JP2007031620A - 有機化合物およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】有機高分子化合物およびシクロデキストリンの優れた特性を併せ持つ有機化合物およびそれを効率良く製造できる製造方法の提供。
【解決手段】シクロデキストリンの水酸基のうち1または複数がヘテロ環式化合物開環重合体の末端と縮合し、前記開環重合体の他端が置換基 -SO2Raで置換されている。この化合物は、有機高分子化合物およびシクロデキストリンの優れた特性を併せ持ち、種々の新しい用途に適用できる。製造するには、シクロデキストリンの水酸基のうち少なくとも一つの水素原子が置換基 -SO2Raで置換されたスルホン酸エステルおよびヘテロ環式化合物を含む原料組成物を加熱して簡便にかつ効率良く製造できる。さらに、末端基の変換反応により種々の置換基を導入し、より多様な用途への応用も可能である。
【選択図】なし
【解決手段】シクロデキストリンの水酸基のうち1または複数がヘテロ環式化合物開環重合体の末端と縮合し、前記開環重合体の他端が置換基 -SO2Raで置換されている。この化合物は、有機高分子化合物およびシクロデキストリンの優れた特性を併せ持ち、種々の新しい用途に適用できる。製造するには、シクロデキストリンの水酸基のうち少なくとも一つの水素原子が置換基 -SO2Raで置換されたスルホン酸エステルおよびヘテロ環式化合物を含む原料組成物を加熱して簡便にかつ効率良く製造できる。さらに、末端基の変換反応により種々の置換基を導入し、より多様な用途への応用も可能である。
【選択図】なし
Description
本発明は、有機化合物およびその製造方法に関する。
有機高分子化合物は、現代社会において各種工業材料等に欠かせない物質である。特に、近年、自然環境への配慮の観点から、生分解性ポリマーが注目されている。この生分解性ポリマーとしては多種多様なものがあるが、例えばポリ乳酸等のポリエステルが挙げられ、さらに、γ−ブチロラクトン、δ−バレロラクトン、ε−カプロラクトン等を開環重合して得られるポリエステルも挙げられる。
最近の有機高分子化合物の製造方法として、シクロデキストリンとヘテロ環式化合物とを含む組成物を加熱する製造方法がある(特許文献1、非特許文献1および非特許文献2等)。この製造方法は、重金属触媒等の含金属物質を重合開始剤として使用する必要がなく、簡便かつ低コストに有機高分子化合物を製造することが可能である。そして、この製造方法により製造される有機高分子化合物は、重金属触媒等に由来する有毒な金属元素等を含まないため、自然環境に対する悪影響が低減されているという利点がある。
一方、シクロデキストリンは、その特異な機能性から、食品、医薬品、化粧品、各種工業用品および農業用品等の種々の用途に使用されている物質である。特に、優れた機能を有することに加え、人体に対し無害であるため、食品、医薬品、化粧品等の添加物として頻繁に用いられている。近年は、シクロデキストリンの大量生産および低価格化が可能になり、その機能の研究もさらに発展しつつある。これにより、シクロデキストリンは、ますます多様な用途に用いられており、産業上極めて重要な物質となっている。
シクロデキストリンの多様な機能および用途のうち一部を、以下に例示する。すなわち、まず、種々のゲスト物質を環状構造の内部に包接し得ることにより、例えば、食品中に含まれる異味異臭物質をシクロデキストリン内部に包接させ、異味異臭を除去する(マスキング)こともできる。また、例えば、ワサビの香り成分等の揮発性物質を包接させることで揮発を抑制することや、分解しやすい物質を包接させて安定化することもできる。さらに、薬理成分、香料等をあらかじめ包接させておき、徐々に放出させる(徐放)こともできる。そして、シクロデキストリン環状構造の外側が親水性であり内側が疎水性である性質を利用し、水難溶性物質を包接させて水に溶かすこともできる。その他、包接能を利用した洗浄効果、粘度調整、バイオアベイラビリティーの向上等、その多様な機能を利用した種々の用途がある。
このように、有機高分子化合物およびシクロデキストリンは、いずれも、優れた特性を有し、産業上有用な物質である。これら両者の優れた特性を併せ持つ有機化合物を効率良く製造できれば、産業上の多様な分野において多大な貢献が期待できる。
特開2005−120263号公報
Takashima, Y.; Kawaguchi, Y.; Nakagawa, S.; Harada, A. Chem. Lett., 2003, 32, 1122-1123.
Takashima, Y.; Osaki, M.; Harada, A. J. Am. Chem. Soc. 2004, 126(42), 13588-13589.
したがって、本発明は、有機高分子化合物およびシクロデキストリンの優れた特性を併せ持つ有機化合物およびそれを効率良く製造できる製造方法を提供することを目的とする。
前記課題を解決するために、本発明の有機化合物(シクロデキストリン誘導体)は、シクロデキストリンの水酸基のうち1または複数がヘテロ環式化合物開環重合体の末端と縮合した構造を有し、前記ヘテロ環式化合物開環重合体の他端が置換基 -SO2Ra(Raは、芳香環または脂肪族炭化水素基であり、1または複数の置換基でさらに置換されていても良く、置換されていなくても良く、Raは、複数の場合は同一でも異なっていても良い)で置換されている有機化合物である。
また、本発明の製造方法は、有機化合物の製造方法であって、シクロデキストリンスルホン酸エステルおよびヘテロ環式化合物を含む原料組成物を加熱する工程を含み、前記シクロデキストリンスルホン酸エステルは、シクロデキストリンの水酸基のうち少なくとも一つの水素原子が置換基 -SO2Ra(Raは、芳香環または脂肪族炭化水素基であり、1または複数の置換基でさらに置換されていても良く、置換されていなくても良く、Raは、複数の場合は同一でも異なっていても良い)で置換されたスルホン酸エステルである。
本発明の有機化合物は、前記の構造を有することにより、有機高分子化合物およびシクロデキストリンの優れた特性を併せ持つ。また、本発明の有機化合物は、前記本発明の製造方法により効率良く製造することができる。また、本発明の製造方法によれば、例えば、後述するように、金属元素を使用することなく本発明の有機化合物を製造することもでき、その製造効率にも優れる。
以下、本発明についてさらに具体的に説明する。
[本発明の有機化合物]
まず、前記本発明の有機化合物について説明する。
まず、前記本発明の有機化合物について説明する。
本発明の有機化合物(本発明のシクロデキストリン誘導体)は、シクロデキストリンの水酸基のうち1または複数がヘテロ環式化合物開環重合体の末端と縮合した構造を有することで、有機高分子化合物およびシクロデキストリンの優れた特性を併せ持つ。これにより、従来技術において有機高分子化合物およびシクロデキストリンが有していた問題点を改善することができる。
例えば、従来技術においては、シクロデキストリンは、水には容易に溶けるが、エタノール、メタノール等の限られた溶媒以外の有機溶媒に対しては難溶性であるという難点があった。しかし、本発明の有機化合物は、前記ヘテロ環式化合物開環重合体部分の構造や重合度を適切に調整することで、有機溶媒に溶かすことができる。これにより、従来はシクロデキストリンを利用しにくかった技術分野、例えばプラスチック工業等においても、前述のようなシクロデキストリンの機能を活用できるようになる。例えば、本発明の有機化合物を他のポリマーと混合してプラスチックを製造することにより、プラスチックに、前述のようなシクロデキストリンの機能、例えば消臭機能等を付与することもできる。
また、本発明の有機化合物は、前記ヘテロ環式化合物開環重合体部分の重合度によっては、末端にシクロデキストリンが付加した有機高分子化合物として使用できる。例えば、本発明の有機化合物を素材として従来の有機高分子化合物と同様に製品を製造すれば、従来の製品にシクロデキストリンの機能を付与した製品とすることもできる。さらに、有機高分子化合物の末端にシクロデキストリンが付加していることにより、親水性が向上した有機高分子化合物となり、従来の有機高分子化合物よりも加工しやすくなることも期待できる。
本発明の有機化合物の親水性、疎水性等の物性は、前記ヘテロ環式化合物開環重合体部分の重合度や繰り返し単位構造(モノマー構造)等により調整することができる。例えば、前記ヘテロ環式化合物開環重合体部分の疎水性が高い場合は、重合度を高くすれば本発明の有機化合物の疎水性が高くなり、重合度を低くすれば親水性が高くなる。前記重合度は、特に限定されないが、MALDI-TOF MSおよびGPCを併用した分子量測定法から算出される平均重合度で、例えば1〜1,000、好ましくは1〜500、より好ましくは1〜200である。また、前記ヘテロ環式化合物重合体部分を構成するヘテロ環式化合物(モノマー)の種類を適宜選択することによっても、親水性、疎水性等の物性を調整することが可能である。なお、本発明の有機化合物の分子量は、特に限定されないが、例えば、前記測定法により測定された数平均分子量で、1,000〜50,000、好ましくは1,000〜25,000、より好ましくは1,000〜10,000である。
なお、本発明の有機化合物において、シクロデキストリン水酸基に縮合した前記ヘテロ環式化合物開環重合体部分は、前述の通り1つでも良いし複数でも良い。例えば、前記ヘテロ環式化合物開環重合体部分が1つであれば、シクロデキストリン部分の包接能を阻害することがほとんどない等の利点がある。また、前記ヘテロ環式化合物開環重合体部分が複数であれば、シクロデキストリンを中心として前記ヘテロ環式化合物開環重合体部分が枝分かれした特徴的な構造となる。これにより、従来のヘテロ環式化合物開環重合体と大きく異なる特異的な物性を示し、従来技術と全く異なる用途や効果を発揮することも期待できる。
本発明の有機化合物は、前述の通り、前記ヘテロ環式化合物開環重合体の末端がシクロデキストリン水酸基と縮合しているが、さらに、前記ヘテロ環式化合物開環重合体の他端が置換基 -SO2Raで置換されているという特徴的な構造を有する。Raの定義は前述の通りである。この特徴的構造を有することで、本発明の有機化合物は、前記置換基 -SO2Raのさらなる変換反応により種々の置換基を導入することができる。例えば、本発明の有機化合物は、前記1または複数の-SO2Raに代えて、アミノ基等の置換基を有する有機化合物であっても良い。また、例えば、前記置換基 -SO2Raの変換反応により、さらに別の任意の構造を有する高分子鎖を付加させることもできる。これにより、例えば、ロタキサン製造等に利用したり、ロタキサン構造を保持したまま軸部分を伸長させたりすることも可能である。
前述の通り、前記ヘテロ環式化合物開環重合体部分は1つでも複数でも良いため、その端に結合した前記置換基 -SO2Raも、1つでも複数でも良い。前記1または複数のRaは、好ましくは、それぞれ、芳香環(炭素数1〜18のアルキル基でさらに置換されていても良い)、または炭素数1〜18のアルキル基である。前記1または複数のRaは、より好ましくは、それぞれ、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基(炭素数1〜18のアルキル基でさらに置換されていても良い)、または炭素数1〜18のアルキル基である。そして、前記1または複数の-SO2Raが、それぞれ、p-トルエンスルホニル基(トシル基)、メチルスルホニル基(メシル基)、1−ナフチルスルホニル基または2−ナフチルスルホニル基であることがさらに好ましい。
前記シクロデキストリン部分の構造も特に限定されないが、例えば、目的とする包接能等に応じた適切なサイズを有することが好ましい。前記シクロデキストリン部分は、より具体的には、例えば、α−シクロデキストリン構造、β−シクロデキストリン構造、またはγ−シクロデキストリン構造を有することが好ましい。
本発明の有機化合物において、前記シクロデキストリン部分の水酸基のうち、前記ヘテロ環式化合物開環重合体末端と縮合した水酸基以外の水酸基は、水素原子が置換基で置換されていても良いし、置換されていなくても良い。置換されている場合は、例えば、前記ヘテロ環式化合物開環重合体末端と縮合した水酸基以外の水酸基の1または複数の水素原子が置換基Yで置換され、前記置換基Yが、アルキル基、ヒドロキシアルキル基、ジヒドロキシアルキル基、ヒドロキシアリール基、カルボキシアルキル基、カルボキシアリール基、アシル基、グリコシル基、マルトシル基、スルホ基(-SO3H)、ホスホノ基(-PO3H2)、イミダゾール環を含む基、およびヒドロキシアミノ基からなる群から選択される少なくとも一つであることが好ましい。前記イミダゾール環を含む基としては、例えば、イミダゾール、メチルイミダゾール、ヒスタミン等から誘導される基が挙げられる。前記1または複数の置換基Yは、より好ましくは、それぞれ、炭素数1〜18の直鎖または分枝アルキル基、炭素数1〜18の直鎖または分枝ヒドロキシアルキル基、炭素数1〜18の直鎖または分枝ジヒドロキシアルキル基、炭素数6〜18のヒドロキシアリール基、炭素数2〜18の直鎖または分枝カルボキシアルキル基、炭素数7〜18のカルボキシアリール基、炭素数1〜18のアシル基(ただし、直鎖状でも分枝状でも環状構造を含んでいても良く、飽和でも不飽和でも良い)、グリコシル基、マルトシル基、スルホ基(-SO3H)、ホスホノ基(-PO3H2)、1−イミダゾリル基、2−イミダゾリル基、4−イミダゾリル基、(1−イミダゾリル)メチル基、(2−イミダゾリル)メチル基、(4−イミダゾリル)メチル基、[2−(4−イミダゾリル)エチル]アミノ基、またはヒドロキシアミノ基である。
なお、本発明では、アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基等が挙げられ、ヒドロキシアルキル基としては、例えば、ヒドロキシメチル基、2−ヒドロキシエチル基、2−ヒドロキシプロピル基、3−ヒドロキシプロピル基、2−ヒドロキシブチル基、3−ヒドロキシブチル基、4−ヒドロキシブチル基、2−ヒドロキシペンチル基、3−ヒドロキシペンチル基、4−ヒドロキシペンチル基、5−ヒドロキシペンチル基、2−ヒドロキシヘキシル基、3−ヒドロキシヘキシル基、4−ヒドロキシヘキシル基、5−ヒドロキシヘキシル基、6−ヒドロキシヘキシル基等が挙げられ、ジヒドロキシアルキル基としては、例えば、2,3−ジヒドロキシプロピル基、2,3−ジヒドロキシブチル基、3,4−ジヒドロキシブチル基、2,4−ジヒドロキシブチル基、2,3−ジヒドロキシペンチル基、3,4−ジヒドロキシペンチル基、4,5−ジヒドロキシペンチル基、3,5−ジヒドロキシペンチル基、2,5−ジヒドロキシペンチル基、2,3−ジヒドロキシヘキシル基、2,4−ジヒドロキシヘキシル基、2,5−ジヒドロキシヘキシル基、3,4−ジヒドロキシヘキシル基、3,5−ジヒドロキシヘキシル基、4,5−ジヒドロキシヘキシル基、3,6−ジヒドロキシヘキシル基、5,6−ジヒドロキシヘキシル基等が挙げられ、ヒドロキシアリール基としては、例えばヒドロキシフェニル基等が挙げられ、カルボキシアルキル基としては、例えば、カルボキシメチル基、カルボキシエチル基、カルボキシプロピル基、カルボキシブチル基、カルボキシペンチル基、カルボキシヘキシル基等が挙げられ、カルボキシアリール基としては、例えばカルボキシフェニル基等が挙げられ、アシル基としては、例えば、アセチル基、エタノイル基、プロパノイル基、ブタノイル基、ペンタノイル基、ヘキサノイル基、ベンゾイル基等が挙げられる。
本発明の有機化合物において、前記ヘテロ環式化合物開環重合体は、特に限定されないが、例えば、ラクトン、α−ヒドロキシ酸脱水物、ラクタム、環状炭酸エステル、環状酸無水物、N−カルボキシ−α−アミノ酸無水物(NCA)、N置換NCA、オキシラン、チイラン、環状シロキサン、環状ジシラン、環状カーボネート、オキサゾールおよびその誘導体、オキサゾリンおよびその誘導体、チオラクトン、環状エーテル、ならびに環状チオエーテルからなる群から選択される少なくとも一種類の開環重合体であることが好ましい。また、例えば、前記ヘテロ環式化合物開環重合体が生分解性を有することが好ましい。シクロデキストリンは生分解性を有するため、前記ヘテロ環式化合物開環重合体が生分解性であれば、本発明の有機化合物分子の全体が生分解性となり、環境に与える影響が抑えられるからである。また、前記ヘテロ環式化合物開環重合体は、一種類のヘテロ環式化合物の単独重合体であっても良いが、二種類以上のヘテロ環式化合物の共重合体であっても良い。
前記ヘテロ環式化合物開環重合体は、下記式のいずれかで表される化合物のうち少なくとも一種類の開環重合体であることがより好ましい。
式中、Rは、水素原子または炭素数1〜18の直鎖もしくは分枝アルキル基であり、複数の場合は同一でも異なっていても良い。また、前記ヘテロ環式化合物開環重合体は、β−プロピオラクトン、β−ブチロラクトン、γ−ブチロラクトン、δ−バレロラクトン、ε−カプロラクトン、β−プロピオラクタム、γ−ブチロラクタム、δ−バレロラクタム、ε−カプロラクタム、L−ラクチド、D,L−ラクチド、N−カルボキシサルコシン無水物、オキサゾール、オキサゾリン、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ネオペンチレンカーボネート、5−メチル−1,3−ジオキサン−2−オン、ピバロラクトン、およびγ−ノナノイック−ラクトンからなる群から選択される少なくとも一種類の開環重合体であることが特に好ましい。
本発明の有機化合物は、前述の通り、従来のシクロデキストリンまたは有機高分子化合物と同様の用途に用いることもできるし、全く新しい用途に用いることもできる。例えば、本発明の製品は、本発明の有機化合物を用いて製造される製品であり、酸化防止剤、安定剤、徐放剤、マスキング剤、可溶化剤、洗浄剤、粘度調整剤、揮発防止剤、吸湿性改善剤、食品、医薬品、化学製品、化粧品、樹脂、繊維、フィルム、または建材である。一例としては、例えば、前述の通り、有機溶媒に可溶な本発明の有機化合物を他のポリマーと混合してプラスチックを製造することも可能である。そして、それを例えば繊維化することにより、シクロデキストリンの機能、例えば消臭機能等を付与した繊維とすることもできる。しかし、本発明の有機化合物の用途はこれらに限定されず、あらゆる用途が可能である。
なお、本発明の有機化合物の製造方法は特に限定されないが、前記本発明の製造方法により製造すれば、低コストで製造できる等の利点がある。
[本発明の製造方法]
次に、前記本発明の製造方法について説明する。
次に、前記本発明の製造方法について説明する。
本発明の製造方法は、前述の通り、有機化合物の製造方法であって、シクロデキストリンスルホン酸エステルおよびヘテロ環式化合物を含む原料組成物を加熱する工程を含み、前記シクロデキストリンスルホン酸エステルは、シクロデキストリンの水酸基のうち少なくとも一つの水素原子が置換基 -SO2Ra(Raは、芳香環または脂肪族炭化水素基であり、1または複数の置換基でさらに置換されていても良く、置換されていなくても良く、Raは、複数の場合は同一でも異なっていても良い)で置換されたスルホン酸エステルである。
従来技術では、有機高分子化合物の製造には重金属触媒や無機塩基等の含金属物質を用いることが多く、前記生分解性ポリマーの場合も例外ではなかった。しかし、前記含金属物質に含まれる金属元素は、製造したポリマー中から完全に取り除くことは困難であり、この金属元素が自然環境に悪影響を及ぼすおそれがある。ポリマーが生分解性を有していれば廃棄しても自然環境を汚染しないという利点があるが、前記ポリマー中に、その製造工程に由来する金属元素が含まれているために、生分解性ポリマーであることの利点が損なわれている場合があった。特に、γ−ブチロラクトン、δ−バレロラクトン、ε−カプロラクトン等の開環重合には含金属物質を重合開始剤等として用いなければ反応が進行しないという問題があった。前記生分解性ポリマーに限らず、有機高分子化合物全般から製造工程に由来する有毒物質をなくすかまたは減少させれば、それだけ自然環境に及ぼす悪影響を低減することができると考えられる。
これに対し、本発明の製造方法は、有毒な金属元素等を用いなくても有機高分子化合物を製造できるため、自然環境に対する悪影響を低減させることが可能であり、特に生分解性ポリエステル等の生分解性ポリマーの製造に有効である。さらに、ヘテロ環式化合物と安価なシクロデキストリンスルホン酸エステルとを混合して低温で加熱するのみで有機高分子化合物を製造することもできるので、極めて簡便で低コストな製造も可能である。
さらに、本発明の製造方法は、シクロデキストリンに前記置換基 -SO2Raを導入したスルホン酸エステルを用いることで、例えば、高い反応効率、重合度の高い(すなわち分子量が大きい)有機化合物の生成等の効果が得られる。前記置換基 -SO2Raを導入することで高い反応効率、重合度の高い有機化合物の生成等の効果が得られることは、従来の化学理論からは予想されなかったことである。
本発明の製造方法は、例えば、無溶媒条件下、50℃程度の穏和な反応条件で反応を行っても、目的の有機化合物を良好な収率で得ることができる。また、このように反応効率が高いことにより、例えば高重合度の有機化合物を簡便に得ることも可能であるし、必要に応じ反応条件を適宜制御すれば、逆に重合度の低い有機化合物を得ることもできる。なお、本発明の製造方法は、無溶媒条件下のみならず、必要に応じて溶媒を適宜用いて行うことも可能である。
また、本発明の製造方法によれば、シクロデキストリンの水酸基にヘテロ環式化合物開環重合体が縮合し、さらにヘテロ環式化合物開環重合体末端が前記置換基 -SO2Raで置換された前記本発明の有機化合物を得ることができる。前記置換基 -SO2Raを有することの利点は前述の通りである。
本発明の製造方法において、前記1または複数のRaは、好ましくは、それぞれ、芳香環(炭素数1〜18のアルキル基でさらに置換されていても良い)、または炭素数1〜18のアルキル基である。また、前記1または複数のRaは、より好ましくは、それぞれ、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基(炭素数1〜18のアルキル基でさらに置換されていても良い)、または炭素数1〜18のアルキル基である。そして、前記1または複数の-SO2Raが、それぞれ、p-トルエンスルホニル基(トシル基)、メチルスルホニル基(メシル基)、1−ナフチルスルホニル基または2−ナフチルスルホニル基であることが特に好ましい。
前記シクロデキストリンスルホン酸エステルも特に限定されず、目的に応じて適切なサイズのものを用いれば良いが、例えば、α−シクロデキストリンスルホン酸エステル、β−シクロデキストリンスルホン酸エステル、およびγ−シクロデキストリンスルホン酸エステルのうち少なくとも一種類を含むことが好ましい。これらのスルホン酸エステルは、例えば、安価なα−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン、またはγ−シクロデキストリンを用いて簡便に得られるという利点がある。特に、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン、およびγ−シクロデキストリンの混合物は非常に安価であり、この混合物から得られたスルホン酸エステルを本発明の製造方法に用いれば、非常に低コストな製造も可能である。
なお、シクロデキストリンスルホン酸エステルの製造方法は特に限定されないが、一般的なスルホン酸エステルの製造方法に準じた方法で、例えばシクロデキストリンとスルホン酸ハライドを溶媒中で加熱する等の方法で簡便に製造することができる。例えば、トシル化シクロデキストリンについては、下記1)〜12)等の文献がある。これらの文献には、トシル化シクロデキストリンにおけるトシル基の導入位置および導入個数を、反応条件の適宜な設定により調整できることが記載されている。
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8) K. Hamasaki, A., Ueno, F. Toda, I. Suzuki, and T. Osa, Bull. Chem. Soc. Jpn., 67, 516 (1994)
9) R. Breslow and L. E. Overman, J. Am. Chem. Soc., 92, 1075 (1970)
10) Y. Iwakura, K. Uno, F. Toda, S. Onozuka, K. Hattori, and M. L. Bender, J. Am. Chem. Soc., 97, 4432 (1975)
11) K. Fujita, S. Nagamura, and T. Imoto, Tetrahedron Lett., 25, 5673 (1984)
12) A. Ueno and R. Bleslow, Tetrahedron Lett., 23, 3451 (1982)
本発明の製造方法では、前記シクロデキストリンスルホン酸エステルにおけるシクロデキストリン骨格の水酸基のうち、前記置換基 -SO2Raで置換された水酸基以外の水酸基は、その1または複数の水素原子が置換基で置換されていても良いし、置換されていなくても良い。置換されている場合は、例えば、前記置換基 -SO2Raで置換された水酸基以外の水酸基における1または複数の水素原子が置換基Yで置換され、前記置換基Yが、アルキル基、ヒドロキシアルキル基、ジヒドロキシアルキル基、ヒドロキシアリール基、カルボキシアルキル基、カルボキシアリール基、アシル基、グリコシル基、マルトシル基、スルホ基(-SO3H)、ホスホノ基(-PO3H2)、イミダゾール環を含む基、およびヒドロキシアミノ基からなる群から選択される少なくとも一つであることが好ましい。前記イミダゾール環を含む基としては、例えば、イミダゾール、メチルイミダゾール、ヒスタミン等から誘導される基が挙げられる。前記1または複数の置換基Yは、それぞれ、炭素数1〜18の直鎖または分枝アルキル基、炭素数1〜18の直鎖または分枝ヒドロキシアルキル基、炭素数1〜18の直鎖または分枝ジヒドロキシアルキル基、炭素数6〜18のヒドロキシアリール基、炭素数2〜18の直鎖または分枝カルボキシアルキル基、炭素数7〜18のカルボキシアリール基、炭素数1〜18のアシル基(ただし、直鎖状でも分枝状でも環状構造を含んでいても良く、飽和でも不飽和でも良い)、グリコシル基、マルトシル基、スルホ基(-SO3H)、ホスホノ基(-PO3H2)、1−イミダゾリル基、2−イミダゾリル基、4−イミダゾリル基、(1−イミダゾリル)メチル基、(2−イミダゾリル)メチル基、(4−イミダゾリル)メチル基、[2−(4−イミダゾリル)エチル]アミノ基、またはヒドロキシアミノ基であることがより好ましい。
本発明の製造方法において、前記ヘテロ環式化合物は、特に限定されず、単独で使用しても良いし、二種類以上のヘテロ環式化合物を併用しても良い。前記ヘテロ環式化合物は、例えば、ラクトン、α−ヒドロキシ酸脱水物、ラクタム、環状炭酸エステル、環状酸無水物、N−カルボキシ−α−アミノ酸無水物(NCA)、N置換NCA、オキシラン、チイラン、環状シロキサン、環状ジシラン、環状カーボネート、オキサゾールおよびその誘導体、オキサゾリンおよびその誘導体、チオラクトン、環状エーテル、ならびに環状チオエーテルからなる群から選択される少なくとも一種類を含むことが好ましい。例えば、製造される有機化合物は、ラクチドを用いれば、ポリ乳酸構造を含む有機化合物とすることもできるし、β−プロピオラクトン、β−ブチロラクトン、γ−ブチロラクトン、δ−バレロラクトン等を用いれば、各種生分解性ポリエステル構造を含む有機化合物とすることもできる。なお、「ラクチド」とは、α−ヒドロキシ酸二分子脱水物を総称する場合と、乳酸の二分子脱水物を指す場合とがあるが、本発明では後者である。
前記ヘテロ環式化合物は、下記式のいずれかで表される化合物のうち少なくとも一種類を含むことがより好ましい。
式中、Rは、水素原子または炭素数1〜18の直鎖もしくは分枝アルキル基であり、複数の場合は互いに同一でも異なっていても良い。また、前記ヘテロ環式化合物は、β−プロピオラクトン、β−ブチロラクトン、γ−ブチロラクトン、δ−バレロラクトン、ε−カプロラクトン、β−プロピオラクタム、γ−ブチロラクタム、δ−バレロラクタム、ε−カプロラクタム、L−ラクチド、D,L−ラクチド、N−カルボキシサルコシン無水物、オキサゾール、オキサゾリン、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ネオペンチレンカーボネート、5−メチル−1,3−ジオキサン−2−オン、ピバロラクトン、およびγ−ノナノイック−ラクトンからなる群から選択される少なくとも一種類を含むことが特に好ましい。
また、本発明の製造方法では、前記シクロデキストリンスルホン酸エステルの一部または全部が、ゲストを包接し、包接化合物を形成していても良いし、形成していなくても良い。すなわち、本発明の製造方法では、ゲストを含まない空のシクロデキストリンスルホン酸エステルのみを用いても良いし、ゲストを包接した包接化合物のみを用いても良く、包接化合物と空のものとを混合して用いても良い。前記包接化合物のゲストは特に限定されず、どのような物質でも良いが、有毒な重金属等を含まないゲストであることが好ましい。
すなわち、シクロデキストリンスルホン酸エステルおよびヘテロ環式化合物を含む前記原料組成物は、例えば、前記ヘテロ環式化合物が前記包接化合物のゲストを兼ね、前記原料組成物が前記包接化合物のみからなっていても良いし、そのような包接化合物にさらにヘテロ環式化合物を加えた原料組成物であっても良い。また、前記原料組成物は、シクロデキストリンスルホン酸エステル、ヘテロ環式化合物および前記ゲスト以外の物質を適宜含んでいても良いし、含んでいなくても良く、ゲストは前記の通りあってもなくても良い。
前記包接化合物のゲストは、前記の通り特に限定されずどのような物質でも良いが、例えば、γ−ブチロラクトン、δ−バレロラクトン、ε−カプロラクトン、オキサゾール、オキサゾリン、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ネオペンチレンカーボネート、5−メチル−1,3−ジオキサン−2−オン、ピバロラクトン、およびγ−ノナノイック−ラクトンからなる群から選択される少なくとも一種類を含むことが好ましい。
本発明の製造方法において、前記加熱温度は特に限定されず、反応速度や目的とする有機化合物の収率等を考慮して適宜決定すれば良いが、例えば0〜100℃、好ましくは30〜80℃、より好ましくは40〜60℃である。前記加熱温度は、前記シクロデキストリンスルホン酸エステルの熱分解を防止する観点からは、あまり高すぎないことが好ましい。また、前述の通り、本発明の製造方法は、反応効率に優れているので、低い加熱温度、例えば50℃程度でも十分な反応速度と収率を得ることができる。前記加熱時間は特に限定されず、有機化合物を高収率で得るためにはなるべく長時間加熱するのが良いが、製造効率との兼ね合い等の観点から、例えば1〜24時間、好ましくは1〜12時間、より好ましくは1〜6時間である。この加熱時間を適宜調整することで、前記ヘテロ環式化合物の重合度を調整し、それにより、得られる有機化合物の親水性、疎水性等を調整することもできる。また、加熱は、収率向上や副反応を抑える観点から、例えばアルゴンまたは窒素等の不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましいが、場合により大気中等で行っても良い。
従来の有機高分子化合物の製造方法、例えば金属触媒を用いた重合では、数百℃以上の高温で反応を行うことが一般的であった。しかし、本発明の製造方法では、前述の通り、従来の製造方法よりはるかに低い温度で反応させることもできる。低温で反応させた場合、安全性が高い、高温に加熱することに伴うコストを削減できる、得られる有機化合物の高熱による劣化を防止できるため品質が安定化する、等の利点がある。
前記原料組成物において、前記ヘテロ環式化合物と前記シクロデキストリンスルホン酸エステルの物質量比は特に限定されず、反応速度や有機高分子化合物の収率等を考慮して適宜決定すれば良い。例えば、前記ヘテロ環式化合物の全量が、前記シクロデキストリンスルホン酸エステルの全量に対し、モル数で1〜500倍の範囲であり、好ましくは1〜200倍、より好ましくは1〜100倍である。
本発明の製造方法では、前述の通り、シクロデキストリンスルホン酸エステル、ヘテロ環式化合物およびゲスト以外の物質を用いても良く、例えば、各種溶媒等を適宜加えても良い。前記溶媒は特に限定されないが、例えば、アセトニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル、ニトロメタン、ニトロベンゼン等のニトロ化溶媒、ベンゼン、トルエン等の炭化水素、ジクロロメタン、クロロホルム等のハロゲン化溶媒等が挙げられる。前記溶媒は、反応性等の観点から、例えば非プロトン性極性溶媒が好ましい。また、前記溶媒は、一種類のみ用いても二種類以上併用しても良い。
しかし、本発明の製造方法によれば、例えば、シクロデキストリンスルホン酸エステルとヘテロ環式化合物以外の物質を全く用いずに反応を行うことも可能であり、このようにすれば簡便かつ低コストに有機化合物を製造することができる。毒性のある有機溶媒を使用しなければ、さらに自然環境への悪影響を低減することができるし、反応に有機溶媒を必要としなければ、その分コスト削減および製造工程の簡略化につながる。
本発明の製造方法により製造される有機化合物の構造は、特に好ましくは、前記ヘテロ環式化合物開環重合構造の1の末端にシクロデキストリンまたはその誘導体が結合し、他端に前記置換基-SO2Raが結合した構造、すなわち、前記本発明の有機化合物の構造である。この場合、前記ヘテロ環式化合物開環重合体部分の重合度等により親水性、疎水性等の物性を調整できることは前述の通りであり、好ましい重合度も前述の通りである。また、本発明の製造方法は、前述の通り、反応効率が高いことにより高重合度の有機化合物を得ることも可能であるし、必要に応じ、逆に重合度の低い有機化合物を得ることもできる。
また、本発明の製造方法によれば、前記本発明の有機化合物の構造以外の任意の構造を有する有機化合物も製造できる。例えば、前記本発明の有機化合物を製造した後、必要であれば、適切な方法により、前記ヘテロ環式化合物開環重合構造とシクロデキストリンの間の結合を切断しても良い。本発明の製造方法により製造される有機化合物の構造は、特に限定されないが、例えば、前記ヘテロ環式化合物の開環重合構造を含むことが好ましい。本発明の製造方法において二種類以上のヘテロ環式化合物を併用する場合は、製造される有機化合物はそれらの開環共重合構造を含んでいても良い。本発明の製造方法により製造される有機化合物が前記ヘテロ環式化合物の開環重合構造を含む場合、その重合度は、特に限定されないが、MALDI-TOF MSおよびGPCを併用した分子量測定法から算出される平均重合度で、例えば1〜1,000、好ましくは1〜500、より好ましくは1〜200である。また、その分子量は、特に限定されないが、例えば、前記測定法により測定された数平均分子量で、1,000〜50,000、好ましくは1,000〜25,000、より好ましくは1,000〜10,000である。
なお、Rb-SO2Raで表されるスルホン酸エステルとヘテロ環式化合物とを含む組成物を加熱する有機化合物の製造方法もある。前記Rbは、例えば、アルキル基であり、好ましくは、炭素数1〜18の直鎖または分枝アルキル基である。この製造方法は、本発明の製造方法におけるシクロデキストリンスルホン酸エステルに代えてRb-SO2Raで表されるスルホン酸エステルを用いる以外は、本発明の製造方法と同様に行って良い。この製造方法によれば、ヘテロ環式化合物開環重合構造を含む有機化合物が得られるが、本発明の製造方法によれば、さらにシクロデキストリン構造を含む有機化合物が得られるという大きな利点がある。
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明する。ただし、これら実施例は本発明の例示に過ぎず、本発明の範囲は以下の実施例には限定されない。
[測定条件等]
核磁気共鳴(NMR)スペクトルは、日本電子株式会社(JEOL)製の機器JNM-GSX400(1H測定時400MHz)またはJNM-LA500(1H測定時500MHz)を用いて測定した。なお、JNM-GSX400およびJNM-LA500はいずれも日本電子株式会社の商品名である。ケミカルシフトは百万分率(ppm)で表している。標準ピークとしては、内部標準として重水中の水のピークを使用するか、または外部標準としてアセトニトリルを使用した。結合定数(J)は、ヘルツで示しており、略号s、d、t、q、mおよびbrは、それぞれ、一重線(singlet)、二重線(doublet)、三重線(triplet)、四重線(quartet)、多重線(multiplet)および広幅線(broad)を表す。質量分析(MS)は、島津製作所/KRATOS製AXIMA(商品名)を用いてMALDI-TOF-MS法により行うか、または、Perkin Elmer / Sciex 社製API III plus(商品名)を用いてESI-MS法により行った。元素分析値はヤナコ株式会社製CHN CORDER MT-5(商品名)により測定した。ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)は、東ソー株式会社製の機器を用いて行った。全ての化学物質は、試薬級であり、ナカライテスク株式会社、東京化成株式会社、関東化学株式会社、和光純薬株式会社、またはAldrich社から購入した。
核磁気共鳴(NMR)スペクトルは、日本電子株式会社(JEOL)製の機器JNM-GSX400(1H測定時400MHz)またはJNM-LA500(1H測定時500MHz)を用いて測定した。なお、JNM-GSX400およびJNM-LA500はいずれも日本電子株式会社の商品名である。ケミカルシフトは百万分率(ppm)で表している。標準ピークとしては、内部標準として重水中の水のピークを使用するか、または外部標準としてアセトニトリルを使用した。結合定数(J)は、ヘルツで示しており、略号s、d、t、q、mおよびbrは、それぞれ、一重線(singlet)、二重線(doublet)、三重線(triplet)、四重線(quartet)、多重線(multiplet)および広幅線(broad)を表す。質量分析(MS)は、島津製作所/KRATOS製AXIMA(商品名)を用いてMALDI-TOF-MS法により行うか、または、Perkin Elmer / Sciex 社製API III plus(商品名)を用いてESI-MS法により行った。元素分析値はヤナコ株式会社製CHN CORDER MT-5(商品名)により測定した。ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)は、東ソー株式会社製の機器を用いて行った。全ての化学物質は、試薬級であり、ナカライテスク株式会社、東京化成株式会社、関東化学株式会社、和光純薬株式会社、またはAldrich社から購入した。
(シクロデキストリンスルホン酸エステルの製造)
本発明の有機化合物を製造するに先立ち、まず、出発原料(開始剤)のシクロデキストリンスルホン酸エステルを製造した。より具体的には、2−(p−トルエンスルホニルオキシ)−β−シクロデキストリン(2-TsO-β-CD)および6−(p−トルエンスルホニルオキシ)−β−シクロデキストリン(6-TsO-β-CD)、および6−(p−トルエンスルホニルオキシ)−α−シクロデキストリン(6-TsO-α-CD)の三種類のトシル化シクロデキストリンを製造し、本発明の有機化合物の製造に用いた。
本発明の有機化合物を製造するに先立ち、まず、出発原料(開始剤)のシクロデキストリンスルホン酸エステルを製造した。より具体的には、2−(p−トルエンスルホニルオキシ)−β−シクロデキストリン(2-TsO-β-CD)および6−(p−トルエンスルホニルオキシ)−β−シクロデキストリン(6-TsO-β-CD)、および6−(p−トルエンスルホニルオキシ)−α−シクロデキストリン(6-TsO-α-CD)の三種類のトシル化シクロデキストリンを製造し、本発明の有機化合物の製造に用いた。
(2-TsO-β-CDの製造)
まず、β-CD 40.0 g (35.2 mmol)を0.14 M炭酸Buffer(Na2CO3 2.7 gとNaHCO3 2.1 gを360 mlの水に溶解)360 mlとDMF 645 mlに加熱して溶かした。ここに、m-ニトロフェニル トルエンスルホネート10.0 g (34.1 mmol)をDMF 75 mlに溶かしたもの(橙色)を加え、溶液を60 oCに保った。溶液は時間とともに赤変した。一時間加熱後、この溶液を1M HCl 約80 mlで中和すると、黄色になった。これをアセトン5 l中に注いで再沈した。得られた沈殿をろ過・乾燥すると、白色固体が得られた(収量45.6 g)。この固体を水に溶かし、イオン交換樹脂(三菱化学株式会社製、商品名ダイヤイオン HP20(またはDIAION HP20))カラムに注ぎ、10 lの水、次いで10% MeOH 3 lで未反応のβ-CDを洗い流した。その後、40% MeOH 3 lで2-TsO-β-CDを溶出させ、溶媒を除くと、目的の2-TsO-β-CDが白色固体として得られた(収量1.40 g、収率3.1%)。2-TsO-β-CDの生成は、1H NMR、元素分析にMALDI-TOF MSにより確認した。図11に2-TsO-β-CDの1H NMRスペクトル図を、図12にMALDI-TOF MSスペクトル図を示す。また、以下に元素分析値を示す。
まず、β-CD 40.0 g (35.2 mmol)を0.14 M炭酸Buffer(Na2CO3 2.7 gとNaHCO3 2.1 gを360 mlの水に溶解)360 mlとDMF 645 mlに加熱して溶かした。ここに、m-ニトロフェニル トルエンスルホネート10.0 g (34.1 mmol)をDMF 75 mlに溶かしたもの(橙色)を加え、溶液を60 oCに保った。溶液は時間とともに赤変した。一時間加熱後、この溶液を1M HCl 約80 mlで中和すると、黄色になった。これをアセトン5 l中に注いで再沈した。得られた沈殿をろ過・乾燥すると、白色固体が得られた(収量45.6 g)。この固体を水に溶かし、イオン交換樹脂(三菱化学株式会社製、商品名ダイヤイオン HP20(またはDIAION HP20))カラムに注ぎ、10 lの水、次いで10% MeOH 3 lで未反応のβ-CDを洗い流した。その後、40% MeOH 3 lで2-TsO-β-CDを溶出させ、溶媒を除くと、目的の2-TsO-β-CDが白色固体として得られた(収量1.40 g、収率3.1%)。2-TsO-β-CDの生成は、1H NMR、元素分析にMALDI-TOF MSにより確認した。図11に2-TsO-β-CDの1H NMRスペクトル図を、図12にMALDI-TOF MSスペクトル図を示す。また、以下に元素分析値を示す。
元素分析値 (2-TsO-β-CD.3H2O)
計算値 C 43.81% H 6.15% N 0
実測値 43.33% 6.17% 0.00%
計算値 C 43.81% H 6.15% N 0
実測値 43.33% 6.17% 0.00%
(6-TsO-β-CDの製造)
β-CD(50g,44mmol)を0.4M水酸化ナトリウム水溶液1Lに溶解させ、氷浴中で冷却し激しく撹拌しながらTs-Cl(50g,260mmol)を加え、一時間撹拌を続けた。反応溶液を濾過し未反応Ts-Clを除き、濾液をHClで中和後析出した6-TsO-β-CDを濾取し熱水から再結晶した(収量:15.1g,11.7mmol 収率:27%)。TLC(シリカゲルプレート,展開溶媒:n-ブタノール:エタノール:水=5:4:3,検出試薬:アニスアルデヒド)で純度を確認した。なお、図13に、6-TsO-β-CDの1HNMRスペクトル図を示す。
β-CD(50g,44mmol)を0.4M水酸化ナトリウム水溶液1Lに溶解させ、氷浴中で冷却し激しく撹拌しながらTs-Cl(50g,260mmol)を加え、一時間撹拌を続けた。反応溶液を濾過し未反応Ts-Clを除き、濾液をHClで中和後析出した6-TsO-β-CDを濾取し熱水から再結晶した(収量:15.1g,11.7mmol 収率:27%)。TLC(シリカゲルプレート,展開溶媒:n-ブタノール:エタノール:水=5:4:3,検出試薬:アニスアルデヒド)で純度を確認した。なお、図13に、6-TsO-β-CDの1HNMRスペクトル図を示す。
なお、2-TsO-β-CDは、前述の製造方法以外に、次の方法によっても得ることができた。すなわち、まず、6-TsO-β-CDを前述の方法で製造した。次に、6-TsO-β-CDを濾取した後の濾液をHClで中和後、イオン交換樹脂(三菱化学株式会社製、商品名ダイヤイオン HP20(またはDIAION HP20))にて精製し(40%メタノールにて溶出)エバポレーターで乾固し、目的の2-TsO-β-CDを得た(収量:3.4g,3.5mmol 収率:8%)。純度は、TLC(シリカゲルプレート,展開溶媒:n-ブタノール:エタノール:水=5:4:3,検出試薬:アニスアルデヒド)で確認した。
また、6−(p−トルエンスルホニルオキシ)−α−シクロデキストリン(6-TsO-α-CD)も、2-TsO-β-CDおよび6-TsO-β-CDと同様の方法で製造し、機器分析により生成を確認することができた。
[実施例1〜9:δ−バレロラクトンと、トシル化α−シクロデキストリンまたはトシル化β−シクロデキストリンとを用いた有機化合物製造]
実施例1〜2では、δ−バレロラクトン(δ-VL)およびトシル化α−シクロデキストリン(α-CD)からなる組成物を用いて有機化合物を製造した。実施例3〜9では、δ−バレロラクトン(δ-VL)およびトシル化β−シクロデキストリン(β-CD)からなる原料組成物を用いて有機化合物を製造した。トシル化α−シクロデキストリンとしては、前述の通り製造した6−(p−トルエンスルホニルオキシ)−α−シクロデキストリン(6-TsO-α-CD)を用いた。トシル化β−シクロデキストリンとしては、前述の通り製造した2−(p−トルエンスルホニルオキシ)−β−シクロデキストリン(2-TsO-β-CD)または6−(p−トルエンスルホニルオキシ)−β−シクロデキストリン(6-TsO-β-CD)を用いた。
(実施例1)
実施例1は以下のようにして行った。すなわち、まず、約20μmolの6−(p−トルエンスルホニルオキシ)−α−シクロデキストリン(6-TsO-α-CD)を準備し、これを簡易シュレンク中に封入し、減圧下、オイルバスで70℃に加熱しながら乾燥した。次に、このシュレンク中に、6-TsO-α-CDに対し50倍モル量のδ−バレロラクトン(δ-VL)を加え、前記6-TsO-α-CDとよく混合した後、アルゴン置換し、50℃で48時間加熱した。加熱後、前記シュレンクを室温に冷却し、その中の組成物にDMF10mlを加えてよく攪拌し、完全に溶解させた。そこにTHF100mlを加えて不溶物の沈殿を生じさせ、それを遠心分離により除き、溶媒を減圧下で留去し、析出した固形物を減圧下50℃で乾燥して目的の有機化合物を得た。この有機化合物の1HNMRおよびMALDI-TOF-MSを測定したところ、6-TsO-α-CDのトシル基が結合していた酸素原子にポリ(δ−バレロラクトン)鎖末端が共有結合し、前記ポリ(δ−バレロラクトン)鎖の他の末端にトシル基が共有結合している構造であることが確認された。一方、前記不溶物を減圧下50℃で乾燥し、その重量を測定した。
実施例1は以下のようにして行った。すなわち、まず、約20μmolの6−(p−トルエンスルホニルオキシ)−α−シクロデキストリン(6-TsO-α-CD)を準備し、これを簡易シュレンク中に封入し、減圧下、オイルバスで70℃に加熱しながら乾燥した。次に、このシュレンク中に、6-TsO-α-CDに対し50倍モル量のδ−バレロラクトン(δ-VL)を加え、前記6-TsO-α-CDとよく混合した後、アルゴン置換し、50℃で48時間加熱した。加熱後、前記シュレンクを室温に冷却し、その中の組成物にDMF10mlを加えてよく攪拌し、完全に溶解させた。そこにTHF100mlを加えて不溶物の沈殿を生じさせ、それを遠心分離により除き、溶媒を減圧下で留去し、析出した固形物を減圧下50℃で乾燥して目的の有機化合物を得た。この有機化合物の1HNMRおよびMALDI-TOF-MSを測定したところ、6-TsO-α-CDのトシル基が結合していた酸素原子にポリ(δ−バレロラクトン)鎖末端が共有結合し、前記ポリ(δ−バレロラクトン)鎖の他の末端にトシル基が共有結合している構造であることが確認された。一方、前記不溶物を減圧下50℃で乾燥し、その重量を測定した。
(実施例2)
δ-VLの添加量を、6-TsO-α-CDに対し100倍モル量とする以外は実施例1と同様にして本発明の有機化合物を製造した。得られた有機化合物は、1HNMRおよびMALDI-TOF-MS測定により、6-TsO-α-CDのトシル基が結合していた酸素原子にポリ(δ−バレロラクトン)鎖末端が共有結合し、前記ポリ(δ−バレロラクトン)鎖の他の末端にトシル基が共有結合している構造であることを確認した。
δ-VLの添加量を、6-TsO-α-CDに対し100倍モル量とする以外は実施例1と同様にして本発明の有機化合物を製造した。得られた有機化合物は、1HNMRおよびMALDI-TOF-MS測定により、6-TsO-α-CDのトシル基が結合していた酸素原子にポリ(δ−バレロラクトン)鎖末端が共有結合し、前記ポリ(δ−バレロラクトン)鎖の他の末端にトシル基が共有結合している構造であることを確認した。
(実施例3)
実施例3は以下のようにして行った。すなわち、まず、約20μmolの2−(p−トルエンスルホニルオキシ)−β−シクロデキストリン(2-TsO-β-CD)を準備し、これを簡易シュレンク中に封入し、減圧下、オイルバスで70℃に加熱しながら乾燥した。次に、このシュレンク中に、2-TsO-β-CDに対し5倍モル量のδ−バレロラクトン(δ-VL)を加え、前記2-TsO-β-CDとよく混合した後、アルゴン置換し、50℃で48時間加熱した。加熱後、前記シュレンクを室温に冷却し、その中の組成物にDMF10mlを加えてよく攪拌し、完全に溶解させた。そこにTHF100mlを加えて不溶物の沈殿を生じさせ、それを遠心分離により除き、溶媒を減圧下で留去し、析出した固形物を減圧下50℃で乾燥して目的の有機化合物を得た。この有機化合物の1HNMRおよびMALDI-TOF-MSを測定したところ、2-TsO-β-CDのトシル基が結合していた酸素原子にポリ(δ−バレロラクトン)鎖末端が共有結合し、前記ポリ(δ−バレロラクトン)鎖の他の末端にトシル基が共有結合している構造であることが確認された。一方、前記不溶物を減圧下50℃で乾燥し、その重量を測定した。
実施例3は以下のようにして行った。すなわち、まず、約20μmolの2−(p−トルエンスルホニルオキシ)−β−シクロデキストリン(2-TsO-β-CD)を準備し、これを簡易シュレンク中に封入し、減圧下、オイルバスで70℃に加熱しながら乾燥した。次に、このシュレンク中に、2-TsO-β-CDに対し5倍モル量のδ−バレロラクトン(δ-VL)を加え、前記2-TsO-β-CDとよく混合した後、アルゴン置換し、50℃で48時間加熱した。加熱後、前記シュレンクを室温に冷却し、その中の組成物にDMF10mlを加えてよく攪拌し、完全に溶解させた。そこにTHF100mlを加えて不溶物の沈殿を生じさせ、それを遠心分離により除き、溶媒を減圧下で留去し、析出した固形物を減圧下50℃で乾燥して目的の有機化合物を得た。この有機化合物の1HNMRおよびMALDI-TOF-MSを測定したところ、2-TsO-β-CDのトシル基が結合していた酸素原子にポリ(δ−バレロラクトン)鎖末端が共有結合し、前記ポリ(δ−バレロラクトン)鎖の他の末端にトシル基が共有結合している構造であることが確認された。一方、前記不溶物を減圧下50℃で乾燥し、その重量を測定した。
(実施例4〜5)
δ-VLの添加量を、2-TsO-β-CDに対し50倍モル量(実施例4)および100倍モル量(実施例5)とする以外は実施例3と同様にして本発明の有機化合物を製造した。得られた有機化合物は、1HNMRおよびMALDI-TOF-MS測定により、2-TsO-β-CDのトシル基が結合していた酸素原子にポリ(δ−バレロラクトン)鎖末端が共有結合し、前記ポリ(δ−バレロラクトン)鎖の他の末端にトシル基が共有結合している構造であることを確認した。
δ-VLの添加量を、2-TsO-β-CDに対し50倍モル量(実施例4)および100倍モル量(実施例5)とする以外は実施例3と同様にして本発明の有機化合物を製造した。得られた有機化合物は、1HNMRおよびMALDI-TOF-MS測定により、2-TsO-β-CDのトシル基が結合していた酸素原子にポリ(δ−バレロラクトン)鎖末端が共有結合し、前記ポリ(δ−バレロラクトン)鎖の他の末端にトシル基が共有結合している構造であることを確認した。
(実施例6〜9)
2−(p−トルエンスルホニルオキシ)−β−シクロデキストリン(2-TsO-β-CD)に代えて6−(p−トルエンスルホニルオキシ)−β−シクロデキストリン(6-TsO-β-CD)を用いることと、δ-VLの添加量を、6-TsO-β-CDに対し5倍モル量(実施例6)、50倍モル量(実施例7)、100倍モル量(実施例8)および200倍モル量(実施例9)とする以外は実施例3と同様にして本発明の有機化合物を製造した。得られた有機化合物は、1HNMRおよびMALDI-TOF-MS測定により、6-TsO-β-CDのトシル基が結合していた酸素原子にポリ(δ−バレロラクトン)鎖末端が共有結合し、前記ポリ(δ−バレロラクトン)鎖の他の末端にトシル基が共有結合している構造であることを確認した。
2−(p−トルエンスルホニルオキシ)−β−シクロデキストリン(2-TsO-β-CD)に代えて6−(p−トルエンスルホニルオキシ)−β−シクロデキストリン(6-TsO-β-CD)を用いることと、δ-VLの添加量を、6-TsO-β-CDに対し5倍モル量(実施例6)、50倍モル量(実施例7)、100倍モル量(実施例8)および200倍モル量(実施例9)とする以外は実施例3と同様にして本発明の有機化合物を製造した。得られた有機化合物は、1HNMRおよびMALDI-TOF-MS測定により、6-TsO-β-CDのトシル基が結合していた酸素原子にポリ(δ−バレロラクトン)鎖末端が共有結合し、前記ポリ(δ−バレロラクトン)鎖の他の末端にトシル基が共有結合している構造であることを確認した。
(比較例1〜2)
トシル化β-CDに代えて無置換のβ-CDを用い、δ-VLの添加量を、β-CDに対し5倍モル量(比較例1)および50倍モル量(比較例2)とする以外は実施例3と同様にし、δ-VLの重合体を製造した。
トシル化β-CDに代えて無置換のβ-CDを用い、δ-VLの添加量を、β-CDに対し5倍モル量(比較例1)および50倍モル量(比較例2)とする以外は実施例3と同様にし、δ-VLの重合体を製造した。
(参考例1〜2)
トシル化β-CDに代えてp−トルエンスルホン酸メチル(TsOMe)を用い、δ-VLの添加量を、TsOMeに対し5倍モル量(参考例1)および50倍モル量(参考例2)とする以外は実施例3と同様にし、δ-VLの重合体を製造した。
トシル化β-CDに代えてp−トルエンスルホン酸メチル(TsOMe)を用い、δ-VLの添加量を、TsOMeに対し5倍モル量(参考例1)および50倍モル量(参考例2)とする以外は実施例3と同様にし、δ-VLの重合体を製造した。
実施例1〜9のそれぞれについて、本発明の有機化合物(THF可溶部)の収率と不溶物の収率とを算出した。また、比較例1〜2および参考例1〜2のそれぞれについて、δ-VL重合体(THF可溶部)の収率と不溶物の収率とを算出した。下記表1にその結果を示す。なお、収率算出に際し、分子末端に付加したα-CDまたはβ-CDの質量を考慮して算出した。
a) [THF可溶生成物質量]/[δ-VL添加質量]
b) [THF沈殿物質量]/[トシル化CDまたはCD添加質量]
c) 1H NMR測定値からの計算値
d) GPCによる計算値(標準:ポリスチレン, 溶離剤:THF, カラム:オリゴ(東ソー株式会社製、商品名TSKgel G2500HXL, TSKgel G3000HXL))
表1におけるTHF可溶部の収率から分かる通り、実施例1〜9では、いずれも、50℃での加熱という極めて穏和な反応条件で、目的とする本発明の有機化合物が良好な収率で得られた。また、δ-VLをトシル化CDの50〜200倍モル量と大量に添加しても良好な収率が得られ、さらに、δ-VLとトシル化CDの物質量比により本発明の有機化合物の分子量(重合度)を調整できることも確認された。これに対し、無置換のβ-CDを用いた比較例1〜2では、ポリマー(THF可溶部)の収率も低く、CDがほとんど残った(THF不溶部)。トシル化CDに代えてTsOMeを用いた参考例1〜2でも、良好な収率でポリマー(THF可溶部)が得られたが、このポリマー中には、当然ながら、分子中にシクロデキストリン構造は含まれていなかった。
実施例3〜5のTHF可溶部(本発明の有機化合物)の1HNMRおよびMALDI-TOF MS測定は、いずれの実施例もほとんど同じスペクトルを示し、前述の通り、これらTHF可溶部の有機化合物が本発明の有機化合物の構造を有していることが確認された。図1に、実施例3〜5のうち一つのTHF可溶部(本発明の有機化合物)の500MHz 1HNMRスペクトル図(溶媒:DMSO-d6)を、図2に、同じ物質のMALDI-TOF MSスペクトル図(マトリックス:DHBA)を、それぞれ示す。さらに、実施例6〜9のTHF可溶部(本発明の有機化合物)の1HNMRおよびMALDI-TOF MS測定は、いずれの実施例もほとんど同じスペクトルを示し、前述の通り、これらTHF可溶部の有機化合物が本発明の有機化合物の構造を有していることが確認された。図3に、実施例6〜9のうち一つのTHF可溶部(本発明の有機化合物)の500MHz 1HNMRスペクトル図(溶媒:DMSO-d6)を示す。
なお、図1〜3中の化学式において、半円錐で表している図形は、本発明の有機化合物分子中のβ-CD構造を示す。
また、図4に実施例3のTHF可溶部のGPC図を、図5に実施例5のTHF可溶部のGPC図を、図6に参考例1のTHF可溶部のGPC図を、図7に参考例2のTHF可溶部のGPC図を、それぞれ示す。いずれも、ほぼ1つの鋭いピークが得られていることから、これらTHF可溶部の分子量が均一に近いことが分かる。
なお、TsO-CDを用いた開環重合の機構としては、例えば、下記スキームのようなカチオン重合機構が推測される。ただし、下記スキームは、推測される反応機構の一例を示すに過ぎず、本発明を何ら限定するものではない。
[実施例10:δ−バレロラクトンおよびトシル化α−シクロデキストリンを用いた二段階重合による有機化合物製造]
実施例10では、δ−バレロラクトンおよびトシル化α−シクロデキストリンを用い、二段階重合による有機化合物製造を行った。すなわち、まず、δ−バレロラクトンおよびトシル化α−シクロデキストリンを用い、実施例1と同様の条件で48時間加熱し、反応させた。次に、加熱開始前に添加したδ−バレロラクトンと同量のδ−バレロラクトンを追加し、さらに50℃で48時間加熱し、反応させた。その後、得られた有機化合物を、実施例1と同様の方法で単離した。得られた有機化合物は、1HNMRおよびMALDI-TOF-MS測定により、6-TsO-α-CDのトシル基が結合していた酸素原子にポリ(δ−バレロラクトン)鎖末端が共有結合し、前記ポリ(δ−バレロラクトン)鎖の他の末端にトシル基が共有結合している構造であることを確認した。
実施例10では、δ−バレロラクトンおよびトシル化α−シクロデキストリンを用い、二段階重合による有機化合物製造を行った。すなわち、まず、δ−バレロラクトンおよびトシル化α−シクロデキストリンを用い、実施例1と同様の条件で48時間加熱し、反応させた。次に、加熱開始前に添加したδ−バレロラクトンと同量のδ−バレロラクトンを追加し、さらに50℃で48時間加熱し、反応させた。その後、得られた有機化合物を、実施例1と同様の方法で単離した。得られた有機化合物は、1HNMRおよびMALDI-TOF-MS測定により、6-TsO-α-CDのトシル基が結合していた酸素原子にポリ(δ−バレロラクトン)鎖末端が共有結合し、前記ポリ(δ−バレロラクトン)鎖の他の末端にトシル基が共有結合している構造であることを確認した。
実施例10について、本発明の有機化合物(THF可溶部)の収率と不溶物の収率とを算出した。下記表2に、その結果を、前記実施例1の結果と併せて示す。なお、収率算出に際し、分子末端に付加したα-CDの質量を考慮して算出した。
a) [THF可溶生成物質量]/[δ-VL添加質量]
b) [THF沈殿物質量]/[トシル化CDまたはCD添加質量]
c) 1H NMR測定値からの計算値
d) GPCによる計算値(標準:ポリスチレン, 溶離剤:THF, カラム:オリゴ(東ソー株式会社製、商品名TSKgel G2500HXL, TSKgel G3000HXL))
表2から分かる通り、モノマー(δ−バレロラクトン)を再添加しての二段階重合により、さらに分子量が大きい有機化合物が得られ、収率も良好であった。なお、実施例10においてTHF可溶部の収率が193.4%となっているが、これは、加熱前に添加したδ−バレロラクトンの量(すなわち、全量の半分)を基準として算出したためである。また、図8に、実施例1と実施例10のGPC図(ダイヤグラム)を併せて示す。同図中、「First st」と記載しているのは実施例1のダイヤグラムであり、「Second st」と記載しているのは実施例10のダイヤグラムである。図示の通り、ダイヤグラムはピークトップが単峰性のままシフトしたことが観測された。
[実施例11〜14:ε−カプロラクトンおよびトシル化β−シクロデキストリンを用いた有機化合物製造]
実施例11〜14では、ε−カプロラクトン(ε-CL)およびトシル化β−シクロデキストリン(β-CD)からなる原料組成物を用いて有機化合物を製造した。トシル化β−シクロデキストリンとしては、6−(p−トルエンスルホニルオキシ)−β−シクロデキストリン(6-TsO-β-CD)を用いた。この6-TsO-β-CDは、実施例6〜9と同様にして得た。
(実施例11)
2−(p−トルエンスルホニルオキシ)−β−シクロデキストリン(2-TsO-β-CD)に代えて6−(p−トルエンスルホニルオキシ)−β−シクロデキストリン(6-TsO-β-CD)を用いること、δ-VLに代えてε-CLを用いること、ε-CLの添加量を6-TsO-β-CDに対し50倍モル量とすること、および加熱時間を24時間とすること以外は実施例3と同様にして本発明の有機化合物を製造した。得られた有機化合物は、1HNMRおよびMALDI-TOF-MS測定により、6-TsO-β-CDのトシル基が結合していた酸素原子にポリ(ε−カプロラクトン)鎖末端が共有結合し、前記ポリ(ε−カプロラクトン)鎖の他の末端にトシル基が共有結合している構造であることを確認した。
2−(p−トルエンスルホニルオキシ)−β−シクロデキストリン(2-TsO-β-CD)に代えて6−(p−トルエンスルホニルオキシ)−β−シクロデキストリン(6-TsO-β-CD)を用いること、δ-VLに代えてε-CLを用いること、ε-CLの添加量を6-TsO-β-CDに対し50倍モル量とすること、および加熱時間を24時間とすること以外は実施例3と同様にして本発明の有機化合物を製造した。得られた有機化合物は、1HNMRおよびMALDI-TOF-MS測定により、6-TsO-β-CDのトシル基が結合していた酸素原子にポリ(ε−カプロラクトン)鎖末端が共有結合し、前記ポリ(ε−カプロラクトン)鎖の他の末端にトシル基が共有結合している構造であることを確認した。
(実施例12〜14)
加熱時間を48時間(実施例12)、72時間(実施例13)および96時間(実施例14)とする以外は実施例8と同様にして本発明の有機化合物を製造した。得られた有機化合物は、1HNMRおよびMALDI-TOF-MS測定により、6-TsO-β-CDのトシル基が結合していた酸素原子にポリ(ε−カプロラクトン)鎖末端が共有結合し、前記ポリ(ε−カプロラクトン)鎖の他の末端にトシル基が共有結合している構造であることを確認した。
加熱時間を48時間(実施例12)、72時間(実施例13)および96時間(実施例14)とする以外は実施例8と同様にして本発明の有機化合物を製造した。得られた有機化合物は、1HNMRおよびMALDI-TOF-MS測定により、6-TsO-β-CDのトシル基が結合していた酸素原子にポリ(ε−カプロラクトン)鎖末端が共有結合し、前記ポリ(ε−カプロラクトン)鎖の他の末端にトシル基が共有結合している構造であることを確認した。
(比較例3〜5)
6-TsO-β-CDに代えて無置換のβ-CDを用いること、および加熱時間を72時間とすること以外は実施例8と同様にし、δ-VLの重合体を製造した(比較例3)。また、ε-CLの添加量をβ-CDに対し5倍モル量とすること、加熱時間を72時間とすること、および加熱温度を100℃とすること以外は実施例8と同様にし、δ-VLの重合体を製造した(比較例4)。さらに、CDを添加せずε-CLのみを用いること、加熱時間を96時間とすること、および加熱温度を100℃とすること以外は実施例8と同様にし、δ-VLの重合体を製造した(比較例5)。
6-TsO-β-CDに代えて無置換のβ-CDを用いること、および加熱時間を72時間とすること以外は実施例8と同様にし、δ-VLの重合体を製造した(比較例3)。また、ε-CLの添加量をβ-CDに対し5倍モル量とすること、加熱時間を72時間とすること、および加熱温度を100℃とすること以外は実施例8と同様にし、δ-VLの重合体を製造した(比較例4)。さらに、CDを添加せずε-CLのみを用いること、加熱時間を96時間とすること、および加熱温度を100℃とすること以外は実施例8と同様にし、δ-VLの重合体を製造した(比較例5)。
実施例11〜14のそれぞれについて、本発明の有機化合物(THF可溶部)の収率と不溶物の収率とを算出した。また、比較例3〜5のそれぞれについて、δ-VL重合体(THF可溶部)の収率と不溶物の収率とを算出した。下記表3にその結果を示す。なお、収率算出に際し、分子末端に付加したβ-CDの質量を考慮して算出した。
表3におけるTHF可溶部の収率から分かる通り、実施例11〜14では、いずれも、50℃での加熱という極めて穏和な反応条件で、目的とする本発明の有機化合物が得られた。特に、実施例12〜14では収率が良好であった。さらに、加熱時間により本発明の有機化合物の分子量(重合度)を調整できることも確認された。これに対し、無置換のβ-CDを用いた比較例3〜4では、72時間という長時間加熱し(比較例3)、さらに加熱温度を100℃と高くした(比較例4)にも関わらず、ポリマー(THF可溶部)の収率も低く、CDがほとんど残った(THF不溶部)。また、CDを添加せずε-CLのみを加熱した比較例5は、100℃で96時間加熱してもポリマー(THF可溶部)が全く得られなかった。
実施例11〜14のTHF可溶部(本発明の有機化合物)の1HNMRおよびMALDI-TOF MS測定は、いずれの実施例もほとんど同じスペクトルを示し、これらTHF可溶部の有機化合物が本発明の有機化合物の構造を有していることが確認された。図9に、実施例8〜11のうち一つのTHF可溶部(本発明の有機化合物)の500MHz 1HNMRスペクトル図(溶媒:DMSO-d6)を示す。図中の化学式において、半円錐で表している図形は、本発明の有機化合物分子中のβ-CD構造を示す。
以上の通り、実施例1〜14では、反応に有機溶媒や金属触媒等を必要とせず、ヘテロ環式化合物とトシル化シクロデキストリンとを混合して不活性ガス置換し、50℃という低温で加熱するのみで反応が進行した。実施例1〜14では前記不活性ガスとしてアルゴンを使用したが、本発明はこれに限定されず、安価で入手容易な窒素を用いても良いし、場合により不活性ガス置換せずに加熱しても良い。
[実施例15〜16:トシル化α−シクロデキストリン(TsO-CD)を開始剤としたδ-VLとL-Lactide(L-LA)のランダム共重合]
トシル化シクロデキストリンとして、あらかじめ50 ℃で熱真空乾燥した30.3 mg (27.0 μmol)の6-TsO-α-CDを用いること、および、δ-VLに代えてδ-VLとL-Lactide(L-LA)との混合物を用いること以外は実施例1と同様にして反応を行い、δ-VLとL-LAとの共重合体を製造した(実施例15〜16)。実施例15および16のいずれも、加熱温度は50℃、加熱時間は48時間であった。δ-VLのモル数は、実施例15では6-TsO-α-CDの50倍、実施例16では6-TsO-α-CDの100倍であり、L-LAのモル数は、実施例15及び16のいずれも、δ-VLと同じであった。反応後、THF/Hexaneによる再沈殿を試みたが、乳濁したため、熱真空乾燥することによりモノマーを除去し、目的の共重合体を乳白色の固体として得た。下記表4に、前記共重合体について算出した収率および分子量の測定結果を示す。また、図10に、前記共重合体のMALDI-TOF MS測定(マトリックス:ジトラノール)結果を表すスペクトル図を示す。
a) [THF可溶生成物質量]/[δ-VL添加質量]
d) GPCによる計算値(標準:ポリスチレン, 溶離剤:THF, カラム:オリゴ(東ソー株式会社製、商品名TSKgel G2500HXL, TSKgel G3000HXL))
e) δ-VLと同モル数のL-LAを加えた。
図10のMALDI-TOF MSスペクトル図から分かる通り、前記共重合体はδ-VLとL-LAの共重合体であり、末端にα-CDが結合していた。また、上記表4から分かる通り、収率および分子量も良好であった。反応機構としては、例えば、まずVLから重合が開始・成長し、続いてLAが挿入される機構が推測されるが、必ずしも明らかではない。
さらに、ヘテロ環式化合物としてδ-VLおよびε-CL以外の化合物を用いても同様に良好な結果が得られた。また、β−シクロデキストリン以外のシクロデキストリンをトシル化したものを用いても、さらに、トシル化シクロデキストリン以外のシクロデキストリンスルホン酸エステルを用いても、実施例1〜16と同様に良好な結果が得られた。ヘテロ環式化合物の種類に合わせて、シクロデキストリンスルホン酸エステルの空孔サイズ等を適宜選択することにより、本発明の有機化合物の収率および物性等のさらなる向上が見込める。
さらに、実施例1〜16では無溶媒で反応を行ったが、アセトニトリル、ニトロメタン等の溶媒を適宜用いても、実施例1〜16と同様に良好な結果が得られた。
以上説明した通り、本発明の有機化合物は、有機高分子化合物およびシクロデキストリンの優れた特性を併せ持つことにより、従来技術において有機高分子化合物およびシクロデキストリンが有していた問題点を改善することができる。したがって、本発明の有機化合物は、従来のシクロデキストリンまたは有機高分子化合物と同様の用途に用いることもできるし、全く新しい用途に用いることもできる。そして、末端基のさらなる変換反応により種々の置換基を導入し、さらに多様な用途に応用することも可能である。また、本発明の有機化合物は、本発明の製造方法により効率良く製造することができる。本発明の製造方法は、例えば、従来のヘテロ環重合反応よりはるかに低温で行うことも可能である。低温で反応させた場合、安全性が高い、高温に加熱することに伴うコストを削減できる、得られる有機化合物の高熱による劣化を防止できるため品質が安定化する、等の利点がある。また、本発明の製造方法によれば、例えば、シクロデキストリンスルホン酸エステルとヘテロ環式化合物以外の物質を全く用いずに反応を行うことも可能であり、このようにすれば簡便かつ低コストに有機化合物を製造することができる。例えば、有毒な金属元素等を用いなくても有機高分子化合物を製造できるため、自然環境に対する悪影響を低減させることが可能である。また、毒性のある有機溶媒を使用しなければ、さらに自然環境への悪影響を低減することができるし、反応に有機溶媒を必要としなければ、その分コスト削減および製造工程の簡略化につながる。さらに、本発明の製造方法は、反応効率等に優れることにより、生成する有機化合物の重合度、親水性、疎水性等を自由に制御することも可能であり、その産業上利用価値は多大である。
Claims (14)
- シクロデキストリンの水酸基のうち1または複数がヘテロ環式化合物開環重合体の末端と縮合した構造を有し、前記ヘテロ環式化合物開環重合体の他端が置換基 -SO2Ra(Raは、芳香環または脂肪族炭化水素基であり、1または複数の置換基でさらに置換されていても良く、置換されていなくても良く、Raは、複数の場合は同一でも異なっていても良い)で置換されている有機化合物。
- 前記1または複数のRaが、それぞれ、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基(炭素数1〜18のアルキル基でさらに置換されていても良い)、または炭素数1〜18のアルキル基である請求項1に記載の有機化合物。
- 前記1または複数の-SO2Raが、それぞれ、p-トルエンスルホニル基(トシル基)、メチルスルホニル基(メシル基)、1−ナフチルスルホニル基または2−ナフチルスルホニル基である請求項1に記載の有機化合物。
- 前記ヘテロ環式化合物開環重合体が、ラクトン、α−ヒドロキシ酸脱水物、ラクタム、環状炭酸エステル、環状酸無水物、N−カルボキシ−α−アミノ酸無水物(NCA)、N置換NCA、オキシラン、チイラン、環状シロキサン、環状ジシラン、環状カーボネート、オキサゾールおよびその誘導体、オキサゾリンおよびその誘導体、チオラクトン、環状エーテル、ならびに環状チオエーテルからなる群から選択される少なくとも一種類の開環重合体である請求項1〜3のいずれかに記載の有機化合物。
- 前記ヘテロ環式化合物開環重合体が、β−プロピオラクトン、β−ブチロラクトン、γ−ブチロラクトン、δ−バレロラクトン、ε−カプロラクトン、β−プロピオラクタム、γ−ブチロラクタム、δ−バレロラクタム、ε−カプロラクタム、L−ラクチド、D,L−ラクチド、N−カルボキシサルコシン無水物、オキサゾール、オキサゾリン、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ネオペンチレンカーボネート、5−メチル−1,3−ジオキサン−2−オン、ピバロラクトン、およびγ−ノナノイック−ラクトンからなる群から選択される少なくとも一種類の開環重合体である請求項1〜3のいずれかに記載の有機化合物。
- 前記1または複数の-SO2Raに代えて、アミノ基を有する請求項1〜5のいずれかに記載の有機化合物。
- 有機化合物の製造方法であって、シクロデキストリンスルホン酸エステルおよびヘテロ環式化合物を含む原料組成物を加熱する工程を含み、前記シクロデキストリンスルホン酸エステルは、シクロデキストリンの水酸基のうち少なくとも一つの水素原子が置換基 -SO2Ra(Raは、芳香環または脂肪族炭化水素基であり、1または複数の置換基でさらに置換されていても良く、置換されていなくても良く、Raは、複数の場合は同一でも異なっていても良い)で置換されたスルホン酸エステルである製造方法。
- 前記1または複数のRaが、それぞれ、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基(炭素数1〜18のアルキル基でさらに置換されていても良い)、または炭素数1〜18のアルキル基である請求項7に記載の製造方法。
- 前記1または複数の-SO2Raが、それぞれ、p-トルエンスルホニル基(トシル基)、メチルスルホニル基(メシル基)、1−ナフチルスルホニル基または2−ナフチルスルホニル基である請求項7に記載の製造方法。
- 前記ヘテロ環式化合物が、ラクトン、α−ヒドロキシ酸脱水物、ラクタム、環状炭酸エステル、環状酸無水物、N−カルボキシ−α−アミノ酸無水物(NCA)、N置換NCA、オキシラン、チイラン、環状シロキサン、環状ジシラン、環状カーボネート、オキサゾールおよびその誘導体、オキサゾリンおよびその誘導体、チオラクトン、環状エーテル、ならびに環状チオエーテルからなる群から選択される少なくとも一種類を含む請求項7〜9のいずれかに記載の製造方法。
- 前記ヘテロ環式化合物が、β−プロピオラクトン、β−ブチロラクトン、γ−ブチロラクトン、δ−バレロラクトン、ε−カプロラクトン、β−プロピオラクタム、γ−ブチロラクタム、δ−バレロラクタム、ε−カプロラクタム、L−ラクチド、D,L−ラクチド、N−カルボキシサルコシン無水物、オキサゾール、オキサゾリン、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ネオペンチレンカーボネート、5−メチル−1,3−ジオキサン−2−オン、ピバロラクトン、およびγ−ノナノイック−ラクトンからなる群から選択される少なくとも一種類を含む請求項7〜9のいずれかに記載の製造方法。
- 前記シクロデキストリンスルホン酸エステルの一部または全部が、ゲストを包接し、包接化合物を形成している請求項7〜11のいずれかに記載の製造方法。
- 請求項7〜12のいずれかに記載の製造方法により製造される有機化合物。
- 請求項1〜6および請求項12のいずれかに記載の有機化合物を用いて製造される製品であり、酸化防止剤、安定剤、徐放剤、マスキング剤、可溶化剤、洗浄剤、粘度調整剤、揮発防止剤、吸湿性改善剤、食品、医薬品、化学製品、化粧品、樹脂、繊維、フィルム、または建材である製品。
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JP2005219525A Withdrawn JP2007031620A (ja) | 2005-07-28 | 2005-07-28 | 有機化合物およびその製造方法 |
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Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JPWO2015041322A1 (ja) * | 2013-09-19 | 2017-03-02 | 国立大学法人 東京大学 | 環状分子が重合鎖を有するポリロタキサン及びその製造方法 |
CN116554368A (zh) * | 2023-07-11 | 2023-08-08 | 山东国邦药业有限公司 | 一种β-环糊精衍生物的制备方法及其应用 |
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2005
- 2005-07-28 JP JP2005219525A patent/JP2007031620A/ja not_active Withdrawn
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JPWO2015041322A1 (ja) * | 2013-09-19 | 2017-03-02 | 国立大学法人 東京大学 | 環状分子が重合鎖を有するポリロタキサン及びその製造方法 |
CN116554368A (zh) * | 2023-07-11 | 2023-08-08 | 山东国邦药业有限公司 | 一种β-环糊精衍生物的制备方法及其应用 |
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