JP2007024883A - 標識粒子と相互作用するナノ構造又はナノ粒子を含む基材による、金及び銀ナノ粒子を利用するpoctデバイスの感度の向上法 - Google Patents
標識粒子と相互作用するナノ構造又はナノ粒子を含む基材による、金及び銀ナノ粒子を利用するpoctデバイスの感度の向上法 Download PDFInfo
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Abstract
【課題】金及び他のナノ粒子によって標識化された分子を検出するための、シグナル/ノイズ比が大幅に改善された効果的な方法を提供する。
【解決手段】本発明は、少なくとも1つの処理表面を有する基材に関する。当該基材は、ナノ粒子によって標識化された分析物に対して所定の結合親和性を有する少なくとも1つの分子を含み、当該分子は、前記処理表面に結合している。処理表面はまた、ナノ構造又は高屈折率材料を含み、それによって、少なくとも1つのナノ粒子標識済み分析物が処理表面上の少なくとも1つの分子に結合すると、検出可能な信号が生じる。本発明にはまた、上記基材を含むキットと、キットを使用するための方法が包含される。
【選択図】なし
【解決手段】本発明は、少なくとも1つの処理表面を有する基材に関する。当該基材は、ナノ粒子によって標識化された分析物に対して所定の結合親和性を有する少なくとも1つの分子を含み、当該分子は、前記処理表面に結合している。処理表面はまた、ナノ構造又は高屈折率材料を含み、それによって、少なくとも1つのナノ粒子標識済み分析物が処理表面上の少なくとも1つの分子に結合すると、検出可能な信号が生じる。本発明にはまた、上記基材を含むキットと、キットを使用するための方法が包含される。
【選択図】なし
Description
本発明は、ポイント・オブ・ケア試験(POCT)デバイスの感度を向上させる方法に関する。
金属ナノ粒子は、アレイベースのアプリケーションにおいて標識として頻繁に使用されるが、金ナノ粒子を用いた従来のアプリケーションには、シグナル/ノイズ比が低いために、可視性が不足する(検出不良)という難点があることは当分野においてよく理解されている。
従って、当分野では、ポイント・オブ・ケア試験(POCT)等の技法において、金及び他のナノ粒子によって標識化された分子を検出するための、シグナル/ノイズ比が大幅に改善された効果的な方法を開発することが必要とされている。
本発明は、分析物の検出に使用するための基材であって、少なくとも1つの処理表面を有する基材に関する。当該基材は、ナノ粒子標識済み分析物(ナノ粒子によって標識化された分析物)に対して所定の結合親和性を有する少なくとも1つの分子を含み、当該分子は、処理表面に結合している。処理表面はまた、ナノ構造又は高屈折率材料を含み、それによって、少なくとも1つのナノ粒子標識済み分析物が処理表面上の少なくとも1つの分子に結合すると、検出可能な信号が生じる。本発明にはまた、上記基材を含むキットと、キットを使用するための方法が包含される。
本発明によれば、POCT等の技法において、金及び他のナノ粒子によって標識化された分子を検出するための、シグナル/ノイズ比が大幅に改善された効果的な方法を提供することができる。
図面を参照して、本発明の種々の実施形態を詳細に述べることとする。図面では、同じ符号は、いくつかの図面にわたって同じ要素を表している。種々の実施形態を参照するが、それらの実施形態は本発明の範囲を限定するものではなく、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によってのみ制限されるものとする。さらに、本明細書で述べる例は何れも、本発明を制限する意はなく、特許請求する発明として考えられ得る多くの実施形態の一部を述べるものに過ぎない。
本明細書及び添付の特許請求の範囲においては、単数形は、別途明確に指示のない限り、複数形の意を包含する。別途規定しない限り、本明細書で用いる全ての技術用語並びに科学用語は、本発明の属する技術分野における当業者に一般的に理解されるているものと同じ意味を有する。
数値範囲を提示する場合、別途明確に指示のない限り、その上限と下限の間の介在値が本発明の範囲に包含されることを理解されたい。これらの比較的狭い範囲の上限及び下限は、特に除外しない限り、当該範囲内に包含され、同様に本発明に包含される。
処理表面を有する基材
本発明の一実施形態では、処理表面を有する基材は、ナノ粒子によって標識化されたサンプル(例えば、分析物)と結合するが、この場合、処理表面とナノ粒子標識との間の相互作用によって、検出波長がシフトしたり、発光ピークの強度が増大したり、又は発光ピークが消えたりし、それによって光学的検出が改善される。当該処理表面は、標識ナノ粒子の環境を変化させることによって、検出(例えば、測定感度)を改善する。一実施形態では、基材は、光学的測定において使用するための処理表面を備える。一実施形態では、処理表面に結合しているナノ粒子標識済み分析物に関する波長のシフトによって、検出の基礎がもたらされる。
処理表面を有する基材
本発明の一実施形態では、処理表面を有する基材は、ナノ粒子によって標識化されたサンプル(例えば、分析物)と結合するが、この場合、処理表面とナノ粒子標識との間の相互作用によって、検出波長がシフトしたり、発光ピークの強度が増大したり、又は発光ピークが消えたりし、それによって光学的検出が改善される。当該処理表面は、標識ナノ粒子の環境を変化させることによって、検出(例えば、測定感度)を改善する。一実施形態では、基材は、光学的測定において使用するための処理表面を備える。一実施形態では、処理表面に結合しているナノ粒子標識済み分析物に関する波長のシフトによって、検出の基礎がもたらされる。
一実施形態では、基材は、少なくとも1つの処理表面を支持するのに適した表面を有する、任意の中実物体である。一実施形態では、基材には、限定はしないが、細片、ディップスティック、スライド、ウェーハ、紙、カップ、細胞、ウェル、及びプレートが含まれる。一実施形態では、基材は、1つの処理表面を備える。他の実施形態では、基材は、2つ以上の処理表面を備える。一実施形態では、基材は、POCTで使用するのに適している。
一実施形態では、本発明は、サンプルのポイント・オブ・ケア試験(POCT)において、少なくとも1つの分析物を検出するのに向くキット、基材、及び方法に関する。ポイント・オブ・ケア試験(POCT)は、緊急救命室、手術室、病院実験室及び他の臨床実験室、医師の事務所において、現場において、又は迅速且つ正確な結果が望まれる任意の状況においてなどのような、治療(処置)を行う場所で採用されるように設計された試験である。POCTシステム、デバイス、及び方法は、データ診断試験、又は免疫アッセイ、化学アッセイ、核酸アッセイ、熱量アッセイ、蛍光アッセイ、化学発光及び生物発光アッセイをはじめとするアッセイ及び他のこうした試験のデータを処理し、医学的状態や、その危険性若しくはその疑いが無いことといった指示(表示)をもたらす。
処理表面は、基材表面上の或る領域に複数のナノ構造が固定化されて成る。一実施形態では、処理表面はまた、以下に述べるように、分析物に結合する固定化分子を含む。本明細書で用いるとき、基材若しくは基材表面の「領域」とは、基材若しくは基材表面近傍の部分を指す。
一実施形態では、処理表面と標識ナノ粒子との組み合わによって、検出可能な発光が生じる。他の一実施形態では、処理表面と標識ナノ粒子との組み合せによって、光学スペクトル(光学範囲)における検出可能な発光が生じる。一実施形態では、光学スペクトルとは、約100nm〜約1600nmの波長を有する光放射を指す。一実施形態では、処理表面と標識ナノ粒子との組み合せによって、可視スペクトルにおける検出可能な発光が生じる。一実施形態では、可視スペクトルとは、約360nm〜約800nmの波長を有する光放射を指す。一実施形態では、処理表面と標識ナノ粒子とを組み合せることによって、紫外スペクトルにおける検出可能な発光が生じる。一実施形態では、紫外スペクトルとは、可視光の波長より小さい(即ち、約360nmより小さい)が、X線の波長より大きい(即ち、約0.1nmより大きい)波長を有する放射を指す。一実施形態では、処理表面と標識ナノ粒子とを組み合せることによって、赤外スペクトルにおける検出可能な発光が生じる。一実施形態では、赤外スペクトルとは、800nmより大きい波長を有する放射を指す。
一実施形態では、検出可能な発光は、局在表面プラズモン共鳴である。局在表面プラズモン共鳴は、正確な波長の光が金属ナノ構造に衝当する際に起こり、伝導電子のプラズマを集団的に振動させる。この励起は、ナノ構造表面において、選択的な光子吸収及び局所的に増大又は増幅した電磁場の生成を引き起こす。例えば、20〜数百ナノメートルサイズ領域の貴金属ナノ粒子についての局在表面プラズモン共鳴は、スペクトルの可視領域及びIR領域で起こり、UV−可視−IR消光分光法によって測定することができる(Haynes他,2001,J.Phys.Chem.B105:5599-5611)。
一実施形態では、処理表面は、標識ナノ粒子と相互作用するための材料及び/又は構造を含む。一実施形態では、処理表面は、限定はしないが、TiO2、Al2O3、及びSi等の高屈折率材料を含む。高屈折率材料とは、2.5eV以上のバンドギャップを有する誘電体又は絶縁材料を指す。一実施形態では、処理表面は、限定はしないが、ナノ粒子、ナノワイヤ、ナノチューブ、及び量子ドット等のナノ構造を含む。他の一実施形態では、ナノ構造は、金属材料から形成される。他の一実施形態では、ナノ構造は、貴金属から形成される。さらに別の実施形態では、ナノ構造は、限定はしないが、銅(Cu)、銀(Ag)、金(Au)、又はプラチナ(Pt)等の材料から形成される。代替的な一実施形態では、ナノ構造は、限定はしないが、CdTe、CdSe、ZnSe、ZnS、Si、Ge、並びに(B、Al、Ga、In)及び(N、P、As、Sb、及びBi)からなるIII−V族として知られるタイプの半導体、及びその組み合せなどのような、半導体材料から形成される。
図1は、処理表面の概略的な一実施形態を示している。図1は、処理表面の一実施形態の断面を示している。処理表面20は、基材22上に支持されている。処理表面20は、ナノ構造24を含む。処理表面20はさらに、ナノ構造24に結合した固定化分子26を含む。
処理表面の代替的な一実施形態を図2に示す。図2は、他の実施形態の処理表面の断面を示している。処理表面20は、基材22上に支持されている。処理表面20は、層28を含む。固定化分子30は、処理表面20の層28に結合している。
代替的な一実施形態では、処理表面は、1000μm(ミクロン;10−6m)未満のタイル上に形成される。タイルの寸法は、一般に、処理表面を保持する表面の領域の寸法(即ち、長さ及び幅)を指す。一実施形態では、個々のタイルの表面寸法は、約5μm〜約500μmである。他の一実施形態では、個々のタイルの表面寸法は、約10μm〜約100μmである。一実施形態では、各タイルは、少なくとも1つの処理表面を保持する。他の一実施形態では、各タイルは、1つの処理表面を保持する。一実施形態では、パターニングされたタイルは、検出領域上に付与された懸濁物又はペーストとして、基材に適用される。
一実施形態では、処理表面と標識ナノ粒子との組み合わせは、所定の発光波長における発光を増加させ、且つ/又は線幅を減少させる(即ち、波長帯域を狭くする)ように選択される。他の一実施形態では、処理表面と標識ナノ粒子の平均的な所望の組み合せは、比較的長い波長における局在表面プラズモン共鳴を改善するように選択される。他の一実施形態では、光学検出器がより敏感となる、比較的長い波長における共鳴を選択することによって検出が改善される。一実施形態では、光学検出器は、シリコンフォトダイオードである。例えば、シリコンフォトダイオードは、約700nm〜約1000nmにおいて、その範囲外(例えば、450nm)よりも、スペクトル感度が高い。
一実施形態では、処理表面は、物理堆積又は化学堆積、リソグラフィ、エンボス処理、モールディング、又はスポッティング等の既知の技法によって、基材表面の或る領域上に形成される。一実施形態では、リソグラフィ、エンボス処理、モールディング、又はスポッティング等の既知の技法によって表面を調製し、次いで、ナノ構造を表面に結合させる。一実施形態では、支持体の表面は、ナノ構造若しくは固定化分子との結合に向くように、変性された表面化学作用を有する。一実施形態では、この変性された表面化学作用としては、限定はしないが、各スポットにおける疎水性若しくは電荷の変性が挙げられる。一実施形態では、表面変性は、光リソグラフィ、電子線リソグラフィ、スタンピング、又はナノ粒子(nanosphere)リソグラフィ等のボトムアップ技法、又はブロックコポリマーの集合(成長、assembly)によって達成される。
一実施形態では、処理表面は、ナノ粒子リソグラフィによって形成される。ナノ粒子リソグラフィは、精密に制御された形状、寸法、及び構造間間隔、従って、精密に制御された局在表面プラズモン共鳴を呈する処理表面の製造方法である(Hulteeらによる、1195,J.Vac.Sci.Technol.A 13:1553-1558参照)。ナノ粒子リソグラフィによって構築される構造は、サイズ単分散ナノ粒子の自己秩序化(自己組織化、self-assembly)で始まり、2次元のコロイド結晶堆積マスクを形成する。ナノ粒子マスクの自己秩序化の後、熱蒸着、電子線堆積又はパルスレーザ堆積法を用いて、基材に垂直なソースから、ナノ粒子マスクを介して、貴金属若しくは他の材料を、制御された物質厚さdmになるまで堆積させる。貴金属の堆積後、サンプル全体を溶剤中で超音波処理することによってナノ粒子マスクを除去すると、ナノ粒子マスクを介して基材に堆積した材料が残る。ナノ粒子リソグラフィによって生成された構造の局在表面プラズモン共鳴は、ナノ構造の材料、寸法、形状、構造間間隔、基材、溶剤、誘電体薄膜オーバレイ、及び分子吸着質に依存する(Hayneらによる、2001,J.Phys.Chem.B.,105:5599-5611)
一実施形態では、基材はアレイを備える。別途指示のない限り、「アレイ」とは、1つ又は複数の特定の化学成分(例えば、抗体等の生体分子)を有するアドレス指定可能な領域の1次元配列、2次元配列、又は3次元配列を包含する。一実施形態では、各領域は、処理表面を含む。アレイは、異なる成分(例えば、異なる抗体)から成る複数の領域を有し、それによって、アレイの特定の位置(「アドレス」)にある領域(アレイの「フィーチャー」又は「スポット」)は、特定の標的(ターゲット)又は標的の種類を検出することができるため、アレイは、「アドレス指定可能」である(ターゲットでないものを偶然に、即ち、非特異的に検出する場合はあるが)。アレイのフィーチャー同士は、通常、介在する空間で隔てられているが、必ずしもそうである必要はない。アレイに関していう場合、「分析物」とは、基材の種々の領域に結合している固定化分子によって検出されることになる、移動相(通常、流体)の一成分を表す。ここで、「分析物」及び「固定化分子」は、一方が他方によって評価されるような組み合わせとし得る。固定化分子は、直に又はリンカー分子を介して、非多孔性若しくは多孔性の基材表面に共有結合させたり、又は、中間層(ポリリシン等)若しくは多孔性基材を用いて表面に吸着させることができる。
一実施形態では、基材はアレイを備える。別途指示のない限り、「アレイ」とは、1つ又は複数の特定の化学成分(例えば、抗体等の生体分子)を有するアドレス指定可能な領域の1次元配列、2次元配列、又は3次元配列を包含する。一実施形態では、各領域は、処理表面を含む。アレイは、異なる成分(例えば、異なる抗体)から成る複数の領域を有し、それによって、アレイの特定の位置(「アドレス」)にある領域(アレイの「フィーチャー」又は「スポット」)は、特定の標的(ターゲット)又は標的の種類を検出することができるため、アレイは、「アドレス指定可能」である(ターゲットでないものを偶然に、即ち、非特異的に検出する場合はあるが)。アレイのフィーチャー同士は、通常、介在する空間で隔てられているが、必ずしもそうである必要はない。アレイに関していう場合、「分析物」とは、基材の種々の領域に結合している固定化分子によって検出されることになる、移動相(通常、流体)の一成分を表す。ここで、「分析物」及び「固定化分子」は、一方が他方によって評価されるような組み合わせとし得る。固定化分子は、直に又はリンカー分子を介して、非多孔性若しくは多孔性の基材表面に共有結合させたり、又は、中間層(ポリリシン等)若しくは多孔性基材を用いて表面に吸着させることができる。
「アレイレイアウト」とは、アレイ又はアレイ上のフィーチャーの1つ又は複数の特性を指す。当該特性には、以下のうちの1つ又は複数が含まれる:基材上におけるフィーチャーの配置;1つ又は複数のフィーチャー寸法;所与の位置における成分の識別若しくは性質(例えば、化学的又は生物学的)の表示;アレイの取り扱い条件(例えば、アレイをサンプルに露出する際の条件、又はサンプル露出後のアレイの読み取り条件若しくは操作)。
処理表面及び固定化分子
一実施形態では、処理表面は、分析物に対して所定の結合親和性を有する少なくとも1つの固定化分子を有する。本明細書において用いるとき、用語「固定化」とは、支持体、領域、又はアレイに結合した分子に関して用いられ、分子が移動しないように、支持体、領域、又はアレイ上に安定に配向されていることを指す。一実施形態では、固定化分子は、共有結合、イオン相互作用(イオン結合)、静電的相互作用、又はファンデルワールス力によって結合される。一実施形態では、固定化分子は、処理表面に結合している。他の実施形態では、固定化分子は、ナノ構造に結合している。さらに他の実施形態では、固定化分子は、基材表面に結合している。さらに他の実施形態では、固定化分子は、ナノ構造間の基材表面に結合している。
処理表面及び固定化分子
一実施形態では、処理表面は、分析物に対して所定の結合親和性を有する少なくとも1つの固定化分子を有する。本明細書において用いるとき、用語「固定化」とは、支持体、領域、又はアレイに結合した分子に関して用いられ、分子が移動しないように、支持体、領域、又はアレイ上に安定に配向されていることを指す。一実施形態では、固定化分子は、共有結合、イオン相互作用(イオン結合)、静電的相互作用、又はファンデルワールス力によって結合される。一実施形態では、固定化分子は、処理表面に結合している。他の実施形態では、固定化分子は、ナノ構造に結合している。さらに他の実施形態では、固定化分子は、基材表面に結合している。さらに他の実施形態では、固定化分子は、ナノ構造間の基材表面に結合している。
他の実施形態では、固定化分子は、分析物に対して特異的な結合親和性を有している。結合親和性とは、固定化分子が分析物若しくは他のリガンドを結合する強さの程度を指す。数理的には、親和性は1/Kdであり、ここでKdはk2/k1である(k2は固定化分子からの分析物の解離速度であり、k1は固定化分子への分析物の結合速度である)。親和性が高ければ高いほど(即ち、Kdが低いほど)、分析物は、固定化分子に強く結合する。特異的な結合親和性とは、競合するリガンドの中から分析物を識別する固定化分子の能力を指す。他の実施形態では、特異的な結合親和性とは、他の競合するリガンドがサンプル中に存在する場合に、分析物と優先的に結合する固定化分子の能力を指す。
一実施形態では、POCTにおいて使用するための基材は、2つ以上の処理表面を備える。2つ以上の処理表面を備える基材の一実施形態を、図3に示している。図3は、第1の処理表面32及び第2の処理表面34を備える基材22の一実施形態の断面を示している。第1の処理表面32は、複数のナノ構造36と固定化分子38とを含む。第2の処理表面34は、複数のナノ構造40と固定化分子42とを含む。一実施形態では、固定化分子38と固定化分子42は異なる分子である。
一実施形態では、処理表面は、同じ化学成分から成る複数の固定化分子を含む。一実施形態では、基材が2つ以上の処理表面を備える場合、各処理表面は、同じ固定化分子を有する。一実施形態では、基材は、第1の複数の固定化分子から成る第1のアレイと、第2の複数の固定化分子から成る第2のアレイとを備えており、第1の複数の固定化分子と第2の複数の固定化分子は、同じ素性の固定化分子から成る。一実施形態では、基材は、2つ以上の処理表面を備えており、各処理表面は、アレイ間で異なる素性の固定化分子を含む。一実施形態では、基材は、第1の固定化分子を含む第1の処理表面と、第2の固定化分子を含む第2の処理表面とを備えており、この場合、第1の固定化分子は第2の固定化分子とは異なる。
一実施形態では、固定化分子は、少なくとも1つの分析物分子と結合する。一実施形態では、固定化分子は、以下に述べるように、相互作用を検出するのに十分な親和性でもって、少なくとも1つの分析物に結合する。一実施形態では、固定化分子は、分析物に対して特異的な結合親和性を有する。一実施形態では、固定化分子は、それが有する分析物分子への結合能のために、処理表面へ含まれるよう選択される。
用語「分析物」は、検出に適する、任意の分子若しくは原子又は分子複合体を指す。一実施形態では、分析物の例としては、限定はしないが、種々の生体分子(例えば、蛋白質、核酸、脂質等)、グルコース、アスコルビン酸、乳酸、尿素、殺虫薬、生物化学兵器、汚染物資、及び爆薬が挙げられる。一実施形態では、分析物は、複数のリガンドを含有する可能性のあるサンプル中の1つの構成要素である。一実施形態では、分析物分子は、POCT用サンプル内に存在し得る被検出物質である。
一実施形態では、少なくとも1つの処理表面は、非特異的な結合特性を有する固定化分子を含む。非特異的な結合とは、サンプル中に存在する分析物及び/又は他のリガンドに分子が無差別に結合することを指す。一実施形態では、非特異的な結合親和性を有する固定化分子は、サンプル内の複数のリガンドに結合する。一実施形態では、固定化分子は、分析物及び他のリガンドに対して非特異的な結合親和性を有する。一実施形態では、比較対照として利用するために、複数のリガンドに結合する非特異的な結合親和性を有する固定化分子は、被検出分析物に対して特異的な結合親和性を有する固定化分子と比較される。
一実施形態では、処理表面は、他のアレイに結合している分析物を測定するための参照チャネル、即ち、比較対照として利用される、非特異的な結合特性を有する固定化分子を含む。一実施形態では、基材は、比較対照用処理表面と1つ又は複数の他の処理表面とを備える。一実施形態では、基材は、第1のアレイと第2のアレイとを含み、第2のアレイは比較対照用アレイである。他の実施形態では、参照チャネル、即ち、比較対照として使用するための処理表面は、同じナノ構造材料から形成されており、且つ基材上の1つ又は複数の他のアレイと同じ方法にて形成されている。
一実施形態では、処理表面は、陽性コントロール(陽性比較対照、positive control)として使用するための、非特異的な結合特性を有する固定化分子を含む。一実施形態では、陽性コントロールは、ナノ粒子標識済み化合物と結合する固定化分子を有する。他の実施形態では、処理表面の検出は、100%反応を示す陽性コントロールである。一実施形態では、陽性コントロールは、他のチャネル、領域、又はアレイに結合した分析物を測定するための参照チャネルとして用いられる。
特定の実施形態では、固定化分子と分析物は、限定はしないが、抗体/抗原、抗体/抗体、抗体/抗体断片、抗体/抗体レセプター、抗体/蛋白A又は蛋白G、ハプテン/抗ハプテン、ビオチン/アビジン、ビオチン/ストレプトアビジン、葉酸/葉酸結合蛋白、ビタミンB12/内因性因子、核酸/相補的核酸(例えば、DNA、RNA、PNA)、及び化学反応基/相補的化学反応基(例えば、スルフヒドリル/マレイミド、スルフヒドリル/ハロアセチル誘導体、アミン/イソトリオシアネート、アミン/スクシンイミジルエステル、及びアミン/スルホニルハライド)をはじめとする、任意の結合対である。
或る特定の実施形態では、固定化分子は、分析物の細胞結合パートナー(cellular binding partner)である。例えば、分析物が、EGFレセプターのようなレセプター蛋白キナーゼのサブ領域である場合は、結合パートナーは、EGF又はその機能断片であり;分析物が核酸である場合は、結合パートナーは、転写因子又はヒストン或いはそれらの機能部分であり;又は、分析物がグリコシル成分である場合は、結合パートナーは、グリコシル結合性蛋白又はその一部であり得る。
分析物としては、蛋白質、ペプチド、アミノ酸、ホルモン、ステロイド、ビタミン、治療目的で投与される薬剤並びに違法な目的で投与される薬剤をはじめとする薬剤、細菌、ウィルス、及び上記物質の代謝物又は上記物質の抗体を挙げることができる。詳細には、当該分析物としては、限定はしないが、フェリチン;クレアチニンキナーゼMB(CK−MB);ジゴキシン;フェニトイン;フェノバルビタール;カルバマゼピン;バンコマイシン;ゲンタマイシン、テオフィリン;バルプロ酸;キニジン;黄体形成ホルモン(LH);ろ胞刺激ホルモン(FSH);エストラジオール、プロジェステロン;IgE抗体;ビタミンB2マイクログロブリン;糖化ヘモグロビン(Gly Hb);コルチゾール;ジギトキシン;N−アセチルプロカインアミド(NAPA);プロカインアミド;風疹IgG及び風疹IgM等の風疹に対する抗体;トキソプラスマ症IgG(Toxo−IgG)及びトキソプラスマ症IgM(Toxo−IgM)等のトキソプラスマに対する抗体;テストステロン;サリチル酸塩;アセトアミノフェン;抗肝炎Bコア抗原IgG及びIgM(抗HBC)等の肝炎Bコア抗原;人免疫不全ウィルス1及び2(HIV1及び2);人T細胞白血病ウィルス1及び2(HTLV);肝炎B抗原(HBAg);肝炎B抗原に対する抗体(抗HB);甲状腺刺激ホルモン(TSH);チロキシン(T4);全トリイオドシロニン(triiodothyronine)(TotalT3);遊離トリイオドシロニン(FreeT3);癌胎児性抗原(CEA);及びアルファ胎児蛋白(AFP)が挙げられる。乱用及び統制物質の薬剤としては、限定はしないが、アンフェタミン;メタンフェタミン;アモバルビタール、セコバルビタール、ペントバルビタール、フェノバルビタール、及びバルビタール等のバルビツール酸塩;リブリウム及びベイリウム等のベンゾジアゼピン;ハシーシ及びマリワナ等のカンナビノイド;コカイン;フェンタニル;LSD;メタカロン;ヘロイン、モルヒネ、コデイン、ヒドロモルフォン、ヒドロコドン(hydrocodone)、メサドン、オキシコドン、オキシモルフォン、及びアヘン等のアヘン剤;フェンシクリジン;並びにプロポキシフェンが挙げられる。特異的な結合成分として用いられるこれらの抗体の調製並びにそれらの適性についての詳細は当業者には周知である。
一実施形態では、固定化分子は、分析物に対し所定の結合親和性を有する抗体である。他の実施形態では、処理表面は、ランダムに分布した抗体を含む。他の実施形態では、処理表面は、抗体を結合させるために、パターニングされたり、又は化学的に改質されている。
標識ナノ粒子
一実施形態では、標識ナノ粒子は、検出すべき分析物に結合される。一実施形態では、標識ナノ粒子は、サンプル中の、(もし存在すれば)分析物を含む多くのリガンド(例えば、サンプル構成要素)に結合される。標識ナノ粒子は、既知の技法によって、サンプル中の分析物及び他のリガンドに結合される。一実施形態では、標識ナノ粒子は、架橋結合的化学作用によって分析物に結合される。一実施形態では、架橋結合剤は、標識ナノ粒子と分析物との反応性に応じて選択される。
標識ナノ粒子
一実施形態では、標識ナノ粒子は、検出すべき分析物に結合される。一実施形態では、標識ナノ粒子は、サンプル中の、(もし存在すれば)分析物を含む多くのリガンド(例えば、サンプル構成要素)に結合される。標識ナノ粒子は、既知の技法によって、サンプル中の分析物及び他のリガンドに結合される。一実施形態では、標識ナノ粒子は、架橋結合的化学作用によって分析物に結合される。一実施形態では、架橋結合剤は、標識ナノ粒子と分析物との反応性に応じて選択される。
他の実施形態では、EDC(1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミドヒドロクロリド)/スルホ−NHS(N−ヒドロキシ−スルホスクシンイミド)架橋法が利用される。例えば、サンプルを、0.2MのEDC及び25mMのNHSから成る新しく調製された溶液と混合し、次いで、標識ナノ粒子を添加する。代替例では、金標識ナノ粒子を、HS(CH2)2CH3及びHS(CH2)2COOHと、24時間撹拌混合し、その後、30分間、ECD及びNHSと反応させることによって調製される。次いで、この調合物を、サンプル又は標識される分析物に添加する。
一実施形態では、標識ナノ粒子は、ナノスケールサイズの固体金属粒子を指す。一実施形態では、標識ナノ粒子は、或る金属から成る固体金属粒子であり、その表面プラズモンは、可視放射によって励起される。他の実施形態では、標識ナノ粒子は、銅(Cu)、銀(Ag)、金(Au)、又はプラチナ(Pt)から成る固体金属粒子である。
一実施形態では、標識ナノ粒子は、金属層(例えば、金属ナノシェル)でコ−ティングされたナノスケールサイズのコア(例えば、ナノ粒子)を指す。一実施形態では、コア直径及びナノシェルの金属厚は、ナノ粒子のSERS特性を変更するために変化させ得る。例えば、R.L.Moody,T.Vo-Dinh及びW.H.Fletcherによる、「Investigation of Experimental Parameters for Surface-Enhanced Raman Spectroscopy」Appl.Spectrosc.,41.966(1987)を参照されたい。一実施形態では、ナノ粒子は、誘電体材料から形成される。一実施形態では、ナノ粒子は、金属の薄層でコーティングされており、その表面プラズモンは可視放射によって励起される。他の実施形態では、ナノシェルは、銅(Cu)、銀(Ag)、又は金(Au)の金属から形成される。一実施形態では、ナノ粒子は、表面プラズモンが可視放射によって励起される金属の薄層でコーティングされる。他の実施形態では、ナノシェルは、銅(Cu)、銀(Ag)、金(Au)、又はプラチナ(Pt)等の貴金属から形成される。
一実施形態では、標識ナノ粒子は、約1nm〜約1000nmの平均直径を有する。他の実施形態では、ナノ粒子は、約10nm〜約500nmの平均直径を有する。さらに別の実施形態では、標識ナノ粒子は、約10nm〜約100nmの平均直径を有する。さらに他の実施形態では、標識ナノ粒子は、約10nm〜約50nmの平均直径を有する。
一実施形態では、標識ナノ粒子は、アレイナノ構造とほぼ同じ寸法である。一実施形態では、標識ナノ粒子は、アレイナノ構造と寸法が異なる。一実施形態では、標識ナノ粒子は、アレイナノ構造と同じ又は類似の材料から形成される。一実施形態では、標識ナノ粒子は、アレイナノ構造とは異なる材料から形成される。
方法
一実施形態では、POCTデバイスは、サンプル中の特定の分析物の存在を検出するために、固定化された親和性分子と分析物分子との間のアッセイを行うための処理表面を備えた基材を利用する。固定化された親和性分子とは、標的分析物に結合し得る分子である。
方法
一実施形態では、POCTデバイスは、サンプル中の特定の分析物の存在を検出するために、固定化された親和性分子と分析物分子との間のアッセイを行うための処理表面を備えた基材を利用する。固定化された親和性分子とは、標的分析物に結合し得る分子である。
本明細書で用いるとき、用語「サンプル」とは、最も広い意味で使用される。或る意味では、サンプルは、生物学的サンプル及び環境サンプル、並びに任意のソースから得られた標本又は培養物を包含するように意図される。生物学的サンプルは、動物(人を含む)から得ることができ、それには、流体、固体、組織、及び気体が包含され得る。生物学的サンプルには、血漿、血清等の血液製品が含まれる。環境サンプルには、表層物質(surface matter)、土壌、水、結晶、及び工業サンプル等の環境材料が含まれる。しかしながら、こうした例は、本発明に適用可能なサンプルの種類を限定するものと解釈されるべきではない。
本明細書で用いるとき、ナノ粒子アレイからの信号を検出するように構成されたデバイスとは、処理表面及び/又は処理表面に結合したナノ粒子からの信号を検出するのに適する任意のデバイスを指す。幾つかの実施形態では、当該デバイスには、光伝達素子及び受光素子、レーザ又はLED源、ノッチフィルタ、及び検出器が含まれる。一実施形態では、当該デバイスは、光学読み取り器を含む。一実施形態では、光学読み取り器の目(受光部)は、処理表面及び/又はそれに結合したナノ粒子によって散乱した光を、それらの表面プラズモン共鳴によって検出する。
アレイに使用するための基材の一実施形態を、図4に示す。図4は、処理表面44を備える基材22の一実施形態の断面図を示している。処理表面44は、複数のナノ構造46と固定化分子48を含む。分析物50は、標識ナノ粒子52により標識化されている。さらに、分析物50は、固定化分子48に結合する。固定化分子48と分析物50との結合相互作用によって、標識ナノ粒子52は処理表面44に近接するようになる。分析物50の結合性は、入射光λiにて処理表面44を照射し、少なくとも1つの発光ピークλ2にて光学分光を実施することによって検出される。
アレイに使用するための基材の他の実施形態を、図5に示す。図5の実施形態では、基材22は、処理表面54を備えており、該処理表面54は、高屈折率材料層56を有する。固定化分子58は、高屈折率材料層56に結合している。この図では、標識ナノ粒子62を有する分析物60が固定化分子58と結合している様子が示されている。固定化分子58と分析物60との結合相互作用によって、標識ナノ粒子62は、処理表面54に近接するようになる。他の例示的な一実施形態では、固定化分子58は、抗体である。他の実施形態では、ナノ粒子62は、金属材料で形成される。
他の実施形態を、図6に示す。図6は、POCTで使用するのに適している、基材64の一実施形態の断面図を示している。一実施形態では、基材64は、第1の固定化分子68を有する第1の処理表面66と、第2の固定化分子72を有する第2の処理表面70を備える。基材64はさらに、サンプル開口(サンプル入口)74及び標識化エリア76を備える。一実施形態では、分析物78を含有するサンプルは、基材64のサンプル開口74上に配される。サンプル開口74は、分析物78を含有するサンプルが標識化エリア76へと流れるように、標識化エリア76に接続されている。分析物78を含有するサンプルは、標識化エリア76において、ナノ粒子80で標識化される。標識化エリア76は、第1の処理表面66及び第2の処理表面70に接続されており、それによって、分析物78を含有するサンプルは、これらのエリアへと流れる。一実施形態では、第1の処理表面66には、分析物78に対して特異的な結合親和性を有する固定化分子68が結合している。一実施形態では、第2の処理表面70には、分析物78に対して非特異的な結合親和性を有する固定化分子72が結合している。一実施形態では、固定化分子に結合していない分析物78及び/又は他のサンプル構成要素(図示せず)を、検出の前に、基材から(例えば、洗浄によって)除去する。一実施形態では、基材64を光源(図示せず)にさらし、標識ナノ粒子と、第1及び第2の処理表面の一方若しくは両方との組み合せから生じる発光を検出する。
少なくとも1つの処理表面を備える基材を用いることで、ナノ粒子で標識化された多様な分析物について、多くのタイプのアッセイを実行することができる。一実施形態では、実施し得るアッセイには、限定はしないが、一般的な化学アッセイ及び免疫アッセイが含まれる。一実施形態では、定性的アッセイが実施される。一実施形態では、定量的アッセイが実施される。
一実施形態では、単一アッセイが実施される。他の実施形態では、単一アッセイを実施するための基材は、単一の処理表面を備える。別の実施形態では、単一アッセイを実施するための基材は、複数の処理表面を備える。
一実施形態では、複数アッセイを一度に実施することができる。他の実施形態では、基材は、複数の処理表面を備える。他の実施形態では、基材は、同じではない複数の処理表面を備える。同じではない複数の処理表面とは、2つ以上のアレイ間において、限定はしないが、ナノ構造材料、粒子の寸法若しくは形状、構造間間隔、及び固定化分子の素性等において差異があることを指す。例えば、一実施形態では、基材は、単一サンプルから、総コレステロールを検出するアレイと、HDLコレステロールを検出する他のアレイを備える。種々の実施形態において、基材は、1つ、2つ、3つ、又はそれより多い分析物を一度に分析、測定するために、様々な数の処理表面を備える。
1つの典型的なアレイアッセイ法では、分析物に対して特異的な結合親和性を有する固定化分子を有する少なくとも1つの処理表面を備えた基材が用いられる。各分析物は、少なくとも1つの標識ナノ粒子と結合している。溶液内において分析物がアレイに結合するのを促進するのに十分な条件下で、ナノ粒子標識済み分析物を含有する溶液を、基材の、処理表面を含む領域に接触させる。一実施形態では、当該アッセイ法は、未結合サンプルを除去するための洗浄ステップを包含する。固定化分子と分析物との結合によって、処理表面に結合しており且つ少なくとも1つの標識ナノ粒子を含むところの結合複合体が形成される。
一実施形態では、ナノ粒子標識済み分析物が処理表面に近接することによって、組み合せ体が生じる。他の実施形態では、この組み合せ体は、ハイブリッド自己秩序化超構造(hybrid self-assembled super structure)と称される。一実施形態では、処理表面と標識ナノ粒子との組み合せは、標識ナノ粒子を含むものの処理表面を備えない基材とは異なる発光スペクトルを示す。少なくとも1つの親和性分子と少なくとも1つのナノ粒子標識済み分析物とが結合すると、ソース(例えば、光学分光法用のソース)を用いて処理表面と標識ナノ粒子との組み合せを励起する際に検出可能な発光を生じる。一実施形態では、処理表面の検出可能な発光又は共鳴は、ナノ構造の発光又は共鳴に起因する。一実施形態では、処理表面の検出可能な発光又は共鳴は、処理表面に結合した、少なくとも1つのナノ粒子標識済み分析物の発光又は共鳴に起因する。一実施形態では、処理表面の検出可能な発光又は共鳴は、ナノ構造の発光又は共鳴と、処理表面に結合した少なくとも1つのナノ粒子標識済み分析物の発光又は共鳴に起因する。
一実施形態では、結合したナノ粒子標識済み分子について検出される発光又は共鳴波長は、λ1である。一実施形態では、標識ナノ粒子が処理表面に結合している時と、標識ナノ粒子が処理表面に結合していない時とでは、検出可能な発光に差がある。他の実施形態では、検出可能な差は、検出波長のシフト(変位)である(例えば、λ1→λ2)。代替の実施形態では、検出可能な差は、発光の強さ(例えば、強度)の増加又は減少である。他の実施形態では、発光強度の差は、λ1にある(ソースはλiである)。
一実施形態では、処理表面は、光学分光法用のソースで励起される。一実施形態では、ソースには、レーザー等の広帯域ソース又は狭帯域ソースが含まれる。一実施形態では、処理表面のソースによる励起によって、適切な検出器で検出されるプラズモン共鳴が生じる。一実施形態では、発光若しくは共鳴又はそれの差は、人の目で検知可能である。一実施形態では、処理表面の発光パターンは、コンピュータ分析のために、デジタル的に走査される。種々の実施形態では、処理表面の発光スペクトルは、化学分析用のデータを生成するのに使用することができる。さらなる種々の実施形態では、データは、限定はしないが、薬物リガンドの同定、単一塩基多型マッピング、処置に対する患者の反応を追跡するのための患者由来サンプルのモニタリング、並びに新しい処置の効力の評価のために、使用される。
分析物の存在について試験されるサンプルは、全血、又は、赤血球、白血球、血小板、血清、及び血漿を含む全血成分;腹水;尿;汗;乳;滑膜流体;腹膜流体;羊水;脳脊髄液;及び対象となる分析物を含有し得る体の他の成分を含む生理学的流体等の、任意の生物学的ソースから得ることができる。試験サンプルは、使用前に、例えば水性緩衝液への懸濁若しくは希釈、血液からの血漿の調製、粘性流体の希釈などのような前処理を行うことができ、処置方法には、ろ過、蒸留、濃縮、及び試薬の添加が含まれ得る。生理的流体以外に、環境若しくは食品アッセイを実施するために、水、食品等のような他の液体サンプルを使用することができる。また、分析物を含有する疑いのある固体材料を試験サンプルとして使用することができる。幾つかの場合には、固体試験サンプルを改質して、液体媒体を形成したり、分析物を放出させたりすることが有益である場合がある。分析物には、検出又は測定されることになる任意の化合物若しくは組成物を用いることができ、それは、少なくとも1つのエピトープ(抗原決定基)又は結合サイトを有する。
説明のための例
例1
第1の実施形態例では、サンプル中の分析物を検出するための処理表面は、局在表面プラズモン共鳴を呈する、指定パターンの貴金属ナノ粒子アレイを備える。一実施形態では、アレイに結合している固定化分子は、分析物に対し所定の結合親和性を有する抗体である。一実施形態では、ナノ粒子は、金ナノ粒子又は銀ナノ粒子である。処理表面のナノ粒子のパターンは、初期波長λiのソースを用いてアレイ(分析物は結合していない)を励起する際に、アレイが所与の波長λ1にて共鳴するように選択される。一実施形態では、λ1は、アレイに特徴的な色をもたらす可視範囲の波長である。
説明のための例
例1
第1の実施形態例では、サンプル中の分析物を検出するための処理表面は、局在表面プラズモン共鳴を呈する、指定パターンの貴金属ナノ粒子アレイを備える。一実施形態では、アレイに結合している固定化分子は、分析物に対し所定の結合親和性を有する抗体である。一実施形態では、ナノ粒子は、金ナノ粒子又は銀ナノ粒子である。処理表面のナノ粒子のパターンは、初期波長λiのソースを用いてアレイ(分析物は結合していない)を励起する際に、アレイが所与の波長λ1にて共鳴するように選択される。一実施形態では、λ1は、アレイに特徴的な色をもたらす可視範囲の波長である。
金ナノ粒子又は銀ナノ粒子で標識化された分析物若しくは他のリガンドを、抗体−抗原認識化学作用を介して、処理表面に結合させることによって、処理表面上の共鳴構造に混乱、即ち、乱れが生じる。これは、初期波長λiでの励起時の色散乱に著しい変位をもたらす(例えば、λi→λ2、ここでλ1≠λ2である)。よって、一実施形態では、検出される発光又は共鳴波長を、λ2(ナノ粒子標識済み分析物が結合している場合)又はλ1(ナノ粒子標識済み分析物が結合していない場合)の一方又は両方と比較することによって、処理表面に対する分析物の結合性が測定される。他の実施形態では、λ2(ナノ粒子標識済み分析物が結合している場合)又はλ1(ナノ粒子標識済み分析物が結合していない場合)の一方又は両方は、可視スペクトル内の色である。他の実施形態では、λ1の色及び/又はλ2の色は、人の目で検知可能である。
例2
第2の実施形態例では、サンプル中の分析物を検出するための処理表面は、高屈折率材料から成るアレイを備える。一実施形態では、アレイは、TiO2から成るナノ構造を含む。他の実施形態では、基材もまた、TiO2等の高屈折率材料である。先に述べたように、貴金属ナノ粒子で標識化された分析物若しくは他のリガンドは、1つ又は複数の固定化分子に対する親和性結合によって、処理表面に結合する。ナノ粒子の表面プラズモン共鳴は、周囲の誘電性媒体に応じて変位する。粒子が光の波長よりずっと小さいとする「レイリー近似」では、共鳴条件は、
ε(ω)m=εd(1−1/A) 式1
であり、ここで、ε(ω)mは金属の誘電率であり、εdは周囲誘電体の誘電率であり、Aは減偏光因子(depolarization factor)である。従って、ナノ粒子結合分析物とアレイとの近接性は、ナノ粒子に関するεdを変え、それによって、粒子の共鳴波長が変わる。従って、一実施形態では、処理表面に対する分析物の結合性によって、アレイに結合したナノ粒子の表面プラズモン共鳴波長が変化する。
例3
第3の実施形態例では、サンプル中の分析物を検出するための基材は、量子ドットを含む処理表面を備える。一実施形態では、hc/λ1のバンドギャップにより特徴付けられる量子ドットを基材に付着させる。一実施形態では、初期波長λiのソースを用いてアレイ(分析物は結合していない)を励起すると、アレイは所与の波長λ1にて共鳴する。一実施形態では、量子ドットは、リンカー成分によって基材に結合される。
例2
第2の実施形態例では、サンプル中の分析物を検出するための処理表面は、高屈折率材料から成るアレイを備える。一実施形態では、アレイは、TiO2から成るナノ構造を含む。他の実施形態では、基材もまた、TiO2等の高屈折率材料である。先に述べたように、貴金属ナノ粒子で標識化された分析物若しくは他のリガンドは、1つ又は複数の固定化分子に対する親和性結合によって、処理表面に結合する。ナノ粒子の表面プラズモン共鳴は、周囲の誘電性媒体に応じて変位する。粒子が光の波長よりずっと小さいとする「レイリー近似」では、共鳴条件は、
ε(ω)m=εd(1−1/A) 式1
であり、ここで、ε(ω)mは金属の誘電率であり、εdは周囲誘電体の誘電率であり、Aは減偏光因子(depolarization factor)である。従って、ナノ粒子結合分析物とアレイとの近接性は、ナノ粒子に関するεdを変え、それによって、粒子の共鳴波長が変わる。従って、一実施形態では、処理表面に対する分析物の結合性によって、アレイに結合したナノ粒子の表面プラズモン共鳴波長が変化する。
例3
第3の実施形態例では、サンプル中の分析物を検出するための基材は、量子ドットを含む処理表面を備える。一実施形態では、hc/λ1のバンドギャップにより特徴付けられる量子ドットを基材に付着させる。一実施形態では、初期波長λiのソースを用いてアレイ(分析物は結合していない)を励起すると、アレイは所与の波長λ1にて共鳴する。一実施形態では、量子ドットは、リンカー成分によって基材に結合される。
先に述べたように、貴金属ナノ粒子で標識化された分析物若しくは他のリガンドは、1つ又は複数の固定化分子に対する親和性結合によって、処理表面に結合する。一実施形態では、アレイに結合している固定化分子は、分析物に対し所定の結合親和性を有する抗体である。
金属ナノ粒子結合分析物が固定化分子に結合すると、量子ドットと金属ナノ粒子は非常に接近する。その結果、量子ドットの発光特性が変位する。当該理論のさらなる説明については、B.Nikoobakhtらによる、2002,Photochemistry and Photobiology 75:591を参照されたい。量子ドットが金属ナノ粒子に対して数ナノメートルと著しく接近すると、金属ナノ粒子を通る非放射経路が増加し、量子ドットの蛍光は急激に消失する。処理表面に結合しているナノ粒子結合分析物は、アレイ内の量子ドットの発光強度の変化(即ち、減少)を定量することによって測定される。一実施形態では、発光強度の変化は、λ1にある。
例3の代替実施形態では、ナノ粒子と量子ドットが交換される。即ち、当該代替実施形態では、処理表面がナノ粒子を含み、一方、量子ドットは分析物に結合している。測定は、実質的に同じ方法で行われる。
例4
第4の実施形態例では、サンプル中の分析物を検出するための処理表面は、量子ドットを含む処理表面を備える。一実施形態では、hc/λ1のバンドギャップにより特徴付けられる量子ドットを基材に付着させる。先に述べたように、貴金属ナノ粒子で標識化された分析物又は他のリガンドは、1つ又は複数の固定化分子に対する親和性結合によって、処理表面に結合する。一実施形態では、アレイに結合している固定化分子は、分析物に対し所定の結合親和性を有する抗体である。ナノ粒子結合分析物が固定化分子に結合すると、量子ドットアレイと金属ナノ粒子が近接するようになる。
例4
第4の実施形態例では、サンプル中の分析物を検出するための処理表面は、量子ドットを含む処理表面を備える。一実施形態では、hc/λ1のバンドギャップにより特徴付けられる量子ドットを基材に付着させる。先に述べたように、貴金属ナノ粒子で標識化された分析物又は他のリガンドは、1つ又は複数の固定化分子に対する親和性結合によって、処理表面に結合する。一実施形態では、アレイに結合している固定化分子は、分析物に対し所定の結合親和性を有する抗体である。ナノ粒子結合分析物が固定化分子に結合すると、量子ドットアレイと金属ナノ粒子が近接するようになる。
少なくとも1つの量子ドットと少なくとも1つのナノ粒子が近接すると、放射発光の促進による表面プラズモンの増幅がもたらされる。これは、或いは、「SPASER」を形成するとして述べられる。Bergman及びStockmanらによる、2002,Physics Research Letters,027402-1-4を参照されたい。この実施形態例では、量子ドットは、励起され(例えば、放射又はレーザ等の光源によって)、非放射エネルギー伝達によってエネルギーの少なくとも一部をナノ粒子に伝達する。非放射エネルギー伝達によって、金属ナノ粒子における局在表面プラズモンモードを励起する。金属ナノ粒子は、共振器の役割を果たし、それによって、単一モードの多数の表面プラズモンを発生させる。一実施形態では、検出されるモードは、量子ドッドとは異なる波長で共振(共鳴)する。
一実施形態では、金属ナノ粒子は、量子ドットに波長(λi)の光を入射しても、それ自体では共鳴しない。他の実施形態では、量子ドッドは、λiにおいて、高い吸収断面を有する。分析物に対する固定化分子の親和性結合により、量子ドッドと金属粒子が近接すると、量子ドットは、金属ナノ粒子における表面プラズモンに、エネルギーhc/λ2を伝達する。局在表面プラズモン共鳴の検出は、波長λ2の発光(信号)を測定することによって行われる。
本明細書で引用した全ての刊行物及び特許出願書類は、本発明の属する分野における当業者の水準を示すものであり、参照することによって、その全体を本明細書に取り入れることとする。
上述した種々の実施形態は、例示目的でのみ提示したものであり、本発明を限定するものと解釈されるべきではない。本明細書で例示し説明した例及び適応形態に従わずに、また、添付の特許請求の範囲に記載する本発明の真の趣旨及び範囲から逸脱することなく、本発明に対して種々の修正及び変更をなし得ることが、当業者には容易に理解されよう。
20、32、34、44、54、66、70 処理表面
22、64 基材
24、36、40、46 ナノ構造
26、30、38、42、48、58、68、72 固定化分子
50、60、78 分析物
52、62、80 標識ナノ粒子
22、64 基材
24、36、40、46 ナノ構造
26、30、38、42、48、58、68、72 固定化分子
50、60、78 分析物
52、62、80 標識ナノ粒子
Claims (10)
- サンプルのポイント・オブ・ケア試験において分析物を検出するのに用いられる基材であって、
前記基材上の処理表面と、
前記処理表面に結合している、分析物に対して特異的な結合親和性を有する第1の分子と、
を含み、
少なくとも1つの標識ナノ粒子が前記分析物に結合しており、且つ前記分析物が前記第1の分子に結合する際に、前記少なくとも1つの標識ナノ粒子が前記処理表面と相互作用し、
前記標識ナノ粒子と前記処理表面との前記相互作用が、検出可能な共鳴を呈する、基材。 - 前記処理表面が、複数のナノ構造を含み、前記ナノ構造が、ナノワイヤ、ナノチューブ、ナノ粒子、又はそれらの組み合せから成る群から選択される、請求項1に記載の基材。
- 前記処理表面が、高屈折率材料を含む、請求項1又は2に記載の基材。
- 前記標識ナノ粒子が、金属ナノ粒子、半導体ナノ粒子、ナノワイヤ、及びナノチューブから成る群から選択される、請求項1〜4の何れか1項に記載の基材。
- 前記基材が、第2の処理表面に結合している、分析物に対して非特異的な結合親和性を有する第2の分子をさらに含み、且つ前記分析物が前記第2の分子に結合する際に、少なくとも1つの標識ナノ粒子が、前記第2の処理表面と相互作用する、請求項1〜4の何れか1項に記載の基材。
- サンプル中の分析物の検出に使用するためのキットであって、
請求項1〜5の何れか1項に記載の基材と、
少なくとも1つの標識ナノ粒子を含む組成物と
を含んで成り、前記組成物をサンプルと組み合わせると、少なくとも1つの標識ナノ粒子によって分析物が標識化され、
少なくとも1つのナノ粒子標識済み分析物が少なくとも1つの親和性分子に結合すると、検出可能な共鳴λ1が生じる、キット。 - 前記検出可能な共鳴が、光学範囲の波長λ1である、請求項6に記載のキット。
- 前記検出可能な共鳴が、特徴的な色により視覚的に検知可能である、請求項6に記載のキット。
- λ1の前記検出可能な共鳴が、λ1における発光強度の変化であるか、又は前記処理表面に近接する標識ナノ粒子の局在表面プラズモン共鳴である、請求項6に記載のキット。
- 分光法によってサンプル中の分析物を検出又は同定する方法であって:
標識ナノ粒子をサンプル中の分析物に結合させること;
前記分析物に対して特異的な結合親和性を有する少なくとも1つの固定化分子が結合している第1の処理表面と、
前記分析物に対して非特異的な結合親和性を有する少なくとも1つの固定化分子が結合している第2の処理表面と
を備える基材に前記サンプルを曝すこと;
励起源により前記第1の処理表面を照射すること;
ナノ粒子の結合した分析物が結合している第1の処理表面の発光波長又は発光強度を検出すること;
励起源により前記第2の処理表面を照射すること;
ナノ粒子の結合した分析物が結合している第2の処理表面の共鳴を検出すること;及び
前記検出された共鳴を比較することによって、前記第1の処理表面に対する前記分析物の結合を、前記第2の処理表面に対する前記分析物の結合と比較すること
を包含する、方法。
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