JP2007152615A - 角部を有するfrp製中空部材の成形方法 - Google Patents

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裕也 秦
Kentaro Shima
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【課題】
複雑な形状を有するFRP製中空部材、特に、角部を有する様な中空部材を、内圧成形法で容易に一体的に成形する方法を提供すること。
【解決手段】
角部を有するFRP製中空部材の成形方法であって、成形型のキャビティ内表面にプリプレグを積層・敷設し、このプリプレグで形成される中空部分に圧力バッグを挿入し、内圧成形法により一体成形する方法において、前記積層・敷設されたプリプレグの層間で且つ成形型のキャビティ内表面の角部に対応する部分に、プリプレグで被覆された樹脂ブロックを配置して成形する成形方法。
【選択図】図1

Description

本発明は、角部を有するFRP製中空部材を、内圧成形法により一体成形する方法に関する。
繊維強化プラスチック(FRP)は、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂等の熱硬化性樹脂や、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、PPS、PEEK等の熱可塑性樹脂のマトリックス樹脂と、炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維等の強化繊維からなるものであり、軽量で且つ強度特性に優れるため、近年、航空宇宙産業から一般産業分野に至るまで、幅広い分野において利用されている。
FRPを管状ないし中空状の中空部材に成形する方法としては、遠心成形法、プルトルージョン成形法、フィラメントワインディング成形法、内圧成形法等が知られている。遠心成形法は、回転する円筒体の内面に、この円筒体内に同心的に配備されたローラから繊維を巻き付け、この繊維にマトリックス用の樹脂を噴霧して含浸させた後、硬化させる方法であり、比較的径が大きく、単純な形状の製品を製造するのに適している。プルトルージョン成形法は、樹脂を強化繊維基材に含浸させた後、金型を利用して引き抜き、樹脂を固化或いは硬化させて成形品を得る方法であり、一様の断面の真直ぐなパイプの製造に用いられる。フィラメントワインディング成形法は、樹脂を含浸した繊維をマンドレルに巻き付け、樹脂が固化或いは硬化した後にマンドレルを引き抜く方法であり、長繊維の比率を高めることができるので比較的高強度で、軸対称の中空体を製造するのに用いられる。内圧成形法は、金型キャビティ内に筒状の成形素材を配置し、これを筒の内側から圧力を与えて金型に密着させた状態にて加熱硬化させる方法であり、マトリックス樹脂が熱硬化性であっても熱可塑性であっても適用可能であり、通常の中空管状のFRP製品を成形するのに適している。
特開平6−155595号公報
内圧成形法で中空管状のFRP製品を成形するには、通常、プリプレグを用い、金型キャビティ内に中空管状に配置したプリプレグの内部に、膨張性を有するバッグやチューブ等を入れる。次いで、圧縮空気等を用いてバッグやチューブ等をふくらませ、型の内側から圧力をかけてプリプレグを型の内壁面に押しつけ、この状態でプリプレグを加熱硬化させ成形を行う加圧バッグ成形法が用いられている。しかしながら、上記のような従来の加圧バッグ成形法によって製造することができる中空管状成形品は、パイプ等の形状が簡単なものに限られ、複雑な形状をした中空管状成形品を一体成形により製造することはできない。
特開2003−334835号公報
複雑な形状をした中空管状成形品、例えば、乗用車のリヤスポイラー等のエアロパーツの様な、端部に角部を有する様な中空部材を製造する場合には、従来、金型キャビティ内の角部に、(1)プリプレグを詰める方法、(2)ウレタン等の発泡体を入れる方法、あるいは(3)発泡シートを入れる方法等が採用されているが、(1)の方法は、作業に長時間を要するし、(2)の方法は、発泡体を賦型するための金型が別に必要となるし、(3)の方法は、コストアップになる等の問題があった。
本発明の課題は、複雑な形状を有するFRP製中空部材、特に、角部を有する様な中空部材を、内圧成形法で容易に一体的に成形する方法を提供することにある。
本発明は、角部を有するFRP製中空部材の成形方法であって、成形型のキャビティ内表面にプリプレグを積層・敷設し、このプリプレグで形成される中空部分に圧力バッグを挿入し、内圧成形法により一体成形する方法において、前記積層・敷設されたプリプレグの層間で且つ成形型のキャビティ内表面の角部に対応する部分に、プリプレグで被覆された樹脂ブロックを配置して成形することを特徴とする角部を有するFRP製中空部材の成形方法である。
本発明によると、角部を有するFRP製中空部材を、短時間に且つ低コストで成形することができる。従来の方法の様に、プリプレグを何層にも重ねる必要がないので、取り扱いが容易であり作業時間も短くて済む。また、発泡体を用いる場合に必要な、賦型用の金型が必要ないし、あるいは発泡シートを用いる場合に比べて原料の単価が安価であるという特徴・効果が得られる。
本発明の角部を有するFRP製中空部材の成形方法について、具体的に図面を用いて説明する。図1は成形方法の一例を説明するための角部の図であり、1は中空部材用の成形型、2は成形型のキャビティ内表面に積層・敷設されたプリプレグ、3は更にその上に積層・敷設されたプリプレグを示している。4は樹脂ブロックであり、プリプレグ5で被覆されている。図1に示した様に、プリプレグ5で被覆された樹脂ブロック4は、積層・敷設されたプリプレグ2、3の層間で、且つ成形型1のキャビティ内表面の角部に対応する部分に配置されている。
本発明においては、次いで、プリプレグ3で形成される中空部分に圧力バッグを挿入し(図示せず)、内圧成形法により一体成形する。本発明における内圧成形法とは、成形型キャビティ内にプリプレグ等を配置し、この内側から圧力を与えて、プリプレグ等を成形型に密着させた状態にて加熱硬化させる方法を意味する。例えば、ナイロンやシリコンゴムのような、可撓性があり且つ耐熱性に優れた材料で作製した加圧用バッグを、成形型キャビティ内に配備し、バッグ内に加圧媒体を送り込んでバッグを膨張させ、プリプレグ等を成形型内面に押し付けて加熱成形する。加圧媒体としては、圧縮空気等が用いられ、加熱には、硬化炉、オートクレーブ、ホットプレス等が用いられる。あるいは、加圧用バッグに加熱媒体、例えば、加熱空気、熱水、水蒸気、ポリオキシアルキレングリコール、シリコーンオイル等の熱媒オイルを導入し、加圧と加熱を同時に行なっても良い。
内圧成形において、加熱温度は、FRP用として使用するマトリックス樹脂の種類によって異なるが、通常、50〜200℃の範囲である。加圧用バッグの加圧は、プリプレグ等が成形型に密着させられる状態になる程度であれば十分であり、成形体の形状にもよるが、通常、4〜9kg/cm程度である。
本発明はおいて角部とは、先端部が鋭角あるいは鈍角の角部のみでなく、先端部分はアール(曲率)を有するものも含む。そして、かかる角部を有する中空部材である限り、断面形状はどんなものでも構わない。また、FRPは、繊維強化材に、熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂などのマトリックス樹脂を含浸・硬化させて得られるものであるが、本発明においては、プリプレグとして用いられる繊維強化材やマトリックス樹脂に関しては特に制限はない。繊維強化材としては、一般に繊維強化樹脂複合材料における強化繊維として使用されるものであれば良い。具体的には、無機繊維、有機繊維、金属繊維、金属被覆繊維又はそれらの混合繊維が挙げられ、無機繊維としては炭素繊維、黒鉛繊維、炭化珪素繊維、アルミナ繊維、タングステンカーバイト繊維、ボロン繊維、ガラス繊維等がある。有機繊維の場合にはアラミド繊維、高密度ポリエチレン繊維、ナイロン繊維、ポリエステル繊維等の有機繊維が挙げられる。本発明においては、比強度および比弾性率が高い炭素繊維あるいは黒鉛繊維が好ましい。
熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、ビニルエステル樹脂、シアン酸エステル樹脂、ウレタンアクリレート樹脂、フェノキシ樹脂、アルキド樹脂、ウレタン樹脂、マレイミド樹脂とシアン酸エステル樹脂の予備重合樹脂から選ばれる樹脂がある。これらは1種又は2種以上の混合物として用いることもできる。熱可塑性樹脂としては、ポリプロピレン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、芳香族ポリアミド、芳香族ポリエステル、芳香族ポリカーボネート、ポリエーテルイミド、ポリアリーレンオキシド、熱可塑性ポリイミド、ポリアミドイミドがある。これらの樹脂は、2種以上併用しても良い。
プリプレグ用の繊維強化材は、通常、例えば、平織、綾織、朱子織等の経糸と緯糸から構成されるものの他、繊維束を一方向に引き揃えシート状とし、これを直角方向にステッチ糸で縫合した一軸織物、一方向に引き揃えたシート状物を角度を変えて複数積層し、これを直角方向にステッチ糸で縫合した多軸織物等の形で用いられる。その他の形態の繊維強化材からなるプリプレグであってもかまわないが、本発明においては、織物プリプレグが好ましく、中でも、平織物のプリプレグが特に好ましい。
本発明においては、前記の様な方法で、FRP製中空部材を内圧成形法により一体成形するに際して、図1に示した様に、成形型のキャビティ内表面に積層・敷設されたプリプレグの層間で且つ成形型のキャビティ内表面の角部に対応する部分に、プリプレグで被覆された樹脂ブロックを配置して成形することを特徴とするものである。
樹脂ブロックとは、前記の樹脂のバルク(塊)、棒状物、板状物、粒状物あるいは巻物状のフィルム等であり、特に形状に制限はない。本発明においては、かかる樹脂ブロックが、例えば、織物プリプレグで被覆された、即ち、包みこまれたあるいは巻かれた状態になっていれば良い。かかるプリプレグで被覆された樹脂ブロックは、図1に示した様に、積層・敷設されたプリプレグの層間で且つ成形型の角部に沿わせて配置される。かかる工夫をすることによって、加熱成形時にも、樹脂ブロックが無秩序に流れ出すことがなく、溶融した樹脂はプリプレグと一体となって、成形型に沿った角部の形状を形成し得るのである。
なお、本発明において、樹脂ブロックは、プリプレグの層間で且つ成形型のキャビティ内表面の角部に対応する部分に配置されていれば良く、それ以外に、積層・敷設されるプリプレグの枚数や配置の方向、樹脂ブロックの形や量等には特に制限はない。しかし、角部の形状を正確にできるだけ成形型に合うように成形するためには、例えば、図1の様な形態の場合、成形型のキャビティ内表面に積層・敷設されるプリプレグ2としては、1枚ないし数枚のプリプレグを配置するのが好ましい。その上に積層・敷設されたプリプレグ3については特に制限はない。また、プリプレグとしては、積層・敷設と被覆用ともに、織物プリプレグが、中でも平織物のプリプレグが取り扱いに便利であり好ましい。以下、実施例により本発明を具体的に説明する。
図1にその一部を示したV字型角部を有するFRP製中空部材を成形するため、V字型角部を有する金型(アルミ製)を用い、金型のキャビティ内面に、織物プリプレグを敷設した。プリプレグとしては、炭素繊維HTA3K(東邦テナックス社製、汎用グレードの炭素繊維、3000フィラメント)を経糸緯糸とした平織物(東邦テナックス社製、W−3101)に、市販のエポキシ樹脂を含浸させたものを用いた(樹脂含有率:40%)。このプリプレグを2枚、積層パターンが(0/90)となる様に重ねて、金型に敷設した。
前記プリプレグの上で、V字型の角部に対応する部分に、織物プリプレグで被覆された樹脂ブロックを配置した。この織物プリプレグとしても、前記の織物プリプレグと同じものを用い、このプリプレグ1枚で、前記と同じエポキシ樹脂を海苔巻き状に被覆したものを作成して用いた(樹脂:プリプレグの重量比は6:5)。そして、更にその上に、即ち、前記樹脂ブロックを層間に挟んで、前記と同じ織物プリプレグを6枚、積層パターンが(0/90)、(±45)、(0/90)となる様に重ねた。
次いで、金型を型締めした後硬化炉に入れ、内圧成形法により成形した。即ち、圧力バッグ内に圧縮空気(4kg/cm)を導入し、硬化炉の温度を130℃で2時間維持して加熱硬化せしめ、その後冷却、脱形して良好な角部の形状を有するFRP製中空部材を得た。
本発明の一つの実施態様の説明図である。
符号の説明
1 中空部材用の成形型の一部(角部)
2 成形型のキャビティ内表面に積層・敷設されたプリプレグ
3 積層・敷設されたプリプレグ
4 樹脂ブロック
5 樹脂ブロックを被覆しているプリプレグ

Claims (4)

  1. 角部を有するFRP製中空部材の成形方法であって、成形型のキャビティ内表面にプリプレグを積層・敷設し、このプリプレグで形成される中空部分に圧力バッグを挿入し、内圧成形法により一体成形する方法において、前記積層・敷設されたプリプレグの層間で且つ成形型のキャビティ内表面の角部に対応する部分に、プリプレグで被覆された樹脂ブロックを配置して成形することを特徴とする角部を有するFRP製中空部材の成形方法。
  2. 積層・敷設されたプリプレグが、織物プリプレグである請求項1記載の角部を有するFRP製中空部材の成形方法。
  3. プリプレグで被覆された樹脂ブロックが、織物プリプレグで被覆された樹脂ブロックである請求項1又は2記載の角部を有するFRP製中空部材の成形方法。
  4. 織物プリプレグが、平織物のプリプレグである請求項2又は3記載の角部を有するFRP製中空部材の成形方法。

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