以下、添付図面を参照して本発明を実施するための最良の形態を詳細に説明する。
図1および図2は本実施の形態に係るデジタル一眼レフカメラの外観を示す図である。具体的には、図1はカメラ前面側より見た斜視図であって、撮影レンズユニットを外した状態を示し、図2はカメラ背面側より見た斜視図である。
図1において、1はカメラ本体であり、撮影時に使用者がカメラを安定して握り易いように前方に突出したグリップ部1aが設けられている。2はマウント部であり、着脱可能な撮影レンズユニット(不図示)をカメラ本体に固定させる。マウント接点21は、カメラ本体と撮影レンズユニットとの間で制御信号、状態信号、データ信号などを介在すると共に、撮影レンズユニット側に電力を供給する機能を有する。また、マウント接点21は電気通信のみならず、光通信、音声通信などを可能なように構成してもよい。
4は撮影レンズユニットを取り外す際に押し込むレンズロック解除釦である。5はカメラ筐体内に配置されたミラーボックスで、撮影レンズを通過した撮影光束はここへ導かれる。ミラーボックス5の内部には、クイックリターンミラー6が配設されている。クイックリターンミラー6は、撮影光束をペンタプリズム22(図3を参照)の方向へ導くために撮影光軸に対して45°の角度に保持される状態と、撮像素子33(図3を参照)の方向へ導くために撮影光束から退避した位置に保持される状態とを取り得る。
カメラ上部のグリップ側には、撮影開始の起動スイッチとしてのシャッタボタン7と、撮影時の動作モードに応じてシャッタスピードやレンズ絞り値を設定するためのメイン操作ダイヤル8と、撮影系の上面動作モード設定ボタン10が配置されている。これらの操作部材の操作結果の一部は、LCD表示パネル9に表示される。
シャッタボタン7は、第1ストロークでSW1(後述の7a)がONし、第2ストロークにてSW2(後述の7b)がONする構成となっている。
また、上面動作モード設定ボタン10は、シャッタボタン7の1回の押込みで連写になるか1コマのみの撮影となるかの設定や、セルフ撮影モードの設定などを行うものであり、LCD表示パネル9にその設定状況が表示されるようになっている。なお、LCD表示パネル9に表示される内容については、図4を用いて、後で詳述する。
カメラ上部中央には、カメラ本体に対してポップアップするストロボユニット11とフラッシュ取付け用のシュー溝12とフラッシュ接点13があり、カメラ上部右よりには撮影モード設定ダイヤル14が配置されている。
グリップに対して反対側の側面には、開閉可能な外部端子蓋15が設けられていて、この外部端子蓋15を開けた内部には、外部インタフェースとしてビデオ信号出力用ジャック16とUSB出力用コネクタ17が納められている。
図2において、カメラ背面側には上方にファインダ接眼窓18が設けられ、更に背面中央付近には画像表示可能なカラー液晶モニタ19が設けられている。カラー液晶モニタ19の横に配置されたサブ操作ダイヤル20は、メイン操作ダイヤル8の機能の補助的役割を担い、例えばカメラのAEモードでは自動露出装置により算出された適正露出値に対する露出補正量を設定するために使用される。あるいは、シャッタスピードとレンズ絞り値の各々を使用者の意志によって設定するマニュアルモードにおいて、メイン操作ダイヤル8でシャッタスピードを設定し、サブ操作ダイヤル20でレンズ絞り値を設定するように使用される。また、このサブ操作ダイヤル20は、カラー液晶モニタ19に表示される撮影済み画像の表示選択にも用いられる。
43はカメラの動作を起動もしくは停止するためのメインスイッチである。
44はクリーニングモードを動作させるためのクリーニング指示操作部材であり、ローパスフィルタ上に付着したゴミをふるい落とす動作を指示するためのものである。具体的には後述する。
図3は、本実施の形態に係るデジタル一眼レフカメラの主要な電気的構成を示すブロック図である。なお、前述の図面と共通する部分は同じ記号で示している。
100はカメラ本体に内蔵されたマイクロコンピュータの中央処理装置(以下、MPUという)である。MPU100は、カメラの動作制御を司るものであり、各要素に対して様々な処理や指示を実行する。
100aはMPU100に内蔵されたEEPROMであり、時刻計測回路109の計時情報やその他の情報を記憶可能である。
MPU100には、ミラー駆動回路101、焦点検出回路102、シャッタ駆動回路103、映像信号処理回路104、スイッチセンス回路105、測光回路106が接続されている。また、LCD駆動回路107、バッテリチェック回路108、時刻計測回路109、電源供給回路110、圧電素子駆動回路111についても接続されている。これらの回路はMPUの制御により動作するものである。
また、MPU100は、撮影レンズユニット内に配置されたレンズ制御回路201と、マウント接点21を介して通信を行う。マウント接点21は撮影レンズユニットが接続されるとMPU100へ信号を送信する機能も備えている。これにより、レンズ制御回路201は、MPU100との間で通信を行い、撮影レンズユニット内の撮影レンズ200および絞り204の駆動を、AF駆動回路202および絞り駆動回路203を介して行うことが可能となる。
なお、本実施の形態では便宜上1枚の撮影レンズで示しているが、実際は多数のレンズ群により構成されている。
AF駆動回路202は、たとえばステッピングモータによって構成され、レンズ制御回路201の制御によって撮影レンズ200内のフォーカスレンズ位置を変化させることにより、撮像素子33に撮影光束の焦点を合わせるように調整する。203は絞り駆動回路であり、たとえばオートアイリスなどによって構成され、レンズ制御回路201によって絞り204を変化させ、光学的な絞り値を得るように構成されている。
メインミラー6は、撮影レンズ200を通過する撮影光束をペンタプリズム22へ導くとともに、その一部を透過させてサブミラー30に導く。サブミラー30は、透過された撮影光束を焦点検出用センサユニット31へ導く。
ミラー駆動回路101は、ミラー6を、ファインダにより被写体像を観察可能とする位置と、撮影光束から待避する位置とへ駆動するためのものである。同時に、サブミラー30を、焦点検出用センサユニット31へ撮影光束を導く位置と、撮影光束から待避する位置とへ駆動する。具体的には、たとえばDCモータとギヤトレインなどから構成される。
31は不図示である結像面近傍に配置されたフィールドレンズ、反射ミラー及び、2次結像レンズ、絞り、複数のCCDから成るラインセンサ等から構成されている周知の位相差方式の焦点検出センサユニットである。焦点検出センサユニット31から出力された信号は、焦点検出回路102へ供給され、被写体像信号に換算された後MPU100へ送信される。MPU100は被写体像信号に基づいて、位相差検出法による焦点検出演算を行う。そして、デフォーカス量およびデフォーカス方向を求め、これに基づき、レンズ制御回路201およびAF駆動回路202を介して、撮影レンズ200内のフォーカスレンズを合焦位置まで駆動する。
22はペンタプリズムであり、メインミラー6によって反射された撮影光束を正立正像に変換反射する光学部材である。使用者は、ファインダ光学系を介して、ファインダ接眼窓18から被写体像を観察することができる。
ペンタプリズム22は、撮影光束の一部を測光センサ37にも導く。測光回路106は、測光センサ37の出力を得て、観察面上の各エリアの輝度信号に変換し、MPU100に出力する。MPU100は、得られる輝度信号から露出値を算出する。
32は機械フォーカルプレーンシャッタであり、ユーザがファインダにより被写体像を観察している時には撮影光束を遮る。また撮像時にはレリーズ信号に応じて、不図示の先羽根群と後羽根群の走行する時間差により所望の露光時間を得るように構成されている。フォーカルプレーンシャッタ32は、MPU100の指令を受けたシャッタ駆動回路103によって制御される。
33は撮像素子で、撮像デバイスであるCMOSが用いられる。撮像デバイスには、CCD型、CMOS型およびCID型など様々な形態があり、何れの形態の撮像デバイスを採用してもよい。
34はクランプ/CDS(相関二重サンプリング)回路であり、A/D変換する前の基本的なアナログ処理を行うとともに、クランプレベルの変更も可能である。35はAGC(自動利得調整装置)であり、A/D変換する前の基本的なアナログ処理を行うとともに、AGC基本レベルの変更も可能である。36はA/D変換器であり、撮像素子33のアナログ出力信号をデジタル信号に変換する。
410は光学ローパスフィルタで、水晶からなる複屈折板および位相板を複数枚貼り合わせて積層し、更に赤外カットフィルタを貼り合わせて構成している。
430は積層型の圧電素子であり、MPU100に指令を受けた圧電素子駆動回路111により加振され、その振動を光学ローパスフィルタ410に伝えるように構成されている。
400は、光学ローパスフィルタ410、圧電素子430、撮像素子33と後述する他の部品と共にユニット化された撮像ユニットであり、詳細の構成については後述する。
104は映像信号処理回路であり、デジタル化された画像データに対してガンマ/ニー処理、フィルタ処理、モニタ表示用の情報合成処理など、ハードウエアによる画像処理全般を実行する。この映像信号処理回路104からのモニタ表示用の画像データは、カラー液晶駆動回路112を介してカラー液晶モニタ19に表示される。
また、映像信号処理回路104は、MPU100の指示により、メモリコントローラ38を通じて、バッファメモリ37に画像データを保存することも可能である。更に、映像信号処理回路104は、JPEGなどの画像データ圧縮処理を行う機能も有している。連写撮影など連続して撮影が行われる場合は、一旦バッファメモリ37に画像データを格納し、メモリコントローラ38を通して未処理の画像データを順次読み出すことも可能である。これにより映像信号処理回路104は、A/D変換器36から入力されてくる画像データの速度に関わらず、画像処理や圧縮処理を順次行うことが可能となる。
メモリコントローラ38は、外部インタフェース40(図1におけるビデオ信号出力用ジャック16およびUSB出力用コネクタ17が相当する)から入力される画像データをメモリ39に記憶することや、メモリ39に記憶されている画像データを外部インタフェース40から出力する機能についても有する。なお、メモリ39は、カメラ本体に対して着脱可能なフラッシュメモリなどである。
105はスイッチセンス回路であり、各スイッチの操作状態に応じて入力信号をMPU100に送信する。7aは、レリーズボタン7の第1ストロークによりオンするスイッチSW1である。7bは、レリーズボタン7の第2ストロークによりオンするスイッチSW2である。スイッチSW2がオンされると、撮影開始の指示がMPU100に送信される。また、メイン操作ダイヤル8、サブ操作ダイヤル20、撮影モード設定ダイヤル14、メインスイッチ43、クリーニング指示操作部材44が接続されている。
107はLCD駆動回路であり、MPU100の指示に従って、LCD表示パネル9やファインダ内液晶表示装置41を駆動する。
108はバッテリチェック回路であり、MPU100からの信号に従って、所定時間バッテリチェックを行い、その検出出力をMPU100へ送る。42は電源部であり、カメラの各要素に対して、必要な電源を供給する。
109は時刻計測回路でメインスイッチ43がOFFされて次にONされるまでの時間や日付を計測し、MPU100からの指令により、計測結果をMPU100へ送信することができる。
次に、撮像ユニット400の詳細な構成について、図4〜10を用いて以下に説明する。
図4は、ローパスフィルタ及び撮像素子周りの保持構造を示すための、カメラ内部の概略構成を示す分解斜視図である。
ミラーボックス5には、それぞれ被写体側から順にシャッターユニット32、カメラ本体骨格となる本体シャーシ300、撮像ユニット400が配設され、特に撮像ユニット400は、撮影レンズユニットが取り付けられる基準となるマウント2の取付け面に撮像素子33の撮像面が所定の距離かつ平行になるように、調整されて固定される。
図5は、撮像ユニット400の構成部材の一部を示す正面図である。
510は、矩形の開口部を有しその開口部に撮像素子33を露出させるように撮像素子33を固着する板状の撮像素子保持部材であり、周囲にミラーボックス5にビス固定するための腕部を3ヶ所有する。530は、断面C−Cを表す図である図9を用いて後述するところの段ビスである。
420は、光学ローパスフィルタ410の周囲を囲む枠部420aと、左右に伸びた取付け保持のための腕部420bとを有する樹脂または金属製のローパスフィルタ保持部材である。枠部420aのひとつの辺には、圧電素子430を収納するための収納部421が設けられており、枠部420aと圧電素子430の一端面を接着等により固着している。
枠部420aのうち収納部421を有する辺に対向する辺には、バネ性を有する付勢部材440を収納するための収納部422が設けられており、光学ローパスフィルタ410を圧電素子430の方向に付勢するように構成されている。
すなわち、光学ローパスフィルタ410は、ローパスフィルタ保持部材420において、圧電素子430と付勢部材440とで同一平面内で挟み込むように配置される。このように配置されることにより、光学ローパスフィルタ410は、圧電素子430の伸縮運動に追従するようになる。
付勢部材440は弾性体であれば、金属によって形成される板バネやコイルバネを用いてもよいし、ゴムやプラスチックなどの高分子重合体を用いてもよい。また、本実施の形態においては、付勢部材440を別部材として設けたが、ローパスフィルタ保持部材420にバネ性を持たせることで、光学ローパスフィルタ410の運動が圧電素子430の伸縮運動に追従するようにしてもよい。
また、光学ローパスフィルタ410を囲む4辺と、ローパスフィルタ保持部材420の隙間には、図6に示すような枠状の弾性部材450を介在させている。
図6は、弾性部材450の詳細図である。この弾性部材450は、圧電素子430の伸縮方向の腕部である450aと、直交方向の腕部である450bとからなる。ここで、腕部450aと腕部450bの剛性は異なるように構成されている。つまり、弾性部材450は、圧電素子430の伸縮に追従する光学ローパスフィルタ410の揺動を許容するために、伸縮作用を受ける腕部450bの剛性を、腕部450aの剛性よりも小さくしている。具体的には、腕部450aの断面A−Aが、図示するように矩形により構成されているのに対し、腕部450bの断面B−Bは、矩形から一部肉抜きされた形状により構成されている。
腕部450aと腕部450bの剛性を変える構成はこれに限らず、例えば、異なる部材で構成した腕部を二色成形等により一体化するようにしてもよい。
光学ローパスフィルタ410の周囲4辺は、ローパスフィルタ保持部材420に対して圧電素子430と弾性部材450とで隙間のないように密閉されている。
圧電素子430は、本実施の形態では、一般的に知られる圧電体と内部電極とを交互に積層してなる積層型の圧電素子を用いている。より具体的には、圧電体の積層方向に電圧を印加するd33型の積層型圧電素子を採用している。したがって、積層方向により大きな振幅(変位)が得られる。すなわち光学ローパスフィルタ410を振動方向に大きく変位させることが出来る。他にも、圧電素子には様々な種類があり、光学ローパスフィルタの面水平方向、すなわち光軸直角方向に変位を生じるものであれば、何れの圧電素子を使用することは可能である。圧電素子の形状等については、図10を用いて後述する。
また、本実施の形態においては、光学ローパスフィルタ410と圧電素子430が直接当接する構成となっているが、間にスペーサを挟む構成としても良い。スペーサを挟むことにより、圧電素子430はスペーサに対して振動を加えれば良くなるので、レイアウト上の制約を緩和することが可能となる。
上述のように、圧電素子430は、電圧印加による伸縮方向が光軸と直交する方向(カメラ天地方向)に保持されている。ここで、圧電素子430はローパスフィルタ保持部材420に接着され固定されているが、光学ローパスフィルタ410に対しては接着されることなく、接しているのみである。つまり、圧電素子430の光学ローパスフィルタ410に対する振動面は、光学ローパスフィルタ410に固着されていない。
光学ローパスフィルタ410は、弾性部材450で支持されることにより、圧電素子430の伸縮方向のみならず、撮影光軸方向の運動についても所定量許容される。つまり、圧電素子430の振動を受けることにより、光学ローパスフィルタ410は、撮影光軸に直交する平面に対してある程度の傾きを許容されるように構成されている。このように構成することにより、光学ローパスフィルタ上に付着する異物が、撮影光軸方向にも加速度を受け得ることになり、異物除去にはより好ましい。しかし、光学ローパスフィルター410の撮影光軸に直交する平面に対する傾きを許容した場合、圧電素子430と光学ローパスフィルター410を接着していると、圧電素子430にせん断応力が生じてしまう。特に本実施の形態のように積層型の圧電素子を用いた場合には、このようなせん断応力により圧電素子の破壊を招いてしまうため好ましくない。
このような問題に対し、圧電素子430の光学ローパスフィルタに対する振動面が、光学ローパスフィルタ410に接着されないように、つまり接するのみとすれば、光学ローパスフィルタ410が撮影光軸に直交する平面に対して傾いたとしても、圧電素子430にせん断応力は生じないことになる。なぜなら、光学ローパスフィルタ410がこのように傾いたときには、圧電素子430の振動面と、光学ローパスフィルタ410の被接触面は、相対的に位置がずれるのであって、圧電素子430が直接的に回転力を受けることがないからである。
一方、圧電素子430の振動面と光学ローパスフィルタ410とを接着しない場合には、圧電素子の振動に対し、光学ローパスフィルタの追従性が悪くなるという問題を生じる。この問題に対しては、上述のように、光学ローパスフィルタ410を、圧電素子430と付勢部材440とで同一平面内で挟み込むように配置することにより対応している。すなわち、光学ローパスフィルタ410を反対側からバネなどで付勢することにより、圧電素子430が縮み方向に駆動されたときでも、光学ローパスフィルタ410が圧電素子430に常に接するように構成されている。
このように構成することにより、せん断応力の発生による圧電素子430の破壊を避けつつ、光学ローパスフィルター410の振動に対する良好な追従性を確保している。
図7は、図4および図5を用いて説明した撮像ユニット400について、このユニットを構成する部品を更に説明するための分解斜視図である。
500は撮像素子ユニットであり、少なくとも撮像素子33と撮像素子保持部材510により構成されている。470はローパスフィルタユニットであり、少なくとも光学ローパスフィルタ410と、ローパスフィルタ保持部材420、圧電素子430、付勢部材440、弾性部材450、規制部材460により構成されている。
規制部材460は、光学ローパスフィルタ410を、ローパスフィルタ保持部材420との間で撮影光軸方向に所定の間隔を空けて挟みこみ、これにより、光学ローパスフィルタ410の撮影光軸方向の動きを規制している。このように規制することにより、光学ローパスフィルタ410の、撮影光軸に直交する平面に対する所定角以上の傾きを防いでいる。
また、規制部材460は、光学ローパスフィルタ410の開口を規制する開口部を有し、開口部以外に入射される撮影光束を遮光する。これにより、光学ローパスフィルタ410の外周部から撮影光束が撮像素子へ入射することを防ぎ、反射光によるゴーストの発生を防止している。
520は、弾性を有するゴムシートである。ローパスフィルタ保持部材420の腕部420bを介し、ゴムシート520を挟み込んで、撮像素子保持部材510に段ビス530で係止されることにより、ローパスフィルタユニット470が、撮像素子ユニット500に係止される。
図8は、ゴムシート520を説明するための詳細図である。図8に示すように、ゴムシート520は、枠部520aと、段ビス530を支持するための支持部を有する互いに対向する2箇所の腕部520bとが一体的に形成されて構成される。
枠部520aのうち撮像素子33側の面は撮像素子保持部材510に密着し、光学ローパスフィルタ410側の面はローパスフィルタ保持部材420の枠部420aに密着する。これにより、ローパスフィルタ保持部材420と撮像素子33との間はゴムシート520で封止され、光学ローパスフィルタ410とローパスフィルタ保持部材420との間は圧電素子430と弾性部材450とで封止されることになる。従って、光学ローパスフィルタ410と撮像素子33の間の空間は、ゴミ等の異物の侵入を防ぐ密閉空間が形成されることになる。
さらには、圧電素子430が振動状態になってもローパスフィルタ保持ユニット470の振動は、ゴムシート520の弾性により浮遊支持構造になっているため撮像素子33には伝わりにくい。具体的には図9を用いてその構造を説明する。
図9は、図5において断面C−Cを断面方向から表した図である。
上述のように、光学ローパスフィルタ410は、弾性部材450により支持され、弾性部材450はローパスフィルタ保持部材420により支持されて、ローパスフィルタユニット470を構成している。一方撮像素子33は、撮像素子保持部材510に支持されて、撮像素子ユニット500を構成している。両ユニットに対して介在するようにゴムシート520が存在するが、段ビス530は、図示するように、ゴムシート520を挟み込んでローパスフィルタ保持部材420を支持する構造になっている。すなわち、このように弾性部材を挟み込むことによって光学ローパスフィルタ410を支持する構造が浮遊支持構造である。
尚、本実施の形態では520をゴムシートとして説明したが、異物の侵入を防ぐ密閉性と、光学ローパスフィルタ410の振動を撮像素子33に伝達しない振動吸収性を有する部材であればこれに限らない。例えば、一定の厚みを有するスポンジ製の両面テープやゲルシートのような部材であっても適用可能である。
図10(A)は、圧電素子430と光学ローパスフィルタ410の相対的な関係と、発生する力の関係を説明するための正面図であり、(B)は同じく側面図である。
本実施の形態においては、圧電素子の積層方向(振動方向)に直交する2辺のうち、図10(A)に示す光軸直交方向は長さをLとし、図10(B)に示す光軸方向は長さをT2としている。光軸方向には、上述のように他の構成要素(例えば、シャッターユニット32や撮像素子33)が接近して配設されているために、T2は、カメラの大型化を避けるためにも光学ローパスフィルタ410の厚さT1と同等もしくは小さいことが好ましい。また、LはT1よりも大きな長さであって、光学ローパスフィルタ410を振動させるために必要な駆動力を得るための相応の長さとしている。これは、図5を用いて説明したように、光軸直交方向にはローパスフィルタ保持部材420の収納部421が設けられており、この収納部421の長さは光学ローパスフィルタ410の幅に収まる範囲で比較的容易にスペースを取ることが可能であるからである。したがって、このように2辺を規定することにより、振動のための駆動力はL×T2の圧電体面積に比例して得られることになる。
また、上述のようにLを大きくすることで、光軸に垂直な面内での回転において、光学ローパスフィルタ410により大きなモーメントが発生しても、圧電素子430の許容座屈応力に収まることを期待することができる。したがって、圧電素子430の座屈破壊を防止することが可能となる。
より具体的には、光軸に垂直な面内での回転により発生するモーメントMにより、圧電素子430の端部に発生する応力Fは以下の式(1)で規定される。
F=M/(L/2) ・・・式(1)
式(1)からも明らかなように、発生するモーメントMと圧電素子430の光軸直交方向の長さLによって、圧電素子430の端部に発生する応力Fは変化する。式(1)によれば、Lを可能な限り長くした方が、圧電素子430の端部に発生する応力を小さくする事が可能となり、結果として許容座屈応力の範囲に収めることが可能となる。
なお、許容座屈応力とは、圧電素子430が正常に駆動されるための、圧電素子430に加えられる応力の制限範囲を示すものである。
次に光学ローパスフィルタ410の振動について述べる。
圧電素子430に対して、制御手段であるMPU100が所定の周期電圧を印加するように制御すると、圧電素子430は光軸と略直角方向であって、カメラ天地方向に伸縮して振動する。光学ローパスフィルタ410は、圧電素子430と付勢部材440とで略同一平面内方向で挟み込まれるように配置されている。したがって、光学ローパスフィルタ410と圧電素子430は常に接した状態で保持されているため、圧電素子430の振動が光学ローパスフィルタ410に伝達される。
上述の通り、ローパスフィルタ保持部材420と撮像素子33との間は、ゴムシート520により、また、光学ローパスフィルタ410とローパスフィルタ保持部材420との間は、圧電素子430と弾性部材450により封止されている。そのため、光学ローパスフィルタ410と撮像素子33の空間は、ゴミ等が侵入しないような密閉空間が形成されている。また、同時に、光学ローパスフィルタ410等を含むローパスフィルタユニット470は、撮像素子ユニット500に対してゴムシート520を挟む込むように構成されているので、ローパスフィルタユニット470の振動は、ゴムシート520により吸収される。したがって、ローパスフィルタユニット470の振動は、撮像素子33にはほとんど伝わらない。
このような構成により、圧電素子430が振動しても、撮像素子33にはその影響はほとんど及ばない。その結果、振動を受ける構造体を限定することが可能となり、特に振動を起こしたい光学ローパスフィルタ410を重点的に振動させることができる。これにより、振動を受ける構造体の全質量を押さえることが可能となり、圧電素子430を駆動するエネルギーは、より小さくて済むことになる。
さらに、光学ローパスフィルタ410の振動が、撮像素子33にほとんど伝わらないため、撮像素子33の接着剥がれといった破損を防止することが可能となる。また逆に、カメラに対して衝撃が加えられた時には、その衝撃は圧電素子430にほとんど伝わらないことになるため、圧電素子430がカメラに加えられる衝撃により破損されることを防止できる。
また、上述の通り、光学ローパスフィルタ410と圧電素子430は接着しない、すなわち結合しない構成となっているため、圧電素子430に周期電圧を印加して伸縮させても、圧電素子430は光学ローパスフィルタ410を押し出す方向にのみ力が発生し、光学ローパスフィルタ410が圧電素子430を引張る方向には力が発生しない。そのため、圧電素子430に超音波域の高周波電圧を印加したとしても、圧電素子430に過大な引張り力が付加されることがなく、積層部分における剥離といった破損を防ぐことが可能となる。
次に、本実施の形態において、光学ローパスフィルタ410表面に付着した塵埃などを除去する動作について説明する。
クリーニング指示操作部材44が撮影者により操作されると、クリーニングモード開始の指令を受けて、カメラ本体1をクリーニングモードの状態に移行させる。なお、本実施の形態では、クリーニング指示操作部材44を設けたが、本発明はこれに限定されるものではなく、クリーニングモードへの移行を指示するための操作部材は、機械的なボタンに限らず、カラー液晶モニタ19に表示されたメニューから、カーソルキーや指示ボタンなどを用いて指示するものであっても良い。
またクリーニングモードへの移行は、電源ON時など通常のカメラシーケンス中において自動的に行われるようにしても良いし、撮影回数や日付等を基準として行われるようにしても良い。
電力供給回路110は、クリーニングモードに必要な電力を、カメラ本体1の各部へ必要に応じて供給を行う。また、これに並行して電源42の電池残量を検出して、その結果をMPU100へ送信する。
MPU100は、クリーニングモード開始の信号を受け取ると、圧電素子駆動回路111に駆動信号を送る。圧電素子駆動回路111は、MPU100より駆動信号を受け取ると、圧電素子430を駆動するための周期電圧を生成し、圧電素子430に対して印加する。圧電素子430は、印加される電圧に応じて伸縮する。圧電素子が伸びると、光学ローパスフィルタは圧電素子430に押されて光軸に対して直交方向(面方向)に移動し、付勢部材440はその移動量分だけ縮む。圧電素子430が縮むと、光学ローパスフィルタ410は付勢部材440によって圧電素子430に対して付勢されているため、圧電素子430の縮む運動に追従して移動する。圧電素子430に周期電圧が印加されると、上記運動の繰り返しが生じ、光学ローパスフィルタ410は圧電素子430の周期的な伸縮に追従して、光軸に直角で面水平方向に振動する。