JP2007068547A - 微生物数測定方法及び微生物実験用培地 - Google Patents
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Abstract
【課題】微生物数測定に影響を与える成分が検体に含まれる場合であっても、その影響を低減することが目的とされる。
【解決手段】コバルトフタロシアニンテトラカルボン酸を含有する希釈液を準備する(ステップ101)。そして、準備した希釈液を用いて検体をストマッキング処理すると共に、所定の濃度に希釈することで、検体液を調製する(ステップ102)。この処理により、検体に含まれた硫黄化合物は、希釈液へと拡散するがコバルトフタロシアニンテトラカルボン酸に吸着される。硫黄化合物は、酸素電極法で測定される出力電流(可測定量)の値を低下させる。続いて酸素電極法による細菌数測定を行う。まず、生理食塩水などの液体培地に検体液を添加し(ステップ103)、それを内側に酸素電極を有する測定用セルに注入する(ステップ104)。そして、当該測定用セルを測定装置にセットする。その後、細菌数の測定を開始する(ステップ105)。
【選択図】図1
【解決手段】コバルトフタロシアニンテトラカルボン酸を含有する希釈液を準備する(ステップ101)。そして、準備した希釈液を用いて検体をストマッキング処理すると共に、所定の濃度に希釈することで、検体液を調製する(ステップ102)。この処理により、検体に含まれた硫黄化合物は、希釈液へと拡散するがコバルトフタロシアニンテトラカルボン酸に吸着される。硫黄化合物は、酸素電極法で測定される出力電流(可測定量)の値を低下させる。続いて酸素電極法による細菌数測定を行う。まず、生理食塩水などの液体培地に検体液を添加し(ステップ103)、それを内側に酸素電極を有する測定用セルに注入する(ステップ104)。そして、当該測定用セルを測定装置にセットする。その後、細菌数の測定を開始する(ステップ105)。
【選択図】図1
Description
本発明は、微生物数測定方法及びそれに供される微生物実験用培地に関する。
例えば食品の衛生管理を達成する目的で、食品に含まれる微生物の数を測定することが要求されている。食品などの検体に含まれる微生物数を測定する方法として、酸素電極法(DOX:dissolved oxygen electrode method)が知られている(例えば特許文献1−2)。酸素電極法による微生物数の測定は以下の手順により実施される。
まず、食材等の検体を希釈液(例えば生理食塩水等)に添加し、所定の濃度に希釈して検体液を調製する。このとき、検体を希釈液と共に粉砕して混合させるいわゆるストマッキング処理も行われる。それにより、検体に含まれる微生物が検体液中に抽出される。
調製された検体液は所定の液体培地に添加されて、測定用セルに注入される。この測定用セルは測定装置にセットされる。
測定用セルは、内側に酸素電極を有する。酸素電極は、液体培地中の溶存酸素濃度を電気信号に変換する。測定装置は、酸素電極から出力された電気信号を測定し、これに基づいて液体培地中に含まれる溶存酸素濃度を求める。この電気信号には、通常、酸素電極から出力される電流が採用される。そして、その電流の値は、溶存酸素濃度が高いほど大きくなる。
液体培地中の溶存酸素濃度は、微生物の代謝、例えば呼吸により変化する。よって、酸素電極からの出力電流は、微生物の代謝によって変化する。
例えば図10には、微生物として細菌を採用し、液体培地中の初期菌数105、104、103、102、101CFU/mlおよび”初期細菌なし”の検体液を添加した液体培地のそれぞれについて、酸素電極からの出力電流を測定時間の経過に対して測定した結果が示される。測定開始時の電流値は初期細菌数に関係なく何れも等しい。時間の経過と共に、液体培地中の細菌の代謝によって酸素が消費されて、電流値が下がってくる。このとき、ゼロに近い所定のしきい値Ith以下に電流値が減少するまでの所要時間は、初期菌数によって異なっている。すなわち、初期菌数が多いほど、所要時間は短くなる。なぜなら、液体培地中の細菌数が多いと、それだけ酸素の消費量が多いので溶存酸素濃度が早く低下するためである。
従って、酸素電極からの出力電流を測定時間の経過に対して測定し、出力電流が所定のしきい値Ith以下に減少するまでの所要時間を求めることで、例えば検量線に基づいて、液体培地中に含まれる細菌などの微生物の個体数を算出することができる。検量線は、例えば図10で示された結果、すなわち既知の初期菌数及びそれに対応する所定時間から求められる。
上述したように酸素電極法では初期菌数が多いほど、測定結果すなわち出力電流がしきい値Ith以下に減少するまでの所要時間を早く得ることができ、具体的には初期菌数が105CFU/ml以上の場合で測定の所要時間は約4時間以下である。一方、例えば従来の寒天培養法では、培地で細菌を12〜48時間程度培養する必要がある。よって、酸素電極法は、微生物数測定を非常に短時間で行うことが可能な手法である。
また寒天培養法では、培地に生成した細菌のコロニー数を測定者が目視でカウントする必要があったが、酸素電極法では、電気信号をモニタすることにより測定される。よって、酸素電極法を採用した場合には、測定の自動化、測定結果のデータベース化、測定システムのネットワーク化が容易である。さらに測定の自動化によって、測定結果の測定者ごとの個人差を排除でき、測定者の専門的な技術の習得が不要になるという利点も得られる。
なお、本発明に関連する技術を以下に示す。
微生物数の測定において検体には、硫化アリルやアリシン(ネギ類に含まれる)といった硫黄化合物や、カテキン(緑茶などに含まれる)といったポリフェノールなどが含まれる。その他、酢酸やクエン酸、アスコルビン酸なども含まれることがある。
硫黄化合物は、微生物である細菌の増殖または代謝を抑制する。このような細菌の増殖または代謝を抑制する成分が検体に含まれると、細菌数の測定に影響する。このような影響は、従来の寒天培養法においても問題であるが、特に酸素電極法などの迅速測定法の場合には大きな問題になる。その理由は次のとおりである。
寒天培養法では、検体液と培地とは1対20程度の割合で混合される。一方、酸素電極法などでは、一般に検体液と培地とは1対1程度の割合で混合される。このため、酸素電極法で使用される検体に含まれる成分による測定への影響は、寒天培養法に比べて約10倍程度である。
また、寒天培養法による細菌数測定では、細菌の培養には少なくとも24〜48時間が必要される。このため、検体液に細菌の増殖または代謝を抑制する成分が含まれていたとしても、培養中に当該成分が揮発などにより失活し、測定結果への影響が小さくなる。一方、酸素電極法による細菌数測定では、細菌の培養時間(測定時間)が比較的短いため、当該成分が失活する前に測定が終了することが多い。従って、当該成分による測定結果への影響が大きくなる。
また、酸素電極法などの迅速測定法及び寒天培養法による細菌数測定のいずれにおいても、増殖または代謝を抑制する成分が検体に含まれていると、測定時間の長期化を招いてしまう。特に、酸素電極法による細菌数測定では、培地に含まれる細菌数が多くなるほど早く測定結果が得られるという特徴があるため、測定時間の長期化が顕著になる。
酸素電極法などの迅速測定法による細菌数測定においては、硫黄化合物は、さらに電極からの出力電流の低下をも生じさせて測定に影響を与える。このような出力電流の低下は、ポリフェノールによっても生じる。
具体的には、酸素電極法の場合、測定開始時の倍地中の溶存酸素量に関係なく、測定開始からすぐに酸素電極からの出力電流が低下し始める。場合によっては、そのまましきい値Ithにまで達してしまう。このため、硫黄化合物やポリフェノールなどの成分を含む検体に対して酸素電極法による細菌数測定を行った場合には、測定開始時から出力電流がしきい値Ithに達するまでの所要時間が、初期菌数に関係なくほぼ一定になる場合がある。このような状況では、当該所要時間から液体培地中の初期菌数を算出することが困難である。
本発明は以上のような課題を解決するためになされたものであり、測定に影響を与える成分が検体に含まれる場合であっても、その影響を低減することが目的とされる。
この発明の請求項1にかかる微生物数測定方法は、検体に含まれる微生物の個体数である微生物数を測定する方法であって、(a)前記検体を培地に添加する工程と、(b)前記培地中で培養される前記微生物の代謝にともなって変動する可測定量を測定して、前記工程(a)で添加された前記検体に含まれる前記微生物数を求める工程とを備え、前記検体は、所定の成分を含有し、前記工程(b)が実行される際の前記培地には吸着剤が含まれ、前記所定の成分は前記吸着剤に吸着され、前記工程(b)で測定される前記可測定量の値を低下させる。
この発明の請求項2にかかる微生物数測定方法は、請求項1記載の微生物数測定方法であって、前記工程(a)において前記検体は、前記吸着剤が含まれる希釈液で希釈されてから前記培地に添加される。
この発明の請求項3にかかる微生物数測定方法は、請求項1又は請求項2記載の微生物数測定方法であって、前記工程(a)が実行される際の前記培地には前記吸着剤が含まれる。
この発明の請求項4にかかる微生物数測定方法は、請求項1乃至請求項3のいずれか一つに記載の微生物数測定方法であって、前記可測定量は、前記培地中を、それに含まれる酸素量に応じて流れる電流である。
この発明の請求項5にかかる微生物数測定方法は、請求項4記載の微生物数測定方法であって、前記所定の成分はポリフェノールである。
この発明の請求項6にかかる微生物数測定方法は、請求項5記載の微生物数測定方法であって、前記吸着剤は、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリビニルポリピロリドン(PVPP)、イオン交換樹脂、牛血清アルブミン(BSA)及びイソアスコルビン酸ナトリウムの少なくともいずれか一つである。
この発明の請求項7にかかる微生物数測定方法は、請求項4記載の微生物数測定方法であって、前記所定の成分は硫黄化合物である。
この発明の請求項8にかかる微生物数測定方法は、請求項7記載の微生物数測定方法であって、前記吸着剤はコバルトフタロシアニンテトラカルボン酸である。
この発明の請求項9にかかる微生物実験用培地は、請求項1乃至請求項8のいずれか一つに記載の微生物数測定方法に使用する培地であって、前記所定の成分を吸着する前記吸着剤を含む。
この発明の請求項10にかかる微生物実験用培地は、請求項9記載の微生物実験用培地であって、前記培地が液体であることを特徴とする。
この発明の請求項1にかかる微生物数測定方法によれば、可測定量の値を低下させる所定の成分が吸着剤に吸着されるので、当該所定の成分が及ぼす工程(b)への影響が低減される。具体的には、工程(b)で測定される可測定量の値の低下が低減される。よって、初期微生物数の算出不能を回避する。
この発明の請求項2にかかる微生物数測定方法によれば、検体に含まれる可測定量の値を低下させる成分が、希釈液に含まれる吸着剤に吸着されるので、可測定量への影響が抑制される。
この発明の請求項3にかかる微生物数測定方法によれば、検体に含まれる可測定量の値を低下させる成分が、培地に含まれる吸着剤に吸着されるので、可測定量への影響が抑制される。
この発明の請求項4にかかる微生物数測定方法によれば、培地中に含まれる酸素量は微生物の代謝に伴って変動するので、請求項1乃至請求項3のいずれか一つにかかる微生物数測定方法に適用できる。
この発明の請求項5にかかる微生物数測定方法によれば、ポリフェノールは可測定量である電流の値を低下させるが、これが吸着剤に吸着されるので、可測定量への影響が抑制される。
この発明の請求項6にかかる微生物数測定方法によれば、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリビニルポリピロリドン(PVPP)、イオン交換樹脂、牛血清アルブミン(BSA)及びイソアスコルビン酸ナトリウムはポリフェノールを吸着するので、吸着剤として少なくともいずれか一つを採用することで、工程(b)で測定される可測定量の値の低下が低減される。
この発明の請求項7にかかる微生物数測定方法によれば、硫黄化合物は可測定量である電流の値を低下させるが、これが吸着剤に吸着されるので、可測定量への影響が抑制される。
この発明の請求項8にかかる微生物数測定方法によれば、コバルトフタロシアニンテトラカルボン酸は硫黄化合物を吸着するので、工程(b)で測定される可測定量の値の低下が低減される。
この発明の請求項9にかかる微生物実験用培地によれば、可測定量の値を低下させる成分が吸着剤に吸着されるので、微生物実験への影響が低減される。具体的には、可測定量の値の低下が低減される。
この発明の請求項10にかかる微生物実験用培地によれば、培地が液体であるので、電流の測定が容易である。
本発明を実施するための最良の形態として、酸素電極法による微生物数測定に本発明を適用した例を示す。
第1の実施の形態.
第1の実施の形態にかかる微生物数測定方法について、図1で示されるフローチャートに従って説明する。当該微生物数測定の対象である検体には、微生物の増殖または代謝を抑制する作用を有する成分が含まれた食材などが採用される。具体的には、ネギ類やチーズなどの食材であって、それらには当該成分として硫黄化合物が含有される。
第1の実施の形態にかかる微生物数測定方法について、図1で示されるフローチャートに従って説明する。当該微生物数測定の対象である検体には、微生物の増殖または代謝を抑制する作用を有する成分が含まれた食材などが採用される。具体的には、ネギ類やチーズなどの食材であって、それらには当該成分として硫黄化合物が含有される。
硫黄化合物などの成分は、食材等に付着している細菌に作用して、その細菌の増殖または代謝を抑制する。このような当該成分の細菌への作用は、一般的に静菌作用として把握される。以下では、硫黄化合物の静菌作用による弊害を、硫黄化合物を吸着する吸着剤であるコバルトフタロシアニンテトラカルボン酸を採用して回避する態様を示す。
まず、コバルトフタロシアニンテトラカルボン酸を含有する希釈液を準備する(ステップ101)。例えば、吸着剤を含まない通常の希釈液、例えば生理食塩水と、コバルトフタロシアニンテトラカルボン酸の溶液とを所定の割合で混合することで(ステップ100)、吸着剤を含有した希釈液を準備してもよい。
そして、準備した希釈液を用いて検体をストマッキング処理すると共に、所定の濃度に希釈することで、検体液を調製する(ステップ102)。この処理により、検体内の細菌が検体液中に抽出される。これに伴って、検体に含まれた硫黄化合物も希釈液へと拡散するが、それらは希釈液中でコバルトフタロシアニンテトラカルボン酸に吸着される。硫黄化合物は、吸着剤に吸着されるとその静菌作用を失う。
続いて従来の酸素電極法と同様に細菌数の測定を行う。具体的には次のように行う。まず、生理食塩水などの液体培地に検体液を添加し(ステップ103)、それを内側に酸素電極を有する測定用セルに注入する(ステップ104)。そして、当該測定用セルを測定装置にセットする。その後、細菌数の測定を開始する(ステップ105)。
測定時において測定用セルの酸素電極は、液体培地中の溶存酸素濃度を出力電流に変換する。出力電流は、液体培地中で培養される細菌などの微生物の代謝に伴って変動する可測定量と把握できる。そして測定装置は、当該出力電流の経時変化を検出することにより、液体培地中に含まれていた細菌の初期菌数を測定する。
上述した微生物数測定方法によれば、検体に含まれる硫黄化合物がコバルトフタロシアニンテトラカルボン酸に吸着されるので、当該硫黄化合物が及ぼす酸素電極法による細菌数の測定への影響が低減される。具体的には、細菌の増殖または代謝が抑制されることによって測定時間が長期化することを防止したり、初期菌数の算出不能を回避する。
本実施の形態において酸素電極法による微生物数測定の際に用いた液体培地には、硫黄化合物を吸着する吸着剤を含有させておいてもよい。この場合、吸着剤に吸着されずにいる硫黄化合物の存在率がより低下するので、硫黄化合物が及ぼす酸素電極法による細菌数の測定への影響がより低減される。
なお本実施の形態においては、予め準備した吸着剤を含有する希釈液(ステップ100,101)を用いて検体液の調製を行ったが、例えば、吸着剤を含まない通常の希釈液と吸着剤の溶液とを準備して、検体液の調整(ステップ102)の際に、それら各々を検体に添加してもよい。
また、希釈液への吸着剤の添加は、検体を希釈する前でも後でもよい。いずれの場合においても微生物数測定(ステップ105)の際には、検体が添加された液体培地に吸着剤が含まれる結果となる。
第2の実施の形態.
第2の実施の形態にかかる微生物数測定方法について、図2で示されるフローチャートに従って説明する。本実施の形態における当該微生物数測定の対象は、第1の実施の形態と同様である。従って、静菌作用を有する成分として硫黄化合物が採用され、それを吸着する吸着剤としてコバルトフタロシアニンテトラカルボン酸が採用される。
第2の実施の形態にかかる微生物数測定方法について、図2で示されるフローチャートに従って説明する。本実施の形態における当該微生物数測定の対象は、第1の実施の形態と同様である。従って、静菌作用を有する成分として硫黄化合物が採用され、それを吸着する吸着剤としてコバルトフタロシアニンテトラカルボン酸が採用される。
まず、希釈液を用いて検体をストマッキング処理すると共に、所定の濃度に希釈することで、検体液を調製する(ステップ201)。この処理により、検体中の細菌が検体液中に抽出される。これに伴って、検体に含まれた硫黄化合物も検体液中へと拡散する。
そして、コバルトフタロシアニンテトラカルボン酸を含有する液体培地を準備する。例えば、吸着剤を含まない液体培地(例えば生理食塩水)と、コバルトフタロシアニンテトラカルボン酸の溶液とを所定の割合で混合することで(ステップ200)、吸着剤を含有した液体培地を準備してもよい。
そして、ステップ200で準備した液体培地に、調製した検体液を添加する(ステップ202)。このとき、硫黄化合物は液体培地中へと拡散するが、それらはコバルトフタロシアニンテトラカルボン酸に吸着され、その静菌作用を失う。
次いで、検体液を添加した液体培地を、内側に酸素電極を有する測定用セルに注入し(ステップ203)、当該測定用セルを測定装置にセットする。以降の操作は、第1の実施の形態のステップ105と同様に、測定を行う(ステップ204)。これにより、液体培地中に含まれていた細菌の初期菌数を測定する。
本実施の形態にかかる微生物数測定方法によれば、第1の実施の形態で示された微生物数測定方法によって得られる効果と同様の効果が得られる。
本実施の形態においてストマッキング処理する際に用いた希釈液には、硫黄化合物を吸着する吸着剤を含有させておいてもよい。この場合、吸着剤に吸着されずにいる硫黄化合物の存在率がより低下するので、硫黄化合物が及ぼす酸素電極法による細菌数の測定への影響がより低減される。
なお本実施の形態においては、予め準備した吸着剤を含有する液体培地(ステップ200)に検体液を添加した(ステップ202)が、例えば、吸着剤を含まない通常の液体培地と吸着剤の溶液とを個別に準備して、検体液並びに吸着剤の溶液を順次液体培地に添加してもよい。液体培地に吸着剤を添加するのは、検体を添加する前でも後でもよい。いずれの場合においても微生物数測定(ステップ204)の際には、検体が添加された液体培地に吸着剤が含まれる結果となる。
上述したいずれの実施の形態においても、微生物数測定の際に酸素電極法を採用する場合には、硫黄化合物の影響により酸素電極の出力電流、すなわち可測定量が低下することを防止できる。つまり、微生物数測定への影響が低減される。従って、硫黄化合物を含むために測定が困難であった検体に対しても、酸素電極法を用いた測定を容易に行うことができる。
可測定量が低下するという現象は、酸素電極法の測定電流を下げるという硫黄化合物の作用に起因しているものと考えられ、酸素飽和状態であるにも関わらず生じる。
このような現象は、ポリフェノールを含有した検体について酸素電極法による微生物数測定を行う場合にも見られる。ポリフェノールには例えばカテキンが含まれる。
この場合にも、ポリフェノールを吸着剤で吸着することで、ポリフェノールの影響により酸素電極の出力電流、すなわち可測定量が低下することを防止できる。ポリフェノールを吸着する吸着剤には、例えばポリビニルピロリドン(PVP)、ポリビニルポリピロリドン(PVPP)、イオン交換樹脂、牛血清アルブミン(BSA)及びイソアスコルビン酸ナトリウムの少なくとも一つが採用できる。これらの吸着剤がポリフェノールを吸着することについては、例えば上記非特許文献1に紹介されている。
以上の実施の形態においては、酸素電極法による微生物数測定に本発明を適用した例を示した。しかし、本発明の適用はそれに限定されず、培地(希釈液を含む)を使用するあらゆる微生物数測定の手法、例えば迅速測定法や寒天培養法に広く適用可能できる。
第3の実施の形態.
第3の実施の形態にかかる微生物数測定方法について説明する。当該微生物数測定の対象である検体には、微生物の代謝に伴って変動する可測定量を低下させる成分が含まれた食材などが採用される。具体的には緑茶などであって、それらには当該成分としてカテキンなどのポリフェノールが含有される。また、本実施の形態では微生物数測定に酸素電極法が適用されるので、可測定量には、液体培地中の溶存酸素濃度に対応して変化する出力電流が採用される。
第3の実施の形態にかかる微生物数測定方法について説明する。当該微生物数測定の対象である検体には、微生物の代謝に伴って変動する可測定量を低下させる成分が含まれた食材などが採用される。具体的には緑茶などであって、それらには当該成分としてカテキンなどのポリフェノールが含有される。また、本実施の形態では微生物数測定に酸素電極法が適用されるので、可測定量には、液体培地中の溶存酸素濃度に対応して変化する出力電流が採用される。
図3は、本実施の形態にかかる微生物数測定に用いられる酸素電極法による測定装置のうち、測定用セル103を概念的に示す。測定用セル103は内側に、酸素電極101,102と、半透膜3とを有する。
酸素電極101,102は、一方が作用極であって、他方が対極であって、後述するチューブ状の半透膜3の外側に位置する。そして測定時において液体培地中の溶存酸素濃度を電流に変換して出力する。
酸素電極101,102に接続された測定装置103は、出力電流の経時変化を検出することにより、液体培地中に含まれていた微生物の初期微生物数を測定する。
半透膜3は、例えば一端が開閉可能なチューブであって、その一端からチューブの内側に検体液1が注入される。検体液1は、例えば第1の実施の形態と同様にして、希釈液を用いて検体をストマッキング処理して得られる。検体液1中には、検体内の微生物が抽出され、かつポリフェノールが拡散する。
測定用セル103内には、チューブ状の半透膜3のうち検体液1で満たされた部分の少なくとも一部と酸素電極101,102とをそれぞれ浸すように、液体培地2が注入される。液体培地2には栄養成分及び酸素が含まれる。
そして半透膜3は、液体培地2中の栄養成分及び酸素を透過させるが、検体液1中のポリフェノールの透過を妨げる。かかる半透膜3として透析用チューブ、例えばフナコシ株式会社製のスペクトラ/ポアCE透析用チューブを採用することができる。透析用チューブは、そのMWCO(Molecular Weight Cut Off:分画分子量)として100を採用することにより、分子量が100より大きい分子の透過を妨げる。例えば、ポリフェノールの例であるカテキンは、その分子量が290であるので、当該透析用チューブを透過することができない。一方、酸素分子は、その分子量が32であるので、当該透析用チューブを透過することができる。
このような測定用セル103を有する測定装置で微生物数を測定した場合、次のように把握することができる。つまり、半透膜3を介して液体培地2の栄養成分及び酸素を検体液1へと浸透させて、可測定量である出力電流を培地側で測定して、微生物数の初期微生物を求める。
本実施の形態にかかる微生物数測定方法によれば、酸素電極101,102とポリフェノールとの接触がほとんどないため、ポリフェノールが及ぼす出力電流への影響が低減される。具体的には、出力電流の低下が低減され、以って初期微生物数の算出不能が回避される。
図4は、酸素電極法による微生物数測定において出力電流を測定した結果を、半透膜3のある場合とない場合のそれぞれについて示す。ここでは、半透膜3としてMWCOが100である上記透析用チューブを、ポリフェノールとしてカテキンをそれぞれ採用している。破線で示されるグラフは、半透膜のない従来の微生物数測定方法による測定結果を表す。実線で示されるグラフは、半透膜を適用した本発明にかかる微生物数測定方法による測定結果を表す。
この測定結果によれば、測定開始後200分までは半透膜の有無による顕著な違いが見られない場合もあるものの、200分以降においては半透膜が適用された場合において出力電流の低下が低減されている。よって、初期微生物数の算出が容易である。
本実施の形態にかかる微生物数測定方法は、検体液1中に硫黄化合物が含まれる場合にも適用できる。硫黄化合物は、第2の実施の形態でも述べたように可測定量である出力電流を低下させる。硫黄化合物である硫化アリルは、分子量が114であるので、半透膜3に例えば上記透析用チューブMWCO100を採用することで、硫化アリルの液体培地側への透過が妨げられる。
よって、酸素電極101,102と硫黄化合物との接触がほとんどないため、硫黄化合物が及ぼす出力電流への影響が低減される。具体的には、出力電流の低下が低減され、以って初期微生物数の算出不能が回避される。
第1及び第2の実施の形態の実施例として、本発明に係る微生物数測定の具体的な実験結果を示す。本実験では、検体として硫黄化合物を成分に含む代表的な食材である玉ネギ、乾燥ネギ、白ネギ、万能ネギ、チーズを選択し、それぞれの検体に対して酸素電極法により細菌数の測定を行なった。また、硫黄化合物を吸着する吸着剤としてはコバルトフタロシアニンテトラカルボン酸を使用した。吸着剤の添加量は、検体が玉ネギ、乾燥ネギ、白ネギ、万能ネギのケースでは1測定用セル(検体液1ml)当たり500μgとし、検体がチーズのケースでは1測定用セル(検体液1ml)当たり1mgとした。
図5〜図9にそれぞれの測定時間の経過に伴う酸素電極の出力電流の変化を示す。図5は玉ネギ、図6は乾燥ネギ、図7は白ネギ、図8は万能ネギ、図9はチーズについてそれぞれ測定結果を示す。そして各図(a)には、検体が添加された培地が吸着剤を含まない従来の細菌数測定方法による測定結果が示されている。また図(b)には、検体が添加された培地に硫黄化合物を吸着する吸着剤が含まれる、本発明に係る微生物数測定方法による測定結果が示されている。
各図では、初期菌数が105CFU/gである検体液について2回測定した結果と、初期菌数が103CFU/gである検体液について2回測定した結果とがそれぞれ示されている。そして、初期菌数が105CFU/gである検体液に対する測定結果が実線のグラフで示され、初期菌数が103CFU/gである検体液に対する測定結果が破線のグラフで示される。また、酸素電極の出力電流が充分減少するまでの所要時間を測定するためのしきい値Ithを300nAとした。
以下では測定結果に基づいて、吸着剤の効果である静菌作用の抑制と可測定量値の低下の防止について説明する。
<静菌作用の抑制>
図5〜図7の各々に示される測定結果によれば、培地が吸着剤を含む場合(図5(b)〜図7(b))には、それを含まない場合(図5(a)〜図7(a))よりも電流がしきい値Ithに達するまでの所要時間が短くなった。換言すれば、吸着剤によって測定時間の長期化が防止された。これは、培地が吸着剤を含む場合は硫黄化合物の静菌作用が抑制されるので、培地が吸着剤を含まない場合よりも細菌の増殖または代謝の抑制が回避され、酸素の消費量が多くなった為と考えられる。
図5〜図7の各々に示される測定結果によれば、培地が吸着剤を含む場合(図5(b)〜図7(b))には、それを含まない場合(図5(a)〜図7(a))よりも電流がしきい値Ithに達するまでの所要時間が短くなった。換言すれば、吸着剤によって測定時間の長期化が防止された。これは、培地が吸着剤を含む場合は硫黄化合物の静菌作用が抑制されるので、培地が吸着剤を含まない場合よりも細菌の増殖または代謝の抑制が回避され、酸素の消費量が多くなった為と考えられる。
<可測定量値の低下の防止>
図5(a)および図7(a)で示される測定結果によれば、測定開始から出力電流の時間変化率がほぼ一定になるまでの間に、出力電流がしきい値Ithに達しないまでも、しきい値Ith近傍にまで著しく低下する。
図5(a)および図7(a)で示される測定結果によれば、測定開始から出力電流の時間変化率がほぼ一定になるまでの間に、出力電流がしきい値Ithに達しないまでも、しきい値Ith近傍にまで著しく低下する。
また、図8(a)および図9(a)で示される測定結果によれば、出力電流の時間変化率がほぼ一定になる前に、出力電流が著しく低下してしきい値Ithに到達している。この場合、初期菌数が105CFU/g、103CFU/gであるグラフの各々から得られる所要時間がほぼ等しくなっており、当該所要時間から細菌数を算出することは非常に困難である。
そこで、吸着剤を添加した培地を用いることで、図5(b)、図7(b)、図8(b)および図9(b)で示されるように出力電流の低下が低減される。これは、酸素飽和状態において、硫黄化合物が出力電流を低下する現象が抑制された為と考えられる。特に図8(b)および図9(b)では、出力電流の低下が低減されることで、初期菌数が105CFU/g、103CFU/gであるグラフの各々から得られる所要時間に差異が生じた。よって、当該所要時間から細菌数を算出することが容易に行える。
1 検体液
2 液体培地
3 半透膜
2 液体培地
3 半透膜
Claims (10)
- 検体に含まれる微生物の個体数である微生物数を測定する方法であって、
(a)前記検体を培地に添加する工程と、
(b)前記培地中で培養される前記微生物の代謝にともなって変動する可測定量を測定して、前記工程(a)で添加された前記検体に含まれる前記微生物数を求める工程と
を備え、
前記検体は、所定の成分を含有し、
前記工程(b)が実行される際の前記培地には吸着剤が含まれ、
前記所定の成分は前記吸着剤に吸着され、前記工程(b)で測定される前記可測定量の値を低下させる、微生物数測定方法。 - 前記工程(a)において前記検体は、前記吸着剤が含まれる希釈液で希釈されてから前記培地に添加される、請求項1記載の微生物数測定方法。
- 前記工程(a)が実行される際の前記培地には前記吸着剤が含まれる、請求項1又は請求項2記載の微生物数測定方法。
- 前記可測定量は、前記培地中を、それに含まれる酸素量に応じて流れる電流である、請求項1乃至請求項3のいずれか一つに記載の微生物数測定方法。
- 前記所定の成分はポリフェノールである、請求項4記載の微生物数測定方法。
- 前記吸着剤は、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリビニルポリピロリドン(PVPP)、イオン交換樹脂、牛血清アルブミン(BSA)及びイソアスコルビン酸ナトリウムの少なくともいずれか一つである、請求項5記載の微生物数測定方法。
- 前記所定の成分は硫黄化合物である、請求項4記載の微生物数測定方法。
- 前記吸着剤はコバルトフタロシアニンテトラカルボン酸である、請求項7記載の微生物数測定方法。
- 請求項1乃至請求項8のいずれか一つに記載の微生物数測定方法に使用する培地であって、前記所定の成分を吸着する前記吸着剤を含む、微生物実験用培地。
- 前記培地が液体であることを特徴とする、請求項9記載の微生物実験用培地。
Priority Applications (1)
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---|---|---|---|
JP2006338530A JP2007068547A (ja) | 2003-12-01 | 2006-12-15 | 微生物数測定方法及び微生物実験用培地 |
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JP (1) | JP2007068547A (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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WO2023054908A1 (ko) * | 2021-09-28 | 2023-04-06 | 주식회사 엘지화학 | 미생물 배양 농도 예측 방법 및 시스템 |
-
2006
- 2006-12-15 JP JP2006338530A patent/JP2007068547A/ja active Pending
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WO2023054908A1 (ko) * | 2021-09-28 | 2023-04-06 | 주식회사 엘지화학 | 미생물 배양 농도 예측 방법 및 시스템 |
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