JP2007183208A - 感作性物質のインビトロ評価法 - Google Patents
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Abstract
【課題】感作性物質の新規な評価方法の提供。
【解決手段】本発明は、H-Phe-Thr-Leu-Cys-Phe-Arg-NH2及びH-Phe-Thr-Leu-His-Phe-Arg-NH2から成る群から選ばれるアミロイドPヘキサマーと被験物質とを混合した後、前記アミロイドPヘキサマーと被験物質との結合物の有無を測定することを特徴とする感作性物質のインビトロ評価方法またはスクリーニング方法を提供する。
【選択図】なし
【解決手段】本発明は、H-Phe-Thr-Leu-Cys-Phe-Arg-NH2及びH-Phe-Thr-Leu-His-Phe-Arg-NH2から成る群から選ばれるアミロイドPヘキサマーと被験物質とを混合した後、前記アミロイドPヘキサマーと被験物質との結合物の有無を測定することを特徴とする感作性物質のインビトロ評価方法またはスクリーニング方法を提供する。
【選択図】なし
Description
本発明は、感作性物質のインビトロ評価方法に関する。
生体においてアレルギー等を誘発する物質(感作性物質)を評価する方法としては、実験動物に被験物質を適用し、そして該実験動物の皮膚などに生ずる反応を視察する方法が行われている。例えば、感作性物質の皮膚感作性を検定する方法としては、実験動物に被験物質を経皮投与して、その投与部位の皮膚反応を観察する方法(Maximization試験、Buehler試験等)、実験動物に被験物質を経皮投与して、リンパ球の増殖を調べる方法(Local Lymph Node Assay等)などが知られている。かかる検定方法は、実験動物の飼育の他、被験物質の実験動物への投与や、皮膚観察、血液検査といった煩雑な作業を必要とし、また、そのための期間を要し、また動物愛護等の見地から見直しがせまられている。
特開2003−014761号公報(特許文献1)及びHiroshi Kato et al., The Journal of Toxicological Sciences 28(1), 19-24 (2003)(非特許文献1)にはシステインを含む構造をもつグルタチオン(Glu-Cys-Gly)と被験物質を混合し、反応させた混合液を高速液体クロマトグラフィー等で分析し、混合前のペプチド溶液及び被験物質溶液各々の分析結果と比較することで、混合前のペプチド溶液及び被験物質溶液からは検出されず、かつ反応後の混合液からのみ検出される成分について調べることにより、ペプチドと被験物質との結合性を測定する方法が記載されている。
また、G. Frank Gerberick et al., Toxicological Sciences 81, 332-343 (2004)(非特許文献2)には、合成ペプチド「アセチル-Arg-Phe-Ala-Ala-(Cys又はLys又はHis)-Ala-Ala-COOHと被験物質を混合し、反応させた混合液を高速液体クロマトグラフィーで分析し、溶出されたペプチドピーク面積を反応前と反応後を比較し、その減少率からペプチドと被験物質との結合性を調べる方法が記載されている。
いずれも感作性物質の評価をインビトロで可能にし、多数の候補化合物について、少量で、動物実験を実施することなく、迅速に、かつ簡便に検定することを可能にする点で優れる。しかしながら、いずれの方法で得られた判定結果も、インビボ評価法の結果と必ずしも一致しない場合がある。例えば、特許文献1又は非特許文献1の方法では、特に染毛料に用いられアレルギー疾患者の多いp−フェニレンジアミンについて偽陰性の結果を示してしまうという欠点を有する。また、非特許文献2の方法はペプチドピーク面積の減少から評価を行うものであり、ペプチドと被験物質との結合を積極的に捉えているものではなく、様々な他の要因により結果が左右され易いものと考えられる。たとえば、感作性でないことが周知である2−ハイドロキシプロピルメタクリレートについて、偽陽性の結果が示されている。
従って、本発明は、医薬や化粧品等の開発に際し、被験物質の皮膚感作性を、少量の被験物質で、インビトロにおいて、より簡便に、迅速に、かつより高い精度において検定する手段を提供するものである。
本発明者らは、上記の目的を達成するため、鋭意検討した結果、H-Phe-Thr-Leu-Cys-Phe-Arg-NH2又はH-Phe-Thr-Leu-His-Phe-Arg-NH2といったアミロイドPヘキサマーと被験物質との結合が、被験物質の感作性の指標となることを見出した。従って、本発明は以下の方法を提供するものである。
(1)H-Phe-Thr-Leu-Cys-Phe-Arg-NH2及びH-Phe-Thr-Leu-His-Phe-Arg-NH2から成る群から選ばれるアミロイドPヘキサマーと被験物質とを混合した後、前記アミロイドPヘキサマーと被験物質との結合物の有無を測定することを特徴とする感作性物質のインビトロ評価方法またはスクリーニング方法。
(2)結合物の有無を高速液体クロマトグラフィーにより判定する(1)の方法。
(1)H-Phe-Thr-Leu-Cys-Phe-Arg-NH2及びH-Phe-Thr-Leu-His-Phe-Arg-NH2から成る群から選ばれるアミロイドPヘキサマーと被験物質とを混合した後、前記アミロイドPヘキサマーと被験物質との結合物の有無を測定することを特徴とする感作性物質のインビトロ評価方法またはスクリーニング方法。
(2)結合物の有無を高速液体クロマトグラフィーにより判定する(1)の方法。
本発明により、医薬や化粧品等の開発初期段階において、多数の候補化合物のいずれが皮膚感作性を発現するかを、少量の被験化合物で、動物実験を実施することなく、迅速に、簡便に、かつ高い精度において検定することが可能となる。
本発明の方法においては、本発明に係るアミロイドPヘキサマーを、例えば、水、又はリン酸ナトリウム、リン酸カリウム等のリン酸アルカリ金属塩などの無機酸塩や、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸アンモニウム等の酢酸塩などの有機酸塩等を含む水性緩衝溶液、またはこれらと有機溶媒との混合溶媒に、例えば約0.01μM〜約1M程度の濃度、通常約10μM〜約100mM程度の濃度となるよう溶解する。緩衝溶液のpHは特に限定されるものではないが、好ましくは約7.0〜10.0、より好ましくは約9.0とする。被験物質は、例えば、水、メタノール、エタノール、アセトニトリル、アセトンなどの有機溶媒またはこれらの混合溶媒に、例えば約0.01μM〜約1M程度の濃度、通常約1mM〜約500mM程度の濃度となるよう溶解する。本発明に係るアミロイドPヘキサマーと被験物質との混合比は特に限定されるわけではないが、好ましくはモル比において1:1〜1:1000、より好ましくは1:10〜1:200、最も好ましくは1:100である。混合は約4℃から約60℃程度の温度範囲、例えば20〜40℃、好ましくは37℃にて保温しながら、通常約10分間〜約2日間程度、例えば2、3時間から2、3日、好ましくは24時間かけて行ない、上記のアミロイドPヘキサマーと被験物質溶液とを反応させる。
かかる反応により生成した被験物質とアミロイドPヘキサマーとの結合物の有無は、アミロイドPヘキサマー溶液と被験物質溶液との混合液を次のようにして分析することにより測定される。混合液の分析方法としては、例えば、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、ガスクロマトグラフィー(GC)、薄層クロマトグラフィー(TLC)、質量分析(MS)等をあげることができる。また、HPLC、GC、またはTLCのいずれかとMSとを組み合わせた分析方法(LC-MS,GC-MS,TLC-MS)等を用いることもできる。該方法によれば、試料に複数成分が含まれていてもそれらを個々に分離し、それぞれについて質量分析することができる。上記のHPLCに用いることのできるクロマトグラフ手法としては、逆相、順相、イオン交換などを挙げることができる。本発明においては、逆相クロマトグラフィーが特に好ましい。また、質量分析で利用することのできるイオン化法としては、例えば、マトリクス支援レーザーイオン化(MALDI)法、エレクトロスプレーイオン化(ESI)法、大気圧化学イオン化(APCI)法、電子衝撃イオン化(EI)法、高速原子衝撃イオン化(FAB)法などを挙げることができる。質量分析計としては、磁場型、四重極型、イオントラップ型、フーリエ変換−イオンサイクロトロン共鳴型、飛行時間型の質量分析計をあげることができる。
上記のようにして得られた混合液の分析結果を、例えば、混合前のアミロイドPヘキサマー溶液および被験物質溶液各々の分析結果と比較し、混合前のアミロイドPヘキサマー溶液および被験物質溶液からは検出されず、かつ保温後の混合液からのみ検出される成分の有無を調べることにより、アミロイドPヘキサマーと被験物質との結合物の有無を測定することができる。かかる分析に、MS、LC-MS、GC-MS、TLC-MS等の質量分析法を用いると、各成分について、質量スペクトルから得られる情報に基づいて質量、構造等を解析してその組成や構造を確認することにより、アミロイドPヘキサマーと被験物質との結合物を特定することもできる。
次に実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、反応条件や分析条件については特に以下に限定されるものではない。
実験方法1
ペプチド溶液及び緩衝液
・APH(C) (H-Phe-Thr-Leu-Cys-Phe-Arg-NH2)ペプチド溶液
APH(C)(BACHEM)5mgに超純水509.6mLを加え、必要があれば超音波分散して溶解し、これを0.5mLマイクロチューブに20μLずつ分注し、-20℃で保管する。使用時に常温に戻した後、230μLの超純水を加えて溶解し、試験に用いた。
・APH(H) (H-Phe-Thr-Leu-His-Phe-Arg-NH2)ペプチド溶液
APH(H)(クラボウ)10mgに超純水976.8mLを加え、必要があれば超音波分散して溶解し、これを0.5mLマイクロチューブに20μLずつ分注し、-20℃で保管する。使用時に常温に戻した後、230μLの超純水を加えて溶解し、試験に用いた。
・緩衝溶液
Britton-Robinsonの広域緩衝液(pH5.0, 7.0, 9.0)を使用した。
実験方法1
ペプチド溶液及び緩衝液
・APH(C) (H-Phe-Thr-Leu-Cys-Phe-Arg-NH2)ペプチド溶液
APH(C)(BACHEM)5mgに超純水509.6mLを加え、必要があれば超音波分散して溶解し、これを0.5mLマイクロチューブに20μLずつ分注し、-20℃で保管する。使用時に常温に戻した後、230μLの超純水を加えて溶解し、試験に用いた。
・APH(H) (H-Phe-Thr-Leu-His-Phe-Arg-NH2)ペプチド溶液
APH(H)(クラボウ)10mgに超純水976.8mLを加え、必要があれば超音波分散して溶解し、これを0.5mLマイクロチューブに20μLずつ分注し、-20℃で保管する。使用時に常温に戻した後、230μLの超純水を加えて溶解し、試験に用いた。
・緩衝溶液
Britton-Robinsonの広域緩衝液(pH5.0, 7.0, 9.0)を使用した。
測定機器
HPLC/MS(Agilent Technologies Japan, Ltd.; Agilent 100LC/MSD キャピラリーLC仕様)
HPLC/MS(Agilent Technologies Japan, Ltd.; Agilent 100LC/MSD キャピラリーLC仕様)
分析条件
・カラム:Capcell pak C18 ACR 1.0mmΦ×35mm, 3μm((株)資生堂)
・カラム温度:40℃
・流量:50μL/分
・移動相:A=0.1%ギ酸/水 B=0.1%ギ酸/アセトニトリル
・グラジエント:10%(0.2分)-100%(12分)
・検出器:フォトダイオードアレイ検出器
・検出波長:210nm
・カラム:Capcell pak C18 ACR 1.0mmΦ×35mm, 3μm((株)資生堂)
・カラム温度:40℃
・流量:50μL/分
・移動相:A=0.1%ギ酸/水 B=0.1%ギ酸/アセトニトリル
・グラジエント:10%(0.2分)-100%(12分)
・検出器:フォトダイオードアレイ検出器
・検出波長:210nm
試験溶液の調製
1.ペプチド溶液と脂溶性被験物質との反応
被験物質溶液の調製
500μmolに相当する質量の被験物質を5mLのエタノールに溶解し、被験物質溶液とした。溶解性が悪い場合は適宜エタノールを追加して溶解し、被験物質溶液とした。
1.ペプチド溶液と脂溶性被験物質との反応
被験物質溶液の調製
500μmolに相当する質量の被験物質を5mLのエタノールに溶解し、被験物質溶液とした。溶解性が悪い場合は適宜エタノールを追加して溶解し、被験物質溶液とした。
ペプチドと被験物質との反応
96ウェルマイクロプレート上にマルチチャンネルピペット等を用い、200μLの緩衝溶液を添加した。次に30μLの99.5%エタノールを加え、更に10μLの被験物質溶液を加えた。最後に10μLのAPH(C)溶液又はAPH(H)溶液を加えて、マイクロプレートをマイクロプレートカバーで封印し、溶媒が揮散しないように輪ゴム等で固定し、更にアルミホイルで覆い、37℃、遮光下で24時間放置したものを試験溶液とした。なおコントロールは、上記の被験物質溶液の代わりに99.5%エタノールを用い、同様の操作を行なって調製した。
96ウェルマイクロプレート上にマルチチャンネルピペット等を用い、200μLの緩衝溶液を添加した。次に30μLの99.5%エタノールを加え、更に10μLの被験物質溶液を加えた。最後に10μLのAPH(C)溶液又はAPH(H)溶液を加えて、マイクロプレートをマイクロプレートカバーで封印し、溶媒が揮散しないように輪ゴム等で固定し、更にアルミホイルで覆い、37℃、遮光下で24時間放置したものを試験溶液とした。なおコントロールは、上記の被験物質溶液の代わりに99.5%エタノールを用い、同様の操作を行なって調製した。
ブランク試験溶液の調製
96ウェルマイクロプレート上にマルチチャンネルピペット等を用い、200μLの緩衝溶液を添加した。次に30μLの99.5%のエタノールを加え、更に10μLの被験物質溶液を添加した。最後に10μLの超純水を加えて、マイクロプレートをマイクロプレートカバーで封印し、溶媒が揮散しないように輪ゴム等で固定し、更にアルミホイルで覆い、37℃、遮光下で24時間放置したものをブランク試験溶液とした。
96ウェルマイクロプレート上にマルチチャンネルピペット等を用い、200μLの緩衝溶液を添加した。次に30μLの99.5%のエタノールを加え、更に10μLの被験物質溶液を添加した。最後に10μLの超純水を加えて、マイクロプレートをマイクロプレートカバーで封印し、溶媒が揮散しないように輪ゴム等で固定し、更にアルミホイルで覆い、37℃、遮光下で24時間放置したものをブランク試験溶液とした。
2.ペプチドと水溶性被験物質との反応
被験物質溶液の調製
500μmolに相当する質量の被験物質を5mLの超純水に溶解し、被験物質溶液とする。溶解性が悪い場合は適宜超純水を追加して溶解し、被験物質溶液とする。
被験物質溶液の調製
500μmolに相当する質量の被験物質を5mLの超純水に溶解し、被験物質溶液とする。溶解性が悪い場合は適宜超純水を追加して溶解し、被験物質溶液とする。
ペプチドと被験物質との反応
96ウェルマイクロプレート上にマルチチャンネルピペット等を用い、190μLの緩衝溶液を添加した。次に40μLの99.5%エタノールを加え、更に10μLの被験物質溶液を加えた。最後に10μLのAPH(C)溶液又はAPH(H)溶液を加えて、マイクロプレートをマイクロプレートカバーで封印し、溶媒が揮散しないように輪ゴム等で固定し、更にアルミホイルで覆い、37℃、遮光下で24時間放置したものを試験溶液とした。なおコントロールは、上記の被験物質溶液の代わりに超純水を用い、同様の操作を行なって調製した。
96ウェルマイクロプレート上にマルチチャンネルピペット等を用い、190μLの緩衝溶液を添加した。次に40μLの99.5%エタノールを加え、更に10μLの被験物質溶液を加えた。最後に10μLのAPH(C)溶液又はAPH(H)溶液を加えて、マイクロプレートをマイクロプレートカバーで封印し、溶媒が揮散しないように輪ゴム等で固定し、更にアルミホイルで覆い、37℃、遮光下で24時間放置したものを試験溶液とした。なおコントロールは、上記の被験物質溶液の代わりに超純水を用い、同様の操作を行なって調製した。
ブランク試験溶液の調製
96ウェルマイクロプレート上にマルチチャンネルピペット等を用い、190μLの緩衝溶液を添加した。次に30μLの99.5%のエタノールを加え、更に10μLの被験物質溶液を添加した。最後に10μLの超純水を加えて、マイクロプレートをマイクロプレートカバーで封印し、溶媒が揮散しないように輪ゴム等で固定し、更にアルミホイルで覆い、37℃、遮光下で24時間放置したものをブランク試験溶液とした。
96ウェルマイクロプレート上にマルチチャンネルピペット等を用い、190μLの緩衝溶液を添加した。次に30μLの99.5%のエタノールを加え、更に10μLの被験物質溶液を添加した。最後に10μLの超純水を加えて、マイクロプレートをマイクロプレートカバーで封印し、溶媒が揮散しないように輪ゴム等で固定し、更にアルミホイルで覆い、37℃、遮光下で24時間放置したものをブランク試験溶液とした。
分析
分析は96ウェルマイクロプレートを分析装置のオートサンプラーにセットし、分析に供した。
分析は96ウェルマイクロプレートを分析装置のオートサンプラーにセットし、分析に供した。
結果
図1はAPH(C)に感作性物質であるp−フェニレンジアミン又は2,4−ジニトロ−1−クロロベンゼンを加えた試料の逆相HPLCの結果を示す。緩衝溶液のpHは9.0、APH(C)と感作性物質のモル比は1:100とした。APH(C)にこれら感作性物質を加えることにより、矢印で示す新しいピークの出現が認められた。従って、APH(C)に対する結合性を指標に、被験物質の感作性を判定できることが示唆された。
図1はAPH(C)に感作性物質であるp−フェニレンジアミン又は2,4−ジニトロ−1−クロロベンゼンを加えた試料の逆相HPLCの結果を示す。緩衝溶液のpHは9.0、APH(C)と感作性物質のモル比は1:100とした。APH(C)にこれら感作性物質を加えることにより、矢印で示す新しいピークの出現が認められた。従って、APH(C)に対する結合性を指標に、被験物質の感作性を判定できることが示唆された。
図2はAPH(C)に感作性物質である2−メルカプトベンゾチアゾ−ルを加えた試料の逆相HPLCの結果を示す。緩衝溶液のpHは9.0、APH(C)と感作性物質のモル比は1:100とした。APH(C)にこれら感作性物質を加えることにより、矢印で示す新しいピークの出現が認められた。従ってこの結果も、APH(C)に対する結合性を指標に、被験物質の感作性を判定できることを示唆する。
図3は緩衝溶液のpHが5.0、7.0、9.0のそれぞれの場合における、APH(C)に感作性物質であるニッケルを加えた試料の逆相HPLCの結果を示す。APH(C)と感作性物質のモル比は1:1とした。pHが5.0及び7.0の場合、APH(C)に感作性物質を加えることによる新しいピークの出現はほとんど認められなかった。しかしながら、pHが9.0の場合、APH(C)に感作性物質を加えることにより新しいピークの出現が認められた。従って、本発明の反応系において、緩衝溶液のpHは9.0前後であることが好ましいことが示唆された。
図4は緩衝溶液のpHが5.0、7.0、9.0のそれぞれの場合における、APH(H)に感作性物質であるコバルトを加えた試料の逆相HPLCの結果を示す。APH(H)と感作性物質のモル比は1:100とした。図3に示す結果と同様、pHが5.0及び7.0の場合、APH(C)に感作性物質を加えることによる新しいピークの出現はほとんど認められず、pHが9.0の場合、APH(H)に感作性物質を加えることにより新しいピークの出現が認められた。従ってこの結果も、本発明の反応系において、緩衝溶液のpHは9.0前後であることが好ましいことを示唆する。またこの結果は、APH(C)と同様、APH(H)に対する結合性を指標にしても、被験物質の感作性を判定できることを示唆する。
実験方法2
ペプチド溶液及び緩衝溶液
・APH(C)ペプチド溶液
APH(C)(BACHEM)5mgに超純水509.6mLを加え、必要があれば超音波分散して溶解し、これを0.5mLマイクロチューブに12μLずつ分注し、-20℃で保管する。使用時に常温に戻した後、138μLの超純水を加えて溶解し、試験に用いた。
・緩衝溶液
111mM リン酸ナトリウム緩衝溶液(pH7.5)を使用した。
ペプチド溶液及び緩衝溶液
・APH(C)ペプチド溶液
APH(C)(BACHEM)5mgに超純水509.6mLを加え、必要があれば超音波分散して溶解し、これを0.5mLマイクロチューブに12μLずつ分注し、-20℃で保管する。使用時に常温に戻した後、138μLの超純水を加えて溶解し、試験に用いた。
・緩衝溶液
111mM リン酸ナトリウム緩衝溶液(pH7.5)を使用した。
測定機器
HPLCナノスペース((株)資生堂)
HPLCナノスペース((株)資生堂)
分析条件
・カラム:Capcell pak C18 ACR 1.0mmΦ×35mm, 3μm((株)資生堂)
・カラム温度:40℃
・流量:100μL/分
・移動相:A=0.1%ギ酸/水 B=0.095%ギ酸/アセトニトリル
・グラジエント:5%(0分)−5%(2分)−100%(15分)
・検出器:UV-VIS検出器
・検出波長:210nm
・カラム:Capcell pak C18 ACR 1.0mmΦ×35mm, 3μm((株)資生堂)
・カラム温度:40℃
・流量:100μL/分
・移動相:A=0.1%ギ酸/水 B=0.095%ギ酸/アセトニトリル
・グラジエント:5%(0分)−5%(2分)−100%(15分)
・検出器:UV-VIS検出器
・検出波長:210nm
被験物質溶液の調製
20μmolに相当する質量の被験物質を1mLのアセトニトリルに溶解し、被験物質溶液とした。
20μmolに相当する質量の被験物質を1mLのアセトニトリルに溶解し、被験物質溶液とした。
ペプチドと被験物質との反応
0.5mLチューブ内でピペット等を用い、1.1倍に希釈した10.5μLの緩衝溶液を分注した。次に7.5μLの被験物質溶液を加えた。最後に12μLのAPH(C)溶液を加えて、アルミホイルで覆い、37℃、遮光下で24時間放置したものを試験溶液とした。なお、コントロールは、上記の被験物質溶液の代わりにアセトニトリルを用い、同様の操作を行なって調製した。
0.5mLチューブ内でピペット等を用い、1.1倍に希釈した10.5μLの緩衝溶液を分注した。次に7.5μLの被験物質溶液を加えた。最後に12μLのAPH(C)溶液を加えて、アルミホイルで覆い、37℃、遮光下で24時間放置したものを試験溶液とした。なお、コントロールは、上記の被験物質溶液の代わりにアセトニトリルを用い、同様の操作を行なって調製した。
ブランク試験溶液の調製
0.5mLチューブ内でピペット等を用い、1.1倍に希釈した10.5μLの緩衝溶液を分注した。次に7.5μLの被験物質溶液を加えた。最後に12μLの1.1倍に希釈した緩衝溶液を加えて、アルミホイルで覆い、37℃、遮光下で24時間放置したものを試験溶液とした。なお、コントロールは、上記の被験物質溶液の代わりにアセトニトリルを用い、同様の操作を行なって調製した。
0.5mLチューブ内でピペット等を用い、1.1倍に希釈した10.5μLの緩衝溶液を分注した。次に7.5μLの被験物質溶液を加えた。最後に12μLの1.1倍に希釈した緩衝溶液を加えて、アルミホイルで覆い、37℃、遮光下で24時間放置したものを試験溶液とした。なお、コントロールは、上記の被験物質溶液の代わりにアセトニトリルを用い、同様の操作を行なって調製した。
分析
0.5mlのチューブからサンプル溶液をバイアルに移し、これを分析装置のオートサンプラーにセットし、分析に供した。
0.5mlのチューブからサンプル溶液をバイアルに移し、これを分析装置のオートサンプラーにセットし、分析に供した。
図5及び6はAPH(C)に感作性物質であるトランス−シンナムアルデヒド及びヒドロキノンをそれぞれを加えた試料の逆相HPLCの結果を示す。APH(C)にこれら感作性物質を加えることにより、矢印で示す新しい二つのピークの出現が認められた。その結果、APH(C)に対する結合性を指標に、被験物質の感作性を判定できることが確認された。
本発明の方法と従来技術の方法との比較
本発明の方法と、特許文献1及び非特許文献1、2に示されている従来技術の方法との比較をいくつかの被験物質の結果について、インビボデーターとともに表1にまとめる。
備考
−:陰性
+:陽性
LLNA(Local Lymph Node Assay):(非特許文献1及び2より)
N.D.:データーなし
ヒト:(Fd. Chem. Toxic., 32(6), 543-547, 1994; Am. J. Contact Dermatitis, 12(3), 156-161, 2001より)
インビボ:マウスLLNAのデーターとヒトデーターを総合的に勘案し、感作性の有無を判断。
Battery:非特許文献2にて用いられたペプチド4種のいずれかと結合性を示した場合に感作性あり、いずれとも結合性を示さなかった場合は感作性なしと評価した場合。
GSH:グルタチオン
Lys:非特許文献2の方法においてペプチドとして「アセチル-Arg-Phe-Ala-Ala-Lys-Ala-Ala-COOHを使用。
Cys:非特許文献2の方法においてペプチドとして「アセチル-Arg-Phe-Ala-Ala-Cys-Ala-Ala-COOHを使用。
His:非特許文献2の方法においてペプチドとして「アセチル-Arg-Phe-Ala-Ala-His-Ala-Ala-COOHを使用。
本発明の方法と、特許文献1及び非特許文献1、2に示されている従来技術の方法との比較をいくつかの被験物質の結果について、インビボデーターとともに表1にまとめる。
−:陰性
+:陽性
LLNA(Local Lymph Node Assay):(非特許文献1及び2より)
N.D.:データーなし
ヒト:(Fd. Chem. Toxic., 32(6), 543-547, 1994; Am. J. Contact Dermatitis, 12(3), 156-161, 2001より)
インビボ:マウスLLNAのデーターとヒトデーターを総合的に勘案し、感作性の有無を判断。
Battery:非特許文献2にて用いられたペプチド4種のいずれかと結合性を示した場合に感作性あり、いずれとも結合性を示さなかった場合は感作性なしと評価した場合。
GSH:グルタチオン
Lys:非特許文献2の方法においてペプチドとして「アセチル-Arg-Phe-Ala-Ala-Lys-Ala-Ala-COOHを使用。
Cys:非特許文献2の方法においてペプチドとして「アセチル-Arg-Phe-Ala-Ala-Cys-Ala-Ala-COOHを使用。
His:非特許文献2の方法においてペプチドとして「アセチル-Arg-Phe-Ala-Ala-His-Ala-Ala-COOHを使用。
Claims (2)
- H-Phe-Thr-Leu-Cys-Phe-Arg-NH2及びH-Phe-Thr-Leu-His-Phe-Arg-NH2から成る群から選ばれるアミロイドPヘキサマーと被験物質とを混合した後、前記アミロイドPヘキサマーと被験物質との結合物の有無を測定することを特徴とする感作性物質のインビトロ評価方法またはスクリーニング方法。
- 結合物の有無を高速液体クロマトグラフィーにより判定する請求項1に記載の方法。
Priority Applications (1)
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JP2006002441A JP2007183208A (ja) | 2006-01-10 | 2006-01-10 | 感作性物質のインビトロ評価法 |
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JP2006002441A JP2007183208A (ja) | 2006-01-10 | 2006-01-10 | 感作性物質のインビトロ評価法 |
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2011059102A (ja) * | 2009-08-13 | 2011-03-24 | Fujifilm Corp | 皮膚感作性測定試薬 |
JP2011094981A (ja) * | 2009-10-27 | 2011-05-12 | Hoyu Co Ltd | 感作性物質のスクリーニング方法 |
JP2012525131A (ja) * | 2009-04-30 | 2012-10-22 | イミュノサーチ | 試験化合物の感作性のインビトロ評価のためのポリペプチド |
CN110702920A (zh) * | 2019-10-14 | 2020-01-17 | 深圳市药品检验研究院(深圳市医疗器械检测中心) | 一种含肉桂醛的化妆品致敏性的检测方法 |
JPWO2021060477A1 (ja) * | 2019-09-26 | 2021-04-01 |
-
2006
- 2006-01-10 JP JP2006002441A patent/JP2007183208A/ja not_active Withdrawn
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