JP2006512901A - Achaete−Scute様−2ポリペプチドとそのコード化核酸並びに腫瘍の診断と治療のための方法 - Google Patents

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Abstract

本発明は、哺乳動物の腫瘍の診断と治療のために有用な物質の組成物と、同じ目的のためのそのような物質の組成物の使用法に関する。

Description

関連出願
本出願は、全体の内容を出典明示によりここに取り込む2002年8月29日出願の仮出願第60/407087号について米国特許法第119条の下の優先権を主張する、米国特許法施行規則1.53(b)(2)に従う米国非仮出願である。
発明の分野
本発明は、哺乳動物における腫瘍の診断と治療に有用な物質の組成物と、同用途に該物質の組成物を使用する方法に関する。
発明の背景
悪性腫瘍(癌)は、合衆国において心臓疾患に続き第2の主要な死亡原因である(Boring等, CA Cancel J. Clin. 43:7(1993))。癌は、正常な組織から誘導されて腫瘍塊を形成する異常な又は腫瘍形成性の細胞の数の増加、これらの腫瘍形成性腫瘍細胞による隣接組織の侵襲、及び最終的に血液やリンパ系を介して局所のリンパ節や遠くの部位に転移と呼ばれる過程を介して広がる悪性細胞の生成を特徴とする。癌性状態においては、正常細胞が成長しない条件下で細胞が増殖する。癌自体は、異なる侵襲及び攻撃性の程度で特徴付けられる広範な種々の形態で顕現する。
癌の診断及び治療に効果的な細胞標的を発見する試みでは、研究者達は、一又は複数の正常な非癌牲細胞と比較し、一又は複数の特定の型の癌細胞の表面に特に発現する膜貫通又はさもなければ膜結合型のポリペプチドの同定を探求してきた。しばしば、このような膜結合ポリペプチドは非癌性細胞の表面と比べて癌細胞の表面により豊富に発現される。このような腫瘍関連細胞表面抗原ポリペプチドの同定は、抗体ベースの治療を介する癌細胞を標的として特異的に破壊する能力を生み出す。この点、抗体ベースの治療が、ある種の癌の治療において非常に効果的であることが証明されていることが留意される。例えば、ハーセプチン(登録商標)及びリツキサン(登録商標)(双方ともにジェネンテック社, サウス サンフランシスコ, カリフォルニア)は、それぞれ乳癌及び非ホジキンリンパ腫を治療するのに成功裏に用いられている抗体である。より具体的には、ハーセプチン(登録商標)は、ヒト上皮成長因子レセプター2(HER2)プロト-オンコジーンの細胞外ドメインに選択的に結合する組換えDNA誘導ヒト化モノクローナル抗体である。HER2タンパク質の過剰発現は、25−30%の原発性乳癌に観察される。リツキサン(登録商標)は、正常及び悪性Bリンパ球の表面に見出されるCD20抗原に対する遺伝子操作キメラマウス/ヒトモノクローナル抗体である。これら抗体の双方とも、CHO細胞中で組換え操作によって産生される。
癌の診断及び治療に効果的な細胞標的を発見する他の試みでは、研究者達は、(1)非癌性正常細胞の一又は複数の特定の型による場合と比較して癌細胞の一又は複数の特定の型によって特異的に産生される非膜結合ポリペプチド、(2)一又は複数の正常な非癌性細胞のものより有意に高い発現レベルで癌細胞により産生されるポリペプチド、又は(3)癌性及び非癌性状態の双方(例えば正常な前立腺及び前立腺腫瘍組織)においてその発現が一つの組織型(あるいは非常に制限された数の異なった細胞型)のみに特異的に限られているポリペプチドを探求してきた。このようなポリペプチドは癌細胞によって分泌されるか又は細胞内に位置したままでありうる。更に、このようなポリペプチドは、癌細胞自体ではなく、癌細胞に増強又は成長亢進効果を有するポリペプチドを産生及び/又は分泌する細胞によってむしろ発現されうる。そのような分泌ポリペプチドは、しばしば正常細胞を超える成長有利性を癌細胞に与えるタンパク質であり、例えば血管形成因子、細胞付着因子、成長因子等の物を含む。このような非膜結合ポリペプチドのアンタゴニストの同定は、このような癌の治療のための効果的な治療剤となることが期待される。更に、このようなポリペプチドの発現パターンの同定は、哺乳動物における特定の癌の診断に役立つであろう。
哺乳動物の癌治療における上で特定した進歩にも関わらず、それぞれ哺乳動物中の腫瘍の存在を検出することができる更なる診断薬及び腫瘍性細胞成長を効果的に阻害する治療薬は大いに必要とされている。従って、(1)正常細胞上又は他の異なった癌細胞上と比較して癌細胞の一又は複数の型により豊富に発現される細胞膜結合ポリペプチド、(2)非癌性正常細胞の一又は複数の特定の型による場合と比較して癌細胞の一又は複数の特定の型によって(又は癌細胞の成長に増強効果を有するポリペプチドを産生する他の細胞によって)特異的に産生される非膜結合ポリペプチド、(3)一又は複数の正常な非癌性細胞のものより有意に高い発現レベルで癌細胞により産生される非膜結合ポリペプチド、又は(4)癌性及び非癌性状態の双方(例えば正常な前立腺及び前立腺腫瘍組織)においてその発現が一の(あるいは非常に制限された数の異なった)組織型のみに特異的に限られているポリペプチドを同定し、これらのポリペプチド及びそれをコードする核酸を使用して、哺乳動物の癌の治療的処置及び診断的検出に有用な組成物を製造することが本発明の目的である。発現が単一又は非常に限られた数の組織に限られている細胞膜結合、分泌又は細胞内ポリペプチドを同定し、そのポリペプチド及びそれをコードする核酸を使用して、哺乳動物の癌の治療的処置及び診断的検出に有用な組成物を製造することがまた本発明の目的である。
特に、本発明の目的は、腫瘍形成に機能的役割を持つ結腸直腸癌(又は新生物)を含む癌の有効な細胞標的を同定することである。結腸直腸癌(CRC)は、西欧における罹患率と死亡率に有意な割合を占めており、それは世界の他の地域と比較して約1.5倍である。発生するCRCの95%が散発性であり、残りは群発性であって早い段階で腫瘍へと移行する家族性の症候群として認知可能となる。最も多いのは、遺伝性の非ポリープ症CRC、家族性大腸ポリープ症の様々な多面的表現型、若年型ポリープ症及びPeutz−Jegher症候群である(Boland C.R., The Genetic Basis of Human Cancer. London: McGraw-Hill; 333-346 (1999); Foulkes, W.D.; QJM, 88 (12): 853-863 (1995); Hardy, R.G等, BMJ, 321 (7265): 886-889 (2000))。同様に、散発性CRCと診断された患者の一等親血縁者は、平均の2倍の危険を有している。手術可能な疾病の好ましい治療計画は、原発巣の外科的切除に依存している。5−フルオロウラシル及びフォリン酸を用いたアジュバント化学療法は、Duke基準でステージCの腫瘍を有する患者の5年生存率を上げる効果があることが分かっている[O'Connel, M.J.等, J Clin Oncol, 15(1):246-50 (1997)]。局所的な手術前の放射線療法もまた直腸腫瘍を有する患者の延命に効果的である。しかしながら、CRCの予後は依然として芳しくなく、疾病の元になる分子生物学の理解を深めることにより新規薬剤標的の探求が求められている。この理論的根拠は、非ホジキンリンパ腫のCD20抗原と慢性骨髄性白血病のbcr−ablチロシンキナーゼをそれぞれ標的とするリツキサン(Rituxan)及びグリベック(Gleevec)の臨床的成功により確認されている(Countouriotis, A.等, Stem Cells, 20(3):215-229 (2002))。
腺癌はすべてのCRCのうち98%の原因であり、クローン選択を複数回行ったリーベルキューンの陰窩の肝細胞から生じると考えられている。大腸では、これは「腺腫から腺癌へ」のシーケンスと呼ばれる複数段階にわたるプロセスである(Muto, T.等, Cancer, 36(6):2251-2270 (1975))。Vogelsteinは、腺腫から腺癌へのシーケンスの段階を経る特定の慢性新生物の進行が、常同的な遺伝的、後成的、及び/又は核型の事象の連続的獲得により起こるモデルを提案した (Kinzler, K.W.等, The Genetic Basis of Human Cancer. London: McGraw-Hill: 565-587 (1999))。これはすべてのCRCに当てはまるものではないが、CRCの分子サブタイプを決定付ける主要な発癌及び腫瘍抑制因子の経路の一部を説明するものである。それらには、マイクロサテライト及び/又は染色体の不安定に関与するケアテイカー遺伝子の欠陥に加え、wnt1、上皮成長因子レセプター(EGFR)、トランスフォーミング成長因子(TGF)−β及びp53シグナル伝達経路が含まれる [Jub, A.M.等, Ann N y Acad Sci, 983:251-67 (2003); Lengauer, C. 等, Nature, 386(6625):623-7 (1997)]。また、これらの経路の多くは胚形成に関連しており、CRCにおいて作用するシグナル伝達ネットワークの精査及び潜在的な薬剤標的の同定を助けるものである。これに関し、「achaete−scute遺伝子複合体」(ac−sc)として知られる神経形成ガイド複合体がキイロショウジョウバエで同定されており、神経形成を導くものであると考えられている(Villares, R.等, Cell, 50(3):415-424 (1987))。
脊椎動物ac−scファミリーにはachaete−scuteホモローグ1(ASH1)を含む多くのオルソログがあり、ASH1は、試験したすべての種で記述されている(例えば、ヒト(H)ASH1、げっ歯類では哺乳動物(M)ASH1、ニワトリではニワトリ(C)ASH1、ゼブラフィッシュではゼブラフィッシュ(Z)ASH1a及び(Z)ASH1b、アフリカツメガエルではアフリカツメガエル(X)ASH1である(Bertrand N.等, Nat Rev Neurosci, 3(7):517-530 (2002))。これら遺伝子のパラログは記載されているが、その各々は脊椎動物の一分類に存在するにすぎない(例えばヒトパラログとしてはHASH2/ASCL2、マウスパラログとしてはMASH2)。ac−sc及びそのオルソログの産生物は、塩基性及びヘリックス−ループ−ヘリックス(HLH)ドメインが存在していることによって定義される転写制御因子の保存されたファミリーに属する。これらのタンパク質はそのHLHドメインを通して二量体として機能し、これにより塩基性ドメインが、E−ボックスエレメント(CANNTG;配列番号5)に結合し、プロモーター及びエンハンサー配列の転写が制御される。ac−scとそのオルソログは、クラスIIのHLHタンパク質として定義される[Massari, M.E.,等, Mol Cell Biol, 20(2):429-40 (2000)]。数例の例外を除いて、それらはポジティブ調節性クラスI HLHタンパク質又はネガティブ調節性クラスV HLHタンパク質と優先的にヘテロ二量化する。
MASH1及びMASH2タンパク質は、それぞれ神経外胚葉及び栄養外胚葉の発達に必須の系列特異的転写因子として機能する。MASH2は成人末梢神経のシュワン細胞にもまた観察され、そこでは増殖のネガティブな制御因子として機能しているように思われる(Kury, P.等, J Neurosci, 22(17):7586-7595 (2002))。MASH1遺伝子とMASH2遺伝子は双方とも母系的に刷り込まれており、それぞれ遠位の染色体7及び11p15上の刷り込みクラスター内に位置している(Guillemot, F.等, Nat Genet 9(3):235-242 (1995); Westerman, B.A.等, Placenta 22(6):511-518 (2001); Miyamoto, T.等, Cytogenet Cell Genet 73(4):312-314 (1996); MiyamoTAT376又はTAT377.等, J Hum Genet 43(1):69-70 (1998); Miyamoto, T.等, J Assist Reprod Genet 19(5):240-244 (2002))。胎性過成長及び腫瘍発生が起こるベックウィズ・ヴィードマン症候群は、11p15における刷り込みの喪失に関連付けられており、これは散発性CRCに観察されている[Engemann, S.等, Hum Mol Genet, 9(18):2691-706 (2000); Paulsen, M.等, Hum Mol Genet, 7(7):1149-59 (1998); Feinberg, A.P., Cancer Res 59(7 Suppl):1743s-6s (1999); Ping, A,J., Am J Hum Genet, 44(5):720-3 (1989), Fleisher, A.S.等, Gastroenterology, 118(3):637 (2000), Miyaki, M., Nat Med, 4(11):1236-7 (1998)]。さらに、ベックウィズ・ヴィードマン症候群の患者に慢性ポリープ症を被っている事例報告があり、wnt1シグナル伝達の異常と11pにおける異型接合性の欠損の同時発生が膵臓芽細胞腫の事例で報告されている[Kerr, N.J.等, Am J Pathol 160(4):1541-2 (2002); Abraham, S.C.等, Am J Pathol, 159(5):1619-27 (2001)]。また、HASH2は初期ヒト胎盤の余絨毛栄養膜細胞系列にも発現する(Alders, M.等, Hum Mol Genet, 6(6):859-867 (1997))。成熟HASH2メッセージのスプライスされていない変異体は、特徴付けられていないタンパク質であるヒトacaete−scute関連タンパク質(HASAP)のオープンリーディングを含んでいることが報告されている(Westermann, B.A.等, Placenta, 22(6):511-518 (2001))。
発明の概要
A.実施態様
本明細書では、本出願人は、正常な非癌細胞の一又は複数の型の表面と比較して、癌細胞の一又は複数の型の表面でより多く発現される種々の細胞性ポリペプチド(及びそれらのコード核酸又はその断片)の同定を最初に記載する。あるいは、そのようなポリペプチドは癌細胞に増強又は成長亢進効果を有するポリペプチドを産生及び/又は分泌する細胞によって発現される。また別には、そのようなポリペプチドは、同じ組織型の正常な細胞と比較して腫瘍細胞によって過剰発現されることはないが、むしろ単一又は非常に限られた数の組織型(好ましくは生命に必須ではない組織、例えば前立腺等)の正常細胞と腫瘍細胞の双方によって特異的に発現されうる。ここで、上記のポリペプチドは全て、腫瘍関連抗原性標的ポリペプチド376及び377(それぞれ「TAT376又はTAT377」ポリペプチド)と呼ばれ、哺乳動物における癌治療及び診断の効果的な標的となることが予想される。
従って、本発明の一実施態様では、本発明は、腫瘍関連抗原性標的ポリペプチド又はその断片(「TAT376」又は「TAT377」ポリペプチド)をコードするヌクレオチド配列を有する単離された核酸分子を提供する。
ある態様では、単離された核酸分子は、(a)ここで開示されるアミノ酸配列を有する完全長TAT376又はTAT377ポリペプチド、ここで開示されるシグナルペプチドを欠くTAT376又はTAT377ポリペプチドアミノ酸配列、ここに開示される膜貫通TAT376又はTAT377ポリペプチドの細胞外ドメインで、シグナルペプチドを含む又は含まないもの、又はここに開示される完全長TAT376又はTAT377ポリペプチドアミノ酸配列の任意の他の具体的に定まった断片をコードするDNA分子、又は(b)(a)のDNA分子の相補鎖に対して、少なくとも約80%の核酸配列同一性、あるいは少なくとも約81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の核酸配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む。
他の態様では、単離された核酸分子は、(a)ここで開示される完全長TAT376又はTAT377ポリペプチドcDNAのコード化配列、ここで開示されるシグナルペプチドを欠くTAT376又はTAT377ポリペプチドのコード化配列、ここに開示される膜貫通TAT376又はTAT377ポリペプチドの細胞外ドメインのコード化配列で、シグナルペプチドを含む又は含まないもの、又はここに開示される完全長TAT376又はTAT377ポリペプチドアミノ酸配列の任意の他の具体的に定まった断片のコード化配列、又は(b)(a)のDNA分子の相補鎖に対して、少なくとも約80%の核酸配列同一性、あるいは少なくとも約81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の核酸配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む。
更なる態様では、本発明は、(a)ここで開示されるATCCに寄託されたヒトタンパク質cDNAの何れかの完全長コード化領域によってコードされる同じ成熟ポリペプチドをコードするDNA分子、又は(b)(a)のDNA分子の相補鎖に対して、少なくとも約80%の核酸配列同一性、あるいは少なくとも約81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の核酸配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む単離された核酸分子に関する。
本発明の他の態様は、膜貫通ドメイン欠損又は膜貫通ドメイン不活性化のいずれかである、又はそのようなコード化ヌクレオチド配列と相補的なTAT376又はTAT377ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む単離された核酸分子を提供し、そのようなポリペプチドの膜貫通ドメインはここで開示されている。従って、ここに記載のTAT376又はTAT377ポリペプチドの可溶性細胞外ドメインが考慮される。
他の態様では、本発明は、(a)ここで開示される完全長アミノ酸配列を有するTAT376又はTAT377ポリペプチド、ここで開示されるシグナルペプチドを欠くTAT376又はTAT377ポリペプチドアミノ酸配列、ここに開示される膜貫通TAT376又はTAT377ポリペプチドの細胞外ドメインで、シグナルペプチドを伴う又は伴わないもの、又はここで開示される完全長TAT376又はTAT377ポリペプチドアミノ酸配列の任意の他の具体的に定まった断片をコードするヌクレオチド配列、又は(b)(a)のヌクレオチド配列の相補鎖とハイブリダイズする単離された核酸分子に関する。この点に関して、本発明の実施態様は、例えば、診断プローブ、アンチセンスオリゴヌクレオチドプローブとして有用なハイブリダイゼーションプローブとしての用途を見出し得る、ここに開示される、完全長TAT376又はTAT377ポリペプチドコード化配列の断片、又はその相補鎖、又は抗TAT376又は抗TAT377ポリペプチド抗体、TAT376又はTAT377結合オリゴペプチド又はTAT376又はTAT377ポリペプチドに結合する他の小有機分子の結合部位を含むポリペプチドを任意にコードし得る完全長TAT376又はTAT377ポリペプチドのコード化断片に関する。このような核酸断片は、通常は少なくとも約5のヌクレオチド長、あるいは少なくとも約6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、105、110、115、120、125、130、135、140、145、150、155、160、165、170、175、180、185、190、195、200、210、220、230、240、250、260、270、280、290、300、310、320、330、340、350、360、370、380、390、400、410、420、430、440、450、460、470、480、490、500、510、520、530、540、550、560、570、580、590、600、610、620、630、640、650、660、670、680、690、700、710、720、730、740、750、760、770、780、790、800、810、820、830、840、850、860、870、880、890、900、910、920、930、940、950、960、970、980、990、又は1000ヌクレオチド長であり、この文脈において「約」という用語は、表示ヌクレオチド配列長にその表示長の10%を加えるか又は減じたものを意味する。TAT376又はTAT377ポリペプチドコード化ヌクレオチド配列の新規な断片は、よく知られた配列アラインメントプログラムの任意のものを使用してTAT376又はTAT377ポリペプチドコード化ヌクレオチド配列を他の既知のヌクレオチド配列にアラインメントさせ、どのTAT376又はTAT377ポリペプチドコード化ヌクレオチド配列断片が新規であるかを決定することによって、常套的に決定しうることが知られている。そのようなTAT376又はTAT377ポリペプチドコード化ヌクレオチド配列の新規な断片の全てがここで考慮される。また考慮されるものは、これらのヌクレオチド分子断片によりコードされるTAT376又はTAT377ポリペプチド断片、好ましくは抗TAT376又は抗TAT377抗体、TAT376又はTAT377結合オリゴペプチド又はTAT376又はTAT377ポリペプチドに結合する他の小有機分子に対する結合部位を含んでなるTAT376又はTAT377ポリペプチド断片である。
他の実施態様では、本発明は上記において特定した単離された核酸配列の何れかによりコードされる単離されたTAT376又はTAT377ポリペプチドを提供する。
ある態様では、本発明は、ここに開示される完全長アミノ酸配列を有するTAT376又はTAT377ポリペプチド、ここに開示されるシグナルペプチドを欠くTAT376又はTAT377ポリペプチドアミノ酸配列、ここに開示されるシグナルペプチドを有するか又は有しない膜貫通TAT376又はTAT377ポリペプチドタンパク質の細胞外ドメイン、ここに開示される核酸配列の任意のもの、又はここに開示される完全長TAT376又はTAT377ポリペプチドアミノ酸配列でその他の具体的に定まった断片によってコードされているアミノ酸配列に対して、少なくとも約80%のアミノ酸配列同一性、あるいは少なくとも約81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含む単離されたTAT376又はTAT377ポリペプチドに関する。
更なる態様では、本発明は、ここに開示されてATCCに寄託されたヒトタンパク質cDNAの何れかによりコードされるアミノ酸配列に対して、少なくとも約80%のアミノ酸配列同一性、あるいは少なくとも約81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含む単離されたTAT376又はTAT377ポリペプチドに関する。
特定の態様では、本発明は、N末端シグナル配列及び/又は開始メチオニンを持たない単離されたTAT376又はTAT377ポリペプチドを提供し、それは上述したそのようなアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列によってコードされている。これを製造する方法もまたここに開示され、これらの方法には、TAT376又はTAT377ポリペプチドの発現に適した条件下で適切なコード化核酸分子を含有するベクターを含む宿主細胞を培養し、細胞培養物からTAT376又はTAT377ポリペプチドを回収することを含む。
本発明の他の態様は、膜貫通ドメインが欠失したか又は膜貫通ドメインが不活性化している単離されたTAT376又はTAT377ポリペプチドを提供する。これを製造する方法もまたここに開示され、これらの方法には、TAT376又はTAT377ポリペプチドの発現に適した条件下で適切なコード化核酸分子を含むベクターを含む宿主細胞を培養し、細胞培養物からTAT376又はTAT377ポリペプチドを回収することを含む。
本発明の他の実施態様では、本発明は、ここで記載されているポリペプチドの何れかをコードするDNAを含むベクターを提供する。任意のそのようなベクターを含む宿主細胞も提供される。例を挙げると、宿主細胞はCHO細胞、大腸菌、又は酵母菌であり得る。ここに開示されているポリペプチドの何れかの製造方法がさらに提供され、所望するポリペプチドの発現に適切な条件下で宿主細胞を培養し、細胞培養物からその所望するポリペプチドを回収することを含んでなる。
他の実施態様では、本発明は、異種(非TAT376又は非TAT377)ポリペプチドに融合した、ここに開示のTAT376又はTAT377ポリペプチドの何れかを含む単離したキメラポリペプチドを提供する。そのようなキメラ分子の例は、例えば、エピトープタグ配列又は免疫グロブリンのFc領域等の異種ポリペプチドと融合したここに開示のTAT376又はTAT377ポリペプチドの何れかを含む。
その他の実施態様では、本発明は、上記又は下記のポリペプチドの何れかと、好ましくは特異的に結合する抗体を提供する。場合によっては、その抗体はモノクローナル抗体、抗体断片、キメラ抗体、ヒト化抗体、一本鎖抗体又は抗TAT376又は抗TAT377ポリペプチド抗体がその各抗原性エピトープと結合するのを競合的に阻害する抗体である。本発明の抗体は、例えば、メイタンシノイド又はカリケアマイシンを含む毒素のような成長阻害剤又は細胞障害剤、抗生物質、放射性同位体、核溶解性酵素等と場合によってはコンジュゲートし得る。本発明の抗体は、場合によってはCHO細胞又は細菌細胞で産生され、好ましくは、それが結合する細胞の死を誘導する。診断の目的に対しては、本発明の抗体は、検出可能に標識されたり、固体支持体に付着されたりする。
本発明の他の実施態様では、本発明はここで開示されている抗体の何れかをコードするDNAを含むベクターを提供する。任意のそのようなベクターを含む宿主細胞も提供される。例を挙げると、この宿主細胞はCHO細胞、大腸菌、又は酵母菌であり得る。ここに記載されている抗体の製造方法が更に提供され、所望する抗体の発現に適切な条件下で宿主細胞を培養し、細胞培養物からその所望する抗体を回収することを含んでなる。
他の実施態様では、本発明は、上記の又は下記のTAT376又はTAT377ポリペプチドの何れかに、好ましくは特異的に、結合するオリゴペプチド(「TAT376又はTAT377結合オリゴペプチド」)を提供する。場合によっては、本発明のTAT376又はTAT377結合オリゴペプチドは、例えばメイタンシノイド又はカリケアマイシンを含む毒素のような成長阻害剤又は細胞障害剤、抗生物質、放射性同位体、核溶解性酵素等とコンジュゲートされうる。本発明のTAT376又はTAT377結合オリゴペプチドは、場合によってはCHO細胞又は細菌細胞中で産生され、好ましくは、それが結合する細胞の死を誘導する。診断の目的に対しては、本発明のTAT376又はTAT377結合オリゴペプチドは、検出可能に標識されたり、固体支持体等に付着させられたりする。
本発明の他の実施態様では、本発明は、ここで記載されているTAT376又はTAT377結合オリゴペプチドの何れかをコードするDNAを含むベクターを提供する。任意のそのようなベクターを含む宿主細胞も提供される。例を挙げると、宿主細胞はCHO細胞、大腸菌、又は酵母菌であり得る。ここに記載されているTAT376又はTAT377結合オリゴペプチドの任意のものを製造する方法が更に提供され、所望するオリゴペプチドの発現に適切な条件下で宿主細胞を培養し、細胞培養からその所望するオリゴペプチドを回収することを含んでなる。
他の実施態様では、本発明は、上記の又は下記のTAT376又はTAT377ポリペプチドの何れかに、好ましくは特異的に、結合する小有機分子(「TAT376又はTAT377結合有機分子」)を提供する。場合によっては、本発明のTAT376又はTAT377結合有機分子は、例えばメイタンシノイド又はカリケアマイシンを含む毒素のような成長阻害剤又は細胞障害剤、抗生物質、放射性同位体、核溶解性酵素等とコンジュゲートし得る。本発明のTAT376又はTAT377結合有機分子は、好ましくは、それが結合する細胞の死を誘導する。診断の目的に対しては、本発明のTAT376又はTAT377結合有機分子は、検出可能に標識されたり、固体支持体等に付着させられたりしうる。
より更なる実施態様では、本発明は、担体と組み合わされて、ここに記載のTAT376又はTAT377ポリペプチド、ここに記載のキメラTAT376又はTAT377ポリペプチド、ここに記載の抗TAT376又は抗TAT377抗体、ここに記載のTAT376又はTAT377結合オリゴペプチド、又はここに記載のTAT376又はTAT377結合有機分子を含有する組成物に関する。場合によっては、この担体は薬学的に許容可能な担体である。
更に他の実施態様では、本発明は、容器及び容器内に収容された組成物を含む製造品に関し、その組成物には、ここに記載のTAT376又はTAT377ポリペプチド、ここに記載のキメラTAT376又はTAT377ポリペプチド、ここに記載の抗TAT376又は抗TAT377抗体、ここに記載のTAT376又はTAT377結合オリゴペプチド、又はここに記載のTAT376又はTAT377結合有機分子が含まれ得る。製造品は、更に場合によっては、腫瘍の治療的処置又は診断的検出のためのこの組成物の使用に言及する、容器に添付したラベル、又は容器内に含まれるパッケージ入物を含みうる。
本発明の他の実施態様は、TAT376又はTAT377ポリペプチド、キメラTAT376又はTAT377ポリペプチド、抗TAT376又は抗TAT377ポリペプチド抗体、TAT376又はTAT377結合オリゴペプチド、又はTAT376又はTAT377結合有機分子に反応する症状の治療に有用な医薬の調製のための、ここに記載のTAT376又はTAT377ポリペプチド、ここに記載のキメラTAT376又はTAT377ポリペプチド、ここに記載の抗TAT376又は抗TAT377ポリペプチド抗体、ここに記載のTAT376又はTAT377結合オリゴペプチド、又はここに記載のTAT376又はTAT377結合有機分子の使用に関する。
B.更なる実施態様
本発明の他の実施態様は、TAT376又はTAT377ポリペプチドを発現する細胞の成長を阻害する方法に関し、該方法は、細胞を、TAT376又はTAT377ポリペプチドと結合する抗体、オリゴペプチド又は小有機分子と接触させることを含み、ここでTAT376又はTAT377ポリペプチドへの抗体、オリゴペプチド又は有機分子の結合がTAT376又はTAT377ポリペプチドを発現する細胞の成長の阻害を引き起こす。好適な実施態様では、細胞は癌細胞であり、TAT376又はTAT377ポリペプチドへの抗体、オリゴペプチド又は有機分子の結合がTAT376又はTAT377ポリペプチドを発現する細胞の死を引き起こす。場合によっては、抗体は、モノクローナル抗体、抗体断片、キメラ抗体、ヒト化抗体、又は一本鎖抗体である。本発明の方法に用いられる抗体、TAT376又はTAT377結合オリゴペプチド及びTAT376又はTAT377結合有機分子は、例えば、メイタンシノイド又はカリケアマイシンを含む毒素のような成長阻害剤又は細胞障害剤、抗生物質、放射性同位体、核溶解性酵素等と場合によってはコンジュゲートし得る。本発明の方法に用いられる抗体及びTAT376又はTAT377結合オリゴペプチドは、場合によってはCHO細胞又は細菌細胞中で産生され得る。
本発明の更に他の実施態様は、TAT376又はTAT377ポリペプチドを発現する細胞を含む癌性細胞を持つ哺乳動物を治療的に処置する方法に関し、該方法は、TAT376又はTAT377ポリペプチドと結合する抗体、オリゴペプチド又は小有機分子の治療的に有効な量を哺乳動物に投与することを含み、それによって腫瘍の効果的な治療的処置が達成される。場合によっては、抗体は、モノクローナル抗体、抗体断片、キメラ抗体、ヒト化抗体、又は一本鎖抗体である。本発明の方法に用いられる抗体、TAT376又はTAT377結合オリゴペプチド及びTAT376又はTAT377結合有機分子は、例えば、メイタンシノイド又はカリケアマイシンを含む毒素のような成長阻害剤又は細胞障害剤、抗生物質、放射性同位体、核溶解性酵素等と場合によってはコンジュゲートされうる。本発明の方法に用いられる抗体及びオリゴペプチドは、場合によってはCHO細胞又は細菌細胞中で産生され得る。
本発明の更に他の実施態様は、TAT376又はTAT377ポリペプチドを含むと思われる試料中のTAT376又はTAT377ポリペプチドの存在を決定する方法に関し、該方法は、試料をTAT376又はTAT377ポリペプチドと結合する抗体、オリゴペプチド又は小有機分子に曝して、試料中のTAT376又はTAT377ポリペプチドへの抗体、オリゴペプチド又は有機分子の結合を定量することを含み、そのような結合の存在が、試料中のTAT376又はTAT377ポリペプチドの存在を示す。場合によっては、試料は、TAT376又はTAT377ポリペプチドを発現すると思われる細胞(癌細胞であり得る)を含み得る。この方法で用いる抗体、TAT376又はTAT377結合オリゴペプチド又はTAT376又はTAT377結合有機分子は、場合によっては検出可能なように標識されたり、固体支持体に付着させられたりする。
本発明の更なる実施態様は、哺乳動物における腫瘍の存在を診断する方法に関し、該方法は、(a)前記哺乳動物から得られた組織細胞の試験試料、及び(b)同じ組織源又は型の既知の正常な非癌性細胞のコントロール試料中における、TAT376又はTAT377ポリペプチドをコードする遺伝子の発現のレベルを検出することを含んでなり、コントロール試料と比較して、試験試料中のTAT376又はTAT377ポリペプチドのより高いレベルの発現が、試験試料が得られた哺乳動物での腫瘍の存在を示す。
本発明の他の実施態様は、哺乳動物における腫瘍の存在を診断する方法に関し、該方法は、(a)哺乳動物から得られた組織細胞の試験試料を、TAT376又はTAT377ポリペプチドと結合する抗体、オリゴペプチド又は小有機分子と接触させ、(b)試験試料中での、抗体、オリゴペプチド又は小有機分子とTAT376又はTAT377ポリペプチドの間で形成される複合体を検出することを含んでなり、複合体の形成が、哺乳動物での腫瘍の存在を示す。場合によっては、用いられる抗体、TAT376又はTAT377結合オリゴペプチド又はTAT376又はTAT377結合有機分子は、検出可能に標識されたり、固体支持体に付着されたりするか及び/又は組織細胞の試験試料が癌牲腫瘍を有すると思われる個体から得られる。
本発明の更に他の実施態様は、TAT376又はTAT377ポリペプチドの改変、好ましくは増加された発現又は活性に関連した細胞増殖性疾患を治療又は防止する方法に関し、該方法はそのような治療を必要とする患者に、有効量のTAT376又はTAT377ポリペプチドのアンタゴニストを投与することを含んでなる。好ましくは、細胞増殖性疾患は癌であり、TAT376又はTAT377ポリペプチドのアンタゴニストは抗TAT376又は抗TAT377ポリペプチド抗体、TAT376又はTAT377結合オリゴペプチド、TAT376又はTAT377結合有機分子又はアンチセンスオリゴヌクレオチドである。細胞増殖性疾患の効果的な治療又は防止はTAT376又はTAT377ポリペプチドを発現する細胞の直接の死滅又は成長阻害の結果又はTAT376又はTAT377ポリペプチドの細胞成長増強活性のアンタゴナイズによるものでありうる。
本発明の更に他の実施態様はTAT376又はTAT377ポリペプチドを発現する細胞へ抗体、オリゴペプチド又は小有機分子を結合させる方法に関し、該方法は、TAT376又はTAT377ポリペプチドを発現する細胞を、上記抗体、オリゴペプチド又は小有機分子に、抗体、オリゴペプチド又は小有機分子が上記TAT376又はTAT377ポリペプチドに結合するのに適した条件下で接触させ、それらの結合を可能にすることを含んでなる。
本発明の他の実施態様は(a)TAT376又はTAT377ポリペプチド、(b)TAT376又はTAT377ポリペプチドをコードする核酸又はその核酸を含むベクター又は宿主細胞、(c)抗TAT376又は抗TAT377ポリペプチド抗体、(d)TAT376又はTAT377結合オリゴペプチド、又は(e)TAT376又はTAT377結合小有機分子の、(i)癌又は腫瘍の治療的処置又は診断的検出、又は(ii)細胞増殖性疾患の治療的処置又は防止に有用な医薬の製造における使用に関する。
本発明の他の実施態様は、癌細胞の成長を阻害する方法に関し、ここで、上記癌細胞の成長はTAT376又はTAT377ポリペプチドの成長増強効果に少なくとも部分的に依存し(ここで、TAT376又はTAT377ポリペプチドは癌細胞自体又は癌細胞に成長増強効果を有するポリペプチドを産生する細胞の何れかによって発現されうる)、該方法は、TAT376又はTAT377ポリペプチドに結合する抗体、オリゴペプチド又は小有機分子にTAT376又はTAT377ポリペプチドを接触させることを含んでなり、それによってTAT376又はTAT377ポリペプチドの成長増強活性をアンタゴナイズし、次には癌細胞の成長を阻害する。好ましくは癌細胞の成長は完全に阻害される。更により好ましくは、TAT376又はTAT377ポリペプチドへの抗体、オリゴペプチド又は小有機分子の結合は癌細胞の死を誘導する。場合によっては、抗体はモノクローナル抗体、抗体断片、キメラ抗体、ヒト化抗体、又は一本鎖抗体である。本発明の方法において使用される抗体、TAT376又はTAT377結合オリゴペプチド及びTAT376又はTAT377結合有機分子は、例えば、メイタンシノイド又はカリケアマイシンを含む毒素のような成長阻害剤又は細胞障害剤、抗生物質、放射性同位体、核溶解性酵素等と場合によってはコンジュゲートされうる。本発明の方法に用いられる抗体及びTAT376又はTAT377結合オリゴペプチドは、場合によってはCHO細胞又は細菌細胞中で産生され得る。
本発明の更に他の実施態様は、哺乳動物において腫瘍を治療的に処置する方法に関し、ここで、上記腫瘍の成長はTAT376又はTAT377ポリペプチドの成長増強効果に少なくとも部分的に依存し、該方法は、TAT376又はTAT377ポリペプチドに結合する抗体、オリゴペプチド又は小有機分子を哺乳動物に投与することを含んでなり、それによって上記TAT376又はTAT377ポリペプチドの成長増強活性をアンタゴナイズし、腫瘍の効果的な治療的処置をもたらす。場合によっては、抗体はモノクローナル抗体、抗体断片、キメラ抗体、ヒト化抗体、又は一本鎖抗体である。本発明の方法において使用される抗体、TAT376又はTAT377結合オリゴペプチド及びTAT376又はTAT377結合有機分子は、例えば、メイタンシノイド又はカリケアマイシンを含む毒素のような成長阻害剤又は細胞障害剤、抗生物質、放射性同位体、核溶解性酵素等と場合によってはコンジュゲートされうる。本発明の方法に用いられる抗体及びオリゴペプチドは、場合によってはCHO細胞又は細菌細胞中で産生され得る。
本発明のさらなる実施形態は、本明細書を読めば当業者に明らかである。
C.更に付加的な実施態様
また更なる実施態様では、本発明はこの出願に対して次の一群の潜在的な請求項に関する:
1. (a)図3又は4(配列番号3又は4)に示されたアミノ酸配列をコードするDNA分子;
(b)図1又は2に示されたヌクレオチド配列;
(c)図1又は2(配列番号1又は2)に示されたヌクレオチド配列の完全長コード領域;又は
(d)(a)、(b)又は(c)の相補鎖;
と少なくとも80%の核酸配列同一性を有するヌクレオチド配列を有する単離された核酸。
2. (a)図3又は4(配列番号3又は4)に示されたアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列;
(b) 図1又は2に示されたヌクレオチド配列;;
(c)図1又は2(配列番号1又は2)に示されたヌクレオチド配列の完全長コード領域;又は
(d)(a)、(b)又は(c)の相補鎖;
を有する単離された核酸。
3. (a)図3又は4(配列番号3又は4)に示されたアミノ酸配列をコードする核酸;
(b) 図1又は2に示されたヌクレオチド配列;;
(c)図1又は2(配列番号1又は2)に示されたヌクレオチド配列の完全長コード領域;又は
(d)(a)、(b)又は(c)の相補鎖;
とハイブリダイズ
する単離された核酸。
4. ハイブリダイゼーションがストリンジェントな条件下で起こる、請求項3の核酸。
5. 少なくとも約5ヌクレオチド長である、請求項3の核酸。
6. 請求項1、2又は3の核酸を含んでなる発現ベクター。
7. 前記核酸がベクターで形質転換された宿主細胞によって認識されるコントロール配列と作用可能に結合している、請求項6の発現ベクター。
8. 請求項7の発現ベクターを含んでなる宿主細胞。
9. CHO細胞、大腸菌又は酵母菌である、請求項8の宿主細胞。
10. ポリペプチドの製造方法において、前記ポリペプチドの発現に適した条件下で請求項8の宿主細胞を培養し、細胞培養物から前記ポリペプチドを回収することを含んでなる方法。
11. (a)図3又は4(配列番号3又は4)に示されたポリペプチド;
(b)図1又は2(配列番号1又は2)に示されたヌクレオチド配列によってコードされるポリペプチド;又は
(c)図1又は2(配列番号1又は2)に示されたヌクレオチド配列の完全長コード領域によってコードされるポリペプチド;
と少なくとも80%のアミノ酸配列同一性を有する単離されたポリペプチド。
12. (a)図3又は4(配列番号3又は4)に示されたアミノ酸配列;
(b)図1又は2(配列番号1又は2)に示されたヌクレオチド配列によってコードされるアミノ酸配列;又は
(c)図1又は2(配列番号1又は2)に示されたヌクレオチド配列の完全長コード領域によってコードされるアミノ酸配列;
を有する単離されたポリペプチド。
13. 異種ポリペプチドと融合した請求項11又は12のポリペプチドを含んでなるキメラポリペプチド。
14. 前記異種ポリペプチドが免疫グロブリンのFc領域又はエピトープタグ配列である、請求項13のキメラポリペプチド。
15. (a)図3又は4(配列番号3又は4)に示されたポリペプチド;
(b)図1又は2(配列番号1又は2)に示されたヌクレオチド配列によってコードされるポリペプチド;又は
(c)図1又は2(配列番号1又は2)に示されたヌクレオチド配列の完全長コード領域によってコードされるポリペプチド;
と少なくとも80%のアミノ酸配列同一性を有するポリペプチドに結合する単離された抗体。
16. (a)図3又は4(配列番号3又は4)に示されたアミノ酸配列;
(b)図1又は2(配列番号1又は2)に示されたヌクレオチド配列によってコードされるアミノ酸配列;又は
(c)図1又は2(配列番号1又は2)に示されたヌクレオチド配列の完全長コード領域によってコードされるアミノ酸配列;
を有するポリペプチドに結合する単離された抗体。
17. モノクローナル抗体である請求項15又は16の抗体。
18. 抗体断片である請求項15又は16の抗体。
19. キメラ又はヒト化抗体である、請求項15又は16の抗体。
20. 成長阻害剤とコンジュゲートしている請求項15又は16の抗体。
21. 細胞障害剤とコンジュゲートしている請求項15又は16の抗体。
22. 細胞障害剤が毒素、抗生物質、放射性同位元素及び核酸分解酵素からなる群より選択される、請求項21の抗体。
23. 細胞障害剤が毒素である請求項21の抗体。
24. 毒素がメイタンシノイド及びカリケアマイシンからなる群より選択される、請求項23の抗体。
25. 毒素がメイタンシノイドである請求項23の抗体。
26. 細菌で産生される請求項15又は16の抗体。
27. CHO細胞で産生される請求項15又は16の抗体。
28. 結合する細胞の死を誘導する請求項15又は16の抗体。
29. 検出可能に標識されている請求項15又は16の抗体。
30. 請求項15又は16の抗体をコードするヌクレオチド配列を含んでなる、単離された核酸。
31. ベクターで形質転換された宿主細胞によって認識されるコントロール配列と作用可能に結合している、請求項30の核酸を含んでなる発現ベクター。
32. 請求項31の発現ベクターを含んでなる宿主細胞。
33. CHO細胞、大腸菌又は酵母菌である、請求項32の宿主細胞。
34. 抗体の製造方法において、前記抗体の発現に適した条件下で請求項32の宿主細胞を培養し、細胞培養物から前記抗体を回収することを含んでなる方法。
35. (a)図3又は4(配列番号3又は4)に示されたポリペプチド;
(b)図1又は2(配列番号1又は2)に示されたヌクレオチド配列によってコードされるポリペプチド;又は
(c)図1又は2(配列番号1又は2)に示されたヌクレオチド配列の完全長コード領域によってコードされるポリペプチド;
と少なくとも80%のアミノ酸配列同一性を有するポリペプチドに結合する単離されたオリゴペプチド。
36. (a)図3又は4(配列番号3又は4)に示されたアミノ酸配列;
(b)図1又は2(配列番号1又は2)に示されたヌクレオチド配列によってコードされるアミノ酸配列;又は
(c)図1又は2(配列番号1又は2)に示されたヌクレオチド配列の完全長コード領域によってコードされるアミノ酸配列;
を有するポリペプチドに結合する単離されたオリゴペプチド。
37. 成長阻害剤とコンジュゲートしている請求項35又は36のオリゴペプチド。
38. 細胞障害剤とコンジュゲートしている請求項35又は36のオリゴペプチド。
39. 細胞障害剤が毒素、抗生物質、放射性同位元素及び核酸分解酵素からなる群より選択される、請求項38のオリゴペプチド。
40. 細胞障害剤が毒素である請求項38のオリゴペプチド。
41. 毒素がメイタンシノイド及びカリケアマイシンからなる群より選択される、請求項40のオリゴペプチド。
42. 毒素がメイタンシノイドである請求項40のオリゴペプチド。
43. 結合する細胞の死を誘導する請求項35又は36のオリゴペプチド。
44. 検出可能に標識されている請求項35又は36のオリゴペプチド。
45. (a)図3又は4(配列番号3又は4)に示されたポリペプチド;
(b)図1又は2(配列番号1又は2)に示されたヌクレオチド配列によってコードされるポリペプチド;又は
(c)図1又は2(配列番号1又は2)に示されたヌクレオチド配列の完全長コード領域によってコードされるポリペプチド;
と少なくとも80%のアミノ酸配列同一性を有するポリペプチドに結合するTAT376又はTAT377結合有機分子。
46. (a)図3又は4(配列番号3又は4)に示されたアミノ酸配列;
(b)図1又は2(配列番号1又は2)に示されたヌクレオチド配列によってコードされるアミノ酸配列;又は
(c)図1又は2(配列番号1又は2)に示されたヌクレオチド配列の完全長コード領域によってコードされるアミノ酸配列;
を有するポリペプチドに結合する請求項45の有機分子。
47. 成長阻害剤とコンジュゲートしている請求項45又は46の有機分子。
48. 細胞障害剤とコンジュゲートしている請求項45又は46の有機分子。
49. 細胞障害剤が毒素、抗生物質、放射性同位元素及び核酸分解酵素からなる群より選択される、請求項48の有機分子。
50. 細胞障害剤が毒素である請求項48の有機分子。
51. 毒素がメイタンシノイド及びカリケアマイシンからなる群より選択される、請求項50の有機分子。
52. 毒素がメイタンシノイドである請求項50の有機分子。
53. 結合する細胞の死を誘導する請求項45又は46の有機分子。
54. 検出可能に標識されている請求項45又は46の有機分子。
55. 担体と組み合わせて、
(a)請求項11のポリペプチド;
(b)請求項12のポリペプチド;
(c)請求項13のキメラポリペプチド;
(d)請求項15の抗体;
(e)請求項16の抗体;
(f)請求項35のオリゴペプチド;
(g)請求項36のオリゴペプチド;
(h)請求項45のTAT376又はTAT377結合有機分子;又は
(i)請求項46のTAT376又はTAT377結合有機分子;
を含んでなる組成物。
56. 前記担体が薬学的に許容可能な担体である、請求項55の組成物。
57. (a)容器;及び
(b)前記容器に含まれる請求項55の組成物;
を含んでなる製造品。
58. 癌の治療的処置又は診断的検出のための前記組成物の使用に言及している、前記容器に添付されているラベル、又は前記容器に包含されているパッケージ挿入物を更に含んでなる、請求項57の製造品。
59. (a)図3又は4(配列番号3又は4)に示されたポリペプチド;
(b)図1又は2(配列番号1又は2)に示されたヌクレオチド配列によってコードされるポリペプチド;又は
(c)図1又は2(配列番号1又は2)に示されたヌクレオチド配列の完全長コード領域によってコードされるポリペプチド;
と少なくとも80%のアミノ酸配列同一性を有するタンパク質を発現する細胞の成長を阻害する方法であって、前記細胞を、前記タンパク質と結合する抗体、オリゴペプチド又は有機分子と接触させることを含んでなり、前記抗体、オリゴペプチド又は有機分子への前記抗体の結合によって前記細胞の成長の阻害を生じさせる方法。
60. 前記抗体がモノクローナル抗体である請求項59の方法。
61. 前記抗体が抗体断片である請求項59の方法。
62. 前記抗体がキメラ又はヒト化抗体である請求項59の方法。
63. 前記抗体、オリゴペプチド又は有機分子が成長阻害剤とコンジュゲートしている請求項59の方法。
64. 前記抗体、オリゴペプチド又は有機分子が細胞障害剤とコンジュゲートしている請求項59の方法。
65. 前記細胞障害剤が毒素、抗生物質、放射性同位元素及び核酸分解酵素からなる群より選択される、請求項64の方法。
66. 細胞障害剤が毒素である請求項64の方法。
67. 毒素がメイタンシノイド及びカリケアマイシンからなる群より選択される、請求項66の方法。
68. 毒素がメイタンシノイドである請求項66の方法。
69. 前記抗体が細菌中で産生される請求項59の方法。
70. 前記抗体がCHO細胞中で産生される請求項59の方法。
71. 前記細胞が癌細胞である請求項59の方法。
72. 前記癌細胞を更に放射線療法又は化学療法剤に曝す、請求項71の方法。
73. 前記癌細胞が、乳癌細胞、結腸直腸癌細胞、肺癌細胞、卵巣癌細胞、中枢神経系癌細胞、肝臓癌細胞、膀胱癌細胞、膵臓癌細胞、子宮頚癌細胞、メラノーマ細胞及び白血病細胞からなる群より選択される、請求項71の方法。
74. 前記タンパク質が、同じ組織起源の正常細胞と比較して、前記癌細胞によってより豊富に発現される、請求項71の方法。
75. 前記細胞の死を引き起こす請求項59の方法。
76. 前記タンパク質が、
(a)図3又は4(配列番号3又は4)に示されたアミノ酸配列;
(b)図1又は2(配列番号1又は2)に示されたヌクレオチド配列によってコードされるアミノ酸配列;又は
(c)図1又は2(配列番号1又は2)に示されたヌクレオチド配列の完全長コード領域によってコードされるアミノ酸配列;
を有する、請求項59の方法。
77. (a)図3又は4(配列番号3又は4)に示されたポリペプチド;
(b)図1又は2(配列番号1又は2)に示されたヌクレオチド配列によってコードされるポリペプチド;又は
(c)図1又は2(配列番号1又は2)に示されたヌクレオチド配列の完全長コード領域によってコードされるポリペプチド;
と少なくとも80%のアミノ酸配列同一性を有するタンパク質を発現する細胞を含む癌性腫瘍を持つ哺乳動物を治療的に処置する方法であって、前記哺乳動物に、前記タンパク質と結合する抗体、オリゴペプチド又は有機分子の治療的有効量を投与することを含んでなり、それによって前記哺乳動物を効果的に治療する方法。
78. 前記抗体がモノクローナル抗体である請求項77の方法。
79. 前記抗体が抗体断片である請求項77の方法。
80. 前記抗体がキメラ又はヒト化抗体である請求項77の方法。
81. 前記抗体、オリゴペプチド又は有機分子が成長阻害剤とコンジュゲートしている請求項77の方法。
82. 前記抗体、オリゴペプチド又は有機分子が細胞障害剤とコンジュゲートしている請求項77の方法。
83. 前記細胞障害剤が毒素、抗生物質、放射性同位元素及び核酸分解酵素からなる群より選択される、請求項82の方法。
84. 細胞障害剤が毒素である請求項82の方法。
85. 毒素がメイタンシノイド及びカリケアマイシンからなる群より選択される、請求項84の方法。
86. 毒素がメイタンシノイドである請求項84の方法。
87. 前記抗体が細菌中で産生される請求項77の方法。
88. 前記抗体がCHO細胞中で産生される請求項77の方法。
89. 前記腫瘍を更に放射線治療又は化学療法剤へ曝す、請求項77の方法。
90. 前記腫瘍が、乳腫瘍、結腸直腸腫瘍、肺腫瘍、卵巣腫瘍、中枢神経系腫瘍、肝臓腫瘍、膀胱腫瘍、膵臓腫瘍、又は子宮頚腫瘍である、請求項77の方法。
91. 前記タンパク質が、同じ組織起源の正常細胞と比較して、前記腫瘍の癌性細胞によってより豊富に発現される、請求項77の方法。
92. 前記タンパク質が、
(a)図3又は4(配列番号3又は4)に示されたアミノ酸配列;
(b)図1又は2(配列番号1又は2)に示されたヌクレオチド配列によってコードされるアミノ酸配列;又は
(c)図1又は2(配列番号1又は2)に示されたヌクレオチド配列の完全長コード領域によってコードされるアミノ酸配列;
を有する、請求項77の方法。
93. 前記タンパク質を含有すると思われる試料中におけるタンパク質の存在を決定する方法において、前記タンパク質が、
(a)図3又は4(配列番号3又は4)に示されたポリペプチド;
(b)図1又は2(配列番号1又は2)に示されたヌクレオチド配列によってコードされるポリペプチド;又は
(c)図1又は2(配列番号1又は2)に示されたヌクレオチド配列の完全長コード領域によってコードされるポリペプチド;
と少なくとも80%のアミノ酸配列同一性を有し、前記試料を、前記タンパク質と結合する抗体、オリゴペプチド又は有機分子に曝し、前記抗体、オリゴペプチド又は有機分子の前記試料中の前記タンパク質との結合を決定することを含んでなり、前記タンパク質との抗体、オリゴペプチド又は有機分子の結合が前記試料中の前記タンパク質の存在を示す方法。
94. 前記試料が前記タンパク質を発現すると思われる細胞を含む、請求項93の方法。
95. 前記細胞が癌細胞である請求項94の方法。
96. 前記抗体、オリゴペプチド又は有機分子を検出可能に標識する請求項93の方法。
97. 前記タンパク質が、
(a)図3又は4(配列番号3又は4)に示されたアミノ酸配列;
(b)図1又は2(配列番号1又は2)に示されたヌクレオチド配列によってコードされるアミノ酸配列;又は
(c)図1又は2(配列番号1又は2)に示されたヌクレオチド配列の完全長コード領域によってコードされるアミノ酸配列;
を有する、請求項93の方法。
98. 哺乳動物中の腫瘍の存在を診断する方法であって、前記哺乳動物から得た組織細胞の試験試料中、及び同じ組織起源の既知の正常細胞のコントロール試料中で、
(a)図3又は4(配列番号3又は4)に示されたポリペプチド;
(b)図1又は2(配列番号1又は2)に示されたヌクレオチド配列によってコードされるポリペプチド;又は
(c)図1又は2(配列番号1又は2)に示されたヌクレオチド配列の完全長コード領域によってコードされるポリペプチド;
と少なくとも80%のアミノ酸配列同一性を有するタンパク質をコードする遺伝子の発現のレベルを決定することを含んでなり、コントロール試料と比較しての試験試料中の前記タンパク質の高レベルの発現が試験試料を得た哺乳動物中における腫瘍の存在を示す方法。
99. 前記タンパク質をコードする遺伝子の発現のレベルを検出する工程が、インサイツハイブリダイゼーション又はRT-PCR分析でオリゴヌクレオチドを用いることを含む、請求項98の方法。
100. 前記タンパク質をコードする遺伝子の発現のレベルを検出する工程が、免疫組織化学分析又はウェスタンブロット分析で抗体を用いることを含む、請求項98の方法。
101. 前記タンパク質が、
(a)図3又は4(配列番号3又は4)に示されたアミノ酸配列;
(b)図1又は2(配列番号1又は2)に示されたヌクレオチド配列によってコードされるアミノ酸配列;又は
(c)図1又は2(配列番号1又は2)に示されたヌクレオチド配列の完全長コード領域によってコードされるアミノ酸配列;
を有する、請求項98の方法。
102. 哺乳動物における腫瘍の存在を診断する方法であって、前記哺乳動物から得た組織細胞の試験試料を、
(a)図3又は4(配列番号3又は4)に示されたポリペプチド;
(b)図1又は2(配列番号1又は2)に示されたヌクレオチド配列によってコードされるポリペプチド;又は
(c)図1又は2(配列番号1又は2)に示されたヌクレオチド配列の完全長コード領域によってコードされるポリペプチド;
と少なくとも80%のアミノ酸配列同一性を有するタンパク質に結合する抗体、オリゴペプチド又は有機分子と接触させ、試験試料中の前記抗体、オリゴペプチド又は有機分子と前記タンパク質間の複合体の形成を検出することを含んでなり、複合体の形成が前記哺乳動物中における腫瘍の存在を示す方法。
103. 前記抗体、オリゴペプチド又は有機分子を検出可能に標識する請求項102の方法。
104. 組織細胞の前記試験試料を癌性腫瘍を有すると思われる個体から得る、請求項102の方法。
105. 前記タンパク質が、
(a)図3又は4(配列番号3又は4)に示されたアミノ酸配列;
(b)図1又は2(配列番号1又は2)に示されたヌクレオチド配列によってコードされるアミノ酸配列;又は
(c)図1又は2(配列番号1又は2)に示されたヌクレオチド配列の完全長コード領域によってコードされるアミノ酸配列;
を有する、請求項102の方法。
106. (a)図3又は4(配列番号3又は4)に示されたポリペプチド;
(b)図1又は2(配列番号1又は2)に示されたヌクレオチド配列によってコードされるポリペプチド;又は
(c)図1又は2(配列番号1又は2)に示されたヌクレオチド配列の完全長コード領域によってコードされるポリペプチド;
と少なくとも80%のアミノ酸配列同一性を有するタンパク質の発現又は活性の増加に関連した細胞増殖性疾患を治療し又は防止する方法であって、前記タンパク質のアンタゴニストの有効量を、そのような治療を必要とする患者に投与し、よって前記細胞増殖性疾患を効果的に治療又は防止することを含んでなる方法。
107. 前記細胞増殖性疾患が癌である請求項106の方法。
108. 前記アンタゴニストが、抗TAT376又は抗TAT377ポリペプチド抗体、TAT376又はTAT377結合オリゴペプチド、TAT376又はTAT377結合有機分子又はアンチセンスオリゴヌクレオチドである、請求項106の方法。
109. (a)図3又は4(配列番号3又は4)に示されたポリペプチド;
(b)図1又は2(配列番号1又は2)に示されたヌクレオチド配列によってコードされるポリペプチド;又は
(c)図1又は2(配列番号1又は2)に示されたヌクレオチド配列の完全長コード領域によってコードされるポリペプチド;
と少なくとも80%のアミノ酸配列同一性を有するタンパク質を発現する細胞に抗体、オリゴペプチド又は有機分子を結合させる方法であって、前記タンパク質に結合する抗体、オリゴペプチド又は有機分子に前記細胞を接触させ、前記タンパク質への抗体、オリゴペプチド又は有機分子の結合を可能にし、よって前記細胞へ前記抗体、オリゴペプチド又は有機分子を結合させる方法。
110. 前記抗体がモノクローナル抗体である請求項109の方法。
111. 前記抗体が抗体断片である請求項109の方法。
112. 前記抗体がキメラ又はヒト化抗体である請求項109の方法。
113. 前記抗体、オリゴペプチド又は有機分子が成長阻害剤とコンジュゲートしている請求項109の方法。
114. 前記抗体、オリゴペプチド又は有機分子が細胞障害剤とコンジュゲートしている請求項109の方法。
115. 前記細胞障害剤が毒素、抗生物質、放射性同位元素及び核酸分解酵素からなる群より選択される、請求項114の方法。
116. 細胞障害剤が毒素である請求項114の方法。
117. 毒素がメイタンシノイド及びカリケアマイシンからなる群より選択される、請求項116の方法。
118. 毒素がメイタンシノイドである請求項116の方法。
119. 前記抗体が細菌中で産生される請求項109の方法。
120. 前記抗体がCHO細胞中で産生される請求項109の方法。
121. 前記細胞が癌細胞である請求項109の方法。
122. 前記癌細胞を更に放射線療法又は化学療法剤に曝す、請求項121の方法。
123. 前記癌細胞が、乳癌細胞、結腸直腸癌細胞、肺癌細胞、卵巣癌細胞、中枢神経系癌細胞、肝臓癌細胞、膀胱癌細胞、膵臓癌細胞、子宮頚癌細胞、メラノーマ細胞及び白血病細胞からなる群より選択される、請求項121の方法。
124. 前記タンパク質が、同じ組織起源の正常細胞と比較して、前記癌細胞によってより豊富に発現される、請求項123の方法。
125. 前記細胞の死を引き起こす請求項109の方法。
126. 癌の治療的処置又は診断的検出のための医薬の製造における、請求項1ないし5又は30の何れか1項に記載の核酸の使用。
127. 腫瘍を治療するための医薬の製造における、請求項1ないし5又は30の何れか1項に記載の核酸の使用。
128. 細胞増殖性疾患の治療又は防止のための医薬の製造における、請求項1ないし5又は30の何れか1項に記載の核酸の使用。
129. 癌の治療的処置又は診断的検出のための医薬の製造における、請求項6、7又は31の何れか1項に記載の発現ベクターの使用。
130. 腫瘍を治療するための医薬の製造における、請求項6、7又は31の何れか1項に記載の発現ベクターの使用。
131. 細胞増殖性疾患の治療又は防止のための医薬の製造における、請求項6、7又は31の何れか1項に記載の発現ベクターの使用。
132. 癌の治療的処置又は診断的検出のための医薬の製造における、請求項8、9、32又は33の何れか1項に記載の宿主細胞の使用。
133. 腫瘍を治療するための医薬の製造における、請求項8、9、32又は33の何れか1項に記載の宿主細胞の使用。
134. 細胞増殖性疾患の治療又は防止のための医薬の製造における、請求項8、9、32又は33の何れか1項に記載の宿主細胞の使用。
135. 癌の治療的処置又は診断的検出のための医薬の製造における、請求項11ないし14の何れか1項に記載のポリペプチドの使用。
136. 腫瘍を治療するための医薬の製造における、請求項11ないし14の何れか1項に記載のポリペプチドの使用。
137. 細胞増殖性疾患の治療又は防止のための医薬の製造における、請求項11ないし14の何れか1項に記載のポリペプチドの使用。
138. 癌の治療的処置又は診断的検出のための医薬の製造における、請求項15ないし29の何れか1項に記載の抗体の使用。
139. 腫瘍を治療するための医薬の製造における、請求項15ないし29の何れか1項に記載の抗体の使用。
140. 細胞増殖性疾患の治療又は防止のための医薬の製造における、請求項15ないし29の何れか1項に記載の抗体の使用。
141. 癌の治療的処置又は診断的検出のための医薬の製造における、請求項35ないし44の何れか1項に記載のオリゴペプチドの使用。
142. 腫瘍を治療するための医薬の製造における、請求項35ないし44の何れか1項に記載のオリゴペプチドの使用。
143. 細胞増殖性疾患の治療又は防止のための医薬の製造における、請求項35ないし44の何れか1項に記載のオリゴペプチドの使用。
144. 癌の治療的処置又は診断的検出のための医薬の製造における、請求項45ないし54の何れか1項に記載のTAT376又はTAT377結合有機分子の使用。
145. 腫瘍を治療するための医薬の製造における、請求項45ないし54の何れか1項に記載のTAT376又はTAT377結合有機分子の使用。
146. 細胞増殖性疾患の治療又は防止のための医薬の製造における、請求項45ないし54の何れか1項に記載のTAT376又はTAT377結合有機分子の使用。
147. 癌の治療的処置又は診断的検出のための医薬の製造における、請求項55又は56に記載の組成物の使用。
148. 腫瘍を治療するための医薬の製造における、請求項55又は56に記載の組成物の使用。
149. 細胞増殖性疾患の治療又は防止のための医薬の製造における、請求項55又は56に記載の組成物の使用。
150. 癌の治療的処置又は診断的検出のための医薬の製造における、請求項57又は58に記載の製造品の使用。
151. 腫瘍を治療するための医薬の製造における、請求項57又は58に記載の製造品の使用。
152. 細胞増殖性疾患の治療又は防止のための医薬の製造における、請求項57又は58に記載の製造品の使用。
153. 細胞の成長を阻害する方法であって、前記細胞の成長が、
(a)図3又は4(配列番号3又は4)に示されたポリペプチド;
(b)図1又は2(配列番号1又は2)に示されたヌクレオチド配列によってコードされるポリペプチド;又は
(c)図1又は2(配列番号1又は2)に示されたヌクレオチド配列の完全長コード領域によってコードされるポリペプチド;
と少なくとも80%のアミノ酸配列同一性を有するタンパク質の成長増強効果に少なくとも部分的に依存し、前記タンパク質を、前記タンパク質に結合する抗体、オリゴペプチド又は有機分子に接触させ、それによって前記細胞の成長を阻害する方法。
154. 前記細胞が癌細胞である請求項153の方法。
155. 前記タンパク質が前記細胞によって発現される請求項153の方法。
156. 前記タンパク質との前記抗体、オリゴペプチド又は有機分子の結合が前記タンパク質の細胞成長増強活性をアンタゴナイズする請求項153の方法。
157. 前記タンパク質との前記抗体、オリゴペプチド又は有機分子の結合が前記細胞の死を誘導する請求項153の方法。
158. 前記抗体がモノクローナル抗体である請求項153の方法。
159. 前記抗体が抗体断片である請求項153の方法。
160. 前記抗体がキメラ又はヒト化抗体である請求項153の方法。
161. 前記抗体、オリゴペプチド又は有機分子が成長阻害剤とコンジュゲートしている請求項153の方法。
162. 前記抗体、オリゴペプチド又は有機分子が細胞障害剤とコンジュゲートしている請求項153の方法。
163. 前記細胞障害剤が毒素、抗生物質、放射性同位元素及び核酸分解酵素からなる群より選択される、請求項162の方法。
164. 細胞障害剤が毒素である請求項162の方法。
165. 毒素がメイタンシノイド及びカリケアマイシンからなる群より選択される、請求項164の方法。
166. 毒素がメイタンシノイドである請求項164の方法。
167. 前記抗体が細菌中で産生される請求項153の方法。
168. 前記抗体がCHO細胞中で産生される請求項153の方法。
169. 前記タンパク質が、
(a)図3又は4(配列番号3又は4)に示されたアミノ酸配列;
(b)図1又は2(配列番号1又は2)に示されたヌクレオチド配列によってコードされるアミノ酸配列;又は
(c)図1又は2(配列番号1又は2)に示されたヌクレオチド配列の完全長コード領域によってコードされるアミノ酸配列;
を有する、請求項153の方法。
170. 哺乳動物中の腫瘍を治療的に処置する方法であって、前記腫瘍の成長が、
(a)図3又は4(配列番号3又は4)に示されたポリペプチド;
(b)図1又は2(配列番号1又は2)に示されたヌクレオチド配列によってコードされるポリペプチド;又は
(c)図1又は2(配列番号1又は2)に示されたヌクレオチド配列の完全長コード領域によってコードされるポリペプチド;
と少なくとも80%のアミノ酸配列同一性を有するタンパク質の成長増強効果に少なくとも部分的に依存し、前記タンパク質を、前記タンパク質に結合する抗体、オリゴペプチド又は有機分子に接触させ、それによって前記腫瘍を効果的に治療する方法。
171. 前記タンパク質が前記腫瘍の細胞によって発現される請求項170の方法。
172. 前記タンパク質との前記抗体、オリゴペプチド又は有機分子の結合が前記タンパク質の細胞成長増強活性をアンタゴナイズする請求項170の方法。
173. 前記抗体がモノクローナル抗体である請求項170の方法。
174. 前記抗体が抗体断片である請求項170の方法。
175. 前記抗体がキメラ又はヒト化抗体である請求項170の方法。
176. 前記抗体、オリゴペプチド又は有機分子が成長阻害剤とコンジュゲートしている請求項170の方法。
177. 前記抗体、オリゴペプチド又は有機分子が細胞障害剤とコンジュゲートしている請求項170の方法。
178. 前記細胞障害剤が毒素、抗生物質、放射性同位元素及び核酸分解酵素からなる群より選択される、請求項177の方法。
179. 細胞障害剤が毒素である請求項177の方法。
180. 毒素がメイタンシノイド及びカリケアマイシンからなる群より選択される、請求項179の方法。
181. 毒素がメイタンシノイドである請求項179の方法。
182. 前記抗体が細菌中で産生される請求項170の方法。
183. 前記抗体がCHO細胞中で産生される請求項170の方法。
184. 前記タンパク質が、
(a)図3又は4(配列番号3又は4)に示されたアミノ酸配列;
(b)図1又は2(配列番号1又は2)に示されたヌクレオチド配列によってコードされるアミノ酸配列;又は
(c)図1又は2(配列番号1又は2)に示されたヌクレオチド配列の完全長コード領域によってコードされるアミノ酸配列;
を有する、請求項170の方法。
本発明のさらなる実施態様は、本明細書を読むことで熟練者にとって明らかとなるであろう。
(好ましい実施態様の詳細な説明)
I.定義
ここで使用される「TATポリペプチド」及び「TAT」という用語は、直後に数値表示がある場合には種々のポリペプチドを指し、完全な表示(つまり、TAT/数字)は、ここに記載する特定のポリペプチド配列を意味する。「数字」という用語がここでは実際の数的表示として提供されている「TAT/数字ポリペプチド」及び「TAT/数字」という用語には、天然配列ポリペプチド、ポリペプチド変異体及び天然配列ポリペプチドとポリペプチド変異体の断片(ここでさらに定義される)を包含する。ここに記載されているTATポリペプチドは、ヒト組織型又は他の供給源といった種々の供給源から単離してもよく、あるいは組換え又は合成法によって調製してもよい。「TATポリペプチド」という用語は、ここに記載の各個々のTAT/数字ポリペプチドを指す。「TATポリペプチド」を指すこの明細書の全ての開示は、各ポリペプチドを個々に指すと同時に集合的に指す。例えば、調製、精製、誘導、抗体の形成、TAT結合オリゴペプチドの形成、TAT結合有機分子の形成、投与、含有する組成物、疾患の治療等の記載は、本発明の各ポリペプチドに関している。「TATポリペプチド」という用語は、また、ここに記載のTAT/数字ポリペプチドの変異体を含む。
「Achaete−Scute様2」又は「ASCK2」は、GenbankのAF442769として同定されている既知の完全長遺伝子配列に相当する。完全長のスプライスされていない転写物は2つの翻訳領域を有する2つのエキソンを含み、第一のエキソン内の第一の第一の翻訳領域は「TAT376」(HASAPという名称と同義)と命名されたポリペプチドをコードし、第二のエキソン内の第二の翻訳領域は「TAT377」(HASH2という名称と同義)と命名されたポリペプチドをコードするものと同定されている。よって、「TAT376」ポリペプチドという言い方は、HASAPポリペプチドという名称に交換可能であり、逆もまた可である。「TAT377」ポリペプチドという言い方は、HASH2ポリペプチドという名称に交換可能であり、逆もまた可である。
「スプライスされたASCL2」転写物は、本明細書で「TAT377」(HASH2と同義)と同定された転写物をコードするスプライスされていない完全長遺伝子の第一エキソン内のスプライスに相当する。「TAT377」ポリペプチドという言い方は、HASH2ポリペプチドという名称に交換可能であり、逆もまた可である。
「天然配列TAT376又はTAT377ポリペプチド」には、天然由来のTAT376又はTAT377ポリペプチドに対応する同一のアミノ酸配列を有するポリペプチドが含まれる。このような天然配列TAT376又はTAT377ポリペプチドは、自然から単離することもできるし、組換え又は合成手段により生成することもできる。「天然配列TAT376又はTAT377ポリペプチド」という用語には、特に、特定のTAT376又はTAT377ポリペプチドの自然に生じる切断又は分泌形態(例えば、細胞外ドメイン配列)、自然に生じる変異形態(例えば、選択的にスプライシングされた形態)及びそのポリペプチドの自然に生じる対立遺伝子変異体が含まれる。本発明のある実施態様では、ここに開示される天然配列TAT376又はTAT377ポリペプチドは、添付図に示される完全長アミノ酸配列を含む成熟又は完全長天然配列ポリペプチドである。開始及び停止コドン(示されているならば)は、図において太字及び下線で示した。添付図に「N」で示した核酸残基は、任意の核酸残基である。しかし、添付図に開示したTAT376又はTAT377ポリペプチドは、図面においてアミノ酸位置1としてここに表示されたメチオニン残基で始まるように示されているが、図面におけるアミノ酸位置1の上流又は下流に位置する他のメチオニン残基をTAT376又はTAT377ポリペプチドの開始アミノ酸残基として用いることも考えられるし、可能でもある。
ここに開示する種々のTAT376又はTAT377ポリペプチドの「シグナルペプチド」のおおよその位置は、本明細書及び/又は添付図に示されうる。しかし、シグナルペプチドのC末端境界は変化しうるが、ここで最初に定義したようにシグナルペプチドC末端境界の何れかの側で約5アミノ酸未満である可能性が最も高く、シグナルペプチドのC末端境界は、そのような型のアミノ酸配列成分を同定するのに日常的に使用される基準に従って同定しうることに留意される(例えば、Nielsen等, Prot. Eng.10: 1-6 (1997)及びvon Heinje等, Nucl. Acids. Res. 14: 4683-4690 (1986))。更に、幾つかの場合には、分泌ポリペプチドからのシグナル配列の切断は完全に均一ではなく、一つ以上の分泌種をもたらすことも認められる。シグナルペプチドがここに同定されるシグナルペプチドのC末端境界の何れかの側の約5アミノ酸未満内で切断されるこれらの成熟ポリペプチド、及びそれらをコードするポリヌクレオチドは、本発明で考慮される。
「TAT376又はTAT377ポリペプチド変異体」とはTAT376又はTAT377ポリペプチド、好ましくは、ここに開示するような完全長天然配列TAT376又はTAT377ポリペプチド配列、ここで開示するようなシグナルペプチドを欠くTAT376又はTAT377ポリペプチド配列、ここに開示するようなシグナルペプチドを有する又は有しないTAT376又はTAT377ポリペプチドの細胞外ドメイン又はここに開示する完全長TAT376又はTAT377ポリペプチド配列の任意の他の断片(例えば、完全長TAT376又はTAT377ポリペプチドの完全なコード配列の一部のみを示す核酸によってコードされるもの)と少なくとも約80%のアミノ酸配列同一性を有するここで定義するような活性なTAT376又はTAT377ポリペプチドを意味する。このようなTAT376又はTAT377ポリペプチド変異体には、例えば、完全長天然アミノ酸配列のN末端又はC末端において一又は複数のアミノ酸残基が付加、もしくは欠失されたTAT376又はTAT377ポリペプチドが含まれる。通常、TAT376又はTAT377ポリペプチド変異体は、ここに開示する完全長天然配列TAT376又はTAT377ポリペプチド配列、ここに開示するシグナルペプチドを欠くTAT376又はTAT377ポリペプチド配列、シグナルペプチドを有する又は有しないここに開示するTAT376又はTAT377ポリペプチドの細胞外ドメイン、又はここに開示する完全長TAT376又はTAT377ポリペプチド配列の任意の具体的に定義した他の断片に対して、少なくとも約80%のアミノ酸配列同一性、あるいは少なくとも約81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%のアミノ酸配列同一性を有している。通常、TAT変異体ポリペプチドは、少なくとも約10アミノ酸長、あるいは少なくとも約20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220、230、240、250、260、270、280、290、300、310、320、330、340、350、360、370、380、390、400、410、420、430、440、450、460、470、480、490、500、510、520、530、540、550、560、570、580、590、600アミノ酸長、又はそれ以上である。場合によっては、TAT変異体ポリペプチドは、天然TAT376又はTAT377ポリペプチド配列に比較して一つ以下の保存的アミノ酸置換、あるいは天然TAT376又はTAT377ポリペプチド配列に比較して2、3、4、5、6、7、8、9、又は10以下の同類アミノ酸置換を有するにすぎない。
ここで同定したTAT376又はTAT377ポリペプチド配列に関する「パーセント(%)アミノ酸配列同一性」とは、配列を整列させ、最大のパーセント配列同一性を得るために必要ならば間隙を導入し、如何なる同類置換も配列同一性の一部と考えないとした後の、特定のTAT376又はTAT377ポリペプチド配列のアミノ酸残基と同一である候補配列中のアミノ酸残基のパーセントとして定義される。パーセントアミノ酸配列同一性を決定する目的のためのアラインメントは、当業者の技量の範囲にある種々の方法、例えばBLAST、BLAST-2、ALIGN、又はMegalign(DNASTAR)ソフトウエアのような公に入手可能なコンピュータソフトウエアを使用することにより達成可能である。当業者であれば、比較される配列の完全長に対して最大のアラインメントを達成するために必要な任意のアルゴリズムを含む、アラインメントを測定するための適切なパラメータを決定することができる。しかし、ここでの目的のためには、%アミノ酸配列同一性値は、ALIGN-2プログラム用の完全なソースコードが下記の表1に提供されている配列比較コンピュータプログラムALIGN-2を使用することによって得られる。ALIGN-2配列比較コンピュータプログラムはジェネンテック社によって作成され、下記の表1に示したソースコードは米国著作権庁, ワシントンD.C., 20559に使用者用書類とともに提出され、米国著作権登録番号TXU510087で登録されている。ALIGN-2プログラムはジェネンテック社、サウス サン フランシスコ, カリフォルニアから公的に入手可能であり、下記の表1に提供されたソースコードからコンパイルしてもよい。ALIGN-2プログラムは、UNIX(登録商標)オペレーティングシステム、好ましくはデジタルUNIX(登録商標)V4.0Dでの使用のためにコンパイルされる。全ての配列比較パラメータは、ALIGN-2プログラムによって設定され変動しない。
アミノ酸配列比較にALIGN-2が用いられる状況では、与えられたアミノ酸配列Aの、与えられたアミノ酸配列Bへの、それとの、又はそれに対する%アミノ酸配列同一性(あるいは、与えられたアミノ酸配列Bへの、それとの、又はそれに対する或る程度の%アミノ酸配列同一性を持つ又は含む与えられたアミノ酸配列Aと言うこともできる)は次のように計算される:
分率X/Yの100倍
ここで、Xは配列アラインメントプログラムALIGN-2のA及びBのプログラムアラインメントによって同一であると一致したスコアのアミノ酸残基の数であり、YはBの全アミノ酸残基数である。アミノ酸配列Aの長さがアミノ酸配列Bの長さと異なる場合、AのBに対する%アミノ酸配列同一性は、BのAに対する%アミノ酸配列同一性とは異なると認識されるであろう。%アミノ酸配列同一性の計算の例として、表2及び3は、「比較タンパク質」と称されるアミノ酸配列の「TAT」と称されるアミノ酸配列に対する%アミノ酸配列同一性の計算方法を示し、ここで「TAT」は対象の仮想TAT376又はTAT377ポリペプチドのアミノ酸配列を表し、「比較タンパク質」は対象の「TAT」ポリペプチドと比較され、これに対するポリペプチドのアミノ酸配列を表し、「X」、「Y」及び「Z」は、それぞれ異なる仮定アミノ酸残基を表す。特に断らない限りは、ここで使用される全ての%アミノ酸配列同一性値は、ALIGN-2コンピュータプログラムを用いて直ぐ上の段落に記載されるようにして得られる。
「TAT変異体ポリヌクレオチド」又は「TAT変異体核酸配列」とは、ここで定義されるように、TAT376又はTAT377ポリペプチド、好ましくは活性TAT376又はTAT377ポリペプチドをコードし、ここに開示する完全長天然配列TAT376又はTAT377ポリペプチド配列、ここに開示するシグナルペプチドを欠いた完全長天然配列TAT376又はTAT377ポリペプチド配列、シグナルペプチドを有する又は有しないここに開示するTAT376又はTAT377ポリペプチドの細胞外ドメイン、又はここに開示する完全長TAT376又はTAT377ポリペプチド配列の他の任意の断片をコードする核酸配列(完全長TAT376又はTAT377ポリペプチドの完全なコード化配列の一部分のみを表す核酸によってコードされた)と、少なくとも約80%の核酸配列同一性を有する核酸分子を意味する。通常、TAT変異体ポリヌクレオチドは、ここに開示する完全長天然配列TAT376又はTAT377ポリペプチド配列、ここに開示するシグナルペプチドを欠く完全長天然配列TAT376又はTAT377ポリペプチド配列、シグナルペプチドを有する又は有しないここに開示するTAT376又はTAT377ポリペプチドの細胞外ドメイン、又はここに開示する完全長TAT376又はTAT377ポリペプチド配列の任意の他の断片をコードする核酸配列と、少なくとも約80%の核酸配列同一性、あるいは少なくとも約81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%の核酸配列同一性を有している。変異体は、天然ヌクレオチド配列を含まない。
通常、TAT変異体ポリヌクレオチドは、少なくとも約5ヌクレオチド長、あるいは少なくとも約6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、105、110、115、120、125、130、135、140、145、150、155、160、165、170、175、180、185、190、195、200、210、220、230、240、250、260、270、280、290、300、310、320、330、340、350、360、370、380、390、400、410、420、430、440、450、460、470、480、490、500、510、520、530、540、550、560、570、580、590、600、610、620、630、640、650、660、670、680、690、700、710、720、730、740、750、760、770、780、790、800、810、820、830、840、850、860、870、880、890、900、910、920、930、940、950、960、970、980、990、又は1000ヌクレオチド長であり、この文脈の「約」という用語は、表示ヌクレオチド配列長にその表示長の10%を加えるか又は減じたものを意味する。
ここで同定されるTAT376又はTAT377コード化核酸配列に対する「パーセント(%)核酸配列同一性」は、配列を整列させ、最大のパーセント配列同一性を得るために必要ならば間隙を導入し、対象のTAT核酸配列のヌクレオチドと同一である候補配列中のヌクレオチドのパーセントとして定義される。パーセント核酸配列同一性を決定する目的のためのアラインメントは、当業者の知る範囲にある種々の方法、例えばBLAST、BLAST-2、ALIGN又はMegalign(DNASTAR)ソフトウエアのような公に入手可能なコンピュータソフトウエアを使用することにより達成可能である。ここでの目的のためには、%核酸配列同一性値は、ALIGN-2プログラム用の完全なソースコードが下記の表1に提供されている配列比較コンピュータプログラムALIGN-2を使用することによって得られる。ALIGN-2配列比較コンピュータプログラムはジェネンテック社によって作成され、下記の表1に示したソースコードは米国著作権庁,ワシントン D.C.,20559に使用者用書類とともに提出され、米国著作権登録番号TXU510087の下で登録されている。ALIGN-2プログラムはジェネンテック社、サウス サン フランシスコ, カリフォルニアから公的に入手可能であり、下記の表1に提供されたソースコードからコンパイルしてもよい。ALIGN-2プログラムは、UNIX(登録商標)オペレーティングシステム、好ましくはデジタルUNIX(登録商標)V4.0Dでの使用のためにコンパイルされる。全ての配列比較パラメータは、ALIGN-2プログラムによって設定され変動しない。
核酸配列比較にALIGN-2が用いられる状況では、与えられた核酸配列Cの、与えられた核酸配列Dとの、又はそれに対する%核酸配列同一性(あるいは、与えられた核酸配列Dと、又はそれに対して或る程度の%核酸配列同一性を持つ又は含む与えられた核酸配列Cと言うこともできる)は次のように計算される:
分率W/Zの100倍
ここで、Wは配列アラインメントプログラムALIGN-2のC及びDのアラインメントによって同一であると一致したスコアのヌクレオチドの数であり、ZはDの全ヌクレオチドである。核酸配列Cの長さが核酸配列Dの長さと異なる場合、CのDに対する%核酸配列同一性は、DのCに対する%核酸配列同一性とは異なることは理解されるであろう。%核酸配列同一性の計算の例として、「TAT-DNA」が対象となる仮説的TATコード化核酸配列を表し、「比較DNA」が対象となる「TAT-DNA」核酸分子が比較されている核酸配列を表し、そして「N」、「L」及び「V」の各々が異なった仮想ヌクレオチドを表していて、表4及び5が「比較DNA」と称される核酸配列の「TAT-DNA」と称される核酸配列に対する%核酸配列同一性の計算方法を示す。特に断らない限りは、ここでの全ての%核酸配列同一性値は、直ぐ上のパラグラフに示したようにALIGN-2コンピュータプログラムを用いて得られる。
他の実施態様では、TAT376又はTAT377変異体ポリヌクレオチドとは、TAT376又はTAT377ポリペプチドをコードする核酸分子であり、好ましくはストリンジェントなハイブリダイゼーション及び洗浄条件下で、ここに記載の完全長TAT376又はTAT377ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列とハイブリダイゼーションすることができる。TAT376又はTAT377変異体ポリペプチドは、TAT376又はTAT377変異体ポリヌクレオチドによってコードされているものであり得る。
TAT376又はTAT377ポリペプチドをコードする核酸に関して使用される場合の「完全長コード領域」という用語は、(添付図において開始及び停止コドンの間でしばしば示される)本発明の完全長TAT376又はTAT377ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を意味する。ATCC寄託核酸に関して使用される場合の「完全長コード領域」という用語は、(添付図において開始及び停止コドンの間でしばしば示される)ATCCに寄託されたベクター中に挿入されているcDNAのTAT376又はTAT377ポリペプチドコード部分を意味する。
ここに開示される種々のTAT376又はTAT377ポリペプチドを記載するために使用される「単離」とは、自然環境の成分から同定され及び分離及び/又は回収されたポリペプチドを意味する。その自然環境の汚染成分とは、そのポリペプチドの診断又は治療への使用を典型的には妨害する物質であり、酵素、ホルモン、及び他のタンパク質様又は非タンパク質様溶質が含まれる。好ましい実施態様では、ポリペプチドは、(1)スピニングカップシークエネーターを使用することにより、少なくとも15残基のN末端あるいは内部アミノ酸配列を得るのに充分なほど、あるいは、(2)クーマシーブルーあるいは好ましくは銀染色を用いた非還元あるいは還元条件下でSDS-PAGEにより均一になるまで精製される。単離されたポリペプチドには、TAT376又はTAT377ポリペプチドの自然環境の少なくとも一つの成分が存在しないため、組換え細胞内のインサイツのポリペプチドが含まれる。しかしながら、通常は、単離されたポリペプチドは少なくとも一つの精製工程により調製される。
「単離された」TAT376又はTAT377ポリペプチドをコードする核酸又は他のポリペプチドコード化核酸は、同定され、ポリペプチドをコードする核酸の天然源に通常付随している少なくとも一つの汚染核酸分子から分離された核酸分子である。単離されたポリペプチドをコードする核酸分子は、天然に見出される形態あるいは設定以外のものである。故に、単離されたポリペプチドをコードする核酸分子は、天然の細胞中に存在する特異的なポリペプチドをコードする核酸分子とは区別される。しかし、ポリペプチドをコードする単離された核酸分子には、例えば、核酸分子が天然細胞のものとは異なった染色体位置にあるポリペプチドを通常は発現する細胞に含まれるポリペプチドをコードする核酸分子が含まれる。
「コントロール配列」という用語は、特定の宿主生物において作用可能に結合したコード配列を発現するために必要なDNA配列を指す。例えば原核生物に好適なコントロール配列は、プロモーター、場合によってはオペレータ配列と、リボソーム結合部位を含む。真核生物の細胞は、プロモーター、ポリアデニル化シグナル及びエンハンサーを利用することが知られている。
核酸は、他の核酸配列と機能的な関係にあるときに「作用可能に結合し」ている。例えば、プレ配列あるいは分泌リーダーのDNAは、ポリペプチドの分泌に参画するプレタンパク質として発現されているなら、そのポリペプチドのDNAに作用可能に結合している;プロモーター又はエンハンサーは、配列の転写に影響を及ぼすならば、コード配列に作用可能に結合している;又はリボソーム結合部位は、もしそれが翻訳を容易にするような位置にあるなら、コード配列と作用可能に結合している。一般的に、「作用可能に結合している」とは、結合したDNA配列が近接しており、分泌リーダーの場合には近接していて読みフェーズにあることを意味する。しかし、エンハンサーは必ずしも近接している必要はない。結合は簡便な制限部位でのライゲーションにより達成される。そのような部位が存在しない場合は、従来の手法に従って、合成オリゴヌクレオチドアダプターあるいはリンカーが使用される。
ハイブリダイゼーション反応の「ストリンジェンシー」は、当業者によって容易に決定され、一般的にプローブ長、洗浄温度、及び塩濃度に依存する経験的な計算である。一般に、プローブが長くなると適切なアニーリングに必要な温度が高くなり、プローブが短くなるとそれに必要な温度は低くなる。ハイブリダイゼーションは、一般的に、相補鎖がその融点より低い環境に存在する場合に、変性DNAの再アニールする能力に依存する。プローブとハイブリダイゼーション配列の間で所望される相同性の程度が高くなればなるほど、用いることができる相対温度が高くなる。その結果、より高い相対温度は、反応条件をよりストリンジェントにすることになり、低い温度はストリンジェントを低下させることになる。ハイブリダイゼーション反応のストリンジェンシーの更なる詳細及び説明については、Ausubel等, Current Protocols in Molecular Biology(Wiley Interscience Publishers, 1995)を参照のこと。
ここで定義される「ストリンジェント条件」又は「高度のストリンジェンシー条件」は、(1)洗浄のために低イオン強度及び高温度、例えば、50℃において0.015Mの塩化ナトリウム/0.0015Mのクエン酸ナトリウム/0.1%のドデシル硫酸ナトリウムを用いるもの;(2)ハイブリダイゼーション中にホルムアミド等の変性剤、例えば、42℃において50%(v/v)ホルムアミドと0.1%ウシ血清アルブミン/0.1%フィコール/0.1%のポリビニルピロリドン/50mMのpH6.5のリン酸ナトリウムバッファー、及び750mMの塩化ナトリウム、75mMクエン酸ナトリウムを用いるもの;又は(3)42℃における50%ホルムアミド、5xSSC(0.75MのNaCl、0.075Mのクエン酸ナトリウム)、50mMのリン酸ナトリウム(pH6.8)、0.1%のピロリン酸ナトリウム、5xデンハード液、超音波処理サケ精子DNA(50μg/ml)、0.1%SDS、及び42℃での10%の硫酸デキストランと、42℃における0.2xSSC(塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム)の10分間の洗浄、ついで55℃におけるEDTAを含む0.1xSSCからなる高ストリンジェンシー洗浄を用いるものによって同定される。
「中程度のストリンジェント条件」は、Sambrook等, Molecular Cloning: A Laboratory Manual (New York: Cold Spring Harbor Press, 1989)に記載されているように同定され、上記のストリンジェントより低い洗浄溶液及びハイブリダイゼーション条件(例えば、温度、イオン強度及び%SDS)の使用を含む。中程度のストリンジェント条件は、20%ホルムアミド、5xSSC(150mMのNaCl、15mMのクエン酸三ナトリウム)、50mMリン酸ナトリウム(pH7.6)、5xデンハード液、10%硫酸デキストラン、及び20mg/mlの変性剪断サケ精子DNAを含む溶液中の37℃での終夜インキュベーション、次いで1xSSC中37−50℃でのフィルターの洗浄といった条件である。当業者であれば、プローブ長などの因子に適合させる必要に応じて、どのようにして温度、イオン強度等を調節するかを認識する。
「エピトープタグ」なる用語は、ここで用いられるときは、「タグポリペプチド」と融合したTAT376又はTAT377ポリペプチド又は抗TAT376又は抗TAT377抗体を含んでなるキメラポリペプチドを意味する。タグポリペプチドは、その抗体が産生され得るエピトープを提供するのに十分な残基を有し、その長さは融合するポリペプチドの活性を阻害しないよう充分に短い。また、タグポリペプチドは、好ましくは抗体が他のエピトープと実質的に交差反応をしないようにかなり独特である。適切なタグポリペプチドは、一般に、少なくとも6のアミノ酸残基、通常は約8〜50のアミノ酸残基(好ましくは、約10〜20の残基)を有する。
ここでの目的に対する「活性な」又は「活性」とは、天然又は天然に生じるTATの生物学的及び/又は免疫学的活性を保持するTAT376又はTAT377ポリペプチドの形態を意味し、その中で、「生物学的」活性とは、天然又は天然発生TAT376又はTAT377が保持する抗原性エピトープに対する抗体の生成を誘発する能力以外の、天然又は天然発生TAT376又はTAT377によって引き起こされる生物機能(阻害又は刺激)を意味し、「免疫学的」活性とは、天然又は天然発生TAT376又はTAT377が保持する抗原性エピトープに対する抗体の生成を誘発する能力を意味する。
「アンタゴニスト」なる用語は最も広い意味で用いられ、そしてここに開示した天然TAT376又はTAT377ポリペプチドの生物学的活性を部分的又は完全にブロック、阻害、又は中和する任意の分子が含まれる。同じように、「アゴニスト」という用語は最も広い意味で用いられ、ここに開示した天然TAT376又はTAT377ポリペプチドの生物学的活性を模倣する任意の分子が含まれる。適切なアゴニスト又はアンタゴニスト分子には、特にアゴニスト又はアンタゴニスト抗体又は抗体断片、断片、又は天然TAT376又はTAT377ポリペプチドのアミノ酸配列変異体、ペプチド、アンチセンスオリゴヌクレオチド、小有機分子等が含まれる。TAT376又はTAT377ポリペプチドのアゴニスト又はアンタゴニストを同定する方法は、TAT376又はTAT377ポリペプチドと候補アゴニスト又はアンタゴニスト分子を接触させ、そして通常はTAT376又はTAT377ポリペプチドに関連している一又は複数の生物学的活性の検出可能な変化を測定することが含まれ得る。
「治療する」又は「治療」又は「緩和」とは、治療上の処置及び予防的療法又は防護的療法の双方を称し、その目的は、標的である病的症状又は疾患を防ぐか又は衰え(小さく)させることである。治療を必要とするものには、疾患に罹りやすいものと同時に疾患に既に罹っているもの、又は疾患が予防されるべきものを含む。本発明の方法に従って抗TAT376又は抗TAT377抗体、TAT376又はTAT377結合オリゴペプチド又はTAT376又はTAT377結合有機分子の治療量を投与された後に、患者が次の一又は複数のものについて観察可能な及び/又は測定可能な減少又は消失を示したならば、被検体又は哺乳動物は、TAT376又はTAT377ポリペプチド発現癌に関して成功裏に「治療された」ことになる:癌細胞の数の減少、又は癌細胞の消失;腫瘍の大きさの減少;軟部組織及び骨への癌の広がりを含む、末梢器官への癌細胞の浸潤の阻害(すなわち、ある程度の減速及び好ましくは停止);腫瘍転移の阻害(すなわち、ある程度の減速及び好ましくは停止);腫瘍成長のある程度の阻害;及び/又は特定の癌に関連している一又は複数の症状のある程度の緩和;疾病率及び死亡率の減少、及び生命問題の質の改善。ある程度、抗TAT376又は抗TAT377抗体又はTAT376又はTAT377結合オリゴペプチドは、生存癌細胞の成長を防ぐ及び/又は死滅させることができ、それは、細胞増殖抑制及び/又は細胞毒性であり得る。これらの兆候又は症状の低減は、また、患者が感じることができる。
疾患における成功裏の治療及び改善を評価することに関する上記のパラメーターは、医師にとってよく知られている日常的手法によって容易に測定が可能である。癌治療では、有効性は、例えば、病気の進行までの時間(TTP)の算定及び/又は反応速度(RR)を確かめることによって測定できる。転移は、ステージング試験によって、骨のスキャン及び骨への広がりを確かめるためのカルシウムレベル及び他の酵素に関する試験によって確かめることができる。CTスキャンは、また、領域の骨盤及びリンパ節への広がりを探索することでおこなうことができる。胸のX線、及び既知の方法による肝臓の酵素レベルの測定を、それぞれ肺及び肝臓への転移を探索するために用いる。疾患をモニタリングする他の常套的方法には、経直腸的超音波断層法(TRUS)及び経直腸的針生検(TRNB)が含まれる。
より局所的な癌である膀胱癌に関しては、疾患の進行を確かめる方法には、膀胱鏡検査による尿細胞評価、尿中に存在する血液のモニタリング、超音波断層撮影又は静脈性腎盂像、コンピュータ断層撮影法(CT)及び磁気共鳴映像法(MRI)による尿路上皮性路の視覚化が含まれる。遠隔転移の存在は、腹部のCT、胸x線、又は骨格の放射性核種イメージングによって評価することができる。
「慢性」投与とは、初期の治療効果(活性)を長期間にわたって維持するようにするために、急性態様とは異なり連続的な態様での薬剤の投与を意味する。「間欠」投与とは、中断無く連続的になされるのではなく、むしろ本質的に周期的になされる処理である。
癌の治療、症状の緩和又は診断のための「哺乳動物」とは、哺乳動物に分類される任意の動物を意味し、ヒト、家畜用及び農場用動物、動物園、スポーツ、又はペット動物、例えばイヌ、ネコ、ウシ、ウマ、ヒツジ、ブタ、ヤギ、ウサギなどを含む。好ましくは、哺乳動物はヒトである。
一又は複数の更なる治療薬と「組み合わせた」投与とは、同時(同時期)及び任意の順序での連続した投与を含む。
ここで用いられる「担体」は、製薬的に許容されうる担体、賦形剤、又は安定化剤を含み、用いられる服用量及び濃度でそれらに曝露される細胞又は哺乳動物に対して非毒性である。生理学的に許容されうる担体は、水性pH緩衝溶液であることが多い。生理学的に許容されうる担体の例は、リン酸塩、クエン酸塩、及び他の有機酸塩のバッファー;アスコルビン酸を含む酸化防止剤;低分子量(約10残基未満)ポリペプチド;タンパク質、例えば血清アルブミン、ゼラチン、又は免疫グロブリン;疎水性ポリマー、例えばポリビニルピロリドン;アミノ酸、例えばグリシン、グルタミン、アスパラギン、アルギニン又はリジン;グルコース、マンノース又はデキストランを含む単糖類、二糖類、及び他の炭水化物;EDTA等のキレート剤;マンニトール又はソルビトール等の糖アルコール;ナトリウム等の塩形成対イオン;及び/又は非イオン性界面活性剤、例えば、TWEEN(登録商標)、ポリエチレングリコール(PEG)、及びPLURONICS(登録商標)を含む。
「固相」又は「固体支持体」とは、本発明の抗体、TAT376又はTAT377結合オリゴペプチド又はTAT376又はTAT377結合有機分子が接着できる非水性マトリクスを意味する。ここに包含される固相の例は、部分的又は全体的にガラス(例えば、径の調整されたガラス)、ポリサッカリド(例えばアガロース)、ポリアクリルアミド、ポリスチレン、ポリビニルアルコール及びシリコーンで形成されたものを含む。或る実施態様では、前後関係に応じて、固相はアッセイ用プレートのウェル;その他では精製用カラム(例えばアフィニティクロマトグラフィーカラム)を含むことができる。また、この用語は、米国特許第4275149号に記載されたような別々の粒子の不連続な固相も含む。
「リポソーム」は、哺乳動物への薬物(例えばTAT376又はTAT377ポリペプチド、それらに対する抗体又はTAT376又はTAT377結合オリゴペプチド)輸送に有用な、脂質、リン脂質及び/又は界面活性剤を含む種々のタイプの小胞体である。リポソームの成分は、通常は細胞膜の脂質配向に類似した2層構造に配列される。
ここで定義されている「小」分子又は「小」有機分子とは、約500ダルトン未満の分子量である。
ここに開示するポリペプチド、抗体、TAT376又はTAT377結合オリゴペプチド、TAT376又はTAT377結合有機分子、又はそのアゴニスト又はアンタゴニストの「有効量」とは、特に述べた目的を実施するために十分な量のことである。「有効量」は、述べられた目的に関連して、経験的及び常套的な形で決定することができる。
「治療的有効量」という用語は、患者又は哺乳動物の疾患又は疾病を「治療」するのに効果的な抗体、ポリペプチド、TAT376又はTAT377結合オリゴペプチド、TAT376又はTAT377結合有機分子又は他の薬剤の量を指す。癌の場合、治療的に有効量の薬は癌細胞の数を減じ;腫瘍の大きさを減じ;末梢器官への癌細胞の浸潤を阻害(すなわち、ある程度まで減速、好ましくは停止)し;腫瘍転移を阻害(すなわち、ある程度まで減速及び好ましくは停止)し;腫瘍成長をある程度まで阻害し;及び/又は癌に関連する一又は複数の症状をある程度まで緩和する。「治療する」のここでの定義を参照せよ。薬が存在する癌細胞の成長を妨げ及び/又は死滅させる程度まで、それは、細胞分裂停止及び/又は細胞毒性であり得る。
抗TAT376又は抗TAT377抗体、TAT376又はTAT377ポリペプチド、TAT376又はTAT377結合オリゴペプチド又はTAT376又はTAT377結合有機分子の「成長阻害量」は、細胞、特に腫瘍、例えば癌細胞の成長をインビトロ又はインビボで阻害できる量である。腫瘍性細胞成長の阻害の目的のための抗TAT376又は抗TAT377抗体、TAT376又はTAT377ポリペプチド、TAT376又はTAT377結合オリゴペプチド又はTAT376又はTAT377結合有機分子の「成長阻害量」は、経験的及び常套的な形で決定することができる。
抗TAT376又は抗TAT377抗体、TAT376又はTAT377ポリペプチド、TAT376又はTAT377結合オリゴペプチド又はTAT376又はTAT377結合有機分子の「細胞毒性量」は、細胞、特に腫瘍、例えば癌細胞をインビトロ又はインビボで破壊できる量である。腫瘍性細胞成長の阻害の目的のための抗TAT376又は抗TAT377抗体、TAT376又はTAT377ポリペプチド、TAT376又はTAT377結合オリゴペプチド又はTAT376又はTAT377結合有機分子の「細胞毒性量」は、経験的及び常套的な形で決定することができる。
「抗体」という用語は最も広い意味において使用され、例えば、単一の抗TAT376又はTAT377モノクローナル抗体(アゴニスト、アンタゴニスト、及び中和抗体を含む)、多エピトープ(polyepitopic)特異性を持つ抗TAT376又は抗TAT377抗体組成物、ポリクローナル抗体、一本鎖抗TAT376又は抗TAT377抗体、及び所望する生物学的又は免疫学的活性を示す限りは抗TAT376又は抗TAT377抗体の断片(下記を参照)を包含する。「免疫グロブリン」(Ig)という用語は、ここでの抗体と相互に置き換え可能に用いられる。
「単離された抗体」とは、その自然環境の成分から同定され分離され及び/又は回収されたものを意味する。その自然環境の汚染成分とは、抗体の診断又は治療への使用を妨害する物質であり、酵素、ホルモン、及び他のタンパク質様又は非タンパク質様溶質が含まれる。好ましい実施態様では、抗体は、(1)ローリー(Lowry)法によって定量して95重量%以上の、最も好ましくは99重量%以上の抗体まで、(2)スピニングカップシークエネーターを使用することにより、少なくとも15のN末端あるいは内部アミノ酸配列の残基を得るのに充分な程度まで、あるいは(3)クーマシーブルーあるいは好ましくは銀染色を用いた還元又は非還元条件下でのSDS-PAGEによる均一性まで精製される。単離された抗体には、組換え体細胞内のインサイツの抗体が含まれるが、これは抗体の自然環境の少なくとも一つの成分が存在しないからである。しかしながら、通常は、単離された抗体は少なくとも一つの精製工程により調製される。
基本的な4-鎖抗体ユニットは2つの同一の軽(L)鎖と2つの同一の重(H)鎖から構成されるヘテロ四量体の糖タンパクである(IgM抗体は、基本的なヘテロ四量体ユニットとそれに付随するJ鎖と称される付加的なポリペプチドの5つからなり、よって10の抗原結合部位を有するが、分泌されたIgA抗体は重合して、基本的4-鎖ユニットとそれ付随するJ鎖のうち2-5つを含む多価集合を形成可能である)。IgGの場合、4-鎖ユニットは一般的に約150000ダルトンである。それぞれのL鎖は1つの共有ジスルフィド結合によってH鎖に結合するが、2つのH鎖はH鎖のアイソタイプに応じて一又は複数のジスルフィド結合により互いに結合している。それぞれのH及びL鎖はまた規則的な間隔を持った鎖内ジスルフィド結合を持つ。それぞれのH鎖は、α及びγ鎖の各々に対しては3つの定常ドメイン(C)が、μ及びεアイソタイプに対しては4つのCドメインが続く可変ドメイン(V)をN末端に有する。それぞれのL鎖は、その他端に定常ドメイン(C)が続く可変ドメイン(V)をN末端に有する。VはVと整列し、Cは重鎖の第一定常ドメイン(C1)と整列している。特定のアミノ酸残基が、軽鎖及び重鎖可変ドメイン間の界面を形成すると考えられている。VとVは共同して対になって、単一の抗原結合部位を形成する。異なるクラスの抗体の構造及び特性は、例えばBasic and Clinical Immunology, 8版, Daniel P. Stites, Abba I. Terr and Tristram G. Parslow(編), Appleton & Lange, Norwalk, CT, 1994, 71頁及び6章を参照のこと。
任意の脊椎動物種からのL鎖には、その定常ドメインのアミノ酸配列に基づいて、カッパ及びラムダと呼ばれる2つの明確に区別される型の一つを割り当てることができる。また、その重鎖の定常ドメイン(C)のアミノ酸配列に応じて、免疫グロブリンには異なったクラス又はアイソタイプを割り当てることができる。IgA、IgD、IgE、IgG及びIgMという免疫グロブリンの5つの主要なクラスがあり、それぞれα、δ、ε、γ及びμと呼ばれる重鎖を有する。さらにγ及びαのクラスは、C配列及び機能等の比較的小さな差異に基づいてサブクラスに分割され、例えば、ヒトにおいては次のサブクラス:IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1及びIgA2が発現する。
「可変」という用語は、可変ドメインのある部分が抗体の間で配列が広範囲に異なることを意味する。Vドメインは抗原結合性を媒介し、その特定の抗原に対する特定の抗体の特異性を定める。しかし、可変性は可変ドメインの110-アミノ酸スパンを通して均等には分布されていない。代わりに、V領域は、それぞれ9-12アミノ酸長である「高頻度可変領域」と称される極度の可変性を有するより短い領域によって分離された15-30アミノ酸のフレームワーク領域(FR)と呼ばれる比較的不変の伸展からなる。天然重鎖及び軽鎖の可変ドメイン各々は、大きなβ-シート配置をとり、3つの高頻度可変領域により接続された4つのFR領域を含み、それはループ状の接続を形成し、β-シート構造の一部を形成することもある。各鎖の高頻度可変領域はFRにより他の鎖からの高頻度可変領域とともに極近傍に保持され、抗体の抗原結合部位の形成に寄与している(Kabat等, Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th ED. Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD. (1991))。定常ドメインは抗体の抗原への結合に直接は関係ないが、種々のエフェクター機能、例えば抗体依存性細胞障害(ADCC)における抗体の寄与を示す。
ここで使用される場合、「高頻度可変領域」なる用語は、抗原結合性の原因となる抗体のアミノ酸残基を意味する。高頻度可変領域は「相補性決定領域」又は「CDR」からのアミノ酸残基(すなわち、Vにおいては、およそ残基24-34(L1)、50-56(L2)及び89-97(L3)、及びVにおいては、およそ1-35(H1)、50-65(H2)及び95-102(H3);Kabat等, Sequences of Proteins of Immunological Interest,5版 Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD.(1991))及び/又は「高度可変ループ」からの残基(例えば、Vにおいては、およそ残基26-32(L1)、50-52(L2)及び91-96(L3)、及びVにおいては、およそ26-32(H1)、53-55(H2)及び96-101(H3);Chothia及びLesk J.Mol.Biol. 196:901-917 (1987))を含んでなる。
ここで使用される「モノクローナル抗体」という用語は、実質的に均一な抗体の集団から得られる抗体を意味する、すなわち、集団に含まれる個々の抗体が、少量で存在しうる自然に生じる可能性のある突然変異を除いて同一である。モノクローナル抗体は高度に特異的であり、一つの抗原部位に対している。さらに、異なる決定基(エピトープ)に対する異なる抗体を含むポリクローナル抗体調製物と比べて、各モノクローナル抗体は、抗原上の単一の決定基に対するものである。その特異性に加えて、モノクローナル抗体は、他の抗体によって汚染されずに合成される点で有利である。「モノクローナル」との修飾詞は、抗体を何か特定の方法で生成しなければならないことを意味するものではない。例えば、本発明において有用なモノクローナル抗体は、最初にKohler等, Nature 256, 495 (1975)により記載されたハイブリドーマ法によって作ることができ、あるいは組換えDNA法によって、細菌、真核細胞動物又は植物細胞から作ることができる(例えば、米国特許第4816567号参照)。また「モノクローナル抗体」は、例えばClackson等, Nature 352:624-628(1991)、及びMarks等, J. Mol. Biol. 222:581-597(1991)に記載された技術を用いてファージ抗体ライブラリーから単離することもできる。
ここで、モノクローナル抗体は、重鎖及び/又は軽鎖の一部が、特定の種由来の抗体、あるいは特定の抗体クラス又はサブクラスに属する抗体の対応する配列と同一であるか又は相同性があり、鎖の残りの部分が他の種由来の抗体、あるいは他の抗体クラス又はサブクラスに属する抗体の対応する配列と同一であるか又は相同である「キメラ」抗体、並びにそれが所望の生物的活性を有する限りこのような抗体の断片を特に含む(米国特許第4816567号;及びMorrison等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 81:6851-6855(1984))。ここで対象のキメラ抗体には、非ヒト霊長類(例えば旧世界ザル、類人猿等)から由来する可変ドメイン抗原-結合配列及びヒト定常領域配列を含む「プリマタイズ(primatized)」抗体を含む。
「無傷」の抗体は、抗原-結合部位、並びにC及び少なくとも重鎖定常ドメイン、C1、C2及びC3を含むものである。定常ドメインは天然配列定常ドメイン(例えば、ヒト天然配列定常ドメイン)又はそれらのアミノ酸配列変異体であってよい。好ましくは、無傷の抗体は1つ又は複数のエフェクター機能を有する。
「抗体断片」は、無傷の抗体の一部、好ましくは無傷の抗体の抗原結合又は可変領域を含む。抗体断片の例は、Fab、Fab’、F(ab')、及びFv断片;ダイアボディ(diabodies);直鎖状抗体(米国特許第5641870号、実施例2;Zapata等, Protein Eng. 8(10): 1057-1062 [1995]);単鎖抗体分子;及び抗体断片から形成された多重特異性抗体を含む。
抗体のパパイン消化は、「Fab」断片と呼ばれる2つの同一の抗体結合断片と、容易に結晶化する能力を反映して命名された残留「Fc」断片を産生する。Fab断片は全長L鎖とH鎖の可変領域ドメイン(V)、及び一つの重鎖の第一定常ドメイン(C1)からなる。各Fab断片は抗原結合性に関して一価である、すなわち単一の抗原-結合部位を有する。抗体のペプシン処理により、単一の大きなF(ab')断片が生じ、これは2価の抗原結合部位を持つ2つのジスルフィド結合されたFab断片にほぼ対応し、抗原を交差結合させることができるものである。Fab'断片は、抗体ヒンジ領域からの1つ又は複数のシステインを含むC1ドメインのカルボキシ末端に幾つかの残基が付加されていることによりFab断片と相違する。Fab'-SHは、ここでは定常ドメインのシステイン残基(類)が遊離のチオール基を持つFab'を表す。F(ab')抗体断片は、通常はFab'断片の対として生成され、それらの間にヒンジシステインを有する。抗体断片の他の化学的結合も知られている。
Fc断片はジスルフィドにより一緒に保持されている双方のH鎖のカルボキシ末端部位を含む。抗体のエフェクター機能は、Fc領域の配列により決定され、その領域は、所定の型の細胞に見出されるFcレセプター(FcR)によって認識される部位である。
「Fv」は、完全な抗原-認識及び-結合部位を含む最小の抗体断片である。この断片は、密接に非共有結合した1本の重鎖と1本の軽鎖の可変領域の二量体からなる。これら2つのドメインの折り畳みから、抗原結合のためのアミノ酸残基に寄与し、抗体に対する抗原結合特異性を付与する6つの高頻度可変ループ(H及びL鎖から、それぞれ3つのループ)が生じる。しかしながら、単一の可変ドメイン(又は抗原に特異的な3つのCDRのみを含んでなるFvの半分)でさえ、結合部位全体よりは低い親和性であるが、抗原を認識し結合する能力を持つ。
「sFv」又は「scFv」とも略称される「単鎖Fv」は、単一のポリペプチド鎖内に結合したV及びV抗体ドメインを含む抗体断片である。好ましくは、sFvポリペプチドはV及びVドメイン間にポリペプチドリンカーをさらに含み、それはsFVが抗原結合に望まれる構造を形成するのを可能にする。sFvの概説については、Pluckthun in The Pharmacology of Monoclonal Antibodies, vol. 113, Rosenburg及びMoore編, Springer-Verlag, New York, pp. 269-315 (1994);Borrebaeck 1995, 以下を参照のこと。
「ダイアボディ(diabodies)」という用語は、鎖間ではなく鎖内でVドメインを対形成させ、結果として二価の断片、すなわち2つの抗原-結合部位を有する断片が得られるように、VとVドメインとの間に、短いリンカー(約5-10残基)を持つsFv断片(前の段落を参照)を構築することにより調製される小型の抗体断片を意味する。二重特異性ダイアボディは2つの「交差」sFv断片のヘテロダイマーであり、そこでは2つの抗体のV及びVドメインが異なるポリペプチド鎖上に存在する。ダイアボディは、例えば、欧州特許第404097号;国際公開93/11161号;及びHollinger等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 90: 6444-6448 (1993)により十分に記載されている。
非ヒト(例えば齧歯類)抗体の「ヒト化」形とは、非ヒト抗体から得られた最小配列を含むキメラ抗体である。大部分において、ヒト化抗体は、レシピエントの高頻度可変領域の残基が、マウス、ラット、ウサギ又は非ヒト霊長類のような所望の抗体特異性、親和性及び能力を有する非ヒト種(ドナー抗体)の高頻度可変領域の残基によって置換されたヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)である。ある場合には、ヒト免疫グロブリンのフレームワーク領域(FR)残基は、対応する非ヒト残基によって置換される。さらに、ヒト化抗体は、レシピエント抗体にもドナー抗体にも見出されない残基を含んでいてもよい。これらの修飾は抗体の特性をさらに洗練するために行われる。一般的に、ヒト化抗体は、全て又はほとんど全ての高頻度可変ループが非ヒト免疫グロブリンのものに一致し、全て又はほとんど全てのFRがヒト免疫グロブリン配列である、少なくとも1つ、典型的には2つの可変ドメインの実質的に全てを含む。ヒト化抗体は、状況に応じて免疫グロブリン定常領域(Fc)、典型的にはヒトの免疫グロブリンの定常領域の少なくとも一部を含む。さらなる詳細は、Jones等, Nature 321, 522-525(1986);Riechmann等, Nature 332, 323-329(1988);及びPresta, Curr. Op. Struct. Biol. 2, 593-596(1992)を参照のこと。
「種依存性抗体」、例えば哺乳動物抗-ヒトIgE抗体は、二番目の哺乳動物種からの抗原の相同体に対して有している結合親和性よりも、一番目の哺乳動物種からの抗原に対してより強力な結合親和性を有する抗体である。通常、種依存性抗体は、ヒト抗原(すなわち、約1x10−7M以下、好ましくは約1x10−8以下、最も好ましくは約1x10−9M以下の結合親和性(Kd)値を有する)と「特異的に結合」するが、そのヒト抗原に対する結合親和性よりも、少なくとも約50倍、又は少なくとも約500倍、又は少なくとも約1000倍弱い、二番目の非ヒト哺乳動物種からの抗原の相同体に対する結合親和性を有する。種依存性抗体は、上にて定義した種々の型の抗体のいずれでもあることが可能だが、好ましくはヒト化又はヒト抗体である。
「TAT376又はTAT377結合オリゴペプチド」はここで記載される様なTAT376又はTAT377ポリペプチドに好ましくは特異的に結合するオリゴペプチドである。TAT376又はTAT377結合オリゴペプチドは、既知のオリゴペプチド合成方法論を用いて化学的に合成することができ、あるいは組み換え技術を用いて調製及び精製することができる。TAT376又はTAT377結合オリゴペプチドは通常、少なくとも約5のアミノ酸長であり、或いは少なくとも約6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99又は100のアミノ酸長以上であり、このようなオリゴペプチドはここに記載される様なTAT376又はTAT377ポリペプチドに対して好ましくは特異的に結合する能力がある。TAT376又はTAT377結合オリゴペプチドは、よく知られた技術を用いて過度の実験をすることなしに同定することができる。この点において、ポリペプチド標的に特異的に結合する能力のあるオリゴペプチドのオリゴペプチドライブラリーを検索する技術は当分野でよく知られていることを注記する(例えば、米国特許第5556762号、同第5750373号、同第4708871号、同第4833092号、同第5223409号、同第5403484号、同第5571689号、同第5663143号;PCT公開第WO84/03506号、及びWO84/03564号;Geysen等, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 81:3998-4002 (1984);Geysen等, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 82:178-182 (1985);Geysen等, in Synthetic Peptides as Antigens, 130-149 (1986);Geysen等, J. Immunol. Meth., 102:259-274 (1987);Schoofs等, J. Immunol., 140:611-616 (1988), Cwirla,S.E.等(1990) Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 87:6378;Lowman,H.B.等 (1991) Biochemistry, 30:10832;Clackson,T.等 (1991) Nature, 352:624;Marks,J.D.等 (1991) J. Mol. Biol., 222:581;Kang,A.S.等 (1991) Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 88:8363、及びSmith, G.P. (1991) Current Opin. Biotechnol., 2:668参照)。
「TAT376又はTAT377結合有機分子」とは、ここに記載されるようなTAT376又はTAT377ポリペプチドに、好ましくは特異的に、結合する、ここに定義されるようなオリゴペプチド又は抗体以外の有機分子である。TAT376又はTAT377結合有機分子は既知の方法(例えばPCT公開第WO00/00823号及びWO00/39585号参照)を用いて同定され、化学的に合成されうる。TAT376又はTAT377結合有機分子は通常、約2000ダルトン未満の大きさであり、あるいは約1500、750、500、250又は200ダルトン未満の大きさであり、ここに記載される様なTAT376又はTAT377ポリペプチドに、好ましくは特異的に結合する能力のあるこのような有機分子は、よく知られた技術を用いて過度の実験をすることなしに同定されうる。この点において、ポリペプチド標的に結合する能力のある分子の有機分子ライブラリーを検索する技術は当分野でよく知られていることを注記する(例えばPCT公開第WO00/00823号及びWO00/39585号参照)。
対象の抗原、例えば腫瘍関連ポリペプチド抗原標的と「結合する」抗体、オリゴペプチド又は他の有機分子は、その抗体、オリゴペプチド又は他の有機分子がその抗原を発現している細胞又は組織を標的とする診断及び/又は治療剤として有用であり、他のタンパク質と有意には交差反応しないように十分な親和性でその抗原と結合するものである。そのような実施態様では、抗体、オリゴペプチド又は他の有機分子の「非標的」タンパク質との結合の程度は、蛍光標示式細胞分取器(FACS)分析又は放射免疫沈降(RIA)によって定量して、その特定の標的タンパク質との抗体、オリゴペプチド又は他の有機分子の結合の約10%よりも低い。標的分子への抗体、オリゴペプチド又は他の有機分子の結合に関して、特定のポリペプチド又は特定のポリペプチド標的上のエピトープと「特異的に結合」又は「特異的に結合する」、又はそれに対して「特異的である」という用語は、非特異的な相互作用とは測定して異なる結合を意味する。特異的な結合は、例えば、一般に結合活性を持たない類似した構造の分子であるコントロール分子の結合性と比較して、分子の結合性を定量することによって測定することができる。例えば、特異的な結合性は、標的、例えば過剰の非標識標的に類似したコントロール分子とも競合にとって定量することができる。この場合、プローブに対する標識標的の結合が過剰の非標識標的によって競合的に阻害されるならば、特異的結合が表示される。ここで使用される特定のポリペプチド又は特定のポリペプチド標的上のエピトープと「特異的に結合」又は「特異的に結合する」、又はそれに対して「特異的である」という用語は、例えば標的に対して少なくとも約10−4M、あるいは少なくとも約10−5M、あるいは少なくとも約10−6M、あるいは少なくとも約10−7M、あるいは少なくとも約10−8M、あるいは少なくとも約10−9M、あるいは少なくとも約10−10M、あるいは少なくとも約10−11M、あるいは少なくとも約10−12M、あるいはそれ以上のKdを持つ分子によって示されうる。一実施態様では、「特異的に結合する」という用語は、如何なる他のポリペプチド又はポリペプチドエピトープへ実質的に結合することなく分子が特定のポリペプチド又は特定のポリペプチドのエピトープに結合する結合を意味する。
「TAT376又はTAT377ポリペプチドを発現する腫瘍細胞の成長を阻害する」抗体、オリゴペプチド又は他の有機分子、又は「成長阻害」抗体、オリゴペプチド又は他の有機分子は、適切なTAT376又はTAT377ポリペプチドを発現又は過剰発現する癌細胞の測定可能な程の成長阻害を引き起こすものである。TAT376又はTAT377ポリペプチドは、癌細胞の表面上に発現される膜貫通ポリペプチドであることができ、癌細胞によって産生され分泌されるポリペプチドであり得る。好ましい成長阻害抗TAT376又は抗TAT377抗体、オリゴペプチド又は他の有機分子は、一般的には、試験された抗体、オリゴペプチド又は他の有機分子で処理されていない腫瘍細胞であるコントロールである、適切なコントロールと比較して、20%より多く、好ましくは約20%から約50%、そしてさらに好ましくは50%よりも多く(例えば、約50%から約100%)でTAT376又はTAT377発現腫瘍細胞の成長を阻害する。一実施態様では、成長阻害は、細胞培養で約0.1から30μg/ml又は約0.5nMから200nMの抗体濃度で測定することができ、抗体への腫瘍細胞の曝露の後、成長阻害を1-10日で確かめる。インビボでの腫瘍細胞の成長阻害は、下記の実験実施例に記載しているような種々の方法で確かめることができる。約1μg/kgから約100mg/kg体重の抗TAT376又は抗TAT377抗体の投与が、最初の抗体の投与から約5日から3ヶ月内、好ましくは約5から30日内に腫瘍の大きさ又は腫瘍細胞増殖に減少を引き起こす場合、抗体はインビボで成長阻害性である。
「アポトーシスを誘発する」抗体、オリゴペプチド又は他の有機分子は、アネキシンVの結合、DNAの断片化、細胞収縮、小胞体の拡張、細胞断片化、及び/又は膜小胞の形成(アポトーシス体と呼ばれる)等により決定されるようなプログラム細胞死を誘発するものである。細胞は、通常、TAT376又はTAT377ポリペプチドを過剰発現しているものである。好ましくは、細胞は腫瘍細胞、例えば前立腺、乳房、卵巣、胃、子宮内膜、肺、腎臓、結腸、膀胱細胞である。アポトーシスに伴う細胞のイベントを評価するために種々の方法が利用できる。例えば、ホスファチジルセリン(PS)転位置をアネキシン結合により測定することができ;DNA断片化はDNAラダーリングにより評価することができ;DNA断片化に伴う細胞核/クロマチン凝結は低二倍体細胞の何らかの増加により評価することができる。好ましくは、アネキシン結合アッセイにおいて、アポトーシスを誘発する抗体、オリゴペプチド又は他の有機分子は、未処理細胞の約2〜50倍、好ましくは約5〜50倍、最も好ましくは約10〜50倍のアネキシン結合を誘発するという結果を生じるものである。
抗体の「エフェクター機能」とは、抗体のFc領域(天然配列Fc領域又はアミノ酸配列変異体Fc領域)に帰する生物学的活性を意味し、抗体のアイソタイプにより変わる。抗体のエフェクター機能の例には、C1q結合及び補体依存性細胞障害;Fcレセプター結合性;抗体依存性細胞媒介性細胞障害(ADCC);貪食作用;細胞表面レセプター(例えば、B細胞レセプター)のダウンレギュレーション;及びB細胞活性化が含まれる。
「抗体依存性細胞媒介性細胞障害」又は「ADCC」とは、ある種の細胞障害細胞(例えば、ナチュラルキラー(NK)細胞、好中球及びマクロファージ)上に存在するFcレセプター(FcRs)と結合した分泌Igにより、これらの細胞障害エフェクター細胞が抗原-担持標的細胞に特異的に結合し、続いて細胞毒により標的細胞を死滅させることを可能にする細胞毒性の形態を意味する。抗体は細胞障害細胞を「備えて」おり、これはこのような死滅には絶対に必要なものである。ADCCを媒介する主要な細胞NK細胞はFcγRIIIのみを発現するのに対し、単球はFcγRI、FcγRII及びFcγRIIIを発現する。造血細胞でのFcRの発現は、Ravetch and Kinet, Annu. Rev. Immunol 9:457-92 (1991) の464頁の表3に要約されている。対象の分子のADCC活性をアッセイするために、米国特許第5500362号又は同5821337号に記載されているようなインビトロADCCアッセイを実施することができる。このようなアッセイにおいて有用なエフェクター細胞には、末梢血液単核細胞(PBMC)及びナチュラルキラー細胞(NK細胞)が含まれる。代わりとして、もしくは付加的に、対象の分子のADCC活性は、例えば、Clynes等, (USA) 95:652-656 (1998)において開示されているような動物モデルにおいて、インビボで評価することが可能である。
「Fcレセプター」又は「FcR」は、抗体のFc領域に結合するレセプターを記載するものである。好適なFcRは天然配列ヒトFcRである。さらに好適なFcRは、IgG抗体(ガンマレセプター)と結合するもので、FcγRI、FcγRII及びFcγRIIIサブクラスのレセプターを含み、これらのレセプターの対立遺伝子変異体、選択的にスプライシングされた形態のものも含まれる。FcγRIIレセプターには、FcγRIIA(「活性型レセプター」)及びFcγRIIB(「阻害型レセプター」)が含まれ、主としてその細胞質ドメインは異なるが、類似のアミノ酸配列を有するものである。活性型レセプターFcγRIIAは、細胞質ドメインにチロシン依存性免疫レセプター活性化モチーフ(immunoreceptor tyrosine-based activation motif ;ITAM)を含んでいる。阻害型レセプターFcγRIIBは、細胞質ドメインにチロシン依存性免疫レセプター阻害性モチーフ(immunoreceptor tyrosine-based inhibition motif ;ITIM)を含んでいる(Daeron, Annu. Rev. immunol. 15:203-234 (1997)を参照)。FcRsに関しては、 Ravetch and Kinet, Annu.Rev. Immunol. 9:457-492 (1991); Capel等, Immunomethods 4:25-34 (1994); 及びde Haas等, J.Lab. Clin. Med. 126:330-41 (1995) に概説されている。将来的に同定されるものも含む他のFcRsはここでの「FcR」という言葉によって包含される。また、該用語には、母性IgGsが胎児に受け継がれる要因となっている新生児性レセプターFcRn(Guyer等, J. Immunol. 117:587 (1976) Kim等, J. Immunol.24:249 (1994))も含まれる。
「ヒトエフェクター細胞」とは、一又は複数のFcRsを発現し、エフェクター機能を実行する白血球のことである。その細胞が少なくともFcγRIIIを発現し、ADCCエフェクター機能を実行することが望ましい。ADCCを媒介するヒト白血球の例として、末梢血液単核細胞(PBMC)、ナチュラルキラー(NK)細胞、単球、細胞毒性T細胞及び好中球が含まれるが、PBMCとNK細胞が好適である。エフェクター細胞は天然源、例えば血液から単離してもよい。
「補体依存性細胞障害」もしくは「CDC」は、補体の存在下で標的を溶解することを意味する。典型的な補体経路の活性化は補体系(Clq)の第1補体が、同族抗原と結合した(適切なサブクラスの)抗体に結合することにより開始される。補体の活性化を評価するために、CDCアッセイを、例えばGazzano-Santoro等, J. Immunol. Methods 202:163 (1996)に記載されているように実施することができる。
「癌」及び「癌性」という用語は、典型的には調節されない細胞成長を特徴とする、哺乳動物における生理学的状態を指すか記述する。癌の例には、これらに限定されるものではないが、癌腫、リンパ腫、芽細胞腫、肉腫、及び白血病又はリンパ様悪性腫瘍が含まれる。このような癌のより特定の例には、扁平細胞癌(squamous cell cancer)(例えば扁平上皮細胞癌)、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、肺の腺癌、及び肺の扁平癌腫(squamous carcinoma)を含む肺癌、腹膜癌、肝細胞癌、胃腸癌を含む胃(gastric)又は腹部(stomach)癌、膵臓癌、神経膠芽細胞腫、子宮頸管癌、卵巣癌、肝臓癌、膀胱癌、尿道癌、肝癌、乳癌、結腸癌、直腸癌、結腸直腸癌、子宮内膜又は子宮癌、唾液腺癌、腎臓(kidney)又は腎(renal)癌、前立腺癌、産卵口癌、甲状腺癌、肝臓癌、肛門癌、陰茎癌、黒色腫、多発性骨髄腫及びB細胞リンパ腫、脳、並びに頭部及び頸部の癌、及び関連した転移が含まれる。
「細胞増殖性疾患」及び「増殖性疾患」という用語は、ある程度の異常な細胞増殖を伴う疾患を意味する。一実施態様では、細胞増殖性疾患は癌である。
ここで用いられる「腫瘍」は、悪性又は良性に関わらず、全ての腫瘍形成細胞成長及び増殖、及び全ての前癌性及び癌性細胞及び組織を意味する。
「細胞死を誘導する」抗体、オリゴペプチド又は他の有機分子は、生細胞を生育不能にするものである。細胞は、TAT376又はTAT377ポリペプチドを発現するもの、好ましくは、同じ組織型の正常細胞と比較してTAT376又はTAT377ポリペプチドを過剰発現する細胞である。TAT376又はTAT377ポリペプチドは、癌細胞の表面上で発現される膜貫通ポリペプチドであることができ、癌細胞により生成され分泌されるポリペプチドであり得る。好ましくは、その細胞は癌細胞、例えば、乳房、卵巣、胃、子宮内膜、唾液腺、肺、腎臓、結腸、甲状腺、膵臓又は膀胱細胞である。インビトロ細胞死は、抗体依存性細胞媒介細胞障害(ADCC)又は補体依存性障害(CDC)によって誘導される細胞死を識別するために、補体及び免疫エフェクター細胞の無い状態で確かめてもよい。従って、細胞死に関するアッセイは、熱不活性化血清(すなわち、補体の無い)を用いて、免疫エフェクター細胞が無い状態でおこなってもよい。抗体、オリゴペプチド又は他の有機分子が細胞死を誘導するか否かを確かめるために、ヨウ化プロピジウム(PI)、トリパンブルー(Moore等 Cytotechnology 17: 1-11(1995))又は7AADの取り込みによって評価した膜整合性の損失を、未処理細胞と関連して評価することができる。好ましい細胞死を誘導する抗体、オリゴペプチド又は他の有機分子は、BT474細胞でのPI取り込みアッセイで、PI取り込みを誘導するものである。
「TAT376又はTAT377発現細胞」は、細胞の表面上に又は分泌形態で内因性又は形質移入されたTAT376又はTAT377ポリペプチドを発現する。「TAT376又はTAT377発現癌」は、細胞表面上に存在するTAT376又はTAT377ポリペプチドを有する、又はTAT376又はTAT377ポリペプチドを生成し分泌する細胞を含む癌である。任意には、「TAT376又はTAT377発現癌」は、その細胞の表面上に十分なレベルのTAT376又はTAT377ポリペプチドを生成し、抗TAT376又は抗TAT377抗体、オリゴペプチド又は他の有機分子はそれへ結合することができ、癌に関して治療的効果を有する。他の実施態様では、任意には「TAT376又はTAT377発現癌」は、抗TAT376又は抗TAT377抗体、オリゴペプチド又は他の有機分子アンタゴニストが結合することができ、癌に対して治療的有効量を有するように十分なレベルのTAT376又はTAT377ポリペプチドを産生及び分泌する。後者に関して、アンタゴニストは腫瘍細胞による分泌TAT376又はTAT377ポリペプチドの産生及び分泌を減少、抑制又は阻害するアンチセンスオリゴヌクレオチドであり得る。TAT376又はTAT377ポリペプチドを「過剰発現」する癌は、同じ組織型の非癌性細胞と比較して、その細胞表面に顕著により高いレベルのTAT376又はTAT377ポリペプチドを有する、或いは産生及び分泌するものである。そのような過剰発現は、遺伝子増幅又は増大した転写又は翻訳によって生じ得る。TAT376又はTAT377ポリペプチド過剰発現は、診断又は予後アッセイにおいて、細胞の表面上に存在する、あるいは細胞により分泌されるTAT376又はTAT377タンパク質の増大したレベルを評価することによって定量されうる(例えば、TAT376又はTAT377ポリペプチドをコードする単離された核酸から、組み換えDNA技術を用いて調製することができる単離されたTAT376又はTAT377ポリペプチドに対して調製した抗TAT376又は抗TAT377抗体を用いた免疫組織化学アッセイを介して;FACS分析など)。あるいは、又は付加的に、例えば、TAT376又はTAT377コード化核酸又はその相補鎖と一致する核酸ベースプローブを使用する蛍光インサイツハイブリダイゼーション;(FISH;1998年10月に公開の国際公開98/45479を参照せよ)、サザンブロッティング、ノーザンブロッティング、又はポリメラーゼ連鎖反応(PCR)技術、例えばリアルタイム定量PCR(RT-PCR)を介して、細胞のTAT376又はTAT377ポリペプチドコード化核酸又はmRNAのレベルを測定してもよい。また、例えば、抗体ベースアッセイを用いて、血清のような生物学的体液中に流れている抗原を測定することによって、TAT376又はTAT377ポリペプチド過剰発現を研究してもよい(同じく、例えば、1990年6月12日に公開の米国特許第4933294号;1991年4月18日に公開の国際公開91/05264;1995年3月28日に公開の米国特許第5401638号;Sias等, J. Immunol. Methods 132: 73-80(1990)を参照せよ)。上記のアッセイとは別に、種々のインビボアッセイは、熟練技術者にとって入手可能である。例えば、患者の体の中にある細胞を、例えば、放射活性アイソトープのような検出可能な標識で場合によって標識した抗体に曝してもよく、患者の細胞への抗体の結合は、例えば、放射活性の外部スキャンニングによって、又は以前に抗体へ曝した患者から取り出した生検を分析することによって評価することができる。
ここで用いられているように、「イムノアドヘシン」という用語は、免疫グロブリン定常ドメインのエフェクター機能を持つ異種タンパク質(「アドヘシン」)の結合特異性を付与した抗体様分子を指す。構造的には、イムノアドヘシンは抗体の抗原認識及び結合部位以外の所望の結合特異性を持つアミノ酸配列(即ち「異種」)と免疫グロブリン定常ドメイン配列との融合物である。イムノアドヘシン分子のアドへシン部分は、典型的には少なくともレセプター又はリガンドの結合部位を含む近接アミノ酸配列を含む。イムノアドヘシンの免疫グロブリン定常ドメイン配列は、IgG-1、IgG-2、IgG-3、又はIgG-4サブタイプ、IgA(IgA-1及びIgA-2を含む)、IgE、IgD又はIgMなどの任意の免疫グロブリンから得ることができる。
「標識」という語は、ここで用いられる場合、「標識化」抗体、オリゴペプチド又は他の有機分子を作製するために、抗体、オリゴペプチド又は他の有機分子に直接的又は間接的に結合させる検出可能な化合物又は組成物を意味する。標識はそれ自身によって検出可能でもよく(例えば、放射性同位体標識又は蛍光標識)、あるいは、酵素標識の場合には、検出可能な基質化合物又は組成物の化学的変換を触媒してもよい。
「複製防止剤」とは、アポトーシス、血管静止、サイトーシス、殺腫瘍、有糸分裂阻害、細胞周期進行のブロック、細胞成長停止、腫瘍への結合、細胞メディエーターとしての作用などのメカニズムを問わず、細胞の複製、機能、及び/又は成長が阻害又は防止されるか、或いは細胞が破壊される薬剤である。このような薬剤には、化学療法剤、細胞障害剤、サイトカイン、成長阻害剤、又は抗ホルモン剤、例えばタモキシフェン等の抗エストロゲン化合物、オナプリストン(onapriston)等の抗プロゲステロン(EP616812参照)、或いはフルタミド等の抗アンドロゲン、並びにaromidase阻害薬、マラはアンドロゲンなどのホルモン剤が含まれる。
ここで用いられる「細胞障害剤」という用語は、細胞の機能を阻害又は阻止し及び/又は細胞破壊を生ずる物質を指す。この用語は、放射性同位体(例えば、At211、I131、I125、Y90、Re186、Re188、Sm153、Bi212、P32及びLuの放射性同位元素)、化学治療薬、例えばメトトレキセート、アドリアマイシン、ビンカアルカロイド類(ビンクリスチン、ビンブラスチン、エトポシド)、ドキソルビシン、メルファラン、マイトマイシンC、クロラムブシル、ダウノルビシン又は他の挿入剤、酵素及びその断片、例えば核溶解性酵素、抗生物質、及び毒素、例えばその断片及び/又は変異体を含む小分子毒素又は細菌、糸状菌、植物又は動物起源の酵素的に活性な毒素、そして下記に開示する種々の抗腫瘍又は抗癌剤を含むように意図されている。他の細胞毒性薬が下記に記載されている。殺腫瘍性剤は、腫瘍細胞の破壊を引き起こす。
本明細書において、アンタゴニストと組み合わせて特定の腫瘍型に使用するのに好ましい細胞障害剤は以下の通りである。
1.前立腺癌:アンドロゲン、ドセタキセル、パクリタキセル、エストラムスチン、ドキソルビシン、ミトキサントロン、ErbB2の細胞外領域内の一領域(例えば、ErbB2の残基22から残基584の領域における一つ以上の任意の残基)と結合する2C4(WO 01/00245;ハイブリドーマATCC HB 12697)のようなErbB2領域に対する抗体、AVASTINTM抗血管性内皮成長因子(VEGF)、TARCEVATM OSI−774(エルロチニブ)(ジェネンテック及びOSI Pharmaceuticals)、又はその他上皮性成長因子レセプターチロシンキナーゼ阻害薬。
2.胃癌:5−フルオロウラシル(5FU)、XELODATMカペシタビン、メトトレキセート、エトポシド、シスプラチン/カルボプラチン、パクリタキセル(pacliitaxel)、ドセタキセル、ゲムシタビン、ドキソルビシン、及びCPT−11(カンプトシン(camptothcin)11;イリノテカン、米国商品名:CAMPTOSAR(登録商標))。
3.膵臓癌:ゲムシタビン、5FU、XELODATMカペシタビン、CPT−11、ドセタキセル、パクリタキセル、シスプラチン、カルボプラチン、TARCEVATMエルロチニブ及びその他のEGFR TKI類。
4.結直腸癌:5FU(XELODATMカペシタビン、CPT−11、オキサリプラチン、AVASTINTM抗VEGF、TARCEVATMエルロチニブ及びその他のEGFR TKI類、並びに、EGFRに結合してEGFのレセプター活性化の開始能及び腫瘍へのシグナル伝達能を遮断する、ERBITUX(登録商標)(IMC C225として以前に知られていたもの)ヒト:ネズミ−キメラ化モノクローナル抗体。
5.腎癌:IL−2、インターフェロンα、AVASTINTM抗VEGF、MEGACETM(メゲストロールアセテート)プロゲスチン、ビンブラスチン、TARCEVATMエルロチニブ及びその他のEGFR TKI類。
ここで用いられる際の「成長阻害剤」は、細胞、特にTAT376又はTAT377発現癌細胞の成長をインビトロ又はインビボの何れかで阻害する化合物又は組成物を意味する。よって、成長阻害剤は、S期でTAT376又はTAT377発現細胞の割合を有意に減少させるものである。成長阻害剤の例は、細胞周期の進行を(S期以外の位置で)阻害する薬剤、例えばG1停止又はM期停止を誘発する薬剤を含む。古典的なM期ブロッカーは、ビンカス(ビンクリスチン及びビンブラスチン)、タキサン類、及びトポイソメラーゼII阻害剤、例えばドキソルビシン、エピルビシン、ダウノルビシン、エトポシド、及びブレオマイシンを含む。またG1停止させるこれらの薬剤は、S期停止にも波及し、例えば、DNAアルキル化剤、例えば、タモキシフェン、プレドニゾン、ダカルバジン、メクロレタミン、シスプラチン、メトトレキセート、5-フルオロウラシル、及びアラ-Cである。更なる情報は、The Molecular Basis of Cancer, Mendelsohn及びIsrael, 編, Chapter 1, 表題「Cell cycle regulation, oncogene, and antineoplastic drugs」, Murakami等, (WB Saunders: Philadelphia, 1995)、特に13頁に見出すことができる。タキサン類(パクリタキセル及びドセタキセル)は、共にイチイに由来する抗癌剤である。ヨーロッパイチイに由来するドセタキセル(TAXOTERE(登録商標)、ローン・プーラン ローラー)は、パクリタキセル(TAXOL(登録商標)、ブリストル-マイヤー スクウィブ)の半合成類似体である。パクリタキセル及びドセタキセルは、チューブリン二量体から微小管の集合を促進し、細胞の有糸分裂を阻害する結果となる脱重合を防ぐことによって微小管を安定化にする。
「ドキソルビシン」はアントラサイクリン抗生物質である。ドキソルビシンの完全な化学名は、(8S-シス)-10-[(3-アミノ-2,3,6-トリデオキシ-α-L-リキソ-ヘキサピラノシル)オキシ]-7,8,9,10-テトラヒドロ-6,8,11-トリヒドロキシ-8-(ヒドロキシアセチル)-1-メトキシ-5,12-ナフタセンジオンである。
「サイトカイン」なる用語は、一つの細胞集団から放出され、他の細胞に細胞間メディエータとして作用するタンパク質の一般用語である。このようなサイトカインの例は、リンホカイン、モノカイン、及び伝統的なポリペプチドホルモンである。サイトカインに含まれるのは、成長ホルモン、例えばヒト成長ホルモン、N-メチオニルヒト成長ホルモン、及びウシ成長ホルモン;副甲状腺ホルモン;チロキシン;インシュリン;プロインシュリン;レラキシン;プロレラキシン;糖タンパク質ホルモン、例えば濾胞刺激ホルモン(FSH)、甲状腺刺激ホルモン(TSH)、及び黄体化ホルモン(LH);肝臓成長因子;線維芽成長因子;プロラクチン;胎盤ラクトゲン;腫瘍壊死因子-α及び-β;ミューラー阻害因子;マウス生殖腺刺激ホルモン関連ペプチド;インヒビン;アクチビン;血管内皮成長因子;インテグリン;トロンボポエチン(TPO);NGF-β等の神経成長因子;血小板成長因子;TGF-α及びTGF-β等のトランスフォーミング成長因子(TGFs);インシュリン様成長因子-I及びII;エリスロポエチン(EPO);骨誘発因子;インターフェロン-α、-β、及び-γ等のインターフェロン;コロニー刺激因子(CSFs)、例えばマクロファージ-CSF(M-CSF);顆粒球-マクロファージ-CSF(GM-CSF);及び顆粒球-CSF(G-CSF);インターロイキン(ILs)、例えばIL-1、IL-1a、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-8、IL-9、IL-11、IL-12;腫瘍壊死因子、例えばTNF-α及びTNF-β;及びLIF及びキットリガンド(KL)を含む他のポリペプチド因子である。ここで用いられる際、用語サイトカインには、天然供給源から、又は組換え細胞培養からのタンパク質、及び天然配列サイトカインの生物学的に活性な等価物が含まれる。
「パッケージ挿入物」という用語は、効能、用途、服用量、投与、配合禁忌及び/又はその治療薬の用途に関する警告についての情報を含む、治療薬の商業的包装を慣習的に含めた指示書を指す。
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II.本発明の組成物及び方法
A.抗TAT376又は抗TAT377抗体
一実施態様では、本発明は、ここで治療及び/又は診断薬としての用途が見出され得る抗TAT376又は抗TAT377抗体を提供する。例示的な抗体には、ポリクローナル、モノクローナル、ヒト化、二重特異性及びヘテロコンジュゲート抗体が含まれる。
1.ポリクローナル抗体
ポリクローナル抗体は、好ましくは、関連する抗原とアジュバントを複数回皮下(sc)又は腹腔内(ip)注射することにより、動物に産生される。それは、免疫化されるべき種において免疫原性であるタンパク質へ、関連する抗原(特に、合成ペプチドが用いられる場合)を結合させるために有用である。例えば、この抗原を、キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)、血清アルブミン、ウシサイログロブリン、又は大豆トリプシンインヒビターへ、二重官能性又は誘導体形成剤、例えばマレイミドベンゾイルスルホスクシンイミドエステル(システイン残基を介する抱合)、N-ヒドロキシスクシンイミド(リジン残基を介する抱合)、グルタルアルデヒド、及び無水コハク酸、SOCl、又はR及びRが異なるアルキル基であるRN=C=NRを用いて結合させることができる。
動物を、例えばタンパク質又はコンジュゲート100μg又は5μg(それぞれウサギ又はマウスの場合)を完全フロイントアジュバント3容量と併せ、この溶液を複数部位に皮内注射することによって、抗原、免疫原性コンジュゲート、又は誘導体に対して免疫する。1ヶ月後、該動物を、完全フロイントアジュバントに入れた初回量の1/5ないし1/10のペプチド又はコンジュゲートを用いて複数部位に皮下注射することにより、追加免疫する。7ないし14日後に動物を採血し、抗体価について血清を検定する。動物は、力価がプラトーに達するまで追加免疫する。コンジュゲートはまた、タンパク融合として組換え細胞培養中で調製することができる。また、ミョウバンのような凝集化剤が、免疫反応の増強のために好適に使用される。
2.モノクローナル抗体
モノクローナル抗体は、Kohler等, Nature, 256:495 (1975)により最初に記載されたハイブリドーマ法、又は組換えDNA法(米国特許第4816567号)によって作成することができる。
ハイブリドーマ法においては、マウス又はその他の適当な宿主動物、例えばハムスターを上記のように免疫し、免疫化に用いられたタンパク質と特異的に結合する抗体を産生する、又は産生することのできるリンパ球を導き出す。別法として、リンパ球をインビトロで免疫することもできる。免疫化の後、リンパ球を単離し、ポリエチレングリコールのような適当な融合剤を用いて骨髄腫細胞と融合させ、ハイブリドーマ細胞を形成させる(Goding, Monoclonal Antibodies: Principles and Practice, 59-103頁(Academic Press, 1986))。
このようにして調製されたハイブリドーマ細胞を、融合していない親の骨髄腫細胞(融合のパートナーとも呼ばれる)の増殖または生存を阻害する1つ又は複数の物質を好ましくは含む適当な培地に蒔き、増殖させる。例えば、親の骨髄腫細胞が酵素ヒポキサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HGPRT又はHPRT)を欠失するならば、ハイブリドーマのための培地は、典型的には、HGPRT−欠失細胞の増殖を妨げる物質であるヒポキサンチン、アミノプテリン、及びチミジンを含有するであろう(HAT培地)。
好ましい融合のパートナーである骨髄腫細胞は、効率的に融合し、選択された抗体産生細胞による抗体の安定な高レベルの発現を支援し、融合しない親細胞に対して選択する選択培地に対して感受性である細胞である。これらの中でも、好ましい骨髄腫株化細胞は、マウス骨髄腫ライン、例えば、ソーク・インスティテュート・セル・ディストリビューション・センター、サンディエゴ、カリフォルニア、USAより入手し得るMOPC-21およびMPC-11マウス腫瘍、及び、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション、マナッサス、バージニア、USAより入手し得るSP-2又はX63-Ag8-653細胞から誘導されるものである。ヒト骨髄腫及びマウス−ヒトヘテロ骨髄腫株化細胞もまたヒトモノクローナル抗体の産生のために開示されている(Kozbor, J.Immunol., 133:3001 (1984);Brodeur等, Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications,51-63頁、(Marcel Dekker, Inc., New York, 1987))。
ハイブリドーマ細胞が生育している培地を、抗原に対するモノクローナル抗体の産生について検定する。好ましくは、ハイブリドーマ細胞により産生されるモノクローナル抗体の結合特異性は、免疫沈降又はインビトロ結合検定、例えばラジオイムノアッセイ(RIA)又は酵素結合免疫吸着検定(ELISA)によって測定する。
例えば、モノクローナル抗体の結合親和性は、Munson等, Anal. Biochem., 107:220(1980)のスキャッチャード分析によって測定することができる。
所望の特異性、親和性、及び/又は活性の抗体を産生するハイブリドーマ細胞が確定された後、そのクローンを限界希釈法によりサブクローニングし、標準的な方法により増殖させることができる(Goding, Monoclonal Antibodies: Principles and Practice, 59-103頁(Academic Press, 1986))。この目的に対して好適な培地は、例えば、D-MEM又はRPMI-1640培地を包含する。また、このハイブリドーマ細胞は、動物の腹水症腫瘍として、例えばマウスへの細胞の腹腔内注射によって、インビボで増殖させることができる。
サブクローンにより分泌されたモノクローナル抗体は、例えばアフィニティークロマトグラフィー(例えばプロテインA又はプロテインG-セファロースを用いる)又はイオン交換クロマトグラフィー、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析等のような常套的な抗体精製法によって、培地、腹水、又は血清から上手く分離される。
モノクローナル抗体をコードするDNAは、常法を用いて(例えば、マウス抗体の重鎖および軽鎖をコードしている遺伝子に特異的に結合できるオリゴヌクレオチドプローブを用いることにより)即座に分離されて、配列決定される。ハイブリドーマ細胞は、このようなDNAの好ましい供給源となる。ひとたび分離されたならば、DNAを発現ベクター中に入れ、ついでこれを、この状況以外では抗体タンパク質を産生しない大腸菌細胞、サルCOS細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、又は骨髄腫細胞のような宿主細胞中に形質移入し、組換え宿主細胞におけるモノクローナル抗体の合成を獲得することができる。抗体をコードするDNAの細菌での組み換え発現に関する概説論文には、Skerra等, Curr. Opinion in Immunol., 5:256-262(1993)及びPluckthun, Immunol. Revs. 130: 151-188(1992)が含まれる。
更なる実施態様では、抗体又は抗体断片は、McCafferty等, Nature, 348:552-554 (1990)に記載された技術を使用して産生される抗体ファージライブラリーから分離することができる。Clackson等, Nature, 352:624-628 (1991)及び Marks等, J.Mol.Biol., 222:581-597 (1991)は、ファージライブラリーを使用したマウス及びヒト抗体の分離を記述している。続く刊行物は、鎖シャフリングによる高親和性(nM範囲)のヒト抗体の生成(Marks等, Bio/Technology, 10:779-783[1992])、並びに非常に大きなファージライブラリーを構築するための方策としてコンビナトリアル感染とインビボ組換え(Waterhouse等, Nuc.Acids.Res., 21:2265-2266[1993])を記述している。従って、これらの技術はモノクローナル抗体の分離に対する伝統的なモノクローナル抗体ハイブリドーマ法に対する実行可能な別法である。
抗体をコードするDNAは、例えば、ヒト重鎖及び軽鎖定常ドメイン(C及びC)の配列を、相同的マウス配列に代えて置換することによって(米国特許第4,816,567号;Morrison等, Proc.Nat.Acad.Sci.,USA,81:6851(1984))、又は免疫グロブリンコード配列に非免疫グロブリンポリペプチド(異種ポリペプチド)のコード配列の全部又は一部を共有結合させることによって修飾してキメラ又は融合抗体ポリペプチドを生成することができる。非免疫グロブリンポリペプチド配列は、抗体の定常ドメインと置き代わることができるか、又は抗体の1つの抗原結合部位の可変ドメインが置換されて、抗原に対する特異性を有する1つの抗原結合部位と異なる抗原に対する特異性を有するもう一つの抗原結合部位とを含むキメラ二価抗体を作り出す。
3.ヒト及びヒト化抗体
本発明の抗TAT376又は抗TAT377抗体は、さらにヒト化抗体又はヒト抗体を含む。非ヒト(例えばマウス)抗体のヒト化形とは、キメラ免疫グロブリン、免疫グロブリン鎖又はその断片(例えばFv、Fab、Fab’、F(ab’)あるいは抗体の他の抗原結合サブ配列)であって、非ヒト免疫グロブリンに由来する最小配列を含むものである。ヒト化抗体は、レシピエントの相補性決定領域(CDR)の残基が、マウス、ラット又はウサギのような所望の特異性、親和性及び能力を有する非ヒト種(ドナー抗体)のCDRの残基によって置換されたヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)を含む。幾つかの例では、ヒト免疫グロブリンのFvフレームワーク残基は、対応する非ヒト残基によって置換されている。また、ヒト化抗体は、レシピエント抗体にも、移入されたCDRもしくはフレームワーク配列にも見出されない残基を含んでいてもよい。一般的に、ヒト化抗体は、全て又はほとんど全てのCDR領域が非ヒト免疫グロブリンのものに一致し、全て又はほとんど全てのFR領域がヒト免疫グロブリンのコンセンサス配列である、少なくとも1つ、典型的には2つの可変ドメインの実質的に全てを含む。ヒト化抗体は、最適には免疫グロブリン定常領域(Fc)、典型的にはヒトの免疫グロブリンの定常領域の少なくとも一部を含む[Jones等, Nature, 321:522-525 (1986); Riechmann等, Nature, 332:323-329 (1988); 及びPresta, Curr. Op Struct. Biol., 2:593-596 (1992)]。
非ヒト抗体をヒト化する方法はこの分野でよく知られている。一般的に、ヒト化抗体には非ヒト由来の1つ又は複数のアミノ酸残基が導入される。これら非ヒトアミノ酸残基は、しばしば、典型的には「移入」可変ドメインから得られる「移入」残基と称される。ヒト化は基本的にウィンター(Winter)及び共同研究者[Jones等, Nature, 321:522-525 (1986);Riechmann等, Nature, 332:323-327 (1988);Verhoeyen等, Science, 239:1534-1536 (1988)]の方法に従って、齧歯類CDR又はCDR配列をヒト抗体の対応する配列に置換することにより実施される。よって、このような「ヒト化」抗体は、無傷のヒト可変ドメインより実質的に少ない分が非ヒト種由来の対応する配列で置換されたキメラ抗体(米国特許第4,816,567号)である。実際には、ヒト化抗体は典型的には幾つかのCDR残基及び場合によっては幾つかのFR残基が齧歯類抗体の類似する部位からの残基によって置換されたヒト抗体である。
抗体がヒトの治療用途を意図している場合、抗原性及びHAMA反応(ヒト抗-マウス抗体)を低減するには、ヒト化抗体を生成する際に使用するヒトの軽重両方のヒト可変ドメインの選択が非常に重要である。いわゆる「ベストフィット法」では、齧歯動物抗体の可変ドメインの配列を、既知のヒト可変ドメイン配列のライブラリー全体に対してスクリーニングする。次に齧歯動物のものと最も近いヒトVドメイン配列を同定し、その中のヒトフレームワーク(FR)をヒト化抗体のために受け入れる(Sims等, J. Immunol., 151:2296 (1993);Chothia等, J. Mol. Biol., 196:901(1987))。他の方法では、軽又は重鎖の特定のサブグループのヒト抗体全てのコンセンサス配列から誘導される特定のフレームワーク領域を使用する。同じフレームワークをいくつかの異なるヒト化抗体に使用できる(Carter等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 89:4285 (1992);Presta等, J. Immunol., 151:2623(1993))。
更に、抗体を、抗原に対する高結合親和性や他の好ましい生物学的性質を保持してヒト化することが重要である。この目標を達成するべく、好ましい方法では、親及びヒト化配列の三次元モデルを使用して、親配列及び様々な概念的ヒト化産物の分析工程を経てヒト化抗体を調製する。三次元免疫グロブリンモデルは一般的に入手可能であり、当業者にはよく知られている。選択された候補免疫グロブリン配列の推測三次元立体配座構造を図解し、表示するコンピュータプログラムは購入可能である。これら表示を見ることで、候補免疫グロブリン配列の機能における残基のありそうな役割の分析、すなわち候補免疫グログリンの抗原との結合能力に影響を及ぼす残基の分析が可能になる。このようにして、例えば標的抗原に対する親和性が高まるといった、望ましい抗体特性が達成されるように、FR残基をレシピエント及び移入配列から選択し、組み合わせることができる。一般的に、高頻度可変領域残基は、直接かつ最も実質的に抗原結合性に影響を及ぼしている。
ヒト化抗TAT376又は抗TAT377抗体の種々の形態が考えられる。例えばヒト化抗体は、免疫結合体を生成するために、状況に応じて1つ又は複数の細胞傷害剤(類)と結合していてもよい抗体断片、例えばFabであってもよい。また、ヒト化抗体は無傷抗体、例えば無傷IgG1抗体であってもよい。
ヒト化の別法として、ヒト抗体を生成することができる。例えば、現在では、免疫化することで、内因性免疫グロブリンの産生がなく、ヒト抗体の全レパートリーを産生することのできるトランスジェニック動物(例えば、マウス)を作ることが可能である。例えば、キメラ及び生殖細胞系突然変異体マウスにおける抗体重鎖結合領域(J)遺伝子のホモ接合体欠失によって、結果として内因性抗体産生の完全な阻害が起こることが説明されてきた。ヒト生殖系列免疫グロブリン遺伝子配列の、このような生殖細胞系突然変異体マウスへの転移によって、結果として抗原投与時にヒト抗体の産生がおこる。Jakobovits等, Proc.Natl.Acad.Sci.USA, 90:2551 (1993);Jakobovits等, Nature 362:255-258 (1993); Bruggeman等, Year in Immuno., 7:33 (1993);米国特許第5545806号、同5569825号、同5591669号(全てジェンファーム(GenPharm));同5545807号;及び国際公開第97/17852号を参照されたい。
別法として、ファージディスプレイ技術(McCafferty等, Nature 348:552-553[1990])を使用して、非免疫化ドナーの免疫グロブリン可変(V)ドメイン遺伝子レパートリーから、インビトロでヒト抗体及び抗体断片を産出させることができる。この技術によれば、抗体Vドメイン遺伝子を、フレーム単位で、繊維状バクテリオファージ、例えばM13又はfdの大きい又は小さいコートタンパク質遺伝子のどちらかでクローンし、ファージ粒子の表面で機能的抗体断片として表示させる。繊維状粒子がファージゲノムの一本鎖DNAコピーを含むので、抗体の機能特性に基づいた選択に基づいても、結果としてこれらの特性を示す抗体をコードする遺伝子の選択が成される。よって、このファージはB細胞のいくつかの特性を模倣している。ファージディスプレイは多様な形式で行うことができる;例えばJohnson, Kevin S. 及びChiswell, David J., Current Opinion in Structural Biology 3:564-571(1993)を参照せよ。V-遺伝子セグメントのいくつかの供給源を、ファージディスプレイのために使用できる。Clackson等, Nature, 352:624-628(1991)は、免疫化したマウス脾臓由来のV遺伝子の小さいランダムなコンビナトリアルライブラリーから、多様で多くの抗-オキサゾロン抗体を単離した。非免疫化ヒトドナーのV遺伝子のレパートリーが構成可能であり、多様で多くの抗原(自己抗原を含む)に対する抗体は、Marks等, J. Mol. Biol. 222:581-597(1991)、又はGriffith等, EMBO J. 12:725-734(1993)に記載の技術にそのまま従うことで単離することができる。また、米国特許第5565332号及び同5573905号を参照のこと。
上述したように、ヒト抗体はインビトロで活性化したB細胞により産生することができる(米国特許第5567610号及び同5229275号)。
4.抗体断片
ある状況下では、抗体全体よりも、抗体断片を用いることに利点がある。より小さな大きさの断片によって迅速なクリアランスが可能となり、固形腫瘍への接近の改良につながり得る。
抗体断片を産生するために様々な技術が開発されている。伝統的には、これらの断片は、無傷の抗体のタンパク分解性消化によって誘導された(例えば、Morimoto等, Journal of Biochemical and Biophysical Methods 24:107-117 (1992)及びBrennan等, Science, 229:81(1985)を参照されたい)。しかし、これらの断片は、現在は組換え宿主細胞により直接産生することができる。Fab、Fv及びScFv抗体断片は、すべて大腸菌で発現させ分泌させることができ、従って、大量のこれら断片の産生が容易となった。抗体断片は、上で論じた抗体ファージライブラリーから単離することができる。別法として、Fab'-SH断片は大腸菌から直接回収することができ、化学的に結合させてF(ab')断片を形成することができる(Carter等, Bio/Technology 10:163-167(1992))。他のアプローチ法では、F(ab')断片を組換え宿主細胞培養から直接分離することができる。インビボ半減期が増した、サルベージレセプター結合性エピトープ残基を含むFab及びF(ab’)が、米国特許第5869046号に記載されている。抗体断片を生成するのための他の方法は、当業者には明らかであろう。他の実施態様では、選択する抗体は単鎖Fv断片(scFv)である。国際公開93/16185号;米国特許第5571894号;及び米国特許第5587458号を参照のこと。Fv及びsFvは、定常領域を欠く無傷の連結部位を有する唯一の種である;従って、インビボで使用している間の減少した非特異的結合に適している。sFv融合タンパク質は、sFvのアミノ又はカルボキシ末端のどちらかで、エフェクタータンパク質の融合体が生成されるように構成されてもよい。上掲のAntibody Engineering, Borrebaeck編を参照のこと。また、抗体断片は、例えば米国特許第5641870号に記載されているような「直鎖状抗体」であってもよい。そのような直鎖状抗体断片は単一特異性又は二重特異性であってもよい。
5.二重特異性抗体
二重特異性抗体は、少なくとも2つの異なるエピトープに対して結合特異性を有する抗体である。例示的な二重特異性抗体は、TAT376又はTAT377タンパク質の2つの異なるエピトープに結合しうる。他のこのような抗体では他のタンパク質に対する結合部位とTAT376又はTAT377結合部位とが結合しうる。あるいは、抗TAT376又はTAT377アームは、TAT376又はTAT377-発現細胞に細胞防御メカニズムを集中させ局在させるように、FcγRI(CD64)、FcγRII(CD32)及びFcγRIII(CD16)等のIgG(FcγR)に対するFcレセプター、又はT細胞レセプター分子(例えばCD3)等の白血球上のトリガー分子に結合するアームと結合しうる。また、二重特異性抗体はTAT376又はTAT377を発現する細胞に細胞障害剤を局在化するためにも使用されうる。これらの抗体はTAT376又はTAT377結合アーム及び細胞障害剤(例えば、サポリン(saporin)、抗インターフェロン-α、ビンカアルカロイド、リシンA鎖、メトトレキセート又は放射性同位体ハプテン)と結合するアームを有する。二重特異性抗体は完全長抗体又は抗体断片(例えばF(ab')2二重特異性抗体)として調製することができる。
国際公開第96/16673号には、二重特異性抗-ErbB2/抗-FcγRIII抗体が記載されており、米国特許第5837234号には、二重特異性抗-ErbB2/抗-FcγRI抗体が開示されている。二重特異性抗-ErbB2/Fcα抗体は国際公開第98/02463号に示されている。米国特許第5821337号は、二重特異性抗-ErbB2/抗-CD3抗体を教示するものである。
二重特異性抗体を作成する方法は当該分野において既知である。完全長二重特異性抗体の伝統的な産生は二つの免疫グロブリン重鎖-軽鎖対の同時発現に基づき、ここで二つの鎖は異なる特異性を持っている(Millstein等, Nature, 305:537-539(1983))。免疫グロブリン重鎖及び軽鎖が無作為に取り揃えられているため、これらのハイブリドーマ(四部雑種)は10個の異なる抗体分子の可能性ある混合物を産生し、そのうちただ一つが正しい二重特異性構造を有する。通常、アフィニティークロマトグラフィー工程により行われる正しい分子の精製は、かなり煩わしく、生成物収率は低い。同様の方法が国際公開第93/08829号及びTraunecker等、EMBO J. 10:3655-3659(1991)に開示されている。
異なったアプローチ法では、所望の結合特異性を有する抗体可変ドメイン(抗原-抗体結合部位)を免疫グロブリン定常ドメイン配列と融合させる。該融合は好ましくは、少なくともヒンジの一部、C2及びC3領域を含むIg重鎖定常ドメインである。軽鎖の結合に必要な部位を含む第一の重鎖定常領域(C1)を、融合の少なくとも一つに存在させることが望ましい。免疫グロブリン重鎖の融合、望まれるならば免疫グロブリン軽鎖をコードしているDNAを、別個の発現ベクター中に挿入し、適当な宿主生物に同時トランスフェクトする。これにより、組立に使用される三つのポリペプチド鎖の等しくない比率が所望の二重特異性抗体の最適な収率をもたらす態様において、三つのポリペプチド断片の相互の割合の調節に大きな融通性が与えられる。しかし、少なくとも二つのポリペプチド鎖の等しい比率での発現が高収率をもたらすとき、又はその比率が所望の鎖の結合にあまり影響がないときは、2または3個全てのポリペプチド鎖のためのコード化配列を一つの発現ベクターに挿入することが可能である。
この手法の好ましい実施態様では、二重特異性抗体は、第一の結合特異性を有する一方のアームのハイブリッド免疫グロブリン重鎖と他方のアームのハイブリッド免疫グロブリン重鎖-軽鎖対(第二の結合特異性を提供する)とからなる。二重特異性分子の半分にしか免疫グロブリン軽鎖がないと容易な分離法が提供されるため、この非対称的構造は、所望の二重特異性化合物を不要な免疫グロブリン鎖の組み合わせから分離することを容易にすることが分かった。このアプローチ法は、国際公開第94/04690号に開示されている。二重特異性抗体を産生する更なる詳細については、例えばSuresh等, Methods in Enzymology, 121:210 (1986)を参照されたい。
米国特許第5731168号に記載された他の手法によれば、一対の抗体分子間の界面を操作して組換え細胞培養から回収されるヘテロダイマーのパーセントを最大にすることができる。好適な界面はC3ドメインの少なくとも一部を含む。この方法では、第1抗体分子の界面からの1つ又は複数の小さいアミノ酸側鎖がより大きな側鎖(例えばチロシン又はトリプトファン)と置き換えられる。大きな側鎖と同じ又は類似のサイズの相補的「キャビティ」を、大きなアミノ酸側鎖を小さいもの(例えばアラニン又はスレオニン)と置き換えることにより第2の抗体分子の界面に作り出す。これにより、ホモダイマーのような不要の他の最終産物に対してヘテロダイマーの収量を増大させるメカニズムが提供される。
二重特異性抗体は、架橋した又は「ヘテロコンジュゲート」抗体もまた含む。例えば、ヘテロコンジュゲートの抗体の一方はアビジンに結合され、他方はビオチンに結合され得る。そのような抗体は、例えば、不要の細胞に対する免疫系細胞をターゲティングするため(米国特許第4676980号)、及びHIV感染の治療のために提案された(国際公開第91/00360号、同92/200373号、及び欧州特許第03089号)。ヘテロコンジュゲート抗体は、あらゆる簡便な架橋法を用いて作製することができる。好適な架橋剤は当該分野において良く知られており、幾つかの架橋技術と共に米国特許第4676980号に開示されている。
抗体断片から二重特異性抗体を産生する技術もまた文献に記載されている。例えば、化学結合を使用して二重特異性抗体を調製することができる。Brennan等, Science, 229:81 (1985) は無傷の抗体をタンパク分解性に切断してF(ab')断片を産生する手順を記述している。これらの断片は、ジチオール錯体形成剤、亜砒酸ナトリウムの存在下で還元して近接ジチオールを安定化させ、分子間ジスルフィド形成を防止する。産生されたFab'断片はついでチオニトロベンゾアート(TNB)誘導体に変換される。Fab'-TNB誘導体の一つをついでメルカプトエチルアミンでの還元によりFab'-チオールに再変換し、他のFab'-TNB誘導体の等モル量と混合して二重特異性抗体を形成する。作られた二重特異性抗体は酵素の選択的固定化用の薬剤として使用することができる。
最近の進歩により、大腸菌からのFab'-SH断片の直接の回収が容易になり、これは化学的に結合して二重特異性抗体を形成することができる。Shalaby等,J.Exp.Med., 175:217-225 (1992)は完全にヒト化された二重特異性抗体F(ab')分子の製造を記述している。各Fab'断片は大腸菌から別個に分泌され、インビトロで定方向化学共役を受けて二重特異性抗体を形成する。このようにして形成された二重特異性抗体は、正常なヒトT細胞、及びErbB2レセプターを過剰発現する細胞に結合可能で、ヒト乳房腫瘍標的に対するヒト細胞毒性リンパ球の細胞溶解活性の誘因となる。
組換え細胞培養から直接的に二重特異性抗体断片を作成し分離する様々な技術もまた記述されている。例えば、二重特異性抗体はロイシンジッパーを使用して生成されている。Kostelny等, J.Immunol. 148(5):1547-1553 (1992)。Fos及びJunタンパク質からのロイシンジッパーペプチドを遺伝子融合により二つの異なった抗体のFab'部分に結合させる。抗体ホモダイマーをヒンジ領域で還元してモノマーを形成し、ついで再酸化して抗体ヘテロダイマーを形成する。この方法はまた抗体ホモダイマーの生成に対して使用することができる。Hollinger等, Proc.Natl.Acad.Sci. USA, 90:6444-6448 (1993)により記述された「ダイアボディ」技術は二重特異性抗体断片を作成する別のメカニズムを提供した。断片は、同一鎖上の2つのドメイン間の対形成を可能にするには十分に短いリンカーによりVにVを結合してなる。従って、一つの断片のV及びVドメインは他の断片の相補的V及びVドメインと強制的に対形成させられ、よって2つの抗原結合部位を形成する。単鎖Fv(sFv)ダイマーの使用により二重特異性抗体断片を製造する他の方策もまた報告されている。Gruber等, J.Immunol. 152:5368 (1994)を参照されたい。
二価より多い抗体も考えられる。例えば、三重特異性抗体を調製することができる。Tutt等 J.Immunol. 147:60(1991)。
6.ヘテロコンジュゲート抗体
ヘテロコンジュゲート抗体もまた本発明の範囲に入る。ヘテロコンジュゲート抗体は、2つの共有結合した抗体からなる。このような抗体は、例えば、免疫系細胞を不要な細胞に対してターゲティングさせるため[米国特許第4676980号]及びHIV感染の治療のために[国際公開第91/00360;国際公開第92/200373;欧州特許第03089号]提案されている。この抗体は、架橋剤に関連したものを含む合成タンパク化学における既知の方法を使用して、インビトロで調製することができると考えられる。例えば、ジスルフィド交換反応を使用するか又はチオエーテル結合を形成することによって、免疫毒素を作成することができる。この目的に対して好適な試薬の例には、イミノチオレート及びメチル-4-メルカプトブチルイミダート、及び例えば米国特許第4676980号に開示されたものが含まれる。
7.多価抗体
多価抗体は、抗体が結合する抗原を発現する細胞により、二価抗体よりも早くインターナリゼーション(及び/又は異化)されうる。本発明の抗体は、3又はそれ以上の結合部位を有する多価抗体(IgMクラス以外のもの)であり得(例えば四価抗体)、抗体のポリペプチド鎖をコードする核酸の組換え発現により容易に生成することができる。多価抗体は二量化ドメインと3又はそれ以上の抗原結合部位を有する。好ましい二量化ドメインはFc領域又はヒンジ領域を有する(又はそれらからなる)。このシナリオにおいて、抗体はFc領域と、Fc領域のアミノ末端に3又はそれ以上の抗原結合部位を有しているであろう。ここで、好ましい多価抗体は3ないし8、好ましくは4の抗原結合部位を有する(又はそれらからなる)。多価抗体は少なくとも1つのポリペプチド鎖(好ましくは2つのポリペプチド鎖)を有し、ポリペプチド鎖(類)は2又はそれ以上の可変ドメインを有する。例えば、ポリペプチド鎖(類)はVD1-(X1)n-VD2-(X2)n-Fcを有し、ここでVD1は第1の可変ドメインであり、VD2は第2の可変ドメインであり、FcはFc領域のポリペプチド鎖の一つであり、X1及びX2はアミノ酸又はポリペプチドを表し、nは0又は1である。例えば、ポリペプチド鎖(類)は:VH-CH1-柔軟なリンカー-VH-CH1-Fc領域鎖;又はVH-CH1-VH-CH1-Fc領域鎖を有し得る。ここで多価抗体は、好ましくは少なくとも2つ(好ましくは4つ)の軽鎖可変ドメインポリペプチドをさらに有する。ここで多価抗体は、例えば約2〜約8の軽鎖可変ドメインポリペプチドを有する。ここで考察される軽鎖可変ドメインポリペプチドは軽鎖可変ドメインを有し、場合によってはCLドメインを更に有する。
8.エフェクター機能の加工
本発明の抗体をエフェクター機能について改変し、例えば抗体の抗原-依存細胞媒介細胞毒性(ADCC)及び/又は補体依存細胞毒性(CDC)を向上させることは望ましい。これは、抗体のFc領域で一又は複数のアミノ酸置換を誘導することによりなされうる。あるいは又はさらに、システイン残基をFc領域に導入し、それにより、この領域に鎖間ジスルフィド結合を形成するようにしてもよい。そのようにして生成された同種二量体抗体は、向上したインターナリゼーション能力及び/又は増加した補体媒介細胞殺傷及び抗体−依存細胞性細胞毒性(ADCC)を有する可能性がある。Caron等, J. Exp. Med. 176: 1191-1195 (1992)及びShopes, B. J. Immunol. 148: 2918-2922 (1992)参照。また、向上した抗腫瘍活性を持つ同種二量体抗体は、Wolff等, Cancer Research 53: 2560-2565 (1993)に記載されている異種二官能性架橋を用いて調製することができる。あるいは、抗体は、2つのFc領域を有するように加工して、それにより補体溶解及びADCC能力を向上させることもできる。Stevenson等, Anti-Cancer Drug Design 3: 219-230 (1989)参照。
抗体の血清半減期を増大させるために、例えば米国特許第5739277号に記載のように、抗体(特に抗体断片)へサルベージレセプター結合エピトープを導入してもよい。ここで使用される場合の「サルベージレセプター結合エピトープ」なる用語は、IgG分子のインビボ血清半減期を増加させる原因であるIgG分子(例えば、IgG、IgG、IgG又はIgG)のFc領域のエピトープを意味する。
9.免疫複合体
また、本発明は、化学治療薬、成長阻害剤、毒素(例えば、細菌、真菌、植物又は動物由来の酵素活性毒素、又はその断片)などの細胞障害剤、あるいは放射性同位体(即ち、放射性コンジュゲート)と抱合している抗体を含む免疫複合体に関する。
このような免疫複合体の生成に有用な化学治療薬を上に記載した。用いることのできる酵素活性毒素及びその断片には、ジフテリアA鎖、ジフテリア毒素の非結合活性断片、(緑膿菌からの)外毒素A鎖、リシンA鎖、アブリンA鎖、モデクシン(modeccin)A鎖、アルファ-サルシン、アレウリテス・フォーディ(Aleurites fordii)タンパク質、ジアンチン(dianthin)タンパク質、フィトラカ・アメリカーナ(Phytolaca americana)タンパク質(PAPI、PAPII、及びPAP-S)、モモルディカ・チャランチア(momordica charantia)インヒビター、クルシン(curcin)、クロチン(crotin)、サパオナリア・オフィシナリス(sapaonaria officinalis)インヒビター、ゲロニン(gelonin)、ミトゲリン(mitogellin)、レストリクトシン(restrictocin)、フェノマイシン(phenomycin)、エノマイシン(enomycin)及びトリコテセン(tricothecene)が含まれる。放射性コンジュゲート抗体の生成には、様々な放射性ヌクレオチドが利用可能である。例としては、212Bi、131I、131In、90Y及び186Reが含まれる。抗体及び細胞毒性薬の複合体は、種々の二官能性タンパク質カップリング剤、例えば、N-スクシンイミジル-3-(2-ピリジルジチオール)プロピオナート(SPDP)、イミノチオラン(IT)、イミドエステルの二官能性誘導体(ジメチルアジピミデートHCL等)、活性エステル(ジスクシンイミジルスベレート等)、アルデヒド(グルタルアルデヒド等)、ビス-アジド化合物(ビス(p-アジドベンゾイル)ヘキサンジアミン等)、ビス-ジアゾニウム誘導体(ビス-(p-ジアゾニウムベンゾイル)-エチレンジアミン等)、ジイソシアネート(トリエン2,6-ジイソシアネート等)、及びビス-活性フッ素化合物(1,5-ジフルオロ-2,4-ジニトロベンゼン等)を用いて作成できる。例えば、リシン免疫毒素は、Vitetta等, Science 238: 1098 (1987)に記載されているように調製することができる。カーボン-14-標識1-イソチオシアナトベンジル-3-メチルジエチレントリアミン五酢酸(MX-DTPA)は、放射性ヌクレオチドの抗体への抱合のためのキレート剤の例である。国際公開94/11026参照。
抗体のコンジュゲートと1つ又は複数の小分子毒素、例えばカリケアマイシン、メイタンシノイド、トリコセン(trichothene)及びCC1065、及び毒性活性を有するこれらの毒素の誘導体が、ここで考察される。
メイタンシン及びメイタンシノイド
好ましい一実施態様では、本発明の抗TAT抗体(完全長又は断片)は一又は複数のメイタンシノイド分子と結合している。
メイタンシノイドは、チューブリン重合を阻害するように作用する分裂阻害剤である。メイタンシンは、最初、東アフリカシラブMaytenus serrataから単離されたものである(米国特許第3896111号)。その後、ある種の微生物がメイタンシノイド類、例えばメイタンシノール及びC-3メイタンシノールエステルを生成することが発見された(米国特許第4151042号)。合成メイタンシノール及びその誘導体及び類似体は、例えば米国特許第4137230号;同4248870号;同4256746号;同4260608号;同4265814号;同4294757号;同4307016号;同4308268号;同4308269号;同4309428号;同4313946号;同4315929号;同4317821号;同4322348号;同4331598号;同4361650号;同4364866号;同4424219号;同4450254号;同4362663号;及び同4371533号に開示されており、その開示は出典を明示してここに取り込まれる。
メイタンシノイド-抗体コンジュゲート
治療指標を改善する試みにおいて、メイタンシン及びメイタンシノイドは、腫瘍細胞抗原に特異的に結合する抗体と結合している。メイタンシノイドを含有する免疫コンジュゲート及びそれらの治療用途は、例えば米国特許第5,208,020号、同5,416,064号、欧州特許第0425235B1号に開示されており、その開示は出典を明示してここに取り込まれる。Liu等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 93:8618-8623(1996)には、ヒト結腸直腸癌に対するモノクローナル抗体C242に結合するDM1と命名されたメイタンシノイドを含有する免疫コンジュゲートが記載されている。前記コンジュゲートは培養された結腸癌細胞に対して高い細胞毒性を有することが見出されており、インビボ腫瘍成長アッセイにおいて抗腫瘍活性を示す。Chari等, Cancer Research, 52:127-131(1992)には、メイタンシノイドが、ジスルフィド結合を介して、ヒト結腸癌株化細胞の抗原に結合するマウス抗体A7、又はHER-2/neuオンコジーンに結合する他のマウスモノクローナル抗体TA.1に結合している免疫コンジュゲートが記載されている。TA.1-メイタンシノイドコンジュゲートの細胞毒性はヒト乳癌株化細胞SK-BR-3におけるインビトロで試験され、細胞当たり3x10HER-2表面抗原が発現した。薬剤コンジュゲートにより、遊離のメイタンシノイド剤に類似した細胞障害度が達成され、該細胞障害度は、抗体分子当たりのメイタンシノイド分子の数を増加させることにより増加する。A7-メイタンシノイドコンジュゲートはマウスにおいては低い全身性細胞毒性を示した。
抗TAT376又は抗TAT377ポリペプチド抗体-メイタンシノイドコンジュゲート(免疫コンジュゲート)
抗TAT376又は抗TAT377抗体-メイタンシノイドコンジュゲートは、抗体又はメイタンシノイド分子のいずれの生物学的活性もほとんど低減することなく、メイタンシノイド分子に抗TAT376又は抗TAT377抗体を化学的に結合させることにより調製される。1分子の毒素/抗体は、裸抗体の使用において細胞毒性を高めることが予期されているが、抗体分子当たり、平均3-4のメイタンシノイド分子が結合したものは、抗体の機能又は溶解性に悪影響を与えることなく、標的細胞に対する細胞毒性を向上させるといった効力を示す。メイタンシノイドは当該技術分野でよく知られており、公知の技術で合成することも、天然源から単離することもできる。適切なメイタンシノイドは、例えば米国特許第5208020号、及び他の特許、及び上述した特許ではない刊行物に開示されている。好ましいメイタンシノイドは、メイタンシノール、及び種々のメイタンシノールエステル等の、メイタンシノール分子の芳香環又は他の位置が修飾されたメイタンシノール類似体である。
例えば、米国特許第5208020号又は欧州特許第0425235B1号、及びChari等, Cancer Research, 52:127-131(1992)に開示されているもの等を含む、抗体-メイタンシノイドコンジュゲートを作製するために、当該技術で公知の多くの結合基がある。結合基には、上述した特許に開示されているようなジスルフィド基、チオエーテル基、酸不安定性基、光不安定性基、ペプチターゼ不安定性基、又はエステラーゼ不安定性基が含まれるが、ジスルフィド及びチオエーテル基が好ましい。
抗体とメイタンシノイドとのコンジュゲートは、種々の二官能性タンパク質カップリング剤、例えばN-スクシンイミジル-3-(2-ピリジルジチオ)プロピオナート(SPDP)、スクシンイミジル-4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-カルボキシラート、イミノチオラン(IT)、イミドエステル類の二官能性誘導体(例えばジメチルアジピミダートHCL)、活性エステル類(例えば、スベリン酸ジスクシンイミジル)、アルデヒド類(例えば、グルタルアルデヒド)、ビスアジド化合物(例えば、ビス(p-アジドベンゾイル)ヘキサンジアミン)、ビス-ジアゾニウム誘導体(例えば、ビス-(p-ジアゾニウムベンゾイル)エチレンジアミン)、ジイソシアネート(例えば、トルエン-2,6-ジイソシアネート)、及び二活性フッ素化合物(例えば、1,5-ジフルオロ-2,4-ジニトロベンゼン)を使用して作製することができる。特に好ましいカップリング剤には、ジスルフィド結合により提供されるN-スクシンイミジル-4-(2-ピリジルチオ)ペンタノアート(SPP)及びN-スクシンイミジル-3-(2-ピリジルジチオ)プロピオナート(SPDP)(Carlsson等, Biochem. J. 173:723-737[1978])が含まれる。
リンカーは結合の種類に応じて、種々の位置でメイタンシノイド分子に結合し得る。例えば、従来からのカップリング技術を使用してヒドロキシル基と反応させることによりエステル結合を形成することができる。反応はヒドロキシル基を有するC-3位、ヒドロキシメチルで修飾されたC-14位、ヒドロキシル基で修飾されたC-15位、及びヒドロキシル基を有するC-20位で生じる。好ましい実施態様において、結合はメイタンシノール又はメイタンシノールの類似体のC-3位で形成される。
カリケアマイシン
対象の他の免疫コンジュゲートには、1つ又は複数のカリケアマイシン分子と結合した抗TAT376又は抗TAT377抗体が含まれる。抗生物質のカリケアマイシンファミリーはサブ-ピコモルの濃度で二重鎖DNA破壊を生じることができる。カリケアマイシンファミリーのコンジュゲートの調製については、米国特許第5712374号、同5714586号、同5739116号、同5767285号、同5770701号、同5770710号、同5773001号、同5877296号(全て、American Cyanamid Company)を参照のこと。使用可能なカリケアマイシンの構造類似体には、限定するものではないが、γ 、α 、α 、N-アセチル-γ 、PSAG及びθ (Hinman等, Cancer Research, 53:3336-3342(1993)、Lode等 Cancer Research, 58:2925-2928(1998)及び上述したAmerican Cyanamidの米国特許)が含まれる。抗体が結合可能な他の抗腫瘍剤は、葉酸代謝拮抗薬であるQFAである。カリケアマイシン及びQFAは双方とも、細胞内に作用部位を有し、原形質膜を容易に通過しない。よって抗体媒介性インターナリゼーションによるこれらの薬剤の細胞への取込により、細胞障害効果が大きく向上する。
他の細胞障害剤
本発明の抗TAT376又は抗TAT377抗体と結合可能な他の抗腫瘍剤には、BCNU、ストレプトゾイシン、ビンクリスチン及び5-フルオロウラシル、米国特許第5053394号、同5770710号に記載されており、集合的にLL-E33288複合体として公知の薬剤のファミリー、並びにエスペラマイシン(esperamicine)(米国特許第5877296号)が含まれる。
使用可能な酵素活性毒及びその断片には、ジフテリアA鎖、ジフテリア毒素の非結合性活性断片、外毒素A鎖(シュードモナス・アエルギノーサ(Pseudomonas aeruginosa))、リシンA鎖、アブリンA鎖、モデシン(modeccin)A鎖、アルファ-サルシン(sarcin)、アレウライツ・フォルディイ(Aleurites fordii)プロテイン、ジアンシン(dianthin)プロテイン、フィトラッカ・アメリカーナ(Phytolaca americana)プロテイン(PAPI、PAPII及びPAP-S)、モモルディカ・キャランティア(momordica charantia)インヒビター、クルシン(curcin)、クロチン、サパオナリア(sapaonaria)オフィシナリスインヒビター、ゲロニン(gelonin)、マイトゲリン(mitogellin)、レストリクトシン(restrictocin)、フェノマイシン、エノマイシン及びトリコセセンス(tricothecenes)が含まれる。例えば、1993年10月28日公開の国際公開第93/21232号を参照のこと。
本発明は、抗体と核酸分解活性を有する化合物(例えばリボヌクレアーゼ又はDNAエンドヌクレアーゼ、例えばデオキシリボヌクレアーゼ;DNアーゼ)との間に形成される免疫コンジュゲートをさらに考察する。
腫瘍を選択的に破壊するため、抗体は高い放射性を有する原子を含有してよい。放射性コンジュゲートした抗TAT376又は抗TAT377抗体を生成するために、種々の放射性同位体が利用される。例には、At211、I131、I125、Y90、Re186、Re188、Sm153、Bi212、P32、Pb212及びLuの放射性同位体が含まれる。コンジュゲートが診断用に使用される場合、それはシンチグラフィー研究用の放射性原子、例えばtc99m又はI123、又は核磁気共鳴(NMR)映像(磁気共鳴映像、mriとしても公知)用のスピン標識、例えばヨウ素-123、ヨウ素-131、インジウム-111、フッ素-19、炭素-13、窒素-15、酸素-17、ガドリニウム、マンガン又は鉄を含有し得る。
放射-又は他の標識が、公知の方法でコンジュゲートに導入される。例えば、ペプチドは生物合成されるか、又は水素の代わりにフッ素-19を含む適切なアミノ酸前駆体を使用する化学的なアミノ酸合成により合成される。標識、例えばtc99m又はI123、Re186、Re188及びIn111は、ペプチドのシステイン残基を介して結合可能である。イットリウム-90はリジン残基を介して結合可能である。IODOGEN法(Fraker等(1978) Biochem. Biophys. Res. Commun. 80:49-57)は、ヨウ素-123の導入に使用することができる。他の方法の詳細は、「Monoclonal Antibodies in Immunoscintigraphy」(Chatal, CRC Press 1989)に記載されている。
抗体と細胞障害剤のコンジュゲートは、種々の二官能性タンパク質カップリング剤、例えばN-スクシンイミジル-3-(2-ピリジルジチオ)プロピオナート(SPDP)、スクシンイミジル-4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-カルボキシラート、イミノチオラン(IT)、イミドエステル類の二官能性誘導体(例えばジメチルアジピミダートHCL)、活性エステル類(例えば、スベリン酸ジスクシンイミジル)、アルデヒド類(例えば、グルタルアルデヒド)、ビスアジド化合物(例えば、ビス(p-アジドベンゾイル)ヘキサンジアミン)、ビス-ジアゾニウム誘導体(例えば、ビス-(p-ジアゾニウムベンゾイル)エチレンジアミン)、ジイソシアネート(例えば、トリエン-2,6-ジイソシアネート)、及び二活性フッ素化合物(例えば、1,5-ジフルオロ-2,4-ジニトロベンゼン)を使用して作製することができる。例えば、リシン免疫毒素は、Vitetta等, Science 238:1098(1987)に記載されているようにして調製することができる。炭素-14標識1-イソチオシアナトベンジル-3-メチルジエチレン-トリアミン五酢酸(MX-DTPA)が抗体に放射性ヌクレオチドをコンジュゲートするためのキレート剤の例である。国際公開第94/11026号を参照されたい。リンカーは細胞中の細胞障害剤の放出を容易にするための「切断可能リンカー」であってよい。例えば、酸不安定性リンカー、ペプチダーゼ過敏性リンカー、光不安定性リンカー、ジメチルリンカー又はジスルフィド含有リンカーが使用され得る(Chari等, Cancer Research, 52:127-131(1992);米国特許第5208020号)。
別法として、抗TAT376又は抗TAT377抗体及び細胞障害剤を含有する融合タンパク質は、例えば組換え技術又はペプチド合成により作製される。DNAの長さは、コンジュゲートの所望する特性を破壊しないリンカーペプチドをコードする領域により離間しているか、又は互いに隣接しているコンジュゲートの2つの部分をコードする領域をそれぞれ含有する。
他の実施態様において、腫瘍の事前ターゲティングに利用するために、「レセプター」(例えばストレプトアビジン)に抗体をコンジュゲートし、ここで抗体-レセプターコンジュゲートを患者に投与し、続いて清澄剤を使用し、循環から未結合コンジュゲートを除去し、細胞障害剤(例えば放射性ヌクレオチド)にコンジュゲートする「リガンド」(例えばアビジン)を投与する。
10.免疫リポソーム
ここで開示されている抗TAT376又は抗TAT377抗体は、免疫リポソームとして処方することもできる。「リポソーム」は、哺乳動物への薬物輸送に有用な、脂質、リン脂質及び/又は界面活性剤を含む種々のタイプの小胞体である。リポソームの成分は、通常は生物膜の脂質配向に類似した2層構造に配列される。抗体を含有するリポソームは、例えばEpstein等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 82:3688(1985);Hwang等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 77:4030(1980);及び米国特許第4485045号及び同4544545号;及び1997年10月23日に公開の国際公開97/38731に記載されているように、当該分野において既知の方法により調製される。循環時間が増したリポソームは米国特許第5013556号に開示されている。
特に有用なリポソームは、ホスファチジルコリン、コレステロール及びPEG-誘導体化ホスファチジルエタノールアミン(PEG-PE)を含有する脂質組成物を用いた逆相蒸発法により作製することができる。リポソームは孔径が定められたフィルターを通して押し出され、所望の直径を有するリポソームが得られる。本発明の抗体のFab'断片は、ジスルフィド交換反応を介して、Martin等, J. Biol. Chem. 257:286-288(1982)に記載されているようにしてリポソームにコンジュゲートすることができる。場合によっては、化学療法剤はリポソーム内に包含される。Gabizon等, J. National Cancer Inst. 81(19)1484(1989)を参照されたい。
B.TAT376又はTAT377結合オリゴペプチド
本発明のTAT376又はTAT377結合オリゴペプチドはここで記載される様なTAT376又はTAT377ポリペプチドに、好ましくは特異的に、結合するオリゴペプチドである。TAT376又はTAT377結合オリゴペプチドは、既知のオリゴペプチド合成法を用いて化学的に合成することができ、あるいは組換え技術を用いて調製及び生成することができる。TAT376又はTAT377結合オリゴペプチドは通常、少なくとも約5のアミノ酸長であり、或いは少なくとも約6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99又は100のアミノ酸長以上であり、このようなオリゴペプチドはここに記載される様なTAT376又はTAT377ポリペプチドに対して好ましくは特異的に結合する能力がある。TAT376又はTAT377結合オリゴペプチドは、よく知られた技術を用いて過度の実験をすることなしに同定することができる。この点において、ポリペプチド標的に特異的に結合する能力のあるオリゴペプチドのオリゴペプチドライブラリーを検索する技術は当分野でよく知られていることを注記する(例えば、米国特許第5556762号、同第5750373号、同第4708871号、同第4833092号、同第5223409号、同第5403484号、同第5571689号、同第5663143号;PCT公開第WO84/03506号、及びWO84/03564号;Geysen等, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 81:3998-4002 (1984);Geysen等, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 82:178-182 (1985);Geysen等, in Synthetic Peptides as Antigens, 130-149 (1986);Geysen等, J. Immunol. Meth., 102:259-274 (1987);Schoofs等, J. Immunol., 140:611-616 (1988), Cwirla,S.E.等(1990) Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 87:6378;Lowman,H.B.等 (1991) Biochemistry, 30:10832;Clackson,T.等 (1991) Nature, 352:624;Marks,J.D.等 (1991) J. Mol. Biol., 222:581;Kang,A.S.等 (1991) Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 88:8363、及びSmith, G.P. (1991) Current Opin. Biotechnol., 2:668参照)。
この点において、バクテリオファージ(ファージ)ディスプレイは、大きなオリゴペプチドライブラリーを検索して、ポリペプチド標的に特異的に結合する能力のあるこれらライブラリーのメンバーを同定することを可能にするよく知られた技術の一つである。ファージディスプレイは、様々なポリペプチドがバクテリオファージ粒子の表面上のコートタンパク質に融合タンパク質として表示されることによる技術である(Scott,J.K.及びSmith G. P. (1990) Science 249:386)。ファージディスプレイの有用性は、選択的にランダム化されたタンパク質変異体(又はランダムクローンcDNA)の大きなライブラリーを標的分子に高い親和性で結合するこれらの配列について素早く効果的に分類することができる点にある。ファージでのペプチド(Cwirla,S.E.等 (1990) Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 87:6378)又はタンパク質(Lowman,H.B.ら (1991) Biochemistry, 30:10832; Clackson,T.ら (1991) Nature, 352: 624; Marks,J.D.等 (1991), J. Mol. Biol., 222:581; Kang,A.S.等 (1991) Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 88:8363)ライブラーリのディスプレイは、特異的に結合する特性を有するものについて無数のポリペプチド又はオリゴペプチドをスクリーニングするために使用されている(Smith, G.P. (1991) Current Opin. Biotechnol., 2:668)。ランダム突然変異体のファージライブラリーの分類は、多数の変異体を構築して増殖させる方法、標的レセプターを用いた親和性精製の方法、及び結合増強の結果を評価する手段を必要とする。米国特許第5223409号、同第5403484号、同第5571689号、及び同第5663143号。
ほとんどのファージディスプレイ法は繊維状ファージを使用していたが、λファージディスプレイシステム(WO95/34683;米国特許第5627024号)、T4ファージディスプレイシステム(Ren, Z-J.ら (1998) Gene 215:439; Zhu, Z. (1997) CAN 33:534; Jiang, J.等 (1997) can 128:44380; Ren, Z-J.等 (1997) CAN 127:215644; Ren, Z-J. (1996) Protein Sci. 5:1833; Efimov, V.P.等 (1995) Virus Genes 10:173)及びT7ファージディスプレイシステム(Smith,G.P.及びScott,J.K. (1993) Methods in Enzymology,217, 228-257; 米国特許第5766905号)も知られている。
現在、基礎的なファージディスプレイ構想の多くの他の改良及び変形が開発されている。これらの改良は、選択された標的分子への結合についてペプチドライブラリーをスクリーニングするための、及びこれらのタンパク質が所望の特性をスクリーニングする潜在能力で機能性タンパク質をディスプレイするためのディスプレイシステムの能力を増強する。ファージディスプレイ反応のための組み換え反応手段について記載があり(WO98/14277)及びファージディスプレイライブラリーは二分子相互作用(WO98/20169;WO98/20159)及び拘束性へリックスペプチドの特性(WO98/20036)を分析及び制御するために使用されている。WO97/35196は、リガンドが標的分子に結合しうる第一の溶液、及び親和性リガンドが標的分子に結合しない第二の溶液とファージディスプレイライブラリーを接触させて結合リガンドを選択的に単離する、親和性リガンドの単離方法を記載する。WO97/46251は、親和性精製抗体でランダムファージディスプレイライブラリーをバイオパニングし、次いで結合ファージを単離し、続いてマイクロプレートのウェルでマイクロパニングして高親和性結合ファージを単離する方法を記載する。黄色ブドウ球菌(Staphlylococcus aureus)タンパク質Aの親和性タグとしての使用も報告されている(Li等, (1998) Mol Biotech., 9:187)。WO97/47314は、ファージディスプレイライブラリーでもよいコンビナトリアルライブラリーを用いて酵素特異性を識別するための基質サブトラクションライブラリーの使用を記載している。ファージディスプレイに用いる洗浄剤における使用に適した酵素を選択する方法はWO97/09446に記載される。特異的に結合するタンパク質を選択する更なる方法は、米国特許第5498538号、同第5432018号、及びWO98/15833に記載されている。
ペプチドライブラリーの作製及びこれらのライブラリーのスクリーニングの方法は、米国特許第5723286号、同第5432018号、同第5580717号、同第5427908号、同第5498530号、同第5770434号、同第5734018号、同第5698426号、同第5763192号、及び同第5723323号に記載される。
C.TAT376又はTAT377結合有機分子
TAT結合有機分子とは、ここに記載されるようなTAT376又はTAT377ポリペプチドに、好ましくは特異的に結合する、ここに定義されるようなオリゴペプチド又は抗体以外の有機分子である。TAT376又はTAT377結合有機分子は既知の方法(例えばPCT公開第WO00/00823及びWO00/39585号参照)を用いて同定され、化学的に合成されうる。TAT376又はTAT377結合有機分子は通常、約2000ダルトンの大きさ未満であり、あるいは約1500、750、500、250又は200ダルトンの大きさであり、ここに記載される様なTAT376又はTAT377ポリペプチドに、好ましくは特異的に結合する能力のあるこのような有機分子は、よく知られた技術を用いて過度の実験をすることなしに同定されうる。この点において、ポリペプチド標的に結合する能力のある分子の有機分子ライブラリーを検索する技術は当分野でよく知られていることを注記する(例えばPCT公開第WO00/00823及びWO00/39585号参照)。TAT376又はTAT377結合有機分子は、例えばアルデヒド、ケトン、オキシム、ヒドラゾン、セミカルバゾン、カルバジド、一級アミン、二級アミン、三級アミン、N置換ヒドラジン、ヒドラジド、アルコール、エーテル、チオール、チオエーテル、ジスルフィド、カルボン酸、エステル、アミド、尿素、カルバミン酸塩、炭酸塩、ケタール、チオケタール、アセタール、チオアセタール、ハロゲン化アリール、アリールスルホン酸、ハロゲン化アルキル、アルキルスルホン酸、芳香族化合物、複素環化合物、アニリン、アルケン、アルキン、ジオール、アミノアルコール、オキサゾリジン、オキサゾリン、チアゾリジン、チアゾリン、エナミン、スルホンアミド、エポキシド、アジリジン、イソシアン酸塩、塩化スルホニル、ジアゾ化合物、酸塩化物等であり得る。
D.所望する特性を有する抗TAT376又は抗TAT377抗体、TAT376又はTAT377結合オリゴペプチド及びTAT376又はTAT377結合有機分子のスクリーニング
TAT376又はTAT377ポリペプチドに結合する抗体、オリゴペプチド及び有機分子を生成する技術を、上記にて記載した。所望するような、所定の生物学的特性を有する抗体、オリゴペプチド又は有機分子をさらに選択することができる。
本発明の抗TAT376又は抗TAT377抗体、オリゴペプチド又は他の有機分子の成長阻害効果を、例えば、内因的又はTAT376又はTAT377遺伝子によるトランスフェクション後のいずれかでTAT376又はTAT377ポリペプチドを発現する細胞を用いる当該分野で周知の方法によって評価することができる。例えば、適切な腫瘍細胞株及びTAT376又はTAT377形質移入細胞は、数日間(例えば、2-7)、種々の濃度の本発明の抗TAT376又はTAT377モノクローナル抗体、オリゴペプチド又は他の有機分子で処理し、クリスタル・バイオレット又はMTTで染色、又は幾つかの他の比色アッセイによって分析し得る。増殖を測定するその他の方法は、本発明の抗TAT376又は抗TAT377抗体、TAT376又はTAT377結合オリゴペプチド又はTAT376又はTAT377結合有機分子の存在又は非存在下で処理した細胞のH-チミジン取り込みを比較することによる。処理の後、細胞を収集し、DNAへ取り込まれた放射能をシンチレーションカウンターで定量化した。適切なポジティブコントロールには、細胞株の成長を阻害することが知られている成長阻害抗体でその選択した細胞株を処理することが含まれる。インビボでの成長阻害は、当該分野で知られている種々の方法で確かめることができる。好ましくは、腫瘍細胞は、TAT376又はTAT377ポリペプチドを過剰発現するものである。好ましくは、抗TAT376又は抗TAT377抗体、TAT376又はTAT377結合オリゴペプチド又はTAT376又はTAT377結合有機分子は、ある実施態様では約0.5から30μg/mlの抗体濃度で、未処理腫瘍細胞と比べて約25-100%、より好ましくは約30-100%、そしてさらにより好ましくは約50-100%又は70-100%のTAT376又はTAT377発現腫瘍細胞の増殖をインビトロ又はインビボで阻害する。成長阻害は、細胞培養で、約0.5から30μg/ml又は0.5nMから200nMの抗体濃度で測定することができ、その成長阻害は、抗体への腫瘍細胞の曝露後1-10日で確かめられる。約1μg/kgから約100mg/kg体重での抗TAT376又は抗TAT377抗体の投与が、抗体の最初の投与から約5日から3ヶ月、好ましくは約5から30日以内に腫瘍の大きさの減少又は腫瘍細胞増殖の減少を引き起こすならば、抗体はインビボで成長阻害作用がある。
細胞死を誘発する抗TAT376又は抗TAT377抗体、TAT376又はTAT377結合オリゴペプチド又はTAT376又はTAT377結合有機分子を選択するために、例えばヨウ化プロピジウム(PI)、トリパンブルー又は7AADの取込みにより示される膜インテグリティの損失度合いを対照と比較して求める。PI取込みアッセイは、補体及び免疫エフェクター細胞の不在下で行われる。TAT376又はTAT377ポリペプチド発現細胞腫瘍細胞を、培地のみ、又は適切な抗TAT376又は抗TAT377抗体(例えば約10μg/ml)、TAT376又はTAT377結合オリゴペプチド又はTAT376又はTAT377結合有機分子を含有する培地でインキュベートする。細胞を3日間インキュベートする。各処理に続いて、細胞を洗浄し、細胞凝塊除去のために35mmのストレーナキャップ付き12x75チューブ(チューブ当たり1ml、処理グループ当り3チューブ)に等分する。次いで、チューブへPI(10μg/ml)を与える。サンプルをFACSCAN(登録商標)フローサイトメータとFACSCONVERT(登録商標)セルクエスト(CellQuest)ソフトウエア(Becton Dickinson)を使用して分析してもよい。PI取込みによって測定されるような、統計的に有意なレベルの細胞死を誘発する抗TAT376又は抗TAT377抗体、TAT376又はTAT377結合オリゴペプチド又はTAT376又はTAT377結合有機分子は、細胞死誘発抗TAT376又は抗TAT377抗体、TAT376又はTAT377結合オリゴペプチド又はTAT376又はTAT377結合有機分子として選択することができる。
関心のある抗体が結合したTAT376又はTAT377ポリペプチド上のエピトープに結合する抗体、オリゴペプチド又は他の有機分子をスクリーニングするために、Antibodies, A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory, Ed Harlow及びDavid Lane編(1988)に記載されているような通常の交差ブロッキングアッセイを実施することができる。既知の抗TAT376又は抗TAT377抗体のように、試験抗体、オリゴペプチド又は他の有機分子が同じ部位又はエピトープと結合するならば、このアッセイを確定するために用いることができる。あるいは、又は付加的に、エピトープマッピングを、当該分野で周知の方法によって行うことができる。例えば、接触残基を同定するために、例えばアラニンスキャンニングによって抗体配列を変異させることができる。この変異体抗体は、適切なフォールディングを確かめるために、最初にポリクローナル抗体との結合について試験される。異なる方法では、TAT376又はTAT377ポリペプチドの異なる領域と一致するペプチドを、試験抗体群又は試験抗体及び特徴付けられた又は既知のエピトープを有する抗体による競合アッセイで用いることができる。
E.抗体依存性酵素媒介性プロドラッグ治療法(ADEPT)
また、本発明の抗体は、プロドラッグ(例えばペプチジル化学療法剤、国際公開81/01145を参照)を活性な抗癌剤へ変換するプロドラッグ活性化酵素へ抗体をコンジュゲートすることによって、ADEPTにおいて使用することができる。例えば国際公開88/07378及び米国特許第4975278号を参照されたい。
ADEPTに有用な免疫コンジュゲートの酵素成分には、より活性な細胞毒形態に変換するようにプロドラッグへ作用し得る任意の酵素が含まれる。
限定するものではないが、この発明の方法に有用な酵素には、ホスファート含有プロドラッグを遊離の薬剤に変換するのに有用なアルカリ性ホスファターゼ;スルファート含有プロドラッグを遊離の薬剤に変換するのに有用なアリールスルファターゼ;非毒性5-フルオロシトシンを抗癌剤5-フルオロウラシルに変換するのに有用なシトシンデアミナーゼ;プロテアーゼ、例えばセラチアプロテアーゼ、サーモリシン、サブチリシン、カルボキシペプチダーゼ及びカテプシン(例えば、カテプシンB及びL)で、ペプチド含有プロドラッグを遊離の薬剤に変換するのに有用なもの;D-アミノ酸置換基を含有するプロドラッグの変換に有用なD-アラニルカルボキシペプチダーゼ;炭水化物切断酵素、例えばグリコシル化プロドラッグを遊離の薬剤に変換するのに有用なノイラミニダーゼ及びβガラクトシダーゼ;βラクタムで誘導体化された薬剤を遊離の薬剤に変換させるのに有用なβラクタマーゼ;及びペニシリンアミダーゼ、例えばそれぞれフェノキシアセチル又はフェニルアセチル基で、それらのアミン性窒素において誘導体化された薬剤を遊離の薬剤に変換するのに有用なペニシリンVアミダーゼ又はペニシリンGアミダーゼが含まれる。あるいは、「アブザイム」としてもまた公知の酵素活性を有する抗体を、遊離の活性薬剤に本発明のプロドラッグを変換させるために使用することもできる(例えば、Massey, Nature 328:457-458(1987)を参照)。抗体-アブザイムコンジュゲートは、ここで記載されているようにして、腫瘍細胞個体群にアブザイムを送達するために調製することができる。
この発明の酵素は、当該分野においてよく知られている技術、例えば上で検討したヘテロ二官能性架橋試薬を使用することにより、抗TAT376又は抗TAT377抗体に共有的に結合させることができる。あるいは、本発明の抗体の少なくとも抗原結合領域を本発明の酵素の少なくとも機能的に活性な部位に結合せしめてなる融合タンパク質を、当該技術においてよく知られている組換えDNA技術を使用して作成することができる(Neuberger等, Nature 312:604-608[1984])。
F.完全長TAT376又はTAT377ポリペプチド
本発明は、本出願でTAT376又はTAT377ポリペプチドと呼ばれるポリペプチドをコードする新規に同定され単離された核酸配列を提供する。特に下記の実施例でさらに詳細に説明するように、種々のTAT376又はTAT377ポリペプチドをコードするcDNA(部分及び完全長)が同定され単離された。
下記の実施例に開示するように、種々のcDNAクローンがATCCに寄託されている。これらのクローンの正確なヌクレオチド配列は、この分野で日常的な方法を用いて寄託されたクローンを配列決定することにより容易に決定することができる。予測されるアミノ酸配列は、ヌクレオチド配列から常套的技量を用いて決定できる。ここに記載したTAT376又はTAT377ポリペプチド及びコード化核酸について、本出願人は、現時点で入手可能な配列情報と最も良く一致するリーディングフレームであると考えられるものを同定した。
G.抗TAT376又は抗TAT377抗体及びTAT376又はTAT377ポリペプチド変異体
ここに記載した抗TAT376又は抗TAT377抗体及び完全長天然配列TAT376又はTAT377ポリペプチドに加えて、抗TAT376又は抗TAT377抗体及びTAT376又はTAT377ポリペプチド変異体も調製できると考えられる。抗TAT376又は抗TAT377抗体及びTAT376又はTAT377ポリペプチド変異体は、コード化DNAに適当なヌクレオチド変化を導入することによって、及び/又は所望の抗体又はポリペプチドを合成することによって調製できる。当業者は、アミノ酸変化がグリコシル化部位の数又は位置の変化あるいは膜固着特性の変化などの抗TAT376又は抗TAT377抗体の翻訳後プロセス又はTAT376又はTAT377ポリペプチドの翻訳後プロセスを変え得るのを理解するであろう。
ここに記載した抗TAT376又は抗TAT377抗体及びTAT376又はTAT377ポリペプチドの変異は、例えば、米国特許第5364934号に示す保存的及び非保存的変異に関する技術及び指針のいずれかを用いて作成することができる。変異は、結果として天然配列抗体又はポリペプチドと比較してアミノ酸配列の変化を生じる、抗体又はポリペプチドをコードする1つ又は複数のコドンの置換、欠失又は挿入であってもよい。場合によっては、変異は、抗TAT376又は抗TAT377抗体又はTAT376又はTAT377ポリペプチドの一つ又は複数のドメインにおける、少なくとも一つのアミノ酸の他の任意のアミノ酸との置換による。どのアミノ酸残基が所望の活性に悪影響を与えることなく挿入、置換又は欠失され得るかを確かめる指針は、抗TAT376又は抗TAT377抗体又はTAT376又はTAT377ポリペプチドの配列を既知の相同タンパク質分子の配列と比較し、相同性の高い領域内で生じたアミノ酸配列変化の数を最小にすることによって見出される。アミノ酸置換は、一のアミノ酸を類似した構造及び/又は化学特性を持つ他のアミノ酸で置換すること、例えばロイシンのセリンでの置換、即ち保存的アミノ酸置換の結果であるとすることができる。挿入及び欠失は、場合によっては1から5のアミノ酸の範囲内であり得る。許容され得る変異は、配列にアミノ酸の挿入、欠失又は置換を系統的に作成し、生じた変異体を完全長又は成熟天然配列によって示される活性に関して試験することによって確かめられる。
抗TAT376又は抗TAT377抗体及びTAT376又はTAT377ポリペプチド断片がここで提供されている。そのような断片は、例えば完全長天然抗体又はタンパク質と比較した時に、N末端又はC末端で切断しているか、又は内部残基を欠いている可能性がある。ある断片は、抗TAT376又は抗TAT377抗体又はTAT376又はTAT377ポリペプチドの所望される生物学的活性にとって必修ではないアミノ酸残基を欠く。
抗TAT376又は抗TAT377抗体及びTAT376又はTAT377ポリペプチド断片は、多くの従来技術のいずれかによって調製してもよい。所望のペプチド断片は化学合成してもよい。代替的方法には、酵素的消化、例えば特定のアミノ酸残基で確定した部位でタンパク質を切断することが知られた酵素によってタンパク質を処理することで、又は適当な制限酵素でDNAを消化して所望の断片を単離することによって抗体又はポリペプチド断片を生成することが含まれる。さらにその他の好適な技術には、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって、所望の抗体又はポリペプチド断片をコードするDNA断片を単離し増幅することが含まれる。DNA断片の所望の末端を確定するオリゴヌクレオチドは、PCRの5’及び3’プライマーで用いられる。好ましくは、抗TAT376又は抗TAT377抗体及びTAT376又はTAT377ポリペプチド断片は、ここに開示した天然抗TAT376又は抗TAT377抗体又はTAT376又はTAT377ポリペプチドと少なくとも1つの生物学的及び/又は免疫学的活性を共有する。
特定の実施態様では、対象とする同類置換を、好ましい置換の項目で表6に示す。このような置換が生物学的活性の変化をもたらす場合、表6に置換例と名前を付けた又は以下にアミノ酸分類でさらに記載するように、より実質的な変化が導入され生成物がスクリーニングされる。
Figure 2006512901
抗TAT376又は抗TAT377抗体又はTAT376又はTAT377ポリペプチドの機能又は免疫学的同一性の実質的修飾は、(a)置換領域のポリペプチド骨格の構造、例えばシート又は螺旋配置、(b)標的部位の電荷又は分子疎水性、又は(c)側鎖の嵩を維持しながら、それらの効果において実質的に異なる置換基を選択することにより達成される。天然に生じる残基は共通の側鎖特性に基づいてグループに分けることができる:
(1)疎水性:ノルロイシン, met, ala, val, leu, ile;
(2)中性の親水性:cys, ser, thr;
(3)酸性:asp, glu;
(4)塩基性:asn, gln, his, lys, arg;
(5)鎖配向に影響する残基:gly, pro; 及び
(6)芳香族:trp, tyr, phe。
非同類置換は、これらの分類の1つのメンバーを他の分類に交換することを必要とするであろう。また、そのように置換された残基は、同類置換部位、又はより好ましくは、残された(非保存)部位に導入されうる。
変異は、オリゴヌクレオチド媒介(部位特異的)突然変異誘発、アラニンスキャンニング、及びPCR突然変異誘発等のこの分野で知られた方法を用いてなすことができる。部位特異的突然変異誘発[Carter等, Nucl. Acids Res., 13: 4331 (1986); Zoller等, Nucl. Acids Res., 10: 6487 (1987)]、カセット突然変異誘発[Wells等, Gene, 34: 315 (1985)]、制限的選択突然変異誘発[Wells等, Philos. Trans. R. Soc. London SerA, 317: 415 (1986)]又は他の知られた技術をクローニングしたDNAに実施して、抗TAT376又は抗TAT377抗体又はTAT376又はTAT377ポリペプチド変異体DNAを作成することもできる。
また、隣接配列に沿って1つ又は複数のアミノ酸を同定するのにスキャンニングアミノ酸分析を用いることができる。好ましいスキャンニングアミノ酸は比較的小さく、中性のアミノ酸である。そのようなアミノ酸は、アラニン、グリシン、セリン、及びシステインを含む。アラニンは、ベータ炭素を越える側鎖を排除し変異体の主鎖構造を変化させにくいので、この群の中で典型的に好ましいスキャンニングアミノ酸である[Cunningham及びWells, Science, 244: 1081-1085 (1989)]。また、アラニンは最もありふれたアミノ酸であるため典型的には好ましい。さらに、それは埋もれた及び露出した位置の両方に見られることが多い[Creighton, The Proteins, (W.H. Freeman & Co., N.Y.); Chothia, J. Mol. Biol., 150: 1 (1976)]。アラニン置換が十分な量の変異体を生じない場合は、アイソテリック(isoteric)アミノ酸を用いることができる。
抗TAT376又は抗TAT377抗体又はTAT376又はTAT377ポリペプチドの適切なコンフォメーションを維持することに関与していない任意のシステイン残基も、分子の酸化的安定性を向上させ、異常な架橋を防ぐために、概してセリンと置換され得る。逆に、抗TAT376又は抗TAT377抗体又はTAT376又はTAT377ポリペプチドの安定性(特に、抗体がFv断片のような抗体断片)を向上させるために、それにシステイン結合(複数でも)を加えてもよい。
特に好ましい型の置換変異体は、親抗体(例えば、ヒト化抗体又はヒト抗体)の一又は複数の高頻度可変領域残基の置換を含む。一般的に、更なる開発のために得られた変異体は、それらが生成された親抗体と比較して向上した生物学的特性を有している。そのような置換変異体を生成する簡便な方法には、ファージディスプレイを使用する親和性成熟がふくまれる。簡潔に言えば、高頻度可変領域部位(例えば、6-7部位)を変異させて各部位における全ての可能なアミノ酸置換を生成させる。このように生成された抗体変異体は、繊維状ファージ粒子から、各粒子内に充填されたM13の遺伝子III産物への融合物として一価形態で表示される。ファージ表示変異体は、ついで、ここに開示されるようなそれらの生物学的活性(例えば、結合親和性)についてスクリーニングされる。改変の候補となる高頻度可変領域部位を同定するために、アラニンスキャンニング突然変異誘発を実施し、抗原結合に有意に寄与する高頻度可変領域残基を同定することができる。あるいは、又はそれに加えて、抗原-抗体複合体の結晶構造を分析して抗体とヒトTAT376又はTAT377ポリペプチドとの接点を同定するのが有利である場合もある。このような接触残基及び隣接残基は、ここで詳しく記述した技術による置換の候補である。そのような変異体が生成されたら、変異体のパネルにここに記載するようなスクリーニングを施し、一又は複数の関連アッセイにおいて優れた特性を持つ抗体を更なる開発のために選択することができる。
抗TAT376又は抗TAT377抗体のアミノ酸配列変異体をコードする核酸分子は、当該分野で周知の種々の方法によって調製される。これらの方法には、限定されるものではないが、オリゴヌクレオチド媒介(又は部位特異的)突然変異誘発、PCR突然変異誘発、そして抗TAT376又は抗TAT377抗体の早期に調製した変異体又は非変異体形のカセット突然変異誘発による、天然ソースからの単離(天然発生アミノ酸配列変異体の場合)又は調製が含まれる。
H.抗TAT376又は抗TAT377抗体及びTAT376又はTAT377ポリペプチドの修飾
抗TAT376又は抗TAT377抗体及びTAT376又はTAT377ポリペプチドの共有結合的修飾は本発明の範囲内に含まれる。共有結合的修飾の一型には、抗TAT376又は抗TAT377抗体又はTAT376又はTAT377ポリペプチドの標的とするアミノ酸残基を、抗TAT376又は抗TAT377抗体又はTAT376又はTAT377ポリペプチドの選択された側鎖又はN又はC末端残基と反応できる有機誘導体化試薬と反応させることが含まれる。二官能性試薬による誘導体化は、例えば抗TAT376又は抗TAT377抗体又はTAT376又はTAT377ポリペプチドを、抗TAT376又は抗TAT377抗体の精製方法で用いる水不溶性支持体マトリクス又は表面と架橋させるために有用であり、その逆も同じである。通常用いられる架橋剤には、例えば、1,1-ビス(ジアゾアセチル)-2-フェニルエタン、グルタルアルデヒド、N-ヒドロキシスクシンイミドエステル、例えば4-アジドサリチル酸を有するエステル、3,3'-ジチオビス(スクシンイミジルプロピオネート)等のジスクシンイミジルエステルを含むホモ二官能性イミドエステル、ビス-N-マレイミド-1,8-オクタン等の二官能性マレイミド、及びメチル-3-[(p-アジドフェニル)-ジチオ]プロピオイミダート等の試薬が含まれる。
他の修飾には、グルタミニル及びアスパラギニル残基の各々対応するグルタミル及びアスパルチル残基への脱アミノ化、プロリン及びリシンのヒドロキシル化、セリル又はトレオニル残基のヒドロキシル基のリン酸化、リシン、アルギニン、及びヒスチジン側鎖のα-アミノ基のメチル化[T.E. Creighton, Proteins: Structure and Molecular Properties, W.H. Freeman & Co., San Francisco, pp.79-86 (1983)]、N末端アミンのアセチル化、及び任意のC末端カルボキシル基のアミド化を含む。
本発明の範囲内に含まれる抗TAT376又は抗TAT377抗体又はTAT376又はTAT377ポリペプチドの共有結合的修飾の他の型は、抗体又はポリペプチドの天然グリコシル化パターンの変更を含む。ここで意図される「天然グリコシル化パターンの変更」とは、天然配列抗TAT376又は抗TAT377抗体又はTAT376又はTAT377ポリペプチドに見られる一又は複数の炭水化物部分を欠失させること(内在するグリコシル化部位を取り除くことによって、又は化学及び/又は酵素的手法でグリコシル化を欠失させることのいずれか)、及び/又は天然配列抗TAT376又は抗TAT377抗体又はTAT376又はTAT377ポリペプチドに存在しない一又は複数のグリコシル化部位の付加を意味する。更には、この語句には、存在する種々の炭水化物部分の性質及び特性の変化を含む、天然タンパク質のグリコシル化における定性的な変化が含まれる。
抗体及び他のポリペプチドのグリコシル化とは、典型的にはN-結合又はO-結合のいずれかである。N-結合とは、アスパラギン残基の側鎖への炭水化物部分の付与を指す。トリペプチドは、Xがプロリンを除く任意のアミノ酸である、アスパラギン-X-セリン及びアスパラギン-X-スレオニンの配列であり、アスパラギン側鎖への炭水化物部分が酵素的に付与される認識部位である。従って、ポリペプチドのこれらトリペプチド配列のいずれかの存在によって、潜在的なグリコシル化部位が作り出される。O-結合グリコシル化とは、5-ヒドロキシプロリン又は5-ヒドロキシリジンも用いられるが、殆どの場合にはセリン又はスレオニンへN-アセチルガラクトサミン、ガラクトース、又はキシロースのうちの一つの糖をヒドロキシアミノ酸へ付与することを指す。
抗TAT376又は抗TAT377抗体又はTAT376又はTAT377ポリペプチドへのグリコシル化部位の付加は、アミノ酸配列を改変して、それが上記に記載のトリペプチド配列(N-結合グリコシル化部位について)の一つ又は複数を含むようにすることによって簡便に完遂できる。この改変は、また、最初の抗TAT376又は抗TAT377抗体又はTAT376又はTAT377ポリペプチドの配列へ一つ又は複数のセリン又はスレオニン残基を付加、又は置換することによって生成される(O-結合グリコシル化部位について)。抗TAT376又は抗TAT377抗体又はTAT376又はTAT377ポリペプチドアミノ酸配列は、DNAレベルでの変化を通して、特に、コドンが所望するアミノ酸へ翻訳される、あらかじめ選択した塩基での抗TAT376又は抗TAT377抗体又はTAT376又はTAT377ポリペプチドをコードするDNAを変異させることによって、随意的に改変され得る。
抗TAT376又は抗TAT377抗体又はTAT376又はTAT377ポリペプチド上に炭水化物部分の数を増加させる他の手段は、グリコシドのポリペプチドへの化学的又は酵素的結合による。そのような方法は、この技術分野において、例えば、1987年9月11日に発行された国際公開87/05330、及びAplin及びWriston, CRC Crit. Rev. Biochem., pp. 259-306 (1981)に記載されている。
抗TAT376又は抗TAT377抗体又はTAT376又はTAT377ポリペプチド上に存在する炭水化物部分の除去は、化学的又は酵素的に、あるいはグルコシル化の標的として提示されたアミノ酸残基をコードするコドンの変異的置換によってなすことができる。化学的脱グリコシル化技術は、この分野で知られており、例えば、Hakimuddin等, Arch. Biochem. Biophys., 259:52 (1987)によって、そしてEdge等, Anal. Biochem., 118: 131 (1981)によって記載されている。ポリペプチド上の炭水化物部分の酵素的切断は、Thotakura等, Meth. Enzymol. 138:350 (1987)に記載されているように、種々のエンド及びエキソグリコシダーゼを用いることにより達成される。
抗TAT376又は抗TAT377抗体又はTAT376又はTAT377ポリペプチド共有結合的修飾の他の型は、抗体又はポリペプチドを種々の非タンパク質様ポリマーの1つ、例えばポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコール、又はポリオキシアルキレンへ、米国特許第4640835号;第4496689号;第4301144号;第4670417号;第4791192号又は第4179337号に記載された方法で結合させることをを含む。また、抗体又はポリペプチドは、例えばコアセルベーション法によって又は界面重合によって調製されたマイクロカプセル(例えば、それぞれヒドロキシメチルセルロース又はゼラチン-マイクロカプセル及びポリ-(メチルメタクリレート)マイクロカプセル)に、コロイド状薬物送達系(例えば、リポソーム、アルブミンミクロスフィア、マイクロエマルション、ナノ粒子及びナノカプセル)又はマクロエマルションで捕捉することができる。このような技術はRemington's Pharmaceutical Sciences, 16版, A. Oslo編(1980)に開示されている。
また、本発明の抗TAT376又は抗TAT377抗体又はTAT376又はTAT377ポリペプチドは、その他の異種ポリペプチド又はアミノ酸配列と融合した抗TAT376又は抗TAT377抗体又はTAT376又はTAT377ポリペプチドを含むキメラ分子が形成される方法で修飾されてもよい。
一実施態様では、このようなキメラ分子は、抗タグ抗体が選択的に結合できるエピトープを提供するタグポリペプチドと抗TAT376又は抗TAT377抗体又はTAT376又はTAT377ポリペプチドとの融合を含む。エピトープタグは、一般的には抗TAT376又は抗TAT377抗体又はTAT376又はTAT377ポリペプチドのアミノ又はカルボキシル末端に位置する。このような抗TAT376又は抗TAT377抗体又はTAT376又はTAT377ポリペプチドのエピトープタグ形態の存在は、タグポリペプチドに対する抗体を用いて検出することができる。また、エピトープタグの提供は、抗タグ抗体又はエピトープタグに結合する他の型の親和性マトリクスを用いたアフィニティ精製によって抗TAT376又は抗TAT377抗体又はTAT376又はTAT377ポリペプチドを容易に精製できるようにする。種々のタグポリペプチド及びそれら各々の抗体はこの分野で良く知られている。例としては、ポリ−ヒスチジン(ポリ-His)又はポリ−ヒスチジン−グリシン(poly-his-gly)タグ;flu HAタグポリペプチド及びその抗体12CA5[Field等, Mol. Cell. Biol., 8:2159-2165 (1988)];c-mycタグ及びそれに対する8F9、3C7、6E10、G4、B7及び9E10抗体[Evan等, Molecular and Cellular Biology, 5:3610-3616 (1985)];及び単純ヘルペスウイルス糖タンパク質D(gD)タグ及びその抗体[Paborsky等, Protein Engineering, 3(6):547-553 (1990)]を含む。他のタグポリペプチドは、フラッグペプチド[Hopp等, BioTechnology, 6:1204-1210 (1988)];KT3エピトープペプチド[Martin等, Science, 255:192-194 (1992)];α-チューブリンエピトープペプチド[Skinner等, J. Biol. Chem., 266:15163-15166 (1991)];及びT7遺伝子10タンパク質ペプチドタグ[Lutz-Freyermuth等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 87:6393-6397 (1990)]を含む。
それに換わる実施態様では、キメラ分子は抗TAT376又は抗TAT377抗体又はTAT376又はTAT377ポリペプチドの免疫グロブリン又は免疫グロブリンの特定領域との融合体を含んでもよい。キメラ分子の二価形態(「イムノアドヘシン」とも呼ばれる)については、そのような融合体はIgG分子のFc領域であり得る。Ig融合体は、好ましくはIg分子内の少なくとも1つの可変領域に換えて抗TAT376又は抗TAT377抗体又はTAT376又はTAT377ポリペプチドの可溶化(膜貫通ドメイン欠失又は不活性化)形態を含む。特に好ましい実施態様では、免疫グロブリン融合体は、IgG分子のヒンジ、CH及びCH、又はヒンジ、CH、CH及びCH領域を含む。免疫グロブリン融合体の製造については、1995年6月27日発行の米国特許第5428130号を参照のこと。
I.抗TAT376又は抗TAT377抗体及びTAT376又はTAT377ポリペプチドの調製
以下の説明は、主として、抗TAT376又は抗TAT377抗体及びTAT376又はTAT377ポリペプチドコード化核酸を含むベクターで形質転換又は形質移入された細胞を培養することにより抗TAT376又は抗TAT377抗体及びTAT376又はTAT377ポリペプチドを産生させる方法に関する。勿論、当該分野においてよく知られている他の方法を用いて抗TAT376又は抗TAT377抗体及びTAT376又はTAT377ポリペプチドを調製することができると考えられている。例えば、適切なアミノ酸配列、又はその一部分を、固相技術を用いた直接ペプチド合成によって生成してもよい[例えば、Stewart等, Solid-Phase Peptide Synthesis, W.H. Freeman Co., サン フランシスコ, カリフォルニア(1969);Merrifield, J. Am. Chem. Soc., 85:2149-2154 (1963)参照]。手動技術又は自動を使用することによってインビトロタンパク質合成を行ってもよい。自動合成は、例えば、アプライド・バイオシステムズ・ペプチド合成機(フォスター シティー, カリフォルニア)を用いて、製造者の指示によって実施してもよい。抗TAT376又は抗TAT377抗体又はTAT376又はTAT377ポリペプチドの種々の部分を別々に化学的に合成し、化学的又は酵素的方法を用いて結合させて所望する抗TAT376又は抗TAT377抗体又はTAT376又はTAT377ポリペプチドを生成させてもよい。
1.抗TAT376又は抗TAT377抗体又はTAT376又はTAT377ポリペプチドをコードするDNAの単離
抗TAT376又は抗TAT377抗体又はTAT376又はTAT377ポリペプチドをコードするDNAは、抗TAT376又は抗TAT377抗体又はTAT376又はTAT377ポリペプチドmRNAを保有していてそれを検出可能なレベルで発現すると考えられる組織から調製されたcDNAライブラリーから得ることができる。従って、ヒト抗TAT376又は抗TAT377抗体又はTAT376又はTAT377ポリペプチドDNAは、ヒトの組織から調製されたcDNAライブラリーから簡便に得ることができる。また抗TAT376又は抗TAT377抗体又はTAT376又はTAT377ポリペプチド-コード化遺伝子は、ゲノムライブラリーから又は公知の合成方法(例えば、自動核酸合成)により得ることもできる。
ライブラリーは、対象となる遺伝子あるいはその遺伝子によりコードされるタンパク質を同定するために設計されたプローブ(少なくとも約20-80塩基のオリゴヌクレオチド等)によってスクリーニングできる。選択されたプローブによるcDNA又はゲノムライブラリーのスクリーニングは、例えばSambrook等, Molecular Cloning: A Laboratory Manual(New York: Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1989)に記載されている標準的な手順を使用して実施することができる。抗TAT376又は抗TAT377抗体又はTAT376又はTAT377ポリペプチドをコードする遺伝子を単離する他の方法は、PCR法を使用するものである[Sambrook等,上掲;Dieffenbach等, PCR Primer:A Laboratory Manual(Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1995)]。
cDNAライブラリーをスクリーニングするための技術は、当該分野で良く知られている。プローブとして選択されたオリゴヌクレオチド配列は、疑陽性が最小化されるよう十分な長さであり、十分に明瞭でなければならない。オリゴヌクレオチドは、スクリーニングされるライブラリー内のDNAとのハイブリダイゼーション時に検出可能であるように標識されていることが好ましい。標識化の方法は当該分野において良く知られており、32P標識ATPのような放射線標識、ビオチン化あるいは酵素標識の使用を含む。中程度のストリンジェンシー及び高度のストリンジェンシーを含むハイブリダイゼーション条件は、上掲のSambrookら,に示されている。
このようなライブラリースクリーニング法において同定された配列は、GenBankらの公共データベース又は他の個人の配列データベースに寄託され利用可能となっている他の周知の配列と比較及びアラインメントすることができる。分子の決定された領域内の又は完全長配列に渡っての(アミノ酸又はヌクレオチドレベルのいずれかでの)配列同一性は、当該分野で知られた、及びここに記載した方法を用いて決定することができる。
タンパク質コード化配列を有する核酸は、初めてここで開示された推定アミノ酸配列を使用し、また必要ならば、cDNAに逆転写されていないmRNAの生成中間体及び先駆物質を検出する上掲のSambrook等に記述されているような従来のプライマー伸展法を使用して、選択されたcDNA又はゲノムライブラリーをスクリーニングすることによって得られる。
2.宿主細胞の選択及び形質転換
宿主細胞を、ここに記載した抗TAT376又は抗TAT377抗体又はTAT376又はTAT377ポリペプチド生成のための発現又はクローニングベクターで形質移入又は形質転換し、プロモーターを誘導し、形質転換体を選択し、又は所望の配列をコードする遺伝子を増幅するために適当に変性された常套的栄養培地で培養する。培養条件、例えば培地、温度、pH等々は、過度の実験をすることなく当業者が選ぶことができる。一般に、細胞培養の生産性を最大にするための原理、プロトコール、及び実用技術は、Mammalian Cell Biotechnology: a Practical Approach, M.Butler編 (IRL Press, 1991)及び上掲のSambrook等に見出すことができる。
真核生物細胞形質移入及び原核生物細胞形質転換の方法、例えば、CaCl、CaPO、リポソーム媒介及びエレクトロポレーションは当業者に知られている。用いられる宿主細胞に応じて、その細胞に対して適した標準的な方法を用いて形質転換はなされる。前掲のSambrook等に記載された塩化カルシウムを用いるカルシウム処理又はエレクトロポレーションが、一般的に原核生物に対して用いられる。アグロバクテリウム・トゥメファシエンスによる感染が、Shaw等, Gene, 23:315(1983)及び1989年6月29日公開の国際公開89/05859に記載されているように、或る種の植物細胞の形質転換に用いられる。このような細胞壁のない哺乳動物の細胞に対しては、Graham及びvan der Eb, Virology, 52:456-457 (1978)のリン酸カルシウム沈降法が用いられる。哺乳動物細胞の宿主系形質転換の一般的な態様は米国特許第4,399,216号に記載されている。酵母菌中への形質転換は、典型的には、Van Solingen等, J. Bact., 130:946 (1977)及びHsiao等, Proc. Natl. Acad. Sci. (USA), 76:3829 (1979)の方法に従って実施される。しかしながら、DNAを細胞中に導入する他の方法、例えば、核マイクロインジェクション、エレクトロポレーション、無傷の細胞、又はポリカチオン、例えばポリブレン、ポリオルニチン等を用いる細菌プロトプラスト融合もまた用いることもできる。哺乳動物細胞を形質転換するための種々の技術については、Keown等, Methods in Enzymology, 185:527-537 (1990)及び Mansour等, Nature, 336:348-352 (1988)を参照のこと。
ここに記載のベクターにDNAをクローニングあるいは発現するために適切な宿主細胞は、原核生物、酵母菌、又は高等真核生物細胞である。適切な原核生物には、限定するものではないが、真正細菌、例えばグラム陰性又はグラム陽性微生物、例えば大腸菌のような腸内細菌科が含まれる。種々の大腸菌株が公に利用可能であり、例えば、大腸菌K12株MM294(ATCC31446);大腸菌X1776(ATCC31537);大腸菌株W3110(ATCC27325)及びK5772(ATCC53635)である。他の好ましい原核動物宿主細胞は、大腸菌属、例えば大腸菌(E. coli)、エンテロバクター、エルビニア(Erwinia)、クレブシエラ(Klebsiella)、プロテウス(Proteus)、サルモネラ、例えばネズミチフス菌(Salmonella Typhimurium)、セラチア、例えばセラチア・マルセサンス(Serratia marcescans) 、及び赤痢菌、並びに桿菌、例えばバチルス・スブチルス(B. subtilis)及びバチルス・リチェニフォルミス(B. licheniformis)(例えば、1989年4月12日発行のDD266710に記載されたバチルス・リチェニフォルミス41P)、シュードモナス、例えば緑膿菌及びストレプトマイセスなどの腸内細菌科を含む。これらの例は限定ではなく例示である。株W3110は、組換えDNA生成物発酵のための共通の宿主株であるので一つの特に好ましい宿主又は親宿主である。好ましくは、宿主細胞は最小量のタンパク質分解酵素を分泌する。例えば、株W3110を、宿主にとって内因性のタンパク質をコードする遺伝子の遺伝子変異をもたらすように修飾してもよく、そのような宿主の例としては、完全な遺伝子型tonAを有する大腸菌W3110株1A2;完全な遺伝子型tonA ptr3を有する大腸菌W3110株9E4;完全な遺伝子型tonA ptr3 phoA E15 (argF−lac)169 degP ompT kanrを有する大腸菌W3110株27C7(ATCC 55,244);完全な遺伝子型tonA ptr3 phoA E15 (argF-lac)169 degP ompT rbs7 ilvG kanrを有する大腸菌W3110株37D6;非カナマイシン耐性degP欠失変異を持つ37D6株である大腸菌W3110株40B4;及び1990年8月7日発行の米国特許第4946783号に開示された変異周辺質プロテアーゼを有する大腸菌株を含む。あるいは、クローニングのインビトロ法、例えばPCR又は他の核酸ポリメラーゼ反応が好ましい。
完全長抗体、抗体断片、及び抗体融合タンパク質は、治療用の抗体が細胞傷害剤(例えば、毒素)と結合し、その免疫コンジュゲートそのものが腫瘍細胞の破壊において有効性を示す場合など、特にグリコシル化及びFcエフェクター機能が必要ない場合に、細菌で産生させることができる。完全長抗体は、血液循環でより長い半減期を有する。大腸菌での産生が、より迅速でより費用効率的である。細菌での抗体断片及びポリペプチドの発現については、例えば、米国特許第5648237号(Carter等)、米国特許第5789199号(Joly等)、及び翻訳開始部位(TIR)及び発現と分泌を最適化するシグナル配列を記載している米国特許第5840523号(Simmons等)を参照のこと。これら特許は、ここに参考文献として取り入れられている。発現の後、抗体は、大腸菌細胞ペーストから可溶性分画へ分離し、例えば、アイソタイプによってプロテインA又はGカラムを介して精製することができる。最終精製は、例えば、CHO細胞で発現させた抗体を精製するための工程と同じようにしておこなうことができる。
原核生物に加えて、糸状菌又は酵母菌のような真核微生物は、抗TAT376又は抗TAT377抗体又はTAT376又はTAT377ポリペプチドコード化ベクターのための適切なクローニング又は発現宿主である。サッカロミセス・セレヴィシアは、通常用いられる下等真核生物宿主微生物である。他に、シゾサッカロミセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)(Beach及びNurse, Nature, 290: 140 [1981]; 1985年5月2日公開の欧州特許第139383号);クリュイベロミセス宿主(Kluyveromyces hosts)(米国特許第4943529号; Fleer等, Bio/Technology, 9: 968-975 (1991))、例えばクリュイベロミセスラクチス(K. lactis)(MW98-8C, CBS683, CBS4574; Louvencourt等, J. Bacteriol., 154(2): 737-742 [1983])、クリュイベロミセス・フラギリス(K. fragilis)(ATCC12424)、クリュイベロミセス・ブルガリクス(K. bulgaricus)(ATCC16045)、クリュイベロミセス・ウィケラミイ(K. wickeramii)(ATCC24178)、クリュイベロミセス・ワルチイ(K. waltii)(ATCC56500)、クリュイベロミセス・ドロソフィラルム(K. drosophilarum)(ATCC36906; Van den Berg等, Bio/Technology, 8: 135 (1990))、クリュイベロミセス・テモトレランス(K. thermotolerans)及びクリュイベロミセス・マルキシアナス(K. marxianus);ヤロウィア(yarrowia)(欧州特許第402226号);ピシア・パストリス(Pichia pastoris)(欧州特許第183070号; Sreekrishna等, J. Basic Microbiol, 28: 265-278 [1988]);カンジダ;トリコデルマ・レーシア(Trichoderma reesia)(欧州特許第244234号);アカパンカビ(Case等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 76: 5259-5263 [1979]);シュワニオマイセス(Schwanniomyces)、例えばシュワニオマイセス・オクシデンタリス(Schwanniomyces occidentalis)(1990年10月31日公開の欧州特許第394538号);及び糸状真菌、例えば、ニューロスポラ、ペニシリウム、トリポクラジウム(Tolypocladium)(1991年1月10日公開の国際公開91/00357);及びアスペルギルス宿主、例えばアスペルギルス・ニダランス(Ballance等, Biochem. Biophys. Res. Commun., 112: 284-289 [1983]; Tilburn等, Gene, 26: 205-221 [1983]; Yelton等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 81: 1470-1474 [1984])及びアスペルギルス・ニガー(Kelly及びHynes, EMBO J., 4: 475-479 [1985])が含まれる。ここで好ましいメチロトロピック(C1化合物資化性、Methylotropic)酵母は、これらに限られないが、ハンセヌラ(Hansenula)、カンジダ、クロエケラ(Kloeckera)、ピシア(Pichia)、サッカロミセス、トルロプシス(Torulopsis)、及びロドトルラ(Rhodotorula)からなる属から選択されたメタノールで成長可能な酵母を含む。この酵母の分類の例示である特定の種のリストは、C. Anthony, The Biochemistry of Methylotrophs, 269 (1982)に記載されている。
グリコシル化抗TAT376又は抗TAT377抗体又はTAT376又はTAT377ポリペプチドの発現に適した宿主細胞は、多細胞生物から由来のものである。非脊椎動物細胞の例には、植物細胞、例えば綿、トウモロコシ、ジャガイモ、大豆、ペチュニア、トマト及びタバコの細胞培養と同様に、ショウジョウバエS2及びヨトウ(spodoptera)Sf9等の昆虫細胞が含まれる。多くのバキュロウイルス株及び変異体、及びヨトウガ(Spodoptera frugiperda)(幼虫(caterpillar))、ネッタイシマカ(蚊)、ヒトスジシマカ(蚊)、キイロショウジョウバエ(ショウジョウバエ)、及びカイコ等の宿主に対応する許容性昆虫宿主細胞が同定されている。種々のトランスフェクション用のウィルス株、例えばオートグラファ・カルフォルニカ(Autographa californica)NPVのL−1変異株、カイコNPVのBm-5株が公に入手でき、このようなウィルスは、本発明に係るウィルスとして、特に、ヨトウガ細胞のトランスフェクションのために使用してもよい。
しかし、最大の関心は脊椎動物細胞に向けられ、培養(組織培養)した脊椎動物細胞の増殖がルーチン作業となった。有用な哺乳動物宿主細胞株の例は、SV40(COS−7,ATCC CRL1651)で形質転換させたサル腎CV1細胞株;ヒト胚芽腎細胞株(293又は懸濁培養で成長するようにサブクローン化された293細胞,Graham等,J.Gen Virol.,36:59 (1977));ベビーハムスター腎細胞(BHK,ATCC CCL10);チヤイニーズハムスター卵巣細胞/-DHFR(CHO,Urlaub等, Proc.Natl.Acad.Sci.USA 77:4216 (1980));マウスセルトリ細胞(TM4,Mather,Biol.Reprod.,23:243-251 (1980));サル腎細胞(CV1 ATCC CCL70);アフリカミドリザル腎細胞(VERO−76,ATCC CRL-1587);ヒト頚管腫瘍細胞(HELA,ATCC CCL2);イヌ腎細胞(MDCK,ATCC CCL34);バッファローラット肝細胞(BRL 3A,ATCC CRL1442);ヒト肺細胞(W138,ATCC CCL75);ヒト肝細胞(Hep G2,HB 8065);マウス乳房腫瘍細胞(MMT 060562,ATCC CCL51);TRI細胞(Mather等,Annals N.Y.Acad.Sci.,383:44-68 (1982));MRC5細胞;FS4細胞;及びヒト肝臓癌細胞(HepG2)である。
宿主細胞は、抗TAT376又は抗TAT377抗体又はTAT376又はTAT377ポリペプチド生成のために上述の発現又はクローニングベクターで形質転換され、プロモーターを誘発し、形質転換体を選出し、又は所望の配列をコードする遺伝子を増幅するために適切に修正した通常の栄養培地で培養される。
3.複製可能なベクターの選択及び使用
抗TAT376又は抗TAT377抗体又はTAT376又はTAT377ポリペプチドをコードする核酸(例えば、cDNA又はゲノムDNA)は、クローニング(DNAの増幅)又は発現のために複製可能なベクター内に挿入される。様々なベクターが公的に入手可能である。ベクターは、例えば、プラスミド、コスミド、ウイルス粒子、又はファージの形態とすることができる。適切な核酸配列が、種々の手法によってベクターに挿入される。一般に、DNAはこの分野で周知の技術を用いて適当な制限エンドヌクレアーゼ部位に挿入される。ベクター成分としては、一般に、これらに制限されるものではないが、1つ又は複数のシグナル配列、複製開始点、1つ又は複数のマーカー遺伝子、エンハンサーエレメント、プロモーター、及び転写終結配列を含む。これらの成分の1つ又は複数を含む適当なベクターの作成には、当業者に知られた標準的なライゲーション技術を用いる。
TAT376又はTAT377は直接的に組換え手法によって生成されるだけではなく、シグナル配列あるいは成熟タンパク質あるいはポリペプチドのN-末端に特異的切断部位を有する他のポリペプチドである異種性ポリペプチドとの融合ペプチドとしても生成される。一般に、シグナル配列はベクターの成分であるか、ベクターに挿入される抗TAT376又は抗TAT377抗体又はTAT376又はTAT377ポリペプチド-コード化DNAの一部である。シグナル配列は、例えばアルカリフォスファターゼ、ペニシリナーゼ、lppあるいは熱安定性エンテロトキシンIIリーダーの群から選択される原核生物シグナル配列であってよい。酵母の分泌に関しては、シグナル配列は、酵母インベルターゼリーダー、アルファ因子リーダー(酵母菌属(Saccharomyces)及びクリュイベロミセス(Kluyveromyces)α因子リーダーを含み、後者は米国特許第5,010,182号に記載されている)、又は酸ホスフォターゼリーダー、カンジダ・アルビカンス(C.albicans)グルコアミラーゼリーダー(1990年4月4日発行の欧州特許第362179号)、又は1990年11月15日に公開された国際公開90/13646に記載されているシグナルであり得る。哺乳動物細胞の発現においては、哺乳動物シグナル配列は、同一あるいは関連種の分泌ポリペプチド由来のシグナル配列並びにウイルス分泌リーダーのようなタンパク質の直接分泌に使用してもよい。
発現及びクローニングベクターは共に1つ又は複数の選択された宿主細胞においてベクターの複製を可能にする核酸配列を含む。そのような配列は多くの細菌、酵母及びウイルスについてよく知られている。プラスミドpBR322に由来する複製開始点は大部分のグラム陰性細菌に好適であり、2μプラスミド開始点は酵母に適しており、様々なウイルス開始点(SV40、ポリオーマ、アデノウイルス、VSV又はBPV)は哺乳動物細胞におけるクローニングベクターに有用である。
発現及びクローニングベクターは、典型的には、選べるマーカーとも称される選択遺伝子を含む。典型的な選択遺伝子は、(a)アンピシリン、ネオマイシン、メトトレキセートあるいはテトラサイクリンのような抗生物質あるいは他の毒素に耐性を与え、(b)栄養要求性欠陥を補い、又は(c)複合培地から得られない重要な栄養素を供給するタンパク質をコードしており、例えばバシリのD-アラニンラセマーゼをコードする遺伝子がある。
哺乳動物細胞に適切な選べるマーカーの例は、DHFRあるいはチミジンキナーゼのように、抗TAT376又は抗TAT377抗体又はTAT376又はTAT377ポリペプチド-コード化核酸を取り込むことのできる細胞成分を同定することのできるものである。野生型DHFRを用いた場合の好適な宿主細胞は、Urlaub等により, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 77:4216 (1980)に記載されているようにして調製され増殖されたDHFR活性に欠陥のあるCHO株化細胞である。酵母菌中での使用に好適な選択遺伝子は酵母プラスミドYRp7に存在するtrp1遺伝子である[Stinchcomb等, Nature, 282:39(1979);Kingsman等, Gene, 7:141(1979);Tschemper等, Gene, 10:157(1980)]。trp1遺伝子は、例えば、ATCC番号44076あるいはPEP4-1のようなトリプトファンで成長する能力を欠く酵母菌の突然変異株に対する選択マーカーを提供する[Jones, Genetics, 85:12 (1977)]。
発現及びクローニングベクターは、通常、抗TAT376又は抗TAT377抗体又はTAT376又はTAT377ポリペプチド-コード化核酸配列に作用可能に結合し、mRNA合成を方向付けるプロモーターを含む。種々の有能な宿主細胞により認識されるプロモーターが知られている。原核生物宿主との使用に適したプロモーターはβ-ラクタマーゼ及びラクトースプロモーター系[Chang等, Nature, 275:615 (1978); Goeddel等, Nature, 281:544 (1979)]、アルカリフォスファターゼ、トリプトファン(trp)プロモーター系[Goeddel, Nucleic Acids Res., 8:4057 (1980); 欧州特許第36,776号]、及びハイブリッドプロモーター、例えばtacプロモーター[deBoer等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 80:21-25 (1983)]を含む。細菌系で使用するプロモーターもまた抗TAT抗体、或いはTAT376又はTAT377ポリペプチドをコードするDNAと作用可能に結合したシャイン・ダルガーノ(S.D.)配列を有する。
酵母宿主との使用に適したプロモーター配列の例としては、3-ホスホグリセラートキナーゼ[Hitzeman 等, J. Biol. Chem., 255:2073 (1980)]又は他の糖分解酵素[Hess 等, J. Adv. Enzyme Reg., 7:149 (1968);Holland, Biochemistry, 17:4900(1978)]、例えばエノラーゼ、グリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼ、ヘキソキナーゼ、ピルビン酸デカルボキシラーゼ、ホスホフルクトキナーゼ、グルコース-6-リン酸イソメラーゼ、3-ホスホグリセレートムターゼ、ピルビン酸キナーゼ、トリオセリン酸イソメラーゼ、ホスホグルコースイソメラーゼ、及びグルコキナーゼが含まれる。
他の酵母プロモーターとしては、成長条件によって転写が制御される付加的効果を有する誘発的プロモーターであり、アルコールデヒドロゲナーゼ2、イソチトクロムC、酸フォスファターゼ、窒素代謝と関連する分解性酵素、メタロチオネイン、グリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼ、及びマルトース及びガラクトースの利用を支配する酵素のプロモーター領域がある。酵母菌での発現に好適に用いられるベクターとプロモーターは欧州特許第73657号に更に記載されている。
哺乳動物の宿主細胞におけるベクターからの抗TAT376又は抗TAT377抗体又はTAT376又はTAT377ポリペプチド転写は、例えば、ポリオーマウィルス、伝染性上皮腫ウィルス(1989年7月5日公開の英国特許第2211504号)、アデノウィルス(例えばアデノウィルス2)、ウシ乳頭腫ウィルス、トリ肉腫ウィルス、サイトメガロウィルス、レトロウィルス、B型肝炎ウィルス及びサルウィルス40(SV40)のようなウィルスのゲノムから得られるプロモーター、異種性哺乳動物プロモーター、例えばアクチンプロモーター又は免疫グロブリンプロモーター、及び熱衝撃プロモーターから得られるプロモーターによって、このようなプロモーターが宿主細胞系に適合し得る限り制御される。
より高等の真核生物による抗TAT376又は抗TAT377抗体又はTAT376又はTAT377ポリペプチドをコードするDNAの転写は、ベクター中にエンハンサー配列を挿入することによって増強され得る。エンハンサーは、通常は約10から300塩基対で、プロモーターに作用してその転写を増強するDNAのシス作動要素である。哺乳動物遺伝子由来の多くのエンハンサー配列が現在知られている(グロビン、エラスターゼ、アルブミン、α-フェトプロテイン及びインスリン)。しかしながら、典型的には、真核細胞ウィルス由来のエンハンサーが用いられるであろう。例としては、複製開始点の後期側のSV40エンハンサー(100-270塩基対)、サイトメガロウィルス初期プロモーターエンハンサー、複製開始点の後期側のポリオーマエンハンサー及びアデノウィルスエンハンサーが含まれる。エンハンサーは、抗TAT376又は抗TAT377抗体又はTAT376又はTAT377ポリペプチドコード化配列の5’又は3’位でベクター中にスプライシングされ得るが、好ましくはプロモーターから5’位に位置している。
また真核生物宿主細胞(酵母、真菌、昆虫、植物、動物、ヒト、又は他の多細胞生物由来の有核細胞)に用いられる発現ベクターは、転写の終結及びmRNAの安定化に必要な配列も含む。このような配列は、真核生物又はウィルスのDNA又はcDNAの通常は5’、時には3’の非翻訳領域から取得できる。これらの領域は、抗TAT376又は抗TAT377抗体又はTAT376又はTAT377ポリペプチドをコードするmRNAの非翻訳部分にポリアデニル化断片として転写されるヌクレオチドセグメントを含む。
組換え脊椎動物細胞培養での抗TAT376又は抗TAT377抗体又はTAT376又はTAT377ポリペプチドの合成に適応化するのに適切な他の方法、ベクター及び宿主細胞は、Gething等, Nature, 293:620-625 (1981); Mantei等, Nature, 281:40-46 (1979); 欧州特許第117060号;及び欧州特許第117058号に記載されている。
4.宿主細胞の培養
本発明の抗TAT376又は抗TAT377抗体又はTAT376又はTAT377ポリペプチドを生成するために用いられる宿主細胞は種々の培地において培養することができる。市販培地の例としては、ハム(Ham)のF10(シグマ)、最小必須培地((MEM),シグマ)、RPMI-1640(シグマ)及びダルベッコの改良イーグル培地((DMEM),シグマ)が宿主細胞の培養に好適である。また、Ham等, Meth. Enz. 58:44 (1979), Barnes等, Anal. Biochem. 102:255 (1980), 米国特許第4767704号;同4657866号;同4927762号;同4560655号;又は同5122469号;国際公開第90/03430号;国際公開第87/00195号;又は米国特許再発行第30985号に記載された任意の培地も宿主細胞に対する培養培地として使用できる。これらの培地はいずれも、ホルモン及び/又は他の成長因子(例えばインスリン、トランスフェリン、又は表皮成長因子)、塩類(例えば、塩化ナトリウム、カルシウム、マグネシウム及びリン酸塩)、バッファー(例えばHEPES)、ヌクレオシド(例えばアデノシン及びチミジン)、抗生物質(例えば、ゲンタマイシン(商品名)薬)、微量元素(マイクロモル範囲の最終濃度で通常は存在する無機化合物として定義される)及びグルコース又は同等のエネルギー源を必要に応じて補充することができる。任意の他の必要な補充物質もまた当業者に知られている適当な濃度で含まれてもよい。培養条件、例えば温度、pH等々は、発現のために選ばれた宿主細胞について以前から用いられているものであり、当業者には明らかであろう。
5.遺伝子増幅/発現の検出
遺伝子の増幅及び/又は発現は、ここで提供された配列に基づき、適切に標識されたプローブを用い、例えば、従来よりのサザンブロット法、mRNAの転写を定量化するノーザンブロット法[Thomas, Proc. Natl. Acad. Sci. USA,77:5201-5205 (1980)]、ドットブロット法(DNA分析)、又はインサイツハイブリダイゼーションによって、直接的に試料中で測定することができる。あるいは、DNA二本鎖、RNA二本鎖、及びDNA−RNAハイブリッド二本鎖又はDNA-タンパク二本鎖を含む、特異的二本鎖を認識することができる抗体を用いることもできる。ついで、抗体を標識し、アッセイを実施することができ、ここで二本鎖は表面に結合しており、その結果、表面での二本鎖の形成の時点でその二本鎖に結合した抗体の存在を検出することができる。
あるいは、遺伝子の発現は、遺伝子産物の発現を直接的に定量化する免疫学的な方法、例えば細胞又は組織切片の免疫組織化学的染色及び細胞培養又は体液のアッセイによって、測定することもできる。試料液の免疫組織化学的染色及び/又はアッセイに有用な抗体は、モノクローナルでもポリクローナルでもよく、任意の哺乳動物で調製することができる。簡便には、抗体は、天然配列TAT376又はTAT377ポリペプチドに対して、又はここで提供されるDNA配列をベースとした合成ペプチドに対して、又はTAT376又はTAT377 DNAに融合し特異的抗体エピトープをコードする外因性配列に対して調製され得る。
6.抗TAT376又は抗TAT377抗体及びTAT376又はTAT377ポリペプチドの精製
抗TAT376又は抗TAT377抗体及びTAT376又はTAT377ポリペプチドの形態は、培地又は宿主細胞の溶菌液から回収することができる。膜結合性であるならば、適切な洗浄液(例えばトリトン-X100)を用いて又は酵素的切断により膜から引き離すことができる。抗TAT376又は抗TAT377抗体及びTAT376又はTAT377ポリペプチドの発現に用いられる細胞は、凍結融解サイクル、超音波処理、機械的破壊、又は細胞溶解剤などの種々の化学的又は物理的手段によって破壊することができる。
抗TAT376又は抗TAT377抗体及びTAT376又はTAT377ポリペプチドは、組換え細胞タンパク又はポリペプチドから精製することが望ましい。適切な精製手順の例である次の手順により精製される:すなわち、イオン交換カラムでの分画;エタノール沈殿;逆相HPLC;シリカ又はカチオン交換樹脂、例えばDEAEによるクロマトグラフィー;クロマトフォーカシング;SDS-PAGE;硫酸アンモニウム沈殿;例えばセファデックスG-75を用いるゲル濾過;IgGのような汚染物を除くプロテインAセファロースカラム;及び抗TAT376又は抗TAT377抗体及びTAT376又はTAT377ポリペプチドのエピトープタグ形態を結合させる金属キレート化カラムである。この分野で知られ、例えば、Deutscher, Methods in Enzymology, 182 (1990);Scopes, Protein Purification: Principles and Practice, Springer-Verlag, New York (1982)に記載された多くのタンパク質精製方法を用いることができる。選ばれる精製過程は、例えば、用いられる生成方法及び特に生成される特定の抗TAT376又は抗TAT377抗体又はTAT376又はTAT377ポリペプチドの性質に依存する。
組換え技術を使用する場合、抗体は細胞内、細胞膜周辺腔内に生成されるか、又は培地に直接分泌され得る。抗体が細胞内に生成される場合、第1段階として、粒状屑、宿主細胞又は溶菌断片を、例えば遠心分離又は超遠心分離にかけて取り除く。Carter等, Bio/Technology 10:163-167(1992)は、大腸菌の細胞膜周辺腔に分泌される抗体を単離するための手順について記載している。簡単に述べると、細胞ペーストを酢酸ナトリウム(pH3.5)、EDTA、及びフェニルメチルスルホニルフロリド(PMSF)の存在下で、30分以上かけて解凍する。細胞屑は遠心分離により除去することができる。抗体が培地へ分泌されている場合、そのような発現系からの上清は、一般的には、市販のタンパク質濃縮フィルター、例えばAmicon又はMillipore Pelliconの限外濾過ユニットを用いて最初に濃縮する。PMSFなどのプロテアーゼ阻害剤を上記の任意の工程に含めてタンパク質分解を阻害してもよく、抗生物質を含めて外来性の汚染物の成長を防止してもよい。
細胞から調製した抗体組成物は、例えば、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析、及びアフィニティクロマトグラフィーを用いて精製でき、アフィニティクロマトグラフィーが好ましい精製技術である。アフィニティリガンドとしてのプロテインAの適合性は抗体に存在する免疫グロブリンFc領域の種及びアイソタイプに依存する。プロテインAは、ヒトγ1、γ2、又はγ4重鎖に基づく抗体の精製に用いることができる(Lindmark等, J. Immunol. Meth. 62: 1-13 [1983])。プロテインGは、全てのマウスアイソタイプ及びヒトγ3に推奨されている(Guss等, EMBO J. 5: 15671575 [1986])。アフィニティリガンドが結合されるマトリクスはアガロースであることが最も多いが、他の材料も使用可能である。孔制御ガラスやポリ(スチレンジビニル)ベンゼン等の機械的に安定なマトリクスは、アガロースで達成できるものより早い流速及び短い処理時間を可能にする。抗体がC3ドメインを含む場合、Bakerbond ABX(商標)樹脂(J.T. Baker, Phillipsburg, NJ)が精製に有用である。イオン交換カラムでの分画、エタノール沈殿、逆相HPLC、シリカ上のクロマトグラフィー、アニオン又はカチオン交換樹脂(ポリアスパラギン酸カラム)上でのヘパリンSEPHAROSE(商品名)クロマトグラフィー、クロマトフォーカシング、SDS-PAGE、及び硫酸アンモニウム沈殿などの他のタンパク質精製技術も、回収される抗体に応じて利用可能である。
任意の予備精製工程に続いて、対象とする抗体と汚染物とを含む混合物に、約2.5-4.5のpHでの溶離バッファーを用いて、低pH疎水性相互作用クロマトグラフィーを施してもよく、好ましくは低い塩濃度(例えば、約0-0.25M塩)で実施される。
J.製薬製剤
本発明に係る抗TAT376又は抗TAT377抗体、TAT376又はTAT377結合オリゴペプチド、TAT376又はTAT377結合有機分子及び/又はTAT376又はTAT377ポリペプチドの治療的製剤は、所望される程度の純度を持つ抗体、ポリペプチド、オリゴペプチド又は有機分子を凍結乾燥製剤又は水性溶液の形態で、最適な製薬上許容される担体、賦形剤又は安定化剤と混合することにより調製され保存される(Remington's Pharmaceutical Sciences 16th 版, Osol, A. 編. [1980])。許容される担体、賦形剤、又は安定化剤は、用いられる用量及び濃度で受容者に非毒性であり、酢酸、Tris、リン酸、クエン酸、及び他の有機酸などの緩衝液;アスコルビン酸及びメチオニンを含む酸化防止剤;防腐剤(オクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロライド;ヘキサメトニウムクロライド;ベンズアルコニウムクロライド、ベンズエトニウムクロライド;フェノール、ブチル又はベンジルアルコール;メチル又はプロピルパラベン等のアルキルパラベン;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール;3-ペンタノール;及びm-クレゾールなど);低分子量(約10残基未満)ポリペプチド;血清アルブミン、ゼラチン、又は免疫グロブリン等のタンパク質;ポリビニルピロリドン等の親水性ポリマー;グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン、又はリジン等のアミノ酸;グルコース、マンノース、又はデキストリンを含む単糖類、二糖類、及び他の炭水化物;EDTA等のキレート剤;トレハロース及び塩化ナトリウムなどのトニシファイヤー;スクロース、マンニトール、トレハロース又はソルビトールなどの糖;ポリソルベート等の界面活性剤;ナトリウムなどの塩形成対イオン;金属錯体(例えば、Zn-タンパク質錯体);及び/又はトゥイーン(TWEEN)(登録商標)、プルロニクス(PLURONICS)(登録商標)、又はポリエチレングリコール(PEG)等の非イオン性界面活性剤を含む。抗体は、好ましくは5-200mg/mlの間、好ましくは10-100mg/mlの間の濃度の抗体で構成される。
ここでの製剤は、また、治療すべき特定の徴候の必要に応じて一以上の活性化合物、好ましくは互いに悪影響を及ぼさない相補的活性を持つものも含んでよい。例えば、抗TAT376又は抗TAT377抗体、TAT376又はTAT377結合オリゴペプチド又はTAT376又はTAT377結合有機分子に加えて、1つの製剤に、例えば、TAT376又はTAT377ポリペプチド上の異なるエピトープと結合する第二抗TAT376又は抗TAT377抗体、又は特定の癌の成長に影響を与える成長因子のような何らかの他の標的に対する抗体を含めることは望ましい。あるいは、又はさらに、この組成物は、更に化学療法剤、細胞障害剤、サイトカイン、成長阻害剤、抗-ホルモン剤、及び/又は心臓保護剤を含んでもよい。このような分子は、意図する目的にとって有効な量の組み合わせで適切に存在する。
また、活性成分は、例えばコアセルベーション技術により又は界面重合により調製されたマイクロカプセル、例えば、各々ヒドロキシメチルセルロース又はゼラチン-マイクロカプセル及びポリ(メタクリル酸メチル)マイクロカプセル中、コロイド状薬物送達系(例えば、リポソーム、アルブミン小球、マイクロエマルション、ナノ粒子及びナノカプセル)中、又はマイクロエマルション中に包括されていてもよい。これらの技術は、Remington's Pharmaceutical Sciences 16th edition, Osol, A. Ed. (1980)に開示されている。
徐放性製剤を調製してもよい。徐放性製剤の好適な例は、抗体を含有する固体疎水性ポリマーの半透性マトリクスを含み、このマトリクスは成形された物品、例えばフィルム、又はマイクロカプセルの形状である。徐放性マトリクスの例には、ポリエステル、ヒドロゲル(例えば、ポリ(2-ヒドロキシエチル-メタクリレート)又はポリ(ビニルアルコール))、ポリアクチド(米国特許第3,773,919号)、L-グルタミン酸及びγエチル-L-グルタメートのコポリマー、非分解性エチレン-酢酸ビニル、LUPRON DEPOT(登録商標)(乳酸-グリコール酸コポリマーと酢酸リュープロリドの注射可能な小球)などの分解性乳酸-グリコール酸コポリマー、ポリ-(D)-(-)-3-ヒドロキシブチル酸が含まれる。
インビボ投与に使用される製剤は無菌でなければならない。これは、滅菌濾過膜を通した濾過により容易に達成される。
K.抗TAT376又は抗TAT377抗体、TAT376又はTAT377結合オリゴペプチド又はTAT376又はTAT377結合有機分子を用いる診断及び治療
癌におけるTAT376又はTAT377発現を定量するために、種々の診断アッセイが利用可能である。一実施態様では、TAT376又はTAT377ポリペプチド過剰発現は、免疫組織化学(IHC)によって分析される。腫瘍生検からのパラフィン包埋組織切片をIHCアッセイへ供してもよいし、次のようなTAT376又はTAT377タンパク質染色強度基準と合致させてもよい:
スコア0 - 染色が観察されないか、又は膜染色が腫瘍細胞の10%未満で観察される。
スコア1+ - わずかに/弱く認知できる程度の膜染色が腫瘍細胞の10%を越えて検出される。細胞はそれらの膜の一部のみが染色される。
スコア2+ - 弱いないしは中程度の完全な膜染色が腫瘍細胞の10%を越えて観察される。
スコア3+ - 中程度から強い完全な膜染色が腫瘍細胞の10%を越えて観察される。
TAT376又はTAT377ポリペプチド発現に関して0又は1+スコアの腫瘍は、TAT376又はTAT377が過剰発現していないことを特徴付けるものであるのに対し、2+又は3+スコアの腫瘍はTAT376又はTAT377が過剰発現していることを特徴付ける。
別に、又は付加的に、FISHアッセイ、例えばINFORM(登録商標)(Ventana, Arizonaから販売)又はPATHVISION(登録商標)(Vysis, Illinois)を、ホルマリン固定、パラフィン包埋された腫瘍組織で実施して、腫瘍におけるTAT376又はTAT377過剰発現の程度(生じているならば)を測定してもよい。
TAT376又はTAT377過剰発現又は増幅は、インビボ診断アッセイを使用して評価することができ、例えば検出される分子に結合し、検出可能な標識(例えば、放射性同位体又は蛍光標識)が付けられた分子(例えば抗体、オリゴペプチド又は有機分子)を投与し、標識の局在化について患者を外部スキャニングする。
上に記載したように、本発明の抗TAT376又は抗TAT377抗体、オリゴペプチド又は有機分子には、種々の非治療的用途がある。本発明の抗TAT376又は抗TAT377抗体、オリゴペプチド又は有機分子は、TAT376又はTAT377ポリペプチドを発現している癌の診断及び染色にとって有用である(例えば、ラジオイメージングで)。他の細胞の精製の段階として、混合細胞の集団からTAT376又はTAT377発現細胞を死滅させて除去するために、この抗体、オリゴペプチド又は有機分子は、また、例えば、ELISA又はウェスタンブロットにおいて、インビトロでTAT376又はTAT377ポリペプチドの検出及び定量化のために、細胞からTAT376又はTAT377ポリペプチドを精製又は免疫沈降するのに有用である。
現在、癌の段階に応じて、癌の治療には、次の治療:外科手術による癌組織の除去、放射線治療、及び化学治療の一つ、又はそれらを組合せたものが含まれる。抗TAT376又は抗TAT377抗体、オリゴペプチド又は有機分子による治療は、特に、化学治療における副作用や毒素に対する耐性がない老年の患者、及び放射線治療の有用性に限界がある転移性疾患において所望されている。本発明の腫瘍標的化抗TAT376又は抗TAT377抗体、オリゴペプチド又は有機分子は、疾患の初期診断時及び再発中におけるTAT376又はTAT377-発現癌の緩和に有用である。治療用途に関しては、抗TAT376又は抗TAT377抗体、オリゴペプチド又は有機分子は、単独で、あるいは例えば、ホルモン、抗血管形成、又は放射標識された化合物と共に、又は外科手術、寒冷療法、及び/又は放射線治療と組み合わせてもよく、使用してもよい。抗TAT376又は抗TAT377抗体、オリゴペプチド又は有機分子による治療は、従来的治療の前又は後のいすれかに連続させて、他の形態の従来的治療と共に実施することができる。化学療法剤、例えばタキソテレ(登録商標)(ドセタキセル)、タキソール(登録商標)(パクリタキセル)、エストラムスチン及びミトキサントロンは、癌、特に危険性の少ない患者の癌治療に使用される。癌を治療又は緩和するための本発明の方法において、上述した一又は複数の化学療法剤による治療と組合せて、癌患者に抗TAT376又は抗TAT377抗体、オリゴペプチド又は有機分子を投与することができる。特に、パクリタキセル及び改変誘導体との組合せ治療が考えられる(例えば、欧州特許第0600517号を参照のこと)。抗TAT376又は抗TAT377抗体、オリゴペプチド又は有機分子は治療的有効量の化学療法剤と共に投与されるであろう。他の実施態様では、抗TAT376又は抗TAT377抗体、オリゴペプチド又は有機分子は化学療法剤、例えばパクリタキセルの活性及び効力を高めるための化学治療と組合せて投与される。医師用卓上参考書(PDR)には、種々の癌治療に使用されるこれらの薬剤の用量が開示されている。治療的に有効な上述の化学療法剤の投薬計画及び用量は、治療される特定の癌、疾患の程度、及び当該技術分野の医師によく知られている他の因子に依存し、医師が決定することができる。
特定の一実施態様では、細胞障害剤に結合した抗TAT376又は抗TAT377抗体、オリゴペプチド又は有機分子を含有する毒素コンジュゲートを患者に投与する。好ましくは、TAT376又はTAT377タンパク質に結合した免疫コンジュゲートは細胞によりインターナリゼーションし、結果として、それが結合した癌細胞の殺傷性における免疫コンジュゲートの治療的効果が向上する。好ましい実施態様では、細胞障害剤は、癌細胞内の核酸を標的とするか、又はこれに干渉する。このような細胞障害剤の例は、上述されており、メイタンシノイド、カリケアマイシン、リボヌクレアーゼ及びDNAエンドヌクレアーゼを含む。
抗TAT376又は抗TAT377抗体、オリゴペプチド又は有機分子又はその免疫コンジュゲートは、公知の方法、例えばボーラス、もしくは一定時間にわたる連続注入による静脈内投与、筋肉内、腹腔内、脳脊髄内、皮下、関節内、滑液包内、くも膜下腔内、経口、局所的、又は吸入経路により、ヒトの患者に投与される。抗体、オリゴペプチド又は有機分子の静脈内又は皮下投与が好ましい。
他の治療計画を抗TAT376又は抗TAT377抗体、オリゴペプチド又は有機分子の投与と組合せてもよい。組合せ投与には、別々の製剤又は単一の医薬製剤を使用する同時投与、及び好ましくは両方(又は全ての)活性剤が同時にその生物学的活性を働かせる時間があるいずれかの順での連続投与が含まれる。このような組合せ治療により、結果として相乗的治療効果が生じることが好ましい。
また、特定の癌に関連した他の腫瘍抗原に対する抗体の投与と共に、抗TAT376又は抗TAT377抗体又は抗体類、オリゴペプチド又は有機分子の投与を組合せることが望ましい。
他の実施態様では、本発明の治療方法は、異なる化学療法剤の混合物の同時投与を含む、抗TAT376又は抗TAT377抗体(又は抗体類)、オリゴペプチド又は有機分子と1つ又は複数の化学療法剤又は成長阻害剤との組合せ投与を含む。化学療法剤には、リン酸エストラムスチン、プレドニムスチン、シスプラチン、5-フルオロウラシル、メルファラン、シクロホスファミド、ヒドロキシ尿素及びヒドロキシ尿素タキサン類(hydroxyureataxanes)(例えばパクリタキセル及びドキセタキセル)及び/又はアントラサイクリン抗生物質が含まれる。このような化学療法剤の調製及び投与スケジュールは製造者の注意書きに従い使用されるか、又は熟練した実務者により経験的に決定される。このような化学療法の調製及び投与スケジュールは、Chemotherapy Service編 M.C.Perry, Williams & Wilkins, Baltimore, MD(1992)にも記載されている。
抗体、オリゴペプチド有機分子は、抗ホルモン化合物;例えばタモキシフェン等の抗-エストロゲン化合物;抗-プロゲステロン、例えばオナプリストン(onapristone)(欧州特許第616812号を参照);又は抗アンドロゲン、例えばフルタミドを、このような分子に対して既知の用量で組合せてもよい。治療される癌がアンドロゲン非依存性癌である場合、患者は予め抗アンドロゲン治療を受け、癌がアンドロゲン非依存性になった後、抗TAT376又は抗TAT377抗体、オリゴペプチド又は有機分子(及び場合によってはここに記載した他の薬剤)を患者に投与してもよい。
しばしば、心臓保護剤(治療に関連する心筋の機能不全を防止又は低減するため)又は1つ又は複数のサイトカインを患者に同時投与することも有益なことである。上述した治療摂生に加えて、抗体、オリゴペプチド又は有機分子治療の前、同時又は治療後に、外科的に癌細胞を取り除くか、及び/又は放射線治療を施してもよい。上述した任意の同時投与される薬剤の適切な用量は現在使用されている量であり、抗TAT376又は抗TAT377抗体、オリゴペプチド又は有機分子と薬剤の組合せ作用(相乗作用)に応じてより少なくしてもよい。
疾患の予防又は治療のための投与量及び方式は、公知の基準に従い、医師により選択されるであろう。抗体、オリゴペプチド又は有機分子の適切な用量は、上記のような治療される疾患の種類、疾患の重症度及び過程、抗体、オリゴペプチド又は有機分子を予防目的で投与するのか治療目的で投与するのか、過去の治療、患者の臨床歴及び抗体、オリゴペプチド又は有機分子の応答性、手当てをする医師の裁量に依存するであろう。抗体、オリゴペプチド又は有機分子は一度に又は一連の処置にわたって患者に適切に投与される。好ましくは、抗体、オリゴペプチド又は有機分子は静脈注入又は皮下注射により投与される。疾患の種類及び重症度に応じて、例えば1つ又は複数の別個の投与又は連続注入のいずれであれ、体重1kg当たり約1μgないし50mg(例えば0.1-15mg/kg/用量)の抗体を患者への最初の投与量の候補とすることができる。投薬計画は、約4mg/kgの初期負荷量、続いて1週間に約2mg/kgの維持用量の抗TAT376又は抗TAT377抗体を投与することからなってよい。しかしながら、他の投薬計画も有効であろう。上述した因子に応じて、典型的な一日の投与量は約1μg/kgから100mg/kgあるいはそれ以上の範囲である。数日間又はそれ以上の繰り返し投与の場合、状態によっては、疾患の徴候の望ましい抑制が生じるまで処置を維持する。この治療の進行状態は、医師又は他の当業者に公知の基準をベースにした通常の方法やアッセイで容易にモニターされる。
抗体タンパク質の患者への投与の他に、本出願は遺伝子治療による抗体の投与を考察する。抗体をコードする核酸の投与は「抗体を治療的有効量で投与する」という表現に含まれる。例えば、遺伝子治療を用いた細胞内抗体の産生に関する、1996年3月14日に公開された国際公開第96/07321号を参照のこと。
核酸(場合によってはベクター内に含まれたもの)を患者の細胞に入れるために:インビボ及びエキソビボという2つの主要な方法がある。インビボ送達では、核酸は、通常は抗体が必要とされている部位に直接注入される。エキソビボ処理では、患者の細胞を取り出し、核酸をこれらの単離された細胞に導入し、修飾された細胞を患者に、直接、又は例えば患者に埋め込まれる多孔性膜にカプセル化して投与する(米国特許第4892538号及び第5283187号参照)。核酸を生細胞に導入するために利用可能な種々の技術がある。これらの技術は、核酸が培養された細胞にインビトロで移入されるか、又は対象とする宿主にインビボで移入されるかによって異なる。哺乳動物細胞にインビトロで核酸を移入するのに適した技術は、リポソーム、エレクトロポレーション、マイクロインジェクション、細胞融合、DEAE-デキストラン、リン酸カルシウム沈降法などの使用を含む。遺伝子のエキソビボ送達に通常用いられるベクターはレトロウイルスベクターである。
現在好まれているインビボ核酸移入技術は、ウイルスベクター(例えば、アデノウイルス、単純ヘルペスIウイルス、又はアデノ関連ウイルス)、及び脂質ベースの系(例えば、遺伝子の脂質媒介移入に有用な脂質は、DOTMA、DOPE、及びDC-Cholである)での形質移入を含む。現在知られている遺伝子マーキング及び遺伝子治療プロトコールの概説については、Anderson等, Science, 256:808-813 (1992)を参照のこと。また、国際公開第93/25673号及びそこに引用された参考文献も参照。
本発明の抗TAT376又は抗TAT377抗体は、ここでの「抗体」の定義により包含される様々な形態であってよい。よって、抗体には、完全長又は無傷抗体、抗体断片、天然配列抗体又はアミノ酸変異体、ヒト化、キメラ又は融合抗体、免疫コンジュゲート、及びそれらの機能的断片が含まれる。融合抗体において、抗体配列は異種ポリペプチド配列に融合している。抗体はFc領域が修飾されて、所望のエフェクター機能を提供することができる。以下の段落に詳細に記載されるように、適切なFc領域と共に、細胞表面に結合したそのままの抗体は、例えば抗体-依存性細胞障害(ADCC)を介して又は補体依存性細胞障害において補体を補充することにより、又は他のいくつかのメカニズムにより、細胞毒性を誘発し得る。また、副作用及び治療による合併症を最小にするようにエフェクター機能を除去又は低減することが望ましい場合には、所定の他のFc領域が使用される。
一実施態様では、抗体は、本発明の抗体と同じエピトープとの結合に関して競合するか、又はこれに実質的に結合する。また、本発明の抗TAT376又は抗TAT377抗体の生物学的特徴を有する抗体、特にインビボ腫瘍ターゲティング及び任意の細胞増殖阻害又は細胞障害特性を含むものが考察される。
上述した抗体の産生方法をここで詳細に記載する。
本抗TAT376又は抗TAT377抗体、オリゴペプチド及び有機分子は、哺乳動物におけるTAT376又はTAT377-発現癌の治療又は1つ又は複数の癌の徴候の緩和に有用である。このような癌には、前立腺癌、尿道癌、肺癌、乳癌、結腸癌及び卵巣癌、特に前立腺癌腫、腎細胞癌腫、結腸直腸腺癌、肺腺癌、肺細胞の扁平癌腫、及び胸膜中皮腫が含まれる。癌には、上述した任意の転移性癌が含まれる。抗体、オリゴペプチド又は有機分子は、哺乳動物においてTAT376又はTAT377ポリペプチドを発現している癌細胞の少なくとも一部に結合可能である。好ましい実施態様では、抗体、オリゴペプチド又は有機分子は、インビボ又はインビトロで細胞のTAT376又はTAT377ポリペプチドに結合して、TAT376又はTAT377-発現腫瘍細胞を破壊又は死滅させるか、又はこのような腫瘍細胞の成長を阻害するのに効果的である。このような抗体には、裸の抗TAT376又は抗TAT377抗体(いかなる薬剤にも結合していない)が含まれる。細胞傷害性又は細胞成長阻害特性を有する裸の抗体は、細胞障害剤と併用すると、より強く腫瘍細胞を破壊することが可能である。例えば細胞障害剤と抗体とを結合させ、以下に記載するような免疫コンジュゲートを形成させることによって、細胞障害特性を抗TAT376又は抗TAT377抗体に付与することができる。この細胞障害剤又は成長阻害剤は、好ましくは小分子である。毒素、例えばカリケアマイシン又はメイタンシノイド、及びそれらの類似物又は誘導体が好ましい。
本発明は、本発明の抗TAT376又は抗TAT377抗体、オリゴペプチド又は有機分子と担体を含有する組成物を提供する。癌の治療のために、組成物はその治療の必要性に応じて患者に投与することができ、ここで組成物は免疫コンジュゲート又は裸の抗体として存在する1つ又は複数の抗TAT376又は抗TAT377抗体を含有し得る。さらなる実施態様においては、組成物は、他の療法剤、例えば化学療法剤を含む成長阻害剤又は細胞障害剤とこれらの抗体、オリゴペプチド又は有機分子を組合せて含有することもできる。また本発明は、本発明の抗TAT376又は抗TAT377抗体、オリゴペプチド又は有機分子と担体を含有する製剤も提供する。一実施態様において、製剤は製薬的に許容可能な担体を含有する治療用製剤である。
本発明の他の態様は、抗TAT376又は抗TAT377抗体をコードする単離された核酸分子である。H及びL鎖、特に高頻度可変領域残基をコードする核酸、天然配列抗体及び変異体をコードする鎖、該抗体の修飾体及びヒト化形態を含む。
本発明は、抗TAT376又は抗TAT377抗体、オリゴペプチド又は有機分子を治療的有効量、哺乳動物に投与することを含む、哺乳動物におけるTAT376又はTAT377ポリペプチド-発現癌の治療又は癌の1つ又は複数の徴候を緩和するのに有用な方法を提供する。抗体、オリゴペプチド又は有機分子治療組成物は、医師の指示通りに、短い期間(急性)又は慢性的に、又は間欠的に投与することができる。また、TAT376又はTAT377ポリペプチド-発現細胞の成長を阻害し、該細胞を殺傷する方法も提供される。
本発明は少なくとも一つの抗TAT376又は抗TAT377抗体、オリゴペプチド又は有機分子を含有するキット又は製造品も提供する。抗TAT376又は抗TAT377抗体、オリゴペプチド又は有機分子を含有するキットは、例えばTAT376又はTAT377細胞殺傷アッセイ、細胞からのTAT376又はTAT377ポリペプチドの精製又は免疫沈降における用途が見出されている。例えば、TAT376又はTAT377の単離及び精製のためには、キットはビーズ(例えばセファロースビース)に結合した抗TAT376又は抗TAT377抗体、オリゴペプチド又は有機分子を含有することができる。インビトロにおけるTAT376又はTAT377の検出及び定量化、例えばELISA又はウエスタンブロットにおける抗体、オリゴペプチド又は有機分子を含有するキットを提供することもできる。検出に有用なこのような抗体、オリゴペプチド又は有機分子は、蛍光又は放射標識などの標識が付されて提供され得る。
L.製造品及びキット
本発明の他の実施態様は、抗TAT376又はTAT377発現癌の治療に有用な物質を含有する製造品である。この製造品は容器と容器に付与又は添付されるラベル又はパッケージ挿入物を含んでなる。好適な容器は、例えば、ビン、バイアル、シリンジ等を含む。容器は、ガラス又はプラスチックなどの多様な材料から形成されてよい。容器は、癌の状態の治療に有効な組成物を収容し、無菌のアクセスポートを有し得る(例えば、容器は皮下注射針で貫通可能なストッパーを有する静脈内溶液バッグ又はバイアルであってよい)。組成物中の少なくとも一つの活性剤は本発明の抗TAT376又は抗TAT377抗体、オリゴペプチド又は有機分子である。ラベル又はパッケージ挿入物は、組成物が癌の治療のために使用されることを示す。ラベル又はパッケージ挿入物は、癌患者に抗体、オリゴペプチド又は有機分子組成物を投与する際の注意書きをさらに含む。製造品はさらに、製薬的に許容可能なバッファー、例えば注射用の静菌水(BWFI)、リン酸緩衝塩水、リンガー液及びデキストロース溶液を含む第2の容器を具備してもよい。さらに、他のバッファー、希釈剤、フィルター、針及びシリンジを含む商業的及び使用者の見地から望ましい他の材料を含んでもよい。
種々の目的、例えばTAT376又はTAT377発現細胞殺傷アッセイ、細胞からのTAT376又はTAT377ポリペプチドの精製又は免疫沈降に有用なキットも提供される。TAT376又はTAT377ポリペプチドの単離及び精製において、キットはビーズ(例えばセファロースビーズ)に結合した抗TAT376又は抗TAT377抗体、オリゴペプチド又は有機分子を含むことが可能である。インビトロにおけるTAT376又はTAT377ポリペプチドの検出及び定量化、例えばELISA又はウエスタンブロットのための抗体、オリゴペプチド又は有機分子を含むキットを提供することもできる。製造品と同様、キットも容器と容器に付与又は添付されるラベル又は能書を含んでなる。容器には少なくとも1つの本発明の抗TAT376又は抗TAT377抗体、オリゴペプチド又は有機分子を含有する組成物が収容されている。希釈液及びバッファー、コントロール抗体等を収容する付加的な容器を具備していてもよい。ラベル又は能書は、組成物についての記載、並びに意図するインビトロ又は診断での使用に関する注意書きを提供するものである。
M.TAT376又はTAT377ポリペプチド及びTAT376又はTAT377-ポリペプチドコード核酸の用途
TAT376又はTAT377ポリペプチドをコードする核酸配列(又はそれらの相補鎖)は、ハイブリダイゼーションプローブとしての使用を含む分子生物学の分野において、染色体及び遺伝子マッピングにおいて、及びアンチセンスRNA及びDNAプローブの生成において種々の用途を有している。また、TAT376又はTAT377コード化核酸は、ここに記載される組換え技術によるTAT376又はTAT377ポリペプチドの調製に有用であり、これらTAT376又はTAT377ポリペプチドは、例えば、ここで記載の抗TAT376又は抗TAT377抗体の調製において用途を見出し得る。
完全長天然配列TAT376又はTAT377遺伝子又はその一部は、完全長TAT376又はTAT377cDNAの単離又はここに開示した天然TAT376又はTAT377配列に対して所望の配列同一性を持つ更に他のcDNA(例えば、TAT376又はTAT377の天然発生変異体又は他の種からのTAT376又はTAT377をコードするもの)の単離のために、cDNAライブラリ用のハイブリダイゼーションプローブとして使用できる。場合によっては、プローブの長さは約20〜約50塩基である。このハイブリダイゼーションプローブは、少なくとも部分的に完全長天然ヌクレオチド配列の新規な領域から誘導してもよく、それらの領域は、過度の実験をすることなく、天然配列TAT376又はTAT377のプロモーター、エンハンサー成分及びイントロンを含むゲノム配列から判定され得る。例えば、スクリーニング法は、TAT376又はTAT377遺伝子のコード化領域を周知のDNA配列を用いて単離して約40塩基の選択されたプローブを合成することを含む。ハイブリダイゼーションプローブは、32P又は35S等の放射性ヌクレオチド、又はアビディン/ビオチン結合系を介してプローブに結合したアルカリホスファターゼ等の酵素標識を含む種々の標識で標識され得る。本発明のTAT376又はTAT377遺伝子の配列に相補的な配列を有する標識されたプローブは、ヒトcDNA、ゲノムDNA又はmRNAのライブラリーをスクリーニングし、そのライブラリーの何れのメンバーにプローブがハイブッド形成するかを決定するのに使用できる。ハイブリダイゼーション技術を、以下の実施例において更に詳細に記載する。本出願に開示されている任意のEST配列は、ここに開示している方法を利用して、同じようにプローブとして用い得る。
TAT376又はTAT377コード核酸の他の有用な断片には、標的TAT376又はTAT377 mRNA(センス)又はTAT376又はTAT377 DNA(アンチセンス)配列と結合できる一本鎖核酸配列(RNA又はDNAのいずれか)を含むアンチセンス又はセンスオリゴヌクレオチドが含まれる。本発明によると、アンチセンス又はセンスオリゴヌクレオチドは、TAT376又はTAT377 DNAのコード化領域の断片を含む。そのような断片は、一般的には少なくとも約14ヌクレオチド、好ましくは約14から30ヌクレオチドを含む。与えられたタンパク質をコードするcDNA配列に基づいて、アンチセンス又はセンスオリゴヌクレオチドを得る能力は、例えば、Stein及びCohen(Cancer Res. 48:2659, 1988)及び van der Krol等(BioTechniques 6:958, 1988)に記載されている。
アンチセンス又はセンスオリゴヌクレオチドの標的核酸配列への結合は二重鎖の形成をもたらし、それは、二重鎖の分解の促進、転写又は翻訳の未熟終止を含む幾つかの方法の一つ、又は他の方法により、標的配列の転写又は翻訳を阻止する。そのような方法は、本発明に含まれている。よって、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、TAT376又はTAT377タンパク質の発現を阻止するのに用いられ、それらTAT376又はTAT377タンパク質は、哺乳動物での癌の誘導を担い得る。アンチセンス又はセンスオリゴヌクレオチドは、修飾糖−ホスホジエステル骨格(又は他の糖結合、国際公開91/06629に記載のもの等)を有するオリゴヌクレオチドを更に含み、そのような糖結合は内因性ヌクレアーゼ耐性である。そのような耐性糖結合を持つオリゴヌクレオチドは、インビボで安定であるが(つまり、酵素分解に耐えうるが)、標的ヌクレオチド配列に結合できる配列特異性は保持している。
アンチセンス結合の好適な遺伝子内部位には、遺伝子のオープンリーディングフレーム(ORF)の翻訳開始/開始コドン(5'-AUG/5'-ATG)又は終結/停止コドン(5'-UAA、5'-UAG及び5-UGA/5'-TAA、5'-TAG及び5'-TGA)を含む領域が含まれる。これらの領域は翻訳開始又は終結コドンから何れかの方向(つまり5'又は3')に約25から約50の近接ヌクレオチドを包含するmRNA又は遺伝子の一部を意味する。アンチセンス結合のための他の好適な領域には、イントロン;エキソン;イントロン-エキソン接合部;翻訳開始コドンと翻訳終結コドンの間の領域であるオープンリーディングフレーム(ORF)又は「コード領域」;5'-5'トリホスフェート結合を介してmRNAの5'−最末端残基に結合したN7-メチル化グアノシン残基を含み、5'キャップ構造自体と同様にキャップに隣接する最初の50ヌクレオチドを含むmRNAの5'キャップ;翻訳開始コドンから5'方向のmRNAの部分で、mRNA又は遺伝子上の対応するヌクレオチドの翻訳開始コドンと5'キャップ部位の間のヌクレオチドを含む5'の未翻訳領域(5'UTR);及び翻訳終結コドンから3'方向のmRNAの部分で、mRNA又は遺伝子上の対応するヌクレオチドの3'末端と翻訳停止コドンの間のヌクレオチドを含む、3'未翻訳領域(3'UTR)が含まれる。
TAT376又はTAT377タンパク質の発現を阻害するのに有用な好適なアンチセンス化合物の特定の例には、修飾骨格又は非天然ヌクレオシド間結合を含むオリゴヌクレオチドが含まれる。修飾された骨格を有するオリゴヌクレオチドには骨格にリン原子を保持しているものと骨格にリン原子を有していないものが含まれる。この明細書の目的のために、また当該分野でしばしば引用されるように、そのヌクレオシド間骨格にリン原子を持たない修飾オリゴヌクレオチドはまたオリゴヌクレオシドであると考えることができる。好適な修飾オリゴヌクレオチド骨格には、例えばホスホロチオネート、キラルホスホロチオネート、ホスホロジチオネート、ホスホトリエステル、アミノアルキルホスホトリエステル、メチル及び他のアルキルホスホネートで、3'-アルキレンホスホネート、5'-アルキレンホスホネート及びキラルホスホネートを含むもの、ホスフィネート、ホスホルアミデートで、3'-アミノホスホルアミデート及びアミノアルキルホスホルアミデートを含むもの、チオノホスホルアミデート、チオノアルキルホスホネート、チオノアルキルホスホトリエステル、セレノホスフェート及びボラノ-ホスフェートで通常の3'-5'結合を持つもの、これらの2'-5'結合類似体、及び一又は複数のヌクレオチド間結合が3'から3'、5'から5'又は2'から2'結合である逆転された極性を持つものが含まれる。逆転した極性を持つ好適なオリゴヌクレオチドは単一の3'から3'結合を最も3'側のヌクレオチド間結合、つまり、非塩基性(abasic)でありうる単一の逆転ヌクレオシド残基(核酸塩基がないか、又はその代わりにヒドロキシル基を有する)を含む。様々な塩、混合された塩及び遊離の酸形態がまた含まれる。リン含有結合の調製を教唆する代表的な米国特許には、限定されるものではないが、米国特許3687808;4469863;4476301;5023243;5177196;5188897;5264423;5276019;5278302;5286717;5321131;5399676;5405939;5453496;5455233;5466677;5476925;5519126;5536821;5541306;5550111;5563253;5571799;5587361;5194599;5565555;5527899;5721218;5672697及び5625050が含まれ、その各々は出典明示によりここに取り込まれる。
リン原子をそこに含まない好適な修飾オリゴヌクレオチド骨格は短鎖アルキル又はシクロアルキルヌクレオシド間結合、混合ヘテロ原子及びアルキル又はシクロアルキルヌクレオシド間結合、又は一又は複数の短鎖ヘテロ原子又は複素環ヌクレオシド間結合によって形成される骨格を有する。これらには、モルホリノ結合(ヌクレオシドの糖部分から部分的に形成される)を有するもの;シロキサン骨格;スルフィド、スルホキシド及びスルホン骨格;ホルムアセチル及びチオホルムアセチル骨格;メチレンホルムアセチル及びチオホルムアセチル骨格;リボアセチル骨格;アルケン含有骨格;スルファメート骨格;メチレンイミノ及びメチレンヒドラジノ骨格;スルホネート及びスルホンアミド骨格;アミド骨格;及び混合N、O、S及びCH成分部分を有する他のものが含まれる。このようなオリゴヌクレオチドの調製を教唆する代表的な米国特許には、限定されるものではないが、米国特許5034506;5166315;5185444;5214134;5216141;5235033;5264562;5264564;5405938;5434257;5466677;5470967;5489677;5541307;5561225;5596086;5602240;5610289;5602240;5608046;5610289;5618704;5623070;5663312;5633360;5677437;5792608;5646269及び5677439が含まれ、その各々は出典明示によりここに取り込まれる。
他の好適なアンチセンスオリゴヌクレオチドでは、糖とヌクレオシド間結合の双方、つまりヌクレオチド単位の骨格が新規な基と置換される。ベース単位は適切な核酸標的化合物とのハイブリダイゼーションのために維持される。一つのそのようなオリゴマー化合物である、優れたハイブリダイゼーション特性を持つことが示されているオリゴヌクレオチド擬態体はペプチド核酸(PNA)と呼ばれる。PNA化合物では、オリゴヌクレオチドの糖骨格はアミド含有骨格、特にアミノエチルグリシン骨格と置き換えられている。核酸塩基は保持され、骨格のアミド部分のアザ窒素原子に直接又は間接に結合している。PNA化合物の調製を教唆する代表的な米国特許には、限定されるものではないが、米国特許5539082;5714331;及び5719262が含まれ、その各々は出典明示によりここに取り込まれる。PNA化合物の更なる教示はNielsen等, Science, 1991, 254, 1497-1500に見出すことができる。
好適なアンチセンスオリゴヌクレオチドはホスホロチオネート骨格及び/又はヘテロ原子骨格、特に-CH-NH-O-CH-、-CH-N(CH)-O-CH-[メチレン(メチルイミノ)又はMMI骨格として知られる]、-CH-O-N(CH)-CH-、-CH-N(CH)-N(CH)-CH-、及び上で参照した米国特許第5489677号に記載された-O-N(CH)-CH-CH-[ここで天然ホスホジエステル骨格は-O-P-O-CH-と表される]及び上で参照された米国特許第5602240号のアミド骨格を含む。また好ましいものは上で参照した米国特許第5034506号のモルホリノ骨格構造を有するアンチセンスオリゴヌクレオチドである。
修飾オリゴヌクレオチドはまた一又は複数の置換糖部分を含みうる。好適なオリゴヌクレオチドは2'位に次のものの一つを含む:OH;F;O-アルキル、S-アルキル、又はN-アルキル;O-アルケニル、S-アルケニル又はN-アルケニル;O-アルキニル、S-アルキニル又はN-アルキニル;又はO-アルキル-O-アルキルを含み、ここでアルキル、アルケニル及びアルキニルは置換又は非置換C〜C10アルキル又はC〜C10アルケニル及びアルキニルでありうる。特に好ましいものはO[(CH)O]CH、O(CH)OCH、O(CH)NH、O(CH)CH、O(CH)ONH、及びO(CH)ON[(CH)CH]であり、ここでn及びmは1から約10である。他の好適なアンチセンスオリゴヌクレオチドは2'位に次のものの一つを含む:C〜C10低級アルキル、置換低級アルキル、アルケニル、アルキニル、アルカリル、アラルキル、O-アルカリル又はO-アラルキル、SH、SCH、OCN、Cl、Br、CN、CF、OCF、SOCH、SOCH、ONO、NO、N、NH、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルカリル、アミノアルキルアミノ、ポリアルキルアミノ、置換シリル、RNA切断基、レポーター基、インターカレーター、オリゴヌクレオチドの薬物動態学的性質を改善する基、オリゴヌクレオチドの薬理的性質を改善する基、及び同様な性質を持つ他の置換基。好適な修飾は2'-メトキシエトキシ(2'-O-(2-メトキシエチル)又は2'-MOEとしても知られている2'-O-CHCHOCH)(Martin等, Helv. Chim. Acta., 1995, 78, 486-504)、つまりアルコキシアルコキシ基を含む。更に好適な修飾は、以下の実施例に記載されているように2'-ジメチルアミノオキシエトキシ、つまり2'-DMAOEとしても知られているO(CH)ON(CH)基、及び2'-ジメチルアミノエトキシエトキシ(2'-O-ジメチルアミノエトキシエチル又は2'-DMAEOEとしても知られている)、つまり2'-O-CH-O-CH-N(CH)を含む。
更に好適な修飾は、2'-ヒドロキシル基が糖環の3'又は4'炭素原子に結合され二環糖部分を形成する固定核酸(Locked Nucleic Acids: LNAs)を含む。結合は好ましくはnが1又は2である2'酸素原子と4'炭素原子を架橋するメチレン(-CH-)基である。LNAs及びその製造方法は国際公開98/39352及び国際公開99/14226に記載されている。
他の好適な修飾は2'-メトキシ(2'-O-CH)、2'-アミノプロポキシ(2'-OCHCHCHNH)、2'-アリル(2'-CH-CH=CH)、2'-O-アリル(2'-O-CH-CH=CH)及び2'-フルオロ(2'-F)を含む。2'-修飾はアラビノ(上)位置又はリボ(下)位置においてでありうる。好適な2'-アラビノ修飾は2'-Fである。同様の修飾はまたオリゴヌクレオチドの他の位置、特に3'末端ヌクレオチドの糖の3'位又は2'−5'結合オリゴヌクレオチド及び5'末端ヌクレオチドの5'位になすことができる。オリゴヌクレオチドはまたペントフラノシル糖の代わりにシクロブチル部分のような糖擬態体を有しうる。そのような修飾糖構造の調製を教唆する代表的な米国特許には、限定されるものではないが、米国特許4981957;5118800;5319080;5359044;5393878;5446137;5466786;5514785;5519134;5567811;5576427;5591722;5597909;5610300;5627053;5639873;5646265;5658873;5670633;5792747;及び5700920が含まれ、その各々は出典明示により全体がここに取り込まれる。
オリゴヌクレオチドにはまた核酸塩基(当該分野ではしばしば単に「塩基」と称される)の修飾又は置換が含まれうる。ここで使用される場合、「未修飾の」又は「天然の」核酸塩基にはプリン塩基アデニン(A)及びグアニン(G)及びピリミジン塩基チミン(T)、シトシン(C)及びウラシル(U)が含まれる。修飾核酸塩基には、他の合成及び天然核酸塩基、例えば5-メチルシトシン(5-me-C)、5-ヒドロキシメチルシトシン、キサンチン、ヒポキサンチン、2-アミノアデニン、6-メチル及び他のアデニン及びグアニンのアルキル誘導体、2-プロピル及び他のアデニン及びグアニンのアルキル誘導体、2-チオウラシル、2-チオチミン及び2-チオシトシン、5-ハロウラシル及びシトシン、5-プロポニル(-C≡C-CH又はCH-C≡CH)ウラシル及びシトシン及び他のピリミジン塩基のアルキル誘導体、6-アゾウラシル、シトシン及びチミン、5-ウラシル(プソイドウラシル)、4-チオウラシル、8-ハロ、8-アミノ、8-チオール、8-チオアルキル、8-ヒドロキシル及び他の8-置換アデニン類及びグアニン類、5-ハロ、特に5-ブロモ、5-トリフルオロメチル及び他の5-置換ウラシル類及びシトシン類、7-メチルグアニン及び7-メチルアデニン、2-F-アデニン、2-アミノ-アデニン、8-アザグアニン及び8-アザアデニン、7-デアザグアニン及び7-デアザアデニン及び3-デアザグアニン及び3-デアザアデニンが含まれる。更なる修飾核酸塩基には、三環系ピリミジン類、例えばフェノキサジンシチジン(1H-ピリミド[5,4-b][1,4]ベンゾキサジン-2(3H)-オン)、フェノチアジンシチジン(1H-ピリミド[5,4-b][1,4]ベンゾチアジン-2(3H)-オン)、G-クランプ、例えば置換フェノキサジンシチジン(例えば9-(2-アミノエトキシ)-H-ピリミド[5,4-b][1,4]ベンゾキサジン-2(3H)-オン)、カルバゾールシチジン(2H-ピリミド[4,5-b]インドール-2-オン)、ピリドインドールシチジン(H-ピリド[3',2':4,5]ピロロ[2,3-d]ピリミジン-2-オン)が含まれる。修飾核酸塩基にはまたプリン又はピリミジン塩基が他の複素環で置き換えられているもの、例えば7-デアザ-アデニン、7-デアザグアノシン、2-アミノピリジン及び2-ピリドンが含まれうる。更なる核酸塩基には米国特許第3687808号に開示されているもの、The Concise Encyclopedia Of Polymer Science And Engineering, 858-859頁, Kroschwitz, J.I.編 John Wiley & Sons, 1990に開示されているもの、及びEnglisch等, Angewandte Chemie, International Edition, 1991, 30,613に開示されているものが含まれる。これらの核酸塩基のある種のものは本発明のオリゴマー化合物の結合親和性を増大させるのに特に有用である。これらには、5-置換ピリミジン、6-アザピリミジン及びN-2、N-6及びO-6置換プリンで、2-アミノプロピルアデニン、5-プロピニルウラシル及び5-プロピニルシトシンを含むものが含まれる。5-メチルシトシン置換は0.6−1.2℃だけ核酸二重安定性を増大させることが知られており(Sanghvi等, Antisense Research and Applications, CRC Press, Boca Raton, 1993, pp.276-278)、より詳細には2'-O-メトキシエチル糖修飾と組み合わせた場合には、好適な塩基置換である。修飾核酸塩基の製造を教唆する代表的な米国特許には、限定されるものではないが、米国特許3687808;並びに米国特許4845205;5130302;5134066;5175273;5367066;5432272;5457187;5459255;5484908;5502177;5525711;5552540;5587469;5594121;5596091;5614617;5645985;5830653;5763588;6005096;5681941及び5750692が含まれ、その各々は出典明示によりここに取り込まれる。
アンチセンスオリゴヌクレオチドの他の修飾は、オリゴヌクレオチドの活性、細胞分布又は細胞取り込みを亢進する一又は複数の部分又はコンジュゲートをオリゴヌクレオチドに化学的に結合させる。本発明の化合物は第1級又は第2級ヒドロキシル基のような官能基に共有結合したコンジュゲート基を含みうる。本発明のコンジュゲート基には、介入物(インターカレーター)、レポーター分子、ポリアミン、ポリアミド、ポリエチレングリコール、ポリエーテル、オリゴマーの薬理的性質を増強する基、及びオリゴマーの薬物動態学的性質を増強する基が含まれる。典型的なコンジュゲート基には、コレステロール、脂質、カチオン脂質、リン脂質、カチオン性リン脂質、ビオチン、フェナジン、葉酸塩、フェナントリジン、アントラキノン、アクリジン、フルオレセイン、ローダミン、クマリン、及び染料が含まれる。この発明の文脈における薬理学的性質を増強する基には、オリゴマー取り込みを改善し、分解に対するオリゴマーの耐性を亢進し、及び/又はRNAとの配列特異的ハイブリダイゼーションを補強する基が含まれる。この発明の文脈における薬物動態学的性質を増強する基には、オリゴマー取り込み、分散、代謝又は排出を改善する基が含まれる。コンジュゲート部分には限定されるものではないが、脂質分子、例えばコレステロール部分(Letsinger等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 1989, 86, 6553-6556)、コール酸(Manoharan等, Bioorg. Med. Chem. Let., 1994, 4, 1053-1063)、チオエーテル、例えばヘキシル-S-トリチルチオール(Manoharan等, Ann. N.Y. Acad. Sci., 1992, 660-306-309; Manoharan等, Bioorg. Med. Chem. Let., 1993, 3, 2765-2770)、チオコレステロール(Oberhauser等, Nucl. Acids Res., 1992, 20, 533-538)、脂肪族鎖、例えばドデカンジオール又はウンデシル残基(Saison-Behmoaras等, EMBOJ., 1991, 10, 1111-1118; Kabanov等, FEBS Lett., 1990, 259, 327-
330; Svinarchuk等, Biochimie, 1993, 75, 49-54)、リン脂質、例えばジ-ヘキサデシル-rac-グリセロール又はトリエチル-アンモニウム1,2-ジ-O-ヘキサデシル-rac-グリセロ-3-H-ホスホナート(Manoharan等, Tetrahedron Lett., 1995, 36, 3651-3654; Shea等, Nucl. Acids Res., 1990, 18, 3777-3783)、ポリアミン又はポリエチレングリコール鎖(Manoharan等, Nucleosides & Nucleotides, 1995, 14, 969-973)、又はアダマンタン酢酸(Manoharan等、Tetrahedron Lett., 1995, 36, 3651-3654)、パルミチル部分(Mishra等, Biochim. Biophys. Acta, 1995, 1264, 229-237)、又はオクタデシルアミン又はヘキシルアミノ-カルボニル-オキシコレステロール部分が含まれる。本発明のオリゴヌクレオチドはまた活性な薬物物質、例えばアスピリン、ワルファリン、フェニルブタゾン、イブプロフェン、スプロフェン、フェンブフェン、ケトプロフェン、(S)-(+)-プラノプロフェン、カルプロフェン、ダンシルサルコシン、2,3,5-トリヨード安息香酸、フルフェナム酸、フォリン酸、ベンゾチアジド、クロロチアジド、ジアゼピン、インドメチシン、バルビツレート、セファロスポリン、サルファ剤、抗糖尿病剤、抗菌剤又は抗生物質にコンジュゲートすることができる。オリゴヌクレオチド-薬剤コンジュゲート及びその製造方法は米国特許出願第09/334130号(1999年6月15日出願)及び米国特許4828979;4948882;5218105;5525465;5541313;5545730;5552538;5578717;5580731;5580731;5591584;5109124;5118802;5138045;5414077;5486603;5512439;5578718;5608046;4587044;4605735;4667025;4762779;4789737;4824941;4835263;4876335;4904582;4958013;50
82830;5112963;5241136;5082830;5112963;5214136;5245022;5254469;5258506;5262536;5272250;5292873;5317098;5371241;5391723;5416203;5451463;5510475;5512667;5514785;5565552;5567810;5574142;5585481;5587371;5595726;5597696;5599923;5599928及び5688941に記載され、その各々は出典明示によりここに取り込まれる。
与えられた化合物の全ての位置を一様に修飾する必要はなく、実際、一を超える上述の修飾を単一化合物中に又はオリゴヌクレオチド内の単一ヌクレオシドにさえ導入することができる。本発明はまたキメラ化合物であるアンチセンス化合物を含む。本発明の文脈における「キメラ」アンチセンス化合物又は「キメラ」は、それぞれが少なくとも一のモノマー単位、つまりオリゴヌクレオチド化合物の場合にはヌクレオチドからなる2以上の化学的に区別される領域を含むアンチセンス化合物、特にオリゴヌクレオチドである。これらのオリゴヌクレオチドは典型的にはオリゴヌクレオチドにヌクレアーゼ分解に対する増大した耐性、増大した細胞性取り込み、及び/又は標的核酸に対する増大した結合親和性を付与するようにオリゴヌクレオチドが修飾されている少なくとも一の領域を含む。オリゴヌクレオチドの更なる領域はRNA:DNA又はRNA:RNAハイブロッドを切断可能な酵素の基質となりうる。例を挙げると、RNアーゼHはRNA:DNA二本鎖のRNA鎖を切断する細胞性エンドヌクレアーゼである。故に、RNアーゼHの活性化はRNA標的の開裂を生じ、遺伝子発現のオリゴヌクレオチド阻害の効果を大きく向上させる。従って、同じ標的領域にハイブリダイズするホスホロチオネートデオキシオリゴヌクレオチドと比較して、キメラオリゴヌクレオチドが使用される場合、より短いオリゴヌクレオチドで同等の結果をしばしば得ることができる。本発明のキメラアンチセンス化合物は上述の二以上のオリゴヌクレオチド、修飾オリゴヌクレオチド、オリゴヌクレオシド及び/又はオリゴヌクレオチド擬態体の複合構造体として形成されてもよい。好適なキメラアンチセンスオリゴヌクレオチドはヌクレアーゼ耐性を付与するために3'末端に少なくとも一の2'修飾糖(好ましくは2'-O-(CH)-O-CH)とRNアーゼH活性を付与するために少なくとも4の隣接した2'-H糖を持つ領域を含む。このような化合物はまた当該分野においてハイブリッド又はギャプマー(gapmers)とも呼ばれている。好適なギャプマーは少なくとも4の隣接した2'-H糖を持つ少なくとも一の領域で分離した3'末端と5'末端2'修飾糖(好ましくは2'-O-(CH)-O-CH)の領域を持ち、好ましくはホスホロチオネート骨格結合を含む。このようなハイブリッド構造の調製を教示する代表的な米国特許には、限定されるものではないが、米国特許第5013830;5149797;5220007;5256775;5366878;5403711;5491133;5565350;5623065;5652355;5652356;及び5700922が含まれ、これらのそれぞれが出典明示によりここに取り込まれる。
本発明において使用されるアンチセンス化合物は固相合成のよく知られた技術によって簡便かつ常套的に製造することができる。そのような合成のための装置は、例えばApplied Biosystems (Foster City, Calif.)を含む幾つかのメーカーによって販売されている。当該分野で知られているそのような合成のための任意の他の手段を付加的に又は別に使用してもよい。オリゴヌクレオチド、例えばホスホロチオネート及びアルキル化誘導体を調製するために類似の技術を使用することはよく知られている。本発明の化合物は、また、取り込み、分散及び/又は吸収を補助するための他の分子、分子構造又は化合物混合物、例えばリポソーム、レセプター標的分子、経口、直腸、局所適用又は他の製剤と、混合、カプセル化、コンジュゲート又はその他、組み合わされてもよい。そのような取り込み、分散及び/又は吸収を補助する製剤の調製を教示する代表的な米国特許には、限定されるものではないが、米国特許第5108921;5354844;5416016;5459127;5521291;5543158;5547932;5583020;5591721;4426330;4534899;5013556;5108921;5213804;5227170;5264221;5356633;5395619;5416016;5417978;5462854;5469854;5512295;5527528;5534259;5543152;5556948;5580575;及び5595756が含まれ、これらのそれぞれが出典明示によりここに取り込まれる。
センス又はアンチセンスオリゴヌクレオチドの他の例は、国際公開90/10048に記載されているもののような、有機部分、及びオリゴヌクレオチドの標的核酸配列への親和性を向上させる他の部分、例えばポリ-(L-リジン)に共有結合したオリゴヌクレオチドを含む。さらにまた、エリプチシン等の挿入剤及びアルキル化剤又は金属錯体をセンス又はアンチセンスオリゴヌクレオチドに結合させ、アンチセンス又はセンスオリゴヌクレオチドの標的ヌクレオチド配列への結合特異性を改変してもよい。
アンチセンス又はセンスオリゴヌクレオチドは、例えば、CaPO-媒介DNAトランスフェクション、エレクトロポレーションを含む任意の遺伝子転換方法により、又はエプスタイン-バーウイルスなどの遺伝子転換ベクターを用いることにより、標的核酸配列を含む細胞に導入される。好ましい方法では、アンチセンス又はセンスオリゴヌクレオチドは、適切なレトロウイルスベクターに挿入される。標的核酸配列を含む細胞は、インビボ又はエキソビボで組換えレトロウイルスベクターに接触させる。好適なレトロウイルスベクターは、これらに限られないが、マウスレトロウイルスM-MuLVから誘導されるもの、N2(M-MuLVから誘導されたレトロウイルス)、又はDCT5A、DCT5B及びDCT5Cと命名されたダブルコピーベクター(国際公開90/13641参照)を含む。
また、センス又はアンチセンスオリゴヌクレオチドは、国際公開91/04753に記載されているように、リガンド結合分子との複合体の形成により標的ヌクレオチド配列を含む細胞に導入してもよい。適切なリガンド結合分子は、これらに限られないが、細胞表面レセプター、成長因子、他のサイトカイン、又は細胞表面レセプターに結合する他のリガンドを含む。好ましくは、リガンド結合分子の複合体形成は、リガンド結合分子がその対応する分子又はレセプターに結合する、あるいはセンス又はアンチセンスオリゴヌクレオチド又はその複合体の細胞への侵入を阻止する能力を実質的に阻害しない。
あるいは、センス又はアンチセンスオリゴヌクレオチドは、国際公開90/10448に記載されたように、オリゴヌクレオチド−脂質複合体の形成により標的核酸配列を含む細胞に導入してもよい。センス又はアンチセンスオリゴヌクレオチド−脂質複合体は、好ましくは内因性リパーゼにより細胞内で分解される。
アンチセンス又はセンスRNA又はDNA分子は、通常は少なくとも約5ヌクレオチド長、あるいは少なくとも約6,7,8,9,10,11,12,13,14,15,16,17,18,19,20,21,22,23,24,25,26,27,28,29,30,35,40,45,50,55,60,65,70,75,80,85,90,95,100,105,110,115,120,125,130,135,140,145,150,155,160,165,170,175,180,185,190,195,200,210,220,230,240,250,260,270,280,290,300,310,320,330,340,350,360,370,380,390,400,410,420,430,440,450,460,470,480,490,500,510,520,530,540,550,560,570,580,590,600,610,620,630,640,650,660,670,680,690,700,710,720,730,740,750,760,770,780,790,800,810,820,830,840,850,860,870,880,890,900,910,920,930,940,950,960,970,980,990,又は1000ヌクレオチド長であり、この文脈の「約」という用語は、参照ヌクレオチド配列長にその参照長の10%を加えるか又は減じたものを意味する。
また、プローブをPCR技術に用いて、密接に関連したTAT376又はTAT377コード化配列の同定のための配列のプールを作成することができる。
また、TAT376又はTAT377をコードするヌクレオチド配列は、そのTAT376又はTAT377をコードする遺伝子のマッピングのため、及び遺伝子疾患を持つ個体の遺伝子分析のためのハイブリダイゼーションプローブの作成にも用いることができる。ここに提供されるヌクレオチド配列は、インサイツハイブリダイゼーション、既知の染色体マーカーに対する連鎖分析、及びライブラリーでのハイブリダイゼーションスクリーニング等の周知の技術を用いて、染色体及び染色体の特定領域にマッピングすることができる。
TAT376又はTAT377のコード化配列が他のタンパク質に結合するタンパク質をコードする場合(例えば、TAT376又はTAT377がレセプターである場合)、TAT376又はTAT377は、結合相互作用に関わっている他のタンパク質又は分子を同定するためのアッセイに使用することができる。このような方法により、レセプター/リガンド結合性相互作用の阻害剤を同定することができる。また、このような結合性相互作用に含まれるタンパク質は、ペプチド又は小分子阻害剤又は結合性相互作用のアゴニストのスクリーニングに用いることができる。また、レセプターTAT376又はTAT377は関連するリガンドの単離に使用できる。スクリーニングアッセイは、天然TAT376又はTAT377又はTAT376又はTAT377のレセプターの生物学的活性を模倣するリード化合物を見出すために設計してよい。このようなスクリーニングアッセイは、化学的ライブラリーの高スループットスクリーニングを施すことができるアッセイを含み、それらアッセイを特に小分子薬剤候補を同定することに適したものにする。考慮される小分子は、合成有機又は無機化合物を含む。アッセイは、この分野で良く特徴付けられているタンパク質-タンパク質結合アッセイ、生物学的スクリーニングアッセイ、免疫検定及び細胞ベースのアッセイを含む種々の型式で実施される。
また、TAT376又はTAT377又はその修飾型をコードする核酸は、トランスジェニック動物又は「ノックアウト」動物のいずれかを産生することに使用でき、これらは治療的に有用な試薬の開発やスクリーニングに有用である。トランスジェニック動物(例えばマウス又はラット)とは、出生前、例えば胚段階で、その動物又はその動物の祖先に導入された導入遺伝子を含む細胞を有する動物である。導入遺伝子とは、トランスジェニック動物が発生する細胞のゲノムに組み込まれたDNAである。一実施形態では、TAT376又はTAT377をコードするcDNAは、TAT376又はTAT377をコードするDNAを発現する細胞を含むトランスジェニック動物を作製するために使用するゲノム配列及び確立された技術に基づいて、TAT376又はTAT377をコードするゲノムDNAをクローン化するために使用することができる。トランスジェニック動物、特にマウス又はラット等を産生する方法は、当該分野において常套的になっており、例えば米国特許第4736866号や第4870009号に記述されている。典型的には、特定の細胞を組織特異的エンハンサーでのTAT376又はTAT377導入遺伝子の導入の標的にする。胚段階で動物の生殖系列に導入されたTAT376又はTAT377をコードする導入遺伝子のコピーを含むトランスジェニック動物はTAT376又はTAT377をコードするDNAの増大した発現の影響を調べるために使用できる。このような動物は、例えばその過剰発現を伴う病理学的状態に対して保護をもたらすと思われる試薬のテスター動物として使用できる。本発明のこの態様においては、動物を試薬で治療し、導入遺伝子を有する未治療の動物に比べ病理学的状態の発症率が低ければ、病理学的状態に対する治療上の処置の可能性が示される。
あるいは、TAT376又はTAT377の非ヒト相同体は、動物の胚性細胞に導入されたTAT376又はTAT377をコードする変更ゲノムDNAと、TAT376又はTAT377をコードする内在性遺伝子との間の相同的組換えによって、TAT376又はTAT377をコードする欠陥又は変更遺伝子を有するTAT376又はTAT377「ノックアウト」動物を作成するために使用できる。例えば、TAT376又はTAT377をコードするcDNAは、確立された技術に従い、TAT376又はTAT377をコードするゲノムDNAのクローニングに使用できる。TAT376又はTAT377をコードするゲノムDNAの一部を欠失させたり、組み込みをモニターするために使用する選択性マーカーをコードする遺伝子等の他の遺伝子で置換することができる。典型的には、ベクターは無変化のフランキングDNA(5’と3’末端の両方)を数キロベース含む[例えば、相同的組換えベクターについてはThomas及びCapecchi, Cell, 51:503(1987)を参照のこと]。ベクターを胚幹細胞株に(例えばエレクトロポレーションによって)導入し、導入されたDNAが内在性DNAと相同的に組換えられた細胞を選択する[例えば、Li等, Cell, 69:915(1992)参照]。選択された細胞は次に動物(例えばマウス又はラット)の胚盤胞内に注入されて集合キメラを形成する[例えば、Bradley, Teratocarcinomas and Embryonic Stem Cells: A Practical Approach, E. J. Robertson, ed. (IRL, Oxford, 1987), pp. 113-152参照のこと]。その後、キメラ胚を適切な偽妊娠の雌性乳母動物に移植し、期間をおいて「ノックアウト」動物を作り出す。胚細胞に相同的に組換えられたDNAを有する子孫は標準的な技術により同定され、それらを利用して動物の全細胞が相同的に組換えられたDNAを含む動物を繁殖させることができる。ノックアウト動物は、TAT376又はTAT377ポリペプチドの欠乏によるある種の病理的状態及びその病理的状態の進行に対する防御能力によって特徴付けられる。
また、TAT376又はTAT377ポリペプチドをコードする核酸は遺伝子治療にも使用できる。遺伝子治療用途においては、例えば欠陥遺伝子を置換するため、治療的に有効な遺伝子産物のインビボ合成を達成するために遺伝子が細胞内に導入される。「遺伝子治療」とは、1回の処理により継続的効果が達成される従来の遺伝子治療と、治療的に有効なDNA又はmRNAの1回又は繰り返し投与を含む遺伝子治療薬の投与の両方を含む。アンチセンスRNA及びDNAは、ある種の遺伝子のインビボ発現を阻止する治療薬として用いることができる。短いアンチセンスオリゴヌクレオチドを、細胞膜による制限された取り込みに起因する低い細胞内濃度にもかかわらず、それが阻害剤として作用する細胞中に移入できることは既に示されている(Zamecnik等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 83:4143-4146 [1986])。オリゴヌクレオチドは、それらの負に荷電したリン酸ジエステル基を非荷電基で置換することによって取り込みを促進するように修飾してもよい。
生細胞に核酸を導入するための種々の技術が存在する。これらの技術は、核酸が培養細胞にインビトロで、あるいは意図する宿主の細胞においてインビボで移入されるかに応じて変わる。核酸を哺乳動物細胞にインビトロで移入するのに適した技術は、リポソーム、エレクトロポレーション、マイクロインジェクション、細胞融合、DEAE-デキストラン、リン酸カルシウム沈殿法などを含む。現在好ましいインビボ遺伝子移入技術は、ウイルス(典型的にはレトロウイルス)ベクターでのトランスフェクション及びウイルス被覆タンパク質-リポソーム媒介トランスフェクションである(Dzau等, Trends in Biotechnology 11, 205-210(1993))。幾つかの状況では、核酸供給源を、細胞表面膜タンパク質又は標的細胞に特異的な抗体、標的細胞上のレセプターに対するリガンド等の標的細胞を標的化する薬剤とともに提供するのが望ましい。リポソームを用いる場合、エンドサイトーシスを伴って細胞表面膜タンパク質に結合するタンパク質、例えば、特定の細胞型向性のキャプシドタンパク質又はその断片、サイクルにおいてインターナリゼーションを受けるタンパク質に対する抗体、細胞内局在化を標的とし細胞内半減期を向上させるタンパク質が、標的化及び/又は取り込みの促進のために用いられる。レセプター媒介エンドサイトーシス技術は、例えば、Wu等, J. Biol. Chem. 262, 4429-4432 (1987); 及びWagner等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87, 3410-3414 (1990)によって記述されている。遺伝子作成及び遺伝子治療のプロトコールの概説については、Anderson等, Science 256, 808-813 (1992)を参照のこと。
ここに記載したTAT376又はTAT377ポリペプチド又はその断片をコードする核酸分子は、染色体の同定に有用である。この点において、実際の配列データに基づく染色体マーキング試薬は殆ど利用可能ではないため、目下のところ新規な染色体マーカーの同定の必要である。本発明の各TAT376又はTAT377核酸分子は染色体マーカーとして使用できる。
また、本発明のTAT376又はTAT377ポリペプチド及び核酸分子は組織タイピングの診断に使用でき、本発明のTAT376又はTAT377ポリペプチドは、その他の組織と比較して1つの組織において、好ましくは同じ組織型の正常組織に比較して疾患性組織において特異的に発現する。TAT376又はTAT377核酸分子には、PCR、ノーザン分析、サザン分析及びウェスタン分析のプローブ生成のための用途が見出されるであろう。
この発明は、TAT376又はTAT377ポリペプチド(アゴニスト)を模倣、又はTAT376又はTAT377ポリペプチド(アンタゴニスト)の効果を防ぐものを同定するための化合物をスクリーニングする方法を含む。アンタゴニスト薬候補に関するスクリーニングアッセイは、ここで同定された遺伝子によってコードされたTAT376又はTAT377ポリペプチドと結合又は複合化する、さもなければコードされているポリペプチドと他の細胞タンパク質の相互作用を妨害する化合物、例えば、細胞からのTAT376又はTAT377ポリペプチドの発現を阻害するものを含む化合物を同定するように設計されている。そのようなスクリーニングアッセイには、化学的ライブラリの高スループットスクリーニングを施すことができるアッセイが含まれ、それらアッセイを特に小分子薬剤候補の同定に適したものにする。
このアッセイは、タンパク質-タンパク質結合アッセイ、生化学スクリーニングアッセイ、免疫アッセイ、そして細胞ベースアッセイを含む、当該分野で良く特徴付けられている種々の形式でおこなうことができる。
アンタゴニストに関する全てのアッセイは、薬候補をここで同定された核酸によってコードされているTAT376又はTAT377ポリペプチドと、これら両成分が相互作用するのに十分な条件下及び時間にわたって接触させることを必要とする点で共通である。
結合アッセイにおいて、相互作用は結合であり、形成された複合体は単離されるか、又は反応混合物中で検出される。特別な実施態様では、ここに同定された遺伝子にコードされるTAT376又はTAT377ポリペプチド又は薬候補が、共有又は非共有結合により固相、例えばマイクロタイタープレートに固定化される。非共有結合は、一般的に固体表面をTAT376又はTAT377ポリペプチドの溶液で被覆し乾燥させることにより達成される。あるいは、固定化すべきTAT376又はTAT377ポリペプチドに特異的な固定化抗体、例えばモノクローナル抗体を固体表面に固着させるために用いることができる。アッセイは、固定化成分、例えば固着成分を含む被覆表面に、検出可能な標識で標識されていてもよい非固定化成分を添加することにより実施される。反応が完了したとき、未反応成分を例えば洗浄により除去し、固体表面に固着した複合体を検出する。最初の非固定化成分が検出可能な標識を有している場合、表面に固定化された標識の検出は複合体形成が起こったことを示す。最初の非固定化成分が標識を持たない場合は、複合体形成は、例えば、固定化された複合体に特異的に結合する標識抗体の使用によって検出できる。
候補化合物が相互作用するがここに同定した遺伝子によってコードされる特定のTAT376又はTAT377ポリペプチドと結合しない場合、そのポリペプチドとの相互作用は、タンパク質−タンパク質相互作用を検出するために良く知られた方法によってアッセイすることができる。そのようなアッセイは、架橋、同時免疫沈降、及び勾配又はクロマトグラフィーのカラムを通す同時精製などの伝統的な手法を含む。さらに、タンパク質-タンパク質相互作用は、Chevray及びNathans Proc.Natl. Acad. Sci. USA,89:5789-5793 (1991)に開示されているようにして、Fields及び共同研究者等[Fiels及びSong, Nature(London),340,:245-246(1989); Chien等, Proc.Natl. Acad. Sci. USA, 88:9578-9582 (1991)]に記載された酵母菌ベースの遺伝子系を用いることにより監視することができる。酵母菌GAL4などの多くの転写活性化剤は、2つの物理的に別個のモジュラードメインからなり、一方はDNA結合ドメインとして作用し、他方は転写活性化ドメインとして機能する。以前の文献に記載された酵母菌発現系(一般に「2-ハイブリッド系」と呼ばれる)は、この特性の長所を利用して、2つのハイブリッドタンパク質を用い、一方では標的タンパク質がGAL4のDNA結合ドメインに融合し、他方では、候補となる活性化タンパク質が活性化ドメインに融合している。GAL1-lacZリポーター遺伝子のGAL4活性化プロモーターの制御下での発現は、タンパク質-タンパク質相互作用を介したGAL4活性の再構成に依存する。相互作用するポリペプチドを含むコロニーは、β-ガラクトシダーゼに対する色素生産性物質で検出される。2-ハイブリッド技術を用いた2つの特定なタンパク質間のタンパク質-タンパク質相互作用を同定するための完全なキット(MATCHMAKER(商品名))は、Clontechから商業的に入手可能である。この系は、特定のタンパク質相互作用に含まれるタンパク質ドメインのマッピング、並びにこの相互作用にとって重要なアミノ酸残基の特定にも拡張することができる。
ここで同定されたTAT376又はTAT377ポリペプチドをコードする遺伝子と他の細胞内又は細胞外成分との相互作用を阻害する化合物は、次のように試験できる:通常は反応混合物は、遺伝子産物と細胞内又は細胞外成分を、それら2つの生成物が相互作用及び結合する条件下及び時間で調製される。候補化合物の結合阻害能力を試験するために、反応は試験化合物の不存在及び存在下で実施される。さらに、プラシーボを第3の反応混合物に添加してポジティブコントロールを提供してもよい。混合物中に存在する試験化合物と細胞内又は細胞外成分との結合(複合体形成)は上記のように監視される。試験化合物を含有する反応混合物ではなくコントロール反応における複合体の形成は、試験化合物が試験化合物とその反応パートナーとの相互作用を阻害することを示す。
アンタゴニストを検定するために、TAT376又はTAT377ポリペプチドを、特定の活性についてスクリーニングされる化合物とともに細胞に添加してもよく、TAT376又はTAT377ポリペプチド存在下で対象とする活性を阻害する当該化合物の能力が、当該化合物がTAT376又はTAT377ポリペプチドのアンタゴニストであることを示す。あるいは、アンタゴニストは、TAT376又はTAT377ポリペプチド及び潜在的アンタゴニストを、膜結合TAT376又はTAT377ポリペプチドレセプター又は組換えレセプターと、競合的阻害アッセイに適した条件下で結合させることにより検出してもよい。TAT376又はTAT377ポリペプチドは、放射活性等で標識でき、レセプターに結合したTAT376又はTAT377ポリペプチド分子の数を潜在的アンタゴニストの有効性を決定するのに使用できる。レセプターをコードする遺伝子は、当業者に知られた多くの方法、例えばリガンドパニング及びFACSソーティングにより同定できる。Coligan等, Current Protocols in Immun., 1(2): Chapter 5 (1991)。好ましくは発現クローニングが用いられ、そこではポリアデニル化RNAがTAT376又はTAT377ポリペプチドに反応性の細胞から調製され、このRNAから生成されたcDNAライブラリがプールに分配され、COS細胞又は他のTAT376又はTAT377ポリペプチドに反応性でない細胞の形質移入に使用される。スライドガラスで成長させた形質移入細胞を、標識したTAT376又はTAT377ポリペプチドへ曝露する。TAT376又はTAT377ポリペプチドは、ヨウ素化又は部位特異的タンパク質キナーゼの認識部位の包含を含む種々の手段で標識できる。固定及びインキュベーションの後、スライドにオートラジオグラフ分析を施す。ポジティブプールを同定し、対話型サブプール化及び再スクリーニング法を用いてサブプールを調製して再形質移入し、最終的に推定レセプターをコードする単一のクローンを生成する。
レセプター同定の代替的方法として、標識したTAT376又はTAT377ポリペプチドをレセプター分子を発現する細胞膜又は抽出調製物に光親和性結合させることができる。架橋材料をPAGEで分離し、X線フィルムに曝す。レセプターを含む標識複合体を励起し、ペプチド断片に分離し、タンパク質マイクロシークエンシングを施してよい。マイクロシークエンシングから得たアミノ酸配列は、推定レセプターをコードする遺伝子を同定するcDNAライブラリをスクリーニングするディジェネレートオリゴヌクレオチドプローブの組の設計に用いられる。
アンタゴニストの他の検定では、レセプターを発現する哺乳動物細胞又は膜調製物を、候補化合物の存在下で標識TAT376又はTAT377ポリペプチドとともにインキュベートする。次いで、この相互作用を促進又は阻止する化合物の能力を測定する。
潜在的なアンタゴニストのより特別な例は、免疫グロブリンとTAT376又はTAT377ポリペプチドとの融合体に結合するオリゴヌクレオチド、特に、限られないが、ポリ-及びモノクローナル抗体及び抗体断片、一本鎖抗体、抗-イディオタイプ抗体、及びこれらの抗体又は断片のキメラ又はヒト化形態、並びにヒト抗体及び抗体断片を含む抗体を含んでいる。あるいは、潜在的アンタゴニストは、密接に関連したタンパク質、例えば、レセプターを認識するが効果を与えず、よってTAT376又はTAT377ポリペプチドの作用を競合的に阻害するTAT376又はTAT377ポリペプチドの変異形態であってもよい。
他の潜在的なTAT376又はTAT377ポリペプチドアンタゴニストは、アンチセンス技術を用いて調製されたアンチセンスRNA又はDNA作成物であり、例えば、アンチセンスRNA又はDNA分子は、標的mRNAにハイブリダイゼーションしてタンパク質翻訳を妨害することによりmRNAの翻訳を直接阻止するように作用する。アンチセンス技術は、三重螺旋形成又はアンチセンスDNA又はRNAを通して遺伝子発現を制御するのに使用でき、それらの方法はともに、ポリヌクレオチドのDNA又はRNAへの結合に基づく。例えば、ここでの成熟TAT376又はTAT377ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列の5'コード化部分は、約10から40塩基対長のアンチセンスRNAオリゴヌクレオチドの設計に使用される。DNAオリゴヌクレオチドは、転写に含まれる遺伝子の領域に相補的であるように設計され(三重螺旋−Lee等, Nucl, Acid Res., 6: 3073 (1979); Cooney等, Science, 241: 456 (1988); Dervan等, Science, 251: 1360 (1991)参照)、それによりTAT376又はTAT377ポリペプチドの転写及び生成を防止する。アンチセンスRNAオリゴヌクレオチドはインビボでmRNAにハイブリダイゼーションしてmRNA分子のTAT376又はTAT377ポリペプチドへの翻訳を阻止する(アンチセンス−Okano, Neurochem., 56: 560 (1991); Oligodeoxynucleotides as Antisense Inhibitors of Gene Expression (CRC Press: Boca Raton, FL, 1988))。また上記のオリゴヌクレオチドは、細胞に輸送され、アンチセンスRNA又はDNAをインビボで発現させて、TAT376又はTAT377ポリペプチドの産生を阻害することもできる。アンチセンスDNAが用いられる場合、翻訳開始部位、例えば標的遺伝子ヌクレオチド配列の−10から+10位置の間から誘導されるオリゴデオキシリボヌクレオチドが好ましい。
潜在的アンタゴニストは、TAT376又はTAT377ポリペプチドの活性部位、レセプター結合部位、又は成長因子又は他の関連結合部位に結合し、それによりTAT376又はTAT377ポリペプチドの正常な生物学的活性を阻止する小分子を含む。小分子の例は、これらに限られないが、小型ペプチド又はペプチド様分子、好ましくは可溶性ペプチド、及び合成非ペプチド有機又は無機化合物を含む。
リボザイムは、RNAの特異的切断を触媒できる酵素的RNA分子である。リボザイムは、相補的標的RNAへの配列特異的ハイブリダイゼーション、次いでヌクレオチド鎖切断的開裂により作用する。潜在的RNA標的内の特異的リボザイム切断部位は、既知の技術で同定できる。更なる詳細は、例えば、Rossi, Current Biology 4: 469-471 (1994)及びPCT公報、国際公開 97/33551(1997年9月18日発行)を参照。
転写阻害に用いられる三重螺旋形成における核酸分子は一本鎖でデオキシヌクレオチドからなる。これらのオリゴヌクレオチドの基本組成は、フーグスティン(Hoogsteen)塩基対則を介する三重螺旋形成を促進するように設計され、それは一般に二重鎖の一方の鎖上のプリン又はピリミジンのかなり大きな伸張を必要とする。さらなる詳細は、例えば、上掲のPCT公報、国際公開97/33551を参照。
これらの小分子は、上記で議論したスクリーニングアッセイの一又は複数の任意のものにより及び/又は当業者に良く知られた他の任意のスクリーニング技術により同定できる。
単離されたTAT376又はTAT377ポリペプチド-コード化核酸は、ここに記載されているような当該分野で良く知られている技術を用いて、組み換え的にTAT376又はTAT377ポリペプチドを生成するために、ここで用いることが可能である。次に、生成されたTAT376又はTAT377ポリペプチドは、ここに記載されているような当該分野で良く知られている技術を用いて、抗TAT376又は抗TAT377抗体を生成するために用いることが可能である。
ここで同定されるTAT376又はTAT377ポリペプチドに特異的に結合する抗体、並びに上記に開示したスクリーニングアッセイによって同定された他の分子は、種々の疾患の治療のために、製薬組成物の形態で投与することができる。
TAT376又はTAT377ポリペプチドが細胞内にあり、全抗体が阻害剤として用いられる場合、取り込める抗体が好ましい。しかし、リポフェクション又はリポソームも抗体、又は抗体断片を細胞に搬送するために使用できる。抗体断片が用いられる場合、標的タンパク質の結合ドメインに特異的に結合する最小阻害断片が好ましい。例えば、抗体の可変領域配列に基づいて、標的タンパク質配列に結合する能力を保持したペプチド分子が設計できる。このようなペプチドは、化学的に合成でき、及び/又は組換えDNA技術によって生成できる。例えば、Marasco等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90, 7889-7893 (1993)参照。
ここでの製剤は、治療すべき特定の徴候に必要な場合に1つ以上の活性化合物、好ましくは互いに悪影響を及ぼさない相補的活性を持つものも含んでよい。あるいは、又はそれに加えて、組成物は、細胞毒性薬、サイトカイン、化学療法剤、又は成長阻害剤のようなその機能を高める薬剤を含んでもよい。これらの分子は、適切には、意図する目的に有効な量の組み合わせで存在する。
以下の実施例は例示するためにのみ提供されるものであって、本発明の範囲を決して限定することを意図するものではない。
本明細書で引用した全ての特許及び参考文献の全体を、出典明示によりここに取り込む。
実施例で言及されている市販試薬は、特に示さない限りは製造者の使用説明に従い使用した。ATCC受託番号により以下の実施例及び明細書全体の中で特定されている細胞の供給源はアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション、マナッサス、バージニアである。
実施例1:GeneExpress(登録商標)を用いた組織発現プロファイリング
1.1 GeneExpress(登録商標)Gene Logic Inc.の遺伝子発現研究
他の腫瘍および/または正常組織に比べて対象となる特定の腫瘍組織において発現が顕著に上方制御されるポリペプチド(およびそれをコードする核酸)を同定するために、遺伝子発現情報を含む専有データベース(GeneExpress(登録商標)、Gene Logic Inc.、米国メリーランド州ゲイサーズバーグ)を分析した。具体的に言うと、GeneExpress(登録商標)データベースの分析は、Gene Logic Inc.(米国メリーランド州ゲイサーズバーグ)から入手できるGeneExpress(登録商標)データベースで使用するソフトウェア、またはGeneExpress(登録商標)データベースで使用する、ジェネンテック社で書き込まれ、開発された専有ソフトウェアを用いて行った。分析のポジティブヒットの評価は、例えば、正常基本組織および/または正常増殖性組織における組織特異性、腫瘍特異性および発現レベルなどを含むいくつかの基準に基づく。GeneExpress(登録商標)データベースの分析により決定される組織発現プロファイルが、他の腫瘍組織および/または正常組織に比べて特定の腫瘍組織または腫瘍組織において高い組織発現および顕著な発現の上方制御を示し、状況に応じて正常基本組織および/または正常増殖性組織において比較的低い発現を示す分子のリストは以下の通りである。このように、以下のリストの分子は、哺乳動物の癌の診断および治療のための優れたポリペプチドターゲットである。
分子 発現上昇が見られる腫瘍 比較対象
DNA327307(TAT376) 乳房腫瘍 正常乳房組織
DNA327307(TAT376) 結腸腫瘍 正常結腸組織
DNA327307(TAT376) 直腸腫瘍 正常直腸組織
DNA327307(TAT376) 子宮腫瘍 正常子宮組織
DNA327307(TAT376) 食道腫瘍 正常食道組織
DNA327307(TAT376) 肺腫瘍 正常肺組織
DNA327307(TAT376) 卵巣腫瘍 正常卵巣組織
DNA327307(TAT376) 膵臓腫瘍 正常膵臓組織
DNA327307(TAT376) 胃腫瘍 正常胃組織
DNA327308(TAT377) 乳房腫瘍 正常乳房組織
DNA327308(TAT377) 結腸腫瘍 正常結腸組織
DNA327308(TAT377) 直腸腫瘍 正常直腸組織
DNA327308(TAT377) 子宮腫瘍 正常子宮組織
DNA327308(TAT377) 食道腫瘍 正常食道組織
DNA327308(TAT377) 肺腫瘍 正常肺組織
DNA327308(TAT377) 卵巣腫瘍 正常卵巣組織
DNA327308(TAT377) 膵臓腫瘍 正常膵臓組織
DNA327308(TAT377) 胃腫瘍 正常胃組織
1.2 Gene Logic Affymetrix(登録商標)オリゴヌクレオチドのマイクロアレイ研究
1.2.1 Gene Logic Affymetrix(登録商標)のマイクロアレイ研究
結腸直腸新生物(組織試料n=7,579)において癌特異的発現プロファイルをスクリーニングするために、Gene Logic発現データベースを用いてさらなる分析を行った。このスクリーニングは、正常ヒト組織よりCRCで強いハイブリダイゼーションシグナルを示すプローブセットを識別するアルゴリズムを用いて行った。対象となるすべてのプローブセット配列の特異性は、BLASTn(NCBI)で確認した。CRC(n=176)のいずれの場合でも正常のプールした結腸粘膜試料(n=225)と同じレベルで発現される連続的なプローブセットを同定するために、Gene Logicデータも調査した。
2個のプローブが、結腸直腸新生物において、癌特異的発現プロファイルに関するGene Logicのスクリーニングにより同定された(プローブ229215_at(GeneChip HG−U133)およびプローブ89164_at(GeneChip HG−U95)。いずれのプローブも、図5で示されるASCL2転写物の第2のエクソン(TAT377またはDNA32708と同義)に相補的であり、両方のGeneChipで225種の結腸直腸組織RNA試料に関してシグナル強度に強い相関を示した(データは示していない、R=0.85)。プローブ229215_atをさらなる分析のために選択した。シグナル強度の中央値は、正常結腸(n=270)に比べて絨毛腺腫およびインサイツ病巣(n=28)で5.4倍、非転移性CRC(n=176)で8.8倍、転移性CRC(n=46)で6.8倍であった(それぞれ49に対し267、p<0.0001;49に対し431、p<0.0001;49に対し334、p<0.001)。回腸、虫垂および結腸の5つのカルチノイド腫瘍は正常結腸に比べて中央値で6倍の制御を示した(48に対して288、範囲3〜29倍)。家族性腺腫性ポリポーシス(小腸4、結腸直腸4)患者由来のアデノーマは、正常結腸に比べて中央値で6倍の上方制御を示した(48に対して292、範囲5〜10倍)。腫瘍の種類間に発現の顕著な差はなかった。いずれの場合も同じレベルで発現される連続的なプローブに関するGene Logic結腸直腸データのスクリーニングにより、11p15.5の遺伝子座で、常に上方制御されるプローブのクラスターが識別された(図6)。プローブ229215_atはこのクラスター内に位置した。
1.2.2 マウスのシンテニー
ASCL2で推定されるHASAP読み取り枠(ORF)の重要性を、ジェネンテック社で書き込まれ開発された専有ソフトウェアを用いて、予測される配列(Genbank AF442769)および関連するマウスゲノム配列(Genbank NT−039437.1)について検証した。さらに、開始コドンおよび終止コドンの位置を、この領域でマッピングした。HASAP ORFに対応するマウスゲノム配列はヒトのORFと38.2%のシンテニーを示す(図19)。しかし、このマウスの配列は、終止コドンで終わっている。
実施例2:NCBI連続的遺伝子発現解析(SAGE)データベースおよびIncyte ESTデータベースの検索
2.1 NCBI連続的遺伝子発現解析(SAGE)データベースの調査
癌ゲノム解明プロジェクト(Cancer Genome Anatomy Project)(Lash,A.E、Tolstoshev CM、Wagner L、Schuler GD、Strausberg RL、Riggins GJら、SAGEmap:a public gene expression resource.Genome Res 10(7):1051〜1060頁(2000))からの正常結腸SAGEライブラリーとプールしたCRCについて、in silicoでのサブトラクティブハイブリダイゼーションを行った。合計99,772のタグを有する2種の正常結腸SAGEライブラリー(SAGE_NC1およびSAGE_NC2)を、合計341,986のタグを有する6種の細胞系および初代CRCのSAGEライブラリー(SAGE_Caco_2、SAGE_HCT116、SAGE_RKO、SAGE_SW837、SAGE_Tu102およびSAGE_Tu98)に対して、xプロファイラ(xProfiler)(NCBI)を用いてスクリーニングした。CRCで発現されるが、正常結腸で発現されないタグを、GenBank AF442769に対する相同性に関してスクリーニングした。CGAP(配列番号6)データベースにおけるSAGEライブラリーのプロファイリングにより、ASCL2に特異的なCTGGCCAAGA(配列番号7)というタグが識別された。Caco_2、Tu102およびTu98ライブラリーにおけるその存在量は、それぞれ32、17および163タグパーミリオン(tag per million)であった。タグは、2種の正常結腸ライブラリーのいずれにも存在しなかった。
2.2 Incyte発現配列タグ(EST)データベースの検索
LifeSeq Goldデータベース(インサイトゲノミックス(Incyte Genomics)、米国カリフォルニア州パロアルト)からの正常結腸ESTライブラリーとプールしたCRCにおいて、in silicoでのサブトラクティブハイブリダイゼーションを行った。合計16,562のESTを有する6種の正常結腸ライブラリーを、合計47,986のESTを有する17種の初代CRCのESTライブラリーに対してスクリーニングした。CRCで過剰に発現されるが、正常結腸では発現されないESTを、AF442769に対する相同性に関してスクリーニングした。LifeSeqデータベースにおけるESTライブラリーのin silicoでのサブトラクティブハイブリダイゼーションは、ASCL2と98%の配列同一性で、CRCライブラリーにおいて絶対存在率1%のEST(ID:17090.3)を識別した。
実施例3:インサイツハイブリダイゼーション
3.1 組織培養
JEG3細胞系およびSW480細胞系は、アメリカンタイプカルチャーコレクション(米国バージニア州マナッサス)から入手し、他のすべての細胞系は国立がん研究所(National Cancer Institute)(米国メリーランド州ベテスダ)から入手した。細胞は提供された手順書に従って培養した。
3.2 初代ヒト組織および組織マイクロアレイ構築
組織マイクロアレイ(TMA)を、Kononen,J.らのNat Med、4(7)、844〜847頁(1998)およびHoos,AらのAm J Pathol、158(4)、1245〜1251頁(2001)に記載されるように、Beecher Instrumentsのマイクロアレイヤー(米国メリーランド州シルバースプリング)を用いて、ミシガン大学(米国ミシガン州アナーバー)から得たホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)組織を使用して構築した。組織学検査のために各TMAブロックに由来する第1の切片をヘマトキシリンおよびエオシン(H&E)染色した。TMA H2001−688は、大動脈、膀胱、脳、乳房、結腸、心臓、腎臓、肺、リンパ節、卵巣、膵臓、胎盤、前立腺、精嚢、皮膚、小腸、脾臓、胃、精巣、甲状腺および扁桃腺由来の正常試料を含んでいた。TMA H2002−223は、10種の細胞系、50種のCRCおよび25種の正常結腸試料を表した。
330人の患者由来の342種のCRCおよび適合正常粘膜を表す追加のTMAは、H.Grabsch博士(Academic Unit of Pathology、英国リーズ)およびW.Mueller教授(Gemeinschaftspraxis Pathologie、ドイツ、シュタルンベルク)から入手した。すべての患者は1990年1月から1995年12月の間にマリエン病院(Marien−Hospital)(ドイツ、デュッセルドルフ)で治癒的である可能性のある切除を受けていた。生存に関するデータは、これらの症例について中央値で4.2年の追跡期間で収集した。すべての腫瘍は、臨床転帰の知見ではなく、世界保健機関(World Health Organization)の基準に従って病期および段階を決定した。さらに、脈管の関与を検出するためにエラスチカワンギーソン染色を用いた。
3.3 プローブの合成および標識化
cDNAプローブの鋳型を、CRCおよび胎盤のmarathon−ready cDNA(BD Clontech、米国カリフォルニア州パロアルト)から作製した。それぞれのポリメラーゼ連鎖反応(PCR)液50μlは、cDNA 0.5ng、各プライマー 33ng、0.6mM dNTP(dATP、dCTP、dGTP、dTTPが各0.15mM)、1×ポリメラーゼ混合液、1×緩衝液および1.0M GC−Melt(BD Clontech)を含有していた。第1回目には、プライマー1071_P5/6およびプライマー1061_P1/2をPCRプログラム1(以下の表7参照)で使用し、長い転写物および短い転写物からそれぞれ断片を増幅した(図5)。その後、1マイクロリットルの各産物を、T7およびT3 RNAポリメラーゼ開始部位、つまり、それぞれ1071_P7/8および1061_P5/6(以下の表8参照)を含むプライマーを用いるネスト化PCRの鋳型として使用した。β−アクチンの鋳型は、117_P3/4を用いて1回で合成された。合成される各プローブに関して、12μl(125mCi)の[α33P]−UTP(Amersham Biosciences、米国ニュージャージー州ピスカタウェイ)を乾燥するまで速減圧(speed−vacuum)した。それぞれの一定量を、1×緩衝液、4.5mM ジチオスレイトール、0.23mM rNTP(rATP、rCTP、rGTPが各0.08mM)、2.3μM rUTP、1.4U/μl RNAse阻害剤、0.05μg/μl 鋳型、0.7U/μlのT7(センスプローブ)またはT3(アンチセンスプローブ)RNAポリメラーゼ(Promega、米国ウィスコンシン州マディソン)で再構成した。in vitroでの転写を37℃で1時間以上行った。その後、試料を37℃で15分間、0.05U/μlのDNase(Promega)で処理し、RNeasy−ミニカラム(Qiagen、米国カリフォルニア州バレンシア)に通して精製した。プローブ活性はシンチレーションカウンタで測定した。変性プローブのサイズは、2%アガロースゲル上で、Biomax MSフィルム(Eastman Kodak、米国ニューヨーク州ロチェスター)に1時間さらして確認した。
表7
PCRプログラム
プログラム1(プローブ合成)
加熱開始 94℃、2分間
変性 94℃、30秒間
アニーリング 68℃、2分間
サイクル数 30
プログラム2(リアルタイムRT−PCR)
逆転写酵素 48℃、30分間
加熱開始 95℃、10分間
変性 95℃、45秒間
アニーリング 60℃、1分間
サイクル数 40
プログラム3(プローブ合成/cDNAクローニング)
加熱開始 94℃、3分間
変性 94℃、30秒間/94℃、30秒間
アニーリング 65℃〜56℃、30秒間/55℃、30秒間
伸長 72℃、2分間/72℃、2分間
サイクル数 9/15
最終伸長 72℃、10分間
プログラム4(プローブ合成)
加熱開始 94℃、3分間
変性 94℃、30秒間
アニーリング 55℃、30秒間
伸長 72℃、2分間
サイクル数 15
最終伸長 72℃、10分間
表8:プライマー及びプローブ配列
Figure 2006512901
Figure 2006512901
Figure 2006512901
Figure 2006512901
3.4 プローブハイブリダイゼーションおよび洗浄
FFPE組織切片(4μm)を脱パラフィン処理し、37℃で15分間、プロテイナーゼK(20μg/ml 2×SSC)で処理した。それぞれの切片を、50μlのハイブリダイゼーション緩衝液(10% 硫酸デキストラン、50% ホルムアミド、2×SSC)で覆い、68℃で1〜4時間インキュベートした。ハイブリダイズさせる各スライドでは、プレハイブリダイゼーション溶液を混合したハイブリダイゼーション緩衝液50μl中に、1×10cpmの変性プローブおよび50μgのtRNAを調製した。ハイブリダイゼーションは55℃で19時間行った。スライドを低ストリンジェンシー条件(2×SSCおよび0.01M EDTA中で室温10分間)下で2度洗浄した。RNase−A処理(20μg/ml 2×SSC)を、37℃で30分間行った後、さらなる2回の低ストリンジェンシー洗浄および1回の高ストリンジェンシー洗浄(1×SCCおよび0.01M EDTA中で55℃2時間)を行った。
3.5 ハイブリダイズされたプローブの検出および分析
組織切片を脱水、風乾し、室温で18時間、ホスホスクリーン(phosphorscreen)にさらした。直ちにポストインキュベートし、ホスホスクリーン(phosphorscreen)をTyphoon9410(Amersham Biosciences)でスキャンした。組織の自己蛍光を、532/610nm(励起/放出)でスキャンすることにより評価した。その後、スライドをNBT2核軌道乳剤(Eastman Kodak)に浸漬し、4℃で4週間さらして現像し、H&Eで対比染色した。バックグラウンド減算、グリディング(griding)およびIPの分析はPhoretix Array v.3(Nonlinear Dynamics、英国ニューキャッスルアポンタイン))を用いて行った。コアに、ハイブリダイズされたプローブの有無で+/−を評点した。
3.6 結果
上記の組織マイクロアレイ(TMA)の組織学的検討により、少なくとも2つまたは3つのコアが存在し、H2002−223およびH2001−688で表される全症例について正確に診断が行われたことが明らかとなった。デュッセルドルフTMAにおいて、3つのコアのうちの少なくとも2つが336種のCRCに関して存在し、少なくとも1つのコアが191種の正常粘膜試料に関して存在した。すべてのプローブは増幅され、特異的に標識された(図7)。
1071_P5/6および1061_P1/2のASCL2転写物センスプローブは、バックグラウンドを超えるハイブリダイゼーションシグナルを発しなかった。スプライスされていないASCL2転写物に対して、アンチセンスリボプローブ(1071)にハイブリダイズした組織切片の組織学的検討により、バックグラウンドより大きなシグナルは示されなかった(図8)。ASCL2 3’プローブ1061(TMA H2001−688)を用いて調べた正常組織のうち、ヒト胎盤の絨毛外トロフォブラストのみが顕著なハイブリダイゼーションを示した(図9)。しかし、強いハイブリダイゼーションシグナルは、一部のCRCおよび細胞系の新生物細胞で認められた(H2002−223、デュッセルドルフTMA)(図9)。使用した全組織切片は、β−アクチンアンチセンスプローブでハイブリダイズしたとき、強いポジティブシグナルを示した(図9)。
定量的ホスホイメージング(phosphorimaging)により、正常粘膜に対してCRCにおいて、ASCL2の有意な上方制御が明らかになった。平均発現レベルは、デュッセルドルフTMAおよびH2002−223において、それぞれ4倍(39に対し154、p<0.0001)、8倍(40に対し296、p<0.0001)に増加した。H2002−223に並べた結腸直腸細胞ペレットのうち、SW620、COLO205、DLD1、HCC2998およびHCT15で発現が認められた。HCT116、HT29、KM12およびSW480ペレットでは、正常結腸で見られる上記の発現は示されなかった。定量的ホスホイメージング(phosphorimaging)の評点は、各コアに対するハイブリダイゼーションの+/−評価に有意に関連した(データは示さないが、p<0.0001)。
実施例4:リアルタイムポリメラーゼ連鎖反応
4.1 核酸の抽出
総RNAおよびポリ(A)+RNAを、製造会社の指示書に従って、それぞれRNA STAT60(Tel−Test、米国テキサス州フレンズウッド)およびFastTrack2.0(Invitrogen、米国カリフォルニア州カールズバッド)を用いて細胞系から抽出した。RNAはCsCl沈降によりヒト組織から抽出した。DNAは製造会社の指示書に従って、DNA STAT60(Tel−Test)を用いて細胞系から抽出した。DNAは、ヒト組織のCsCl後RNA沈降により抽出した。溶解上清液を、重相固定ゲル(heavy phase lock gel)(Brinkmann、米国ニューヨーク州ウェストベリー)および1.5体積のフェノール:クロロホルム:イソアミルアルコール(25:24:1、pH7.9)と混合した。DNAは、2,600rpmで20分間の遠心分離により水相中に単離された。水相について2度目のフェノール:クロロホルム:イソアミルアルコール抽出を行い、DNAをイソプロパノールで沈殿させ、ペレット化させ、80%エタノールで洗浄し、TE緩衝液中で再懸濁させた。核酸の完全性および純度は、1.2%アガロースゲル上の電気泳動、エチジウムブロミド染色、および分光測定により確認した。
4.2 検証
1×緩衝液A、1.2mM dNTP(dATP、dCTP、dGTP、dTTPが各0.3mM)、5mM MgCl、10UのRNase阻害剤、25U/ml Amplitaq−gold、0.25U/μl 逆転写酵素(Applied Biosystems、米国カリフォルニア州フォスタシティ)、0.33ng/μlの各プライマーおよび0.2ng/μlのプローブ(レポーター5’FAM、クエンチャーTAMRA−3’)(表8)を含む各プライマープローブセット用に、マスターミックスを調製した。100ngの全RNA(DNaseを含まない、Ambion、AustinTXで処理)、10ngのポリ(A)+RNAまたは100ngのゲノムDNAを用いて、各50μl反応液をオプティカルPCRチューブに調製した。配列検出システム(Sequence Detection System)v.1.9を実行するABIプリズム7700(Applied Biosystems)を用いて、温度サイクリング(プログラム2)(表7)および定量分析を実行した。
各プライマープローブセットの相対効率は、製造会社により提示される基準に従って特徴付けた(ABIプリズム7700配列検出システム、User bulletin#2:Perkin−Elmer Corporation、1997、1〜36頁)。RT−PCR産物の特異性は、4%アガロースゲル上の電気泳動により評価された。鋳型を含まない対照反応および逆転写酵素を含まない対照反応に加えて、全試料を3回試験した。この3回の反応による平均Ct値を、さらなる分析に使用した。
4.3 適用
Hs.Scute_f/r/p1およびRPL19プライマープローブセットを使用して、25種のCRC、16種の正常組織および14種の細胞系由来の全RNAにおけるASCL2の発現を調べた。同様に、Hs.Scute_f/r/p1およびRPL19を使用して、5種のCRCおよび7種の細胞系における(正常ヒトゲノムDNAと比較した)ASCL2の複製数の遺伝子量分析においてDNA鋳型から増幅を行った。スプライスされた転写物またはスプライスされていない転写物のいずれが、認められた発現プロファイルに関与しているかを測定するために、プライマープローブセットを設計し、ASCL2メッセージ(図5)(表8)の様々な領域から増幅を行った。この試験は4種の細胞系(HCT15、COLO205、JEG3およびHCT116)由来の全RNAで行われ、RPL19に対して正規化させた。
4.4 結果
これらの研究結果は以下の通りである。全プライマープローブセットが、mRNAの正確な定量に有効であることが確認された(図10)。ASCL2発現は、正常粘膜に比べてCRCで9.9倍(中央値)高かった(95%信頼範囲4.7〜12.2)(図11a)。64%(n=18/28)では、>5倍の上方制御が認められた。このパターンはCRC細胞系に反映された(図11a)。HU−U133オリゴヌクレオチドマイクロアレイデータは、7種のCRCのRNA試料に利用可能であった。対応する正常粘膜におけるRPL19の発現に対して正規化させたとき、倍数の変化に正の相関があった(データには示していないが、R=0.66(n=7))。
RNA試料中のASCL2鋳型のレベルが徐々に減少すれば、5’プローブが増加した。しかし、中程度から高レベルでASCL2を発現する細胞系では、5’からスプライス部位の鋳型量が非常に大きく減少する。これはASCL2を高レベルに発現しなかったHCT116などの細胞系には当てはまらない(図11b)。
実施例5:ポリメラーゼ連鎖反応によるクローニング
5.1 プラスミドの構築およびスクリーニング
ASCL2遺伝子(GenBankでAF442769と指定される)を図5に示す。全長(スプライスされていない)転写物は、2個の読み取り枠(ORF)(それぞれHASAP ORFおよびHASH2 ORFと指定される)を有する2個のエクソンを含み、第1エクソン内の第1の読み取り枠はHASAP(TAT376と同義)で表されるポリペプチドをコードすることが同定されており、第1エクソン内の第2の読み取り枠はHASH2(TAT377と同義)で表されるポリペプチドをコードすることが同定されている。対応するスプライスされるASCL2転写物は、本明細書内でHASH2(TAT377と同義)と同定されるポリペプチドをコードする、スプライスされていない全長遺伝子の第1エクソン内のスプライスに相応する。対応するASCL2のmRNA転写物を図12に示す。本実施例では、最初にAF442769配列を、Genbank(NT_033238)およびCelera Genomics(米国メリーランド州ロックビル)データベースの対応マウスゲノム配列、ならびにジェネンテック社で書き込まれ、開発された専有ソフトウェアの有するIncyte EST配列に対して確認した。cDNAプローブの鋳型は、製造会社の指示書に従って、Prostarキット(Stratagen、米国カリフォルニア州ラホーヤ)を用いたHCT−15 RNAの逆転写により作製された。CRCおよび胎盤のmarathon−ready cDNAライブラリーもまた選び出された。実施例4に記載のように、PCR反応液を調製した。HASH2(DNA327308)およびHASAP(DNA327307)のORFを、2回のタッチダウンPCR(プログラム3)(図5)(表6および7)でHASH2_N_F/R1プライマーを用いて増幅した。
同様に、HASAP ORFを、外部プライマーおよびネスト化プライマー、つまりそれぞれHASAP_N_F/R1およびHASAP_N_F/R3を用いて増幅した。プログラム4(表6)を利用して、制限部位(5’−XhoIおよびHindIII−3’)を、それぞれ327308.XhoI/HindIIIおよび327307.XhoI/HindIIIプライマーで増幅することにより導入した。PCR産物を、製造会社の指示書に従って、QIAクイック(Qiagen)を用いて精製した。精製されたORFおよびpEGFP−N1ベクター(BD Clontech)は、XhoIおよびHindIII(New England Biolabs(NEB)、米国マサチューセッツ州ベバリー)の各60Uを用いて37℃で2時間、制限酵素処理がなされた。制限酵素処理されたpEGFP−NIを、製造会社の指示書に従って、子牛腸ホスファターゼ(NEB)で処理した。ORFを、QIAクイックキットを用いて1.2%アガロースゲルでゲル精製した。提供された手順書に従って、T4 DNAリガーゼ(NEB)で16℃で一晩、ライゲーションを行った(制限ベクターのみの対照が含まれる)。一定量のDH5α−ftコンピテント大腸菌(Invitrogen)を、42℃で45秒間の熱ショックによりライゲーション混合液で形質転換させた。大腸菌を37℃で1時間SOC培地において回復させた後、LB Kana(50μg/mlのカナマイシンを含む液体培地)アガーに蒔き、37℃で18時間インキュベートした。コロニーを選択し、ミニプレップ(Qiagen)用に18時間以上、LB Kanaで培養した。精製されたプラスミドを、製造会社の指示書に従って、PstI(HASH2−pEGFP−N1)またはSmaI(HASAP−pEGFP−N1)(NEB)による制限により、挿入用に選び出した。ポジティブクローンを、ベクター特異的プライマーおよび挿入特異的プライマー(表8)を用いて核酸自動配列決定に送り込んだ。配列クロマトグラムを、Sequencher v.4.1(Gene Codes、米国ミシガン州アナーバー)を用いて、リファレンス挿入配列およびリファレンスベクター配列(GenBank AF442769、U55762)と比較した。
5.2 哺乳動物細胞のトランスフェクション
HCT116細胞を、Fugene6(Roche Molecular Biochemicals、米インディアナ州インディアナポリス)を用いて、製造会社の指示書に従ってトランスフェクトした。1000μg/mlのG418を添加した培地で培養することにより、安定した細胞系が得られた。
5.3 結果
要約すれば、HASAPおよびHASH2読み取り枠は、pEGFP−N1ベクターにうまくクローン化された(図13および14)。その配列は、野生型〜AF442769であった。HASH2−pEGFP−N1ベクターは、一時的にHCT116細胞にトランスフェクトされ、蛍光顕微鏡により核移行が示された。
実施例6:ハイブリダイゼーション研究
6.1 プローブの合成および標識
HASAP_N_F/R3およびHASH2−N−F/R1のPCR産物をDNAプローブとして使用するためにゲル精製した(図5)(表6)。プローブを、製造会社の指示書に従って、ランダムヘキサマー(Redprime II、Amersham Biosciences)を用いて、[α32P]−dCTP(ICN Pharmaceuticals、米国カルフォルニア州コスタメサ)で標識した。組み込まれていないヌクレオチドを、G50−sephadexスピンカラム(Amersham Biosciences)で取り除き、標識効率をシンチレーションカウンタで計測した。プローブの標識および精製を確認するために、100ngを2%アガロースゲルに流し、X−OMAT−ARフィルム(Eastman Kodak)にさらした。
6.2 ノーザンブロッティング
6.2.1 調製
2種の微生物のHCT15、DLD1、JEG3およびHCT116のポリ(A)+RNAを、ホルムアルデヒドゲルランニングバッファー(50mM 酢酸ナトリウム、0.2M MOPS、10mM EDTA)、2.2M ホルムアルデヒドおよび50% ホルムアミド中に、それぞれ調製した。試料を65℃で15分間インキュベートし、氷上で冷却した。RNAは、2.2M ホルムアルデヒドおよび1×ホルムアルデヒドゲルランニングバッファーを有する変性1%アガロースゲル上に4V/cmで2度流した。ゲルの半分を切り出し、エチジウムブロミドで染色した。リボソームRNAの18sおよび28sの泳道バンドを、紫外線透照下で測定した。残りのゲルをHybond−Nニトロセルロースフィルター(Amersham Biosciences)上で6時間以上ブロットした。(移送効率はブロットゲルのエチジウムブロミド染色により評価された。)この膜を、真空オーブンにおいて80℃で2時間焼いた。正常組織のRNAのパネルを表わす市販の膜(BD Clontech)も含めた。プレハイブリダイゼーションは、Quick−Hyb溶液(Stratagen)において68℃で40分間行われた。変性プローブは、100μg/mlの変性済み、超音波処理済みの魚精子DNAと共に最終濃度1.25×10cpm/mlになるまでハイブリダイゼーション溶液に加えられた。膜を68℃で3時間ハイブリダイズし、低ストリンジェンシー(2×SSC、0.1% SDSに室温で15分)で2度、高ストリンジェンシー(0.2×SSC、0.1% SDSに60℃で15分)で2度洗浄し、ホスホスクリーン(phosphorscreen)に1時間さらし、Storm840(Amersham Biosciences)で画像化した。X−OMAT−ARフィルム(Eastman Kodak)を用いて、オートラジオグラフィを−80℃で一晩行った。
6.2.2 結果
変性ゲルの同負荷(Equal loading)および移送を、全4種に対するβ−アクチンハイブリダイゼーションにより確認した(図15a)。ASCL2プローブは、HCT15およびDLD1においてハイブリダイズし、スプライスされた転写物(TAT377)のサイズに相当する1470bpで単一のバンドを作り出した(図15b)。さらに高分子量のバンドに対するハイブリダイゼーションは観察されなかった。JEG3またはHCT116に対する測定可能なハイブリダイゼーションは無かった。1470bpのバンドのホスホイメージ(phosphorimage)定量は、同一のRNA試料におけるリアルタイムRT−PCRデータと有意に相関した(データを示していないが、R=0.94)。正常組織RNAの市販ブロットに対するノーザンハイブリダイゼーションにより、胎盤および小腸のみに対するハイブリダイゼーションが示された(図15c)。
6.3 cDNAライブラリースクリーニング
6.3.1 cDNAライブラリースクリーニング法
正常ヒト胎盤(LIB381および380)、正常ヒト結腸(LIB836および835)およびCOLO205細胞系(LIB688および687)由来のそれぞれ0.2〜2kbおよび>2kbの転写物を表す、社内の(in−house)cDNAライブラリーをスクリーニングした。すべてのライブラリーは、pRK5Eベクター内のオリゴ(dT)プライム化cDNAから構築した。実施例5に記載のように、ライブラリーを、まずPCRにより、HASAP ORFの存在に関してスクリーニングした。
LIB687は全長ORFの存在を示しており、さらなるスクリーニングのために選択した。このライブラリーで形質転換されたプールした大腸菌(−70℃、20%グリセロール中で貯蔵)をLB Carb(50μg/mlのカルベニシリンを含む液体培地)で解凍した。80倍希釈液をLB Carbアガー上に蒔き、37℃で一晩インキュベートした。コロニー密度が計測され、6×10コロニーを示すように選択された希釈液を、LB Carbアガー上で一晩培養した。コロニーを、Hybond N+ニトロセルロースフィルターに移し、0.05M NaOH、0.15M NaCl中で5分間変性させ、1M Tris、1.5M NaCl中で10分間中和した。この平板培地を37℃で8時間回復させた後、4℃で貯蔵した。この膜を、真空オーブンにおいて80℃で2時間焼いた。プレハイブリダイゼーションは、0.1ml/cmのハイブリダイゼーション溶液(50% ホルムアミド、5×SSC、20mM Tris−HCl(pH7.6)、1×Denhardt’s液、10% 硫酸デキストランおよび0.1% SDS)において、42℃で一晩行われた。プローブは変性され、100μg/mlの変性済み、超音波処理済みの魚精子DNA(Roche Molecular Biochemicals)を含むハイブリダイゼーション溶液に最終濃度1ng/ml(>10dpm/μg)になるように加えられた。この膜を、42℃で一晩ハイブリダイズさせ、5回洗浄(60℃で15分、0.2×SSC、0.1% SDS)し、−80℃で一晩、X−OMAT−AR2フィルムにさらした。陽性のコロニーを選択することができ、ベクターがミニプレップにより精製されるまで、陽性コロニーを対応平板培地から抜き取り、LB Carbアガーに再度蒔いた。ベクターは、XbaI消化(NEB)により挿入用に選択し、実施例4に記載のように配列決定した。
6.3.2 結果
LIB688におけるHASAP ORFの存在量を示すライブラリースクリーニングの結果は、播種した1×10コロニーごとに陽性コロニー1個であった(図16)。しかし、配列決定した4個のクローンは、そのORFの3’末端方向に切断されていた。
6.4 タンパク質レベルにおける検証
6.4.1 タンパク質抽出
核タンパク質を、NE−PER 核および細胞質抽出試薬(1:10 HALTプロテアーゼ阻害剤混合物)を用いて、哺乳動物細胞から精製し、Spectra Maxプレートリーダー(Molecular Devices、米国カリフォルニア州サニーベール)を用いて、BCAタンパク質分析(Pierce Biotechnology、米国イリノイ州ロックフォール)により定量した。
6.4.2 ポリクローナル抗体作製
合成ペプチドに対してポリクローナル抗体を作製した。ペプチド配列CGRASSSPGRGGSSEPGS(配列番号8)に対してHASH2 58B抗体を作製し、ペプチド配列CAHDWLRPWPPPPRPQEG(配列番号9)に対してHASAP 37A抗体および37B抗体を作製した。
6.4.3 フローサイトメトリー
HCT15、HCT116およびJEG3細胞を、氷上で10分間、4% パラホルムアミド(リン酸緩衝生理食塩水溶液(PBS))で固定し、サポニン緩衝液(0.1% サポニン、0.01% アジ化Na、1% ウシ胎仔血清、リン酸緩衝生理食塩水溶液、pH7.2)で室温5分間、透過処理した。2×10細胞の一定分量を、0.1μg/mlのヤギ抗ウサギFITC結合免疫グロブリン(Caltag、米国カリフォルニア州バーリンゲーム)で処理した。細胞系ごとに各抗体には適当な陰性対照血清が含まれた。Eliteフローサイトメーター(Beckman Coulter)で蛍光強度を測定した。この研究結果により、全試料における抗c−Myc抗体で標識した、より高い割合の細胞が、非免疫化ウサギ免疫グロブリンに認められることが示された(図17)。しかし、HASAP抗体およびHASH2抗体のみが、免疫前血清に見られるシグナルを超えてHCT15細胞を標識した(以下の表9を参照)。
表9
抗体(+)または免疫前血清(−)で標識した時のフローサイトメトリー
閾値を超える陽性細胞の比率
Figure 2006512901
6.4.4 ウエスタンブロッティング
ウエスタンブロッティング研究も行った。還元条件(1:10 NuPAGEサンプル還元剤、Invitrogen)および非還元条件下で20μgの変性タンパク質についてポリアクリルアミドゲル電気泳動を行った。10% ビストリスゲルをエクセルシュアロックミニセル(X−cell surelock minicell)を用いて、1:10 酸化防止剤溶液と共にMOPS SDS緩衝液中に溶解させた。すべて、製造会社の指示書(Invitrogen)に従って、エクセルIIブロットモジュール(X−cell II blot module)を用いて、ニトロセルロース膜(孔径0.2μm)へ移した。(同一のゲルをクマシーブルーで染色し、膜へのタンパク質移行をポンソーS染色により調べた。)0.1%ツイーン20を添加したトリス緩衝生理食塩水(pH7.6)に溶かした5%スキムミルク中で、室温で60分間、膜をブロックし、一次抗体(1%ミルク溶液)と共に、室温で60分間インキュベートした。一次抗体には、c−myc(ウサギポリクローナル2.0μg/ml)(Novus Biological、米国コロラド州リトルトン)、HASH 58B(2.9μg/ml)、HASAP 37A(1.6μg/ml)およびHASAP 37B(1.2μg/ml)が含まれた。その後、ウサギ抗体を、室温で60分間、1%のミルク中のホースラディシュペルオキシダーゼ(DAKO Cytomation、米国カリフォルニア州カーペンテリア)に結合したヤギ免疫グロブリン0.3μg/mlで標識した。免疫複合体をエクストラケミルミネセンス(extra−chemiluminescence)で視覚化し、10分間ハイパーフィルムにさらした(Amersham Bioscience)。
6.4.5 ウエスタンブロッティングの結果
ゲルのクマシーブルー染色により、核タンパク質抽出物が無傷であり、等しく負荷されていることが示された(図18a)。すべてのポリクローナル抗体が観察試料において複数のバンドをもたらした(図18b−d)。抗c−mycは、HCT116タンパク質溶解物およびSW480タンパク質溶解物において、予想される27kDaのサイズで免疫反応性を示した。抗HASAP抗体は両方とも、いくつかの溶解物において予想されるサイズ(39kDa)でタンパク質と反応した。しかし、mRNAレベルで観察された発現レベルを反映するタンパク質発現の勾配はなかった。
マイクロアレイ試験のポスト分析および検証
これらの研究により、結腸直腸新生物におけるASCL2の癌特異的発現プロファイルが明らかになった。Gene Logic Affymetrix(登録商標)DNAマイクロアレイ研究は、結腸直腸粘膜の前癌病変および悪性病変におけるASCL2の上方制御を示した。これは市販のマイクロアレイに処理された多数の生物的反復(biological replicate)にわたり一致があった。技術的反復(technical replicate)は実施しなかったが、Affymetrix(登録商標)は、プローブセットの1%のみが、HG−U133 GeneChipの反復に2倍の差を無作為に示すことを言明している。SAGEライブラリーおよびESTライブラリーのスクリーニングにより、in silicoで上方制御が確認された(実施例2)。さらに、インサイツハイブリダイゼーション、リアルタイムRT−PCRおよびノーザンブロッティングデータが、このin silicoでの結果と共に検証され(実施例3〜6)、HASAP ORFがCRCにおいて検知できるレベルで発現しないことが強く示唆された。マウスにおけるHASAP ORF相当物の不在、任意の既知のドメインまたはタンパク質の相同性の欠如、およびライブラリースクリーニングにおけるHASAPの存在量の低さにより、HASAPがゲノム混在物を表す可能性があることが示される。従って、HASH2遺伝子が結腸直腸腫瘍で過剰発現される重要な分子であると思われる。
本明細書で示されるデータは、有意性が高く、大腸の新生物に高い特異性があり、一連の方法論にわたって一貫性がある、ASCL2(HASH2)発現とCRCの間の関連性を示した。大腸の良性新生物における上方制御は、時間的優位性を主張するものであり、HASH2が結腸直腸腫瘍形成の初期段階で重要であることを示唆する。
実施例7:ハイブリダイゼーションプローブとしてのTAT376またはTAT377の使用
以下の方法は、哺乳動物における腫瘍の存在の診断などのため、ハイブリダイゼーションプローブとしてTAT376またはTAT377をコードするヌクレオチド配列を使用することについて述べたものである。
本明細書で開示するように、全長または成熟TAT376またはTAT377のコード配列を含むDNAを、ヒト組織cDNAライブラリーまたはヒト組織ゲノムライブラリーにおける相同DNA(自然発生変異体のTAT376またはTAT377をコードするものなど)に関してスクリーニングを行うためのプローブとして使用することもできる。
ハイブリダイゼーションおよび両方のライブラリーDNAを含むフィルターの洗浄は、以下の高ストリンジェンシー条件下で行われる。放射標識TAT376由来プローブまたは放射標識TAT377由来プローブのフィルターへのハイブリダイゼーションは、50% ホルムアミド、5×SSC、0.1% ピロリン酸ナトリウム、50mM リン酸ナトリウム(pH6.8)、2×Denhardt’s溶液、および10% 硫酸デキストラン溶液において、42℃で20時間行われる。フィルターの洗浄は、0.1×SSCおよび0.1% SDSの水溶液において、42℃で行われる。
全長の天然配列TAT376またはTAT377をコードするDNAと同一の所望の配列を有するDNAは、当技術分野で公知の標準的な技法で同定することができる。
実施例8:大腸菌におけるTAT376またはTAT377の発現
本実施例では、大腸菌における組み換え発現による非グリコシル化型TAT376またはTAT377の調製について説明する。
最初に、選択されたPCRプライマーを用いて、TAT376またはTAT377をコードするDNA配列を増幅する。プライマーは、選択された発現ベクターの制限酵素部位に対応する制限酵素部位を含む。様々な発現ベクターを使用してよい。適切なベクターの例は、アンピシリンおよびテトラサイクリン耐性の遺伝子を含むpBR322(大腸菌由来;Gene、2、95頁(1977)、Bolivarら)である。ベクターは制限酵素による消化を受け、脱リン酸化される。その後、PCRの増幅配列をベクターに連結する。ベクターは、抗生物質耐性遺伝子、trpプロモーター、ポリヒス(polyhis)リーダー(最初の6個のSTIIコドン、ポリヒス(polyhis)配列、およびエンテロキナーゼ切断部位を含む)、TAT376またはTAT377コード領域、λ転写ターミネーター、およびargU遺伝子をコードする配列を含むことが好ましい。
その後、ライゲーション混合液を用いて、Sambrookら(上掲)に記載される方法により、選択された大腸菌株を形質転換させる。LB平板培地における生育能により形成転換体を識別し、抗生物質耐性コロニーを選択する。制限分析およびDNA配列決定により、プラスミドDNAを単離し、確認することができる。
抗生物質を添加したLBブロスなどの液体培地で、選択されたクローンを一晩培養することができる。続いて、一晩培養した液をより大規模な培地に接種するために使用してもよい。その後、細胞を所望の光学密度まで培養し、その間に発現プロモーターを作動させる。
数時間以上、細胞を培養した後、細胞を遠心分離により集菌することができる。遠心分離により得られる細胞ペレットを、当技術分野で公知の様々な薬剤を用いて可溶化することができ、その後、この可溶化TAT376またはTAT377タンパク質を、タンパク質の強い結合を許容する条件下で金属キレートカラムを用いて精製することができる。
TAT376またはTAT377は、以下の手段を用いて、大腸菌においてポリヒス(poly−His)タグ形で発現されてもよい。最初に、選択されたPCRプライマーを用いて、TAT376またはTAT377をコードするDNAを増幅する。プライマーは、選択された発現ベクターの制限酵素部位に対応する制限酵素部位と、効果的かつ信頼性の高い翻訳開始、金属キレートカラムによる急速な精製、およびエンテロキナーゼに伴うタンパク質分解除去をもたらす他の有用な配列とを含む。その後、菌株52に基づく宿主大腸菌を形質転換するのに使用される発現ベクター(W3110 fuhA(tonA)lon galE rpoHts(htpRts)clpP(lacIq))に、PCRにより増幅されたポリヒス(poly−His)タグ配列を連結する。まず、形質転換体を、3〜5のO.D.600(O.D.600 of 3−5)に達するまで、カルベニシリン50mg/mlを含むLBにおいて30℃で振とう培養する。その後、培養液をCRAP培地((NHSO 3.57g、クエン酸ナトリウム二水和物0.71g、KCl 1.07g、Difco酵母エキス5.36g、Sheffield hycase SF 5.36gの500ml水溶液、110mM MPOS(pH7.3)、0.55%(w/v)グルコースおよび7mM MgSOを混合して調製)で50〜100倍希釈し、30℃でおおよそ20〜30時間、振とう培養する。試料を取り除き、SDS−PAGE分析により発現を確認し、バルク培養液を遠心分離し、細胞を沈殿させる。細胞ペレットは、精製およびリフォールディングするまで冷凍する。
0.5〜1L発酵物由来の大腸菌ペースト(6〜10gペレット)を、7M グアニジン、20mM Tris緩衝液(pH8)の10体積(w/v)に再懸濁する。固体の亜硫酸ナトリウムおよびテトラチオン酸ナトリウムを、それぞれ最終濃度が0.1Mおよび0.02Mになるように添加し、溶液を4℃で一晩攪拌する。この工程により、亜硫酸化(Sulfitolization)によりブロックされるシステイン残基を有する変性タンパク質が生じる。この溶液をベックマン(Beckman)超遠心機で40,000rpmで30分間、遠心分離する。上清を3〜5体積の金属キレートカラム緩衝液(6M グアニジン、20mM Tris、pH7.4)で希釈し、0.22ミクロンフィルターでろ過して浄化する。浄化された抽出物を、金属キレートカラム緩衝液で平衡化したQiagen Ni−NTA金属キレートカラム5ml上に添加する。50mM イミダゾール(Calbiochem、Utrolグレード)を含む追加緩衝液(pH7.4)でカラムを洗浄する。250mM イミダゾールを含む緩衝液でタンパク質を溶出させる。所望のタンパク質を含む画分をプールし、4℃で貯蔵する。タンパク質濃度は、そのアミノ酸配列に基づいて算出された吸光係数を用いて、280nmにおける吸光度により推定される。
タンパク質は、20mM Tris(pH8.6)、0.3M NaCl、2.5M 尿素、5mM システイン、20mM グリシンおよび1mM EDTAを含む、新たに調製されたリフォールディング緩衝液に試料をゆっくりと希釈することによりリフォールディングされる。リフォールディング体積は、最終濃度が50〜100マイクログラム/mlの間になるように選択される。リフォールディング溶液を、4℃で12〜36時間、静かに攪拌する。リフォールディング反応は、最終濃度0.4%(pHは約3)になるまでTFAを添加することにより抑えられる。タンパク質をさらに精製する前に、溶液を0.22ミクロンフィルターでろ過し、アセトニトリルを最終濃度2〜10%になるまで添加する。0.1% TFAを含む移動相緩衝液を用いて、アセトニトリル10〜80%の濃度勾配で溶出しながら、Poros R1/H逆相カラムで、リフォールディングされたタンパク質をクロマトグラフにかける。A280吸光度を有する一定量の画分をSDSポリアクリルアミドゲルで分析し、同質のリフォールディングタンパク質を含む画分をプールする。一般に、多くのタンパク質において正しくリフォールディングされた種は、その種が逆相樹脂との相互作用から保護される疎水性内部を有して最も小型であるため、最低濃度のアセトニトリルで溶出される。塊状の種は、たいてい比較的高いアセトニトリル濃度で溶出される。この逆相段階は、所望の形のタンパク質から異常なフォールディング構造のタンパク質を除くのに加え、試料のエンドトキシンも取り除く。
所望のフォールディング構造のTAT376またはTAT377ポリペプチドを含む画分をプールし、溶液に対する穏やかな窒素流によりアセトニトリルを除去する。タンパク質は、透析、または製剤用緩衝液で平衡化したG25 Superfine(Pharmacia)樹脂を用いたゲルろ過により、20mM Hepes(pH6.8)、0.14M 塩化ナトリウムおよび4%マンニトールに処方され、滅菌ろ過される。
本明細書で開示されるTATポリペプチドは、この技法を用いてうまく発現され、精製された。
実施例9:哺乳動物細胞におけるTAT376またはTAT377の発現
本実施例は、哺乳動物細胞における組み換え発現による潜在的グリコシル化型TAT376またはTAT377の調製について説明する。
ベクターのpRK5(1989年3月15日公開のEP307,247を参照)を発現ベクターとして使用する。任意で、Sambrookら(上掲)に記載されるようなライゲーション法を用いて、TAT376またはTAT377 DNAを挿入させるために選択された制限酵素でTAT376またはTAT377 DNAをpRK5に連結する。生じたベクターはpRK5−TAT376またはpRK5−TAT377と呼ばれる。
一実施形態では、選択された宿主細胞が293細胞であってよい。ヒト293細胞(ATCC CCL 1573)は、ウシ胎仔血清と、任意で栄養素および/または抗生物質を添加したDMEMなどの培地の組織培養平板で集密培養される。約10μgのpRK5−TAT376またはpRK5−TAT377 DNAを、VA RNA遺伝子(Cell、31、543頁(1982)、Thimmappayaら)をコードする約1μgのDNAに混合し、1mM Tris−HCl、0.1mM EDTA、0.227M CaCl 500μlに溶解する。この混合液に50mM HEPES(pH7.35)、280mM NaCl、1.5mM NaPOの滴状500μlを加え、25℃、10分間で沈殿を形成させる。この沈殿を懸濁し、293細胞に添加し、37℃で約4時間、受け入れさせる。培養培地を吸引除去し、20%グリセロールPBS溶液2mlを30秒間添加する。その後、血清を含まない培地で293細胞を洗浄し、新鮮培地を添加し、細胞を約5日間インキュベートする。
トランスフェクションの約24時間後、培養培地を取り除き、(単独の)培養培地、または200μCi/mlの35S−システインおよび200μCi/mlの35S−メチオニンを含む培養培地で置き換える。12時間のインキュベート後に、順化培地を得、スピンフィルターで濃縮し、15%のSDSゲル上に添加する。処理されたゲルを乾燥し、TAT376またはTAT377ポリペプチドの存在を示すために選択された時間の間、フィルムにさらしてもよい。トランスフェクトされた細胞を含む培養液は、さらに(血清を含まない培地で)培養されてもよく、その培地は、選択されたバイオアッセイにより試験される。
別の技法として、SomparyracらのProc.Natl.Acad.Sci.、12:7575(1981)に記載される硫酸デキストラン法を用いて、TAT376またはTAT377を293細胞に一時的に導入してもよい。293細胞をスピナーフラスコで最大密度に培養させ、700μgのpRK5−TAT DNAを添加する。最初に、スピナーフラスコから遠心分離により細胞を濃縮し、PBSで洗浄する。DNA−デキストラン沈殿物を、細胞ペレット上で4時間インキュベートする。細胞を20%グリセロールで90秒間処理し、培養培地で洗浄し、組織培養培地、つまり5μg/mlのウシインスリンおよび0.1μg/mlのウシトランスフェリンを含むスピナーフラスコに再び入れる。約4日後、順化培地を遠心分離し、細胞および破片を除去するためにろ過する。その後、発現されたTAT376またはTAT377を含む試料を、透析および/またはカラムクロマトグラフィーなどの任意の選択された方法で濃縮および精製することができる。
他の実施形態では、TAT376またはTAT377をCHO細胞で発現させることができる。CaPOまたはDEAEデキストランなどの既知の試薬を用いて、pRK5−TAT376またはpRK5−TAT377をCHO細胞にトランスフェクトすることができる。上記に述べたように、細胞培養液をインキュベートし、培地を(単独の)培養培地、または35S−メチオニンなどの放射性標識を含む培養培地で置き換えることができる。TAT376またはTAT377ポリペプチドの存在を測定後、血清を含まない培地で培養培地を置き換えてもよい。好ましくは、培養液を約6日間インキュベートして順化培地を得る。発現されたTAT376またはTAT377を含む培地を、任意の選択された方法で濃縮および精製することができる。
エピトープタグTAT376またはTAT377も宿主CHO細胞で発現させてよい。TAT376またはTAT377をpRKベクターからサブクローン化してもよい。このサブクローン挿入物を、バキュロウイルスの発現ベクターにポリヒス(poly−his)タグなどの選択されたエピトープタグとフレーム単位で融合させるPCRにかけることができる。その後、ポリヒス(poly−his)タグTAT376またはTAT377挿入物を、安定クローンの選択のためにDHFRなどの選択マーカーを含むSV40推進ベクターにサブクローン化することができる。最後に、CHO細胞をSV40推進ベクターで(上記に述べたように)トランスフェクトすることができる。発現を確認するために、上記のように標識を行ってもよい。その後、発現されたポリヒス(poly−His)タグTAT376またはTAT377を含む培養培地を、Ni2+キレートアフィニティークロマトグラフィーなどの任意の選択された方法で濃縮および精製することができる。
TAT376またはTAT377を、一時的発現方法によりCHO細胞および/またはCOS細胞、あるいは他の安定的な発現方法によりCHO細胞で発現させてもよい。
以下の手法を用いて、CHO細胞の安定した発現が実現する。タンパク質がIgG作製物(イムノアドヘシン)として発現され、IgG作製物では、各タンパク質の可溶体(例えば細胞外ドメイン)をコードする配列が、ヒンジ、CH2およびCH2ドメインを含むIgG1不変領域配列に融合し、かつ/あるいはポリヒス(poly−His)タグ形である。
PCR増幅後に、AusubelらのCurrent Protocols of Molecular Biology、Unit 3.16、John Wiley and Sons(1997)に記載されるような標準的な技法を用いて、各DNAをCHO発現ベクターにサブクローン化する。CHO発現ベクターは、cDNAを都合よく輸送させるのに相性の良い対象DNAの5’および3’制限部位を有するように作製される。CHO細胞における発現に使用されるベクターは、LucasらのNucl.Acids Res.24:9、1774〜1779頁(1996)に記載されており、対象のcDNAおよびジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR)の発現を推進するSV40初期プロモーター/エンハンサーを使用する。DHFR発現により、トランスフェクションに続くプラスミドの安定維持のための選択が可能になる。
12種の微生物の所望のプラスミドDNAを、市販のトランスフェクション試薬のSuperfect(登録商標)(Quiagen)、Dosper(登録商標)またはFugene(登録商標)(Boehringer Mannheim)を用いて、約1000万のCHO細胞に導入する。細胞をLucasら(上掲)に記載されるように培養する。以下に記述すように、さらに培養および産生させるために、約3×10細胞をアンプルに入れて冷凍する。
プラスミドDNAを含むアンプルを、水浴内に置いて解凍させ、ボルテックスにより混合する。内容物を、10mlの培地を含む遠心分離チューブにピペットで移し、1000rpmで5分間、遠心分離させる。上清を吸引し、細胞を10mlの選択培地(0.2μmディアフィルター(diafilter)でろ過した5%のウシ胎仔血清を添加した、0.2μmフィルターでろ過したPS20)に再懸濁する。その後、細胞を90mlの選択培地を含む100mlスピナーで一定量にする。1〜2日後、150mlの選択培養培地を注いだ250mlスピナーに細胞を移し、37℃でインキュベートする。さらに2〜3日後に、250ml、500mlおよび2000mlスピナーに3×10細胞/mlで接種する。細胞培地は、遠心分離により新鮮培地で交換し、産生培地に再懸濁される。任意の適切なCHO培地を使用してもよいが、1992年6月16日発行の米国特許第5,122,469号に記載される産生培地を実際に使用してもよい。3L産生スピナーに1.2×10細胞/mlで接種する。0日目に細胞数、pHが測定される。1日目に、スピナーをサンプリングし、ろ過空気の散布を開始する。2日目に、スピナーをサンプリングし、温度を33℃に移し、30mlの500g/lグルコースおよび0.6mlの10%消泡剤(例えば、35%ポリジメチルシロキサン乳液、Dow Corning 365 Medical Grade Emulsion)を加える。産生の間中、pHを約7.2に保持するため必要に応じて調節する。10日後、または生菌率が70%を下回るまでに、細胞培養液を遠心分離および0.22μmフィルターでろ過することにより集菌する。ろ液を4℃で貯蔵するか、または直ちに精製のためにカラムにかける。
ポリヒス(poly−His)タグ作製物に関して、Ni−NTAカラム(Qiagen)を用いてタンパク質を精製する。精製前に、イミダゾールを5mM濃度になるまで順化培地に添加する。順化培地は、0.3M NaClおよび5mMのイミダゾールを含む20mM Hepes(pH7.4)緩衝液で平衡化した6mlのNi−NTAカラムに、4℃で流速4〜5ml/分で注ぎ込む。添加後、カラムを追加の平衡化緩衝液で洗浄し、0.25Mのイミダゾールを含む平衡化緩衝液でタンパク質を溶出させる。続いて、25mlのG25 Superfine(Pharmacia)カラムを用いて、高純化タンパク質を、10mM Hepes、0.14M NaClおよび4%マンニトール(pH6.8)を含む保存用緩衝液に脱塩させ、−80℃で貯蔵する。
以下のようにイムノアドヘリン(Fc含有)作製物を順化培地から精製する。順化培地を、20mM Naリン酸緩衝液(pH6.8)で平衡化させた5mlのプロテインAカラム(Pharmacia)に注ぎ込む。添加後、100mM クエン酸(pH3.5)で溶出する前に、カラムを平衡化緩衝液で広範囲に洗浄する。1mlの画分を275μlの1M Tris緩衝液(pH9)を含むチューブに回収することにより、溶出されたタンパク質を直ちに中和する。続いて、ポリヒス(poly−His)タグタンパク質に関して、上述のように高純化タンパク質を保存用緩衝液に脱塩させる。同質性をSDSポリアクリルアミドゲル、およびエドマン分解によるN末端アミノ酸配列決定により評価する。
本明細書で開示されるTATポリペプチドは、この技法を用いてうまく発現され、精製された。
実施例10:酵母におけるTAT376またはTAT377の発現
以下の方法は、酵母におけるTAT376またはTAT377の組み換え発現について述べるものである。
最初に、ADH2/GAPDHプロモーターからTAT376またはTAT377を細胞内で生成または分泌させるための酵母発現ベクターを構築する。TAT376またはTAT377をコードするDNAおよびプロモーターを、TAT376またはTAT377の細胞内発現を導くために、選択されたプラスミドの適切な制限酵素部位に挿入する。分泌については、TAT376またはTAT377をコードするDNAを、TAT376またはTAT377の発現のために、(必要であれば)ADH2/GAPDHプロモーター、天然TAT376またはTAT377シグナルペプチドあるいは他の哺乳動物シグナルペプチド、あるいは、例えば酵母αファクターまたは転化酵素分泌シグナル/リーダー配列およびリンカー配列と共に、選択されたプラスミドにクローン化することができる。
その後、酵母AB110株などの酵母細胞を上述の発現プラスミドで形質転換し、選択された発酵培地で培養することができる。10%トリクロロ酢酸を用いた沈殿化、ならびにSDS−PAGEによる分離およびクマシーブルー染料を用いたゲル染色により、形質転換酵母の上清を分析することができる。
続いて、培地を遠心分離して選択されたカートリッジフィルターを用いて濃縮することにより発酵培地から酵母細胞を取り除いて、組み換えTAT376またはTAT377を単離し、精製することができる。選択されたカラムクロマトグラフィー樹脂を用いて、TAT376またはTAT377を含む濃縮液をさらに精製してもよい。
本明細書で開示されるTATポリペプチドは、この技法を用いてうまく発現され、精製された。
実施例11:バキュロウイルス感染昆虫細胞におけるTAT376またはTAT377の発現
以下の方法は、バキュロウイルス感染昆虫細胞におけるTAT376またはTAT377の組み換え発現について述べるものである。
TAT376またはTAT377をコードする配列を、バキュロウイルス発現ベクター内に含まれるエピトープタグの上流に融合させる。このエピトープタグはポリヒス(poly−his)タグおよび免疫グロブリンタグ(IgGのFc領域のような)を含む。pVL1393(Novagen)などの市販のプラスミドから得られるプラスミドなど、様々なプラスミドを使用してもよい。簡単に言えば、TAT376またはTAT377をコードする配列、あるいはタンパク質が細胞外である場合、膜貫通タンパク質の細胞外ドメインをコードする配列または成熟タンパク質をコードする配列などのTAT376またはTAT377をコードする配列の所望の部分を、5’および3’領域に相補的なプライマーを用いてPCRにより増幅する。5’プライマーは、(選択された)制限酵素部位の脇側を組み込んでもよい。その後、生成物を選択された制限酵素で消化し、発現ベクターにサブクローン化する。
リポフェクチン(GIBCO−BRLから市販されている)を用いて、上記のプラスミドをBaculoGold(商標)ウイルスDNA(Pharmingen)と共に、スポドプテラフルギペルタ(Spodoptera frugiperda)(「Sf9」)細胞(ATCC CRL 1711)にトランスフェクトすることにより、組み換えバキュロウイルスを得る。28℃で4〜5日間インキュベートした後、放出されたウイルスを集菌し、さらなる増幅に使用する。ウイルス感染およびタンパク質発現は、O’ReilleyらのBaculovirus expression vectors:A Laboratory Manual、Oxford:Oxford University Press(1994)に記載されるように実行される。
その後、発現されたポリヒス(poly−his)タグTAT376またはTAT377を、例えば以下のようにNi2+キレートアフィニティークロマトグラフィーにより精製することができる。RupertらのNature、362:175〜179頁(1993)に記載されるように、組み換えウイルス感染Sf9細胞から抽出液を調製する。簡単に言えば、Sf9細胞を洗浄し、超音波処理用緩衝液(25ml Hepes(pH7.9)、12.5mM MgCl、0.1mM EDTA、10%グリセロール、0.1% NP−40、0.4M KCl)に再懸濁し、氷上で20秒間、2回の超音波処理を行う。超音波処理物を遠心分離により取り除き、上清を添加緩衝液(50mM ホスフェート、300mM NaCl、10%グリセロール、pH7.8)で50倍に希釈し、0.45μmフィルターでろ過する。Ni2+NTAアガロースカラム(Qiagenから市販されている)をカラム体積5mlで調製し、25mlの水で洗浄し、25mlの添加緩衝液で平衡化する。ろ過される細胞抽出液を、毎分0.5mlでカラムにかける。カラムを、画分回収が開始されるポイントであるベースラインA280に添加緩衝液で洗浄する。次に第2の洗浄緩衝液(50mM ホスフェート、300mM NaCl、10%グリセロール、pH6.0)で洗浄し、非特異的結合タンパク質を溶出させる。A280ベースラインに再到達後、第2の洗浄緩衝液における0〜500mMのイミダゾール勾配により、カラムを展開する。1mlの画分を回収し、SDS−PAGEおよび銀染色法、またはアルカリホスファターゼ(Qiagen)にNi2+NTAを結合させるウエスタンブロットで分析する。溶出したHis10タグTAT376またはTAT377を含む画分をプールし、添加緩衝液に対して透析する。
別法として、既知のクロマトグラフィー法、例えばプロテインAまたはプロテインGカラムクロマトグラフィーなどを用いて、IgGタグ(またはFcタグ)TAT376またはTAT377の精製を行うことができる。
本明細書で開示されるTATポリペプチドは、この技法を用いてうまく発現され、精製された。
実施例12:TAT376またはTAT377に結合する抗体の調製
本実施例は、TAT376またはTAT377に特異的に結合することが可能なモノクローナル抗体の調製について説明する。
モノクローナル抗体を生成する技法は、当技術分野で知られており、例えばGoding(上掲)に記載されている。使用してもよい免疫原には、精製されたTAT376またはTAT377、TAT376またはTAT377を含む融合タンパク質、および細胞表面で組み換えTAT376またはTAT377を発現する細胞などがある。免疫原は、必要以上の実験を行わずに技術者により選択されることができる。
TAT376またはTAT377免疫原をフロイント完全アジュバントで乳化し、1〜100マイクログラムから所定の量を皮下または腹腔内に注入して、Balb/cなどのマウスを免疫化する。別法として、免疫原をMPL−TDMアジュバント(Ribi Immunochemical Research、米国モンタナ州ハミルトン)で乳化し、動物の後足パッドに注射する。その後、10〜12日後に、選択されたアジュバントで乳化した追加免疫原で免疫化マウスを強化する。その後、数週間、マウスを追加免疫処理注射で強めてもよい。抗TAT376または抗TAT377抗体を検出するため、ELISA分析試験用に、定期的に眼窩の後部出血でマウスから血清試料を得てもよい。
適切な抗体価を検出した後、抗体「陽性」動物にTAT376またはTAT377を最終静脈注射することができる。3〜4日後に、マウスを処分し、脾臓細胞を得る。その後、脾臓細胞を、ATCC No.CRL 1597から得られるP3X63AgU.1などの選択されたマウス骨髄腫細胞系に(35%ポリエチレングリコールを用いて)融合する。この融合により、非融合細胞、骨髄腫ハイブリッドおよび脾臓細胞ハイブリッドの増殖を阻害する、HAT(ヒポキサンチン、アミノプテリンおよびチミジン)培地を含む96穴組織培養プレートに蒔くことが可能なハイブリドーマ細胞が作り出される。
TAT376またはTAT377に対する反応性からELISAにてハイブリドーマ細胞を選び出す。TAT376またはTAT377に対する所望のモノクローナル抗体を分泌する「陽性」ハイブリドーマ細胞の測定は、当技術分野の技術範囲にある。
陽性ハイブリドーマ細胞を同系のBalb/cマウスに腹腔内注射し、抗TAT376モノクローナル抗体または抗TAT377モノクローナル抗体を含む腹水を作り出すことができる。別法として、組織培養フラスコまたはローラーボトルでハイブリドーマ細胞を培養することができる。腹水で産生されたモノクローナル抗体の精製は、硫酸アンモニウム沈殿後のゲル排除クロマトグラフィーにより実行することができる。別法として、プロテインAまたはプロテインGに対する抗体の結合に基づくアフィニティークロマトグラフィーを用いることができる。
実施例13:特異的抗体を用いたTAT376またはTAT377ポリペプチドの精製
天然または組み換えのTAT376またはTAT377ポリペプチドを、タンパク質精製の当技術分野における様々な標準技法で精製してもよい。例えば、対象のTAT376またはTAT377に特異的な抗体を用いて、プロTAT376またはプロTAT377ポリペプチド、成熟TAT376または成熟TAT377ポリペプチド、あるいはプレTAT376またはプレTAT377ポリペプチドを、免疫親和性クロマトグラフィーで精製する。一般には、抗TAT376または抗TAT377ポリペプチド抗体を活性化クロマトグラフィー樹脂に共有結合することにより、免疫親和性カラムを構築する。
ポリクローナル免疫グロブリンを、硫酸アンモニウムを用いた沈殿化、または固定化プロテインA(Pharmacia LKB Biotechnology、米国ニュージャージー州ピスカタウェイ)における精製により免疫血清から調製する。同様に、硫酸アンモニウムによる沈殿化、または固定化プロテインAにおけるクロマトグラフィーにより、マウス腹水からモノクローナル抗体を調製する。部分的に精製された免疫グロブリンを、CnBr活性化SEPHAROSE(商標)(Pharmacia LKB Biotechnology)などのクロマトグラフィー樹脂に共有結合させる。製造会社の指示書に従って、抗体を樹脂に結合させ、樹脂をブロックし、派生樹脂を洗浄する。
この免疫親和性カラムは、可溶性のTAT376またはTAT377ポリペプチドを含む細胞から分画調製することにより、TAT376またはTAT377ポリペプチドの精製に使用される。この調製は、界面活性剤の添加による分画遠心法から得られる全細胞または細胞内画分の可溶化、あるいは当技術分野でよく知られるその他の方法に基づく。別法として、細胞が生育する培地に、シグナル配列を含む可溶性のTAT376またはTAT377ポリペプチドを有用な量で分泌させてもよい。
可溶性のTAT376またはTAT377ポリペプチドを含む調製液は、免疫親和性カラムに通され、TAT376またはTAT377ポリペプチドの選択吸着を起こす条件(例えば界面活性剤の存在する高イオン強度の緩衝液)下でカラムを洗浄する。その後、抗体/TAT376または抗体/TAT377ポリペプチド結合を阻害する条件(例えば、pH約2〜3などの低pH緩衝液、あるいは尿素またはチオシアン酸イオンなど高濃度のカオトロープ)下でカラムを溶出し、TAT376またはTAT377ポリペプチドを回収する。
上記の明細書は、当技術分野の技術者による本発明の実施を十分可能にするものであると考えられる。本発明は、記載された実施形態が本発明のある態様のわずか1つの実例を示すに過ぎないため、記載された概念により範囲に制限が与えられるのではなく、機能的に同等である任意の概念は本発明の範囲内にある。本明細書内の材料の記載は、本明細書内に記載された説明が、その最良の様態を含む本発明の任意の態様の実施を可能にするのに不十分なことを認めるものではなく、記載する特定の実例に対する請求項の範囲を制限するものであると解釈するべきではない。実際に、本明細書で記載されるものに加えて、本発明の様々な変更が、当技術分野の技術者には上記の説明により明白であり、添付の請求項の範囲に含まれる。
配列番号1がここで「DNA327307」と命名されたクローンである、TAT376cDNAのヌクレオチド配列(配列番号1)を示す。 配列番号2がここで「DNA327308」と命名されたクローンである、TAT377cDNAのヌクレオチド配列(配列番号2)を示す。 図1に示す配列番号1の翻訳領域の一つから誘導されたアミノ酸配列(配列番号3)を示す。 図2に示す配列番号2の翻訳領域の一つから誘導されたアミノ酸配列(配列番号4)を示す。 対応するプライマー、プローブ、増殖産物及び翻訳領域(ORF)とのASCL2 mRNA(GenBank受け入れ番号AF442769)のアラインメントを示す。エキソン物質が太線で、介在するイントロンが細線で、示されている。位置はGenbankの記録に対応する番号で示されている。 多数の大腸癌の例において染色体11P上に標準化したプローブセットの強度を示すプロット図である。 インサイツハイブリダイゼーションプローブの合成及び標識かを示す。(A)は、プライマー1061_P5/6を用いたASCL2に対するプローブ1061のネステッドPCRである。(B)は、プライマー1071_P7/8を用いたASCL2の5’領域に対するプローブ1071のネステッドPCRである。(C)、(D)及び(E)は、βアクチン(プライマー117_P3/4)のセンス(S)配列、及びASCL2(1071/HASAP)プローブのセンス(S)及びアンチセンス(AS)配列に対する33P標識したプローブのオートラジオグラムである。 結腸直腸腺癌と隣接する正常粘膜におけるASCL2(1071/HASAP)プローブの5’領域に対するアンチセンスインサイツハイブリダイゼーションを示す。明るい部分(BF)と暗い部分(DF)の画像は背景上にハイブリダイゼーションが無いことを示す。 ASCL2(1061/HASH2)プローブに対するアンチセンスインサイツハイブリダイゼーションを示す。(A)は、ヘマトキシリン及びエオシン染色を示す。(B)(C)、及び(D)は、それぞれ、代表的結腸直腸TMAにおける自己蛍光、βアクチンのアンチセンスハイブリダイゼーションホスフォイメージ、代表的結腸直腸TMAにおけるASCL2(HASH2)のアンチセンスハイブリダイゼーションホスフォイメージを示す。(E)及び(F)は、それぞれ、正常TMA(H2001−688)における自己蛍光及びASCL2(HASH2)ハイブリダイゼーションのホスフォイメージを示す。(G)、(H)及び(I)は、銀粒子として見られるASCL2(HASH2)ハイブリダイゼーションシグナルを示し、(G)は胎盤組織における絨毛外栄養膜細胞を、(H)は結腸直腸腺癌の新生物細胞集団を示す。(I)に示す正常な結腸直腸面膜にはシグナルは見られない。(BF:明るい部分、DF:暗い部分) 例としてHs.Scute_f/r/plを用いた定量RT−PCRのプライマー−プローブセット確証を示す。(A)では、PT−PCR産物の大きさと存在を4%のアガロースゲルでチェックした。RPL19基準遺伝子(増殖産物=68bp)は正常及び悪性組織に高い発現を示した。ASCL2(増幅産物=62bp)の悪性組織中の発現はそれよりも多かった。(B)は、ゲノムDNA(200ngから3.125ng)の8個の2倍段階希釈におけるRPL19及びASCL2プライマー−プローブセットの片対数増幅を示す。各2倍希釈につき、周期閾値(Ct)は1下降した。(C)では、基準及び実験プライマー−プローブセットの相対的効率を、対数入力RNA量に対してΔ(RPL19−ASCL2)Ctをプロッティングすることにより評価した。勾配は0.07に等しかった。 Aは、リアルタイムRT−PCRにより定量化した結腸直腸組織及び細胞系におけるASCL2(Hs.Scute_f/r/pl)の増加を示す。試料を基準遺伝子RPL19及び入手可能な場合は正常結腸直腸粘膜における発現に標準化した。或いは、症例及び細胞系(アスタリスクでマーク)をすべての正常な直腸結腸試料の平均ΔCtに標準化した。Bは、3つのプライマー−プローブセットをASCL2の異なる領域と比較した場合のΔΔCt値を示す。高い発現を示す細胞系(HCT15)、中程度の発現を示す細胞系(COLO205、JEG3)及び低い発現を示す細胞系(HCT116)のデータが示されており、データはRPL19に標準化されている。 GenbankでAF442769と同定されている既知の完全長遺伝子配列に対応するASCL2 mRNAを示す。完全長mRNAのスプライシングしていない転写物は、2つの翻訳領域(それぞれHASAP ORF及びHASH2 ORF)を有する2つのエキソンを含み、第一のエキソン内の第一の翻訳領域がHASAPと命名されたポリペプチドをコードし、第二のエキソン内の第二の翻訳領域がHASH2と命名されたポリペプチドをコードするとして同定されている。スプライシングしたmRNA転写物は、HASH2と命名されたポリペプチドをコードする完全長mRNA転写物の第一エキソン内のスプライスに相当する。 HASH2翻訳領域のPCRに基づくクローニングを示す。(A)から(D)は、臭化エチジウムで染色したガロースゲル(1.2%)を示し、(A)は、結腸直腸腺癌cDNAライブラリー(BD Clontech)及びHCT15cDNA由来の翻訳領域の増幅の1(R1)及び2(R2)回目を示し、(B)は327308.Xhol/HindIIIプライマーを用いた翻訳領域の増幅を示し、(C)は、ゲル精製に先立つ、粘着末端生成のための翻訳領域のHindIII及びXhol制限を示し、(D)は所望の挿入物の存在を確認するためのPstとの連結ベクターの制限を示し、(E)はCMVプロモーター、Kan遺伝子及びEGFPタグを有するpEGFP−N1ベクターのベクターマップを示す。 HASAP翻訳領域のPCRに基づくクローニングを示す。(A)から(D)は、臭化エチジウムで染色したガロースゲル(1.2%)を示し、(A)は、胎盤cDNAライブラリー(BD Clontech)及びHCT15cDNA由来の翻訳領域のネステッド増幅の1(R1)及び2(R2)回目を示し、(B)は327307.Xhol/HindIIIプライマーを用いた翻訳領域の増幅を示し、(C)は、ゲル精製に先立つ、粘着末端生成のための翻訳領域のHindIII及びXhol制限を示し、(D)は挿入物の存在を確認するためのSmalとの連結ベクターの制限を示す。 βアクチン及びASCL2(HASH2−N−R/R1)を対象としたノー残部ロットのオートラジオグラムを示す。(A)及び(B)はHCT15、DLD−1、JEG3及びHCT116由来の細胞系RNAのブロットを示し、(A)では、βアクチンプローブをすべてのレーンにハイブリダイズさせたところ、いずれのレーンもほぼ同じ強度の1本の帯を示し、(B)では、ASCL2(HASH2)プローブをハイブリダイズさせて1本の帯(1470bp)に示したとき、HCT15に対して最も強いシグナルを示し、DLD−1ではそれよりも強度が低く、JEG3とHCT116ではシグナルは確認できなかった。(C)は、ASCL2(HASH2)プローブを用いてハイブリダイズさせた政情組織RNAの市販のブロットを示す。胎盤及び小腸のみから得たRNAにおいて1470bpの帯域が明らかである。1は末梢血白血球、2は肺、3は胎盤、4は小腸、5は肝臓、6は腎臓を、7は脾臓を、8は胸腺を、9は大腸を、10は骨格筋を、11は心臓を、12は脳を示す。リボソームRNA28s及び18sの帯の分子量はそれぞれ4718及び1874bpであった。 HASAP翻訳領域のライブラリースクリーニングの結果を示す。(A)及び(B)は、社内cDNAライブラリーとHCT15 cDNAの初回のPCRに基づくスクリーニングの1(R1)及び2(R2)回目を示す。HCT15 cDNAとLIB687から翻訳領域を増幅し、分析に使用した。LIB380、正常胎盤>2.0kbp;LIB381、正常胎盤0.6−2.0kbp;LIB687、COLO205>2.0kbp;LIB688、COLO205 0.6−2.0kbp;LIB835、正常大腸>2.0kbp;LIB836、正常大腸0.6−2.0kbp。(C)は、HASAP−N−F/R3プローブを用いてハイブリダイズしたコロニーリフト由来のニトロセルロースフィルターのオートグラムを示す。(D)は、所望の挿入物の存在を確認するためのXbalを有する4つのクローニングしたベクターの制限を示す。 HASAP、HASH2及びc−Mycに対する抗体でFITC標識したHCT15細胞の蛍光強度によるり細胞数測定した細胞数のプロットを示す。各プロットに閾値を上回るポジティブな細胞の割合が見られた。免疫前結成及びウサギ免疫グロブリンはネガティブ対照郡に含まれていた。 結腸直腸癌細胞系由来の変性核タンパク質可溶化液のウエスタンブロットを示す。(A)は、タンパク質可溶化液のクマシーブルー染色を示し、分子量マーカー(シーブルー+2及びマーク12)はタンパク質の完全性及び等しい加重を示している。(B)、(C)、(D)及び(E)はウェスタンブロットに曝し、c−Myc、HASAP及びHASH2に対する抗体でプローブしたHyperfimlを示す。 ヒトASCL2mRNAとマウスMASH2へのゲノム領域5’との比較を示す。(A)及び(B)は開始/終止コドンの位置を示しており、3つの翻訳領域の疎水性親水性指標プロットが示されている。HASAP翻訳領域はマウスの対応する領域と38.2%のシンテニーを有する。

Claims (10)

  1. (a)図4(配列番号4)の何れか一に示されたアミノ酸配列をコードするDNA分子;
    (b)図2(配列番号2)の何れか一に示されたヌクレオチド配列;
    (c)図2(配列番号2)の何れか一に示されたヌクレオチド配列の完全長コード化領域;又は
    (d)(a)、(b)又は(c)の相補鎖;
    と少なくとも80%の核酸配列同一性を有するヌクレオチド配列を有する単離された核酸。
  2. (a)図4(配列番号4)の何れか一に示されたアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列;
    (b)図2(配列番号2)の何れか一に示されたヌクレオチド配列;
    (c)図2(配列番号2)の何れか一に示されたヌクレオチド配列の完全長コード化領域;又は
    (d)(a)、(b)又は(c)の相補鎖;
    を有する単離された核酸。
  3. (a)図4(配列番号4)の何れか一に示されたアミノ酸配列をコードする核酸;
    (b)図2(配列番号2)の何れか一に示されたヌクレオチド配列;
    (c)図2(配列番号2)の何れか一に示されたヌクレオチド配列の完全長コード化領域;又は
    (d)(a)、(b)又は(c)の相補鎖;
    にハイブリダイズする単離された核酸。
  4. ハイブリダイゼーションがストリンジェントな条件の下に起こる請求項3に記載の核酸。
  5. 少なくとも約5ヌクレオチド長である請求項3に記載の核酸。
  6. 請求項1ないし3のいずれか1項に記載の核酸を有する発現ベクター。
  7. 前記核酸が、ベクターで形質転換した宿主細胞により認識されるコントロール配列に作用可能に結合する、請求項6に記載の発現ベクター。
  8. 請求項7に記載の発現ベクターを含む宿主細胞。
  9. CHO細胞、大腸菌細胞又は酵母細胞である請求項8に記載の宿主細胞。
  10. ポリペプチド生成方法において、請求項8に記載の宿主細胞を、前記ポリペプチドの発現に適した条件下で培養し、前記ポリペプチドを細胞培養物から回収することを含む方法。
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