(実施形態1)
以下、図面を参照して、本発明によるタッチ入力装置および当該タッチ入力装置を備えた表示装置の第1の実施形態を説明する。
図1は、本実施形態の表示装置300の模式的なブロック図である。表示装置300は、タッチ入力装置100と、表示ユニット200とを備える。
表示ユニット200は、対象物を表示面に表示する表示部210と、表示部210を制御する表示制御部220とを備える。表示部210は、例えば、液晶表示素子であり、全画面でワイドVGA(800×480画素)の表示解像度を有している。表示制御部220の制御により、対象物は、表示部210の表示面に表示される。本明細書において、対象物は、映像、文字およびアイコン等を含む。アイコンは、複数のシンボル、例えばコマンドを表すボタン、文字入力用キー等を含む。
タッチ入力装置100は、表示部210の表示面に取り付けて用いられるタッチパネル110と、タッチパネル110が直接的または間接的にタッチされることにより、タッチパネル110のタッチされた位置を示すタッチ位置データを取得するタッチ位置データ取得部120と、タッチ位置データ取得部120を制御する制御部130とを備える。
表示部210の表示面に表示されている対象物の表示範囲の中で対象物の代表点の位置が予め設定されており、対象物の代表点の位置は代表点位置データによって示される。対象物の代表点の位置は、例えば、対象物の中心位置である。代表点は、対象物の外形によって異なってよく、対象物が等方的な外形を有する場合代表点は対象物の中心であってよく、対象物が異方的な外形を有する場合代表点は対象物の外縁上の点であってよい。また、対象物がアイコンである場合、表示部210の表示面に実際に表示されるアイコンの形状を単純な形状に置き換えて設定しても差し支えないとき、例えば、パーソナルコンピュータのデスクトップ上に表示されたアイコンのように、アイコンよりも一回り大きい四角形や円形を想定し、表示されているアイコンの輪郭とは関係なく四角形や円形をアイコンの有効範囲と見なして扱うとき、アイコンの代表点の位置は、アイコンそのものの中心位置に限定されず、アイコンの有効範囲(例えば、四角形や円形)の中心(重心)の位置としてもよい。
代表点位置データは表示制御部220に収納されており、表示制御部220は、表示されている対象物(複数表示している場合は各対象物)の代表点位置データを表示部210およびタッチ入力装置100の制御部130に出力する。代表点位置データは、例えば、表示部210の表示面における座標データ(X座標、Y座標)として与えられる。
タッチパネル110は透明領域を有しており、表示装置300において、タッチパネル110は表示部210の表示面に取り付けられている。操作者は、タッチパネル110の透明領域を介して表示部210の表示面を見ることができ、表示部210の表示面に表示された対象物に対応するタッチパネルの部分をタッチする。タッチパネル110は、例えば、静電容量結合方式のタッチパネルであり、静電容量結合方式のタッチパネルは、位置検出用透明導電膜(図1には図示せず、以下、単に透明導電膜と称する)と、透明導電膜の四隅に設けられた端子電極(図1には図示せず)とを有している。
タッチパネル110がタッチされると、タッチ位置データ取得部120は、タッチパネル110のタッチされた位置を示すタッチ位置データを取得する。タッチ位置データ取得部120は、タッチパネル110の端子電極(図1には図示せず)に同相同電圧を印加し、端子電極のそれぞれを流れる電流を測定している。タッチパネル110がタッチされる(触られる)と、端子電極を流れる電流の大きさが変化し、この電流の変化量を測定した結果に基づいてタッチ位置データを生成・取得する。タッチ位置データも、例えば、表示される対象物の位置データと同様に、表示部210の表示面における座標データ(X座標、Y座標)として与えられる。
タッチ位置データ取得部120によって取得されたタッチ位置データが実際にタッチされた位置である真のタッチ位置を示すことが理想であるが、タッチパネル自体の位置検出精度および外来ノイズの影響により、タッチ位置データは、真のタッチ位置とは異なる位置を示すことがある。本明細書において、タッチ位置データによって示された位置の精度のことをタッチ位置データの精度ということがある。タッチ位置データの精度は、タッチパネル110の位置取得原理、回路構成、外来ノイズ等に依存するが、表示部210の画面フルスケールに対して一般に数%のオーダーである。
タッチ位置データ取得部120は、表示部210の同期信号と非同期的に、または、外部トリガーに応じて間歇的にタッチ位置データを取得する。あるいは、外来ノイズの影響を減少させるために、タッチ位置データ取得部120は垂直同期信号等に同期してタッチ位置データを取得する。
上述したように、制御部130には、対象物の代表点の位置を示す代表点位置データが伝達されており、タッチ位置データ取得部120がタッチ位置データを取得すると、制御部130は、タッチ位置データによって示された位置と対象物の代表点の位置との間の距離を計算する。複数の対象物が表示されている場合には、タッチ位置データによって示された位置と代表点位置データによって示された各対象物の代表点の位置との間の距離をそれぞれ計算し、最も短い距離に対応する対象物を抽出する。以下の説明において、このように計算されたタッチ位置データによって示された位置と対象物の代表点の位置との間の距離を距離Lと称する。複数の対象物が表示された場合は、抽出された対象物の代表点の位置との間の距離(すなわち、最短距離)を距離Lとする。
本実施形態のタッチ入力装置100では、制御部130には予め判別閾値が設定されている。以下の説明において、この判別閾値を判別閾値Tと称する。制御部130は、距離Lを計算した後、距離Lを示す値と判別閾値Tとを比較する。なお、判別閾値は、対象物によって異なってもよく、また判別閾値は、タッチ位置データによって示された位置と対象物の代表点の位置とを結ぶ方向に応じて異なってもよい。
比較の結果、距離Lを示す値が判別閾値T以下である場合、すなわち、タッチ位置データによって示された位置と対象物の代表点の位置との間の距離が所定の距離より短い場合、制御部130は、対象物が特定されたことを示す信号を出力する。対象物が特定されると、制御部130は次の処理を行う。例えば、制御部130の指示により、表示制御部220は表示部210に次の画面を表示させる。
一方、比較の結果、距離Lを示す値が判別閾値Tよりも大きい場合、すなわち、タッチ位置データによって示された位置と対象物の代表点の位置との間の距離が所定の距離より長い場合、制御部130は、タッチ位置データ取得部120にタッチ位置データをさらに取得させ、タッチ位置データの積算平均を行う。タッチ位置データの積算平均は、すでに取得したタッチ位置データと新たに取得したタッチ位置データとを積算したものを平均化することよって行われる。積算平均を行うことにより、外来ノイズの影響が低減され、タッチ位置データの精度を向上させることができる。
次いで、制御部130は、積算平均を行ったタッチ位置データによって示された位置と対象物の代表点の位置との間の距離を計算する。以下の説明において、この距離を距離L’と称する。
制御部130は、また、判別閾値Tを増加させる。以下の説明において、判別閾値Tを増加させることによって得られた判別閾値を判別閾値T’と称する。判別閾値は例えば積算回数に応じて増大させられる。すなわち、タッチ位置データの精度の上昇に伴い、判別閾値を増大させる。
次いで、制御部130は、距離L’を示す値と判別閾値T’とを再比較する。再比較の結果、距離L’を示す値が判別閾値T’以下である場合、制御部130は、対象物が特定されたことを示す信号を出力する。対象物が特定されると、制御部130は次の処理を行う。例えば、制御部130の指示により、表示制御部220は表示部210に次の画面を表示させる。
以下、図1および図2を参照して、本実施形態の表示装置300の動作手順を説明する。
起動された表示装置300では、表示部210に初期画面または待ち受け画面が表示されている。表示制御部220の制御により、対象物の代表点の位置が表示部210の表示面の代表点位置データによって示された位置となるように対象物が表示される。タッチ入力装置100の制御部130は、表示制御部220から代表点位置データを受け取る(図2のS410)。
タッチパネル110は待機状態であり、操作者がタッチパネル110をタッチすると、タッチ位置データ取得部120は、タッチパネル110のタッチされた位置を示すタッチ位置データを取得する。例えば、タッチ位置データ取得部120は、表示ユニット200の垂直同期周期に合わせて、16.7msecの間にタッチパネル110の端子電極に流れる電流を測定した結果に基づいてタッチ位置データを取得する。この時間は、操作者がタッチパネル110を指でタッチし、タッチパネル110から指を離すまでの一般的な時間(0.1秒〜1秒)よりも短い。つまり、タッチ位置データは、操作者がタッチパネルを1回タッチしている間に取得される。制御部130は、タッチ位置データ取得部120がタッチ位置データを取得したか否かを判定する(図2のS420)。タッチ位置データ取得部120がタッチ位置データを取得していないと判定されると、制御部130は、タッチ位置データを取得するまで待機する。
制御部130には判別閾値Tが予め設定されている。判別閾値Tは対象物ごとに異なっても良いし、1つの対象物に対して複数の判別閾値を設定してもよい。例えば、対象物が異方的な形状を有している場合や、ある方向には対象物が隣接して配置され、別の方向には対象物が隣接して配置されていない場合には、対象物の代表点からある方向の判別閾値と別の方向の判別閾値とを異なる値に設定してもよい。なお、ここでは、説明を過度に複雑にすることを防ぐ目的で、複数の対象物の判別閾値が一定であるとして説明する。
タッチ位置データが取得されると、制御部130は、タッチ位置データによって示された位置と代表点位置データによって示された対象物の代表点の位置との間の距離Lを計算し、距離Lを示す値と判別閾値Tとを比較する(図2のS430)。なお、判別閾値Tは、誤った特定がされないように十分に小さい値に初期設定しておく。
(図2のS430)の比較の結果、距離Lを示す値が判別閾値T以下である場合、当該対象物が特定される(図2のS470)。例えば、タッチ位置データによって示された位置が対象物の代表点の位置近傍である場合、距離Lを示す値は小さく、距離Lを示す値が判別閾値T以下となる。
対象物が特定される(図2のS470)と、制御部130は次の処理を行う。例えば、制御部130の指示により、表示制御部220は表示部210に次の画面を表示させる。
この場合、対象物がタッチされたと短時間に決定されるので、表示装置300は操作者のタッチに対してすぐに応答することができる。
一方、(図2のS430)の比較の結果、距離Lを示す値が判別閾値Tよりも大きい場合、すなわち、タッチ位置データによって示された位置が対象物の代表点の位置から離れており、タッチ位置データによって示された位置と対象物の代表点の位置との間の距離Lが比較的長い場合、当該対象物が特定されない。従って、複数の対象物から誤った対象物が特定されることが防止される。また、表示された対象物が1つの場合においても、操作者が対象物をタッチする意図なくタッチパネルに偶然接触してしまった場合に、対象物が特定されたと誤った決定がなされることを有効に防ぐことができる。
このとき、制御部130は、対象物が特定されていないことを示す信号、または、対象物の特定が留保されたことを示す信号を表示制御部220に出力してもよい。
(図2のS430)の比較により対象物が特定されたことを示す信号を出力しない場合、制御部130は、タッチ位置データ取得部120によってタッチ位置データをさらに取得し、タッチ位置データの積算平均を行う(図2のS440)。タッチ位置データの積算平均を行うことにより、外来ノイズの影響が低減され、タッチ位置データの精度が向上する。
次いで、制御部130は、積算平均を行ったタッチ位置データによって示された位置と代表点位置データによって示された代表点の位置との間の距離L’を再計算する。
制御部130は、判別閾値Tを増加させた判別閾値T’を得る(図2のS450)。
次いで、制御部130は、距離L’を示す値と判別閾値T’とを再比較する(図2のS460)。
(図2のS460)の再比較の結果、距離L’を示す値が判別閾値T’以下である場合、制御部130は、対象物が特定されたことを示す信号を出力する(図2のS470)。(図2のS460)の再比較では、(図2のS430)の比較において用いた判別閾値Tよりも増加させた判別閾値T’を用いているため、例えば、(図2のS430)の比較において距離Lを示す値が判別閾値Tよりも大きく、かつ、積算平均を行ってもタッチ位置データによって示された位置が変化しない(すなわち、距離Lと距離L’とが等しい)場合でも、距離L’を示す値が判別閾値T’以下となることがある。この場合、(図2のS430)の比較において対象物がタッチされたと決定されなかった場合でも、(図2のS460)の再比較において、対象物が特定されるので、操作者はタッチを繰り返さなくてもよい。
このように、(図2のS460)の再比較では、高精度のタッチ位置データと判別閾値Tを増加させた判別閾値T’とを利用しているため、タッチ入力装置100の操作性の低下を防ぎつつ、誤った特定がなされることを抑制することができる。
対象物が特定される(図2のS470)と、制御部130は、次の処理を行う。例えば、制御部130の指示により、表示制御部220は表示部210に次の画面を表示させる。表示制御部220の制御により、表示部210が新たな対象物を含む画面を表示するとき、前回の判別閾値はリセットされ、新たに対象物の判別閾値が初期設定される。
(図2のS460)の再比較の結果、距離L’を示す値が判別閾値T’よりも大きい場合、タッチ位置データの積算平均(図2のS440)、判別閾値の増加(図2のS450)および再比較(図2のS460)を繰り返す。この場合も、繰り返しが行われている際の再比較(図2のS460)において、積算平均を行ったタッチ位置データによって示された位置と対象物の代表点の位置との間の距離が増加させた判別閾値以下であったら、対象物が特定される(図2のS470)。タッチ位置データの精度は、積算平均を行うほど、高くなる。
なお、操作者の指がタッチパネル110から一旦離れたら、(図2のS420)に戻るように設定してもよい。
このように、本実施形態のタッチ入力装置100では、タッチ位置データの精度が低い場合には、判別閾値Tを用いて比較を行い、距離Lを示す値が判別閾値T以下である場合に対象物が特定されたことを示す信号を出力する一方で、タッチ位置データの精度が高い場合には、判別閾値Tを増加させた判別閾値T’を用いて再比較を行い、距離L’を示す値が判別閾値T’以下である場合に対象物がタッチされたと決定している。
言い換えると、タッチ位置データの精度が低い場合には、タッチ位置に対するタッチ位置データによって示された位置のずれに起因して誤った決定がなされることを防ぐために対象物が特定されたことを示す信号を出力するための条件を厳しく設定しており、対象物が確実にタッチされたといえる場合にのみ、対象物がタッチされたと短時間に決定し、それ以外の場合には、対象物が特定されたことを示す信号を出力することを留保している。一方、タッチ位置データの精度が向上すると、誤った決定が起きにくくなるため、対象物が特定されたことを示す信号を出力するための条件を緩和している。したがって、本実施形態のタッチ入力装置100によれば、応答性および操作性の低下を防ぎつつ、対象物が誤って特定されることを防止することができる。
以下、図3を参照して、本実施形態の表示装置300のさらに具体的な構成を説明する。
タッチ入力装置100の制御部130は、タッチ位置データ取得部120によって取得されたタッチ位置データの積算平均を行う積算平均部131と、タッチ位置データによって示された位置と対象物の代表点の位置との間の距離を計算する距離計算部132と、距離計算部132によって計算された距離を示す値と判別閾値とを比較する比較部133と、判別閾値を制御する判別閾値制御部134と、積算平均部131によって積算平均が行われた回数をカウントする積算カウンター135と、対象物がタッチされたと決定されたことを示す信号を送出する対象物特定信号送出部136とを有する。
表示ユニット200の表示制御部220は、表示画面描画部221と、対象物データ収納部222と、メインシステム制御部223とを有する。表示画面描画部221は、対象物を含む画面を表示部210に表示させる。対象物データ収納部222には、対象物に関するデータ、具体的には、対象物の代表点位置データおよび対象物の表示範囲を示すデータ等が収納されている。メインシステム制御部223は、対象物データ収納部222および表示画面描画部221を制御する。メインシステム制御部223の制御により、対象物データ収納部222は、表示部210に表示される対象物に関するデータ(例えば、代表点位置データ)を表示画面描画部221およびタッチ入力装置100の距離計算部132に出力する。
対象物特定信号送出部136は、対象物が特定された場合、表示ユニット200のメインシステム制御部223に特定信号を出力する。対象物特定信号送出部136は、また、比較により対象物が特定されたことを示す信号を出力しない場合、対象物が決定されていないことを示す信号、または、対象物の特定が留保されたことを示す信号をメインシステム制御部223に出力してもよい。
ここで、図3および図4を参照して、本実施形態のタッチ入力装置100における制御部130および表示制御部220の構成要素の動作手順を説明する。ここでは、複数の対象物が表示された場合について説明する。
メインシステム制御部223の制御により、表示画面描画部221は、複数の対象物の代表点の位置が表示部210の表示面の代表点位置データによって示された位置となるようにそれぞれの対象物を表示させる。距離計算部132は、対象物データ収納部222からそれぞれの代表点位置データを受け取る(図4のS410)。操作者は、タッチパネル110を介して表示部210の表示面に表示された複数の対象物を見て、複数の対象物のうちの1つの対象物を選択し、当該対象物に対応するタッチパネル110の部分をタッチする。
タッチパネル110がタッチされると、タッチ位置データ取得部120は、タッチパネル110のタッチされた位置を示すタッチ位置データを取得する(図4のS420)。一方、タッチパネル110がタッチされないと、タッチ位置データ取得部120はタッチ位置データを取得できず、タッチパネル110がタッチされるまで待機する。
タッチ位置データ取得部120がタッチ位置データを取得する(図4のS420)と、距離計算部132は、タッチ位置データによって示された位置と代表点位置データによって示された代表点の位置との間の距離を計算し、計算結果に基づいて、複数の対象物から、タッチ位置データによって示された位置に最も近い代表点の位置を示す代表点位置データに対応する1つの対象物を抽出する(図4のS422)。以下の説明において、抽出された1つの対象物を最近対象物とも称し、タッチ位置データによって示された位置と最近対象物の代表点の位置との間の距離(最短距離)を距離Lと称する。
なお、距離計算部132は、最短距離を計算するために、必ずしも、タッチ位置データによって示された位置とすべての対象物の代表点の位置との間の距離をそれぞれ計算する必要はない。例えば、表示部210の表示面を複数のブロックに割り当て、タッチ位置データによって示された位置を含むブロックとそのブロックに隣接するブロック内に存在する対象物についての距離のみを計算し、残りのブロック内に存在する対象物についての距離の計算を省略してもよい。
判別閾値制御部134は判別閾値Tを設定する(図4のS424)。ここで、判別閾値Tは、比較的小さい値に予め設定されている。外来ノイズの影響により、実際にタッチされた位置であるタッチ位置に対してタッチ位置データによって示された位置が大きくずれることがあるが、判別閾値Tを小さい値に設定しておくことにより、操作者がタッチしていない対象物がタッチされたと誤った決定がなされることを防ぐことができる。
判別閾値は積算平均のカウント数およびパラメータの関数によって設定されてもよく、例えば、関数は(a−b/(n+1))(ここで、a,bはパラメータ(a>b>0)、nは積算平均が行われたカウント数)である。なお、「a」の値は、外来ノイズなどによる誤差がない理想的な場合にある対象物が選択されたと見なすべき範囲をカバーし、かつ複数の対象物の有効範囲がオーバーラップしないように設定されており、「b」の値は、現実的に想定されるノイズによる検出座標の誤差範囲となるように設定されていてもよい。もちろん、他の関数を用いても良い。正規分布に従うランダムノイズをn回積算平均すると標準偏差は1/√(n+1)に比例して減少するので、上述した関数を(a−b/√(n+1))としても良い。
パラメータa,bは、タッチ位置データによって示された位置に応じて判別閾値制御部134によって決定されるパラメータである。パラメータa,bの値は、例えば、最近対象物に応じて異なっていてもよいし、同じ最近対象物であってもタッチ位置データによって示された位置に応じて異なっていてもよい。例えば、対象物が異方的な形状を有している場合や、ある方向には対象物が隣接して配置され、別の方向には対象物が隣接して配置されていない場合には、タッチ位置データによって示された位置が対象物の代表点からある方向に存在する場合のパラメータの値と別の方向に存在する場合のパラメータの値とを異なるようにしてもよい。
ここで、パラメータをa1,b1とすると、カウント数は「0」であり、判別閾値T=a1−b1である。
比較部133は、距離Lを示す値と判別閾値Tとを比較する(図4のS430)。比較部133による比較(図4のS430)の結果、距離Lを示す値が判別閾値T以下である場合、すなわち、タッチ位置データによって示された位置と最近対象物の代表点の位置との間の距離が所定の距離より短い場合、最近対象物が特定される(図4のS470)。例えば、タッチ位置データによって示された位置が最近対象物の中心近傍である場合、距離Lを示す値は判別閾値Tよりも小さく、最近対象物が短時間に特定される。
特定信号は対象物ごとに予め設定されており、最近対象物が特定されると、対象物特定信号送出部136は、最近対象物に対応する特定信号を表示ユニット200のメインシステム制御部223に出力する。メインシステム制御部223は特定信号に応じて所定の処理を行う。
一方、比較部133による比較(図4のS430)の結果、距離Lを示す値が判別閾値Tよりも大きい場合、すなわち、タッチ位置データによって示された位置と最近対象物の代表点の位置との間の距離が所定の距離より長い場合、最近対象物が特定されない。このとき、対象物特定信号送出部136は、対象物が決定されていないことを示す信号、または、対象物の特定が留保されたことを示す信号をメインシステム制御部223に出力してもよい。
比較により最近対象物が特定されたことを示す信号を出力しない場合、タッチ位置データ取得部120はタッチ位置データをさらに取得し、積算平均部131は、タッチ位置データの積算平均を行う(図4のS440)。このように積算平均を行うことにより、高精度のタッチ位置データが取得される。積算平均が行われると(図4のS440)、積算カウンター135はカウント数を「0」から「1」に更新する。ただし、判別閾値制御部134において関数に更新されたカウント数が関数に代入されるのは、後述するS424において判別閾値を新たに設定するとき、および、S450において判別閾値を再設定するときである。
上述したように、(図4のS422)において最短距離を計算して最近対象物をすでに抽出しているが、例えば、対象物が比較的隣接して配置されており、2個または3個以上の対象物の中間点がタッチされた場合、外来ノイズの影響に起因して、すでに抽出した最近対象物が、積算平均されたタッチ位置データによって示される位置に最も近い対象物と異なることがある。この場合、(図4のS422)において二番目以降に近い対象物とされていたものが、積算平均値によって示される位置に最も近い対象物となる。
したがって、積算平均部131がタッチ位置データの積算平均を行った後、距離計算部132は、積算平均値によって示された位置と複数の対象物の代表点の位置との間の距離のうち少なくとも最短距離を再計算し、複数の対象物から、再計算された最短距離に対応する対象物を再抽出する(図4のS442)。なお、以下の説明において、再計算された最短距離を距離L’とも称し、この距離L’に対応する対象物を再抽出された最近対象物とも称する。
距離計算部132は、すべての対象物について距離の再計算を行ってもよいし、上述したように、積算平均値によって示された位置を含むブロックとそのブロックに隣接するブロック内に存在する対象物についてのみ距離の再計算を行ってもよい。あるいは、表示部210がキーボードを表示している場合、最初の計算において四番目までに近いとされた対象物のうちの1つの対象物が積算平均後の最近対象物になる可能性が高いので、距離計算部132は、四番目までに近いとされた対象物についての距離のみの再計算を行ってもよい。
次いで、再抽出された最近対象物がすでに抽出された最近対象物と同じであるかを判定する(図4のS442)。
判別閾値は対象物に応じて異なることがあるので、再抽出された最近対象物がすでに抽出された最近対象物と異なる場合、再抽出された最近対象物に応じた判別閾値を用いることが必要となる。
したがって、(図4のS442)の判定の結果、再抽出された最近対象物が抽出された最近対象物と異なる場合、判別閾値制御部134は、再抽出された最近対象物に基づいて判別閾値T’’を新たに設定し(図4のS424)、比較部133は、再計算されたL’と判別閾値T’’とを比較する(図4のS430)。このとき、積算平均値によって示された位置によって決定されるパラメータをa2,b2とすると、カウント数は「1」であるので、判別閾値はT’’=a2−b2/2となる。
比較部133による比較(図4のS430)の結果、再計算された距離L’が判別閾値T’’以下である場合、最近対象物が特定される(図4のS470)。この場合、対象物特定信号送出部136は、再抽出された対象物が特定されたことを示す信号をメインシステム制御部223に出力する。
なお、比較部133による比較(図4のS430)の結果、再計算された距離L’が判別閾値T’’よりも大きい場合、再び、タッチ位置データのさらなる取得および積算平均(図4のS440)ならびに最近対象物の再抽出および判定を行う(図4のS442)。
一方、(図4のS442)の判定の結果、再抽出された最近対象物がすでに抽出された最近対象物と同じである場合、判別閾値制御部134は、同じ対象物について判別閾値T’’’を仮設定する(図4のS444)。判別閾値は、再抽出された最近対象物および積算平均値によって示される位置によって決定されるパラメータに基づいて仮設定される。なお、関数を用いる場合、上述したように、カウント数は「1」であるが、更新されたカウント数はまだ関数に代入されていない。
次いで、仮設定された判別閾値T’’’がすでに設定された判別閾値Tと同じであるかを判定する(図4のS444)。
上述したように、判別閾値は、例えば、対象物が異方的な形状を有している場合や、ある方向には対象物が隣接して配置され、別の方向には対象物が隣接して配置されていない場合には、タッチ位置データによって示された位置が対象物の代表点からある方向にある場合の判別閾値と別の方向にある場合の判別閾値とは異なることがあるので、仮設定された判別閾値がすでに設定された判別閾値と異なる場合、積算平均値によって示された位置に応じた判別閾値を設定することが必要となる。
したがって、(図4のS444)の判定の結果、仮設定された判別閾値T’’’がすでに設定された判別閾値Tと異なる場合、積算平均を行った後のパラメータは積算平均を行う前のパラメータと異なっており、積算平均値によって示された位置によって決定されるパラメータをa3,b3とすると、仮設定された判別閾値はT’’’=a3−b3である。
次いで、判別閾値制御部134は、積算平均値によって示された位置によって決定されるパラメータと積算平均を行った回数との関数に基づいて判別閾値T’’’を新たに設定する(図4のS424)。ここで、判別閾値制御部134において、関数に更新されたカウント数「1」が代入され、判別閾値はT’’’=a3−b3/2となる。
比較部133による比較(図4のS430)の結果、再計算された距離L’が新たに設定された判別閾値T’’’以下である場合、最近対象物が特定される(図4のS470)。この場合、対象物特定信号送出部136は、再抽出された対象物が特定されたことを示す信号をメインシステム制御部223に出力する。
なお、比較部133による比較(図4のS430)の結果、再計算された距離L’が新たに設定された判別閾値T’’’よりも大きい場合、再び、タッチ位置データのさらなる取得および積算平均(図4のS440)、最近対象物の再抽出および判定(図4のS442)、ならびに、判別閾値の仮設定および判定(図4のS444)を行う。
なお、ここでは、(図4のS444)の判定の結果、仮設定された判別閾値T’’’がすでに設定された判別閾値Tと異なる場合、仮設定された判別閾値(a3−b3)とは異なる判別閾値(a3−b3/2)が(図4のS424)において新たに設定されたが、本実施形態はこれに限定されない。仮設定された判別閾値(a3−b3)が(図4のS424)において新たに設定されてもよい。
一方、(図4のS444)の判定の結果、仮設定された判別閾値がすでに設定された判別閾値と同じである場合、積算平均を行った後のパラメータは、積算平均を行う前のパラメータと同じであるので、判別閾値T’’’=a1−b1である。
次いで、判別閾値制御部134は、判別閾値T(=T’’’)を増加させて判別閾値T’を得て、閾値T’を再設定する(図4のS450)。ここでは、判別閾値制御部134において、関数に更新されたカウント数「1」が代入され、判別閾値制御部134によって設定される判別閾値は、積算カウンター135のカウント数に応じて変更される。したがって、カウント数が「1」のとき判別閾値T’=a1−b1/2となる。なお、n(カウント数)が増加するほど判別閾値は大きくなり、判別閾値は最終的にa1に収束する。
次いで、比較部133は、距離L’を示す値と判別閾値T’とを再比較する(図4のS460)。
比較部133による再比較(図4のS460)の結果、距離L’を示す値が判別閾値T’以下である場合、最近対象物が特定される(図4のS470)。最近対象物が特定されると、対象物特定信号送出部136は、表示ユニット200のメインシステム制御部223に特定信号を出力する。メインシステム制御部223は特定信号に応じて所定の処理を行う。
比較部133による再比較(図4のS460)の結果、距離L’を示す値が判別閾値T’よりも大きい場合、タッチ位置データのさらなる取得および積算平均(図4のS440)、最近対象物の再抽出および判定(図4のS442)、判別閾値の仮設定および判定(図4のS444)、判別閾値の増加および再設定(図4のS450)ならびに再比較(図4のS460)を繰り返す。積算カウンター135は、積算平均部131が積算平均を行うとともにカウント数を1つずつ更新する。カウント数が大きくなるほど、すなわち、積算平均を繰り返し行うほど、外来ノイズの影響が低減され、タッチ位置データによって示された位置は所定の位置に収束する。
このような繰り返しが行われている際の再比較(図4のS460)において、積算平均を行ったタッチ位置データによって示された位置と最近対象物の代表点の位置との間の距離が増加させた判別閾値以下となったら、最近対象物が特定される(図4のS470)。ここで、判別閾値が上述した関数によって設定されている場合、操作者がタッチパネル110を指でタッチしてから、0.1秒から1秒程度の時間が経過した後に判別閾値がa1に収束するように、1回の積算平均を行う時間および繰り返し周期を設定してもよい。最近対象物が特定される(図4のS470)と、カウント数および判別閾値はリセットされる。
また、操作者の指がタッチパネル110から一旦離れたら、カウント数および判別閾値はリセットされ、(図4のS420)に戻るように設定してもよい。
また、比較(図4のS430)または再比較(図4のS460)において、タッチ位置データによって示された位置と最近対象物の代表点の位置との間の距離LまたはL’を示す値と別の判別閾値T1とを比較し、距離LまたはL’を示す値が判別閾値T1よりも大きい場合、すなわち、タッチ位置データによって示された位置が対象物の代表点の位置と大きく離れている場合、このタッチ位置データを不要なデータとして無視し、(図2のS420)に戻るように設定してもよい。この場合、不要な処理が行われることを防ぐことができる。
以上のように、本実施形態のタッチ入力装置100によれば、タッチ位置データの精度が低い場合、誤った決定がなされることを防ぐために最近対象物が特定されたことを示す信号を出力するための条件を比較的厳しく設定し、最近対象物が確実にタッチされたといえる場合、最近対象物がタッチされたと短時間に決定して、応答性の低下を防いでおり、それ以外の場合には、最近対象物がタッチされたとは決定せず、最近対象物がタッチされたと誤った決定がなされることを防いでいる。また、タッチ位置データの精度が高い場合には条件を緩和して、操作性の低下を防ぎつつ、誤った決定がなされることを抑制している。
なお、上述した説明では、「積算平均が行われたタッチ位置データによって示された位置」と「対象物の代表点の位置」との間の距離を示す値が判別閾値T’以下になるまで(すなわち、対象物が特定されるまで)、タッチ位置データの積算平均(図2および図4のS440)、最近対象物の再抽出および判定(図4のS442)、判別閾値の仮設定および判定(図4のS444)、判別閾値の増加および再設定(図2および図4のS450)ならびに再比較(図2および図4のS460)を繰り返したが、本実施形態はこれに限定されない。タッチ位置データの積算平均(S440)を行う回数(すなわち、カウント数n)の上限を予め決めておいてもよい。あるいは、1回目の再比較(S460)において、距離L’を示す値が判別閾値Tよりも大きい場合、対象物がタッチされていないと決定して、操作者が再びタッチパネル110をタッチするまで待機してもよい。
なお、上述した説明では、積算平均の後に最近対象物の再抽出を行った(図4のS442)が、積算平均の後の最近対象物の再抽出を省略してもよい。例えば、アイコンが比較的離れて配置されている場合、積算平均の後に最近対象物を再抽出しなくても、積算平均の後の最近対象物は積算平均の前の最近対象物と変わらないので、積算平均の後の最近対象物の再抽出を省略することができる。
また、上述した説明では、積算平均の後に判別閾値の仮設定を行った(図4のS444)が、積算平均の後の判別閾値の仮設定を省略してもよい。例えば、同じ最近対象物であればパラメータ、すなわち、判別閾値が同じになる場合、判別閾値の仮設定を省略しても、積算平均の後の判別閾値は積算平均の前の判別閾値と変わらないので、積算平均の後の判別閾値の仮設定を省略することができる。
なお、最近対象物の再抽出(図4のS442)および判別閾値の仮設定(図4のS444)が省略される場合、積算平均部131がタッチ位置データの積算平均を行った後、距離計算部132は、積算平均を行ったタッチ位置データによって示された位置とすでに抽出した最近対象物の代表点の位置との間の距離L’を再計算する(図4のS440)。その後の動作手順は、上述した動作手順と同様である。
また、上述した説明では、表示部210は、ワイドVGA(800×480画素)の表示解像度を有していたが、本実施形態はこれに限定されるものではない。表示部210の解像度は、汎用のQVGA(320×240画素)、ワイドQVGA(400×240画素)、VGA(640×480画素)、SVGA(800×600画素)、XGA(1024×768画素)等の解像度であってもよい。
また、上述した説明では、タッチパネル110として静電容量結合方式のタッチパネルを用いたが、本実施形態はこれに限定されない。タッチパネル110として、他の方式、例えば、抵抗膜方式、光学方式、電磁誘導方式、超音波表面弾性波(SAW)方式のタッチパネルを用いてもよい。例えば、タッチパネル110として光学方式または電磁誘導方式のタッチパネルを用いる場合、タッチパネル110が直接タッチされなくても間接的にタッチされることにより、タッチ位置データ取得部120はタッチ位置データを取得することができる。
また、上述した説明では、表示部210は液晶表示素子であったが、表示部210は任意の表示素子であってもよい。また、上述した説明では、タッチパネル110は指でタッチされたが、タッチパネル110は、指以外のもの、例えば、スタイラスでタッチされてもよい。
また、上述した説明では、積算平均を行うのに際して、前にタッチ位置データを取得するのに要した時間と同じ時間タッチパネル110の端子電極(図示せず)に流れる電流を測定した結果に基づいてタッチ位置データを取得したが、本実施形態はこれに限定されない。
また、上述した説明では、判別閾値T’は、カウント数「n」すなわち積算平均の回数の関数であったが、本実施形態はこれに限定されない。
また、上述した説明では、表示部210を制御する表示制御部220は、表示ユニット200の構成要素であったが、本実施形態はこれに限定されない。表示部210を制御する表示制御部220を、タッチ入力装置100の構成要素としてもよい。
以上のように、本実施形態のタッチ入力装置100によれば、応答性および操作性の低下を防ぎつつ、対象物が誤って特定されることを抑制することができる。
(実施形態2)
以下、本発明によるタッチ入力装置および当該タッチ入力装置を備えた表示装置の第2の実施形態を説明する。
本実施形態の表示装置300は、図1および図3を参照して説明した実施形態1の表示装置と同様の構成を有しており、冗長さを避けるために、重複する説明を省略する。
本実施形態のタッチ入力装置100では、制御部130は、タッチ位置データによって示された位置と各対象物の代表点の位置との間の距離を計算し、各距離のうち最も短い距離(最短距離)と二番目に短い距離を特定し、複数の対象物から、最短距離に対応する対象物(最近対象物)および二番目に近い距離に対応する対象物を特定する。以下の説明において、最短距離を距離L1と称し、二番目に短い距離を距離L2と称し、最短距離に対応する対象物(最近対象物)を第1対象物と称し、二番目に近い距離に対応する対象物を第2対象物と称する。制御部130は、また、距離L2と距離L1との距離差を計算する。以下の説明において、この距離差を差Dと称する。
制御部130には判別閾値Tが予め設定されており、制御部130は、距離L2と距離L1との差Dを示す値と判別閾値Tとを比較する。比較の結果に基づいて第1対象物が特定される。
具体的には、比較の結果、差Dを示す値が判別閾値T以上である場合、第1対象物が特定される。
一方、比較の結果、差Dを示す値が判別閾値Tよりも小さい場合、いずれの対象物も特定されない。この場合、タッチ位置データ取得部120はタッチ位置データをさらに取得し、制御部130は、タッチ位置データの積算平均を行う。積算平均を行うことにより、高精度のタッチ位置データが取得される。次いで、制御部130は、積算平均を行ったタッチ位置データによって示された位置と第1対象物の代表点の位置との間の距離(以下の説明において距離L1’と称する。)、および、積算平均を行ったタッチ位置データによって示された位置と第2対象物の代表点の位置との間の距離(以下の説明において距離L2’と称する。)を再計算し、距離L2’と距離L1’との差を再計算する。以下の説明において、この差を差D’と称する。
制御部130は、また、判別閾値Tを減少させる。以下の説明において、判別閾値Tを減少させることによって得られた判別閾値を判別閾値T’と称する。
次いで、制御部130は、差D’を示す値と判別閾値T’とを再比較する。再比較の結果、差D’を示す値が判別閾値T’以上である場合、第1対象物が特定される。第1対象物が特定されると、制御部130は次の処理を行う。例えば、制御部130の指示により、表示制御部220は表示部210に次の画面を表示させる。
以下、図3および図5を参照して、本実施形態の表示装置300の動作手順を説明する。
メインシステム制御部223の制御により、表示画面描画部221は、対象物の代表点の位置が表示部210の表示面の代表点位置データによって示された位置となるように対象物を表示させる。
各対象物の代表点の位置を示す代表点位置データは、対象物データ収納部222に収納されており、距離計算部132は、対象物データ収納部222から代表点位置データを受け取る(図5のS410)。
タッチパネル110がタッチされると、タッチ位置データ取得部120は、タッチパネル110のタッチされた位置を示すタッチ位置データを取得する(図5のS420)。一方、タッチパネル110がタッチされないと、タッチ位置データ取得部120はタッチ位置データを取得できず、タッチパネル110がタッチされるまで待機する。
タッチ位置データが取得される(図5のS420)と、距離計算部132は、タッチ位置データによって示された位置と各対象物の代表点の位置との間の距離をそれぞれ計算し、各距離から最も短い距離L1(最短距離)および二番目に短い距離L2を求めるとともに、複数の対象物から、距離L1に対応する第1対象物と、距離L2に対応する第2対象物を抽出する(図5のS422)。距離計算部132は、次いで、距離L2と距離L1との差Dを計算する。
判別閾値制御部134は判別閾値Tを設定する(図5のS424)。なお、この判別閾値Tは、第1対象物が特定されたと誤った決定がなされることを防ぐために比較的大きな値に設定されている。
判別閾値は、上述した実施形態1のタッチ入力装置と同様に、積算平均のカウント数およびパラメータの関数によって設定されてもよい。関数は、例えば、(a+b/(n+1))または(a+b/√(n+1))である(ここで、nは積算平均のカウント数)。もちろん、他の関数を用いても良い。なお、パラメータa,bの値は、上述した実施形態1の場合と同様に設定されている。
パラメータは、タッチ位置データによって示された位置に応じて判別閾値制御部134によって決定されるパラメータである。パラメータの値は、例えば、第1、第2対象物に応じて異なっていてもよいし、第1、第2対象物が同じであってもタッチ位置データによって示された位置に応じて異なっていてもよい。例えば、第1、第2対象物が異方的な形状を有している場合や、タッチ位置データによって示された位置に対する第1、第2対象物の配置方向が異なる場合には、パラメータの値が異なるようにしてもよい。
比較部133は、差Dを示す値と判別閾値Tとを比較する(図5のS430)。
比較部133による比較(図5のS430)の結果、差Dを示す値が判別閾値T以上である場合、すなわち、距離L2と距離L1との差Dが比較的大きい場合、第1対象物が特定される(図5のS470)。
このように、距離L2と距離L1との差Dを示す値が判別閾値T以上であれば、タッチ位置データによって示された位置は第2対象物よりも第1対象物に近いことが確実であり、第2対象物ではなく第1対象物がタッチされたといえるので、誤った特定がなされることを防ぎつつ、第1対象物を短時間に特定することができる。
対象物特定信号送出部136には対象物に対応する特定信号が設定されており、第1対象物が特定される(図5のS470)と、対象物特定信号送出部136は、表示ユニット200のメインシステム制御部223に、第1対象物に対応する特定信号を出力する。メインシステム制御部223は特定信号に応じて所定の処理を行う。
一方、比較部133による比較(図5のS430)の結果、差Dを示す値が判別閾値Tよりも小さい場合、すなわち、距離L2と距離L1との差Dが比較的小さい場合、いずれの対象物も特定されない。これは、外来ノイズの影響を考慮すると、操作者が第2対象物を選択(タッチ)した可能性があるからである。この場合、対象物特定信号送出部136は、対象物が決定されていないことを示す信号、または、対象物の特定が留保されたことを示す信号をメインシステム制御部223に出力してもよい。
また、いずれの対象物も特定されない場合、タッチ位置データ取得部120はタッチ位置データをさらに取得し、積算平均部131は、タッチ位置データの積算平均を行う(図5のS440)。このようにタッチ位置データの積算平均を行うことにより、外来ノイズの影響が低減され、タッチ位置データの精度が向上する。積算平均が行われると(図5のS440)、積算カウンター135はカウント数を「0」から「1」に更新する。ただし、判別閾値制御部134において関数に更新されたカウント数が代入されるのは、後述するS424において判別閾値を新たに設定するとき、および、S450において判別閾値を再設定するときである。
上述したように、(図5のS422)において第1、第2距離を計算して第1、第2対象物をすでに抽出しているが、例えば、対象物が比較的隣接して配置されており、2個または3個以上の対象物の中間点がタッチされた場合、外来ノイズの影響に起因して、すでに抽出した第1、第2対象物が、積算平均されたタッチ位置データによって示される位置に最も近い第1対象物および二番目に近い第2対象物と異なることがある。このとき、(図5のS422)において順序付けられた対象物の近さの順番が入れ替わる。
したがって、積算平均部131がタッチ位置データの積算平均を行った後、距離計算部132は、積算平均値によって示された位置と複数の対象物の代表点の位置との間の距離のうち最も短い距離である第1距離、および、二番目に短い距離である第2距離を再計算するとともに再計算された第2距離と第1距離との距離差を再計算する。また、複数の対象物から、再計算された第1、第2距離に対応する第1、第2対象物を抽出する。なお、以下の説明において、再計算された第1距離を距離L1’、再計算された第2距離を距離L2’、再計算された距離差を差D’とも称し、この距離L1’、L2’に対応する対象物を再抽出された第1、第2対象物とも称する。
距離計算部132は、すべての対象物について距離の再計算を行ってもよいし、上述したように、積算平均値によって示された位置を含むブロックとそのブロックに隣接するブロック内に存在する対象物についてのみ距離の再計算を行ってもよい。あるいは、表示部210がキーボードを表示している場合、最初の計算において四番目までに近いとされた対象物のうちの2つの対象物が積算平均後の第1、第2対象物になる可能性が高いので、距離計算部132は、四番目までに近いとされた対象物についての距離のみの再計算を行ってもよい。
次いで、再抽出された第1、第2対象物がすでに抽出された第1、第2対象物と同じであるかを判定する(図5のS442)。
上述したように、判別閾値は対象物に応じて異なることがあるので、再抽出された第1、第2対象物がすでに抽出された第1、第2対象物と異なる場合、再抽出された第1、第2対象物に応じた判別閾値を用いることが必要となる。
したがって、(図5のS442)の判定の結果、再抽出された第1、第2対象物が抽出された第1、第2対象物と異なる場合、判別閾値制御部134は、再抽出された第1、第2対象物に基づいて判別閾値T’’を新たに設定し(図5のS424)、比較部133は、再計算された差D’と判別閾値T’’とを比較する(図5のS430)。
比較部133による比較(図5のS530)の結果、再計算された差D’が判別閾値T’’以上である場合、再抽出された第1対象物が特定される(図5のS470)。この場合、対象物特定信号送出部136は、再抽出され第1対象物が特定されたことを示す信号をメインシステム制御部223に出力する。
なお、比較部133による比較(図5のS430)の結果、再計算された差D’が判別閾値T’’よりも小さい場合、再び、タッチ位置データのさらなる取得および積算平均(図5のS440)ならびに第1、第2対象物の再抽出および判定を行う(図5のS442)。
一方、(図5のS442)の判定の結果、再抽出された第1、第2対象物がすでに抽出された第1、第2対象物と同じである場合、判別閾値制御部134は、同じ第1、第2対象物について判別閾値T’’’を仮設定する(図5のS444)。判別閾値は、再抽出された第1、第2対象物および積算平均値によって示される位置によって決定されるパラメータに基づいて仮設定される。なお、関数を用いる場合、上述したように、カウント数は「1」であるが、更新されたカウント数はまだ関数に代入されていない。
次いで、仮設定された判別閾値T’’’がすでに設定された判別閾値Tと同じであるかを判定する(図5のS444)。
上述したように、判別閾値は、例えば、第1、第2対象物の少なくとも一方が異方的な形状を有している場合や、第1、第2対象物がある方向にのみ隣接して配置されている場合には、タッチ位置データによって示された位置が2つの対象物の代表点を結ぶ方向にある場合の判別閾値と別の方向にある場合の判別閾値とは異なることがあるので、仮設定された判別閾値がすでに設定された判別閾値と異なる場合、積算平均値によって示された位置に応じた判別閾値を設定することが必要となる。
したがって、(図5のS444)の判定の結果、仮設定された判別閾値T’’’がすでに設定された判別閾値Tと異なる場合、積算平均を行った後のパラメータは積算平均を行う前のパラメータと異なっている。
次いで、判別閾値制御部134は、積算平均値によって示された位置によって決定されるパラメータと積算平均を行った回数との関数に基づいて判別閾値T’’’を新たに設定する(図5のS424)。
比較部133による比較(図5のS430)の結果、再計算された差D’が新たに設定された判別閾値T’’’以上である場合、抽出された第1対象物が特定される(図5のS470)。この場合、対象物特定信号送出部136は、再抽出された第1対象物が特定されたことを示す信号をメインシステム制御部223に出力する。
なお、比較部133による比較(図5のS430)の結果、再計算された差D’が新たに設定された判別閾値T’’’よりも小さい場合、再び、タッチ位置データのさらなる取得および積算平均(図5のS440)、第1、第2対象物の再抽出および判定(図5のS442)、ならびに、判別閾値の仮設定および判定(図5のS444)を行う。
なお、ここでは、(図5のS444)の判定の結果、仮設定された判別閾値T’’’がすでに設定された判別閾値Tと異なる場合、仮設定された判別閾値とは異なる判別閾値が(図5のS424)において新たに設定されたが、本実施形態はこれに限定されない。仮設定された判別閾値が(図5のS424)において新たに設定されてもよい。
一方、(図5のS444)の判定の結果、仮設定された判別閾値がすでに設定された判別閾値と同じである場合、積算平均を行った後のパラメータは、積算平均を行う前のパラメータと同じである。このように、仮設定された判別閾値がすでに設定された判別閾値と同じである場合、判別閾値制御部134は、判別閾値Tを減少させて判別閾値T’を得て、閾値T’を再設定する(図5のS450)。判別閾値制御部134によって設定される判別閾値は、積算カウンター135のカウント数に応じて変更されてもよい。
次いで、比較部133は、差D’を示す値と判別閾値T’とを再比較する(図5のS460)。
比較部133による再比較(図5のS460)の結果、差D’を示す値が判別閾値T’以上である場合、すなわち、距離L2’と距離L1’との差D’が比較的大きい場合、第1対象物が特定される(図5のS470)。
このように、精度の高いタッチ位置データと減少させた判別閾値T’とを用いていることにより、誤った決定がなされることを防ぎつつ操作性の低下を防ぐことができる。
第1対象物が特定される(図5のS470)と、対象物特定信号送出部136は、表示ユニット200のメインシステム制御部223に、第1対象物に対応する特定信号を出力する。メインシステム制御部223は特定信号に応じて所定の処理を行う。
一方、比較部133による再比較(図5のS460)の結果、差D’を示す値が判別閾値T’よりも小さい場合、すなわち、距離L2’と距離L1’との差D’が比較的小さい場合、いずれの対象物も特定されない。タッチ位置データの積算平均(図5のS440)、第1、第2対象物の再抽出および判定(図5のS442)、判別閾値の仮設定および判定(図5のS444)、判別閾値の減少および再設定(図5のS450)ならびに再比較(図5のS460)を繰り返す。積算カウンター135は、積算平均部131が積算平均を行うとともにカウント数を1つずつ更新する。繰り返しが行われている際の再比較(図5のS460)において、「積算平均を行ったタッチ位置データによって示された位置と第2対象物の代表点の位置との間の距離」と「積算平均を行ったタッチ位置データによって示された位置と第1対象物の代表点の位置との間の距離」との差が、減少させた判別閾値T’以上となったら、第1対象物が特定される(図5のS470)。第1対象物が特定される(図5のS470)と、カウント数および判別閾値T’はリセットされる。
また、操作者の指がタッチパネル110から一旦離れたら、カウント数および判別閾値T’はリセットされ、(図5のS420)に戻るように設定してもよい。
なお、判別閾値制御部134に別の判別閾値T2を予め設定し、距離計算部132は、距離L1を示す値と別の判別閾値T2とを比較してもよい。比較の結果、距離L1を示す値が判別閾値T2よりも大きい場合、タッチ位置データによって示された位置に最も近い第1対象物でさえも、タッチ位置データによって示された位置から比較的離れているので、対象物を特定することを中止してもよい。
また、同様に、距離L1’を示す値と判別閾値T2とを再比較し、再比較の結果に基づいて複数の対象物のいずれの対象物がタッチされたかを決定することを中止してもよい。あるいは、距離L1’を示す値と、判別閾値T2を増加させることによって得られた判別閾値T2’とを再比較し、再比較の結果に基づいて対象物の特定を中止してもよい。
なお、上述した説明では、「タッチ位置データによって示された位置と第2対象物の代表点の位置との間の距離」と「タッチ位置データによって示された位置と第1対象物の代表点の位置との間の距離」との差が減少させた判別閾値T’以上となるまで、積算平均(図5のS440)、第1、第2対象物の再抽出および判定(図5のS442)、判別閾値の仮設定および判定(図5のS444)、判別閾値の減少および再設定(図5のS450)、ならびに、再比較(図5のS460)を繰り返したが、本実施形態はこれに限定されない。積算平均(図5のS440)を行う回数、すなわち、積算カウンター135のカウント数の上限を予め決めておいてもよい。
あるいは、1回目の再比較(図5のS460)において、差D’が判別閾値T’よりも小さい場合には、いずれの対象物もタッチされていないと決定して、操作者が再びタッチパネル110をタッチするまで待機してもよい。
なお、上述した説明では、積算平均の後に第1、第2対象物の再抽出を行った(図5のS442)が、積算平均の後の第1、第2対象物の再抽出を省略してもよい。
例えば、タッチ位置データによって示された位置と第3対象物の代表点の位置との間の距離L3’が上述した距離L2’よりも明らかに大きく、例えば、(L2’−L1’)<(L3’−L2’)の関係を満たし、現在の第3対象物が最終的に第1対象物として判定される可能性が非常に少ない場合、積算平均の後に第1、第2対象物を再抽出しなくても、積算平均の後の第1、第2対象物は積算平均の前の第1、第2対象物と変わらないので、積算平均の後の第1、第2対象物の再抽出を省略することができる。
また、上述した説明では、積算平均の後に判別閾値の仮設定を行った(図5のS444)が、積算平均の後の判別閾値の仮設定を省略してもよい。例えば、第1、第2対象物が同じであればパラメータ、すなわち、判別閾値が同じになる場合、判別閾値の仮設定を省略しても、積算平均の後の判別閾値は積算平均の前の判別閾値と変わらないので、積算平均の後の判別閾値の仮設定を省略することができる。
なお、第1、第2対象物の再抽出(図5のS442)および判別閾値の仮設定(図5のS444)が省略される場合、積算平均部131がタッチ位置データの積算平均を行った後、距離計算部132は、積算平均値によって示された位置とすでに抽出した第2対象物の代表点の位置との距離L2’と、積算平均値によって示された位置とすでに抽出した第1対象物の代表点の位置との距離L1’と、距離L2’と距離L1’との間の差D’を再計算する(図5のS440)。その後の動作手順は、上述した動作手順と同様である。
(判別閾値の設定方法)
上述した実施形態1および2のタッチ入力装置では、判別閾値(初期値)Tが表示される対象物に対して予め設定されており、タッチ位置データの積算平均を行うごとに判別閾値を変更した例を示したが、本発明はこれに限定されない。
以下、本発明によるタッチ入力装置における判別閾値の設定方法の他の例を説明する。
タッチパネル110として静電容量結合方式のタッチパネルを用いる。好ましい静電容量結合方式のタッチパネルの一例は、本出願人による特願2004−308533号および特願2004−308534号に開示されているが、他の静電容量結合方式のタッチパネルを用いることもできる。
図6に示すように、タッチパネル110は、位置検出用透明導電膜(以下、単に透明導電膜と称する。)111と、透明導電膜111の四隅に設けられた端子電極112とを有する。タッチパネル110はさらに透明導電膜を保護する保護層(図示せず)を有していてもよい。タッチ位置データ取得部120は、端子電極に同相同振幅の交流電圧を印加しており、透明導電膜111の面内は、ほぼ等電位に保たれる。
操作者が指またはペンなどで透明導電膜111を直接的または間接的にタッチすると、透明導電膜111がグランド(接地面)と容量的に結合される。この容量とは、保護層を透明導電膜111との間の容量、および、操作者と地面との間に存在するインピーダンスが合成されたものである。
容量結合した接触部分と各端子電極112との間における透明導電膜111の電気抵抗値は、接触部分と各端子電極112との間の距離に概ね比例する。したがって、透明導電膜111の四隅の電極を介して、接触部分と各端子電極112の間の距離に概ね反比例した電流が流れることになる。
透明導電膜111を直接的にタッチしたとき、端子電極112を流れる電流のそれぞれをi1、i2、i3、およびi4とする(図6参照)。ここでは簡単のために、透明導電膜111に接触点が形成されていない場合には電流が流れないとして説明するが、後述するように実際には、透明導電膜111がタッチされていないときにも浮遊容量を通じて電流が流れるので、タッチ位置データを取得するためには、透明導電膜111がタッチされることによる電流の変化量(増加量)を求める必要がある。
タッチ位置データによって示された位置は、2次元座標で表され、X座標およびY座標は、たとえば次式に基づいて決定することができる。
X=k1+k2・(i2+i3)/(i1+i2+i3+i4) (式1)
Y=k1+k2・(i1+i2)/(i1+i2+i3+i4) (式2)
また、以下の計算式を用いてもよい。
X=k1+k2・[i2/(i2+i4)+i3/(i1+i3)] (式3)
Y=k1+k2・[i1/(i1+i3)+i2/(i2+i4)] (式4)
ここで、Xはタッチ位置データによって示された位置のX座標、Yはタッチ位置データによって示された位置のY座標である。また、k1はオフセット(出力座標を原点とする場合は0)、k2は倍率である。k1およびk2は、操作者のインピーダンスに依存しない定数である。
タッチ位置データ取得部120は、これらの電流の大きさを測定し、電流の大きさの相対比を求めることにより、タッチ位置を示すタッチ位置データを取得する。なお、実際には、透明導電膜111がタッチされていないときにも浮遊容量を通じて電流が流れているので、厳密には、透明導電膜111がタッチされたことに応じて変化する端子電極112を流れる電流の変化量(増加量)に応じてタッチ位置データが取得される。
なお、一般には、タッチパネル110として抵抗膜方式のタッチパネルを用いる場合には、一定以上の押圧でタッチされれば、位置検出精度は変わらないが、タッチパネル110として静電容量結合方式のタッチパネルを用いる場合、タッチの仕方、特に指でタッチする場合はその接触面積に応じて容量すなわち端子電極112を流れる電流の変化量(信号強度)の和が変化する。接触面積が大きい程、電流の変化量の和が大きくなり(外来ノイズの影響が小さくなり)、タッチ位置データの精度が向上する。
従って、静電容量結合方式のタッチパネル110では、端子電極112を流れる電流の変化量の和をタッチ位置データの精度の指標とすることができる。つまり、端子電極112を流れる電流の変化量の和が大きい場合、端子電極112を流れる電流を示す信号のSN比が良く、それにより、精度の高いタッチ位置データが取得される。
一方、端子電極112を流れる電流の変化量の和が小さい場合、端子電極112を流れる電流を示す信号のSN比が悪く、外来ノイズの影響を受けやすく、それにより、精度の低いタッチ位置データが取得される。
本実施形態のタッチ入力装置100では、判別閾値制御部134は、端子電極112のそれぞれを流れる電流の変化量の和に応じて判別閾値(初期値)Tを設定する。具体的には、実施形態1のタッチ入力装置の場合には、電流の変化量の和が大きいほど、判別閾値制御部134は判別閾値(初期値)Tとして大きな値を設定する。一方、実施形態2のタッチ入力装置の場合には、電流の変化量の和が大きいほど、判別閾値制御部134は判別閾値(初期値)Tとして小さな値を設定する。もちろん、積算平均の回数に応じて増加または減少させる判別閾値の大きさ(変化量)もまた電流の変化量の和に応じて変化させても良い。
このように判別閾値Tを設定することにより、電流の変化量が大きいとき、すなわち位置検出精度が高いときには、早く対象物が特定され、検出精度が低いときには十分な検出制度が得られるまで積算平均が繰り返される。従って、このように判別閾値Tを設定・変化させることによって、タッチ入力装置100の操作性を向上させることができる。
上述したように、本発明の実施形態のタッチ入力装置によれば、タッチ入力装置の操作性が低下することを防ぎつつ、誤った決定がなされることを抑制できる。
なお、上述した実施形態1および2のタッチ入力装置100の制御部130が備えている構成要素、すなわち、積算平均部131、距離計算部132、比較部133、判別閾値制御部134、積算カウンター135、対象物特定信号送出部136は、ハードウェアによって実現できるほか、これらの一部または全部をソフトウェアによって実現することもできる。
これらの構成要素をソフトウェアによって実現する場合、コンピュータを用いて構成してもよく、このコンピュータは、各種プログラムを実行するためのCPU(central processing unit)や、それらのプログラムを実行するためのワークエリアとして機能するRAM(random access memory)などを備えるものである。そして各構成要素の機能を実現するためのプログラムをコンピュータにおいて実行し、このコンピュータを各構成要素として動作させる。
また、プログラムは、記録媒体からコンピュータに供給されてもよく、あるいは、通信ネットワークを介してコンピュータに供給されてもよい。
記録媒体は、コンピュータと分離可能に構成されてもよく、コンピュータに組み込むようになっていてもよい。この記録媒体は、記録したプログラムコードをコンピュータが直接読み取ることができるようにコンピュータに装着されるものであっても、外部記憶装置
としてコンピュータに接続されたプログラム読取装置を介して読み取ることができるように装着されるものであってもよい。
記録媒体としては、例えば、磁気テープやカセットテープなどのテープ:フレキシブルディスク/ハードディスク等の磁気ディスク、MO、MD等の光磁気ディスク、CD−ROM、DVD、CD―R等の光ディスクを含むディスク:ICカード(メモリカードを含む)、光カード等のカード:あるいは、マスクROM、EPROM(Erasable Programmable Read Only Memory)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)、フラッシュROM等の半導体メモリなどを用いることができる。
また、通信ネットワークを介してプログラムを供給する場合、プログラムは、そのプログラムコードが電子的な伝送で具現化されたデータ信号の形態をとる。