JP2007151177A - スピーカー振動板 - Google Patents

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Abstract

【課題】優れたヤング率と内部損失とを有するスピーカー振動板を提供すること。
【解決手段】本発明のスピーカー振動板は、ポリエチレンナフタレート繊維の織布を含む基材に熱硬化性樹脂が含浸されてなる。好ましくは、この熱硬化性樹脂は不飽和ポリエステル樹脂である。好ましくは、ポリエチレンナフタレート繊維は、撚りがかかっていない繊維であり、少なくともその一部は第2の熱硬化性樹脂でコーティングされている。好ましくは、第2の熱硬化性樹脂は、エポキシ樹脂またはメラミン樹脂である。さらに、基材は、綿織布または液晶ポリマー不織布をさらに含む積層体であり得る。
【選択図】なし

Description

本発明は、スピーカー振動板に関する。より詳細には、本発明は、ヤング率と内部損失とのバランスに優れたスピーカー振動板に関する。
一般に、スピーカー振動板に要求される特性としては、ヤング率(弾性率、剛性)が高いこと、および、適度な内部損失(tanδ)を有することが挙げられる。ヤング率を改善する手段としては、代表的には、カーボン繊維とエポキシ樹脂との組み合わせによるFRPを用いた振動板が挙げられる。内部損失を改善する手段としては、代表的には、ポリプロピレンのような合成樹脂を用いた振動板が挙げられる。
上記のような振動板は、それぞれに問題を有している。具体的には、FRP振動板は高いヤング率を有しているが、マトリックス樹脂であるエポキシ樹脂の内部損失が小さいので、結果として、振動板全体の内部損失が小さくなる。従って、このような振動板は、共振が発生しやすく、ピークディップの多い周波数特性を有することとなり、材料固有の音の発生を防止することは困難である。合成樹脂振動板は、内部損失が大きいので良好な周波数特性を有する場合が多いが、剛性および耐熱性が不十分である。
剛性(ヤング率)と内部損失とをバランス良く改善する手段として、ポリエチレンナフタレートのフィルムを用いた振動板が提案されている(例えば、特許文献1および2参照)。
上記特許文献に記載の技術は、小口径スピーカー(いわゆるマイクロスピーカー)に限定されるものである。具体的には、上記特許文献に記載の技術によれば、マイクロスピーカー用途においては剛性と内部損失のいずれにも十分な振動板が得られるが、大口径スピーカー用途においては内部損失がきわめて不十分であり、実用に耐え得る振動板は得られない。
上記のように、いずれの用途においても優れたヤング率と内部損失とを有するスピーカー振動板が強く望まれている。
特開平1−67099号公報 特開平6−181598号公報
本発明は上記従来の課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、いずれの用途においても優れたヤング率と内部損失とを有するスピーカー振動板を提供することにある。
本発明のスピーカー振動板は、ポリエチレンナフタレート繊維の織布を含む基材に熱硬化性樹脂が含浸されてなる。
好ましい実施形態においては、上記熱硬化性樹脂は不飽和ポリエステル樹脂である。
好ましい実施形態においては、上記ポリエチレンナフタレート繊維は、撚りがかかっていない繊維である。
好ましい実施形態においては、上記ポリエチレンナフタレート繊維の少なくとも一部は、第2の熱硬化性樹脂でコーティングされている。
好ましい実施形態においては、上記第2の熱硬化性樹脂は、エポキシ樹脂またはメラミン樹脂である。
好ましい実施形態においては、上記基材は、綿織布または液晶ポリマー不織布をさらに含む。
好ましい実施形態においては、上記基材の繊維/樹脂比率は、60/40〜80/20の範囲である。
本発明によれば、ポリエチレンナフタレート織布に熱硬化性樹脂を含浸することにより、ヤング率と内部損失のいずれにも優れたスピーカー振動板が得られる。
本発明のスピーカー振動板は、基材に熱硬化性樹脂が含浸されてなる。熱硬化性樹脂は、任意の適切な熱硬化性樹脂が採用され得るが、好ましくは不飽和ポリエステル樹脂である。硬化速度が速く、硬化温度が低いので製造が容易であり、かつ、優れた内部損失を有するスピーカー振動板が得られるからである。
基材は、ポリエチレンナフタレート(PEN)繊維の織布を含む。このPEN織布の織り組織としては任意の適切な組織(例えば、平織り、綾織り、朱子織り、これらの組合せ)が採用され得るが、好ましくは平織りである。縦/横の強度が強く深絞り成形し易いからである。従って、特に大口径のコーン型振動板用途において好ましい。平織りの場合の織り密度(目付け)は、好ましくは150〜190g/m、さらに好ましくは160〜180g/mである。このような範囲の織り密度は、通常の織布の織り密度に比べて顕著に大きいので、強度の増大効果が大きいからである。さらに、成形性にも優れるからである。
好ましくは、上記織布を構成するPEN繊維は、撚りがかかっていない繊維(無撚繊維)である。無撚繊維を用いることにより、目付け当りの厚みを極端に薄くすることができるので、結果として、軽量で、かつ非常に優れた強度を有する振動板を得ることができる。例えば、通常の熱可塑性樹脂繊維は撚りがかかっており、その織布の厚みは目付けが約170g/mの場合には約1mmであるが、無撚PEN繊維の平織り織布は、同じ目付けの厚みが約0.18mmであり、5分の1未満の厚みとなる。さらに、このような織布を用いれば、含浸樹脂の量(基材の繊維/樹脂比率)を大幅に減らすことができるので、内部損失が顕著に向上する(樹脂比率の詳細については後述する)。PEN繊維の太さは、目的に応じて任意の適切な太さの繊維が採用され得るが、好ましくは800〜1200デニールである。繊維の太さが800デニール未満である場合には、目付けが低下し強度が不十分となる場合が多い。繊維の太さが1200デニールを超えると、重量が増大し、結果として音圧が低下する場合が多い。
好ましくは、上記PEN繊維の少なくとも一部は、第2の熱硬化性樹脂でコーティングされている。第2の熱硬化性樹脂は、上記の含浸される熱硬化性樹脂以外の任意の適切な熱硬化性樹脂が採用され得る。例えば、含浸される熱硬化性樹脂が不飽和ポリエステル樹脂である場合には、好ましい第2の熱硬化性樹脂はエポキシ樹脂またはメラミン樹脂である。エポキシ樹脂またはメラミン樹脂でコーティングを施すことにより、不飽和ポリエステル樹脂に対するPEN繊維表面の濡れ性が改善されるので、PEN繊維による不飽和ポリエステル樹脂の繊維強化度が非常に大きくなる。その結果、非常に優れたヤング率を有するスピーカー振動板が得られる。一方で、コーティングされたPEN繊維と不飽和ポリエステル樹脂とは、振動時に適度にずれるので、適切な内部損失は維持される。このようなコーティングは、通常の含浸操作によって行われる。コーティング量は、含浸する樹脂の量を変化させることにより調整される。適切なコーティング量の一例としては、基材100部に対して樹脂量が3〜7重量部、好ましくは5重量部前後である。
基材は、上記PEN繊維織布単独であってもよく、PEN繊維織布を含む積層体であってもよい。好ましくは、基材は積層体である。単一材料の場合に発生し易い固有音の発生を防止することが可能となり、ピークディップのない周波数特性を有するスピーカー振動板が得られるからである。基材を積層体とする場合には、PEN織布が最外層(音波を放射する側)とするのが好ましい。意匠性に優れた、光沢ある繊維模様の外観を有するスピーカー振動板が得られるからである。積層体においてPEN織布層以外の各層は、織布であっても不織布であってもよい。このような層の代表例としては、綿織布、液晶ポリマー不織布が挙げられる。液晶ポリマーの代表例としては、全芳香族ポリエステル、全芳香族ポリアミドが挙げられる。全芳香族ポリエステルは、例えば、商品名ザイダーとして新日本石油化学(株)から、および、商品名ベクトランとして(株)クラレから市販されている。全芳香族ポリアミドは、例えば、商品名ケブラーとして東レ・デュポン(株)から、および、商品名テクノーラとして帝人(株)から市販されている。織布の織り密度、織り組織、不織布の形成方法等は、目的に応じて適宜選択され得る。基材は、代表的には、PEN織布/綿織布、PEN織布/液晶ポリマー不織布のような2層構造であるが、3層以上の積層体であってもよいことはいうまでもない。
基材の繊維/樹脂比率は、好ましくは60/40〜80/20の範囲、さらに好ましくは70/30〜80/20の範囲である。繊維/樹脂比率が高い基材を用いることにより、ヤング率を低下させることなく、きわめて優れた内部損失を有するスピーカー振動板が得られるからである。ここで、繊維/樹脂比率とは、含浸前の基材の重量と含浸樹脂の重量との比のことである。上記のように、このようなきわめて高い繊維/樹脂比率は、基材を構成する繊維(PEN繊維)を無撚繊維とすることにより達成される。
以下、本発明の作用について説明する。
本発明によれば、ポリエチレンナフタレート(PEN)繊維織布を含む基材に熱硬化性樹脂を含浸してスピーカー振動板を形成することにより、非常に優れたヤング率と内部損失とを有するスピーカー振動板を得ることができる。具体的には、基材に織布を使用することにより振動時に繊維同士がずれやすくなるので、振動エネルギーが熱エネルギーに変換され内部損失が大きくなる。しかも、本発明に用いられるPEN織布は織り密度が非常に大きいので、成形後の振動板においては、バインダーとしての熱硬化性樹脂が織布を構成する繊維間に少量しか存在しない。その結果、実質的に織布層と樹脂層とを有する積層構造が形成されることになり、このような構造が内部損失のさらなる向上に寄与する。加えて、PEN織布の織り密度が非常に大きいことにより、優れたヤング率も維持される。従って、従来技術では困難であったヤング率と内部損失との両立が達成される。
好ましい実施形態においては、上記PEN繊維は撚りがかかっていない繊維(無撚繊維)である。無撚繊維を用いることにより、目付け当りの厚みを極端に薄くすることができるので、結果として、軽量で、かつ非常に優れた強度を有する振動板を得ることができる。さらに、このような織布を用いれば、含浸樹脂の量(基材の繊維/樹脂比率)を大幅に減らすことができるので、内部損失を顕著に向上させることができる。本発明においては、60/40〜80/20の繊維/樹脂比率を達成することができ、樹脂量がきわめて少ないスピーカー振動板を得ることができる。その結果、振動時のPEN繊維同士のずれにより、フィルム振動板に比べて桁違いに優れた内部損失を達成することができる。実際、本発明のスピーカー振動板は、PENフィルム振動板の内部損失(上記特許文献2では0.038)に比べて10倍を超える優れた内部損失を有する(後述の実施例1では0.45)。
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例には限定されない。なお、特に示さない限り、実施例中の部およびパーセントは重量基準である。
(実施例1)
下記の組成を有する不飽和ポリエステル溶液を調製した:
不飽和ポリエステル樹脂(日本触媒(株)製;N350L):100(部)
低収縮化剤(日本油脂(株)製;モディパーS501) : 5
パーオクタO(日本油脂(株)製) : 1.3
綿織布(綿番手:20番手、打ち込み本数:縦40本×横40本、目付け:110g/m)を15cm×15cmのサイズに切断した。この上に、15cm×15cmに切断したPEN繊維の平織り織布(帝人(株)製、糸番手:1100tex、密度:17×17(本/inch)、目付け:166g/m)を配置した。この2層積層体を基材とした。
約16cm×16cmのステンレス板の中央部分に直径約13cmの穴を開けた冶具を2つ用意し、この2つの冶具の間に上記積層体を挟み込んだ。冶具で固定した基材の中央付近に、上から(PEN織布の側から)上記不飽和ポリエステル溶液約5gを滴下した。次いで、所定の形状のマッチドダイ金型を用いて、130℃で30秒間成形し、口径12cm、厚さ0.25mmのスピーカー振動板を得た。
得られた振動板について、密度、重量、ヤング率および内部損失(tanδ)を通常の方法で測定した。得られた結果を、後述の実施例2〜3および比較例1の結果と併せて下記表1に示す。さらに、得られた振動板を用いたスピーカーの周波数特性を測定した。結果を図1に示す。また、実施例1の繊維/樹脂比率は78/22であった。
加えて、得られた振動板について、接触角測定装置(協和界面科学株式会社製、CA−Q1)を用いて接触角を測定した。後述の実施例3の結果と併せて下記表2に示す。
(実施例2)
綿織布の代わりに液晶ポリマー不織布((株)クラレ製、ベクトラン。繊維の太さ:1600デニール、目付け:60g/m)を用いたこと以外は実施例1と同様にしてスピーカー振動板を作製した。得られた振動板を実施例1と同様の評価に供した。結果を上記表1に示す。さらに、得られた振動板を用いたスピーカーの周波数特性を測定した。結果を図2に示す。
(実施例3)
PEN繊維の平織り織布100部に対してメラミン樹脂5部を含浸および乾燥させた後、綿織布と積層したこと以外は実施例1と同様にして、スピーカー振動板を作製した。得られた振動板を実施例1と同様の評価に供した。結果を上記表1に示す。さらに、得られた振動板を用いたスピーカーの周波数特性を測定した。結果を図3に示す。さらに、実施例1と同様にして接触角を測定した。結果を上記表2に示す。
(比較例1)
実施例1の綿織布を2枚重ねて積層体基材としたこと以外は実施例1と同様にしてスピーカー振動板を作製した。この振動板の繊維/樹脂比率は46/54であった。得られた振動板を実施例1と同様の評価に供した。結果を上記表1に示す。さらに、得られた振動板を用いたスピーカーの周波数特性を測定した。結果を図4に示す。加えて、この振動板の断面の顕微鏡写真からの概略断面図を、上記実施例3の振動板の概略断面図と併せて図5に示す。
表1から明らかなように、本発明のスピーカー振動板は、優れたヤング率と内部損失とを有している。特に、第2の熱硬化性樹脂(メラミン樹脂)をコーティングした実施例3の振動板は、比較例1に比べてヤング率および内部損失ともに約2倍となっている。また、表2から明らかなように、メラミン樹脂をコーティングした実施例3の振動板は、実施例1の振動板に比べて濡れ性が格段に向上していることがわかる。なお、実施例1の振動板の特性も、従来技術に比較して格段に優れていることに留意されたい。
図5から明らかなように、本発明の振動板は、実質的に、樹脂層/PEN織布層/綿織布および樹脂層の3層構造を形成している。一方、比較例の振動板は、バインダー樹脂が織布の繊維間に入り込んでいる。本発明の振動板は、積層構造に起因して優れた内部損失を有し、ならびに、PEN繊維の織り密度が非常に大きくかつ当該繊維の周囲に適切な量のバインダー樹脂が存在することに起因して優れたヤング率を有すると考えられる。
本発明の実施例による振動板を用いたスピーカーの周波数特性を示すグラフである。 本発明の別の実施例による振動板を用いたスピーカーの周波数特性を示すグラフである。 本発明のさらに別の実施例による振動板を用いたスピーカーの周波数特性を示すグラフである。 比較例の振動板を用いたスピーカーの周波数特性を示すグラフである。 本発明の実施例による振動板と比較例の振動板の内部構造の違いを説明するための概略断面図である。

Claims (1)

  1. ポリエチレンナフタレート繊維の織布を含む基材に熱硬化性樹脂が含浸されてなる、スピーカー振動板。
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