JP2007121330A - 音響信号に対する情報の埋め込み装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】 データを埋め込むことができる確率を高め、埋め込み可能な情報量と抽出時の精度を増大させるとともに、位置ずれ補正の精度を向上させ、多少の位置ずれが発生してもビット反転を発生させないことが可能な音響信号に対する情報の埋め込み装置を提供する。
【解決手段】 あらかじめ複数の窓関数を用意しておき、音響信号を所定の大きさの音響フレーム単位で読み込み、各音響フレームについて複数の窓関数を用いて周波数変換を行い、埋め込むべきビット列の2値に応じて、音響フレームの前部と後部の低周波成分の関係を変化させた後、高周波成分と合成する。この際、“0”埋込用関数と“1”埋込用関数を互いに非対称とすることにより、抽出側でビットを反転して認識することがないようにし、埋め込み情報の抽出精度を高める。
【選択図】 図14

Description

本発明は、CD・DVD等を用いた民生・業務用途における鑑賞用のパッケージ音楽分野、放送事業者等が商業目的で配信する放送・ネットワーク音楽配信分野における音楽著作権の保護(不正コピーの監視)および音楽属性情報の提供(楽曲タイトル検索サービス)分野、ミュージアム、イベント会場における展示説明ナレーションに連動した文字情報の提供サービス分野、放送番組やCD/DVDパッケージの音声信号からURLなどの情報を抽出し、携帯電話を用いて所定のコンテンツに関連するwebサイトにアクセスして詳細情報を抽出したり、アンケートに回答したりする非接触なインターネットのゲートウェイサービス分野に関する。
最近、流れている音楽のタイトル等を知ることができる楽曲属性情報の提供サービスとして、放送された音楽に対して日時と地域を放送局に照会したり、携帯電話で流れている音楽断片を録音してデータベースに登録されているメロディーと照合したりするサービスが実用化されている(例えば、特許文献1、2参照)。
特許文献1、2に記載の発明では、録音した音楽の断片と、データベースに登録されているメロディーと照合するため、データベースに登録される楽曲が増えると、処理負荷が増え、類似したメロディーを誤判定する可能性が増える。そこで、曲名やアーチスト情報などの楽曲属性情報を不可聴な電子透かしとして音響信号に埋め込む手法も提案されている(例えば、特許文献3〜6参照)。
特許文献1〜6に記載の手法では、埋め込み可能な情報量が少なく、音質が少なからず劣化し、各種信号処理により透かし情報が消失し、またアナログコピーに対しては、透かし検出が困難であるという問題がある。そこで、本出願人は、音響信号の低周波数領域を複数の窓関数により分割し、分割した2つの低周波数帯の成分の比率を属性情報のビット値に応じて変更することにより、モノラル、ステレオのいずれの音響信号に対しても、属性情報(付加情報)を埋め込むことができる手法を提案した(特許文献7参照)。
特開2002−259421号公報 特開2003−157087号公報 特開平11−145840号公報 特開平11−219172号公報 特許第3321767号公報 特開2003−99077号公報 特願2005−147743号
しかしながら、上記特許文献7に記載の手法では、付加情報の埋め込みに用いられる低周波数帯を得るための窓関数がハニング窓を時系列に対称的に2分割しているため、データを埋め込める領域が狭くなる、埋め込み可能な情報量が少なくなり、抽出時の感度が低下する、分割窓が幾何学的に同一形状で対称的に配置されているだけであるため、抽出時のわずかな位置ずれによりビット反転が発生し易い、分割窓自体の対称形状が位置ずれ補正時の判定ミスを発生させ易い、原音響信号上の時系列な急激なレベル変化により、データ判定とビット判定ミスが発生し易い、等の問題がある。
そこで、本発明は、データを埋め込むことができる確率を高め、埋め込み可能な情報量と抽出時の精度を増大させるとともに、位置ずれ補正の精度を向上させ、多少の位置ずれが発生してもビット反転を発生させないことが可能な音響信号に対する情報の埋め込み装置を提供することを課題とする。
上記課題を解決するため、本発明では、時系列のサンプル列で構成される音響信号に対して、付加情報を聴取不能な状態で埋め込む装置であって、前記音響信号より、所定数Nのサンプルを音響フレームとして互いにN未満の所定サンプル数に対応する時刻だけずれた2種類のAタイプ音響フレーム、Bタイプ音響フレームを読み込む音響フレーム読込手段と、前記Aタイプ音響フレームに対しては第1窓関数、第2窓関数、第3窓関数を用いてそれぞれ周波数変換を行い、前記第1窓関数に対応するスペクトルである第1窓スペクトル、前記第2窓関数に対応するスペクトルである第2窓スペクトル、前記第3窓関数に対応するスペクトルである第3窓スペクトルを生成するとともに、前記Bタイプ音響フレームに対しては第4窓関数を用いて周波数変換を行い、前記第4窓関数に対応するスペクトルである第4窓スペクトルを生成する周波数変換手段と、前記生成された各窓スペクトルから、所定の低周波数帯に対応する低周波スペクトルをそれぞれ抽出し、前記埋め込むべき付加情報の情報配列の値に基づいて、前記抽出した各低周波スペクトルのうち、先頭の第1窓関数と後部の第3窓関数の低周波スペクトル強度の割合を変更すると共に、第2窓関数と第4窓関数の低周波スペクトルの各成分を除去する低周波成分変更手段と、前記変更された低周波スペクトルを含む各窓スペクトルに対して周波数逆変換を行って、改変音響フレームを生成する周波数逆変換手段と、前記生成された改変音響フレームを順次出力する改変音響フレーム出力手段を有しており、前記第1窓関数、第2窓関数、第3窓関数、第4窓関数を加算すると、全区間固定値1になるように設定したものであり、前記第1窓関数と第2窓関数、前記第2窓関数と第3窓関数は、同一時刻において、双方が同時に0でない値をもつような箇所が存在するように設定され、前記第1窓関数と第3窓関数は、一方が0でない値をもつ場合に他方は必ず0となるように設定されるとともに、各窓関数の両側が非対称な余弦関数をもつように設定された音響信号に対する情報の埋め込み装置を提供する。
本発明によれば、音響信号を所定区間に区分し、埋め込むべき付加情報の情報配列の値に基づいて、前記所定区間の低周波成分の先頭部分と後部部分のスペクトル強度の割合を変更する際、低周波成分の先頭部分と後部部分を互いに非対称な窓関数により抽出するようにしたので、データを埋め込むことができる確率を高め、埋め込み可能な情報量と抽出時の精度を増大させるとともに、位置ずれ補正の精度を向上させ、多少の位置ずれが発生してもビット反転を発生させないことが可能となるという効果を奏する。
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
(1.本発明の基本概念)
まず、本発明の基本概念について説明する。上述のように、本出願人は、特許文献7において、複数の窓関数を用いて、音響信号の低周波数領域を複数に分割し、そのうちの2つの低周波数帯の成分の比率を属性情報のビット値に応じて変更することにより、モノラル、ステレオのいずれの音響信号に対しても、付加情報を埋め込むことができる手法を提案している。このように、複数の窓関数を用いて分割した低周波数帯の成分の比率を、埋め込む情報に応じて、変化させる点については、本発明も同様である。
しかし、特許文献7で示した手法では、3つの窓関数のうち、ビット値の埋め込み用に用いる2つの窓関数が左右対称になっている。ここで、特許文献7において用いる3つの窓関数の様子を図12(b)〜(d)に示す。図12(b)と図12(d)を比較するとわかるように、”0”埋込用の窓関数W(1,i)と、”1”埋込用の窓関数W(3,i)が左右対称となっている。このため、抽出側で認識するビットが、埋め込み側と反転してしまうということが、しばしば生じる。
このビット反転が生ずる様子を図13を用いて説明する。図13(a)は、“0”、“区切り”、“1”を示す情報が埋め込まれた3つの連続する音響フレームにおける低周波成分の分布状態を示している。現実には、このような低周波成分の分布状態を波形として抽出することは困難であるため、図13(a)においては、第1窓関数を乗じた場合のエンベロープ波形を代用している。低周波成分の分布状態は、窓関数を乗じた場合のエンベロープ波形に比較的近い状態をもつためである。図13(a)中先頭(左端)の音響フレームは、“0”が埋め込まれているため、窓関数W(1,i)に対応した低周波成分が存在し、図13(a)中中央の音響フレームは、“区切り”が埋め込まれているため、低周波成分が存在せず、図13(a)中後部(右端)の音響フレームは、“1”が埋め込まれているため、窓関数W(3,i)に対応した低周波成分が存在する。また、図13(a)中、先頭と後部の音響フレームにおける垂直方向の太線は、低周波成分の分布がピークとなる位置を示す。
図13(a)に示すような音響フレームを抽出する側で処理する場合、抽出側では、流れている音を録音してデジタル化して音響フレームを抽出するため、埋め込み側の音響フレームと一致しない。そのため、図13(b)に示すように、埋め込み側と位置が合っている場合は、それぞれ、“0”、“1”を抽出できるが、埋め込み側と位置がずれた場合は、“1”、“0”と、ビットが反転した状態で抽出されることになる。これは、図13(c)に示すように、窓関数W(1,i)に対応した低周波成分の分布と窓関数W(3,i)に対応した低周波成分の分布のピーク位置が近いために生じる。
そこで、本発明では、図12(b)〜(d)に示した窓関数に代えて図14(b)〜(d)に示したような窓関数W(1,i)、W(2,i)、W(3,i)を用意し、抽出側で認識し易いようにした。窓関数W(1,i)は、音響フレームの前部を抽出するためのものであり、図14(b)に示すように前部の所定のサンプル番号iの位置において、最大値1をとり、後部においては、最小値0をとるように設定されている。どのサンプル番号の場合に最大値をとるかについては、窓関数W(1,i)の設計によって異なってくるが、本実施形態では、後述する〔数式1〕で定義される。窓関数W(1,i)を乗じることにより、図14(a)に示すような音響フレームの信号波形は、図14(f)に示すように、前部に信号成分が残り、後部の信号成分が削除されたものとなり、これがフーリエ変換対象となる。
また、窓関数W(2,i)は、音響フレームの中央部を抽出するためのものであり、図14(c)に示すように、中央部の所定のサンプル番号iの位置において、最大値1をとり、前部、後部においては、最小値0をとるように設定されている。どのサンプル番号の場合に最大値をとるかについては、窓関数W(2,i)の設計によって異なってくるが、本実施形態では、後述する〔数式2〕で定義される。窓関数W(2,i)を乗じることにより、図14(a)に示すような音響フレームの信号波形は、図14(g)に示すように、中央部に信号成分が残り、前部と後部の信号成分が除去されたものとなり、これがフーリエ変換対象となる。
また、窓関数W(3,i)は、音響フレームの後部を抽出するためのものであり、図14(d)に示すように、前部においては最小値0をとり、後部の所定のサンプル番号iの位置において、最大値1をとるように設定されている。どのサンプル番号の場合に最大値をとるかについては、窓関数W(3,i)の設計によって異なってくるが、本実施形態では、後述する〔数式3〕で定義される。窓関数W(3,i)を乗じることにより、図14(a)に示すような音響フレームの信号波形は、図14(h)に示すように、前部の信号成分が除去され、後部に信号成分が残ったものとなり、これがフーリエ変換対象となる。このように前部、中央部、後部を抽出した後、フーリエ変換を実行するため、前部、中央部、後部に対応したスペクトルが得られることになる。1つの音響フレームにビット値を埋め込むためには、本来、前部と後部の2つに分けられれば良いのであるが、抽出側においては、必ずしも、信号を同期して読み込むことができるとは限らず、したがって、前部と後部をはっきりと区別するため、本発明では、埋め込み時に中央部の信号成分を常に削除し、前部と後部を時間的に分離することとしている(ただし、抽出時は前部と後部だけを解析すればよく、中央部は無視してよい)。本発明において用いる窓関数の最大の特徴は、窓関数W(1,i)と窓関数W(3,i)が左右非対称である点である。このため、従来のような、ビット反転が起こりにくくなる。
本発明によるビット抽出の様子を図15を用いて説明する。図15(a)は、図13(a)に対応するものであり、“0”、“区切り”、“1”を示す情報が埋め込まれた3つの連続する音響フレームにおける低周波成分の分布状態を示している。図13(a)中先頭(左端)の音響フレームは、“0”が埋め込まれているため、窓関数W(1,i)に対応した低周波成分が存在し、図13(a)中中央の音響フレームは、“区切り”が埋め込まれているため、低周波成分が存在せず、図13(a)中後部(右端)の音響フレームは、“1”が埋め込まれているため、窓関数W(3,i)に対応した低周波成分が存在する。また、図15(a)においても、図13(a)と同様、先頭と後部の音響フレームにおける垂直方向の太線は、低周波成分の分布がピークとなる位置を示す。
図15(a)に示すような音響フレームを抽出する側で処理する場合、埋め込み側と位置が合っている場合は、従来の場合と同様に、それぞれ、“0”、“1”を抽出できる。従来と異なるのは、本発明では、埋め込み側と位置が少しずれた程度の場合では、“区切り”が抽出されるのみであり、反転したビットが抽出されるということはない。これは、図15(c)に示すように、窓関数W(1,i)に対応した低周波成分の分布と窓関数W(3,i)に対応した低周波成分の分布のピーク位置が遠いためである。抽出側において誤って“区切り”を抽出した場合は、それを無視すれば良いだけであるため、反転したビット値が抽出されてしまうよりは問題が小さい。
また、本発明では、音響フレームを重複させて読み込み、奇数フレーム(または偶数フレーム)については、窓関数W(1,i)、W(2,i)、W(3,i)を用い、偶数フレーム(または奇数フレーム)については、図14(e)に示したような窓関数W(4,i)を用いるようにした。
なお、本発明においては、音響フレームは重複して読み込まれる。すなわち、奇数番目の音響フレームと偶数番目の音響フレームは、所定数のサンプルを重複して読み込む。上記のように、奇数フレームと偶数フレームでは、用いられる窓関数が異なるが、奇数フレームと偶数フレームは単に奇数か偶数かの違いだけであるため、どちらに対して処理をどちらの処理を行っても良い。したがって、本明細書では、奇数フレーム、偶数フレームの一方をAタイプフレーム、他方をBタイプフレームと呼ぶことにする。本実施形態では、奇数フレームをAタイプフレーム、偶数フレームをBタイプフレームとして説明するが、逆に偶数フレームをAタイプフレーム、奇数フレームをBタイプフレームとしても良い。
本実施形態では、窓関数W(1,i)〜W(4,i)は、以下の〔数式1〕〜〔数式4〕で定義される。なお、図14において、横軸は時間軸(i)である。iは、後述するように、各音響フレーム内のN個のサンプルに付した通し番号であるため時刻tに比例している。また、図14(a)(f)(g)(h)(i)において縦軸は信号の振幅値(レベル)を示す。図14(b)〜(e)において縦軸は窓関数W(1,i)、W(2,i)、W(3,i)、W(4,i)の値を示しており、W(1,i)、W(2,i)、W(3,i)、W(4,i)の最大値はいずれも1である。
〔数式1〕
i≦3N/8のとき、W(1,i)=0.5−0.5cos(8πi/(3N))
3N/8<i≦N/2のとき、W(1,i)=0.5−0.5cos(8π(i−N/4)/N)
i>N/2のとき、W(1,i)=0.0
〔数式2〕
i≦3N/8のとき、W(2,i)=0.0
3N/8<i≦N/2のとき、W(2,i)=0.5−0.5cos(4π(i−N/4)/N)
i>3N/4のとき、W(2,i)=0.0
〔数式3〕
i≦N/2のとき、W(3,i)=0.0
i>N/2のとき、W(3,i)=0.5−0.5cos(4π(i−N/2)/N)
〔数式4〕
i≦N/4のとき、W(4,i)=0.0
N/4<i≦N/2のとき、W(4,i)=0.5−0.5cos(4π(i−N/4)/N)
N/2<i≦7N/8のとき、W(4,i)=0.5−0.5cos(8π(i−N/8)/(3N))
i>7N/8のとき、W(4,i)=0.0
なお、図14および上記〔数式1〕〜〔数式4〕から明らかなように、窓関数W(1,i)とW(3,i)は、互いに非対称な形状である。これは、後述する抽出側において、両者の識別を容易にするためである。また、窓関数W(1,i)、W(2,i)、W(3,i)は、iが所定の値のときに最大値1をとり、iがその他の値をとる場合には、iの値に応じて単調増加、または単調減少する窓関数を分割したものであるため、窓関数W(1,i)とW(3,i)が定まると、窓関数W(2,i)も必然的に定まる。このため、窓関数W(2,i)は左右非対称の形状となっている。
本発明においては、奇数フレームと偶数フレームを、所定サンプルずつ重複して読み込むため、情報の埋め込みを行った後、音響信号に復元する際に、窓関数を乗じた奇数フレームと、窓関数を乗じた偶数フレームの重複サンプルを加算した場合に、ほぼ元の値に戻るようにしなければならない。このため、窓関数W(4,i)の形状は、窓関数W(1,i)、W(2,i)、W(3,i)の値に応じて必然的に定まる。すなわち、奇数フレームと偶数フレームの重複部分において、窓関数W(1,i)、W(2,i)、W(3,i)、W(4,i)を加算すると、全区間固定値1になるように定義されている。
(2.音響信号に対する情報の埋め込み装置)
図1は、本発明に係る音響信号に対する情報の埋め込み装置の構成を示す機能ブロック図である。図1において、10は音響フレーム読込手段、20は周波数変換手段、30は低周波成分変更手段、40は周波数逆変換手段、50は改変音響フレーム出力手段、60は記憶手段、61は音響信号記憶部、62は付加情報記憶部、63は改変音響信号記憶部、70は付加情報読込手段である。なお、図1に示す装置は、ステレオ音響信号、モノラル音響信号の両方に対応可能であるが、ここでは、ステレオ音響信号に対して処理を行う場合について説明していく。
音響フレーム読込手段10は、付加情報の埋め込み対象とする元のステレオ音響信号の各チャンネルから所定数のサンプルを1フレームとして読み込む機能を有している。周波数変換手段20は、音響フレーム読込手段10が読み込んだ音響信号のフレームをフーリエ変換等により周波数変換してフレームスペクトルを生成する機能を有している。低周波成分変更手段30は、Aタイプの音響フレームについては、生成されたフレームスペクトルから3つの所定周波数範囲に相当するスペクトル集合を3セット抽出し、付加情報記憶部62から抽出した付加情報に基づいて、低周波強度データのスペクトル集合間の割合(比率)を変更し、Bタイプの音響フレームについては、生成されたフレームスペクトルの所定周波数範囲の低周波強度データを“0”にする機能を有している。周波数逆変換手段40は、変更された低周波強度データを含む複数のフレームスペクトルに対して周波数逆変換を行うことにより、改変音響フレームを生成する機能を有している。改変音響フレーム出力手段50は、生成された改変音響フレームを順次出力する機能を有している。記憶手段60は、付加情報を埋め込む対象とするステレオ音響信号を記憶した音響信号記憶部61と、ビット配列として構成され、ステレオ音響信号に埋め込まれる付加情報を記憶した付加情報記憶部62と、付加情報埋め込み後の改変音響信号を記憶する改変音響信号記憶部63を有しており、その他処理に必要な各種情報を記憶するものである。付加情報読込手段70は、付加情報記憶部62から付加情報を抽出する機能を有している。なお、付加情報とは、音響情報に付加して埋め込むべき情報であり、タイトルやアーティスト名等の属性情報、および属性情報以外の他の情報を含むものである。図1に示した各構成手段は、現実にはコンピュータおよびその周辺機器等のハードウェアに専用のプログラムを搭載することにより実現される。すなわち、コンピュータが、専用のプログラムに従って各手段の内容を実行することになる。
(3.埋め込み装置の処理動作)
次に、図1に示した音響信号に対する情報の埋め込み装置の処理動作について図2のフローチャートに従って説明する。ここでは、音響信号として、L(左)、R(右)の2チャンネルを有するステレオ音響信号に対して処理を行う場合について説明していく。図2は、付加情報1ワード分の処理に対応したものとなっている。1ワードとしては、任意のビット数に設定することができるが、通常1バイトに設定する。まず、付加情報読込手段70は、付加情報記憶部62から付加情報を1ワード単位で読み込む(S101)。具体的には、音響信号に対する情報の埋め込み装置として用いられるコンピュータ内のレジスタに1ワード読み込むことになる。続いて、モードを区切りモードに設定する(S102)。モードは区切りモードと、ビットモード、継続識別モードの3種類が存在する。区切りモードは1ワード単位の区切りにおける処理を行うモードを示し、ビットモードは1ワードの各ビットの値に基づいた処理を行うモードを示している。付加情報記憶部62から1ワード読み込んだ場合には、その直後に必ず区切りモードに設定されることになる。継続識別モードは、低周波成分の信号レベルが小さい音響フレームが出現した場合に、区切り情報が埋め込まれた場合、次のビットが先頭から始まる新規なものか、中断されたために継続されたものであるかを識別するための情報を記録するモードを示している。
続いて、音響フレーム読込手段10が、音響信号記憶部61に記憶されたステレオ音響信号の左右の各チャンネルから、それぞれ所定数のサンプルを1音響フレームとして読み込む(S104)。音響フレーム読込手段10が読み込む1音響フレームのサンプル数は、適宜設定することができるが、サンプリング周波数が44.1kHzの場合、4096サンプル程度とすることが望ましい。したがって、音響フレーム読込手段10は、左チャンネル、右チャンネルについてそれぞれ4096サンプルずつ、順次音響フレームとして読み込んでいくことになる。本発明においては、音響フレームとしてAタイプとBタイプが存在する。Aタイプの音響フレーム、Bタイプの音響フレームは、それぞれ同タイプの先行する音響フレームの最後のサンプルの次のサンプルを先頭サンプルとして設定される。そして、AタイプとBタイプの音響フレームは互いに所定数(本実施形態では2048)のサンプルを重複して設定される。例えば、Aタイプの音響フレームを先頭からA1、A2、A3…とし、Bタイプの音響フレームを先頭からB1、B2、B3…とすると、A1はサンプル1〜4096、A2はサンプル4097〜8192、A3はサンプル8193〜12288、B1はサンプル2049〜6144、B2はサンプル6145〜10240、B3はサンプル10241〜14336となる。なお、AタイプとBタイプは相対的なものであるので、どちらが先であっても良い。すなわち、上記とは逆にA1がサンプル2049〜6144、A2がサンプル6145〜10240、A3がサンプル10241〜14336、B1がサンプル1〜4096、B2がサンプル4097〜8192、B3がサンプル8193〜12288であっても良い。図2の例では、Bタイプ音響フレームを先に設定した場合を示している。
続いて、周波数変換手段20は、読み込んだBタイプの音響フレームに対して、周波数変換を行って、その音響フレームのスペクトルであるフレームスペクトルを得る(S105)。具体的には、S104で読み込んだBタイプの音響フレームについて、窓関数を利用して周波数変換を行う。周波数変換としては、フーリエ変換、ウェーブレット変換その他公知の種々の手法を用いることができる。本実施形態では、フーリエ変換を用いた場合を例にとって説明する。
一般に、所定の信号に対してフーリエ変換を行う場合、信号を所定の長さに区切って行う必要があるが、この場合、所定長さの信号に対してそのままフーリエ変換を行うと、区切り部分が不連続になる。そこで、一般にフーリエ変換を行う場合には、ハニング窓と呼ばれる窓関数を用いて、信号の値を変化させた後、変化後の値に対してフーリエ変換を実行する。S105においてフーリエ変換を行う場合、具体的には、左チャンネル信号Xl(i)、右チャンネル信号Xr(i)(i=0,…,N−1)に対して、窓関数W(4,i)を用いて、以下の〔数式5〕に従った処理を行い、左チャンネルに対応する変換データの実部Al(4,j)、虚部Bl(4,j)、右チャンネルに対応する変換データの実部Ar(4,j)、虚部Br(4,j)を得る。
〔数式5〕
Al(4,j)=Σi=0,…,N-1W(4,i)・Xl(i)・cos(2πij/N)
Bl(4,j)=Σi=0,…,N-1W(4,i)・Xl(i)・sin(2πij/N)
Ar(4,j)=Σi=0,…,N-1W(4,i)・Xr(i)・cos(2πij/N)
Br(4,j)=Σi=0,…,N-1W(4,i)・Xr(i)・sin(2πij/N)
〔数式5〕において、iは、各音響フレーム内のN個のサンプルに付した通し番号であり、i=0,1,2,…N−1の整数値をとる。また、jは周波数の値について、値の小さなものから順に付した通し番号であり、iと同様にj=0,1,2,…N−1の整数値をとる。サンプリング周波数が44.1kHz、N=4096の場合、jの値が1つ異なると、周波数が10.8Hz異なることになる。次に、低周波成分変更手段30は、窓4成分(第4窓関数による低周波スペクトルの各成分)の除去を行う(S106)。具体的には、窓4成分に対して、以下の〔数式6〕に従った処理を実行することになる。
上記〔数式5〕に従った処理を実行することにより、各音響フレームの信号成分を周波数に対応した成分であるスペクトルで表現されたフレームスペクトルが得られる。続いて、低周波成分変更手段30が、生成されたフレームスペクトルから3つの所定周波数範囲のスペクトル集合を抽出する。人間の聴覚は、200〜300Hz程度までの低周波成分については、方向性を感知しにくくなっていることが知られている(コロナ社1990年10月30日発行「音響工学講座1.基礎音響工学、日本音響学会編」p247図9・26参照)。したがって、本実施形態では、低周波成分を200Hz程度以下としている。周波数200Hz付近は、上記jが20に相当するので、上記〔数式5〕により算出された実部Al(4,j)、虚部Bl(4,j)、実部Ar(4,j)、虚部Br(4,j)、のうち、j≦20(=M)のものを抽出することになる。
〔数式6〕
j=1〜Mの各成分に対して
Al´(4,j)=0
Bl´(4,j)=0
ステレオの場合、右信号に対応した以下も算出
E(4,j)={Al(4,j)2+Bl(4,j)2+Ar(4,j)2+Br(4,j)21/2
Ar´(4,j)=Ar(4,j)・E(4,j)/{Ar(4,j)2+Br(4,j)21/2
Br´(4,j)=Br(4,j)・E(4,j)/{Ar(4,j)2+Br(4,j)21/2
次に、周波数逆変換手段40が、上記S106の処理により窓4成分が除去されたフレームスペクトルを周波数逆変換して改変音響フレームを得る処理を行う(S107)。この周波数逆変換は、当然のことながら、周波数変換手段20がS105において実行した手法に対応していることが必要となる。本実施形態では、周波数変換手段20において、フーリエ変換を施しているため、周波数逆変換手段40は、フーリエ逆変換を実行することになる。具体的には、上記〔数式6〕のいずれかにより得られたスペクトルの左チャンネルの実部Al´(4,j)、虚部Bl´(4,j)、右チャンネルの実部Ar´(4,j)、虚部Br´(4,j)を用いて、以下の〔数式7〕に従った処理を行い、Xl´(i)、Xr´(i)を算出する。なお、上記〔数式6〕において改変されていない周波数成分については、以下の〔数式7〕においてはAl´(4,j)、Bl´(4,j)、Ar´(4,j)、Br´(4,j)として、元の値であるAl(4,j)、Bl(4,j)、Ar(4,j)、Br(4,j)を用いる。
〔数式7〕
Xl´(i)=1/N・{ΣjAl´(4,j)・cos(2πij/N)−ΣjBl´(4,j)・sin(2πij/N)}+Xlp(i+N/2)
Xr´(i)=1/N・{ΣjAr´(4,j)・cos(2πij/N)−ΣjBr´(4,j)・sin(2πij/N)}+Xrp(i+N/2)
上記〔数式7〕によりBタイプの改変音響フレームの左チャンネルの各サンプルXl´(i)、右チャンネルの各サンプルXr´(i)、が得られることになる。改変音響フレーム出力手段50は、得られた改変音響フレームを順次出力ファイルに出力する。続いて、音響フレーム読込手段10が、音響信号記憶部61に記憶されたステレオ音響信号の左右の各チャンネルから、それぞれ所定数のサンプルをAタイプの音響フレームとして読み込む(S108)。上述のように、Aタイプの音響フレームとBタイプの音響フレームは、2048サンプル重複したものとなっている。したがって、音響フレーム読込手段10は、S108においては、S104でBタイプ音響フレームを読み込んだ位置から2048サンプル分移動させて、音響フレームを読み込むことになる。
続いて、周波数変換手段20は、読み込んだAタイプの音響フレームに対して、周波数変換を行って、その音響フレームのスペクトルであるフレームスペクトルを得る(S109)。具体的には、各音響フレームについて、窓関数W(1,i)、W(2,i)、W(3,i)の3つの窓関数を用いて行う。周波数変換としては、フーリエ変換、ウェーブレット変換その他公知の種々の手法を用いることができるが、上記S105の場合と同様、本実施形態では、フーリエ変換を用いる。
S109においてフーリエ変換を行う場合、具体的には、左チャンネル信号Xl(i)、右チャンネル信号Xr(i)(i=0,…,N−1)に対して、3つの窓関数W(1,i)、W(2,i)、W(3,i)を用いて、以下の〔数式8〕に従った処理を行い、左チャンネルに対応する変換データの実部Al(1,j)、Al(2,j)、Al(3,j)、虚部Bl(1,j)、Bl(2,j)、Bl(3,j)、右チャンネルに対応する変換データの実部Ar(1,j)、Ar(2,j)、Ar(3,j)、虚部Br(1,j)、Br(2,j)、Br(3,j)を得る。なお、窓関数W(1,i)、W(2,i)、W(3,i)は、それぞれ音響フレームの前部(先頭)付近、中央付近、後部付近において値が大きくなる関数となっている。
〔数式8〕
Al(1,j)=Σi=0,…,N-1W(1,i)・Xl(i)・cos(2πij/N)
Bl(1,j)=Σi=0,…,N-1W(1,i)・Xl(i)・sin(2πij/N)
Al(2,j)=Σi=0,…,N-1W(2,i)・Xl(i)・cos(2πij/N)
Bl(2,j)=Σi=0,…,N-1W(2,i)・Xl(i)・sin(2πij/N)
Al(3,j)=Σi=0,…,N-1W(3,i)・Xl(i)・cos(2πij/N)
Bl(3,j)=Σi=0,…,N-1W(3,i)・Xl(i)・sin(2πij/N)
Ar(1,j)=Σi=0,…,N-1W(1,i)・Xr(i)・cos(2πij/N)
Br(1,j)=Σi=0,…,N-1W(1,i)・Xr(i)・sin(2πij/N)
Ar(2,j)=Σi=0,…,N-1W(2,i)・Xr(i)・cos(2πij/N)
Br(2,j)=Σi=0,…,N-1W(2,i)・Xr(i)・sin(2πij/N)
Ar(3,j)=Σi=0,…,N-1W(3,i)・Xr(i)・cos(2πij/N)
Br(3,j)=Σi=0,…,N-1W(3,i)・Xr(i)・sin(2πij/N)
上記〔数式5〕と同様に、〔数式8〕において、iは、各音響フレーム内のN個のサンプルに付した通し番号であり、i=0,1,2,…N−1の整数値をとる。また、jは周波数の値について、値の小さなものから順に付した通し番号であり、iと同様にj=0,1,2,…N−1の整数値をとる。サンプリング周波数が44.1kHz、N=4096の場合、jの値が1つ異なると、周波数が10.8Hz異なることになる。
上記〔数式8〕に従った処理を実行することにより、各音響フレームの信号成分を周波数に対応した成分であるスペクトルで表現されたフレームスペクトルが得られる。続いて、低周波成分変更手段30が、生成されたフレームスペクトルから3つの所定周波数範囲のスペクトル集合を抽出する。上述のように、人間の聴覚は、200〜300Hz程度までの低周波成分については、方向性を感知しにくくなっているため、ここでも、低周波成分を200Hz程度以下としている。周波数200Hz付近は、上記jが20に相当するので、上記〔数式8〕により算出された実部Al(1,j)、Al(2,j)、Al(3,j)、虚部Bl(1,j)、Bl(2,j)、Bl(3,j)、実部Ar(1,j)、Ar(2,j)、Ar(3,j)、虚部Br(1,j)、Br(2,j)、Br(3,j)のうち、j≦20(=M)のものを抽出することになる。
続いて、低周波成分変更手段30は、抽出した左チャンネルの実部Al(1,j)、Al(3,j)、虚部Bl(1,j)、Bl(3,j)、右チャンネルの実部Ar(1,j)、Ar(3,j)、虚部Br(1,j)、Br(3,j)を利用して、以下の〔数式9〕により、合算値E1、合算値E2を算出する。
〔数式9〕
1=Σj=1,…,M-3{Al(1,j)2+Bl(1,j)2+Ar(1,j)2+Br(1,j)2
2=Σj=1,…,M-3{Al(3,j)2+Bl(3,j)2+Ar(3,j)2+Br(3,j)2
上記〔数式9〕により算出されたE1は音響フレーム前部付近のスペクトル集合の成分強度の合算値、E2は音響フレーム後部付近のスペクトル集合の成分強度の合算値を示すことになる。続いて、この合算値E1、E2がレベル下限値Lev以上であるかどうかの判定を行う。レベル下限値Levは、音響信号Xl(i)、Xr(i)の振幅最大値が1に正規化されており、M=20に設定されている場合、0.5に設定する。このLev=0.5という値は、経験的にアナログ変換への耐性が維持できるレベルであり、低周波成分が少ない場合は適宜下げることになるが、その場合は、アナログ変換により検出精度も低下することになる。
合算値E1、E2がレベル下限値Lev以上であるかどうかを判断するのは、信号の強度が小さいと、信号を変化させても、その変化を抽出側で検出することができないためである。また、本実施形態では、第1の値(例えば“1”)と第2の値(例えば“0”)をとり得るビット値が“1”の場合、窓3成分(第3窓関数による低周波スペクトルの各成分)に、ビット値が“0”の場合、窓1成分(第1窓関数による低周波スペクトルの各成分)に、埋め込むこととしている。したがって、埋め込むビット値が“1”の場合は、合算値E1が下限値Lev未満であるとき、埋め込むビット値が“0”の場合は、合算値E2がレベル下限値Lev未満であるとき、付加情報のビット値に応じた記録をせず、先頭ビットから再度処理するため、読み込み位置を先頭ビットに戻し、モードを区切りモードに設定する(S110)。一方、埋め込むビット値が“1”で合算値E1がレベル下限値Lev以上であるか、埋め込むビット値が“0”で合算値E2がレベル下限値Lev以上であるときには、モードを判断することになる。
低周波成分変更手段30は、モードが区切りモードである場合、左(L)チャンネル信号において、窓1成分と窓3成分の低周波成分を均等(全て0となる場合も含む)とする処理を行う(S112)。具体的には、以下の〔数式10〕に従って、L側の双方を0に設定する処理を実行することになる。この場合、右(R)チャンネル信号の窓1成分と窓3成分は必ずしも均等ではない。
〔数式10〕
j=1〜Mに対して、
Al´(1,j)=0
Bl´(1,j)=0
Al´(3,j)=0
Bl´(3,j)=0
ステレオの場合、右信号に対応した以下も算出
E(1,j)={Al(1,j)2+Bl(1,j)2+Ar(1,j)2+Br(1,j)21/2
Ar´(1,j)=Ar(1,j)・E(1,j)/{Ar(1,j)2+Br(1,j)21/2
Br´(1,j)=Br(1,j)・E(1,j)/{Ar(1,j)2+Br(1,j)21/2
E(3,j)={Al(3,j)2+Bl(3,j)2+Ar(3,j)2+Br(3,j)21/2
Ar´(3,j)=Ar(3,j)・E(3,j)/{Ar(3,j)2+Br(3,j)21/2
Br´(3,j)=Br(3,j)・E(3,j)/{Ar(3,j)2+Br(1,j)21/2
上記〔数式10〕に従った処理を実行することにより、左チャンネルのフレームスペクトルの低周波数成分は、窓1成分と窓3成分共に“0” で同一となる。この窓1成分と窓3成分が均等のパターンは、付加情報の先頭位置(区切り)を示す情報となる。なお、上記〔数式10〕においては、窓1成分と窓3成分ともにAl´(j)=Bl´(j)=0としているが、抽出側で区切りであることが認識可能とすることを目的としているため、十分小さな値であれば、必ずしも0とする必要はない。また、必ずしも窓1成分と窓3成分において同一である必要はなく、差が小さければ良い。この意味で、ここでは「均等」という言葉を用いている。
一方、低周波成分変更手段30は、モードがビットモード又は継続識別モードである場合、付加情報記憶部62から抽出した付加情報のビット配列のビット値に応じて、左チャンネル信号の窓1成分と窓3成分のスペクトル強度の割合を窓1成分が優位か、窓3成分が優位かのいずれかの状態に変更する処理を行う(S111)。ここで、「優位」とは、一方の窓成分のスペクトル集合におけるスペクトル強度が、他方の窓成分のスペクトル集合におけるスペクトル強度よりも大きいことを示す。そこで、S111においては、第1の値と第2の値をとり得るビット値に応じて以下の〔数式11〕、〔数式12〕のいずれかに従った処理を実行することにより、窓1成分のスペクトル強度と、窓3成分のスペクトル強度の大小関係を変更し、窓1成分が優位か、窓3成分が優位かのいずれかに変更する処理を行う。例えば、第1の値を1、第2の値を0とした場合、ビット値が1のとき、窓1成分に対して、以下の〔数式11〕に従った処理を実行する。
〔数式11〕
j=1〜Mに対して
Al´(1,j)=0
Bl´(1,j)=0
ステレオの場合、右信号に対応した以下も算出
E(1,j)={Al(1,j)2+Bl(1,j)2+Ar(1,j)2+Br(1,j)21/2
Ar´(1,j)=Ar(1,j)・E(1,j)/{Ar(1,j)2+Br(1,j)21/2
Br´(1,j)=Br(1,j)・E(1,j)/{Ar(1,j)2+Br(1,j)21/2
なお、この場合、窓3成分に対しては、以下の〔数式12〕に従った処理を実行する。
〔数式12〕
j=M−2、M−1、Mの3成分に対して
Al´(3,j)=0
Bl´(3,j)=0
ステレオの場合、右信号に対応した以下も算出
E(3,j)={Al(3,j)2+Bl(3,j)2+Ar(3,j)2+Br(3,j)21/2
Ar´(3,j)=Ar(3,j)・E(3,j)/{Ar(3,j)2+Br(3,j)21/2
Br´(3,j)=Br(3,j)・E(3,j)/{Ar(3,j)2+Br(3,j)21/2
更にステレオの場合、残存成分を強調させるため、次のように右チャンネル成分を左チャンネル成分に移動させる処理を行う。j=1〜M−3に対して
Ar´(3,j)=0
Br´(3,j)=0
Al´(3,j)=Al(3,j)・E(3,j)/{Al(3,j)2+Bl(3,j)21/2
Bl´(3,j)=Bl(3,j)・E(3,j)/{Al(3,j)2+Bl(3,j)21/2
上記〔数式11〕〔数式12〕による処理を行った結果、窓3成分のj=M−2、M−1、Mにおいては、値が“0”となるが、他は所定値以上の信号成分が存在することになる。したがって、この場合、窓3成分が優位な状態にスペクトル強度の割合が変更されたことになる。続いて、ビット値が0のとき、窓3成分に対して、以下の〔数式13〕に従った処理を実行する。
〔数式13〕
j=1〜Mの各成分に対して
Al´(3,j)=0
Bl´(3,j)=0
ステレオの場合、右信号に対応した以下も算出
E(3,j)={Al(3,j)2+Bl(3,j)2+Ar(3,j)2+Br(3,j)21/2
Ar´(3,j)=Ar(3,j)・E(3,j)/{Ar(3,j)2+Br(3,j)21/2
Br´(3,j)=Br(3,j)・E(3,j)/{Ar(3,j)2+Br(3,j)21/2
なお、この場合、窓1成分に対しては、以下の〔数式14〕に従った処理を実行する。
〔数式14〕
j=M−2、M−1、Mの3成分に対して
Al´(1,j)=0
Bl´(1,j)=0
ステレオの場合、右信号に対応した以下も算出
E(1,j)={Al(1,j)2+Bl(1,j)2+Ar(1,j)2+Br(1,j)21/2
Ar´(1,j)=Ar(1,j)・E(1,j)/{Ar(1,j)2+Br(1,j)21/2
Br´(1,j)=Br(1,j)・E(1,j)/{Ar(1,j)2+Br(1,j)21/2
更にステレオの場合、残存成分を強調させるため、次のように右チャンネル成分を左チャンネル成分に移動させる処理を行う。j=1〜M−3に対して
Ar´(1,j)=0
Br´(1,j)=0
Al´(1,j)=Al(1,j)・E(1,j)/{Al(1,j)2+Bl(1,j)21/2
Bl´(1,j)=Bl(1,j)・E(1,j)/{Al(1,j)2+Bl(1,j)21/2
上記〔数式13〕〔数式14〕による処理を行った結果、窓1成分のj=M−2、M−1、Mにおいては、値が“0”となるが、他は所定値以上の信号成分が存在することになる。したがって、この場合、窓1成分が優位な状態にスペクトル強度の割合が変更されたことになる。
上記〔数式11〕および〔数式12〕、又は〔数式13〕および〔数式14〕のいずれかに従った処理を実行することにより、付加情報のビット配列の各ビット値に応じて、左チャンネル信号の窓1成分が優位か、窓3成分が優位かのどちらかのパターンに変更されることになる。なお、S111においては、継続識別モードの場合は、新規であるときは〔数式11〕に従って低周波成分の窓1成分、窓3成分間の分布を窓3成分が優位な状態に変更し、継続であるときは〔数式12〕に従って低周波成分の窓1成分、窓3成分間の分布を窓1成分が優位な状態に変更することになる。
この場合、高周波帯と低周波数帯の間には、必ず信号成分が“0”の部分が存在し、これにより、高周波帯と低周波数帯の信号成分が混在することを防いでいる。結局、低周波成分変更手段30は、区切りモードの場合に〔数式10〕に基づく処理をS112において行い、ビットモード又は継続識別モードの場合に〔数式11〕〔数式12〕又は〔数式13〕〔数式14〕に基づく処理をS111において行うことになる。
上記S111、S112いずれの場合であっても、次に、低周波成分変更手段30は、窓2成分(第2窓関数による低周波スペクトルの各成分)の削除を行う(S113)。具体的には、窓2成分に対して、以下の〔数式15〕に従った処理を実行することになる。
〔数式15〕
j=1〜Mの各成分に対して
Al´(2,j)=0
Bl´(2,j)=0
ステレオの場合、右信号に対応した以下も算出
E(2,j)={Al(2,j)2+Bl(2,j)2+Ar(2,j)2+Br(2,j)21/2
Ar´(2,j)=Ar(2,j)・E(2,j)/{Ar(2,j)2+Br(2,j)21/2
Br´(2,j)=Br(2,j)・E(2,j)/{Ar(2,j)2+Br(2,j)21/2
次に、周波数逆変換手段40が、上記S111〜S113の処理により各窓成分のスペクトル集合間の割合が変更されたフレームスペクトルを周波数逆変換して改変音響フレームを得る処理を行う(S114)。この周波数逆変換は、当然のことながら、周波数変換手段20がS105において実行した手法に対応していることが必要となる。本実施形態では、周波数変換手段20において、フーリエ逆変換を施しているため、周波数逆変換手段40は、フーリエ逆変換を実行することになる。具体的には、上記〔数式10〕〜〔数式15〕のいずれかにより得られたスペクトルの左チャンネルの実部Al´(1,j)等、虚部Bl´(1,j)等、右チャンネルの実部Ar´(1,j)等、虚部Br´(1,j)等を用いて、以下の〔数式16〕に従った処理を行い、Xl´(i)、Xr´(i)を算出する。なお、上記〔数式10〕〜〔数式15〕において改変されていない周波数成分については、Al´(1,j)等として、元の周波数成分であるAl(1,j)等を用いる。
〔数式16〕
Xl´(i)=1/N・{ΣjAl´(1,j)・cos(2πij/N)−ΣjBl´(1,j)・sin(2πij/N)}+1/N・{ΣjAl´(2,j)・cos(2πij/N)−ΣjBl´(2,j)・sin(2πij/N)}+1/N・{ΣjAl´(3,j)・cos(2πij/N)−ΣjBl´(3,j)・sin(2πij/N)}+Xlp(i+N/2)
Xr´(i)=1/N・{ΣjAr´(1,j)・cos(2πij/N)−ΣjBr´(1,j)・sin(2πij/N)}+1/N・{ΣjAr´(2,j)・cos(2πij/N)−ΣjBr´(2,j)・sin(2πij/N)}+1/N・{ΣjAr´(3,j)・cos(2πij/N)−ΣjBr´(3,j)・sin(2πij/N)}+Xrp(i+N/2)
上記〔数式16〕においては、式が繁雑になるのを防ぐため、Σj=0,…,N-1をΣjとして示している。上記〔数式16〕における第1式の“+Xlp(i+N/2)”、第2式の“+Xrp(i+N/2)”の項は、直前に改変された改変音響フレームのデータXlp(i)、Xrp(i)が存在する場合に、時間軸上N/2サンプル分重複することを考慮して加算するためのものである。上記〔数式16〕によりAタイプの改変音響フレームの左チャンネルの各サンプルXl´(i)、右チャンネルの各サンプルXr´(i)、が得られることになる。改変音響フレーム出力手段50は、得られた改変音響フレームを順次出力ファイルに出力する。こうして1つの音響フレームに対する処理を終えたら、モードの判定を行い(S116)、モードが区切りモードである場合は、モードを継続識別モードに設定した後(S117)、音響フレーム読込手段10が、Bタイプ音響フレームを読み込む(S104)。一方、モードがビットモード又は継続識別モードである場合は、モードをビットモードに設定した後(S118)、低周波成分変更手段30が付加情報のビット配列中の次のビットを読み込む(S103)。以上のような処理を音響信号の両チャンネルの全サンプルに渡って実行していく。すなわち、所定数のサンプルを音響フレームとして読み込み、音響信号から読み込むべき音響フレームがなくなったら(S104)、処理を終了する。なお、S101において読み込んだ1ワードのデータの各ビットに対応する処理を終えた場合、S103からS101に戻り、付加情報の次のワードを読み込み処理をすることになる。付加情報の全ワードに対して処理が終了した場合は、付加情報の先頭ワードに戻って処理を行う。この結果、全ての音響フレームに対して処理を行った全ての改変音響フレームが出力ファイルに記録されて、改変音響信号として得られる。得られた改変音響信号は、記憶手段60内の改変音響信号記憶部63に出力され、記憶される。
以上の処理による左チャンネル信号の変化の様子を図3を用いて説明する。図3において、図面左右方向は、時間軸であり、サンプル数に比例する。また、図中多数存在する矩形は、改変音響フレームの窓1成分、窓3成分を示している。窓成分を示す矩形の横幅はサンプル数、縦幅は強度を示しているが、図3においては、横幅、縦幅とも正確に示したものではなく、窓1成分に対応する先頭部分に強い信号成分があるか、窓3成分に対応する後部部分に強い信号成分があるかということを示すものである。図3(a)は、上記〔数式9〕により算出された合算値E1、E2がレベル下限値Lev未満となる音響フレームが存在しない場合、すなわち、付加情報を埋め込むには、良好な信号である場合を示している。図3(b)は、上記〔数式9〕により算出された合算値E1、E2がレベル下限値Lev未満となる音響フレームが存在する場合、すなわち、付加情報を埋め込むには、良好でない信号である場合を示している。
例えば、付加情報として、1ワード目が「11011100」、2ワード目が「11000001」の2ワードのビット配列を埋め込むとする。まず、各ワードの先頭には、区切りを示す情報として、窓1成分、窓3成分が均等な状態に設定されることになる。これは、S102により区切りモードに設定され、S112において、上記〔数式10〕に従った処理を実行した結果得られる。続いて、付加情報の各ビットに対応した処理を行う前に、新規であるか継続であるかを示す情報を記録することになる。
本実施形態では、レベル下限値Lev未満となる音響フレームが存在した場合であっても、その時点で処理したビットは有効とし、そこから継続して行うため、そのビットが新規であるか継続であるかの情報を記録しておく必要がある。そこで、区切りを示す情報を記録した後には、新規であるか継続であるかを示す情報を記録する。具体的には、区切りモードの状態で、モード判断を行うことにより(S116)、継続識別モードに設定され(S117)、付加情報のビットを読み込むことなく、Bタイプ音響フレームの抽出に戻る(S104)。そして、周波数変換後(S109)、新規である場合には、〔数式11〕に従った処理により、低周波成分である窓1成分、窓3成分間の分布を窓3成分が優位な状態に変更する(S111)。
このようにして、新規か継続かを示す情報を記録した後は、継続識別モードの状態でモード判断を行うため(S116)、ビットモードに設定され(S118)、レジスタから先頭のビットを読み込み(S103)、Bタイプ音響フレームの抽出を行う(S104)。図3(a)の例では、レベル下限値Lev未満となる音響フレームが存在しないため、1ワードが連続してS111により処理されることになる。これは、S103からS118を経由するループが8回(1ワード=1バイトの場合)連続して繰り返され、その間レベル下限値Lev未満であるとしてS110およびS112、S117を経由することがなかったことを示している。図3に示すように、付加情報のビット値が1の場合は、窓3成分に低周波成分が存在し、付加情報のビット値が0の場合は、窓1成分に低周波成分が存在する。上記〔数式11〕〜〔数式14〕からもわかるように、この場合は他方の窓成分の低周波成分は0となる。
図3(b)の例では、上記〔数式9〕に従った処理の結果、レベル下限値Lev未満となる音響フレームが存在するので、この場合S110およびS112を経由して、上記〔数式10〕に従った処理を実行した結果、窓1成分と窓3成分が均等な状態に設定される。この場合、S110において、区切りモードに設定されるため、S117を経由して、新規か継続かを示す情報を記録することになる。図3(b)の例では、1ワード目の「11011100」を埋め込む場合に、最初は第1ビット目の「1」の1ビット処理した時点でレベル下限値Lev未満の音響フレームが出現しているため、区切りを示す情報を記録した後、継続を示す情報を記録し、継続して第2ビット目の「1」から処理をしている。そして、第2ビット目から第5ビット目の「1011」を処理した時点でレベル下限値Lev未満の音響フレームが出現しているため、区切りを示す情報を記録した後、継続を示す情報を記録し、継続して第6ビット目の「1」から処理をしている。
なお、図3の例では、付加情報の1ワードを1バイトとした場合について説明したが、新規か継続かを示す情報を記録するため、付加情報の1ワードを任意のビット数単位で記録することが可能である。
上記のようにして得られた改変音響信号の左チャンネルのうち、付加情報が埋め込まれている部分については、低周波成分は、窓1成分と窓3成分が均等となっているか、あるいは窓1成分が優位か、窓3成分が優位かの3通りの分布しかないことになる。しかし、高周波成分については、元の音響信号のままであるので、制作者の設定に基づいた種々な分布になる。また、上記の例で示したように、ステレオ音響信号を利用した場合には、左チャンネルにおいて変化させられた低周波成分は、上記〔数式10〕〜〔数式15〕の処理からも明らかなように、必ず右チャンネルの低周波成分に付加されている。したがって、右チャンネルが左チャンネルにおいて削除された成分を補っているため、両チャンネル全体として見ると、信号の劣化がない。人間の聴覚は、高周波成分については、方向性を感知し易いが、低周波成分については、方向性を感知しにくくなっている。したがって、低周波成分が一方に偏っていても、聴いている人にとっては、通常の音響信号と変わりなく聴こえることになる。
(4.埋め込み状態の従来との比較)
ここで、特許文献7に記載された従来発明との比較を行う。図16は、特許文献7に示した従来技術による埋め込み前と埋め込み後の、音響信号(ステレオ2チャンネルの場合は、Lチャンネル信号)の低周波部分を示す概念図である。このうち、図16(a)は、埋め込み直前、すなわち窓関数を乗じた後、低周波成分の状態を変更する前の音響信号の低周波成分の分布状態を示しており、図16(b)は、埋め込み後、すなわち低周波成分の状態を変更した後の音響信号の低周波成分の分布状態を示している。図16においても、図13、図15と同様、窓関数を乗じた場合のエンベロープ波形を代用している。図17は、本発明による埋め込み前と埋め込み後の、音響信号(ステレオ2チャンネルの場合は、Lチャンネル信号)の低周波部分の分布状態を示す概念図である。このうち、図17(a)は、埋め込み直前、すなわち窓関数を乗じた後、低周波成分の状態を変更する前の音響信号の低周波成分の分布状態を示しており、図17(b)は、埋め込み後、すなわち低周波成分の状態を変更した後の音響信号の低周波成分の分布状態を示している。なお、図16、図17いずれも、Aタイプ3フレーム、Bタイプ3フレーム計6フレーム分の状態を示している。
図16(a)と図17(a)を比較すると、窓関数W(1,i)〜W(4,i)の形状がそのまま反映されるため、本発明では、従来技術と比べてAタイプ音響フレームにおいて広い範囲で値を有していることがわかる。そのため、〔数式9〕において算出される合算値E1、E2の値が大きくなり、レベル下限値Lev以上となる確率が高まる。その結果、S111において、ビット値の埋め込みが行われる確率も高まり、音響信号全体として、埋め込むことができるビット数が多くなる。
(5.音響信号からの情報の抽出装置)
次に、本発明に係る音響信号からの情報の抽出装置について説明する。図4は、本発明に係る音響信号からの情報の抽出装置の一実施形態を示す構成図である。図4において、100は音響信号入力手段、110は基準フレーム獲得手段、120は位相変更フレーム設定手段、130は周波数変換手段、140は符号判定パラメータ算出手段、150は符号出力手段、160は付加情報抽出手段、170は音響フレーム保持手段である。
音響信号入力手段100は、流れている音声をデジタル音響信号として取得し、入力する機能を有している。現実には、マイクロフォンおよびA/D変換器により実現される。マイクロフォンとしては、低周波成分が検出可能なものであれば、モノラル無指向性のものであっても、ステレオ指向性のものであっても使用可能である。ステレオ指向性のものであっても一方のチャンネルだけ利用すれば良い。また、図1に示した装置で情報の埋め込みを行った場合には、特別精度の高いものでなく、一般的な精度のマイクロフォンを用いても情報の抽出が可能となる。基準フレーム獲得手段110は、入力されたデジタルのモノラル音響信号(あるいはステレオ音響信号の1チャンネル)から所定数のサンプルで構成される音響フレームを基準フレームとして読み込む機能を有している。位相変更フレーム設定手段120は、基準フレームと所定サンプルずつ移動させることにより位相を変更した音響フレームを位相変更フレームとして設定する機能を有している。周波数変換手段130は、図1に示した周波数変換手段20と同様の機能を有している。符号判定パラメータ算出手段140は、生成されたフレームスペクトルから所定の周波数以下に相当する各低周波強度データを抽出し、窓1成分、窓3成分ごとに各低周波強度データの合算値EC1、EC2を以下の〔数式17〕に基づいて算出し、この合算値EC1、EC2を符号判定パラメータとし、この符号判定パラメータEC1、EC2の比率に基づいて、所定の状態であると判断する機能を有している。以下の〔数式17〕は上記〔数式9〕において右チャンネル成分を削除したもので、抽出時には右チャンネル成分を参照しないためである。
〔数式17〕
C1=Σj=1,…,M-3{Al(1,j)2+Bl(1,j)2
C2=Σj=1,…,M-3{Al(3,j)2+Bl(3,j)2
符号出力手段150は、1つの基準フレームに対応する音響フレーム(基準フレームおよび位相変更フレーム)の中から最適な位相であると判断されるものを判断し、その音響フレームの状態に対応する符号を出力する機能を有している。付加情報抽出手段160は、符号出力手段150により出力された符号の集合である3値配列を、所定の規則により変換して意味のある付加情報として抽出する機能を有している。音響フレーム保持手段170は、連続する2個の基準フレームを保持可能なバッファメモリである。図4に示した各構成手段は、現実には情報処理機能を有する小型のコンピュータおよびその周辺機器等のハードウェアに専用のプログラムを搭載することにより実現される。特に、本発明の目的をより簡易に達成するためには、携帯型端末装置をハードウェアとして用いることが望ましい。
(6.抽出装置の処理動作)
次に、図4に示した音響信号からの情報の抽出装置の処理動作について図5のフローチャートに従って説明する。まず、本装置では、平均符号レベルHL1、HL2、位相判定テーブルが初期化される。これらについて説明する。平均符号レベルHL1、HL2は、ビット値に対応する2値が埋め込まれていたと判断される音響フレーム(以下、有効フレームと呼ぶことにする)についての、上記〔数式17〕で算出される低周波成分の合算値EC1、EC2の平均値、すなわち、過去の有効フレームにおける合算値EC1、EC2の平均値で与えられるものであり、初期値は、上記埋め込み装置においても用いられるレベル下限値Levに設定されている。位相判定テーブルS(p)は、位相を判定するためのテーブルであり、pは0〜5の整数値をとる。初期値はS(p)=0に設定されている。
このように、初期値が設定されている状態で、利用者が流れている音楽について、その楽曲名等の属性情報を知りたいと思った場合、まず、抽出装置に対して、抽出装置としての起動の指示を行う。これは、例えば、抽出装置を携帯電話機等の携帯端末で実現している場合は、所定のボタンを操作することにより実行できる。抽出装置は、指示が入力されると、音響信号入力手段100が、流れている音楽を録音し、デジタル化してデジタル音響信号として入力する。具体的には、無指向性マイクロフォン(または指向性マイクロフォンの一方のチャンネル)から入力される音声を、A/D変換器によりデジタル化する処理を行うことになる。
続いて、基準フレーム獲得手段110が、音響信号入力手段100から入力された音響信号から、所定数のサンプルで構成される音響フレームを基準フレームとして抽出する(S201)。具体的には、基準フレームを抽出して音響フレーム保持手段170に読み込むことになる。基準フレーム獲得手段110が基準フレームとして読み込む1音響フレームのサンプル数は、図1に示した音響フレーム読込手段10で設定されたものと同一にする必要がある。したがって、本実施形態の場合、基準フレーム獲得手段110は、4096サンプルずつ、順次基準フレームとして読み込んでいくことになる。音響フレーム保持手段170には、上述のように2個の基準フレームが格納可能となっており、新しい基準フレームが読み込まれると、古い基準フレームを破棄するようになっている。したがって、音響フレーム保持手段170には、常に基準フレーム2個分(連続する8192サンプル)が格納されていることになる。
埋め込み装置で処理する音響フレームは、先頭から途切れることなく隣接して設定される基準フレームと、この基準フレームと位相を変更した位相変更フレームとに分けることができる。基準フレームについては、最初の基準フレームをサンプル番号1からサンプル番号4096までを設定したら、次の基準フレームは、サンプル番号4097からサンプル番号8192、さらに次の基準フレームは、サンプル番号8193からサンプル番号12288、というように途切れることなく設定される。そして、各基準フレームについて、1/6フレーム(約683サンプル)ずつ移動した5個の位相変更フレームを設定する。例えば、最初の基準フレームについては、サンプル番号683、1366、2049、2732、3413から始まる4096のサンプルで構成される5個の位相変更フレームが設定されることになる。続いて、周波数変換手段130、符号判定パラメータ算出手段140が、読み込んだ各音響フレームから、埋め込まれている情報を判定し、対応する符号を出力する(S202)。出力される情報の形式は、埋め込み側のビット値に対応する2値、および区切りとして入力された値の3値の形式となる。
ここで、ステップS202の符号判定処理の詳細を図6のフローチャートに従って説明する。まず、周波数変換手段130が、読み込んだ各音響フレームに対して、周波数変換を行ってフレームスペクトルを得る(S401)。この処理は、図1に示した周波数変換手段20における処理と同様である。ただし、抽出に用いるのは、左チャンネルだけであるので、上記〔数式8〕に従った処理を行い、左チャンネルに対応する変換データの実部Al(1,j)等、虚部Bl(1,j)等を得る。
上記周波数変換手段130における処理により、周波数に対応した成分であるスペクトルで表現されたフレームスペクトルが得られる。続いて、符号判定パラメータ算出手段140は、平均符号レベルHL1、HL2の算出を行う(S402)。具体的には、過去窓1成分が優位な状態と判断された音響フレームについての合算値EC1の積算値であるv1を、過去窓1成分が優位な状態と判断された音響フレームの数であるn1で除算することによりHL1を算出し、過去窓3成分が優位な状態と判断された音響フレームについての合算値EC2の積算値であるv2を、過去窓3成分が優位な状態と判断された音響フレームの数であるn2で除算することによりHL2を算出する。したがって、平均符号レベルHL1、HL2は、過去対応する窓成分が優位な状態と判断された音響フレームの低周波強度データの合算値の平均値となる。
さらに、符号判定パラメータ算出手段140は、生成されたフレームスペクトルから所定の周波数範囲の各低周波強度データを抽出する。抽出すべき周波数範囲は、埋め込み装置と対応させる必要がある。したがって、ここでは、周波数が200Hz程度以下の低周波強度データを抽出することになり、埋め込み装置の場合と同様、上記〔数式8〕により算出された左チャンネルの実部Al(j)、虚部Bl(j)のうち、j≦20のものを抽出する。そして、符号判定パラメータ算出手段140は、上記〔数式17〕に従った処理を実行することにより、窓1成分の合算値EC1、窓3成分の合算値EC2を算出する。抽出装置においては、これを符号判定パラメータとして用いる。
続いて、符号判定パラメータ算出手段140は、候補符号テーブルの初期化を行う(S403)。候補符号テーブルは、1つの基準フレームおよび5個の位相変更フレームを特定する0〜5の位相番号および、この6個の音響フレームの状態から得られる3値の符号を記録するものである。
続いて、符号判定パラメータ算出手段140は、窓1成分の合算値EC1、窓3成分の合算値EC2がそれぞれ所定値以下であるかどうかの判定を行う(S404)。具体的には、所定値としてそれぞれ平均符号レベルHL1、HL2の20分の1を設定する。合算値EC1が平均符号レベルHL1の20分の1以下であり、かつ、合算値EC2が平均符号レベルHL2の20分の1以下である場合、符号判定パラメータ算出手段140は、区切り情報であると判定する(S408)。
一方、符号判定パラメータ算出手段140は、上記算出された符号判定パラメータEC1、EC2の所定値との比較判定および相互の比較判定を以下の〔数式18〕に従って行い(S405)、比較結果に対応する符号を出力する。
〔数式18〕
C2>(所定値)かつEC2/EC1>2の場合、窓3成分が優位な状態
C1>(所定値)かつEC1/EC2>2の場合、窓1成分が優位な状態
上記以外の場合、両窓成分が均等
符号判定パラメータ算出手段140は、各音響フレーム単位で、上記判定結果に応じて3値の符号を出力する。すなわち、窓3成分が優位な状態と判定した場合には、第1のビット値(例えば“1”)を出力し(S406)、窓1成分が優位な状態と判定した場合には、第2のビット値(例えば“0”)を出力し(S407)、両窓成分が均等と判定した場合には、区切り情報を示す符号を出力する(S408)。なお、S405において、窓3成分が優位な状態と判定した場合は、EC1がHL1以上であるか、また、窓1成分が優位な状態と判定した場合は、EC2がHL2以上であるかを判定し、これらの条件を満たしていない場合は、区切り情報を示す符号を出力する(S408)。
窓3成分が優位な状態と判定して、第1のビット値を出力した場合(S406)、又は窓1成分が優位な状態と判定して、第2のビット値を出力した場合(S407)は、さらに、以下の〔数式19〕に従って位相判定テーブルS(p)の更新を行う(S409)。
〔数式19〕
窓3成分が優位な状態の場合、S(p)←S(p)+EC1/EC2
窓1成分が優位な状態の場合、S(p)←S(p)+EC2/EC1
続いて、符号判定パラメータ算出手段140は、候補符号テーブルに、最適位相となる候補を保存する(S410)。具体的には、位相判定テーブルに記録されているS(p)の値が最大となる位相番号pの値、前記S406〜S408により判定された3値のいずれかの符号、その音響フレームについての上記〔数式9〕に従った処理を実行することにより算出した、低周波数成分に対応する各EC1、EC2の値を最適位相の候補として候補符号テーブルに保存する。
続いて、全ての位相番号pに対応する処理を終えたかどうかを判定する(S411)。これは、ある基準フレームに対して全ての位相変更フレームの処理を行ったかどうかを判定している。本実施形態では、pが0〜5までの値をとるので、6回分処理していない場合は、処理していた音響フレームから所定サンプル数ずらして、位相の異なる音響フレームを設定し、S404に戻って処理を繰り返す。なお、p=0の場合が基準フレームであり、p=1〜5の場合が位相変更フレームである。全ての位相番号pに対応する処理を終えた場合は、候補保存テーブルに記録されている位相番号pに対応する位相が最適位相であると判定し、候補保存テーブルに記録されている符号を出力する(S412)。
再び図5のフローチャートに戻って説明する。S202による処理の結果、ビット値に相当する符号が出力された場合には、平均符号レベルのパラメータの更新を行う(S203)。具体的には、平均符号レベルHL1、HL2算出の際の分子となる積算値v1、v2にそれぞれ合算値EC1、EC2を加算して積算値v1、v2を更新し、分母となるフレーム数n1、n2にそれぞれ1を加算してフレーム数n1、n2を更新する。続いて、モードの判定を行う(S204)。モードは、区切りモードとビット出力モードの2つが用意されている。ビット出力モードである場合は、そのビット値をバッファに保存する(S209)。続いて、ビットカウンタをカウントアップする(S210)。一方、S204による判定の結果、区切りモードである場合には、さらに抽出された符号が、新規を意味するものか継続を意味するものかを判定する(S205)。この結果、新規である場合には、その直前で1ワードが終了していることを意味するので、バッファに記録された1ワード分のデータを、付加情報抽出手段160が出力する(S206)。そして、ビットカウンタを0に初期化する(S207)。さらに、モードをビット出力モードに設定する(S208)。S205において、継続と判定された場合には、バッファ内のビットに値を出力すべきであるので、ビット出力モードに設定する処理のみを行う。また、S202において、区切り情報に相当する符号が抽出された場合には、次の音響フレームから新規か継続かの情報を抽出するため、モードを区切りモードに設定する(S211)。図5に示す処理を各基準フレームに対して実行することにより、付加情報が抽出されることになる。S201において全ての基準フレームが抽出されたと判断された場合には、処理を終了する。
上記S206の処理において、付加情報抽出手段160は、まず、符号判定パラメータ算出手段140により出力された3値の符号のうち、窓3成分と窓1成分が均等であることを示す符号を区切り位置として、その次の符号を先頭とし、窓3成分が優位な状態、窓1成分が優位な状態であることを示す符号をビット値に対応させて、ビット配列を作成する。続いて、このビット配列を、所定の規則により変換して意味のある付加情報として抽出する。所定の規則としては、情報を埋め込む者が意図した情報が受け取った者に認識可能な状態とできるものであれば、さまざまな規則が適用できるが、本実施形態では、文字情報として認識するための規則としている。すなわち、付加情報抽出手段160は、符号判定パラメータ算出手段140が判定し、符号出力手段150から出力される符号を1バイト(8ビット)単位で認識し、これを設定されたコード体系に従って文字情報を認識する。このようにして得られた文字情報は、表示装置(図示省略)の画面に表示出力される。
従って、埋め込み装置により音響信号に、その楽曲の曲名やアーチスト等の属性情報を文字情報として埋め込んでおけば、利用者は、その音楽が流れているのを聞いて、その曲名やアーチストを知りたいと思ったときに、抽出装置として機能する自身の携帯端末に所定の操作を行えば、自身の携帯端末の画面に曲名やアーチスト等の属性情報が文字情報として表示されることになる。
ここで再び特許文献7に示した従来技術との比較を行う。埋め込み後の状態である図16(b)と図17(b)を比較すると、本発明では、従来技術と比べてAタイプ音響フレームにおいて広い範囲で値を有していることがわかる。そのため、S402において〔数式17〕を用いて算出される合算値EC1、EC2の値が大きくなり、S406、S407においてビット値が抽出される確率が高まる。
以上の処理においては、抽出装置において正確に付加情報を抽出するために、位相を補正する処理、窓3成分と窓1成分の強度のバランスを補正する処理、無効フレームであることを判断するための下限閾値を補正する処理を行っている。次に、これら3つの補正処理について補足説明を行う。
(7.位相補正処理について)
上記のように、抽出時には、埋め込み時に埋め込んだ音響フレームに対応して、音響信号を読み込むことができるとは限らない。そこで、音響フレームの位相をずらして複数通り(本実施形態では6通り)で読み込み、その中で最適な位相を決定し、その位相で特定される音響フレームに対応する符号を出力することにしている。例えば、6通りで読み込む場合、先頭の音響フレームは、本来サンプル番号1〜4096のサンプルであるが、サンプル番号1、683、1366、2049、2732、3413から始まる4096のサンプルで構成される6個の各音響フレームに対して処理を行い、最適な音響フレームに対応する符号を出力することになる。この位相補正処理は、S403、S409、S410、S411、S412における処理を中心として行われることになる。
(8.下限閾値補正処理について)
信号レベルが小さい場合には、窓成分の強度の大小が判定できず、抽出側で誤判断することが多くなる。そこで、合算値EC1およびEC2が所定の閾値以下のフレームについては、無効なフレームであると判断するようにしているが、この際の閾値を過去の有効フレームについての低周波強度の積算値を利用して補正する処理を行っている。このように閾値を変動させることにより、信号レベルが変動しても無効なフレームであるか、有効なフレームであるかを正確に判断することが可能となる。この下限閾値補正処理は、S402、S203における処理を中心として行われることになる。
(9.音響信号再生装置)
次に、本発明に係る音響信号再生装置について説明する。図7は、本発明に係る音響信号再生装置の一実施形態を示す構成図である。図7において、200は音響フレーム読込手段、210は付加情報抽出表示手段、240は再生フレーム投入手段、250は再生フレーム蓄積手段、260はサウンドデバイスドライバ、261はサウンドデバイス、262はタイマーである。本発明に係る音響信号再生装置は、モノラル音響信号でもステレオ音響信号でも再生可能であるが、図7に示す装置は、ステレオ音響信号を再生するものとして説明する。
音響フレーム読込手段200は、図1に示した音響フレーム読込手段10と同様、ステレオ音響信号の各チャンネルから所定数のサンプルをフレームして読み込む機能を有している。音響フレーム読込手段200により読み込まれた各音響フレームは、付加情報抽出表示手段210、再生フレーム投入手段240の2系統において処理されることになる。付加情報抽出表示手段210は、具体的には、図4に示した抽出装置のうち、位相変更フレーム設定手段120、周波数変換手段130、符号判定パラメータ算出手段140、符号出力手段150、付加情報抽出手段160、音響フレーム保持手段170、および付加情報抽出手段160が抽出した付加情報を表示出力する手段により構成されている。
再生フレーム投入手段240は、音響フレーム読込手段200により読み込まれた各音響フレームを再生フレーム蓄積手段250に投入する機能を有している。ただし、再生フレーム投入手段240は、単純に音響フレームを投入するだけでなく、後述するように、再生フレーム蓄積手段250に空きが無い場合は、音響フレームの投入を制御する機能も有している。再生フレーム蓄積手段250は、音響フレームを蓄積するバッファメモリを複数有しており、これらのバッファメモリに蓄積された音響フレームを、FIFO(ファーストイン・ファーストアウト)方式、すなわち、先に入ってきた情報が、先に出ていく方式で処理する機能を有している。すなわち、再生フレーム蓄積手段250は、再生フレーム投入手段240から投入された音響フレームを投入された順序で蓄積し、その順序でサウンドデバイスドライバ260に渡す機能を有することとなる。サウンドデバイスドライバ260は、サウンドデバイス261を駆動させて音響フレームを音響再生する機能を有しており、サウンドデバイス261は、デジタルデータである音響フレームをD/A変換して音声として再生する機能を有している。すなわち、サウンドデバイスドライバ260およびサウンドデバイス261は音響フレーム再生手段として機能することになる。タイマー262は、サウンドデバイスによる音響信号の再生と、外部機器の音響信号の再生とのタイミングをとるために利用するタイマーであり、コンピュータにおいて時刻管理を行うタイマーと共用されている。
図7に示す音響信号再生装置においては、上述のように、付加情報抽出表示手段210における付加情報を抽出・表示する系統と、再生フレーム投入手段240〜サウンドデバイスドライバ260の音響再生する系統の2系統が存在する。モノラル音響信号を処理する場合には、音響信号にチャンネルが1つしかなく、そのチャンネルに付加情報が埋め込まれているため、両系統とも1つのチャンネルの信号を処理する。一方、ステレオ音響信号を処理する場合には、音響再生系統は2つのチャンネルの信号を処理してステレオ再生するが、付加情報抽出系統は、付加情報が埋め込まれている1つのチャンネルの信号のみを処理することになる。
(10.再生装置の処理動作)
次に、図7に示した音響信号の再生装置の処理動作について説明する。図1に示した埋め込み装置により付加情報が埋め込まれた改変音響信号を記録した記録媒体を再生装置において再生すると、まず、音響フレーム読込手段200が記録媒体から読み取られたステレオ音響信号の各チャンネルから、それぞれ所定数のサンプルを1音響フレームとして読み込む。音響フレーム読込手段200が読み込む1音響フレームのサンプル数も、図1に示した音響フレーム読込手段10で設定されたものと同一にする必要がある。したがって、本実施形態の場合、音響フレーム読込手段200は、左チャンネル、右チャンネルについてそれぞれ4096サンプルずつ、順次音響フレームとして読み込んでいくことになる。また、図1に示した音響フレーム読込手段10において、音響フレームを、隣接する音響フレームとサンプルが重複するように読み込んでいる場合には、音響フレーム読込手段200においても、音響フレームを、隣接する音響フレームとサンプルが重複するように読み込んで行く。この場合、重複させるサンプル数は、音響フレーム読込手段10で重複させたサンプル数と同一とし、1音響フレームを構成する4096サンプルの半数の2048サンプルとする。なお、音響フレームを重複して読み込んだ場合であっても、付加情報抽出表示手段210に対しては、重複していない音響フレームのみを渡す処理を行う。また、付加情報抽出表示手段210に渡される音響フレームは、付加情報が埋め込まれている左チャンネルのものだけになる。
続いて、付加情報抽出表示手段210においては、読み込んだ各音響フレームを基準フレームとして、図4に示した抽出装置と同様の処理を行い、付加情報を抽出した後、画面に表示出力する。
一方、音響フレーム読込手段200により読み込まれた音響フレームは、再生フレーム投入手段240により再生フレーム蓄積手段250に蓄積されていく。再生フレーム蓄積手段250に少なくとも1フレーム蓄積されれば、サウンドデバイスドライバ260による再生処理は開始されるが、この再生処理は音響フレーム読込手段200、付加情報抽出表示手段210および再生フレーム投入手段240の処理に比べ圧倒的に処理時間がかかる。(換言すれば、付加情報抽出表示手段210などは再生処理に比べ圧倒的に速くなるように設計している。)そこで、本実施形態では、再生フレーム蓄積手段250に4フレームまで蓄積可能となっており、図7に示すように、音響フレーム読込手段200は、連続して次の音響フレームを読み込み、再生フレーム投入手段240により再生フレーム蓄積手段250に音響フレームを4フレームまで蓄積できるようにしている。再生フレーム蓄積手段250に4フレーム蓄積されると、音響フレーム読込手段200および再生フレーム投入手段240は、再生フレーム蓄積手段250に空きが発生するまで待機状態になる。従って、再生フレーム蓄積手段250には常時4フレーム分蓄積され、サウンドデバイスドライバ260は、再生フレーム蓄積手段250に蓄積された音響フレームのうち先頭の音響フレームを音響再生する。具体的には、サウンドデバイス261が音響フレームのデータをD/A変換してスピーカに出力することになる。音響再生された音響フレームは、再生フレーム蓄積手段250から削除される。
音響フレームが削除されて、再生フレーム蓄積手段250内に余裕ができると、再生フレーム投入手段240から音響フレームが再生フレーム蓄積手段250に投入される。これにより、再生フレーム蓄積手段250内は再び最大容量まで蓄積されることになる。読み込まれた音響フレームは、現実には、CPUが再生フレーム投入手段240として機能することにより、再生フレーム蓄積手段250内に投入される。この再生フレーム投入手段240は、音響フレームを再生フレーム蓄積手段250に単純に投入するだけでなく、再生フレーム蓄積手段250に空きが無い場合は、音響フレーム読込手段200、付加情報抽出表示手段210に対して処理を中断するメッセージを送り、再生フレーム蓄積手段250への音響フレームの投入を制御している。
一方、サウンドデバイス261は、再生フレーム蓄積手段250に蓄積された音響フレームのうち先頭の音響フレームを順次音響再生していく。この際、サウンドデバイス261は、1つの音響フレームの音響再生を終了する度に、音響フレーム読込手段200、付加情報抽出表示手段210、再生フレーム投入手段240に対して各処理の実行を許可するメッセージを送る。
ここで、上記再生装置における音響再生側、すなわち再生フレーム投入手段240、再生フレーム蓄積手段250、サウンドデバイスドライバ260の処理の概要を整理して図8のフローチャートに示す。まず、再生フレーム投入手段240が、再生フレーム蓄積手段250内に空いているバッファメモリが存在するかどうかを探索する(S601)。空いているバッファメモリが存在しない場合は、音響フレーム読込手段200に対して処理を中断するメッセージを送り、サウンドデバイス261からの再生終了メッセージの受信待ちとする(S602)。サウンドデバイスドライバ261からの再生終了メッセージがあった場合には、再生が終了した音響フレームを格納していたバッファメモリから削除して再生終了バッファを空きバッファに設定する(S603)。サウンドデバイス261からの再生終了メッセージは、同時に音響フレーム読込手段200、付加情報抽出表示手段210、再生フレーム投入手段240にも送信されるため、音響フレーム読込手段200、再生フレーム投入手段240が処理を再開する(S604)。続いて、空いているバッファメモリに音響フレームが格納される(S605)。一方、サウンドデバイス261では、常に、再生フレーム蓄積手段250内のバッファメモリを探索しており(S606)、音響フレームが存在する場合には、音響フレームを再生する(S607)。1つの音響フレームの再生を待ち(S608)、再生が終了したら、再生終了メッセージを音響フレーム読込手段200、再生フレーム投入手段240に送信する(S609)。
図7に示した音響信号再生装置は、音響信号については、それが付加情報が埋め込まれているか否かに関わらず、同様に音響再生処理を行う。したがって、付加情報が埋め込まれていない音響信号もそのまま音響再生されることになる。音響信号のうち、左チャンネルの付加情報が埋め込まれている部分については、改変されている。しかし、高周波成分については、元の音響信号のままであるので、制作者の設定に基づいた種々な分布になる。また、上述のように、ステレオ音響信号を利用した場合には、左チャンネルにおいて変化させられた低周波成分は、上記〔数式10〕〜〔数式15〕の処理により必ず右チャンネルの低周波成分に付加されているので、両チャンネル全体として見ると、信号の劣化がない。そのため、通常の音響信号と変わりなく聴こえることになる。
(11.モノラル音響信号の場合)
上記実施形態においては、埋め込み装置、抽出装置、再生装置のいずれにおいても、左右のチャンネルを有するステレオ音響信号の左チャンネル信号に付加情報を埋め込む場合を例にとって説明したが、逆に右チャンネル信号に付加情報を埋め込むようにしても良い。本発明は、左右の特性には無関係だからである。また、1つのチャンネルしかないモノラル音響信号に対して処理を行う場合は、上記実施形態において、左チャンネル信号に対して行った処理を行うことになる。本発明は、1つのチャンネル信号に対して付加情報を埋め込み、また抽出を行うので、モノラル音響信号であってもステレオ音響信号であっても同様に行うことができる。
図9にステレオ音響信号とモノラル音響信号に対して、本発明により付加情報を埋め込む場合の概念図を示す。図9(a)はステレオ音響信号の場合、図9(b)はモノラル音響信号の場合である。なお、図9の例では、音響フレーム1つ分の低周波成分を波形で表現しており、ビット値“0”を埋め込む場合を例に示している。
ステレオ音響信号の場合、埋め込みは左チャンネル(L−ch)信号に対して行われる。図9(a)に示すように、周波数変換後、信号分離し、さらに、ビット埋め込み処理を行う。具体的には、〔数式10〕〜〔数式15〕の処理の結果、ビット埋め込みがなされることになる。ここで、上述のように、“0”を埋め込む場合は〔数式13〕および〔数式14〕を用いる。したがって、ビット埋め込み処理後は、音響フレームの中央付近(窓2に相当)と後部付近(窓3に相当)は、低周波数帯の信号成分は0(図中、波形がないことで表現)となる。この際、〔数式13〕および〔数式14〕の内容から明らかなように、左チャンネル信号の削除された信号成分は、右チャンネル(R−ch)信号に加算される。したがって、図9(a)の下段に示すように、右チャンネル信号の低周波成分は大きくなる。ビット埋め込み処理後は、高周波成分を含めて信号合成された後、周波数逆変換され、改変音響信号が得られることになる。一方、上記〔数式11〕の最後の3つの式から明らかなように、左チャンネル信号の残っている信号成分に対応する右チャンネル(R−ch)信号の成分は、左チャンネル信号に加算される。したがって、図9(a)の上段に示すように、左チャンネル信号の窓1に相当する低周波成分は大きくなる。
モノラル音響信号の場合、図9(b)に示すように処理が行われるが、図9(a)の上段と比較するとわかるように、ステレオ音響信号の左チャンネルと同様の処理が行われることになる。
(12.信号成分が小さくても情報の埋め込みを可能とする手法)
ここまで、説明してきた処理においては、窓1成分、窓3成分に所定の大きさ以上の信号成分が存在していることが必要となり、窓1成分、窓3成分が共に所定の大きさ以下の場合には、情報の埋め込みを行うことができない。そこで、以下、窓1成分、窓3成分が共に所定の大きさ以下であっても、信号の埋め込みを可能とする手法について説明する。
この場合、図1に示した埋め込み装置における情報の埋め込み処理は、図10のフローチャートに従って行われる。図10のフローチャートにおいて、図2のフローチャートと異なる点は、S709における周波数変換処理において低周波成分変更手段30がレベルの判定を行わず、さらに、S110に相当する区切りモードへの設定処理が存在しない点である。これは、図10に従った処理では、信号レベルが小さくても強制的に情報を埋め込むこととしているため、情報の埋め込みが不可能な信号レベルが小さい部分が存在するかどうかを判断し、区切りモードに設定する必要がないからである。
したがって、S710における窓1成分、窓3成分のいずれかを優位な状態に設定する処理としては、まず、以下の〔数式20〕に従って算出される固定値Vを、低周波成分の強度として、上記合算値E1、E2に代えて設定する。
〔数式20〕
V={0.5・Lev/(M−3)}1/2
そして、第1の値を1、第2の値を0とした場合、ビット値が1のとき、上記〔数式11〕および〔数式12〕に従った処理を実行した後、以下の〔数式21〕に従った処理を実行する。
〔数式21〕
窓3成分に対して
Al´(3,j)=Al(3,j)・V/{Ar(3,j)2+Br(3,j)21/2
Bl´(3,j)=Bl(3,j)・V/{Ar(3,j)2+Br(3,j)21/2
ビット値が0の場合、上記〔数式13〕および〔数式14〕に従った処理を実行した後、以下の〔数式22〕に従った処理を実行する。
〔数式22〕
窓1成分に対して
Al´(1,j)=Al(1,j)・V/{Ar(1,j)2+Br(1,j)21/2
Bl´(1,j)=Bl(1,j)・V/{Ar(1,j)2+Br(1,j)21/2
S710における上記処理を行った後、窓2成分削除処理(S712)以降の処理は、図2に示したS113以降の処理と同様にして行われる。
上記のように、周波数成分が小さい場合に情報を埋め込んだ場合であっても、抽出側の、音響信号からの情報の抽出装置の構成は図4と同一であり、処理動作は図5のフローチャートに従ったものと同一である。また、音響信号再生装置の構成も図7と同一であり、処理動作は図8のフローチャートに従ったものと同一である。
図11にステレオ音響信号とモノラル音響信号に対して、信号成分が小さい場合に、付加情報を埋め込む場合の概念図を示す。図11(a)はステレオ音響信号の場合、図11(b)はモノラル音響信号の場合である。なお、図11の例では、図9の場合と同様に、音響フレーム1つ分の低周波成分を波形で表現しており、ビット値“0”を埋め込む場合を例に示している。
図11において、図9の場合と異なるのは、元の信号成分が小さい点である。図11(a)に示す例のように、信号分離後の段階では、窓1成分、窓3成分の値が小さい場合であっても、上記〔数式20〕〜〔数式22〕の処理に従ってビット埋め込みを行うことにより、図9と同様な信号成分を有することとなる。
モノラル音響信号の場合、図11(b)に示すように処理が行われるが、図11(a)の上段と比較するとわかるように、ステレオ音響信号の左チャンネルと同様の処理が行われることになる。
音響信号に対する情報の埋め込み装置の機能ブロック図である。 図1に示した装置の処理概要を示すフローチャートである。 図2に従った処理による低周波成分の変化の様子を示すである。 本発明に係る音響信号からの情報の抽出装置の機能ブロック図である。 図4に示した装置の処理概要を示すフローチャートである。 図5のS202の符号判定処理の詳細を示すフローチャートである。 本発明に係る音響信号再生装置の機能ブロック図である。 図7に示した装置の処理概要を示すフローチャートである。 本発明による付加情報の埋め込み処理の概念図である。 図1に示した装置において、元の信号成分が小さくても情報の埋め込みを可能とする場合の処理概要を示すフローチャートである。 元の信号成分が小さい場合の、付加情報の埋め込み処理の概念図である。 従来の窓関数を示す図である。 従来技術におけるビット抽出の様子を示す図である。 本発明で用いる窓関数を示す図である。 本発明におけるビット抽出の様子を示す図である。 従来技術による埋め込み前後の、音響信号の低周波部分を示す概念図である。 本発明による埋め込み前後の、音響信号の低周波部分を示す概念図である。
符号の説明
10・・・音響フレーム読込手段
20・・・周波数変換手段
30・・・低周波成分変更手段
40・・・周波数逆変換手段
50・・・改変音響フレーム出力手段
60・・・記憶手段
61・・・音響信号記憶部
62・・・付加情報記憶部
63・・・改変音響信号記憶部
70・・・付加情報読込手段
100・・・音響信号入力手段
110・・・基準フレーム獲得手段
120・・・位相変更フレーム設定手段
130・・・周波数変換手段
140・・・符号判定パラメータ算出手段
150・・・符号出力手段
160・・・付加情報抽出手段
170・・・音響フレーム保持手段
200・・・音響フレーム読込手段
210・・・付加情報抽出表示手段
240・・・再生フレーム投入手段
250・・・再生フレーム蓄積手段
260・・・サウンドデバイスドライバ
261・・・サウンドデバイス
262・・・タイマー


Claims (7)

  1. 時系列のサンプル列で構成される音響信号に対して、付加情報を聴取不能な状態で埋め込む装置であって、
    前記音響信号より、所定数Nのサンプルを音響フレームとして互いにN未満の所定サンプル数に対応する時刻だけずれた2種類のAタイプ音響フレーム、Bタイプ音響フレームを読み込む音響フレーム読込手段と、
    前記Aタイプ音響フレームに対しては第1窓関数、第2窓関数、第3窓関数を用いてそれぞれ周波数変換を行い、前記第1窓関数に対応するスペクトルである第1窓スペクトル、前記第2窓関数に対応するスペクトルである第2窓スペクトル、前記第3窓関数に対応するスペクトルである第3窓スペクトルを生成するとともに、前記Bタイプ音響フレームに対しては第4窓関数を用いて周波数変換を行い、前記第4窓関数に対応するスペクトルである第4窓スペクトルを生成する周波数変換手段と、
    前記生成された各窓スペクトルから、所定の低周波数帯に対応する低周波スペクトルをそれぞれ抽出し、前記埋め込むべき付加情報の情報配列の値に基づいて、前記抽出した各低周波スペクトルのうち、先頭の第1窓関数と後部の第3窓関数による低周波スペクトル強度の割合を変更すると共に、第2窓関数と第4窓関数による低周波スペクトルの各成分を除去する低周波成分変更手段と、
    前記変更された低周波スペクトルを含む各窓スペクトルに対して周波数逆変換を行って、改変音響フレームを生成する周波数逆変換手段と、
    前記生成された改変音響フレームを順次出力する改変音響フレーム出力手段と、を有しており、
    前記第1窓関数、第2窓関数、第3窓関数、第4窓関数を加算すると、全区間固定値1になるように設定したものであり、
    前記第1窓関数と第2窓関数、前記第2窓関数と第3窓関数は、同一時刻において、双方が同時に0でない値をもつような箇所が存在するように設定され、
    前記第1窓関数と第3窓関数は、一方が0でない値をもつ場合に他方は必ず0となるように設定されるとともに、各窓関数の両側が非対称な余弦関数をもつように設定されるものであることを特徴とする音響信号に対する情報の埋め込み装置。
  2. 請求項1において、
    前記低周波成分変更手段は、所定の固定値Vを、低周波数帯の強度として設定すると共に、前記固定値Vを利用して、第1窓成分、第3窓成分に所定の強度を与えることにより、前記第1窓成分と前記第3窓成分のスペクトル強度の割合を変更するものであることを特徴とする音響信号に対する情報の埋め込み装置。
  3. 請求項1または請求項2において、
    前記低周波成分変更手段は、所定の低周波数帯を200Hz以下の低周波領域に設定するものであることを特徴とする音響信号に対する情報の埋め込み装置。
  4. 請求項1において、
    前記音響信号が左右2チャンネルの時系列のサンプル列で構成されるステレオ音響信号であって、
    前記音響フレーム読込手段は、各チャンネルに対応する2種類の音響フレームをそれぞれ読み込み、前記周波数変換手段は、各チャンネルのAタイプ音響フレームに対して周波数変換を行い、各チャンネル別の第1窓スペクトル、第2窓スペクトル、第3窓スペクトルを生成するとともに、各チャンネルのBタイプ音響フレームに対して周波数変換を行い、第4窓スペクトルを生成するものであり、
    前記低周波成分変更手段は、一方のチャンネルの窓スペクトルから抽出した所定の低周波数帯に対応する3セットのスペクトル集合に対して、前記埋め込むべき付加情報の情報配列の値に基づいて、前記第1窓関数と第3窓関数のスペクトル強度の割合を変更すると共に、第2窓関数、第4窓関数の成分を削除し、前記一方のチャンネルにおいて行われた変更により削除された成分を補足するよう他方のチャンネルの前記スペクトル強度の前記スペクトル集合間の割合を変更するものであり、
    前記周波数逆変換手段は、各チャンネルについて、変更されたスペクトル強度を含むフレームスペクトルに対して周波数逆変換を行って改変音響フレームを生成し、前記改変音響フレーム出力手段は、各チャンネルについて、生成された改変音響フレームを順次出力するものであることを特徴とする音響信号に対する情報の埋め込み装置。
  5. 請求項4において、
    前記第1窓関数と第3窓関数のスペクトル強度の割合を変更するにあたり、前記一方のチャンネルにおいて第1窓関数または第3窓関数のいずれかの成分を削除し、削除された成分を補足するよう他方のチャンネルの対応する成分に加算し、
    前記一方のチャンネルにおいて削除されなかった成分については、他方のチャンネルの対応する成分を削除して、当該削除した成分を前記一方のチャンネルの対応する成分に加算するものであることを特徴とする音響信号に対する情報の埋め込み装置。
  6. 時系列のサンプル列で構成される音響信号に対して、付加情報を聴取不能な状態で埋め込む方法であって、
    前記音響信号より、所定数Nのサンプルを音響フレームとして互いにN未満の所定サンプル数に対応する時刻だけずれた2種類のAタイプ音響フレーム、Bタイプ音響フレームを読み込む音響フレーム読込段階と、
    前記Aタイプ音響フレームに対しては第1窓関数、第2窓関数、第3窓関数を用いてそれぞれ周波数変換を行い、前記第1窓関数に対応するスペクトルである第1窓スペクトル、前記第2窓関数に対応するスペクトルである第2窓スペクトル、前記第3窓関数に対応するスペクトルである第3窓スペクトルを生成するとともに、前記Bタイプ音響フレームに対しては第4窓関数を用いて周波数変換を行い、前記第4窓関数に対応するスペクトルである第4窓スペクトルを生成する周波数変換段階と、
    前記生成された各窓スペクトルから、所定の低周波数帯に対応する低周波スペクトルをそれぞれ抽出し、前記埋め込むべき付加情報の情報配列の値に基づいて、前記抽出した各低周波スペクトルのうち、先頭の第1窓関数と後部の第3窓関数の低周波スペクトル強度の割合を変更すると共に、第2窓関数と第4窓関数の低周波スペクトルの各成分を除去する低周波成分変更段階と、
    前記変更された低周波スペクトルを含む各窓スペクトルに対して周波数逆変換を行って、改変音響フレームを生成する周波数逆変換段階と、
    前記生成された改変音響フレームを順次出力する改変音響フレーム出力段階手段と、を有しており、
    前記第1窓関数、第2窓関数、第3窓関数、第4窓関数を加算すると、全区間固定値1になるように設定したものであり、
    前記第1窓関数と第2窓関数、前記第2窓関数と第3窓関数は、同一時刻において、双方が同時に0でない値をもつような箇所が存在するように設定され、
    前記第1窓関数と第3窓関数は、一方が0でない値をもつ場合に他方は必ず0となるように設定されるとともに、各窓関数の両側が非対称な余弦関数をもつように設定されるものであることを特徴とする音響信号に対する情報の埋め込み方法。
  7. 時系列のサンプル列で構成される音響信号に対して、付加情報を聴取不能な状態で埋め込む装置としてコンピュータを機能させるプログラムであって、
    前記音響信号より、所定数Nのサンプルを音響フレームとして互いにN未満の所定サンプル数に対応する時刻だけずれた2種類のAタイプ音響フレーム、Bタイプ音響フレームを読み込む音響フレーム読込手段、
    前記Aタイプ音響フレームに対しては第1窓関数、第2窓関数、第3窓関数を用いてそれぞれ周波数変換を行い、前記第1窓関数に対応するスペクトルである第1窓スペクトル、前記第2窓関数に対応するスペクトルである第2窓スペクトル、前記第3窓関数に対応するスペクトルである第3窓スペクトルを生成するとともに、前記Bタイプ音響フレームに対しては第4窓関数を用いて周波数変換を行い、前記第4窓関数に対応するスペクトルである第4窓スペクトルを生成する周波数変換手段、
    前記生成された各窓スペクトルから、所定の低周波数帯に対応する低周波スペクトルをそれぞれ抽出し、前記埋め込むべき付加情報の情報配列の値に基づいて、前記抽出した各低周波スペクトルのうち、先頭の第1窓関数と後部の第3窓関数の低周波スペクトル強度の割合を変更すると共に、第2窓関数と第4窓関数の低周波スペクトルの各成分を除去する低周波成分変更手段、
    前記変更された低周波スペクトルを含む各窓スペクトルに対して周波数逆変換を行って、改変音響フレームを生成する周波数逆変換手段、
    前記生成された改変音響フレームを順次出力する改変音響フレーム出力手段としてコンピュータを機能させ、
    前記第1窓関数、第2窓関数、第3窓関数、第4窓関数を加算すると、全区間固定値1になるように設定したものであり、
    前記第1窓関数と第2窓関数、前記第2窓関数と第3窓関数は、同一時刻において、双方が同時に0でない値をもつような箇所が存在するように設定され、
    前記第1窓関数と第3窓関数は、一方が0でない値をもつ場合に他方は必ず0となるように設定されるとともに、各窓関数の両側が非対称な余弦関数をもつように設定されるものであることを特徴とするプログラム。

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