JP2007218438A - スターリング機関 - Google Patents
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Abstract
【課題】 従来のスターリング機関は、異常状態を検出した場合において、自動復帰できる状態になるまでエンジンを停止して待機しなければならず、長時間の運転停止によって生じる問題があった。
【解決手段】 本発明のスターリング機関は、外殻体と、作動ガスを充填した前記外殻体内に組み付けられたシリンダと、前記シリンダ内に嵌装されたピストンと、前記ピストンを駆動する駆動手段と、スターリング機関の異常状態を検出する異常状態検出手段と、前記異常状態検出手段によって検出される異常状態のうち少なくとも1つの異常状態と対応した運転モードを記憶する記憶手段と、前記異常状態検出手段で検出された異常状態が、運転モードが記憶されている異常状態である場合に、前記異常状態に対応する運転モードを前記記憶手段から読み出して実行し、前記駆動手段を駆動させる演算手段と、を備える。
【選択図】 図4
【解決手段】 本発明のスターリング機関は、外殻体と、作動ガスを充填した前記外殻体内に組み付けられたシリンダと、前記シリンダ内に嵌装されたピストンと、前記ピストンを駆動する駆動手段と、スターリング機関の異常状態を検出する異常状態検出手段と、前記異常状態検出手段によって検出される異常状態のうち少なくとも1つの異常状態と対応した運転モードを記憶する記憶手段と、前記異常状態検出手段で検出された異常状態が、運転モードが記憶されている異常状態である場合に、前記異常状態に対応する運転モードを前記記憶手段から読み出して実行し、前記駆動手段を駆動させる演算手段と、を備える。
【選択図】 図4
Description
本発明は、スターリング冷凍機、スターリング発電機などのスターリング機関に関し、より具体的には、スターリング機関に異常状態が検出された場合において、スターリング機関を制御して強制的に駆動させる制御機構を有するスターリング機関に関する。
スターリング機関に様々な故障が起こりうる可能性がある。従来のスターリング機関では、異常状態が検出された場合、エンジンを停止することにより安全が図られていた。また、エンジンを停止した後、所定の復帰条件を満たすと、エンジンを再運転させていた(自動復帰)。
異常状態の原因が、例えば低温ヘッドおよび高温ヘッドの一時的な温度異常であるような場合には、一定期間エンジンを停止することにより、温度異常が解消され、エンジンを再び正常運転できるようになると考えられるため、自動復帰させても問題はなかった。しかし、異常状態の種類によっては、自動復帰させると更に重大な故障に至る場合もあり、必ずしも自動復帰させることができなかった。
図7および図8に示したのは、特許第3369967号公報に開示されているスターリング冷却装置の制御装置のブロック図およびプログラムを示すフローチャートである。図7および図8を参照して、従来のスターリング機関において、異常状態が検出された場合の制御について説明する。
従来のスターリング冷却装置は、各種異常状態を検出する異常状態検出手段と、この異常状態検出手段の出力に基づき駆動装置の運転を制御する制御装置を有し、検出した異常状態が復帰条件を満たした場合に、自動復帰を行うことを目的としたものである。
スターリング冷却装置の制御装置101には、運転中、各種異常状態を検出するセンサ(102〜110)からデータが入力される(S2)。次に、データに異常が検出(S3)されれば、異常状態の原因が自動復帰させると危険であるようなポンプ電流異常、送風機電流センサの異常であるかどうか判別を行う(S4)。ポンプ電流センサ異常、送風機電流センサの異常である場合には、異常状態を表示して(S5)、エンジンをそのまま停止(S6)させ制御を終了する。
また、そうでない場合は、エンジンを停止させ(S7)、センサからの入力データが所定の復帰条件に合致するかどうかを継続して判別する(S8)。その結果、異常状態が解消されていれば、エンジンの運転を再開する(自動復帰)。
特許第3369967号公報
従来のスターリング機関の問題点を以下に示す。
上述したように、従来のスターリング機関は、異常状態を検出した場合において、自動復帰できる状態になるまでエンジンを停止して待機しなければならなかった。また、異常状態の原因が、一時的でない場合においては、自動復帰できず、修理されるまでエンジンを停止させなければならなかった。このような従来の制御方法では、特定条件下であれば運転できる場合であっても、エンジンが停止したままになるため、例えば当該スターリング機関を備えている冷蔵庫などの冷却装置においては、庫内の食品が腐ってしまうなどといった、エンジンを長時間停止させたまま放置することによって生じる問題があった。
本発明は、上記問題を解決すべくなされたものであり、スターリング機関が異常状態を検出した場合において、長時間の運転停止を回避することができるスターリング機関を提供することを目的とする。
本発明のスターリング機関は、
外殻体と、作動ガスを充填した前記外殻体内に組み付けられたシリンダと、前記シリンダ内に嵌装されたピストンと、ピストンを駆動する駆動手段と、スターリング機関の異常状態を検出する異常状態検出手段と、異常状態検出手段によって検出される異常状態のうち少なくとも1つの異常状態と対応した運転モードを記憶する記憶手段と、異常状態検出手段で検出された異常状態が、運転モードが記憶されている異常状態である場合に、異常状態に対応する運転モードを記憶手段から読み出して実行し、駆動手段を駆動させる演算手段と、を備えたことを特徴とする。
外殻体と、作動ガスを充填した前記外殻体内に組み付けられたシリンダと、前記シリンダ内に嵌装されたピストンと、ピストンを駆動する駆動手段と、スターリング機関の異常状態を検出する異常状態検出手段と、異常状態検出手段によって検出される異常状態のうち少なくとも1つの異常状態と対応した運転モードを記憶する記憶手段と、異常状態検出手段で検出された異常状態が、運転モードが記憶されている異常状態である場合に、異常状態に対応する運転モードを記憶手段から読み出して実行し、駆動手段を駆動させる演算手段と、を備えたことを特徴とする。
本構成をとることにより、スターリング機関が異常状態を検出した場合において、異常状態を判別し、異常状態に対応してスターリング機関を、特定条件下で運転することにより、長時間の運転停止を回避することが可能である。
本発明のスターリング機関は、
さらに、運転モードは、駆動手段の出力強度および/または駆動方法に関して設定されたものであることを特徴とする。
さらに、運転モードは、駆動手段の出力強度および/または駆動方法に関して設定されたものであることを特徴とする。
本構成をとることにより、様々な異常状態に対応した強制運転の実行が可能である。
本発明のスターリング機関は、
さらに、運転モードで設定される駆動手段の出力強度は、通常運転時よりも低いことを特徴とする。
さらに、運転モードで設定される駆動手段の出力強度は、通常運転時よりも低いことを特徴とする。
本構成をとることにより、異常状態のスターリング機関に過剰の負荷を与えずに強制運転することが可能である。
本発明のスターリング機関は、
さらに、運転モードで設定される駆動手段の駆動方法は、ピストンのストロークを検知して運転する駆動方法、または、駆動手段のPWM制御におけるパルス幅を変調する駆動方法であることを特徴とする。
さらに、運転モードで設定される駆動手段の駆動方法は、ピストンのストロークを検知して運転する駆動方法、または、駆動手段のPWM制御におけるパルス幅を変調する駆動方法であることを特徴とする。
本構成をとることにより、様々な異常状態に対応した強制運転の実行が可能である。
本発明のスターリング機関は、
さらに、検出される異常状態の一つは、シリンダの低温ヘッドおよび/または高温ヘッドの温度異常であることを特徴とする。
さらに、検出される異常状態の一つは、シリンダの低温ヘッドおよび/または高温ヘッドの温度異常であることを特徴とする。
本構成をとることにより、低温ヘッドおよび/または高温ヘッドの温度異常を検出し、適した強制運転の対応を行うことが可能である。
本発明のスターリング機関は、
さらに、検出される異常状態の一つが、モーター電圧センサ異常および/またはモーター電流センサ異常であることを特徴とする。
さらに、検出される異常状態の一つが、モーター電圧センサ異常および/またはモーター電流センサ異常であることを特徴とする。
本構成をとることにより、モーター電圧センサ異常および/またはモーター電流センサ異常を検出し、適した強制運転の対応を行うことが可能である。
本発明のスターリング機関は、
さらに、異常状態検出手段で検出された異常状態および/または該異常状態に基づいて選択された運転モードを表示する表示部を有することを特徴とする。
さらに、異常状態検出手段で検出された異常状態および/または該異常状態に基づいて選択された運転モードを表示する表示部を有することを特徴とする。
本構成をとることにより、使用者に異常状態を検出したことを確実に知らせることが可能である。また、該状態に基づいた運転モードが選択されて強制運転が行われ、一見通常運転と変わらないように見える場合であっても、使用者にスターリング機関が異常状態を抱えていることを使用者に知らせることが可能である。
以上説明したように、本発明のスターリング機関によれば、異常状態を検出した場合において、異常状態を判別し、異常状態下であっても特定条件下であればエンジンを運転することができる。また、スターリング機関を特定条件で運転することによって、長時間の運転停止を回避することが可能である。
さらに、特定条件という制限された範囲内の運転により、スターリング機関の過剰負担を回避しながら運転することが可能である。
以下、本発明の実施例について図面を参照して説明する。
なお、ここでは、本発明のスターリング機関を用いたスターリング冷凍機を例示して説明を行う。
図1は、本発明の実施例1のスターリング冷凍機の要部概略断面図である。また、図2は、本発明の実施例1のスターリング冷凍機の制御部の構成を示すブロック図である。図3は、本発明の実施例1のスターリング冷凍機の制御部のドライバユニットを有する基板の回路図である。
以下、図1、図2および図3を参照して本実施例のスターリング冷凍機1の構成および通常制御について説明する。
まず、図1を参照して、スターリング冷凍機1の構成について説明する。
図1に示すように、スターリング冷凍機1は、内部に円筒形状のシリンダ2を有し、シリンダ2の内部空間に円柱形のピストン3およびディスプレーサ4を同軸上(Y軸)に配置する。そうすることにより、ピストン3とディスプレーサ4との間に圧縮空間5を、ディスプレーサ4と低温ヘッド7との間に膨張空間6をそれぞれ形成する。
本体ケーシング8やシリンダ2内は、例えばヘリウムなどの不活性ガスが作動ガスとして充填されている。上記ピストン3は、例えばリニアモーター9などの駆動手段によって駆動され、シリンダ2内を軸心方向に往復運動する。このピストン3の往復運動に伴い、作動ガスは圧縮空間5と膨張空間6の間を移動する。また、膨張空間6への作動ガスの流入・流出により生じる往復運動と共振用バネ13の弾性力により、ディスプレーサ4はピストン3と同周期で、一定の位相差をもって往復運動する。以上の構成および動作により、シリンダ2内に既知の熱力学サイクルである逆スターリングサイクルが構成され、高温ヘッド10では放熱し、低温ヘッド7では吸熱して低温ヘッド7近傍の外気を冷却する。
次に、スターリング冷凍機1の通常制御について説明する。なお、以下の説明において、ピストン3の駆動手段としてリニアモーター9を採用した場合を例示して説明する。
図1に示すように、シリンダ2の外周側に設けられたリニアモーター9には、リード線11および12が接続され、制御部20によって制御された駆動電力が供給される。所定の交流波形の駆動電圧がリニアモーター9に印加されると、ピストン3がその所定の交流波形の駆動電圧に対応した周期およびストロークで往復運動行う。従って、リニアモーター9に印加される駆動電圧を制御することにより、ピストン3の往復運動の周期およびストロークを制御することができる。
本明細書中のそれぞれの実施例において、リニアモーター9の駆動電圧の制御はPWM(Pulse Width Modulation)制御によって行われるものとする。PWM制御は、従来のスターリング機関のリニアモーターの制御に用いられており、ここでは詳細について説明をしない。
次に、図2および図3を参照して、本実施例のスターリング冷凍機1の制御部20の構成をより詳細に説明する。
図2に示すように、制御部20は、メインユニット21およびドライバユニット22から構成される。両者は、I/F回路を備え、互いに接続され、制御に関する情報が通信される。ドライバユニット22からメインユニット21には、モーターMの運転状況に関する情報が送信され、メインユニット21からドライバユニット22には、該情報に基づいたモーターMの制御に関する情報が送信される。例えば、これらの通信はシリアル通信によって成されるものであり、上記I/F回路として、UART回路が備えられていてもよい。
ドライバユニット22は、主として、複数のトランジスタを有するIPM(Intelligent Power Module)回路と、PWM制御などのモーター制御に係る演算を行うマイクロコンピュータ40と、メインユニット21と通信を行うI/F回路とを備える。また、本実施例では、ドライバユニット22は、スターリング冷凍機1が備える異常状態を検出する複数のセンサの内の一部と同一基板(ドライバ基板24)上に備えられている構成として説明する。
ここで、マイクロコンピュータ40は、演算手段としてのCPUと、制御プログラムが記憶された読出し専用のROMと、演算の一時記憶を行うRAMおよび発信器としてのクロック回路から構成される。また、外部記憶手段として、ドライバユニット22は、書き換え可能な不揮発性記憶素子(EEPROM)を有している。
EEPROMには、モーターの特性などに関する情報が記録されている。例えば、モーターの係数(L値(インダクタンス)、Rd(直流抵抗値))、限界ストローク値および温度ヘッドの限界温度などである。マイクロコンピュータ40は、これらの情報を、ピストンストローク(後述)を検知する際に参照し、ヘッドの温度センサ(図3参照)からの入力値が、所定の限界値を超えるかどうかを判別する際に参照する。従って、スターリング冷凍機1が検出する異常状態の1つとして、このEEPROMのデータを参照できない場合がある。
さらに、ドライバ基板24は、モーター制御をより安全かつ正確に行えるように、モーター電流センサ、モーター電圧センサおよびAC電圧源からの入力電圧を検出するAC入力電圧センサを備える。これらのセンサによって、ドライバユニット22において、各種異常状態を検出することが可能となる。
メインユニット21は、主として、CPU、RAM、ROMおよびクロック回路から構成される。メインユニット21は、冷凍機全体の制御を行い、リニアモーターMの制御に関しても、ドライバユニット22からの情報に基づいて制御を決定し、ドライバユニット22に該情報に基づいたリニアモーターMの制御に関する情報を送信する。
メインユニット21とドライバユニット22間は、断続的に互いにリニアモーターMの運転状況と制御情報を交信しているが、メインユニット21およびドライバユニット22のマイクロコンピュータがクロック回路を備える構成により、通信時間を計測することが可能である。ここで、クロック回路は、通常CPUに備えられているものであるが、通信時間を計測するセンサとしても機能する。本構成によって、所定時間内に通信が終了しない通信時間異常を検出することが可能となる。
図3に示すように、ドライバユニット22を有する基板の回路は構成され、リニアモーターMなどと接続されている。
IPM回路30は、4つのトランジスタ(Gu,Gx,Gv,Gy)を有しており、それぞれのトランジスタのゲート電極は、配線U,X,V,Yによって、マイクロコンピュータ40に接続されている。
マイクロコンピュータ40は、各トランジスタのゲート電極に配線を介してPWM制御信号を送信する。それにより、各トランジスタの開閉動作は行われ、リニアモーターMにパルス電圧が印加され、交流電流が流れる。より詳細に説明すると、まず、マイクロコンピュータ40のU相コントロール信号およびV相コントロール信号から、配線を通じて、GuとGyのゲート電極をON、GxとGvをOFFさせる信号を送信する(U相)。この間、電流はモーターを矢印Aの方向に流れる。次に、GuとGyのゲート電極をOFF、GxとGvをONさせる信号を送信する(V相)。この間、電流はモーターを矢印Bの方向に流れる。このU相とV相の切り替えを行うことによって、リニアモーターMの往復運動は実現され、リニアモーターMの往復運動の振幅および周期は、マイクロコンピュータ40のPWMを制御するU相コントロール信号及びV相コントロール信号により制御可能である。本実施例では、上述したような2相交流モーターを例示して説明を行うが、3相交流モーターであっても構わない。
また、回路上には、シャント抵抗Sおよびオペアンプを含む増幅回路Aを備え、モーター電流が計測される。抵抗Sの両端の電位差が増幅回路Aによって増幅され、増幅された電位差がマイクロコンピュータの電流センサに伝達される。この増幅値をA/D変換して、電流値が算出される。
ここで、電流センサのオフセット電圧の異常について説明を行う。電流センサの増幅回路Aに含まれるオペアンプは、負荷に電流が流れていないときにおいても、所定の電圧の信号を出力している。このオペアンプの所定の電圧は、オフセット電圧と呼ばれる。オペアンプのオフセット電圧は、予めマイクロコンピュータ40のROMに記憶されている。マイクロコンピュータ40は、電流検出時に検出されたオペアンプの出力電圧の値からオフセット電圧に相当する電圧の値を引いた電位差に対応する電流値を算出する。この電流値が実際に負荷に流れる電流値である。電流センサのオフセット電圧異常とは、電流が流れていないときに検出された電圧が、マイクロコンピュータ40のROMに記憶されたオフセット電圧と異なる異常であり、この場合正確な電流値を検知することができない。
さらに、リニアモーターMの2つの端子に、電圧計として機能する回路Vが接続されている。リニアモーターMに印加されている電圧が分圧され、その分圧された電圧値がマイクロコンピュータ40の(U相・V相)電圧センサに伝達される。この電圧センサによって、モーター電圧異常が検出される。
さらに、IPM回路30はサーミスタを有する温度センサ(図示せず)を備えていることが好ましい。温度センサでの計測値は、マイクロコンピュータ40に伝達される。IPM回路30は、トランジスタのON抵抗の発熱や過電流などの原因によって、高温になることが考えられる。この温度センサにより、IPM回路30の温度異常を検出することが可能となる。
本実施例のスターリング冷凍機1において検出される異常状態は、他にも考えられる。その一つとして、スターリング冷凍機1の低温ヘッドおよび高温ヘッドの温度異常が挙げられる。
スターリング冷凍機1の外周面には、低温ヘッドの温度Tcを感知する温度センサおよび高温ヘッドの温度Thを感知する温度センサが取り付けられている。各温度センサの出力情報は、マイクロコンピュータ40に入力され、TcA/D変換部およびThA/D変換部によって、デジタル信号に変換されて、低温ヘッドおよび高温ヘッドの温度が検出される。
以上、本実施例のスターリング冷凍機1の構成および制御を述べ、各種異常状態と各種異常状態を検出する機構を説明した。本実施例のスターリング冷凍機1は、さらに、他の異常状態の検出を可能とする機構を備えていてもよい。
次に、各種センサによって異常状態が検出された場合におけるスターリング冷凍機1の制御について説明する。
図4は、実施例1において異常状態が検出された場合における制御フロー図である。
図4を参照して説明すると、まず、スターリング冷凍機1を運転している間、異常状態検出手段である各種センサからマイクロコンピュータ40にデータが入力され(S12)、異常状態かどうか判断される(S13)。
ここで、異常状態かどうかの判断はそれぞれのセンサから入力された値が、あらかじめ設定されている所定の数値範囲内にあるかどうかで判断される。もう少し、具体的に説明すると、マイクロコンピュータ40のCPUは、それぞれのセンサから入力された値を、ROMまたはEEPROMから読み込んだ予め記憶されている所定値と比較し、入力値が所定数値内にあるか判断する。
異常状態が検出されなければ運転を継続することになるが、もし、異常状態が検出されれば、エンジンは一旦停止される(S14)。
そして、停止と同時に計時カウンターがリセットされ、停止してからの時間が計測される(S15)。計時カウンターは、ドライバユニットのマイクロコンピュータにあり、クロック回路を用いて時間計測される。
次に、所定の制限時間内において、異常状態が復帰条件(上記の所定数値範囲内にあること)を満たすかどうかが判断される(S16)。条件を満たせば、通常の運転に復帰する(自動復帰)。制限時間内に条件を復帰しなければ、その異常状態に対応した制御に従うことになる。
復帰条件を満たすかどうかは、各種センサからの入力値が、一定時間のエンジン停止後に、所定の数値範囲内に戻るかどうかで判断される。例えば、低温ヘッドおよび高温ヘッドの温度センサからの入力値は、S13で異常と判断されても、一定時間のエンジンの停止により、所定の数値範囲内に戻る可能性がある。その場合は、正常運転に復帰させることにより、後述する異常状態のフローに従う時間と手続を省略し、冷蔵庫内の食品を保存することが可能となる。
次に、それぞれの異常状態に対応した制御について説明する。
本実施例では、異常状態を4つのグループに分け、それぞれ対応した制御を行う。このようにグループ分けを行うことによって、各異常状態に対応する運転モードをそれぞれ記憶しておく必要が無いため、記憶容量を低減できるためメモリコストを削減することが可能となる。さらに、多くの異常状態をグループ化することにより、異常状態と運転モードの設定および管理が容易となる。
異常状態下であっても特定条件下であれば、運転可能と考えられる場合には、メインユニット21からドライバユニット22に強制運転の指令を出すことによって、一定出力の運転を行う。
1つ目のグループは、低温ヘッド或は高温ヘッドの温度異常、IPM回路の温度異常そしてAC入力電圧異常といった、温度サーミスタグループである。この場合には、運転モード1を選択し(S19)ドライバユニットに強制運転の指令を送信する。(S24)
上記制御によれば、一定時間エンジンを停止(S16)することにより温度異常は解消されているはずにもかかわらず、温度が正常に回復しないと判断されるということは、温度センサ(例えばサーミスタ等)が正常に機能していないと考えられる。
上記制御によれば、一定時間エンジンを停止(S16)することにより温度異常は解消されているはずにもかかわらず、温度が正常に回復しないと判断されるということは、温度センサ(例えばサーミスタ等)が正常に機能していないと考えられる。
また、AC入力電圧異常は、AC入力電圧が正常より、高圧か低圧の場合が考えられる。
いずれの場合も運転再開に際しては、最大出力よりも低出力運転(例えば、最大出力よりも出力強度が33%)で再起動を行う。低出力運転を行う理由は万一異常が発生しても、機器に過大な負荷を与えず、しかも機器の運転が完全に停止してしまうことの不都合を解消できるからである。
運転モード1は、モーターの制御機構に係る異常ではないので、モーターに流れる電流と電圧からピストン位置を算出するピストンストローク検知をしてモーターを運転する通常の運転を、低出力で行う。ピストンストロークの算出は、モーターの電流と電圧から容易に算出できる(例えば特開2003−314919号公報など)のでここでは詳細については省略する。
あらかじめ最大出力の場合のピストンストローク値は機器毎に設定値を計算する。計算されたピストンストローク値を実現するための条件はデータ化されEEPROMに書き込まれている。33%程度の低出力運転のピストンストロークの値も、最大出力を発生するピストンストロークと同様に計算できる。従って、低出力運転の場合も同様に運転条件をEEPROMに書き込んでおくことが可能である。従って、CPUはEEPROMから運転モード1の場合の低出力運転のデータを読み出してそのピストンストローク値にて運転するようにモーターへの電圧及び電流を制御すれば、運転モード1での運転を実現できる。
この低出力運転のピストンストローク値は、例えば最大出力のピストンストローク値を7mmとすると、33%程度の低出力運転の場合は4mmとなる。
2つ目のグループは、モーターの電圧或は電流を検知するセンサの動作異常の場合であり、この場合は、ピストンストロークを算出して運転することができないので、それに対応した運転モード2を選択し(S21)、ドライバユニットに強制運転指令を送信する(S24)。
このグループに含まれる場合の異常状態の例としては、図3に示すモーター電圧を検知している回路Vには、最初にモーターを起動しない状態でもモーターの両端には一定の低電圧が加わっており、回路Vではその電圧を検知しているが、この電圧が正常に検知できない場合が挙げられる。
さらに同じく図3の電流センサの増幅回路Aに含まれるオペアンプは、負荷に電流が流れていない時にも所定の電圧を出力しており、これがオフセット電圧と呼ばれている。このオフセット電圧が正常に検知できない場合オフセット電圧異常と判断しこのグループに含まれる。
このいずれの異常も、負荷に電圧が掛かっていない或は電流が流れていない時の異常であり、検知回路やオペアンプの故障が原因として考えられるので、異常が発生していても出力を下げて運転可能と判断をする。しかしこの場合はモーターの電圧或は電流が検出できないので、上述のピストンストロークを算出して運転することが出来ない。
そこでこの場合は、PWM制御のパルス幅を変化させる変調率を制御して運転を行うのである。変調率とは、IPM回路に入力される直流電圧に対するモーターに実際に入力される交流波形の振幅比である。変調率が大きいほどモーターに与えられるエネルギーが大きくなり、それに伴いピストンストロークも変化するので、変調率を変化させることによりモーター出力を制御可能となる。
従って、変調率をデータ化し、EEPROMに記憶させておくことにより、モーターの電圧或は電流を検知するセンサの動作異常が生じた場合でも強制運転が可能である。データは、それぞれの運転モードごとに定められている変調率のパーセンテージであり、例えば、この運転モード2では、変調率を50%に設定して運転指令を行う。
3つ目のグループは、マイクロコンピュータのEEPROMのデータを読み込むことが出来ないEEPROM異常である。EEPROMにはモーターの特性などに関する情報が記録されている。この情報としては、例えばモーターの係数(L値(インダクタンス)、Rd(直流抵抗値))、限界ストローク値および温度ヘッドの限界温度などがある。EEPROM異常は、CPUからのデータの要求に対して、所定期間内にデータが出力されてくるか否かで判断できる。このグループの異常が発生した場合は、運転モード3を選択し(S23)、ドライバユニットに強制運転の指令を送信する。(S24)
起動の初期時にドライバユニット22内のCPUがEEPROMから上記情報を読み出してその後の制御に使用するが、この情報がEEPROMから読み出すことが出来ない場合をEEPROM異常と判断し、ドライバユニット内のCPUは予めROMに設定した初期値データを読み出すことにより、その後の運転時の定数として使用する。しかし何らかの異常が発生していると判断して最大出力の70%程度に抑えて運転をすることにより、運転が停止するという最悪の状況を回避する。
起動の初期時にドライバユニット22内のCPUがEEPROMから上記情報を読み出してその後の制御に使用するが、この情報がEEPROMから読み出すことが出来ない場合をEEPROM異常と判断し、ドライバユニット内のCPUは予めROMに設定した初期値データを読み出すことにより、その後の運転時の定数として使用する。しかし何らかの異常が発生していると判断して最大出力の70%程度に抑えて運転をすることにより、運転が停止するという最悪の状況を回避する。
4つ目のグループは、上記のいずれの異常状態にも該当しない場合であり、メインユニットとドライバユニット間の通信が所定時間内に終了しない通信時間異常が含まれる。この場合は、異常状態を表示して(S27)、運転は停止したままとする。
メインユニット21とドライバユニット22間の通信が正常に動作しないと正しい指令がメインユニット21からドライバユニット22に届かないから、動作が保障できないので運転は停止したままとなる。
また、このグループには、IPM動作異常も含まれる。IPM回路は、入力電圧が正常値でなくなったり、内部トランジスタの電流が過大になるとIPM異常を知らせる信号(図示せず)をドライバユニット22に発信する。この信号を受けるとドライバユニット22はIPM動作異常と判断してメインユニット21に異常を連絡する。この場合もその後の動作が保障できないので運転は停止したままとなる。
スターリング冷凍機は異常状態を表示する表示部などの異常報知手段を設けていることが好ましい。すなわち、強制運転する場合においても、完全に異常状態は解消された訳ではないので、使用者に異常状態であることを伝える表示部をさらに備え、異常状態およびまたは該異常状態に基づいて選択される運転モードを表示する(S26)ことが好ましいからである。
この報知手段を備えることによって、使用者に異常状態を検出したことを確実に知らせることが可能となる。また、該状態に基づいた運転モードが選択されて強制運転が行われ、一見通常運転と変わらないように見える場合であっても、使用者にスターリング冷凍機1が異常状態を抱えていることを使用者に知らせることが可能となる。この報知手段の形態として、スターリング冷凍機1前面に例えばLCDなどの表示パネルを設けることにより実現されていてもよいし、LEDランプを設けて状態に応じて点灯させる構成であっても構わない。また、音声によって報知しても構わない。
なお、運転モード1〜3の何れの強制運転においても、通常の運転よりも低出力の運転で行われることが好ましい。異常状態が解消されておらず、エンジンに過度の負荷を与えることを避けるためである。
運転モード1の場合、目標ストロークを通常運転より小さく設定してモーター電圧を算出することにより、低出力の出力強度で運転可能である。例えば、通常運転では約7mmのピストンストロークであるが、これを4mmに設定することにより、通常の約30%の出力強度で運転できる。運転モード2の場合、変調率を下げることにより低出力で運転可能となる。特に、冷蔵の機能を維持できる程度の出力になるように、出力強度を設定できればよい。
本実施例では、以上のように、強制運転を行う3つのグループと運転を停止させるグループの4つのグループに分け、それぞれに対応した制御を行う構成としたが、一例を示したに過ぎず、異常状態を検出するセンサやそのフローによって、そのグループの数などは異なる場合がある。
図5は、実施例2において異常状態が検出された場合における制御フロー図である。
実施例2のスターリング冷凍機は、図1〜図4に示した実施例1のスターリング冷凍機において、異常状態を検出した場合における制御の一部を変更したものである。実施例1との共通の部分に関しては説明を省略して、実施例2の特徴部分について説明をする。
実施例1においては、エンジンを一旦停止させた後、所定の制限時間経過後に異常状態が解消しない場合に、異常状態に対応して制御を行う構成である。しかし、例えば、温度異常以外の異常状態の場合には、異常状態ではない状態に自動復帰する見込みはなく、瞬時に異常状態の判別が可能であるので、制限時間は不要となる。
本実施例は、このことを鑑み、自動復帰する見込みはない異常状態の場合に、制限時間の時間ロスなく、それぞれの異常状態に対応した制御に移行することを可能としたものである。
図5を参照して、エンジンを停止した(S34)後、異常状態がどの異常に該当するのか判別が連続して行われる(S35・S36・S42・S44)。
温度異常の場合は、制限時間の計測を開始(S37)し、所定時間内に自動復帰可能かどうか判断される(S38)。復帰条件を満たせば自動復帰するが、満たさない場合は運転モード1を選択する(S40)。
他の異常状態の場合には、制限時間の経過なしに、それぞれの状態に対応した運転モードを選択する(S40・S43・S45)。次に、運転モードを選択した(S40・S43・S45)後、強制運転の指令をして(S41)、選択した運転モードを表示する(S47)。
強制運転も不可能であるような制御不可能な異常状態の場合には、異常状態を報知(S48)して、エンジンを停止させたままにしておく。
本実施例のスターリング冷凍機においても上述したような報知手段を備え、異常状態の報知を行うことが好ましい。
図6は、実施例3において異常状態が検出された場合における制御フロー図である。
実施例3のスターリング冷凍機は、図1〜図4に示した実施例1のスターリング冷凍機において、異常状態を検出した場合における制御の一部を変更したものである。実施例1との共通の部分に関しては説明を省略して、実施例3の特徴部分について説明をする。
実施例1および2においては、自動復帰可能を仮定としたため、制限時間を設けた。しかし、自動復帰できない異常状態のみを検出する構成のスターリング冷凍機の場合は、異常状態の判別を行った後、すぐその異常に対応する制御を行う構成にしてもよい。
図6を参照して、異常状態を検出して(S53)、エンジンを停止させた後(S54)、それぞれの異常状態に対応して、運転モードを選択し(S57・S59・S61)、強制運転の指令(S57)と異常状態の表示を行う(S63)。
また、本実施例は、自動復帰不可能であることを仮定して、温度異常を異常状態から除外しているが、温度異常をAC入力電圧異常と同様に運転モード1を選択する構成にしてもよい。
以上、本発明のスターリング冷凍機の説明において、制御部はメインユニットとドライバユニットから構成され、メインユニットにおいて、ドライバユニットからの異常状態の情報に基づいて運転モードを選択し、ドライバユニットへ強制運転の指令が送信されると示した。しかし、ドライバユニット上で運転モードの選択および強制運転の指令を行う構成としてもよい。
また、今回開示された上記各実施例はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の技術的範囲は特許請求の範囲によって画定され、また特許請求の範囲の記載等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
本発明は、強制的に運転する制御機構を有するスターリング機関に有効に適用することができる。
1 スターリング冷凍機
2 シリンダ
3 ピストン
4 ディスプレーサ
7 低温ヘッド
9、M リニアモーター
10 高温ヘッド
20 制御部
21 メインユニット
22 ドライバユニット
41、42 温度センサ
2 シリンダ
3 ピストン
4 ディスプレーサ
7 低温ヘッド
9、M リニアモーター
10 高温ヘッド
20 制御部
21 メインユニット
22 ドライバユニット
41、42 温度センサ
Claims (7)
- 外殻体と、
作動ガスを充填した前記外殻体内に組み付けられたシリンダと、
前記シリンダ内に嵌装されたピストンと、
前記ピストンを駆動する駆動手段と、
スターリング機関の異常状態を検出する異常状態検出手段と、
前記異常状態検出手段によって検出される異常状態のうち少なくとも1つの異常状態と対応した運転モードを記憶する記憶手段と、
前記異常状態検出手段で検出された異常状態が、運転モードが記憶されている異常状態である場合に、前記異常状態に対応する運転モードを前記記憶手段から読み出して実行し、前記駆動手段を駆動させる演算手段と、を備えたスターリング機関。 - 前記運転モードは、前記駆動手段の出力強度および/または駆動方法に関して設定されたものであることを特徴とする請求項1に記載のスターリング機関。
- 前記運転モードで設定される前記駆動手段の出力強度は、通常運転時よりも低いことを特徴とする請求項1〜2の何れかに記載のスターリング機関。
- 前記運転モードで設定される前記駆動手段の駆動方法は、前記ピストンのストロークを検知して運転する駆動方法、または、前記駆動手段のPWM制御におけるパルス幅を変調する駆動方法であることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載のスターリング機関。
- 検出される前記異常状態の一つは、前記シリンダの低温ヘッドおよび/または高温ヘッドの温度異常であることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載のスターリング機関。
- 検出される前記異常状態の一つは、モーター電圧センサ異常および/またはモーター電流センサ異常であることを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載のスターリング機関。
- 前記スターリング機関は、前記異常状態検出手段で検出された異常状態および/または前記異常状態に基づいて選択された運転モードを表示する表示部を有することを特徴とする請求項1〜6の何れかに記載のスターリング機関。
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-
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- 2006-02-14 JP JP2006035903A patent/JP2007218438A/ja active Pending
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