JP2006500058A - Acc遺伝子 - Google Patents

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Abstract

本発明は、微生物によるカロテノイドの産生を増加させる方法において有用な遺伝子に関する。カロテノイド、アスタキサンチンは、動物、藻類、及び微生物のような多様な生物に分布している。それは、活性酸素種に対する強力な抗酸化特性を有する。アスタキサンチンは、動物に独特の橙〜赤色の着色を賦与し、市場における消費者へのアピールに貢献するため、特に、サケのような養殖魚の産業において、着色試薬として使用されている。

Description

本発明は、微生物によるカロテノイドの産生を増加させる方法において有用な遺伝子に関する。
カロテノイド、アスタキサンチンは、動物、藻類、及び微生物のような多様な生物に分布している。それは、活性酸素種に対する強力な抗酸化特性を有する。アスタキサンチンは、動物に独特の橙〜赤色の着色を与え、市場における消費者へのアピールに貢献するため、特に、サケのような養殖魚の産業において、着色試薬として使用されている。
例えばファフィア・ロドチーマ(Phaffia rhodozyma)の、カロテン生成経路における最初の工程のうちの一つは、2個のアセチル-CoA分子の縮合である。アセチル-CoAは、脂肪酸生合成に関与している酵素のうちの一つ、アセチル-CoAカルボキシラーゼの基質でもある。
一つの局面において、本発明は、酵素アセチル-CoAカルボキシラーゼをコードする遺伝子を含む新規のDNA断片を提供する。
より具体的には、本発明は、アセチル-CoAカルボキシラーゼ遺伝子のオープンリーディングフレームと共にプロモーター及びターミネーターのような制御領域を含有するDNAを提供する。
本発明は、P.ロドチーマにおけるアセチル-CoAカルボキシラーゼをコードするDNA断片を提供する。該DNAは、5'及び3'の非翻訳領域内の短い断片の間に隣接しているオープンリーディングフレームのみを含有するcDNA、並びにP.ロドチーマにおけるアセチル-CoAカルボキシラーゼ遺伝子の発現のために必要なプロモーター及びターミネーターのような制御配列も含有するゲノムDNAを意味する。
従って、本発明は、以下からなる群より選択される核酸分子を含む、単離されたポリヌクレオチドに関する:
(a)配列番号:3のポリペプチドの少なくとも成熟型をコードする核酸分子;
(b)配列番号:2のコード配列を含む核酸分子;
(c)遺伝暗号の結果ヌクレオチド配列が変性して(a)又は(b)のヌクレオチド配列となる、核酸分子;
(d)(a)〜(c)のヌクレオチドによりコードされるポリペプチドのアミノ酸配列の1個又は数個のアミノ酸の置換、欠失、及び/又は付加によって、(a)〜(c)のポリヌクレオチドによりコードされるポリペプチドに由来するポリペプチドをコードする核酸分子;
(e)(a)又は(b)の核酸分子によりコードされるポリペプチドのアミノ酸配列と56.3%以上の同一性を有する配列を有するポリペプチドに由来するポリペプチドをコードする、核酸分子;
(f)(a)〜(e)のいずれかの核酸分子によりコードされかつアセチル-CoAカルボキシラーゼ活性を有するポリペプチドの断片又はエピトープ保有部分を含む、核酸分子;
(g)配列番号:4、5、及び6のプライマーを使用してファフィア又はキサントフィロミセス(Xanthophylomyces)の核酸ライブラリーより増幅された核酸分子の配列を有するポリヌクレオチドを含む、核酸分子;
(h)アセチル-CoAカルボキシラーゼ活性を有するポリペプチドをコードする核酸分子であって、該ポリペプチドが(a)〜(g)のいずれかによりコードされるポリペプチドの断片である、核酸分子;
(i)(a)〜(d)のいずれかのポリヌクレオチドの少なくとも15ヌクレオチドを含む核酸分子;
(j)アセチル-CoAカルボキシラーゼ活性を有するポリペプチドをコードする核酸分子であって、該ポリペプチドが、(a)〜(h)のいずれかの核酸分子によりコードされるポリペプチドに対して作製された抗体により認識される、核酸分子;
(k)(a)〜(j)のいずれかの核酸分子の配列を有するプローブを用いたストリンジェントな条件の下での適切なライブラリーのスクリーニングにより入手可能であり、かつアセチル-CoAカルボキシラーゼ活性を有するポリペプチドをコードする、核酸分子;並びに
(l)(a)〜(k)のいずれかの核酸分子とストリンジェントな条件の下でハイブリダイズする相補鎖を有し、かつアセチル-CoAカルボキシラーゼ活性を有するポリペプチドをコードする核酸分子。
「遺伝子」、「ポリヌクレオチド」、「核酸配列」、「ヌクレオチド配列」、「DNA配列」、又は「核酸分子」という用語は、本明細書において使用されるように、ヌクレオチド、リボヌクレオチド又はデオキシリボヌクレオチドのいずれかの任意の長さのポリマー型をさす。この用語は、分子の一次構造のみをさす。
従って、この用語は、二本鎖及び一本鎖のDNA及びRNAを含む。それは、既知の型の修飾、例えば、メチル化、天然に存在するヌクレオチドのうちの1つ又は複数のアナログによる「caps」置換も含む。好ましくは、本発明のDNA配列は、前記定義のポリペプチドをコードするコード配列を含む。
「コード配列」とは、適切な制御配列の調節下に置かれた場合に、mRNAへ転写され、かつ/又はポリペプチドへ翻訳されるヌクレオチド配列である。コード配列の境界は、5'末端の翻訳開始コドン及び3'末端の翻訳終止コドンにより決定される。コード配列には、以下に制限はされないが、mRNA、cDNA、組換えヌクレオチド配列、又はゲノムDNAが含まれ得、ある種の状況下ではイントロンも存在し得る。配列番号:1は、P.ロドチーマからのアセチル-CoAカルボキシラーゼ遺伝子のコード配列にイントロン配列が挿入されているゲノムDNAを示す。
一般に、遺伝子は、相互に異なる機能を有する数個の部分からなる。真核生物において、対応するタンパク質をコードする遺伝子は、リボゾームRNA(rRNA)、核内低分子RNA(snRNA)、及びトランスファーRNA(tRNA)のための遺伝子とは異なる未熟メッセンジャーRNA(プレmRNA)へと転写される。RNAポリメラーゼII(PolII)が、この転写事象において中心的な役割を果たすが、PolIIは、プロモーター及び上流活性化配列(UAS)を含有する上流領域をカバーしているシスエレメント及びトランス作用タンパク質因子なしに単独で転写を開始させることはできない。まず、数個の基本タンパク質成分からなる転写開始複合体が、発現される遺伝子の5'隣接領域内のプロモーター配列を認識する。この事象において、熱ショック応答又は栄養飢餓への適応等のような何らかの特異的制御の下で発現される遺伝子の場合には、いくつかの付加的な参加因子が必要とされる。そのような場合には、プロモーター配列の周囲の5'非翻訳上流領域にUASが存在することが必要とされ、いくつかの正又は負の制御タンパク質がUASを認識し、それに結合する。転写開始複合体のプロモーター配列との結合の強さは、プロモーターの周囲のトランス作用因子のそのような結合により影響を受け、これが転写活性の制御を可能にする。
リン酸化による転写開始複合体の活性化の後、転写開始複合体は、転写開始部位から転写を開始させる。転写開始複合体のいくつかの部分が、伸長複合体として、プロモーター領域から遺伝子の3'方向へと解離し(この工程はプロモータークリアランス事象と呼ばれる)、その伸長複合体が、遺伝子の3'隣接下流領域に位置する終結配列に到達するまで転写を継続する。このようにして生成したプレmRNAは、転写開始部位にほぼ相当するキャップ部位へのキャップ構造の付加により、そして3'隣接下流領域に位置するポリAシグナルへのポリAストレッチの付加により、核内で修飾される。次に、イントロン構造がコード領域から除去され、エキソン部分が組み合わせられ、対応するタンパク質の一次アミノ酸配列に相当する配列を有するオープンリーディングフレームが生じる。成熟mRNAが生成するこの修飾は、安定的な遺伝子発現のために必要である。一般に、cDNAは、この成熟mRNA配列から逆転写されるDNA配列に相当する。それは、成熟mRNAを鋳型として使用することにより、ウイルス種に由来する逆転写酵素によって、実験的に合成され得る。
真核生物に由来する遺伝子を発現させるためには、cDNAが大腸菌のための発現ベクターへとクローニングされる手法が、しばしば使用される。これは、イントロン構造の特異性が生物間で異なるという事実及び他種からのイントロン配列を認識する能力の欠如に起因する。実際、原核生物は、自己の遺伝的背景においてイントロン構造を有していない。酵母ですら、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cereviciae)が属する子嚢菌類(Ascomycetes)と、P.ロドチーマが属する担子菌類(Basidiomycetes)とでは遺伝的背景が異なり、例えば、P.ロドチーマからのアクチン遺伝子のイントロン構造は、子嚢菌酵母であるS.セレビシエによっては認識もスプライシングもされない。
いくつかの種類の遺伝子のイントロン構造は、その遺伝子発現の制御に関与しているようである。イントロン構造がそのような自己の遺伝子発現の制御に関与している目的の遺伝子の自己クローニングの場合には、イントロンを有するゲノム断片を使用することが重要であるかもしれない。
株改良研究に遺伝子工学法を適用するためには、転写及び翻訳のような事象における遺伝学的メカニズムを研究することが必要である。遺伝学的メカニズムを研究するためには、そのUAS、プロモーター、イントロン構造、及びターミネーターのような遺伝子配列を決定することが重要である。
本発明によって、5'及び3'の隣接領域並びにイントロン構造を含んでいるP.ロドチーマからのアセチル-CoAカルボキシラーゼ(ACC)遺伝子をコードする遺伝子が決定された。
本発明は、遺伝暗号の縮重により、配列番号:2のヌクレオチド配列(及びその一部)のうちの一つと異なっており、かつまた、配列番号:2のヌクレオチド配列によりコードされるものと同じアセチル-CoAカルボキシラーゼをコードするポリヌクレオチドをさらに包含する。さらに、本発明のポリヌクレオチドは、配列番号:3のアミノ酸配列を有するタンパク質をコードするヌクレオチド配列を有する。さらなる態様において、本発明のポリヌクレオチドは、配列番号:3のアミノ酸配列と実質的に相同な全長P.ロドチーマのタンパク質をコードする。
さらに、アミノ酸配列の変化をもたらすDNA配列多型が、集団(例えば、P.ロドチーマ集団)内に存在し得ることが、当業者により認識されるであろう。アセチル-CoAカルボキシラーゼ遺伝子におけるそのような遺伝的多型は、天然の変動により集団内の個体間に存在するかもしれない。
本明細書において使用される「遺伝子」及び「組換え遺伝子」という用語は、アセチル-CoAカルボキシラーゼ、好ましくはP.ロドチーマからのアセチル-CoAカルボキシラーゼをコードするオープンリーディングフレームを含む核酸分子をさす。
そのような天然の変動は、典型的には、アセチル-CoAカルボキシラーゼ遺伝子のヌクレオチド配列の1〜5%の変化をもたらし得る。天然の変動の結果であり、かつアセチル-CoAカルボキシラーゼの機能的活性を改変させないそのようなヌクレオチドの変動及びその結果のアセチル-CoAカルボキシラーゼにおけるアミノ酸多形は、いずれも、全て、本発明の範囲内に含まれるものとする。
本発明のアセチル-CoAカルボキシラーゼcDNAの天然バリアント及び非P.ロドチーマ類似体に相当するポリヌクレオチドは、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件の下で、標準的なハイブリダイゼーション技術に従い、本発明のポリヌクレオチド又はその一部をハイブリダイゼーションプローブとして使用して、本明細書に開示されたP.ロドチーマのアセチル-CoAカルボキシラーゼポリヌクレオチドとの相同性に基づき単離され得る。従って、もう一つの態様において、本発明のポリヌクレオチドは、少なくとも15ヌクレオチド長である。好ましくは、それは、本発明のポリヌクレオチド、例えば、配列番号:2のヌクレオチド配列を含む核酸分子とストリンジェントな条件の下でハイブリダイズする。その他の態様において、核酸は、少なくとも20、30、50、100、250ヌクレオチド長、又はそれ以上である。「ストリンジェントな条件の下でハイブリダイズする」という用語は、前記定義のものであり、相互に少なくとも60%同一のヌクレオチド配列が典型的には相互にハイブリダイズし続けるようなハイブリダイゼーション及び洗浄の条件を記載するものである。好ましくは、その条件は、少なくとも約65%又は70%、より好ましくは少なくとも約75%又は80%、さらに好ましくは少なくとも約85%、90%、もしくは95%、又はそれ以上相互に同一の配列が、典型的には相互にハイブリダイズし続けるようなものである。好ましくは、配列番号:2の配列とストリンジェントな条件の下でハイブリダイズする本発明のポリヌクレオチドは、天然に存在する核酸分子に相当する。
本発明において、ポリヌクレオチド配列は、配列番号:2、及び配列番号:2との特異的結合を同定するのに十分なストリンジェントな条件の下で配列番号:2とハイブリダイズするポリヌクレオチド配列を有するその断片を含む。例えば、以下のハイブリダイゼーション及び洗浄の条件の任意の組み合わせが、必要とされる特異的結合を達成するために使用され得る。
高ストリンジェントなハイブリダイゼーション:6×SSC;0.5%SDS、100μg/ml変性サケ精子DNA、50%ホルムアミド、42℃で温和に振とうしながら一晩インキュベートする。
高ストリンジェントな洗浄:室温で15分間、2×SSC、0.5%SDSで1回洗浄した後、室温で15分間、0.1×SSC、0.5%SDSでもう1回洗浄する。
低ストリンジェントなハイブリダイゼーション:6×SSC、0.5%SDS、100μg/ml変性サケ精子DNA、50%ホルムアミド、37℃で温和に振とうしながら一晩インキュベートする。
低ストリンジェントな洗浄:室温で15分間、0.1×SSC、0.5%SDSで1回洗浄する。
中程度にストリンジェントな条件は、上記のようなハイブリダイゼーション反応が起こる温度及び/又は洗浄条件を変動させることにより入手され得る。本発明において、P.ロドチーマからのアセチル-CoAカルボキシラーゼ遺伝子に対するアンチセンス活性を定義するためには、高ストリンジェントなハイブリダイゼーション及び洗浄の条件を使用することが好ましい。
「相同性」という用語は、機能的かつ/又は構造的に等価であるそれぞれの核酸分子又はコードされるタンパク質を意味する。前記の核酸分子に相同であり、該核酸分子の誘導体である核酸分子は、例えば、同じ生物学的機能を有する、特に、同一又は実質的に同一の生物学的機能を有するタンパク質をコードする修飾を表す該核酸分子の変動である。それらは、他の植物の変種もしくは種からの配列のような天然に存在する変動、又は変異であり得る。これらの変異は、天然にも存在し得るし、又は変異誘発技術によっても入手され得る。対立遺伝子変動は、天然に存在する対立遺伝子バリアントであってもよいし、合成的に作製されたバリアント又は遺伝学的に工作されたバリアントであってもよい。構造的等価物は、例えば、該ポリペプチドの抗体との結合を試験することにより同定され得る。構造的等価物は、類似した免疫学的特徴を有しており、例えば、類似したエピトープを含む。
本明細書において使用される「天然に存在する」核酸分子とは、自然界に存在するヌクレオチド配列を有する(例えば、天然タンパク質をコードする)RNA又はDNAの分子をさす。好ましくは、ポリヌクレオチドは、天然のP.ロドチーマのアセチル-CoAカルボキシラーゼをコードする。
集団内に存在し得るアセチル-CoAカルボキシラーゼ配列の天然に存在するバリアントに加え、アセチル-CoAカルボキシラーゼをコードするポリヌクレオチドのヌクレオチド配列への変異によって変化が導入され得、それによって、アセチル-CoAカルボキシラーゼの機能的能力を改変することなく、コードされるアセチル-CoAカルボキシラーゼのアミノ酸配列の変化がもたらされ得ることを、熟練した当業者はさらに認識するであろう。例えば、「非必須」アミノ酸残基におけるアミノ酸置換をもたらすヌクレオチド置換が、アセチル-CoAカルボキシラーゼをコードするポリヌクレオチド、例えば配列番号:2の配列に作成され得る。「非必須」アミノ酸残基とは、該アセチル-CoAカルボキシラーゼの活性を改変することなく、アセチル-CoAカルボキシラーゼのうちの一つの野生型配列から改変され得る残基であり、「必須」アミノ酸残基とは、アセチル-CoAカルボキシラーゼ活性に必要とされるものである。しかしながら、その他のアミノ酸残基(例えば、アセチル-CoAカルボキシラーゼ活性を有するドメインにおいて保存されていないか又は半保存されているもの)も、活性にとって不可欠でないかもしれず、アセチル-CoAカルボキシラーゼ活性を改変することなく改変され得る可能が高い。
従って、本発明は、アセチル-CoAカルボキシラーゼ活性にとって不可欠でないアミノ酸残基の変化を含有するアセチル-CoAカルボキシラーゼをコードするポリヌクレオチドに関する。そのようなアセチル-CoAカルボキシラーゼは、配列番号:3に含有されている配列とアミノ酸配列が異なっているが、本明細書に記載されたアセチル-CoAカルボキシラーゼ活性を保持している。そのポリヌクレオチドは、配列番号:3のアミノ酸配列と少なくとも約60%同一のアミノ酸配列を含み、アセチル-CoAカルボキシラーゼ活性を有するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含み得る。好ましくは、核酸分子によりコードされるタンパク質は、配列番号:3の配列と少なくとも約60〜65%同一、より好ましくは配列番号:3の配列のうちの一つと少なくとも約60〜70%同一、さらに好ましくは配列番号:3の配列と少なくとも約70〜80%、80〜90%、90〜95%相同、最も好ましくは配列番号:3の配列と少なくとも約96%、97%、98%、又は99%同一である。
二つのアミノ酸配列(例えば、配列番号:3の配列のうちの一つ及びその変異型)、又は二つの核酸の相同率を決定するためには、配列が最適な比較のため整列化される(例えば、他方のタンパク質又は核酸との最適な整列化のため、一方のタンパク質又は核酸の配列にギャップが導入され得る)。次いで、対応するアミノ酸位置又はヌクレオチド位置におけるアミノ酸残基又はヌクレオチドが比較される。一方の配列(例えば、配列番号:2又は3の配列のうちの一つ)におけるある位置が、他方の配列(例えば、選択された配列の変異型)における対応する位置と同じアミノ酸残基又はヌクレオチドによって占められている場合には、その分子は、その位置において相同である(即ち、本明細書において使用されるように、アミノ酸又は核酸の「相同性」は、アミノ酸又は核酸の「同一性」と等価である)。二つの配列間の相同率は、それらの配列が共有する同一位置の数の関数である(即ち、相同%=同一位置の数/全位置数×100)。相同性は、Blast2.0(Altschul, Nuc.Acid.Res., 25, 3389-3402, 1997)のようなコンピュータプログラムによって決定され得る。本発明において、GENETYX-SV/RCソフトウェア(Software Development Co.,Ltd., Tokyo, Japan)が、そのような相同性分析ソフトウェアとしてデフォルトアルゴリズムを使用することにより使用される。このソフトウェアは、分析アルゴリズムのためリップマン-ピアソン(Lipman-Pearson)の方法を使用する。
配列番号:3のアミノ酸配列を有するタンパク質に相同なアセチル-CoAカルボキシラーゼをコードする核酸分子は、1つ又は複数のアミノ酸の置換、付加、又は欠失がコードされるタンパク質へ導入されるよう、1つ又は複数のヌクレオチドの置換、付加、又は欠失を本発明のポリヌクレオチド、特に配列番号:2のヌクレオチド配列へ導入する工程により作出され得る。変異は、部位特異的変異誘発及びPCR媒介変異誘発のような標準的な技術により、例えば、配列番号:2の配列へ導入され得る。好ましくは、保存的なアミノ酸置換が、1つ又は複数の予想非必須アミノ酸残基において作成される。「保存的なアミノ酸置換」とは、あるアミノ酸残基が類似した側鎖を有するアミノ酸残基と交換されるものである。類似した側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーは、当技術分野において定義されている。これらのファミリーには、塩基性側鎖を有するアミノ酸(例えば、リジン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖を有するアミノ酸(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、非荷電極性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、トレオニン、チロシン、システイン)、無極性側鎖を有するアミノ酸(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)、ベータ分枝側鎖を有するアミノ酸(例えば、トレオニン、バリン、イソロイシン)、及び芳香族側鎖を有するアミノ酸(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)が含まれる。従って、アセチル-CoAカルボキシラーゼの予想非必須アミノ酸残基が、好ましくは、同じファミリーからのもう一つのアミノ酸残基と交換される。又は、もう一つの態様において、飽和変異誘発等により、アセチル-CoAカルボキシラーゼをコードする配列の全部又は一部の全体にランダムに変異を導入し、結果として生じた変異体を、アセチル-CoAカルボキシラーゼ活性を保持している変異体を同定するため、本明細書に記載されたアセチル-CoAカルボキシラーゼ活性に関してスクリーニングすることもできる。配列番号:2の配列のうちの一つの変異誘発の後、コードされるタンパク質は組み換え発現され得、タンパク質の活性が、例えば、本明細書に記載されたアッセイを使用して決定され得る。
本発明のポリヌクレオチド、例えば、配列番号:2のヌクレオチド配列を有する核酸分子、又はその一部は、標準的な分子生物学技術、及び本明細書に提供された配列情報を使用して単離され得る。例えば、アセチル-CoAカルボキシラーゼcDNAは、本発明のポリヌクレオチドの配列のうちの一つの全部又は一部をハイブリダイゼーションプローブとして使用し、標準的なハイブリダイゼーション技術を使用して、ライブラリーより単離され得る。さらに、本発明のポリヌクレオチドの配列のうちの一つの全部又は一部を包含するポリヌクレオチドは、この配列に基づき設計されたオリゴヌクレオチドプライマーを使用して、ポリメラーゼ連鎖反応により単離され得る(例えば、本発明のポリヌクレオチドの配列のうちの一つの全部又は一部を包含する核酸分子は、この本発明のポリヌクレオチドの同配列に基づき設計された、例えば、配列番号:4、5、又は6のオリゴヌクレオチドプライマーを使用して、ポリメラーゼ連鎖反応により単離され得る)。例えば、mRNAが、例えば、チャーグウィン(Chirgwin)らのグアニジウム-チオシアネート抽出法により、細胞、例えばファフィアより単離され得、cDNAが、逆転写酵素(例えば、Promega(Madison, USA)より入手可能なMoloney MLV逆転写酵素又はAMV逆転写酵素)を使用して調製され得る。ポリメラーゼ連鎖反応増幅のための合成オリゴヌクレオチドプライマーは、配列番号:2に示されるヌクレオチド配列のうちの一つに基づき設計され得る。本発明のポリヌクレオチドは、標準的なPCR増幅技術に従い、cDNA又はゲノムDNAを鋳型として使用し、そして適切なオリゴヌクレオチドプライマーを使用して増幅され得る。そのようにして増幅されたポリヌクレオチドは、適切なベクターへとクローニングされ、DNA配列分析により特徴決定され得る。さらに、アセチル-CoAカルボキシラーゼのヌクレオチド配列に相当するオリゴヌクレオチドは、標準的な合成技術により、例えば、自動DNA合成装置を使用して調製され得る。
「断片」、「配列の断片」、又は「配列の一部」という用語は、言及された最初の配列の短縮型配列を意味する。短縮型配列(核酸又はタンパク質の配列)は、様々な長さを有し得る;最小サイズは、言及された最初の配列の比較可能な機能及び/又は活性を少なくとも有する配列を提供するのに十分なサイズの配列であり、最大サイズは重大ではない。いくつかの適用において、最大サイズは、一般的に、最初の配列の所望の活性及び/又は(一つ以上の)機能を提供するために必要とされるものより実質的に大きくない。
典型的には、短縮型アミノ酸配列は、約5〜約60アミノ酸長の範囲であろう。しかしながら、より典型的には、配列は、最大約50アミノ酸長、好ましくは最大約30アミノ酸であろう。少なくとも約10、12、又は15アミノ酸、最大約20又は25アミノ酸の配列を選択することが、一般的に、望ましい。
「エピトープ」という用語は、抗原決定基としても既知の抗原内の特異的な免疫反応性部位に関する。これらのエピトープは、タンパク質の中のアミノ酸のようなポリマー組成物の中のモノマーの直鎖状アレイであってもよいし、又はより複雑な二次構造もしくは三次構造からなっていても、もしくはそれらを含んでいてもよい。全ての免疫原(即ち、免疫応答を誘発することができる物質)が抗原であるが;ハプテンのようないくつかの抗原は、免疫原ではないが、担体分子とのカップリングにより免疫原性にされ得ることを、当業者は認識するであろう。「抗原」という用語には、抗体が生成し得る物質、及び/又は抗体が特異的に免疫反応性である物質への言及が含まれる。
「1個又は数個のアミノ酸」という用語は、少なくとも1個、しかし60%の同一性より低い相同性をもたらすであろうアミノ酸数は超えないアミノ酸に関する。好ましくは、同一性は、70%又は80%超であり、より好ましいのは85%、90%、又は95%であり、さらに好ましいのは、96%、97%、98%、又は99%の同一性である。
「アセチル-CoAカルボキシラーゼ」又は「アセチル-CoAカルボキシラーゼ活性」という用語は、下記のようなポリペプチドの酵素活性、又は酵素アッセイ法において決定され得る酵素活性に関する。さらに、本明細書のアッセイにおいては不活性であるが、アセチル-CoAカルボキシラーゼと特異的に結合する抗体により認識されるポリペプチド、即ち、1個以上のアセチル-CoAカルボキシラーゼのエピトープを有するポリペプチドも、「アセチル-CoAカルボキシラーゼ」という用語に含まれる。これらの場合、活性とは、それらの免疫学的活性をさす。
「ポリヌクレオチド」及び「核酸分子」という用語も、「単離された」ポリヌクレオチド又は核酸の分子に関する。「単離された」核酸分子とは、その核酸の天然起源に存在する他の核酸分子から分離されているものである。好ましくは、「単離された」核酸は、その核酸が由来する生物のゲノムDNAにおいてその核酸に天然に隣接している配列(即ち、その核酸の5'末及び3'末に位置する配列)を含まない。
例えば、様々な態様において、PNOポリヌクレオチドは、その核酸が由来する細胞(例えば、ファフィア細胞)のゲノムDNAにおいてその核酸分子に天然に隣接しているヌクレオチド配列の約5kb、4kb、3kb、2kb、1kb、0.5kb、又は0.1kb未満を含有し得る。さらに、本発明のポリヌクレオチド、特に、cDNA分子のような「単離された」核酸分子は、組み換え技術により作製された場合には、他の細胞材料もしくは培養培地を実質的に含まず、又は化学的に合成された場合には、化学的前駆物質もしくはその他の化学物質を実質的に含まないかもしれない。
好ましくは、本発明のポリペプチドは、配列番号:2に示されるヌクレオチド配列のうちの一つを含む。配列番号:2の配列は、本発明のP.ロドチーマのアセチル-CoAカルボキシラーゼcDNAに相当する。
さらに、本発明のポリヌクレオチドは、前記ポリヌクレオチドのヌクレオチド配列のうちの一つの相補鎖又はその一部である核酸分子を含む。配列番号:2に示されるヌクレオチド配列のうちの一つに相補的な核酸分子とは、配列番号:2に示されるヌクレオチド配列のうちの一つにハイブリダイズし、それにより安定な二重鎖を形成し得るよう、十分に、配列番号:2に示されるヌクレオチド配列のうちの一つに相補的なものである。
本発明のポリヌクレオチドは、少なくとも約60%、好ましくは少なくとも約65〜70%、より好ましくは少なくとも約70〜80%、80〜90%、又は90〜95%、さらに好ましくは少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%、又はそれ以上、配列番号:2に示されるヌクレオチド配列又はその一部に相同であるヌクレオチド配列を含む。本発明のポリヌクレオチドは、配列番号:2に示されるヌクレオチド配列のうちの一つ又はその一部とハイブリダイズする、例えば、本明細書において定義されるようなストリンジェントな条件の下でハイブリダイズする、ヌクレオチド配列を含む。
さらに、本発明のポリヌクレオチドは、配列番号:2の配列のうちの一つのコード領域の一部のみ、例えば、プローブもしくはプライマーとして使用され得る断片、又はアセチル-CoAカルボキシラーゼの生物学的活性部分をコードする断片を含み得る。P.ロドチーマからのアセチル-CoAカルボキシラーゼ遺伝子のクローニングから決定されたヌクレオチド配列は、その他の細胞型及び生物におけるアセチル-CoAカルボキシラーゼ類似体の同定及び/又はクローニングにおいて使用するために設計されたプローブ及びプライマーの生成を可能にする。プローブ/プライマーは、典型的には、実質的に精製されたオリゴヌクレオチドを含む。オリゴヌクレオチドは、典型的には、例えば配列番号:2の配列のうちの一つのセンス鎖、例えば配列番号:2の配列のうちの一つのアンチセンス配列、又は天然に存在するそれらの変異体の少なくとも約12個、15個、好ましくは約20個又は25個、より好ましくは約40個、50個、又は75個の連続ヌクレオチドと、ストリンジェントな条件の下でハイブリダイズするヌクレオチド配列の領域を含む。本発明のヌクレオチドに基づくプライマーは、アセチル-CoAカルボキシラーゼ類似体をクローニングするためのPCR反応において使用され得る。アセチル-CoAカルボキシラーゼのヌクレオチド配列に基づくプローブは、転写物、又は同一のもしくは相同なタンパク質をコードするゲノム配列を検出するために使用され得る。プローブは、さらに、それに付着した標識基を含んでいてもよく、例えば、標識基は、放射性同位体、蛍光化合物、酵素、又は酵素補因子であり得る。そのようなプローブは、細胞試料中のアセチル-CoAカルボキシラーゼのコード核酸分子のレベルを測定することにより、例えば、アセチル-CoAカルボキシラーゼmRNAレベルを検出するか、又はゲノムアセチル-CoAカルボキシラーゼ遺伝子が変異もしくは欠失しているか否かを決定することにより、アセチル-CoAカルボキシラーゼを発現している細胞を同定するためのゲノムマーカー試験キットの一部として使用され得る。
本発明のポリヌクレオチドは、アセチル-CoAカルボキシラーゼ活性、特に、微生物又は植物における実施例に記載されるようなアセチル-CoAカルボキシラーゼ活性を、タンパク質またはその一部が維持するよう、配列番号:3のアミノ酸配列に十分に相同なアミノ酸配列を含んでいるポリペプチド又はその一部をコードする。本明細書において使用される「十分に相同な」という語は、アセチル-CoAカルボキシラーゼ活性を有するように、配列番号:3のアミノ酸配列と同一の又は等価なアミノ酸残基(例えば、本発明のポリペプチドの配列のうちの一つのアミノ酸残基と類似した側鎖を有するアミノ酸残基)を、最小限の数、含んでいるアミノ酸配列を有するタンパク質又はその一部をさす。アセチル-CoAカルボキシラーゼ活性の例も、本明細書に記載される。
タンパク質は、少なくとも約60〜65%、好ましくは少なくとも約66〜70%、より好ましくは少なくとも約70〜80%、80〜90%、90〜95%、最も好ましくは少なくとも約96%、97%、98%、99%、又はそれ以上、配列番号:3のアミノ酸配列全体に相同である。
本発明のアセチル-CoAカルボキシラーゼのポリヌクレオチドによりコードされるタンパク質の一部は、好ましくは、アセチル-CoAカルボキシラーゼのうちの一つの生物学的活性部分である。
本明細書において言及されるように、「アセチル-CoAカルボキシラーゼの生物学的活性部分」という用語は、アセチル-CoAカルボキシラーゼ活性を有するか、又はアセチル-CoAカルボキシラーゼと特異的に結合する抗体と結合するような免疫学的活性を有する部分、例えば、ドメイン/モチーフを含むものとする。アセチル-CoAカルボキシラーゼ又はその生物学的活性部分が代謝に参加し得るか否かを決定するためには、酵素活性のアッセイが実施され得る。そのようなアッセイ法は、実施例に詳述されるように、当業者に周知である。アセチル-CoAカルボキシラーゼの生物学的活性部分をコードする付加的な核酸断片は、配列番号:2の配列のうちの一つの一部を単離すること、アセチル-CoAカルボキシラーゼのコードされる部分又はペプチドを(例えば、インビトロ組み換え発現により)発現させること、及びアセチル-CoAカルボキシラーゼのコードされる部分又はペプチドの活性を査定することにより調製され得る。
まず、縮重PCR法を使用することにより、ACC遺伝子の一部を含有する部分的な遺伝子断片がクローニングされた。該縮重PCRは、同一の又は類似した機能を有する他の種からの既知の酵素との高いアミノ酸配列相同性を有する目的の遺伝子をクローニングする方法である。縮重PCRにおいてプライマーとして使用される縮重プライマーは、アミノ酸配列の対応するヌクレオチド(「縮重」)への逆翻訳により設計された。そのような縮重プライマーにおいては、A、C、G、もしくはTのいずれかからなる混合プライマー、又は多義性暗号(ambiguity code)においてイノシンを含有するプライマーが、一般に、使用される。本発明においては、そのような混合プライマーが、上記遺伝子をクローニングするための縮重プライマーとして使用された。
イントロン及びプロモーター又はターミネーターのような制御領域と共にコード領域も含有する完全遺伝子は、適切な宿主においてファージベクター又はプラスミドベクターにおいて構築されたゲノムライブラリーをスクリーニングすること、前記のような縮重PCRにより得られた部分DNA断片を、標識後、プローブとして使用することにより、染色体からクローニングされ得る。一般に、宿主株としての大腸菌、及び大腸菌ベクター、λファージベクターのようなファージベクター、又はpUCベクターのようなプラスミドベクターが、ライブラリーの構築、及び配列決定、制限消化、ライゲーション等のような後続の遺伝子操作においてしばしば使用される。本発明において、P.ロドチーマのEcoRIゲノムライブラリーは、λベクターの誘導体、λZAPIIにおいて構築された。挿入物の長さ、クローニングすべき挿入物の長さは、ライブラリーの構築の前に、その遺伝子のためのサザンブロットハイブリダイゼーションにより決定された。本発明において、プローブのために使用されたDNAは、供給元(Boehringer-Mannheim, Mannheim, Germany)により調製されたプロトコルに従い、従来の32P標識の代わりにステロイドハプテンであるジゴキシゲニン(DIG)により標識された。P.ロドチーマの染色体から構築されたゲノムライブラリーは、目的の遺伝子の一部を有するDIG標識DNA断片をプローブとして使用することによりスクリーニングされた。ハイブリダイズしたプラークが選出され、さらなる研究のために使用された。ゲノムライブラリーの構築においてλZAPII(挿入物サイズは9kb未満であった)を使用する場合には、その後のプラスミドベクターへのクローニング工程のために、一本鎖M13ファージの誘導体であるEx assist phage(Stratagene, La Jolla, USA)を用いたインビボ切り出しプロトコールが便利に使用された。このようにして得られたプラスミドDNAが、シークエンシングのために試験された。
本発明において、本発明者らは、ほとんどの配列決定の例においてTaq DNAポリメラーゼが利用される、オートサイクル(autocycle)配列決定プロトコルを使用して、自動蛍光DNA配列決定装置、ALFredシステム(Pharmacia, Uppsala, Sweden)を使用した。
ゲノム配列の決定の後、コード領域の配列が、対応する遺伝子のcDNAのクローニングのため使用された。PCR法もcDNA断片をクローニングするために活用された。オープンリーディングフレーム(ORF)の5'末及び3'末の配列と同一の配列を有するPCRプライマーが、適切な制限部位を付加して合成され、PCRがそれらPCRプライマーを使用することにより実施された。本発明においては、cDNAプールが、このcDNAのPCRクローニングにおいて鋳型として使用された。該cDNAプールは、P.ロドチーマから得られたmRNAを鋳型として使用することにより、ウイルス逆転写酵素及びTaqポリメラーゼ(Clontech, Palo Alto, U.S.A.製のCapFinder Kit)によりインビトロで合成された様々なcDNA種からなる。このようにして得られた目的のcDNAは、配列が確認された。さらに、大腸菌においてlacまたはT7発現系などの強力なプロモーター活性の元で機能する発現ベクターにcDNA断片をクローニングした後、得られたcDNAの酵素活性を確認した。
もう一つの態様において、本発明は、本発明のポリヌクレオチドをベクターに挿入する工程を含む、組換えベクターを作成する方法に関する。
さらに、本発明は、本発明のポリヌクレオチドを含有するか又は本発明の該方法により作製された組換えベクターに関する。
本明細書において使用される「ベクター」という用語は、それが連結されたポリヌクレオチドを輸送することができる核酸分子をさす。ベクターの一つの型は、付加的なDNAセグメントがライゲーションされ得る環状二本鎖DNAループをさす「プラスミド」である。ベクターのもう一つの型は、付加的なDNA又はPNAのセグメントがウイルスゲノムへライゲーションされ得るウイルスベクターである。ある種のベクターは、導入された宿主細胞において自律複製能を有する(例えば、細菌複製起点を有する細菌ベクター及びエピソーム性哺乳動物ベクター)。その他のベクター(例えば、非エピソーム性哺乳動物ベクター)は、宿主細胞への導入により宿主細胞のゲノムへ組み込まれ、それにより、宿主ゲノムと共に複製される。さらに、ある種のベクターは、それらが機能的に連結された遺伝子の発現を指図することができる。そのようなベクターは、本明細書において、「発現ベクター」と呼ばれる。一般に、組み換えDNA技術において利用可能な発現ベクターは、しばしばプラスミドの形態をとっている。プラスミドは、最も一般的に使用されているベクターの型であるため、本明細書において、「プラスミド」及び「ベクター」は、交換可能に使用され得る。しかしながら、本発明は、等価な機能を果たすウイルスベクター(例えば、複製欠陥レトロウイルス、アデノウイルス、及びアデノ随伴ウイルス)のようなその他の型の発現ベクターも含むものとする。
本発明は、本発明に係る核酸分子を含有するコスミド、ウイルス、バクテリオファージ、及び遺伝子工学において従来使用されているその他のベクターにも関する。当業者に周知の方法が、様々なプラスミド及びベクターを構築するために使用され得る。又は、本発明の核酸分子及びベクターは、標的細胞への送達のためリポソームへと再構築され得る。
本発明はさらに、原核宿主細胞又は真核宿主細胞における発現を可能にする発現調節配列と本発明のポリヌクレオチドが機能的に連結されているベクターに関する。そのような調節配列の性質は、宿主生物に依って異なる。原核生物において、調節配列には、一般に、プロモーター、リボソーム結合部位、及びターミネーターが含まれる。真核生物において、調節配列には、一般に、プロモーター、ターミネーターが含まれ、いくつかの情況においては、エンハンサー、トランス活性化剤(transactivators)、又は転写因子が含まれる。
「調節配列」という用語には、最小限、発現のために存在する必要がある成分が含まれ、そして付加的な有利な成分も含まれ得る。
「機能的に連結された」という用語は、そのように記載された成分が、それらの意図された様式で機能することを許容する関係にある並置をさす。コード配列に「機能的に連結された」調節配列は、そのコード配列の発現がその調節配列と適合性の条件の下で達成されるような方式でライゲーションされている。調節配列がプロモーターである場合には二本鎖核酸が使用されることは、当業者には明白である。
制御配列には、多くの型の宿主細胞においてヌクレオチド配列の構成性発現を指図するもの、及びある種の宿主細胞においてのみ、又はある種の条件の下でのみヌクレオチド配列の発現を指図するものが含まれる。発現ベクターの設計は、形質転換される宿主細胞の選択、所望のタンパク質の発現のレベル等のような要因に依って異なり得ることが、当業者には認識されるであろう。本発明の発現ベクターは、宿主細胞へと導入され、それにより、本明細書に記載されるようなポリヌクレオチドによりコードされる、融合タンパク質又は融合ペプチドを含む、タンパク質又はペプチドを産生し得る。
本発明の組換え発現ベクターは、原核細胞又は真核細胞におけるアセチル-CoAカルボキシラーゼの発現のために設計され得る。例えば、本発明のポリヌクレオチドをコードする遺伝子は、大腸菌のような細菌細胞、昆虫細胞(バキュロウイルス発現ベクターを使用)、酵母、及びその他の真菌細胞、藻類、以下の型:ホロトリキア(Holotrichia)、ペリトリキア(Peritrichia)、スピロトリキア(Spirotrichia)、スクトリア(Suctoria)、テトラヒメナ(Tetrahymena)、パラメシウム(Paramecium)、コルピジウム(Colpidium)、グラウコマ(Glaucoma)、プラチオフリア(Platyophrya)、ポトマクス(Potomacus)、シュードコーニレンブス(Pseudocohnilembus)、ユープロテス(Euplotes)、エンゲルマニエラ(Engelmaniella)、及びスチロニキア(Stylonychia)、特にスチロニキア・レムネ(Stylonychia lemnae)の繊毛虫類(WO9801572に記載されたような形質転換法に従いベクターにより)、並びに多細胞性の植物細胞において発現され得る。又は、組換え発現ベクターは、例えば、T7プロモーター制御配列及びT7ポリメラーゼを使用して、インビトロで転写され翻訳され得る。
原核生物におけるタンパク質の発現は、融合タンパク質又は非融合タンパク質のいずれかの発現を指図する構成性の又は誘導可能なプロモーターを含有するベクターにより最もしばしば実施される。融合ベクターは、多数のアミノ酸を、コードされるタンパク質に、一般的には、組換えタンパク質のアミノ末端に追加するが、C末端に追加する場合もあり、又はタンパク質内の適当な領域内に融合させる場合もある。そのような融合ベクターは、典型的には、1)組換えタンパク質の発現を増加させる;2)組換えタンパク質の可溶性を増加させる;及び3)アフィニティ精製におけるリガンドとして作用することにより組換えタンパク質の精製を補助する、という三つの目的を果たす。しばしば、融合発現ベクターにおいては、融合タンパク質の精製の後の融合モエティからの組換えタンパク質の分離を可能にするため、融合モエティと組換えタンパク質との接続部にタンパク質分解部位が導入される。そのような酵素、及びそれらのコグネート認識配列には、因子Xa、トロンビン、及びエンテロキナーゼが含まれる。
典型的な融合発現ベクターには、標的組換えタンパク質に、それぞれグルタチオンS-トランスフェラーゼ(GST)、マルトースE結合タンパク質、又はプロテインAを融合させる、pGEX(Pharmacia Biotech Inc.)、pMAL(New England Biolabs, Beverly, USA)、及びpRIT5(Pharmacia, Piscataway, USA)が含まれる。一つの態様において、本発明のポリヌクレオチドによりコードされるポリペプチドのコード配列は、N末端からC末端へ、GST-トロンビン分解部位-Xタンパク質を含む融合タンパク質をコードするベクターを作出するため、pGEX発現ベクターへとクローニングされる。その融合タンパク質は、グルタチオン-アガロース樹脂を使用したアフィニティクロマトグラフィにより精製され得、例えば、GSTと融合していない組換えアセチル-CoAカルボキシラーゼは、トロンビンによる融合タンパク質の分解により回収され得る。
適当な誘導可能非融合大腸菌発現ベクターの例には、pTrc及びpET11dが含まれる。pTrcベクターからの標的遺伝子発現は、ハイブリッドtrp-lac融合プロモーターからの宿主RNAポリメラーゼによる転写に頼っている。pET11dベクターからの標的遺伝子発現は、共発現されたウイルスRNAポリメラーゼ(T7 gnl)により媒介されたT7 gn10-lac融合プロモーターからの転写に頼っている。このウイルスポリメラーゼは、lacUV5プロモーターの転写調節下にあるT7 gnl遺伝子を保持している内在性λプロファージから宿主株BL21(DE3)又はHMS174(DE3)により供給される。
組換えタンパク質発現を最大限にするための一つの戦略は、組換えタンパク質をタンパク質分解的に切断する能力が損なわれている宿主細菌においてタンパク質を発現させることである。もう一つの戦略は、各アミノ酸のための個々のコドンが、大腸菌のような発現のために選択された細菌において優先的に利用されるものとなるよう、発現ベクターへと挿入される核酸の核酸配列を改変することである。そのような本発明の核酸配列の改変は、標準的なDNA合成技術によって実施され得る。
さらに、アセチル-CoAカルボキシラーゼベクターは、酵母発現ベクターであり得る。酵母S.セレビシエにおける発現のためのベクターの例には、pYepSec1、pMFa、pJRY88、及びpYES2(Invitrogen, San Diego, USA)が含まれる。糸状菌のようなその他の真菌において使用するための適切なベクター及びベクターの構築法は、当業者に既知である。
又は、本発明のポリヌクレオチドは、バキュロウイルス発現ベクターを使用して昆虫細胞に導入され得る。培養された昆虫細胞(例えば、Sf9細胞)におけるタンパク質の発現のために利用可能なバキュロウイルスベクターには、pAc系列及びpVL系列が含まれる。
又は、本発明のポリヌクレオチドは、哺乳動物発現ベクターを使用して哺乳動物細胞に導入される。哺乳動物発現ベクターの例には、pCDM8及びpMT2PCが含まれる。哺乳動物細胞において使用される場合、発現ベクターの調節機能は、しばしばウイルス制御エレメントにより提供される。例えば、一般的に使用されているプロモーターは、ポリオーマ、アデノウイルス2、サイトメガロウイルス、及びシミアンウイルス40に由来する。
組換え哺乳動物発現ベクターは、特定の細胞型において優先的に核酸の発現を指図し得るものであってもよい(例えば、組織特異的制御エレメントが、核酸を発現させるために使用される)。組織特異的制御エレメントは、当技術分野において既知である。適当な組織特異プロモーターの非制限的な例には、アルブミンプロモーター(肝臓特異的)、リンパ特異的プロモーター、特に、T細胞受容体及び免疫グロブリンのプロモーター、ニューロン特異的プロモーター(例えば、神経フィラメントプロモーター)、膵臓特異的プロモーター、並びに乳腺特異的プロモーター(例えば、乳清プロモーター;米国特許第4,873,316号及び欧州特許第264,166号)が含まれる。発達段階的に制御されるプロモーター、例えば、マウスhoxプロモーター及びフェトプロテインプロモーターも包含される。
このようにして発現されたACC遺伝子は、例えば、酵素アッセイ法により、活性に関して確証され得る。いくつかの実験プロトコルが、文献に記載されている。以下は、アセチル-CoAカルボキシラーゼ活性の決定のために使用される方法のうちの一つである:アッセイは、逆相HPLCを使用して、20分間、5分間隔で、アセチル-CoAの減少及び/又はマロニル-CoAの生成を測定することにより実施される。アセチル-CoAのマロニル-CoAへの変換の速度は、20分間、直線的であることが見出されており、時間に対するマロニル-CoA濃度の直線回帰分析により速度が計算される。反応混合物は、50mMトリス(pH7.5)、6μMアセチル-CoA、2mM ATP、7mM KHCO3、8mM MgCl2、1mMジチオスレイトール、及び1mg/mlウシ血清アルブミンを含有していた。酵素をウシ血清アルブミン(2mg/ml)及びクエン酸カリウム(10mM)と共にプレインキュベートする(30分、25℃)。プレインキュベートされた酵素50μlを反応混合物(最終容量200μl)へと移すことにより反応を開始させ、25℃で5〜20分間インキュベートする。反応を10%過塩素酸50μlの添加により終了させる。反応の終了後、試料を遠心分離し(3分、10,000×g)、HPLCにより分析する。10mM KH2PO4(pH6.7)(溶媒A)及びMeOH(溶媒B)の移動相を使用する。流速は1.0ml/minであり、勾配は以下の通りである。1分間の100%溶媒Aの維持の後、次の5分間の30%溶媒Bまでの直線勾配、次いで5分間の30%溶媒Bの維持。この方法を使用した場合、保持時間は、マロニル-CoAが7.5分、アセチル-CoAが9.0分であった。S.セレビシエのための発現ベクターが使用される場合には、活性の確認のため、S.セレビシエに由来する条件付きアセチル-CoAカルボキシラーゼ・ヌル変異株を宿主株として使用することにより、相補性分析が、便利に活用され得る。
酵素活性の確認に続いて、発現されたタンパク質は、精製され、精製された酵素に対する抗体の作製のため使用されるであろう。このようにして調製された抗体は、株改良研究、培養条件の最適化研究等において、対応する酵素の発現の特徴決定のため使用されるであろう。
さらなる態様において、本発明は、本発明のポリペプチド又はそのようなタンパク質の一部、即ち、特異的断片又はエピトープと特異的に結合する抗体に関する。
本発明の抗体は、その他のアセチル-CoAカルボキシラーゼ及び遺伝子を同定し単離するために使用され得る。これらの抗体は、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、又は合成抗体、並びにFab、Fv、又はscFV断片等のような抗体の断片であり得る。モノクローナル抗体は、例えば、免疫感作された哺乳動物に由来する脾細胞へのマウス骨髄腫細胞の融合を含む、KohlerおよびMilsteinにより初めに記載された技術により、調製され得る。
さらに、上記ペプチドに対する抗体又はそれらの断片は、当業者に既知の方法を使用することにより入手され得る。これらの抗体は、例えば、本発明に係るタンパク質の免疫沈降及び免疫局在(immunolocalization)のため、そして、例えば、組換え生物におけるそのようなタンパク質の合成のモニタリングのため、そして本発明に係るタンパク質と相互作用する化合物の同定のため、使用され得る。例えば、ビアコア(BIAcore)システムにおいて利用されるような表面プラスモン共鳴が、本発明のタンパク質のエピトープと結合するファージ抗体の単一ライブラリーからのファージ抗体選択の効率を増加させ、親和性の高度の増大を与えるために使用され得る。多くの場合、抗体と抗原との結合現象は、その他のリガンド/アンチリガンド結合と等価である。
本発明において、アセチル-CoAカルボキシラーゼの遺伝子断片は、クローニングされた遺伝子断片を使用した遺伝学的方法により、P.ロドチーマにおける発現レベルを減少させる目的で、P.ロドチーマからクローニングされた。
遺伝学的方法により遺伝子発現を減少させるためには、いくつかの戦略が利用され得る。そのうちの一つは、遺伝子破壊法である。この方法においては、破壊すべき目的遺伝子の部分的断片が、宿主生物において複製することができない組み込みベクター上の薬物耐性カセットにライゲーションされる。毒性抗生物質の存在下で宿主が生存することを可能にする酵素をコードする薬物耐性遺伝子が、選択可能マーカーのためしばしば使用される。pGB-Ph9(Weryら(Gene, 184, 89-97, 1997))内に保持されたG418耐性遺伝子は、P.ロドチーマにおいて機能する薬物耐性遺伝子の一例である。栄養補完マーカーも、適切な栄養要求性マーカーを有する宿主において使用され得る。増殖のためにシチジンを必要とするP.ロドチーマATCC24221株は、栄養要求体の一例である。ATCC24221のためのドナーDNAとしてCTPシンセターゼを使用することにより、栄養補完を使用した宿主ベクター系が確立され得る。
宿主生物の形質転換、及びベクター上の目的遺伝子断片と宿主生物の染色体上の対応する遺伝子断片との間の組み換えの後、組み込みベクターは、一交差(single cross)組み換えにより宿主染色体へと組み込まれる。この組み換えの結果、薬物耐性カセットは、翻訳された産物が酵素機能を有していない短縮型でのみ合成される目的遺伝子に挿入されるであろう。類似した様式において、目的遺伝子の二つの部分も、組み込みベクター上の目的遺伝子のそのような二つの部分的断片の間に薬物耐性遺伝子が挿入され得る遺伝子破壊研究のために使用された。この型のベクターの場合には、組み込みベクター上に保持された遺伝子断片と、宿主の染色体上の対応する遺伝子断片との間の二重組み換え事象が期待される。この二重交差(double crossing-over)組み換えの頻度は、一交差組み換えより低いが、二重交差(double cross)組み換えによる目的遺伝子のヌル(null)表現型は、一交差組み換えによるものよりも安定している。
他方、この戦略は、アセチル-CoAカルボキシラーゼ遺伝子のような、機能が必須であり、破壊が宿主生物にとって致死的である遺伝子の場合、困難である。アセチル-CoAカルボキシラーゼの機能は、脂肪酸の生合成以外に宿主の生存にとって不可欠である。そのような観点から、この遺伝子破壊法によってP.ロドチーマからアセチル-CoAカルボキシラーゼ破壊体を構築することは困難であると考えられる。
そのような場合、その他の戦略が、遺伝子発現を(破壊するのではなく)減少させるために適用され得る。そのうちの一つは、アセチル-CoAカルボキシラーゼの発現が減少している変異体をスクリーニングする従来の変異誘発である。この方法においては、適切なレポーター遺伝子が宿主生物からのアセチル-CoAカルボキシラーゼ遺伝子のプロモーター領域に融合している適切な組換え体が変異させられ、レポーター遺伝子産物のより弱い活性を示す変異体がスクリーニングされ得る。そのような変異体においては、プロモーター遺伝子自体に存在する変異以外の、アセチル-CoAカルボキシラーゼ遺伝子の発現に影響を与え得るレポーター遺伝子のプロモーター領域又はトランス作用領域に存在する変異により、アセチル-CoAカルボキシラーゼ活性の発現が減少することが期待される。レポーター融合のプロモーター領域に存在する変異の場合、そのような変異は対応する領域の配列によって単離され得る。このようにして単離された変異は、染色体上のアセチル-CoAカルボキシラーゼ遺伝子の最初のプロモーターと、変異したプロモーター断片との間の組み換えにより、P.ロドチーマに由来する、多様なカロテノイド、特にアスタキサンチンを産生する変異体へと導入され得る。トランス作用領域に存在する変異を排除するため、プロモーター領域におけるシスエレメントのインビトロ変異誘発によって変異を誘導することもできる。このアプローチにおいては、目的の遺伝子に由来するプロモーター領域に融合しているレポーター遺伝子を5'末に含有しており、目的の遺伝子からのターミネーター領域を3'末に含有する遺伝子カセットが、変異誘発され、次いで、P.ロドチーマへと導入される。レポーター遺伝子の活性の差を検出することにより、効果的な変異がスクリーニングされ得る。そのような変異は、インビボ変異アプローチの場合と同じ方法により、染色体上の天然プロモーター領域の配列に導入され得る。しかし、これらの方法は、いくつかの時間のかかる過程を有するため、いくつかの欠点を有する。
遺伝子発現を減少させるためのもう一つの戦略は、アンチセンス法である。この方法は、変異法及び遺伝子破壊法の適用が一般的に困難である、P.ロドチーマのようなテレオモルフ性(teleomorphic)生物が宿主生物として使用される場合ですら、遺伝子発現を減少させるために高頻度に適用される。アンチセンス法は、目的の遺伝子のcDNA断片と相補的な配列を有する人工遺伝子断片を導入する工程により、関心対象の遺伝子の発現を減少させる方法である。このようなアンチセンス遺伝子断片は、インビボにおいて目的遺伝子の成熟mRNA断片との複合体を形成し、その結果、mRNAからの効率的な翻訳を阻害する。
「アンチセンス」核酸分子は、タンパク質をコードする「センス」核酸分子と相補的な、例えば、二本鎖cDNA分子のコード鎖と相補的な、又はmRNA配列と相補的なヌクレオチド配列を含む。従って、アンチセンス核酸分子は、センス核酸分子と水素結合することができる。アンチセンス核酸分子は、アセチル-CoAカルボキシラーゼのコード鎖全体と相補的であってもよいし、又はその一部のみと相補的であってもよい。従って、アンチセンス核酸分子は、アセチル-CoAカルボキシラーゼをコードするヌクレオチド配列のコード鎖の「コード領域」に対してアンチセンスであり得る。「コード領域」という用語は、アミノ酸残基へと翻訳されるコドンを含むヌクレオチド配列の領域をさす。さらに、アンチセンス核酸分子は、アセチル-CoAカルボキシラーゼをコードするヌクレオチド配列のコード鎖の「非コード領域」に対してアンチセンスである。「非コード領域」という用語は、ポリペプチドへと翻訳されないコード領域に隣接している5'及び3'の配列(即ち、5'及び3'の非翻訳領域とも呼ばれる)をさす。
アセチル-CoAカルボキシラーゼをコードするコード鎖配列は、本明細書に開示されているため、本発明のアンチセンス核酸分子は、ワトソン(Watson)及びクリック(Crick)の塩基対形成の規則に従い、設計され得る。アンチセンス核酸分子は、アセチル-CoAカルボキシラーゼmRNAのコード領域全体と相補的であってもよいが、アセチル-CoAカルボキシラーゼmRNAのコード領域又は非コード領域の一部のみに対してアンチセンスのオリゴヌクレオチドであってもよい。例えば、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、アセチル-CoAカルボキシラーゼmRNAの翻訳開始部位の周囲の領域に相補的であり得る。アンチセンスオリゴヌクレオチドは、例えば、約5、10、15、20、25、30、35、40、45、又は50ヌクレオチド長であり得る。本発明のアンチセンス核酸分子は、当技術分野において既知の手法を使用して、化学合成及び酵素的ライゲーション反応を使用して構築され得る。例えば、アンチセンス核酸分子(例えば、アンチセンスオリゴヌクレオチド)は、天然に存在するヌクレオチド、又は分子の生物学的安定性を増加させるため、もしくはアンチセンス核酸とセンス核酸との間で形成された二重鎖の物理的安定性を増加させるために設計された様々に修飾されたヌクレオチドを使用して、化学的に合成され得、例えば、ホスホロチオエート(phosphorothioate)誘導体及びアクリジン置換ヌクレオチドが使用され得る。アンチセンス核酸を生成させるために使用され得る修飾されたヌクレオチドの例には、5-フルオロウラシル、5-ブロモウラシル、5-クロロウラシル、5-ヨードウラシル、ヒポキサンチン、キサンチン、4-アセチルシトシン、5-(カルボキシヒドロキシルメチル)ウラシル、5-カルボキシメチルアミノメチル-2-チオウリジン、5-カルボキシメチルアミノメチルウラシル、ジヒドロウラシル、ベータ-D-ガラクトシル-キュェオシン(queosine)、イノシン、N6-イソペンテニルアデニン、1-メチルグアニン、1-メチルイノシン、2,2-ジメチルグアニン、2-メチルアデニン、2-メチルグアニン、3-メチルシトシン、5-メチルシトシン、N6-アデニン、7-メチルグアニン、5-メチルアミノメチルウラシル、5-メトキシアミノメチル-2-チオウラシル、ベータ-D-マンノシルキュェオシン、5'-メトキシカルボキシメチルウラシル、5-メトキシウラシル、2-メチルチオ-N6-イソペンテニルアデニン、ウラシル-5-オキシ酢酸(v)、ワイブトキソシン(wybutoxosine)、プソイドウラシル、キュェオシン、2-チオシトシン、5-メチル-2-チオウラシル、2-チオウラシル、4-チオウラシル、5-メチルウラシル、ウラシル-5-オキシ酢酸メチルエステル、ウラシル-5-オキシ酢酸(v)、5-メチル-2-チオウラシル、3-(3-アミノ-3-N-2-カルボキシプロピル)ウラシル、(acp3)w、及び2,6-ジアミノプリンが含まれる。又は、アンチセンス核酸は、ポリヌクレオチドがアンチセンス方向でサブクローニングされた発現ベクターを使用して生物学的に作製され得る(即ち、挿入されたポリヌクレオチドから転写されたRNAは、目的の標的ポリヌクレオチドに対してアンチセンス方向であろう。以下のサブセクションにおいてさらに記載される)。
本発明のアンチセンス核酸分子は、典型的には、アセチル-CoAカルボキシラーゼをコードする細胞mRNA及び/又はゲノムDNAとハイブリダイズするか又は結合し、それにより、例えば転写及び/又は翻訳を阻害することにより、タンパク質の発現を阻害するよう、細胞に投与されるか、又はインサイチューで生成させられる。ハイブリダイゼーションは、安定な二重鎖を形成する従来のヌクレオチド相補性によるものであってもよいし、又は、例えば、DNA二重鎖と結合するアンチセンス核酸分子の場合には、二重らせんの主溝における特異的な相互作用を通したものであってもよい。アンチセンス分子は、例えば、アンチセンス核酸分子を細胞表面の受容体又は抗原と結合するペプチド又は抗体と連結することにより、選択された細胞表面上に発現された受容体又は抗原と特異的に結合するよう修飾され得る。アンチセンス核酸分子は、本明細書に記載されたベクターを使用して細胞へ送達されてもよい。アンチセンス分子の十分な細胞内濃度を達成するためには、アンチセンス核酸分子が強力な原核生物、ウイルス、又は真核生物(植物を含む)のプロモーターの調節下に置かれたベクター構築物が好ましい
本発明のアンチセンス核酸分子は、αアノマー核酸分子であり得る。αアノマー核酸分子は、通常のβ単位とは反対に、鎖が相互に平行に走っている、相補的RNAとの特異的な二本鎖ハイブリッドを形成する。アンチセンス核酸分子は、2'-o-メチルリボヌクレオチド又はキメラRNA-DNAアナログを含んでいてもよい。
さらに、本発明のアンチセンス核酸分子は、リボザイムであり得る。リボザイムとは、相補的な領域を有するmRNAのような一本鎖核酸を切断することができるリボヌクレアーゼ活性を有する触媒性RNA分子である。従って、リボザイム(例えば、ハンマーヘッド型リボザイム)は、アセチル-CoAカルボキシラーゼmRNA転写物を触媒的に切断し、それによりmRNAの翻訳を阻害するために使用され得る。アセチル-CoAカルボキシラーゼをコードする核酸分子に対する特異性を有するリボザイムは、本明細書に開示されたアセチル-CoAカルボキシラーゼcDNAのヌクレオチド配列に基づいて、または、本発明により開示された方法による単離の対象となる異種配列を基にして、設計され得る。例えば、活性部位のヌクレオチド配列がコードmRNA内の切断されるヌクレオチド配列に相補的であるテトラヒメナL-19 IVS RNAの誘導体が構築され得る(米国特許第4,987,071号及び米国特許第5,116,742号)。又は、アセチル-CoAカルボキシラーゼmRNAが、特異的リボヌクレアーゼ活性を有する触媒性RNAを、RNA分子のプールから選択するために使用され得る。
P.ロドチーマからカロテノイド過剰産生株を構築するためのアンチセンス法の適用は、欧州特許第1,158,051号に開示されている。
一つの態様において、本発明は、本発明のベクター又はポリヌクレオチドを宿主細胞へ導入する工程を含む、組換え宿主細胞を作成する方法に関する。
ベクターDNAは、従来の形質転換又はトランスフェクションの技術を介して、原核細胞又は真核細胞へと導入され得る。本明細書において使用される「形質転換」及び「トランスフェクション」、コンジュゲーション、及び形質導入という用語は、リン酸カルシウム共沈殿もしくは塩化カルシウム共沈殿、DEAE-デキストラン媒介トランスフェクション、リポフェクション、天然のコンピテンス、化学物質媒介トランスファー、又は電気穿孔を含む、外来核酸(例えば、DNA)を宿主細胞へと導入するのための多様な当技術分野において認知されている技術をさすものとする。植物細胞を含む宿主細胞を形質転換又はトランスフェクトするための適当な方法は、当業者に既知である。
哺乳動物細胞の安定的なトランスフェクションに関して、使用される発現ベクター及びトランスフェクション技術に依って、極一部の細胞のみが外来DNAをそのゲノムへと組み込み得る。これらの組み込み体を同定し選択するためには、一般に、選択可能マーカー(例えば、抗生物質耐性)をコードする遺伝子が、目的の遺伝子と共に宿主細胞へと導入される。好ましい選択マーカーには、G418、ハイグロマイシン、及びメトトレキサートのような薬物に対する耐性を賦与するものが含まれる。選択可能マーカーをコードする核酸は、本発明のポリペプチドをコードするものと同じベクターで宿主細胞へ導入されてもよいし、又は別々のベクターで導入されてもよい。導入された核酸により安定的にトランスフェクトされた細胞は、例えば、薬物選択によって同定され得る(例えば、選択可能マーカー遺伝子が組み込まれた細胞は生存するであろうが、その他の細胞は死滅する)。
相同的組換え微生物を作出するためには、アセチル-CoAカルボキシラーゼ遺伝子を改変するため、例えば、機能的に破壊するため、欠失、付加、又は置換が導入された本発明のポリヌクレオチドの少なくとも一部を含有するベクターが調製される。好ましくは、このアセチル-CoAカルボキシラーゼ遺伝子は、P.ロドチーマのアセチル-CoAカルボキシラーゼ遺伝子であるが、近縁の又は異なる起源からのホモログであってもよい。又は、相同的組み換えにより、内因性のアセチル-CoAカルボキシラーゼ遺伝子が変異又はその他の改変を受けるが、依然として機能性のタンパク質をコードするようなベクターが、設計され得る(例えば、上流制御領域が、内因性アセチル-CoAカルボキシラーゼの発現を改変するために改変され得る)。相同的組み換えを介して点変異を作出するためには、Cole-Strauss et al., Nucl. Aci. Res., 27, 5, 1323-1330, 1999およびKmiec, Gene therapy., American Scientist. 87, 3, 240-247, 1999から知られたキメラ形成法(chimeraplasty)として既知のDNA-RNAハイブリッドも使用され得る。
ベクターが細胞へと導入され、導入されたポリヌクレオチド遺伝子が内因性アセチル-CoAカルボキシラーゼ遺伝子と相同的に組み換えられた細胞が、当技術分野において既知の技術を使用して選択される。
さらに、導入された遺伝子の制御された発現を可能にする選択系を含有する宿主細胞が作製され得る。例えば、lacオペロンの調節下に置かれるようベクター上に本発明のポリヌクレオチドを含めることにより、IPTGの存在下でのみポリヌクレオチドの発現が許容される。そのような制御系は、当技術分野において周知である。
好ましくは、導入された核酸分子は、宿主細胞にとって外因性である。
「外来」とは、核酸分子が、宿主細胞に対して異種であるか(これは、異なるゲノム背景を有する細胞もしくは生物に由来することを意味する)、又は宿主細胞に対して同種であるが、該核酸分子の天然に存在するカウンターパートとは異なるゲノム環境に置かれていることを意味する。これは、核酸分子が宿主細胞に対して同種である場合、それが、該宿主細胞のゲノムにおけるその天然の位置には位置していないこと、特に、異なる遺伝子に囲まれていることを意味する。この場合、核酸分子は、自己のプロモーターの調節下、又は異種プロモーターの調節下のいずれかにあり得る。宿主細胞内に存在する本発明に係るベクター又は核酸分子は、宿主細胞のゲノムに組み込まれてもよいし、又は何らかの形態で染色体外に維持されてもよい。これに関して、本発明の核酸分子が、相同的組み換えを介して変異遺伝子を回復又は作出するために使用され得ることも理解されたい。
従って、もう一つの態様において、本発明は、本発明のポリヌクレオチド又は本発明のベクターにより遺伝学的に工作された宿主細胞に関する。
「宿主細胞」及び「組換え宿主細胞」という用語は、本明細書において交換可能に使用される。そのような用語は、特定の主細胞のみならず、そのような細胞の子孫又は可能性のある子孫もさすことが理解される。次世代においては、変異又は環境的影響のいずれかによってある種の修飾が起こり得るため、そのような子孫は、実際は親細胞と同一ではないかもしれないが、やはり、本明細書において使用されるように、その用語の範囲内に含まれる。
例えば、本発明のポリヌクレオチドは、細菌細胞、並びに昆虫細胞、真菌細胞、又は(チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)もしくはCOS細胞のような)哺乳動物細胞、藻類、繊毛虫類、植物細胞、真菌、又は大腸菌のようなその他の微生物に導入され得る。その他の適当な宿主細胞は、当業者に既知である。好ましいのは、大腸菌、バキュロウイルス、アグロバクテリウム、又は真菌細胞、例えば、サッカロミセス属のもの、例えば、種S.セレビシエ又はP.ロドチーマ(キサントフィロミセス・デンドロロウス(Xanthophylomyces dendrorhous))のものである。
さらに、一つの態様において、本発明は、本発明のポリヌクレオチド又はベクターの該真菌細胞のゲノムへの導入を含む、真菌形質転換体の作製方法に関する。
植物細胞におけるセンス方向又はアンチセンス方向での本発明に係る核酸分子の発現のため、分子は、真菌細胞における発現を保証する制御エレメントの調節下に置かれる。これらの制御エレメントは、発現される核酸分子に対して異種であってもよいし又は相同であってもよく、同様に、形質転換される真菌種に対して異種であってもよいし又は相同であってもよい。
一般に、そのような制御エレメントは、真菌細胞において活性なプロモーターを含む。真菌細胞における構成性発現を得るためには、好ましくは、P.ロドチーマからのグリセルアルデヒド-3-デヒドロゲナーゼプロモーター(WO97/23,633)のような構成性プロモーターが使用される。発現を正確に調節し得るよう、誘導可能プロモーターが使用されてもよい。誘導可能プロモーターの例は、熱ショックタンパク質をコードする遺伝子のプロモーターである。そのような誘導可能プロモーターの候補であるアミラーゼ遺伝子プロモーターも、記載されている(欧州特許第1,035,206号)。制御エレメントは、さらに、真菌細胞において機能性の転写及び/又は翻訳のエンハンサーを含み得る。さらに、制御エレメントは、安定性を改良し得る、ポリAテールを転写物に付加するポリAシグナルのような転写終結シグナルを含み得る。
真菌細胞への外来DNAの導入の方法は、当技術分野において周知である。これらには、例えば、LiCl法による形質転換、プロトプラストの融合、電気穿孔、パーティクルガン(particle bombardment)のような微粒子銃(biolistic)法、及び当技術分野において既知のその他の方法が含まれる。微粒子銃法を使用した形質転換の方法は、当業者に周知である。
「形質転換」という用語は、本明細書において使用されるように、トランスファーのために使用される方法に関係なく、外因性ポリヌクレオチドの宿主細胞へのトランスファーをさす。ポリヌクレオチドは、宿主細胞へと一過性又は安定的に導入され得、組み込まれずに、例えばプラスミドもしくはキメラリンクとして維持されてもよいし、又は宿主ゲノムへ組み込まれてもよい。
一般に、本発明に従って修飾され得、本発明に係るタンパク質の過剰発現又はそのようなタンパク質の合成の低下のいずれかを示す真菌は、任意の所望の真菌種に由来し得る。
さらに、一つの態様において、本発明は、本発明のポリヌクレオチドベクターを含むか又は本発明の方法により入手可能な真菌細胞に関する。
従って、本発明は、(好ましくは、ゲノムへと安定的に組み込まれた)真菌細胞におけるポリヌクレオチドの発現を可能にする制御エレメントに連結された本発明に係るポリヌクレオチド(そのポリヌクレオチドは、形質転換された真菌細胞にとって外来である)を含有するトランスジェニック真菌細胞にも関する。外来の意味については、前記を参照のこと。
従って、本発明は、本発明によって形質転換された真菌細胞にも関する。
よって、アセチル-CoAカルボキシラーゼの改変された発現のため、細胞代謝経路は、産生の収率及び/又は産生の効率に関して調整される。
「産生」又は「生産性」という用語は、当技術分野において認知されており、所定の時間及び所定の発酵容量で形成される発酵産物(例えば、脂肪酸、カロテノイド、糖(多糖)、脂質、ビタミン、イソプレノイド、ロウエステル、及び/もしくはポリヒドロキシアルカノエート(polyhydroxyalkanoates)のような重合体、並びに/又はその代謝産物、又は本明細書において言及されたようなさらなる所望の精製化学物質)の濃度(例えば、kg産物/時間/リットル)を含む。
産生の「効率」という用語は、特定の産生のレベルが達成されるのに必要とされる時間(例えば、特に、カロテノイド、糖(多糖)、脂質、ビタミン、イソプレノイド等への該改変された収率の出力の特定の速度に細胞が到達するのに要する時間)を含む。
「収率」又は「産物/炭素収率」という用語は、当技術分野において認知されており、産物(即ち、アセチルCoA、脂肪酸、カロテノイド、ビタミン、イソプレノイド、脂質等、及び/又は前記定義のようなさらなる化合物、並びに該産物に基づき生合成される化合物)への炭素源の変換の効率を含む。これは、一般に、例えば、炭素源1kg当たりの産物のkg数として記される。化合物の収率又は産生を増加させることにより、所定の量の時間における、所定の培養物の量における、その化合物の回収される分子、又は有用な回収される分子の量が増加する。
(細胞、組織移植片等における「生物学的産生」の「合成」と同義に使用される)「生合成」又は「生合成経路」という用語は、当技術分野において認知されており、多工程かつ高度に制御された過程であり得る過程における、中間化合物からの、細胞による、化合物、好ましくは有機化合物の合成を含む。
「代謝」という用語は、当技術分野において認知されており、生物において起こる生化学的反応の全体を含む。特定の化合物の代謝(例えば、アセチルCoA、脂肪酸、ヘキソース、脂質、イソプレノイド、ビタミン、カロテノイド、脂質等の代謝)には、この化合物に関する細胞における生合成、修飾、及び分解の経路の全てが含まれる。
そのような遺伝学的に工作されたP.ロドチーマは、適切な培地において培養され、カロテノイド、特にアスタキサンチンの生産性に関して評価されるであろう。このようにして選択されたアスタキサンチンの過剰産生体は、その生産性と、そのような遺伝子工学法により導入された遺伝子又はタンパク質発現のレベルとの関係を考慮して確認されるであろう。
下記実施例により本発明をさらに例示する。
実施例において利用される材料及び方法を、以下に記載する。

P.ロドチーマATCC96594(ブダペスト条約に準じて、1998年4月8日に、アクセッション番号ATCC74438の下で再寄託された)
大腸菌DH5α
Figure 2006500058
大腸菌XL1-Blue MRF'
Figure 2006500058
大腸菌SOLR
Figure 2006500058
大腸菌TOP10
Figure 2006500058
ベクター
λZAPII(Stratagene)
pBluescriptII KS-(Stratagene)
pMOSBlue T-ベクター(Amersham, Buckinghamshire, U.K.)
pCR2.1-TOPO(Invitrogen)
培地
P.ロドチーマ株は、YPD培地(DIFCO, Detroit, U.S.A.)においてルーチンに維持された。大腸菌株は、LB培地(1リットル当たり10gのバクト-トリプトン、5gの酵母抽出物(DIFCO)、及び5gのNaCl)において維持された。NZY培地(1リットル当たり5gのNaCl、2gのMgS04-7H20、5gの酵母抽出物(DIFCO)、10gのNZアミンA型(WAKO, Osaka, Japan))は、軟寒天(0.7%寒天(WAKO))におけるλファージ繁殖のために使用される。寒天培地を調製する場合には、1.5%の寒天(WAKO)が補足された。
方法
制限酵素及びT4 DNAリガーゼは、宝酒造(Takara Shuzo)(Ohtsu, Japan)より購入された。P.ロドチーマからの染色体DNAの単離は、製造業者により供給されたプロトコルに従い、QIAGEN Genomic Kit(QIAGEN, Hilden, Germany)を使用することにより実施された。形質転換された大腸菌からのプラスミドDNAのミニプレップ(Mini-prep)は、自動DNA単離システム(PI-50, Kurabo,Co.Ltd., Osaka, Japan)により実施された。大腸菌形質転換体からのプラスミドDNAのミディプレップ(Midi-prep)は、QIAGENカラム(QIAGEN)を使用することにより実施された。λDNAの単離は、製造業者により調製されたプロトコルに従い、ウィザードλプレップスDNA精製システム(Wizard lambda preps DNA purification system)(Promega, Madison, U.S.A.)により実施された。DNA断片は、QIAquick又はQIAEX II(QIAGEN)を使用することにより、アガロースより単離され精製された。λファージ誘導体の操作は、製造業者(Stratagene)により調製されたプロトコルに従い実施された。
P.ロドチーマからの全RNAの単離は、Isogen(Nippon Gene, Toyama, Japan)を使用することにより、フェノール法により実施された。mRNAは、このようにして得られた全RNAから、mRNA分離キット(Clontech)を使用することにより精製された。cDNAは、CapFinder cDNA構築キット(Clontech)を使用することにより合成された。
インビトロパッケージングは、Gigapack III gold packaging extract(Stratagene)を使用することにより実施された。
ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)は、Perkin Elmerモデル2400からの温度サイクラーにより実施された。各PCR条件は、実施例に記載される。PCRプライマーは商業的な供給元より購入された。DNA配列決定のための蛍光DNAプライマーは、Pharmaciaより購入された。DNA配列決定は、自動蛍光DNAシーケンサー(ALFred, Pharmacia)により実施された。
DH5αのコンピテント細胞は、東洋紡(Japan)より購入された。
実施例1:P.ロドチーマからのmRNAの単離及びcDNAライブラリーの構築
P.ロドチーマのcDNAライブラリーを構築するため、細胞破壊の直後にフェノール抽出法により全RNAを単離し、P.ロドチーマATCC96594株からのmRNAをmRNA分離キット(Clontech)を使用することにより精製した。
まず、YPD培地中の2日間培養物10mlからの株ATCC96594の細胞を、遠心分離(10分間1500×g)により採集し、抽出緩衝液(0.7M KClを含有する10mMクエン酸Na/HCl(pH6.2))により1回洗浄した。抽出緩衝液2.5mlに懸濁させた後、製造業者により指定された方法に従い、細胞を、1500kgf/cm2でフレンチプレスホモジナイザー(Ohtake Works Corp., Tokyo, Japan)により破壊し、直ちに、2倍容量のIsogen(Nippon gene)と混合した。この工程で、400μgの全RNAが回収された。
次いで、この全RNAを、製造業者により指定された方法に従い、mRNA分離キット(Clontech)を使用することにより精製した。最終的に、16μgのP.ロドチーマATCC96594株からのmRNAが得られた。
cDNAライブラリーを構築するため、CapFinder PCR cDNA構築キット(Clontech)を、製造業者により指定された方法に従って使用した。1μgの精製されたmRNAを、第一鎖合成のために適用した後、PCR増幅を行った。このPCRによる増幅の後、1mgのcDNAプールが得られた。
実施例2:P.ロドチーマからの部分ACC(アセチル-CoAカルボキシラーゼ)遺伝子のクローニング
P.ロドチーマからの部分ACC遺伝子をクローニングするため、縮重PCR法を活用した。アセチル-CoAカルボキシラーゼの配列が多重整列化分析のために使用された種及びデータベースへのアクセッション番号は、以下の通りである。
Figure 2006500058
他の種からの既知のアセチル-CoAカルボキシラーゼ遺伝子の共通配列に基づき設計され合成されたヌクレオチド配列を有する二つの混合プライマー:acc9(センスプライマー)(配列番号:4)及びacc13(アンチセンスプライマー)(配列番号:5)(配列中、「n」はヌクレオチドa、c、g、又はtを意味し、「h」はヌクレオチドa、c、又はtを意味し、「m」はヌクレオチドa又はcを意味し、「k」はヌクレオチドg又はtを意味し、かつ「y」はヌクレオチドc又はtを意味する)。ExTaq(宝酒造)をDNAポリメラーゼとして使用し、実施例1で得られたcDNAプールを鋳型として使用することによる、95℃30秒、45℃30秒、及び72℃15秒の25サイクルのPCR反応の後、反応混合物をアガロースゲル電気泳動に適用した。所望の長さ(0.8kb)を有していた一つのPCRバンドを、アガロースゲルから回収し、製造業者による方法に従ってQIAquick(QIAGEN)により精製し、次いで、pMOSBlue-T-ベクター(Amersham)にライゲーションさせた。コンピテント大腸菌DH5αの形質転換の後、6個の白コロニーを選択し、プラスミドを自動DNA単離システムにより単離した。配列決定の結果、3個のクローンが、推定アミノ酸配列が既知のアセチル-CoAカルボキシラーゼ遺伝子に類似している配列を有していることが見出された。これらの単離されたcDNAクローンを、pACC1014と名付け、さらなるスクリーニング研究のため使用した。
実施例3:P.ロドチーマからのゲノムDNAの単離
P.ロドチーマからゲノムDNAを単離するため、QIAGENゲノムキットを、製造業者により指定された方法に従って使用した。まず、YPD培地中の一晩培養物100mlからのP.ロドチーマATCC96594株の細胞を、遠心分離(10分間1500×g)により採集し、TE緩衝液(1mM EDTAを含有している10mMトリス/HCl(pH8.0))により1回洗浄した。QIAGENゲノムキットのY1緩衝液8mlに懸濁させた後、酵素的分解により細胞を破壊するためライティカーゼ(lyticase)(SIGMA, St.Louis, U.S.A.)を2mg/mlの濃度で添加し、反応混合物を30℃で90分間インキュベートし、次いで、次の抽出工程に進んだ。最終的に、20μgのゲノムDNAが得られた。
実施例4:pACC1014をプローブとして使用することによるサザンブロットハイブリダイゼーション
P.ロドチーマからACC遺伝子を含有しているゲノム断片をクローニングするため、サザンブロットハイブリダイゼーションを実施した。2μgのゲノムDNAをEcoRIにより消化し、アガロースゲル電気泳動に供した後、酸処理及びアルカリ処理を行った。変性したDNAを、1時間、トランスブロット(transblot)(Joto Rika, Tokyo, Japan)を使用することにより、ナイロン膜(Hybond N+、Amersham)に転写した。ナイロン膜に転写されたDNAを、熱処理(80℃、90分)により固定した。プローブは、DIGマルチプライミング(multipriming)法(Boehringer Mannheim)により、鋳型DNA(EcoRI及びSalIで消化されたpACC1014)を標識することにより調製された。ハイブリダイゼーションは、製造業者により指定された方法により実施された。その結果、ハイブリダイズしたバンドが、2.0〜2.3キロ塩基(kb)の範囲に可視化された。
実施例5:ACC遺伝子を含有しているゲノム断片のクローニング
4μgのゲノムDNAをEcoRIにより消化し、アガロースゲル電気泳動に供した。次いで、1.5〜2.7kbの範囲の長さを有するDNAを、製造業者により指定された方法に従ってQIAEX IIゲル抽出キット(QIAGEN)により回収した。精製されたDNAを、0.5μgのEcoRIで消化されCIAP(仔ウシ腸アルカリホスファターゼ)で処理されたλZAPII(Stratagene)と16℃で一晩ライゲーションさせ、Gigapack IIIゴールド・パッケージング・エキストラクト(gold packaging extract)(Stratagene)によりパッケージングした。パッケージングされた抽出物を大腸菌MRF'株に感染させ、LB寒天培地へ注入されたNZY培地を重層した。EcoRI及びSalIで消化されたpACC1014をプローブとして使用することにより、約5000個のプラークがスクリーニングされた。5個のプラークが標識されたプローブにハイブリダイズした。
挿入物断片を大腸菌クローニングベクターpBluescript SKへとクローニングするため、指示マニュアル(Stratagene)に従い、P.ロドチーマからの推定ACC遺伝子を含有しているこれらのλZAPII誘導体に、インビボ切り出しプロトコルを適用した。5個の陽性プラークから回収された各クローンを配列決定分析に供したところ、それらのうち3個がpACC1014の挿入物断片と同一の配列を有していることが見出された。クローンのうちの1個をpACC1224と命名し、さらなる研究のため使用した。pACC1224内の挿入物断片の領域全体の完全配列決定の結果、このクローンはACC遺伝子の5'末端も3'末端も含有していないことが示唆された。
実施例6:ゲノム歩行(genome walking)法によるP.ロドチーマのゲノムからのpACC1224内の挿入物断片の隣接領域のクローニング
pACC1224の内部配列に基づき2個のPCRプライマーacc17(配列番号:6)及びacc18(配列番号:7)を合成し、ゲノム歩行法のため使用した。ゲノム歩行法については、供給元(Clontech)から提供された指示マニュアルのプロトコルに従った。acc17プライマーを使用したPCR反応において、2.8kbのPCRバンドがゲノムStuIライブラリーより出現した。acc18プライマーの場合には、2.2kbのPCRバンドがゲノムPvuIIライブラリーにおいて生じた。これらのPCRバンドをpCR2.1-TOPO(Invitrogen)へとクローニングしたところ、2.8kbのPCRバンドがACC遺伝子の5'断片を含有しており、2.2kbのPCRバンドがACC遺伝子の3'断片を含有していることが明らかとなった。2.8kb及び2.2kbのPCR断片を含有しているクローンを、それぞれpACCStu107及びpACCPvd107と命名し、さらなる研究のため使用した。
実施例7:pACCStu107及びpACCPvd107をプローブとして使用することによるサザンブロットハイブリダイゼーション
P.ロドチーマからACC遺伝子をカバーしているゲノム断片をクローニングするため、サザンブロットハイブリダイゼーションを実施した。2μgのゲノムDNAをEcoRIにより消化し、アガロースゲル電気泳動に供した後、酸処理及びアルカリ処理を行った。変性したDNAを、1時間、トランスブロット(Joto Rika, Tokyo, Japan)を使用することにより、ナイロン膜(Hybond N+、Amersham)に転写した。ナイロン膜に転写されたDNAを、熱処理(80℃、90分)により固定した。プローブは、DIGマルチプライミング法(Boehringer Mannheim)により、鋳型DNA(EcoRIで消化されたpACCStu107及びpACCPvd107)を標識することにより調製された。ハイブリダイゼーションは、製造業者により指定された方法により実施された。その結果、pACCStu107内の挿入物断片をプローブとして使用した場合には、サイズが2.0kb、0.9kb、及び0.6kbに近い数個のハイブリダイズしたバンドが可視化された。pACCPvd107内の挿入物断片をプローブとして使用した場合には、ハイブリダイズしたバンドが、6.0kb〜6.5kbの範囲に可視化された。
実施例8:ACC遺伝子をカバーしているゲノムクローンのクローニング
実施例5と同様にして、pACCStu107及びpACCPvd107内の挿入物断片を含有しているゲノム断片を、プラークハイブリダイゼーションによってクローニングした。4μgのゲノムDNAをEcoRIにより消化し、アガロースゲル電気泳動に供した。次いで、(1)2.7〜5.0kb;(2)1.4〜2.7kb;及び(3)0.5〜1.4kbの範囲の長さを有するDNAを、製造業者により指定された方法に従ってQIAEX IIゲル抽出キット(QIAGEN)により回収した。
精製された各DNAを、0.5μgのEcoRIで消化されCIAP(仔ウシ腸アルカリホスファターゼ)で処理されたλZAPII(Stratagene)と16℃で一晩ライゲーションさせ、Gigapack IIIゴールド・パッケージング・エキストラクト(Stratagene)によりパッケージングした。パッケージングされた抽出物を大腸菌MRF'株に感染させ、LB寒天培地へ注入されたNZY培地を重層した。EcoRIで消化されたpACCStu107及びpACCPvd107をプローブとして使用することにより、約5000個のプラークがスクリーニングされた。プラークハイブリダイゼーション研究の後、以下の候補が単離された。
1)pACCPvd107の挿入物をプローブとして使用することにより、2.7〜6.0kbライブラリーから3個のプラーク。
2)pACCStu107の挿入物をプローブとして使用することにより、1.4〜2.7kbライブラリーから3個のプラーク。
3)pACCStu107の挿入物をプローブとして使用することにより、0.5〜1.4kbライブラリーから21個のプラーク。
挿入物断片を大腸菌クローニングベクターpBluescript SKへとクローニングするため、指示マニュアル(Stratagene)に従い、P.ロドチーマからの推定ACC遺伝子を含有しているこれらのλZAPII誘導体に、インビボ切り出しプロトコルを適用した。陽性プラークから回収された各クローンを配列決定分析に供した。BLAST X分析(http://www.blast.genome.ad.jp/)から、少なくとも、各クローンは推定ACC遺伝子を有していた。以下のクローンを選択し、さらなる研究のため使用した。
6kbの挿入物を有しており、かつACC遺伝子の3'末端をカバーしているpACC119-18;
pACC1224挿入物断片の5'末端に隣接している0.6kbの挿入物を有しているpACC119-17-0.6;
pACC119-17-0.6挿入物断片の5'末端に隣接している2kbの挿入物を有しているpACC119-17-2;及び
pACC119-17-2挿入物断片の5'末端に隣接している0.9kbの挿入物を有しているpACC127-17-0.9。
pACC119-18、pACC119-17-0.6、pACC119-17-2、及びpACC127-17-0.9内の挿入物断片の領域全体の完全配列決定の結果、これらのクローンはACC遺伝子の5'末端をカバーしていないことが示唆された。
実施例9:ゲノム歩行法によるP.ロドチーマのゲノムからのpACC127-17-0.9内の挿入物断片の隣接領域のクローニング
pACC127-17-0.9の内部配列に基づきPCRプライマーacc26(配列番号:8)を合成し、ゲノム歩行法のため使用した。
acc26プライマーを使用したPCR反応において、2.6kbのPCRバンドがゲノムPvuIIライブラリーより出現した。このPCRバンドをpCR2.1-TOPO(Invitrogen)へとクローニングしたところ、BLAST X分析の結果、このクローンがACC遺伝子の5'断片を含有していることが明らかとなった。このクローンをpACCPvu126と命名し、さらなる研究のため使用した。
実施例10:pACCPvu126をプローブとして使用することによるサザンブロットハイブリダイゼーション
P.ロドチーマからのACC遺伝子の5'末端をカバーしているゲノム断片をクローニングするため、サザンブロットハイブリダイゼーションを実施した。実施例7と同様にして、サザンブロットハイブリダイゼーションを実施した。プローブは、DIGマルチプライミング法(Boehringer Mannheim)により、鋳型DNA(EcoRIで消化されたpACCPvu126)を標識することにより調製された。ハイブリダイゼーションは、製造業者により指定された方法により実施された。その結果、サイズが5.0kbに近いハイブリダイズしたバンドが可視化された。
実施例11:ACC遺伝子の5'末端をカバーしているゲノムクローンのクローニング
実施例8と同様にして、pACCPvu126内の挿入物断片を含有しているゲノム断片を、プラークハイブリダイゼーションによってクローニングした。実施例8において調整された2.7〜6.0kb長をカバーしているゲノムライブラリーも使用した。DIGで標識されたpACCPvu126の挿入物断片にハイブリダイズした12個の陽性プラークを単離し、プラスミドDNAを得るためインビボ切り出しに供した。このようにして単離されたプラスミドの配列決定の結果、プラスミドの大部分が、pACCPvu126の挿入物断片と同一の配列を有していた。クローンのうちの1個をpACC204と命名し、さらなる研究のため使用した。
実施例12:pACC204とpACC127-17-0.9との間のギャップ領域のクローニング
pACC204内の挿入物断片の3'末端及びpACC127-17-0.9内の挿入物断片の5'末端の配列決定研究に続く、既知のアセチル-CoAカルボキシラーゼ遺伝子に対するBLAST X分析の結果、ACC遺伝子全体をカバーするためには、まだおよそ0.3kbの断片が失われていることが示唆された。pACC204及びpACC127-17-0.9の内部配列に基づき、以下のPCRプライマーを設計した:acc43(センスプライマー)(配列番号:9)及びacc44(アンチセンスプライマー)(配列番号:10)。
HFポリメラーゼ(Clontech)をDNAポリメラーゼとして使用し、実施例3で得られたゲノムDNAを鋳型として使用することによる、94℃15秒、55℃30秒、及び72℃15秒の25サイクルのPCR反応の後、反応混合物をアガロースゲル電気泳動に適用した。所望の長さ(0.3kb)を有していた一つのPCRバンドを、アガロースゲルから回収し、製造業者による方法に従ってキアクイック(QIAGEN)により精製し、次いで、pCR2.1-TOPO(Invitrogen)へとクローニングした。コンピテント大腸菌TOP10の形質転換の後、6個の白コロニーを選択し、プラスミドを自動DNA単離システムにより単離した。配列決定の結果、5個のクローンが、相互に同一の配列を有していることが見出された。単離されたクローンのうちの1個を、pACC210と名付けた。
実施例13:ACC遺伝子を含有している完全ゲノム断片の配列決定
pACC204、pACC210、pACC127-17-0.9、pACC119-17-2、pACC119-17-0.6、pACC1224、及びpACC119-18を、AutoRead sequencing kit(Pharmacia)を使用することにより、プライマー歩行(primer walking)法により配列決定した。
配列決定の結果、プロモーター(1445塩基対)及びターミネーター(1030塩基対)を含有しているP.ロドチーマからのACC遺伝子を含有しているゲノム断片の10561塩基対を含むヌクレオチド配列が決定された(配列番号:1)。そのコーディング領域は、8086塩基対長であり、19個のエキソン及び18個のイントロンからなっていた。イントロンは、5'又は3'のバイアスなしにコーディング領域全体に分散していた。オープンリーディングフレーム(配列番号:2)は、GENETYX-SV/RCソフトウェア(Software Development Co.,Ltd., Tokyo, Japan)による相同性探索の結果、他の種からのアセチル-CoAカルボキシラーゼの既知のアミノ酸配列と著しく類似している配列を有する(エメリセラ・ニズランスからのアセチル-CoAカルボキシラーゼとの56.28%の同一性)、2187アミノ酸(配列番号:3)からなることが見出された。
図1は、P.ロドチーマの染色体上のACC遺伝子領域をカバーしているクローニングされたDNA断片を図示している。
実施例14:ACC遺伝子のアンチセンスプラスミドの構築
ACC遺伝子の構造遺伝子全体をカバーするアンチセンス遺伝子断片をPCR法により増幅し、次いで、P.ロドチーマにおいてアンチセンスACC遺伝子が自己ACCプロモーターにより転写される組み込みベクターへとクローニングする。
プライマーは、制限酵素SfiIの非対称認識配列(GGCCNNNNNGGCC)を含んでいるが、それらの非対称突出(hang-over)配列は、異なっているよう設計されている。これは、ライゲーション配列に同じ非対称配列を有している発現ベクターへの定方向クローニングを可能にする。そのような構築の使用は、欧州特許第1,158,051号に開示されている。
アンチセンスACC遺伝子の転写を駆動することができるプロモーター及びターミネーターの断片のため、配列番号:1に記載された配列情報を使用することにより、ACCのプロモーター及びターミネーターを染色体よりクローニングする。ACCターミネーターを含有しているDNA断片をpG418Sa330(欧州特許第1,035,206号)のG418耐性カセットへとライゲーションさせることにより、ACCターミネーター断片をG418耐性カセットに融合させ、pBluescriptII KS-(Stratagene)のような適切なベクターに挿入した。
次いで、リボソームDNA(rDNA)遺伝子座(Wery et al., Gene, 184, 89-97, 1997)を含有している3.1kbのSacI断片を、このようにして調製されたプラスミド上のG418カセットの下流に挿入する。真核生物の染色体には、rDNA断片が多コピー存在する。rDNA断片を介した組み込みイベントは、使用された宿主の染色体へのマルチコピーされた組み込みをもたらし、これは、発現ベクター内に保持されている外来遺伝子の過剰発現を可能にする。
続いて、ACCプロモーターを、P.ロドチーマにおいて機能する発現ベクターの構築物へ、ACCターミネーターの上流に挿入する。
最終的に、アンチセンスACCを含有している1.5kbのSfiI断片を、P.ロドチーマにおいて機能するこのようにして調製された発現ベクターへと挿入することにより、アンチセンスACC構築物が完成する。類似のプラスミド構築は、欧州特許第1,158,051号に開示されている。
実施例15:ACC-アンチセンスベクターによるP.ロドチーマの形質転換
このようにして調製されたACC-アンチセンスベクターを、P.ロドチーマ野生型株ATCC96594へと形質転換する。微粒子銃形質転換のプロトコルは、欧州特許第1,158,051号に開示されている。
実施例16:P.ロドチーマのアンチセンスACC組換え体の特徴決定
3日間、20℃で試験管(直径21mm)においてYPD培地10ml中で増殖した種培養物を使用することにより、P.ロドチーマATCC96594のアンチセンスACC組換え体を、3日間、20℃で500mlエルレンマイヤーフラスコ内のYPD培地50ml中で培養する。産生されたカロテノイドの分析のため、適切な容量の培養ブロスを採取し、それらの増殖、カロテノイド、特にアスタキサンチンの生産性の分析のため使用する。増殖の分析のためには、660nmにおける光学密度をUV-1200光度計(Shimadzu Corp., Kyoto, Japan)を使用することにより測定し、さらに、1日間100℃での微量遠心分離の後、ブロス1mlに由来する細胞を完全に乾燥させることにより、乾燥細胞重量を決定する。アスタキサンチン及び総カロテノイドの含有量の分析のためには、細胞を、微量遠心分離の後、ブロス1.0mlから採集し、ガラスビーズによる破壊によるP.ロドチーマの細胞からのカロテノイドの抽出のために使用する。抽出の後、破壊された細胞を遠心分離により除去し、その結果得られたものを、HPLCによりカロテノイド含有量に関して分析する。使用されるHPLC条件は、以下の通りである:HPLCカラム:Chrompack Lichrosorb si-60(4.6mm、250mm)、温度:室温、溶出剤:アセトン/ヘキサン(18/82)(溶出剤に1ml/Lの水を添加)、注入容量:10μl、流速:2.0ml/min、検出:450nmにおけるUV。アスタキサンチンの参照試料は、Hoffmann La-Roche(Basel, Switzerland)より入手され得る。
P.ロドチーマにおけるアセチル-CoAからアスタキサンチンへの演繹された(deducted)生合成経路を示す図である。 P.ロドチーマの染色体上のACC遺伝子領域をカバーしているクローニングされたDNA断片を示す図である。
【配列表】
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Claims (26)

  1. 以下からなる群より選択される1つまたは複数の核酸分子を含む、単離されたポリヌクレオチド:
    (a)配列番号:3のポリペプチドの少なくとも成熟型をコードする核酸分子;
    (b)配列番号:2のコード配列を含む核酸分子;
    (c)遺伝暗号の結果ヌクレオチド配列が変性して(a)又は(b)のヌクレオチド配列となる、核酸分子;
    (d)(a)〜(c)のヌクレオチドによりコードされるポリペプチドのアミノ酸配列の1個又は数個のアミノ酸の置換、欠失、及び/又は付加によって、(a)〜(c)のポリヌクレオチドによりコードされるポリペプチドに由来するポリペプチドをコードする核酸分子;
    (e)(a)又は(b)の核酸分子によりコードされるポリペプチドのアミノ酸配列と56.3%以上の同一性を有する配列を有するポリペプチドに由来するポリペプチドをコードする核酸分子;
    (f)(a)〜(e)のいずれかの核酸分子によりコードされる断片を含み、かつアセチル-CoAカルボキシラーゼ活性を有する、核酸分子;
    (g)配列番号:4、5、及び6のプライマーを使用してファフィア(Phaffia)核酸ライブラリーより増幅された核酸分子の配列を有するポリヌクレオチドを含む核酸分子;
    (h)アセチル-CoAカルボキシラーゼ活性を有するポリペプチドをコードする核酸分子であって、該ポリペプチドが(a)〜(g)のいずれかによりコードされるポリペプチドの断片である、核酸分子;
    (i)(a)〜(d)のいずれかのポリヌクレオチドの少なくとも15ヌクレオチドを含む核酸分子;
    (j)アセチル-CoAカルボキシラーゼ活性を有するポリペプチドをコードする核酸分子であって、該ポリペプチドが、(a)〜(h)のいずれかの核酸分子によりコードされるポリペプチドに対して作製された抗体により認識される、核酸分子;
    (k)(a)〜(j)のいずれかの核酸分子の配列を有するプローブを用いたストリンジェントな条件の下での適切なライブラリーのスクリーニングにより入手可能であり、かつアセチル-CoAカルボキシラーゼ活性を有するポリペプチドをコードする核酸分子;ならびに
    (l)(a)〜(k)のいずれかの核酸分子とストリンジェントな条件の下でハイブリダイズする相補鎖を有し、かつアセチル-CoAカルボキシラーゼ活性を有するポリペプチドをコードする核酸分子。
  2. 以下からなる群より選択される1つまたは複数の核酸分子を含む、単離されたポリヌクレオチド:
    (m)配列番号:1のヌクレオチド配列を含む核酸分子;
    (n)遺伝暗号の結果ヌクレオチド配列が変性して(m)のヌクレオチド配列となる、核酸分子;
    (o)(m)または(n)のヌクレオチドによりコードされるポリペプチドのアミノ酸配列の1個又は数個のアミノ酸の置換、欠失、及び/又は付加によって、(m)または(n)のポリヌクレオチドによりコードされるポリペプチドに由来するポリペプチドをコードする核酸分子;
    (p)(m)の核酸分子によりコードされるポリペプチドのアミノ酸配列と56.3%以上の同一性を有する配列を有するポリペプチドに由来するポリペプチドをコードする核酸分子;
    (q)(m)〜(p)のいずれかの核酸分子によりコードされる断片を含み、かつアセチル-CoAカルボキシラーゼ活性を有する、核酸分子;
    (r)配列番号:4、5、及び6のプライマーを使用してファフィア核酸ライブラリーより増幅された核酸分子の配列を有するポリヌクレオチドを含む核酸分子;
    (s)アセチル-CoAカルボキシラーゼ活性を有するポリペプチドをコードする核酸分子であって、該ポリペプチドが(m)〜(r)のいずれかによりコードされるポリペプチドの断片である、核酸分子;
    (t)(m)〜(o)のいずれかのポリヌクレオチドの少なくとも15ヌクレオチドを含む核酸分子;
    (u)アセチル-CoAカルボキシラーゼ活性を有するポリペプチドをコードする核酸分子であって、該ポリペプチドが、(m)〜(s)のいずれかの核酸分子によりコードされるポリペプチドに対して作製された抗体により認識される、核酸分子;
    (v)(m)〜(u)のいずれかの核酸分子の配列を有するプローブを用いたストリンジェントな条件の下での適切なライブラリーのスクリーニングにより入手可能であり、かつアセチル-CoAカルボキシラーゼ活性を有するポリペプチドをコードする核酸分子;ならびに
    (w)(m)〜(v)のいずれかの核酸分子とストリンジェントな条件の下でハイブリダイズする相補鎖を有し、かつアセチル-CoAカルボキシラーゼ活性を有するポリペプチドをコードする核酸分子。
  3. 配列番号:3により同定されるか又は配列番号:3と56.3%以上の同一性を有するアミノ酸配列をコードする、請求項1又は2記載の単離されたポリヌクレオチド。
  4. P.ロドチーマ(rhodozyma)又はキサントフィロミセス・デンドロロウス(Xanthophylomyces dendrorhous)の株に由来する、請求項1〜3のいずれか一項記載の単離されたポリヌクレオチド。
  5. 請求項1〜4のいずれか一項記載のポリヌクレオチドをベクターに挿入する工程を含む、組換えベクターを作成する方法。
  6. 請求項1〜4のいずれか一項記載のポリヌクレオチドを含有するか又は請求項5の方法により作製された組換えベクター。
  7. 請求項1〜4のいずれか一項記載のポリヌクレオチドが、原核細胞又は真核細胞における発現を可能にする発現調節配列と機能的に連結されている、請求項6のベクター。
  8. 請求項6又は7のベクターを宿主生物へ導入する工程を含む、組換え生物を作成する方法。
  9. 宿主生物が、大腸菌、バキュロウイルス、又はS.セレビシエ(cerevisiae)より選択される、請求項8の方法。
  10. 請求項6もしくは7のベクターを含有するか又は請求項8もしくは9の方法により作製された組換え生物。
  11. 請求項10記載の組換え生物を培養する工程、及び該組換え生物の培養物からポリペプチドを回収する工程を含む、アセチル-CoAカルボキシラーゼ活性を有するポリペプチドを作製する方法。
  12. 請求項11記載の方法により入手可能なポリペプチド。
  13. 請求項12記載のポリペプチドと特異的に結合する抗体。
  14. 請求項1〜4のいずれか一項記載のポリヌクレオチドに対するアンチセンスポリヌクレオチド。
  15. 請求項14記載のポリヌクレオチドをベクターに挿入する工程を含む、組換えベクターを作成する方法。
  16. 請求項14記載のポリヌクレオチドを含有するか又は請求項15記載の方法により作製された組換えベクター。
  17. 請求項14記載のポリヌクレオチドが、原核細胞又は真核細胞における発現を可能にする発現調節配列と機能的に連結されている、請求項16記載のベクター。
  18. 請求項16又は17記載のベクターを宿主生物へ導入する工程を含む、組換え生物を作成する方法。
  19. 宿主生物が、ファフィア・ロドチーマ又はキサントフィロミセス・デンドロロウスの株に属する、請求項18記載の方法。
  20. 請求項16もしくは17記載のベクターを含有するか又は請求項18もしくは19記載の方法により作製された組換え生物。
  21. アセチル-CoAカルボキシラーゼの遺伝子発現が宿主生物と比較して低下しており、そのため、宿主生物と比べて増強されたレベルでカロテノイドを産生し得ることを特徴とする、請求項20記載の組換え生物。
  22. アセチル-CoAカルボキシラーゼの遺伝子発現が、アンチセンス技術、部位特異的変異誘発、エラープローン(error prone)PCR、又は化学的変異誘発より選択された技術によって低下している、請求項21記載の組換え生物。
  23. 請求項21記載の組換え生物を培養する工程を含む、カロテノイドを作製する方法。
  24. カロテノイドが、アスタキサンチン、β-カロテン、リコペン、ゼアキサンチン、カンタキサンチンより1つまたは複数選択される、請求項23記載の方法。
  25. 請求項21記載の組換え生物におけるアセチル-CoAカルボキシラーゼの遺伝子発現が、アンチセンス技術、部位特異的変異誘発、エラープローンPCR、又は化学的変異誘発より選択された技術によって低下している、請求項23記載の方法。
  26. 適当な条件の下で微生物を培養する工程、及び、任意に、得られたカロテノイドを回収する工程によるカロテノイドの作製方法であって、微生物のアセチル-CoAカルボキシラーゼの遺伝子発現が、例えばアンチセンス技術、部位特異的変異誘発、エラープローンPCR、又は化学的変異誘発より選択された技術によって低下していることを特徴とする、方法。
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