JP2007231410A - 高清浄鋼の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】1回目の2次精錬処理では、攪拌動力密度が5〜60W/tonとなるように吹き込みガスの流量を調整すると共に、脱ガス処理後のスラグ組成が、CaO/SiO2≧3.5且つCaO/Al2O3=1.5〜3.5且つT.Fe+MnO≦1.0質量%となるようにスラグ調整を行い、脱ガス処理では、その中期までは攪拌動力密度が50〜200W/tonとなるように吹き込みガスの流量を調整し、中期以降は攪拌動力密度が140W/ton以下(0W/tonを除く)となるように吹き込みガスの流量を調整し、2回目の2次精錬処理では、攪拌動力密度が25W/ton以下(0W/tonを除く)となるように吹き込みガスの流量を調整する。
【選択図】図1
Description
高清浄鋼を製造する方法としては、転炉から出鋼された溶鋼に対し2次精錬を行うことで、更なる組成調整を実施し、この2次精錬終了後の溶鋼に対して脱ガス処理を行うことで、溶鋼内に存在する水素等のガス成分の除去を行っていた。
特許文献2に開示された高清浄鋼の製造技術は、転炉から出鋼された溶鋼を、2次精錬すると共に真空脱ガスし、さらに、真空脱ガス後の溶鋼に対して2回目の2次精錬を行うものとなっている。
すなわち、特許文献1の技術は、真空脱ガス処理時の攪拌動力密度が300W/tonと大きいものとなっており強攪拌状態で脱ガスを行うものとなっている。その後、250W/ton以下に下げるとしているが、300W/tonの攪拌動力密度で強攪拌され、一旦溶鋼中に懸濁したスラグは、250W/tonの攪拌では前述の懸濁が促進されて、巻き込みスラグに起因する介在物が鋼塊中に発生することは避けられない。
つまり、特許文献1や特許文献2などの従来からの技術を用いるだけでは、スラグ巻き込みに起因する介在物がほとんど存在せず高い清浄度を備えた高清浄鋼を製造することは困難である。
すなわち、本発明にかかる高清浄鋼の製造方法は、転炉又は電気炉から出鋼された溶鋼に対し1回目の2次精錬を行い、該1回目の2次精錬終了後の溶鋼に対して脱ガス処理を行い、該脱ガス処理後の溶鋼に対して2回目の2次精錬を行うことで高清浄鋼を製造するものであって、
前記1回目の2次精錬処理では、攪拌動力密度が5〜60W/tonとなるように吹き込みガスの流量を調整すると共に、前記脱ガス処理後のスラグ組成が、CaO/SiO2≧3.5且つCaO/Al2O3=1.5〜3.5且つT.Fe+MnO≦1.0質量%となるようにスラグ調整を行い、
前記脱ガス処理では、当該脱ガス処理の中期までは攪拌動力密度が50〜200W/tonとなるように吹き込みガスの流量を調整し、脱ガス処理の中期以降は攪拌動力密度が140W/ton以下(0W/tonを除く)となるように吹き込みガスの流量を調整し、
前記2回目の2次精錬処理では、攪拌動力密度が25W/ton以下(0W/tonを除く)となるように吹き込みガスの流量を調整することを特徴とする。
まず、本願発明者らは、スラグ巻き込みに起因する介在物がほとんど存在せず高い清浄度を備えた高清浄鋼を製造するためには、転炉により製造された溶鋼に対して、2次精錬処理→脱ガス処理→2次精錬処理という順序で、2回の2次精錬を行うことが必要不可欠であると考えた。
まず、図2(d)からわかるように、最終的に介在物の多い鋼塊(NG鋼塊、図中×)とならないためには、2回目の2次精錬処理における攪拌動力密度を25W/ton以下(0W/tonを除く)の範囲となるように底吹きガスの流量を調整すればよく、より好ましくは、20W/ton以下とするとよい。
なお、脱ガス処理や2回目の2次精錬において、スラグによる溶鋼成分の再酸化を防ぐために、一定の成分組成を有するスラグを生成する必要がある。そのために、1回目の2次精錬処理においては、脱ガス処理後のスラグ組成が、
(i) CaO/SiO2≧3.5、
(ii) CaO/Al2O3=1.5〜3.5、
(iii) T.Fe+MnO≦1.0質量%
の3つの条件を同時に満たすように、加熱温度を制御したり副原料の投入量を調整したりする必要がある。
図1には、本方法を適用する2次精錬装置1と真空脱ガス装置2(脱ガス装置)の概略図が示されている。
2次精錬装置1は、電極加熱式の精錬装置(LF)であって、大気圧の雰囲気下で精錬を行うものである。2次精錬装置1は、溶鋼3が装入された取鍋4と、この取鍋4の上部口4aに覆い被さる蓋体5とを有している。
以上述べた2次精錬装置1では、電極10でアーク放電を発生させることにより溶鋼3を所定温度まで上げつつ、フラックス供給手段11を用いてフラックスを投入し、さらに、ガス吹き込み手段9からガスを吹き込んで溶鋼3を攪拌することによって、化学組成を調整したり溶鋼3内の介在物を浮上分離させたりして溶鋼3の2次的な精錬を行う。
取鍋4は、2次精錬装置1で用いられた取鍋4と同一のものであって、取鍋4の底部には、装入された溶鋼3内にArなどの攪拌ガスを吹き込むための吹き込み口6が設けられている。一方、この取鍋4が載置される載置台7側には、取鍋4の吹き込み口6に着脱自在であって連通状態となるガス導入管8と、このガス導入管8に攪拌ガスを供給するガス供給手段(図示せず)が設けられている。ガス供給手段は2次精錬装置1で用いたものと共通であっても構わない。かかる吹き込み口6とガス導入管8とガス供給手段とで、脱ガス中に溶鋼3を攪拌させるためのガス吹き込み手段9が構成されている。
真空脱ガス装置2では、排気装置を作動させ、排気管13を通じて取鍋4内であって溶鋼3上方のガスを排気することで、取鍋4内を真空状態に近づける。加えて、ガス吹き込み手段9からArガスを吹き込んで溶鋼3を攪拌する。そうすることで、溶鋼3内に存在する水素等のガス成分の除去を行う。
図1に示すように、まず、転炉や電気炉から出鋼され取鍋4に装入された溶鋼3は、2次精錬装置1へ運ばれ、1回目の2次精錬処理(以降、LF−Iと記載することもある)
が施される。具体的には、電極10でアーク放電を発生させることにより溶鋼3をTL=1600℃程度まで上げつつ、フラックス供給手段11を用いてフラックスを投入し、さらに、ガス吹き込み手段9からArガスを吹き込んで溶鋼3を攪拌する。溶鋼3の攪拌強度としては、式(1)で計算される攪拌強度密度が、撹拌動力密度εが5〜60W/tonとなるようにArガスの流量を調整する。なお、撹拌動力密度εの計算において、底吹きガスの吹き込み前温度To(Arガスの吹き込み前温度)は常温、298Kとし、底吹きガスの吹き込み後温度Tg(Arガスの吹き込み後温度)は溶鋼温度TLとしている。
および成分調整が主であり、このときに適切な攪拌を行わなければ、溶鋼成分および溶鋼温度の均一化ができない。しかしながら、過剰な溶鋼攪拌は、成分と温度が均一でもスラグを巻込みやすく、後の欠陥源になり得る可能性大である。ゆえに、撹拌動力密度εが5〜60W/tonとしている。こうすることで、スラグ巻込みを防止しつつ溶鋼3の成分、温度の均一化が図れるようになる。
入量ML等、幾つか条件は異なるものの、Qg/MLを0.30〜3.75Nl/min・tonとすることで、撹拌動力密度εが4.7〜67.2W/tonとなっている。
なお、この処理において、フラックス供給手段11を介して装入されるフラックスの種類や量は、後述する真空脱ガス処理終了後(言い換えれば、2回目の2次精錬処理スタート時)におけるスラグの組成が、
(i) SiO2の質量に対してCaOの質量が3.5倍以上となる、
(ii) Al2O3の質量に対してCaOの質量が1.5〜3.5倍となる、
(iii) スラグ組成中のT.Feの質量とMnOの質量の総和が、スラグの全質量の1.0%以下となる、
の3つの条件を同時に満たすように、加熱温度を制御したり副原料(フラックス)の投入量を調整したりする。
詳しくは、排気装置(図示せず)を作動させ、排気管13を通じて取鍋4内であって溶鋼3上方のガスを排気することで、取鍋4内をP=0.5Torr程度の真空状態に近づける。加えて、ガス吹き込み手段9からArガスを吹き込んで溶鋼3を攪拌する。そうすることで、溶鋼3内に存在する水素等のガス成分の除去が行われる。VDの時間は全体で約20分程度であり、その前半(処理時間の中期以前、前半10分)では、撹拌動力密度εが50〜200W/tonとなるように底吹きガスの流量Qgを調整し、後半(処理時間の中期以降、後半10分)は撹拌動力密度εが140W/ton以下(0W/tonは除く)となるように底吹きガスの流量Qgを調整する。
すなわち、真空脱ガス処理が完了した溶鋼3を、取鍋4ごと2次精錬処理装置に搬送し、溶鋼3に対して2回目の2次溶鋼処理を施す。具体的には、電極10でアーク放電を発生させることにより溶鋼3をTL=1600℃程度まで上げつつ、ガス吹き込み手段9からArガスを吹き込んで溶鋼3を攪拌する。溶鋼3の攪拌強度としては、式(1)で計算される撹拌動力密度εが、25W/ton以下(0W/tonは除く)となるようにArガスの流量Qgを調整する。
よび脱酸生成物の浮上分離」さらに促進させることができる。このとき、LF−IIにおける撹拌動力密度εは、新たなスラグ巻き込みを防止するために25W/ton以下であることが必要であり、この撹拌動力密度εで溶鋼3の加熱・保持を行うことで、確実なスラグ、脱酸生成物の浮上分離が可能である。
(i) 塩基度、すなわちCaO/SiO2≧3.5、
(ii) CaO/Al2O3=1.5〜3.5、
(iii) T.Fe+MnO≦1.0質量%、
であるため、スラグ中の酸化物による溶鋼成分の再酸化が確実に防げるようになっている。
ものと、満たさないものが示してある。また、撹拌動力密度εが5〜60W/tonの範囲内にあっても、以下に示すスラグ組成の条件(スラグ組成条件と呼ぶこともある)を満たす場合と満たさない場合とが示してある。
(ii) CaO/Al2O3=1.5〜3.5、
(iii) T.Fe+MnO≦1.0質量%
なお、他の条件(VD、LF−IIでの条件)は全て満たしている。
ると共に、スラグの巻き込みも発生していない。LF−II終了後の鋼塊に検出された介在
物の最大サイズは0.5mm以下となっており、鋼塊の清浄度はDIN K4規格でのDIN K4≦10を満たし、総合評価は○となっている。
条件1では、撹拌動力密度εが3W/tonであって、5W/tonより小さいため、スラグの巻き込みは発生していないものの、溶鋼3のかき混ぜが不足し、成分や温度が不均一なものとなっている。ゆえに、介在物や清浄度といった評価指標では、条件2〜条件4と同様の結果となっているが、総合評価では×である。
ある介在物が検出された。ゆえに、総合評価は△となっている。
なっている。
条件6では、撹拌動力密度εが40W/tonであって、50W/tonより小さいため、スラグの巻き込みは発生していないものの、溶鋼3のかき混ぜが不足し、脱水素処理が十分には行われなかった。ゆえに、最終的に製造された鋼塊において検出された介在物は、最大サイズ<0.5mm、且つ鋼塊の清浄度はDIN K4規格でのDIN K4≦10を満たしてはいるが、総合評価は×となっている。
条件11では、撹拌動力密度εが15W/tonであって、撹拌動力密度ε≦140W/tonの条件を満たしスラグの巻き込みは発生していない。ゆえに、最終的に製造された鋼塊において検出された介在物は、最大サイズ<0.5mmとなっており、鋼塊の清浄度はDIN K4規格でのDIN K4≦10を満たしていて、所望する結果とはなっている。しかしながら、溶鋼3の脱ガス時の攪拌が不十分であるため、十分な脱ガスがなされておらず、総合評価が×となっている。
満たすものと満たさないものとが示してある。また、撹拌動力密度εが≦25W/tonであっても、スラグ組成条件を満たす場合と満たさない場合とが示してある。なお、他の条件(LF−I、VDでの条件)は全て満たすものとなっている。
条件16では、撹拌動力密度εが5W/tonであって、撹拌動力密度ε≦25W/tonの条件を満たしスラグの巻き込みは発生しておらず、最終的に製造された鋼塊において検出された介在物は、0.5mm≦最大サイズ<1.0mmとなっており、鋼塊の清浄度はDIN K4規格でのDIN K4=11〜35となっている。しかしながら、弱攪拌すぎて溶鋼中の合金成分及び溶鋼温度の不均一が発生するために、鍛鋼品としては不良と判断せざるを得ず、総合評価を×としている。
以上述べた如く、本発明にかかる高清浄鋼の製造方法を採用することで、スラグ巻き込みに起因する介在物がほとんど存在せず高い清浄度を備えた高清浄鋼を製造することが可能となる。
すなわち、脱ガス装置としては、真空脱ガス装置に限定されない。また、真空脱ガス装置であってもVD装置に限定されず、VOD装置(タンク脱ガス装置)などを採用してもよい。
2 真空脱ガス装置
3 溶鋼
4 取鍋
4a 上部口
5 蓋体
6 吹き込み口
7 載置台
8 ガス導入管
9 ガス吹き込み手段
10 電極
11 フラックス供給手段
12 排気手段
13 排気管
14 密閉蓋体
Claims (1)
- 転炉又は電気炉から出鋼された溶鋼に対し1回目の2次精錬を行い、該1回目の2次精錬終了後の溶鋼に対して脱ガス処理を行い、該脱ガス処理後の溶鋼に対して2回目の2次精錬を行うことで高清浄鋼を製造する高清浄鋼の製造方法において、
前記1回目の2次精錬処理では、攪拌動力密度が5〜60W/tonとなるように吹き込みガスの流量を調整すると共に、前記脱ガス処理後のスラグ組成が、CaO/SiO2≧3.5且つCaO/Al2O3=1.5〜3.5且つT.Fe+MnO≦1.0質量%となるようにスラグ調整を行い、
前記脱ガス処理では、当該脱ガス処理の中期までは攪拌動力密度が50〜200W/tonとなるように吹き込みガスの流量を調整し、脱ガス処理の中期以降は攪拌動力密度が140W/ton以下(0W/tonを除く)となるように吹き込みガスの流量を調整し、
前記2回目の2次精錬処理では、攪拌動力密度が25W/ton以下(0W/tonを除く)となるように吹き込みガスの流量を調整することを特徴とする高清浄鋼の製造方法。
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