイルベンゾエート系化合物、α−アシロキシムエステル系化合物、スルフィド系化合物、チオキサントン系化合物、アシルホスフィンオキシドないしジアシルホスフィンオキシド系化合物、その他各種の公知のいずれのものを用いることが可能である。
過酸化物としては、具体的には、例えば、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、過酸化オクタノイル、オルソクロロ過酸化ベンゾイル、オルソメトキシ過酸化ベンゾイル、メチルエチルケトンパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、キュメンハイドロパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド等を例示することができる。
また、アゾ系化合物としては、例えば、2,2´−アゾビスイソブチロニトリル、2,2´−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2´−アゾビス−2,3−ジメチルブチロニトリル、2,2´−アゾビス−(2−メメチルブチロニトリル)、2,2´−アゾビス−2,3,3−トリメチルブチロニトリル、2,2´−アゾビス−2−イソプロピルブチロニトリル、1,1´−アゾビス−(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2´−アゾビス−(4−メチキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2−(カルバモイルアゾ)イソブチロニトリル、4,4´−アゾビス−4−シアノバレリン酸、ジメチル−2,2´−アゾビスイソブチレート等の油溶性アゾ化合物;
2,2´−アゾビス−[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]、2,2´−アゾビス−[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジスルフェート、2,2´−アゾビス−[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジハイドロクロライド、2,2´−アゾビス−(2−メチルプロピオンアミジン)ジハイドロクロライド、2,2´−アゾビス−[N−(2−カルボキシエチル)−2−メチルプロピオンアミジン]ハイドレート、2,2´−アゾビス−2−[1−(2−ヒドロキシエチル)−2−イミダゾリン−2−イル]プロパネルジハイドロクロライド、2,2´−アゾビス−(1−イミノ−1−ピロリジノ−2−エチルプロパン)、2,2´−アゾビス−[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]等の水溶性アゾ化合物;および
ポリジメチルシロキサンユニット含有高分子アゾ化合物、ポリエチレングリコールユニット含有高分子アゾ化合物等の高分子系アゾ化合物などのアゾ化合物などを例示できる。
2,2´−アゾビス−[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]、2,2´−アゾビス−[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジスルフェート、2,2´−アゾビス−[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジハイドロクロライド、2,2´−アゾビス−(2−メチルプロピオンアミジン)ジハイドロクロライド、2,2´−アゾビス−[N−(2−カルボキシエチル)−2−メチルプロピオンアミジン]ハイドレート、2,2´−アゾビス−2−[1−(2−ヒドロキシエチル)−2−イミダゾリン−2−イル]プロパネルジハイドロクロライド、2,2´−アゾビス−(1−イミノ−1−ピロリジノ−2−エチルプロパン)、2,2´−アゾビス−[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]等の水溶性アゾ化合物;および
ポリジメチルシロキサンユニット含有高分子アゾ化合物、ポリエチレングリコールユニット含有高分子アゾ化合物等の高分子系アゾ化合物などのアゾ化合物などを例示できる。
その他のものとしては、例えば、2−ハロメチル−1,3,4−オキサジアゾール、2−ハロメチル−5−アリールビニル−1,3,4−オキサジアゾール、2−ハロメチル−5−アリール−1,3,4−オキサジアゾール、2−ハロメチル−1,3,4−オキサジアゾール、過硫酸カリウム、4−フェノキシジクロロアセトフェノン、4−t−ブチル−ジクロロアセトフェノン、4−t−ブチル−トリクロロアセトフェノン、ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、1−{4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル}−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−{4−(メチルチオ)フェニル}−2−モルホリノプロパン−1−オン、ベンジル、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンジルジメチルケタール、ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、ベンゾイル安息香酸メチル、4−フェニルベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、アクリル化ベンゾフェノン、3,3’−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン、3,3’,4,4’−テトラキス(t−ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、9,10−フェナントレンキノン、カンファーキノン、ジベンゾスベロン、2−エチルアントラキノン、4,4’−ジエチルイソフタロフェノン、α−アシロキシムエステル、メチルフェニルグリオキシレート、4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルスルフィド、チオキサントン、2−クロルチオキサントン、2−メチルチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、ベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、2,6−ジメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド等を例示することができる。
なお、本発明において用いられるラジカル生成剤は、上記に例示したものに何ら限定されるものではない。
c)表面修飾
上記したようなラジカル生成剤は、これらを加熱、あるいは光ないし電磁波を照射することでラジカルが生成する。ラジカルを生成させるための加熱ないし照射条件としては、使用されるラジカル生成剤の種類等に依存するが、例えば、例えば、60〜200℃での加熱、200〜400nmの波長の紫外線照射といったものを例示することができる。
このラジカルは溶媒中、もしくは固相において上記微細炭素繊維と反応し、表面修飾体を与える。以上の反応の一例を下式に示す。
上記したようなラジカル生成剤は、これらを加熱、あるいは光ないし電磁波を照射することでラジカルが生成する。ラジカルを生成させるための加熱ないし照射条件としては、使用されるラジカル生成剤の種類等に依存するが、例えば、例えば、60〜200℃での加熱、200〜400nmの波長の紫外線照射といったものを例示することができる。
このラジカルは溶媒中、もしくは固相において上記微細炭素繊維と反応し、表面修飾体を与える。以上の反応の一例を下式に示す。
なお、上記したような反応により微細炭素繊維を表面修飾し、本発明に係る高分子改質剤を得る上において、微細炭素繊維に対するラジカル生成剤の配合割合としては、特に限定されるものではなく、またラジカル生成剤の種類等によっても左右されるが、例えば、微細炭素繊維1gに対し、ラジカル生成剤0.1mmol〜1mol程度、より好ましくは、0.5mmol〜0.5mol程度とすることができる。この程度の配合比を用いた場合には、得られる高分子改質剤は、高分子に添加された際、概して、良好な耐熱性向上作用を発揮するためである。
このようにして調製される本発明に係る高分子改質剤は、各種の高分子に対して改質作用、特に、ガラス転移温度(Tg)の向上、さらにTg以上といった高温域における弾性率低下の低減といった、熱的特性の改善作用を発揮する。
<改質高分子の製造方法>
上述するようにして表面修飾された微細炭素繊維からなる本発明に係る高分子改質剤は、高分子材料に多様な方法にて複合化される。
上述するようにして表面修飾された微細炭素繊維からなる本発明に係る高分子改質剤は、高分子材料に多様な方法にて複合化される。
最も容易な複合化は高分子溶液に上記表面修飾された微細炭素繊維を混合、撹拌することである。このようにして得られた複合体は塗布、流延後、溶媒を溜去し薄膜、フィルム、板などに成型加工される。このような方法で好適に複合化できる高分子としては、例えば、ポリメチルメタクリレートなどの(メタ)アクリル系高分子、ポリスチレンなどのスチレン系高分子、ポリウレタン、ポリカーボネートなどの溶媒可溶性高分子が挙げられる。
単量体とこの微細炭素繊維を混合し、適宜重合触媒存在下にて重合させることでも本発明の耐熱性高分子が得られる。この重合の際、用いる単量体により溶媒の有無、種類が選択される。例えば、ポリメチルメタクリレート複合体を得る場合、メチルメタクリレート、表面修飾された微細炭素繊維、および単量体に対し0.3重量%の過酸化ベンゾイルからなる混合物を60℃に12時間加熱し、目的の複合体が得られる。あるいは、ビニルベンジルエーテルのジエチルエーテル溶液に、表面修飾された微細炭素繊維と単量体に対し2重量%のヨウ化水素/ヨウ素錯体を加え、−20〜0℃にて6時間撹拌することで目的の複合体が得られる。
このような方法で好適に複合化できる高分子として、ポリメチルメタクリレートなどの(メタ)アクリル系高分子、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのオレフィン系高分子、ポリスチレンなどのスチレン系高分子、ポリウレタン、ポリカーボネート、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリエーテル、ポリビニルエーテル、シリコーン樹脂、ポリエステル、ポリアミド、などが挙げられる。
さらに、表面修飾された微細炭素繊維は熱的に安定であり、溶融高分子に混練し複合化させることができる。例えばポリカーボネートのペレットと表面修飾された微細炭素繊維を予め所望の比率にてドライブレンドし、この混合物をニ軸エクストルーダーで320℃にて混練することで目的の耐熱性の向上した改質高分子が得られる。このような方法で好適に複合化できる高分子として、ポリメチルメタクリレートなどの(メタ)アクリル系高分子、ポリスチレンなどのスチレン系高分子、ポリカーボネート、ポリエーテル、ポリビニルエーテル、ポリエステル、ポリアミド、ポリオレフィン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンサルファイド、ポリフェニレンオキサイドなどが挙げられる。
なお、微細炭素繊維の表面修飾に用いるラジカル発生剤と高分子の組み合わせに特に制限は無いが、得られる耐熱性効果は双方の相互作用に依存し変化する。高い耐熱性を得る場合は、ラジカル残基と高分子の親油性、もしくは疎水性を合わせることが好ましく、これと逆の組み合わせでは耐熱性が向上する割合が低下する。一例としてポリメチルメタクリレートを用いる場合は微細炭素繊維はアゾビスブチロニトリルなどの油溶性のもので修飾されることが好ましい。
また、本発明に係る改質高分子の製造方法において、高分子に対する本発明に係る高分子改質剤の添加量としては、高分子の種類および高分子改質剤の調製に用いられたラジカル生成剤の種類および量等によっても左右されるため、一概には規定できないが、例えば、高分子100質量部(高分子化合物そのものの質量であって、溶剤等の揮発成分を含む質量ではない)に対し、高分子改質剤(すなわち、ラジカル生成剤で処理された微細炭素繊維)を0.1〜20質量部、好ましくは3〜10質量部程度であることが好ましい。
上記したような範囲内であると、十分な改質効果が望めるとともに、高分子の本来有する各種の特性を損なうことも少ないためである。
以上のようにして得られた本発明に係る改質高分子は、改質剤を添加していないオリジナルの高分子と比較して、代表的には、その熱的特性が改善され、室温時の弾性率を変化させることなくガラス転移温度(Tg)を向上させ、さらにガラス転移を超えた温度域において弾性率の低下が抑制される。
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例と比較例で得られた高分子複合体の物性は以下に示す方法に従って測定した。
<電子スピン共鳴分光>
日本電子社製JES−FA100を用い外部磁場0.5T、室温下にて測定した。
日本電子社製JES−FA100を用い外部磁場0.5T、室温下にて測定した。
<ラマン分光>
堀場ジョバンイボン製LabRam800を用い、アルゴンレーザーの514nmの波長を用いて測定した。
堀場ジョバンイボン製LabRam800を用い、アルゴンレーザーの514nmの波長を用いて測定した。
<弾性率、ガラス転移温度>
ボーリンインスツルメンツ社製 Geminiを用い、厚さ1mmの試料を10Hzの加振下、5℃/分の昇温で得られる貯蔵弾性率と損失正接の温度分散から求めた。
ボーリンインスツルメンツ社製 Geminiを用い、厚さ1mmの試料を10Hzの加振下、5℃/分の昇温で得られる貯蔵弾性率と損失正接の温度分散から求めた。
合成例1
CVD法によって、トルエンを原料として炭素繊維構造体を合成した。
CVD法によって、トルエンを原料として炭素繊維構造体を合成した。
触媒としてフェロセン及びチオフェンの混合物を使用し、水素ガスの還元雰囲気で行った。トルエン、触媒を水素ガスとともに380℃に加熱し、生成炉に供給し、1250℃で熱分解して、炭素繊維構造体(第一中間体)を得た。
上記のようにして合成された中間体を窒素中で900℃で焼成して、タールなどの炭化水素を分離し、第二中間体を得た。さらにこの第二中間体をアルゴン中で2600℃で高温熱処理し、得られた炭素繊維構造体の集合体を気流粉砕機にて粉砕し、本発明において用いられる微細炭素繊維を得た。
得られた微細炭素繊維を上述する方法に従ってラマン分光分析にかけ、その結果よりID/IG比を求めたところ、0.15であった。また、電子スピン共鳴分光を上述する方法に従って調べた結果を図1に示す。図1に示すように、得られたデータには、炭素ラジカルに帰属される共鳴線が確認され、合成されたId/Ig比0.15の微細炭素繊維が不対電子を有するものであることが示された。
実施例1
実施例1で得られたId/Ig比が0.15の微細炭素繊維10gにアゾビスイソブチロニトリル2g、およびメチルエチルケトン500mLを配合した混合物を窒素雰囲気下にて80℃で12時間撹拌した。得られた反応混合物を冷却、ろ別し、残査を120℃にて2時間、真空乾燥させ、表面修飾された微細炭素繊維を得た。
実施例2
アゾビスバレロニトリルを用いた以外は実施例1と同様の方法で表面修飾された微細炭素繊維を得た。
実施例1で得られたId/Ig比が0.15の微細炭素繊維10gにアゾビスイソブチロニトリル2g、およびメチルエチルケトン500mLを配合した混合物を窒素雰囲気下にて80℃で12時間撹拌した。得られた反応混合物を冷却、ろ別し、残査を120℃にて2時間、真空乾燥させ、表面修飾された微細炭素繊維を得た。
実施例2
アゾビスバレロニトリルを用いた以外は実施例1と同様の方法で表面修飾された微細炭素繊維を得た。
実施例3および参考例1
実施例1で得られた表面修飾された微細炭素繊維2g、メチルメタクリレート80g、過酸化ベンゾイル 0.12gの混合物を窒素雰囲気下、40〜100℃にて20時間かけて昇温し、塊状である本発明に係る改質高分子(実施例3)を得た。なお、得られた改質高分子の数平均分子量は、154,000であった。
実施例1で得られた表面修飾された微細炭素繊維2g、メチルメタクリレート80g、過酸化ベンゾイル 0.12gの混合物を窒素雰囲気下、40〜100℃にて20時間かけて昇温し、塊状である本発明に係る改質高分子(実施例3)を得た。なお、得られた改質高分子の数平均分子量は、154,000であった。
得られた改質高分子の弾性率、ガラス転移温度を上述した方法に従って測定した。得られた結果を図2および表1に示す。
なお、参考のために、実施例1で得られた表面修飾された微細炭素繊維に代えて、合成例1で得られた微細炭素繊維(ラジカル生成剤による表面修飾を施されていない)をそのまま用いる以外は、上記と同様にしてポリメチルメタクリレートの重合を行い(参考例1)、同様に改質高分子の弾性率、ガラス転移温度を測定した。得られた結果を図2および表1に示す。
図2に示す結果から明らかなように、実施例3の本発明に係る改質高分子のガラス転移温度は、未修飾の微細炭素繊維を用いた参考例1の高分子の場合に比べ120℃から140℃に高まり、かつ、ガラス転移温度を30℃超えたところの弾性率が5MPaから8MPaへ増加した。
なお、得られた高分子の数平均分子量は、実施例3および参考例1共に約154,000であった。
実施例4および参考例2
実施例3と同様に実施例1で得た表面修飾微細炭素繊維を用い、表1に従い、改質ポリスチレンを得た(実施例4)。一方、参考例1と同様に未修飾微細炭素繊維を用い、表1に従い、参考用ポリスチレンを得た(参考例2)。表1に示す結果に示されるように、動的粘弾性測定から実施例4の改質高分子のガラス転移温度は、未修飾の微細炭素繊維を用いた参考例2の場合に比べ高まり、かつ、ガラス転移温度を超えたところ温度域での弾性率の低下が抑制された。
実施例3と同様に実施例1で得た表面修飾微細炭素繊維を用い、表1に従い、改質ポリスチレンを得た(実施例4)。一方、参考例1と同様に未修飾微細炭素繊維を用い、表1に従い、参考用ポリスチレンを得た(参考例2)。表1に示す結果に示されるように、動的粘弾性測定から実施例4の改質高分子のガラス転移温度は、未修飾の微細炭素繊維を用いた参考例2の場合に比べ高まり、かつ、ガラス転移温度を超えたところ温度域での弾性率の低下が抑制された。
なお、得られた高分子の数平均分子量は、実施例4および参考例1共に約182,000であった。
実施例5および参考例3
実施例1で得た表面修飾微細炭素繊維2g、エポキシ樹脂(アデカレジンEP−4901、旭電化工業(株)製)、100g、硬化剤(アデカハードナーEH−217、旭電化工業(株)製)20gの混合物を室温で3時間、120℃で2時間、加熱硬化させ、目的の改質高分子を得た(実施例5)。得られた改質高分子の弾性率、ガラス転移温度を上述した方法に従って測定した。得られた結果を表1に示す。
実施例1で得た表面修飾微細炭素繊維2g、エポキシ樹脂(アデカレジンEP−4901、旭電化工業(株)製)、100g、硬化剤(アデカハードナーEH−217、旭電化工業(株)製)20gの混合物を室温で3時間、120℃で2時間、加熱硬化させ、目的の改質高分子を得た(実施例5)。得られた改質高分子の弾性率、ガラス転移温度を上述した方法に従って測定した。得られた結果を表1に示す。
なお、参考のために、実施例1で得られた表面修飾された微細炭素繊維に代えて、合成例1で得られた微細炭素繊維(ラジカル生成剤による表面修飾を施されていない)をそのまま用いる以外は、上記と同様にしてエポキシ樹脂に添加し(参考例3)、同様に改質高分子の弾性率、ガラス転移温度を測定した。表1に示す結果に示されるように、動的粘弾性測定から実施例5の改質高分子のガラス転移温度は、未修飾の微細炭素繊維を用いた参考例3の場合に比べ高まり、かつ、ガラス転移温度を超えたところ温度域での弾性率の低下が抑制された。
実施例6および参考例4
実施例2で得た表面修飾微細炭素繊維5gとポリエチレン100gのドライブレンドによる混合物をニ軸エクストルーダーにて180℃にて混練し、目的の改質高分子を得た(実施例6)。
得られた改質高分子の弾性率、ガラス転移温度を上述した方法に従って測定した。得られた結果を表1に示す。
実施例2で得た表面修飾微細炭素繊維5gとポリエチレン100gのドライブレンドによる混合物をニ軸エクストルーダーにて180℃にて混練し、目的の改質高分子を得た(実施例6)。
得られた改質高分子の弾性率、ガラス転移温度を上述した方法に従って測定した。得られた結果を表1に示す。
なお、参考のために、実施例2で得られた表面修飾された微細炭素繊維に代えて、合成例1で得られた微細炭素繊維(ラジカル生成剤による表面修飾を施されていない。)をそのまま用いる以外は、上記と同様にしてポリエチレンに添加し(参考例4)、同様に改質高分子の弾性率、ガラス転移温度を測定した。表1に示す結果に示されるように、動的粘弾性測定から実施例5の改質高分子のガラス転移温度は、未修飾の微細炭素繊維を用いた参考例4の場合に比べ高まり、かつ、ガラス転移温度を超えたところ温度域での弾性率の低下が抑制された。
動的粘弾性測定からこの耐熱性高分子のガラス転移温度は未修飾の微細炭素繊維を用いた場合に比べ高まり、かつ、ガラス転移温度を超えたところ温度域での弾性率の低下が抑制された。
実施例7および参考例5
ポリエチレンに代えてポリカーボネートを用いた以外は実施例6に従い、改質高分子を得た(実施例7)。一方、参考例4と同様に未修飾微細炭素繊維を用い、表1に従い、参考用ポリカーボネートを得た(参考例2)。表1に示す結果に示されるように、動的粘弾性測定から実施例7の改質高分子のガラス転移温度は、未修飾の微細炭素繊維を用いた参考例5の場合に比べ高まり、かつ、ガラス転移温度を超えたところ温度域での弾性率の低下が抑制された。
ポリエチレンに代えてポリカーボネートを用いた以外は実施例6に従い、改質高分子を得た(実施例7)。一方、参考例4と同様に未修飾微細炭素繊維を用い、表1に従い、参考用ポリカーボネートを得た(参考例2)。表1に示す結果に示されるように、動的粘弾性測定から実施例7の改質高分子のガラス転移温度は、未修飾の微細炭素繊維を用いた参考例5の場合に比べ高まり、かつ、ガラス転移温度を超えたところ温度域での弾性率の低下が抑制された。
比較例1
エポキシ樹脂 (アデカレジンEP−4901)100g、硬化剤 (アデカハードナー EH−217)20g、エポキシプロピルトリメトキシシラン5.6g、水3.2gの混合物を室温で4時間撹拌し、アルコキシシランを加水分解、重縮合させ、生成した揮発物を室温下、真空にて2時間溜去した。その後40℃で2時間、120℃で2時間加熱硬化させ、比較用高分子を得た。概観上巨視的粒子が析出し、クラックが表面に現れで動的粘弾性測定は困難であった。
エポキシ樹脂 (アデカレジンEP−4901)100g、硬化剤 (アデカハードナー EH−217)20g、エポキシプロピルトリメトキシシラン5.6g、水3.2gの混合物を室温で4時間撹拌し、アルコキシシランを加水分解、重縮合させ、生成した揮発物を室温下、真空にて2時間溜去した。その後40℃で2時間、120℃で2時間加熱硬化させ、比較用高分子を得た。概観上巨視的粒子が析出し、クラックが表面に現れで動的粘弾性測定は困難であった。
比較例2
キシリレンジイソシアネートとヒドロキシエチルメタクリレートの重付加体からなるポリウレタンメタクリレート100gと平均粒径200nmのコロイダルシリカのイソプロパノール分散液30g(固形分15%)を均一混合し、溶媒を溜去した後、残査に過酸化ベンゾイルを0.3g均一混合し、室温〜120℃まで48時間かけて昇温し重合させた。得られた複合体のガラス転移温度とガラス転移温度を30℃超えたところの弾性率はそれぞれ、64℃、6.4MPaであり、用いたポリウレタンメタクリレートの単独重合体のそれらと同じであった。
キシリレンジイソシアネートとヒドロキシエチルメタクリレートの重付加体からなるポリウレタンメタクリレート100gと平均粒径200nmのコロイダルシリカのイソプロパノール分散液30g(固形分15%)を均一混合し、溶媒を溜去した後、残査に過酸化ベンゾイルを0.3g均一混合し、室温〜120℃まで48時間かけて昇温し重合させた。得られた複合体のガラス転移温度とガラス転移温度を30℃超えたところの弾性率はそれぞれ、64℃、6.4MPaであり、用いたポリウレタンメタクリレートの単独重合体のそれらと同じであった。
比較例3
電子スピン共鳴分光からラジカルがほとんど観測されないId/Ig比が1.2の微細炭素繊維を用いて実施例1と同様にして表面修飾された微細炭素繊維を得、これを用いて実施例2と同様にしてポリメチルメタクリレートを重合した。このガラス転移温度とガラス転移温度を30℃超えたところの弾性率はそれぞれ、119℃、5.0MPaであり、表面修飾していない微細炭素繊維を用いた場合に得られたポリメチルメタクリレート(参考例1)と同様の熱特性を有していた。
電子スピン共鳴分光からラジカルがほとんど観測されないId/Ig比が1.2の微細炭素繊維を用いて実施例1と同様にして表面修飾された微細炭素繊維を得、これを用いて実施例2と同様にしてポリメチルメタクリレートを重合した。このガラス転移温度とガラス転移温度を30℃超えたところの弾性率はそれぞれ、119℃、5.0MPaであり、表面修飾していない微細炭素繊維を用いた場合に得られたポリメチルメタクリレート(参考例1)と同様の熱特性を有していた。
Claims (9)
- 外径が0.5〜120nmであって、ラマン分光で測定される1580cm−1のシグナル(Id)に対する1350cm−1のシグナル(Ig)の強度比Id/Igが0.2以下である微細炭素繊維をラジカル生成剤で処理してなる微細炭素繊維(以下、「ラジカル生成剤で処理された微細炭素繊維」という)を、高分子に含有させることを特徴とする改質された高分子の製造方法。
- 前記改質された高分子は、ラジカル生成剤で処理された微細炭素繊維を含有していない未改質の高分子と比較してガラス転移温度(Tg)が高いものとなるものである請求項1に記載の改質された高分子の製造方法。
- ラジカル生成剤で処理された微細炭素繊維が、微細炭素繊維1gに対し、ラジカル生成剤0.1mmol〜1molを用いて処理することにより得られたものである請求項1または2に記載の改質された高分子の製造方法。
- 高分子100質量部に対し、ラジカル生成剤で処理された微細炭素繊維を0.1〜20質量部添加するものである請求項1〜3のいずれか1つに記載の改質された高分子の製造方法。
- ラジカル生成剤で処理された微細炭素繊維の存在下で、単量体を重合させ、改質された高分子を得るものである請求項1〜4のいずれか1つに記載の改質された高分子の製造方法。
- ラジカル生成剤で処理された微細炭素繊維を、溶融高分子と混練して、改質された高分子を得るものである請求項1〜4のいずれか1つに記載の改質された高分子の製造方法。
- ラジカル生成剤で処理された微細炭素繊維と、高分子溶液とを混合して、改質された高分子を得るものである請求項1〜4のいずれか1つに記載の改質された高分子の製造方法。
- 外径が0.5〜120nmであって、ラマン分光で測定される1580cm−1のシグナル(Id)に対する1350cm−1のシグナル(Ig)の強度比Id/Igが0.2以下である微細炭素繊維をラジカル生成剤で処理してなる微細炭素繊維(以下、「ラジカル生成剤で処理された微細炭素繊維」という)からなることを特徴とする高分子改質剤。
- 微細炭素繊維1gに対し、ラジカル生成剤0.1mmol〜1molを用いて処理することにより得られたものである請求項8に記載の高分子改質剤。
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