JP2007131531A - IκBαユビキチン化阻害薬 - Google Patents

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Mari Takamiya
万里 高宮
Naoki Niihara
直樹 新原
Keiko Tsuganezawa
恵子 津金沢
Hiroto Nakajima
裕人 中嶋
Hisako Kodama
久子 児玉
Chiho Marumichi
千帆 圓道
Toshio Wakabayashi
利生 若林
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Abstract

【課題】抗腫瘍剤などに有用なIκBαのユビキチン化の阻害薬を提供する。
【解決手段】下記の一般式(I):
【化1】
Figure 2007131531

(式中、Aは水素原子又はアルキル基を示し;Bはアルキレン基を示し;Xは酸素原子又は2個の水素原子を示し;R1及びR2はそれぞれ独立に水素原子又は低級アルキル基を示すが、R1及びR2が示す低級アルキル基は互いに結合して環を形成してもよい)で表される化合物又は生理学的に許容されるその塩を有効成分として含むIκBαのユビキチン化の阻害薬。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、IκBαのユビキチン化を阻害する物質を有効成分として含む医薬に関する。
【0002】
【従来の技術】
ユビキチンは保存性の高い76個のアミノ酸から成るポリペプチドで、細胞内タンパク質の機能停止の調節、細胞周期の調節、シグナル伝達、転写、および抗原提示などを含む様々な細胞応答に関与している(Ciechanover, A. (1998) EMBO J. 17, 7175-7160; Hochstrasser, M. (1996) Annu.Rev.Genet. 30, 405-439;及びHershko, A., et al. (1999) Annu.Rev.Biochem. 67, 425-479)。ユビキチンは、E1酵素(ユビキチン活性化酵素)、E2酵素(ユビキチン結合酵素)およびE3酵素(ユビキチンリガーゼ)から成る複合酵素系の作用を介して様々な標的タンパク質に共有結合している(Hershko, A., et al. (1999) Annu.Rev.Biochem. 67, 425-479;及びJentsch, S., et al. (1995) Cell 82, 881-884)。標的タンパク質は複数単位のユビキチンに結合した後に、26Sプロテアソームによって分解される(Coux, O. et al., (1996) Annu.Rev.Biochem.65, 801-847)。
【0003】
ユビキチン系に関与するE3酵素は、直接または間接的に基質タンパク質(標的タンパク質)と相互作用して、ユビキチンを基質またはその基質に既に形成されたユビキチン鎖に転移する反応を触媒する。E3はユビキチンシステムの基質特異性を決定する上で最も重要な機能分子である。現在までに報告されているE3の数は少なく、その機能の解明も不十分である。現在、E3はHECTタイプとRINGフィンガータイプの2つに分類されており、E3の異常と疾患との関連性が示唆されている。RINGフィンガータイプとしては、例えばG1期に主に働くSCF複合体構成印紙であるRoc1が知られている。
【0004】
一方、IκBは、炎症に関与した転写因子であるNFκBと複合体を形成し、その活性を抑制している。IκBの一種であるIκBαは、E3酵素の1種であるSCF複合体[ROC1/Cullin1/Skp1/βTrCP1]に結合することによってユビキチン化され、その後分解される。従って、IκBαのユビキチン化を阻害する物質はIκBαのユビキチンプロテアソーム系を介した分解機構を阻害し、IκBαを安定化することによりNFκBの機能を抑制し、抗炎症作用や抗腫瘍作用を示す。
【0005】
なお、IκBαユビキチン化の阻害薬を探索する系としては、米国特許第6,060,262号、国際公開WO99/04033号公報、米国特許第5,932,425号に報告がある。また、SCF複合体の構成蛋白分子であるβTrCP1を用いた医薬品の探索は、国際公開WO99/38969号公報に報告があり、Roc1を含むE3によるユビキチン化を阻害する医薬品の探索法は、国際公開WO00/50445号公報に記載されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題及び課題を解決するための手段】
本発明の課題は、IκBαのユビキチン化を阻害する物質を有効成分として含む医薬を提供することにある。本発明者らは上記の課題を解決すべく鋭意研究を行った結果、下記の一般式(I)で表される化合物又はその塩がIκBαのユビキチン化を阻害する作用を有しており、医薬の有効成分として有用であることを見出した。本発明は上記の知見を基にして完成されたものである。
【0007】
すなわち、本発明は、下記の一般式(I):
【化2】
Figure 2007131531
(式中、Aは水素原子又はアルキル基を示し;Bはアルキレン基を示し;Xは酸素原子又は2個の水素原子を示し;R1及びR2はそれぞれ独立に水素原子又は低級アルキル基を示すが、R1及びR2が示す低級アルキル基は互いに結合して環を形成してもよい)で表される化合物又は生理学的に許容されるその塩を有効成分として含むIκBαのユビキチン化の阻害薬を提供するものである。
【0008】
上記の発明の好ましい態様によれば、Aが低級アルキル置換シクロアルキル基であり、Bが炭素数1から4個の直鎖状アルキレン基であり、Xが酸素原子であり、R1及びR2がそれぞれ独立に低級アルキル基である上記の阻害薬;及びAが低級アルキル置換シクロヘキシル基であり、Bが炭素数2又は3個の直鎖状アルキレン基であり、Xが酸素原子であり、R1及びR2がそれぞれ独立に低級アルキル基である上記の阻害薬が提供される。炎症性疾患の予防及び/又は治療に用いる上記の阻害薬;及び悪性腫瘍の治療に用いる上記の阻害薬も本発明により提供される。
【0009】
別の観点からは、上記の阻害薬の製造のための上記一般式(I)で表される化合物又は生理学的に許容されるその塩の使用;炎症性疾患の予防及び/又は治療方法であって、上記一般式(I)で表される化合物又は生理学的に許容されるその塩の予防及び/又は治療有効量をヒトを含む哺乳類動物に投与する工程を含む方法;悪性腫瘍の治療方法であって、上記一般式(I)で表される化合物又は生理学的に許容されるその塩の予防及び/又は治療有効量をヒトを含む哺乳類動物に投与する工程を含む方法が本発明により提供される。
【0010】
【発明の実施の形態】
Aが示すアルキル基としては、直鎖状、分枝鎖状、又は環状のアルキル基、あるいはそれらの組み合わせであるアルキル基を用いることができる。より好ましくは直鎖状アルキル基と環状アルキル基の組み合わせからなるアルキル基を用いることができ、例えば、1〜3個程度、好ましくは1個の直鎖状低級アルキル基(本明細書において「低級」とは炭素原子数1〜6程度を意味する)を環上に有するシクロアルキル基を好適に用いることができる。より具体的には、4−位に直鎖状の低級アルキル基が置換したシクロヘキシル基が好ましく、最も好ましいのは4−プロピル−1−シクロヘキシル基又は4−エチル−1−シクロヘキシル基である。Aが示すアルキル基の炭素原子数は例えば1〜12個程度、好ましくは1〜10個程度であり、Aが直鎖状アルキル基と環状アルキル基との組み合わせからなるアルキル基を示す場合には、炭素原子数は7〜10個程度であることが好ましい。Aが示すアルキル基は1個ないし数個の置換基を有していてもよく、そのような置換基の種類、個数、置換位置は特に限定されない。
【0011】
Bが示すアルキレン基としては、直鎖、分枝鎖状、又は環状のアルキレン基のほか、それらの組み合わせからなるアルキレン基を用いてもよい。Bが示すアルキレン基として直鎖状又は分枝鎖状のアルキレン基を用いる場合には、例えば、炭素数1〜4個程度のアルキレン基が好ましく、メチレン基、エチレン基、プロピレン基などがより好ましい。特に好ましいのはエチレン基(−CH2−CH2−)である。Bが示す環状のアルキレン基としては、シクロヘキサンジイル基などを挙げることができる。また、直鎖状アルキレン基と環状アルキレン基との組み合わせとしては、メチルシクロヘキサンジイル基などを例示することができる。Bが示すアルキレン基は1個ないし数個の置換基を有していてもよく、そのような置換基の種類、個数、置換位置は特に限定されない。
【0012】
Xとしては酸素原子が好ましい。R1及びR2が示す低級アルキル基としては、直鎖又は分枝鎖の低級アルキル基を用いることが好ましく、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、イソブチル基、又はtert−ブチル基などを好適に用いることができる。R1及びR2が示す低級アルキル基が互いに結合して形成する環としては、例えば、ピロリジン環、ピペリジン環などを挙げることができる。これらの環の環上には1個又は2個以上の低級アルキル基が置換していてもよい。特に好ましいのはR1及びR2がともにメチル基の場合である。R1及びR2が示す低級アルキル基は1個ないし数個の置換基を有していてもよく、そのような置換基の種類、個数、置換位置は特に限定されない。
【0013】
上記一般式(I)で表される好ましい化合物として、
(1)Aが低級アルキル置換シクロアルキル基であり、Bが炭素数1から4個の直鎖状アルケニル基であり、Xが酸素原子であり、R1及びR2がそれぞれ独立に低級アルキル基である化合物;
(2) Aが低級アルキル置換シクロヘキシル基であり、Bが炭素数2又は3個の直鎖状アルケニル基であり、Xが酸素原子であり、R1及びR2がそれぞれ独立に低級アルキル基である化合物;
(3)Aが4−位に低級アルキル基が置換したシクロヘキシル基であり、Bが炭素数2又は3個の直鎖状アルケニル基であり、Xが酸素原子であり、R1及びR2がそれぞれ独立に低級アルキル基である化合物;及び
(4)Aが4−位にエチル基又はn−プロピル基が置換したシクロヘキシル基であり、Bが炭素数2又は3個の直鎖状アルケニル基であり、Xが酸素原子であり、R1及びR2がともにメチル基である化合物;及び
(5)Aが4−位にエチル基又はn−プロピル基が置換したシクロヘキシル基であり、Bが炭素数2個のアルケニル基であり、Xが酸素原子であり、R1及びR2がともにメチル基である化合物
を挙げることができる。
【0014】
特に好ましいのは、(6)Aが4−位にn−プロピル基が置換したシクロヘキシル基であり、Bがエチレン基であり、Xが酸素原子であり、R1及びR2がともにメチル基である化合物である。
【0015】
上記一般式(I)で表される化合物のうち、上記の(6)などの化合物は、ケンブリッジコーポレーション(ChemBridge Corporation)から提供されている低分子化合物ライブラリー「DIVERSet(登録商標)」に含まれており、公知化合物である。例えば、Aが4−位にエチル基が置換したシクロヘキシル基であり、Bがエチレン基であり、Xが酸素原子であり、R1及びR2がともにメチル基である化合物は、以下のようにして製造できる。
【0016】
アセチルクロリド、塩化アルミニウムによるシクロヘキサンのアセチル化に続いてベンゼンを反応させて(4−アセチル−1−シクロヘキシル)ベンゼンを得ることができ、この化合物のオキソ基をヒドラジンの存在下で還元して(4−エチル−1−シクロヘキシル)ベンゼンを得ることができる。
【0017】
得られた(4−エチル−1−シクロヘキシル)ベンゼンにフリーデルクラフツ反応の条件下でアセチルクロリドを反応させて4−(4−エチル−1−シクロヘキシル)−1−アセチルベンゼンを得る。上記反応において、フリーデルクラフツ触媒としては例えば塩化アルミニウムなどを用いることができる。さらに、4−(4−エチル−1−シクロヘキシル)−1−アセチルベンゼンにポリオキシメチレンとジメチルアミンを酸性条件下で反応させることにより上記化合物を得ることができる。上記の反応経路により、あるいは上記の反応経路に必要に応じて適宜の改変ないし修飾を施すことにより、当業者は一般式(I)に包含される化合物をいずれも容易に製造できる。
【0018】
上記一般式(I)で表される化合物は、例えば酸付加塩などの塩を形成する場合がある。本発明の医薬の有効成分としては、上記一般式(I)で表される化合物の生理学的に許容される塩を用いてもよい。酸付加塩としては、例えば、塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩などの鉱酸塩、p−トルエンスルホン酸塩、メタンスルホン酸塩、マレイン酸塩、シュウ酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩などを挙げることができるが、塩の種類はこれらに限定されることはない。また、上記一般式(I)で表される化合物又はその塩は、水和物又は溶媒和物として存在する場合もある。本発明の医薬の有効成分として、水和物又は溶媒和物を用いてもよい。
【0019】
さらに、上記一般式(I)で表される化合物は、置換基の種類に応じて、1個又は2個以上の不斉炭素を有する場合があり、このような不斉炭素に基づく光学異性体又はジアステレオ異性体などの立体異性体が存在する場合がある。本発明の医薬の有効成分としては、純粋な形態の立体異性体、立体異性体の任意の混合物、ラセミ体などのいずれの物質を用いてもよい。
【0020】
上記一般式(I)で表される化合物は、IκBαのユビキチン化を阻害する作用を有しており、IκBαに対するユビキチン化の阻害薬の有効成分として有用である。IκBαのユビキチン化を阻害する物質は、IκBのユビキチンプロテアソーム系を介した分解機構を阻害し、IκBを安定化することにより炎症に関与する転写因子であるNFκBの機能を抑制し、その結果として抗炎症作用や抗癌作用を示す。従って、本発明により提供される上記阻害薬は、炎症性疾患の予防及び/又は治療や、悪性腫瘍の治療のための医薬として有用である。
【0021】
より具体的には、本発明の阻害薬は、大腸及び小腸粘膜の炎症又は潰瘍性疾患(炎症性大腸炎又はクローン病など)、慢性関節リウマチ、喘息、動脈硬化などの炎症性疾患の予防及び/又は治療、胃癌、肺癌、肝臓癌、大腸癌、膵臓癌、腎臓癌、食道癌、脳腫瘍などの固形癌、白血病、悪性リンパ腫などの悪性腫瘍の治療のために用いることができる。もっとも、本発明の阻害薬の適用対象は、上記に例示した具体的疾患に限定されることはない。上記一般式(I)で表される化合物がIκBαのユビキチン化を阻害する作用を有することは、本明細書の実施例に示した方法により当業者が容易に確認可能である。なお、IκBαのユビキチン化の阻害メカニズム及び阻害物質のスクリーニング方法に関しては特願2001−2626号明細書に詳細に記載されているので、該明細書の開示を参照として本明細書の開示に含める。
【0022】
本発明の阻害薬としては、式(I)で表わされる化合物及び生理学的に許容されるその塩、並びにそれらの水和物及びそれらの溶媒和物からなる群から選ばれる物質をそのまま用いてもよいが、通常は有効成分である上記物質と製剤学的に許容される製剤用添加物とを含む医薬組成物の形態として調製されることが好ましい。有効成分である上記物質又は製剤用添加物は、それぞれ1種又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0023】
本発明の阻害薬の投与経路は特に限定されず、経口的又は非経口的に投与することが可能である。経口投与に適する製剤としては、例えば、錠剤、散剤、カプセル剤、顆粒剤、細粒剤、シロップ剤、懸濁剤などを挙げることができ、非経口投与に適する製剤としては、例えば、静脈内、筋肉内、又は皮下用の注射剤、点滴剤、坐剤、外用剤、点眼剤、点鼻剤、点耳剤、吸入剤、経皮吸収剤、経粘膜吸収剤、軟膏剤、クリーム剤、貼付剤などを挙げることができるが、製剤の形態はこれらに限定されることはない。
【0024】
これらの製剤の製造方法は、当業者に利用可能なものであれば特に限定されることはなく、当業者は製剤の製造にあたって1種又は2種以上の適宜の製剤用添加物を選択して用いることができる。有効成分をリポソームなどに封入した医薬組成物や、さらにリポソームに抗体を結合した医薬組成物を用いることにより、標的器官に対する親和性や選択性を改善することができる場合がある。なお、投与経路及び投与量は、適用対象となる疾患の種類、治療又は予防の目的、患部の種類、患者の状態などに応じて適宜選択可能であり、それぞれの投与経路及び投与量に好適な製剤形態も適宜選択できることはいうまでもない。投与量は、例えば、成人一日あたり0.01mgから1,000mg程度の範囲から選択することが可能である。
【0025】
【実施例】
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明の範囲は下記の実施例に限定されることはない。
例1:IκBαユビキチン化阻害作用
(1)材料
リコンビナントHis-E1、His-Ubc4は、大腸菌BL21にそれぞれトランスフェクションして発現させ、Ni-NTAアガロースによりアフィニティ精製した。GST-IκBαは、大腸菌BL21にトランスフェクションして発現させ、グルタチオンセファロースによりアフィニティ精製した。リコンビナントSCF複合体は、組み換えバキュロウィルス4種類、ROC1、CUL1、Skp1、His-TrCP1を、HiFive昆虫細胞に4重感染して発現させ、Ni-NTAアガロースによりアフィニティ精製した。リコンビナントFlag-IKKβは、HEK293細胞にトランスフェクションして発現させ、抗Flag抗体結合アガロース(シグマ社)によりアフィニティ精製した。
【0026】
リコンビナント体の作成は、全て既報のシークエンスに基づき、PCRを用いて増幅後に組み換えを行った。ユビキチンはシグマ社より購入し、Eu(K)標識ユビキチンはCIS バイオ・インターナショナル社によるカスタムラベルにより作成した。XL665標識抗GST抗体とXL665標識抗6×His抗体は、CIS バイオ・インターナショナル社より購入した。アッセイ緩衝液として、50 mM Tris-HCl(pH7.4), 2 mM ATP, 5 mM MgCl2, 0.5 mM DTT, 0.1% BSAを用いた。抗体反応および時間分解蛍光測定にはレベレイション緩衝液として100 mMリン酸緩衝液(pH7.0), 0.5 M KF, 0.1% BSAを用いた。アッセイには、コスター社solid black plateを用いた。
【0027】
(2)アッセイ方法
IκBαのリン酸化反応は、GST-IκBα, IKKβを含む上記アッセイ緩衝液を室温で1時間インキュベートすることにより行った。ユビキチン化反応は以下のように行った。リン酸化IκBαに各濃度の化合物サンプル、ユビキチン、Eu(K)標識ユビキチン、His-E1、His-Ubc4、SCF複合体を添加後、室温で30分インキュベートした。EDTAを添加することにより反応を停止させ、XL665標識抗GST抗体を含む上記レベレイション緩衝液を添加し、室温で2時間放置した。測定はARVO-HTS (パーキンエルマー、ワラック社)を用い、励起光337 nmで620 nmと665 nmの蛍光強度を測定した。検出されたユビキチン化量は、665 nmと620 nmの蛍光の比(Em665nm/Em620nm×10,000)で表示した。化合物サンプルを添加しないユビキチン化量をコントロール値として、SCF複合体非存在下での値をアッセイのブランク値とした。化合物の阻害活性は、% inhibition = 100-(化合物サンプル添加の値-ブランク値)/(コントロール値-ブランク値)×100で示した。IC50値は、50%阻害を示す化合物の濃度で示した。
【0028】
Ubc4ユビキチン化の測定は以下のように行った。各濃度の化合物サンプル、His-Ubc4、ユビキチン、Eu(K)標識ユビキチンにHis-E1を添加後、室温で30分インキュベートした。EDTAを添加することにより反応を停止した後、XL665標識6His抗体を含むレベレーション緩衝液を添加した。それ以降は上記のIκBαユビキチン化と同様の方法で測定を行った。E1非存在下の値をブランク値とし、化合物の阻害活性、% inhibitionとIC50値はIκBαと同様に示した。
【0029】
(3)結果
時間分解蛍光法を検出方法として用いたIκBαのユビキチン化測定により、化合物UPI-19のIκBαのユビキチン化阻害活性を測定した。表1に化合物UPI-19の構造と阻害活性(IC50値)を示した。化合物UPI-19は濃度依存的にIκBαユビキチン化の阻害活性を示したが、化合物UPI-19をIKKβによるIκBαリン酸化反応後に添加しているため、ユビキチン化阻害作用は、IKKβによるリン酸化阻害を介しているものではないと考えられる。また、表1に示したように、E1酵素によるUbc4ユビキチン化活性に対しては40μMで阻害作用を示していないことから、IκBαユビキチン化阻害はE1酵素の阻害活性を介したものでもないと考えられる。従って、IκBαユビキチン化阻害は、IκBαのプロテアソームによる分解を抑制し、安定化することによるものと考えられ、化合物UPI-19がTNF等により刺激された細胞においてIκBαの安定化を介してNFκBの活性化を抑制する作用をもつことが示唆された。
【0030】
【表1】
Figure 2007131531
【0031】
例2:細胞内IκBα分解阻害活性
(1)材料
ヒト子宮頚癌細胞株、HeLa細胞は、ATCC(CCL-2)より購入し、10% 非働化牛胎児血清、20 mM HEPES、カナマイシンを含むModified Eagle's Medium (MEM, ギブコ社)を用いて培養した。ヒトTNFαは、GIBCO社より購入した。抗IκB抗体はサンタ・クルーズ社 (C-21)より、抗p53抗体はサンタ・クルーズ社 (DO-1)より、POD標識抗マウスIgG抗体はアマシャム・ファルマシア・バイオテック社よりそれぞれ購入した。ECL/POD反応キットはアマシャム・ライフ・サイエンス社より購入した。細胞溶解液には、60 mM KCl, 1 mM EDTA, 0.1% NP-40, 1 mM DTT, Protease Inhibitor Cocktail (Boehringer Manheim社)を含む10 mM HEPES (pH7.4)を用いた。
【0032】
(2)方法
2.0×105個のHeLa細胞を、12ウェルプレートに蒔き、終夜前培養した。化合物サンプルを添加し、37℃で30分前処理した。30 ng/mlのヒトTNFαを添加し、37℃で30分インキュベーションした後、培養液を除き、細胞を剥がして回収した。5,000 rpm、5分遠心したペレットに、細胞溶解液100μlを加え、氷上で30分放置した。撹拌後、5,000 rpm、2分遠心した上清から、蛋白量5μgを4〜10% SDS-PAGE gelにアプライした。電気泳動後、ニトロセルロース膜にトランスファーし、抗IκBα抗体によりウェスタンブロティングで検出した。
【0033】
p53分解阻害活性の測定は、IκBαの測定と同様に前培養したHeLa細胞に化合物サンプルを添加し、37℃で1時間インキュベーションした後、培養液を除き、細胞を剥がして回収した。5,000 rpm、5分遠心したペレットに、PBS 100μlを加え、15秒間ソニケーションした後、蛋白量5μgを4〜10% SDS-PAGE gelにアプライした。電気泳動後、ニトロセルロース膜にトランスファーし、抗p53抗体によりウェスタンブロティングで検出した。
【0034】
(3)結果
細胞をTNFなどで刺激すると、IκBαはSCFによるユビキチン化を経てプロテアソームにより分解される。HeLa細胞におけるIκBα分解反応に対する化合物UPI-19の作用を調べるため、TNFα刺激によるIκBα蛋白の分解を測定した。また、IκBα分解の抑制が選択的であるかを確かめる目的で、同様にHeLa細胞を用いてp53蛋白の消失に対する作用を検討した。
【0035】
図1(a)に示したように、HeLa細胞においてTNFα刺激によりIκBαは分解した(lane 5, 7)。TNFα刺激30分前に培養液中にプロテアソーム阻害薬、MG132、10μMを添加した場合、TNFα刺激によるIκBα分解は阻害された(lane 6)。これはMG132のプロテアソーム阻害作用によりIκBαの分解が抑制されたためと考えられる。IκBαユビキチン化阻害が認められた化合物UPI-19で処理した結果、化合物UPI-19の濃度に依存してIκBα分解が阻害された(lane 1〜4)。従って、化合物UPI-19はIκBαユビキチン化阻害を介してIκBα分解を抑制したものと考えられる。さらに、化合物UPI-19による分解抑制が選択的であるかを確かめる目的で、p53の分解に対する作用を検討した。図1(b)に示したように、MG132による分解抑制はIκBαと同様に認められるのに対して、化合物UPI-19ではp53の分解抑制は全く認められなかった。以上の結果から、化合物UPI-19による分解抑制はIκBαユビキチン化阻害を介したIκBαに選択的な作用であると考えられた。
【0036】
例3:ICAM-1発現阻害作用
(1)材料
ヒト大腸癌細胞株、HT-29は、ATCC(HTB-38)より購入し、10%非働化牛胎児血清を含む、McCoy' 5A medium (GIBCO社)を用いて培養した。ヒトTNFαは、GIBCO社より購入した。抗ICAM-1抗体はサンタ・クルーズ社 (sc-107)より、POD標識抗マウスIgG抗体はアマシャム・ファルマシア・バイオテック社(NA9310)より購入した。Dotite Cell Counting Kit、WST試薬は、株式会社同仁化学研究所より購入した。
【0037】
(2)方法
2.0×104個のHT-29細胞を96ウェルプレートに蒔き、72時間培養した。培養液を除き、評価化合物(DMSO最終濃度、0.5%)を含む培養液を添加し、37℃で30分前培養した。30 ng/mlのヒトTNFαを添加し、37℃で4時間培養した。0.05%、洗浄液(Tween20を含むPBS)で1回洗浄後、氷冷メタノールを添加し、氷上で10分放置し固定した。メタノール除去後、1% BSAを含むPBSを添加し、室温で30分放置してブロッキングを行った。抗ICAM-1抗体を添加し、室温で1時間放置した。洗浄液で3回洗浄後、POD標識2次抗体を添加し、室温で30分放置した。洗浄液で4回洗浄後、1 mM TMBZ、0.03% H202を含む100 mMクエン酸緩衝液(pH 4.2)を100μl添加し、室温で15分反応させた。2N H2S04、100μlで反応を停止後、ARVO-HTS (パーキン・エルマー、ワラック社)を用い、450 nmの吸光度を測定した。細胞毒性試験は、同様に培養した細胞を化合物とTNFαで処理した後、培養液にWST試薬を添加し、37℃で1時間インキュベーション後、ARVO-HTS (パーキン・エルマー、ワラック社)を用いて、450 nmでの吸光度を測定した。
【0038】
(3)結果
TNFαによるIκBαの分解誘導は、NFκBの活性化を介し、炎症性サイトカイン、接着因子などの発現を促進する。ICAM-1の発現を指標に、IκBαユビキチン化阻害化合物UPI-19のHT-29細胞における作用を検討した。図2に示したように、化合物UPI-19は濃度依存的にTNFαによるICAM-1発現を阻害した。同時に測定した細胞毒性試験において化合物UPI-19は細胞毒性を示していないことから、上記の結果は、化合物UPI-19による細胞の機能低下に伴うICAM-1発現阻害ではなく、NFκBの活性化を阻害した結果と考えられた。
【0039】
【発明の効果】
一般式(I)で表される化合物又は生理学的に許容されるその塩を有効成分として含む本発明の阻害薬は、IκBαのユビキチン化を阻害する作用を有しており、炎症性疾患の予防及び/又は治療のための医薬、あるいは悪性腫瘍の治療のための医薬として有用である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の阻害薬が細胞内IκBαの分解を阻害する活性を有することを示した図である。図1(a)は化合物UPI-19がIκBα分解を濃度依存的に阻害する結果を示し、図1(b)は化合物UPI-19による分解抑制作用がIκBαユビキチン化阻害を介したIκBαに選択的な作用であることを示した図である。
【図2】 本発明の阻害薬が濃度依存的にTNFαによるICAM-1発現を阻害する結果を示した図である。

Claims (5)

  1. 下記の一般式(I):
    Figure 2007131531
    (式中、Aは水素原子又はアルキル基を示し;Bはアルキレン基を示し;Xは酸素原子又は2個の水素原子を示し;R1及びR2はそれぞれ独立に水素原子又は低級アルキル基を示すが、R1及びR2が示す低級アルキル基は互いに結合して環を形成してもよい)で表される化合物又は生理学的に許容されるその塩を有効成分として含むIκBαのユビキチン化の阻害薬。
  2. Aが低級アルキル置換シクロアルキル基であり、Bが炭素数1から4個の直鎖状アルキレン基であり、Xが酸素原子であり、R1及びR2がそれぞれ独立に低級アルキル基である請求項1に記載の阻害薬。
  3. Aが低級アルキル置換シクロヘキシル基であり、Bが炭素数2又は3個の直鎖状アルキレン基であり、Xが酸素原子であり、R1及びR2がそれぞれ独立に低級アルキル基である請求項1に記載の阻害薬。
  4. 炎症性疾患の予防及び/又は治療に用いる請求項1から3のいずれか1項に記載の阻害薬。
  5. 悪性腫瘍の治療に用いる請求項1から3のいずれか1項に記載の阻害薬。
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