JP2007111684A - 水処理用活性炭と水処理活性炭による水処理方法 - Google Patents

水処理用活性炭と水処理活性炭による水処理方法 Download PDF

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Abstract

【課題】活性炭のpH調整を行うことで、活性炭処理水を飲料水や飲料水等の製造工程の用水に使用する場合に、短期間に活性炭処理水pHを飲料水基準値内に、また、排水処理で活性炭を使用する場合に、短期間に活性炭処理水pHを排水基準値内にするための活性炭のpH調整方法を提供する。
【解決手段】酸によりpH調製されたカルシウム含有活性炭に炭酸水素塩又は炭酸塩を添着した水処理用活性炭において、該活性炭のカルシウム含有量が乾燥活性炭1gあたり0.001〜1.0mgで、炭酸水素塩添着量が、乾燥活性炭1gあたり0.01〜50mgであることを特徴とする水処理用活性炭。及びこの活性炭と被処理水を接触させる水処理方法。
【選択図】図4

Description

本発明は、水処理用活性炭、及び該活性炭を使用する方法や排水処理方法に関し、特に用水基準値あるいは飲料水基準値、さらに排水基準値を満足させるための水処理用活性炭のpH調整方法に関する。
活性炭は、石炭やヤシ殻等の原料を炭化後、賦活して新品の活性炭(新炭)が得られている。使用して活性炭吸着性能が低下した活性炭は、活性炭塔から排出され、これを劣化炭と呼んでいる。劣化炭は賦活再生工程を経て再生炭となり、再び目的とする用途に使用される。
新炭の原料に由来する、あるいは使用により劣化炭に付着したアルカリ金属やアルカリ土金属類が、炭化又は賦活の際に金属酸化物になって新炭や再生炭に存在する。活性炭中のこれら金属酸化物は、活性炭が水と接触することで徐々に水側に溶出し、その結果活性炭層を通過して得られる処理水がアルカリ性を示す。
処理水のpHがアルカリ性を示すようになると、飲料水として適さなくなる。同様に工業用水向けに用いる場合や廃水処理分野で用いる場合にも、活性炭処理水がアルカリ性を示す場合には、用途に適さなくなったり、そのまま放流できないという不都合が生じる。
このような不都合な問題点の対策として、特願2004−150163号には水処理用活性炭として、活性炭を酸により中和後、活性炭に保持された酸を除去することにより得られる水処理用活性炭で、酸の除去方法が水洗浄、アルカリ洗浄、乾燥である技術が記述されている。
また、特許文献1は、処理水のpH安定化のため及び処理水中のAl(アルミニウム)制御のためのCOにより処理した活性炭、及び湿潤活性炭とCOを接触させて、接触pH9.0以下の活性炭を製造する技術を開示している。
更に、特許文献2は、酸・アルカリによる活性炭の殺菌中和方法として、活性炭塔に充填した状態で微生物が増殖した活性炭を酸で殺菌し、殺菌後に残留する酸を炭酸塩や炭酸水素塩で中和する方法を開示している。
更にまた、ガス吸着用ではあるが特許文献3は、活性炭及びその製造方法ならびに酸性成分の吸着除去方法として、活性炭製造原料にアルカリ金属を添加し、アルカリ金属の炭酸塩を含む粗製活性炭を水洗してK又はNaの炭酸塩を5重量%以上含む活性炭を調製する技術を開示している。
上記の全ての文献に記述されている対策においては、新炭や再生炭を塩酸などの鉱酸で洗浄することで、活性炭に含まれる酸化カルシウムや酸化マグネシウムなどのアルカリ金属酸化物を除去する。更に活性炭に残留する塩酸を除去するための水洗をした後に、新炭や再生炭のpH調整品として出荷される。
pH調整品は、活性炭pHがJIS K1474に準拠した測定値で6〜7になるようにpH調整されたのちに出荷される。
活性炭吸着塔は、通水方法などの違いにより図1AからCの3種類に分類される。
図1Aは、2塔固定床方式で2塔を直列にして通水したり、1塔だけを通水したりする。被処理水1は活性炭層上部に供給され、活性炭層下部から流出する。活性炭の洗浄は、洗浄ポンプ5で活性炭層下部から洗浄水により洗浄される。活性炭の吸着性能が低下した活性炭は、装置から取り出されて、代わりに新炭又は再生炭が充填される。活性炭吸着塔から取り出された劣化炭は、再生設備を有する工場で新炭の性能に近い状態まで再生される。
図1のBは、移動床方式の構成を示す図である。被処理水を通水する状態では、活性炭の状態は固定床と同じである。これは固定床方式のように一度に全量を交換するのでなく、定期的に新炭や再生炭を移動床吸着塔2Cに補給し、補給分に相当する廃活性炭(劣化炭)8を移動床吸着塔2Cから引き抜く。
図1のCは、流動床方式で、被処理水を流動床吸着塔2Dの活性炭を流動させつつ活性炭と接触させて処理するフローを示すもので、活性炭層が流動状態であるので、SSの多い被処理水に適する。
用水処理には図1Aの固定床方式の採用が多い。
排水処理における活性炭処理方式は、図1AからCのいずれも使用できるが、なかでも活性炭貯槽や供給装置が無く、付帯設備が少ない図1Aの固定床方式の採用例が多い。
活性炭を充填した活性炭吸着塔の使用分野は、浄水処理や食品用水など各種製造用水などの用水処理、下水や各種産業排水処理などの排水処理に分類される。
先ず、用水処理における活性炭使用について説明する。
用水処理での活性炭吸着塔への流入水、被処理水は、工業用水や河川水を凝集沈殿処理・砂ろ過処理したものや、水道水である。活性炭による除去対象物質は残留塩素、かび臭、トリハロメタン前駆物質の有機物、色度成分などである。
活性炭処理水の用水基準値のうちpHについては、一般的に飲料水基準値、pH5.8〜8.6が適用されるが、工場内の工程管理値として、pH8.6の上限値を下げたり、下限値pH5.8を上げたりして処理水pHの管理範囲を狭めるケースも多い。
活性炭吸着塔の運転手順としては、活性炭吸着塔に再生炭あるいは新炭を充填した後、活性炭の微粉除去のための逆洗工程、90〜100℃の熱水による活性炭吸着塔の殺菌工程、活性炭充填層の逆洗工程、活性炭処理水の水質確認のための通水工程となり、活性炭処理水の水質がpHを含めた基準値に合格後に用水として各製造工程に配水される。活性炭充填後、一定期間経過すると、定期的に活性炭や配管などの付帯設備を含む活性炭吸着塔全体を90〜100℃の熱水で熱殺菌して、飲料水製造工程で使用される用水への細菌など微生物の混入を防止する。
活性炭吸着塔に活性炭を充填した直後に熱殺菌すると、経験的に活性炭処理水のpHは、活性炭吸着塔流入水より高くなる。しかしながら通水を継続することで活性炭処理水pHは、活性炭吸着塔流入水pHに近づき、最終的に活性炭吸着塔流入水とほぼ同じpHになる。
図2に用水処理における活性炭処理フローの概略図を示す。
用水処理では活性炭吸着塔への通水のSVは3〜20h−1で、トリハロメタンなどの有機物除去には4h−1、残留塩素除去には10〜20h−1である。
上記被処理水を活性炭吸着塔に通水し、その活性炭処理水13をカートリッジフィルタ14でろ過し、活性炭処理水の活性炭の微粒子などを除去し、pHモニタ15を経由して受水槽16に貯留される。
次に、排水処理における活性炭使用について説明する。
排水処理での活性炭の目的はCODや色度除去である。排水処理での活性炭吸着塔への流入水である被処理水は、排水を生物処理・凝集膜ろ過処理した水や、生物処理・凝集沈殿処理・砂ろ過処理したものや、凝集膜ろ過水やMF膜ろ過水、SS濃度10mg/リットル以下の懸濁物質が少ない排水や、製造工程水の回収水などである。
排水の種類は、下水、し尿、浄化槽汚泥、各種工場排水、埋立地浸出水などである。
従来より、活性炭はpH(活性炭試験方法、JIS K1474)が6〜7になるようにpH調整された後のpH調整品を使用する。活性炭を充填した直後に溶解性蒸発残留物濃度の高い被処理水を通水すると、経験的に活性炭処理水のpHは被処理水より高くなるが、用水処理と同様に通水を継続することで活性炭処理水pHは、活性炭吸着塔流入水pHに近づき、最終的に活性炭吸着塔流入水とほぼ同じpHになる。
図3に排水処理における活性炭処理フローの概略図を示す。
排水21は凝集沈殿装置22にてSSやCODなどを除去した後に、凝集沈殿処理水にリークする水酸化物などの粒子を砂ろ過(ろ過装置23)などでろ過し、活性炭層の閉塞を防止したうえで活性炭塔12へ通水される。活性炭塔12からの活性炭処理水13は放流したり、再利用水として場内などで利用する。
排水処理では活性炭吸着塔への通水のSVは1.0〜5h−1である。排水の活性炭処理対象成分の活性炭への吸着しやすさやその吸着量、また、活性炭処理水の水質要求、放流水基準値などよりSVが決定される。活性炭へ吸着しにくく、吸着量が少なく、また、活性炭処理水の水質要求が厳しいほどSVを小さくして、被処理水と活性炭の接触時間を長くする必要がある。
特表2000−503295号公報 特開平5−92182号公報 特開平9−86914号公報
本発明の目的は、活性炭のpH調整を行うことで、活性炭処理水を飲料水や飲料水等の製造工程の用水(以下、用水)に使用する場合に、短期間に活性炭処理水pHを飲料水基準値内に、また、排水処理で活性炭を使用する場合に、短期間に活性炭処理水pHを排水基準値内にするための活性炭のpH調整方法を提供することである。
以下に課題を詳細に説明する。
[1]用水処理の場合
図4Aに活性炭充填後からの通水時間の経過に伴う活性炭処理水pHの挙動のモデルを示す。用水処理における活性炭処理用原水は、水道水や地下水、工業用水の凝集沈殿処理水であり、それらのpHは、6〜7.5である。
(1)ケース1:活性炭pH(JIS K1474による測定)が6〜7の活性炭を使用し、活性炭の熱殺菌を行わない場合
(2)ケース2:活性炭pH(JIS K1474による測定)が6〜7の活性炭を使用し、活性炭の熱殺菌を行った場合
(3)ケース3:強力に酸洗浄した活性炭を熱殺菌した場合
(4)ケース4:本発明の目的物(活性炭処理水のpHを飲料水基準内におさめる)
活性炭pH(JIS K1474による測定)が6〜7の活性炭による用水処理において、活性炭の熱殺菌を行わない場合、ケース1のように活性炭処理水pHは活性炭充填後から飲料水基準値、pH5.6〜8.6の範囲に収まる。運転を継続しても活性炭処理水pHの上昇はない。
ケース2は、活性炭pH(JIS K1474による測定)が6〜7の活性炭を充填後に、活性炭の熱殺菌を行った後に活性炭に通水した場合の活性炭処理水pHの挙動で、熱殺菌後の活性炭処理水pHは通水初期に一時的に低下し、活性炭処理水pHは飲料水基準値内であるが、通水を継続すると活性炭処理水pHは飲料水基準値の上限値、pH8.6を超えて、更に上昇傾向を示し、活性炭処理水pHが10程度になることがある。活性炭処理水pHが飲料水基準値を外れると、その処理水は排水として排出される。
ケース3は、活性炭の酸洗浄を充分に行い、活性炭の灰分を充分に除去すると、活性炭pHがケース1やケース2の活性炭pHより低い値になる。酸洗浄を充分に行った活性炭を使用すると、通水初期の活性炭処理水pHが3〜4の強酸性になり、飲料水基準値の下限値を大きく外れるが、通水を継続しても活性炭処理水pHが飲料水基準の上限値、pH8.6を超えることはない。通水初期の低pHの活性炭処理水は用水に使用できないので、排水処理設備へ排水として排出することになる。排水処理量の増加や用水が無駄になるばかりか、活性炭充填後の試運転期間が長引く。
ケース4は、通水初期から常に活性炭処理水pHは飲料水基準値の範囲内に収まり、通水を継続してもpH8.6を超えることはない。このために活性炭充填後の試運転期間が短く、熱殺菌直後から活性炭処理水を用水に使用でき、用水の無駄がなくなる。
本発明の目的は、このような活性炭を調製することである。
[2]排水処理の場合
図4のBに活性炭充填後からの通水時間の経過に伴う活性炭処理水pHの挙動のモデルを示す。排水処理における活性炭処理用原水は、排水や排水の凝集沈殿処理後のろ過水であり、それらのpHは、6〜8で中性である。
(5)ケース5:活性炭pH(JIS K1474による測定)が6〜7の活性炭を使用し、全蒸発残留物濃度が低い排水の場合
(6)ケース6:活性炭pH(JIS K1474による測定)が6〜7の活性炭を使用し、全蒸発残留物濃度が高い排水の場合
(7)ケース7:溶解性蒸発残留物濃度が高い排水を強力に酸洗浄した活性炭で処理した場合
(8)ケース8:本発明の目的物(活性炭処理水のpHを排水基準内におさめる)
活性炭pH(JIS K1474による測定)が6〜7の活性炭による排水処理において、水道水のような溶解性蒸発残留物濃度が数百mg/リットルと低い排水を活性炭処理すると、ケース5のように活性炭処理水pHは活性炭充填後から放流水基準値、pH5.6〜8.6の範囲に収まる。運転を継続しても活性炭処理水pHの上昇はほとんどない。
全蒸発残留物とは、JIS K0102工場排水試験方法に準拠した方法で測定した値である。
被処理水のSS濃度が溶解性蒸発残留物の1%以下なら、溶解性蒸発残留物濃度と全蒸発残留物濃度(JIS K0102工場排水試験方法)は、ほぼ同じ値であると考えてよい。活性炭に通水する被処理水のSS濃度は、一般的に活性炭層の閉塞防止の点から10mg/リットル以下が望ましい。このことから溶解性蒸発残留物濃度は全蒸発残留物濃度ほぼ同じ値になる。
ケース6は、活性炭pH(JIS K1474による測定)が6〜7の活性炭を充填後に、埋立地浸出水のような全蒸発残留物濃度が高い排水を、活性炭に通水した場合の活性炭処理水pHの挙動で、通水を継続すると活性炭処理水pHは放流水基準値の上限値、pH8.6を超えて、更に上昇傾向を示し、活性炭処理水pHが10程度になることがある。活性炭処理水pHが放流水基準値を外れると、その処理水は放流水として排出できず、排水処理設備に戻される。
ケース7は、活性炭の酸洗浄を充分に行うと、全蒸発残留物濃度が高い排水を通水するとき、通水初期の活性炭処理水pHが強酸性域になり、放流水基準値の下限値を大きく外れるが、通水を継続しても活性炭処理水pHが放流水基準の上限値、pH8.6を超えることはない。通水初期の低pHの活性炭処理水は放流できないので排水処理設備へ戻される。排水処理が滞り、円滑な排水処理の運転ができず、活性炭充填後の試運転期間が長引く。
ケース8は、通水初期から常に活性炭処理水pHは放流水基準値の範囲内に収まり、通水を継続してもpH8.6を超えることはない。このために活性炭充填後の試運転期間が短く、通水直後から活性炭処理水を放流でき、排水処理の運転が順調である。
本発明の目的はこのような活性炭を調製することである。
本発明は、下記の構成とすることにより上記の課題を解決することができた。
(1)酸によりpH調整されたカルシウム含有活性炭に炭酸水素塩または炭酸塩を添着した水処理用活性炭において、該活性炭のカルシウム含有量が乾燥活性炭1gあたり0.001〜1.0mgで、炭酸水素塩添着量が乾燥活性炭1gあたり0.01〜50mgであることを特徴とする水処理用活性炭。
(2)前記(1)記載の水処理用活性炭を使用する水処理方法において、前記水処理用活性炭が熱殺菌工程を経たものであることを特徴とする水処理用活性炭による水処理方法。
(3)前記(1)に記載の水処理用活性炭を、全蒸発残留物濃度が1,000mg/リットル以上の排水の被処理水と接触させることを特徴とする水処理用活性炭による水処理方法。
本発明は以下の効果を有する。
(a)活性炭充填後に通水して得られる活性炭処理水のpHが早期に安定して、試運転期間が大幅に短縮できる。
(b)用水や水道水使用量の削減と、活性炭洗浄排水が減少し、排水量の低減が可能になる。
(c)低pH調整品による活性炭吸着塔などの設備の腐食が防止できる。
(d)活性炭流入水や運転条件の変動に左右されずに、安定した任意のpHの活性炭処理水が得られる。
(e)全蒸発残留物濃度が1,000mg/リットルを超える排水を活性炭処理する方法において、被処理水の全蒸発残留物濃度の変化に左右されずに、安定した任意のpHの活性炭処理水が得られる。
本発明の第1の態様においては、酸によりpH調整された活性炭に炭酸水素塩又は炭酸塩を添着した水処理用活性炭は、該活性炭のカルシウム含有量が乾燥活性炭1gあたり0.001〜1.0mgで、炭酸水素塩添着量は、乾燥活性炭1gあたり0.01〜50mgである。
好ましくは、該活性炭のカルシウム含有量が乾燥活性炭1gあたり0.01〜1.0mgで、炭酸水素塩添着量は、乾燥活性炭1gあたり0.01〜10mgである。
酸洗浄されてpH調整された活性炭のカルシウム含有量が、乾燥活性炭1gあたり1.0mgを超えると、下記の場合に活性炭処理水のpHが上昇傾向を示したり、飲料水基準値を超えたりする。
(1)活性炭交換後、通水を長期間連続的に行う。
(2)活性炭の熱殺菌後の通水。
(3)塩濃度の高い被処理水を活性炭に通水した場合。
また、活性炭のカルシウム含有量が乾燥活性炭1gあたり0.001mg未満では、活性炭の酸洗浄時の酸濃度を極端に高くしても除去が困難な数値である。
本発明の酸洗浄されてpH調整された活性炭は、その活性炭のカルシウム含有量により活性炭処理水のpHが規定され、活性炭pHや活性炭に残留する酸量に関係しない。本発明の酸洗浄されてpH調整された活性炭のカルシウム含有量は、通水継続による活性炭処理水pHの上昇を抑えるための指標である。
本発明の酸洗浄されてpH調整された活性炭に残留する酸量は、活性炭のカルシウム含有量が上記範囲内であれば、数値を限定しない。残留酸が多くても後段の炭酸水素塩等による洗浄により中和除去できる。
活性炭のカルシウム含有量の測定方法は、破砕又は粒状・球状活性炭を試料にし、JIS K1474の鉄の項目に準拠して測定した。
酸洗浄されてpH調整された活性炭のカルシウム含有量が低い方が、通水の継続時に活性炭処理水のpH上昇が抑えられるが、以下のような問題がある。
(1)通水初期の活性炭処理水が低pHとなり、飲料水基準値や放流水基準値が満足できない。活性炭処理水を放流するために中和処理が必要である。
(2)活性炭の熱殺菌後の活性炭処理水が極端な強酸性になり、飲料水基準値が満足できないばかりか、腐食が懸念される。
(3)低pHの活性炭処理水が出なくなるまで、活性炭処理水を処分しなければならず、用水の購入費用が無駄である。
(4)活性炭処理水pHが飲料水基準値を満足できるまで通水する期間が長く、製造設備では製造休止期間が長くなったり、放流水基準値を満たすまで放流できず、排水処理設備の機能停止期間が長くなる。
上記に詳細に説明したように、本発明の活性炭は、カルシウム含有量が乾燥活性炭1gあたり0.001〜0.1mgであることが必須の条件であるが、このカルシウム含有量を全ての活性炭が満足するものでないことは言うまでもない。
上記の規制値内に収めるためには、原料か製法のいずれかで適宜なものを選択する必要がある。
一般に活性炭原料には木材、牛の骨、血液、褐炭、泥炭を木材、石炭、ヤシ殻、石油ピッチなどが用いられ、製法も種々ある。しかし、カルシウム含有量が上記の規制値内に入る原料や製法を選定することは実際上困難であるから、製品の含有するカルシウムを酸洗浄により除去調製する方法を選択することが実際的である。
酸洗浄されてpH調整された活性炭への炭酸水素塩添着量は、乾燥活性炭1gあたり0.01〜50mgであり、0.01mg未満では、pH調製された活性炭の残留塩酸は十分に中和されず、通水初期時に活性炭処理水が低pHになる。
50mgを超えると、活性炭に添着されたアルカリ量が多いために、活性炭処理水のpHが飲料水基準値や放流水基準値の上限に近づく。被処理水のアルカリ度が30mg/リットル以上またはpHが7.5以上では、活性炭処理水のpHが飲料水基準値や放流水基準値の上限値pH8.6を超える場合がある。
なお、活性炭への炭酸水素塩添着量は、乾燥活性炭単位重量あたりの炭酸水素ナトリウム換算値とする。
炭酸水素塩添着量の測定方法は、以下のいずれかの方法が使用できるが、特に制限はない。
(1)破砕又は粒状・球状活性炭の乾燥または湿潤試料(乾燥重量で)5gと純水200mlを密閉容器に入れて、その容器を100〜110℃で60分間オートクレーブで加熱処理して溶出液を調製する。冷却後、溶出液について、JIS K0102のpH4.8酸消費量(上水試験方法では総アルカリ度、Mアルカリ度)を測定し、炭酸水素ナトリウムに換算する。
(2)別に上記湿潤試料の乾燥減量(JIS K1474による)を測定し、上記の炭酸水素ナトリウム添着量を乾燥活性炭重量あたりに換算する。
本発明に使用するpH調整された活性炭は、市販品のpH調整品を購入して使用してもよいし、また、市販品の未洗浄品活性炭を塩酸洗浄し、その後活性炭を水洗することでpH調整品を得ることができる。炭酸水素塩や炭酸塩を添着するpH調整品(以下、酸洗浄品)は、湿潤品でも乾燥品でも良いが、炭酸水素塩や炭酸塩を添着する作業や、炭酸水素塩や炭酸塩の添着量を把握するために、pH調整品(以下、酸洗浄品)は乾燥品が好適である。乾燥品とは乾燥減量(JIS K1474による)が10%以下のものである。
次に、上記酸洗浄品の活性炭の炭酸水素塩による洗浄方法について説明する。炭酸水素塩により洗浄する酸洗浄品は、水洗品でも乾燥品でも良い。
0.1〜20質量%の炭酸水素塩水溶液2〜10mを収容した洗浄槽に、酸洗浄品の活性炭約400kgを投入し、30分から2時間、機械撹拌又は空気撹拌して活性炭中の残留酸を炭酸水素塩で中和除去する。この操作は通常1回で終了する。炭酸水素塩による洗浄後の活性炭を炭酸水素塩洗浄品として出荷する。
再生炭のなかでも灰分や金属酸化物が多く付着し、酸洗浄時の酸濃度を上記濃度より高く設定しなければならない場合に、酸洗浄を複数回実施することもできる。
炭酸水素塩による洗浄後の活性炭は湿潤品であり、このまま出荷しても良いし、この湿潤品を乾燥しても良い。また、この湿潤品を再度、水洗浄しても良いし、その水洗品を乾燥しても良い。
炭酸水素塩は、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウムなどが使用できるが、安価な炭酸水素ナトリウムが好適である。炭酸塩は、炭酸ナトリウムや炭酸カリウムなどが使用できるが、安価な炭酸ナトリウムが好適である。一般に炭酸塩の溶解度は炭酸水素塩のそれよりも低く、水と接触させると、部分的に固化し、溶解が困難になるので、作業対象としては炭酸水素塩が好適である。また、炭酸塩の水溶液のpHが、炭酸水素塩の水溶液のpHより高いので、活性炭処理水のpHを過度に高めないためにも炭酸水素塩が好適である。本発明の活性炭を用いることにより、炭酸水素塩や炭酸塩の影響でpHに緩衝作用が生じるため、活性炭pHを低めに調整した酸洗浄品でも炭酸水素塩で洗浄することにより、通水直後における活性炭処理水pHの低下を抑えることができる。
また、本発明における添着作業において、活性炭の炭酸水素塩や炭酸塩の緩衝作用より、活性炭への炭酸水素塩または炭酸塩の添着量の範囲を大きくでき、厳密な洗浄作業の管理等が不要で、炭酸水素塩または炭酸塩の添着作業性が向上するとともに、製品である活性炭の品質も均一化される。
一般に、用水処理における活性炭塔流入水のMアルカリ度は、30〜50mg/リットルであるが、活性炭吸着処理の前処理の凝集沈殿処理での無機凝集剤の過剰添加や、河川水などの原水への雨水混入などにより、活性炭塔流入水のMアルカリ度が30mg/リットル以下になる場合がある。Mアルカリ度の低い活性炭塔流入水では、従来の酸洗浄品では、Mアルカリ度は、30〜50mg/リットルの流入水に比べて、活性炭処理水のpHの低い状態が更に長く続くために、飲料水基準下限値になるまでにより長い通水時間を要する。
本発明の炭酸塩や炭酸水素塩を添着した活性炭を使用することで、Mアルカリ度が30mg/リットル以下と低い活性炭塔流入水でも、活性炭に添着された炭酸塩や炭酸水素塩により、短時間に活性炭処理水のpHが飲料水基準下限値を満足することができる。
本発明の第2の態様は、活性炭の熱殺菌工程を有する用水処理方法において、該水処理用活性炭と被処理水とを接触させることを特徴とする水処理用活性炭による水処理方法である。
本発明の第2の態様の水処理方法は、活性炭吸着塔を有し、活性炭吸着層等での微生物の繁殖防止のための熱殺菌操作を行う施設に係るものである。一般には、清涼飲料製造やビールなどのアルコール飲料製造などの用水を製造する活性炭吸着設備である。
本発明の第2の態様では、活性炭交換後、逆洗、熱殺菌を経て通水初期から活性炭処理水pHを水道水基準値範囲にすることできて、短期間で確実に活性炭処理水のpHを水道水基準値範囲にすることができ、活性炭交換後、逆洗、熱殺菌後の通水の早い段階から製造工程への用水として使用できる。
従来の活性炭交換後、通水時間の短縮化により早期に製造工程が再稼働でき、使用する活性炭流入水量と排水量の削減が可能である。
活性炭吸着塔の通水方法は図1Aから図1Cの3種類で、活性炭充填層が固定されている状態でも、流動している状態でも良い。通水条件はSVが3〜20h−1であり、除去対象物の種類や濃度、除去目標値により任意に決定できる。
本発明の第3の態様は、全蒸発残留物濃度が1,000mg/リットル以上の排水の活性炭処理方法において、該水処理用活性炭と被処理水とを接触させることを特徴とする水処理用活性炭による水処理方法である。
本発明の水処理方法は、し尿、浄化槽汚泥、埋立処分場の浸出水、工場排水など全蒸発残留物濃度が1,000mg/リットル以上の排水、被処理水を活性炭吸着塔でCODや色度を処理するものである。上記排水の蒸発残留物の構成成分は、主に塩化物イオン、カルシウムイオン、ナトリウムイオンである。
本発明の活性炭を用いることにより、炭酸水素塩や炭酸塩の影響でpHに緩衝作用が生じるため、活性炭交換直後から活性炭処理水pHを中性付近に維持することができる。
活性炭吸着塔の通水方法は、図1Aから図1Cの3種類で、活性炭充填層が固定されている状態でも、流動している状態でも良い。
通水条件はSVが1〜5h−1であり、CODなどの除去対象物の種類や濃度、除去目標値により任意に決定できる。
実施例1
活性炭通水試験は以下の要領で実施し、試験の目的としては、熱殺菌後の活性炭に通水して活性炭処理水のpHが最大値と最小値になる通水時間を実験した。また、活性炭処理水pHが飲料水基準値、5.8〜8.5の範囲に収まることを確認することが目的である。
試験は、以下の図5に示す工程どおり行った。
実施例1に使用した活性炭は、以下のとおりである。
(1)pH調整品でないエバダイヤLG−10(ヤシ殻、破砕炭、荏原エンジニアリングサービス(株)製)。活性炭pHが9.4。
(2)乾物質量で100gのエバダイヤLG−10を0.5質量%塩酸水溶液0.5リットルに添加して、20〜30℃で30分間撹拌洗浄した。洗浄後、No.5Aろ紙でろ過した活性炭をpH7.4の水道水1リットルに添加して、約10分間洗浄した。この洗浄操作を2回繰り返し、活性炭pH3〜6の酸洗浄品である活性炭(以下、酸洗浄品)を得た。
活性炭のカルシウム含有量の測定は、JIS K1474に準拠した。使用した活性炭のカルシウム含有量を第1表に示す。
Figure 2007111684
内径40mmの透明ポリ塩化ビニール製カラムに上記活性炭0.66リットルを充填し、充填した活性炭の微粉除去を目的に、第2表に示す試料水をカラム下部からSV8h−1で連続的に上向流で連続的に通水し、約4時間活性炭を水洗浄した。
Figure 2007111684
洗浄終了後、引き続いて第2表記載の試料水をSV4h−1で連続的に約6時間下向流で初期通水し、初期通水時の活性炭処理水のpHを連続的に測定した。
初期通水終了後、活性炭を全量取り出して熱殺菌した。熱殺菌は、活性炭0.66リットルに第2表記載の試料水1.5リットルを添加して、オートクレーブで105℃、90分間加熱殺菌した。殺菌後、オートクレーブ内で30℃以下に冷却した後に活性炭を取り出して、その活性炭を通水試験用の活性炭とした。熱殺菌を行った活性炭全量をカラムに充填し、第1回通水を100時間行った。通水条件は、水温25℃、SV4h−1で、カラム上部から第1表記載の試料水を連続的に通水し、カラム下部から活性炭処理水を得た。活性炭処理水のpHは連続的にpH計により測定した。殺菌後の通水1回あたりSV4h−1で約100時間連続通水した。殺菌後の通水は100時間で試験を終了し、充填活性炭の全量を取り出して熱殺菌した。熱殺菌は、活性炭0.66リットルに試験水1.5リットルを添加して、オートクレーブで105℃で90分間加熱殺菌した。殺菌後、オートクレーブ内で約30℃に冷却した後に取り出して、その活性炭を通水試験用の活性炭として、カラムに充填して、第2回通水を行った。上記のように通水試験を3回行った。活性炭処理水pHが飲料水基準値の最大値を超えた場合、2回目以降の通水は中止した。
第3表に実施例1の結果として、熱殺菌後の通水100時間における活性炭処理水pHの最大値と最小値と、それぞれの通水時間を示す。また、100時間通水終了後の活性炭処理水pHを示す。
活性炭pHが9.4の未洗浄活性炭では、初期通水で飲料水基準値を超えた。
活性炭pHが3.5〜4.4の酸洗浄活性炭では、第2回以降の通水で活性炭処理水pHは飲料水基準値内となったが、殺菌後の通水初期においては活性炭処理水pHが強酸性を示した。殺菌と通水を繰り返すことで、殺菌後の通水初期に活性炭処理水pHが飲料水基準値内になり、通水開始から100時間で活性炭処理水pHは常時、飲料水基準値内になった。
活性炭pHが5.4の酸洗浄活性炭では、第3回目の通水時の活性炭処理水pHの最大値は8.6であり、殺菌を更に繰り返して通水すると、経験的に活性炭処理水pHの最大値は8.6を超え、飲料水基準の上限値を外れる可能性が高い。
Figure 2007111684
実施例2
実施例1で活性炭処理水pHの最大値が安定していた活性炭pH3.5の活性炭を、炭酸水素ナトリウムで洗浄した活性炭(以下、炭酸水素ナトリウム洗浄活性炭)を、実施例1の活性炭の代わりに充填して実施例1と同様に通水試験を行った。
この炭酸水素ナトリウム洗浄活性炭の調製方法は、以下のとおりである。
実施例1の活性炭pH3.5の活性炭の乾燥質量で500gを、1〜10%炭酸水素ナトリウム又は炭酸ナトリウム(和光純薬工業(株)、試薬1級品)水溶液2リットルに添加して、20〜30℃で30分間撹拌洗浄した。炭酸水素ナトリウム水溶液による洗浄後、No.5Aろ紙でろ過して、含水率55質量%の炭酸水素ナトリウム洗浄活性炭を得た。
第4表に炭酸水素ナトリウム添着量と活性炭pHを示す。
Figure 2007111684
第5−1表、第5−2表に実施例2の結果を示す。活性炭pHが3.9〜6.0の炭酸水素ナトリウム洗浄活性炭では、殺菌後の通水初期から活性炭処理水pHが飲料水基準値内になり、殺菌と通水を繰り返しても、通水開始から100時間まで活性炭処理水pHは、常時飲料水基準値内になった。
炭酸水素ナトリウム洗浄品及び炭酸ナトリウム洗浄活性炭は、その活性炭pHの範囲が広くても、活性炭処理水pHは常時、飲料水基準値にできることから、活性炭処理水pHに対する炭酸水素ナトリウム洗浄品及び炭酸水素ナトリウム洗浄活性炭の信頼性が高い。
Figure 2007111684
Figure 2007111684
実施例3
実施例1と実施例2の活性炭を用いて、初期通水と通水のSVを8.0h−1と20h−1の2条件で実施例1と同様に試験した。実施例1の活性炭の洗浄を行ったのちに、初期通水と通水を行った。実施例1のSVを考慮して、SV20h−1では初期通水時間を2時間、殺菌後の通水時間を20時間とした。SV8.0h−1では初期通水時間を3時間、殺菌後の通水時間を50時間とした。
第7表に実施例3の結果を示す。熱殺菌後の通水のSVを高くすると、活性炭処理水のpHは、試水pH近傍に収束する。
Figure 2007111684
実施例4
実施例1の試料水よりMアルカリ度の低い試料水を調製するために、実施例1の試料水をPAC 20mg/リットル、凝集pH6.5で凝集沈殿させて、その凝集沈殿処理水をろ紙No.5Aでろ過したものを実施例4の試料水とし、その水質を第7表に示す。
実施例1(酸洗浄活性炭)と実施例2(炭酸水素ナトリウム洗浄活性炭)の活性炭を用いて、実施例1と同様に試験し、その結果を第8表に示す。Mアルカリ度が低い試水のために、実施例1の活性炭では、殺菌後の通水初期において、活性炭処理水pHは、第3表の実施例1に比べて非常に低くなった。
実施例2の活性炭では活性炭処理水pHは、常時飲料水基準値の範囲内であった。
Figure 2007111684
Figure 2007111684
実施例5
実施例1の酸洗浄品で活性炭pH4.4の活性炭の乾燥質量500gを第1表の試水2リットルに添加して、約60分間30℃で撹拌した後に、全量取り出して水切りした。この活性炭のpHは、4.6であった。実施例2の活性炭pH4.5の活性炭を上記のように水洗すると、活性炭pHは、4.8であった。水洗しても活性炭pHに大きな変化はなかった。上記活性炭を実施例1の活性炭の代わりに充填して実施例1と同様に通水試験を行った。
第9表に実施例5の結果を示す。単なる水洗だけでは酸洗浄品の活性炭処理水のpHが通水初期に酸性になった。一方、炭酸水素ナトリウム洗浄活性炭の水洗品では、活性炭処理水のpHが常時飲料水基準値範囲内であった。また、通水後の早い時期に最大pHが現れて、短時間で活性炭処理水pHが安定した。
Figure 2007111684
実施例6
埋立浸出水を生物処理、凝集沈澱処理、砂ろ過、活性炭処理をする施設の活性炭吸着塔流入水を実施例1の試験装置を用いて、活性炭の殺菌を行わずに、SV1.5h−1で実施例1と同様に100時間連続通水した。活性炭吸着塔流入水は、pH6.8、Mアルカリ度22mg/リットル、SS 13mg/リットル、塩化物濃度3300mg/リットル、全蒸発残留物濃度は6000mg/リットルであった。
充填する活性炭は、エバダイヤLG−20(石炭系、破砕炭、荏原エンジニアリングサービス(株)製、活性炭pH9.5)を塩酸洗浄で活性炭pHを3.5〜6.5に調整した活性炭と、比較のためにエバダイヤLG−10由来の活性炭pH3.5に調整した酸洗浄品を実施例2と同様に炭酸水素ナトリウムで洗浄した炭酸水素ナトリウム洗浄活性炭(活性炭pH4.5〜6.5)を使用した。
第10表に実施例6の結果を示す。酸洗浄品の活性炭pHが3.5以下の場合には、活性炭処理水pHの最小が放流水基準の下限値5.8未満になった。また、酸洗浄品の活性炭pHが5.5以上の場合には、活性炭処理水の最大pHが放流水基準の上限値8.6を超えた。一方LG−10由来の炭酸水素ナトリウム洗浄品では常時、活性炭処理水pHが放流水基準値内に収まった。
Figure 2007111684
実施例7
し尿処理施設から採取した活性炭吸着塔流入水を、実施例6の活性炭を充填した実施例1の試験装置を用いて、SV3.0h−1で実施例1と同様に100時間連続通水した。活性炭吸着塔流入水は、pH6.5、Mアルカリ度22mg/リットル、SS 1mg/リットル、塩化物イオン濃度600mg/リットル、硫酸イオン濃度1,500mg/リットル、全蒸発残留物濃度4400mg/リットルであった。
第11表に実施例7の通水試験結果を示す。酸洗浄品の活性炭pHが4.5以下の場合には、活性炭処理水pHの最小値が放流水基準の下限値5.8未満になった。また、酸洗浄品の活性炭pHが5.5以上の場合には、活性炭処理水pHの最大値が放流水基準の上限値8.6を超えた。エバダイヤLG−10由来の炭酸水素ナトリウム洗浄品では常時、活性炭処理水pHが放流水基準値内に収まった。通水後の早い時期に最大pHが現れて、短時間で活性炭処理水pHが安定した。
Figure 2007111684
実施例8
実施例7の試料水を、塩化ナトリウム(和光純薬工業(株)試薬1級)で塩化物イオン濃度を10000mg/リットルに調整したものを、実施例6の活性炭を用いてSV1.5h−1で実施例7と同様に連続通水した。試水は、pH6.8、Mアルカリ度18〜20mg/リットル、全蒸発残留物濃度20000mg/リットルであった。
第12表に実施例8の結果を示す。試水の全蒸発残留物濃度の増加により、活性炭処理水pHが放流水基準の上限値8.6を、実施例7の結果に比べて大きく超えたが、エバダイヤLG−10由来の炭酸水素ナトリウム洗浄品では短時間で活性炭処理水pHが放流水基準値内に収まった。
Figure 2007111684
本発明の水処理用活性炭を使用すると、用水処理、排水処理を問わず、処理水pHを常時、用水基準値、飲料水基準値又は排水基準値内に収めることができるので、上水道、各種工業用水及び各種工業廃水の高度処理分野に広い用途が期待できる。更に、熱殺菌工程を組み込んだ水処理方法は、食品製造用水、半導体製造用水のように処理水中の微生物をできるだけ少なくすることが求められる用水分野に、特に有用な方法である。
活性炭吸着塔による吸着フローの概略図であって、Aは固定床式、Bは移動床式、Cは流動床式を説明する図である。 用水処理における活性炭処理フローの概略図である。 排水処理における活性炭処理フローの概略図である。 各種水処理における活性炭処理水pHの挙動モデルを示す図であって、Aは用水処理、Bは排水処理における挙動モデルを示す図である。 活性炭通水試験の工程の説明図である。
符号の説明
1 被処理水
2A 第1吸着塔
2B 第2吸着塔
2C 移動床吸着塔
2D 流動床吸着塔
3 処理水
3A、3B 処理水
4 処理水槽
5 洗浄ポンプ
6 逆洗排水
7 新炭供給ポンプ
8 廃活性炭
11 被処理水
12 活性炭塔
13 活性炭処理水
14 カートリッジフィルタ
15 pHモニタ
16 受水槽
17 用水
21 排水
22 凝集沈殿装置
23 ろ過装置

Claims (3)

  1. 酸によりpH調整されたカルシウム含有活性炭に炭酸水素塩または炭酸塩を添着した水処理用活性炭において、該活性炭のカルシウム含有量が乾燥活性炭1gあたり0.001〜1.0mgで、炭酸水素塩添着量が乾燥活性炭1gあたり0.01〜50mgであることを特徴とする水処理用活性炭。
  2. 殺菌工程を含む水処理方法において、請求項1記載の水処理用活性炭を使用することを特徴とする水処理用活性炭による水処理方法。
  3. 請求項1に記載の水処理用活性炭を、全蒸発残留物濃度が1,000mg/リットル以上の排水の被処理水と接触させることを特徴とする水処理用活性炭による水処理方法。
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