JP2007159483A - 稚魚(天然・放流)の成長と魚類の産卵を育む魚礁パート2 - Google Patents

稚魚(天然・放流)の成長と魚類の産卵を育む魚礁パート2 Download PDF

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Abstract

【課題】 自然海岸の激減、海洋汚染の進行、藻場の消失等によって沿岸海域の海洋環境が悪化し、良好な稚魚の生育場や魚類の産卵場等が急激に失われた。しかし自然海岸や藻場の回復等は短期的に対応できることではないので、それらを補う手立てを考えなければならない。そこで良好な稚魚の生育場や魚類の産卵場を確保するために、有用性が高く、経済性・操作性・耐久性等に優れた新たな発想に基づいた魚礁が求められている。
【解決手段】ネット・ロープのそれぞれの特質を生かし、魚礁の形状を創意工夫して、ネット・ロープを巧みに組み合わせて魚礁内に装着して、多様な海洋空間を創り出し、藻類の生い茂る小さな海の森とも言うべき快適な海洋環境を提供でき、従来の魚礁にはない面を補いうるものである。
【選択図】図1

Description

本発明はネットとロープの特質をそれぞれに生かし、必要に応じて2つを適宜に組み合わせて、形状に創意工夫を凝らした魚礁内に装着し、魚礁内部に多様で快適な海洋空間を創り出し、海藻・海草に模した人工的な小さな海の森を現出し、稚魚(天然・放流)の成長と魚類の産卵を育む魚礁に関する。
鋼製魚礁内にかき殻を入れた筒状網を積み重ねたもの、魚礁上部や外部にロープを張り巡らして藻類を付着させる藻場造成機能を持たせたもの、有孔面材の筒状の容器にロープ・間伐材・かき貝殻などを充填して詰め合わせるもの、多くのブロック長柱を海底に木を模して立てたもの、ロープ類を浮体物から直接海中に吊り下げたものなど最近の魚礁は多岐にわたり、特に漁業不振に伴い、形状・素材・機能などを工夫して大型化、高機能化したものなど多種多様なものが生産・使用されている。
鋼製魚礁に原木をつけて沈設したもの、自然石や間伐材やタイヤなどを使ったシンプルで経済性やリサイクルなどの環境等を考慮した魚礁がある。
アオリイカなどの産卵にはイカ柴やイカ漁網礁などが使われるが、荒天や台風などに弱く、一時的で長期使用には適さない。
現在農水省(水産庁)は漁業振興の重要施策として、都道府県、公的研究機関、漁協等と連携して、全国の海域で約80種の魚種について栽培漁業を積極的に推進している。稚魚放流の場合、公的な栽培漁業センター等で効率的に種苗生産から中間育成までを行う場合と漁業者が中間育成を行う場合などがあるが、稚魚の生存率を高めるために稚魚の生息に適した海域に放流している。ここで大きな問題は稚魚放流後の歩留まりの向上と天然海域への適応をいかに高めるかということが沿岸漁業の振興にとって大変重要な問題である。現在歩留まり率(回収率)は魚種によっても違いがあるが5〜15%程度であろうと推測されている。この歩留まり率(回収率)を向上させることが水産業界にとって大きな課題となっている。
従来の魚礁には稚魚の生存を高めたり、魚類の産卵を助けたりする発想に基づいたものは少なく、本発明はその点に特に着目したものである。
日本の水産業は遠洋・沖合・沿岸漁業とも厳しい状況に置かれているが、その中で特に沿岸漁業は次のような理由で不漁が指摘されている。即ち自然海岸の激減、海洋汚染の進行、藻場の消失等によって海洋環境が悪化し、良好な稚魚の生育場や魚類の産卵場が急激に失われた。しかし自然海岸や藻場の回復等は短期的に対応できることではないので、それらを補う手立てを考えなければならない。
従来の魚礁の中には高い機能を持っているものがあるが、構造的に複雑である、設置等に技術を要する、高価であるなどの理由により普及が阻害されてきた面がある。
一方、シンプルで対応し易い、環境に配慮している、安価であるなどの利点を持つものがあるが、耐久性や有用性等での問題点が指摘されている。
本発明はシンプルで取り扱いが簡単で、比較的低コストで供給できるものであり、有用性・操作性・耐久性・経済性等の観点から、従来の魚礁にはない面を補い得るものであり、従来のものとは一線を画する。
海の中はある意味では食うか食われるかの弱肉強食の原理が働く厳しい世界であり、さらに自然の猛威や自然破壊の影響をもろに受ける試練の場でもあり、特に稚魚にとっては日々を生き延びるのが大変な状況にある。そこで本発明は稚魚の生存を手助けするために、魚礁内という小さな空間世界ではあるが、そこにネットとロープ、さらに魚礁の形状を工夫して、3つを巧みに組み合わせることによって多様な異空間を創り出し、集魚性を高め、稚魚が遊び場や隠れ家にしたり、さらには親が産卵場にしたりして生存していける生活環境を創り出すことができるのである。特に本発明は稚魚の生育場や魚類の産卵場を重視した魚礁づくりであることを特徴としている。
この新しい魚礁が放流稚魚の歩留まり率を高めるために寄与できるのではないかと期待している。現在、自然海岸の急減や藻場の消失等により、稚魚が生存していける良好な生育場が少なくなっているが、本発明はそれを補うために魚礁内に藻類が生い茂る快適な海洋環境を人工的に創り出し、稚魚(天然・放流)には好適な生育場を、またアオリイカなどの魚類には安全で長期的な産卵場を、さらに成魚には成育場を提供するものである。
本発明は魚礁内部にネット・ロープを簡便に装着でき、魚礁の形状にも創意工夫を凝らして有用性が高い。どんなに素晴らしい発明でも高価であったり、取り扱いが複雑であったりしては容易に普及し難い。国全体が財政難の中にあり、漁業者も漁業不振で厳しい懐事情にある中で、本発明は比較的低コストで供給でき、簡単に装置でき、しかも効果が期待できる。
本発明は小規模海域で各漁協単位に少数投入するのに適しているし、また広い海域に設置する場合でも必要に応じて容易に大量生産と大型化が可能であり、設置技術も容易であり、設置費用も低コストで済む利点がある。
本発明は自然海岸の急減、藻場の消失などの厳しい海洋環境の中で、水産業振興の一助として、稚魚の成長と魚類の産卵を育む手立てとして考案したものである。この魚礁の特徴として構造は極めてシンプル、取り扱いが簡便、比較的低コストで供給できる、構造的な強度がある、長期的な使用にも耐え得るなどを挙げることができるが、なんと言っても最大の特徴はネットとロープのそれぞれの特質を生かし、魚礁の形状を創意工夫して、この3つを巧みに組み合わせることよって魚礁内に人工的に小さな海の森とも言うべき多様な海洋空間を創り出して、稚魚の成長と魚類の産卵を育む良好な海洋環境を提供できることにある。この魚礁が広く普及し水産業の振興に少しでも寄与できればと期待している。
以下、本発明の実施形態について、図面に基づいて説明する。
図1は魚礁全体(ネット装着後)の斜視図、図2は魚礁全体(ネット装着前)の斜視図、図3は魚礁に内張りするネットの斜視図、図4はネットにロープが垂れ下がった状態の斜視図、図5は魚礁(ネット装着前)を上から見た断面図、図6は魚礁(ネット装着後)の正面図、図7は魚礁(ネット装着後)の側面図、図8は魚礁(ネット装着後)の平面図である。いずれの図においても垂れ下がっているロープ数は実際にはもっと密になる。
図1はネットを装着した魚礁全体の斜視図である。ネットとロープを組み合わせたものを、形状を工夫した魚礁内に装着して、多様な海洋空間を創り出し、稚魚(天然・放流)の成長と魚類の産卵を育む魚礁。立方体のコンクリート製魚礁で各6面にそれぞれに8角形の窓を持ち、各隅の壁面の面積を広くしてある。これは波動の影響を和らげ、魚類の隠れ家・避難場所を確保するためである。ネット基軸部分から4枚羽根を持ったネット(合成繊維系)を魚礁の左右上下に装着し固定している。各4枚のネットには各2つの窓が開けられており、また各ネットの網目部分には適切な間隔でロープ(合成繊維系)が垂れ下げられている。このロープの長さは長短をつけ、下に空間部を設けている。このように魚礁やネットの窓を多くし、ロープの数や長さを調節して魚礁内部の海水流動をよくして淀みを無くし、魚類の移動を容易にしている。
図2は魚礁本体の斜視図であり、立方体の6面とも8角形の同じ窓を持ち、壁面を広くすることによって、波動の内部への影響をやわらげ、稚魚等の隠れ家を提供できる。下面(底面)は壁面を広くすることによって砂質地での沈下を抑制し、一方窓を残すことによって岩盤質での安定感を保持しやすくしている。
図3はネット基軸部分を中心にして4面からなるネットであり、各ネットに2つ、合計8つの角窓を設けている。これは海洋空間を多様化して、魚類の移動を容易にし、海水の流動性を良くして淀みを少なくするためである。ネットはクレモナロープ製(登録商標)で海中での耐久性も強く、少なくとも15年程度は使用可能とされ、しかも親水性があり藻類が付着しやすい。
図4は適宜の長さのロープをネットの適切な間隔で結び目に垂れ下げたものの概念図である(実際はもっと密になる)。ロープの長さは下方のネットや魚礁の底面との間に空間ができるように垂れ下げる。ロープはクレモナ製(登録商標)で上記のように耐久性、親水性があり長期使用に耐えうるものであり、藻類が付着しやすい。
図5は上方から見た断面図であり、図3のネットの取り付け用具(一部が開けられるようになっている)を魚礁内の下方に装着させるための受け止め用具である。上方にも同じような受け止め用具がある。4枚の各ネットに3つの取り付け用具が備えてあり、それぞれを魚礁内の12箇所の受け止め用具に装着して固定させる。
図6は魚礁(ネット装着後)の正面図であり、窓内の縦線はロープがネットから垂れ下がっている状態である(実際はもっと密になる)。これらのロープは海藻・海草を擬していて人工的な小さな海の森を形成し、稚魚が遊んだり、身を隠したり、また魚類が産卵時の場所にしたりするのに役立つ。縦線のない空間部分は海水流動や魚類の移動等のために確保されている。
図7は魚礁(ネット装着後)の側面図であり、窓内の縦線はロープが垂れ下がっている状態である(実際はもっと密になる)。縦線のない空間部分は海水流動や魚類の移動等のために確保されている。
図8は魚礁(ネット装着後)の平面図である。ネット2枚がネット基軸部分から魚礁の上方の左右それぞれに装着されている状態である。他の2枚は下方の左右それぞれに固着されている。
魚礁全体(ネット装着後)の斜視図である。 魚礁全体(ネット装着前)の斜視図である。 魚礁に内張りするネットの斜視図である。 ネットにロープが垂れ下がった状態の斜視図である。 魚礁(ネット装着前)を上から見た断面図である。 魚礁(ネット装着後)の正面図である。 魚礁(ネット装着後)の側面図である。 魚礁(ネット装着後)の平面図である。
符号の説明
1 魚礁
2 魚礁窓
3 魚礁壁
4 ネット
5 ネット窓
6 取り付け用具
7 ネット基軸部分
8 ロープ
9 受け止め用具
10 ネット重なり部分

Claims (5)

  1. 魚礁本体は非立方体か非直方体の少なくとも一面が開口され、その内部のネット基軸部分で複数枚のネットが組み合わせられていて、その複数枚のネットはそれぞれ取り付け用具により魚礁内部の受け止め用具に装着され、その各複数枚のネットにはネットが張られた時に垂れ下がるように、一定の間隔で適宜の長さのロープが取り付けられていることを特徴とする魚礁。
  2. 魚礁本体は立方体か直方体の少なくとも一面が開口されている非コンクリート製で、その内部のネット基軸部分で複数枚のネットが組み合わせられていて、その複数枚のネットはそれぞれ取り付け用具により魚礁内部の受け止め用具に装着され、その各複数枚のネットにはネットが張られた時に垂れ下がるように、一定の間隔で適宜の長さのロープが取り付けられていることを特徴とする魚礁。
  3. 魚礁本体は立方体か直方体の少なくとも一面が開口されているコンクリート製で、その内部のネット基軸部分で4枚を除く複数枚のネットが組み合わせられていて、その4枚を除く複数枚のネットはそれぞれ取り付け用具により魚礁内部の受け止め用具に装着され、その4枚を除く複数枚のネットにはネットが張られた時に垂れ下がるように、一定の間隔で適宜の長さのロープが取り付けられていることを特徴とする魚礁。
  4. 魚礁本体は立方体か直方体の5面の少なくとも一面が開口されているコンクリート製で、その内部のネット基軸部分で4枚のネットが組み合わせられていて、その4枚のネットはそれぞれ取り付け用具により魚礁内部の受け止め用具に装着され、その各4枚のネットにはネットが張られた時に垂れ下がるように、一定の間隔で適宜の長さのロープが取り付けられていることを特徴とする魚礁。
  5. 各ネットには適宜にネット窓(開口部)が開けられていることを特徴とする魚礁。
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