JP2007016312A - 焼結体形成方法 - Google Patents

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秀樹 京極
Kohei Shiraishi
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勇気 登
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Abstract

【課題】安価でかつ省工程であり、大型成型品への応用が可能である焼結体形成方法を提供する。
【解決手段】金属またはセラミックの無機粉末100重量部に対し、ポリアミドまたはポリエステルの樹脂粉末を15重量部以下混合して得られた焼結用粉末組成物を用いて薄層充填層を作成し、所望のパターンでレーザ光線を照射して、充填層内の樹脂粉末を溶着して薄層成形体を形成し、この成形体形成工程を複数回繰り返して三次元の立体成形体を形成し、脱脂および焼結工程を経て焼結体を得る。
【選択図】 図1

Description

本発明は、焼結体形成方法に係り、特に機械部品の試作加工・製作および製品製作を行なう積層造形法に代表される焼結体形成方法に関する。
近年、精密機器や自動車部品などにおいて試作加工に積層造形法(Layered ManufacturingあるいはRapid Prototyping)が応用されている。この積層造形法は、3D−CADデータから目的とする部品の複数の断層図面(スライス)を作成し、これに基づいて各断層を1つの薄層として金属粉末や樹脂粉末を展開してレーザ光線で焼結し、この層を積み重ねて目的の試作部品を製作する方法である。この方法では、実物を目視にて確認し、実際に組み込むことによる問題点の確認や改善が容易であるばかりでなく、試作のための時間やコストが削減できる。
一方で、精密機器に使用される部品はますます小型化・複雑形状化し、縦・横・斜めの方向を問わず角穴、セレーション、直角穴、絞り穴などの異型の穴を必要とする部品も多くある。このような部品を積層造形する際に複雑形状の凹穴、開口部の小さな穴や横穴を成型する際には、この部分を支持するための治具あるいは支持材を別途に作成・使用する必要があった。
また、金属粉末やセラミックス粉末をレーザにより直接焼結する場合には、薄層を形成したこれら粉末は形状を維持するのが困難である。又、レーザが直接照射された部分とそうでない部分は受ける熱量の差から、金属組織が異なる、ひずみが起こりやすい等の問題があり、精密機器の部品に要求されるミリあるいはミクロンオーダーの部品を製作するのは困難であるという問題があった。
加工が極めて容易なレーザ照射によって成型する手法は広く用いられている。その代表的なものとして、紫外線硬化樹脂にメタロセン化合物と過酸化物を混和した光硬化性流動物質に、紫外線により波長の長い600〜700nmの波長の光をレーザ照射するものが知られている。レーザ照射の位置を変えることでレーザ照射方向に厚みをもった三次元の硬化物を造形できる(特許文献1)。しかしながら、合成の複雑な有機化合物の配合等が必要となる。
このような問題を解決するため、水溶性の補助材からなる薄層を展開したのち不要部分をレーザ光線の照射により昇華させて取り除き、ここに紫外線硬化性で水に不溶性の造形剤か、あるいは加熱により液化しその状態から常温に冷却すると固化する造形剤を充填してこれを固化させるという工程を繰り返すことにより、複数の層からなる積層体を形成させたのち、水洗いにより補助剤層をとりのぞいて複雑な凹穴をもつ部品を製作する発明がなされていた。(特許文献2)しかしながら、この発明による方法では補助剤を展開してレーザにより加工し、積層体を形成させたあと水洗いにより取り除き、乾燥させるといった工程が必要となるため面倒である。
さらに、光熱変換色素を用いて、レーザ光線の三次元走査露光により、三次元造形や三次元記録等の三次元パターンの形成を効率的に行なう技術がある(特許文献3)。さらに、樹脂と無機充填剤を配合してレーザ光により薄膜状に展開した粉末焼結材料に照射して、照射部分の粉末焼結材料を焼結し、粉末焼結材料の薄層状の展開と、レーザ光照射による粉末焼結材料の焼結を反復して人工骨モデルの製造法は提案されている(特許文献4)
特開平6−15749 特開平8−300490 特開2004−144869 特開2004−184606
以上に述べた関連特許では、メタロセン化合物や過酸化物等の多種の複雑な配合(特許文献1)であり、また反復工程が複雑(特許文献2、特許文献4)である。また、光熱変換に必要なファインケミカルを使用するため、安価な製造が制限される(特許文献3)。さらに、使用する樹脂量が30重量部と多い(特許文献4)。
本発明は、かかる課題に鑑みてなされ、第1に、平均粒径が10μm以下の無機粉末100重量部に対して平均粒径が10μm以下の樹脂粉末15重量部以下を混合し焼結用粉末組成物を得る工程と、前記焼結用粉末組成物を所定のコンテナ内に充填し薄層充填物を得る工程と、前記薄層充填物に所望のパターンでレーザ光線を照射し前記焼結用粉末組成物に含まれる前記樹脂粉末を溶着して第1の成形体を形成する工程と、前記第1の成形体を熱処理により脱脂および焼結し、前記無機粉末による第2の成形体を形成する工程と、を具備することにより解決するものである。
また、前記薄層充填物を得る工程と前記第1の成形体を形成する工程を複数繰り返し、三次元の第1の成形体を形成した後、前記第2の成形体を形成することを特徴とするものである。
また、前記樹脂粉末の添加量は5重量部以下であることを特徴とするものである。
また、前記無機粉末は粉末冶金に使用される金属粉末又はセラミック粉末であることを特徴とするものである。
また、前記無機粉末はステンレス鋼または合金工具鋼の金属粉末であることを特徴とするものである。
また、前記樹脂粉末はポリアミド又はポリエステルであることを特徴とするものである。
また、前記樹脂粉末の添加量を4重量部から10重量部まで変化させることにより、前記第2の成形体に含まれる炭素量を制御することを特徴とするものである。
また、前記熱処理は、常温から前記第1の成形体に混入したガスが十分抜ける温度まで毎分約0.2K以下の温度上昇速度で加熱する第1の熱処理により脱脂を行った後、前記第1の熱処理より少なくとも10倍以上速い温度上昇速度の第2の熱処理により焼結を行うことを特徴とするものである。
また、前記焼結は真空雰囲気または不活性ガス雰囲気で行うことを特徴とするものである。
本発明によれば、第1に、簡易な形状のコンテナ内に充填した焼結用粉末組成物に含まれる樹脂粉末をレーザ照射により溶着させることにより成形して、次の層を成形するため、溶着されていない部分が支持体の役割を果たし、別途支持体を用意することなく複雑な形状の部品を製作できる。
第2に、溶着されていない焼結用粉末組成物は成形体(第1の成形体)を形成したのち、容易な方法で取り除くことができる。安価でかつ省工程であるので大型成型品への応用も可能である。
第3に、積層造形法等による金属部品の試作に使用する焼結用粉末組成物を、無機粉末と樹脂粉末を混合するのみで容易に作製することができるため、金属成分の変更および再検討が容易となる。
第4に、第1の成形体は、脱脂−焼結工程を経て目的となる第2の成形体(試作品・製品)となるため、金属の種類に制限されることがない。
第5に、従来の方法のように水溶性の補助剤や治具を別途用意する必要がなく、簡易に製作できる型を使用し、未焼結部分は再利用できるため低コスト化も可能で、複雑な試作品の作成を実現できる。
第6に、本実施形態の脱脂および焼結の温度パターンによれば、ほとんど空隙の無い成形体の作製が可能となる。これによりJIS規格を満たす炭素量を含有し、積層状態の良い組織(ミクロ組織)を有する第2の成形体(焼結体)を得ることができる。
第7に、樹脂粉末の混合比を4重量部から10重量部の間で変化させることにより、第2の成形体に含まれる炭素量を制御できる。ステンレス鋼または合金工具用鋼では含まれる炭素量によってミクロ組織が変化し、引張強度や伸長などの機械的特性に影響する。本実施形態によれば炭素量を制御できるので、所望の機械的特性を有する第2の成形体(焼結体)を得ることができる。
本発明の実施形態を図1から図27を参照して詳細に説明する。
まず、図1〜図3を参照して本実施形態の焼結体形成方法について説明する。図1は本実施形態の焼結体形成方法を示すフロー図であり、一例として試作加工の積層造形法(Layered ManufacturingあるいはRapid Prototyping)を例に説明する。また、図2は本実施形態の第1の成型体を形成する焼結体形成装置の概略図であり、図3は本実施形態の脱脂・焼結の際の熱処理の温度パターンを示す図である。
本実施形態の焼結体形成方法は、平均粒径が10μm以下の無機粉末100重量部に対して平均粒径が10μm以下の樹脂粉末15重量部以下を混合し焼結用粉末組成物を得る工程と、焼結用粉末組成物を所定のコンテナ内に充填し薄層充填物を得る工程と、薄層充填物に所望のパターンでレーザ光線を照射し焼結用粉末組成物に含まれる樹脂粉末を溶着して第1の成形体を形成する工程と、第1の成形体を熱処理により脱脂および焼結し、無機粉末による第2の成形体を形成する工程と、から構成される。
第1工程(図1:ステップS1) 平均粒径が10μm以下の無機粉末100重量部に対して平均粒径が10μm以下の樹脂粉末15重量部以下を混合し焼結用粉末組成物を得る工程。
平均粒径が10μm以下の無機粉末と平均粒径が10μm以下の樹脂粉末を準備し、100重量部:15重量部以下で混合する。
無機粉末は、粉末冶金に使用される金属粉末又はセラミック粉末であれば、それ以外の金属の種類や金属粉末の製造方法に制限されることはない。無機粉末の平均粒径は10μm以下とする。
金属粉末の場合、一例としてステンレス鋼(stainless steel)、合金工具鋼(alloy tool steel)、構造用合金鋼等の合金鋼または、Fe−Ni合金の金属粉末である。合金工具鋼は、0.6%〜1.5%の炭素を含む高炭素鋼に、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、バナジウム(V)等の炭化物生成元素を添加して焼入れ性を向上させ、焼戻し軟化性を向上させると共に炭化タングステン(WC)、炭化バナジウム(VCあるいはV)などの硬い炭化物を生成して耐摩耗性を向上させた工具鋼である。工具鋼の一例としてプレス型、ダイカスト型等に用いられるSKD(steel kogu die)、SKT(steel kogu tanzo)がある。
本実施形態では、無機粉末の一例として金属粉末を、より詳細にはステンレス鋼粉末を採用した場合について説明する。ステンレス鋼粉末の平均粒径は例えば9μmとする。
樹脂粉末は、平均粒径が10μm以下でレーザ加熱によって溶融し、冷却すれば固化するものであり金属粉末と混合可能なもので有ればよく、加温下あるいは加圧下で混錬できるものも含む。一例として、ポリアミド樹脂粉末またはポリエステル樹脂粉末である。
また、これに限らず、ポリイミド樹脂、ポリエステル系、ビニル重合系、ポリアセタール系、メラミン樹脂系などでもよい。
樹脂粉末は、金属粉末100重量部に対してここでは5重量部以下、好適には4重量部の混合比で混合する。平均粒径は例えば6μmである。後述するが、この混合比により合金鋼に適した炭素含有量の成形体(焼結体)を得ることができる。
樹脂粉末と金属粉末を、これらが均一に分散するように混合し焼結用粉末組成物を得る。レーザ焼結中の分離を避けるために均一に混合することが重要である。混合方法は、例えば樹脂粉末および金属粉末を同一の混合機に入れ、室温(常温)で数分間から数十分間均一に混合する。
本実施形態では平均粒径がいずれも10μm以下の金属粉末および樹脂粉末を混合して焼結用粉末組成物を得る。これにより、後の工程で焼結用粉末組成物により成形される第1の成形体および第2の成形体の密度を向上でき、これらの成形体の強度を高めることができる。
尚、樹脂のレーザ照射による溶融(溶着)および冷却時の固化や第1の成形体および第2の成形体の強度を高める副剤(例えば、炭素(C))を、焼結用粉末組成物に添加してもよい。
第2工程(図1:ステップS2) 焼結用粉末組成物を所定のコンテナ内に充填し薄層充填物を得る工程。
本実施形態の一例として説明する積層造形法は、精密機器や自動車部品などの試作品または製品加工に適用される方法である。この方法で試作部品を製作する場合を例に説明すると以下の通りである。
まず、三次元CADデータから目的とする試作部品の複数の断層図面(スライス)を作成し、これに基づいて各断層に対応する薄層の成形体を作成する。そして薄層の成形体を積み重ねて目的の試作部品を製作する。
つまり本工程における薄層充填物は、各断層に対応するものであり最終目的物(成形体)の大きさまたは形状等に応じた所定の形状(薄層)に形成される。
図2を参照し、焼結体形成装置の一例について説明する。
焼結体形成装置10は、粉末充填コンテナ11と、積層造形コンテナ12と、プレーナ13と、昇降部14と、レーザ照射部15と、モータ16と、プレート17とから構成される。
焼結用粉末組成物2aは粉末充填コンテナ11に充填される。モータ16により昇降部14を駆動し、粉末充填コンテナ11を積層ピッチD分(例えば0.1mm前後)上昇させる。プレート17上を水平方向にプレーナ13を移動させ、上昇した粉末充填コンテナ11内の焼結用粉末組成物2aを積層造形コンテナ12内に充填し、薄層充填物2を得る。
第3工程(図1:ステップS3) 薄層充填物に所望のパターンでレーザ光線を照射し焼結用粉末組成物に含まれる樹脂粉末を溶着して第1の成形体を形成する工程。
引き続き図2を参照し、レーザ照射部15を、三次元CADデータに基づく所望のパターンで移動させ、積層造形コンテナ12内の薄層充填物2にレーザ1を照射・焼結し第1の成形体3を形成する。
レーザ照射条件の一例は、レーザスポット径0.85mm、周波数50Hz、パルス幅1ms、出力エネルギー9Jである。
またレーザ照射部5(レーザヘッド)の走査速度は10mm/s、走査ピッチは0.6mmとし、断層図面に基づいてレーザを走査する。レーザは、例えばYAGレーザ、COレーザ等である。
尚、上記のレーザ照射条件は一例であって、混合する粉末粒径や融点等物性が変化した場合は、レーザスポット径、周波数、パルス幅、出力エネルギーを適宜選択する。
このレーザ照射により、薄層充填物2内の樹脂粉末が溶融(溶着)する。そして薄層充填物2内の金属粉末は溶融した樹脂により接着され、これにより各断層図面に対応する薄層の第1の成形体3が形成される。
その後、モータ16により昇降部14を駆動させ、積層造形コンテナ12を積層ピッチD分下降させる。
必要に応じて、薄層充填物2の形成およびレーザ照射を繰り返し、第1の成形体3が少なくとも1層以上積層された三次元の第1の成形体3を得る。
すなわち、1層目の断層図面に対応する第1の成形体3を形成後、再び第2工程により2層目の断層図面に対応する薄層充填物2を形成し、第3工程により2層目の第1の成形体3を形成する。2層目の薄層充填物2のレーザ照射(第3工程)により2層目の第1の成形体3が形成されると共に、1層目の第1の成形体3とも溶着する。
つまり第2工程および第3工程を複数回繰り返し、目的の形状を有する三次元の第1の成形体3を形成する。
本実施形態では、溶着されていない焼結用粉末組成物2aは第1の成形体3の形成後、容易に払拭することができる。安価でかつ省工程であるので大型成型品への応用も可能である。
第4工程(図1:ステップS4) 第1の成形体を熱処理により脱脂および焼結し、無機粉末による第2の成形体を形成する工程。
第1の成形体3に、所定の温度パターンで熱処理を施す。所定の温度パターンとは図3に示す第1の熱処理および第2の熱処理を有する温度パターンであり、第1の熱処理で脱脂を行い、第2の熱処理で焼結を行う。
具体的には、第1の熱処理では、常温から第1の成形体3に混入したガスが十分抜ける温度まで、毎分約0.2K以下の温度上昇速度で加熱し、脱脂を行う。具体的には、例えば毎分0.16Kの温度上昇速度で、最高温度500K〜600Kまで加熱し、最高温度で7.2ks程度保持する。
本実施形態では、樹脂粉末の溶融により第1の成形体3内にガスが混入するが、上記の条件で脱脂を行うことにより、第1の成形体3内に混入したガスを十分取り除くことができる。
尚、より具体的な加熱条件は、第1の成形体3の大きさ、形態に応じて適宜選択する。
引き続き第2の熱処理を行う。すなわち、第1の熱処理より少なくとも10倍以上速い温度上昇速度の第2の熱処理により、第1の成形体の焼結を行う。一例として、500K〜600K程度から毎分約2Kの温度上昇速度で、最高温度1600K〜1700Kまで加熱し、最高温度で3.6ks程度保持する。これにより、第1の成形体3が焼結される。ここで、焼結は真空雰囲気(真空加熱炉)で行う。尚、脱脂も真空雰囲気で行っても良い。
これにより溶着していた樹脂が除去され、金属粉末同士が溶融(溶着)し焼結することにより、三次元の第2の成形体が形成される。第2の成形体は、目的となる成形体であり例えば試作部品、製品等である。
本実施形態では、脱脂工程(第1の熱処理)において温度上昇と、最高温度での保持に十分な時間を与える。これにより、樹脂粉末の溶融により第1の成形体3に混入したガスを除去することができ、ほとんど空隙のない機械的特性に優れた第2の成形体(焼結体)を得ることができる。また、焼結は真空雰囲気で行うことができ、不活性ガス雰囲気と比較して装置の簡素化、コストの低減が図れる。
このように本実施形態によれば、積層造形法に代表される焼結体形成方法において、焼結用粉末組成物を金属粉末と樹脂粉末を所定の混合比で混合するのみで得ることができる。またこの焼結用粉末組成物により得られた第2の成形体(焼結体)は、合金鋼に適した炭素量を含有するので、良質な焼結用粉末組成物を低コストで容易に作製できる。また、第1の成形体を図3に示す温度パターンで脱脂・焼結することにより、積層状態の良い組織(ミクロ組織)を有する第2の成形体(焼結体)を得ることができる。
具体的に金属粉末としてステンレス鋼粉末を用いた場合を例に説明する。金属粉末はステンレス鋼(SUS316L)のガスアトマイズ粉である。
この場合、金属粉末と樹脂粉末(例えばポリアミド)の混合比を100重量部:4重量部とすることで、この焼結用粉末組成物から作製した第2の成形体の炭素含有量は0.015%となる。これは、化学成分におけるJIS規格の規格値(0.03%以下)を満たすものであり、積層造形法で得られる成形体(焼結体)として良好な特性を有する。
また、上記の第3工程および第4工程の如く、図3に示す温度パターンで脱脂・焼結することにより、第2の成形体(焼結体)の相対密度は約85%となりミクロ組織上においても最適となる。
更に、本実施形態では、樹脂粉末の混合比を4重量部から10重量部まで変化させることにより、第1の成形体に含まれる炭素量を制御することができ、結果的に最終製品である第2の成形体に含まれる炭素量を制御することができる。
すなわち、樹脂粉末は有機材料であるため、第1の成形体および第2の成形体には炭素が残留する。そして実験において樹脂粉末と金属粉末の混合比を4重量部から10重量部まで増加させると、ほぼ直線的に炭素含有量が増加することが判った。これは樹脂粉末の混合比により、第2の成形体の炭素含有量の制御が可能であることを意味する。
本実施形態の第2の成形体とは目的となる成形体(試作部品、製品等)であり、その機械的特性はユーザの要求に適宜応えるものであることが望ましい。成形体の炭素含有量は、ミクロ組織に影響しまた機械的特性に影響を与える。また金属によってはAISI規格等により炭素含有量が規定されているものもある。
つまり、本実施形態によれば成形体の炭素含有量を制御できるので、所望の機械的特性を有する、あるいは化学成分の規格を満たした成形体(焼結体)を得ることができる。
具体的には、下記に示す式により第2の成形体の炭素含有量(炭素余剰量)ΔCdを導入することにより、成形体(焼結体)の炭素含有量を制御できる。
ΔCd≡Cd−a・Od
ここで、Cd:脱脂後の第1の成形体の炭素量、Od:脱脂後の第1の成形体の酸素量、a:C/O(酸素)原子比=0.751である。
上述の如く樹脂粉末の混合比を4重量部〜10重量部の間で適宜選択することにより第1の成形体3に含まれる炭素量Cdが制御できる。つまり、上式により第1の成形体3に含まれる炭素量Cdを制御することで第2の成形体の炭素含有量ΔCdを制御することができる。
これにより例えば、金属粉末として炭素を含まない金属を採用する場合であっても、樹脂粉末の混合比を適宜選択することにより、樹脂粉末の炭素を第1の成形体3に含有させることができる。つまり、金属粉末が炭素を含まない場合は、ステンレス鋼粉末を用いた場合の樹脂粉末の比率(4重量部)より多くすることにより、好適な炭素含有量を有する第2の成形体を得ることができる。
このように本願出願人は、粉末積層造形法により低コスト、簡易な操作、短納期で試作品を製作するための焼結用粉末組成物および、試作品の製作方法の研究開発を進めてきた。その結果、市販されている粉末冶金に使用される金属粉末に、最低で1種類の10%重量部以下のナノスケールからマイクロスケールのポリアミド等汎用樹脂粉末を添加して、レーザを照射することにより容易に成形体が製作できることを見出した。
また、本実施形態は特にステンレス鋼に用いて好適でありまた、上記の樹脂粉末の混合比、脱脂および焼結の温度パターンが好適である。更に樹脂粉末の混合比により、成形体に含まれる炭素量の制御が可能である。
以下本実施形態の焼結体形成方法により試験片を作製し、実験した結果に基づき説明する。
まず、本実施形態の焼結体形成方法により、第1の成形体を作製し、表面状態を観察した。図1のフロー図および図4から図11を参照し、第1の成形体となる試験片を形成する方法について説明する。
第1工程(ステップ1):平均粒径が10μm以下の無機粉末100重量部に対して平均粒径が10μm以下の樹脂粉末15重量部以下を混合し焼結用粉末組成物2aを得る。
無機粉末は金属粉末であり、SUS316Lステンレス鋼(平均粒径9μm)のガスアトマイズ粉末を使用した。SUS316Lステンレスの化学成分は、C:0.03%以下、Ni(ニッケル):12.0%〜15.0%、Cr:16.0〜18.0%、Mo:2.0〜3.0%である。
また、樹脂粉末としてGPA−550(平均粒径6μm)を使用した。
金属粉末100重量部に対して、樹脂粉末を5重量部あるいは10重量部を添加して室温で5分振り混ぜて、焼結用粉末組成物2aを得る。
同時に、比較として金属粉末のみの場合と、樹脂粉末のみの場合についても試験片を作製する。つまり、SUS316ステンレス鋼粉末、GPA−550樹脂粉末を準備する。
図4は、各粉末を示す図であり、図4(A)が焼結用粉末組成物2a(樹脂粉末添加量:10重量部)、図4(B)がSUS316ステンレス鋼粉末2b、図4(C)がGPA−550樹脂粉末2cの走査電子顕微(Scanning Electron Microscope:SEM)写真である。
第2工程(ステップS2):焼結用粉末組成物を所定のコンテナ内に充填し薄層充填物を得る工程。
図5および図6は、焼結用粉末組成物2aを充填するためのコンテナ(積層造形コンテナ12:図2参照)となる金型4を示す。金型は、試験片作製のためのアルミ型である。
このアルミ型4に、第1工程で作製した焼結用粉末組成物2aを充填し薄層充填物2を得る。同様にSUS316ステンレス鋼粉末2b、GPA−550樹脂粉末2c、をそれぞれ充填し、薄層充填物を得る。
第3工程(ステップS3):薄層充填物に所望のパターンでレーザ光線を照射し焼結用粉末組成物に含まれる樹脂粉末を溶着して第1の成形体を形成する。
本実験で使用したレーザ焼結装置は、YAGレーザ加工機で、レーザ発振器はパルスレーザである。この加工機は、YAGレーザ発振器・加エヘッド、レーザ電源、テーブルおよびNC装置で構成される。また、レーザ加工ヘッドは固定であるため、走査距離はNC装置により制御を行った。
図7は、第1の成形体(試験片)3の形成を示す図である。すなわち、金型4に充填された薄層充填物2に対して、大気雰囲気中でレーザ1を照射しながらNC装置5をY軸方向に10mm移動させ、焼結用粉末組成物2に含まれる樹脂粉末を溶着した。その後、不要な粉末を除去し、第1の成形体3を得た。第1の成形体3は、1列単層照射成形体である。1列単層照射成形体とは、1層(単層)の薄層充填物2にレーザ1を1列照射して得られた成形体である。比較として、金属粉末2bのみのものと樹脂粉末2cのみの1列単層照射成形体も同様に作製した。
このとき、レーザ照射条件はレーザスポット径を0.85mm、周波数50Hz、パルス幅lms、出力エネルギー9Jとし、NC装置の送り速度を様々な条件とした。
すなわち、上記のレーザ照射条件を固定し、NC装置のY軸方向の移動速度を0.33mm/sから1.67mm/sと変化させて10mmの移動量で照射させた。
ここでの図示は省略するが、金属粉末2bのみの1列単層照射成形体は、NC装置のY軸方向の移動速度が速くなるにつれて、得られた試験片の全長は短く、幅は狭くなっており、全長はNC装置の移動量10mmに、また、幅はレーザスポット径0.85mmに近くなった。また、移動速度の遅いものは、熱伝導によりレーザの焦点のみならず周りの金属粉末をも焼結させてしまうため、試験片が大きくなった。
つまり、移動速度の遅い条件ではレーザ照射表面の周囲に熱影響による焼結部が確認できた。一方、移動速度の速い条件では、レーザ照射表面の周囲に熱影響による焼結部は確認できないが、試験片は凹凸が激しいものとなった。
また、樹脂粉末のみの1列単層照射成形体(不図示)については、移動速度が速くなるにつれて、試験片の幅および溶融深さは小さくなっていることが確認できた。これは送り速度が速くなり、与えられるエネルギーが小さくなったためであると考えられる。つまり、移動速度の速いものほど熱履歴を小さく抑えることができ、全長はNC装置の移動量10mmに、また、幅はレーザスポット径0.85mmに近くなった。具体的には、移動速度5.83mm/s以上において、試験片のレーザスポット径0.85mmに近づいていることが確認できた。
さらに表面は,粉末の白さは消え、黒くなった。これは,樹脂が溶融し固化したためではないかと考えられる。そして、移動速度が速くなることで、黒くなる現象は少なくなった。これは、エネルギーが抑えられ、溶融温度まで達することがなくなり、焼結できたためではないかと考えられる。
さらに、焼結用粉末組成物2aにより作製した第1の成形体3の場合も、図示は省略するが移動速度の速いものほど熱履歴を小さく抑えることができ、全長はNC装置の移動量10mmに、また、幅はレーザスポット径0.85mmに近くなることが判った。このように、表面形状においては、金属粉末2bのみ、樹脂粉末2cのみの場合と、本実施形態の焼結用粉末組成物2aの場合は、ほぼ同様な結果であった。
図8は、金属粉末(SUS316L粉末)2bのみから形成した1列単層照射成形体3’の断面形状を示す。すなわち、レーザ照射して得られた試験片を中央部で切断して、切断面を研磨したのち10%シュウ酸を用いて電解腐食して、切断面を光学顕微鏡により観察し写真撮影した結果である。レーザ照射に窪みが形成されており、窪みは送り速度が速くなるにつれて、最大深さは浅くなり、また断面は2種類の層からできていることがわかる。組織写真からデンドライト組織が確認できるため、レーザ照射による熱影響を受けてできた溶融部と、その溶融部の熱影響によりできた焼結部と考えられる。
このように、送り速度が速いほどレーザ照射による窪みの深さは浅くなるものの、SUS316L粉末2bのみで成形体3’を作製した場合は、レーザ照射により大きな窪みの発生は避けられない。
次に、本実施形態の焼結体形成方法で採用する温度パターンについて説明する。本実施形態では、第1の成形体に対して所定の温度パターンを有する熱処理を行い、第2の成形体を得るものである。
図9から図17は、本実施形態に好適な温度パターンを得るために検討した結果である。つまり、本実施形態により焼結用粉末組成物2aから第1の成形体3を形成し、これに対して異なる温度パターンで熱処理を行い比較したものである。
図9は、5列単層照射成形による成形体を示す図である。5列単層照射成形とは、1層(単層)の薄層充填物2にレーザ1を5列照射して得られた成形体である。
まず、本実施形態の第1工程から第3工程を行い、5列単層照射成形体(第1の成形体3)を得る。すなわち、平均粒径が9μmのSUS316Lステンレス鋼のガスアトマイズ粉末100重量部に、平均粒径が6μmのGPA−550樹脂粉末10重量部を混合して焼結用粉末組成物2aを得る(図1:ステップS1)。焼結用粉末組成物2aをアルミ型に充填し薄層充填物2を形成する(図1:ステップS2)。その後、レーザ1を照射しながら、NC装置をY軸方向に10mm移動させた。つづいてX軸方向に0.4mm〜0.85mmの範囲で0.05mm間隔ごとに任意で移動させ(以下、X軸方向の移動量pとする)、Y軸方向に10mmレーザ照射した(図1:ステップS3)。
このとき、レーザ照射条件はレーザスポット径を0.85mm、周波数50Hz、パルス幅0.5ms、出力エネルギー9Jとし、NC装置の送り速度を10mm/sと固定した。これにより、5列単層照射成形体(第1の成形体3)を得た。
そして、得られた5列単層照射成形体(第1の成形体3)を電気炉内に入れ、図10に示す温度パターンで熱処理を行い、5列単層照射焼結体6’を得た。この温度パターンは、本実施形態の熱処理のパターンとは異なり、熱処理開始から1500K付近まで昇温、保持して焼結を行うものであり、脱脂は行わないパターンである。
図11は、得られた5列単層照射焼結体6’を示す図であり、焼結直後の断面写真である。図11(A)から(J)は、それぞれNC装置のX軸方向の移動量pが、0.4mm、0.45mm、0.5mm、0.55mm、0.6mm、0.65mm、0.7mm、0.75mm、0.8mm、0.85mmの場合である。
図11の如く、金属粉末と樹脂粉末とを混合した焼結用粉末組成物2aでは、レーザ照射部の窪みが、SUS316Lステンレス鋼粉末の場合(図8)より小さいことが明らかである。しかし、図10の温度パターンでは脱脂工程がないため、試験片の内部のガスが抜けきれていないこともわかる。
移動量pについては、図11(G)〜図11(J)の如く、移動量pが0.7mm以上では、少しずつ凹凸の差が明確(大きく)になっている。図11(D)〜図11(F)の如く、0.55mm〜0.65mmのものはレーザを照射した部分の窪み(上部の凹凸の差)が小さく、熱勾配が原因と考えられるそりも小さかった。つまり、移動量pとしてはこの範囲(例えば0.6mm)が好適であることが推測できる。そこで、以下の実験では移動量pを0.6mmとした。
次に、金属(SUS316L)粉末100重量部と樹脂(GPA−550)粉末10重量部を混合した(混合比 100重量部:10重量部)焼結用粉末組成物2aにより、第1の成形体3を形成し、図12に示す温度パターンで脱脂および焼結を行った結果を示す。
ここでは、本実施形態の第1工程から第3工程を行い、単層の薄膜充填物2にレーザを5列照射した。さらに別途作製した0.2mm厚のアルミ型を重ねて焼結用粉末組成物2aを充填して、1層目の場合と同様にレーザ照射して第1の成形体3を積層する。すなわち、第2工程(ステップS2)から第3工程(ステップS3)を5回繰り返してそれぞれ5列のレーザ照射を行い、5層の5列照射成形体(第1の成形体3)を形成した。このとき、レーザ照射条件はレーザスポット径を0.85mm、周波数50Hz、パルス幅0.5ms、出力エネルギー9Jとし、NC装置の送り速度を10mm/sと固定した。
その後、図12の温度パターンで第1の成形体3の熱処理(脱脂および焼結)を行い5列5層照射焼結体6’’を得た。
図12に示す温度パターンは、焼結前に脱脂を行う温度パターンである。図10の温度パターンでは脱脂工程を行わないため、良好な組織が得られなかった(図11)。一方図12の温度パターンは、焼結工程の温度上昇速度と同程度の温度上昇速度で、短い脱脂工程を行うものである。
図13は、5列5層照射焼結体6’’を示す図であり、脱脂および焼結後の断面写真である。図13(A)が移動量p=0.60mmの場合であり、図13(B)が移動量p=0.65mmの場合である。
図13より、 移動量p=0.6mmでは、積層した5層が接合していることが確認できる(図13(A))。また移動量p=0.65mmでは、積層した5層の1部分が割れているものの、他の部分では5層が接合している(図13(B))。
また、脱脂焼結工程により、焼結体6’’が収縮していることが判る。さらに、焼結体6’’内部に脱脂工程において発生する分解ガスの発生に起因すると思われる空隙がみられ、焼結体表面は膨れている。これは図12の温度パターンでは脱脂工程時間が不十分で、内部で発生したガスが抜け切れなかったためである。
つまり、図12の温度パターンでは脱脂工程時間が不十分であることを示しており、第1の成形体3に対する脱脂および焼結の熱処理は、十分な脱脂を行う温度パターンが必要であることが判る。
図14および図15は、本実施形態で採用する熱処理(脱脂・焼結)について説明する図である。図14は、第1および第2の成形体の金型4を示す図であり、図15は温度パターンを示す図である。
図14の如く、第1の成形体(第2の成形体も同様)のサイズは、一例として1層の厚みが0.2mm、長さ55mm、幅12mmであり、図15はこのサイズにおいて好適な温度パターンの一例である。
本実施形態の熱処理は、常温から第1の成形体に混入したガスが十分抜ける温度まで毎分約0.2K以下の温度上昇速度で加熱する第1の熱処理により脱脂を行った後、第1の熱処理より少なくとも10倍以上速い温度上昇速度の第2の熱処理により焼結を行う温度パターンである。
すなわち、本実施形態の第1工程から第3工程により、金属粉末と樹脂粉末の混合比を100重量部:10重量部とした焼結用粉末組成物2aにより薄層充填物2を形成し、レーザ照射を行って単層の第1の成形体3を形成する。
レーザ照射条件はレーザスポット径を0.85mm、周波数50Hz、パルス幅0.5ms、出力エネルギー9Jとし、NC装置の送り速度を10mm/sである。また、移動量pは0.6mmである。その後第2工程から第3工程を繰り返すことで5層5列照射成形体(第1の成形体3)を形成する。
その後、第1の成形体3を電気炉に入れ、常温から毎分約0.2K以下の温度上昇速度で第1の熱処理を行い脱脂する。脱脂の最高温度は、第1の成形体3に混入したガスが十分抜ける温度である。引き続き、第1の熱処理より少なくとも10倍以上速い温度上昇速度の第2の熱処理により焼結を行い、第2の成形体6を得る。
具体的には図15の如く、脱脂工程では第1の成形体3を300K程度(常温)から毎分約0.16Kの温度上昇速度で、100ks程度の時間で573K程度まで大気中で加熱する(例えば最高温度573K、最高温度での保持時間7.2ks)。
その後焼結工程では573K程度から毎分約2K程度の温度上昇速度で、60ks程度の時間で1600K程度まで真空加熱炉で加熱する(例えば最高温度1600K、最高温度での保持時間3.6ks)。これにより、第2の成形体6が形成される。
図16はレーザ照射後の第1の成形体3および脱脂・焼結後の第2の成形体6を示す図である。図16(A)はレーザ照射直後の第1の成型体3の外観写真であり、図16(B)は、金型4から取り出した第1の成型体3の外観写真である。更に、図16(C)は、図15の温度パターンにより得られた第2の成形体6のレーザ照射側の主面の外観写真であり、図16(D)はレーザ照射側の対向主面の外観写真である。
図16(A)において、第1の成形体3の周囲に認められる塊は照射に飛散した粉末と考えられる。図16(B)においてレーザ照射されていない焼結用粉末組成物2aは、容易に取り除くことができた。
図16(C)(D)の如くの上記の照射条件および重量比では第2の成形体6の一部に反りが認められ、熱影響でレーザ未照射部も焼結したため、目的形状の第2の成形体6が得られなかった。
また、第2の成形体6の矢印の部分にチャック部の割れが確認された。すなわち、熱影響による未照射部の焼結部分がフィンのように見られる。
そこで、樹脂粉末の混合比率を5重量部に減らして、レーザ送り速度を11.67mm/sとして、第1の成形体3および第2の成形体6を形成した。これ以外の条件は図16の場合と同様である。
図17はその結果を示す図である。図17(A)は、レーザ焼結後の第1の成形体3を示す外観写真、図17(B)は金型4から取り出した第1の成形体3の外観写真である。また図17(C)は、図15の温度パターンにより得られた第2の成形体6のレーザ照射側の主面の外観写真であり、図17(D)はレーザ照射側の対向主面の外観写真である。
図17(A)の如く第1の成形体3の周囲に認められる塊は照射に飛散した粉末と考えられる。また図17(B)の如く金型4から取り出した第1の成形体3はレーザ照射した部分のみが残った。つまり、第1の成形体3の形状が樹脂粉末の混合比およびレーザ送り速度等で制御可能であった。
また、図17(C)(D)では、図16の矢印で示したチャック部の割れは確認できず、焼結後の割れを抑制できた。これは、図16の場合に比べて樹脂粉末の混合比率が少ないためである。
すなわち、焼結用粉末組成物2aの金属粉末としてステンレス鋼粉末を用いる場合、樹脂粉末の混合比率は10重量部より5重量部のほうが、外観においてはよい結果が得られた。
そこで更に、樹脂粉末の混合比について実験を行った。すなわち、樹脂粉末の混合比を変えた焼結用粉末組成物について、レーザ出力、レーザの走査速度、移動量p、樹脂粉末添加後の密度における影響、また焼結合金の引張特性等、レーザ焼結の状態を実験した。
まず、本実施形態の第1工程(図1:ステップS1)により焼結用粉末組成物2aを得る。金属粉末は、SUS316Lステンレス鋼のガスアトマイズ粉末(平均粒径9μm)、樹脂粉末はポリアミド樹脂粉末(GPA−550樹脂粉末;平均粒径6μm)であり、これらを混合する。
図18は、100重量部の金属粉末に対してそれぞれ異なる混合比で樹脂粉末を添加した焼結用粉末組成物2aを示す図であり、SEM写真である。図18(A)が樹脂粉末3重量部、図18(B)が樹脂粉末4重量部、図18(C)が樹脂粉末5重量部の場合である。
このように、本実施形態では金属粉末および樹脂粉末の何れも平均粒径が10μm以下であるので、焼結用粉末組成物2aはこれらが均一に混合される。
本実施形態の第2工程(図1:ステップS2)により焼結用粉末組成物2aを、積層造形コンテナ12(図2)となる金型(図14)に充填し、薄層充填物2を得る。
その後、第3工程(図1:ステップS3)により薄層充填物2にレーザを照射する。レーザ照射は、上記と同様のYAGレーザ加工機を使用した。レーザ照射条件は、レーザスポット径が直径0.85mm、走査速度は1.67mm/sから10mm/sまで変化させ、NC装置の移動量pは0.4mmから0.85mmまで変化させた。移動速度および移動量pはNC制御装置のXYテーブルにより数値制御した。レーザ出力測定は薄層充填物2の表面で34Wであり、これにより、第1の成形体3を得た。
次に、本実施形態の第4工程(図1:ステップS4)により第1の成形体3を電気炉に入れ、図15に示す温度パターンを有する熱処理により脱脂・焼結を行い、第2の成形体6を形成した。
このように第1の成形体3(レーザ照射後の試験片)および第2の成形体6(焼結後の試験片)を作製し、第1の成形体3の表面状態を観察し、第2の成形体6の密度の測定、ミクロ組織の観察、引張試験を行った。
第1の成形体3および2の成形体6のミクロ組織は光学顕微鏡およびEDX(Energy−dispersive x−ray spectroscopy)付き走査型電子顕微鏡により観察した。顕微鏡観察は、10%のシュウ酸溶液内で電気的にエッチング(電解腐食)した後行った。
第2の成形体の密度は、アルキメデス法により測定した。引張試験は、引張試験装置により行った。
図19は、結合材となる樹脂粉末の混合比(重量部)に対する第2の成形体6の相対密度変化を示す。
横軸が樹脂粉末の重量部の変化であり、縦軸が相対密度である。図19より、相対密度は、樹脂粉末の重量部が3から5の時およそ一定であった。しかし樹脂粉末の重量部が5以上になると相対密度が低くなった。これより、樹脂粉末の最適な混合比はおよそ4重量部であることがわかった。
図20は、樹脂粉末の重量部に対する第2の成形体(焼結体)6のミクロ組織変化を示す図であり、走査顕微鏡写真である。図20(A)(B)は、100重量部の金属粉末に対して樹脂粉末が3重量部、図20(C)(D)は樹脂粉末が4重量部、図20(E)(F)は樹脂粉末が5重量部の混合比で混合した場合である。
ステンレス鋼粉末の場合、焼結体の組織(ミクロ組織)はオーステナイト相から成ることが知られている。
図20(A)(C)(D)は、100μmオーダーの走査顕微鏡写真であり、樹脂粉末の重量部が増えることによって第2の成形体6(焼結体)の粒径が大きくなっている。図示は省略するが、樹脂粉末の重量部が7.5の場合粒径は大きくなり、大きい気孔が形成された。
金属射出成形法により製造されたステンレス鋼体の場合、炭素含有量が増えることによりミクロ組織が変化する。すなわち炭素含有量が増えると粒径が大きくなり、相対密度が減少する。
また図20(B)(C)(D)は1mmオーダーの走査顕微鏡写真であり、これらより樹脂粉末が4重量部の場合に最も組織間の空隙が少なく、良好なミクロ組織が得られることが判る。
図21には、樹脂粉末の混合比(重量部)に対する第2の成形体6の炭素含有量の変化を示す。横軸が樹脂粉末の重量部であり、縦軸が第2の成形体の炭素含有量ΔCdである。
図21より、第2の成形体6の炭素含有量は重量部4で最小値0.015%である。この炭素含有量は、SUS316LのJIS規格の値(0.03%以下)を満たすものである。つまり、SUS316Lステンレス鋼粉末の場合、樹脂粉末の混合比が4重量部であると、図20の如くミクロ組織も良好となり、図21の如く、炭素含有量も規格値を満たすことができる。従って、金属粉末:樹脂粉末の混合比は100重量部:4重量部が好適である。
図22は、金属粉末と樹脂粉末の重量部の変化に対する第2の成形体の引張特性を示す。また、図23は、第2の成形体の応力ひずみ曲線を示す。図23において実線aが樹脂粉末3重量部、実線bが4重量部、実線cが5重量部の場合である。
この結果から、樹脂粉末の重量部が4の場合が最も強度があり、引張強さは280MPa、伸びは15%であることがわかった。この結果は、レーザを用いた積層造形法で得られる焼結体として優れた機械的性質を有するものである。
図24および図25は、金属粉末と樹脂粉末の混合比が100重量部:4重量部の場合における第1の成形体3を示す図である。レーザが照射された部分の形状およびレーザ照射後の表面状態を示す図であり、それぞれ走査電子顕微鏡写真である。
図24(A)〜(C)は、それぞれレーザの走査速度(NC装置の移動速度)が2.5mm/s、5mm/s、10mm/sに対する単一のレーザ照射部の形の変化を示す。つまり、移動速度が大きくなることによって中央付近に線状に示されるレーザ照射部の幅は減少し、その幅は、それぞれ移動方向においてほぼ一定となる。
図25は、レーザ照射部の表面形態を示す。図25によれば、レーザ照射部にはさざ波状の表面が得られている。また、ボール状の溶融物は観察できない。これはいずれも、レーザ照射による第1の成形体の形成が適切に行われたことを示している。
この滑らかな表面をもつ連続した円柱状のレーザ照射部は10mm/sの移動速度(図24(C))で得られたものである。
図26は、第1の成形体3の組織を示す。レーザ照射(レーザ焼結)の間、ポリアミド樹脂粉末のみが溶融する。また、溶融したポリマーがステンレス鋼粉末と一緒に結合している。
図27は、移動量pに対する第1の成形体3の表面状態の変化を示す。図27(A)、(B)、(C)は移動量pがそれぞれ0.4mm、0.6mm、0.8mmの場合である。
狭い移動量(図27(A))の場合、溶融―凝固現象の間、第1の成形体3の表面は丸くなる。これはおそらく狭い移動量により多量のエネルギーを粉末が吸収したためである。一方幅広い移動量の場合、図27(C)の如く、小さい領域を重ねて、第1の成形体3の表面は明確に幅広いレーザ照射部として現れている。これは隣接したレーザ照射部間の溶着が弱いことを意味している。すなわち、ほとんど滑らかな表面を有する第1の成形体3はおよそ0.6mmの移動量pで得ることができる(図27(B)参照)。
再び図21を参照し、樹脂粉末の重量部が4〜10の間では樹脂粉末の重量部の増加に伴い炭素含有量が直線的に増加する(比例傾向にある)ことがわかる。第2の成形体のミクロ組織の変化は炭素含有量に対応し、機械的特性に影響を与える。また上記の如く金属によってはAISI規格等により炭素含有量が規定されているものもある。
つまり、本実施形態によれば、樹脂粉末の重量比が4重量部から10重量部の範囲であれば、第1の成形体の炭素含有量Cdを制御し、結果として第2の成形体の炭素含有量(炭素余剰量ΔCd)を制御できるので、所望の機械的特性を有する、あるいは化学成分の規格を満たした成形体(焼結体)を得ることができる。
例えば、SUS316Lステンレス鋼粉末の場合、樹脂粉末の混合比が4重量部の場合に規格を満たしている。ステンレス鋼は、一般的に低炭素のため、4重量部が好適である。一方、他の系のステンレス鋼(例えば高炭素のマルテンサイト系ステンレス鋼)の場合には、炭素含有量が高い方が強度の向上が期待できる。そのような場合、図25の直線性を示すの範囲で樹脂粉末の混合比を制御することにより、最適な炭素含有量を得ることができる。
以上より、本実施形態によれば、ステンレス鋼粉末(SUS316L)の場合、ステンレス鋼粉末100重量部に対して添加(混合)する樹脂粉末の重量部を4とし、レーザの走査速度(NC装置の移動速度)を10mm/s、NC装置の移動速度pを0.6mmとして第1の成形体3を形成し、図15に示す温度パターンによって第1の成形体3の脱脂および焼結を行って第2の成形体6を得る。
これにより、相対密度およびミクロ組織、炭素含有量において優れた、すなわち高密度、高強度の焼結体が得られる。
また、図21の如く、樹脂粉末の重量部を4〜10の間で適宜選択することにより、第2の成形体(焼結体)に含有される炭素量が制御可能である。
以上ステンレス鋼粉末(SUS316L)について説明したが、本実施形態はこれに限らない。例えばSKD4(化学成分は、C:0.25〜0.35%、Cr:2.00〜3.00%、W:5.00〜6.00%、V:0.30〜0.50%)やSKT4(化学成分は、C:0.50〜0.60%、Cr:0.70〜1.00%、Mo:0.20〜0.50%)等の合金工具鋼でも同様の効果が得られる。
本発明は、金属粉末またはセラミックス粉末と、樹脂粉末からなる焼結用粉末組成物をレーザ焼結する方法であり、積層造形法に適用できる。焼結用粉末組成物は、たとえば金属粉末に樹脂をコーティングした、市販されているレーザ焼結による積層造形専用の粉末組成物の代替品として好適である。

本発明の実施形態を説明するフロー図である。 本発明の実施形態の焼結体形成装置を示す概略図である。 本発明の実施形態の温度パターンを説明する概要図である。 本発明の実施形態を説明するための(A)焼結用粉末組成物、(B)金属粉末、(C)樹脂粉末のSEM写真である。 試験片を作製するための金型の概要図である。 試験片を作製するための金型の概要図である。 本発明の実施形態を説明するための概要図である。 金属粉末による試験片を示す断面図である。 本発明の実施形態を説明するための概要図である。 試験片に施した熱処理の温度パターンを示す図である。 焼結用粉末組成物による試験片の断面写真である。 試験片に施した熱処理の温度パターンを示す図である。 焼結用粉末組成物による試験片の断面写真である。 試験片を作製するための金型の概要図である。 本実施形態の熱処理の温度パターンを示す図である。 本実施形態の第1及び第2の成形体を示す図である。 本実施形態の第1及び第2の成形体を示す図である。 本発明の実施形態を説明するための焼結用粉末組成物の図である。 本発明の実施形態を説明するための樹脂粉末の重量部に対する第2の成形体の相対密度変化示す特性図である。 本発明の実施形態を説明するための第2の成形体のミクロ組織を示す図である。 本発明の実施形態を説明するための樹脂粉末の重量部に対する第2の成形体の炭素含有量の変化を示す図である。 本発明の実施形態を説明するための第2の成形体の引張特性を示す図である。 本発明の実施形態を説明するための第2の成形体の応力−ひずみ曲線を示す図である。 本発明の実施形態を説明するための第1の成形体を示す図である。 本発明の実施形態を説明するための第1の成形体を示す図である。 本発明の実施形態を説明するための第1の成形体の組織を示す図である。 本発明の実施形態を説明するための第1の成形体を示す図である。
符号の説明
1 レーザ
2 薄層充填物
2a 焼結用粉末組成物
3 第1の成形体
4 金型
5 NC装置
6 第2の成形体
10 焼結体形成装置
11 粉末充填コンテナ
12 積層造形コンテナ
13 プレーナ
14 昇降部
15 レーザ照射部
16 モータ
17 プレート



Claims (9)

  1. 平均粒径が10μm以下の無機粉末100重量部に対して平均粒径が10μm以下の樹脂粉末15重量部以下を混合し焼結用粉末組成物を得る工程と、
    前記焼結用粉末組成物を所定のコンテナ内に充填し薄層充填物を得る工程と、
    前記薄層充填物に所望のパターンでレーザ光線を照射し前記焼結用粉末組成物に含まれる前記樹脂粉末を溶着して第1の成形体を形成する工程と、
    前記第1の成形体を熱処理により脱脂および焼結し、前記無機粉末による第2の成形体を形成する工程と、
    を具備することを特徴とする焼結体形成方法。
  2. 前記薄層充填物を得る工程と前記第1の成形体を形成する工程を複数繰り返し、三次元の第1の成形体を形成した後、前記第2の成形体を形成することを特徴とする請求項1に記載の焼結体形成方法。
  3. 前記樹脂粉末の添加量は5重量部以下であることを特徴とする請求項1に記載の焼結体形成方法。
  4. 前記無機粉末は粉末冶金に使用される金属粉末又はセラミック粉末であることを特徴とする請求項1に記載の焼結体形成方法。
  5. 前記無機粉末はステンレス鋼または合金工具鋼の金属粉末であることを特徴とする請求項1に記載の焼結体形成方法。
  6. 前記樹脂粉末はポリアミド又はポリエステルであることを特徴とする請求項1に記載の焼結体形成方法。
  7. 前記樹脂粉末の添加量を4重量部から10重量部まで変化させることにより、前記第2の成形体に含まれる炭素量を制御することを特徴とする請求項1に記載の焼結体形成方法。
  8. 前記熱処理は、常温から前記第1の成形体に混入したガスが十分抜ける温度まで毎分約0.2K以下の温度上昇速度で加熱する第1の熱処理により脱脂を行った後、前記第1の熱処理より少なくとも10倍以上速い温度上昇速度の第2の熱処理により焼結を行うことを特徴とする請求項1に記載の焼結体形成方法。
  9. 前記焼結は真空雰囲気または不活性ガス雰囲気で行うことを特徴とする請求項1に記載の焼結体形成方法。

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