JP2006351246A - 電力変換装置、及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】十分な電力を得ることが可能な電力変換装置、及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】マイクロチャネルデバイス10には、電力変換用液体の一方として酸性水溶液Aと、電力変換用液体の他方として塩基性水溶液Bと、の層流が形成される主マイクロチャネル12(主流路)を有しており、当該主マイクロチャネル12の両端に2つの第1供給用マイクロチャネル14A(第1供給流路)及び第2供給用マイクロチャネル14B(第2供給流路)と一つの排出用マイクロチャネル16(排出流路)とがそれぞれ連通している。また、マイクロチャネルデバイス10には、主マイクロチャネル12内に形成される層流と接触するように、正電極と負電極となる電極18が配設されている。電極18のうち、正電極は当該層流を構成する酸性水溶液Aと、負電極は当該層流を構成する塩基性水溶液Bと、それぞれ接触するように配設されている。このような構成のマイクロチャネルデバイスを複数具備させる。
【選択図】 図1
【解決手段】マイクロチャネルデバイス10には、電力変換用液体の一方として酸性水溶液Aと、電力変換用液体の他方として塩基性水溶液Bと、の層流が形成される主マイクロチャネル12(主流路)を有しており、当該主マイクロチャネル12の両端に2つの第1供給用マイクロチャネル14A(第1供給流路)及び第2供給用マイクロチャネル14B(第2供給流路)と一つの排出用マイクロチャネル16(排出流路)とがそれぞれ連通している。また、マイクロチャネルデバイス10には、主マイクロチャネル12内に形成される層流と接触するように、正電極と負電極となる電極18が配設されている。電極18のうち、正電極は当該層流を構成する酸性水溶液Aと、負電極は当該層流を構成する塩基性水溶液Bと、それぞれ接触するように配設されている。このような構成のマイクロチャネルデバイスを複数具備させる。
【選択図】 図1
Description
本発明は、電力変換用流体の移動を行うマイクロチャネル(流路)内に電力変換部が形成された電力変換用マイクロ流体素子を複数具備する電力変換装置、及びその製造方法に関する。
近年、反応・分離・抽出・検出などの基本化学操作を行うことのできるマイクロ流体素子が盛んに研究されている。このマイクロ流体素子を用いることで、基本化学操作を行う反応空間の集積化、小型化が可能となり、合成機器や分析機器などへの適用が検討されている。
マイクロ流体素子の構成要素は、断面寸法が数十〜数百ミクロンのマイクロチャネル(流路)である。マイクロチャネルは通常2枚の板、すなわち微細なチャネルとなる溝を形成した基板と、平らな基板とを接合することによって形成される。
このようなマイクロ流体素子を電力変換素子として利用しようという提案がある(例えば、非特許文献1等)。この提案では、マイクロ流体素子に2種類の電力変換用流体を導入して、マイクロチャネル内に層流を形成し、当該層流領域で化学反応によるエネルギーを電気的エネルギー(電力)に変換するものである。
Journal of Power Sources 128(2004) p54〜60
上記提案に加え、特願2003−393714にも電力変換用のマイクロ流体素子が提案されているが、マイクロ流体素子単体での電力変換を行っているため、十分な電力を得られておらず、十分な電力を得ることが可能に当該マイクロ流体素子を集積化させることが望まれている。
従って、本発明は、十分な電力を得ることが可能な電力変換装置、及びその製造方法を提供することを目的とする。
上記課題は、以下の手段により解決される。即ち、
本発明の電力変換装置は、
少なくとも2つの電力変換用流体の層流が形成され、当該層流領域で前記電力変換用流体間の反応による電力変換が行われる主流路と、
前記主流路の一端に連通され、前記電力変換用流体を前記主流路に供給する少なくとも2つの第1供給流路及び第2供給流路と、
前記主流路の他端に連通され、前記電力変換用流体を前記主流路から排出する少なくとも1つの排出流路と、
前記主流路において層流を形成する前記少なくとも2つの電力変換用流体の各々に接触して配設された一対の電極と、
を有する電力変換用マイクロ流体素子を複数具備したことを特徴としている。
本発明の電力変換装置は、
少なくとも2つの電力変換用流体の層流が形成され、当該層流領域で前記電力変換用流体間の反応による電力変換が行われる主流路と、
前記主流路の一端に連通され、前記電力変換用流体を前記主流路に供給する少なくとも2つの第1供給流路及び第2供給流路と、
前記主流路の他端に連通され、前記電力変換用流体を前記主流路から排出する少なくとも1つの排出流路と、
前記主流路において層流を形成する前記少なくとも2つの電力変換用流体の各々に接触して配設された一対の電極と、
を有する電力変換用マイクロ流体素子を複数具備したことを特徴としている。
本発明の電力変換装置は、複数の電力変換用マイクロ流体素子を具備しているので、十分な電力を得ることが可能となる。
本発明の電力変換装置において、複数の前記電力変換用マイクロ流体素子を前記主流路の流液方向が異なるように配列された第1流体素子及び第2流体素子から構成し、当該第1流体素子及び第2流体素子を交互に配列することができる。この構成により、供給流路及び排出流路が偏在させることなく配置され、複数のマイクロ流体素子を高集積化でき、省スペースで十分な電力を得ることが可能となる。特に、Y字型マイクロチャネル等のように供給流路と排出流路の数が等しくない流体素子を複数並べる場合には、このような配置にすることは効果的である。
本発明の電極変換装置において、前記排出流路を中心部へ配設し、前記第1供給流路及び第2供給流路を外周側へ配設するように、複数の前記電力変換用マイクロ流体素子を周方向に配列することもできる。この構成より、排出流路が中央部に集中して配置され、複数のマイクロ流体素子を高集積化でき、省スペースで十分な電力を得ることが可能となる。
本発明の電力変換装置において、隣合う前記電力変換用マイクロ流体素子における前記一対の電極のうち、対向する電極を共通化することができる。この構成により、電極形成領域が小さくなり、省スペースで十分な電力を得ることが可能となる。
本発明の電力変換装置において、複数の前記第1供給流路に連通され前記電力変換用流体を前記第1供給流路に共通して供給する第1共通供給流路と、複数の前記第2供給流路に連通され前記電力変換用流体を前記第2供給流路に共通して供給する第2共通供給流路と、複数の前記排出流路に連通され前記電力変換用流体を前記排出流路から共通して排出する共通排出流路と、をさらに具備することができる。この構成では、各供給流路や各排出流路に一括して電力変換用液体を供給・排出する共通流路を別途設けることで、個々の供給流路や排出流路から電力変換用液体を供給・排出する流路構成に比べ、流路長を短くすることができ、省スペースで十分な電力を得ることが可能となる。
また、このような構成において、前記主流路、前記第1供給流路、前記第2供給流路及び前記排出流路が形成された第1流路基板と、前記一対の電極が形成された電極基板と、前記第1共通供給流路、第2共通供給流路及び共通排出流路が形成された第2流路基板と、を積層した積層構造とすることができる。この構成により、各基板に各流路や電極を機能別に分離して形成することで、各流路や電極を密に形成できるため、マイクロ流体素子を容易に高集積化が実現でき、省スペースで十分な電力を得ることが可能となる。
また、前記電極基板を介して前記第1流路基板及び前記第2流路基板を順次積層し、前記電極基板に設けた貫通流路を介して、前記第1供給流路と前記第1共通供給流路、前記第2供給流路と前記第2共通供給流路、及び前記排出流路と前記共通排出流路、をそれぞれ連通することができる。さらに、前記電極基板上に前記第1流路基板及び前記第2流路基板を順次積層し、前記第1流路基板又は前記第2流路基板に設けた貫通流路を介して、前記第1供給流路と前記第1共通供給流路、前記第2供給流路と前記第2共通供給流路、及び前記排出流路と前記共通排出流路、をそれぞれ連通することもできる。これら構成により、各流路の連通を基板積層方向で3次元的に行わせて流路形成領域が削減させることで、マイクロ流体素子を容易に高集積化ができ、省スペースで十分な電力を得ることが可能となる。
一方、本発明の電力供給装置の製造方法は、
少なくとも2つの電力変換用流体の層流が形成され電力変換が行われる主流路と、
前記主流路の一端に連通され前記電力変換用流体を前記主流路に供給する少なくとも2つの第1供給流路及び第2供給流路と、
前記主流路の他端に連通され前記電力変換用流体を前記主流路から排出する少なくとも1つの排出流路と、
前記主流路に形成された前記電力変換用流体の層流に接触して配設された一対の電極と、
を有する電力変換用マイクロ流体素子を複数具備し、
複数の前記第1供給流路に連通され前記電力変換用流体を前記第1供給流路に共通して供給する第1共通供給流路と、
複数の前記第2供給流路に連通され前記電力変換用流体を前記第2供給流路に共通して供給する第2共通供給流路と、
複数の前記排出流路に連通され前記電力変換用流体を前記排出流路から共通して排出する共通排出流路と、
をさらに具備した電力変換装置の製造方法であり、
前記主流路、前記第1供給流路、前記第2供給流路及び前記排出流路を基板表面に形成する第1流路基板作製工程と、
前記一対の電極を基板表面に形成する電極基板作製工程と、
前記第1共通供給流路、第2共通供給流路及び共通排出流路を基板表面に形成する第2流路基板作製工程と、
前記第1流路基板、前記電極基板、及び前記第2流路基板を積層する基板積層工程と、
を有することを特徴としている。
少なくとも2つの電力変換用流体の層流が形成され電力変換が行われる主流路と、
前記主流路の一端に連通され前記電力変換用流体を前記主流路に供給する少なくとも2つの第1供給流路及び第2供給流路と、
前記主流路の他端に連通され前記電力変換用流体を前記主流路から排出する少なくとも1つの排出流路と、
前記主流路に形成された前記電力変換用流体の層流に接触して配設された一対の電極と、
を有する電力変換用マイクロ流体素子を複数具備し、
複数の前記第1供給流路に連通され前記電力変換用流体を前記第1供給流路に共通して供給する第1共通供給流路と、
複数の前記第2供給流路に連通され前記電力変換用流体を前記第2供給流路に共通して供給する第2共通供給流路と、
複数の前記排出流路に連通され前記電力変換用流体を前記排出流路から共通して排出する共通排出流路と、
をさらに具備した電力変換装置の製造方法であり、
前記主流路、前記第1供給流路、前記第2供給流路及び前記排出流路を基板表面に形成する第1流路基板作製工程と、
前記一対の電極を基板表面に形成する電極基板作製工程と、
前記第1共通供給流路、第2共通供給流路及び共通排出流路を基板表面に形成する第2流路基板作製工程と、
前記第1流路基板、前記電極基板、及び前記第2流路基板を積層する基板積層工程と、
を有することを特徴としている。
本発明の電力変換装置の製造方法では、上記本発明の電力変換装置で説明したように、マイクロ流体素子を容易に高集積化ができ、省スペースで十分な電力を得ることが可能な電力変換装置を得ることができる。
本発明によれば、十分な電力を得ることが可能な電力変換装置、及びその製造方法を提供することができる。
以下、本発明の実施形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、実質的に同様な機能を有する部材には、全図面通して同じ符合を付与し、重複する説明は省略することがある。
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る電力変換装置を示す模式的な平面図である。図2は、第1実施形態に係る電力変換装置を示す模式的な分解斜視図である。図3は、第1実施形態に係る電力変換装置を示す模式的な部分断面図であり、図1のA−A’断面図である。図4は、第1実施形態に係る電力変換装置を示す模式的な部分断面図であり、図1のB−B’断面図である。
図1は、第1実施形態に係る電力変換装置を示す模式的な平面図である。図2は、第1実施形態に係る電力変換装置を示す模式的な分解斜視図である。図3は、第1実施形態に係る電力変換装置を示す模式的な部分断面図であり、図1のA−A’断面図である。図4は、第1実施形態に係る電力変換装置を示す模式的な部分断面図であり、図1のB−B’断面図である。
本実施形態に係る電力変換装置は、図1〜図4に示すように、Y字型のマイクロチャネルデバイス10(電力変換用マイクロ流体素子)が複数具備されている(本実施形態では5個)。マイクロチャネルデバイス10には、電力変換用液体の一方として酸性水溶液Aと、電力変換用液体の他方として塩基性水溶液Bと、の層流が形成される主マイクロチャネル12(主流路)を有しており、当該主マイクロチャネル12の両端に2つの第1供給用マイクロチャネル14A(第1供給流路)及び第2供給用マイクロチャネル14B(第2供給流路)と一つの排出用マイクロチャネル16(排出流路)とがそれぞれ連通している。
第1供給用マイクロチャネル14Aは酸性水溶液Aを供給し、第2供給用マイクロチャネル14Bは塩基性水溶液Bを供給する、チャネルである。また、マイクロチャネルデバイス10には、主マイクロチャネル12内に形成される層流と接触するように、正電極と負電極となる電極18が配設されている。電極18のうち、正電極は当該層流を構成する酸性水溶液Aと、負電極は当該層流を構成する塩基性水溶液Bと、それぞれ接触するように配設されている(図4参照)。
ここで、酸性水溶液Aは、正極活物質(例えば過酸化水素)を含む酸性水溶液Aであり、例えば、正極活物質と共に、硫酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、塩化水素酸、ヨウ化水素酸、臭化水素酸、過塩素酸、過ヨウ素酸、オルトリン酸、ポリリン酸、硝酸、テトラフルオロホウ酸、ヘキサフルオロ珪酸、ヘキサフルオロリン酸、ヘキサフルオロ砒酸、ヘキサクロロ白金酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、クエン酸、蓚酸、サリチル酸、酒石酸、マレイン酸、マロン酸、フタル酸、フマル酸、及びピクリン酸からなる群より選択される酸を1以上含む水溶液である。本実施形態では、正極活物質として過酸化水素を利用した、H2O2/H2SO4の混合水溶液を適用している。
一方、塩基性水溶液Bは、負極活物質(例えば過酸化水素)を含む塩基性水溶液Bであり、負極活物質と共に、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、水酸化マグネシウム、水酸化アンモニウム、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム、水酸化テトラプロピルアンモニウム、及び水酸化テトラブチルアンモニウムを含む群から選択される塩基を1以上含む、又は、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、ホウ酸ナトリウム、ホウ酸カリウム、珪酸ナトリウム、珪酸カリウム、トリポリリン酸ナトリウム、トリポリリン酸カリウム、アルミン酸ナトリウム、及びアルミン酸カリウムを含む群から選択される弱酸のアルカリ金属塩を1以上含む水溶液である。本実施形態では、負極活物質として過酸化水素を利用した、H2O2/NaOHの混合水溶液を適用している。
また、電極18としての正電極及び負電極は、例えば、白金、白金黒、酸化白金被覆白金、銀、金、表面を不動態化したチタン、表面を不動態化したステンレス、表面を不動態化したニッケル、表面を不動態化したアルミニウム、炭素構造体、アモルファスカーボン、及びグラッシーカーボンからなる群より選択される1以上の材料で構成することができる。本実施形態では、正電極及び負電極共に、白金黒を適用している。
マイクロチャネルデバイス10は、主マイクロチャネル12に形成される層流の流液方向が異なように配置された第1デバイス10Aと第2デバイス10Bとで構成している。これら第1デバイス10Aと第2デバイス10Bとは、主マイクロチャネル12の流液方向が180°異なっているが、これに限られず、互いの流液方向が、例えば、互いに120°〜180°程度異なっていればよい。
そして、互いの主マイクロチャネル12が平行になるように、第1デバイス10Aと第2デバイス10Bとが、例えば、主マイクロチャネル12幅にもよるが、互いの主マイクロチャネル12間距離1000μm程度とする間隔で交互に配列している。
このように各マイクロチャネルデバイス10を配列することで、各デバイスの主マイクロチャネル12の両端側(流液方向に沿った両端側)に位置する、2つの供給用マイクロチャネル14A、14Bと排出用マイクロチャネル16との数が、互いにほぼ同一となり、当該マイクロチャネルを偏在させることなく配置させている。
また、隣合う主マイクロチャネル12内に各水溶液の層流位置が流液方向に対し、互いに異なるように、第1デバイス10Aと第2デバイス10Bとが配列している(図4参照)。つまり、第1デバイス10Aでは流液方向に対して右側が酸性水溶液A、左側が塩基性水溶液Bの層流であり、第2デバイス10Bでは流液方向に対し右側が塩基性水溶液B、左側が酸性水溶液Aの層流である。従って、図4中では、第1デバイス10Aと第2デバイス10Bが流液方向が反対なので、左側から酸性水溶液A、塩基性水溶液B、酸性水溶液A、塩基性水溶液Bの順となるように、各デバイスが配列されている。
そして、上記配列により、隣合うマイクロチャネルデバイス10の各電極18(正電極及び負極電極)の配置位置がそれぞれ対向するため、当該対向する電極を共通化している。結果、電極18は、断続した帯状に形成され、個々に電極を形成する場合に比べ、電極形成領域が削減されている。なお、異極の電極を共通化、即ち連結しているので、Y字型のマイクロチャネルデバイス10(電力変換用マイクロ流体素子)を直列接続した出力特性を得ることができる。
各マイクロチャネルデバイス10の各主マイクロチャネル12の両端側に位置する各第1供給用マイクロチャネル14Aとそれぞれ連通した第1共通供給用マイクロチャネル20A(第1共通供給流路)が2つ設けられており、同様に、各第2供給用マイクロチャネル14Bとそれぞれ連通した第2共通供給用マイクロチャネル20B(第2共通供給流路)が2つ設けられている。
第1共通供給用マイクロチャネル20A及び第2共通供給用マイクロチャネル20Bには、それぞれ酸性水溶液A及び塩基性水溶液Bを導入する導入口22A,22Bが設けられており、当該導入口22A,22Bから当該第1共通供給用マイクロチャネル20A及び第2共通供給用マイクロチャネル20Bを通じて、第1供給用マイクロチャネル14A及び第2供給用マイクロチャネル14Bへ酸性水溶液A及び塩基性水溶液Bが一括してそれぞれ供給される。
同様に、各マイクロチャネルデバイス10の各主マイクロチャネル12の両端側に位置する各排出用マイクロチャネル16とそれぞれ連通した共通排出用マイクロチャネル24(共通排出流路)が2つ設けられている。
共通排出用マイクロチャネル24には酸性水溶液A及び塩基性水溶液Bを排出する排出口26が設けられており、排出用マイクロチャネル16から共通排出用マイクロチャネル24を通じて、酸性水溶液A及び塩基性水溶液Bが一括して排出口26から排出される。
このように、各供給用マイクロチャネル14A、14Bに一括して各水溶液を供給する共通供給用マイクロチャネル20A、20Bや、各排出用マイクロチャネル16に一括して各水溶液を排出するや共通排出用マイクロチャネル24を別途設けることで、個々のチャネルに各水溶液を供給したり、排出するようにマイクロチャネルを設ける構成に比べて、多くのマイクロチャネルを集積することができる。
本実施形態に係る電力供給装置は、複数のチップ(基板)を積層した積層構造としている。具体的には、図2に示すように、電極チップ30(電極基板)を介して、第1マイクロチャネルチップ32(第1流路基板)及び第2マイクロチャネルチップ34(第2流路基板)を順次積層して、構成している。つまり、第2マイクロチャネルチップ34、電極チップ30、第1マイクロチャネルチップ32を、この順で積層している。
第1マイクロチャネルチップ32には、マイクロチャネルデバイス10を構成する、主マイクロチャネル12、第1供給用マイクロチャネル14A、第2供給用マイクロチャネル14B、排出用マイクロチャネル16がそれぞれ所定の位置に形成されている。
電極チップ30には、マイクロチャネルデバイス10を構成する、電極18がそれぞれの所定の位置に形成されている。また、電極チップ30には、第1供給用マイクロチャネル14Aと第1共通供給用マイクロチャネル20A、第2供給用マイクロチャネル14Bと第2共通供給用マイクロチャネル20B、排出用マイクロチャネル16と共通排出用マイクロチャネル24、をそれぞれ連通する連通口28も所定の位置(各連通する各マイクロチャネルが重なる位置)に形成されている(図3参照)。
第2マイクロチャネルチップ34には、第1共通供給用マイクロチャネル20A、第2共通供給用マイクロチャネル20B、共通排出用マイクロチャネル24、導入口22A,22B及び排出口26が所定の位置に設けられている。
ここで、各チップは、例えば、シリコン、ガラス、シリコーンゴム、樹脂(不飽和ポリエステル樹脂(例えば日立化成社製、ポリセット等)、ポリエチレンテレフタタレート(PET)、ポリカーボネート)などで構成することができる。その厚みは、例えば、0.1〜1.3mm程度で選択することができる。本実施形態では、各チップをシリコーンゴムで構成した。無論、各チップを異なる材料で構成してもよい。
このよに、各チップにマイクロチャネルや電極18を分離して形成することで、各構成を密に形成することができる。また、電極チップ30を貫通するように設けた連通口28により、各マイクロチャネルの連通をチップ積層方向で3次元的に行わせることで、マイクロチャネル形成領域を削減している。
本実施形態に係る電力変換装置は、上記各チップを作製した後、張り合わせることで得ることができる。具体的には、例えば、第1マイクロチャネルチップ32及び第2マイクロチャネルチップ34は、チップ表面に各マイクロチャネルとなる所定の溝を形成することで得ることができる。この溝の形成は、チップ材料によって、例えば、1以上の高いアスペクト比(溝の深さ/幅の寸法比)のマイクロチャネルを得るために半導体加工技術で使われるフォトリソグラフィーとドライエッチング技術とを用いてシリコンやガラスなどに溝加工を行う方法、マイクロマシーン加工技術で使われるLIGAプロセスを用いてPMMA(ポリメチルメタクリレート)の構造をめっきによって金属に転写する方法や、紫外線用の厚膜レジスト(エポキシ樹脂をベースとしたネガ型レジスト)の構造をシリコーンゴムなどに転写するモールド法などにより行うことができる。
また、電極チップ30は、チップ表面に化学蒸着法やスパッタ法などにより所定の位置に電極材料を堆積させることで得ることができる。
そして、得られた各チップを、位置合わせを行いつつ重ね合わせて、公知の接合技術により接合することで、本実施形態に係る電力変換装置を得ることができる。
このような構成の本実施形態に係る電力変換装置は、まず、導入口22Aから酸性水溶液Aを導入すると、第1共通供給用マイクロチャネル20Aを経て、各連通口28を通じて、第1供給用マイクロチャネル14Aへ一括して酸性水溶液Aが流入する。同時に、導入口22Bから塩基性水溶液Bを導入すると、第2共通供給用マイクロチャネル20Bを経て、各連通口28を通じて、第2供給用マイクロチャネル14Bへ一括して塩基性水溶液Bが流入する。
そして、第1供給用マイクロチャネル14Aから酸性水溶液Aが、第2供給用マイクロチャネル14Bから塩基性水溶液Bが、それぞれ主マイクロチャネル12へ流入すると、主マイクロチャネル12内では酸性水溶液A及び塩基性水溶液Bの層流が形成され、当該水溶液間の界面で正負活物質による酸化還元反応が生じ、これに起因する電力を電極18から取り出す。
一方、主マイクロチャネル12内で酸化還元反応を終えた酸性水溶液A及び塩基性水溶液Bは、排出用マイクロチャネル16へ流入した後、各連通口28を通じ、共通排出用マイクロチャネル24へ集められ、排出口26から排出される。
このようにして、本実施形態に係る電力変換装置では、電力変換が行われる。なお、電力変換や使用する材料については特願2003−393714に記載されている。
以上、説明した本実施形態に係る電力変換装置では、複数のマイクロチャネルデバイス10が容易に高集積化されており、省スペースで十分な電力を得ることが可能となる。つまり、単位面積あたりの電力エネルギー密度(単位面積あたりに得られる電力)が高い装置を実現している。
ここで、本実施形態に係る電力変換装置、即ちY字型のマイクロチャネルデバイス10が5個直列接続された装置の出力特性(出力電圧−電流密度)を図8に示す。また、比較のために、Y字型のマイクロチャネルデバイス10が一つのみの装置(単一セル)の出力特性(出力電圧−電流密度)も図8に示す。各Y字型のマイクロチャネルデバイス10の条件は以下の通りである。
・酸性水溶液A:H2SO4(0.5mol/l):H2O2(1mol/l)=2:1
・塩基性水溶液B:NaOH(0.5mol/l):H2O2(1mol/l)=2:1
・酸性水溶液A流速:0.15m/sec
・塩基性水溶液B流速:0.15m/sec
・酸性水溶液A:H2SO4(0.5mol/l):H2O2(1mol/l)=2:1
・塩基性水溶液B:NaOH(0.5mol/l):H2O2(1mol/l)=2:1
・酸性水溶液A流速:0.15m/sec
・塩基性水溶液B流速:0.15m/sec
なお、本実施形態に係る電力変換装置では、電極チップ30(電極基板)を介して第1マイクロチャネルチップ32(第1流路基板)及び第2マイクロチャネルチップ34(第2流路基板)を順次積層した形態を説明したが、これに限定されず、図5〜図6に示すような、電極チップ30上に第1マイクロチャネルチップ32(第1流路基板)及び第2マイクロチャネルチップ34(第2流路基板)を順次積層した形態であってもよい。
ここで、図5は、第1実施形態に係る電力変換装置の他の形態を示す模式的な分解斜視図である。図6は、第1実施形態に係る電力変換装置の他の形態を示す模式的な部分断面図であり、図1のA−A’断面図である。図5〜図6に示す形態の場合、連通口28は、第1マイクロチャネルチップ32に設けられ、当該連通口28を介して、各マイクロチャネルを連通している。なお、マイクロチャネルの構成によっては、連通口28は第2マイクロチャネルチップに設けてもよい。
(第2実施形態)
図7は、第2実施形態に係る電力変換装置を示す模式的な平面図である。
図7は、第2実施形態に係る電力変換装置を示す模式的な平面図である。
本実施形態に係る電力変換装置は、複数のマイクロチャネルデバイス10を周方向に、例えば、主マイクロチャネル12幅にもよるが、互いの主マイクロチャネル12を45°間隔で配列した形態である。本実施形態では、7個のマイクロチャネルデバイス10を配列した。
具体的には、排出用マイクロチャネル16を中心部へ配設し、第1供給用マイクロチャネル14A及び第2供給用マイクロチャネル14Bを外周側へ配設するように、マイクロチャネルデバイス10を周方向に配列している。そして、これに併せて、第1共通供給用マイクロチャネル20A、第2共通供給用マイクロチャネル20B、排出用マイクロチャネル16を、周方向に設けている。
また、上記配列により隣合うマイクロチャネルデバイス10の各電極18(正電極及び負極電極)の配置位置は、異極がそれぞれ対向しており、当該対向する異極の電極18を共通化している。結果、電極18は、円弧状に断続した帯状に形成されて、マイクロチャネルデバイス(電力変換用マイクロ流体素子)を直列接続した出力特性を得ることができる。
これら以外の構成は、第1実施形態とほぼ同一なので説明を省略する。
以上説明した本実施形態に係る電力変換装置では、この構成より、排出用マイクロチャネル16が中央部に集中して配置され、また、その他、同一の各マイクロチャネルを同一円周上に配置させることで、短い流路長のマイクロチャネル構成とすることができるため、複数のマイクロチャネルデバイス10が効率よく高集積化され、省スペースで十分な電力を得ることが可能となる。つまり、単位面積あたりの電力エネルギー密度(単位面積あたりに得られる電力)が高い装置を実現している。
10 マイクロチャネルデバイス(マイクロ流体素子)
12 主マイクロチャネル(主流路)
14A 第1供給用マイクロチャネル(第1供給流路)
14B 第2供給用マイクロチャネル(第2供給流路)
16 排出用マイクロチャネル(排出流路)
18 電極
20A 第1共通供給用マイクロチャネル(第1共通供給流路)
20B 第2共通供給用マイクロチャネル(第2共通供給流路)
22A,22B 導入口
22A 導入口
22B 導入口
24 共通排出用マイクロチャネル(共通排出流路)
26 排出口
28 連通口
30 電極チップ(電極基板)
32 第1マイクロチャネルチップ(第1流路基板)
34 第2マイクロチャネルチップ(第2流路基板)
A 酸性水溶液(電力変換用液体)
B 塩基性水溶液(電力変換用液体)
12 主マイクロチャネル(主流路)
14A 第1供給用マイクロチャネル(第1供給流路)
14B 第2供給用マイクロチャネル(第2供給流路)
16 排出用マイクロチャネル(排出流路)
18 電極
20A 第1共通供給用マイクロチャネル(第1共通供給流路)
20B 第2共通供給用マイクロチャネル(第2共通供給流路)
22A,22B 導入口
22A 導入口
22B 導入口
24 共通排出用マイクロチャネル(共通排出流路)
26 排出口
28 連通口
30 電極チップ(電極基板)
32 第1マイクロチャネルチップ(第1流路基板)
34 第2マイクロチャネルチップ(第2流路基板)
A 酸性水溶液(電力変換用液体)
B 塩基性水溶液(電力変換用液体)
Claims (9)
- 少なくとも2つの電力変換用流体の層流が形成され、当該層流領域で前記電力変換用流体間の反応による電力変換が行われる主流路と、
前記主流路の一端に連通され、前記電力変換用流体を前記主流路に供給する少なくとも2つの第1供給流路及び第2供給流路と、
前記主流路の他端に連通され、前記電力変換用流体を前記主流路から排出する少なくとも1つの排出流路と、
前記主流路において層流を形成する前記少なくとも2つの電力変換用流体の各々に接触して配設された一対の電極と、
を有する電力変換用マイクロ流体素子を複数具備したことを特徴とする電力変換装置。 - 複数の前記電力変換用マイクロ流体素子は前記主流路の流液方向が異なるように配列された第1流体素子及び第2流体素子からなり、
当該第1流体素子及び第2流体素子を交互に配列したことを特徴とする請求項1に記載の電力変換装置。 - 前記排出流路を中心部へ配設し、前記第1供給流路及び第2供給流路を外周側へ配設するように、複数の前記電力変換用マイクロ流体素子を周方向に配列したことを特徴とする請求項1に記載の電力変換装置。
- 隣合う前記電力変換用マイクロ流体素子における前記一対の電極のうち、対向する電極を共通化したことを特徴とする請求項1に記載の電力変換装置。
- 複数の前記第1供給流路に連通され、前記電力変換用流体を前記第1供給流路に共通して供給する第1共通供給流路と、
複数の前記第2供給流路に連通され、前記電力変換用流体を前記第2供給流路に共通して供給する第2共通供給流路と、
複数の前記排出流路に連通され、前記電力変換用流体を前記排出流路から共通して排出する共通排出流路と、
をさらに具備することを特徴とする請求項1に記載の電力変換装置。 - 前記主流路、前記第1供給流路、前記第2供給流路及び前記排出流路が形成された第1流路基板と、
前記一対の電極が形成された電極基板と、
前記第1共通供給流路、第2共通供給流路及び共通排出流路が形成された第2流路基板と、
を積層した積層構造としたことを特徴とする請求項5に記載の電力変換装置。 - 前記電極基板を介して前記第1流路基板及び前記第2流路基板を順次積層し、
前記電極基板に設けた貫通流路を介して、前記第1供給流路と前記第1共通供給流路、前記第2供給流路と前記第2共通供給流路、及び前記排出流路と前記共通排出流路、をそれぞれ連通したことを特徴とする請求項6に記載の電力変換装置。 - 前記電極基板上に前記第1流路基板及び前記第2流路基板を順次で積層し、
前記第1流路基板又は前記第2流路基板に設けた貫通流路を介して、前記第1供給流路と前記第1共通供給流路、前記第2供給流路と前記第2共通供給流路、及び前記排出流路と前記共通排出流路、をそれぞれ連通したことを特徴とする請求項6に記載の電力変換装置。 - 少なくとも2つの電力変換用流体の層流が形成され、当該層流領域で前記電力変換用流体間の反応による電力変換が行われる主流路と、
前記主流路の一端に連通され、前記電力変換用流体を前記主流路に供給する少なくとも2つの第1供給流路及び第2供給流路と、
前記主流路の他端に連通され、前記電力変換用流体を前記主流路から排出する少なくとも1つの排出流路と、
前記主流路に形成された前記電力変換用流体の層流に接触して配設された一対の電極と、
を有する電力変換用マイクロ流体素子を複数具備し、
複数の前記第1供給流路に連通され前記電力変換用流体を前記第1供給流路に共通して供給する第1共通供給流路と、
複数の前記第2供給流路に連通され前記電力変換用流体を前記第2供給流路に共通して供給する第2共通供給流路と、
複数の前記排出流路に連通され前記電力変換用流体を前記排出流路から共通して排出する共通排出流路と、
をさらに具備した電力変換装置の製造方法であって、
前記主流路、前記第1供給流路、前記第2供給流路及び前記排出流路を基板表面に形成する第1流路基板作製工程と、
前記一対の電極を基板表面に形成する電極基板作製工程と、
前記第1共通供給流路、第2共通供給流路及び共通排出流路を基板表面に形成する第2流路基板作製工程と、
前記第1流路基板、前記電極基板、及び前記第2流路基板を積層する基板積層工程と、
を有することを特徴とする電力変換装置の製造方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2005172831A JP2006351246A (ja) | 2005-06-13 | 2005-06-13 | 電力変換装置、及びその製造方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2005172831A JP2006351246A (ja) | 2005-06-13 | 2005-06-13 | 電力変換装置、及びその製造方法 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
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JP2006351246A true JP2006351246A (ja) | 2006-12-28 |
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ID=37646892
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2005172831A Pending JP2006351246A (ja) | 2005-06-13 | 2005-06-13 | 電力変換装置、及びその製造方法 |
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Country | Link |
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JP (1) | JP2006351246A (ja) |
-
2005
- 2005-06-13 JP JP2005172831A patent/JP2006351246A/ja active Pending
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