発明の詳細な説明
(技術分野)
本発明は、分子生物学の分野に関する。より特定的に言うと、本発明は、骨関連障害の診断、予後診断、予防、治療および療法の評価のための方法および組成物に関する。
(背景技術)
骨関連障害および疾患の話題は近年著しく注目を集めてきている。骨関連障害は骨の再吸収と骨の形成の間のアンバランスの結果として生じる骨粗鬆によって特徴づけられる。人生を通して、骨格の骨はつねに改造されている。この改造プロセスにおいては、破骨細胞による骨の再吸収と骨芽細胞によるその後の復元の間に微妙なバランスが存在する。軟骨内および膜内の両方の骨化に関与する骨芽細胞は、マトリクスタンパク質を作り新しい骨の形成を結果としてもたらす骨組織内の特殊化された細胞である。骨形成すなわちオステオジェネシスは、骨格内の骨量の維持にとって不可欠である。骨芽細胞とは異なり、破骨細胞は、骨の再吸収および除去に関連している。正常な骨では、骨芽細胞媒介の骨形成と破骨細胞媒介の骨再吸収の間のバランスは調節された複雑な相互作用を通して維持される。
骨格系に関連する欠陥、疾病および障害は数多く存在する。いくつかの例としては、これらに限定されるわけではないが、骨粗鬆症、骨肉腫、関節炎、くる病、骨折、歯周病、骨分節欠陥、溶骨性疾患、原発性および続発性上皮小体亢進症、パジェット病、骨軟化症、骨化過剰症、および大理石骨病が含まれる。骨原性分化および再生プロセスに関与するメカニズムの同定は、骨粗鬆症といったような骨障害および骨の生理学を理解するためにきわめて重要である。これらの障害には、推定上の骨芽細胞始原細胞の不完全な突然変異に起因する骨形成の欠陥が関与している可能性がある。
骨の成長に付随する疾病または障害を治療する方法、骨形成を加速する方法、骨形成を調節(増加または減少)させる作用物質を同定する方法、骨関連障害に付随する遺伝子またはそのタンパク質産物を同定する方法を開発する必要性が存在している。
骨形成および骨再吸収に関与するメカニズムの同定は、骨粗鬆症といったような骨障害および骨の生理を理解するためにきわめて重要である。骨関連障害に付随する遺伝子またはそのタンパク質産物は、骨形成の分子メカニズムの解明のため、新しい薬物のスクリーニングおよび開発のため、骨の発育および骨粗鬆障害の診断、予後診断、予防および治療のため、そして骨粗鬆症といったような骨関連障害用の療法の評価のために使用することができる。
本発明は、骨関連活性を調節する方法を提供するのみならず、骨形成および骨再吸収に関与するメカニズムの理解を増進する方法をも提供する。
(発明の開示)
本発明は、Rorポリペプチドあるいはその相同体または誘導体またはフラグメントまたは変種または変異体をコードするポリヌクレオチドを含む発現カセットであって、そのポリヌクレオチドが骨細胞の中で操作可能なプロモータの制御下にある発現カセットに関する。
本発明は、Rorポリペプチドあるいはその相同体または誘導体またはフラグメントまたは変種または変異体をコードするポリヌクレオチドを含む発現カセットを含む宿主細胞であって、前記ポリヌクレオチドが、真核細胞内で操作可能なプロモータの制御下にあり、前記プロモータが前記ポリヌクレオチドに対し異種である、宿主細胞に関する。
本発明は、有効量のRor分子あるいはその相同体または誘導体またはフラグメントまたは変種または変異体を含む骨関連活性を調節するための組成物に関する。
本発明は、(a)作用物質をRor分子と組合せる工程および(b)前記作用物質のRor活性に対する効果を検出する工程を含む、作用物質についてのスクリーニング方法であって、Ror活性の減少および増加の検出が、作用物質の骨関連作用物質であることの指標である方法に関する。
本発明は、(a)レポータ遺伝子に操作可能な形で連結されたRorプロモータ配列を含む単離された細胞と作用物質を組合せる工程および(b)レポータ活性に対する前記作用物質の効果を検出する工程を含む、作用物質についてのスクリーニング方法であって、レポータ活性により測定される通りのRorプロモータ活性の減少または増加の検出が、作用物質が骨関連作用物質であることの指標である方法に関する。
本発明は、結合パートナーに対するRorポリペプチドの結合を調節する作用物質についてのスクリーニング方法であって、(a)作用物質の存在下でRor結合パートナーとRorポリペプチドを接触させる工程;(b)対照の存在下または作用物質の不在下でRor結合パートナーとRorポリペプチドを接触させる工程;および(c)工程(a)における結合パートナーに対する前記Rorポリペプチドの結合を工程(b)における結合パートナーに対する前記Rorポリペプチドの結合と比較することによってRor結合パートナーに対するRorポリペプチドの結合を調節する作用物質を選択する工程を含む方法に関する。
本発明は、標的Ror分子の発現または活性を調節する作用物質を対象に投与する工程を含む、対象の体内において骨関連活性を調節する方法に関する。
本発明は、Wnt−1およびWnt−3活性を調節するのに有効な量で標的Ror2分子の発現または活性を調節する作用物質を投与する工程を含む、Wnt−1およびWnt−3活性を調節する方法に関する。
本発明は、Wnt−3活性を調節するのに有効な量で標的Ror1ポリペプチドの発現または活性を調節する作用物質を投与する工程を含む、Wnt−3活性を調節する方法に関する。
本発明は、骨関連活性を調節するための作用物質を固定する方法であって、(a)細胞内でRor分子を発現するかまたは内因性Ror発現を使用する工程;(b)作用物質と細胞を接触させる工程;および(c)Ror分子の発現または活性をモニター観察する工程を含み、作用物質の存在下でのRor分子の発現または活性の減少または増加が骨関連活性を調節しているものとして作用物質を同定する方法に関する。
本発明は、Wntシグナル化経路を調節するための作用物質を同定する方法であって、Ror分子の発現または活性を調節する能力について1つ以上の作用物質をスクリーニングする工程を含み、Ror分子の発現または活性を調節することのできる作用物質が、Wntシグナル化経路を調節する作用物質である方法に関する。
本発明は、Wntペプチドを発現する細胞に対し生物活性分子を連結する方法であって、生物活性分子に結合させられるRor2ポリペプチドと前記細胞を接触させる工程および前記Wntポリペプチドと前記Ror2ポリペプチドを互いに結合させかくして前記生物活性分子を前記細胞に連結する工程を含む方法に関する。
本発明は、対象の体内でのRor分子の発現を測定する工程および正常な対象の体内でのその発現に比較するかまたは骨関連障害について治療を受けた後の同じ対象の体内でのその発現に比較した対象の体内での前記Ror分子の相対的発現を決定する工程を含む、骨関連障害について対象をスクリーニングするための方法に関する。
対象の体内でのRorポリペプチドの発現を測定する工程および正常な対象の体内でのその活性に比較するかまたは骨関連障害について治療を受けた後の同じ対象の体内でのその発現に比較した対象の体内での前記Rorポリペプチド分子の相対的活性を決定する工程を含む、骨関連障害について対象をスクリーニングするための方法。
本発明は、骨形成に関与する遺伝子を同定する方法であって、a)細胞内でRor分子を過剰発現する工程、b)遺伝子発現プロフィール内の変化をモニター観察する工程およびc)Ror発現によりどの遺伝子が調節されるかを決定しかくして骨形成に関与する遺伝子を同定する工程を含む方法に関する。
本発明は、Wntシグナル化経路を調節する遺伝子を同定する方法であって、a)細胞内でRor分子を過剰発現する工程、b)遺伝子発現プロフィール内の変化をモニター観察する工程およびc)Ror発現によりどの遺伝子が調節されるかを決定しかくしてWntシグナル化経路を調節する遺伝子を同定する工程を含む方法に関する。
本発明は、マーカーとしてRor2を用いて増殖性のヒト前骨芽細胞を同定するための方法であって、ヒト骨芽細胞内でのRor2遺伝子の発現を決定する工程を含み、ここで増大したRor2発現が前記細胞を増殖前骨芽細胞であるものとして同定する方法に関する。
本発明は、マーカーとしてRor2を用いてマトリクス成熟期にあるマウス骨芽細胞を同定するための方法であって、マウス骨芽細胞内でのRor2遺伝子の発現を決定する工程を含み、ここで増大したRor2発現が、該細胞をマトリクス成熟期にある骨芽細胞であるものとして同定する、方法に関する。
本発明は、Ror2キナーゼ活性を決定する方法であって、(a)Ror2ポリペプチドを得る工程;(b)32PγATPの存在下でRor2ポリペプチドを標識する工程;(c)取込まれた32Pの量を測定することによりRor2キナーゼ活性を決定する工程を含み、32Pの量がRor2キナーゼの活性を標示する方法に関する。
(図面の簡単な記載および配列の記載)
本発明は、本出願の一部を成す以下の詳細な説明および添付の図面および配列リストから、さらに完全に理解することができる。
図1は、Rorキナーゼの発現が、ヒト骨芽細胞分化の後期段階の間に減少することを示している。前骨芽細胞から成熟骨細胞までの異なる骨芽細胞分化期を表す細胞内のRor2(図1A)およびRor1(図1B)の発現を、GIヒト1aチップ上の遺伝子チップ解析(円)およびリアルタイムRT−PCR(棒)によって査定した。両方法について、HOB−03−C5中の相対的mRNA発現を1に設定した。リアルタイムRT−PCRを、実施例1の表1中に列挙されているプローブとプライマを用いて実施した。mRNAのレベルを、各標本において18SrRNAの発現に対して正規化した。1つの細胞系列あたり3つのRT−PCR反応の平均±標準誤差(SE)。HOB−05−T1細胞中のRor2発現は、RT−PCRでは検出不能であった。細胞系列:03−C5−HOB−03−C5、前骨芽細胞、03−CE6−HOB−03−CE6、初期骨芽細胞;02−C1−HOB−02−C1、成熟骨芽細胞;01−C1−HOB−01−C1、前骨細胞;05−T1−HOB−05−T1、成熟骨細胞(図1は実施例1の中で言及されている)。
図2は、SFRP−1がRor2発現を抑圧することを示している。SFRP−1(01−09SFRP−1)または空のベクター(01−09ベクター)を安定した形で過剰発現するHOB−01−09骨細胞由来または野生型またはSFRP−1−/−マウスの頭蓋冠骨由来のポリA(+)RNAを用いた、Glヒト1aチップ上でのRor2(黒色棒)およびRor1(白色棒)発現の遺伝子チップ分析の結果。野生型およびSFRP1−/−マウスのRor1発現レベルは、チップ検出限界より低いものであった。01−09ベクター細胞および野生型マウス内での相対的mRNA発現は1に設定された(図2は実施例1の中で言及されている)。
図3は、Rorタンパク質の予測されたドメイン構造を示している。該ドメインは以下のものである:IG−免疫グロブリン;FRZ−Frizzled;クリングル−元来プロトロンビン中で発見された3対のジスルフィド結合により連結されている3重ループ構造;M−膜内外;Tyr Kin−チロシンキナーゼ。B.Ror1のFrizzledモジュール内でのジスルフィド結合の位置特定(ロズマス(Roszmusz)ら編、2001、生物化学ジャーナル。276:18485−90)。数字は、Frizzledドメイン内の10個の保存されたシステインを意味する(図3は、実施例1の中で言及されている)。
図4は、Ror1ではなくRor2キナーゼの発現が、ヒト骨芽細胞分化の初期の間そしてマウス骨芽細胞分化の後期を通じては増加することを示している。A.ヒトMSCを、ヒト骨形成培地(成長培地中0.1mMのデキサメタゾン、0.05mMのアスコルビン酸および10mMのβ−グリセロホスファート)中でインキュベートし、全細胞RNAを指示された時点で収集し、Ror1およびRor2遺伝子の発現についてRT−PCRにより分析した。B.マウスMC3T3−E1細胞を、マウス骨形成培地(成長培地中25ug/mlのアスコルビン酸および10mMのβ−グリセロホスファート)中でインキュベートし、全細胞RNAを指示された時点で収集し、Ror1、Ror2、アルカリホスファターゼ(AP)、およびオステオカルシン(OC)遺伝子の発現についてRT−PCRにより分析した(図3は、実施例2の中で言及されている)。
図5は、U2OS細胞中のRorタンパク質の発現を示している。A.全長Ror1およびRor2キナーゼおよびRor2変異体の概略的表現。FLAG−フラグエピトープタグ;M−膜内外ドメイン;Tyr Kin−チロシンキナーゼドメイン。B.指示されたRor構成体でトランスフェクトされたU2OS細胞由来の全細胞タンパク質抽出物(50pg/レーン)のフラグエピトープタグについてのウエスタン免疫ブロット法。Ror1、Ror2およびRor2KDの位置は、矢印の頭で、またRor2ΔC−フラグは矢印によってマークされている。C.上部図版は、フラグ親和性アガロース上で免疫沈降されたRor2−フラグまたはRor2KD−フラグを用いた「一般的な方法」の下で記述された通りに実施されたインビトロ自己リン酸化検定の結果のオートラジオグラフを示している。下部図版では、フラグ免疫沈降されたタンパク質の10パーセントがSDS−PAGEにより分離され、自己リン酸化反応中のキナーゼレベルを査定するために銀染色法により分析された(図5は、実施例3、6および8中で言及されている)。
図6は、Ror2キナーゼが、Wnt−3を阻害するものの、Wnt−1活性を増強させることを示している。U2OS培養を、チミジンキナーゼプロモータに対して5’のところでクローニングされたTCF結合部位の16のコピーを含む組換え型ルシフェラーゼレポータ遺伝子で一過性にトランスフェクトした。Aでは、pcDNA3.1(+)(ベクター)、Ror2−フラグ(R2)、Wnt−3−HA(w3)、またはWnt−3−HAと指示された量のRor2−フラグ(96−ウェル平板の1ウェルあたりのng単位)またはSFRP−1(S)或はその両方でプロモータ−レポータ遺伝子を同時トランスフェクトした。Bでは、pcDNA3.1(+)、Wnt−1−HA(w1)、またはWnt−1−HAと指示された量のRor2−フラグまたはSFRP−1或はその両方でプロモータ・レポータ遺伝子を同時トランスフェクトした。pcDNA3.1(+)の存在下でのレポーター遺伝子のトランスフェクション後に測定されたルシフェラーゼ値には、任意に1の値を与えた。Aにおいて、結果は、n≧16で少なくとも2つの独立した実験の平均±SEであり、アスタリスクは、Wnt−3−HA単独で得られたレベル未満へのルシフェラーゼ活性の有意な減少を示している(*−p<0.05、**−p<0.0001)。Bにおいて、結果は、n≧24で少なくとも3回の独立した実験の平均±SEであり、アスタリスクは、Wnt−1−HA単独の存在下でのレベルより高いルシフェラーゼ活性の有意な増加を示している(*−p<0.05、**−p<0.0001)(図6は実施例4中で言及されている)。
図7は、Ror1キナーゼがWnt−3を阻害するが、Wnt−1活性にはまったく影響を及ぼさないことを示している。Ror2−フラグの代わりにRor1−フラグ(R1)が用いられた点を除き、図6と同様であった。平均±SE、n≧8。Aでは、アスタリスクは、Wnt−3−HA単独で得られたレベルより低いルシフェラーゼ活性の有意な減少を示している(*−p<0.01、**−p<0.0001)(図7は実施例5で言及されている)。
図8は、Wnt−1の増強およびWnt−3活性の阻害のの大部分のためにRor2チロシンキナーゼ活性が必要とされることを示している。Ror2−フラグの代わりにRor2KD−フラグ(R2KD)を用いた点を除き、図6と同様であった。AおよびBにおいて、結果は、n≧24で少なくとも3回の独立した実験の平均±SEである。アスタリスクは、Wnt−3−HA単独で得られるレベルより低いルシフェラーゼ活性の有意な減少を示している(**−p<0.0001)(図8は実施例6で言及されている)。
図9は、Wnt−1の増強およびWnt−3活性の阻害の一部についてRor2の細胞質ドメインが必要であることを示している。Ror2−フラグの代わりにRor2ΔC−フラグ(R2d)を用いた点を除き、図6と同様であった。Aにおいて、結果は、n≧16で少なくとも2つの独立した実験の平均±SEである。アスタリスクは、Wnt−3−HA単独で得られたレベルより低いルシフェラーゼ活性の有意な減少を示している(*−p<0.05、**−p<0.0001)。Bでは、n≧8 (図9は実施例6で言及されている)。
図10は、Ror2およびRor2KDは、Wnt−1およびWnt−3に結合することを示している。ベクター対照またはRor2−フラグおよびWnt−HAの指示された組合せを用いてCOS7細胞を一過性にトランスフェクトした。DNAの合計量は、それぞれRor2またはWntの代わりにpcDNA3.1(+)またはpUSEampを加えることによって一定に保たれた。24時間目に、溶解物を直接(上)または抗フラグ抗体での抗体免疫沈降後に(下)SDS−PAGEによって解析した。抗HA抗体を用いて免疫ブロット法を実施した(図10は実施例7で言及されている)。
図11は、Ror2が異なるWntを区別することを示している。指示されたWnt−HAおよびRor2−フラグ(+)またはpcDNA3.1を用いてCOS7細胞を一過性にトランスフェクトした。24時間で、溶解物を抗フラグ抗体で免疫沈降させ、抗HA抗体(上)によりWntの存在について分析した。下部図版は、指示されたWntおよびRor2−フラグ(免疫沈降反応における等しい投入に対する対照)を含むCOS7抽出物の抗HA抗体を用いたウエスタンブロット分析を示している(図11は実施例7で言及されている)。
図12は、Wnt−1およびWnt−3の過剰発現が、Ror2自己リン酸化の程度に全く影響を及ぼさないことを示している。A.上部図版は、Ror2−フラグおよび指示されたWntを用いて同時トランスフェクトしたU2OS細胞からフラグ親和性アガロース上で免疫沈降されたRor2−フラグを用いて「一般的方法」の下で説明した通りに実施されたインビトロ自己リン酸化検定の結果のオートラジオグラフを示している。下部図版は、抗フラグ抗体を用いた同じ膜のウエスタン免疫ブロット法を示している。B.オートラジオグラフのシグナルを、各反応における免疫反応性Ror2タンパク質の合計量に対して正規化し、Wntの不在下で得られた相対的なシグナルを1に設定した。3つの独立した実験の平均±SE(図12は実施例8で言及されている)。
図13は、Ror2が、細胞質ゾルβ−カテニンのWntで媒介された安定化を阻害することを示している。Ror2(R2)およびWnt(W)の指示された組合せを用いてU2OS培養を、一過性にトランスフェクトした。DNAの合計量を、それぞれRor2またはWntの代わりにpcDNA3.1(+)またはpUSEampを加えることによって一定に保った。24時間目で、細胞質タンパク質を抗β−カテニン抗体を用いたウエスタン免疫ブロット法により分析した。等しい負荷が抗β−アクチン抗体での染色によって確認された後にWntの不在下で得られたシグナルに対してβ−カテニンのレベルを、正規化した。数字は、3つの独立した実験の平均である。(図13は実施例 9で言及されている)。
図14は、Ror2が両方のWntを結合させ、それらをFrizzled受容体から遠くに隔離しかつβ−カテニンを安定化させるその能力を阻害することになる、Ror2活性についての提案されているモデルを示している。さらに、Ror2受容体に結合するWnt1は、Ror2受容体のチロシンキナーゼ活性を要求しかつWnt−応答性プロモータ活性を増強させる結果となる、未同定シグナルリングカスケードの活性化を引き起こす。Wnt3結合は同じカスケードを刺激しないが、その代わりに、Wnt−応答性プロモータの阻害を導く他のチロシンキナーゼ依存性事象を活性化する。FZ−Frizzled受容体、GSK−3β−グリコーゲンシンターゼキナーゼβ、β−cat−β−カテニン、Lef/Tcf−リンパ−エンハンサ結合因子/T−細胞転写因子(図14は実施例10で言及されている)。
図15は、U2OS細胞内のRor2結合パートナの同定を示している。上部で識別されている構成体で一過性にトランスフェクトされたU2OS細胞由来の全細胞抽出物を、抗フラグ抗体で免疫沈降させ、4−12%(A)または7%(B)ポリアミドゲル上のSDS−PAGE分析に付した。並行した実験において、4−12%ゲルをニトロセルロース膜上にトランスブロットし、抗−フラグ(C)または抗ホスホチロシン(D)抗体を用いてウエスタン免疫ブロット法を実施した。矢印は、Ror2依存性であると思われるバンドを指している。M−kDa単位の分子量。55および25kDa前後の際立ったバンドは、フラグ親和性アガロースから解離したIgGサブユニットである(図15は実施例11で言及されている)。
図16は、Ror2がNotch2の細胞間ドメイン(Notch2lC)に結合することを示している。ベクター対照またはRor2−フラグおよびNotch2lC−V5−hisの指示された組合せを用いて、U2OS細胞を一過性にトランスフェクトした。pcDNA3.1(+)を加えることによって、DNAの合計量を一定に保った。24時間目で、溶解物を直接(上)または抗フラグ抗体での免疫沈降後に(下)SDS−PAGEによって分析した。免疫ブロット法は、抗−V5(上)または抗his(下)を用いて実施した(図16は実施例12で言及されている)。
図17は、Ror2およびRor1を安定した形で過剰発現する細胞系列の生成を確認している。A.Ror2、Ror2−Flag、Ror1−Flag、または空のベクター(pcDNA 3.1(+))を過剰発現するHOB−01−09細胞中の相対的Ror2およびRor1 mRNA発現。HOB−01−09−pcDNA細胞中での相対的mRNA発現を1に設定した。実施例1の表1中に列挙されているプローブおよびプライマを用いてリアルタイムRT−PCRを実施した。mRNAのレベルを、各標本中において18S rRNAの発現に対して正規化した。B.Ror2、Ror2−Flag、Ror1−Flag、または空のベクターを過剰発現するHOB−01−09細胞由来の全細胞タンパク質抽出物(50μg/レーン)の、指示された抗体を用いたウエスタン免疫ブロット法(図17は実施例13で言及されている)。
表1は、ヒトRor mRNAのリアルタイムRT−PCR分析に使用されたプライマとプローブを示す(表1は実施例1で言及されている)
表2は、マウスRor mRNAのリアルタイムRT−PCR分析に使用されたプライマとプローブを示す(表2は実施例2で言及されている)
表3は、マウスアルカリホスファターゼおよびオステオカルシンmRNAのリアルタイムRT−PCR解析で使用されたプライマとプローブを示す(表3は実施例2で言及されている)
表4は、潜在的なRor2相互作用タンパク質を示す(表4は実施例9で言及されている)
以下の48個の配列の説明および本書に添付された配列リストは、37C.F.R.§1.821−1.825(「ヌクレオチド配列および/またはアミノ酸配列の開示を含む特許出願についての規定要件−配列規則」)に記され国際知的所有権機構(WIPO)規格ST.25(1998)およびEPOおよびPCTの配列リスト規定要件(規則5.2および4.95(a−2)並びに実施細則第208条および補遺C)に合致するような特許出願中のヌクレオチドおよび/またはアミノ酸配列の開示を支配する規則に適合するものである。配列挙述には、本明細書に参照により援用されている核酸研究(Nucleic Acids Res.)、13、3021−3030、(1985)および生化学ジャーナル(Biochemical J.)、219(2)、345−373、(1984)中で記述されたIUPAC−IUBMB規格に適合して定義された通りのヌクレオチド配列文字に対する1文字コードアミノ酸についての3文字コードが含まれる。ヌクレオチドおよびアミノ酸配列データのために使用される記号および書式は、37C.F.R.§1.822に記された規則に適合する。
配列番号1は、当初TCR−アルファエンハンサ、CD3−eエンハンサ、およびコンセンサスTCF DNA結合部位内で同定されたTCF DNA結合部位を含む第1のヌクレオチド配列である。
配列番号2は、当初TCR−アルファエンハンサ、CD3−eエンハンサ、およびコンセンサスTCF DNA結合部位内で同定されたTCF DNA結合部位を含む第2のヌクレオチド配列である。
配列番号3は、Ror1タンパク質についてコードするヌクレオチド配列である。
配列番号4は、Ror1タンパク質の推定アミノ酸配列である。
配列番号5は、Ror2タンパク質についてコードするヌクレオチド配列である。
配列番号6は、Ror2タンパク質の推定アミノ酸配列である。
配列番号7は、Ror1−フラグタンパク質についてコードするヌクレオチド配列である。
配列番号8は、Ror1−フラグタンパク質の推定アミノ酸配列である。
配列番号9は、Ror2−フラグタンパク質についてコードするヌクレオチド配列である。
配列番号10は、Ror2−フラグタンパク質の推定アミノ酸配列である。
配列番号11は、Ror2ΔC−フラグタンパク質についてコードするヌクレオチド配列である。
配列番号12は、Ror2ΔC−フラグタンパク質の推定アミノ酸配列である。
配列番号13は、Ror1−フラグを構築するために用いられる最上ストランドプライマのヌクレオチド配列である。
配列番号14は、Ror1−フラグを構築するために用いられる最下ストランドプライマのヌクレオチド配列である。
配列番号15は、Ror2−フラグを構築するために用いられる第1の最上ストランドプライマのヌクレオチド配列である。
配列番号16は、Ror2−フラグを構築するために用いられる第1の最下ストランドプライマのヌクレオチド配列である。
配列番号17は、Ror2−フラグを構築するために用いられる第2の最上ストランドプライマのヌクレオチド配列である。
配列番号18は、Ror2−フラグを構築するために用いられる第2の最下ストランドプライマのヌクレオチド配列である。
配列番号19は、Ror2−フラグを構築するために用いられる第3の最上ストランドプライマのヌクレオチド配列である。
配列番号20は、Ror2−フラグを構築するために用いられる第3の最下ストランドプライマのヌクレオチド配列である。
配列番号21は、Ror2KD−フラグを構築するために用いられる最上ストランドプライマのヌクレオチド配列である。
配列番号22は、Ror2KD−フラグを構築するために用いられる最下ストランドプライマのヌクレオチド配列である。
配列番号23は、Ror2ΔC−フラグを構築するために用いられる最上ストランドプライマのヌクレオチド配列である。
配列番号24は、Ror2ΔC−フラグを構築するために用いられる最下ストランドプライマのヌクレオチド配列である。
配列番号25は、ヒトRor1(2993−3013)を同定するための順方向プライマのヌクレオチド配列である。
配列番号26は、ヒトRor1(3049−3074)を同定するための逆方向プライマのヌクレオチド配列である。
配列番号27は、ヒトRor1(3018−3044)を同定するためのプローブのヌクレオチド配列である。
配列番号28は、ヒトRor2(1149−1169)を同定するための順方向プライマのヌクレオチド配列である。
配列番号29は、ヒトRor2(1239−1259)を同定するための逆方向プライマのヌクレオチド配列である。
配列番号30は、ヒトRor2(1174−1198)を同定するためのプローブのヌクレオチド配列である。
配列番号31は、マウスRor1(2350−2370)を同定するための順方向プライマのヌクレオチド配列である。
配列番号32は、マウスRor1(2402−2421)を同定するための逆方向プライマのヌクレオチド配列である。
配列番号33は、マウスRor1(2372−2395)を同定するためのプローブのヌクレオチド配列である。
配列番号34は、マウスRor2(364−386)を同定するための順方向プライマのヌクレオチド配列である。
配列番号35は、マウスRor2(429−448)を同定するための逆方向プライマのヌクレオチド配列である。
配列番号36は、マウスRor2(400−424)を同定するためのプローブのヌクレオチド配列である。
配列番号37は、マウスアルカリホスファターゼ(1354−1373)を同定するための順方向プライマのヌクレオチド配列である。
配列番号38は、マウスアルカリホスファターゼ(1445−1464)を同定するための逆方向プライマのヌクレオチド配列である。
配列番号39は、マウスアルカリホスファターゼ(1416−1442)を同定するためのプローブのヌクレオチド配列である。
配列番号40は、マウスオステオカルシン(78−96)を同定するための順方向プライマのヌクレオチド配列である。
配列番号41は、マウスオステオカルシン(124−145)を同定するための逆方向プライマのヌクレオチド配列である。
配列番号42は、マウスオステオカルシン(98−121)を同定するためのプローブのヌクレオチド配列である。
配列番号43は、ヒトRor1遺伝子(−2000〜+1)の5’未翻訳領域のヌクレオチド配列である。
配列番号44は、マウスRor2遺伝子(−2000〜+1)の5’未翻訳領域のヌクレオチド配列である。
配列番号45は、Notch2lC(1−782)の5’部分を構築するために用いられる最上ストランドプライマのヌクレオチド配列である。
配列番号46は、Notch2lC(1−782)の5’部分を構築するために用いられる最下ストランドプライマのヌクレオチド配列である。
配列番号47は、Notch2lC(783−2307)の3’部分を構築するために用いられる最上ストランドプライマのヌクレオチド配列である。
配列番号48は、Notch21C(783−2307)の3’部分を構築するために用いられる最下ストランドプライマのヌクレオチド配列である。
(発明の詳細な記載)
出願人らは、ヒト受容体チロシンキナーゼ様オーファン受容体1および2(Ror1およびRor2)についてコードする遺伝子の発現が、ヒト骨芽細胞分化の間に著しくダウンレギュレートされることを発見した。出願人らは又、Ror2発現が分泌されたfrizzled関連タンパク質1(SFRP−1)の発現と反比例するということの証拠をも提供した。SFRF−1は、インビトロおよびインビボで骨芽細胞のアポトーシスを刺激する潜在的骨粗鬆症標的であることが報告されている(国際公開第01/19855号パンフレット)。
さらに、出願人らは、骨芽細胞中で、Ror1およびRor2が骨形成性骨芽細胞の生存を調節するWntシグナル化経路を調節することをも発見した。1つの実施形態においては、Ror2キナーゼは、Wnt−3を阻害するもののWnt−1活性を増強する。さらに、Ror2はWnt−1およびWnt−3の両方のタンパク質に結合する。もう1つの実施形態においては、Ror2の細胞質ドメインは、Wnt−1の増強のためには必要とされるが、Wnt−3活性の阻害のためには必要とされない。さらにもう1つの実施形態においては、Ror1キナーゼはWnt−3を阻害するものの、Wnt−1活性については全く効果を示さない。
複数のRor2結合パートナーも同様に同定されてきた。
本発明は、骨細胞中で操作可能なプロモータの制御下でRorポリペプチドを含む発現カセットを提供する。本発明はさらに、有効量のRor分子あるいはその相同体または誘導体またはフラグメントまたは変種または変異体を含む骨関連活性を調節するための組成物を提供している。
本発明は、(a)作用物質をRor分子と組合せる工程および(b)前記作用物質のRor活性に対する効果を検出する工程を含む、作用物質についてのスクリーニング方法であって、Ror活性の減少または増加の検出が、作用物質の骨関連作用物質であることの指標である方法を提供する。
さらに本発明は、結合パートナーに対するRorの結合を調節する作用物質についてのスクリーニング方法であって、(a)作用物質の存在下でRor結合パートナーとRorを接触させる工程;(b)対照の存在下または作用物質の不在下でRor結合パートナーとRorを接触させる工程;および(c)工程(a)における結合パートナーに対する前記Rorの結合を工程(b)における結合パートナーに対する前記Rorの結合と比較することによってRor分子を調節する作用物質を選択する工程を含む方法を提供している。
本発明は同様に、(a)レポータ遺伝子に操作可能な形で連結されたRorプロモータ配列を含む単離された細胞と作用物質を組合せる工程および(b)Ror活性に対する前記作用物質の効果を検出する工程を含む、作用物質についてのスクリーニング方法であって、レポータにより測定される通りのRor活性の減少または増加の検出が、作用物質が骨関連作用物質であることを表示している方法を含むこともできる。
本発明は、骨関連障害を治療するべく対象にRor発現または活性を調節するものとして同定された作用物質を薬学組成物の形で投与する方法を提供する。その上、本発明は、Wntシグナル化経路に付随する疾病または身体条件の診断を受けた対象を治療するためにRor発現を調節するべく同定された作用物質を投与する方法を提供している。
本発明はさらに、骨関連障害の治療において骨関連活性を調節するための組成物の調製における標的Ror分子の発現または活性を調節する有効量の作用物質の使用を提供している。好ましくは該作用物質は、本書で提供されているスクリーニング方法によって同定される。
該組成物の調製において使用される標的Ror分子の発現または活性を調節する作用物質は、抗体、小分子、ペプチド、オリゴペプチドおよびポリペプチドからなる群から選択され得る。
好ましくは、本発明に従った使用のための作用物質は、Ror遺伝子に特異的なsiRNA分子またはアンチセンス核酸を含み、ここで前記アンチセンス核酸またはsiRNA分子は1つ以上のRorポリペプチド、その相同体、誘導体、フラグメント、変種または変異体をコードする核酸を認識し結合する。
一変形実施形態においては、Ror分子の発現または活性を調節するために本発明に従って使用するための作用物質は、Ror結合パートナーに結合する能力をもつ。
標的Ror分子がRor2である場合、本発明に従った組成物の調製において使用するための作用物質は、ADP/ATP担体タンパク質、UDP−グルコースセラミドグルコシルトランスフェラーゼ様1、14−3−3タンパク質ベータ/アルファ、14−3−3タンパク質ガンマ、リボフォリンI、アルギニンN−メチルトランスフェラーゼ1、細胞アポトーンス感受性タンパク質、NOTCH2タンパク質、およびヒト骨格筋LIM−タンパク質3からなる群から選択され得る。
本発明はさらに、
(i)Ror分子と作用物質を組合わせ、Ror活性に対する前記作用物質の効果を検出することによって骨関連作用物質を同定する工程、
(ii)組成物を形成するべく、工程(i)で同定された有効量の骨関連作用物質と医薬上許容される担体を組合せる工程、
を含む、骨関連活性を調節するための組成物を調製する方法をも提供する。
本発明は同様に、骨形成および/またはWntシグナル化を調節する作用物質の同定、骨形成および/またはWntシグナル化に関与する遺伝子またはタンパク質の同定、診断用途、薬学的薬物標的としての使用、薬物の効能の評価および宿主細胞およびトランスジェニック動物の生成といったような、Ror分子のさらなる使用をも提供している。
本発明は、マーカーとしてRor2を用いて増殖性のヒト前骨芽細胞を同定する方法であって、ヒト骨芽細胞内でのRor2遺伝子の発現を決定する工程を含み、ここで増大したRor2発現が前記細胞を増殖前骨芽細胞であるものとして同定する方法を提供する。
本発明はさらに、マーカーとしてRor2を用いてマトリクス成熟期にあるマウス骨芽細胞を同定する方法であって、マウス骨芽細胞内でのRor2遺伝子の発現を決定する工程を含み、ここで増大したRor2発現が、該細胞をマトリクス成熟期にある骨芽細胞であるものとして同定する方法を提供する。
さらに、本発明は、Ror2キナーゼ活性を決定する方法であって、(a)Ror2ポリペプチドを得る工程;(b)32PγATPの存在下でRor2ポリペプチドを標識する工程;(c)取込まれた32Pの量を測定することによりRor2キナーゼ活性を決定する工程を含み、32Pの量がRor2キナーゼの活性を標示する方法を提供する。
(略号および用語の定義)
以下の定義は、本明細書で使用されている用語および略号を充分に理解するために提供されている。
本書でおよび添付の特許請求の範囲中で使用されている通り、単数形態「a」、「an」および「the」は、前後関係により相反する指示が明確になされているのでないかぎり、複数の意味を含む。従って、例えば、「1つの宿主細胞(a host cell)」への言及は、複数のこのような宿主細胞(host cells)も含まれ、「1つの抗体(a antibody)」に対する言及は、1つ以上の抗体および当業者にとっては既知のその等価物に対する言及である、というふうになる。
本明細書中の略号は、以下の通りの尺度単位、技術、特性または化合物に対応する。「g」はグラムを意味し、「mg」はミリグラム、「ng」はナノグラム、「kDa」はキロダルトン、「℃」は摂氏温度、「cm」はセンチメートル、「s」は秒、「min」は分、「h」は時、「l」はリットル、「ml」はミリリットル、「μl」はマイクロリットル、「pl」はピコリットル、「M」はモル、「mM」はミリモル(millimolar)、「mmole」はミリモル(millimole)、「kb」はキロベース、「bp」は塩基対そして「RT」は室温を意味する。
「ダルベッコの修正イーグル培地」はDMEMと略される。
「高性能液体クロマトグラフィ」はHPLCと略される。
「ハイスループットスクリーニング」はHTSと略される。
「読取り枠」はORFと略される。
「質量分析」はMSと略される。
「タンデム質量分析」はMS/MSと略される。
「ポリアクリルアミドゲル電気泳動法」はPAGEと略される。
「ポリメラーゼ連鎖反応」は、PCRと略される。
「逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応」はRT−PCRと略される。
「ドデシル硫酸ナトリウム」はSDSと略される。
「ドデシル硫酸ナトリウム−ポリアクリルアミドゲル電気泳動法」は、SDS−PAGEと略される。
「ヒト骨格筋LIM−タンパク質3」は(SLIM3)と略される。
「アデニンヌクレオチド輸送体2」は、ADP/ATP担体タンパク質と略される。
「骨ミネラル密度」はBMDと略される。
「リボソームRNA」はrRNAと略される。
「未翻訳領域」はUTRと略される。
「T細胞因子」は、TCFと略される。
「ジチオトレイトール」はDTTと略される。
この開示の文脈中では、数多くの用語が使用されることになる。本書で使用されるRorという語は、受容体チロシンキナーゼ様オーファン受容体のファミリーを意味する。「Ror分子」は、Rorポリペプチド、Rorペプチド、そのフラグメント、変種および変異体ならびに、Rorポリペプチド、Rorペプチドおよびそのフラグメントまたは変種または変異体をコードする核酸を意味する。「Ror分子」は同様に、Rorポリヌクレオチド、遺伝子およびその変種および変異体を意味する。「Ror分子」および「Ror」はRor1およびRor2の両方の分子を意味する。
「標的Ror分子」は、その活性が本発明の作用物質により調節されるRor分子を意味する。標的Ror分子は、Rorポリペプチド、その相同体、誘導体またはフラグメントまたは変種または変異体であり得る。問題のRor分子は同様に核酸(RNAまたはDNAのオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチド)でもあり得る。例えば、遺伝子の写しが1つの実験の関心の的である場合、標的Ror分子は写しとなる。標的Ror分子という語が全長分子およびそのフラグメント、変種および変異体例えばタンパク質のエピトープの両方を意味するということを理解すべきである。標的Ror分子は、Ror1分子またはRor2分子あるいはその両方のいずれでもあり得る。
「Wnt」という語は、早期胚発育のきわめて重要な局面に関与する保存されたシステイン富有の分泌糖タンパク質のファミリーを意味する。Wnt遺伝子はガンにも同じく関与している。本書で使用する「Wnt」という語は、特定的に、ヒト、マウス、ラットおよびその他のゲッ歯類などといった哺乳動物を含む(ただしこれらに制限されるわけではない)全てのヒトおよびヒト以外の動物種のWnt遺伝子を含んでいる。「Wnt」という語は、ヒトWnt−1(以前int−1と呼ばれたもの)(ヴァンオーエン(Van Ooyen)ら、EMBO J、4、2905−9、(1985))、Wnt−3(ローリンク(Roelink)ら、ゲノミクス(Genomics)、17、790−792、(1993);ユゲー(Huguet)ら、癌研究(Cancer Res.)、54.2615−2521、(1994))を含めた未変性ヒトWnt遺伝子およびコードされたポリペプチド、およびそれらの変種、特にアミノ酸配列変種を含む。
「Wntシグナル化経路」というのは、Wnt−1、Wnt−2、Wnt−3などといったWntタンパク質によって調節されたあらゆる経路を意味する。
「正統なWntシグナル化経路」というのは、それ自体リン酸化β−カテニン由来のグリコーゲンシンセターゼキナーゼ−3を阻害するDisheveledタンパク質のWntタンパク質による活性化を意味する。リン酸化されたβ−カテニンは、ユビキチン化の後急速に分解される。しかしながら、リン酸化されていないβ−カテニンは蓄積して核へと転座し、そこでそれは、T細胞因子転写活性剤複合体の共同因子として作用する。
「分泌されたfrizzled関連タンパク質」または「SFRP」という語は、Wntシグナル化経路の分泌された受容体に関するものである。
「核酸分子」という語は、リボヌクレオチド(RNA分子)またはデオキシリボヌクレオチド(DNA分子)のリン酸エステル形態または、一本鎖形態または2本鎖らせんのいずれかでのあらゆるホスホジエステル類似体を意味する。2本鎖DNA−DNA、DNA−RNAおよびRNA−RNAらせんが可能である。核酸分子特にDNAまたはRNA分子という語は、分子の一次および二次構造を意味し、それを何らかの特定の三次形態に制限するものではない。かくして、この用語は、なかんづく線状(例えば制限フラグメント)または円形DNA分子、プラスミドおよび染色体の中に見られる2本鎖DNAを内含する。特定の2本鎖DNA分子の構造を論述するにあたっては、配列は、DNAの転写されていないストランド(すなわちmRNAと相同な配列をもつストランド)に沿って5’→3’方向の配列のみを示すという正規の慣例に従って記述することができる。
「組換え型核酸分子」というのは、分子生物学的操作を受けた核酸分子すなわち、天然に発生しない核酸分子である。さらに、「組換え型DNA分子」という語は、天然に発生しないかまたは、そうでなければ分離している2つの配列セグメントの人工的組合せによってすなわち通常は連続していないDNAの断片を併せてライゲートすることによって作ることのできる核酸配列を意味する。「組換えにより産生された」というのは、化学的合成手段または核酸の単離されたセグメントの人工的操作、例えば、サムブルック(Sambrook)ら、分子クローニング(Molecular Cloning)、第2版、コールドスプリングハーバーラボラトリ(Cold Spring Harbor Laboratory)、ニューヨーク州、プレインヴュー(Plainview)(1989)またはアウシュベル(Ausubel)ら、分子生物学の最新プロトコル(Current Protocols in Molecular Biology)、最新プロトコル(Current Protocols)(1989)および「DNAクローニング:その実践的アプローチ(DNA Cloning :A Practical Approach)」第I巻および第II巻、D.N.グローバ(D.N.Glover)編、IRELプレス(Press)、オックスフォード(Oxford)、(1985)によって記述されているものと類似の技術、および制限酵素、リガーゼを用いた遺伝子工学処理技術のいずれかによって往々にして達成される人工的組合せを意味する。
このようなことは、通常、標準的には配列認識部位を導入するかまたは除去しながら、1つのコドンをそのコドンをコードする冗長なコドンまたは保存的アミノ酸で置換するために行なわれる。代替的には、所望の機能の核酸セグメントを併合して一般の自然な形態では発見されない機能の所望の組合せを含む単一の遺伝的実体を生成するためにそれを実施することもできる。制限酵素認識部位が往々にしてかかる人工的操作の標的であるが、その他の部位特異的標的、例えばプロモータ、DNA複製部位、調節配列、制御配列またはその他の有用な特長を設計により取り込むことも可能である。組換え型核酸分子の例には、5’→3’(センス)配向または3’→5’(アンチセンス)配向にあるphI遺伝子タンパク質をコードするDNA配列を含有するクローニングまたは発現ベクターといったような組換え型ベクターが含まれる。
「ポリヌクレオチド」、「ヌクレオチド配列」、「核酸」、「核酸分子」、「核酸配列」、「オリゴヌクレオチド」という語は、DNAおよびRNA内の一連のヌクレオチド塩基(「ヌクレオチド」とも呼ばれる)を意味し、かつ、2つ以上のヌクレオチドのあらゆる連鎖を意味する。ポリヌクレオチドは、1本鎖または2本鎖のそのキメラ混合物または誘導体または修飾されたバージョンであり得る。オリゴヌクレオチドは、例えば分子の安定性そのハイブリダイゼーションパラメータなどを改善するために塩基部分、糖部分またはリン酸塩主鎖において修飾され得る。アンチセンスオリゴヌクレオチドは、これらに限定されるわけではないが5−フルオロウラシル、5−ブロモウラシル、5−クロロウラシル、5−ヨードウラシル、ヒポキサンチン、キサンチン、4−アセチルシトシン、5−(カルボキシヒドロキシルメチル)ウラシル、5−カルボキシメチルアミノメチル−2−チオウリジン、5−カルボキシメチルアミノメチルウラシル、ジヒドロウラシル、ベータ−D−ガラクトシルケオシン、イノシン、N6−イソペンテニルアデニン、1−メチルグアニン、1−メチルイノシン、2,2−ジメチルグアニン、2−メチルアデニン、2−メチルグアニン、3−メチルシトシン、5−メチルシトシン、N6−アデニン、7−メチルグアニン、5−メチルアミノメチルウラシル、5−メトキシアミノメチル−2−チオウラシル、ベータ−D−マンノシルケオシン、5’−メトキシカルボキシメチルウラシル、5−メトキシウラシル、2−メチルチオ−N6−イソペンテニルアデニン、ワイブトキソシン、シュードウラシル、ケオシン、2−チオシトシン、5−メチル−2−チオウラシル、2−チオウラシル、4−チオウラシル、5−メチルウラシル、ウラシル−5−オキシ酢酸メチルエステル、ウラシル−5−オキシ酢酸、5−メチル−2−チオウラシル、3−(3−アミノ−3−N−2−カルボキシプロピル)ウラシル、および2,6−ジアミノプリンを含む群から選択される修飾された塩基部分を含み得る。ヌクレオチド配列は標準的には、タンパク質および酵素を作るため細胞機構が使用する情報を含めた遺伝子情報を担持する。これらの用語には、2本鎖または1本鎖ゲノムおよびcDNA、RNA、任意の合成および遺伝的に操作されたポリヌクレオチド、およびセンスおよびアンチセンスの両方のポリヌクレオチドが含まれる。これには、1本鎖および2本鎖分子、すなわちDNA−DNA、DNA−RNAおよびRNA−RNAハイブリッドならびにアミノ酸主鎖に対し塩基を接合することにより形成される「タンパク質核酸」(PNA)が含まれる。これは同様に、例えばチオ−ウラシル、チオ−グアニンおよびフルオロ−ウラシルといった修飾された塩基を含有するかまたは炭水化物または脂質を含有する核酸を含む。
本発明のポリヌクレオチドは、例えば自動化されたDNA合成装置(例えばバイオサーチ(Biosearch)、アプライド・バイオシステムズ(Applied Biosystems)などから市販されているもののようなもの)を用いて当該技術分野において既知の標準的方法によって合成可能である。1例としては、ステインら(Stein)ら、核酸研究(Nucl.Acids Res.)、16、3209(1988)の方法によりホスホロチオアート・オリゴヌクレオチドを合成することができ、制御された多孔ガラス重合体支持体を用いてメチルホスホナート・オリゴヌクレオチドを調製することができる(サリン(Sarin)ら、全米科学アカデミー会報(Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.)85、7448−7451、(1988)。アンチセンスDNAまたはRNAを細胞に送達するために数多くの方法が開発されてきており、例えば、アンチセンス分子を直接組織部位に注射することもできるし、或いは、所望の細胞をターゲティングするように設計された修飾済みアンチセンス分子(標的細胞表面上で発現された受容体または抗原を特異的に結合させるペプチドまたは抗原に連続されたアンチセンス)を全身的に投与することもできる。代替的には、RNA分子は、アンチセンスRNA分子をコードするDNA配列のインビトロおよびインビボ転写により生成され得る。かかるDNA配列は、T7またはSP6ポリメラーゼプロモータといったような適切なRNAポリメラーゼプロモータを取込むさまざまなベクター内に取込まれ得る。代替的には、使用されるプロモータに応じてアンチセンスRNAを構成的にまたは誘発的に合成するアンチセンスcDNA構成体を、細胞系列内に安定した形で導入することができる。しかしながら、内因性mRNAの翻訳を抑圧するのに充分なアンチセンスの細胞内濃度を達成することは往々にして困難である。従って、好ましいアプローチでは、アンチセンスオリゴヌクレオチドが強力なプロモータの制御下に置かれている組換え型DNA構成体が利用される。患者の体内に標的細胞をトランスフェクトするためのかかる構成体の使用は、結果として、内因性標的遺伝子の写しと相補的塩基対を形成しかくして標的遺伝子のmRNAの翻訳を妨げることになる充分な量の1本鎖RNAの転写をもたらす。例えば、細胞により取上げられアンチセンスRNAの転写を導くような形でインビボでベクターを導入することが可能である。かかるベクターは、それが所望のアンチセンスRNAを産生するべく転写され得るかぎり、エピゾームにとどまることも又染色体的に組込まれた状態となることもできる。かかるベクターは、当該技術分野において標準的である組換え型DNA技術方法によって構築可能である。ベクターは、プラスミド、ウイルス、または哺乳動物細胞内での複製および発現のために用いられるその他の当該技術分野において既知のものであり得る。アンチセンスRNAをコードする配列の発現は、哺乳動物好ましくはヒトの細胞内で作用するべく当該技術分野において既知のあらゆるプロモータによるものであり得る。かかるプロモータは、誘発性でも構成性でもあり得る。かかるプロモータには、SV40早期プロモータ領域(バーノイスト(Bernoist)およびシャンボン(Chambon)、ネイチャー(Nature)、290、304−310(1981)、ラウス肉腫ウイルスの3’長末端反復内に含まれたプロモータ、ヤマモト(Yamamoto)ら、セル(Cell)、22、787−797、(1980)、ヘルペスチミジンキナーゼプロモータ、ワグナー(Wagner)ら、全米科学アカデミー会報、78、1441〜1445、(1981)、メタロチオネイン遺伝子の調節配列、ブリンスター(Brinster)ら、ネイチャー(Nature)、296、39−42(1982)などが含まれるが、これらに制限されるわけではない。組織部位内に直接導入され得る組換え型DNA構成体を調製するには、あらゆるタイプのプラスミド、コスミド、酵母人工染色体またはウイルスベクターを使用することができる。代替的には、所望の組織を選択的に感染させるウイルスベクターを使用することができ、この場合、もう1つの経路により投与を達成することができる(例えば全身的に)。
リボザイムは、DNA制限エンドヌクレアーゼと類似した要領でその他の1本鎖RNAを特異的に分割する能力を有するRNA分子である。これらのRNAをコードするヌクレオチド配列の修飾を通して、RNA分子中の特定のヌクレオチド配列を認識しそれを分割する分子を工学処理することが可能である。チェフ(Cech)、米国医学会ジャーナル(J.Amer.Med.Assn.)、260、3030、(1988)。このアプローチの主たる利点は、それらが配列特異的であることから、特定の配列をもつmRNAのみが不活性化されるという点にある。
ポリヌクレオチドは、天然の調節(発現制御)配列によってフランキングされ得、そうでなければ、プロモータ、内部リボソーム進入部位(IRES)およびその他のリボソーム結合部位配列、エンハンサ、応答要素、サプレッサ、シグナル配列、ポリアデニル化配列、イントロン、5’−および3’−非コーディング領域などを含む非相同配列と会合され得る。核酸は同じく、当該技術分野において既知の数多くの手段によっても修飾され得る。かかる修飾の制限的意味のない例としては、メチル化、「caps」、天然に発生するヌクレオチドのうちの1つ以上のものの類似体による置換、および例えば非荷電性連結(例えばメチルスルホナート、ホスホトリエステル、ホスホロアミダート、カルバマートなど)および荷電性連結(例えばホスホロチオアート、ホスホロジチオアートなど)を伴うものといったようなヌクレオチド内修飾が含まれる。ポリヌクレオチドは、例えばタンパク質(例えばヌクレアーゼ、毒素、抗体、シグナルペプチド、ポリ−L−リジンなど)、インタカレータ(例えばアクリジン、プソラレンなど)、キレート剤(例えば金属、放射性金属、鉄、酸化性金属など)およびアルキル化剤といったような1つ以上の付加的な共有結合により連結された部分を含むことができる。ポリヌクレオチドは、メチルまたはエチルホスホトリエステルまたはアルキルホスホルアミダート連結の形成により誘導体化され得る。さらに、本書では、ポリヌクレオチドは、直接的または間接的に検出可能なシグナルを提供する能力をもつ標識ででも修飾され得る。標識例としては、放射性同位元素、螢光性分子、ビオチンなどが含まれる。
「RNA写し」というのは、DNA配列のRNAポリメラーゼを触媒とする転写の結果として得られた産物を意味する。RNA写しがDNA配列の相補的コピーである場合それは一次写しと呼ばれるか、そうでなければそれは、一次写しの転写後のプロセッシングから誘導されるRNA配列であり得、成熟RNAと呼ばれる。「メッセンジャーRNA(mRNA)」というのは、イントロンが無く、細胞によりポリペプチドへと翻訳され得るRNAを意味する。「cRNA」は、組換え型cDNA鋳型から転写された相補的RNAを意味する。「cDNA」というのは、1つのmRNA鋳型に相補的でかつこれから誘導されたDNAを意味する。cDNAは、1本鎖であるかまたは例えばDNAポリメラーゼIのクレノウフラグメントを用いて2本鎖形態に転換され得る。
RNAの一部分に「相補的な」配列は、RNAとハイブリッド形成できるように充分な相補性をもち、安定した2重鎖を形成する配列を意味する。2本鎖アンチセンス核酸の場合には、2重鎖DNAの1本鎖をかくして試験することができ、または3重鎖形成を検定することもできる。ハイブリッド形成する能力は、相補性の度合およびアンチセンス核酸の長さの両方により左右されることになる。一般的に、ハイブリッド形成する核酸が長くなればなるほど、より多くの塩基が自ら含有し得かつなおも安定した2重鎖(または場合によっては3重鎖)を形成し得るRNAとミス対合する。当業者であれば、ハイブリッド形成した複合体の融点を決定するための標準的な手順を使用することによって許容ミス対合度を確認することができる。
特定のポリヌクレオチドの「アンチセンスコピー」というのは、ポリヌクレオチドに対し水素結合する能力をもちそのためにポリヌクレオチドの発現を調節する能力をもち得る相補的配列を意味する。これらは、上述のような改変された主鎖をもつ類似体を含むDNA、RNAまたはその類似体である。アンチセンスコピーが結合するポリヌクレオチドは、1本鎖の形をしていてもまたは2本鎖の形をしていてもよい。「アンチセンス配向」でプロモータに連結されたDNA配列は、標的遺伝子のコーディングmRNAに相補的なRNA分子が産生されるような形でプロモータに連結され得る。
アンチセンスポリヌクレオチドは、アラビノース、2−フルオロアラビノース、キシルロースおよびヘキソースを含む(ただしこれらに制限されるわけではない)群から選択された少なくとも1つの修飾された糖部分を含み得る。1つの実施形態においては、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、ホスホロチオアート、ホスホロジチオアート、ホスホルアミドチオアート、ホスホルアミダート、ホスホルジアミダート、メチルホスホナート、アルキルホスホトリエステルおよびホルムアセタールまたはそれらの類似体からなる群から選択された少なくとも1つの修飾されたリン酸塩主鎖を含み得る。
「センス」という語は、コーディングmRNA核酸配列と同じ配向にある核酸の配列を意味する。「センス配向」でプロモータに連結されたDNA配列は、mRNAと同一の配列を含むRNA分子が転写されるような形で連結されている。しかしながら産生されたRNA分子は、機能的タンパク質内へと転写される必要はない。
「センス」ストランドおよび「アンチセンス」ストランドが同じ文脈内で使用される場合、これらは、互いに相補的である1本鎖ポリヌクレオチドを意味する。これらは、2本鎖ポリヌクレオチドの相対するストランドであってもよいし、そうでなければ、一般的に受容されている塩基対合法則に従って一方のストランドを他方のストランドから予測することも可能である。相反する規定または暗示のないかぎり、一方のストランドまたは他方のストランドへの「センス」または「アンチセンス」としての割当ては任意である。
「核酸」または「核酸配列」、「核酸分子」、「核酸フラグメント」または「ポリヌクレオチド」という語は、「遺伝子」、「遺伝子によりコードされたmRNA」および「cDNA」と互換的に使用可能である。
「ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド」という語は、コーディング配列のみを含み得るポリヌクレオチドならびに付加的なコーディングまたは非コーディング配列を含み得るポリヌクレオチドを包含する。
核酸分子は、適切な温度および溶液イオン強度条件下で核酸分子の1本鎖形態がもう1方の核酸分子にアニールできる場合、cDNA、ゲノムDNA、またはRNAといったもう1つの核酸分子に対して「ハイブリッド形成可能である」。サムブルック J.ら編、分子クローニング:実験室マニュアル(Molecula Cloning: A Laboratory Manual(第2版、1989)、コールドスプリングハーバーラボラトリープレス(Cold Spring Harbor Laboratory Press)、ニューヨーク(NY)、第1〜3巻(ISBN 0−87969−309−6)。温度およびイオン強度の条件は、ハイブリダイゼーションの「ストリンジェンシー」を決定する。相同な核酸についての予備的スクリーニングのためには、55℃のTmに対応する低ストリンジェンシーのハイブリダイゼーション条件、例えば5×SSC、0.1%のSDS、0.25%の乳およびホルムアミド無し、または30%のホルムアミド、5×SSC、0.5%のSDSといった条件を使用することができる。中ストリンジェンシーのハイブリダイゼーション条件は、例えば5×または6×のSSCで40%のホルムアミドといったように、より高いTmに対応する。高ストリンジェンシーのハイブリダイゼーション条件は、最高のTm、例えば50%のホルムアミド、5×または6×のSSCに対応する。ハイブリダイゼーションには、ハイブリダイゼーションのストリンジェンシーによって塩基間のミス対合が可能ではあるものの、2つの核酸が相補的な配列を含有していることが必要である。核酸をハイブリッド形成させるための適切なストリンジェンシーは、当該技術分野において周知の変数である核酸の長さおよび相補性度によって左右される。2つの核酸配列間の類似性または相同性の度合が大きくなればなるほど、これらの配列をもつ核酸ハイブリッドについてのTmの値は大きくなる。(より高いTmに対応する)核酸ハイブリダイゼーションの相対的安定性は、以下の順序で減少する。RNA:RNA、DNA:RNA、DNA:DNA。長さが100ヌクレオチドを超えるハイブリッドについて、Tmを計算するための等式が導出されてきた。サムブルックら編、分子クローニング:実験室マニュアル(第2版、1989)、コールドスプリングハーバーラボラトリープレス、ニューヨーク(NY)、第1〜3巻(ISBN 0−87969−309−6)、9.50−9.51)。より短かい核酸すなわちオリゴヌクレオチドとのハイブリダイゼーションについては、ミス対合の位置がさらに重要になり、オリゴヌクレオチドの長さからの特異性を決定する。サムブルックら編、分子クローニング:実験室マニュアル(第2版、1989)、コールドスプリングハーバーラボラトリープレス、ニューヨーク、第1〜3巻(ISBN 0−87969−309−6、11.7〜11.8)。
「相補的」という語は、互いにハイブリッド形成する能力をもつヌクレオチド塩基間の関係を記述するために用いられる。例えば、DNAに関しては、アデノミンはチミンに相補的であり、シトシンはグアニンに相補的である。
当該技術分野において既知の通り「同一性」または「類似性」という語は、配列を比較することによって決定される通り、2つ以上のポリペプチド配列または2つ以上のポリヌクレオチド配列の間の関係である。当該技術分野においては、同一性は同様に、その配列のストリング間の整合によって決定されるように、場合に応じてポリペプチドまたはポリヌクレオチド配列の間の配列関連性度をも意味する。同一性および類似性は両方共、コンピュータ分子生物学(Computational Molecular Biology)、レスク A.M.(Lesk A.M.)編、オックスフォード大学出版、ニューヨーク(New York)、1988;バイオコンピューテイング:情報処理とゲノムプロジェクト(Biocomputing:Informatics and Genome Projects)、スミスD.W.(Smith D.W.)編、アカデミックプレス、ニューヨーク(New York)、1993;分子生物学における配列解析(Sequence Analysis in Molecular Biology)、フォン・ハインジ G.(von Heinje G.)、アカデミックプレス、1987;配列データのコンピュータ解析(Computer Analysis of Sequence Data)、第一部(Part I)、グリフィン A.M.(Griffin A.M.)、およびグリフィン H.G.(Griffin H.G.)編、ヒューマナプレス(Humana Press)、ニュージャージー(New Jersey)、1994;および配列解析プライマ(Sequence Analysis Primer)、グリブスコフ M.(Gribskov M.)およびドブルー J.(Devereux J.)編、M ストックトンプレス(M Stockton Press)、ニューヨーク(New York)、1991、に記述されているもののような既知の方法によって容易に計算可能である。配列間の同一性または類似性を決定するために一般に利用される方法には、カリロ H.(Carillo H.)、およびリップマン D.(Lipman D.)、SIAM 応用数学ジャーナル(J Applied Math.)、48、1073(1988)、に開示されているものが含まれるが、これらに制限されるわけではない。同一性および類似性を決定するための方法は、公開されているコンピュータプログラムの中で体系化されている。2つの配列間の同一性および類似性を決定するための好ましいコンピュータプログラム方法としては、GCGプログラムパッケージ(ドブルーJ.ら、核酸研究、12(1)、387(1984))、BLASTP、BLASTN、およびFASTA アトシュル S.F.(Atschul S.F.)ら、分子生物学ジャーナル(J Molec.Biol.)、215、403(1990))が含まれるが、これらに制限されるわけではない。
「相同な」という語は、2つの重合体(すなわちポリペプチド分子または核酸分子)の間の配列類似性の度合を意味する。本書で言及されている相同性百分率の数字は、2つの重合体の間に考えられる最大限の相同性すなわち、最大数の整合した(相同な)位置を有するように2つの重合体が整列させられた場合の相同性百分率を反映している。
「相同性百分率」という語は、ポリペプチド間のアミノ酸配列同一性の程度を意味する。任意の2つのポリペプチドの間の相同性は、いずれかの配列の一定の与えられた位置での整合するアミノ酸の合計数の一次関数である。例えば、いずれかの配列内のアミノ酸の合計数の半分が同じである場合には、2つの配列は50%の相同性を示すと言われる。
本発明のポリペプチドに言及している場合の「フラグメント」、「類似体」および「誘導体」(例えば配列番号4、6、8、10および12)という語は、かかるポリペプチドと同じ生物学的機能または活性を基本的に保持し得るポリペプチドを意味する。かくして、類似体には、活性成熟ポリペプチドを産生するべく前駆体タンパク質部分の分割により活性化され得る前駆体タンパク質が含まれる。本発明のポリペプチドのフラグメント、類似体または誘導体(例えば配列番号4、6、8、10および12)は、1つ以上のアミノ酸が保存されたまたは保存されていないアミノ酸残基で置換されているおよびかかるアミノ酸残基が遺伝子コードによってコードされたものであってもなくてもよいフラグメント、類似体または誘導体であり得、そうでなければ、アミノ酸残基のうち1つ以上のものが置換基を含んでいるもの、またはポリペプチドの半減期を増大させるべくポリエチレングリコールといった化合物とポリペプチドが融合させられているもの、または、ポリペプチドまたは前駆体タンパク質の精製のために用いられるポリヒスチジンタグといったような配列またはシグナルペプチドといったようなポリペプチドに付加的なアミノ酸が融合されているもの、であり得る。かかるフラグメント、類似体または誘導体は、本発明の範囲内に入るものとみなされる。
ポリヌクレオチド配列の「保存された」残基は、比較されている2つ以上の関連する配列の同じ位置において未改変の状態で発生する残基である。比較的保存されている残基というのは、配列内のその他の場所で現われる残基よりもさらに関連性の高い配列の間で保存されているものである。
関連したポリヌクレオチドというのは、同一の残基を有意な割合で共有するポリヌクレオチドである。
異なるポリヌクレオチドは、一方がもう一方から究極的に誘導される場合、互いに「対応している」。例えば、メッセンジャーRNAは、それを転写させる遺伝子に対応している。cDNAは、RNA配列の知識に基づきDNAの化学的合成によってかまたは逆転反応などによってそれを産生させたRNAに対応する。cDNAは同様に、RNAをコードする遺伝子にも対応する。複数のポリヌクレオチドは同様に、それらが例えば比較中の異なる種、菌株または変種の中で関連するポリペプチドをコードすることといった類似の機能に役立つ場合、互いに「対応する」。
DNA、RNAまたはポリヌクレオチドの「類似体」というのは、形態および/または機能において(例えば、相補的ポリヌクレオチド配列上の塩基対に対する配列特異的水素結合に携わる能力において)天然に発生するポリヌクレオチドに似ているものの、例えば普通でないまたは非天然の塩基または改変された主鎖の所有においてDNAまたはRNAと異なっている分子を意味する。例えばユールマン(Uhlmann)ら、ケミカルレヴュー(Chemical Reviews)90、543−584、(1990)を参照のこと。
RNA、ポリペプチド、タンパク質または酵素といったような、発現産物を「コードする」配列または「コーディング配列」は、発現された時点でそのRNA、ポリペプチド、タンパク質または酵素の産生を結果としてもたらすヌクレオチド配列であり、すなわち該ヌクレオチド配列は、そのポリペプチド、タンパク質または酵素のためのアミノ酸配列をコードする。
「コドン縮重」というのは、コードされたポリペプチドのアミノ酸配列に影響を及ぼすことなくポリヌクレオチド配列の変動を可能にする遺伝子コードの枝分かれを意味する。当業者であれば、一定の与えられたアミノ酸を特定するのにヌクレオチドコドンを使用するために特異的宿主細胞が示す「コドン−バイアス」を充分に認識している。従って、宿主細胞中での改善された発現のために遺伝子を合成する場合、そのコドン利用頻度が宿主細胞の好ましいコドン利用頻度に近づくような形でその遺伝子を設計することが望ましい。
アミノ酸またはヌクレオチド配列の「実質的部分」というのは、当業者による配列の手作業による評価によってかまたはBLAST(基本局所アラインメント探究ツール(Basic Local Alignment Search Tool):アルトシュールS.F.(Altschul.S.F.)ら、分子生物学ジャーナル、215、403〜410、(1993);同様にwww.ncbi.nlm.nih.gov/BLASTも参照のこと)といったようなアルゴリズムを用いるコンピュータ自動化配列比較および同定によってそのポリペプチドまたは遺伝子を推定的に同定するべく1つの遺伝子のヌクレオチド配列またはポリペプチドのアミノ酸配列を充分に含んでいる部分である。
従って、ヌクレオチド配列の「実質的部分」は、該配列を含む核酸フラグメントを特異的に同定しかつ/または単離するのに充分な該配列を含んでいる。当業者は、本書で報告されているような配列のおかげで、今や当業者にとって既知の目的で、開示された配列の実質的部分または全てを使用することができる。
「合成遺伝子」は、当業者にとっては既知の手順を用いて化学的に合成されるオリゴヌクレオチドビルディングブロックから組立てることが可能である。これらのビルディングブロックは、ライゲートされアニールされて、遺伝子セグメントを形成し、このセグメントは次に酵素的に組立てられて遺伝子全体を構築する。DNAの配列に関連した「化学的に合成された」という語は、成分ヌクレオチドがインビトロで組立てられたことを意味する。DNAの手作業による化学的合成は周知の手順を用いて達成され得、そうでなければ、一定数の市販の機械のうちの1つを用いて自動化した化学合成を実施することができる。従って、宿主細胞のコドンバイアスを反映するべくヌクレオチド配列の最適化に基づき最適な遺伝子発現のために遺伝子を調製することが可能である。当業者は、宿主が選好するようなコドンに向かってコドン利用が偏向された場合の遺伝子発現の成功の確率を評価する。好ましいコドンの決定は、配列情報が入手できる宿主細胞に由来する遺伝子の調査に基づくことができる。
「遺伝子」というのは、コーディング配列に先行する(5’非コーディング配列)および後続する(3’非コーディング配列)調節配列を含む特異的タンパク質を発現する核酸フラグメントを意味する。「未変性遺伝子」というのは、独自の調節配列を伴う天然に見られる通りの遺伝子を意味する。「キメラ遺伝子」または「キメラ構成体」は、天然に一緒に発見されない調節およびコーディング配列を含む、未変性遺伝子でないあらゆる遺伝子または構成体を意味する。従って、キメラ遺伝子またはキメラ構成体は、異なる供給源から誘導される調節配列およびコーディング配列、または同じ供給源から誘導されるものの天然で見られるものとは異なる形で配置されている調節配列およびコーディング配列を含み得る。「内因性遺伝子」というのは、生体のゲノム内でその天然の場所にある未変性遺伝子を意味する。「外来性」遺伝子というのは、宿主生体内に通常発見されないものの、遺伝子トランスファにより宿主生体内に導入される遺伝子を意味する。外来性遺伝子は、非未変性生体内に挿入された未変性遺伝子またはキメラ遺伝子を含む可能性がある。「トランス遺伝子」というのは、形質転換手順によりゲノム内に導入された遺伝子である。
「調節配列」は、コーディング配列の上流側(5’非コーディング配列)、その内部またはその下流側(3’非コーディング配列)に位置設定され、会合されたコーディング配列の転写、RNAプロセッシングまたは安定性または翻訳に影響を及ぼすヌクレオチド配列を意味する。調節配列には、プロモータ、翻訳リーダー配列、イントロンおよびポリアデニル化認識配列が含まれ得る。
「遺伝子制御配列」は、遺伝子転写を開始させるのに必要とされるDN配列および、開始が起こる速度を調節するのに必要とされるDNA配列を意味する。かくして、遺伝子制御配列は、一般的転写因子およびポリメラーゼが組合わさるプロモータに加えて、プロモータにおいてこれらの組立てが進行する速度を制御するために遺伝子調節タンパク質が結合する全ての調節配列で構成され得る。例えば、原核生物に適した制御配列には、プロモータ、任意にはオペレータ配列およびリボソーム結合部位が含まれ得る。真核細胞はプロモータ、エンハンサおよび/またはポリアデニル化シグナルを利用し得る。
「プロモータ」というのは、コーディング配列または機能的RNAの発現を制御する能力をもつヌクレオチド配列を意味する。一般的には、コーディング配列はプロモータ配列に対し3’のところに位置設定されている。該プロモータ配列は、近位およびより遠位の上流側要素で構成されており、より遠位の要素は往々にしてエンハンサと呼ばれる。従って、「エンハンサ」というのは、プロモータ活性を刺激でき、プロモータの生得の要素またはプロモータのレベルまたは組織特異性を増強するために挿入される異種要素であり得るヌクレオチド配列である。プロモータはその全体が未変性遺伝子から誘導されてもよいし、または天然に発見される異なるプロモータから誘導された異なる要素からなるか、さらには合成のヌクレオチドセグメントさえ含んでいてよい。当業者にとっては、異なるプロモータが、異なる組織または細胞型の中、または異なる発達期で、または異なる環境条件に応答して、遺伝子の発現を導くことができる、ということは言うまでもないことである。
「3’非コーディング配列」というのは、コーディング配列の下流側に位置づけされたヌクレオチド配列であり、ポリアデニル化認識配列およびmRNAプロセッシングまたは遺伝子発現に影響を及ぼす能力のある調節シグナルをコードするその他の配列を意味する。ポリアデニル化シグナルは通常、mRNA前駆体の3’末端に対するポリアデニル酸の添加に影響を及ぼすことを特徴とする。
「翻訳リーダー配列」というのは1つの遺伝子のプロモータ配列とコーディング配列の間に位置設定されたヌクレオチド配列を意味する。翻訳リーダー配列は、翻訳開始配列の上流側で完全にプロセシングされたmRNAの中に存在する。該翻訳リーダー配列は、mRNAに対する一次写しのプロセッシング、mRNAの安定性または翻訳効率に影響を及ぼし得る。
「操作可能な形で連結された」という語は、1つのフラグメントの機能がもう1つのフラグメントの影響を受けるような形で単一の核酸フラグメント上の2つ以上の核酸フラグメントの会合を意味する。例えば、プロモータは、そのコーディング配列の発現に影響を及ぼす能力をもつ場合(すなわちコーディング配列がプロモータの転写制御下にある場合)コーディング配列と操作可能な形で連結されている。コーディング配列は、センスまたはアンチセンス配向で調節配列に対し操作可能な形で連結可能である。「骨細胞内で操作可能なプロモータ」というのは、骨細胞のRNAポリメラーゼによって認識されるプロモータを意味する。
「RNA写し」は、DNA配列のRNAポリメラーゼを触媒とする転写の結果としての産物を意味する。RNA写しがDNA配列の完全な相補的コピーである場合、それは、一次写しと呼ばれるが、そうでなければ一次写しの転写後プロセッシングから誘導されるRNA配列であり得、成熟RNAと呼ばれる。「メッセンジャーRNA(mRNA)」というのは、イントロンが無く、ポリペプチドへと翻訳され得るRNAを意味する。「cDNA」というのは、mRNAに相補的でかつこれから誘導された2本鎖DNAを意味する。「センス」RNAというのは、mRNAを含み従って細胞によりポリペプチドへと翻訳され得るRNA写しを意味する。「アンチセンスRNA」というのは、標的一次写しまたはmRNAの全てまたは一部分と相補的であり標的遺伝子の発現を遮断するRNA写しを意味する(本明細書に参照により援用されている米国特許第5,107,065号明細書参照)。アンチセンスRNAの相補性は、特異的ヌクレオチド配列のいずれの部分との相補性でもありうる。すなわち5’非−コーディング配列、3’非コーディング配列、イントロンまたはコーディング配列におけるものであり得る。「機能的RNA」というのは、翻訳され得ないもののそれでも細胞プロセスに対して効果を及ぼすセンスRNA、アンチセンスRNA、リボザイムRNAまたはその他のRNAを意味する。
「siRNA」または「RNAi」という語は、細胞内、例えば(ヒトの細胞を含めた)哺乳動物の細胞内および体内例えば(ヒトを含めた)哺乳動物の体内において、干渉をひき起こす能力を有し特異的遺伝子の翻訳後サイレンシングをひき起こすことのできる小さな干渉性RNAを意味する。RNA干渉の現象は、干渉性RNAを作る方法も同じく論述されているバス(Bass)、ネイチャー、411、428−29、(2001);エルバヒール(Elbahir)ら、ネイチャー、411、494−98、(2001);およびファイヤー(Fire)ら、ネイチャー、391、806−11、(1998)において記述され論述されている。本書で開示された配列に基づくsiRNAsは、相補的DNAストランドまたは合成アプローチの使用を含めた当該技術分野において既知のアプローチによって作ることができる。siRNAsの例は、29、25、22、21、20、15、10、5までまたはその前後またはその間の任意の整数のbpを有することができる。
「発現」という語は、本発明の核酸フラグメントから誘導されたセンス(mRNA)またはアンチセンスRNAの転写および安定した蓄積を意味する。発現という語は同様に、1つのポリペプチド内へのmRNAの翻訳を意味し得る。「アンチセンス阻害」は、標的タンパク質の発現を抑圧する能力をもつアンチセンスRNA写しの産生を意味する。
「過剰発現」という語は、正常なまたは形質転換を受けていない生体の中での産生レベルを上回る1つの生体内の遺伝子産物の産生を意味する。「抑圧」というのは、外来性または内因性遺伝子またはRNA写しの発現を抑圧することを意味する。
「改変されたレベル」というのは、正常なまたは形質転換を受けていない生体のものとは異なる量または割合での生体内の遺伝子産物の産生を意味する。本発明のポリペプチドの過剰発現は、まず最初に、コーディング領域が所望の発達期で所望の組織内での遺伝子または構成体の発現を導く能力をもつプロモータに対し操作可能な形で連結されているキメラ遺伝子またはキメラ構成体を構築することによって達成可能である。便宜上、該キメラ遺伝子またはキメラ構成体は、同じ遺伝子から誘導されたプロモータ配列および翻訳リーダー配列を含み得る。転写終結シグナルをコードする3’非コーディング配列も同様に提供され得る。当該キメラ遺伝子またはキメラ構成体は同様に、遺伝子発現を容易にするべく1つ以上のイントロンをも含み得る。当該キメラ遺伝子またはキメラ構成体を含むプラスミドベクターを次に構成することができる。プラスミドベクターの選択は、宿主細胞を形質転換するために用いられることになる方法によって左右される。当業者は、キメラ遺伝子またはキメラ構成体を含む宿主細胞をうまく形質転換、選択および繁殖させるためにプラスミドベクター上に存在しなければならない遺伝子要素を充分に認識している。当業者は同様に、独立した異なる形質転換事象が異なるレベルおよび発現パターンを結果としてもたらすことになるということ、ジョーンズ(Jones)ら、EMBOジャーナル、4、2411−2418、(1985);デ・アルメイダ(De Almeida)ら、Mol.Gen.Genetics、218、78−86、(1989)、そしてかくして、所望の発現レベルおよびパターンを示す系列を得るためには多数の事象をスクリーニングしなければならないことも認識するだろう。このようなスクリーニングは、DNAのサザン分析、mRNA発現のノーザン分析、タンパク質発現のウエスタンまたは免疫細胞化学分析または表現型分析によって達成可能である。
「発現カセット」は、規定の制限部位でベクター内に挿入され得る発現産物についてコードするDNAのセグメントまたはDNAコーディング配列を意味する。カセット制限部位は、適切な読取り枠内へのカセットの挿入を確保するように設計されている。一般に、外来性DNAは、ベクターDNAの1つ以上の制限部位に挿入され、次にベクターによって伝染性ベクターDNAと共に宿主細胞内へと搬送される。発現ベクターといったような挿入されたまたは添加されたDNAをもつDNAのセグメントまたは配列は同様に「DNA構成体」と呼ぶこともできる。
「ポリペプチド」という語は、重合体の長さとは無関係にアミノ酸の重合体を意味する。かくして、ポリペプチドの定義内には、「ペプチド」、「オリゴペプチド」および「タンパク質」が内含され、本書では互換的に使用されている。この語は同様に、本発明のポリペプチドの化学的または発現後修飾を特定または除外するものではないが、これらのポリペプチドの化学的または発現後修飾を特定的実施形態として内含または除外することも可能である。従って例えば、グリコシル基、アセチル基、リン酸塩基、脂質基などの共有結合による付着を含むポリペプチドに対する修飾は、明示的にポリペプチドという語によって包含される。さらに、これらの修飾を伴うポリペプチドを本発明に内含すべきまたはそこから除外すべき個別の種として特定することも可能である。上述の例で列挙したもののような天然のまたはその他の化学的修飾は同様に、ペプチド主鎖、アミノ酸側鎖およびアミノまたはカルボキシル末端を含めたポリペプチド内のどこででも発生し得る。一定の与えられたポリペプチド内の複数の部位で同じまたは変動する度合で同じタイプの修飾が存在し得るということがわかるだろう。同様に、一定の与えられたポリペプチドが数多くのタイプの修飾を含有することもできる。ポリペプチドは、例えばユビキチン化の結果として有枝となり得、これらは分枝を伴ってまたは伴わずに環状であり得る。修飾には、アセチル化、アシル化、ADP−リボシル化、アミド化、フラビンの共有結合による付着、ヘム部分の共有結合により付着、ヌクレオチドまたはヌクレオチド誘導体の共有結合により付着、脂質または脂質誘導体の共有結合により付着、ホスホチジルイノトシトールの共有結合により付着、架橋結合、環化、ジフルフィド結合形成、ジメチル化、共有架橋形成、システイン形成、ピログルタマート形成、ホルミル化、ガンマ−カルボキシル化、グリコシル化、GPIアンカー形成、ヒドロキシル化、ヨード化、メチル化、ミリストイル化、酸化、ペジル化、タンパク質分解、リン酸化反応、プレニル化、ラセミ化、セレノイル化、硫酸化、アルギニル化といったようなタンパク質に対するトランスファ−RNA媒介型アミノ酸添加、およびユビキチン化が含まれる。(例えば、タンパク質−構造および分子特性(proteins−structure and molecular properties)、第2版、T.E.クレイトン(Creighton)、W.H.フリーマン社(W.H.Freeman and Company)、ニューヨーク、(1993);タンパク質の翻訳後共有結合修飾(posttranslational covalent modification of proteins)、B.C.ジョンソン(B.C.Johnson)編、アカデミックプレス、ニューヨーク、1−12頁、1983;セイフター(Seifter)ら、Meth Enzymol 182、626−646、1990;ラッタン(Rattan)ら、Ann NY Acad Sci 663、48−62、1992を参照のこと)。同様に該定義中に含まれるのは、(例えば天然に発生しないアミノ酸、無関係の生物系内でのみ天然に発生するアミノ酸、哺乳動物系などからの修飾されたアミノ酸を含む)アミノ酸の1つ以上の類似体を含有するポリペプチド、置換された連結ならびに、天然発生および非天然発生の両方の当該技術分野において既知のその他の修飾を伴うポリペプチドである。「ポリペプチド」という語は同様に、「タンパク質」または「ペプチド」という語と互換的に使用可能である。
「ペプチド」という語は、NH.sub.2と隣接するアミノ酸のCOOH基の間で形成されたペプチド結合(−CONH−)を介して1個または2個のその他のアミノ酸に各アミノ酸が連結されている、2個以上のアミノ酸の任意の重合体を意味する。好ましくは、アミノ酸は、天然に発生するアミノ酸、特にL−鏡像体形態のアルファ−アミノ酸である。しかしながら、その他のアミノ酸、鏡像体形態および、アミノ酸誘導体がペプチドの中に含まれてもよい。ペプチドには、加水分解の時点で3個以上のアミノ酸を生成する「ポリペプチド」が含まれる。ポリペプチドは、50個以上のアミノ酸を標準的に含むタンパク質を含んでいてよい。
単数または複数での「変種」という語は、Ror分子の核酸またはアミノ酸配列の変形形態を意味する。「変種」という語の中に包含されるのは、Ror分子のヌクレオチドおよびアミノ酸置換、添加または欠失である。同様に、「変種」という語の中に包含されるのは、化学的に修飾された天然および合成のRor分子である。例えば、変種は、基準ポリペプチドとは異なるポリペプチドを意味し得る。一般に、基準ポリペプチドとアミノ酸配列が異なっているポリペプチドと基準ポリペプチドの間の差は、基準と変種のアミノ酸配列が全体的に密に類似し一部の領域では同一となるような形で制限される。変種および基準ポリペプチドは、保存的または非保存的であり得又任意の組合せで存在し得る1つ以上の置換、欠失、付加、融合およびトランケーション分だけアミノ酸配列において異なる可能性がある。例えば、変種は、例えば50〜30、30〜20、20〜10、10〜5、5〜3、3〜2、2〜1個または1個といったアミノ酸があらゆる組合せで挿入、置換、または欠失される変種であり得る。さらに、変種は、末端または内部欠失などによって基準配列よりも短かくなることにより基準ポリペプチド配列と異なっている本発明のポリペプチドのフラグメントであり得る。本発明のポリペプチドの変種は同様に、例えば活性成熟ポリペプチドを産生するべく前駆体部分の分割により活性化され得る前駆体タンパク質などの、かかるポリペプチドと同じ生物学的機能または活性を基本的に保持しているポリペプチドをも内含している。これらの変種は、タンパク質についてコードする構造遺伝子のヌクレオチド配列の差異を特徴とする対立遺伝子変形形態であってもよいし、或いは又、差動スプライシングまたは翻訳後修飾が関与し得る。変種は同様に、実質的に同じ生物活性をもつものの異なる種から得られた関係するタンパク質をも内含している。当業者は、単一のまたは多数のアミノ酸置換、欠失、付加または交換をもつ変種を生成することができる。これらの変種は、なかでも、(i)アミノ酸残基のうちの1つ以上のものが保存型または非保存型アミノ酸残基(好ましくは保存型アミノ酸残基)で置換され、かかる置換アミノ酸残基が遺伝子コードによりコードされたものであってもなくてもよい変種、または(ii)1つ以上のアミノ酸がペプチドまたはタンパク質という欠失されている変種、または(iii)1つ以上のアミノ酸がポリペプチドまたはタンパク質に付加されている変種、または(iv)アミノ酸残基のうちの1つ以上のものが置換基を含んでいる変種または(v)ポリペプチド(例えばポリエチレングリコール)の半減期を増大させるための化合物といったようなもう1つの化合物と成熟ポリペプチドが融合されている変種、または(vi)リーダーまたは分泌配列または成熟ポリペプチドの精製のために利用される配列または前駆体タンパク質配列といったような成熟ポリペプチドに付加的なアミノ酸が融合されている変種を含み得る。ポリペプチドの変種は同様に、天然に発生する対立遺伝子変種といったような天然発生変種であってもよく、そうでなければ、天然に発生するものとして知られていない変種であってもよい。上述のような変種は全て、当該技術分野における教示の範囲内に入るとみなされている。
本発明のポリペプチドおよびポリヌクレオチドは、好ましくは単離された形態で提供され、均質性に至るまで精製され得る。
「単離された」という語は、材料がそのもとのまたは未変性環境(例えばそれが天然に発生している場合には自然環境)から取出されていることを意味する。従って、生きた動物の体内に存在する天然に発生するポリヌクレオチドまたはポリペプチドは単離されておらず、自然系内に共存する材料のうちの一部または全てから人間の介入により分離された同じポリヌクレオチドまたはポリペプチドは単離されている。例えば、「単離された核酸フラグメント」は、1本鎖または2本鎖で、任意には合成、非天然または改変型のヌクレオチド塩基を含有するRNAまたはDNAの重合体である。DNAの重合体の形をした単離された核酸フラグメントは、cDNA、ゲノムDNAまたは合成DNAの1つ以上のセグメントから成り、炭水化物、脂質、タンパク質またはその他の材料と組合わせられ得る。かかるポリヌクレオチドは、ベクターの一部であり得、かつ/またはかかるポリヌクレオチドまたはポリペプチドは1つの組成物の一部であり得、かつかかるベクターまたは組成物がその天然で発見される環境の一部を成していないという点でなお単離されている。同様にして、「実質的に精製された」という語は、天然にそれが発生する直接の化学的環境から人間の介入を通して分離されたまたはその他の形で取り出された物質を意味する。実質的に精製されたポリペプチドまたは核酸は、この分野で一般的に知られている数多くの技術および手順のいずれかによって得られるかまたは産生され得る。
「精製」という語は、試料中の特定の1つ以上のポリペプチドの比活性または濃度を増大させることを意味する。1つの実施形態においては、比活性は、その試料中の全ポリペプチドの濃度と標的ポリペプチドの活性間の比として表わされる。もう1つの実施形態においては、比活性は、標的ポリペプチドの濃度と合計ポリペプチドの濃度の間の比率として表わされる。精製方法には、当業者にとっては周知の手順である透析、遠心分離およびカラムクロマトグラフィ技術が含まれるが、これらに制限されるわけではない。例えばヤング(Young)ら、1997、「トランスジェニック乳畜の乳中の生物医薬品タンパク質の産生(Production of biopharmaceutical proteins in the milk of transgenic dairy animals)」、生物製薬学(Bio Pharm)、10(6);34−38を参照のこと。
「実質的に純粋な」および「単離された」という語は、天然にポリヌクレオチドまたはポリペプチドと会合されていない物質を伴うポリヌクレオチドまたはポリペプチドの混合物を除外するものとして意図されている。
「細胞」、「細胞系列」および「細胞培養」という語は互換的に使用可能である。これらの語は全て、任意のおよび全ての後続する世代であるその後代をも内含する。全ての後代が、意図的なまたは故意でない突然変異に起因して同一であり得ないということは言うまでもない。非相同核酸配列の発現という状況下では、「宿主細胞」は、インビトロまたはインビボのいずれに任意設定されようと、原核または真核細胞(例えば大腸菌(E.coli)といった細菌細胞、酵母細胞、哺乳動物細胞、鳥類細胞、両生類細胞、植物細胞、魚細胞および昆虫細胞)を意味する。例えば、宿主は、複製能力をもつ任意の形質転換可能な生体を内含でき、細胞は、トランスジェニック動物の体内にあってもよい。宿主細胞は、ベクター用のかつ/またはベクターによりコードされた非相同核酸を発現するレシピエントとして使用可能である。
哺乳動物細胞系列により産生される外因性タンパク質を発現し回収するための一般的な方法は、例えばエチェベリー(Etcheverry)、「哺乳類細胞培養中における工学処理されたタンパク質の発現(Expression of Engineered Proteins in Mammalian Cell Culture)」、タンパク質工学(Protein Engineering)誌中:原理と実践(Principles and Practice)、クレランド(Cleland)ら編、163頁(ワイリー・リス社(Wiley−Liss,Inc.)1996)により提供されている。細菌系により産生されたタンパク質を回収するための標準的な技術は、例えばグリスハマー(Grisshammer)ら、「大腸菌細胞由来の過剰産生されたタンパク質の精製(Purification of over−produced proteins from E. coli cells)」DNAクローニング2:発現系(DNA Cloning 2:Expression Systems)中、第2版、グローバ(Glover)ら編、59−92頁(オックスフォード大学出版、1995)により提供されている。昆虫細胞の形質転換およびその中の外来性ポリペプチドの産生は、グアリノ(Guarino)ら、米国特許第5162222号明細書および国際公開第94/06463号パンフレットにより開示されている。バキュロウイルスシステムから組換え型タンパク質を単離するための方法は同様にリチャードソン(Richardson)編、「バキュロウイルス発現プロトコル(Baculovirus Expression Protocols)」(ヒューマナプレス社(The Humana Press,Inc.)1995)によって記述されている。1つの実施形態においては、本発明のポリペプチドは、バキュロウイルス発現系を用いて発現され得る(例えば、各々全体が本明細書に参照により援用されている(ラッコウ(Luckow)ら、バイオ/テクノロジー(Bio/Technology)、1988、6、47、「バキュロウイルス発現ベクター:実験室マニュアル(Baculovirus Expression Vectors:a Laboratory Manual)」、オライリー(O’Rielly)ら(編集者)、W.H.フリーマン社、ニューヨーク、1992、米国特許第4,879,236号明細書参照)を参照のこと)。さらに、MAXBAC.TM.完全バキュロウイルス発現系(インビトロジェン(Invitrogen))を昆虫細胞内での産生のために使用することができる。
本発明のポリペプチドは同様に特定の特性を活用することによっても単離可能である。例えば、固定化金属イオン吸着(IMAC)クロマトグラフィを用いて、ポリヒスチジンタグを含むものを含めたヒスチジン富有タンパク質を精製することができる。簡単に言うと、キレートを形成するために二価の金属イオンをまず最初にゲルに充填する((サルコウスキー(Sulkowski)、生化学の動向(Trends in Biochem.)3:1(1985))。使用される金属イオンに応じて異なる親和力でこのマトリクスにヒスチジン富有タンパク質が吸着され、競争的溶出か、pHを下げるかまたは強いキレート化剤の使用により溶出されることになる。その他の精製方法には、レクチンアフィニティクロマトグラフィおよびイオン交換クロマトグラフィによるグリコシル化タンパク質の精製が含まれる(M.ドイッチャー(M.Deutscher)編、酵素学的方法(Meth.Enzymol.)182:529(1990))。本発明の付加的な実施形態においては、問題のポリペプチドと親和性タグ(例えばマルトース結合タンパク質、免疫グロブリンドメイン)の融合を構築して精製を容易にすることができる。
本発明の宿主細胞は、細胞が適切な培地中で成長させられ、所望のポリペプチド産物が細胞からまたは細胞が中で成長させられる培地から、例えばイムノアフィニティクロマトグラフィ、受容体アフィニティクロマトグラフィ、疎水性相互作用クロマトグラフィ、レクチンアフィニティクロマトグラフィ、サイズ排除ろ過、カチオンまたはアニオン交換クロマトグラフィ、高圧液体クロマトグラフィ(HPLC)、逆相HPLCなどを含めた従来のクロマトグラフィ方法などの当該技術分野において既知の精製方法によって単離される、Rorポリペプチドの大規模生産のための方法において使用可能である。その他の精製方法としては、所望のタンパク質が、特異的結合パートナーまたは作用物質により認識される特異的タグ、標識またはキレート化部分を有する融合タンパク質として発現、精製される方法が含まれる。精製されたタンパク質は、所望のタンパク質を生成するように分割可能であり、そうでなければ、無傷の融合タンパク質として放置できる。融合成分の分割は、分割プロセスの結合として付加的なアミノ酸残基を有する所望のタンパク質の一形態を産生し得る。
「インサイチュ」という語は、「インビボ」、「エックスビボ」および「インビトロ」という語を、これらの語が一般に当業者によって認識され理解される通りに、意味し内含する。さらに、「インサイチュ」という語句は、本書では、その最も広い内包的および外延的文脈内で、その場所または位置におけるその持続時間または寿命またはその供給源または由来、その条件または状態とは無関係に、所定の位置でまたは発見されるままに1つの実体、細胞または組織を同定するために利用される。
「インビトロ」という語は、人工的環境および人工的環境内で発生する反応またはプロセスを意味する。インビトロ環境には、試験管および細胞培養が含まれるがこれらに制限されるわけではない。「インビボ」という語は、自然環境(例えば動物または細胞)および自然環境内で発生するプロセスまたは反応を意味する。
本発明の方法は、該抽出物を含む細胞(培養した細胞)および細胞溶解物を用いてインビトロで実施可能である。骨形成を調節する作用物質を同定するために考慮されている細胞の例としては、頭蓋冠細胞、骨芽細胞、破骨細胞、軟骨細胞および多能性前駆体細胞、例えば多能性骨髄間質細胞が含まれるがこれらに制限されるわけではない。骨芽細胞および骨芽細胞前駆体細胞系列統の特定的な例としては、ATCC(国際公開第01/19855号パンフレット)からのカタログの中で提供されているMC3T3−E1、C2C12、MG−63細胞、U2OS細胞、UMR106細胞、ROS17/2.8細胞、SaOS−2細胞など、ならびに、ボディン PV(Bodine PV)、ベルノン SK(Vernon SK)、コーム BS(Komm BS)、内分泌学(Endocrinology)、137、4592−4604、(1996)、ボディン PVN、トレールスミス M(TrailSmith M)、コーム BS、骨代謝研究ジャーナル(J.Bone Min Res)、11、806−819、(1996)、ボディン PV、グリーン J(Green J)、ハリス HA(Harris HA)、バート RA(Bhat RA)、スタイン GS(Stein GS)、ライアン JB(Lian JB)、コーム BS、細胞生化学ジャーナル(J Cell Biochem)、65、368−387、(1997)、ボディン PV、コーム BS、骨(Bone)、25、535−43(1999)、ボディン PVN、ハリス HA(Harris HA)、コーム BS、内分泌学、140、2439−2451、(1999)、プリンス M(Prince M)、バナージー C(Banerjee C)、ジェーブド A(Javed A)、グリーン J、ライアン JB、スタイン GS、ボディン PV、コーム BS、細胞生化学ジャーナル(J Cell Biochem)、80、424−40、(2001)の中で記述されているHOB細胞が含まれる。
本発明の方法は同様に、無細胞系列を用いて実施することもできる。
「発現系」という語は、例えばベクターにより搬送され宿主細胞内に導入された外来性DNAによってコードされるタンパク質の発現用などの適切な条件下で宿主細胞および相容性あるベクターを意味する。一般的な発現系には、大腸菌宿主細胞およびプラスミドベクター、昆虫宿主細胞及バキュロウイルス(Baculovirus)ベクター、および哺乳動物宿主細胞およびベクターが含まれる。
「形質転換」というのは、遺伝的に安定した遺伝的形質を結果としてもたらす、宿主生体のゲノム内への核酸フラグメントのトランスファを意味する。形質転換された核酸フラグメントを含有する宿主生体は、「トランスジェニック」生体と呼ばれる。
「クローン」というのは、有糸分裂により単細胞または共通の先祖から誘導された細胞集合を意味する。「細胞系列」というのは、複数の世代についてインビトロで安定して成長する能力をもつ一次細胞のクローンを意味する。
「分化する」という語は、もとの組織または細胞型とは異なる性質または機能を有することを意味する。かくして、「分化」は、分化するプロセスまたは行為である。
「骨芽細胞分化」という語は、1つの細胞が骨芽細胞への突然変異の間に専門化した機能を発達させるプロセスを意味する。骨芽細胞分化は、前骨芽細胞、早期および成熟骨芽細胞、前骨細胞および成熟骨細胞期を含み得る(ボディンら、ビタミンおよびホルモン(Vitamins and Hormones)65、101−151(2002)、スタインら、内分泌学評論(Endocrine Reviews)14、424−442(1993)、およびライアンら、ビタミンおよびホルモン(Vitamins and Hormones)55、443−509(1999))。
「増殖」という語は、類似の細胞の成長および産生を意味する。
「表現型」という語は、1つの細胞のまたは生体の観察可能な性質を意味する。このような観察可能な性質には、物理的外観、ならびにその細胞または生体の体内に存在する特定の生理学的組成物のレベルが関与し得る。骨芽細胞表現型には、骨特異的転写因子Cbfa1;1型コラーゲン;アルカリホスファターゼ、オステオカルシン;および骨シアロタンパク質といったような複数のマーカータンパク質の発現が含まれる。
「遺伝子誘発系」という語は、遺伝子発現を調節するためのリガンドの使用を意味する。遺伝子発現を誘発するために小分子を利用する複数の調節系が開発されてきた(クラークソン T(Clackson T.)、生物化学の最新意見(Curr Opin Chem Biol)、1、210−218、(1997);レワンドスキー(Lewandoski M.)、ネイチャーレビュー誌遺伝学(Nat Rev Genet.)、2、743−755、(2001)において再考されているもの)。遺伝子誘発可能な系は、その系が活性化されていない場合には標的遺伝子の低から検出不可能での基礎発現を可能にし、系が活性化されている場合には標的遺伝子の増大した発現レベルを可能にする分子ツールである。
「成熟」タンパク質というのは、翻訳後にプロセッシングされたポリペプチドすなわち一次翻訳産物内に存在するあらゆるプレ−またはプロ−ペプチドが除去されたものを意味する。「前駆体」タンパク質というのは、mRNAの翻訳の一次産物、すなわち、プレ−およびプロ−ペプチドが存在する状態のものを意味する。プレ−およびプロ−ペプチドは、細胞内局在化シグナルを含むが、これに制限されるわけではない。
本書で使用される、「結合パートナー」または「相互作用タンパク質」という語は、例えば抗原および抗原特異的抗体または酵素およびその阻害物質といったように、特異性をもってもう1つの分子に結合する能力をもつ分子を意味する。結合パートナーは、例えば、ビオチンおよびアビジンまたはストレプトアビジン、lgGおよびプロテインA、受容体−リガンド対、タンパク質−タンパク質相互作用および相補的ポリヌクレオチドストランドを内含し得る。「結合パートナー」という語は、同様に、細胞内でキナーゼに結合するポリペプチド、脂質、小分子または核酸をも意味しうる。キナーゼと結合パートナーの間の相互作用の変化は、その相互作用が形成する確率の増大または減少、またはキナーゼ結合パートナー複合体の濃度の増大または減少として現われる可能性がある。例えば、Ror1またはRor2タンパク質は、もう1つのタンパク質またはポリペプチドと結合し、Ror1またはRor2活性の調節を結果としてもたらしうる複合体を形成し得る。
「シグナル形質導入経路」は、細胞膜を通って細胞外シグナルを伝播させて細胞内シグナルとなるようにする分子を意味する。このシグナルは、このとき、細胞応答を刺激することができる。シグナル形質導入プロセスに関与するポリペプチド分子は受容体および非受容体タンパク質チロシンキナーゼであり得る。
「受容体」というのは、一般的に特異的物質の選択的結合を特徴とする細胞の内部または表面上の分子構造を意味する。受容体の例としては、ペプチドホルモン、神経伝達物質、抗原、補体フラグメントおよび免疫グロブリンのための細胞表面受容体、ならびにステロイドホルモンのための細胞質受容体が含まれる。
「調節する」という語は、1つの機能の抑圧、増強または誘発を意味する。例えば、遺伝子発現の「調節」または「調節」は、遺伝子の活性の変化を意味する。発現の調節は、遺伝子の活性化および遺伝子の抑制を含むが、これに制限されるわけではない。「調節する」または「調節する」というのは同じく、タンパク質、酵素、阻害物質、シグナルトランスデューサ、受容体、転写活性化体、共同因子などの生物活性を増加または減少する方法、条件または作用物質をも意味する。この活性の変化は、それ自体生物活性の増加または減少に対応し得るmRNA翻訳、DNA転写および/またはmRNAまたはタンパク質分解の増加または減少であり得る。かかる増強または阻害は、シグナル変換経路の活性化といったような特定の事象の発生時点で不確定であり得る。
「調節された活性」というのは、1つのタンパク質の生物学的に活性な形態により調節されるあらゆる活性、条件、疾病または表現型を意味する。調節は、生物学的に活性なタンパク質の濃度に影響を与えること、例えば発現または分解を調節することによって、または、例えば化学的または構造的な修飾、基質の阻害、活性化、結合または放出などを通した直接的なアゴニストまたはアンタゴニスト効果によって、または付加的な因子が関与し得る直接的または間接的相互作用によって、影響を受ける可能性がある。
「モジュレータ」というのは、骨形成またはRor分子発現といったような特定の活性の発現を改変するあらゆる作用物質を意味する。例えば、骨形成を調節する作用物質は骨形成を改変または変更する(増加または減少させる)。モジュレータは、あらゆる化合物、例えば抗体、小分子、ペプチド、オリゴペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質を含むように意図されている。
「小分子」という語は、例えば任意に誘導体化され得るペプチドまたはオリゴヌクレオチド、天然産物、または天然または合成由来のその他のあらゆる低分子量(標準的には約5kダルトン未満)の有機、生物無機または無機化合物といったような合成的にまたは天然に発生する化学的化合物を意味する。かかる小分子は、治療用に送達可能な物質であってもよいし、または送達を容易にするためにさらに誘導体化されてもよい。
本書で使用される通り、「インデューサ」という語は、骨形成またはRor分子発現といったような特定の活性を誘発、増強、促進または増大させるあらゆる作用物質を意味する。
本書で使用される「阻害物質」または「リプレッサー」という語は、骨形成またはRor分子発現といったような特定の活性を阻害、抑圧、抑制または減少させるあらゆる作用物質を意味する。
本書で使用されている通り、「作用物質」または「テスト作用物質」という語は、試験すべきあらゆる化合物または分子を意味する。
本発明の作用物質の例には、ペプチド、小分子、および抗体が含まれるが、これに制限されるわけではない。作用物質は無作為に選択され得、そうでなければ合理的に選択または設計され得る。本書で使用する作用物質は、それが標的化合物または部位との間のその特異的相互作用を考慮せずに無作為に選択される場合に、「無作為に選択される」と言われる。本書で使用する通り、作用物質は、それが標的化合物または部位との間のその特異的相互作用および/またはその作用物質の作用と結びつけた立体構造を考慮に入れて非無作為ベースで選択される場合に、「合理的に選択または設計される」と言われる。
本書で使用する通り、「抗体」という語は、免疫グロブリン分子あるいはその免疫学的に活性な部分すなわち抗原結合部分を意味する。免疫グロブリン分子の免疫学的に活性な部分の例としては、ペプシンといったような酵素で抗体を分割することによって生成され得るF(ab)、Fv、およびF(ab’)フラグメントが含まれる。
本書で使用されている通り、「治療(処置)」、「治療(処置)する」および「療法」という語は、治療的処置および予防または防止用操作、または骨細胞分化または骨形成を刺激し、骨の障害の症候の発生を遅らせかつ/または骨の障害および/または骨の障害から発生することになるまたは発生すると予想されるような症候の重症度を軽減する操作を意味する。これらの語はさらに、既存の骨の障害症候を改良すること、付加的な症候を予防すること、根底にある症候の代謝的原因を改善または防止すること、症候の代謝的原因を防止するまたは逆転させることまたは、骨の成長を防止または促進することも含まれる。かくして、該用語は、骨の障害をもつかまたはかかる障害を発生させる潜在性を有する対象に対して有利な結果が付与されたということを意味している。さらに、「治療(処置)」という語は、1つ疾病、疾病の症候または疾病に対する素因を有し得る対象または該対象からの単離組織または細胞系列に対する、該疾病、疾病の症候または疾病に対する素因を治す、治ゆする、緩和する、軽減する、改変させる、矯正する、改善する、改良するまたは影響を加えることを目的とした、作用物質(例えば治療薬または治療用組成物)の塗布または投与として定義される。本書で使用されている通り「治療剤」というのは、疾病の治療を助ける、例えば骨形成活性を調節するかまたは新しい骨形成を誘発するあらゆる物質または物質の組合せを意味する。従って、治療剤には、小分子、ペプチド、抗体、リボザイムおよびアンチセンスオリゴヌクレオチドが含まれるが、これに制限されるわけではない。
治療剤または治療用組成物は同様に、特定の疾病の症候を防止および/または低減させる医薬上許容される形態をした化合物をも含み得る。例えば、治療用組成物は、骨関連障害の症候を防止および/または低減させる薬学組成物であり得る。本発明の治療用組成物は適切なあらゆる形態で提供されることになると考えられている。治療用組成物の形態は、投与様式を含む数多くの要因によって左右される。治療用組成物は、その他の成分の中でも希釈剤、アシュバントおよび賦形剤を含有し得る。
骨強度は、骨密度(体積1cm3あたりの無機質のグラム数)および骨質(ミネラル化、骨構築、骨代謝回転、微少骨折)によって決定可能である。骨強度の尺度としては通常、骨ミネラル密度(BMD)が使用される。例えば、骨は、そのBMDが若い白人成人女性のBMDの平均よりも標準偏差の2.5倍を超えて低い場合に骨粗鬆症と宣告され得る(世界保健機構(World Health Organization)、1994、骨折リスクの査定と閉経後骨粗鬆症についてのスクリーニングに対するその応用(Assessment of Fracture Risk and it’s Application to Screening for Postmenopausal Osteoporosis)技術報告シリーズ(Technical Report Series)843.ジュネーブ(Geneva):世界保健機構))。
「骨組織」は、石灰化組織(頭蓋冠、脛骨、大腿骨、脊椎、歯)、骨梁とは異なる空洞である骨髄空洞、骨梁と骨髄空洞の外周を覆う皮質骨などを意味する。骨組織は同様に、全体的にミネラル化したコラーゲンのマトリクスの内部に存在する骨細胞;骨細胞に栄養を提供する血管;骨髄穿刺;滑液;骨組織に由来する骨細胞をも意味し、脂肪質骨髄を含み得る。骨組織は、全骨、全骨切片、骨細片、骨粉、骨組織生検材料、コラーゲン調製物またはそれらの混合物などの骨産物を含む。本発明の目的では、「骨組織」という語は、相反する記述のないかぎり、ヒトまたは動物のいずれであれ、上述の骨組織および産物の全てを包含するように使用されている。
本書で用いられる「骨関連活性」というのは、骨形成活性および骨再吸収活性である。
骨形成活性は、骨芽細胞活性、骨始原細胞からの骨芽細胞分化および骨芽細胞増殖を増大させること、骨芽細胞アポトーシスを減少させることおよびそれらのいずれかの組合せによって誘発可能である。さらに、骨再吸収活性は、破骨細胞活性、破骨細胞分化および増殖を減少させること、破骨細胞アポトーシスを増大させることおよびそれらのあらゆる組合せによって抑圧可能である。骨形成活性は、さまざまな骨組織または細胞の中で誘発可能である。
本書で使用されているように、「骨形成を調節する」という語は、骨形成の増加または減少を意味する。「増加した骨形成」というのは、成熟骨芽細胞への細胞の分化および骨物質にミネラル化しその部位での骨量を増大させるコラーゲン質のマトリクスの分泌をもたらす、骨部位への骨芽細胞または骨芽細胞前駆体の動員を意味する。この用語は同様に、成熟骨芽細胞によるコラーゲン質マトリクスの産生および分泌の増大をも包含する。増加した骨形成は、骨折率の減少、面積骨密度の増加、体積骨ミネラル密度の増加、骨梁結合性の増加、骨梁密度の増加、皮質密度または厚みの増加、骨直径の増加および無機骨含有率の増加のうちの1つ以上のものを介して決定可能である。増加した骨形成は、例えば骨芽細胞といった骨細胞の増加した付着、増殖、生存および/または分化およびその後の骨ミネラル化の結果であり得る。
「骨関連障害」には、骨形成および骨再吸収の障害が含まれる。これらの疾病および身体条件としてはくる病、骨軟化症、骨減少症、骨硬化症、腎性骨形成異常症、骨粗鬆症(老人性および閉経後骨粗鬆症を含む)、パジェット病、骨転移、高カルシウム血症、副甲状腺機能亢進症、大理石骨病、歯周炎および関節リューマチおよび変形性関節症に付随することのある骨代謝の異常変化が含まれるが、これに制限されるわけではない。これらの疾病のうちの一部分は、不充分な骨形成または骨粗鬆を特徴とするが、その他の疾病には、骨組織の異常な肥厚化または硬化が関与する。骨の異常な肥厚化を阻害することの恩恵を受けることになる疾病の例としては、大理石骨病および骨硬化症が含まれるが、これに制限されるわけではない。
「骨関連作用物質」というのは骨形成または骨再吸収に影響を及ぼす作用物質を意味する。「骨関連作用物質」は、同化効果または異化効果を誘発でき、骨の再吸収を阻害して骨ミネラル密度の増大をもたらすことができ、骨形成を増加させることができ、または骨形成と骨再吸収の間のバランスを維持することができる。
「化合物」または「作用物質」という語は、本書では対象(ヒトまたは動物)に投与された時点で局所的および/または全身的作用により所望の薬理および/または生理的効果を誘発する物質の単数または複数の化合物または組成物を意味するべく互換的に使用される。
「対象」という語は、ヒトまたはヒト以外の対象を含めたあらゆる哺乳動物を意味する。ヒト以外の対象は、実験用、テスト用、農耕用、ショー用の動物またはコンパニオンアニマルを含み得る。
「生物試料」という語は、あらゆる細胞、組織、生体液、器官、多細胞生体などを内含するように広く定義される。生物試料は例えばインビトロでの細胞または組織培養に由来し得る。代替的には、生物試料は、単細胞生体の集合からかまたは生きた生体に由来してもよい。生物試料は、生きた骨といったような生きた組織であってよい。「生物試料」という語は同様に、対象から単離された細胞、組織または生体液といったような試料、ならびに対象の体内に存在する試料を内含するようにも意図されている。すなわち、本発明の検出方法は、インビトロならびにインビボでの生物試料中のRormRNA、タンパク質、ゲノムDNAまたは活性を検出するために用いることができる。例えば、RormRNAの検出のためのインビトロ技術には、TaqMan分析、ノーザンハイブリダイゼーションおよびインサイチュハイブリダイゼーションが含まれる。Rorタンパク質の検出のためのインビトロ技術には、酵素免疫測定吸着法(ELISA)、ウエスタンブロット法、免疫沈降法および免疫螢光法が含まれる。RorゲノムDNAの検出のためのインビトロ技術にはサザンハイブリダイゼーションが含まれる。
「テスト試料」は、問題の対象からの生物試料を意味する。
「体液」というのは、これらに限定されるわけではないが、血清、血漿、リンパ液、滑液、卵胞液、精液、羊水、乳、全血、汗、尿、脳脊髄液、唾液、痰、涙、蒸泄、鼻汁、組織培地、組織抽出物および細胞抽出物を含めたあらゆる体液を意味する。これは同様に体液の画分および希釈液にもあてはまり得る。体液の供給源は、ヒトの体、動物の体、実験動物、植物またはその他の生体であってよい。
(発明の実施形態の記載)
骨関連活性のモジュレータとしてRor分子の発現または活性を調節する作用物質を使用する方法:Ror分子の発現または活性を調節する作用物質が骨関連活性を調節するために有用である。例えば骨形成を増強することといった骨関連活性を調節する必要性によって特徴づけされる疾病および身体条件が数多く存在する。最も明白であるのは、骨の成長を刺激し骨の修復を加速し完了させることが望まれる骨折の場合である。例えば、骨形成を増強する作用物質は、顔面復元手術において潜在的に有用であり得る。その他の骨欠損条件としては、骨分節の欠陥、歯周病、転移性骨疾患、溶骨性骨疾患、および、軟骨欠陥または損傷の治ゆまたは再生といった結合組織の修復が有利であると思われる身体条件が含まれるが、これに制限されるわけではない。同様にきわめて有意であるのは、加齢性骨粗鬆症および閉経後ホルモン状態に関連する骨粗鬆症を含めた骨粗鬆症の慢性的身体条件である。骨成長の必要性を特徴とするその他の身体条件としては、原発性および続発性上皮小体亢進症、糖尿病関連骨粗鬆症、廃用性骨粗鬆症およびグルココルチコイド関連骨粗鬆症が含まれる。
本発明の方法において使用するための作用物質は、投与に適した薬学組成物の中に取込むことができる。本書で使用される「作用物質」という語は、Roc核酸分子、Rorポリペプチドのフラグメント、および抗−Ror抗体ならびにRor分子の発現、合成、および/または活性を調節する同定された化合物(例えば、小さく、かつ経口活性をもつ有機分子)が含まれるが、これに制限されるわけではない。かかる組成物は標準的に、化合物、核酸分子、タンパク質、抗体ならびにかかる核酸分子を発現するベクターおよび宿主細胞、および医薬上許容される担体を含む。本発明の組成物は、骨関連活性を調節するものとして知られている1つ以上の作用物質と組合せた形で1つ以上の作用物質を含有し得る。例えば、Rorの発現を誘発する作用物質は、エストロゲン、ビスホスホナートまたは組織選択性エストロゲン(すなわち選択的エストロゲン受容体モジュレータすなわちSERM)のような骨の再吸収を阻害する作用物質と組合せることができる。
1つ以上の作用物質が治療上有効な用量で使用される。治療上有効な用量というのは、利点(例えば治療対象の障害、疾病または身体条件に付随する症候の減少)を示すのに充分な量の作用物質を意味する。単独で投与される個々の成分に適用された場合、この語はその成分だけを意味する。組合せに適用された場合、この語は、組合せで、連続的にまたは同時にのいずれで投与されるかとは無関係に、利点をもたらす成分の組合わせた量を意味する。例えば、治療的用途のための有効量は、骨折修復における治ゆ速度の臨床的に有意な増加;骨粗鬆症における骨折の防止および骨粗鬆の逆転;軟骨欠陥または障害の逆転;骨粗鬆症の発症の防止または遅延;骨折偽関節および仮骨延長術における骨形成の刺激および/または阻害;人工補装具内への骨の成長の増加および/または減少;歯の欠陥の修復などを提供する作用物質を含む組成物の量である。かかる有効量は、日常的な最適化技術を用いて決定されることになり、治療すべき特定の身体条件、患者の身体条件、投与経路、処方、医師の判断および当業者にとって明白であるその他の要因に左右される。本発明の化合物に必要とされる投薬量(例えば骨形成の増加が望まれる骨粗鬆症において)は、治療グループと対照グループの間の骨量の統計的に有意な差異を確保する投薬量である。骨量のこの差異は、例えば治療グループにおいて骨量の5〜20%またはそれ以上の増加として捉えられる可能性がある。臨床的に有意な治ゆ増加のその他の測定には、例えば破壊強度および張力、破壊強度とねじれ、4点曲げ、骨生検材料における結合性の増加についての試験、および当業者にとっては周知のその他の生体力学試験が含まれ得る。治療法についての一般的な指針は、問題の疾病の動物モデルで実施された実験から得ることができる。
作用物質の毒性および治療上の効能は、例えばLD50(集団の50%に対する致死用量)およびED50(集団の50%において治療上の有効な用量)を決定するため、細胞培養中または実験動物の体内で、標準的な薬学的手順により決定可能である。毒性効果と治療効果の間の用量比は、治療指数であり、これはLD50/ED50比として表現できる。大きい治療指数を示す作用物質または化合物が好まれる。細胞培養検定および動物研究から得られたデータを、ヒトにおける使用のための投薬量範囲を公式化する上で使用することができる。かかる作用物質または化合物の投薬量は、ほとんどまたは全く毒性の無いED50を内含する循環濃度範囲内にあり得る。該投薬量は、利用される投薬形態および利用される投与経路に応じて、この範囲内で変動し得る。
本発明の方法において使用されるいずれの作用物質についても、治療的に有効な用量は、当初細胞培養検定から見積られてよい。例えば、細胞培養内で決定される通りのED50(すなわち、タンパク質複合体の半最大分断または複合体成分の細胞レベルおよび/または活性の半最大阻害を達成するテスト化合物の濃度)を含む循環血漿濃度範囲を達成するために、動物モデルにおいて用量を公式化することができる。かかる情報を用いてより正確にヒトにおける有用な用量を決定することが可能である。血漿レベルは、例えばHPLCにより測定可能である。投薬量は、患者の条件に照らして、個々の医師が選択できる。主治医は、投与を終結、中断または調整する方法と時期を知っているはずである。換言すると、主治医は、同様に、臨床応答が適切でなかった場合により高いレベルに治療を調製する(毒性を排除する)こともできると思われる。問題の障害の管理における投与される用量の規模は、治療すべき身体条件の重症度と共に変動することになる。身体条件の重症度は、例えば一部には標準的予後診断評価方法によって評価され得る。さらに、用量およびおそらくは用量頻度は、同様に、個々の患者の年令、体重および応答に従っても変動することになる。上述のものに匹敵するプログラムを獣医学において利用することができる。
特定の状況のための適切な投薬量の決定は、当該技術分野の技能範囲内にある。一般に、治療は、該化合物の最適な用量より少ない比較的少量の投薬量で開始される。その後、投薬量を、状況下の最適な効果が達成されるまで、小さい増分で増加させることができる。例えば、合計一日投薬量を、望ましい場合、一日の間で複数の分量に分割して投与することができる。
治療対象の特定の条件に応じて、作用物質を処方し全身的または局所的に投与することができる。本発明の薬学組成物は、その意図された投与経路と相容性をもつように処方される。処方および投与の技術は、レミントンの薬学(Remington’s Pharmaceutical Sciences)、第18版、マック出版社(Mack Publishing Co.)、ペンシルバニア州イーストン(Easton、Pa)(1990)の中に見い出すことができる。適切な経路には、いくつか挙げるだけでも、経口、直腸内、経膣、経皮、経粘膜または腸内投与;筋内、皮下および髄内注射を含む非経口送達、ならびに鞘内、直接脳室内、静脈内、腹腔内、鼻腔内または眼内注射が含まれると考えられる。使用可能ないくつかの送達方法としては、リポゾーム内へのカプセル封じ、レトロウイルスベクターによる形質導入、大部分の核タンパク質上に見られる核ターゲティング部位を利用した核区画への局在化、トランスフェクションを受けた細胞のその後の再移植または管理を伴うエクスビボでの細胞のトランスフェクション、およびDNAトランスポータ系が含まれるが、これに制限されるわけではない。
組成物が薬学的に使用される場合、これらは、診断および治療用の「医薬上許容される担体」と組合せられる。かかる組成物の処方は当業者にとって周知である。本発明の薬学組成物は、1つ以上の付加的作用物質を含み、好ましくは、医薬上許容される担体を含む。
適切な医薬上許容される担体および/または希釈剤は、任意のそして全ての従来の溶媒、分散媒体、充填剤、個体担体、水溶液、コーティング、抗菌および抗真菌剤、等張性および吸収遅延剤などを含む。「医薬上許容される担体」という語は、それが投与される患者の体内でアレルギー反応またはその他の上向き効果をひき起こさない担体を意味する。適切な医薬上許容される担体には、例えば、水、塩水、リン酸緩衝生理食塩水、デキストロース、グリセロール、エタノールなどのうちの1つ以上のものならびにそれらの組合せを内含する。医薬上許容される担体はさらに、組成物の作用物質のうちの1つ以上のものの保管寿命または有効性を増強する、湿潤剤または乳化剤、防腐剤または緩衝剤といったような補助物質をわずかに含むことができる。医薬上許容される物質のためのかかる媒質および作用物質の使用は、当該技術分野において周知である。
非経口、皮内または皮下での適用のために使用される溶液または懸濁液には、以下の構成成分を含むことができる。注射用水、食塩溶液、不揮発油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコールまたはその他の合成溶媒といった無菌希釈剤;ベンジルアルコールまたはメチルパラベンといったような抗菌剤;アスコルビン酸または重亜硫酸ナトリウムといったような酸化防止剤;エチレンジアミン四酢酸といったキレート剤;酢酸塩、クエン酸塩またはリン酸塩といった緩衝液および塩化ナトリウムまたはデキストロースといったような張度の調整用作用物質。塩酸または水酸化ナトリウムといったような酸または塩基でpHを調整することができる。非経口調製物は、アンプル、使い捨て注射器またはガラスまたはプラスチックで作られた複数回投与水薬瓶の中に封入することができる。注射に適した薬学組成物には、無菌注射可能溶液または分散の即席調製物のための無菌水溶液(水溶性の場合)または分散および無菌粉末が含まれる。静脈内投与のためには、適切な担体として生理食塩水、静菌性水、クレモフォールEL(Cremophor EL)(登録商標)(BASF、ニュージャージー州パルシッパニー(Parsippany、N.J.))またはリン酸緩衝生理食塩水がある。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えばグリセロール、プロピレングリコールおよび液体ポリエチレングリコールなど)およびそれらの適切な混合物を含む溶媒または分散媒質であり得る。適切な流動性は、レシチンといったようなコーティングの使用、分散の場合における必要とされる粒子サイズの維持および界面活性剤の使用によって維持可能である。微生物による作用の防止は、例えばパラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、チメロサールなどのさまざまな抗菌および抗真菌剤によって達成可能である。数多くの場合において、組成物中にマンニトール、ソルビトール、塩化ナトリウムといったような糖またはポリアルコールなどの等張剤を含むことが好ましい。注射可能な組成物の長時間にわたる吸収は、例えばモノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンといった吸収を遅らせる作用物質を組成物中に内含させることによってもたらすことができる。
さらに、本発明により同定された疾病および身体条件を治療するための作用物質は同様に、治療中の身体条件に対するその特別な有用性のために選択されるその他の治療剤と同時投与することもできる。例えば、作用物質をエストロゲンまたはエストロゲン関連化合物またはその他の骨再吸収阻害物質と組合わせることもできる。エストロゲン化合物には、接合されたエストロゲン、エストラジオールおよびその類似体が含まれるがそれに限定されるわけではない。その他の骨関連治療用化合物には、ビスホスホナートおよび関連化合物(例えば米国特許第5,312,814号明細書に記されているもののようなもの)、カルシウムサプリメント(プリンス、R.L.(Prince、R.L.)ら、N.Engl.J.Med.325、1189、(1991)、ビタミンDサプリメント(シャピュイ M.C.(Chapuy M.C.)ら、N.Engl.J.Med.327、1637、(1992)、フッ化ナトリウム(リッグス、B.L.(Riggs、B.L.)ら、N.Engl.J.Med.、327、620、(1992)、アンドロゲン(ナジャン・ド・ドゥシェスヌ、C.(Nagent de Deuxchaisnes C.)、骨粗鬆症(Osteoporosis)中、多診療科問題、王立医学会国際会議およびシンポジウムシリーズ(Royal Society of Medicine International Congress and Symposium Series)第55号、アカデミックプレス、ロンドン(London)、291頁、(1983)、およびカルシトニン(クリスチャンセン、C.(Christiansen、C.)、骨(Bone)13(増補1):S35、(1992)が含まれるが、これに制限されるわけではない。
医薬品標的としてのRor分子:本発明は、インビトロおよびインビボアプローチによる骨粗鬆症薬物標的としてRor分子を検証している。例えば、哺乳動物細胞の中でRor発現を特異的に分断することになるsiRNA分子が生成され得る。これらのsiRNAは、比較的高レベルのRormRNAで早期骨芽細胞内で過剰発現され得、細胞の分化および/または生存に対するRor分断の効果をモニター観察することができる。Ror依存性遺伝子を同定するため、遺伝子チップ分析も実施し得る(米国特許第5795716号明細書、米国特許第5974164号明細書)。Ror2発現パターンおよびSFRP−1およびWntシグナル化に対するその関係に基づいて、Ror2ダウンレギュレーションは、骨芽細胞分化を加速することができ、同様にアポトーシスを促進することもできる。補足的アプローチには、検出可能なレベルのRor2mRNAを全くもたず低レベルのRor1mRNAしかもたない骨細胞前細胞中のRorの過剰発現およびこれらの細胞の分化状態の監視が関与する。インビトロ検証の後、組織および/または時間依存的にRorを条件付きで過剰発現するトランスジェニックマウスを生成することによって、骨粗鬆症標的としてのRorのインビボ検証を実施することができる。発達中の異なる時点で条件付きで分断されたRor発現を伴うマウスも同様に生成可能である。
骨関連活性および/またはWntシグナル化経路を調節する作用物質を同定する方法:本発明は、Ror分子の発現または活性の増加または減少が、その作用物質が骨関連活性および/またはWntシグナル化を調節していることを表わしている、テスト作用物質を投与する工程および作用物質が骨関連活性を調節するか否かを決定するべくRor分子の発現または活性をモニター観察する工程を含む、骨関連活性および/またはWntシグナル化を調節する作用物質を同定するための方法を提供する。
1つの作用物質がRor分子の発現または活性を改変するか否かを決定するための方法には、当業者にとって周知の分析および検定を実施する工程が含まれる。例としては、組織化学分析、ノーザンブロット分析、TaqMan分析、ウエスタンブロット分析、ELISA、および例えばRorリン酸化の測定(より高いリン酸化状態がより高い活性を反映している)を含む機能的分析が含まれるが、これに制限されるわけではない。Rorの発現および活性を調節するテスト作用物質を同定するために本発明が考慮しているその他の方法には、PCR分析およびレポータ遺伝子系が含まれる。レポータ遺伝子はルシフェラーゼをコード化でき、例えばWnt−3シグナル化によって活性化されるプロモータの制御下にあり得る。Ror1およびRor2はWnt−3活性を阻害することから、レポータの発現は、Ror分子の発現および/または活性の変化を反映している。
本発明の方法は、ハイスループット検定を含む任意の利用可能な形式で修正するかまたは実施することが可能である。ハイスループット検定は、一定の与えられた時限内で多数の化合物をスクリーニングするために有用である。1つの実施形態においては、DNAチップ上に置かれている核酸を用いて検定を形成することができる。もう1つの実施形態においては、細胞ベースのスクリーニングを用いた検定が実施される。米国特許第6,103,479号明細書は、小型細胞アレイ方法および細胞ベースのスクリーニングのための器具を開示している。例えば、光化学レジスト−フォトリソグラフィといったその他の利用分野のために細胞の均等なマイクロパターン型アレイを作るための方法が記述されてきた(ムルキッチ(Mrksich)およびホワイトサイド(Whitesides)、生物物理学および生体分子構造年報(Ann.Rev.Biophys.Biomol.Struct.)、25、55−78、(1996))。米国特許第6,096,509号明細書は、一連の細胞型の各成員の均質な懸濁液が特定の濃度のテスト化合物と組合わされ、検出ゾーンを通って導かれ、テスト混合物中の細胞が検出ゾーン内を流れるにつれてリアルタイムで生きた細胞の細胞応答が測定される、流動する細胞懸濁液上のテスト化合物に対する細胞応答のリアルタイム測定のための器具および方法を提供している。該特許は、化合物ライブラリの自動化されたスクリーニングにおける該器具の使用を開示している。米国特許に開示された方法は、骨芽細胞(HOB、U2OS、SaOS−2その他)または非骨芽細胞(COS−7その他)といったような細胞を用いてテスト作用物質がRor分子の発現または活性を調節するか否かを決定するように修正可能である。
骨関連活性および/またはWntシグナル化を調節する遺伝子またはタンパク質を同定する方法:本発明は同様に、Rorの発現により調節され得ひいては骨関連活性に参与しうる遺伝子またはタンパク質の同定方法をも考慮している。例えば、かかる遺伝子またはタンパク質は、Ror分子を過剰発現し遺伝子発現プロフィールの変化をモニター観察することにより同定可能である。さらに、Rorダウンレギュレーションの(アンチセンスRNAまたはsiRNAを用いた)遺伝子発現プロフィールに対する効果を調査することができる。さらに、Ror発現により調節される遺伝子またはタンパク質は、Wntシグナル化に対する効果を有する可能性がある。
さらに高等な生体においては、細胞中の或る遺伝子の発現は、細胞が実施するべき生命現象例えば発達および分化、ホメオスタシス、さまざまな作用物質に対する応答、細胞サイクルの調節、加齢、アポトーシスなどを決定する。遺伝子発現の改変が、正常な細胞の発達の経路を変更する。従って、遺伝子発現を分析するための方法が基本的な分子生物学研究にとってきわめて重要である。示差的に発現される遺伝子の同定は、ヒトを含む動物における、さまざまな疾病または身体条件の状態の診断、予後診断および治療に対する鍵である。さらに、これらの方法は、例えば骨関連活性に結びつけられる、疾病または身体条件に対する素因と結びつけられた遺伝子発現レベルの変化に起因する示差的に発現された配列を同定するために使用することができる。
例えば、示差的遺伝子発現検定は、特定の細胞内で実施することができ、異なる細胞中の遺伝子の発現を比較し、あらゆる発現の相違を同定することができ、ここで相違の存在は比較されている細胞内で発現された遺伝子のクラスにおける差異を表わす。
本書で使用されているような「示差的遺伝子発現」という語は、遺伝子の時間的および/または組織発現パターンにおける量的ならびに質的な差異の両方を意味する。かくして、示差的に発現された遺伝子は、正常対異常骨形成状態または異常な体重状態でまたは対照対実験条件下で、定性的にその発現を活性化させるかまたは完全に不活性化させ得る。このような定性的に調節された遺伝子は、対照の対象または疾患をもつ対象のいずれかで検出可能となるが、その両方においてということはない。代替的には、かかる定性的に調節された遺伝子は対照または実験の対象のいずれかで検出可能となるが、その両方においてということはない。「検出可能な」という語は、発現パターン、例えば当業的にとって周知である示差的表示、RT−PCRおよび/またはノーザン分析という標準的技術を介して検出可能であるRNA発現パターンを意味する。
Rorにより調節されるかまたは調節される示差的に発現された遺伝子を同定するために、正常および異常な動物または細胞系列のさまざまなモデルを使用することができる。例えば骨粗鬆症、くる病、骨軟化症、骨減少症、骨硬化症、副甲状腺機能亢進症、大理石骨病、歯周炎、腎性骨形成異常症、パジェット病、骨への転移、高カルシウム血症、肥満症、拒食症、悪液質、並びに非震えおよび震え熱産生を含むが、これに制限されるわけではない疾病をもつ個体および正常な個体から誘導された細胞系列が、Ror発現と結びつけられる示差的遺伝子発現を研究するために利用される。
示差的に発現された遺伝子を同定するためには、全またはmRNAのいずれかのRNAを動物の組織からかまたは上述の細胞から単離することができる。RNA試料は、テスト対象の組織からおよび対照となる対象の対応する組織から得ることができる。mRNAの単離に対して選択しないあらゆるRNA単離技術をかかるRNA試料の精製のために利用することがたできる(例えばアウスベル、F.M.(Ausubel、F.M.)ら編、(1987−1993)、分子生物学の最新プロトコル(Current Protocols in Molecular Biology)、ジョン・ワイリー・アンド・サン社(John Wiley & Sons,Inc.)ニューヨーク(New York))。さらに、当業者にとって周知の技術を用いて多数の組織試料を容易にプロセッシングすることができる(例えば米国特許第4,843,155号明細書)。
示差的に発現された遺伝子により産生されたRNAを表わす収集されたRNA試料内の写しを、当該技術分野において周知の方法を利用することによって同定することができる。例えば、遺伝子チップ分析(米国特許第5795716号明細書、米国特許第5974164号明細書)、cDNAマイクロアレイ分析(例えばオノ K(Ono K)、タナカ T(Tanaka T)、ツノダ T(Tsunoda T)、キタハラ O(Kitahara O)、キハラ C(Kihara C)、オカモト A(Okamoto A)、オチアイア K(Ochiaia K)、タカギ T(Takagi T)、ナカムラ Y(Nakamura Y.)、癌研究(Cancer Res)60、5007−5011、(2000)参照)、サブトラクションハイブリダイゼーション(ヘドリック(Hedrick)ら、ネイチャー308、149−153、(1984);リー(Lee)ら、全米科学アカデミー会報、88、2825、(1984))または示差的表示(リアン(Liang)ら、サイエンス(Science)257、967−971(1992)、米国特許第5,262,311号明細書))を利用して、示差的に発現される遺伝子から誘導された核酸配列を同定することができる。
潜在的に示差的に発現された遺伝子配列がひとたび前述の技術を介して同定された時点で、かかる推定上示差的に発現される遺伝子の示差的発現を、TaqMan分析、ノーザン分析または定量的RT−PCRといったような当該技術分野において周知の技術を用いてさらに特徴づけすることができる。
宿主細胞の生成:当該技術分野において既知の技術を用いることによりさまざまな細胞機能におけるその役割を同定するべく異なる細胞系列内でRorヌクレオチド配列を過剰発現させることができる。例えば、Rorを骨芽細胞系列内で過剰発現させ、分化におけるその役割を次に標準的技術によりモニター観察することが可能である。さらに、作用物質が骨形成に対し効果をもつか否かを決定するために、一過性トランスフェクション検定において遺伝子誘発可能な系内でRorを使用することができる。
Rorヌクレオチド配列を含有するベクターで宿主細胞を工学処理することができる。宿主生体(組換え型宿主細胞)は任意の真核または原核細胞または多細胞生体であり得る。これらは、哺乳動物、酵母、真菌またはウイルスに由来するものであってよい。適切な宿主細胞には、哺乳動物細胞、例えば非骨芽細胞(サル腎臓COS−7、ヒト腎臓293、ハムスター卵巣CHO、ヒト肝臓HepG2、ヒト頸部HeLa、またはマウス線維芽細胞 NIH3T3)または骨芽細胞(一次骨芽細胞、ヒト骨芽細胞、例えばTE−85、U2OS、SaOS−2またはHOB、ラット骨芽細胞例えばUMR106またはROS17/2.8またはマウス骨芽細胞例えばMC3T3)が含まれるが、これに制限されるわけではない。さらに、大腸菌(E.coli)(DH5アルファ、BL21、DH10Bなど)、酵母細胞(シザサッカロミセス(Schizasaccharomyces)、酵母(Saccharomyces Cerevisice)、ピチアパストリ(Pichia Pastoris)、ピチアメタノリカ(Pichia Methanolica)など)および昆虫細胞(SF9、SF21、Spodoptera Frugiperda、S2シュナイダー細胞、イラクサギンウワバ(Trichoplusia niの卵)由来のハイファイブ(High Five)細胞)のさまざまな菌株を分子生物学的操作のために宿主細胞として使用することができる。
ベクターは、例えばプラスミド、コスミドまたはファージ或いは宿主細胞内で複製可能および生存可能であるその他のあらゆるベクターの形をしたクローニングベクターまたは発現ベクターであり得る。プロモータを活性化し、形質転換体を選択しまたは本発明のポリヌクレオチドを増幅するために適宜修正した従来の栄養培地の中で、工学処理済みの宿主細胞を培養することができる。pH、温度などといったような培養条件は、当業者にとって既知の通りのポリヌクレオチドの発現のために選択された宿主細胞での使用に適したものである。
プラスミドは一般に、ここでは、当業者は精通している標準命名法に従って、小文字の「p」とその前および/またはその後にある大文字および/または番号により呼称される。本書のプラスミドは、市販されているか、無制限ベースで公然と入手可能であるか、または周知の公開済みの手順を日常的に応用することにより、利用可能なプラスミドから構築可能である。さらに、本発明に従って使用できる数多くのプラスミドおよびその他のクローニングおよび発現ベクターは周知であり、当業者には容易に入手可能である。その上、当業者は、本発明で使用するのに適したその他のプラスミドをいくらでも構築することができる。本発明においては、このようなプラスミドならびにその他のベクターの特性、構成および使用は、当該開示から当業者には容易に明らかになることだろう。
適切なDNA配列は、当該技術分野において既知のさまざまな手順によりベクター内に挿入可能である。
発現ベクター内のDNA配列は、mRNA合成を導くべく適切な発現制御要素に操作可能な形で連結され得る。発現制御要素は、当該技術分野において既知であり、誘発可能なプロモータ、構成性プロモータ、分泌シグナルおよびその他の調節要素を含むが、これに制限されるわけではない。好ましくは、誘発可能なプロモータは、宿主細胞の媒質の中の栄養素に対し応答性をもつといったように、容易に制御される。適切な非未変性哺乳動物プロモータは、サイトメガロウイルス(CMV)、ラウス肉腫ウイルス(RSV)、シミアン・ウイルス(SV40、フィアーズ(Fiers)ら、ネイチャー、273、113(1978))からの早期および晩期プロモータまたは、モロニーマウス白血病ウイルス、マウス腫瘍ウイルス、トリ肉腫ウイルス、アデノウイルスII、ウシ乳頭腫ウイルスまたはポリオーマ由来のプロモータを含む可能性がある。好ましい骨関連プロモータは、CMVβアクチンまたはI型コラーゲンプロモータを含む。プロモータに加えて、タンパク質をコードするDNA配列がこの発現構成体を含有するベクターによって形質転換された宿主細胞内のRNA中に転写されるような形で、リボソーム結合部位(細菌発現のため)、適切な遺伝子制御配列または調節配列の制御下に遺伝子を置くことができる。一部のケースでは、その後の分泌シグナルの分割を伴って、宿主細胞からのポリペプチドの分泌をひき起こす配列を付加することが望ましいかもしれない。発現ベクターは同様に、翻訳開始のためのリボソーム結合部位、転写ターミネータ、および発現を増幅するための適切な配列をも含む可能性がある。発現ベクターは同様に、真核細胞についてのネオマイシン耐性または大腸菌についてのアンピシリン耐性といったような形質転換された宿主細胞の選択のための特異的表現型を提供するべく、1つ以上の選択性マーカー遺伝子も含んでいてよい。さらに、該構成体は、遺伝子の多重コピーを作ることができるように、増幅可能な遺伝子(他DHFR)に接合可能である。適切なエンハンサおよびその他の発現制御配列については、エンハンサおよび真核性遺伝子発現(Enhancers and Eukaryotic Gene Expression)(コールド・スプリング・ハーバー・プレス、ニューヨーク州コールド・スプリング・ハーバー)、(1983))も参照のこと。
酵母の発現において使用するのに適したベクターおよびプロモータは、欧州特許出願第73,675A号明細書に記述されている。哺乳動物の発現に適したベクターの例としてはpCMV SPORT6、pCDNA3.1D/V5−His−TOPO、およびpCDNA3.1/CT−GFP−TOPOが含まれるが、これに制限されるわけではない。
Ror発現を阻害する方法:本発明は、アンチセンス核酸、siRNAおよびリボザイムならびに抗体、ペプチドおよび小分子の使用を含むが、これに制限されるわけではないRorの発現および/または活性を阻害するための方法を提供している。アンチセンスRNAおよびDNA分子は、ターゲティングされたmRNAに対しハイブリッド形成しタンパク質翻訳を妨げることによって、mRNAの翻訳を直接遮断するように作用する。アンチセンスアプローチには、標的遺伝子mRNAに相補的であるオリゴヌクレオチドの設計が関与している。アンチセンスオリゴヌクレオチドは、相補的標的遺伝子mRNA写しに結合して、翻訳を妨げることになる。
Ror相互作用タンパク質の同定方法:Ror相互作用タンパク質は、当業者にとって既知の方法により同定可能である。例えば、免疫沈降法とそれに続く質量分光分析(ヒル(Hill)ら、生物化学ジャーナル(J.Biol.Chem)、277、40735−40741(2002))ならびに哺乳動物および酵母2−ハイブリッド系を、タンパク質−タンパク質相互作用の研究のために使用することができる。例えば米国特許第6,251,602号明細書、チェン(Chien)ら、全米科学アカデミー会報、88、9578−82(1991);フィールズ(Fields)ら、遺伝学動向(Trends Genetics)10、286−92(1994);ハーパー(Harper)ら、セル、75、805−16(1993);バイテック(Vojtek)ら、セル、74、205−14(1993);ルバン(Luban)ら、セル、73、1067−78(1993);リー(Li)ら、FASEB J.7、957−63(1993);ザング(Zang)ら、ネイチャー(Nature)364、308−13(1993);ゴレミス(Golemis)ら、分子細胞生物学(Mol.Cell.Biol.)、12、3006−14(1992);サトウ(Sato)ら、全米科学アカデミー会報、91、9238−42(1994);コフラン(Coghlan)ら、サイエンス(Science)、267:108−111、(1995);カルパナ(Kalpana)ら、サイエンス(Science)、266、2002−6(1994);ヘルプス(Helps)ら、FEBS Lett.、340、93−8(1994);ユェン(Yeung)ら、遺伝子と開発(Genes & Devel.)、8、2087−9、(1994);デュルフィー(Durfee)ら、遺伝子と開発(Genes & Devel.)、7、555−569、(1993);パエットカウ(Paetkau)ら、遺伝子と開発(Genes & Devel.)、8、2035−45、(1994);スパールガレン(Spaargaren)ら、全米科学アカデミー会報、91、12609−13、(1994);およびイェ(Ye)ら、全米科学アカデミー会報、91、12629−33(1994)を参照のこと。
酵母ファージミド(例えば、ハーパー(Harper)、細胞相互作用および開発:実践的アプローチ(Cellular Interactions and Development:A Practical Approach)、153−179(1993);エレッジ(Elledge)ら、全米科学アカデミー会報、88、1731−5(1991)を参照のこと)またはプラスミド(バーテル(Bartel)、1993およびバーテル(Bartel)、セル、14、920−4(1993));フィンレイ(Finley)ら、全米科学アカデミー会報、91、12980−4(1994))のcDNAライブラリをスクリーニングして相互作用するタンパク質をクローニングし、ならびに既知のタンパク質対を研究するために、該系の変形が利用可能である。
例えばGAL.fwdarw.LacZ、GAL.fwdarw.HIS3、またはGAL.fwdarw.URA3(バーテル(Bartel)、細胞相互作用および開発:実践的アプローチ中、153−179(1993);ハーパー(Harper)ら、セル、75、805−16、(1993);フィールズ(Fields)ら、遺伝学動向、10、286−92(1994))といったようなさまざまなレポータ遺伝子カセットの組込まれたコピーを伴う酵母菌株を、各々異なる融合タンパク質を発現する2つのプラスミドと同時形質転換させることができる。1つのプラスミドは、タンパク質「X」と例えばGAL4酵母転写活性化体のDNA結合ドメインの間の融合をコードし(ブレント(Brent)ら、セル、43、729−36(1985);マー(Ma)ら、セル、48、847−53(1987);キーガン(Keegan)ら、サイエンス(Science)、231、699−704(1986))、一方もう1つのプラスミドは、タンパク質「Y」とGAL4のRNAポリメラーゼ活性化ドメインの間の融合をコードする(キーガン(Keegan)ら、1986)。プラスミドは、GAL4結合部位を含有する調節領域をもつlacZといったようなレポータ遺伝子を含む酵母の菌株へと形質転換され得る。タンパク質XおよびYが相互作用する場合、これらは、転写を活性化するのに充分近位に2つのGAL4成分を持ってくることによって、機能的GAL4転写活性化体タンパク質を再構成する。転写活性化は、β−ガラクトシダーゼの発現または例えばURA3(ウラシル選択)またはHIS3(ヒスチジン選択)といった転写産物についての栄養素要求性選択を可能にする特異的栄養素が欠如した最小培地上での形質転換体の成長のいずれかを測定することによって評定される。例えば例えば、バーテル(Bartel)、(1993);デュルフィー(Durfee)ら、遺伝子および開発(Genes & Devel.)、7、555−569(1993);フィールズ(Fields)ら、遺伝学動向、10、286−292(1994);および米国特許第5,283,173号明細書を参照のこと。
2−ハイブリッド分析またはスクリーニングのための付加的な方法は、当業者には明らかであると思われる。例えばフィンレー(Finley)ら、「遺伝子調節ネットワークの2ハイブリッド分析(Two−Hybrid Analysis of Genetic Regulatory Networks)」、酵母2ハイブリッドシステム(The Yeast Two−Hybrid System)中(ポール L.バーテル(Paul L.Bartel)ら編、オクッスフォード(Oxford)、(1997));メイジャ・ヤング(Meijia Yang)、「2ハイブリッド検定における組合せペプチドライブライリの使用(Use of a Combinatorial Peptide Library in the Two−Hybrid Assay)」、酵母2ハイブリッドシステム(The Yeast Two−Hybrid System)中(ポール L.バーテル(Paul L.Bartel)ら編、オクッスフォード、(1997));ギエズ(Gietz)ら、「問題のタンパク質と相互作用するタンパク質の同定:酵母2ハイブリッドシステムの応用(Identification of proteins that interact with a protein of interest: Applications of the yeast two−hybrid system)」、分子および細胞化学(Mol.& Cell.Biochem.)、172、67−9(1997);K.H.ヤング(K.H.Young)、「酵母2ハイブリッド:ごく短時間での非常に多くの相互作用(Yeast Two−Hybrid:So Many Interactions,(in) so Little Time)」、生殖の生物学(Biol.Reprod.)、58、302−311、(1998);R.ブレント(R. Brent)ら、「2ハイブリッド法で遺伝子と対立遺伝子の機能を理解する(Understanding Gene and Allele Function with Two−Hybrid Methods)」、遺伝学年報(Annu.Rev.Genet.)、31、663−704(1997)を参照のこと。
Rorの全長または異なる部分は、酵母2−ハイブリッドベクター内にクローニングされ得る。これらのベクターには、pAS、pAS2−1、pGBT9、pGBKT7が含まれるが、これに制限されるわけではない。既知の結合ドメイン(例えばGLA4またはLexA(セレブリスキー I.G.(Serebriiskii I.G.)ら、バイオ技術(BioTechniques)、30、634−655、(2001))を伴う融合タンパク質として発現されているクローニングされたRorは、既知のまたは未知のタンパク質のための餌を表わすと思われる。活性化ドメイン(例えばGAL4またはVP16)(セレブリスキー I.G.(Serebriiskii I.G.)ら、バイオ技術(BioTechniques)、30、634−655、(2001))ベクター内にクローニングされたcDNAは、異なる骨芽細胞系列、骨、脳およびRorが発現されるその他の組織から作られたcDNAライブラリに由来するものであり得る。
相互作用するパートナーがひとたび同定されたならば、全長cDNAは単離されクローニングされ得る。さらに、哺乳動物の2−ハイブリッド系の中で相互作用を確認することができる。同様に、Ror内部の結合ドメインをより明確に定義することになる実験を実施することもできる。
Rorの相互作用するパートナーが骨芽細胞内で発現された新規遺伝子である場合、骨形成および/または再吸収においてそのタンパク質を位置づけするべく付加的な実験的アプローチに着手することができる。しかしながら、Ror相互作用パートナーが既知の生物学的機能をもつ遺伝子である場合、それは、骨形成および/または再吸収の調節におけるRor相互作用パートナーの役割を標示することができる。
診断的利用分野:本発明のRor分子は同様に、骨関連障害または疾病状態のマーカーとして、疾病状態の前駆体用のマーカーとして、疾病状態に対する素因についてのマーカーとして、薬物活性のマーカーとしてまたは対象の薬理ゲノムプロフィールのマーカーとしても有用である。本書に記述する方法を用いて、本発明のRor分子の存在、不在および/または数量を検出でき、インビボで1つ以上の生物学的状態と相関させることができる。例えば、本発明のRor分子は、1つ以上の骨の障害または疾病状態についてまたは疾病状態まで導く身体条件について、生化学マーカーとして役立つことができる。本書で使用されているように、生化学マーカーは疾病または障害の不在または存在と、または疾病または障害の進行と(例えば減少した骨ミネラル密度(BMD)と)相関関係をもつ。従って、これらのマーカーは、特定の治療過程が疾病状態または障害を少なくする上で有効であるか否かを標示するために役立ち得る。
本発明は、正常な対象由来の匹敵する試料中のRor分子の発現および/または活性のレベルと対象におけるRor分子の発現および/または活性のレベルを比較する工程を含む、患者の体内の骨関連障害を診断する方法を提供する。試料は、患者の組織、細胞または体液試料であり得る。
さらに、本発明は、1つの作用物質の投与の前後にこれらの細胞または組織質中のRor分子の発現および/または活性のレベルを測定することにより正常な状態または疾病状態で骨修飾作用物質に対する応答性をもつ細胞および組織を同定するためのRor分子の使用を提案している。Ror分子の発現および/または活性における変化は、該作用物質に対する細胞または組織の反応性を反映すると思われる。
例えば、Ror分子は、既存の骨粗鬆症を治療するにあたって、または閉経前の女性またはその他の高リスクの個体において骨折および骨粗鬆症の危険性を低減させるための予防療法の中で薬剤として有用であり得る化合物の設計および/または同定を容易にするための標的として使用可能である。
これらの化合物は、骨のさらなる劣化を防止し、かつ/または新しい骨形成を誘発するため更年期の女性における骨粗鬆症の治療においても使用可能である。それは、単一療法としておよび/または骨粗鬆を阻害する既存の療法と組合せた形でまたはエストロゲンに対する付加的な療法として与えることができる。
さらに、本発明は、ヒトRor2が増殖中の骨芽細胞前細胞においてピークに達することの証拠を提供している。従って、Ror2は、培養中またはインサイチュのこのタイプの細胞のためのマーカーとして使用可能である。
薬物の効能を評価するためのRor分子の使用:本発明は、(i)作用物質の投与に先立ち対象から投与前試料を得る工程;(ii)投与前試料においてRor分子の発現または活性レベルを検出する工程;(iii)対象から1つ以上の投与後試料を得る工程;(iv)投与後試料内のRor分子の発現または活性のレベルを検出する工程;(v)投与前および投与後試料において、Ror分子の発現または活性のレベルを比較する工程;および(vi)それに応じて対象に対する作用物質の投与を改変させる工程を含む、作用物質(例えばアゴニスト、アンタゴニスト、ペプチド類似物、タンパク質、ペプチド、核酸、小分子、または本書で記述されているスクリーニング検定によって同定されるその他の薬物候補)での対象の治療の有効性をモニター観察するための方法を提供する。例えば、Rorの発現または活性をさらに強く調節するため、すなわち作用物質の有効性を増大させるために、作用物質の投与の増大が望まれる可能性がある。このような実施形態に従うと、観察可能な表現型応答が存在しない場合でも、1つの作用物質の有効性の指標としてRor分子の発現または活性を使用することができる。
本発明はさらに、薬物の効能を評価し、骨関連障害の治療のための臨床試験に関与する患者の推移をモニター観察するための方法を提供する。Ror分子の発現または活性に対する作用物質(例えば薬物)の影響をモニター観察する作業は、基本的な薬物スクリーニングにおいてのみならず、臨床試験内またはその他のあらゆる使用期間中に適用することができる。例えば、Ror遺伝子またはポリペプチド発現レベルを増大させるための、本書に記述されている通りのスクリーニング検定により決定される作用物質の有効性は、Ror遺伝子またはポリペプチドの発現レベルの低下を示す対象の臨床試験において監視可能である。代替的には、Ror遺伝子またはポリペプチドの発現レベルを低下させるためのスクリーニング検定によって決定される作用物質の有効性は、増大したRor遺伝子またはポリペプチドの発現レベルを示す対象の臨床試験において監視可能である。かかる臨床試験においては、Ror遺伝子またはポリペプチドおよび例えばRor関連性障害に関与してきたその他の遺伝子およびポリペプチドの発現および活性を、特定の細胞例えば骨細胞内の表現型の「読出し情報」またはマーカーとして使用することができる。さらに、Ror遺伝子またはポリペプチドの発現を、骨関連障害の状態に対する特定の薬物または作用物質の効果の読出し情報として使用することが可能である。
例えば、制限するものではなく、(例えば本書に記述されている通りのスクリーニング検定で同定される)Ror分子の発現または活性を調節する作用物質(例えば化合物、薬物または小分子)での処置により細胞内で調節されている遺伝子を同定することができる。かくして、例えば臨床試験においてRor関連性障害(例えば骨関連)に対する作用物質の効果を研究するために、細胞を単離し、RNAを調製し遺伝子アレイ分析(例えば遺伝子チップ分析)に付すことができる。未処置状態と処置済み状態の間で発現が著しく変化した遺伝子は、作用物質に対する細胞の生理学応答を表わすマーカーとして役立つことができる。従ってこの応答状態は、該作用物質での該個体の処置の前およびその最中のさまざまな時点で決定可能である。
トランスジュニック動物:「トランスジュニック動物」の中の「動物」という語は、ヒトを除く全ての脊椎動物を内含する。これには同様に、胚形成期および胎児期を含む発達の全ての期における個々の動物をも内含する。「トランスジェニック動物」というのは、組換え型ウイルスでのマイクロインジェクションまたは感染などによる細胞以下のレベルでの計画的な遺伝子操作によって直接的または間接的に受取った遺伝子情報を担持する1つ以上の細胞を含有する動物である。この導入されたDNA分子は、染色体内に一体化され得、そうでなければ、染色体外で複製するDNAであり得る。「トランス遺伝子」という語は、人間の介入により動物の生殖細胞系列内に導入されたDNA配列を意味する。「生殖細胞系列トランスジェニック動物」という語は、生殖細胞系列の細胞内に遺伝子情報が導入され、かくして該情報を子孫に移入する能力を付与するトランスジェニック動物を意味する。実際、このような子孫がその情報の一部または全てを有する場合には、それらも同様にトランスジェニック動物である。
情報は、レシピエントが属する動物の種にとって外来性のものであっても、特定の個々のレシピエントのみにとって外来性のものであっても、またはレシピエントがすでに所有している遺伝子情報であってもよい。最後のケースでは、導入された遺伝子は、未変性内因性遺伝子と比較して異なる形で発現され得る。
遺伝子は、ゲノム供給源からそれらを単離することによって、単離されたRNA鋳型からのcDNAの調製によって、直接合成することによって、またはそのいくつかの組合せによって得ることができる。
発現されるためには、遺伝子は調節領域に操作可能な形で連結される。プロモータといったような調節領域を用いて、1つの遺伝子の発現を増大、減少、調節するかまたは、発達の或る期または或る組織に指定することができる。該プロモータは、天然に発生するプロモータである必要はない。
細胞内へのDNAの導入を可能にする方法は、一般に入手可能であり、当該技術分野において周知である。トランス遺伝子を導入するさまざまな方法が使用可能である。一般に、接合子はマイクロインジェクションのための最高の標的である。例えばマウスの体内で、雄の前核は直径約20μmのサイズに達し、このことは1〜2plのDNA溶液の再現可能な注入を可能にする。遺伝子トランスファの標的としての接合子の使用には大きな利点がある。大部分のケースで、注入されたDNAは最初の分割の前に宿主遺伝子内に取込まれることになる(ブリンスター(Brinster)ら、1985)。従って、ヒト以外のトランスジェニック動物のほぼ全ての細胞は、取込まれたトランス遺伝子を担持することになる。一般に、生殖細胞の50%がトランス遺伝子を内部に有することから、このことは同様に、創始細胞の子孫へのトランス遺伝子の効率の良い伝達を結果としてもたらすことになる。接合子のマイクロインジェクションは、本発明を実践する上でトランス遺伝子を取入れるための好ましい方法である。
ヒト以外の動物内にトランス遺伝子を導入するために、レトロウイルス感染を使用することもできる。発達中のヒト以外の胚を胚盤胞期までインビトロで培養することができる。この時期の間、割球がレトロウイルス感染の標的であり得る。割球の効率の良い感染は、透明帯を除去するための酵素処置によって得られる。トランス遺伝子を導入するために用いられるウイルスベクター系は、標準的に、トランス遺伝子を担持する複製不良のレトロウイルスである。トランスフェクションは、ウイルス産生細胞の単層上で割球を培養することにより容易かつ効率良く得られる(ファン・デル・パッテン(Van der Putten)、上掲書;スチュワート(Stewart)ら、1987))。代替的には、さらに後期で感染を実施することができる。ウイルスまたはウイルス産生細胞を胞胚腔内に注入することができる。創始動物の大部分は、ヒト以外のトランスジェニックを形成した細胞のサブセットの中でのみ取込みが起こることから、トランス遺伝子に対しモザイク式となる。その上、創始動物は、ゲノム中のさまざまな位置でトランス遺伝子のレトロウイルス挿入を含んでいる可能性がある。これらは一般に子孫の中で分離する。さらに、妊娠中期の胚の子宮内レトロウイルス感染により、低い効率ではあるものの、生殖細胞系列内にトランス遺伝子を導入することも可能である(ジョナー(Jahner)ら、(1982)上掲書)。
トランス遺伝子導入のための第3のタイプの標的細胞は、胎生期基幹(ES)である。ES細胞は、インビトロで培養された移植前胚芽から得られる((エバンズ、M.J.(Evans、M.J.)ら、1981;ブラッドレー、A.(Bradley、A.)ら、1984;ゴスラー(Gossler)ら、1986;およびロバートソン(Robertson)ら、1986)。トランス遺伝子は、DNAトランスフェクションによってかまたはレトロウイルス媒介形質導入によってES細胞内に効率良く導入され得る。結果として得られた形質転換済みES細胞をその後、ヒト以外の動物からの胚盤胞と組合せることができる。ES細胞は胚芽をコロニー化し、結果としてのキメラ動物の生殖細胞系列に寄与する(再考には、イーニシュ(Jaenisch)、R.、1988を参照)。
トランスジェニック動物を作り上げるための一般的な方法は当該技術分野において既知であり、例えばトランスジェニック動物科学の戦略(Strategies in Transgenic Animal Science)(グレン M.モナスタスキー(Glenn M.Monastersky)およびジェームス M.ロブル(James M.Robl)編、ASMプレス(ASM Press);ワシントンDC(Washington,DC)、1995);トランスジェニック動物技術:実験室ハンドブック(Transgenic Animal Technology:A laboratory Handbook)(カール A.ピンカート(Carl A.Pinkert)編、アカデミックプレス(1994);トランスジェニック動物(Tansgenic Animals)(ルイ・マリー・フドビン(Louis Marie Houdebine)編、ハーウッドアカデミープレス(Harwood Academic Press)、1997);トランスジェニックマウス中のサイトカインの過剰発現およびノックアウト(Overexpression and Knockout of Cytokines in Transgenic Mice)(チャイム O.ジャコブ(Chaim O.Jacob)編、アカデミックプレス、1994);マイクロンジェクションと遺伝子導入:戦略とプロトコル(Microinjection and Transgenesis:Strategies and Protocols)(スプリンガー・ラブ・マニュアル(Springer Lab Manual)(アンヘル・シド・アレギ(Angel Cid−Arregui)およびアレハンドロ・ガルシア・カランカ(Alejandro Garcia−Carranca)編、スプリンガー・ベルラグ(Springer Verlag 1998);および、マウス胚の操作:実験室マニュアル(Manipulating the Mouse Embryo:A Laboratory Manual)(ブリジット・ホーガン(Brigid Hogan)ら編、コールドスプリング・ハーバー・ラボラトリー・プレス、1994)の中で記述されている。導入されたDNAならびにその発現の存在を評価するための方法は、同様に当該技術分野において容易に利用可能であり、周知である。かかる方法には、外因性DNAまたはPAGEを検出するためのDNAハイブリダイゼーション(サザンハイブリダイゼーション)またはPCR、およびタンパク質を検出するためのウエスタンブロットが含まれるが、これに制限されるわけではない。
Rorが骨関連障害において1つの役割を果たすか否かを見極めるために、全長遺伝子またはその任意のフラグメントまたは変種または変異体を全ての組織内または骨の中のみで過剰発現するトランスジェニックマウスが作り出される。骨ならびに骨以外の組織の中のRorの広範な過剰発現を立証するためには、汎存プロモータ(例えばCMVβ−アクチン)が使用される。Rorの発現は、ミフェプリストン依存性遺伝子誘発型系を用いて条件付きにすることができる。ラットcDNAの骨特異的過剰発現は、ラット3.6kpI型コラーゲンまたはラット1.7kbオステオカルシンプロモータといったようなプロモータによって駆動される。ラット3.6kbI型コラーゲンプロモータは、発達中の骨の中で早期発現を提供するために有用であり、一方、ラット1.7kbオステオカルシンプロモータはより骨に制限された発現パターンを付与することができる。同じ構成体がトランスジェニックラットを生成するためにも使用される。Rorの条件付き発現のためには、オステオカルシンプロモータ(カパレリ、F.B.(Capparelli、F.B.)、内分泌学、138、2109−2116、(1997))が遺伝子誘発型系を駆動し、Gal4最小プロモータはRorを駆動する。独立したトランスジェニック系列が交配され、2種トランスジェニックマウスがミフェプリストンで処置されて、需要に応じてRor発現を調節する。トランスジェニック動物の表現型検査には、インビボおよびエクスビボの検定の組合せが関与する。増加したBMDは、Ror分子が実際に骨関連障害のための潜在的な新しい標的であるという概念の証拠を提供する。さらに、これらのトランスジェニック動物は、Rorの過剰発現が、これらの立証済みの骨減少症モデルにおいてラットおよびマウスの体内の卵巣切除誘発型の骨減少症を救済できるか否かを見極めるために使用される(Y.P.カロード(Y.P.Kharode)ら、骨代謝研究ジャーナル、14(1)、S523、(1999)、Y.P.カロードら、骨代謝研究ジャーナル、16(1)、S540、(2001))。
トランスジェニック動物は、扁平骨(頭蓋骨、肩甲骨、下アゴ、および腸骨)および長骨または軸骨格(腔骨、大腿骨および上腕骨)などを含む骨格のさまざまな骨の骨表現型の分析のために、当該技術分野において既知のさまざまな組織形態計測パラメータと共に使用することができる。
さらに、Rorトランスジェニック動物は、卵巣切除誘発型骨減少症、糖質コルチコイド誘発型骨減少症およびさまざまな廃用性モデルなどの当該技術分野において既知のものを含むさまざまな骨粗鬆モデルにおける骨粗鬆からの防御について試験することができる。さまざまな骨同化剤(例えば同定済みの小分子)の組合せの有効性を調査し決定して、さらに骨表現型を同化的(相乗作用的、付加的に)または異化的に修飾することが可能である。
その上、集合的に骨形成に影響を及ぼす骨始原細胞および骨芽細胞の活性、増殖速度およびアポトーシス速度におけるRorの役割を研究するためにRorトランスジェニック動物を使用することができる。
Rorトランスジェニック動物は、骨関連障害の治療のために有効な作用物質を同定するために使用可能である。本発明のトランスジェニック動物に対し作用物質を投与することができる。治療を受けた動物の体内での骨形成およびその他の骨関連活性の改変を測定し、未治療の対照動物の体内の骨形成およびその他の骨関連活性と比較することができる。
条件付きノックアウト動物:
代替的には、その遺伝子をコードする内因性遺伝子と動物の胚細胞内に導入された同じポリペプチドをコードする改変されたゲノムDNAの間の相同的組換えの結果として、スクリーン内で同定された遺伝子をコードする不良のまたは改変された遺伝子をもつ「ノックアウト」動物を構築することができる。例えば、立証された技術に従って、そのポリペプチドをコードするゲノムDNAをクローニングするために、同定された遺伝子をコードするcDNAを使用することができる。同定された遺伝子をコードするゲノムDNAの一部分を欠失させるかまたは、組込みをモニター観察するのに使用可能な選択性マーカーをコードする遺伝子といったようなもう1つの遺伝子と交換することが可能である。標準的には、数キロベースの未改変のフランキングDNA(5’および3’末端の両方におけるもの)が、ベクター内に含まれる(例えば相同組換えベクターの記述については、例えば、トーマス(Thomas)およびカペッキ(Capecchi)、セル、51(3)、503−12、(1987)参照のこと)。ベクターは、胚基幹細胞系列内に(例えば電気穿孔法によって)導入され、内部において導入されたDNAが内因性DNAと相同的に組換えられている細胞が選択される(例えばリー(Li)ら、セル、69(6)、915−26、(1992)を参照のこと)。選択された細胞は次に動物(例えばマウスまたはラット)の胚盤胞内に注入されて、凝集キメラを形成する(例えばブラッドレー(Bradley)、奇形癌と胚幹細胞:実践的アプローチ(Teratocarcinomas and Embryonic Stem Cells:A Practical Approach)中、E.J.ロバートソン(E.J.Robertson)編、IRL、オックスフォード、113−1521、(1987)を参照のこと)。キメラ胚をその後適切な偽妊娠した雌の里親動物内に移植し、胚を出産予定日まで至らせて「ノックアウト」動物を作り出すことができる。その生殖細胞中に相同的に組換えられたDNAを宿した後代を、標準的な技術により同定し、その全ての細胞が相同的に組換えられたDNAを含む動物を飼育するのに用いることができる。ノックアウト動物は例えば、或る種の病的状態に対して防護するその能力および同定された遺伝子の不在に起因する病的状態の発生によって特徴づけすることができる。
ノックアウト動物は、研究対象である特定の生理障害に関する生化学および病理的パラメータに影響を及ぼしうる薬物をスクリーニングするために使用可能である。細胞系列は、同じく、生理障害の細胞モデルとしてのまたは薬物スクリーニングにおける使用のために、これらの動物から誘導することが可能である。例えば、Ror1またはRo2配列内に突然変異を導入しかくして、もはや機能的なRor1またはRor2遺伝子を発現しない動物を生成することによって、ノックアウト動物を発生させることができる。このようなノックアウト動物は、例えば骨関連活性またはその他の関連する生理的機能におけるRor1またはRor2の役割を研究するために有用である。
本発明は、内部においてRor遺伝子が条件付きで不活性化されている動物を提供する。条件付き不活性化というのは、選択された組織(すなわち骨)の中でかつ/または発達中の特定の時点での1つの遺伝子の不活性化を意味する。条件付きで不活性化された遺伝子は、その他全ての組織内で、不活性に先立つ全ての時点で正常な内因性レベルで発現される。1つの実施形態においては、本発明は、条件付きRorノックアウトマウスを発達させるための遺伝子情報を提供する。
特異的に骨の中でCreリコンビナーゼの発現に左右されうる条件付きマウスノックアウトが生み出される。骨の中のターゲティングされた対立遺伝子の欠失が、特異的に骨の中でCreを発現するトランスジェニックマウスと遺伝子ターゲティングされた動物を交配することによって行なわれる。例えば、ラット3.6kbI型コラーゲンプロモータまたはラット1.7kbオステオカルシンプロモータのいずれかによってCreが駆動されるトランスジェニックマウスが作り出される。
予想される表現型は、骨形成が改変されているものである。ターゲティングされた動物の表現型検査には、インビボおよびエクスビボ検定の組合せが関与する。正常な骨を発達させるかまたは骨を作り直すことができない場合、通常骨の発達におけるRorの役割および骨関連障害のための新規標的としてのその用途が提供される。
条件付きノックアウト動物は、扁平骨(頭蓋骨、肩甲骨、下アゴ、および腸骨)および長骨または軸方向骨格(腔骨、大腿骨および上腕骨)などを含む骨格のさまざまな骨の骨表現型を分析するために、当該技術分野において既知のさまざまな組織形態計測パラメータと共に使用することができる。
さらに、Rorの不在下での骨始原細胞および骨芽細胞の活性、増殖速度およびアポトーシス速度を査定するために、条件付きRorノックアウト動物を使用することができる。
本発明は、分子および細胞生物学の分野で周知の方法および技術を参照により援用している。これらの技術には以下の刊行物の中で記述されている技術が含まれるが、これに制限されるわけではない。オールド、R.W.(Old、R.W.)およびS.B.プリムローズ(S.B.Primrose)、遺伝子操作の原理:遺伝子工学入門(Principles of Gene Manipulation:An Introduction To Genetic Engineering)(第3版、1985)、ブラックウェル・サイエンティフィック・パブリケーションズ(Blackwell Scientific Publications)、ボストン(Boston)、微生物学研究(Studies in Microbiology);第2巻:409頁、(ISBN 0−632−01318−4)、サムブルック、J.ら編、分子クローニング:実験室マニュアル(第2版、1989)コールドスプリング・ハーバー・ラボラトリー・プレス、ニューヨーク、第1−3巻、(ISBN 0−87969−309−6)、ミラー、J.H.(Miller、J.H.)およびM.P.カロス(M.P.Calos)編、哺乳類細胞用の遺伝子移転ベクター(Gene Transfer Vectors For Mammalian Cells)(1987)、コールドスプリング・ハーバー・ラボラトリー・プレス、ニューヨーク、169頁、(ISBN 0−87969−198−0)。
(実施例)
本発明は、記述のないかぎり、全ての部分および百分率が重量百分率であり、度数は摂氏度である、以下の実施例の中でさらに定義づけされる。これらの実施例は、本発明の好ましい実施形態を表わすものの例示を目的として示されているにすぎないということを理解すべきである。以上の論述、実施形態およびこれらの実施例から、当業者は、本発明の新規の教示から著しく逸脱することなく又、その精神および範囲から逸脱することなく、例示的な実施例の中で数多くの修正を加えることが可能であることを容易に認識することだろう。さらに、本発明をさまざまな用途および条件に適合させるため、本発明に対するさまざまな変更およびその修正を行なうことが可能である。従って、かかる修正の全てが、特許請求の範囲で定義されている通りの本発明の範囲内に内含されるように意図されている。
本明細書にて言及されている特許、出願、試験方法および刊行物は、出典を明示することでその内容を本明細書の一部とする。
一般的方法
材料および組織培養
指摘がある場合を除き、組織培養試薬は、インビトロジェン株式会社(Invitrogen Corporation)(カリフォルニア州カールスバッド(Carlsbad、CA))から購入され、その他の試薬および化学物質はシグマケミカル社(Sigma Chemical Co.)(ミズーリ州セントルイス(St.Louis、MO)またはインビトロジェンのいずれかから購入された。抗−フラグM2マウスモノクローナル抗体、抗−V5ウサギポリクローナル抗体および抗−フラグM2親和性アガロースは、シグマ(Sigma)から得た;抗−HAタグおよび抗β−カテニンウサギポリクローナル抗体および抗−ホスホチロジンマウスモノクローナル抗体、クローン4G10は、アップステート社細胞シグナル化ソリューション(Upstate Cell Signaling Solutions)(バージニア州シャルロッツビル(Charlottesville、VA))製のものであった;抗−hisマウスモノクローナル抗体はBD バイオサイエンスクローンテック(BD Biosciences Clontech)(カリフォルニア州パロアルト(Palo Alto、CA))製のものであった;抗−β−アクチンマウスモノクローナル抗体はシグマ製であった;ホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)−接合二次抗体は、サンタクルスバイオテクノロジー社(Santa Cruz Biotechnology,Inc.)。、カリフォルニア州サンタクルス(Santa Cruz、CA)またはアマーシャム・バイオサイエンス(Amersham Biosciences)(英国バッキンガムシャー(Buckinghamshire、England))から購入した。
HOB細胞系列を、10%の熱不活性化したウシ胎児血清、1%のペニシリン−ストレプトマイシンおよび2mMのglutaMAX−1を含むDMEM/F−12倍地を用いて、5%CO2/95%加湿空気インキュベータ内で34%で維持した。U2OSヒト骨肉種細胞を、10%の熱不活性化したウシ胎児血清、1%のペニシリン−ストレプトマイシンおよび2mMのglutaMAX−1を含む、マッコイ(McCoy)の5A修正培地中で37℃に保った。COS−7細胞を、10%の熱不活性化したウシ胎児血清、1%のペニシリン−ストレプトマイシンおよび2mMのGlutaMAX−1を含有するDMEM中で37℃で維持した。
プラスミド
pUSEamp(Wnt−1−HA)中のHAエピト−プでタグ付けしたヒトWnt−1、pUSEamp(Wnt−3−HA)中のHAエピトープでタグ付けしたヒトWnt−3およびpUSEamp(+)をアプステートバイオテクノロジー(Upstate Biotechnology)から得た。pcDNA3.1(+)はインビトロジュン製のものであった。CMVプロモータ駆動のβ−ガラクトシダーゼレポータ遺伝子(pCMVB)はBDバイオサイエンスクローンテック製のものであった。ヒトSFRP−1は国際公開第01/19855号パンフレット中に記述された。
最小チミジンキナーゼ(TK)プロモータに対し5’で融合されたT細胞因子(TCF)DNA結合部位の16のコピー(16×TCF−luc)を含有するルシフェラーゼレポータ遺伝子を、以下の通りに構築した。当初、TCR−アルファエンハンサ、ウォータマン、M.L.(Waterman、M.L.)ら、遺伝子と開発(Genes Dev.)、5、656−669(1991)、CD3−eエンハンサ、ヴァン・デ・ウェタリング、M.(van de Wetering M.)ら、EMBOジャーナル(EMBO J.)、10、123−132(1991)、およびコンセンサスTCF DNA結合部位、コリネック、V.(Korinek、V.)ら、サイエンス、275、1784−1787(1997)内で同定されたTCF DNA結合部位を含有するオリゴヌクレオチドを生成した。
これらのオリゴヌクレオチドは、次のとおりであった(TCF結合部位には下線が付されている。
5’− CTAGCGAGAACAAAGGAGATTCAAAGGAGATCAAAGGAGATCAAAGGACTAGTTC−3’、(配列番号1)および、
5’−TCGAGAACTAGTCCTTTGATCTCCTTTGATCTCCTTTGAATCTCCTTTGTTCTCG−3’(配列番号2)
80℃で10分間加熱したT4ポリヌクレオチドキナーゼを用いてオリゴヌクレオチドをリン酸化し、アニールさせた。アニールされた2本鎖オリゴヌクレオチドは、それぞれ5’および3’末端でNheIおよびXhoI相容性配列を含んでいた。アニールされたオリゴヌクレオチドをTK−ルシフェラーゼレポータの上流でNheI−およびXhoI消化したpGL3(プロメガ社(Promega Corporation)、ウイスコンシン州マジソン(Madison、WI))内にクローニングして4×TCF−lucを生成した。TCF結合部位およびTKプロモータをDNA配列決定により確認した。次に、4×TCF−lucからのNheI−BamHIおよびSpeI−BamHIフラグメントをライゲートすることによって、TCF DNA結合部位の8つのコピー(8×TCF−luc)を伴うプラスミドを発生させた。同様にして、8×TCF−lucを利用して、TCF DNA結合部位の16のコピーを伴うプラスミドを調製した。配列決定により全てのプラスミドを確認した。
以下の要領でフラグ−タグ付けヒトRor1(Ror1−フラグ)を構築した。ヒトRor1をヒト子宮RNAからクローニングし、pcDNA3.1(+)のKpnIおよびNotI部位内に挿入してhRor1−pcDNA3を得た。このクローンをさらにPCR媒介突然変異誘発により修飾した。3’未翻訳領域を除去し、最下ストランドプライマを用いて停止コドンとNotI部位の前にcDNAの3’末端にフラグエピトープタグ(下線のついたコドン)を付加した。5’−TGAGCGCGGCCGCTGCTCACTTGTCATCGTCGTCCTTGTAGTCCAGTTCTGCAGAAATCATAGAT−3’(配列番号14)。最上ストランドプライマは、Ror1の内部領域に対し相補的であり、これはBamHI部位を含んでいた。5’−CTCATCAGGATCCAATCAGG−3’(配列番号13)。増幅されたDNAを、BamHIおよびNotIでカットし、BamHI−およびNotI−で消化されたhRor1−pcDNA3内にクローニングした。意図した変更を、配列決定によって確認した。
フラグでタグ付けしたヒトRor2(Ror2−フラグ−pcDNA3)を以下通りに作製した。pCMV−Sport6中のインビトロジェンのIMAGEクローン収集物(クローンID3146587)から、コドン58−2296を含有するヒトRor2についての部分クローンを得、両方のストランドを配列決定することによって確認した。鋳型としてのHOB−03−C5RNAおよびRor2−特異的プライマを用いてRT−PCRにより3’部分(コドン2297−2832)を産生した。最上ストランドプライマは、Ror2のコドン2192−2216に相補的であり、内部XmnI部位を含有し(5’−AGTTCCCCAGCCGGCGGCCCCGCTT−3’(配列番号15))、最下ストランドプライマは、停止コドン(太字活字)に隣接してXbaI部位を含んでいた(5’−TACGATTCTAGATGTCAAGCTTCCAGCTGGACTTGGG−3’(配列番号16))。増幅されたDNAを、Ror2の3’末端を得るべくXmnIおよびXbaIで消化させた。5’部位をNotIおよびXmnIでIMAGEクローンから切除し、両方のフラグメントを、NotI−およびXbaI−消化されたpcDNA3.1(+)内にクローニングしてRor2−3’−pcDNA3を得た。Ror2の最初の57個のコドンも同様に、鋳型としてのHOB−03−C5RNAおよびRor2−特異的プライマを用いてRT−PCRによって産生した。最上ストランドプライマは、ATGコドン(太字活字)に対し5’のところにKpnI部位を含み;(5’−GACCTTGGTACCATGGCCCGGGGCTCGGCGCT−3’(配列番号17));最下ストランドプライマは、Ror2の内部領域に相補的で、BamHI部位を含んでいた(5’−TCGTTCGGATCCAGAACCTCCAC−3’(配列番号18))。
増幅されたDNAを、KpnIおよびBamHIで消化させ、KpnI−およびBamHI−で消化したRor2−3’−pcDNA3にクローニングしてRor2−pcDNA3を得た。コーディング領域全体は、両方のストランドを配列決定することによって確認した。その後、フラグ−タグ付けしたヒトRor2をPCR媒介された突然変異誘発によって生成した。フラグエピトープタグ(下線の付いたコドン)を、最下ストランドプライマを用いて停止コドン(太字活字)およびXbaI部位より前のhRor2cDNAの3’末端に付加した。5’−CTGGAATCTAGATCACTTGTCATCGTCGTCCTTGTAGTCAGCTTCCAGCTGGACTTGGGCC−3’(配列番号20)。最上ストランドプライマは、Ror2の内部領域に相補的であり、これはAleI部位を含んでいた。5’−GCTCACACCACAGTGGCAGTGG−3’(配列番号19)。増幅されたDNAをAleIおよびXbaIでカットし、AleI−およびXbaI−で消化されたRor2−pcDNA3内にクローニングした。意図した変更を、配列決定により確認した。
図5Aで概略的に示したフラグでタグ付けしたRor2「キナーゼ−デッド」型変異体(Ror2KD−フラグ)は、公開された証拠に基づいて設計された(ヒカサ H(Hikasa H)、シバタ M(Shibata M)、ヒラチ I(Hirati I)、タイラ M(Taira M)、開発(Development)、129、5227−5239、(2002))。イソロイシンへのリジン507、510および512の3点突然変異は、メーカーの指示事項に従って、クイックチェンジ(QuikChange)XL部位特異的突然変異誘発キット(ストラタジーン(Stratagene)、カリフォルニア州ラホーヤ(La Jolla、CA))を用いPCR媒介突然変異誘発によりRor2−フラグ−pcDNA3内に導入した。意図した突然変異(太字)を含む最上ストランドプライマは、5’−GGCTGTGGCCATCATAACGCTGATAGACATAGCGGAGGGGC−3’(配列番号21)であり、最下ストランドプライマは、最上ストランドプライマに相補的であった。(5’−GCCCCTCCGCTATGTCTATCAGCGTTATGATGGCCACAGCC−3’(配列番号22))。配列決定により意図した変化を確認した後、突然変異を受けた部分をBsrGIおよびEcoRIでカットし、BsrGIおよびEcoRI消化済みRor2−フラグ−pcDNA3内にクローニングした。
図5A内で概略的に示されているフラグ−タグ付けしたRor2トランケーション変異体(Ror2ΔC−フラグ)をPCR媒介突然変異誘発によって構築した。最下ストランドプライマを用いて、フラグエピトープタグ(下線の付いたコドン)を、停止コドン(太字活字)およびXbaI部位が後続する膜内外ドメインのCOOH末端をちょうど超えたところでコドン1284の後に導入した。5’−GACCTTTCTAGATTACTTGTCATCGTCGTCCTTGTAGTCGCACATGCAAACCAAGAAGAAAAGGC−3’(配列番号24)。最上ストランドプライマは、SphI部位に対し5’のところにあるRor2の内部領域に対し相補的であった。5’−CCTTCTGCCACTTCGTGTTTCCTCT−3’(配列番号23)。増幅されたDNAを、SphIおよびXbaIで消化させ、SphI−およびXbaI−で消化されたRor2−pcDNA3内にクローニングし、配列決定により意図した変更を確認した。
PCR媒介突然変異により、ヒトNotch2(bp5125−7431)のV5およびhis−タグ付けした細胞内ドメインを構築した。第5’末端(塩基5125−5906)を、EcoRI部位とそれに続くATGコドンを含む最上ストランドプライマ(5’−CATATGAATTCATGACCAAGCATGGCTCTCTCTGGCTGCCT−3’(配列番号45))およびBclI部位を含むNotch2の内部領域に相補的な最下ストランドプライマ(5’−CGCTTGGCAGTTGATCAGTTCTG−3’(配列番号46))を用いて、ヒト胎児脳および肺RNAからRT−PCRにより産生した。
コドン5907−7425を含む3’部分は、インビトロジェンのIMAGEクローン収集物(クローンID5529009)から得、PCRにより増幅した。BclI部位を含む最上ストランドプライマは、5’−GAATGGTGGCAGAACTGATCAACTG−3’(配列番号47)であり、NotI部位を含む最下ストランドプライマは5’−GATATGCGGCCGCCGCATAAACCTGCATGTTGTTGTGTG−3’(配列番号48)であった。5’および3’部分を、タンパク質配列内にV5およびHisタグを取込むpcDNA3.1/V5−His(インビトロジェン)のEcoRIおよびNotI部位内に枠内でクローニングした。
RNA単離
HOB細胞を9.8×104細胞/cm2で播種し、34℃で一晩付着させ、0.25%(wt/v)のウシ血清アルブミン(セロロジカルズ・プロテインズ社(Serologicals Proteins,Inc)、イリノイ州カンカキー(Kankakee、IL))、1%のペニシリン−ストレプトマイシン、2mMのglutaMAX−1、50μg/mlのアスコルバート−2−ホスファート(和光純薬工業株式会社(Wako Pure Chemical Industries,Ltd.)日本国大阪(Osaka、Japan))および10nMのメナディオン重亜硫酸ナトリウム(ビタミンK3)を含むDMEM/F−12倍地中で39℃になるまで移送した。48時間後に、細胞をリン酸緩衝生理食塩水(PBS)中で洗浄し、全細胞RNAをメーカーのプロトコルに従い、TRIゾル試薬(インビトロジェン)で単離した。その後、poly A(+)RNA画分を、メーカーの指示事項に従ってオリゴテックス(Oligotex)mRNAMaxiキット(キアゲン(Qiagen)、カリフォルニア州バレンシア(Valencia、CA))を用いて抽出した。
一過性トランスフェクションおよびウエスタン免疫ブロット法
COS−7またはU2OS細胞を約80%のコンフルーエント密度で播種し、メーカーの指示事項に従い、FuGENE6トランスフェクション試薬(ロシュ・モレキュラー・バイオケミカルズ(Roche Molecular Biochemicals)、インディアナ州インデイアナポリス(Indianapolis、IN))を用いて143cm2あたり40μgの合計プラスミドDNAで24時間後にトランスフェクトした。24〜72時間後に、細胞を溶解緩衝液(150mMのNacl、50mMのトリス−HCl、pH7.5、1mMのEDTA、1%のトリトン×100、20mMのNaF、2mMのバナジウム酸ナトリウム、プロテアーゼ阻害物質カクテル(シグマ(Sigma))、250μMのフッ化フェニルメチルスルホニル)中で可溶化させた。HOB−01−09細胞系列の分析のために、溶解緩衝液中での可溶化の前にコンフルーエンスに至るまで細胞を成長させた。4℃で30分間500,000×gで遠心分離により抽出物を清澄させた。β−カテニンの安定化を査定するために、6ウエルの平板内で約80%のコンフルーエント密度でU2OS細胞を平板固定し、メーカーのプロトコルに従って、6.9μgの合計プラスミドDNAおよびリポフェクタミン2000トランスフェクション試薬を用いて24時間後にトランスフェクトした。24時間後、細胞質タンパク質抽出物を、低張性緩衝液(10mMのトリス−HCl、pH7.4、200μMのMgCl2;プロテアーゼおよびホスファターゼ阻害物質カクテル(共にシグマより))中での可溶化とそれに続くダウンス(Dounce)ホモジナイザー内での40回の作業と4℃90分間の100,000×gでの遠心分離により、調製した。免疫ブロット法のためには、全細胞溶解物50μgまたは細胞質抽出物19μgを、0.45μmのニトロセルロース膜上への移送に先立ち変性および還元条件下でSDS−PAGEにより分解した。0.1%のツイーン(Tween)−20および5%のブロット(サンタクルス(Santa Cruz))を含むPBS中で膜を遮断し、その後一次抗体と共に25℃で2時間インキュベートした(抗フラグエピトープタグ、10μg/ml;抗−hisタグ、1.4μg/ml;抗−HAタグ、2μg/ml;抗−ホスホチロシン、2μg/ml;抗−β−カテニン1.5μg/ml;抗−β−アクチン1:5000;抗−V5、3μg/ml;または抗−Ror2、1μg/ml)。25℃で1時間、1:2000でHRP−接合二次抗体を添加した後、膜を増強した化学発光(アマーシャム・バイオサイエンス、英国バッキンガムシャー)により分析し、その後X線フィルムに暴露した。指示のある場合には、膜を55℃で30分間、ストリッピング緩衝液(62.5mMのトリス−HCl(pH7.5)、2%のSDS、0.1%のβ−メルカプトエタノール)中でストリッピングし、次の抗体セットで再度プローブ検定した。
免疫沈降およびインビトロ自己リン酸化検定
U2OS細胞をウエスタン免疫ブロット法の場合と同様にトランスフェクションに付し、24時間後、溶解緩衝液内で可溶化させ、4℃で30分間500,000×gで遠心分離により清澄させた。1ミリグラムの全細胞溶解物を4℃で回転させながら1時間、M2フラグ親和性アガロース(シグマ)50μlでインキュベートした。ビーズを遠心分離により収集し、350mMのNaClを含む溶解緩衝液中で3回、溶解緩衝液中で3回洗浄し、還元剤(インビトロジェン)と共に50μlの2×LDS−PAGE緩衝液中で沸とうさせ、可溶化されたタンパク質をSDS−PAGEにより分離した。各々の特異的抗体での検出の前に0.45μmのニトロセルロース膜上にゲルを移送した。
自己リン酸化検定のため、キナーゼ溶解緩衝液(EDTA無しの溶解緩衝液)中の3mgの全細胞溶解物を、50μlのM2フラグ親和性アガロース(シグマ)と共に4℃で回転させながら1時間インキュベートした。抽出物を4℃で30分間500,000×gで遠心分離により清澄させた。3ミリグラムの全細胞溶解物を4℃で回転させながら1時間50μlのM2フラグ親和性アガロース(シグマ)と共にインキュベートした。ビーズを遠心分離によって収集し、350mMのNaClを含有するキナーゼ溶解緩衝液中で3回、キナーゼ溶解緩衝液中で3回、キナーゼ反応緩衝液(10mMのMgCl2、50mMのトリス−HClpH7.5、1mMのジチオトリエトール)中で2回洗浄した。ビーズの10パーセントをSDS−PAGE分析のために取り置きし、残りを、1mMのATPおよび15μCl[γ−32P]ATPを含有するキナーゼ反応緩衝液50μl中に再懸濁させた。30℃で30分間キナーゼ反応を進行させ、1×LDS緩衝液と還元剤(インビトロジェン)の中での沸とうにより停止させた。タンパク質をSDS−PAGEにより分解し、0.45μmのニトロセルロース膜上に移し、増感スクリーンで−80℃で12時間、X線フィルムに暴露した。指示がある場合には、ウエスタン免疫ブロット法で記述されている通り、抗フラグ抗体でその後膜をプローブ検定した。
統計的分析
平均±標準誤差(SE)としてデータを提示する。統計的意義をスチューデントのt試験を用いて決定した。結果は、p<0.05である場合に、統計的に異なるものとみなされた。
実施例1
Ror2遺伝子の発現は、ヒト骨芽細胞分化の後期の間減少し、SFRP−1により抑圧される
Ror2がヒト骨芽細胞分化に関与しているという発見は、遺伝子チップ技術を用いてなされた。これらの実験ため、骨芽細胞分化の全く異なる期(それぞれ増殖期、早期および成熟骨芽細胞、前骨細胞期および骨細胞期)を表わす固有のHOB細胞系列(HOB−03−C5、HOB−03−CE6、HOB−02−C1、HOB−01−C1およびHOB−05−T1)由来のpolyA(+)RNA試料を、骨および軟骨cDNAが富化されたGIヒト1aチップを用いた遺伝子チップ分析に付した。標的相補的RNA(cRNA)調製およびアフィメトリック・ジーン・チップス(Affymetrix GeneChips)に対するハイブリダイゼーションは、基本的にヒル AA(Hill AA)ら、ゲノム生物学(Genome Biol.)、2、(2001)、ヒル AA(Hill AA)ら、サイエンス、290、809−12、(2000)に記述されている通りに行なわれた。11のビオチン標識された対照cRNA写しを既知の濃度でハイブリダイゼーション溶液内にスパイクし、平均差(AD)値とピコモル濃度の間の較正曲線を生成するためにこれを使用した。ピコモル濃度を、平均cRNA長が1kBであるという仮定に基づいて100万分の1周波数に変換した。チップを走査し、アフィメトリックス(Affymetrix)MAS4.0ソフトウェアを用いて分析し、各プローブセットについてのAD値をアフィメトリックス(カリフォルニア州サンタクララ(Santa Clara、CA)の指示事項に従って計算した。その後、対照写しから得た較正曲線を用いて各プローブセットについて100万分の1周波数を導出した。この分析により、骨芽細胞分化の間に2倍超変化した29のキナーゼを同定した。
ボディンらは、Wntシグナル化アンタゴニストSFRP−1が骨芽細胞アポトーシスを促進すること(ボディン、P.V.N.ら、国際公開第01/19855号パンフレット、ボディン、P.V.N.ら、米国骨代謝学会(ASBMR)第23回会議、アリゾナ州フェニックス(Phoenix、AZ、2001))、およびSFRP−1が欠如しているように工学処理されたマウス(レキシコン・ジェネティックス社(Lexicon Genetics,Inc.)、テキサス州ウッドランド(Woodlands、TX)との協同作業で生成されたもの)が、骨形成を増加させたこと(ボディン、P.V.N.ら、米国骨代謝学会(ASBMR)第24回会議、テキサス州サンアントニオ(San Antonio、TX))を、以前に示してきた。SFRP−1作用メカニズムを特徴づけするため、SFRP−1または対照ベクターのいずれかを安定した形で過剰発現するHOB−01−09前骨細胞由来のpolyA(+)RNA上で、遺伝子チップ分析を実施した。野生型対照と比較したSFRP−1ノックアウトマウスの転写プロフィールを考察するためにも、遺伝子チップ技術を使用した。
遺伝子チップスクリーンの結果を比較して、出願人は、1つのキナーゼの発現が骨芽細胞分化の間に変化するだけでなくSFRP−1発現によっても調節されるということを発見した。これは、SFRP−1発現の増加と並行して、骨細胞表現型に向かって骨芽細胞が進歩していくにつれて(図1A)そのmRNA発現が減少するRor2キナーゼであった。Ror2mRNAレベルの変化は、RT−PCR分析によっても確認された(図1A)。遺伝子チップ分析のために用いられるものと同じpolyA(+)RNA試料は、メーカーの指示事項に従い、ABIプリズム(PRISM)7700配列検出システム(アプライド・バイオシステムズ、カリフォルニア州フォスターシティー(Foster City、CA))を用いてリアルタイムRT−PCRに付された。使用されたプライマおよびプローブの配列が表1に列挙されている。
プローブを、アプライド・バイオシステムズから得、レポータ螢光染料FAMで標識した。18SrRNAに特異的なレポータ螢光染料VICで標識されたプローブおよびプライマをアプライド・バイオシステムズから購入し、内部対照としてこれを反応の中に含み入れた。30分間48℃で逆トランスクリプターゼ工程を実施し、cDNAを以下の条件下で40サイクルの間増殖させた。15秒間95℃および1分間60℃。各遺伝子のためのmRNA量をユーザー広報(User Bulletin)#2(アプライド・バイオシステムズ)内で記述された標準曲線方法を用いて計算し、18SrRNAの発現に対し正規化した。
RT−PCRを一次ヒト骨芽細胞中のRor2の発現を確認するためにも使用した(図1A)。ヒト骨芽細胞内のRor2発現のレベルは、HOBモデル中の早期骨芽細胞内で観察したものと類似していた。HOB−01−09細胞内のSFRP−1の過剰発現は、Ror2mRNAレベルの強い抑圧を結果としてもたらし、一方SFRP−1で分断されたマウスの頭蓋冠は、野生型対照の場合よりも2倍多いRor2メッセージを発現した(図2)。Rorファミリーの1つだけの他の既知の成員であるRor1の発現も同様に、骨芽細胞分化の間に減少した(図1B)が、SFRP−1により調節されるとは思われなかった。実際Ror1レベルは、野生型ならびにSFRP−1−ヌルの両方のマウスの頭蓋冠内で検出限界よりも低いものであり、HOB−01−09細胞内でのSFRP−1過剰発現の時点で変化しなかった(図2)。
デキアラ(DeChiara)ら、ネイチャー・遺伝学(Nature Genetics)、24、271−4、(2000)およびタケウチ(Takeuchi)ら、遺伝子から細胞へ(Genes to Cells)、5、71−8、(2000)は、マウス体内でのRor2遺伝子の分断が広範囲の骨格異常に導くということを報告した。さらに、マシアコフスキー(Masiakowski)ら、生物化学ジャーナル、267、26181−90、(1992)は、Ror1およびRor2キナーゼが、Wntタンパク質への結合を媒介するSFRP−1のものに対し相同なfrizzled関連ドメインを有することを報告した(図3)。ロスマス(Roszmusz)ら、生物化学ジャーナル、276、18485−90、(2001)は、Ror1のfrizzledドメイン内でのジスルフィド結合の局在化がSFRP−1のものと同一であることを報告した。これらのデータは、Ror2が骨芽細胞分化に参加することおよびそれがWntおよびSFRP−1シグナル化経路に関与していることを示唆した。
実施例2
Ror2遺伝子の発現は、ヒト骨芽細胞分化の初期の間およびマウス骨芽細胞分化の初期および後期の間に増大する
ヒト骨芽細胞分化の早期の間のRorキナーゼの発現を査定するために、多能性ヒト間葉基幹細胞(hMSC、バイオホィッタカー社(BioWhittaker,Inc.)、カリフォルニア州サンディエゴ(San Diego、CA))の骨芽細胞分化を分析した。10%の熱不活性化されたウシ胎児血清(バイオホイタッカー(BioWhittaker))、1%のペニシリン−ストレプトマイシン、および2mMのglutaMAX−I(成長培地)を含むフェノールレッドを含まないDMEM培地を用いて、5%CO2/95%加湿空気のインキュベータ内で37℃でhMSCを維持した。96ウェル平板中で1ウェルあたり992細胞でhMSCを播種し、24時間後(0日目)、21日間にわたり骨原性培地(生成培地中の0.1μMのデキサメタゾン、0.05mMのアスコルビン酸および10mMのβ−グリセロホスファート)を添加することにより、骨発生を誘発した。7日毎に、全細胞RNAを単離し、Ror遺伝子の発現を、表1に列挙されたプライマおよびプローブを用いて実施例1で記述されている通りのリアルタイムRT−PCR分析により査定した。図4Aに示されているように、Ror2発現は、分化の経時変化の間に劇的に増加し、21日目には300倍超の誘発が観察された。これとは対照的に、Ror1の発現は、分化の経時変化全体の間に変化しなかった(図4A)。
さらに、マウスMC3T3−E1骨芽細胞様細胞のアスコルビン酸誘発された分化の間のRor発現を監視した。MC3T3−E1細胞を、10%の熱不活性化ウシ胎児血清、1%のペニシリン−ストレプトマイシンおよび2mMのglutaMAX−Iを含むMEM培地中で、5%CO2/95%加湿空気インキュベータの中で37℃に維持した。100mmのプラスチック製培養皿の中で1皿あたり3×106個の細胞の割合で細胞を播種し、72時間後に(0日目、集密時点で)、10mMのβ−グリセロホスファートおよびアスコルビン酸(第1の補給には12.5μg/mlおよびその後の補給には25μg/ml)を補足した成長培地を付加することによって分化を誘発した。培地を48時間毎に交換した。3日毎に全細胞RNAを単離し、内部対照としてゲッ歯類GAPDH(アプライド・バイオシステムに特異的なVIC標識したプローブおよびプライマを使用するという点を除いて、実施例1で記述した通りに、リアルタイムRT−PCRを実施した。Ror分析に使用したプライマとプローブの配列が表2に列挙されている。
2つの特異的骨芽細胞マーカーすなわちアルカリホスファターゼ(AP)およびオステオカルシン(OC)の発現を、表3に列挙されたプライマおよびプローブを用いたRT−PCRにより分析することにより骨芽細胞表現型へのMC3T3分化の進行を監視した。
図4Bに示されているAPおよびOCの発現の経時変化は、MC3T3細胞が骨原性培地内で6日間経過した後最高レベルのAP発現を特徴とする成熟骨芽細胞表現型に達し、9日後に高いOCを伴ってマトリクスミネラル化期に入る、ということ明らかにしている。Ror2発現は、分化の経時変化全体を通して増大した(図4B)。これとは対照的に、Ror1発現は、同じ経時変化全体にわたり漸減し、19日目までにそのもとの値の約20%にまで下降した(図4B)。
かくして、ヒトの骨芽細胞において、Ror2発現は分化早期の間に増加し、増殖する前骨芽細胞期にピークに達し、その後末期骨細胞分化の間に減衰する。マウスの骨芽細胞においては、Ror2発現は、分化の早期および晩期の両方を通して増加する。
実施例3
ヒトRor1およびRor2のクローニングおよび発現
ヒトRor1およびRor2は、インビトロジェン社(カリフォルニア州カールスバッド)との協同作業でクローニングされ、それぞれ配列番号3および5として提示されている。Ror1配列は以下の置換を有していた。すなわちT590C(サイレント)、T1580G(サイレント)、T1963C(M518T)、およびA3142G(K911R)。Ror2配列は、C2088T(サイレント)およびG2455A(V8191)という2つのヌクレオチドにより、米国特許第5,843,749号明細書の中で開示されているものと異なっている。米国特許第5,843,749号明細書中の番号付けは、5’UTRの長さの可変性に起因して異なっており、Ror1については35を差し引き、Ror2については199を加えることによって得ることができる。
全長Ror1およびRor2用および2つのRor2変異体用の発現プラスミドを生成した(図5A)。第1のRor2変異体(Ror2KD)においては、504位(推定上のATP結合ドメイン内)、507および509位にある3つのリジンはイソロイシンで置き換えられ、第2の変異体(Ror2ΔC)では、チロシンキナーゼ相同性ドメインを含む細胞質部分全体が欠失された。4つの発現プラスミドは全て、タンパク質の同定のためのCOOH−末端フラグエピトープタグを含んでいた。ウエスタン免疫ブロット法は、Ror1−フラグ、Ror2−フラグおよびRor2KD−フラグがU2OS、骨肉種細胞内で高いレベルで発現し、一方Ror2ΔC−フラグは比較的低いレベルの発現を示すということを示した(図5B)。Ror2−フラグおよびRor2KD−フラグの両方共を、フラグ親和性アガロース上でU2OS抽出物から沈降させることができた(図5C、下部図版)。しかしながら、Ror2KD変異体はインビトロ自己リン酸化検定において自らリン酸化することができず(図5C、上部図版)、それがそのキナーゼ活性を失なったことを確認している。フラグ免疫沈降およびインビトロ自己リン酸化検定を、一般的方法で記述される通りに実施した。
実施例4
Ror2キナーゼはWnt−3を阻害するものの、Wnt−1活性を増強する
Ror2キナーゼがWntシグナル化内で沈降するか否かを査定するために、ルシフェラーゼレポータ検定を実施した。U2OS細胞を96ウェルの平板内で1ウェルあたり20,000細胞の割合で播種し、メーカーのプロトコルに従って、リポフェクタミン2000トランスフェクション試薬(インビトロジェン)を1ウェルあたり0.16μl用いて、抗生物質無しで培地中で24時間後にトランスフェクトした。180ngの16×TCF−luc(一般的方法のプラスミドの節で記述されたもの)、5ngのWnt−1−HAまたはWnt−3−HA;15ngのSFRP−1;5ngのpCMVβ;指示された量のRor1−フラグ、Ror2−フラグまたはRor2ΔC−フラグといったDNAの組合せを1ウェルあたりに使用し、pcDNA3.1(+)で230ngに調整した。DNAの付加から4時間後に培地を交換し、24時間後に、培地を吸引しPBS中で洗浄した後、細胞を溶解させ、抽出物をルシフェラーゼ検定試薬(プロメガ(Promega))を用いてルシフェラーゼ活性について、およびGalacto−Light(アプライド・バイオシステムズ)を用いてβ−ガラクトシダーゼ(β−gal)活性について検定した。ルシフェラーゼについては10秒、β−galについては5秒間にわたる組込みにより、マイクロルーマット(MicroLumat)LB・96Pリュミノメータ(EG&Gベルトールド(EG&GBerthold)、オーストラリア、バンドゥーラ(Bandoora、Australia))で発光を測定した。ルシフェラーゼについて得た発光値を、β−galについてのものに正規化した。最小チミジンキナーゼプロモータに対し5’のところで融合されたWnt応答性TCF結合部位の16のコピーを含むルシフェラーゼレポータ遺伝子の発現を、Wnt−3−HA構成体とのU2OS細胞の同時トランスフェクションの後20倍超に刺激した(図6A)。Ror2−フラグとの同時トランスフェクションは、96ウェル平板の1ウェルあたりIC50=5.8ngでかつ68%の最大阻害で、プロモータのWnt−3誘発された活性化を用量依存的に阻害した(図6A)。IC50というのは、Wnt単独の存在下で観察された活性の最大阻害の50%を達成するのに必要とされる作用物質の量を意味する。Ror2−フラグはそれ自体プロモータ活性に対しいかなる効果ももたなかった(図6A)。Wntシグナル化の強力な阻害物質であるSFRP−1は、Wnt−3−HA活性を抑圧し、SFRP−1とRor2−フラグが併さると、それをさらに一層抑圧した。これとは対照的に、同じプロモータがWnt−1−HAによって活性化された場合、Ror2−フラグは、2相用量応答と共にWnt−1活性を増強した(図6B)。SFRP−1の添加はこの増強を克服し、ルシフェラーゼ活性をWnt−1−HA単独の存在下の場合と同レベルまで阻害した(図6B)。
実施例5
Ror1キナーゼはWnt−3を阻害するものの、Wnt−1活性に対しいかなる効果ももたない
Wnt経路活性に対するRor1の効果を査定するために、ルシフェラーゼレポータ検定を実施例4に記述されている通りに実施した。図7Aに示されている通り、Ror1−フラグはそれ自体TCFプロモータに対しいかなる活性ももたないが、IC50=5ng/ウェルおよび37%の最大阻害で、Wnt−3−HAによるシグナル化を阻害した。任意の用量でのRor1−フラグの添加は、Wnt−1−HAで刺激された転写に対しいかなる効果ももたなかった(図7B)。
実施例6
Ror2のチロシンキナーゼ活性は、Wnt−1の増強およびWnt−3活性の阻害の大部分のために必要とされる
Wntシグナル化の調節のためにRor2キナーゼ活性が必要とされるか否かを調査するために、チロシンキナーゼ活性を全くもたないRor2KD点変異体を用いて実施例4に記述されている通りにルシフェラーゼレポータ検定を実施した(図5C参照)。この変異体は、TCFプロモータに対するWnt−1シグナル化を増強せず(図8A)、プロモータのWnt−3誘発された活性化を弱く阻害したにすぎない(図8B)。
細胞質ドメインが完全に欠如したRor2変異体(Ror2ΔC−フラグ)を用いて類似の結果を得た。Ror2ΔC−フラグは、Wnt−1−HA活性を増強せず(図9B)、同じくU2OS細胞内でWnt−3シグナル化を阻害するその能力の一部分を失った(図9A)。かくして、Ror2のチロシンキナーゼ活性は、Wnt−1シグナル化の増強のためおよびWnt−3活性の阻害の大部分のために必要とされる。
実施例7
Ror2およびRor2KDはWnt−1およびWnt−3に結合し、Ror2は異なるWnt間の区別を行なう。
Wntに対するRor2の考えられる直接的結合を評価するために、一般的方法の中で記述されているように、HA−標識されたWnt1および3およびRor2−フラグとの同時トランスフェクションを受けたCOS−7またはU2OS細胞の溶解物での免疫沈降実験を実施した。図10は、Wnt−1およびWnt−3の両方がRor2との複合体の中で免疫沈降したことを示している。相互作用の特異性は、抗−フラグがRor2−フラグ同時発現の不在下でWntを免疫沈降させることができないという事実によって実証された。Wnt−1およびWnt−3の両方共がRor2KDとの複合体の中で免疫沈降させられたことから、キナーゼ活性の喪失が、Ror2のWnt結合能力に影響を与えることはなかった(図10)。
Ror2−Wnt相互作用の特異性に取組むため、異なるWntタンパク質の一因を用いた免疫沈降実験(図11)を実施した。この実験では、Ror2の不在下または存在下でCOS7細胞内で10の異なるHAタグ付けされたWntが過剰発現された。図11に示されているように、Ror2は、Wnt3aに最も良く結合し、その後にWnt3、4、2、1、5bおよび5aが続くことが観察された。Ror2は、Wnt6および7aをわずかだけ結合したが、COS7細胞内のWnt6の発現は、その他のWntのものほど高くなかった(図11、下部図版)。Ror2は、本発明者らの実験条件下で、Wnt7bと結合しなかった。かくして、Ror2は、Wntとその相互作用において特異性を示している。
実施例8
Wnt−1およびWnt−3の過剰発現は、Ror2の自己リン酸化に対し効果を及ぼさない
Ror2は、U2OS抽出物から免疫沈降された場合、おそらくは、その固有のチロシンキナーゼ活性に起因してインビトロで自らリン酸化する能力を有していた(図5C)。Wntの同時発現がRor2の自己リン酸化の程度に影響を及ぼすか否かを決定するために、U2OS細胞をWnt−1、Wnt−3または対照プラスミドの存在下で、Ror2で一過性にトランスフェクトした。全細胞抽出物を24時間後に単離した。Ror2−フラグをフラグ親和性アガロース上で免疫沈降し、一般的方法の中で記述されているようにインビトロ自己リン酸化検定を実施した。図12Aは、オートラジオグラフとそれに続く同じ膜のウエスタン免疫ブロットを示している。図12Bでは、少なくとも3つの独立した実験の結果がクオンティティー・ワン1−D画像解析ソフトウェア(バイオラド(Bio−Rad)、カリフォルニア州ハーキュリーズ(Hercules、CA))を用いて定量化されており、放射性シグナルは各反応中に存在する免疫反応性Ror2の合計量に対し正規化された。Wnt1および3の不在下または存在下でのRor2自己リン酸化の著しい差異は全く存在しなかった。
実施例9
Ror2はβ−カテニンのWnt誘発された安定化を阻害する
古典的Wntシグナル化経路の中のどこでRor2が機能するかということに取組むために、Wnt−媒介された細胞質ゾルβ−カテニンの安定化に影響を及ぼすRor2キナーゼの能力を査定した。U2OS細胞内へのWnt1または3のトランスフェクションの時点で、β−カテニンの細胞質レベルはそれぞれ1.7または2.8倍だけ、再現可能な形で増大した(図13)。Ror2の増大する量での同時トランスフェクションは、Wnt1およびWnt3の両方の細胞質ゾルβカテニン安定化能力を用量依存的に阻害した。興味深いことに、キナーゼ−デッド型Ror2変異体は、β−カテニン安定化を阻害する上でRor2と同じ位強力であり、キナーゼ活性がこの効果のために必要とされないことを表わしていた。従って、TCFプロモータ上のWnt3シグナル化のRor2誘発された阻害は、少なくとも部分的にβ−カテニンの分解に起因するものであり得る。しかしながら、Ror2はβ−カテニン安定化の下流側で作用することにより、TCFプロモータ上のWnt1シグナル化を増強するはずである。その上、Ror2シグナル化のこのもう一方の腕は、β−カテニンレベルのRor2−誘発された減少を克服しなければならない。
実施例10
Wntシグナル化におけるRor2の機能のモデル
図14は、Ror2による古典的Wntシグナル化の調節についてのワーキングモデルを提示している。Ror2はWnt1およびWnt3を結合し、それらをそのFZ受容体から隔離し、その結果β−カテニンの分解を増大させる。このプロセスは、Ror2受容体のチロシンキナーゼ活性を必要としない。さらに、Ror2に結合するWnt1は、Ror2キナーゼ依存性のシグナル化経路を活性化し、これが究極的にTCFプロモータ活性の増強をもたらす。Wnt結合はRor2キナーゼ活性を調節するように思われないという事実は、Wnt1がRor2活性化にとって必要なその他の何らかの事象すなわち受容体二量体化を開始させることおよびRor2自己リン酸化のバックグラウンドレベルが機能に充分なものであることを示唆している。Wnt3結合は、この付加的なシグナル化経路を活性化するようには思われず、Ror2はTCFプロモータ上のWnt3活性を阻害する。しかしながら、キナーゼ−デッド型Ror2はβ−カテニン安定化に拮抗するもののTCFプロモータを阻害するその能力を失なうことから、この阻害には、β−カテニンの下流側の付加的なキナーゼ依存性事象が必要とされる。かくして、Wntシグナル化に対するRor2の最終的な効果は、細胞内で発現される特定のWntにより決定される。
実施例11
U2OS細胞内のRor2結合パートナーの同定
Ror2結合パートナーは、免疫沈降およびそれに続く質量分光分析によって同定された。この目的でpcDNA3.1(+)またはRor2−フラグでのトランスフェクションを一過性に受けたU2OS細胞のタンパク質抽出物を、まず第1に抗−フラグ親和性アガロース上で免疫沈降させ、異なる百分率のSDS−PAGEゲル上で分離させた。銀染色により、恐らくは100kDa前後のRor2−フラグ自体を含むRor2−フラグ含有抽出物(図15A−C内に矢印でマークされている)の中のみに存在する複数のバンドを同定した。重要なことに、矢印によりマーキングされたバンドのうち複数のものが抗フラグ抗体によって認識されておらず(図15AおよびDを比較のこと)、このことは、これらのタンパク質がRor2−フラグまたはそのタンパク質分解フラグメントとは全く異なるものであることを表わしていた。その上、これらのタンパク質のいくつかは、抗ホスホチロシジン抗体により同定された(図15E)。質量分光(MS)分析を、以下の通り、免疫沈降したRor2−フラグおよび対照試料について実施した。免疫沈降樹脂から0.05%(w/v)まで溶出された試料に対してSDSを添加した。その後試料を0.05%のSDSに対し透析し、もとの体積の約1/50になるまで蒸発により体積を減少させた。その後、10%のトリシンゲル(インビトロジェン)に試料を適用し、ゲルを銀染色した。各試料のレーン全体にまたがるスライスをゲルから切除した。各ゲルスライス内のタンパク質をDTTで還元し、ヨードアセタミドでアルキル化し、プロゲストインベスティゲータ(ProGest Investigator)(プロメガ)を用いてトリプシンでのゲル内消化に付した。消化した試料の体積を蒸発によって縮小し、次に、0.1Mの酢酸および2%のアセトニトリルを含むように約20μlまで戻した。
次に、各試料を10マイクロリットルずつ、LCQ Deca XPプラス質量分光計(フィニンガン(Finnigan);カリフォルニア州サンノゼ(San Jose、CA))と整列したピコフリットニードル(Picofrit needle)(ニューオブジェクティブス(New Objectives);マサチューセッツ州ウォバーン(Woburn、MA))内に充填された10cm×75μmのC18逆相カラム上に投入した。375から1200までのm/z範囲を走査することによりペプチド質量を記録した。MSスキャンからの最初の3つの最も強いイオンについての連続的なMS/MS実験が各MSスキャンの後に続くデータ依存的な要領で、フラグメントイオンスペクトル(直列質量分析(MS/MS))を獲得した。結果としてのMS/MSデータを、セクエスト(Sequest)プログラム(フィニガン)を用いてNCBI非冗長性データベースに対して探索した。
Ror2−フラグにより特異的に免疫沈降されることがわかったタンパク質は、表4に列挙されている。
実施例12
Ror2はNotch2受容体の細胞内ドメインと相互作用する
Ror2とNotch2の間の相互作用を確認するために、COOH末端V5とhisタグ付けされたヒトNotch2細胞内ドメイン(Notch2IC、bp5125〜7431)を含む構成体を一般的方法の中で記述される通りに生成した。Notch2IC−V5−HisおよびRor2−フラグをU2OS細胞内に同時トランスフェクトし、1mgの全細胞溶解物をM2フラグ親和性アガロース上で免疫沈降させ、一般的方法で記述されている通りにSDS−PAGE上で分解させた。
図16は、Ror2との複合体の中でNotch2ICが免疫沈降したことを示している。相互作用の特異性は、抗フラグがRor2−フラグの同時発現の不在下でNotch2ICを免疫沈降できなかったという事実によって実証された。
実施例13
Ror2およびRor1を安定した形で過剰発現するHOB−01−09骨細胞前細胞の生成
骨芽細胞生理学に対するRorキナーゼの効果を調査するため、本発明者らは、本発明者らのヒト骨芽細胞系列のうちの1つの中でRor2、Ror2−フラグ、およびRor1−フラグを安定した形で過剰発現させた。本発明者らは、低レベルの内因性Ror2をもつHOB−01−09骨細胞前細胞(図1のHOB−01−C1骨細胞前細胞に類似するもの)を使用した。HOB−01−09細胞は以前に記述されており(ボディン、P.V.N.(ウェス社(Wyeth Corp.))例えば変形性骨関節症の治療に有用な分泌されたfrizzled関連タンパク質を含む組成物、PCT番号、国際公開第200119855−A2号パンフレット;2000)、ATCCに寄託されている。pcDNA3.1(+)または空のpcDNA3.1(+)内のRor2、Ror2−フラグおよびRor1−フラグを、電気穿孔によりHOB−01−09細胞内にトランスフェクトした。各トランスフェクションについて、10μgのプラスミドDNAをPBS中の8×106個の細胞に添加し、5分間氷上でインキュベートした。混合物を、100μF、48オーム、150V(パルス持続時間約10msec)というパラメータでECM600電気穿孔装置(BTX)を用いて2mm空隙のキュベット(BTX、カリフォルニア州サンディエゴ(San Diego,CA))の中で電気穿孔に付した。氷上で5分、細胞を冷却し、150mm入りの培養フラスコに移し、G418耐性細胞の単離コロニーが形成されるまで、10%の熱不活性化ウシ胎児血清、1%のペニシリン−ストレプトマイシンおよび500μg/mlのG418(インビトロジェン)で補足された2mMのglutaMAX−1(HOB成長培地)を含むDMEM/F−12倍地を用いて、5%のCO2/95%の加湿空気インキュベート内で34℃で維持した。コロニーをトリプシン処理し、96ウェルの平板上に1ウェルあたり1つの割合で移送した。コロニーを、125μg/mlのG418で補足されたHOB成長培地中で34℃で成長させ、リアルタイムRT−PCRおよびウエスタン免疫ブロット法により、Ror発現のレベルを査定した。この手順は、空ベクターを過剰発現するHOB−01−09細胞に比べて、3〜5倍のRor2、Ror−2−フラグおよびRor1−フラグmRNAの過剰細胞を伴う複数の細胞系列を生み出した(図17A)。これらの系列は同様に、適切なサイズの免疫反応性タンパク質の発現をも実証した(図17B)。本発明者らは、これらの細胞系列がRor2およびRor1を過剰発現し、アポトーシス、アルカリホスファターゼ活性およびオステオカルシン分泌に対する効果を含めた骨芽細胞表現型に対するRorキナーゼの効果を査定するのに使用できるという結論を下している。
実施例14
骨粗鬆症薬物標的としてのRor2の検証
Ror2を、インビトロおよびインビボアプローチにより骨粗鬆症薬物標的として検証する。哺乳動物細胞内のRor2発現を特異的に分断するsiRNA分子を生成する。比較的高いレベルのRor2mRNAで早期骨芽細胞内でsiRNAを過剰発現し、細胞の分化および/または生存に対するRor2分断の効果をモニター観察する。骨芽細胞内でRor2発現により調節される遺伝子を同定するために遺伝子チップ分析が実施される。Ror2発現パターンおよびSFRP−1およびWntシグナル化に対するその関係に基づいて、Ror2ダウンレギュレーションが骨芽細胞分化を増大させると同時にアポトーシスを促進する。相補的アプローチには、検出可能なレベルのRor2mRNAを全くもたない骨細胞前細胞内のRor2−フラグの過剰発現およびこれらの細胞の分化状態の監視が関与する。インビトロ検証の後、骨粗鬆症標的としてのRor2のインビボ検証を、組織依存性および/または時間依存性の要領でRor2を条件付きで過剰発現するトランスジェニックマウスを生成し、かつ条件付きRor2ノックアウトマウスを生成することによって実施する。
実施例15
Ror2レギュレータを同定するためのハイスループットスクリーニング
小分子アゴニストまたはアンタゴニストを同定するためハイスループットスクリーン(HTS)のためのベースとしてRor2リン酸化を利用する。Ror2の活性化体または阻害物質のいずれを探究すべきかは、インビトロ標的検証の発見事実により決定され、受容体アゴニストがスクリーニングされる。受容体チロシンキナーゼの一般的活性化メカニズムは、受容体オリゴマ化および自己リン酸化を通してのものと考えられ(参考資料、フォレスター、W.C.(Forrester、W.C.)、細胞および分子の生命科学(Cellular & Molecular Life Sciences)59、83−96、(2002)、および同書中の参考文献を参照のこと)、従って、受容体のリン酸化を調節する分子がその活性を調節するものと予想できる。COOH−末端GSTタグを含むヒトRor2のための発現プラスミドを生成し、細菌細胞内のタンパク質を産生させ、グルタチオン−コーティングされた多重ウェル平板に結合させる。未結合のタンパク質を洗い流した後、チロシン上のRor2リン酸化レベルを、例えば抗ホスホチロシン抗体により決定し、続いて化学発光試薬で検出を行なう。その後、Ror2リン酸化レベルを増強する分子のための2価のカチオンおよびATPの存在下でスクリーニングする。これは、一般に細胞ベースのスクリーンに比べてより頑強でセットアップが容易な無細胞HTSであるが、「偽陽性」すなわち無傷の細胞内で働かない化合物を生成する可能性がある。代替的には、HTSをセットアップするのにその他の細胞ベースならびに非細胞ベースのアプローチを使用することができる。これらには、TCFプロモータ−ルシフェラーゼレポータ検定においてWnt−3によるシグナル化を分断するRor2の能力に拮抗するそれらの潜在性について化合物をスクリーニングすることが含まれるが、これに制限されるわけではない。
実施例16
Ror2キナーゼ活性に影響を及ぼす組成物の検証
HTS中でRor2キナーゼ活性を修飾した化合物を次に付加的なインビトロ検定へと移す。第1のベンチトップ確認検定には、哺乳動物細胞系列中のRor2の過剰発現および候補化合物での処置とそれに続く抗ホスホチロシン抗体でのウエスタン免疫ブロット法が含まれる。この検定は、同様に、Ror2キナーゼ活性を調節するための確認済みの化合物の効力および効能を決定するためにも使用される。これらの化合物のヒト骨芽細胞の死を遮断するまたはRor2に依存した形または独立した形での骨芽細胞分化を促進する能力を測定し、これらの効果のためのこれらの化合物の効力および効能を決定するように、付加的な検定が設計されている。これらの化合物の細胞選択性(例えばHeLaまたはその他のRor2−発現細胞系列を用いることによる)ならびにRor2対もう1つのファミリー成員Ror1に対するこれらの化合物の特異性を決定するためにも、付加的な検定が用いられる。同様に、これらの化合物が、アポトーシス(例えばカスパーゼ活性)、分化(例えばアルカリホスファターゼ活性またはオステオカルシン発現)またはWnt活性(例えば、β−カテニンレベルTCF−ルシフェラーゼ検定を介した機能)に関与する下流側シグナル化事象を調節するか否かを決定するためにも、付加的な検定が利用される。最後に、これらのインビトロ検定において適切な活性を示した化合物を、骨形成、骨減少症または骨粗鬆症についてのさまざまな動物モデル(例えば卵巣切除を受けたラットまたはマウス)において使用することができる。骨芽細胞/骨細胞アポトーシスを阻害したまたは骨芽細胞分化を促進した化合物は、これらの細胞を延命しかくして合成されミネラル化される骨マトリクスの量を増大させるかつ/または骨の無欠性を維持することによる骨同化作用物質であると考えられるだろう。
実施例17
Ror2レギュレータを同定するためのハイスループットスクリーニング
小分子アゴニストまたはアンタゴニストを同定するためハイスループットスクリーン(HTS)のためのベースとしてRor2リン酸化を利用する。Ror2の活性化体または阻害物質のいずれを探究すべきかは、インビトロ標的検証の発見事実により決定され、受容体アゴニストがスクリーニングされる。受容体チロシンキナーゼの一般的活性化メカニズムは、受容体オリゴマ化および自己リン酸化を通してのものと考えられ(参考資料、フォレスター、W.C.、細胞および分子の生命科学、59、83−96、(2002)、および同書中の参考文献を参照のこと)、従って、受容体のリン酸化を調節する分子がその活性を調節するものと予想できる。COOH−末端GSTタグを含むヒトRor2のための発現プラスミドを生成し、細菌細胞内のタンパク質を産生させ、グルタチオン−コーティングされた多重ウェル平板に結合させる。未結合のタンパク質を洗い流した後、チロシン上のRor2リン酸化レベルを、例えば抗ホスホチロシン抗体により決定し、続いて化学発光試薬で検出を行なう。その後、Ror2リン酸化レベルを増強する分子のための2価のカチオンおよびATPの存在下で化合物ライブラリをスクリーニングする。これは、一般に細胞ベースのスクリーンに比べてより頑強でセットアップが容易な無細胞HTSであるが、「偽陽性」すなわち無傷の細胞内で働かない化合物を生成する可能性がある。代替的には、HTSをセットアップするのにその他の細胞ベースならびに非細胞ベースのアプローチを使用することができる。これらには、TCFプロモータ−ルシフェラーゼレポータ検定においてWnt−3によるシグナル化を分断するRor2の能力に拮抗するそれらの潜在性について化合物をスクリーニングすることが含まれるが、これに制限されるわけではない。
実施例18
Ror2キナーゼ活性に影響を及ぼす組成物の検証
HTS中でRor2キナーゼ活性を修飾した化合物を次に付加的なインビトロ検定へと移す。第1のベンチトップ確認検定には、哺乳動物細胞系列中のRor2の過剰発現および候補化合物での処置とそれに続く抗ホスホチロシン抗体でのウエスタン免疫ブロット法が含まれる。この検定は、同様に、Ror2キナーゼ活性を調節するための確認済みの化合物の効力および効能を決定するためにも使用される。これらの化合物のヒト骨芽細胞の死を遮断するまたはRor2に依存した形または独立した形での骨芽細胞分化を促進する能力を測定し、これらの効果のためのこれらの化合物の効力および効能を決定するように、付加的な検定が設計されている。これらの化合物の細胞選択性(例えばHeLaまたはその他のRor2−発現細胞系列を用いることによる)ならびにRor2対もう1つのファミリー成員Ror1に対するこれらの化合物の特異性を決定するためにも、付加的な検定が用いられる。同様に、これらの化合物が、アポトーシス(例えばカスパーゼ活性)、分化(例えばアルカリホスファターゼ活性またはオステオカルシン発現)またはWnt活性(例えば、β−カテニンレベルおよびTCF−ルシフェラーゼ検定を介した機能)に関与する下流側シグナル化事象を調節するか否かを決定するためにも、付加的な検定が利用される。最後に、これらのインビトロ検定において適切な活性を示した化合物を、骨形成、骨減少症または骨粗鬆症についてのさまざまな動物モデル(例えば卵巣切除を受けたラットまたはマウス)において使用することができる。骨芽細胞/骨細胞アポトーシスを阻害したまたは骨芽細胞分化を促進した化合物は、これらの細胞を延命しかくして合成されミネラル化される骨マトリクスの量を増大させるかつ/または骨の無欠性を維持することによる骨同化作用物質であると考えられるだろう。
Rorキナーゼの発現が、ヒト骨芽細胞分化の後期段階の間に減少することを示している。
SFRP−1がRor2発現を抑圧することを示している。
Rorタンパク質の予測されたドメイン構造を示している。
Ror1ではなくRor2キナーゼの発現が、ヒト骨芽細胞分化の初期の間そしてマウス骨芽細胞分化の後期を通じては増加することを示している。
U2OS細胞中のRorタンパク質の発現を示している。
Ror2キナーゼが、Wnt−3を阻害するものの、Wnt−1活性を増強させることを示している。
Ror1キナーゼがWnt−3を阻害するが、Wnt−1活性にはまったく影響を及ぼさないことを示している。
Wnt−1の増強およびWnt−3活性の阻害のの大部分のためにRor2チロシンキナーゼ活性が必要とされることを示している。
Wnt−1の増強およびWnt−3活性の阻害の一部についてRor2の細胞質ドメインが必要であることを示している。
Ror2およびRor2KDは、Wnt−1およびWnt−3に結合することを示している。
Ror2は、異なるWntを区別することを示している。
Wnt−1およびWnt−3の過剰発現が、Ror2自己リン酸化の程度に全く影響を及ぼさないことを示している。
Ror2が、細胞質ゾルβ−カテニンのWntで媒介された安定化を阻害することを示している。
Ror2が両方のWntを結合させ、それらをFrizzled受容体から遠くに隔離しかつβ−カテニンを安定化させるその能力を阻害することになる、Ror2活性についての提案されているモデルを示している。
U2OS細胞内のRor2結合パートナの同定を示している。
Ror2がNotch2の細胞間ドメイン(Notch2lC)に結合することを示している。
Ror2およびRor1を安定した形で過剰発現する細胞系列の生成を確認している。