JP2007139928A - 三次元表示装置用有機無機複合材料 - Google Patents
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【解決手段】本発明は、有機樹脂と、アルミニウム化合物と、希土類元素とを含有し、2種以上の異なる波長の光により励起されてアップコンバージョン発光することを特徴とする三次元表示装置用有機無機複合材料を提供することにより、上記目的を達成するものである。
【選択図】図3
Description
従来、三次元表示に用いられてきた方法は、ほとんどが(1)両眼視差のみを実現したものであり、不自然さや極度の疲労感を伴わざるを得ない。また立体知覚の異常といった生理的疾患の原因になっているとも考えられている。最近では、複数の平面スクリーンを重ねて、擬似的に(2)両眼のふくそう角、および(3)焦点調節(水晶体の調節)を満たそうという試みもなされているが十分とは言えず、また(4)単眼の運動視差を実現するまでには至っていない。
最近では、フッ化物ガラスに蛍光体を析出させたものを表示部とし、この表示部に別々の方向から2つの異なる波長のレーザー光を入射して一点で交差させ、その一点のみを発光させるという方法が提案されている(例えば非特許文献1参照)。この方法では、それぞれのレーザー光を同期させながら水平および垂直方向に走査していくことにより、発光点が移動するので立体的な画像を表示することができる。
しかしながら、表示部はフッ化物ガラスに蛍光体を析出させてなるものであり、大型のものを作製するのは困難である。また、フッ化ガラスの組成により発光色に影響が及ぼされるおそれがあり、目的とする発光色を得られない場合がある。さらに、複数の発光色で立体画像を表示する、すなわち立体画像をカラー表示するためには、三原色の単色光のみを発光する蛍光体を選択し、各蛍光体を析出させたフッ化ガラスをそれぞれ作製し、これらを積層して表示部とする必要があり、製造工程が煩雑である。このため、実用化には至っていない。
しかしながら、この方法で表示部を作製する場合には、まず蛍光体微粒子を合成し、粒径の揃った蛍光体微粒子を得るために分級し、得られた蛍光体微粒子を透明樹脂に練り込むというように製造工程が煩雑となり、上記の非特許文献1に記載の表示部と比較すると製造工程が簡便であるものの、未だ課題が残されている。
本発明の三次元表示装置用有機無機複合材料(以下、有機無機複合材料と称する場合がある。)は、有機樹脂と、アルミニウム化合物と、希土類元素とを含有し、2種以上の異なる波長の光により励起されてアップコンバージョン発光することを特徴とするものである。
このように、2種以上の異なる波長の励起光によりエネルギー準位を経て励起されアップコンバージョン発光する場合を、本発明においては二段階吸収によるアップコンバージョン発光という。
以下、本発明の有機無機複合材料の各構成成分について説明する。
本発明の有機無機複合材料は、希土類元素を含有するものである。これは、希土類元素は、励起状態において複数のエネルギー準位をもつものが多く、2種以上の異なる波長の光により励起されてアップコンバージョン発光するものとして好適であるためである。
希土類元素を導入するために金属塩を用いた場合には、金属塩を凝集させることなく、有機樹脂中に分散させるために、アルコール、グリコール、酢酸、アセチルアセトネートなどを金属塩溶液に添加してもよい。上記の中でも、酢酸やアセチルアセトネートなどは金属塩と錯体を形成するため、希土類元素を高濃度で含有させる場合に有効である。
本発明に用いられるアルミニウム化合物の原料としては、例えばAl(OR1)3(R1はアルキル基を示す。)で表されるアルコキシド、(R2O)3−nAlLn(R2はアルキル基を示し、n=1〜2であり、Lは配位子を示し、アセチルアセトナ基、エトキシアセチルアセトナ基等である。)で表されるアルコキシドの誘導体、Al(NO3)3・9H2Oなどの金属塩などが挙げられる。
また、上記のアルコキシド、アルコキシドの誘導体、または金属塩を加水分解し、さらに酸を加えて解膠することにより、ベーマイトゾルを作製することもできる。
上述の操作によって、水酸化アルミニウムは解膠して、均質な微粒子に変化し、粘性の低いベーマイトを含んだゾルを得ることができる。ゾル中に含まれるベーマイトの濃度は、1×10−6mol/l以上であることが好ましく、より好ましくは1×10−4mol/l以上である。
本発明に用いられる有機樹脂としては、アップコンバージョン発光に影響を及ぼさないものであること、具体的には発光強度を著しく低下させないものであることが好ましい。具体的には、アクリレート樹脂、ポリオレフィン、ポリスチレン、ポリカーボネート、ABS樹脂、ポリエステル、エポキシ、不飽和エステル、アクリレート、ウレタン、エーテルなどが挙げられる。中でも、有機樹脂の原料として、モノマー状態で添加できるものが好ましく用いられる。
本発明の有機無機複合材料は、イッテルビウム(Yb)を含有していてもよい。イッテルビウム(Yb)は光に対する感度が良好であるので、増感剤として機能するからである。
ここで、上述した2種以上の異なる波長の光により励起されてアップコンバージョン発光する希土類元素と、イッテルビウム(Yb)とを用いた系について説明する。イッテルビウムを励起するとエネルギーが生じるが、このイッテルビウムの励起により生じたエネルギーがエネルギー移動することにより、上記希土類元素のエネルギー準位を押し上げることができる場合がある。これは、イッテルビウムのエネルギー準位と上記希土類元素のエネルギー準位とが近い場合は、エネルギーの移動が起こりうるからである。したがって、例えば2種の異なる波長の励起光を用いる場合は、一方の励起光をイッテルビウムの励起波長の光とし、もう一方の励起光を希土類元素の励起波長の光とすることができるのである。この場合には、イッテルビウムが光に対する感度が良いので、効率的にアップコンバージョン発光することが可能となる。
アゾ系化合物としては、具体的には2,2´−アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2´−アゾビス(2´−メチルブチロニトリル)、1,1´アゾビス(シクロヘキサン−1−カーボニトリル)等のアゾニトリル類などが挙げられる。また、有機過酸化物としては、t−ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート類等のパーオキシエステル類;ラウロイルパーオキシド等のジアシルパーオキシド類;1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)3,3,5−トリメチルシクロヘキサン等のパーオキシケタール類;などが挙げられる。
本発明の有機無機複合材料は、2種以上の異なる波長の光により励起されてアップコンバージョン発光することが可能であり、かつ所定の範囲内の波長の光により励起されるものであれば特に限定されるものではない。このような有機無機複合材料を用いた三次元表示装置では、有機無機複合材料の二段階吸収によるアップコンバージョン現象を利用することにより立体画像を表示することが可能となる。
1種の希土類元素を励起してアップコンバージョン発光させるには、上述したように2種以上の波長の異なる赤外光を照射することから、それぞれの希土類元素をアップコンバージョン発光させるために用いる励起光の波長が、それぞれ異なることが好ましい。具体的には±5nm以上異なることが好ましく、より好ましくは±10nm以上で異なることが好ましい。
このように本発明の有機無機複合材料をカラー表示が可能な三次元表示装置に適用する場合には、希土類元素をアップコンバージョン発光させる励起光の波長を考慮して、希土類元素の種類が適宜選択される。
なお、上記平均透過率は、有機無機複合材料を用いて厚み1mmの成形品を作製し、波長380nm〜800nmの範囲内において、島津製作所(株)社製 UV−3100を用いて測定した値の平均値とする。
なお、上記ヘイズは、有機無機複合材料を用いて厚み1mmの成形品を作製し、JIS K 7105に準拠して測定した値である。
次に、本発明の三次元表示装置について説明する。本発明の三次元表示装置は、上述した有機無機複合材料を有する表示部と、上記表示部の周囲に配置された2つ以上の赤外光源と、上記赤外光源から発せられた光の方向を制御する制御手段とを有することを特徴とするものである。
以下、本発明の三次元表示装置の各構成について説明する。
本発明に用いられる表示部は、有機無機複合材料を有するものである。
上記有機無機複合材料はそれ自体が固体状となるので、通常、表示部は有機無機複合材料からなるものとなる。例えば、光硬化、プレス成形、射出成形等の成形方法によって、有機無機複合材料からなる表示部を作製することができる。
表示部の大きさとしては、特に限定されるものではなく、用途に応じて適宜選択される。
1種の希土類元素を励起してアップコンバージョン発光させるには、上述したように2種以上の波長の異なる赤外光を照射することから、それぞれの希土類元素をアップコンバージョン発光させるために用いる励起光の波長が、それぞれ異なることが好ましい。具体的には±5nm以上異なることが好ましく、より好ましくは±10nm以上で異なることが好ましい。
また、有機無機複合材料については、上記「A.有機無機複合材料」の項に記載したものと同様であるので、ここでの説明は省略する。
本発明に用いられる赤外光源は、少なくとも2つ必要であり、表示部の周囲に配置され、赤外光が発せられるものである。
本発明における制御手段は、赤外光源から発せられた光の方向を制御するものであれば特に限定されるものではない。制御手段は、例えば図3に示すように赤外光源12a,12bを移動させることにより赤外光15a,15bの方向を制御するものであってもよく、また例えば図7に示すように赤外光源12a,12bの近傍に鏡16a,16bが配置されており、鏡16a,16bの角度や位置を変えることにより赤外光15a,15bの方向を制御するものであってもよい。
[実施例1]
Er2O3を10mol%、Al2O3を10mol%、メチルメタクリレートを80mol%の配合比で有機無機複合材料を作製した。
アルミニウムイソプロポキシド:1モル部に、酢酸エルビウム1.5水塩:1モル部を水400モル部に溶解した80℃の温水を加えて加水分解を行い、次いで1規定の硝酸を添加してさらに80℃で76時間攪拌して解膠をおこない、エルビウムを含有したベーマイトゾルを作製した。
得られた混合液を、紫外線透過性の成形型に移し、窒素パージを行なって酸素を除去した後、照射強度0.6W/cm2の紫外線ランプで24時間照射した後、140℃まで2℃/minで昇温後2時間保持することで有機無機複合材料を得た。
Er2O3を1mol%、Al2O3を1mol%、メチルメタクリレートを98mol%の配合比で有機無機複合材料を作製した。
実施例1と同様にして、エルビウムを含有したベーマイトゾルを作製した。
次に、ベーマイトゾルを減圧エバポレータで55℃にて24時間還流し、水を除去した。得られたベーマイトゾルに対して、エルビウムとのモル比が1:98の比率で、メチルメタクリレート(MMA)と紫外線硬化剤(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ製イルガキュア500)を添加して混合した。
そして、実施例1と同様にして、有機無機複合材料を得た。
Er2O3を0.1mol%、Al2O3を0.1mol%、メチルメタクリレートを99.8mol%の配合比で有機無機複合材料を作製した。
実施例1と同様にして、エルビウムを含有したベーマイトゾルを作製した。
次に、ベーマイトゾルを減圧エバポレータで55℃にて24時間還流し、水を除去した。得られたベーマイトゾルに対して、エルビウムとのモル比が0.1:99.8の比率で、メチルメタクリレート(MMA)と紫外線硬化剤(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ製イルガキュア500)を添加して混合した。
そして、実施例1と同様にして、有機無機複合材料を得た。
実施例1〜3にて得られた有機無機複合材料に、二種の赤外光レーザーが交差するように照射した。一方の赤外光レーザーとしては波長860nm付近の半導体レーザーを使用し、他方の赤外光レーザーとしては波長1550nm付近の半導体レーザーを使用した。その結果、2種の赤外光レーザーの交点において、Er3+の550nm付近の緑色発光が観測された。
11 … 表示部
12a,12b … 赤外光源
15a,15b … 赤外光
Claims (5)
- 有機樹脂と、アルミニウム化合物と、希土類元素とを含有し、2種以上の異なる波長の光により励起されてアップコンバージョン発光することを特徴とする三次元表示装置用有機無機複合材料。
- 前記希土類元素が、エルビウム(Er)、ホロミウム(Ho)、プラセオジウム(Pr)、ツリウム(Tm)、ネオジウム(Nd)、ガドリニウム(Gd)、ユウロピウム(Eu)、サマリウム(Sm)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)およびセリウム(Ce)からなる群から選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項1に記載の三次元表示装置用有機無機複合材料。
- さらにイッテルビウム(Yb)を含有することを特徴とする請求項2に記載の三次元表示装置用有機無機複合材料。
- 複数の発光色を示すことを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれかの請求項に記載の三次元表示装置用有機無機複合材料。
- 請求項1から請求項4までのいずれかの請求項に記載の三次元表示装置用有機無機複合材料を有する表示部と、前記表示部の周囲に配置された2つ以上の赤外光源と、前記赤外光源から発せられた光の方向を制御する制御手段とを有することを特徴とする三次元表示装置。
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