JP2006507332A - カロテノイドの製造方法 - Google Patents
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Abstract
本発明はカロテノイドの製造方法に関する。この方法は、一般式I[式中R1 = C1〜C6-アルキル]で表わされるジアルコキシジアルデヒドを、式IIで表わされるホスホニウム塩とダブルウィッティッヒ縮合で、または、式IIIで表わされるホスホナートとダブルウィッティッヒ-ホルナー縮合で反応させること[式中、式IIおよびIIIの置換基は互いに独立して次のとおり定義される:R2 = IV;R3はアリールを表わす;R4〜R6はC1〜C6-アルキルを表わし、X-は無機酸または有機酸のアニオン等価体を表わす]を特徴とする。
Description
本発明は、栄養補助食品、食品着色剤、飼料添加物として需要があるカロテノイド、例えばβ-カロテン、ゼアキサンチン、カンタキサンチン、アスタキサンチン、リコペン、クロセチンなどの調製方法に関する。
カロテノイドが、なかでもC15ホスホニウム塩(C15-P)と、対称C10ジアルデヒドとのダブルウィッティッヒ縮合(double Wittig condensation)により調製されることは知られている(Carotenoids, Vol. 2, page 89 et seq., Birkheuser Verlag, 1996)。
調製すべきカロテノイドの構造に応じて、以下のC15ホスホニウム塩(P1〜P5)を上記したウィッティッヒ反応で反応させることができる[式中、Phはフェニル基であり、X-は無機酸または有機酸のアニオン等価体である]。
サフラン色顔料クロセチンの前駆体としてのクロセチンジエステルの合成においては、C5エステルホスホニウム塩(C5-P)またはC5エステルホスホナート(C5-EP)をそれぞれC10ジアルデヒドとウィッティッヒ(Wittig)またはウィッティッヒ-ホルナー(Wittig-Horner)縮合させる(Angew. Chem. 72, 911 (1960);Chem. Ber. 93, 1349 (1960))。
これらの合成工程に必要とされるC10ジアルデヒドは結晶性の物質であって、多くの溶媒に少ししか溶けない。それゆえC10ジアルデヒドを用いたカロテノイド合成は、通常、溶媒または共溶媒としての塩素化炭化水素例えばジクロロメタンやトリクロロメタン中で、あるいは、オキシラン中で行われなければならない(Carotenoids, Vol. 2, pages 92 et seq.; Birkheuser-Verlag, 1996)。食品添加物を調製するのにそのような溶媒を使用することは、毒性の観点から好ましくないものである。
このため、これらの工業的製法を、例えば低級アルコールのような毒性の観点からはより好ましい溶媒中で行うという各種の方法が、なかでもEP-A-0 733 619およびEP-A-0 908 449において、これまでに提案されている。しかしながら、これらの方法の全てにおいては、結晶性C10ジアルデヒドの調製と単離および取扱いと計量がなお必要とされている。固体のハンドリングはそれでも高い設備コスト、つまり高い製造コストを伴なうものである。
この欠点を克服する1つの可能性がEP-A-0 509 273に開示されている。
該明細書に記載されている方法は、C10ジアルデヒドの合成等価体として、式(1)で表わされる2,5-ジヒドロフランを用いるもので、これは油の形態にあり、2,5-ジアルコキシ-2,5-ジヒドロフラン(2)とアルキルプロペニルエーテル(3)を反応させることにより調製される。
しかしながらこの方法は以下の欠点をもつ。記載されている(1)の収率は理論値の38〜56%であるが、これは工業的実施には不十分である。また他の文献によれば、類似の方法では、ビスアルキル化生成物(1)が低収率でしか得られないことが確認されている(J.gen. Chem. USSR, 32, 4, 1082 f. (1962);Tetrahedron Lett. 42, 10, 2003 f. (2001))。カロテノイド合成を示す唯一の例は、(1)を反応させてβ-カロテンを総合収率52%で得る反応であった。(1)の入手可能性がよくないことと、収率が低いことから、この方法は工業的にもまた経済的にも魅力あるものではない。
従って本発明の課題は、上述した先行技術の欠点をもたないカロテノイドの調製方法を提供することである。
[式中、R1は、C1〜C6-アルキルである]
で表わされるジアルコキシジアルデヒドを、ダブルウィッティッヒ縮合で以下の式IIで表わされるホスホニウム塩と、または、ダブルウィッティッヒ-ホルナー縮合で以下の式IIIで表わされるホスホナートと
で表わされるジアルコキシジアルデヒドを、ダブルウィッティッヒ縮合で以下の式IIで表わされるホスホニウム塩と、または、ダブルウィッティッヒ-ホルナー縮合で以下の式IIIで表わされるホスホナートと
であり;
R3は、アリールであり;
R4〜R6は、C1〜C6-アルキルであり;
X-は、無機酸または有機酸のアニオン等価体である]
反応させることを含んでなる、カロテノイドの調製方法により達成された。
R3は、アリールであり;
R4〜R6は、C1〜C6-アルキルであり;
X-は、無機酸または有機酸のアニオン等価体である]
反応させることを含んでなる、カロテノイドの調製方法により達成された。
R1、R4〜R6に対して記載されているアルキル基は、分岐もしくは非分岐C1〜C6-アルキル鎖であって、例えばメチル、エチル、n-プロピル、1-メチルエチル、n-ブチル、1-メチルプロピル、2-メチルプロピル、1,1-ジメチルエチル、n-ペンチル、1-メチルブチル、2-メチルブチル、3-メチルブチル、2,2-ジメチルプロピル、1-エチルプロピル、n-ヘキシル、1,1-ジメチルプロピル、1,2-ジメチルプロピル、1-メチルペンチル、2-メチルペンチル、3-メチルペンチル、4-メチルペンチル、1,1-ジメチルブチル、1,2-ジメチルブチル、1,3-ジメチルブチル、2,2-ジメチルブチル、2,3-ジメチルブチル、3,3-ジメチルブチル、1-エチルブチル、2-エチルブチル、1,1,2-トリメチルプロピル、1,2,2-トリメチルプロピル、1-エチル-1-メチルプロピル、1-エチル-2-メチルプロピルなどがある。好ましいアルキル基はC1〜C4-アルキル基であり、より好ましくはメチル、エチル、n-プロピル、および1-メチルエチルであり、最も好ましくはメチルおよびエチルである。
R3に対しての用語アリールは、ホスフィンおよびホスホニウム塩で存在する通常のアリール基を意味し、例えばフェニル、トリル、ナフチルであり、これらは各場合置換されていてもよく、好ましくはフェニルである。
基X-は、無機酸または有機酸、好ましくは強無機酸または有機酸のアニオン等価体である。
用語の強酸には、ハロゲン化水素酸(特に塩化水素酸および臭化水素酸)、硫酸、リン酸、スルホン酸、ならびに比肩できる解離度をもつ他の無機酸または有機酸が含まれる。この関連において強有機酸には、C1〜C6-アルカン酸も含まれる。
特に好ましくは、記載しておくべきアニオンは、塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸、ギ酸、酢酸、およびスルホン酸からなる群から選択される酸のアニオンである。特に好ましいのは、Cl-、Br-、CnH2n+1-SO3 -(式中 n = 1〜4)、Ph-SO3 -、p-Tol-SO3 -、またはCF3-SO3 -である。
であり;
Phは、フェニルであり;
Halは、ハロゲン化物、好ましくはCl-またはBr-である]
で表わされるホスホニウム塩と反応させることを含んでなる。
Phは、フェニルであり;
Halは、ハロゲン化物、好ましくはCl-またはBr-である]
で表わされるホスホニウム塩と反応させることを含んでなる。
ウィッティッヒ反応またはウィッティッヒ-ホルナー反応は一般に、この反応に対して記載されている条件(Carotenoids, Vol, 2, pages 79 et seq., Birkheuser-Verlag, 1996と、そこに引用されている文献、およびEP-A-0 733 619)下で行われる。この反応は例えば、アルカリ金属もしくはアルカリ土類金属アルコキシド、好ましくは対応するアルカノール溶液と組み合せた、不活性有機溶媒、例えば塩素化炭化水素または環状もしくは開鎖エーテルからなる系中で行うことができる。この場合も1つの代りの可能性としては、低級アルカノールと組み合せた、潜在の塩基および共溶媒としてのオキシラン好ましくは1,2-エポキシブタンを、それ自体公知の方法で用いることである。
ウィッティッヒ縮合に慣用の全ての塩基、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、または水酸化リチウムのようなアルカリ金属水酸化物;水素化ナトリウムまたは水素化カリウムのようなアルカリ金属水素化物を塩基として用いることができる。
しかしながら、所望最終生成物が若干溶解可能である溶媒を用いるのが好ましいが、ウィッティッヒ反応の副生成物として生じるトリフェニルホスファンオキシドは容易に溶解する。
この目的に適しているのは特に低級アルコール好ましくはC1〜C6アルコール例えばメタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、またはtert-ブタノール、特に好ましくはメタノールである。この場合に有利に使用される塩基はアルカリ金属もしくはアルカリ土類金属アルコキシド、好ましくはNaメトキシドである。トリフェニルホスフィンオキシドおよび無機塩は、その混合物を水で希釈することにより除去することができる。
縮合は通常温度-30℃〜+50℃、好ましくは-20℃〜+30℃、特に好ましくは-10℃〜+25℃、さらに好ましくは0℃〜+20℃で行われる。
この関連において、両出発化合物(ホスホニウム塩とアルデヒド)を溶媒中に導入し、塩基をそれに加えることができ、あるいは、ホスホニウム塩の溶液に塩基を加え、そのあと初めてアルデヒド溶液を加えることもできる。
用いる塩基の量は通常、用いるホスホニウム塩IIまたはホスホナートIII 1モルあたり0.8〜5モル、好ましくは1〜3モルである。
ウィッティッヒまたはウィッティッヒ-ホルナー反応のあと、生成物は公知の方法で、温度70〜120℃、好ましくは使用する溶媒の沸点において数時間加熱することにより、全て(E)体に熱異性化し、濾過により高収率、高純度で単離することができる。
は、ヘキサアルコキシ誘導体Vから出発する工業的なC10ジアルデヒド合成において、一連のアセタールの開裂と脱離で中間体として生じるが、通常単離されない(Carotenoids, Vol. 2, pages 117/118 and 301/302, Birkheuser Verlag, 1996;CH Pat. 321 106)。反応条件を適切に選ぶことにより、この工程は、Iの中間体段階で停止させることができる。Iは、蒸留により単離し、精製することができる(J.gen. Chem. USSR, 34, 1, 64 f. (1964))。
式Iのジアルコキシジアルデヒドは容易に溶解する、安定な物質であり、また液体または油の形態にあるので、C10ジアルデヒド固体の難儀な取り扱いがなくて済む。Iを用いるさらなる利点は、C10ユニットを調製するための工程が、1つの合成工程および1つの固体除去工程だけ短くなることである。
驚くべきことに、式I好ましくは式Iaの中間体は、全ての上記したウィッティッヒ縮合およびウィッティッヒ-ホルナー縮合に著しく適していることが判明した。この場合生じる中間体は、次の一般式IVで表わされるアルコキシ誘導体である。
これらの中間体段階のものは、所望なら単離することができる。しかしながら、所望ポリエンへの脱離は、好ましくはその反応条件下で、好ましくは反応温度を上げることにより進めることができる。
であり、
R6は、C1〜C6-アルキル]
で表わされる化合物にも関する。
R6は、C1〜C6-アルキル]
で表わされる化合物にも関する。
である]
で表わされる化合物である。
で表わされる化合物である。
以下の実施例は、本発明の製法をさらに詳細に説明することを意図したものである。
実施例 1:アスタキサンチンの調製
アスタキサンチンC15ホスホニウム塩 P5(X- = ブロミド)71.9g(0.125モル)をメタノール150mLの中に導入した。0℃において、C10ジアルデヒドIa 11.4g(純度95%;0.0475モルに相当)を加えた。次にナトリウムメトキシドの30%濃度メタノール溶液24.8g(= NaOMe 0.137モル)を0℃において1時間かけて滴下で加え、この混合物を0℃においてさらに1時間撹拌し、そのあと室温まで上昇させた。酢酸1.5g(25ミリモル)の水(115mL)溶液を滴下で加え、この混合物を還流(凡そ75℃)まで加熱し、そのあと還流下に20時間撹拌した。これを室温まで至らしめ、その結晶を濾過分離した。この濾過ケークを、各回60:40(v/v)メタノール/水混合物100mLで2回、熱水(100mL)で1回、メタノール(100mL;25℃)で1回洗い、50℃の真空乾燥オーブンで乾燥させた。
アスタキサンチンC15ホスホニウム塩 P5(X- = ブロミド)71.9g(0.125モル)をメタノール150mLの中に導入した。0℃において、C10ジアルデヒドIa 11.4g(純度95%;0.0475モルに相当)を加えた。次にナトリウムメトキシドの30%濃度メタノール溶液24.8g(= NaOMe 0.137モル)を0℃において1時間かけて滴下で加え、この混合物を0℃においてさらに1時間撹拌し、そのあと室温まで上昇させた。酢酸1.5g(25ミリモル)の水(115mL)溶液を滴下で加え、この混合物を還流(凡そ75℃)まで加熱し、そのあと還流下に20時間撹拌した。これを室温まで至らしめ、その結晶を濾過分離した。この濾過ケークを、各回60:40(v/v)メタノール/水混合物100mLで2回、熱水(100mL)で1回、メタノール(100mL;25℃)で1回洗い、50℃の真空乾燥オーブンで乾燥させた。
最終重量:アスタキサンチン23.5g = 収率83.0%(使用したIaを基準);HPLC純度:99.17%。
実施例 2:上記アスタキサンチン中間体段階品IVeの単離
アスタキサンチンC15ホスホニウム塩 P5(X- = ブロミド)71.9g(0.125モル)を塩化メチレン250mLに溶解させた。0℃において、C10ジアルデヒドIa 11.4g(純度95%;0.0475モルに相当)を加えた。次にナトリウムエトキシドの20%濃度エタノール溶液46.8g(NaOEt 0.137モル)を0℃において1時間かけて滴下で加え、この混合物を0℃において1時間撹拌した。このあと酢酸1.5gの水(250mL)溶液を滴下で加えた。この有機相を分離した。水相は塩化メチレン40mLで2回逆抽出した。合わせた有機相を各回水125mLで2回洗い、硫酸ナトリウムで脱水させ、ロータリーエバポレーターで濃縮した。真っ赤なペースト状の残留物をシリカゲル上のフラッシュクロマトグラフィー(溶離液:シクロヘキサン/メチル tert-ブチルエーテル = 4:1〜1:1)により精製した。
アスタキサンチンC15ホスホニウム塩 P5(X- = ブロミド)71.9g(0.125モル)を塩化メチレン250mLに溶解させた。0℃において、C10ジアルデヒドIa 11.4g(純度95%;0.0475モルに相当)を加えた。次にナトリウムエトキシドの20%濃度エタノール溶液46.8g(NaOEt 0.137モル)を0℃において1時間かけて滴下で加え、この混合物を0℃において1時間撹拌した。このあと酢酸1.5gの水(250mL)溶液を滴下で加えた。この有機相を分離した。水相は塩化メチレン40mLで2回逆抽出した。合わせた有機相を各回水125mLで2回洗い、硫酸ナトリウムで脱水させ、ロータリーエバポレーターで濃縮した。真っ赤なペースト状の残留物をシリカゲル上のフラッシュクロマトグラフィー(溶離液:シクロヘキサン/メチル tert-ブチルエーテル = 4:1〜1:1)により精製した。
粘稠な赤色油状物(H-NMR、C-NMR、IR分析によると、IVeを立体異性体の混合物として含んでいる)27.05g(理論値の86.3%)を得た。E1 1(CHCl3): 335(260nm);468(351nm)。
実施例 3:ゼアキサンチンの調製
ゼアキサンチンC15ホスホニウム塩 P3(X- = クロリド)14.9g(0.0288モル)をエタノール63mLに溶解させた。まずC10ジアルデヒドIa 2.85g(純度95%;0.012モルに相当)、そのあとブチレンオキシド(1,2-エポキシブタン)16.6gを加えた。この混合物をこのあと還流下に20時間撹拌した。得られた懸濁液を0℃まで冷まし、この温度で1時間撹拌した。この結晶を吸引しながら濾過分離した。その濾過ケークを、各回エタノール50mLで3回洗い、真空乾燥オーブンで乾燥させた。
ゼアキサンチンC15ホスホニウム塩 P3(X- = クロリド)14.9g(0.0288モル)をエタノール63mLに溶解させた。まずC10ジアルデヒドIa 2.85g(純度95%;0.012モルに相当)、そのあとブチレンオキシド(1,2-エポキシブタン)16.6gを加えた。この混合物をこのあと還流下に20時間撹拌した。得られた懸濁液を0℃まで冷まし、この温度で1時間撹拌した。この結晶を吸引しながら濾過分離した。その濾過ケークを、各回エタノール50mLで3回洗い、真空乾燥オーブンで乾燥させた。
最終重量:ゼアキサンチン5.52g = 理論値の81%(使用したIaを基準)。
Claims (7)
- X-が、ハロゲン化水素酸、硫酸、リン酸、ギ酸、酢酸、およびスルホン酸からなる群から選択される酸のアニオン等価体である、請求項1に記載の方法。
- X-が、Cl-、Br-、CnH2n+1-SO3 -[式中nは1〜4である]、Ph-SO3 -、p-Tol-SO3 -、またはCF3-SO3 -である、請求項2に記載の方法。
- 前記反応を、塩基としてアルカリ金属アルコキシドまたはアルカリ土類金属アルコキシドを用いてC1〜C6アルコール中で行う、請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
- 前記反応生成物を全て(E)体に熱的に異性化し、そして濾過により単離する、請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
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