JP2007227117A - 有機電界発光素子 - Google Patents

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Abstract

【課題】発光層におけるより広い膜厚領域で発光効率を最適化し、かつ正孔輸送層側への励起子の拡散を抑制することにより、りん光性発光材料の持つ高量子収率を十分に活かすことが可能で、これにより低消費電力化および高発光効率化が達成された有機電界発光素子を提供する。
【解決手段】陽極13と陰極17との間に、少なくとも有機材料からなる発光層を有する発光ユニット15を狭持してなる有機電界発光素子1において、発光層が低濃度発光層(第1発光層)15c-2と、これよりも発光材料の含有量が多く低濃度発光層15c-2に隣接して設けられた高濃度発光層(第2発光層)15c-1とを備えている。
【選択図】図1

Description

本発明は、有機電界発光素子に関し、さらに詳しくは発光層にりん光性発光材料を用いた構成に好適な有機電界発光素子に関する。
有機材料のエレクトロルミネッセンス(electroluminescence)を利用した有機電界発光素子は、高速応答性優れ、低電圧直流駆動による高輝度発光が可能な発光素子として注目されている。
有機電界発光素子の基本的な構成は、陽極と陰極との間に、正孔輸送層や発光層等の有機層を積層させた発光ユニットを設けてなる。発光ユニットの構成は、例えば陽極側から順に、正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、さらには電子注入層等を必要に応じて積層してなり、各層がそれぞれ複数層で構成された構成もある。
このように構成された有機電界発光素子は、整流性を示し、陽極と陰極との間に電界を印加すると、陰極から注入された電子と陽極から注入された正孔とが発光層内で再結合して励起子が生じ、この励起子が基底状態に戻る際に発光が生じる。このため、正孔輸送層を設けた構成においては、この正孔輸送層が電子のブロッキング層の役割を果たし、発光層−正孔輸送層界面での再結合効率が上がり、発光効率が上がる。また、電子輸送層を設けた構成においては、発光と電子・正孔輸送が分離され、より効果的なキャリアブロッキング構成となり効率的な発光を行うことができる。
ところで、上述した一般な構成の有機電界発光素子においては、発光中心の分子の一重項励起子から基底状態になるときの蛍光が利用されていた。このようななか、近年では、一重項励起子よりも発生割合の高い三重項励起子から基底状態になるときに発生するりん光を利用した有機電界発光素子が注目されている。りん光を利用した有機電界発光素子は、原理的には蛍光を利用した有機電界発光素子に比べて4倍の100%の発光収率が期待できる。
りん光を利用した有機電界発光素子における発光ユニットの構成としては、例えば陽極側から順に、(1)正孔輸送層、(2)発光層、(3)励起子拡散防止層、および(4)電子輸送層を積層した4層構成が開示されている。これらの各層を構成する材料の一例として、(1)正孔輸送層は、例えばN4,N4’−Di−naphthalene−1−yl−N4,N4’−diphenyl−biphenyl−4,4’−diamine(α−NPD)で構成される。また(2)発光層は、例えば4,4’−N,N’−dicarbazole−biphenyl(CBP)からなるホスト材料中に、りん光性発光材料であるIr(ppy)3:イリジウム−フェニルピリジン錯体をドーパント材料として導入した構成が例示される。さらに(3)励起子拡散防止層は、2,9−dimethyl−4,7−diphenyl−1,10−phenanthroline(BCP)で構成される。そして(4)電子輸送層は、アルミ−キノリノール錯体(Alq3)で構成される(下記非特許文献1,2参照)。
D.F.O’Brienら、"Improved energy transfer in electrophosphorescent device"、「Applied Physics Letters」、(1999)、Vol74、No3、p422 M.A.Baldoら、"Very high−efficiencygreen organic light−emitting devicesbasd on electrophosphorescence"、「Applied Physics Letters」、(1999)、Vol75、No1、p4
しかしながら、上記りん光を用いた有機電界発光素子の構造では、りん光性発光材料の高い発光収率を十分に生かすことが困難であった。
近年の報告では、りん光性発光材料を含有する発光層と隣接する正孔輸送層の正孔輸送性材料の選択により、りん光の発光効率に差が出ることが明らかとなってきた。これはホール輸送層に用いる材料の三重項準位が、りん光性発光材料の三重項準位に比べ十分に高くないと、三重項励起子を有効に閉じ込めることができずに効率が低下してしまうものと考えられている。この結果から、りん光性発光材料を発光物質に用いる有機電界発光素子において、ホール輸送側による三重項励起子の閉じ込めにも注意を払わなくてはならないことが示唆された(第64回応用物理学会学術講演会予稿集 1a-YL-7参照)。
そこで本発明は、発光層におけるより広い膜厚領域で発光効率を最適化し、かつ正孔輸送層側への励起子の拡散を抑制することにより、発光材料の持つ高量子収率を十分に活かすことが可能で、これにより低消費電力化および高発光効率化が達成された有機電界発光素子を提供することを目的とする。
このような目的を達成するための本発明の有機電界発光素子は、陽極と陰極との間に、少なくとも有機材料からなる発光層を有する発光ユニットを狭持してなる有機電界発光素子であり、特には発光層が、第1発光層と第2発光層とを備えたことに特徴がある。そして、第2発光層は、第1発光層よりも発光材料の含有量が多く、第1発光層に隣接して設けられている。
このような構成の有機電界発光素子においては、第1発光層と第2発光層とにおける発光材料の含有量をそれぞれの量としたことで、これらの層が完全に区別して設けられる。これにより、第1発光層における発光材料の含有量を、発光効率が最適となる値に設定することで、第1発光層の膜厚方向の全域が高発光効率の領域となる。そして、第1発光層よりも発光材料の含有量が多い第2発光層は、第1発光層において高効率で発生した励起子が一方の電極側への拡散することを抑制するためのバリア層となる。
以上説明したように本発明の有機電界発光素子においては、発光層における広い膜厚領域で発光効率を最適化することが可能でありながらも、この発光層において発生した励起子の電極側への拡散を抑制することができる。これにより、例えばりん光性発光材料を用いた発光層においては、りん光性発光材料が持つ高量子収率を十分に活かすことが可能となる。この結果、有機電界発光素子の低消費電力化および高発光効率化を達成することが可能となる。
<有機電界発光素子>
図1は、本発明の有機電界発光素子を模式的に示す断面図である。この図に示す有機電界発光素子1は、基板11上に、陽極13、発光ユニット15、および陽極17順次積層してなる。このうち発光ユニット15は、少なくとも有機材料からなる発光層を有する積層体であることとする。
以下、この有機電界発光素子1における各部の詳細な構成を、基板11側から順に説明する。
基板11は、ガラス、シリコン、プラスチック基板、さらにはTFT(thin film transistor)が形成されたTFT基板などからなり、特にこの有機電界発光素子1が基板11側から発光を取り出す透過型である場合には、この基板2は光透過性を有する材料で構成されることとする。
このような基板11上に形成された陽極13は、仕事関数が高い材料を用いて構成されることが好ましい。このような材料として、例えば、ニッケル、銀、金、白金、パラジウム、セレン、ロジウム、ルテニウム、イリジウム、レニウム、タングステン、モリブデン、クロム、タンタル、ニオブやこれらの合金、酸化物、あるいは、酸化錫、ITO、酸化亜鉛、酸化チタン等が用いられる。そして、このような材料からなる陽極13は、必要に応じて積層構造としても良い。また、この有機電界発光素子1がキャビティ構造で構成され、例えば陽極13と陰極17とで反射させた光を陰極17側から取り出す場合、陽極13は、反射材料層を備えていることとする。
以上のような陽極13に設けられた発光ユニット15は、例えば陽極13側から順に、正孔注入層15a、正孔輸送層15b、高濃度発光層15c-1、低濃度発光層15c-2、キャビティ調整層15d、電子注入層15eを積層してなる。そして本実施形態においては、上述したように、有機材料からなる発光層が、高濃度発光層15c-1と低濃度発光層15c-2との積層構成となっているところに特徴がある。またここでは、高濃度発光層15c-1および低濃度発光層15c-2は、りん光性発光材料を含有していることとする。
以下に各層の詳細な構成を説明する。
正孔注入層15aは、例えば、銅フタロシアニン(CuPc)、4,4’,4”−トリス(ナフチルフェニルアミノ)トリフェニルアミン(TNATA)、4,4’,4”−トリス[N−(3−メチルフェニルフェニルアミノ)トリフェニルアミン(m−MTDATA)等、一般的な正孔注入性材料を用いて構成される。
また正孔輸送層15bは、ベンジジン誘導体、スチリルアミン誘導体、トリフェニルメタン誘導体、ヒドラゾン誘導体などの、一般的な正孔輸送材料を用いて構成される。尚、上述した正孔注入層15aが、正孔輸送層15bをかねても良い。
そして、高濃度発光層15c-1および低濃度発光層15c-2は、それぞれがホスト材料中にりん光性発光材料をドーパント材料として含有させた構成となっている。りん光性発光材料としては、Ir,Pt,Rh、Pd、Ru、Osを中心金属とした金属錯体が用いられ、具体的にはIr(ppy)3:イリジウム−フェニルピリジン錯体が例示される。そして、これらのりん光性発光材料のうち、それぞれの有機電界発光素子1において発生させる波長に合わせて、適宜選択された材料が用いられる。
また、ホスト材料としては、例えばカルバゾール系のホストが用いられ、具体的には4,4’-N,N'-dicarbazole-biphenyl(CBP)が例示される。またこのほかにも、Bis-(2-methyl-8-quinolinolate)-4-(phenylphenolato)-aluminium(BAlq)等が例示される。尚、ホスト材料は、これらのりん光性発光材料のうち、それぞれの有機電界発光素子1において発生させる波長に合わせて、適宜選択された材料が用いられる。
ここで本実施形態においては、陽極13側に設けられている高濃度発光層(請求項に示す第2発光層)15c-1は、陰極17側に設けられている低濃度発光層(請求項に示す第1発光層)15c-2よりも、りん光性発光材料の含有量が多いことが重要である。そして、これらの高濃度発光層15c-1および低濃度発光層15c-2においては、りん光性発光材料の含有量を連続的に変化させずに、これらの界面で不連続にりん光性発光材料の含有量が変化した状態となっていることとする。以下、低濃度発光層15c-2、高濃度発光層15c-1の順に、詳しい構成を説明する。
先ず、低濃度発光層15c-2には、発光効率が最大となる量でりん光性発光材料が含有されていることとする。このようなりん光性発光材料の含有量は、低濃度発光層15c-2に用いるりん光性発光材料とホスト材料とによって、それぞれ適する含有量に設定されることとする。また、このように発光効率が最大となる量でりん光発光材料が含有されている低濃度発光層15c-2は、発光効率が最大となる膜厚で構成されていることとする。
一方、高濃度発光層15c-1には、低濃度発光層15c-2において生じた励起子が、陽極13側の正孔輸送層15bに拡散することを充分に抑制できる程度に、りん光性発光材料が含有されていることとする。そして、高濃度発光層15c-1におけるりん光性発光材料の含有量は、後の実施例で説明するように低濃度発光層15c-2の3倍以下の量であることが好ましい。
また、このような量でりん光性発光材料が含有されている高濃度発光層15c-1は、低濃度発光層15c-2において生じた励起子が、陽極13側の正孔輸送層15bに拡散することを充分に抑制できる程度の膜厚で構成されていれば良い。このため後の実施例でも説明するように、高濃度発光層15c-1の膜厚は、低濃度発光層15c-2の膜厚以下の薄さであることが好ましい。
尚、以上説明した各構成の高濃度発光層15c-1および低濃度発光層15c-2においては、それぞれの層を構成するホスト材料が同一であっても、異なっていても良い。ただし、りん光性発光材料は同一材料を用いていることとする。
そして、以上のように積層された高濃度発光層15c-1および低濃度発光層15c-2上のキャビティ調整層15dは、この有機電界発光素子1がキャビティ構造で構成されている場合に設けられる層である。このキャビティ調整層15dは、例えば、低濃度発光層15c-2での発光が、陽極13と陰極17の間で共振して陰極17側から取り出されるように、その光学膜厚が設定された層である。このようなキャビティ調整層15dとしては、例えば蛍光性発光材料を含有する青色発光層が用いられる。
このような青色発光層をキャビティ調整層15dとして用いた場合には、発光層における発光領域が電子注入層15e側によっている場合に特に有効であり、青色発光層を用いる事によってGreenもしくはRedの発光の再吸収を防ぎ、効果的に励起子の閉じ込めをすることができる。
そして電子注入層15eは、2,9-dimethyl-4,7-diphenyl-1,10-phenanthroline(BCP)などの、一般的な電子注入材料を用いて構成される。
尚、上述した発光ユニット15の構成は、あくまでも一例であり、発光層15c-1,15c-2以外の層は、必要に応じて設けられれば良く、さらに必要に応じて他の層を設けても良い。例えば、発光ユニット15に設けられる他の層としては、発光層15c-1,15c-2と電子注入層15eとの間に励起子拡散防止層がある。
この励起子拡散防止層は、発光層内で生じた励起子が陰極17側の電子注入層15eに拡散することを防止するための層であり、上記BCPやBAlqなどの一般的な励起子拡散層に用いられる材料を用いて構成される。
以上のような構成の発光ユニット15上に設けられる陰極17は、仕事関数が小さい材料を用いて構成されることが好ましい。このような材料として、例えば、マグネシウム、カルシウム、インジウム、リチウム、アルミニウム、銀やこれらの合金が用いられる。そして、このような材料からなる陰極17は、必要に応じて積層構造としても良い。また、この有機電界発光素子1がキャビティ構造で構成され、例えば陽極13と陰極17とで反射させた光を陰極17側から取り出す場合、陰極17は、半透過半反射材料層を備えていることとする。
尚、以上の構成は、基板11側から陰極17、発光ユニット15、および陽極13を積層させても良い。この場合であっても、発光ユニット15の積層順は、陽極13側に正孔注入層15aを設けた構成となることは同様である。
以上説明した構成の有機電界発光素子1では、発光材料の含有量が異なる高濃度発光層15c-1と低濃度発光層15c-2とが、発光材料の含有量を連続的に変化させずに、これらの界面で不連続に発光材料の含有量が変化した状態、すなわちそれぞれが完全に区別された状態で積層して設けられている。このため、低濃度発光層15c-2における発光材料の含有量を、発光効率が最適となる値に設定することで、低濃度発光層15c-2の膜厚方向の全域が高発光効率の領域となる。また、低濃度発光層15c-2よりも発光材料の含有量が多い高濃度発光層15c-1が、低濃度発光層15c-2に接して陽極13側に設けられている。これにより、この高濃度発光層15c-1は、低濃度発光層15c-2において高効率で発生した励起子が陽極13側への拡散することを抑制するためのバリア層となる。
したがって、低濃度発光層15c-2における全ての膜厚領域で発光効率を最適化して最大限に励起子を発生させることが可能でありながらも、この低濃度発光層15c-2において発生した励起子の陽極13電極側への拡散を抑制することができる。これにより、例えば発光材料として、上述したようなりん光性発光材料を用いた場合には、りん光性発光材料が持つ高量子収率を十分に活かすことが可能となる。この結果、有機電界発光素子1の低消費電力化および高発光効率化を達成することが可能となる。
<表示装置>
図2は、以上のような構成の有機電界発光素子1を用いた表示装置の一構成例を示す図である。
この図に示す表示装置は、赤(R)色の発光光を取り出す有機電界発光素子(以下、赤色素子)1rと、緑(G)色の発光光を取り出す有機電界発光素子(以下、緑色素子)1gと、青(B)色の発光光を取り出す有機電界発光素子(以下、青色素子)1bとを1組として基板11上に配列したフルカラーの表示装置である。
これらの素子1r,1g,1bのうち、赤色素子1rと緑色素子1gとは、図1を用いて説明した有機電界発光素子1と同様の構成となっている。一方、青色素子bは、蛍光性発光材料を含有する発光層を用いた構成となっている。
以上のような各素子1r,1g,1bにおいては、発光層以外の各層は、同様の構成であることとする。
すなわち、陽極13は、各素子1r,1g,1bにおいて同一工程で形成されたものであり、画素毎にパターン形成されている。また、その周縁を覆う状態で絶縁性パターン21が設けられている。
さらに、陽極13上に設けられた正孔注入層15a,正孔輸送層15bは、各素子1r,1g,1bに共通の層として設けられている。
そして、発光層は、赤色素子1rと緑色素子1とで個別の材料を用いてそれぞれの膜厚でパターン形成されており、図1を用いて説明したような高濃度発光層15c-1と低濃度発光層15c-2との積層構造となっている。
すなわち、赤色素子1rには、高濃度発光層15c-1と低濃度発光層15c-2との積層体がパターン形成されている。これらの発光層15c-1,15c-2は、赤色発光するりん光性発光材料を上述したそれぞれの含有量で含有し、上述した膜厚差を備えて構成されている。一例として、ホスト材料としてBAlqを用い、赤色発光するりん光性発光材料(ドーパント材料)としてbis(2-(2’-benzo[4,5-a]thienyl)pyridinato-N,C3’)iridium(acetylacetonate)(btp2(acac))を用いた場合、高濃度発光層15c-1のドープ濃度15%(膜厚比)、低濃度発光層15c-2のドープ濃度6%(膜厚比)とする。
同様に、緑色素子1gにも、高濃度発光層15c-1と低濃度発光層15c-2との積層体がパターン形成されている。これらの発光層15c-1,15c-2は、緑色発光するりん光性発光材料を上述したそれぞれの含有量で含有し、上述した膜厚差を備えて構成されている。一例として、ホスト材料としてCBPを用い、緑色発光するりん光性発光材料(ドーパント材料)としてIr(ppy)3を用いた場合、高濃度発光層15c-1のドープ濃度12%(膜厚比)、低濃度発光層15c-2のドープ濃度4.5%(膜厚比)とする。
以上のような高濃度発光層15c-1と低濃度発光層15c-2との積層構造のパターン形成は、マスク蒸着またはレーザ転写によって行われる。
一方、青色素子1bは、正孔輸送層15bの上部に青色発光する蛍光性発光材料を含有する青色発光層15dを備えている。青色発光層15dの構成は特に限定されることはない。特に本実施形態においては、この青色発光層15dが、赤色素子1rおよび緑色素子1gにおけるキャビティ調整層15dとしても設けられ、赤色素子1rおよび緑色素子1gの低濃度発光層15c上を覆う状態で、各素子1r,1g,1bに共通の層として設けられていることとする。この青色発光層15dは、青色の発光を陽極13と陰極17との間で共振させるように膜厚が調整されている。
このような青色発光層(キャビティ調整層)15dの一例として、ホスト材料としたADNを用い、青色発光する蛍光性発光材料(ドーパント材料)としてBD−052x(出光興産株式会社:商品名)を用いた場合、ドープ濃度が5%(膜厚比)になるように、これらの材料を真空蒸着法により成膜した。
尚、赤色素子1rおよび緑色素子1gにおいては、各色の発光を陽極13と陰極17との間で共振させるように、青色発光層(キャビティ調整層)15dを加えた高濃度発光層15c-1および低濃度発光層15c-2の膜厚が調整されていることとする。
そして、このような青色発光層15dの上部に設けられた電子注入層15eおよび陰極17は、各素子1r,1g,1bに共通の層として設けられている。
以上説明した構成の表示装置2では、赤色素子1rおよび緑色素子1gにおける低濃度発光層15c-2の陰極17側に接して、青色素子1bの青色発光層15dを挿入する構成となっている。これにより、青色素子1bの青色発光層15dを、そのまま赤色素子1rおよび緑色素子1gにおけるキャビティ調整層15dとして機能させることができる。
そして、このような構成とすることにより、RGB各色の発光素子を備えた表示装置2において、青色発光層15dを青色素子1b部のみに塗りわけする必要がなく、プロセスを簡便にすることが可能である。また、現時点においては、青色発光するりん光性発光材料として適する材料がない。このため、赤色素子1rおよび緑色素子1gをりん光発光、青色素子1bを蛍光発光とすることによって、りん光発光を利用したフルカラー表示装置2の実現が可能となり、またこのような表示装置1のコストを削減することができる。
次に、本発明の具体的な実施例、およびこれらの実施例に対する比較例の表示素子の製造手順と、これらの評価結果を説明する。
<実施例1>
ここでは、図1を用いて説明した構成の有機電界発光素子1を作製するに際して、高濃度拡散層15c-1と低濃度拡散層15c-2とにおける各りん光性発光材料の濃度を固定し、それぞれの膜厚を因子として変化させた各有機電界発光素子を作製した。
先ず、30mm×30mmのガラス板からなる基板11上に、Ag合金(膜厚約100nm)を形成し、その上部にホール注入性を高めるためITOを10nmの膜厚でスパッタ法によって形成し、2層構造の陽極13を形成した。その後、マスクを用いた酸化シリコン(SiO2)の蒸着により、陽極13における2mm×2mmの発光領域以外を絶縁膜(図示省略)で覆い、有機電界発光素子用のセルを作製した。
次に、正孔注入層15aとして、下記構造式に示すCuPcを真空蒸着法により10nm(蒸着速度0.2〜0.4nm/sec)の膜厚で形成した。尚、CuPcは、ホール注入性の材料である。
Figure 2007227117
そしてその上部に、正孔輸送層15bとして、下記構造式に示すα-NPDを15nm(蒸着速度0.2〜0.4nm/sec)の膜厚で形成した。尚、α-NPDは、ホール輸送性の材料である。
Figure 2007227117
次に、高濃度発光層15c-1として、下記構造式に示すCBPをホストにし、下記構造式に示すIr(ppy)3をりん光性発光材料からなるドーパントとして用い、ドープ濃度が膜厚比で12%になるように、これらの材料を真空蒸着法により成膜した。この時の膜厚は下記表1に記した。
Figure 2007227117
次いで、低濃度発光層15c-2として、上記CBPをホストにし、上記Ir(ppy)3をりん光性発光材料からなるドーパントとして用い、ドープ濃度が膜厚比で4.5%になるように、これらの材料を真空蒸着法により成膜した。この時の膜厚は下記表1に記した。
Figure 2007227117
その後、本デバイスの発光領域が電子注入層側によっている場合を考慮し、蛍光発光性の青色発光層をキャビティ調整層15dとして形成した。これは、先に説明したようにこれにより、青色発光層であれば、エネルギー準位が高いため、GreenやRedの発光を再吸収することがないので、励起子の閉じ込め効果があるためである。ここでは、下記構造式に示すADNをホストにし、蛍光性発光材料となるドーパントとしてBD−052x(出光興産株式会社:商品名)を用い、ドープ濃度が膜厚比で5%になるように、これらの材料を真空蒸着法により成膜した。膜厚は上記表1に記した。
Figure 2007227117
次いで、電子注入層15fとして下記構造式に示すBCPを真空蒸着法により4nm(蒸着速度0.1nm/sec)の膜厚で形成した。
Figure 2007227117
以上のようにして正孔注入層15a〜電子注入層15eまでの各層を形成した後、陰極17の第1層として、LiFを真空蒸着法により約0.3nm(蒸着速度〜0.01nm/sec)の膜厚で形成し、次いで、第2層としてMgAgを真空蒸着法により10nmの膜厚で形成し、2層構造の陰極17を設けた。
以上のようにして作製したサンプルsp1〜sp20の各有機電界発光素子のうち、表1に示したように、発光層が単層構造であるサンプルsp1,sp6,…他は、本発明が適用されていない比較例となる。
<評価結果>
以上のようにして作製したサンプルsp1〜sp20の各有機電界発光素子について、10mA/cm2の電流密度における発光効率(cd/A)を測定した。この結果を図3に示す。
図3に示されるように、陽極13側に設けた高濃度発光層15c-1の膜厚が、低濃度発光層15c-2の膜厚以下であれば、発光層を単層構造とした比較例(sp1,sp6,…他)よりも、発光効率が上昇することが確認された。また、この効果は、高濃度発光層15c-1と低濃度発光層15c-2との合計の膜厚によらずに同様に確認された。
そして、合計膜厚40nm、高濃度発光層15c-1の膜厚12nmとしたサンプルsp17では発光効率53cd/Aであり、比較例となる一般的なデバイス構造のサンプルsp14の発光効率38cd/Aと比較して、40%もの発光効率の向上を図ることができた。
<実施例2>
実施例1における有機電界発光素子1の作製手順において、を作製するに際して、高濃度拡散層15c-1の膜厚と、低濃度拡散層15c-2との膜厚およびりん光性発光材料のドープ濃度とを固定し、高濃度拡散層15c-1におけるりん光発光材料のドープ濃度を因子として変化させた以外は、実施例1と同様にして各有機電界発光素子を作製した。
高濃度拡散層15c-1の膜厚は8nm固定とし、りん光発光材料のドープ濃度はホスト材料に対する膜厚比として下記表2に示す各値とした。低濃度拡散層15c-2の膜厚は28nm固定とし、低濃度拡散層15c-2におけるりん光発光材料のドープ濃度はホスト材料に対する膜厚比で4.5%固定とした。
Figure 2007227117
以上のようにして作製したサンプルsp21〜sp29の各有機電界発光素子のうち、表2に示したサンプルsp21は、2つの発光層のドープ濃度が同一である。このため、サンプルsp21は、実質的には高濃度発光層15c-1が設けられていない構成であり、本発明が適用されていない比較例となる。
<評価結果>
以上のようにして作製したサンプルsp21〜sp29の各有機電界発光素子について、10mA/cm2の電流密度における発光効率(cd/A)を測定した。この結果を図4に示す。また、サンプルsp21〜sp29の各有機電界発光素子について、駆動時間(Time)に対して、初期輝度を1とした場合の輝度(Normalized Luminance)の変化を測定した結果を図5に示す。
図4に示されるように、陽極13側に配置した高濃度発光層15c-1におけるりん光性発光材料のドープ濃度を、低濃度発光層15c-2におけるりん光性発光材料のドープ濃度よりも高くしたsp22〜sp29の有機電界発光素子においては、2つの発光層のドープ濃度が同一であるsp21の有機電界発光素子と比較して、より高い発光効率が得られていることがわかる。これは、高濃度発光層15c-1におけるドープ濃度を、低濃度発光層15c-2の7倍にまで高くしたsp29の有機電界発光素子でも同様であった。これにより、低濃度発光層15c-2の陽極13側に高濃度発光層15c-1を設けることによる発光効率の向上の効果が確認された。
また図5に示されるように、高濃度発光層15c-1におけるドープ濃度を、低濃度発光層15c-2の3倍にまで高くしたsp24の有機電界発光においては、2つの発光層のドープ濃度が同一であるsp21の有機電界発光素子と同程度に高い寿命特性が得られていることがわかる。これに対して、高濃度発光層15c-1におけるドープ濃度を、低濃度発光層15c-2の5倍にまで高くしたsp27の有機電界発光においては、寿命特性が低下していることがわかる。これらのことから、高濃度発光層15c-1におけるりん光発光材料のドープ濃度を、低濃度発光層15c-2の3倍以下とすることで、寿命特性を高く維持できる効果が確認された。
実施形態の有機電界発光素子を模式的に示す断面図である。 実施形態の有機電界発光素子を用いた表示装置の一構成例を示す図である。 実施例1で作製した各有機電界発光素子においての高濃度発光層の膜厚に対する発光効率(cd/A)のグラフである。 実施例2で作製した各有機電界発光素子においての高濃度発光層のドープ濃度に対する発光効率(cd/A)のグラフである。 実施例2で作製した各有機電界発光素子においての駆動時間(Time)に対する輝度(Normalized Luminance)の変化を示すグラフである。
符号の説明
1…有機電界発光素子、13…陽極、15c-1…高濃度発光層(第2発光層)、15c-2…低濃度発光層(第1発光層)、15d…キャビティ調整層(青色発光層)、17…陰極

Claims (7)

  1. 陽極と陰極との間に、少なくとも有機材料からなる発光層を有する発光ユニットを狭持してなる有機電界発光素子において、
    前記発光層は、第1発光層と、当該第1発光層よりも発光材料の含有量が多く当該第1発光層に隣接して設けられた第2発光層とを備えている
    ことを特徴とする有機電界発光素子。
  2. 請求項1記載の有機電界発光素子において、
    前記第1発光層および第2発光層には、前記発光材料としてりん光性発光材料が含有されている
    ことを特徴とする有機電界発光素子。
  3. 請求項2記載の有機電界発光素子において、
    前記陽極側から順に、前記第2発光層、前記第1発光層が配置されている
    ことを特徴とする有機電界発光素子。
  4. 請求項1記載の有機電界発光素子において、
    前記第1発光層は、発光効率が最大となる量で前記発光材料が含有されている
    ことを特徴とする有機電界発光素子。
  5. 請求項4記載の有機電界発光素子において、
    前記第2発光層は、前記第1発光層の3倍以下の量で前記発光材料が含有されている
    ことを特徴とする有機電界発光素子。
  6. 請求項1記載の有機電界発光素子において、
    前記第2発光層の膜厚は、前記第1発光層の膜厚以下である
    ことを特徴とする有機電界発光素子。
  7. 請求項1記載の有機電界発光素子にいて、
    前記第2発光層との間に前記第1発光層を介して青色発光層が設けられた
    ことを特徴とする有機電界発光素子。
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