JP2007143548A - 濾胞性樹状細胞前駆体細胞の精製法とそれを用いたリンパ装置の構築 - Google Patents
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Abstract
【課題】濾胞性樹状細胞前駆体細胞及びリンパ節様構造体の提供。
【解決手段】二次リンパ組織由来細胞懸濁液から、細胞表面マーカーCD4又はCD3、CD19、CD11c、CD11b、F4/80、Gr-1及びCD8に対する抗体を用いた陰性選択による陰性細胞画分の分離と弱付着性細胞の分取とによって、該マーカーが陰性の弱付着性細胞画分を分離し、その細胞画分から細胞表面マーカーB220に対する抗体を用いた陽性選択により陽性細胞画分をさらに分離することを特徴とする、濾胞性樹状細胞前駆体細胞を分離する方法、その方法によって得られる濾胞性樹状細胞前駆体細胞、並びに該濾胞性樹状細胞前駆体細胞を非ヒト哺乳動物に皮下投与することを特徴とする、リンパ節様構造体の作製方法。
【選択図】なし
【解決手段】二次リンパ組織由来細胞懸濁液から、細胞表面マーカーCD4又はCD3、CD19、CD11c、CD11b、F4/80、Gr-1及びCD8に対する抗体を用いた陰性選択による陰性細胞画分の分離と弱付着性細胞の分取とによって、該マーカーが陰性の弱付着性細胞画分を分離し、その細胞画分から細胞表面マーカーB220に対する抗体を用いた陽性選択により陽性細胞画分をさらに分離することを特徴とする、濾胞性樹状細胞前駆体細胞を分離する方法、その方法によって得られる濾胞性樹状細胞前駆体細胞、並びに該濾胞性樹状細胞前駆体細胞を非ヒト哺乳動物に皮下投与することを特徴とする、リンパ節様構造体の作製方法。
【選択図】なし
Description
本発明は、濾胞性樹状細胞前駆体細胞の分離方法、その方法によって分離され得る濾胞性樹状細胞前駆体細胞、及び濾胞性樹状細胞前駆体細胞を用いたリンパ装置の構築方法に関する。
二次リンパ組織の重要な役割の1つは、抗原提示細胞とリンパ球を会合させて各種免疫反応を惹起することにある。リンパ節はそのような二次リンパ組織の1つであり、リンパ管の経路中に存在する器官である。また、パイエル板・節外リンパ節のように独自のリンパ管を有さないかもしくは、輸出リンパ管のみを有するリンパ組織も存在する。リンパ節は、多数のリンパ濾胞をその皮質中に有している。
リンパ濾胞(リンパ小節とも呼ばれる)は、免疫賦活能力を有する多様な抗原提示細胞(APC)及び各種白血球などのリンパ系細胞が球形又は卵円形に密集した構造体である。リンパ濾胞は、リンパ節の他にも、皮膚、パイエル板、粘膜上皮、粘膜固有層及び脾臓などの他の二次リンパ組織、重症筋無力症などの患者の胸腺、そしてリウマチ病変部位などに存在する。リンパ濾胞は、結合組織性の皮膜を持つため輪郭は概ね明瞭であり、その中心部にしばしば胚中心を有する。胚中心は、抗原刺激に反応して形成され、B細胞の増殖及び分化の場となるが、ここにはB細胞の他に、T細胞、濾胞性樹状細胞、マクロファージ、ナチュラルキラー細胞なども存在している。一般に、胚中心を持たないリンパ濾胞(抗原刺激を受けていないもの)は一次リンパ濾胞と呼ばれ、胚中心を持つリンパ濾胞(抗原刺激を受けたもの)は二次リンパ濾胞と呼ばれる。二次リンパ濾胞において、胚中心をとりまく小型のリンパ球が集合した層は、帽状域と呼ばれる。生体内では、通常、リンパ濾胞内部に毛細血管や毛細血管後細静脈が分布し、その周囲には毛細リンパ管網が発達することも知られている。
濾胞性樹状細胞(FDC)は、二次リンパ組織、及び炎症などの免疫反応に付随して形成される非リンパ組織内のリンパ濾胞中に存在しており、その胚中心(GC)に存在する非リンパ球細胞の大部分を占める。FDCは、リンパ濾胞内微小環境の維持、抗原抗体複合体(IC)の捕捉及び長期間にわたる保持、B細胞への抗原提示、特にGC反応において重要な役割を果たしている(非特許文献1)。FDCは、胚中心において、デスモソームを介した強固な細胞間結合によって安定した網目状構造(FDCネットワーク)を形成する。このFDCネットワークの構築は、FDC前駆体細胞の分化に必要な場に制限されていると考えられている(非特許文献2及び3)。
これまでの研究により、TNFやリンホトキシン(LT)などのいくつかのサイトカイン、特にB細胞由来のLt-βおよびTNF由来のシグナルが、脾臓におけるFDC(Cr-1及びFDC-M1陽性細胞)のネットワーク構築に必要であることが明らかになっている(非特許文献4及び5)。また、これらのシグナルの欠如は、B細胞における免疫グロブリンのクラススイッチ、B細胞の分化・増殖などのGCで起こる免疫反応の脆弱化をもたらすことも知られている。これらのことから、FDCとそれによって構成されるFDCネットワークは、胚中心におけるB細胞の分化、さらには免疫制御に重要な役割を果たすと考えられている。またFDCの前駆体細胞の分化が行われる場には間質細胞が存在することが必要と考えられている(非特許文献2及び3)。
FDCの働きやFDCネットワーク構築の分子メカニズムについて詳細な検討が加えられているのに対し、FDC自体の分化については未だ不明な部分が多く残されている。高純度のFDCを大量に分離することが難しいという技術的問題の存在が、そのような解析を困難にしている。また、濾胞性樹状細胞の前駆体細胞については、その存在については示唆されているものの、未だ単離同定が為されていない。現在までに、濾胞性樹状細胞の前駆体細胞について、放射耐性を有するLT反応性細胞であるとの推定や、F4/80,FDC-M1陽性の骨髄由来細胞であるとの推定が報告されている(非特許文献6)が、その真偽は未だ確認されていない。一方、このFDCの前駆体細胞の候補として、抗原輸送細胞と呼ばれる細胞の存在が知られている。抗原輸送細胞は、濾胞性樹状細胞の呈する細胞表面マーカーと類似した細胞表面マーカーを持つこと(例えば、FDC-M1陽性)、抗原抗体複合体を細胞膜上に保持してそれらをリンパ節中のリンパ濾胞に運ぶことが示唆されている(非特許文献7)。しかし抗原輸送細胞自体は単離されておらず、またそれが実際に濾胞性樹状細胞に分化するかどうかについても明らかにされていない。
Fang Y. et al., J Immunol. 1998, Jun 1; 160(11) p. 5273-9
Weyand, C.M. and J.J. "Goronzy, Ectopic germinal center formation in rheumatoid synovitis." Ann N Y Acad Sci, (2003) 987: p. 140-149
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本発明は、濾胞性樹状細胞前駆体細胞を分離すること、及び異所性リンパ装置を作製することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意研究を行った結果、リンホトキシン-α(Lt-α)遺伝子破壊マウス由来の脾臓細胞初代培養において、野生型マウスと比較して、存在しないか又は細胞数が極度に減少する細胞種があることを見出した。リンホトキシン-α(Lt-α)遺伝子破壊マウスにおいては、濾胞性樹状細胞が存在しないことがすでに知られていることから、本発明者らは、この細胞種が濾胞性樹状細胞の分化に関与するのではないかと考え、この細胞種の分離を試みたところ、濾胞性樹状細胞の前駆体細胞と思われる性質を有する細胞を得ることに成功した。さらに本発明者らは、このFOCが間質細胞との融合能を有すること、及びFOCの皮下投与により、リンパ装置として働きうるリンパ節様構造体を皮下に異所性に形成できることを見出し、本発明を完成させた。
本発明は以下を包含する。
[1] 二次リンパ組織由来細胞懸濁液から、細胞表面マーカーCD19、CD4、CD11c、Gr-1及びCD8に対する抗体を用いた陰性選択による陰性細胞画分の分離と弱付着性細胞の分取とによって、該マーカーについて陰性の弱付着性細胞画分を分離し、その細胞画分から細胞表面マーカーB220に対する抗体を用いた陽性選択により陽性細胞画分をさらに分離することを特徴とする、濾胞性樹状細胞前駆体細胞を分離する方法。
[2] 二次リンパ組織由来細胞懸濁液から、細胞表面マーカーCD19、CD3、CD11c、CD11b、F4/80、Gr-1及びCD8に対する抗体を用いた陰性選択による陰性細胞画分の分離と弱付着性細胞の分取とによって、該マーカーについて陰性の弱付着性細胞画分を分離することを特徴とする、濾胞性樹状細胞前駆体細胞を分離する方法。この方法では、分離した弱付着性細胞画分から、細胞表面マーカーB220に対する抗体を用いた陽性選択により陽性細胞画分をさらに分離することが好ましい。
これら[1]又は[2]の方法により分離される濾胞性樹状細胞前駆体細胞は、好ましくは抗原抗体複合体保持能を有するものである。この方法では、陰性細胞画分又は陽性細胞画分などの細胞画分の分離を、磁気細胞分離法を用いて行うことが好ましい。この方法で用いる二次リンパ組織としては、マウスの二次リンパ組織が好適である。限定するものではないが、この方法で用いる二次リンパ組織は、脾臓であることがより好ましい。
[1] 二次リンパ組織由来細胞懸濁液から、細胞表面マーカーCD19、CD4、CD11c、Gr-1及びCD8に対する抗体を用いた陰性選択による陰性細胞画分の分離と弱付着性細胞の分取とによって、該マーカーについて陰性の弱付着性細胞画分を分離し、その細胞画分から細胞表面マーカーB220に対する抗体を用いた陽性選択により陽性細胞画分をさらに分離することを特徴とする、濾胞性樹状細胞前駆体細胞を分離する方法。
[2] 二次リンパ組織由来細胞懸濁液から、細胞表面マーカーCD19、CD3、CD11c、CD11b、F4/80、Gr-1及びCD8に対する抗体を用いた陰性選択による陰性細胞画分の分離と弱付着性細胞の分取とによって、該マーカーについて陰性の弱付着性細胞画分を分離することを特徴とする、濾胞性樹状細胞前駆体細胞を分離する方法。この方法では、分離した弱付着性細胞画分から、細胞表面マーカーB220に対する抗体を用いた陽性選択により陽性細胞画分をさらに分離することが好ましい。
これら[1]又は[2]の方法により分離される濾胞性樹状細胞前駆体細胞は、好ましくは抗原抗体複合体保持能を有するものである。この方法では、陰性細胞画分又は陽性細胞画分などの細胞画分の分離を、磁気細胞分離法を用いて行うことが好ましい。この方法で用いる二次リンパ組織としては、マウスの二次リンパ組織が好適である。限定するものではないが、この方法で用いる二次リンパ組織は、脾臓であることがより好ましい。
[3] 上記[1]に記載の方法によって分離される、細胞表面マーカーCD19、CD4、CD11c、Gr-1及びCD8陰性でありB220陽性の細胞である濾胞性樹状細胞前駆体細胞。この細胞は、好ましくは、さらに細胞表面マーカーF4/80、Cr-1及びCD21/35が陽性である。
[4] 上記[2]に記載の方法によって分離される、細胞表面マーカーCD19、CD3、CD11c、Gr-1、CD11b、F4/80、及びCD8陰性である濾胞性樹状細胞前駆体細胞。さらに本発明は、上記[2]の方法においてさらにB220陽性選択を行うことによって分離される、細胞表面マーカーCD19、CD3、CD11c、CD11b、F4/80、Gr-1及びCD8陰性でありB220陽性の細胞である濾胞性樹状細胞前駆体細胞にも関する。これらの細胞においては、好ましくは、さらに細胞表面マーカーCr-1が陽性である。
上記[3]及び[4]の濾胞性樹状細胞前駆体細胞は、さらに抗原抗体複合体保持能を有することが好ましい。またこの濾胞性樹状細胞前駆体細胞は、間質細胞との融合能を有することが好ましい。
[4] 上記[2]に記載の方法によって分離される、細胞表面マーカーCD19、CD3、CD11c、Gr-1、CD11b、F4/80、及びCD8陰性である濾胞性樹状細胞前駆体細胞。さらに本発明は、上記[2]の方法においてさらにB220陽性選択を行うことによって分離される、細胞表面マーカーCD19、CD3、CD11c、CD11b、F4/80、Gr-1及びCD8陰性でありB220陽性の細胞である濾胞性樹状細胞前駆体細胞にも関する。これらの細胞においては、好ましくは、さらに細胞表面マーカーCr-1が陽性である。
上記[3]及び[4]の濾胞性樹状細胞前駆体細胞は、さらに抗原抗体複合体保持能を有することが好ましい。またこの濾胞性樹状細胞前駆体細胞は、間質細胞との融合能を有することが好ましい。
[5] 上記[3]又は[4]に記載の濾胞性樹状細胞前駆体細胞と間質細胞又は脳神経細胞とを共培養することを特徴とする、融合細胞の製造方法。この方法で用いる間質細胞としては、二次リンパ組織由来間質細胞が好ましい。
[6] 上記[3]又は[4]に記載の濾胞性樹状細胞前駆体細胞を非ヒト哺乳動物に投与することを特徴とする、リンパ濾胞の形成を促進する方法。この方法の1つの態様は、該細胞を非ヒト哺乳動物の静脈内に投与する方法である。この方法では、投与する非ヒト哺乳動物はマウスであることが好ましい。
[7] 上記[3]又は[4]に記載の濾胞性樹状細胞前駆体細胞を非ヒト哺乳動物に皮下投与することを特徴とする、リンパ節様構造体を作製する方法。この方法では、その濾胞性樹状細胞前駆体細胞を間質細胞とともに投与することがより好ましい。またこの方法では、非ヒト哺乳動物としてはマウスが好適である。
[6] 上記[3]又は[4]に記載の濾胞性樹状細胞前駆体細胞を非ヒト哺乳動物に投与することを特徴とする、リンパ濾胞の形成を促進する方法。この方法の1つの態様は、該細胞を非ヒト哺乳動物の静脈内に投与する方法である。この方法では、投与する非ヒト哺乳動物はマウスであることが好ましい。
[7] 上記[3]又は[4]に記載の濾胞性樹状細胞前駆体細胞を非ヒト哺乳動物に皮下投与することを特徴とする、リンパ節様構造体を作製する方法。この方法では、その濾胞性樹状細胞前駆体細胞を間質細胞とともに投与することがより好ましい。またこの方法では、非ヒト哺乳動物としてはマウスが好適である。
本発明の濾胞性樹状細胞前駆体細胞の分離方法は、濾胞性樹状細胞前駆体細胞を、高い精製度で分離することができる。この方法によれば、二次リンパ組織中にごくわずかしか含まれていない濾胞性樹状細胞前駆体細胞を効率良く取得することができる。この方法で得られる濾胞性樹状細胞前駆体細胞は、それを投与された被験体において、リンパ濾胞の形成及びリンパ濾胞を含むリンパ節様構造体の形成をもたらすことができる。また濾胞性樹状細胞前駆体細胞は、リンパ組織由来の間質細胞又は脳神経細胞との融合能を有する。本発明では、濾胞性樹状細胞前駆体細胞を投与することにより哺乳動物体内でリンパ濾胞の形成を促進したり、濾胞性樹状細胞前駆体細胞を皮下に投与することにより任意の皮下部位にリンパ節様構造体を形成させたりすることができる。
本発明では、二次リンパ組織由来細胞懸濁液から、細胞表面マーカーCD19、CD4、CD11c、Gr-1及びCD8に対する抗体を用いた陰性選択による陰性細胞画分の分離と弱付着性細胞の分取とによって、該マーカーについて陰性の弱付着性細胞画分を分離し、その細胞画分から細胞表面マーカーB220に対する抗体を用いた陽性選択により陽性細胞画分をさらに分離することにより、濾胞性樹状細胞前駆体細胞(以下、FOCとも称する)を分離することができる。
あるいは本発明では、二次リンパ組織由来細胞懸濁液から、細胞表面マーカーCD19、CD3、CD11c、CD11b、F4/80、Gr-1及びCD8に対する抗体を用いた陰性選択による陰性細胞画分の分離と弱付着性細胞の分取とによって、該マーカーについて陰性の弱付着性細胞画分を分離することにより、濾胞性樹状細胞前駆体細胞を分離することもできる。この方法では、分離した弱付着性細胞画分から、さらに、細胞表面マーカーB220に対する抗体を用いた陽性選択により陽性細胞画分を分離することが好ましい。
本明細書において二次リンパ組織由来細胞懸濁液とは、二次リンパ組織に由来する細胞集団を含む溶液を言う。二次リンパ組織としては、例えばリンパ節、脾臓、及び胃腸管・気道・皮膚等の上皮付随リンパ組織、腸管リンパ節などが挙げられる。二次リンパ組織由来細胞懸濁液は、哺乳動物からこれらの二次リンパ組織を摘出し、それを個々の細胞にほぐして、生存細胞の懸濁に適した溶液中に分散させることによって調製することができる。二次リンパ組織由来細胞懸濁液は、単一細胞懸濁液(細胞の大部分が個々に分離され、ほぼ均一に懸濁されている溶液)であることがより好ましい。生存細胞の懸濁に適した溶液としては、特に限定されないが、例えば、一般的な細胞培養培地や、フローサイトメトリーなどで使用される細胞懸濁用の緩衝液(例えば、生理的燐酸緩衝液(PBS))を用いることができる。二次リンパ組織は、任意の哺乳動物から採取することができる。二次リンパ組織を採取する哺乳動物は、ヒト又は非ヒト哺乳動物でありうるが、好ましくはげっ歯動物、より好ましくはマウスである。
二次リンパ組織由来細胞懸濁液からの、各細胞表面マーカーに対する抗体を用いた陰性選択又は陽性選択による細胞画分の分離は、通常用いられている細胞分離法を用いて行うことができる。そのような細胞分離法としては、フローサイトメトリー法(Fluorescence-activated Cell Sorting;FACS法)、磁気細胞分離法(Magnetic-activated Cell Sorting;例えばMACS(R)法)などを用いることができる。ここで「陰性選択」とは、目的の細胞表面マーカーを有しない細胞画分を取得するために、目的の細胞表面マーカーに対する抗体と結合した細胞を除去することを言う。ここで「陽性選択」とは、目的の細胞表面マーカーを有する細胞画分を取得するために、目的の細胞表面マーカーに対する抗体と結合した細胞を回収することを言う。これらの細胞分離技術の詳細は、例えば、「細胞工学別冊 新版 フローサイトメトリー自由自在」(中内啓光 監修、2004年、秀潤社)などの一般的な教科書を参照することができる。また、例えばフローサイトメトリーや磁気細胞分離システムに用いる単離キット、抗体、磁気ビーズなどが市販されている(例えば、Miltenyi Biotec GmbH社)。細胞画分の分離は、各細胞表面マーカーに対して別個の工程で行ってもよいし、単一工程で1つの反応系にて行ってもよい。また、細胞画分の分離操作は、同じ細胞表面マーカーに対して2回以上行ってもよい。
細胞表面マーカーCD19、CD4、CD3、CD11c、Gr-1及びCD8に対する抗体、及び細胞表面マーカーB220、F4/80、Cr-1及びCD21/35に対する抗体などは、BD PharMingen社(CA, USA)、第一化学薬品株式会社などから市販されているものを用いることができる。それらの抗体は、細胞表面マーカータンパク質CD19、CD4、CD11c、Gr-1、CD8、B220、F4/80、Cr-1及びCD21/35をそれぞれ抗原として用いて、通常のポリクローナル抗体又はモノクローナル抗体作製法により作製したものを用いてもよい。本発明において「抗体」は、全抗体の他、特異的抗原との反応性を保持した抗体フラグメント(例えば、Fab、F(ab')2、Fab'、Fvなどの抗体のプロテアーゼ分解フラグメント)を包含するものとする。
本発明の方法では、二次リンパ組織由来細胞懸濁液について、細胞表面マーカーCD19、CD4、CD11c、Gr-1及びCD8に対する陰性選択、又は細胞表面マーカーCD19、CD3、CD11c、CD11b、F4/80、Gr-1及びCD8に対する陰性選択を行うことにより、二次リンパ組織内に存在するT細胞、B細胞、樹状細胞、マクロファージ、顆粒球細胞等を効率良く排除して、その後の精製を妨げうる他種の細胞を大幅に除去することができる。
本発明の方法では、細胞表面マーカーCD19、CD4、CD11c、Gr-1及びCD8に対する陰性選択、又は細胞表面マーカーCD19、CD3、CD11c、CD11b、F4/80、Gr-1及びCD8に対する陰性選択による陰性細胞画分の分離と併せて、弱付着性細胞の分取を行う。弱付着性細胞画分の分取は、当該分野で使用されている一般的な方法を用いて行えばよい。例えば、細胞画分の培養を行った後、PBS等の生理的緩衝液を用いて培養容器を洗浄することなどにより非付着性細胞(浮遊細胞)を除去し、さらに、例えばPBS等の生理的緩衝液で穏やかにすすいだりピペッティングしたりすることによって培養容器から細胞を穏やかに剥がし、そしてその液を採取することにより、弱付着性細胞画分を得ることができる。この弱付着性細胞画分には、プラスチック皿やガラスプレートなどの基材に対し弱い付着性を有する細胞が選択的に含まれる。なお、弱付着性細胞とは異なる通常の付着性細胞には、主としてマクロファージ、非活性化樹状細胞、線維芽細胞などがある。これらの細胞を培養基材から解離させるためには、細胞を剥がす力が強い、EDTA(GIBCO)やEDTA-トリプシンなどのキレート剤、又はトリプシンなどのタンパク質分解酵素などの使用を必要とする。このことから、本発明に係る弱付着性細胞画分の分取においては、キレート剤やタンパク質分解酵素等で処理することなく、生理的緩衝液などの細胞維持に適した溶液を用いる穏和な条件下で、培養容器の壁に付着した細胞を剥がすことが好ましい。
細胞表面マーカーCD19、CD4、CD11c、Gr-1及びCD8に対する陰性選択、又は細胞表面マーカーCD19、CD3、CD11c、CD11b、F4/80、Gr-1及びCD8に対する陰性選択による陰性細胞画分の分離と、弱付着性細胞の分取とは、相互にどのような順番で行ってもよい。一実施形態では、細胞表面マーカーCD19、CD4、CD11c、Gr-1及びCD8、又は細胞表面マーカーCD19、CD3、CD11c、CD11b、F4/80、Gr-1及びCD8の全てに対して陰性選択を行った後に、得られた陰性細胞画分に対して弱付着性細胞の分取を行ってもよい。別の実施形態では、細胞表面マーカーCD19、CD4、CD11c、Gr-1及びCD8、又は細胞表面マーカーCD19、CD3、CD11c、CD11b、F4/80、Gr-1及びCD8のうちの一部に対して陰性選択を行った後に、得られた陰性細胞画分に対して弱付着性細胞の分取を行い、続いて残りの該マーカーに対して陰性選択を行ってもよい。また別の実施形態では、弱付着性細胞の分取を行った後で、細胞表面マーカーCD19、CD4、CD11c、Gr-1及びCD8、又は細胞表面マーカーCD19、CD3、CD11c、CD11b、F4/80、Gr-1及びCD8に対して陰性選択を行ってもよい。さらに別の実施形態では、細胞表面マーカーCD19、CD4、CD11c、Gr-1及びCD8、又は細胞表面マーカーCD19、CD3、CD11c、CD11b、F4/80、Gr-1及びCD8のうちの一部(例えば、CD11c及びGr-1)に対して陰性選択を行った後に、得られた陰性細胞画分に対して弱付着性細胞の分取を行い、続いて細胞表面マーカーCD19、CD4、CD11c、Gr-1及びCD8、又は細胞表面マーカーCD19、CD3、CD11c、CD11b、F4/80、Gr-1及びCD8に対して陰性選択を行ってもよい。本発明では、前記マーカーに対する陰性細胞画分の分離工程と弱付着性細胞の分取工程とを行う順番にかかわらず、それらの工程を併せて行うことにより、細胞表面マーカーCD19、CD4、CD11c、Gr-1及びCD8、又は細胞表面マーカーCD19、CD3、CD11c、CD11b、F4/80、Gr-1及びCD8に対して陰性の弱付着性細胞画分を分離することができる。
本発明では、上記のようにして得られる細胞表面マーカーCD19、CD4、CD11c、Gr-1及びCD8が陰性の弱付着性細胞画分から、さらに細胞表面マーカーB220に対する陽性選択を行って陽性細胞画分を得ることが好ましい。なお、このB220は、抗B220抗体での検出において反応性が大変高く、また他のマーカーとも検出結果の区別が容易であったことから、本発明の濾胞性樹状細胞前駆体細胞の分離には最適なマーカーであることが示された。
以上のようにして分離される細胞画分には、濾胞性樹状細胞前駆体細胞(FOC)が高い精製度(約85〜99%、通常は約87〜92%)で含まれている。このFOCは、CD19、CD4、CD11c、Gr-1及びCD8陰性であり、B220陽性であって、弱い付着性を有する。
このようにして分離されるFOCは、細胞表面マーカーF4/80、Cr-1、及びCD21/35についても陽性である。そこで、上記の濾胞性樹状細胞前駆体細胞の分離方法においては、F4/80、Cr-1、及びCD21/35陽性であることについても、細胞表面マーカーF4/80、Cr-1、及びCD21/35に対する抗体と反応させることによって確認することが好ましい。
また、上記のようにして得られる細胞表面マーカーCD19、CD3、CD11c、CD11b、F4/80、Gr-1及びCD8が陰性の弱付着性細胞画分は、濾胞性樹状細胞前駆体細胞を高い精製度で含む細胞画分である。この細胞画分は、分離された濾胞性樹状細胞前駆体細胞を含むサンプルとして、直接使用することもできる。しかしその弱付着性細胞画分から、さらに細胞表面マーカーB220に対する陽性選択を行って得た陽性細胞画分を、濾胞性樹状細胞前駆体細胞が分離された細胞画分として用いてもよいが、B220陰性細胞画分を用いることもできる。これらの細胞画分には、濾胞性樹状細胞前駆体細胞(FOC)がより高い精製度で含まれる。このFOCは、CD19、CD3、CD11c、CD11b、F4/80、Gr-1及びCD8陰性であり、好ましくはさらにB220陽性であって、弱い付着性を有する。この方法で分離されるFOCは、細胞表面マーカーCr-1についても陽性であり、さらにCD21/35について弱陽性である。
本発明は、上記のようにして分離される濾胞性樹状細胞前駆体細胞(FOC)にも関する。FOCは、LTβR遺伝子を発現することが好ましい。FOCは、顆粒球・マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)の刺激により、その形態を変化させることが好ましい。
上記のようにして分離されるFOCは、さらに、抗原抗体複合体保持能を有することが好ましい。抗原抗体複合体保持能とは、その細胞表面上に抗原とそれに対する抗体とによって形成された抗原抗体複合体を付着保持する能力を意味する。この能力はFDCに特徴的な性質であると言われている。この抗原抗体複合体保持能により、FOCは、抗原抗体複合体を細胞膜に付着して、生体内、特にリンパ濾胞及び濾胞中心(胚中心)へ輸送することができる。
以上のFOCの性質は、後述の実施例に記載されているようにして、確認することができる。
さらに本発明では、FOCを間質細胞と共培養することにより、FOCと間質細胞とを細胞融合させて融合細胞を製造する方法にも関する。この方法は、FOCが、間質細胞(特に二次リンパ組織由来の間質細胞)との融合能を有することが証明されたことに基づくものである。また本発明では、FOCがさらに脳神経細胞との融合能を有することに基づく、FOCを脳神経細胞と共培養することによりそれらを融合させて、融合細胞を製造する方法にも関する。このような本発明の方法では、融合相手の細胞によって、FOC及び融合相手の細胞の形態並びに特性を、多様に変化させることができる。
この方法で用いるFOCとしては、上記のFOCの分離方法に従って得られた細胞画分を用いることができる。しかし他の方法で単離したFOCを用いてもよい。
FOCと融合させる間質細胞としては、限定されるものではないが、リンパ節、脾臓、及び胃・腸管・気道・皮膚の上皮付随リンパ組織などの二次リンパ組織中の間質細胞(二次リンパ組織由来間質細胞)、骨髄間質細胞、胎児脳由来間質細胞などが挙げられる。間質細胞は、ヒト又は非ヒト哺乳動物から採取したものを用いることができる。さらに本発明においては、間質細胞由来の培養細胞株、例えばOP9株やTEL2株も好適に用いることができる。従って本発明では、これらの培養細胞も便宜的に間質細胞の範囲に含めるものとする。好ましくは、げっ歯動物由来のものであり、より好ましくはマウス由来のものである。また間質細胞は、限定するものではないが、FOCが由来する生物と同じ種の生物に由来することが好ましく、FOCが由来する生物個体と同一の個体又は同一の遺伝子型を有する別個体に由来することがさらに好ましい。間質細胞は、例えば後述の実施例に記載のようにして、単一細胞懸濁液として調製したものを用いることが好ましい。
FOCと融合させる脳神経細胞としては、限定されるものではないが、例えば、海馬、黒質、中隔、皮質、小脳、歯状回、胚線状体などに由来する神経細胞(ニューロン)が挙げられる。これらの脳神経細胞は、生体から採取したものであってもよいし、培養細胞であってもよい。脳神経細胞は、ヒト又は非ヒト哺乳動物から採取したものを用いることができるが、好ましくはげっ歯動物由来のものであり、より好ましくはマウス由来のものである。脳神経細胞は、限定するものではないが、FOCが由来する生物と同じ種の生物に由来することが好ましく、FOCが由来する生物個体と同一の個体又は同一の遺伝子型を有する別個体に由来することがさらに好ましい。脳神経細胞は、例えば後述の実施例に記載の方法、又はこれに類似する方法(詳細は、Cultureing Nerve Cells, 第2版, Gary Banker and Kimberly Goslin編, The MIT Press Massachusetts Institute of Technology Cambridge, Massachusetts 02142を参照)に従って、例えば単一細胞懸濁液として、調製すればよい。
共培養によりFOCと間質細胞又は脳神経細胞との融合細胞が生成されたことは、例えば走査電子顕微鏡での観察によって、確認することができる。FOCと間質細胞又は脳神経細胞が融合することにより、FOCの細胞膜は、融合する間質細胞又は脳神経細胞上に拡散し、さらに、間質細胞又は脳神経細胞の細胞骨格及び細胞表面マーカーの発現にFOCの特徴が組み込まれる。例えば、FOCと脾臓間質細胞とを共培養して得られる細胞は、FOCと比較して、拡張した細胞質を有し顕著な樹状突起構造を有しうる。またそれらの融合細胞は、2つの核を含有することがある。このようなFOCと間質細胞又は脳神経細胞との融合は、様々な形態の融合細胞を生じうる。
このようなFOCの融合能を利用した融合細胞の製造方法は、例えば、ある抗原を保持する間質細胞又は脳神経細胞をFOCと融合させることにより、その抗原を提示した抗原提示細胞を生成させるために用いることができる。またFOCは融合の際に融合相手の細胞表面に自分の細胞膜を分散させて長期にわたり保持されるようにする性質も有する。そこでこの性質を利用して、例えば、被験体の免疫反応を増強させることもできる。具体的には、抗原抗体複合体を保持するFOCをマウスの尾静脈から投与して、脾臓などの二次リンパ組織に移行させると、そのFOCの一部は二次リンパ組織で分化してFDC様の形態を有するようになり、また一部は間質細胞と融合してFOC由来の細胞膜分画をその間質細胞の細胞膜上に分散させるようになる。この結果、FOCが保持していた抗原抗体複合体は、分散した細胞膜分画とともに、長期にわたって間質細胞に保持される(図12参照。図12中、投与60日後の脾臓組織における分散したFOC由来の細胞膜分画が赤い粒状で示されている)。その後その抗原(例えばハプテンと混合したものなど)を用いて追加免疫することにより、より強い免疫反応を惹起させ、より高力価の抗体を短期間で産生させることができる。
本発明はまた、FOCを哺乳動物に投与することを特徴とする、リンパ濾胞の形成を促進する方法にも関する。
FOCとしては、上記のFOCの分離方法に従って得られた細胞画分を用いることができる。しかし他の方法で単離したFOCを用いてもよい。
この方法では、細胞を投与する哺乳動物は、非ヒト哺乳動物であることが好ましく、げっ歯動物であることがより好ましく、マウスであることがさらに好ましい。実験モデルとして使用する上では、投与する哺乳動物は、げっ歯動物(マウス、ラット、ハムスター、モルモットなど)であることが有利であり、特にマウスの使用が好適である。
この方法の好ましい態様では、FOCは、静脈内投与、腹腔内投与、皮内投与、皮下投与、鼻内投与、経肺投与、経口投与などの任意の投与経路で哺乳動物に投与すればよい。静脈内投与などの血流中への投与はより好ましく、特に静脈内投与が好ましい。FOCの投与量は、特に限定されないが、マウスであれば通常は1×105細胞〜1×107細胞を投与すればよい。FOCの投与は、リンパ濾胞及びGCの数を増加させる。FOCを例えば静脈内に投与すると、FOCは血流に乗って脾臓などの二次リンパ組織に到達し、二次リンパ組織(好ましくは特に脾臓)でのリンパ濾胞(濾胞)及び胚中心(GC)の形成に寄与すると考えられる。GCにおいては、FDC(Cr-1陽性)からなる網目状構造が形成されるが、この網目状構造は、Cr-1クラスターと呼ばれている(FDCネットワーク又はFDCクラスターに相当)。リンパ管もしくは血管からリンパ節に流れ込んできたB細胞は、リンパ濾胞中に集積し、そこでFOCから分化したFDC細胞によって捕捉されると、増殖及び抗体産生細胞への分化を開始する。従って、FOCの投与によるリンパ濾胞の形成促進は、宿主生物の免疫機能を向上させると考えられる。
本発明はまた、FOCを哺乳動物に皮下投与することを特徴とする、皮下で異所的にリンパ節様構造体を作製する方法にも関する。
FOCとしては、上記のFOCの分離方法に従って得られた細胞画分を用いることができる。しかし他の方法で単離したFOCを用いてもよい。
この方法では、FOCとともに、間質細胞、好ましくは二次リンパ組織由来間質細胞を投与することがより好ましい。FOCとともに投与する二次リンパ組織由来間質細胞としては、限定されるものではないが、リンパ節、脾臓、及び胃腸管・気道・皮膚の上皮付随リンパ組織などの二次リンパ組織中の間質細胞を用いることができる。二次リンパ組織由来間質細胞以外の間質細胞としては、限定されるものではないが、例えば、胎児脳由来間質細胞や間質細胞由来培養細胞株が挙げられる。二次リンパ組織由来間質細胞としては、特に脾臓由来間質細胞が好ましい。この二次リンパ組織由来間質細胞は、ヒト又は非ヒト哺乳動物から二次リンパ組織を採取し、それを例えばほぐしてから培地中に懸濁することにより、細胞懸濁液として調製したものを用いることができる。好ましくは二次リンパ組織は、げっ歯動物由来のものであり、より好ましくはマウス由来のものである。また二次リンパ組織は、限定するものではないが、FOCが由来する生物と同じ種の生物に由来することが好ましく、FOCが由来する生物個体と同一の個体又は同一の遺伝子型を有する別個体に由来することがさらに好ましい。間質細胞(例えば、二次リンパ組織由来間質細胞、胎児脳由来間質細胞、又は間質細胞由来培養細胞株)は、例えば後述の実施例に記載のようにして、単一細胞懸濁液として調製したものを用いることがより好ましい。FOCと間質細胞(例えば、二次リンパ組織由来間質細胞、胎児脳由来間質細胞、又は間質細胞由来培養細胞株)とは、それらの混合物として投与してもよいし、連続的に投与してもよい。
FOCの投与量は、特に限定されないが、マウスであれば通常は1×104細胞〜1×106細胞を投与すればよい。共投与する場合のFOCと間質細胞とは任意の用量比で用いればよいが、一般的には1000:1〜1:1000、より好ましくは500:1〜1:500、さらに好ましくは300:1〜1:300、特に1:1の細胞数比(FOC数:間質細胞数)で用いることが好ましい。FOCと間質細胞は、例えばマウスの場合、両細胞の合計で1×105細胞〜1×108細胞を投与すればよい。
皮下投与する部位は、特に限定されないが、マウスの場合であれば背中が好ましい。皮下投与は、当業者が通常用いる皮下注射法などによって行えばよい。
この方法では、細胞を投与する哺乳動物は、非ヒト哺乳動物であることが好ましい。例えば、実験モデルとして使用する上では、投与する哺乳動物は、げっ歯動物であることが有利であり、特にマウス又はラットの使用が好適である。
FOCを皮下投与すると、その皮下投与部位又はその近傍に、リンパ節様構造体が形成される。このリンパ節様構造体中には、リンパ濾胞(濾胞)が集合しその間質にT細胞が集積しており、さらに血管の浸潤も認められる。また、そのリンパ濾胞内にはCr-1の網様状構造(Cr-1クラスター)の形成が確認される。皮下に投与されたFOCは、共存する間質細胞とともにリンパ節様構造体の形成に寄与するが、その間質細胞は、皮膚に元々存在する間質細胞である場合もあるし、又はFOCとともに投与した間質細胞(例えば、二次リンパ組織由来間質細胞、胎児脳由来間質細胞、又は間質細胞由来培養細胞株)である場合もある。FOCとともに間質細胞を(例えば混合物として)皮下に投与することは、リンパ節様構造体の形成をより促進する上で特に好ましい。
この方法によって皮下に作製されたリンパ節様構造体は、哺乳動物が生来有するリンパ節とよく似た構造を有しており、リンパ節と同様にリンパ球の分化を促進する機能を果たすことができる。この方法によって形成されたリンパ節様構造体は、皮下にあるため外部からの処置を容易に行えることから、リンパ節の機能に関する試験を行う上で非常に便利なモデル系、すなわちリンパ装置として、利用できる。すなわちこの方法によってリンパ節様構造体を皮下に形成させた哺乳動物(例えばマウス)は、処置が容易な皮下リンパ節を有する実験動物として、有利に使用することができる。また、この方法によって作製されたリンパ節様構造体を皮下から切り取って他の個体に移植することにより、移植を受けた個体の免疫機能を向上させることも可能である。
以下に実施例を挙げて本発明をさらに説明するが、本発明の技術的範囲はこの実施例に限定されるものではない。
材料
マウスは、いずれも、クレア社から4週齢で購入し、理化学研究所にて特異的抗原除去環境下で飼育した後、6〜8週齢で各実験に使用した。
材料
マウスは、いずれも、クレア社から4週齢で購入し、理化学研究所にて特異的抗原除去環境下で飼育した後、6〜8週齢で各実験に使用した。
フローサイトメトリー、免疫染色、及び細胞の単離に使用した抗体(Ab)は、以下の製品であった。
BD PharMingen(CA, USA)社から購入:
フルオレセインイソチオシアネート(FITC)結合抗I-Abモノクローナル抗体(mAb)、フィコエリスリン(PE)結合抗I-AbmAb、FITC結合抗CD14 mAb、FITC結合抗CD80 mAb、FITC結合抗CD86 mAb、PE結合CD62L mAb、FITC結合抗CD11b mAb、PE結合抗B220 mAb、FITC結合抗Gr-1 mAb、PE結合抗NK1.1 mAb、ビオチン結合抗CD11c mAb、PE結合抗CD21/CD35 mAb、ビオチン結合抗CD19 mAb、ビオチン結合抗CD4 mAb、ビオチン結合抗CD8 mAb、ビオチン結合抗CD11c mAb、ビオチン結合抗Gr-1 mAb、ビオチン結合抗B220 mAb、ビオチン結合抗CD35 mAb(Cr-1、8C7)、抗m FDC-M1 mAb;
e-Bioscience(www.ebiosceince.com, USA)から購入:
FITC結合抗F4/80 mAb、及び精製抗CD16/32 mAb;
DakoCytomation(Carpinteria, CA)から購入:
ビオチン結合抗ラットIgG及びストレプトアビジン結合HRP;
Serotec(www.serotec.com)から購入した抗MARCO Ab;
Sigmaから購入したマウス抗ペルオキシダーゼモノクローナル抗体;
Jackson ImmunoResearch(PA, USA)から購入した、ストレプトアビジン結合Cy5及びビオチン結合ヤギ抗HRPポリクローナル抗体;
Invitrogen(Carlsbad, CA, USA)から購入したストレプトアビジン結合Alexa Fluor 488ファロイジン、及びAlexa Fluor 488結合ファロイジン。
フルオレセインイソチオシアネート(FITC)結合抗I-Abモノクローナル抗体(mAb)、フィコエリスリン(PE)結合抗I-AbmAb、FITC結合抗CD14 mAb、FITC結合抗CD80 mAb、FITC結合抗CD86 mAb、PE結合CD62L mAb、FITC結合抗CD11b mAb、PE結合抗B220 mAb、FITC結合抗Gr-1 mAb、PE結合抗NK1.1 mAb、ビオチン結合抗CD11c mAb、PE結合抗CD21/CD35 mAb、ビオチン結合抗CD19 mAb、ビオチン結合抗CD4 mAb、ビオチン結合抗CD8 mAb、ビオチン結合抗CD11c mAb、ビオチン結合抗Gr-1 mAb、ビオチン結合抗B220 mAb、ビオチン結合抗CD35 mAb(Cr-1、8C7)、抗m FDC-M1 mAb;
e-Bioscience(www.ebiosceince.com, USA)から購入:
FITC結合抗F4/80 mAb、及び精製抗CD16/32 mAb;
DakoCytomation(Carpinteria, CA)から購入:
ビオチン結合抗ラットIgG及びストレプトアビジン結合HRP;
Serotec(www.serotec.com)から購入した抗MARCO Ab;
Sigmaから購入したマウス抗ペルオキシダーゼモノクローナル抗体;
Jackson ImmunoResearch(PA, USA)から購入した、ストレプトアビジン結合Cy5及びビオチン結合ヤギ抗HRPポリクローナル抗体;
Invitrogen(Carlsbad, CA, USA)から購入したストレプトアビジン結合Alexa Fluor 488ファロイジン、及びAlexa Fluor 488結合ファロイジン。
[実施例1] FOCの調製
リンホトキシン-α(Lt-α)遺伝子破壊マウス由来又はTNF-α遺伝子破壊マウス由来の脾臓細胞初代培養において、野生型マウスと比較して、存在しないか又は細胞数が極度に減少する細胞種があることが見出された。リンホトキシン-α(Lt-α)遺伝子破壊マウスにおいては、濾胞性樹状細胞が存在しないことがすでに知られていることから、本発明者らは、この新たに見出された細胞種が濾胞性樹状細胞の分化に関与するのではないかと考え、この細胞種の単離を試みた。
リンホトキシン-α(Lt-α)遺伝子破壊マウス由来又はTNF-α遺伝子破壊マウス由来の脾臓細胞初代培養において、野生型マウスと比較して、存在しないか又は細胞数が極度に減少する細胞種があることが見出された。リンホトキシン-α(Lt-α)遺伝子破壊マウスにおいては、濾胞性樹状細胞が存在しないことがすでに知られていることから、本発明者らは、この新たに見出された細胞種が濾胞性樹状細胞の分化に関与するのではないかと考え、この細胞種の単離を試みた。
まず6〜8週齢のマウスを頚椎脱臼により殺し、脾臓を採取した。そのマウス脾臓から、リン酸緩衝液(PBS)により、シリンジを用いて可能な限りリンパ球を流し出し、その流出液及び脾臓をナイロンメッシュ(100μm、BD PharMingen)上で軽くすりつぶすことにより、単一細胞懸濁液を調製した。次いで赤血球を除去するため、その懸濁液をアンモニウムクロライド赤血球破砕溶液(ACK Buffer、Biosource International, CA, USA)を用いて処理し、その後ナイロンメッシュに通して破砕細胞膜を除去した。
さらに、CD11c陽性樹状細胞やマクロファージなどの混入を減らすため、得られた脾細胞懸濁液をMACSシステム(Miltenyi Biotech, CA, USA)に供してCD11c・Gr-1陰性画分(CD11cとGr-1の両方が陰性の細胞画分)を採取し、CD11c・Gr-1陽性細胞を除去した。得られたCD11c・Gr-1陰性脾細胞画分の純度は、FACSを用いて測定したところ、96%であった。
このCD11c・Gr-1陰性脾細胞画分を、50 U/ml ペニシリン、50 mg/ml ストレプトマイシン、0.15 mM アルギニン、0.27 mM アスパラギン、及び10% FBS(Hyclone, UT, USA)を添加したDMEM培地(Invitrogen, CA, USA)に再懸濁し、細胞密度が1.0 x 106 細胞/cm2となるように培養用フラスコに播いた。37℃で72時間にわたり培養した後、フラスコをPBSで洗浄して非付着(接着)性細胞(T細胞、B細胞、好中球、非付着性の未分化細胞など)を除去し、さらに、PBSでの緩やかなピペッティングにより、弱く付着している細胞群を分取した。
このようにして得られた弱い付着性を有する球状細胞群に、次に、ビオチン標識された抗CD19、抗CD4、抗CD11c、抗Gr-1、抗CD8モノクローナル抗体(BD PharMingen)を添加して反応させた後、ストレプトアビジンMACSビーズを用いた陰性選択を行って、CD19、CD4、CD11c、Gr-1及びCD8に陰性の細胞群を分取した。
ここで得られた細胞群についてFACSを用いて表面マーカー検索を行った結果、B220,F4/80陽性細胞が微量に混在していることが示された(図1の左)。そこで、この細胞群に、ビオチン標識抗B220モノクローナル抗体(BD PharMingen)を添加して反応させた後、ストレプトアビジンMACSビーズを用いて、B220陽性細胞画分を分取した。このB220陽性細胞画分に含まれていた細胞について、さらに細胞表面マーカーを調べたところ、CD21/35を弱く発現しており、F4/80及びCr-1についても陽性であることが示された(図1の右)。この得られた細胞の純度は、上記B220陽性細胞画分中、約90%であり、高度に分離濃縮(精製)されていた。すなわち上述の細胞分離プロセスにより、この細胞をほぼ単離することができることが示された。
また、この細胞から抽出したmRNAを鋳型として、常法によりRT法でcDNAを合成し、LTβR遺伝子断片のPCR解析を行ったところ、このB220陽性細胞においてはLTβR遺伝子が発現していることが明らかとなった(図2)。
まとめると、上記のようにして得られた細胞の細胞表面マーカーは、CD19、CD4、CD11c、Gr-1及びCD8が陰性であり、B220、F4/80、及びCr-1が陽性であり、CD21/35が弱陽性であった。この細胞は、弱付着性も示した。さらにこの細胞は、LTβR遺伝子を発現するという特性を有していた。
得られたこの細胞の特徴は、濾胞性樹状細胞の前駆体細胞がリンホトキシン反応性であるとの報告やF4/80-FDC-M1陽性骨髄由来細胞であるとの報告と一致した。このことから、得られた細胞は、濾胞性樹状細胞の前駆体細胞であると考えられた。
以上のようにして得られた、濾胞性樹状細胞の前駆体細胞と考えられる細胞を、以下ではFOCと呼ぶこととした。
[実施例2] FOCへのGM-CSFの投与
脾臓の明調域(Light zone)に存在する濾胞性樹状細胞が、顆粒球・マクロファージコロニー刺激因子受容体(GM-CSFR)を発現することが報告されている。さらに、濾胞性樹状細胞の培養において、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)が濾胞性樹状細胞の長期培養に寄与することが報告されている。
脾臓の明調域(Light zone)に存在する濾胞性樹状細胞が、顆粒球・マクロファージコロニー刺激因子受容体(GM-CSFR)を発現することが報告されている。さらに、濾胞性樹状細胞の培養において、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)が濾胞性樹状細胞の長期培養に寄与することが報告されている。
そこで、実施例1で得られたFOCへのGM-CSF又は単球マクロファージコロニー刺激因子(M-CSF)の作用について調べた。まずFOC(1 x 106細胞/6ウェルプレート)に対し、10 ng/mlとなるようにGM-CSF又はM-CSFを添加し、37℃のCO2インキュベーター内で培養した。培養開始から0日目、3日目、5日目、8日目に細胞を採取し、トリパンブルーにて染色の後、細胞数を顕微鏡下でカウントした。さらに、同様の時点で採取したFOCに対し、MTT試薬を添加し、FOCのミトコンドリア活性の測定を行った。
その結果、FOCは、GM-CSF、M-CSFの刺激により、その形態が球形から斜方状に変化した(図3)。変化した形態は、その後も培養期間にわたって維持された。
FOCのミトコンドリア活性は、GM-CSM又はM-CSFの添加によって増加したため、FOCがGM-CSMやM-CSFによる刺激に反応性であることが示された(図4A)。しかし、GM-CSF又はM-CSFによって刺激したFOCの10日間の培養期間中、FOCの1 mL当たりの細胞数増加やコロニー形成数に増加は認められなかった(図4B)。
以上の結果から、サイトカインGM-CSF又はM-CSFの刺激は、FOCの形態変化を引き起こし、またミトコンドリア活性を増加させるが、8日目まで細胞増殖を促進しないことが示された。この特徴は、FOCが一般的な樹状細胞やマクロファージとは異なる性質を持つ細胞であることを示している。このことから、FOCが、GM-CSF/M-CSF反応性の骨髄由来細胞であることが示唆された。
[実施例3] FOCの胚中心への移行
濾胞性樹状細胞の前駆体細胞の候補として、抗原輸送細胞と呼ばれる細胞の存在が知られている。抗原輸送細胞は、濾胞性樹状細胞の呈する細胞表面マーカーと類似した細胞表面マーカーを持つこと(例えば、FDC-M1陽性)、抗原抗体複合体を細胞膜上に保持してそれらを濾胞境界(Marginal zone;MZ)にまで運ぶが、リンパ濾胞内にまで移行しないことが示唆されている。もし、FOCがリンパ濾胞内まで移行するのであれば、FOCは、MZに位置するB細胞(MZB細胞)を介さない、濾胞性樹状細胞ネットワークへの抗原の新しい運搬機構に寄与する新たな因子であると考えられる。
濾胞性樹状細胞の前駆体細胞の候補として、抗原輸送細胞と呼ばれる細胞の存在が知られている。抗原輸送細胞は、濾胞性樹状細胞の呈する細胞表面マーカーと類似した細胞表面マーカーを持つこと(例えば、FDC-M1陽性)、抗原抗体複合体を細胞膜上に保持してそれらを濾胞境界(Marginal zone;MZ)にまで運ぶが、リンパ濾胞内にまで移行しないことが示唆されている。もし、FOCがリンパ濾胞内まで移行するのであれば、FOCは、MZに位置するB細胞(MZB細胞)を介さない、濾胞性樹状細胞ネットワークへの抗原の新しい運搬機構に寄与する新たな因子であると考えられる。
そこで本実施例では、FOCがいわゆる抗原輸送細胞であるか、それとも新規な濾胞性樹状細胞ネットワーク構成細胞であるかを調べるため、FOCをマウスに投与してその生体内分布の変化を観察した。
FOCを蛍光色素PKH26(Sigma)を用いて染色し、リンゲル液(Otsuka, Tokyo, Japan)中に再懸濁した。この細胞懸濁液における細胞生存率は、トリパンブルー(Sigma)染色で確認したところ、約95%であった。調製した細胞懸濁液250μl(5×105細胞)を、マウスの尾静脈に投与した。
FOCを投与してから20時間後、40時間後、8日後、20日後、30日後、60日後にマウスの二次リンパ組織である脾臓組織、腸管リンパ節、パイエル板、及び鼠径部リンパ節を摘出し、それをO.T.C.コンパウンド(Sakura, Tokyo, Japan)中に包埋した。包埋した組織サンプルから、5μm厚の凍結切片を作製し、それを室温で15分間乾燥した後、3%緩衝ホルマリン又はアセトンにて固定した。さらに、内因性ペルオキシダーゼによる非特異的反応を抑制するために、0.3% H2O2/メタノール中に入れて室温で10分間置いた。抗体を抗体希釈液で希釈した後、組織切片に滴下し、4℃で16時間反応させた。抗体としては、組織中のB細胞を染色する抗B220抗体、そしてCr-1陽性細胞(Cr-1クラスター)を染色する抗Cr-1抗体を使用し、反応後にいずれもストレプトアビジン標識Alexa-Fluor488(緑色蛍光色素)で可視化した。シグナルをオリンパス製蛍光顕微鏡、ライカ製共焦点顕微鏡、及びデルタビジョン共焦点顕微鏡を用いて観察し写真撮影を行った。一方、予め赤色蛍光色素PKH26で染色されているFOCは、その赤色シグナルによって可視化した。
その結果、PKH26で染色したFOCは、投与の20時間後には二次リンパ組織に広く分布していた。またFOCは、投与の40時間後には、B220陽性細胞及びCr-1陽性細胞と共局在するようになった。さらにFOCは、投与の8日後、濾胞境界に位置するB細胞(MZB細胞)及び濾胞内のCr-1陽性細胞とも共局在したことから、リンパ濾胞内明視部(basal light zone)及び濾胞境界(MZ)にも局在することが観察された。
図5に撮影した写真の一例を示す。図中、上段の各写真において緑色に広がるシグナルはB220陽性細胞(主にB細胞)の存在を示し、下段の各写真において緑色に広がるシグナルはCr-1陽性細胞(Cr-1クラスター)の存在を示し、赤色に点在するシグナルはFOCの存在を示す。赤色のシグナル(矢印)が、時間の経過とともに、濾胞の内側に移行していく様子がはっきりと示されている。黄色の矢印(大きな矢印)は濾胞内に共局在したFOC、白の矢印(小さな矢印)は濾胞境界(MZ)に共局在したFOCを示す。
さらに、上記観察では、FOCの投与後、脾臓組織におけるCr-1クラスターの数が経時的に増加することが示された。投与の8日後には、Cr-1クラスターの数は対照群(B220陰性F4/80陽性細胞投与群)と比較して有意に増加していた(図6及び図7;図6中の色の濃いスポットがCr-1クラスター)。このことは、上記のFOC投与によって、胚中心の数が増加したことを示している。またリンパ濾胞自体の数も増加していた。
以上の結果から、静脈内投与されたFOCは、リンパ濾胞の形成及びCr-1クラスターの形成に寄与することが示された。また、FOCのリンパ濾胞内への移行は、抗原輸送細胞には見られない挙動であることから、FOCは既に報告されている抗原輸送細胞とは異なる新たな細胞種であると考えられた。すなわちFOCが、独自の機構で濾胞性樹状細胞ネットワーク形成に関与することが示唆された。
[実施例4] FOCと間質細胞との共培養
抗原輸送細胞は濾胞性樹状細胞の前駆体細胞の候補とされてきたが、抗原輸送細胞がCr-1クラスターを形成する機構については明らかにされていない。一方で、濾胞性樹状細胞ネットワーク(Cr-1クラスター)の形成は、濾胞状樹状細胞の前駆体細胞の分化が行われる場の環境(間質細胞の活性など)に依存することが知られている。そこで、FOCが濾胞状樹状細胞の前駆体細胞であるかどうかをさらに検証するため、FOCと脾臓由来Cr-1陰性間質細胞とを共培養した後のFOCの形態変化を観察し、FOCの濾胞性樹状細胞ネットワーク形成への寄与について調べた。
抗原輸送細胞は濾胞性樹状細胞の前駆体細胞の候補とされてきたが、抗原輸送細胞がCr-1クラスターを形成する機構については明らかにされていない。一方で、濾胞性樹状細胞ネットワーク(Cr-1クラスター)の形成は、濾胞状樹状細胞の前駆体細胞の分化が行われる場の環境(間質細胞の活性など)に依存することが知られている。そこで、FOCが濾胞状樹状細胞の前駆体細胞であるかどうかをさらに検証するため、FOCと脾臓由来Cr-1陰性間質細胞とを共培養した後のFOCの形態変化を観察し、FOCの濾胞性樹状細胞ネットワーク形成への寄与について調べた。
まず、脾臓由来Cr-1陰性間質細胞の分取を行った。6〜8週齢のマウスを頚椎脱臼にて犠殺し、摘出した脾臓から、3%FCS及び0.5mg/mlコラゲナーゼ(Worthington Biochemical)を含有するRPMI1640により、シリンジを用いて、可能な限りのリンパ球を流し出した。リンパ球を流出させた後のマウス脾臓を細かく裁断し、3%FCS及び0.5mg/mlコラゲナーゼ(Worthington Biochemical)を含有するRPMI1640中に懸濁した後、緩やかに攪拌しながら37℃で45分間インキュベートした。この溶液をナイロンメッシュ(100μm、BD PharMingen)に通して残留物を除去した後、アンモニウムクロライド赤血球破砕溶液(ACK Buffer、Biosource International, CA, USA)を用いて処理することにより赤血球を除去して、単一脾臓細胞懸濁液を調製した。この懸濁液に、モノクローナル抗体(抗CD3抗体、抗CD19抗体、抗B220抗体、抗CD11c抗体、抗CD11b抗体、抗CD45抗体、及び抗Cr-1抗体(BD PharMingen)を添加して反応させた後、MACS(Magnetic Cell Sorting and Separation of Biomolecules)システムを用いて、これらの抗体と結合した細胞を除去した。得られた細胞画分を、100 U/mlペニシリン、100g/mlストレプトマイシン、2mM L-グルタミン、及び非必須アミノ酸(全てGibco社製)、並びに10%FCS(Hyclone)を添加したダルベッコ改変イーグル培地(DMEM培地)中に再懸濁した後、培養用フラスコに1.0 x 106細胞/cm2となるように播いた。それを37℃で4時間培養してから、フラスコ中の非付着細胞をRPMI 1640培地を用いた洗浄により除去し、その後さらに培養を継続した。培養後、PBSでの緩やかなピペッティングにより、付着細胞を分取した。こうして得られた付着細胞を、続く実験で用いるCr-1陰性間質細胞とした。この細胞は、前記培養(脾臓初代培養)から4日以内に使用した。
次に、実施例1に従って得られたFOCに、Cr-1陰性間質細胞を加え、5%FCSを含むDMEM培地中37℃で5日間にわたり共培養した。
共培養した細胞に2.5%グルタルアルデヒドを加えて4℃で16時間インキュベートして固定した後、エタノールに置換して減圧脱水を行った。得られたサンプルに15 nmのプラチナ皮膜を施し、Keyence VE-7800 Real Surface View走査電子顕微鏡(Keyence, Osaka, Japan)を用いて、加速電圧15〜20 kVで観察を行った(走査電子顕微鏡観察;SEM)。またサンプルは共焦点顕微鏡でも観察した。
培養から5日後、対照サンプルとして単独培養したFOCは、図3のGM-CSF刺激前と同様の球状で弱付着性の形態を呈した。一方、間質細胞と共培養したFOCは、それとは著しく異なる形態を呈した。共培養したFOCの一例では、単独培養したものと比較して、細胞膜が拡張しており、樹状構造の形成がより顕著になっていた。興味深いことに、FOCの一部は、互いに又は間質細胞と融合して、2核の状態を呈した。走査電子顕微鏡下で撮影した写真の一例を図8に示す。
図8中、最上段の写真(a)は、FOC細胞と脾臓間質細胞とが融合しようとしている像を示している。最上段の右の写真は、左の写真の拡大像である(撮影倍率は左が1500倍、右が3000倍)。これらの写真には、形態学的に異なる2種の細胞の姿が示されている。1つは平板状に見える間質細胞であり、もう1つがFOC細胞である。共培養によりFOCが間接細胞と隣接しているこれらの写真からは、間質細胞の細胞膜の下にFOC由来の細胞膜が貫入していることが示され、すなわちFOCが間質細胞の細胞膜と同化しようとしている像が見て取れる。さらに、二段目の写真(b)は、FOC細胞同士が融合している像を示す。撮影倍率は左が1500倍、真ん中が3000倍、右が5000倍である。共培養条件下でFOC同士が隣接した場合、FOCはお互いに融合し、そして明らかに2核を示し細胞表面ならびに辺縁に樹状突起を伸ばした形態を取った。この樹状突起の先端は種状の形態を有していた。この種状の形態は、FDCに特徴的と考えられてきたものである。三段目の写真(c)は、融合していないFOC細胞の像を示している。共培養下でFOCが単独で存在した場合、FOCの樹状突起は顕著に伸長した。しかしそれに比してFOCの細胞膜の拡張は見られなかった。また、樹状突起の先端の種状の形態は、やはりFDCの特徴的形態と類似していた。そして最下段の写真(d)は、共培養せずに、単独培養した場合のFOCの像を示す。このFOCは球状で、細胞の下の部分が培養容器面と接着しているのが認められた。
共焦点顕微鏡で観察した蛍光画像でも、FOCが間質細胞と融合して、2核の状態を呈することが示された。濾胞性樹状細胞様細胞であるHK細胞などでは、これと同様の2核細胞の形態が観察されることからも、FOCが、間質細胞との共培養下で濾胞性樹状細胞に分化する濾胞性樹状細胞の前駆体細胞であることが強く示唆された。
また同様に、GFP (緑色蛍光タンパク)発現マウスより同様の方法で分取した間質細胞とPKH26(赤色の色素 Sigma社製)にて染色したFOC細胞を共培養した後に行った共焦点顕微鏡による観察では、融合したFOCの細胞膜は分解されて間質細胞の細胞膜上に再分布することが明らかとなった(図9)。図中、間質細胞は緑色、FOC由来細胞成分(FOCの核及び細胞膜)は赤色のシグナルで示されている。図9の右上の写真はFOC由来細胞成分のみ(赤色)、左上の写真は間質細胞のみ(緑色)を示し、左下の写真は両シグナルを同時に撮影したものである。左下の写真に示されるように、間質細胞を示す緑色シグナルとFOCを示す赤色シグナルが共局在していた。なお、図9に示すように、FOC由来の融合細胞として、2種類の形態のものが観察された。1つはより広い細胞質を有しその周囲に樹状突起を有するものであり(図9a)、もう1つは線維芽細胞状のものであった(図9b)。この2種類の形態の差異は、FOCの融合相手がどのような細胞であるかによって規定されるのではないかと考えられた。
さらに、共培養後に最終的に得られた間質細胞の多くは単核細胞であったが、培養前には呈していなかった細胞表面マーカーFDC-M1及びCr-1が陽性であり、細胞のf-アクチン構造は不規則な構造を呈していた(図10)。具体的には、培養開始から短時間は、FOCとの細胞融合により間質細胞(緑色シグナル)の細胞質内にFOC由来の核ならびに細胞膜(赤色シグナル)が拡散したように観察されていたが、時間が立つにつれて、平板状の間質細胞に、元々FOCに発現していたCr-1(図10の上段)とFDC-M1(図10の下段)の発現が観察されるようになった。これはFOC由来の細胞膜が間質細胞の細胞質中に拡散された結果ではないかと考えられた。またFOCと間質細胞の融合細胞においては、融合前の間質細胞とは異なり、それらの細胞表面マーカーの発現以外に加え、f-アクチン(細胞骨格)の断絶又は再構築時に見られるような断片化像も現れた。そして、FOCと間質細胞の二種の細胞が融合するにもかかわらず、培養開始から長時間が経過した後、FOCと融合した間質細胞において2つの細胞核が最終的に1つになってしまう様子も示された。
[実施例5] FOCと脳神経細胞との共培養
実施例4において、FOCが間質細胞との融合能を有することが示された。そこで本実施例では、FOCが、間質細胞ではない細胞、特に脳神経細胞と融合するかどうかを調べる試験を行った。
実施例4において、FOCが間質細胞との融合能を有することが示された。そこで本実施例では、FOCが、間質細胞ではない細胞、特に脳神経細胞と融合するかどうかを調べる試験を行った。
まず、マウス海馬由来の脳神経細胞を調製した。16.5日目のマウス胎児より海馬を含む脳を取り出し、0.25%トリプシン処理にて細胞懸濁液を作成した後、ポリエチレンイミンコート処理を行ったカバースリップ上に播き、GIBCO Neurobasal mediumにB27を加えたものを使用し、CO2培養機にて一週間培養した。この細胞調製方法のさらなる詳細は、Cultureing Nerve Cells, 第2版, Gary Banker and Kimberly Goslin編, The MIT Press Massachusetts Institute of Technology Cambridge, Massachusetts 02142に記載されている。
次に、こうして得られた脳神経細胞(海馬細胞)を、実施例1に従って得られたFOCにPKH26にて染色したものを加え、5%FCSを含むDMEM培地中37℃で5日間にわたり共培養した。その後に、緩衝ホルマリン又はアセトンにて固定した。FOCの細胞膜の挙動を示すPKH26の検出は、(デルタビジョン)共焦点顕微鏡によって行った。
図11に、共焦点顕微鏡下で撮影した写真の一例を示す。海馬細胞と共培養したFOCは、海馬細胞と融合して顕著な樹状構造を示すようになった(図11)。
[実施例6] FOCのマウスへの投与
実施例4の結果から、in vivoでは、抗原抗体複合体を細胞膜上に保持したFOCが二次リンパ組織中のリンパ濾胞内に移行し、間質細胞と融合することにより、抗原抗体複合体を間質細胞上に分布させることが考えられた。そこで、抗原抗体複合体を結合させたPKH26染色したFOCをマウス尾静脈より投与し、抗原抗体複合体と、FOCの細胞膜の分布を調べた。
実施例4の結果から、in vivoでは、抗原抗体複合体を細胞膜上に保持したFOCが二次リンパ組織中のリンパ濾胞内に移行し、間質細胞と融合することにより、抗原抗体複合体を間質細胞上に分布させることが考えられた。そこで、抗原抗体複合体を結合させたPKH26染色したFOCをマウス尾静脈より投与し、抗原抗体複合体と、FOCの細胞膜の分布を調べた。
ペルオキシダーゼ(Sigma)と抗HRPモノクローナル抗体(Jackson ImmunoResearch)を反応させることにより抗原抗体複合体の形成を行った。得られた抗原抗体複合体と新たに分離した血清(クレア社より購入したC57b/6Jマウスより血液を採取し、それを遠心分離して分取した血清)とを細胞に添加し、37℃で2時間インキュベートすることにより細胞膜上への抗原抗体複合体の付加を行った。
抗原抗体複合体を結合させたPKH26染色FOCは、リンゲル液に再懸濁し、その250μl(5×105細胞)をマウス尾静脈より投与した。
FOCを投与してから8日後、30日後、及び60日後にマウスの二次リンパ組織である脾臓組織を摘出し、それをO.T.C.コンパウンド(Sakura, Tokyo, Japan)中に包埋した。包埋した組織サンプルから、5μm厚の凍結切片を作製し、それを室温で15分間乾燥した後、3%緩衝ホルマリン又はアセトンにて固定した。さらに、内因性ペルオキシダーゼによる非特異的反応を抑制するために、0.3% H2O2/メタノール中に入れて室温で10分間置いた。抗原抗体複合体の検出は、ビオチン標識抗ペルオキシダーゼポリクローナル抗体(Jackson ImmunoResearch)及びチアミン-FITC(TSA Fluorescence system, PerkinElmer, MA, USA)を用いて可視化し、デルタビジョン共焦点顕微鏡で観察することによって行った。FOCの細胞膜の挙動を示すPKH26の検出は、デルタビジョン共焦点顕微鏡によって行った。Cr-1陽性細胞の検出は実施例3と同様にして行った。
さらに、PKH26染色しただけのFOCを投与したマウスの脾臓に由来する凍結切片に、上記で調製した抗原抗体複合体とマウス血清を塗布し、FOC由来細胞成分と抗原抗体複合体の局在を調べた。
予想したとおり、静脈注射したPKH26染色FOCは、濾胞性樹状細胞状形態を呈し、またCr-1クラスターと共局在していた。FOCは細胞質を拡張させていくつかのリンパ球細胞を取り囲んでいた。FOCに結合させた抗原抗体複合体由来のシグナルは、FOC膜由来のシグナル(PKH26)と共局在していることが確認された。FOC投与から60日後までの長期にわたる観察により、FOCの細胞膜を示すシグナルは、ビーズ状の形態を取るようになり、脾臓のCr-1陽性間質細胞により広く分布するようになることが示された。このFOCの細胞膜由来のビーズ状シグナルは、ヘマトキシリンで染色されなかったことから、単なるアポトーシス小体ではないと考えられた。
得られた顕微鏡写真の一例を、図12及び13に示す。図12A及び13中、FOC由来細胞成分は赤色シグナルで示されている。DAPIシグナル(青色シグナル)は細胞核を示し、Cr-1シグナル(図12の写真a、c、eの緑色シグナル)はCr-1クラスターを示し、Phalloidinシグナル(図12の写真b、d、fの緑色シグナル)は細胞膜を示し、ICシグナル(図13の緑色シグナル)は抗原抗体複合体を示す。図13の写真aでは、検出された抗原抗体複合体のシグナルが、矢印で例示されている。一方、図12Bでは、図12AにおけるCr-1又はPhalloidinシグナルが白色で、DAPIシグナルが灰色で示されている。また図12Bでは、ビーズ状になったFOC由来細胞成分が、矢印で例示されている。
図12には、FOC細胞が、時間と共に、ビーズ状の細胞成分となり、Cr-1クラスターの間に分散していく様子が示された。さらにこのビーズ状のFOC由来細胞成分は、細胞膜に局在するようになった。また図13の写真aには、FOC細胞成分が、マウスの尾静脈に投与されてから8日後には、脾臓組織において明確にビーズ状構造を取っており、さらに、抗原抗体複合体(矢印)と共局在するものがあることが示されていた。一方、in vitro実験の結果である図13Bにおいても、抗体抗原複合体が検出される部位にFOC由来細胞成分が存在しており、かつ、抗体抗原複合体を示すシグナルとFOC由来細胞成分を示すシグナルの共局在(矢印の先)が観察された。これらの結果から、FOCは抗原抗体複合体保持能を有し、二次リンパ組織内リンパ濾胞でFDC様の形態ならびにビーズ様の細胞成分を形成するようになること、さらにビーズ状の細胞成分が抗原抗体複合体結合能を有し、長期にわたりリンパ濾胞又はCr-1陽性細胞の細胞膜上に局在することが示された。
以上から、FOCは、脾臓におけるCr-1クラスター(濾胞性樹状細胞ネットワーク)の形成、さらには濾胞性樹状細胞の免疫記憶に直接関与するのではないかと考えられた。
[実施例7] 投与されたFOCによるリンパ節様構造体の形成
上記実施例で調製した、PKH26染色したFOC単独、又はFOCとCr-1陰性間質細胞を1:1の質量比で混合したものを、マウスの背中皮下に投与した(1×106細胞/250μl中)。投与の10日後、投与した皮下組織を採取し、実施例3と同様にして、凍結切片サンプル(5μm厚)を調製した。凍結切片を室温で15分間乾燥した後、3%緩衝ホルマリン又はアセトンにて固定し、内因性ペルオキシダーゼによる非特異的反応を抑制するために、0.3% H2O2/メタノールを加えて室温で10分間反応させた。抗B220抗体、抗Cr-1抗体、抗CD3抗体、及び抗FDC-M1抗体の各抗体を抗体希釈液にて希釈した後、サンプルに添加し、4℃で16時間反応させてから、ストレプトアビジン標識Alexa-Fluor488を用いて可視化し、オリンパス蛍光顕微鏡下で写真撮影を行った。抗B220抗体、抗Cr-1抗体、抗CD3抗体、及び抗FDC-M1抗体によって、それぞれB細胞、Cr-1陽性細胞、T細胞、FDC-M1陽性細胞が検出された。
上記実施例で調製した、PKH26染色したFOC単独、又はFOCとCr-1陰性間質細胞を1:1の質量比で混合したものを、マウスの背中皮下に投与した(1×106細胞/250μl中)。投与の10日後、投与した皮下組織を採取し、実施例3と同様にして、凍結切片サンプル(5μm厚)を調製した。凍結切片を室温で15分間乾燥した後、3%緩衝ホルマリン又はアセトンにて固定し、内因性ペルオキシダーゼによる非特異的反応を抑制するために、0.3% H2O2/メタノールを加えて室温で10分間反応させた。抗B220抗体、抗Cr-1抗体、抗CD3抗体、及び抗FDC-M1抗体の各抗体を抗体希釈液にて希釈した後、サンプルに添加し、4℃で16時間反応させてから、ストレプトアビジン標識Alexa-Fluor488を用いて可視化し、オリンパス蛍光顕微鏡下で写真撮影を行った。抗B220抗体、抗Cr-1抗体、抗CD3抗体、及び抗FDC-M1抗体によって、それぞれB細胞、Cr-1陽性細胞、T細胞、FDC-M1陽性細胞が検出された。
この結果、FOCとCr-1陰性間質細胞の混合物を投与したマウスでは、皮下にリンパ節様構造が1つ確認された。この構造内には、少なくとも4つのCr-1陽性濾胞(B細胞が存在)と、その間質にT細胞の集積が認められた。このCr-1陽性濾胞内には、PKH26陽性のビーズ様構造が確認されたが、FDC-M1陽性細胞のCr-1クラスター構築は微細であった。すなわち、形成されたリンパ濾胞はこの時点で一次リンパ濾胞であった。皮下に構築されたリンパ節様構造体の写真を図14に示す。図14中、最も左上の写真が、リンパ節様構造体の全体像である。この一部(1個のリンパ濾胞)を拡大した像が、その右側の写真群に示されている。この写真群のうち「DAPI」と表示された写真には、染色された細胞核が示されており、リンパ濾胞状構造がはっきりと確認できた。一方、「B220」と表示された写真においては、リンパ濾胞内に集合したB細胞群が検出された。また「CD3」と表示された写真では、リンパ濾胞間ならびにリンパ濾胞をとりまくようにしてCD3陽性細胞(T細胞)が検出された。「Cr-1」と表示された写真では、リンパ濾胞の中央辺りにCr-1陽性細胞の微細な集合が検出された。このようなリンパ濾胞の構造は、生体内で自然に形成されるリンパ濾胞の構造と大変よく類似していた。
またこのリンパ節様構造体には、血管の浸潤も観察された(図15)。図15中、右の写真は、血管が浸潤したリンパ節様構造体の一部を示す。左の写真は、同じ週齢・性別のマウスの同一部位に細胞懸濁液に使用した緩衝液を同量投与した場合の対照皮下サンプルである。
一方、FOC単独を皮下投与したマウスにおいては、PKH26染色FOCが局在する箇所に抗B220抗体陽性で示されるB細胞の浸潤及び蓄積が確認され、リンパ濾胞の構築も確認された。
以上の結果より、FOCを皮下投与することにより、任意の皮下部位に、Cr-1クラスターだけでなくリンパ節様構造体を、人工的に形成できることが示された。特に、FOCと間質細胞との混合物の投与は、リンパ節様構造体の形成を顕著に促進した。このことから、FOCは、Cr-1クラスターだけでなくリンパ節様構造体の形成において必須の因子であることが示された。
[実施例8] FOC投与に基づく抗原特異的抗体産生の増加
抗原としてのNPオボアルブミン((4-ヒドロキシ-3-ニトロフェニル)アセチル-オボアルブミン(NP-OVA, Biosearch Technologies, Inc))と、抗OVA IgG抗体とを反応させて、NP-OVA−抗OVA IgG抗体を作製した。次いで、このNP-OVA−抗OVA IgG抗体を抗原抗体複合体として用い、実施例6と同様の方法で、NP-OVA−抗OVA IgG抗体を保持するFOCを調製した。
抗原としてのNPオボアルブミン((4-ヒドロキシ-3-ニトロフェニル)アセチル-オボアルブミン(NP-OVA, Biosearch Technologies, Inc))と、抗OVA IgG抗体とを反応させて、NP-OVA−抗OVA IgG抗体を作製した。次いで、このNP-OVA−抗OVA IgG抗体を抗原抗体複合体として用い、実施例6と同様の方法で、NP-OVA−抗OVA IgG抗体を保持するFOCを調製した。
得られたNP-OVA−抗OVA IgG抗体を保持するFOCは、リンゲル液に再懸濁し、その250μl(5×105細胞)をマウス尾静脈より投与した。対照群では、同様にしてNP-OVAのみを結合させたFOCを投与した。FOCの投与から11日後、そのマウスにNP-OVAを腹腔内投与して、さらにその4日後及び7日後に採血を行った。得られた血液について、常法に従って、NP-OVA特異的抗体の産生量を測定した(図16)。
その結果、NP-OVA−抗OVA IgG抗体(抗原抗体複合体)を保持するFOCを投与した群では、抗原のみを付加したFOCを投与した群と比較して、NP-OVA特異的抗体の産生量が有意に増加した。このことから、抗原抗体複合体を保持するFOCを、抗原として、例えば初回免疫に用いることにより、抗原特異的抗体の産生を顕著に増大させることができることが示された。
[実施例9] FOCの調製及びFOCの胚中心への移行2
実施例1に記載した手順において抗CD4抗体の代わりに抗CD3抗体を使用することにより、FOC細胞を含む細胞画分をさらに取得した。
実施例1に記載した手順において抗CD4抗体の代わりに抗CD3抗体を使用することにより、FOC細胞を含む細胞画分をさらに取得した。
まず、実施例1と同様にして、マウス脾臓から単一細胞懸濁液を調製し、そこから赤血球を除去して脾細胞懸濁液を得た。次いで実施例1と同様に、得られた脾細胞懸濁液からCD11c・Gr-1・CD19陰性脾細胞画分を調製し、そこから弱い付着性を有する球状細胞群を分取し、その球状細胞群を抗細胞表面マーカー抗体と反応させた。ここで使用した抗細胞表面マーカー抗体は、ビオチン標識した抗CD19、抗CD3、抗CD11c、抗CD11b、抗F4/80、抗Gr-1及び抗CD8モノクローナル抗体(BD PharMingen)であった。反応後、ストレプトアビジンMACSビーズを使った選択により、CD19、CD3、CD11c、CD11b、F4/80、Gr-1及びCD8に陰性の細胞画分を分取した。
さらに、実施例1と同様に、得られた陰性細胞画分をビオチン標識抗B220モノクローナル抗体(BD PharMingen)と反応させて、B220陽性細胞画分を分取した。分取したB220陽性細胞画分に主として含まれていた細胞について細胞表面マーカーを調べたところ、さらに、Cr-1陽性及びCD21/35弱陽性であることも示された。なお、B220陽性細胞画分を分取した際にその分離した残りのB220陰性細胞画分も同時に採取した。
この細胞画分の細胞表面マーカーの解析結果の例を、図17に示す。この細胞画分はCr-1陽性かつF4/80陰性の細胞を主として含んでいた(図17Aの左)。
まとめると、上記B220陽性細胞画分中に主に含まれていた細胞は、CD19、CD3、CD11c、CD11b、F4/80、Gr-1及びCD8について陰性であり、かつB220及びCr-1について陽性であり、CD21/35について弱陽性であることが判明した。この細胞の純度は、そのB220陽性細胞画分中、およそ86〜92%であったことから、B220陽性細胞画分は高度に分離濃縮されていることが示された。なお、このB220陽性細胞画分を、便宜上、CD19-CD11c-Cr-1+B220+細胞画分と名づけた。そして、この細胞画分中に高い精製度で分離濃縮されていた細胞(図17B)を、CD19-CD11c-Cr-1+B220+細胞と称することとした。
一方、上記で得たB220陰性細胞画分についても、Cr-1陽性細胞が含まれることが確認できた。このB220陰性細胞画分を、便宜上、CD19-CD11c-Cr-1+B220-細胞画分と名づけた。そして、この細胞画分中に高度に分離濃縮されていた細胞を、CD19-CD11c-Cr-1+B220-細胞と称することとした。
これらCD19-CD11c-Cr-1+B220+細胞及びCD19-CD11c-Cr-1+B220-細胞は、その特徴から見て、実施例1と同様に、濾胞性樹状細胞の前駆体細胞(FOC)の1種であると考えられた。
そこで、得られたCD19-CD11c-Cr-1+B220+細胞とCD19-CD11c-Cr-1+B220-細胞を、実施例1で得たFOCの代わりに実施例3に記載した実験に用いて、胚中心への移行実験を行った。
その結果、各細胞画分中のFOCは、実施例3と同様に、マウス尾静脈からリンパ濾胞内の胚中心に移行し網様状の形態を示した。CD19-CD11c-Cr-1+B220+細胞画分を用いて得られた結果を図18に示す。図18中、CD19-CD11c-Cr-1+B220+細胞は「Cr-1+B220+細胞」として表記した。
[実施例10] FOCと間質細胞との共培養2
CD19-CD11c-Cr-1+B220+細胞を、実施例1のFOCの代わりに用いて、実施例4に記載したFOCと間質細胞との共培養実験を行った。間質細胞としては、胎児脳由来間質細胞を用いた。胎児脳由来間質細胞は、胎生14.5〜16.5日のマウス胎児より脳を摘出し細かく切断した後、間質細胞培養メディウム[50 U/ml ペニシリン、50 mg/mlストレプトマイシン、非必須アミノ酸、及び10%ウシ胎児血清(FBS)を含有するRPMI1640培地(Gibco)と20% FBSを含有するα-MEM培地(Gibco)とを1:1で混合したもの]を用いて培養した。3日後に細胞を新しい培養容器に移し、さらに6日間培養した。この間、2日毎にメディウムを交換した。培養開始後11日目に、細胞を回収し、さらに、得られた細胞から抗CD45抗体および抗Cr-1抗体を用いた陰性選択によりCD45およびCr-1を発現しない細胞を回収し、それを胎児脳由来間質細胞とした。さらに間質細胞系細胞として、間質細胞由来の培養細胞株、例えばOP9(独立行政法人理化学研究所 バイオリソースセンター、細胞番号RCB1124)又はTEL2株(独立行政法人理化学研究所 渡邊武博士より供与)も使用して、同様の実験を行った。その結果、実施例4のFOC同様、CD19-CD11c-Cr-1+B220+細胞はこれらの間質細胞と融合することが示された。
CD19-CD11c-Cr-1+B220+細胞を、実施例1のFOCの代わりに用いて、実施例4に記載したFOCと間質細胞との共培養実験を行った。間質細胞としては、胎児脳由来間質細胞を用いた。胎児脳由来間質細胞は、胎生14.5〜16.5日のマウス胎児より脳を摘出し細かく切断した後、間質細胞培養メディウム[50 U/ml ペニシリン、50 mg/mlストレプトマイシン、非必須アミノ酸、及び10%ウシ胎児血清(FBS)を含有するRPMI1640培地(Gibco)と20% FBSを含有するα-MEM培地(Gibco)とを1:1で混合したもの]を用いて培養した。3日後に細胞を新しい培養容器に移し、さらに6日間培養した。この間、2日毎にメディウムを交換した。培養開始後11日目に、細胞を回収し、さらに、得られた細胞から抗CD45抗体および抗Cr-1抗体を用いた陰性選択によりCD45およびCr-1を発現しない細胞を回収し、それを胎児脳由来間質細胞とした。さらに間質細胞系細胞として、間質細胞由来の培養細胞株、例えばOP9(独立行政法人理化学研究所 バイオリソースセンター、細胞番号RCB1124)又はTEL2株(独立行政法人理化学研究所 渡邊武博士より供与)も使用して、同様の実験を行った。その結果、実施例4のFOC同様、CD19-CD11c-Cr-1+B220+細胞はこれらの間質細胞と融合することが示された。
図19に、CD19-CD11c-Cr-1+B220+細胞と胎児脳由来間質細胞から形成された融合細胞を示す。図18中、CD19-CD11c-Cr-1+B220+細胞を「Cr-1+B220+細胞」として表記した。
[実施例11] 投与されたFOCによるリンパ節様構造体の形成2
CD19-CD11c-Cr-1+B220+細胞及びCD19-CD11c-Cr-1+B220-細胞を、実施例1のFOCの代わりに用いて、実施例7の記載に従って、マウス背中への皮下投与によるリンパ節様構造体の形成実験を行った。間質細胞としては、胎児脳由来間質細胞、成体マウス脾臓由来間質細胞、OP9株、又はTEL2株をそれぞれ使用した。
CD19-CD11c-Cr-1+B220+細胞及びCD19-CD11c-Cr-1+B220-細胞を、実施例1のFOCの代わりに用いて、実施例7の記載に従って、マウス背中への皮下投与によるリンパ節様構造体の形成実験を行った。間質細胞としては、胎児脳由来間質細胞、成体マウス脾臓由来間質細胞、OP9株、又はTEL2株をそれぞれ使用した。
その結果、CD19-CD11c-Cr-1+B220+細胞又はCD19-CD11c-Cr-1+B220-細胞と各間質細胞との混合物を投与したマウスにおいて、皮下にリンパ節様構造が確認された。この構造内には、Cr-1陽性濾胞(B細胞が存在)が存在し、その間質にT細胞の集積が認められた。このCr-1陽性濾胞内には、FDC-M1陽性細胞のCr-1クラスター構築が確認された。すなわち、形成されたリンパ濾胞は構造的に成熟したリンパ濾胞であった。
マウス皮下に構築されたリンパ節様構造体の写真を図20に示す。図20には、リンパ節様構造体の一部である1個のリンパ濾胞を拡大した像が示されている。これらのうち「DAPI」と表示された写真には、染色された細胞核が示されており、リンパ濾胞状構造がはっきりと確認できた。一方、「B220」と表示された写真においては、リンパ濾胞内に集合したB細胞群が検出された。また「CD4」と表示された写真では、リンパ濾胞間ならびにリンパ濾胞をとりまくようにしてCD4陽性細胞(T細胞)が検出された。「Cr-1」と表示された写真では、リンパ濾胞の中央辺りにCr-1陽性細胞の集合が検出された。各写真中、破線で示したのが、Cr-1陽性のクラスター(Cr-1クラスター)である。
図21には、CD19-CD11c-Cr-1+B220+細胞を用いて上記のように作製されたリンパ節様構造体の解析写真を示す。図21中、CD19-CD11c-Cr-1+B220+細胞を「Cr-1+B220+細胞」として表記している。図21Aは、抗FDC-M1抗体(FITC標識抗rat抗体)で発色させ、抗B220抗体(トレプトアビジン標識Qdot605)で染色し、連続切片において一つ前の切片でCr-1クラスターが確認された部分を撮影した結果である。図21A中の枠内(さらにDAPIで染色)を高倍率で撮影した結果が図21Bである。図21Cはコントロール実験であり、二次抗体であるFITC標識抗ラット抗体及びストレプトアビジン標識Qdot605で染色した結果である。図21Dは、GFPマウス由来Cr-1+B220+細胞とTEL-2細胞を用いて作製したリンパ節様構造体を、抗FDC-M1抗体(Cy3標識抗ラット抗体で発色)させ、Alexa Fluor488標識抗GFP抗体で染色した結果を示す。ここではカウンター染色にDAPIを使用している。図21Dの枠内を高倍率で撮影したものが図21Eである。染色のコントロール実験として、Cy3標識抗ラット抗体Alexa Fluor488標識抗GFP抗体のみで染色した結果を図21Fに示す。
図21Dに示される通り、Cr-1陽性細胞の集合には、濾胞樹状細胞特異的に発現するもう1つのマーカーであるFDC-M1を発現したB220陽性細胞が存在しており、投与されたCD19-CD11c-Cr-1+B220+細胞がFDC-M1陽性であることが示された。
以上のような、マウス皮下に構築されたリンパ濾胞様構造体は、生体内で自然に形成されるリンパ濾胞と大変よく類似する構造を有していた。
リンパ節様構造形成の実験結果の例をまとめたものを図22に示す。図22において、CD19-CD11c-Cr-1+B220+細胞を「Cr-1+B220+細胞」として、CD19-CD11c-Cr-1+B220-細胞を「Cr-1+B220-細胞」として表記した。図22中、P1及びP3は、それぞれ分取後1回及び3回経代したことを示す。I.D.は皮下注射、注射後日数はリンパ濾胞形成までに要した日数を意味する。
[実施例12]
マウスの脾臓より上述の方法でCD19-CD11c-Cr-1+B220-細胞を分取した後、細胞膜を特異的に染色する色素であるPKH26(Sigma)で染色し、それを尾静脈よりマウスに投与した。8日後に細胞を投与したマウスより脾臓を摘出し、0.5 mg/mlのコラゲナーゼを含有するRPMI1640培地にて脾臓を消化し、脾細胞を分取した。上述の方法により赤血球を破砕した後、細胞を抗Cr-1、抗B220、抗FDC-M1および抗CD11c抗体を用いて染色し、その後フローサイトメーターにて分析を行った。結果、得られた脾細胞中のPKH26染色陽性細胞の多くの部分はCr-1陽性かつB220陽性であった。一方、FDC-M1およびCD11c陽性細胞は得られなかった。従って、CD19-CD11c-Cr-1+B220-細胞は生体内でB220発現細胞に分化し得る細胞であることが明らかとなった。
マウスの脾臓より上述の方法でCD19-CD11c-Cr-1+B220-細胞を分取した後、細胞膜を特異的に染色する色素であるPKH26(Sigma)で染色し、それを尾静脈よりマウスに投与した。8日後に細胞を投与したマウスより脾臓を摘出し、0.5 mg/mlのコラゲナーゼを含有するRPMI1640培地にて脾臓を消化し、脾細胞を分取した。上述の方法により赤血球を破砕した後、細胞を抗Cr-1、抗B220、抗FDC-M1および抗CD11c抗体を用いて染色し、その後フローサイトメーターにて分析を行った。結果、得られた脾細胞中のPKH26染色陽性細胞の多くの部分はCr-1陽性かつB220陽性であった。一方、FDC-M1およびCD11c陽性細胞は得られなかった。従って、CD19-CD11c-Cr-1+B220-細胞は生体内でB220発現細胞に分化し得る細胞であることが明らかとなった。
本発明の濾胞性樹状細胞前駆体細胞の分離方法によれば、リンパ濾胞の形成及びリンパ濾胞を含むリンパ節様構造体の形成を誘導できる濾胞性樹状細胞前駆体細胞を、高い精製度で分離することができる。この方法によって分離されうる濾胞性樹状細胞前駆体細胞を用いれば、リンパ組織由来間質細胞や脳神経細胞との融合細胞を容易に作製することができる。このことは、濾胞性樹状細胞前駆体細胞を用いて間質細胞や脳神経細胞を形質転換させることが可能になることを意味する。またこの方法によって分離されうる濾胞性樹状細胞前駆体細胞を用いれば、哺乳動物体内でリンパ濾胞の形成を誘導したり、任意の皮下部位にリンパ節様構造体を形成させたりすることができる。この方法を利用すれば、人工的に作製したリンパ節様構造体それ自体や、実験が容易な皮下にリンパ節様構造体を有するモデル動物を、容易に提供できる。さらに、抗原抗体複合体を結合させた濾胞性樹状細胞前駆体細胞を抗原として免疫化に用いることにより、その抗原に対する特異的抗体産生を顕著に増加させることができる。
Claims (22)
- 二次リンパ組織由来細胞懸濁液から、細胞表面マーカーCD19、CD4、CD11c、Gr-1及びCD8に対する抗体を用いた陰性選択による陰性細胞画分の分離と弱付着性細胞の分取とによって、該マーカーについて陰性の弱付着性細胞画分を分離し、その細胞画分から細胞表面マーカーB220に対する抗体を用いた陽性選択により陽性細胞画分をさらに分離することを特徴とする、濾胞性樹状細胞前駆体細胞を分離する方法。
- 二次リンパ組織由来細胞懸濁液から、細胞表面マーカーCD19、CD3、CD11c、CD11b、F4/80、Gr-1及びCD8に対する抗体を用いた陰性選択による陰性細胞画分の分離と弱付着性細胞の分取とによって、該マーカーについて陰性の弱付着性細胞画分を分離することを特徴とする、濾胞性樹状細胞前駆体細胞を分離する方法。
- 分離した弱付着性細胞画分から、細胞表面マーカーB220に対する抗体を用いた陽性選択により陽性細胞画分をさらに分離する、請求項2に記載の方法。
- 濾胞性樹状細胞前駆体細胞が抗原抗体複合体保持能を有する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
- 陰性又は陽性細胞画分の分離を、磁気細胞分離法を用いて行う、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
- 二次リンパ組織が、マウスの二次リンパ組織である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
- 二次リンパ組織が、脾臓である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
- 請求項1に記載の方法によって分離される、細胞表面マーカーCD19、CD4、CD11c、Gr-1及びCD8陰性でありB220陽性の細胞である濾胞性樹状細胞前駆体細胞。
- 請求項2に記載の方法によって分離される、細胞表面マーカーCD19、CD3、CD11c、CD11b、F4/80、Gr-1及びCD8陰性である濾胞性樹状細胞前駆体細胞。
- 請求項3に記載の方法によって分離される、細胞表面マーカーCD19、CD3、CD11c、CD11b、F4/80、Gr-1及びCD8陰性でありB220陽性の細胞である濾胞性樹状細胞前駆体細胞。
- さらに、細胞表面マーカーF4/80、Cr-1及びCD21/35が陽性である、請求項8に記載の濾胞性樹状細胞前駆体細胞。
- さらに、細胞表面マーカーCr-1が陽性である、請求項9又は10に記載の濾胞性樹状細胞前駆体細胞。
- 抗原抗体複合体保持能を有する、請求項8〜12のいずれか1項に記載の濾胞性樹状細胞前駆体細胞。
- 間質細胞との融合能を有する、請求項8〜13のいずれか1項に記載の濾胞性樹状細胞前駆体細胞。
- 請求項8〜14のいずれか1項に記載の濾胞性樹状細胞前駆体細胞と、間質細胞又は脳神経細胞とを共培養することを特徴とする、融合細胞の製造方法。
- 間質細胞が、二次リンパ組織由来間質細胞である、請求項15に記載の方法。
- 請求項8〜14のいずれか1項に記載の濾胞性樹状細胞前駆体細胞を非ヒト哺乳動物に投与することを特徴とする、リンパ濾胞の形成を促進する方法。
- 非ヒト哺乳動物の静脈内に投与する、請求項17に記載の方法。
- 非ヒト哺乳動物がマウスである、請求項17又は18に記載の方法。
- 請求項8〜14のいずれか1項に記載の濾胞性樹状細胞前駆体細胞を非ヒト哺乳動物に皮下投与することを特徴とする、リンパ節様構造体を作製する方法。
- 前記濾胞性樹状細胞前駆体細胞とともに間質細胞を投与する、請求項20に記載の方法。
- 非ヒト哺乳動物がマウスである、請求項20又は21に記載の方法。
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JP2015505608A (ja) * | 2012-01-20 | 2015-02-23 | アンスティチュ ナショナル ドゥ ラ サンテ エ ドゥ ラ ルシェルシュ メディカル | 固形ガンを患う患者の生存期間の予後診断のための方法 |
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2006
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