JP2007160141A - 分離処理用充填剤の製造方法 - Google Patents

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  • Treatment Of Liquids With Adsorbents In General (AREA)
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Abstract

【課題】液体中に存在し、金属の影響を受けやすい極微量の化合物を精度よく、精製、濃縮、分析、分取するために、該化合物を分析する際に障害となるようなポリマー系充填剤中の金属の影響を低減した、分離処理用充填剤の製造方法、該分離処理用充填剤、固相抽出用カートリッジ、液体クロマトグラフィー用カラム、ならびに分離対象物質の分離方法を提供する。
【解決手段】ポリマー系充填剤を、前記ポリマー系充填剤を膨潤させる有機溶媒と接触させ、ついで硝酸や塩酸などの酸と接触させる。
【選択図】なし

Description

本発明は、固相抽出用カートリッジやクロマトグラフィー用カラムに用いられる分離処理用充填剤の製造方法、該分離処理用充填剤、該分離処理用充填剤を使用した固相抽出用カートリッジおよびクロマトグラフィー用カラム、ならびに分離対象物質の分離方法に関する。
従来、液体試料からの有機物の抽出には液−液抽出法が多く用いられてきたが、この方法は、作業が繁雑で時間と経験を要すること、有機溶媒を多量に使用することなどの問題があった。これに対して、液体クロマトグラフィーの原理を応用して開発された固相抽出法は、作業が簡単なうえに短時間ですみ、しかも溶媒の使用量が少ないという特長を持っており、近年頻繁に採用されるようになっている。
固相抽出法の用途としては、たとえば、河川などの環境水や土壌に含まれる汚染物質の測定がある。特に、農薬などの測定については、試料からの測定対象物質の分離について、固相抽出法を用いることが法令により定められている場合が多い。
固相抽出法による試料からの農薬の回収率を確認するために、試料に対して濃度既知の農薬標準品を添加し、回収された量を測定する添加回収実験が行われることがある。ところが、河川水などの試料に標準品を添加した場合には、回収率が50%未満という低い値になる場合がある。回収率が低い原因の一つとして、河川水などに含まれる金属の作用により、測定対象物質が塩を形成したり、分解したりしていることが考えられる。このような金属の影響を防ぐため、試料にエチレンジアミン四酢酸(EDTA)の塩などのキレート剤を加えて金属を捕捉する方法が知られている。
しかし、試料にキレート剤を加えても、農薬の一種であるチウラム(テトラメチルチウラムジスルフィド)などの化合物は、回収率が70%程度にとどまることがある。この原因としては、固相抽出カートリッジの充填剤に不純物として混入している微量の金属が、同様に影響していることが考えられ、シリカ系充填剤を用いた固相抽出法においては、固相抽出カートリッジを、有機溶媒、水、EDTA塩の溶液の順に処理することにより、チウラムの回収率を向上させた例が報告されている(非特許文献1参照)。
一方、近年、農薬の分析においては、汎用性の点から、シリカ系充填剤に代えてスチレン−ジビニルベンゼン共重合体などの、ポリマー系充填剤を用いた固相抽出法が主流となっており、公定分析法にも採用されている(例:「水質汚濁に係る環境基準について(昭和46年環境庁告示第59号)」)。しかし、無処理のスチレン−ジビニルベンゼン共重合体を充填剤に用いた固相抽出法では、チウラムなどの化合物について充分な回収率が得られなかった(非特許文献2参照)。
充填剤粒子の製造時の処理としては、エステル結合を含有するポリマー粒子を酸またはアルカリの含水溶液で処理し、遊離したカルボキシル基をアミド化してキャッピングすることにより、酸・アルカリ耐久性を改質したクロマトグラフィー用ポリマー系充填剤を、温水、アセトン、メタノールなどにより洗浄すること(特許文献1参照)、また、シリカ系充填剤については、メタノールによる洗浄(特許文献2参照)などが報告されている。しかし、これらは酸・アルカリ耐久性の向上や不純物としての有機物の除去を目的としたものであり、ポリマー系充填剤に混入した微量金属の影響を低減するという目的での充填剤粒子製造時の処理に関しては、これまで報告されていない。
特開2004−99790号公報 特開2004−271522号公報 山田直樹、富田伴一、茶谷邦夫、衛生化学(Japanese Journal of Toxicology and Environmental Health)、Vol.38, No.6, 566-570 (1992)、「固相抽出法−HPLCを用いた環境水中のゴルフ場農薬チウラム, イプロジオン及びベンスリドの同時分析法」 木口倫、鈴木雄二、斉藤勝美、分析化学(BUNSEKI KAGAKU)、Vol.48, No.7,673-680(1999)、「固相抽出/高速液体クロマトグラフィーによるトリクロピル酸とその分解物を含めたゴルフ場使用農薬の同時定量」
本発明はかかる状況に鑑みてなされたものであり、液体中に存在する極微量の化合物(分離対象物質)を精度よく、精製、濃縮、分析、分取するために、分離対象物質の分解の原因となると考えられるポリマー系充填剤中の金属の影響を低減した、分離処理用充填剤の製造方法、該分離処理用充填剤、固相抽出用カートリッジ、液体クロマトグラフィー用カラム、ならびに分離対象物質の分離方法を提供することを課題とする。
本発明者らは、上記課題を解決するため、鋭意検討した結果、ポリマー系充填剤を有機溶媒と接触させ、ついで有機溶媒存在下に酸と接触させることにより、ポリマー系充填剤中に存在する金属の影響を低減し、分離対象物質の回収率を向上できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、たとえば、下記(1)〜(18)の事項に関する。
(1) ポリマー系充填剤を有機溶媒と接触させ、ついで該有機溶媒の存在下に酸と接触させることを特徴とする分離処理用充填剤の製造方法。
(2) 前記ポリマー系充填剤を、カラム容器に充填して充填剤層を形成する前あるいは形成した後のいずれかの時点において、有機溶媒と接触させることを特徴とする上記(1)に記載の分離処理用充填剤の製造方法。
(3) 前記ポリマー系充填剤を、カラム容器に充填して充填剤層を形成する前あるいは形成した後のいずれかの時点において、有機溶媒の存在下に酸と接触させることを特徴とする上記(1)または(2)に記載の分離処理用充填剤の製造方法。
(4) 前記ポリマー系充填剤を、カラム容器に充填して充填剤層を形成した後、有機溶媒をカラム内に流通させ、次いで酸の溶液をカラム内に流通させることにより、有機溶媒の存在下に酸とポリマー系充填剤とを接触させることを特徴とする上記(1)に記載の分離処理用充填剤の製造方法。
(5) 前記酸の溶液をカラム内に流通させた後、水をカラム内に流通させることを特徴とする上記(4)に記載の分離処理用充填剤の製造方法。
(6) 前記酸が、無機酸または有機酸であることを特徴とする上記(1)〜(5)のいずれかに記載の分離処理用充填剤の製造方法。
(7) 前記無機酸が、塩酸、硫酸、硝酸、りん酸のうちの少なくとも1種であることを特徴とする上記(6)に記載の分離処理用充填剤の製造方法。
(8) 前記有機酸が、酢酸、しゅう酸、クエン酸のうちの少なくとも1種であることを特徴とする上記(6)に記載の分離処理用充填剤の製造方法。
(9) 前記有機溶媒が、ポリマー系充填剤を膨潤させるものであることを特徴とする上記(1)〜(5)のいずれかに記載の分離処理用充填剤の製造方法。
(10) 上記(1)〜(9)のいずれかに記載の製造方法によって、製造されたことを特徴とする分離処理用充填剤。
(11) 少なくとも、カラム容器と、該カラム容器内に形成され、上記(10)に記載
の分離処理用充填剤を含む充填剤層とを有することを特徴とする固相抽出用カートリッジ。
(12) 少なくとも、カラム容器と、該カラム容器内に形成され、上記(10)に記載の分離処理用充填剤を含む充填剤層とを有することを特徴とするクロマトグラフィー分析用カラム。
(13) 少なくとも、カラム容器と、該カラム容器内に形成され、上記(10)に記載の分離処理用充填剤を含む充填剤層とを有することを特徴とするクロマトグラフィー分取用カラム。
(14) 分離対象物質を含有する液体試料を、上記(11)に記載の固相抽出用カートリッジに流通させ、該分離対象物質を液体試料から分離することを特徴とする物質の分離方法。
(15) 分離対象物質を含有する液体試料を、上記(13)に記載のクロマトグラフィー分取用カラムに流通させ、該分離対象物質を液体試料から分離することを特徴とする物質の分離方法。
(16) 前記分離対象物質が、環境汚染物質、ダイオキシン類、環境ホルモン、農薬、界面活性剤、生物毒素、天然薬物、天然色素、天然香料、および天然調味料よりなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする上記(14)または(15)に記載の物質の分離方法。
(17) 前記分離対象物質が、ジスルフィド類であることを特徴とする上記(14)または(15)に記載の物質の分離方法。
(18) 前記ジスルフィド類が、テトラメチルチウラムジスルフィドであることを特徴とする上記(17)に記載の物質の分離方法。
本発明の製造方法によれば、ポリマー系充填剤中に存在する金属の影響を低減した分離処理用充填剤を得ることができ、その分離処理用充填剤を固相抽出用カートリッジやクロマトグラフィー用カラムに用いることで、液体試料中に含まれる、金属の影響を受けやすい極微量の化合物、例えば農薬、医薬、環境ホルモン、化学汚染物質、生物毒素などの精度の良い、精製、濃縮、分析、分取が可能となる。
以下、本発明の実施の形態について具体的に説明する。
本発明に用いることのできるポリマー系充填剤としては、ポリマー粒子、該ポリマー粒子を構成しているポリマー骨格に様々な官能基を付与したもの、該ポリマー粒子に表面処理や薬品の含浸等の操作を施したものなどが挙げられる。
該ポリマー系充填剤の例としては、スチレン−ジビニルベンゼン共重合体、ジビニルベンゼン−エチレンジメタクリレート−N−ビニルアセトアミド3元共重合体、ジビニルベンゼン−グリセリンジメタクリレート−N−ビニルアセトアミド3元共重合体などの架橋ポリマー粒子が挙げられ、その光散乱法による重量平均粒子径は、通常の場合、5〜150μm程度である。
本発明において、単に「ポリマー系充填剤」という場合には、酸との接触を行う前の充填剤を意味し、特に「未処理のポリマー系充填剤」という場合もある。具体的には、たとえば「未処理のスチレン−ジビニルベンゼン共重合体」としては、酸との接触を行っておらず、重合反応工程に付随する通常の洗浄工程を経たスチレン−ジビニルベンゼン共重合体が好ましく挙げられる。
また、本発明において、「酸」とは、溶液中で水素イオンを放出する物質を意味する。本発明では、該物質が、未処理のポリマー系充填剤に含まれている鉄、クロム、ニッケル
、銅などの金属原子をイオン化し、洗浄液に溶解した状態でポリマー系充填剤から取り去られることで、分離対象物質と該金属成分との塩の形成や、酸化還元反応などによる分離対象物質の分解を防ぐ作用をする。酸としては、無機酸、有機酸が挙げられる。本発明では、これらのいずれかを1種単独で用いてもよく、これらを組み合わせて用いてもよい。
無機酸の例としては、塩酸、硫酸、硝酸、りん酸などが挙げられる。これらの中では金属を酸化して溶解する作用の強さの面から硝酸が、また取り扱いが容易である面からは塩酸が好ましい。
有機酸の例としては、酢酸、しゅう酸、クエン酸などが挙げられる。これらの中では臭気などの問題がない面からしゅう酸が好ましい。
本発明において、酸は溶液の形態でポリマー系充填剤と接触させることが好ましい。酸溶液とポリマー系充填剤を接触させる際には、最初にアセトニトリルなどの有機溶媒を加えて充填剤粒子を膨潤させた後、充填剤粒子を乾燥させずに、該有機溶媒の存在下、好ましくは直ちに酸溶液を加えることにより、効率良くかつ充分に処理ができる。
上述した非特許文献1では、シリカ系充填剤からなる充填剤層を有する固相抽出用カートリッジを、有機溶媒、水、EDTA塩の溶液の順でこれらを流通させることによって、充填剤層を処理しているが、この方法はポリマー系充填剤の処理としては不充分である。
上述した特許文献1では、ポリマー粒子を酸の含水溶液と接触させ、ついでアミド化した後、温水や有機溶媒で洗浄を行っているが、このポリマー粒子と酸の含水溶液との接触処理は、後でアミド化するために遊離のカルボキシル基を生じさせることを目的としており、本発明とは本質的に異なる。また、その後の洗浄工程もポリマー系充填剤の処理としては不充分である。
ポリマー系充填剤の例として、スチレン−ジビニルベンゼン共重合体を挙げて説明すると、該共重合体粒子は、物質の吸着に寄与する微細なポアを有しており、製造時に該粒子表面のみならず、それらのポア内にも金属イオンが入り込んでいる。非特許文献1のように、有機溶媒、水、EDTA塩の溶液の順でこれらを流通させる方法でスチレン−ジビニルベンゼン共重合体粒子を処理した場合には、有機溶媒を流通させた後に水を流通させているため、共重合体粒子の膨潤が不充分で、粒子表面の金属イオンは除去できても、粒子の微細なポア内に入り込んでいる金属イオンまでは除去できない。また、特許文献1の洗浄工程では、金属イオンを積極的に除去し得る成分が含まれていないため、金属イオンの除去は困難である。
これに対して、本発明の好ましい態様では、有機溶媒を加えて充填剤粒子を膨潤させた後、充填剤粒子を乾燥させずに、該有機溶媒の存在下、好ましくは水などを流通させず直ちに、酸溶液を加えるため、充填剤粒子の膨潤が充分に起こり、充填剤粒子の表面のみならず、充填剤粒子の微細なポア内に入り込んでいる金属イオンまでも、効率良く溶出され、系外に除去される。
酸溶液との接触前に使用する有機溶媒としては、その目的からして、ポリマー系充填剤粒子を膨潤させるものであることが求められる。したがって、該有機溶媒には、使用するポリマー系充填剤の種類に対応した適切な組合せがある。たとえば、ポリマー系充填剤粒子がスチレン−ジビニルベンゼン共重合体粒子の場合には、上記有機溶媒として、アセトニトリル、アセトン、トルエン、メチルエチルケトンなどが挙げられる。
また、有機溶媒は、後工程で用いる酸溶液と相溶するものが好ましい。酸溶液が水系溶液の場合には、有機溶媒として、アセトニトリル、アセトン、メタノール、メチルエチル
ケトン、THFなどを使用することができる。
本発明において酸溶液による処理を行う場合、フラスコなどの容器にポリマー系充填剤、有機溶媒、酸溶液を順次加えて、撹拌することにより接触させるバッチ式処理と、ポリマー系充填剤をカラム容器に充填して、充填剤層を形成した後、有機溶媒、酸溶液を順次通す流通式処理のどちらを用いても良い。なお、バッチ式処理を採用した場合には、処理後のポリマー系充填剤をカラム容器に充填して充填剤層を形成する。また、これらのバッチ式処理と流通式処理とを組合せ、ポリマー系充填剤と有機溶媒との接触をバッチ式処理で行ない、その後、有機溶媒で膨潤したポリマー系充填剤をカラム容器に充填して、充填剤を形成し、酸溶液を通す流通式処理を行っても良い。
酸溶液との接触前に使用する有機溶媒と、ポリマー系充填剤との接触時間および処理温度、有機溶媒の使用量は、バッチ式あるいは流通式などの処理方式や、ポリマー系充填剤の量などによって適宜決定できるが、たとえば流通式の場合には、通常は室温〜40℃で、2〜10分間程度、約3〜10mlでよい。
本発明に用いられる酸の量は、処理するポリマー系充填剤の性状や粒径、酸の種類などに左右されるが、代表的なスチレン−ジビニルベンゼン共重合体の充填剤に1mol/l硝酸を作用させる場合、充填剤の重量(乾燥重量)に対する2〜50倍量が良く、好ましくは3〜30倍量で、より好ましくは5〜20倍量である。酸の量が少ないと金属の影響を低減する効果が不完全となり、酸の量が多いと工程時間が長くかかる場合がある。
酸溶液の溶媒は、アセトニトリルなどのポリマー系充填剤を膨潤させるために最初に用いた有機溶媒と、分離対象物質を含有する試料を溶解する溶媒の両方に相溶する溶媒から選択するのが好ましい。この場合、酸溶液の溶媒と上記試料溶液の溶媒が同じであってもよい。たとえば、ポリマー系充填剤を膨潤させるために最初に用いた有機溶媒がアセトニトリルの場合には、酸溶液の溶媒および上記試料溶液の溶媒がともに水である組合せが好ましい。また、酸溶液の溶媒を水とアルコールなどの混合溶媒とし、ポリマー系充填剤を膨潤させるために最初に用いた有機溶媒との相溶性と酸の溶解性とのバランスをとることも出来る。
酸溶液の濃度は、酸の種類などに左右されるが、無機酸、たとえば、硝酸や塩酸などの一価の強酸の場合、0.1〜5.0mol/lが良く、好ましくは0.2〜3.0mol/lで、より好ましくは0.3〜2.0mol/lである。
酸溶液とポリマー系充填剤との接触時間および処理温度は、バッチ式あるいは流通式などの処理方式や、ポリマー系充填剤の量などによって適宜決定できるが、たとえば流通式の場合には、通常は室温〜40℃で、3〜10分間程度でよい。
さらに、本発明では、上述したように酸と接触させた後のポリマー系充填剤は水で洗浄することが望ましい。処理後のポリマー系充填剤がカラム容器に入っている場合にはカラムの充填剤層に水を流通させる。
このとき使用する水の量、処理温度、処理時間などは、処理後のポリマー系充填剤の量、処理方式などによって適宜決定できる。具体的には、たとえば、ポリマー系充填剤300mgに対し、通常は約5〜10ml、室温〜40℃で5〜10分間程度である。
これらの処理が終了したポリマー系充填剤は、通常は乾燥させる。フラスコなどの容器に充填剤が入っている場合は、充填剤をろ紙などでろ過して回収した後、該充填剤を別のフラスコなどの容器に入れ、清浄な空気や窒素を静かに吹き付けて乾燥させる。カラム容
器に入っている場合は、カラムの充填剤層に清浄な空気や窒素を通して乾燥させる。
上記の洗浄工程を経て製造された分離処理用充填剤は、用途に応じてカートリッジやカラム容器などに充填して固相抽出用カートリッジ、クロマトグラフィー用分析カラムなどを形成し、分離対象物質の精製、濃縮、分析、分取用具として用いることができる。
本発明における分離対象物質としては、環境汚染物質、ダイオキシン類、環境ホルモン、農薬、界面活性剤、生物毒素、天然薬物、天然色素、天然香料、および天然調味料などが挙げられる。本発明の効果は、これらのうち、ジスルフィド類、たとえば、テトラメチルチウラムジスルフィドのように、金属の影響により加水分解などの作用を受けやすい不安定な物質において、より大きく得られる。
以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
[実施例1]
チウラム標準品(和光純薬工業製、化学名:テトラメチルチウラムジスルフィド)をアセトニトリルに溶解して1mg/mlの原液を作製し、これをアセトニトリルで希釈して1.5μg/mlの溶液を調製した。精製水500mlに塩酸を加えてpHを3に調整した後、チウラム1.5μg/mlの溶液1mlを添加し、試料溶液とした。
スチレン−ジビニルベンゼン共重合体ゲルを充填した固相抽出用カートリッジ(昭和電工製AutoprepTM PS@Liq)にアセトニトリル5ml、1mol/l硝酸5mlおよび精製水5mlを約1ml/minの速度で順次通した。
このカートリッジに、上記の試料溶液を20ml/minの速度で通水した。カートリッジに精製水10mlを通して洗浄した後、窒素ガスを約30分間吹き付けて水分を除去した。その後、カートリッジの上端からアセトニトリル3mlを緩やかに通してチウラムを溶出させ、溶出液を試験管に回収した。得られた溶出液に窒素ガスを緩やかに吹き付けて1mlまで濃縮した。
HPLC(高速液体クロマトグラフィー)でチウラムの回収量を測定したところ、3回の回収率はそれぞれ89%,85%,87%であり、平均値は87%であった。
その結果を表1に示す。
(HPLC分析条件)
溶離液:アセトニトリル/水 = 50/50;
流速:1.0ml/min;
カラム温度:40℃;
検出器:UV−272nm
注入量:30μl
分析カラム:Shodex RSpak GOLF−413
ポリメタクリレート系中極性ゲル,粒径4μm
内径4.6mm,長さ150mm
[比較例1]
実施例1と同じ固相抽出用カートリッジ(昭和電工製AutoprepTM PS@Liq)にアセトニトリル5ml及び精製水5mlを約1ml/minの速度で順次通した。その後、実施例1と同様に試料溶液を通水し、チウラムを回収、分析したところ、3回の回収率はそれぞれ59%,46%,56%であり、平均値は53%であった。
その結果を表1に示す。
Figure 2007160141
以上のように、本発明の充填剤の製造方法によれば、充填剤に含まれる金属の影響を低減させることができ、液体中に含まれる金属の影響を受けやすい極微量の化合物、例えば環境ホルモン、化学汚染物質、生物毒素、農薬、医薬などの、精製、濃縮、分析、分取を精度良く行うことができる。

Claims (18)

  1. ポリマー系充填剤を有機溶媒と接触させ、ついで該有機溶媒の存在下に酸と接触させることを特徴とする分離処理用充填剤の製造方法。
  2. 前記ポリマー系充填剤を、カラム容器に充填して充填剤層を形成する前あるいは形成した後のいずれかの時点において、有機溶媒と接触させることを特徴とする請求項1に記載の分離処理用充填剤の製造方法。
  3. 前記ポリマー系充填剤を、カラム容器に充填して充填剤層を形成する前あるいは形成した後のいずれかの時点において、有機溶媒の存在下に酸と接触させることを特徴とする請求項1または2に記載の分離処理用充填剤の製造方法。
  4. 前記ポリマー系充填剤を、カラム容器に充填して充填剤層を形成した後、有機溶媒をカラム内に流通させ、次いで酸の溶液をカラム内に流通させることにより、有機溶媒の存在下に酸とポリマー系充填剤とを接触させることを特徴とする請求項1に記載の分離処理用充填剤の製造方法。
  5. 前記酸の溶液をカラム内に流通させた後、水をカラム内に流通させることを特徴とする請求項4に記載の分離処理用充填剤の製造方法。
  6. 前記酸が、無機酸または有機酸であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の分離処理用充填剤の製造方法。
  7. 前記無機酸が、塩酸、硫酸、硝酸、りん酸のうちの少なくとも1種であることを特徴とする請求項6に記載の分離処理用充填剤の製造方法。
  8. 前記有機酸が、酢酸、しゅう酸、クエン酸のうちの少なくとも1種であることを特徴とする請求項6に記載の分離処理用充填剤の製造方法。
  9. 前記有機溶媒が、ポリマー系充填剤を膨潤させるものであることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の分離処理用充填剤の製造方法。
  10. 請求項1〜9のいずれかに記載の製造方法によって、製造されたことを特徴とする分離処理用充填剤。
  11. 少なくとも、カラム容器と、該カラム容器内に形成され、請求項10に記載の分離処理用充填剤を含む充填剤層とを有することを特徴とする固相抽出用カートリッジ。
  12. 少なくとも、カラム容器と、該カラム容器内に形成され、請求項10に記載の分離処理用充填剤を含む充填剤層とを有することを特徴とするクロマトグラフィー分析用カラム。
  13. 少なくとも、カラム容器と、該カラム容器内に形成され、請求項10に記載の分離処理用充填剤を含む充填剤層とを有することを特徴とするクロマトグラフィー分取用カラム。
  14. 分離対象物質を含有する液体試料を、請求項11に記載の固相抽出用カートリッジに流通させ、該分離対象物質を液体試料から分離することを特徴とする物質の分離方法。
  15. 分離対象物質を含有する液体試料を、請求項13に記載のクロマトグラフィー分取用カラムに流通させ、該分離対象物質を液体試料から分離することを特徴とする物質の分離方
    法。
  16. 前記分離対象物質が、環境汚染物質、ダイオキシン類、環境ホルモン、農薬、界面活性剤、生物毒素、天然薬物、天然色素、天然香料、および天然調味料よりなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項14または15に記載の物質の分離方法。
  17. 前記分離対象物質が、ジスルフィド類であることを特徴とする請求項14または15に記載の物質の分離方法。
  18. 前記ジスルフィド類が、テトラメチルチウラムジスルフィドであることを特徴とする請求項17に記載の物質の分離方法。
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Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
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US11280767B2 (en) 2016-11-11 2022-03-22 Lg Chem, Ltd. Pretreatment method for analyzing dioxin compounds and analytical method using the same

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US11280767B2 (en) 2016-11-11 2022-03-22 Lg Chem, Ltd. Pretreatment method for analyzing dioxin compounds and analytical method using the same

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