JP2007101781A - 光アドレス型空間光変調素子の駆動方法、および光アドレス型空間光変調素子駆動装置 - Google Patents

光アドレス型空間光変調素子の駆動方法、および光アドレス型空間光変調素子駆動装置 Download PDF

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誠 五明
Daiki Gan
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Abstract

【課題】光アドレス型光変調層を複数重ねてなる光アドレス型空間光変調素子を、画像書き込み時間の長期化を抑制しつつ、クロストークによる色再現性の低下を防止し得る駆動方法を提供する。
【解決手段】液晶層12の相状態を揃える為の電圧Aを電極10,11間に印加する工程、相変化のしきい値を非露光時または露光時に超え、その逆の場合には超えない程度の電圧Bを同様に印加しつつ、光アドレス型空間光変調素子1を露光する工程、必要に応じて行われる、液晶層12の相状態のヒステリシスを保持する為の電圧Cを同様に印加する工程、電圧BまたはCを解除する工程からなる操作を、全光アドレス型光変調層4B,4G,4Rに順次行い画像を書き込む方法であって、電圧Bを光導電層15の光スイッチ機能を損なわない低周波にし、電圧Aおよび電圧Cを同機能を消失させる周波数以上の高周波とすることを特徴とする光アドレス型空間光変調素子の駆動方法。
【選択図】図3

Description

本発明は、液晶および光導電体を用いて画像を表示し、記録する光アドレス型の空間光変調素子に像を書き込むための駆動方法に関する。
森林資源保護などの地球環境保全や、スペースセーブといった事務環境改善などの理由から、紙に替わるハードコピー技術として、リライタブルマーキング技術への期待が大きい。
一方、反射型液晶表示素子は、バックライトのような専用の光源を必要とせず、消費電力が少ないとともに、偏平小型に構成できることから、小型情報機器や携帯情報端末などの表示装置として注目されている。
特にコレステリック液晶(カイラルネマチック液晶)を利用した液晶表示素子は、その相変化を利用することで、書き込みおよび消去を適宜行うことができ、また、液晶層を積層させることでフルカラー画像を形成することが可能である等、各種優れた特性を有することから注目されている。
コレステリック液晶が示すプレーナ相は、螺旋軸に平行に入射した光を右旋光と左旋光に分け、螺旋の捩じれ方向に一致する円偏光成分をブラッグ反射し、残りの光を透過させる選択反射現象を起こす。反射光の中心波長λおよび反射波長幅Δλは、螺旋ピッチをp、螺旋軸に直交する平面内の平均屈折率をn、複屈折率をΔnとすると、それぞれ、λ=n・p、Δλ=Δn・pで表され、プレーナ相のコレステリック液晶層による反射光は、螺旋ピッチに依存した鮮やかな色を呈する。
正の誘電率異方性を有するコレステリック液晶は、図14(A)に示すように、螺旋軸がセル表面に垂直になり、入射光に対して上記の選択反射現象を起こすプレーナ相、図14(B)に示すように、螺旋軸がほぼセル表面に平行になり、入射光を少し前方散乱させながら透過させるフォーカルコニック相、および図14(C)に示すように、螺旋構造がほどけて液晶ダイレクタが電界方向を向き、入射光をほぼ完全に透過させるホメオトロピック相、の3つの状態を示す。
上記の3つの状態のうち、プレーナ相とフォーカルコニック相は、無電界で双安定に存在することができる。したがって、コレステリック液晶の相状態は、液晶層に印加される電界強度に対して一義的に決まらず、プレーナ相が初期状態の場合には、電界強度の増加に伴って、プレーナ相、フォーカルコニック相、ホメオトロピック相の順に変化し、フォーカルコニック相が初期状態の場合には、電界強度の増加に伴って、フォーカルコニック相、ホメオトロピック相の順に変化する。
一方、液晶層に印加した電界強度を急激にゼロにした場合には、プレーナ相とフォーカルコニック相はそのままの状態を維持し、ホメオトロピック相はプレーナ相に変化する。
したがって、パルス信号を印加した直後のコレステリック液晶層は、図15に示すようなスイッチング挙動を示し、印加されたパルス信号の電圧が、Vfh以上のときには、ホメオトロピック相からプレーナ相に変化した選択反射状態となり、VpfとVfhの間のときには、フォーカルコニック相による透過状態となり、Vpf以下のときには、パルス信号印加前の状態を継続した状態、すなわちプレーナ相による選択反射状態またはフォーカルコニック相による透過状態となる。なお、上記した3つの配向間には、実際には変化途中の過渡的な配向状態も存在する。特に本発明においては、ホメオトロピック相からプレーナ相に変化する過程で形成される過渡的な配向状態の全てを、過渡プレーナ相と称して説明を行う。
図中、縦軸は正規化反射率であり、最大反射率を100、最小反射率を0として、反射率を正規化している。また、プレーナ相、フォーカルコニック相およびホメオトロピック相の各状態間には、遷移領域が存在するため、正規化反射率が50以上の場合を選択反射状態、正規化反射率が50未満の場合を透過状態と定義し、プレーナ相とフォーカルコニック相の相変化のしきい値電圧をVpfとし、フォーカルコニック相とホメオトロピック相の相変化のしきい値電圧をVfhとする。
特に、コレステリック液晶の連続相中に網目状の樹脂を含むPNLC(Polymer Network Liquid Crystal)構造や、高分子の骨格中にコレステリック液晶がドロップレット状に分散されたPDLC(Polymer Dispersed Liquid Crystal)構造(マイクロカプセル化されたものを含む)の液晶層においては、コレステリック液晶と高分子の界面における干渉により(アンカリング効果)、プレーナ相とフォーカルコニック相の無電界における双安定性が向上し、長期間に渡ってパルス信号印加直後の状態を保持することができる。
当該技術による光アドレス型空間光変調素子では、このコレステリック液晶の双安定現象を利用して、(A)プレーナ相による選択反射状態と、(B)フォーカルコニック相による透過状態とを、スイッチングすることによって、無電界でのメモリ性を有するブラック・ホワイトのモノクロ表示、または無電界でのメモリ性を有するカラー表示を行う。
当該技術を応用した光アドレス型空間光変調素子として、コレステリック液晶による表示層と有機感光層(OPC層)等の光導電層とを積層してなる光アドレス型光変調層を複数重ねることで、複数層の反射状態を同時にかつ個別に制御することができ、1度の書き込み操作で複数色の混色画像を形成し得る技術が、本発明者らによって開示されている(特許文献1参照)。当該技術によれば、例えばRed(R)、Green(G)およびBlue(B)の3色をそれぞれ選択反射し得る表示層を積層することで、1度の書き込みでフルカラー画像を簡便に形成することもできる。
図16に、当該技術を応用した光アドレス型空間光変調素子の駆動を説明するための模式説明図を示す。この光アドレス型空間光変調素子は、表示層(液晶層)とOPC層(光導電層)とが遮光層を介して積層され、さらにこれらの層の外側に電極層(図16においては不図示)が配されてなる光変調層(光アドレス型光変調層)を3層積層してなるものである。
図16における最下層の光変調層Rは、Rの光を反射する表示層と、Rの光を吸収するCyan(C)の遮光層(C)と、Rの光を吸収してその吸収した光量に応じて抵抗値を変化させるOPC層(C)とからなり、全体としてRの色成分の像を形成可能に構成されている。
また、中間の層の光変調層Gは、Gの光を反射する表示層と、Gの光を吸収するMagenta(M)の遮光層(M)と、Gの光を吸収してその吸収した光量に応じて抵抗値を変化させるOPC層(M)とからなり、全体としてGの色成分の像を形成可能に構成されている。
さらに、最上層の光変調層Bは、Bの光を反射する表示層と、bの光を吸収するYellow(Y)の遮光層(Y)と、Bの光を吸収してその吸収した光量に応じて抵抗値を変化させるOPC層(Y)とからなり、全体としてBの色成分の像を形成可能に構成されている。
すなわち、各光変調層において、表示層の反射色と遮光層およびOPC層の透過色とが補色関係になっている。
それぞれの光変調層に対してバイアス電圧を印加しつつカラーのアドレス光を照射すると、まずBの色のアドレス光は、光変調層Rおよび光変調層Gはそのまま透過して光変調層Rおよび光変調層Gの動作に影響を与えず、光変調層BのOPC層(Y)に吸収され、表示層を駆動して液晶を反射状態に変化させ、Bの色の反射像が形成される。吸収され切らなかったアドレス光は、光変調層Bの遮光層(Y)で遮光され、表示画像には影響を与えない。
また、Gの色のアドレス光は、光変調層Rはそのまま透過して光変調層Rの動作に影響を与えず、光変調層GのOPC層(M)に吸収され、表示層を駆動して液晶を反射状態に変化させ、Gの色の反射像が形成される。吸収され切らなかったアドレス光は、光変調層Gの遮光層(M)で遮光され、上層である光変調層Bの動作、および表示画像には影響を与えない。
さらに、Rの色のアドレス光は、光変調層RのOPC層(C)にそのまま吸収され、表示層を駆動して液晶を反射状態に変化させ、Rの色の反射像が形成される。吸収され切らなかったアドレス光は、光変調層Rの遮光層(C)で遮光され、上層である光変調層Gおよび光変調層Bの動作、および表示画像には影響を与えない。
以上のように、3色のアドレス光を像様に同時に照射することで、各色の光変調層の表示層を駆動して、図面上の上面にはフルカラーの反射画像が形成される。
この技術において、図16の例で言えば、Bの色のアドレス光が、光変調層Rおよび光変調層Gをそのまま透過して光変調層BのOPC層(Y)に達すること、および、Gの色のアドレス光が、光変調層Rをそのまま透過して光変調層GのOPC層(M)に達すること、が実用化の条件となるが、実際には、どうしても手前の光変調層のOPC層(BC、BMおよびGCの各矢示部分)において、多少は吸収が生じてしまう。
図17に、光変調層RのOPC層(C)における光の透過スペクトルのグラフを示す。図17において、横軸は照射する光の波長であり、縦軸は照射した光の透過率である。Bのアドレス光の波長およびGのアドレス光の波長がそれぞれ矢示されているが、グラフを見てもわかるようにいずれも100%の透過率ではなく、Bのアドレス光では線分b、Gのアドレス光では線分gの分だけ、それぞれOPC層(C)が光を吸収している。つまり、図17のグラフからわかるように、OPC層のスペクトルがブロードなため、本来反応してはいけない色のアドレス光をわずかに吸収してしまう。
その結果、他の色のアドレス光によって、誤った光アドレス動作が発生し、各色画像間での予期せぬ混色(以下、この混色現象を「クロストーク」と称する。)が生じるといった不具合の懸念があった。
このようなクロストークの防止策として、各色のバイアス電圧とアドレス光とを、時分割して印加する方法が考えられる(特許文献1中の図7参照)。従来技術および上記防止策を施す改良案における、各光変調層へのバイアス電圧印加およびアドレス光照射を時系列で表すチャートを図18に示す。
RGBの各光変調層に対応するバイアス電圧の印加およびアドレス光照射は、上段のチャートに示されるように従来技術では全て同時に行っていた。そのため、既述の如きクロストークの問題が生じる懸念があり、所望の色のフルカラー画像を形成することが困難であった。
上記防止策を施す改良案では、バイアス電圧の印加およびアドレス光照射をRGBの各光変調層に時間差を設けて行っている。RGBの各光変調層をそれぞれ別個に駆動させているため、それぞれの層の像が他層の像の影響を受けることがなく、クロストークの問題が解消され、色再現性の向上をはかることができる。
しかしこの方法では、図18の下段のチャートを見てもわかる通り、書き込み時間が3倍に長くなる問題があり、表示媒体(光アドレス型空間光変調素子)と書き込み装置との位置ずれによるカラーレジの発生等が懸念される。たとえば、書き込み装置に表示媒体をかざした状態で画像を書き込む場合、わずかな手ぶれであっても、書き込み時間が3倍ともなると各色の像の位置ずれが顕著になりやすく、画像のブレとなって画質に影響を与えてしまう懸念がある。
特開2000−140184号公報
したがって、本発明は、コレステリック液晶による表示層と光導電層とを積層してなる光アドレス型光変調層を複数重ねて複数色の色重ね画像を形成することが可能な光アドレス型空間光変調素子を、画像書き込み時間の長期化を抑制しつつ、クロストークによる色再現性の低下を防止し得る光アドレス型空間光変調素子の駆動方法を提供することを目的とする。
上記目的は、以下の本発明により達成される。すなわち本発明の光アドレス型空間光変調素子の駆動方法は、光アドレス型光変調層が2層以上積層されてなる光アドレス型空間光変調素子に、画像を記録するための光アドレス型空間光変調素子の駆動方法において、
前記光アドレス型光変調層が、特定波長域の光を反射する少なくともコレステリック液晶からなる液晶層と、前記特定波長域の光を吸収してその吸収した光量に応じて電気特性を変化させる光スイッチ機能を担う光導電層と、が積層され、さらにその両層の外側に電極が配されて構成され、
前記光アドレス型光変調層のそれぞれの液晶層が、相互に異なる波長域の光を反射するものであって、その反射する波長域以外の波長域の光を透過するものであり、
1つの前記光アドレス型光変調層に対して、前記液晶層における相状態を揃える為の電圧Aを前記両電極間に印加する初期電圧印加工程と、相変化のしきい値を非露光時または露光時に超え、その逆の場合には超えない程度の電圧Bを前記両電極間に印加しつつ、光アドレス型空間光変調素子を画像様に露光する書き込み工程と、必要に応じて行われる、前記液晶層における相状態のヒステリシスを保持する為の電圧Cを前記両電極間に印加する後期電圧印加工程と、直前の工程で印加していた電圧Cを解除することで表示画像を確定させる表示確定工程と、の3つの工程または4つの工程からなる操作を、全ての前記光アドレス型光変調層に順次行うことで、各層に色毎の画像を書き込む方法であって、
書き込み工程で印加する電圧Bの周波数を、前記光導電層の光スイッチ機能を損なわない低周波にすると共に、初期電圧印加工程で印加する電圧Aおよび後期電圧印加工程を含む場合には当該工程で印加する電圧Cの周波数を、前記光導電層の光スイッチ機能を消失させる周波数以上の高周波とすることを特徴とする。
本発明の光アドレス型空間光変調素子の駆動方法においては、前記各光アドレス型光変調層に行う操作を、書き込み工程のみが同時に行われないように層毎に時間差を設けて順次行うことが好ましい。
本発明の光アドレス型空間光変調素子の駆動方法において、各工程における前記光アドレス型光変調層への印加電圧、並びに前記光アドレス型光変調層の液晶層の相変化としては、下記(A)および(B)の2つが挙げられる。
(A)第1の例
初期電圧印加工程で印加する電圧Aが、前記液晶層におけるプレーナ相ないしフォーカルコニック相からホメオトロピック相への相変化のしきい値を越える電圧であり、当該工程の操作により前記液晶層全体をホメオトロピック相にし、
書き込み工程における前記液晶層の相変化のしきい値が、ホメオトロピック相から過渡プレーナ相へのしきい値であり、当該工程の操作により露光部はホメオトロピック相のままで非露光部を過渡プレーナ相に相変化させる選択が為され、
後期電圧印加工程で印加する電圧Cが、ホメオトロピック相の部位はそのままの状態が保たれ、過渡プレーナ相の部位はそのヒステリシスからホメオトロピック相には戻らず、経時と共にフォーカルコニック相に相変化する程度の電圧であり、
表示確定工程で、過渡プレーナ相からフォーカルコニック相へ相変化していた部位はそのままの状態で、ホメオトロピック相の部位をプレーナ相に相変化させることで表示画像を確定させる例。
(B)第2の例
初期電圧印加工程で印加する電圧Aが、前記液晶層におけるプレーナ相からフォーカルコニック相への相変化のしきい値を越える電圧であり、当該工程の操作により前記液晶層全体をフォーカルコニック相にし、
書き込み工程における前記液晶層の相変化のしきい値が、フォーカルコニック相からホメオトロピック相へのしきい値であり、当該工程の操作により非露光部はフォーカルコニック相のままで露光部をホメオトロピック相に相変化させる選択が為され、
後期電圧印加工程を含まないか、含む場合には当該工程で印加する電圧Cが、フォーカルコニック相およびホメオトロピック相のそれぞれの部位でそのままの状態が保たれる程度の電圧であり、
表示確定工程で、過渡プレーナ相の部位をフォーカルコニック相に相変化させ、ホメオトロピック相の部位をプレーナ相に相変化させることで表示画像を確定させる例。
本発明で用いる光アドレス型空間光変調素子には、前記複数の光アドレス型光変調層それぞれにおける前記液晶層と前記光導電層との間に、該光導電層が吸収する波長域の光を吸収するとともに、その吸収する波長域を除く波長域の光を透過する遮光層を備えることが望ましい。また、前記複数の光アドレス型光変調層それぞれにおける光導電層が、相互に異なる波長域の光を吸収するものであって、その吸収する波長域を除く波長域の光を透過するものであることが望ましい。
本発明では、積層された各光アドレス型光変調層における光導電層において、特徴的な性質を利用することにより、画像書き込み時間の長期化を抑制しつつ、クロストークによる色再現性の低下を防止することに成功している。すなわち、光導電層の光スイッチ機能は、印加する電圧がある程度以上高周波になると失われる性質があり、本発明においてはこの性質を利用している。
図1に、1つの前記光アドレス型光変調層に対して行う基本動作を時系列で表すチャートを示す。図1に示されるように、各光アドレス型光変調層に対して、(1)〜(3)の3つのフェーズ(工程)からなる操作が為される。フェーズ(1)は、前記液晶層における相状態を揃え、初期状態にリセットする工程(初期電圧印加工程)であり、フェーズ(2)は、アドレス光を像様にオン/オフさせることにより、液晶の相状態を選択する工程(書き込み工程)であり、フェーズ(3)は、液晶の2つの相状態間のヒステリシスを利用して選択状態を安定化させる工程(後期電圧印加工程)である。フェーズ(3)の後、印加していた電圧を解除することで、表示画像が確定する(表示確定工程)。
(1)〜(3)のいずれのフェーズにおいても電圧が印加される。ここで、フェーズ(1)では電圧A、フェーズ(2)では電圧B、フェーズ(3)では電圧Cがそれぞれ印加されるとすると、電圧Bの印加と共に光導電層への露光を行うフェーズ(2)以外は、印加電圧の周波数を光導電層の動作を気にせずに決めることができる。
そこで本発明においては、電圧Bの周波数を、前記光導電層の光スイッチ機能を損なわない低周波にすると共に、電圧Aおよび電圧Cの周波数を、前記光導電層の光スイッチ機能を消失させる周波数以上の高周波とすることがポイントとなる。なお、前記光導電層の光スイッチ機能を消失させる周波数の下限を、以下必要に応じて「不感周波数」と称することがある。また、前記光導電層の光スイッチ機能を損なわない低周波とは、すなわち不感周波数未満の周波数である。
電圧Aおよび電圧Cの周波数を不感周波数以上の高周波とすることで、フェーズ(1)およびフェーズ(3)の間においては前記光導電層が光スイッチしない状態となり、他の光アドレス型光変調層に対して照射されたアドレス光の影響を受けない。そして、電圧Bの周波数は不感周波数未満の低周波としているため、前記光導電層の光スイッチ機能が発揮され、フェーズ(2)の間においては光アドレスのオン/オフにより液晶の相状態を選択することができる。
したがって、1つの前記光アドレス型光変調層に対して図1に示す基本動作を行う本発明の駆動方法では、フェーズ(2)同士が複数の前記光アドレス型光変調層において時系列的に重なり合うことの無いように設計すれば、フェーズ(1)およびフェーズ(3)の間においては、如何に露光を受けようとも光スイッチされることがなく、クロストークによる色再現性の低下を防止することができる。
図2に、Red(R)、Green(G)およびBlue(B)の3色をそれぞれ選択反射し得る表示層を有する光アドレス型光変調層を積層した光アドレス型空間光変調素子を、本発明の光アドレス型空間光変調素子の駆動方法(以下、単に「本発明の駆動方法」という場合がある。)により駆動させた際の動作を時系列で表すチャートを示す。
図2に示されるように、R、GおよびBの3つの光アドレス型光変調層にそれぞれ、図1で示される基本動作が施されるが、このとき、比較的短時間で済むフェーズ(2)のみ他層と重ならないように時分割とし、フェーズ(1)およびフェーズ(3)は他層のいずれのフェーズにも干渉されず重ねて同時に行うようになっている。そのため、最初にBの層に対する基本動作が開始し、それがまだ継続している間にGの層、さらにRの層と順次基本動作が開始して、各層ともにフェーズ(2)の動作のみが重ならない(同時に行われない)ように時間差が設けられる。
そのため、1つの層でフェーズ(2)の動作が行われて光アドレスが照射されても、他の層においてはフェーズ(2)以外の動作が行われ、不感周波数以上の高周波電圧が印加されているため、光導電層においてアドレス光を吸収したとしても光スイッチが機能せず、クロストークが効果的に防止できる。
また、書き込み時間は、比較的短時間で済むフェーズ(2)のみ他層と重ならないように時分割としているため、全体としてフェーズ(2)の所要時間の2倍のみが加算されるだけであり、書き込み時間の長時間化をも抑制することができる。
本発明によれば、コレステリック液晶による表示層と光導電層とを積層してなる光アドレス型光変調層を複数重ねて複数色の色重ね画像を形成することが可能な光アドレス型空間光変調素子を、画像書き込みの長時間化を抑制しつつ、クロストークによる色再現性の低下を防止し得る光アドレス型空間光変調素子の駆動方法を提供することができる。
以下、本発明を図面に則して詳細に説明する。
図3は、本発明の光アドレス型空間光変調素子の駆動方法を適用したシステムの例示的一態様の概略構成図である。当該本実施形態のシステムは、表示媒体(光アドレス型空間光変調素子)1と書き込み装置(光アドレス型空間光変調素子の駆動装置)2とからなる。この両構成要素について、詳細に説明してから、その動作について説明する。
<表示媒体>
本実施形態において表示媒体とは、アドレス光の照射、バイアス信号の印加によって光アドレス動作ができる部材であり、具体的には光アドレス型空間光変調素子である。
本実施形態において、表示媒体1は、表示面側から順に、外部基板6、光変調層4B、内部基板8、光変調層4G、内部基板9、光変調層4Rおよび外部基板7が積層されてなる物である。
また、3つの光変調層4B,4G,4Rは、それぞれ表示面側から順に、透明電極(電極)10B,10G,10R、表示層(液晶層)12B,12G,12R、ラミネート層13B,13G,13R、遮光層14B,14G,14R、OPC層(光導電層)15B,15G,15R、および透明電極(電極)11B,11G,11Rが積層されてなる物である。
以下、各構成部材ごとに説明する。
[外部基板および内部基板]
外部基板6,7および内部基板8,9は、各機能層を内面に保持し、表示媒体の構造を維持する目的の部材である。これら基板は、外力に耐える強度を有するシート形状の物体であり、表示面側の外部基板6は少なくとも入射光を、書き込み面側の外部基板7は少なくともアドレス光を、内部基板8,9は少なくとも入射光およびアドレス光を、それぞれ透過する。フレキシブル性を有することが好ましい。
これら基板の具体的な材料としては、無機シート(たとえばガラス・シリコン)、高分子フィルム(たとえばポリエチレンテレフタレート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネート、ポリエチレンナフタレート)等を挙げることができる。外部基板6,7については、外表面に、防汚膜、耐磨耗膜、光反射防止膜、ガスバリア膜など公知の機能性膜を形成してもよい。
[光変調層]
3つの光変調層4B,4G,4Rは、表示色(液晶が反射する色)ないし駆動色(OPC層が吸収する色)がそれぞれの設定値になるように、各材料が適切に選択される等調整されている他、具体的な構成は同一であるため、これらをまとめて述べる。以下の説明の中で、符号にアルファベットの記号(B、GおよびR)が付されていない場合には、3つの光変調層4B,4G,4Rに共通する内容である。
(透明電極)
透明電極10,11は、書き込み装置2から印加されたバイアス電圧を、表示媒体1内の各機能層へ面均一に印加する目的の部材である。透明電極10,11は、面均一な導電性を有し、少なくとも入射光およびアドレス光を透過する。具体的には、金属(たとえば金、アルミニウム)、金属酸化物(たとえば酸化インジウム、酸化スズ、酸化インジウムスズ(ITO))、導電性有機高分子(たとえばポリチオフェン系・ポリアニリン系)などで形成された導電性薄膜を挙げることができる。表面に、密着力改善膜、光反射防止膜、ガスバリア膜など公知の機能性膜を形成してもよい。
(表示層)
本発明において表示層(液晶層)とは、電場によって入射光のうち特定の色光の反射・透過状態を変調する機能を有し、選択した状態が無電場で保持できる性質のものである。表示層としては、曲げや圧力などの外力に対して変形しない構造であることが好ましい。
本実施形態において表示層としては、コレステリック液晶および透明樹脂からなる自己保持型液晶複合体の液晶層が形成されてなるものが例示されている。すなわち、複合体として自己保持性を有するためスペーサ等を必要としない液晶層である。本実施形態では、図3に示されるように、高分子マトリックス(透明樹脂)16中にコレステリック液晶17が分散した状態となっている。
コレステリック液晶17は、入射光のうち特定の色光の反射・透過状態を変調する機能を有し、液晶分子がらせん状に捩れて配向しており、らせん軸方向から入射した光のうち、らせんピッチに依存した特定の光を干渉反射する。電場によって配向が変化し、反射状態を変化させることができる。ドロップサイズが均一で、単層稠密に配置されていることが好ましい。
コレステリック液晶17として使用可能な具体的な液晶としては、ステロイド系コレステロール誘導体、あるいはネマチック液晶やスメクチック液晶(たとえばシッフ塩基系、アゾ系、アゾキシ系、安息香酸エステル系、ビフェニル系、ターフェニル系、シクロヘキシルカルボン酸エステル系、フェニルシクロヘキサン系、ビフェニルシクロヘキサン系、ピリミジン系、ジオキサン系、シクロヘキシルシクロヘキサンエステル系、シクロヘキシルエタン系、シクロヘキサン系、トラン系、アルケニル系、スチルベン系、縮合多環系)、またはこれらの混合物に、カイラル剤(たとえばステロイド系コレステロール誘導体、シッフ塩基系、アゾ系、エステル系、ビフェニル系)を添加したもの等を挙げることができる。
コレステリック液晶の螺旋ピッチは、液晶分子の化学構造や、ネマチック液晶あるいはスメクチック液晶に対するカイラル剤の添加量で調整する。本実施形態のように、表示色を青(B)、緑(G)、赤(R)とする場合には、それぞれ選択反射の中心波長が、400nm〜500nm、500nm〜600nm、600nm〜700nmの範囲になるようにする。また、コレステリック液晶の螺旋ピッチの温度依存性を補償するために、捩じれ方向が異なる、または逆の温度依存性を示す複数のカイラル剤を添加する公知の手法を用いてもよい。
表示層12がコレステリック液晶17と高分子マトリックス(透明樹脂)16からなる自己保持型液晶複合体を形成する形態としては、コレステリック液晶の連続相中に網目状の樹脂を含むPNLC(Polymer Network Liquid Crystal)構造や、高分子の骨格中にコレステリック液晶がドロップレット状に分散されたPDLC(Polymer Dispersed Liquid Crystal)構造(マイクロカプセル化されたものを含む)などを採用することができる。なお、特にPNLC構造やPDLC構造とすることによって、コレステリック液晶と高分子の界面にアンカリング効果を生じ、無電界でのプレーナ相またはフォーカルコニック相の保持状態を、より安定にすることができる。
PNLC構造やPDLC構造は、高分子と液晶とを相分離させる公知の方法、例えば、アクリル系、チオール系、エポキシ系などの、熱や光、電子線などによって重合する高分子前駆体と液晶を混合し、均一相の状態から重合させて相分離させるPIPS(Polymerization Induced PhaseSeparation)法、ポリビニルアルコールなどの、液晶の溶解度が低い高分子と液晶とを混合し、懸濁させて、液晶を高分子中にドロップレット分散させるエマルジョン法、熱可塑性高分子と液晶とを混合し、均一相に加熱した状態から冷却して相分離させるTIPS(Thermally Induced Phase Separation)法、高分子と液晶とをクロロホルムなどの溶媒に溶かし、溶媒を蒸発させて高分子と液晶とを相分離させるSIPS(Solvent Induced Phase Separation)法などによって形成することができるが、特に限定されるものではない。
高分子マトリックス16は、コレステリック液晶17を保持し、表示媒体1の変形による液晶の流動(画像の変化)を抑制する機能を有するものであり、液晶材料に溶解せず、液晶と相溶しない液体を溶剤とする高分子材料が好適に用いられる。また、高分子マトリックス16としては、外力に耐える強度を持ち、少なくとも反射光およびアドレス光に対して高い透過性を示す材料であることが望まれる。
高分子マトリックス16として採用可能な材料としては、水溶性高分子材料(たとえばゼラチン、ポリビニルアルコール、セルロース誘導体、ポリアクリル酸系ポリマー、エチレンイミン、ポリエチレンオキサイド、ポリアクリルアミド、ポリスチレンスルホン酸塩、ポリアミジン、イソプレン系スルホン酸ポリマー)、あるいは水性エマルジョン化できる材料(たとえばフッ素樹脂、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂)等を挙げることができる。
(OPC層)
OPC層(光導電層)15は、書き込み装置2から照射されたアドレス光パターンに基づき、表示層12に印加される電圧を変調する層であり、内部光電効果を持ち、アドレス光の照射強度に応じてインピーダンス特性が変化する性質を有する。AC動作が可能であり、アドレス光に対して対称駆動になることが好ましい。
電荷発生層(CGL)が電荷輸送層(CTL)の上下に積層された3層構造が好適である。本実施形態では、OPC層15として、図3における上層から順に上側の電荷発生層18、電荷輸送層19および下側の電荷発生層20が積層されてなる。
電荷発生層18,20は、アドレス光を吸収して光キャリアを発生させる機能を有する層である。主に、電荷発生層18が表示面側の透明電極10から書き込み面側の透明電極11の方向に流れる光キャリア量を、電荷発生層20が書き込み面側の透明電極11から表示面側の透明電極10の方向に流れる光キャリア量を、それぞれ左右している。電荷発生層18,20としては、アドレス光を吸収して励起子を発生させ、電荷発生層内部、または電荷発生層/電荷輸送層界面で自由キャリアに効率良く分離させられるものが好ましい。
電荷発生層18,20は、電荷発生材料(たとえば金属又は無金属フタロシアニン、スクアリウム化合物、アズレニウム化合物、ペリレン顔料、インジゴ顔料、ビスやトリス等アゾ顔料、キナクリドン顔料、ピロロピロール色素、多環キノン顔料、ジブロモアントアントロンなど縮環芳香族系顔料、シアニン色素、キサンテン顔料、ポリビニルカルバゾールとニトロフルオレン等電荷移動錯体、ピリリウム塩染料とポリカーボネート樹脂からなる共昌錯体)を直接成膜する乾式法か、またはこれら電荷発生材料を、高分子バインダー(たとえばポリビニルブチラール樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、ビニルカルバゾール樹脂、ビニルホルマール樹脂、部分変性ビニルアセタール樹脂、カーボネート樹脂、アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、スチレン樹脂、ビニルアセテート樹脂、酢酸ビニル樹脂、シリコーン樹脂等)とともに適当な溶剤に分散ないし溶解させて塗布液を調製し、これを塗布し乾燥させて成膜する湿式塗布法等により形成することができる。
電荷輸送層19は、電荷発生層18,20で発生した光キャリアが注入されて、バイアス信号で印加された電場方向にドリフトする機能を有する層である。一般に電荷輸送層は、電荷発生層の数10倍の厚みを有するため、電荷輸送層19の容量、電荷輸送層19の暗電流、および電荷輸送層19内部の光キャリア電流が、OPC層15全体の明暗インピーダンスを決定付けている。
電荷輸送層19は、電荷発生層18,20からの自由キャリアの注入が効率良く発生し(電荷発生層18,20とイオン化ポテンシャルが近いことが好ましい)、注入された自由キャリアができるだけ高速にホッピング移動するものが好適である。暗時のインピーダンスを高くするため、熱キャリアによる暗電流は低い方が好ましい。
電荷輸送層19は、低分子の正孔輸送材料(たとえばトリニトロフルオレン系化合物、ポリビニルカルバゾール系化合物、オキサジアゾール系化合物、ベンジルアミノ系ヒドラゾンあるいはキノリン系ヒドラゾン等のヒドラゾン系化合物、スチルベン系化合物、トリフェニルアミン系化合物、トリフェニルメタン系化合物、ベンジジン系化合物)、または低分子の電子輸送材料(たとえばキノン系化合物、テトラシアノキノジメタン系化合物、フルフレオン化合物、キサントン系化合物、ベンゾフェノン系化合物)を、高分子バインダー(たとえばポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリスチレン樹脂、含珪素架橋型樹脂等)とともに適当な溶剤に分散ないし溶解させたもの、あるいは上記正孔輸送材料や電子輸送材料を高分子化した材料を適当な溶剤に分散ないし溶解させたものを調製し、これを塗布し乾燥させて形成すればよい。
(遮光層)
遮光層14とは、書き込み時にアドレス光と入射光を光学分離し、相互干渉による誤動作を防ぐ目的で設けられる層であり、本発明において必須の構成要素ではない。ただし、表示媒体1の性能向上のためには、設けることが望まれる層である。その目的から、遮光層14には、少なくとも電荷発生層の吸収波長域の光を吸収する機能が要求される。
遮光層14は、具体的には、無機顔料(たとえばカドミウム系、クロム系、コバルト系、マンガン系、カーボン系)、または有機染料や有機顔料(アゾ系、アントラキノン系、インジゴ系、トリフェニルメタン系、ニトロ系、フタロシアニン系、ペリレン系、ピロロピロール系、キナクリドン系、多環キノン系、スクエアリウム系、アズレニウム系、シアニン系、ピリリウム系、アントロン系)をOPC層15の電荷発生層18側の面に直接成膜する乾式法か、あるいはこれらを高分子バインダー(たとえばポリビニルアルコール樹脂、ポリアクリル樹脂等)とともに適当な溶剤に分散ないし溶解させて塗布液を調製し、これを塗布し乾燥させて成膜する湿式塗布法等により形成することができる。
(ラミネート層)
ラミネート層13は、それぞれ上下基板(外部基板6、内部基板8,9および外部基板7の4つの基板の3つの相互間の上下の基板)内面に形成された各機能層を貼り合わせる際に、凹凸吸収および接着の役割を果たす目的で設けられる層であり、本発明において必須の構成要素ではない。ラミネート層13は、ガラス転移点の低い高分子材料からなるものであり、熱や圧力によって表示層12と遮光層14とを密着・接着させることができる材料が選択される。また、少なくとも入射光およびアドレス光に対して透過性を有することが条件となる。
ラミネート層13に好適な材料としては、粘着性の高分子材料(たとえばウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂)を挙げることができる。
<書き込み装置>
本実施形態において書き込み装置(光アドレス型空間光変調素子の駆動装置)2とは、表示媒体1に画像を書き込む装置であり、表示媒体1に対してアドレス光の照射を行う光照射部(露光装置)23および表示媒体1にバイアス電圧を印加する電圧印加部(電源装置)22を主要構成要素とし、さらにこれらの動作を制御する制御回路21が配されてなる。
(光照射部)
光照射部(露光装置)23は、像様となる各色の所定のアドレス光パターンを表示媒体1に照射する機能を有し、制御回路21からの入力信号に基づき、表示媒体1上(詳しくは、OPC層上)に所望の光画像パターン(スペクトル・強度・空間周波数)を照射できるものであれば特に制限されるものではない。
光照射部23の構造としては、具体的には下記構造のものが挙げられる。
(1−1)光源(たとえば、冷陰極管、キセノンランプ、ハロゲンランプ、LED、EL等)をアレイ状に配置したものや、光源と導光板とを組み合せたもの、などの均一な光源。
(1−2)光パターンを作る調光素子(たとえば、LCD、フォトマスクなど)の組み合わせ。
(2)面発光型ディスプレイ(たとえばCRT、PDP、EL、LED、FED、SED)。
(3)上記(1−1)、(1−2)あるいは(2)と光学素子(たとえばマイクロレンズアレイ、セルホックレンズアレイ、プリズムアレイ、視野角調整シート)との組み合わせ。
(電圧印加部)
電圧印加部(電源装置)22は、所定のバイアス電圧を表示媒体1に印加する機能を有し、制御回路21からの入力信号に基づき、表示媒体(各電極間)に所望の電圧波形を印加できるものであればよい。ただし、AC出力ができ、高いスルーレートが要求される。また、本発明では、印加する電圧の周波数を途中で変える必要があるので、周波数が可変であることが必須となる。電圧印加部22には、例えばバイポーラ高電圧アンプなどを用いることができる。
電圧印加部22による表示媒体1への電圧の印加は、接触端子24B,24G,24R,25B,25G,25R(以下、単に「接触端子24,25」と表す。)を介して、透明電極10−透明電極11間に為される。
ここで接触端子24,25とは、電圧印加部22および表示媒体1(透明電極10,11)に接触して、両者の導通を行う部材であり、高い導電性を有し、透明電極10,11および電圧印加部22との接触抵抗が小さいものが選択される。表示媒体1と書き込み装置2とを切り離すことができるように、透明電極10,11と電圧印加部22とのどちらか、あるいは両者から分離できる構造であることが好ましい。
接触端子24,25としては、金属(たとえば金・銀・銅・アルミ・鉄)、炭素、これらを高分子中に分散させた複合体、導電性高分子(たとえばポリチオフェン系・ポリアニリン系)などでできた端子で、電極を挟持するクリップ・コネクタ形状のものが挙げられる。
(制御回路)
制御回路21は、外部(画像取り込み装置、画像受信装置、画像処理装置、画像再生装置、あるいはこれらの複数の機能を併せ持つ装置等)からの画像データに応じて、電圧印加部22および光照射部23の動作を適宜制御する機能を有する部材である。制御回路21による具体的な制御は、本発明に特徴的なものであり、その詳細については後述することとする。
<動作>
図3にて例示したシステムを用いて、本発明の光アドレス型空間光変調素子の駆動方法の動作(工程)について、各工程における前記光アドレス型光変調層への印加電圧、並びに前記光アドレス型光変調層の液晶層の相変化の相違による下記(A)および(B)の2つの例を挙げて、以下に詳細に説明する。
(A)第1の例
図4に、コレステリック液晶の相変化の一覧を模式的に示す。プレーナ相(P)を初期状態とした場合には、印加電圧に応じてフォーカルコニック相(F)、あるいはホメオトロピック相(H)へと変化し、フォーカルコニック相(F)を初期状態とした場合には、印加電圧に応じてホメオトロピック相(H)へと変化する。一方、ホメオトロピック相(H)を初期状態として印加電圧を低下させた場合、通常、その印加電圧の大きさや降下速度に応じて、フォーカルコニック相(F)に戻るか、あるいは過渡プレーナ相(TP)を経てプレーナ相(P)に変化する。ただし、過渡プレーナ相(TP)の状態において、再度適切な電圧を印加した場合には、フォーカルコニック相(F)に変化して安定する。
ここで、ホメオトロピック相(H)と過渡プレーナ相(TP)との間にはヒステリシスが存在し、同じ印加電圧で両状態を共存させることができる。さらに、このヒステリシス電圧を印加し続けると過渡プレーナ相(TP)がフォーカルコニック相(F)に変化することから、結果として、ホメオトロピック相の状態(H)と、過渡プレーナ相の状態(TP)からフォーカルコニック相(F)へと変化する状態との間においてヒステリシスが存在することになる。
このようにホメオトロピック相(H)と、過渡プレーナ相(TP)からフォーカルコニック相(F)への変化にヒステリシスが存在し、また、ホメオトロピック相(H)−過渡プレーナ相(TP)間が極めて速い配向変化を示すため、第1の例では、画像の書き込み(書き込み工程)に当該相変化を利用している。
図5は、表示媒体1におけるいずれかの光変調層4B,4G,4Rの(単に「光変調層4」と称する。以下、これらの各層が有する、あるいは各層に応じて配される部材についても、それら各部材の全てにおいて適用され、かつその内の一層について言及する場合は、アルファベットの符号を除して記述する場合がある。)に対する本例の動作について、印加電圧の波形と表示層12における液晶の配向状態との相互関係を時系列で示すチャートである。
前表示期間では、表示媒体1は前表示(前書込み)状態を維持したままで、制御信号・画像データの取り込みや制御回路21でのデータ変換などが行われている。表示媒体1を書き込み装置2から切り離していた場合は、所定の位置へのセットおよび接触端子24,25との接続を行う。
この前表示期間は、制御信号・画像データの取り込みや制御回路21でのデータ変換、表示媒体1のセットなど、書き込みに必要な前処理を行うのに十分な時間以上が確保される。
次にフェーズ(1)に相当する初期電圧印加工程の操作が為される。初期電圧印加工程では、表示層12における液晶の相状態を揃える為の電圧Aを透明電極10,11間に印加する。本例で印加する電圧A(図5のチャートにおいては、電圧Aではなく、表示層12の分圧(分圧A)として示されている。)は、表示層12の液晶におけるプレーナ相ないしフォーカルコニック相からホメオトロピック相への相変化のしきい値を越える電圧であり、当該工程の操作により前記液晶層全体がホメオトロピック相状態に揃えられる。当該電圧Aの周波数は、OPC層(光導電層)15の不感周波数以上であり、仮にここに他層を書き込むためのアドレス光(以下、「非アドレス光」と称する。)等の光が照射されても光スイッチされることは無く、そのため表示層12の分圧Aが変化してしまうことが無い。
この工程の所要時間は、プレーナ相ないしフォーカルコニック相からホメオトロピック相への相変化に必要かつ十分な時間であればよい。一般的なコレステリック液晶では、プレーナ相からホメオトロピック相への配向変化により時間がかかり、弾性定数や誘電率異方性などに依存するため一概には言えないが、具体的には、最低でも20ms程度の時間は必要である。
続くフェーズ(2)に相当する書き込み工程で、表示媒体1への画像の書込みが行われる。具体的には、非露光時(暗時)にホメオトロピック相から過渡プレーナ相への相変化が発生し、露光時(明時)には発生しない程度の電圧B(図5のチャートにおいては、電圧Bではなく、表示層12の分圧(分圧B)として示されている。)を透明電極10,11間に印加しつつ、表示媒体1を書き込み側(外部基板7側)から画像様に露光する。
本工程における電圧Bの周波数は、OPC層(光導電層)15の不感周波数未満(直流を含む)であり、アドレス光に対して有効に光スイッチ機能が奏される。
当該工程では、書き込み画像に対応して各コレステリック液晶がホメオトロピック相状態または過渡プレーナ相状態(後に相変化して、フォーカルコニック相状態)のどちらかが選択される。
この工程の所要時間は、OPC層(光導電層)15が有効な光スイッチ挙動を示し、かつホメオトロピック相から過渡プレーナ相への配向変化に必要な時間以上であればよい。一般的なコレステリック液晶では、ホメオトロピック相から過渡プレーナ相への配向変化は、図4に示すように最も速い。一概には言えないが、所要時間としては具体的には、1ms以上で通常は十分である。
一方、OPC層(光導電層)15が有効な光スイッチ挙動を示す時間は、電荷発生層でのキャリア発生効率や電荷輸送層での移動度、さらには各層の膜厚などに依存するため一概には言えないが、通常5ms以上は必要となる。したがって、この工程の所要時間は、具体的には、最低でも5ms程度の時間は必要である。
そして、フェーズ(3)に相当する後期電圧印加工程の操作が為される。後期電圧印加工程では、表示層12における液晶の相状態のヒステリシスを保持する為の電圧C(図5のチャートにおいては、電圧Cではなく、表示層12の分圧(分圧C)として示されている。)を透明電極10,11間に印加する。本例で印加する電圧Cは、ホメオトロピック相の部位はそのままの状態が保たれ、過渡プレーナ相の部位はそのヒステリシスからホメオトロピック相には戻らず、経時と共にフォーカルコニック相に相変化する程度の電圧である。当該電圧Cの周波数は、OPC層(光導電層)15の不感周波数以上であり、仮にここに非アドレス光等の光が照射されても光スイッチされることは無く、そのため表示層12の分圧Cが変化してしまうことが無い。
図6に、表示層12における液晶の書き込み工程以降の電気光学応答について説明するためのグラフを示す。図6は、1つの光変調層4における、後期電圧印加工程で印加する電圧Cを横軸に、工程が進み後述する表示確定工程の後の表示層12のY値反射率を縦軸に、それぞれプロットしたグラフであり、破線のグラフは書き込み工程においてアドレス光が照射された場合で、実線のグラフは書き込み工程においてアドレス光が照射されなかった場合である。なお、当該グラフにおける具体的な数値は、本例において使用した光アドレス型空間光変調素子の場合の一例であり、本発明がこれら数値により制限を受けるものではない。
書き込み工程におけるアドレス光の照射/非照射によって選択された液晶の相状態(ホメオトロピック相または過渡プレーナ相)が、適切に保持されてヒステリシス双安定を示すのは、後期電圧印加工程で印加する電圧Cが60V前後の領域のみであり、これよりも小さくても大きくても、所望とする最終的な選択状態(プレーナ相またはフォーカルコニック相)を得ることができない。すなわち、図6に示すグラフの例においては、60V前後の付近に確かに「ホメオトロピック相の部位はそのままの状態が保たれ、過渡プレーナ相の部位はそのヒステリシスからホメオトロピック相には戻らず、経時と共にフォーカルコニック相に相変化する程度の電圧」が存在することがわかる。そして当該電圧を電圧Cとして選択すればよい。
なお、アドレス光が照射されなかった場合の実線のグラフは、さらに非アドレス光が照射された場合(すなわち、書き込み工程以外の工程で不感周波数以上の高周波の電圧(A、B)が印加された状態で、他層へのアドレス光をOPC層15が吸収した場合)も同様の結果となる。
当該工程では、各コレステリック液晶がホメオトロピック相はそのままの状態が保持され、過渡プレーナ相は経時によりフォーカルコニック相状態に相変化して安定化する。ただし、この段階では、表示媒体1に反射画像はまだ形成されていない。
後期電圧印加工程の所要時間は、ヒステリシス状態が維持されつつ、過渡プレーナ相からフォーカルコニック相への相変化に必要かつ十分な時間であればよい。過渡プレーナ相の状態(液晶分子のチルト角やらせん構造の形成度合)や、弾性定数、誘電率異方性などに依存するため一概には言えないが、具体的には、最低でも50ms程度の時間は必要である。
最後に、表示確定工程では、後期電圧印加工程で印加していた電圧Cを解除する。バイアス電圧が無くなり、コレステリック液晶の配向が無電場のメモリ状態に変化することで表示媒体に画像が表示される。アドレス光が照射された画像の明部では、ホメオトロピック相からプレーナ相への相変化が生じ、暗部ではフォーカルコニック相がそのままの状態を維持する。
この工程の所要時間は、各配向変化に必要な時間以上であればよい。バイアス信号およびアドレス光が必要ないので、書き込み装置2から表示媒体1が切り離されていても構わない。
以上の各工程の基本動作が、3つの光変調層4B,4G,4Rに対してそれぞれ行われて、3原色の加法混色によるフルカラー画像が、表示側(外部基板6側)に形成される。このとき、各層への動作は、フェーズ(2)に相当する書き込み工程のみが他層と重ならないように時間差を設けて光変調層4B,4G,4Rの順に順次行う。これは、図2を用いて既に説明した通りである。
光変調層4B,4G,4Rのそれぞれの層において、書き込み工程の時にだけ不感周波数未満の電圧Bを印加しつつアドレス光を照射しており、アドレス光のオン/オフの選択に応じて、表示層12における液晶の相状態を適切に選択することができる。
また、1つの層で当該書き込み工程の動作が行われていても他層ではかかる動作は行われておらず、何の動作も行われていない(表示確定工程の状態を含む。)か、あるいは、フェーズ(1)に相当する初期電圧印加工程またはフェーズ(3)に相当する後期電圧印加工程の動作が行われている状態となっている。これら工程で印加される電圧Aあるいは電圧Cは、不感周波数以上の高周波であるため、非アドレス光がOPC層(光導電層)15で吸収されても光スイッチすることが無く、クロストークの問題が解消される。
また、図2に示されるように、3つの光変調層4B,4G,4Rにそれぞれ、図5で示される基本動作が施されるが、このとき、比較的短時間で済むフェーズ(2)に相当する書き込み工程のみ他層と重ならないように時分割としている。最初に光変調層4Bに対する基本動作が開始し、それがまだ継続している間に光変調層4G、さらに光変調層4Rの順次基本動作が開始して、同時並行で動作が進むので、全体として書き込み時間の長時間化をも抑制することができる。
例えば、1つの光変調層4に対する基本動作の所要時間が105msで、その内のフェーズ(2)に相当する書き込み工程の所要時間が5msとすると、3つの光変調層4B,4G,4R全ての層に書き込みするための全所要時間は、時間的に重ねることのできなかった書き込み工程の所要時間のみが2つ分はみ出す状態となるため、115msとなる。
従来技術の項で説明した図18の上段のチャートで示される従来技術の場合、同様の光変調素子を用い、プレーナ相状態(P)からフォーカルコニック相状態(P)への相変化を利用したものだとすれば、全所要時間は200msとなる。これを各層の画像書き込みを完全に独立して時分割する図18の下段のチャートで示される改良案の場合は、600msとなる。つまり本発明の駆動方法を適用した本例の場合、図18の上段のチャートで示される従来技術より全所要時間が減少するのに、それが3倍にもなる同下段のチャートで示される(従来の)改良案と同等のクロストーク解消効果を奏するものである。
また、光アドレス型空間光変調素子は、例えば、書き込み装置に表示媒体をかざした状態で画像を書き込むような使用方法が想定されるが、光アドレスによる露光・書き込み時間が長いと、手ぶれにより各色の像の位置ずれが顕著になりやすく、画像のブレとなって画質に影響を与えてしまう懸念がある。上記のように、従来技術の200msの露光でも手ぶれの影響が懸念され、その改良案600msに至っては、ごく僅かの手ぶれでも画質に多大な影響を与えてしまい、実用化に際して大きなハンデとなってしまう。
それに対して、本発明の駆動方法を適用した本例の場合、アドレス光を露光している時間は僅か15msであり、位置を保持していなければならない時間は桁違いに短く、手ぶれによる影響をほぼ完全に解消することができる。
ここでOPC層(光導電層)15における「光スイッチ機能を消失させる周波数(不感周波数)」について説明する。
図7に、印加電圧の周波数によるOPC層15の光スイッチ機能の変化を表すグラフを示す。図7は、印加する電圧の周波数を横軸に、その電圧を印加した場合のOPC層15の抵抗値を縦軸に、それぞれプロットしたグラフであり、破線のグラフはアドレス光が照射されていない状態(OFF)で、実線のグラフはアドレス光が照射された状態(ON)である。なお、当該グラフにおける具体的な数値は、本例において使用した光アドレス型空間光変調素子のOPC層の場合の一例であり、本発明がこれら数値により制限を受けるものではない。
印加電圧の周波数が高くなっていくと、OPC層15の容量成分へのチャージ電流がアドレス光の照射による光電流を凌駕するようになり、アドレス光の照射/非照射による抵抗値の開きがだんだん小さくなり、ある程度高い周波数になってくるとその差が実質的にゼロとなる。すなわち、印加電圧の周波数を高くするにしたがって、OPC層15の光スイッチ機能が徐々に失われ、ついには実質的にその機能が消失する。実質的に光スイッチ機能の機能が消失する周波数が、既述の「不感周波数」である。図7においては、一点鎖線で表されている。
この不感周波数以上の高周波を印加するのが、初期電圧印加工程(フェーズ(1))における電圧Aおよび後期電圧印加工程(フェーズ(3))における電圧Cであり、それ未満の低周波を印加するのが、書き込み工程(フェーズ(2))における電圧Bである。
ここで「高周波」および「低周波」と称しているのは、「不感周波数」に対しての相対的な高低それぞれの周波数を意味するものであり、当該高低について絶対的な意味合いや当業者間ないし社会通念上の意味合いを有するものではない。
ところで、この「不感周波数」であるが、既述の通りこれは「光導電層の光スイッチ機能を消失させる周波数の下限」を意味するものであり、本発明において電圧A、電圧Bおよび電圧Cの各周波数の範囲を決定付ける分水嶺に当たるものではある。ただし、本発明の構成や作用等に鑑みて、あまりに厳密に規定すべきものではない。したがって、当該「不感周波数」ないしそれにより決まる印加電圧の周波数について、本発明においては下記(1)〜(3)のように解すべきである。
(1)光導電層(OPC層)の構成・構造・材料等により、「不感周波数」は変わるものである。
(2)非アドレス光によるクロストークの問題を解消するのが目的であるため、光に対してある程度光スイッチ機能を有する状態であったとしても、積層された液晶層(表示層)の相変化に影響を与えない程度の抵抗変化であるならば、実質的に光スイッチ機能を有しないと解され、その状態における下限周波数が「不感周波数」となる。
(3)電圧Aおよび電圧Cとして印加すべき高周波は、この「不感周波数」以上であれば全く問題無い。しかし、電圧Bとして印加すべき低周波(光導電層の光スイッチ機能を損なわない低周波)は、勿論「不感周波数」未満であれば一定の光スイッチ機能を有していると言え本発明の効果が期待できるものの、十分な光スイッチ機能を有することが望まれるため、ある程度「不感周波数」から隔たっていることが好ましい。具体的には、光導電層の構成・構造・材料等により異なってくるため一概には言えないが、電圧Bとして印加すべき低周波Fxとしては、不感周波数をFnとすると、Fx≦Fn/2であることが好ましく、Fx≦Fn/10であることがより好ましい。
(B)第2の例
本例においてもコレステリック液晶の相変化の一覧を模式的に示す図4を用いて説明する。図4を見てもわかるように、双方向に変化が可能なフォーカルコニック相(F)とホメオトロピック相(H)との間にはヒステリシスが存在し、同じ印加電圧で両状態を共存させることができる。また、フォーカルコニック相(F)−ホメオトロピック相(H)間の変化が、より一般的なプレーナ相(P)−フォーカルコニック相(F)間の変化に比して格段に速い配向変化を示すため、第2の例では、画像の書き込み(書き込み工程)に当該相変化を利用している。
図8は、表示媒体1における光変調層4に対する本例の動作について、印加電圧の波形と表示層12における液晶の配向状態との相互関係を時系列で示すチャートである。
前表示期間については、第1の例と同様であるため、その説明を割愛する。
前表示期間に続いて、フェーズ(1)に相当する初期電圧印加工程の操作が為される。初期電圧印加工程では、表示層12における液晶の相状態を揃える為の電圧Aを透明電極10,11間に印加する。本例で印加する電圧A(図8のチャートにおいては、電圧Aではなく、表示層12の分圧(分圧A)として示されている。)は、表示層12の液晶におけるプレーナ相からフォーカルコニック相への相変化のしきい値を越える電圧であり、当該工程の操作により前記液晶層全体をフォーカルコニック相状態に揃えられる。当該電圧Aの周波数は、OPC層(光導電層)15の不感周波数以上であり、仮にここに非アドレス光等の光が照射されても光スイッチされることは無く、そのため表示層12の分圧が変化してしまうことが無い。
この工程の所要時間は、プレーナ相からフォーカルコニック相への相変化に必要かつ十分な時間であればよい。一般的なコレステリック液晶では、プレーナ相からフォーカルコニック相への配向変化に最も時間がかかるため、本工程に要する時間は比較的長い。一概には言えないが、具体的には、最低でも200ms程度の時間は必要である。
次にフェーズ(2)に相当する書き込み工程で、表示媒体1への画像の書込みが行われる。具体的には、フォーカルコニック相からホメオトロピック相への相変化のしきい値を露光時(明時)に超え、非露光時(暗時)には超えない程度の電圧B(図8のチャートにおいては、電圧Bではなく、表示層12の分圧(分圧B)として示されている。)を透明電極10,11間に印加しつつ、表示媒体1を書き込み側(外部基板7側)から画像様に露光する。
本工程における電圧Bの周波数は、OPC層(光導電層)15の不感周波数未満(直流を含む)であり、アドレス光に対して有効に光スイッチ機能が奏される。
当該工程では、書き込み画像に対応して各コレステリック液晶がホメオトロピック相状態またはフォーカルコニック相状態のどちらかが選択される。この段階では、表示媒体1に反射画像はまだ形成されていない。
この工程の所要時間は、OPC層(光導電層)15が有効な光スイッチ挙動を示し、かつフォーカルコニック相からホメオトロピック相への配向変化に必要な時間以上であればよい。一般的なコレステリック液晶では、フォーカルコニック相からホメオトロピック相への配向変化は、従来利用されてきたプレーナ相からフォーカルコニック相への配向変化に比べると、図4に示すように格段に速い。一概には言えないが、所要時間としては具体的には、5ms以上で通常は十分である。
一方、OPC層(光導電層)15が有効な光スイッチ挙動を示す時間は、電荷発生層でのキャリア発生効率や電荷輸送層での移動度、さらには各層の膜厚などに依存するため一概には言えないが、通常5ms以上は必要となる。したがって、この工程の所要時間は、具体的には、最低でも5ms程度の時間は必要である。
そして、フェーズ(3)に相当する後期電圧印加工程の操作が為される。なお、本例において後期電圧印加工程は必須ではなく、書き込み工程を行った後に表示確定工程が行われてもよい。ただし、後期電圧印加工程を行うことによって、非照射部のフォーカルコニック相(F)がより安定化し、透過率が増加する(最終画像においてコントラストが向上する)効果が得られるため、ここでは後期電圧印加工程を含む例について記述する。
後期電圧印加工程では、表示層12における液晶の相状態のヒステリシスを保持する為の電圧C(図8のチャートにおいては、電圧Cではなく、表示層12の分圧(分圧C)として示されている。)を透明電極10,11間に印加する。本例で印加する電圧Cは、部位ごとに選択されたフォーカルコニック相およびホメオトロピック相がそれぞれそのままの状態で維持される程度の電圧である。当該電圧Cの周波数は、OPC層(光導電層)15の不感周波数以上であり、仮にここに非アドレス光等の光が照射されても光スイッチされることは無く、そのため表示層12の分圧Cが変化してしまうことが無い。
後期電圧印加工程の所要時間は、ヒステリシス状態が維持されつつ、十分なフォーカルコニック相(F)の安定化効果を実現できる時間であればよい。一概には言えないが、具体的には、100ms程度の時間があれば十分な安定化効果が得られる。
なお、後期電圧印加工程を行う代わりに、初期電圧印加工程の所要時間を長くしても、同様のフォーカルコニック相(F)の安定化効果を実現できる。しかし、その後の書き込み工程において、初期電圧印加工程で形成されたフォーカルコニック相(F)の配向が多少乱される可能性があるため、初期電圧印加工程を長くして後期電圧印加工程を行わない方法よりも、初期電圧印加工程を必要最小限の時間として後期電圧印加工程を行う方法の方が好ましい。
最後に、表示確定工程では、後期電圧印加工程で印加していた電圧Cを解除する。バイアス電圧が無くなり、コレステリック液晶の配向が無電場のメモリ状態に変化することで表示媒体に画像が表示される。アドレス光が照射された画像の明部では、ホメオトロピック相からプレーナ相への相変化が生じ、暗部ではフォーカルコニック相がそのままの状態を維持する。
この工程の所要時間は、各配向変化に必要な時間以上であればよい。バイアス信号およびアドレス光が必要ないので、書き込み装置2から表示媒体1が切り離されていても構わない。
以上の各工程の基本動作が、3つの光変調層4B,4G,4Rに対してそれぞれ行われて、3原色の加法混色によるフルカラー画像が、表示側(外部基板6側)に形成される。このとき、各層への動作は、フェーズ(2)に相当する書き込み工程のみが他層と重ならないように時間差を設けて光変調層4B,4G,4Rの順に順次行う。これは、図2を用いて既に説明した通りである。
クロストークの問題が解消され、全体として書き込み時間の長時間化をも抑制することができ、かつ、露光・書き込み時間が短いため手ぶれの影響をほぼ完全に解消できるといった効果は、第1の例と同様であり、その詳細な機構や作用等は、第1の例で説明した通りである。また、不感周波数の考え方についても第1の例で説明した通りである。
以上、2つの好ましい例を挙げて本発明を詳細に説明したが、本発明は以上の例に限定されるものではない。例えば、以上の説明では、光変調層が3層構成のもののみを例示して説明しているが、本発明において光変調層は3層に限られるものではなく、2層や4層以上の構成とすることもできる。
また、各光変調層にそれぞれ遮光層を設け、非表示面側から画像の書き込みを行うもののみを例示して説明しているが、各光変調層が遮光層を持たず、表示面側から画像の書き込みを行う構成とすることもできる。さらに、以上の説明では、各層の書き込み工程が時間差なく連続的に行われる方法を例示したが、同時にさえ行われないのであれば各書き込み工程間に時間差があってもよい。また、各工程で選択されるコレステリック液晶の配向状態についても、本発明の基本動作原理を実現できるものであれば、以上の例に限定されるものではない。
さらに、当業者は、従来公知の知見に従い、本発明を適宜改変することができる。かかる改変によってもなお本発明の構成を具備する限り、勿論、本発明の範疇に含まれるものである。
以下、本発明を、実施例を挙げることで、より具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
まず、本発明および比較例に供する光アドレス型空間光変調素子(表示媒体)および書き込み装置からなるシステムとして、図9に記載の各装置を試作して、実施例および比較例の書き込み操作を行った。試作した表示媒体101は、光変調層が104BGおよび104Rの2層構成のものである。図9を参照しつつ説明する。
(OPC層115Rの作製)
片面にITO(表面抵抗300Ω/□)が形成された125μm厚のポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(東レ社製,ハイビーム)を50.8mm(2インチ)角に切り出して、外部基板107および透明電極111Rとした。
ITO(透明電極111R)側の面に、ポリビニルブチラール樹脂をブタノールに溶解した溶液に電荷発生材料(チタニルフタロシアニン顔料)をペイントシェイカーで分散させた塗料を、スピンコート法によって乾燥膜厚が0.2μmとなるように塗布・乾燥し、電荷発生層120Rを形成した。
次にその上に、ポリカーボネート樹脂と電荷輸送材料(ベンジジンN,N’−ビス(3−メチルフェニル)−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン)をモノクロロベンゼンに溶解した塗料を、ギャップコート法によって乾燥膜厚が6μmになるように塗布・乾燥し、電荷輸送層119Rを形成した。さらにその上に、ポリビニルブチラール樹脂をブタノールに溶解した溶液に、電荷発生材料(チタニルフタロシアニン顔料)をペイントシェイカーで分散させた塗料を、スピンコート法によって乾燥膜厚が0.2μmとなるように塗布・乾燥し、電荷発生層118Rを形成して、電荷発生層120R、電荷輸送層119R、電荷発生層118Rの3層からなるOPC層115Rを形成した。
(OPC層115BGの作製)
両面にITO(表面抵抗300Ω/□)が形成された50μm厚のポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを50.8mm(2インチ)角に切り出して、透明電極110R、内部基板108、および、光変調層104BGの構成要素となる透明電極111BGとした。
ITO(透明電極111BG)が形成された表面に、ポリビニルブチラール樹脂をブタノールに溶解した溶液に電荷発生材料(ジブロモアンスアンスロン顔料)をペイントシェイカーで分散させた塗料を、スピンコート法によって乾燥膜厚が0.2μmとなるように塗布・乾燥し、電荷発生層120BGを形成した。
次にその上に、ポリカーボネート樹脂と電荷輸送材料(ベンジジンN,N’−ビス(3−メチルフェニル)−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン)をモノクロロベンゼンに溶解した塗料を、ギャップコート法によって乾燥膜厚が6μmになるように塗布・乾燥し、電荷輸送層119BGを形成した。さらにその上に、ポリビニルブチラール樹脂をブタノールに溶解した溶液に電荷発生材料(ジブロモアンスアンスロン顔料)をペイントシェイカーで分散させた塗料を、スピンコート法によって乾燥膜厚が0.2μmとなるように塗布・乾燥し、電荷発生層118BGを形成して、電荷発生層120BG、電荷輸送層119BG、電荷発生層118BGの3層からなるOPC層115BGを形成した。
コレステリック液晶として、ネマチック液晶(メルク社製,E7)80.5質量%、右旋性カイラル剤(メルク社製,CB15)15.6質量%および右旋性カイラル剤(メルク社製,R1011)3.9質量%を混合して、赤色を反射する材料を調製した。
4.2μm径のセラミック多孔質膜をセットした膜乳化装置(SPGテクノ社製,マイクロキット)を用いて、窒素圧力11.8kPa(0.12kgf/cm2)の条件下で前記コレステリック液晶を0.25質量%のドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム水溶液中に乳化した。得られたエマルジョンは、コレステリック液晶ドロップの粒径平均が14.9μmで、ほぼ単分散状態だった。
次に、エマルジョンを静置してコレステリック液晶ドロップを沈降させ、上澄みを除去して濃縮されたエマルジョンを得た。この濃縮エマルジョン1質量部に対して、酸性法骨ゼラチン(ニッピ社製,ゼリー強度314)の7.7質量%水溶液を4質量部添加することにより、表示層用塗布液内の不揮発分体積率が約0.15、不揮発分内のコレステリック液晶体積率が約0.70の表示層用塗布液を得た。
前記のOPC層115BGを形成した両面ITO透明電極付きPETフィルムの片面(当該面が透明電極110R側となる)に、50℃に加熱してゼラチンをゾル状態にした前記表示層用塗布液を、塗布後のウェット膜厚が90μmになるようにギャップを調整したマイクロメータ付きアプリケータで塗布した。
50℃/RH90%の高温高湿チャンバー内に15分間保持した後、室温下で12時間乾燥させ、表示層112Rとして、15μm径の単分散コレステリック液晶ドロップが少し偏平した形状で高分子バインダー中に単層稠密に分散された約12μm厚のPDLC層を形成した。
OPC層115R上に、銅フタロシアニン顔料を分散させたポリビニルアルコール水溶液を、スピンコート法によって乾燥膜厚が1.2μmとなるように形成して、遮光層114Rとした。さらに当該遮光層114Rの上層として、酢酸ブチルで希釈した二液性ウレタンラミネート剤(三井武田ケミカル社製,A−315/A50)を、スピンコート法によって乾燥膜厚が1.2μm厚となるように塗布し、ラミネート層113Rを形成した。
以上のようにして作製した2枚の基板(OPC層115R、遮光層114R、ラミネート層113Rが層形成された外部基板107、およびOPC層115BG、表示層112Rが両側に形成された内部基板108)を、表示層112Rとラミネート層113Rとが向かい合い、かつ端面の一部が少しずれるように重ね合わせて、100℃のラミネータを通して接着し、光変調層104Rを得た。
なお、ずらした端面上の各機能膜を除去してITO電極を露出させておき、最終的に得られる表示媒体101の外部から両透明電極110R,111Rが導通できるようにした。
(表示層112BGの作製)
片面にITO(表面抵抗300Ω/□)が形成された125μm厚のポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(東レ社製,ハイビーム)を50.8mm(2インチ)角に切り出して、外部基板106および透明電極110BGとした。
コレステリック液晶として、ネマチック液晶(メルク社製,E7)77.5質量%、右旋性カイラル剤(メルク社製,CB15)18.0質量%および右旋性カイラル剤(メルク社製,R1011)4.5質量%を混合して、緑色を反射する材料を調製した。
4.2μm径のセラミック多孔質膜をセットした膜乳化装置(SPGテクノ社製,マイクロキット)を用いて、窒素圧力11.8kPa(0.12kgf/cm2)の条件下で前記コレステリック液晶を0.25質量%のドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム水溶液中に乳化した。得られたエマルジョンは、コレステリック液晶ドロップの粒径平均が14.9μmで、ほぼ単分散状態だった。
次に、エマルジョンを静置してコレステリック液晶ドロップを沈降させ、上澄みを除去して濃縮されたエマルジョンを得た。この濃縮エマルジョン1質量部に対して、酸性法骨ゼラチン(ニッピ社製,ゼリー強度314)の7.7質量%水溶液を4質量部添加することにより、表示層用塗布液内の不揮発分体積率が約0.15、不揮発分内のコレステリック液晶体積率が約0.70の表示層用塗布液を得た。
外部基板106となる片面ITO付PETフィルムのITO(透明電極111BG)側の面に、50℃に加熱してゼラチンをゾル状態にした前記表示層用塗布液を、塗布後のウェット膜厚が90μmになるようにギャップを調整したマイクロメータ付きアプリケータで塗布した。
50℃/RH90%の高温高湿チャンバー内に15分間保持した後、室温下で12時間乾燥させ、表示層112BGとして、15μm径の単分散コレステリック液晶ドロップが少し偏平した形状で高分子バインダー中に単層稠密に分散された約12μm厚のPDLC層を形成した。
(光変調層104BGの作製)
OPC層115BG上に、ピロロピロール顔料を分散させたポリビニルアルコール水溶液を、スピンコート法によって乾燥膜厚が1.2μmとなるように形成して、遮光層114BGとした。さらに当該遮光層114BGの上層として、酢酸ブチルで希釈した二液性ウレタンラミネート剤(三井武田ケミカル社製,A−315/A50)を、スピンコート法によって乾燥膜厚が1.2μm厚となるように塗布し、ラミネート層113BGを形成した。
以上のようにして作製した2枚の基板(光変調層104R、OPC層115BG、遮光層114BG、ラミネート層113BGが内部基板108を介して層形成された外部基板107、および表示層112BGが形成された外部基板106)を、表示層112BGとラミネート層113BGとが向かい合い、かつ端面の一部が少しずれるように重ね合わせて、100℃のラミネータを通して接着し、表示媒体101を得た。なお、ずらした端面は、(光変調層104Rの作製)の場合と同様に処理した。
得られた表示媒体101の透明電極110R,111Rおよび透明電極110BG,111BGに、リード線を付けた市販のミノ虫クリップ(接触端子124R,125Rおよび接触端子124BG,125BG)を接続し、リード線の他端を、電圧印加部122としての高速・高電圧アンプ(松定プレシジョン社製,HEOPT1B−60型)に接続した。該高速・高電圧アンプにより、後述するとおり、周波数50Hzまたは1000Hz、±75〜260Vの矩形波のバイアス電圧を印加した。
一方、光源としてカラー発光ダイオード光源(CCS社製,HLV−3M−RGB型)を用い、表示媒体101の外部基板107側の面を照射できるように構成して、光照射部123を作製した。当該光照射部123により、ピーク波長625nm、バンド半値幅20nmのRed光と、ピーク波長470nm、バンド半値幅25nmのBlue光を照射することができる。
また、制御回路121としてマルチチャンネルアナログ電力出力ボード(ナショナルインスツルメンツ社製6713型)、および制御ソフト(ナショナルインスツルメンツ社製LabVIEW)を用い、パーソナルコンピュータからの画像データに基づいて電圧印加部122および光照射部123の動作を適宜制御できるように配線した。
以上のようにして、本実施例および比較例に供する表示媒体(光アドレス型空間光変調素子)101、およびそれがセットされた書き込み装置102を得た。
[実施例1]
電圧印加部122および光照射部123により、図10のチャートに示す動作の時系列に従って、本発明の駆動方法に基づく電圧印加および光アドレスの照射を行った。ここで図10は、実施例1の電圧印加および光アドレスの照射を時系列で示すチャートである。横軸が時間であり、縦軸が電圧値あるいは光強度を表す。4つのチャートは、上から順に、透明電極124BG−125BG間に印加する電圧BG、透明電極124R−125R間に印加する電圧R、書き込み側(外部基板7側)から照射するブルー色のアドレス光の光強度BGおよびレッド色のアドレス光の光強度Rをそれぞれ表すものである。なお、実施例1におけるコレステリック液晶の駆動は、ホメオトロピック相と過渡プレーナ相とのヒステリシスを利用したものである。
これら印加電圧の周波数、電圧、印加時間、および、アドレス光の波長、強度、照射時間を下記表1にまとめる。
Figure 2007101781
その結果、鮮明な発色の所望のカラー画像を得ることができた。全書き込み時間は240mSであり、アドレス光の照射時間は40mSであった。全書き込み時間が短く、特にアドレス光の照射時間がごく僅かであるため、手ぶれなどによる画像のブレが生じにくいことが推測される。
また、クロストークの影響を確認するために、透明電極124BG−125BG間にのみ電圧BG(図10の最上段のチャートによる電圧)を印加して、非アドレス光(レッド色の光)の照射の有無による表示画像の正規化反射率を求めた。このとき、アドレス光(ブルー色)の照射強度については、0.01〜3.162mW/cm2の間で適宜振って、多水準の試験とした。結果は、比較例3においてまとめて述べる。
なお、表示画像の正規化反射率の測定は、書き込み動作終了後、印加していたバイアス電圧を止めて(表示確定動作(工程))、数秒後、表示媒体101の表示面(外部基板106側の面)について、図9に符号130で示される積分球形分光計(コニカミノルタ社製、CM2002型)を用いてその反射率を測定した。ここで正規化反射率とは、JIS Z 8772の拡散照明垂直受光方式に従ってSCE(正反射光除去)条件で測定した反射強度を、完全拡散面を100%として規格化したものである。
[比較例1]
電圧印加部122および光照射部123により、図11のチャートに示す動作の時系列に従って、比較例1としての電圧印加および光アドレスの照射を行った。ここで図11は、比較例1の電圧印加および光アドレスの照射を時系列で示すチャートである。当該チャートの意義は、実施例1における図10と同様である。なお、比較例1におけるコレステリック液晶の駆動は、光照射時(明時)においてプレーナ相またはフォーカルコニック相からホメオトロピック相への配向変化を、光非照射時(暗時)においてプレーナ相からフォーカルコニック相への配向変化を利用したものである。
これら印加電圧の周波数、電圧、印加時間、および、アドレス光の波長、強度、照射時間を下記表2にまとめる。
Figure 2007101781
その結果、全書き込み時間は200mSと短いものの、カラー画像にクロストークの影響と思われる色彩の濁り(混色)が認められ、鮮明な発色を得ることができなかった。また、アドレス光の照射時間は200mSであり、アドレス光の照射時間が若干長めであるため、手ぶれなどによる画像のブレを生じる可能性があることが推測される。
[比較例2]
電圧印加部122および光照射部123により、図12のチャートに示す動作の時系列に従って、比較例2としての電圧印加および光アドレスの照射を行った。ここで図12は、比較例2の電圧印加および光アドレスの照射を時系列で示すチャートである。当該チャートの意義は、実施例1における図10と同様である。なお、比較例2におけるコレステリック液晶の駆動は、比較例1と同様である。
これら印加電圧の周波数、電圧、印加時間、および、アドレス光の波長、強度、照射時間を下記表3にまとめる。
Figure 2007101781
その結果、得られたカラー画像がクロストークの影響の無い鮮明な発色であったものの、全書き込み時間が400mSと長く、アドレス光の照射時間もそれと同じ400mSと極めて長い。アドレス光の照射時間が極めて長いため、手ぶれなどによる画像のブレを生じる可能性が高いことが推測される。
[比較例3]
実施例1において、書き込み工程における印加電圧Vb1、Vb3、Vr1およびVr3の周波数を高周波にしなかった(不感周波数未満の低周波にした)こと以外は、実施例1と同様にして、比較例3としての電圧印加および光アドレスの照射を行った。
具体的な印加電圧の周波数、電圧、印加時間、および、アドレス光の波長、強度、照射時間を下記表4にまとめる。
Figure 2007101781
その結果、全書き込み時間の240mS、およびアドレス光の照射時間40mSは実施例1と同様であり、特にアドレス光の照射時間がごく僅かであるため、手ぶれなどによる画像のブレが生じにくいことが推測されるものの、カラー画像にクロストークの影響と思われる色彩の濁り(混色)が認められ、鮮明な発色を得ることができなかった。
また、クロストークの影響を確認するために、実施例1と同様の多水準の試験(電圧BGのみ印加して、アドレス光を多水準に振り、非アドレス光による反射率への影響を確認する試験)を行った。結果を図13にグラフにて示す。
図13のグラフから、実施例1においては、非アドレス光(R光)照射の有無によらず、アドレス光(B光)に対してほぼ同一の反射率変化を示しており、クロストークが生じていないことがわかる。これに対して、比較例3においては、非アドレス光(R光)の照射がある場合に、アドレス光(B光)の照射強度が小さくてもある程度の反射率を示してしまい、本来BG色が発色すべきでない部位がかなり発色してしまっている。これは加法混色によるカラー画像を得ようとした場合に、色彩の濁り(混色)となって現れるものであり、クロストークが生じていることが確認された。
本発明の光アドレス型空間光変調素子の駆動方法において、光アドレス型光変調層に対して行う基本動作を時系列で表すチャートである。 Red(R)、Green(G)およびBlue(B)の3色をそれぞれ選択反射し得る表示層を有する光アドレス型光変調層を積層した光アドレス型空間光変調素子を、本発明の光アドレス型空間光変調素子の駆動方法により駆動させた際の動作を時系列で表すチャートである。 本発明の光アドレス型空間光変調素子の駆動方法を適用したシステムの例示的一態様の概略構成図である。 コレステリック液晶の相変化の一覧を示す模式図である。 表示媒体におけるいずれかの光変調層に対する本発明の第1の例の動作について、印加電圧の波形と表示層(液晶層)における液晶の配向状態との相互関係を時系列で示すチャートである。 本発明の第1の例において、表示層(液晶層)における液晶の書き込み工程以降の電気光学応答について説明するためのグラフである。 印加電圧の周波数によるOPC層(光導電層)の光スイッチ機能の変化を表すグラフである。 表示媒体におけるいずれかの光変調層に対する本発明の第2の例の動作について、印加電圧の波形と表示層(液晶層)における液晶の配向状態との相互関係を時系列で示すチャートである。 実施例および比較例に供した光アドレス型空間光変調素子および書き込み装置からなるシステムの概略構成図である。 実施例1の電圧印加および光アドレスの照射を時系列で示すチャートである。 比較例1の電圧印加および光アドレスの照射を時系列で示すチャートである。 比較例2の結果を表すグラフであり、走査速度とバイアス電圧との関係を明暗コントラストごとにプロットしたものである。 クロストークの影響を確認するための多水準試験の結果を示すグラフである。 コレステリック液晶の分子配向と光学特性の関係を示す模式説明図であり、(A)はプレーナ相、(B)はフォーカルコニック相、(C)ホメオトロピック相の各相におけるものである。 コレステリック液晶のスイッチング挙動を説明するためのグラフである。 3層の光変調層が積層されてなる光アドレス型空間光変調素子を従来の方法での駆動する様子を説明するための模式説明図である。 レッド(R)の光変調層のOPC層(光導電層)における光の透過スペクトルのグラフである。 各光変調層へのバイアス電圧印加およびアドレス光照射を時系列で表すチャートであり、上段がクロストークについての改良が為されていない従来技術、下段がその改良が為されている従来技術(改良案)である。
符号の説明
1,101:表示媒体(光アドレス型空間光変調素子)、 2,102:書き込み装置、 4,104:光変調層(光アドレス型光変調層)、 6,7,106,107:外部基板、 8,9,108:内部基板、 10,11,110,111:透明電極(電極)、 12,112:表示層(液晶層)、 13,113:ラミネート層、 14,114:遮光層、 15,115:OPC層(光導電層)、 16:高分子マトリックス、 17:コレステリック液晶、 18,20,118,120:電荷発生層、 19,119:電荷輸送層、 21,121:制御回路、 22,122:電圧印加部、 23,123:光照射部、 24,25,124,125:接触端子、 130:積分球形分光計

Claims (6)

  1. 光アドレス型光変調層が2層以上積層されてなる光アドレス型空間光変調素子に、画像を記録するための光アドレス型空間光変調素子の駆動方法において、
    前記光アドレス型光変調層が、特定波長域の光を反射する少なくともコレステリック液晶からなる液晶層と、前記特定波長域の光を吸収してその吸収した光量に応じて電気特性を変化させる光スイッチ機能を担う光導電層と、が積層され、さらにその両層の外側に電極が配されて構成され、
    前記光アドレス型光変調層のそれぞれの液晶層が、相互に異なる波長域の光を反射するものであって、その反射する波長域以外の波長域の光を透過するものであり、
    1つの前記光アドレス型光変調層に対して、前記液晶層における相状態を揃える為の電圧Aを前記両電極間に印加する初期電圧印加工程と、相変化のしきい値を非露光時または露光時に超え、その逆の場合には超えない程度の電圧Bを前記両電極間に印加しつつ、光アドレス型空間光変調素子を画像様に露光する書き込み工程と、必要に応じて行われる、前記液晶層における相状態のヒステリシスを保持する為の電圧Cを前記両電極間に印加する後期電圧印加工程と、直前の工程で印加していた電圧Cを解除することで表示画像を確定させる表示確定工程と、の3つの工程または4つの工程からなる操作を、全ての前記光アドレス型光変調層に順次行うことで、各層に色毎の画像を書き込む方法であって、
    書き込み工程で印加する電圧Bの周波数を、前記光導電層の光スイッチ機能を損なわない低周波にすると共に、初期電圧印加工程で印加する電圧Aおよび後期電圧印加工程を含む場合には当該工程で印加する電圧Cの周波数を、前記光導電層の光スイッチ機能を消失させる周波数以上の高周波とすることを特徴とする光アドレス型空間光変調素子の駆動方法。
  2. 前記各光アドレス型光変調層に行う操作を、書き込み工程のみが同時に行われないように層毎に時間差を設けて順次行うことを特徴とする請求項1に記載の光アドレス型空間光変調素子の駆動方法。
  3. 初期電圧印加工程で印加する電圧Aが、前記液晶層におけるプレーナ相ないしフォーカルコニック相からホメオトロピック相への相変化のしきい値を越える電圧であり、当該工程の操作により前記液晶層全体をホメオトロピック相にし、
    書き込み工程における前記液晶層の相変化のしきい値が、ホメオトロピック相から過渡プレーナ相へのしきい値であり、当該工程の操作により露光部はホメオトロピック相のままで非露光部を過渡プレーナ相に相変化させる選択が為され、
    後期電圧印加工程で印加する電圧Cが、ホメオトロピック相の部位はそのままの状態が保たれ、過渡プレーナ相の部位はそのヒステリシスからホメオトロピック相には戻らず、経時と共にフォーカルコニック相に相変化する程度の電圧であり、
    表示確定工程で、過渡プレーナ相からフォーカルコニック相へ相変化していた部位はそのままの状態で、ホメオトロピック相の部位をプレーナ相に相変化させることで表示画像を確定させることを特徴とする請求項1または2に記載の光アドレス型空間光変調素子の駆動方法。
  4. 初期電圧印加工程で印加する電圧Aが、前記液晶層におけるプレーナ相からフォーカルコニック相への相変化のしきい値を越える電圧であり、当該工程の操作により前記液晶層全体をフォーカルコニック相にし、
    書き込み工程における前記液晶層の相変化のしきい値が、フォーカルコニック相からホメオトロピック相へのしきい値であり、当該工程の操作により非露光部はフォーカルコニック相のままで露光部をホメオトロピック相に相変化させる選択が為され、
    後期電圧印加工程を含まないか、含む場合には当該工程で印加する電圧Cが、フォーカルコニック相およびホメオトロピック相のそれぞれの部位でそのままの状態が保たれる程度の電圧であり、
    表示確定工程で、フォーカルコニック相の部位はそのままの状態で、ホメオトロピック相へ相変化していた部位をプレーナ相に相変化させることで表示画像を確定させることを特徴とする請求項1または2に記載の光アドレス型空間光変調素子の駆動方法。
  5. 前記複数の光アドレス型光変調層それぞれにおける前記液晶層と前記光導電層との間に、該光導電層が吸収する波長域の光を吸収するとともに、その吸収する波長域を除く波長域の光を透過する遮光層を備えることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の光アドレス型空間光変調素子の駆動方法。
  6. 前記複数の光アドレス型光変調層それぞれにおける光導電層が、相互に異なる波長域の光を吸収するものであって、その吸収する波長域を除く波長域の光を透過するものであることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の光アドレス型空間光変調素子の駆動方法。
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