JP2006347813A - 太陽熱反射性施釉剤及びこれを用いた遮熱陶製外装材 - Google Patents

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Abstract

【課題】 素地(陶製外装材)との定着性がよく、また耐候性、耐久性に優れた太陽熱反射性施釉剤と、製造が容易で、且つ、現場での施工性もよい前記施釉剤を用いた遮熱陶製外装材を提供する。
【解決手段】 釉薬にその溶融温度より高い温度で焼成する熱反射性セラミック粒を拡散して太陽熱反射性施釉剤を構成する。釉薬は溶融剤としてガラスフリットを含むものである。また、これら太陽熱反射性施釉剤を焼成前の陶製素地に塗布し、当該陶製素地を釉薬が溶融する温度以上で、且つ、熱反射性セラミック粒が溶融する温度未満で焼成して遮熱陶製外装材を得る。陶製素地を瓦またはタイルとすれば、建物のほぼ全てを熱反射性のある外装材で構築することができる。
【選択図】 図1

Description

この発明は、太陽光からの輻射エネルギーに対する反射特性(太陽熱反射性)を有する施釉剤と、この施釉剤を適用した陶製瓦や陶製タイルなどの遮熱陶製外装材に関するものである。
近年、都市部におけるヒートアイランド現象が激化している。建物や道路に昼間蓄積された太陽光による輻射熱が日没後も放出され、夜間気温を低下させないこの現象は、ウォーターフロントの高層ビル開発等によって陸地と港湾との風路が断たれる結果、海風による冷却効果を得られないまま昼間蓄熱された輻射熱が夜間になっても都市部に籠もった状態となり、冷房機の夜間利用を増進させるといった具合に、悪化の一途をたどる始末である。また、昼夜を問わない冷房機の稼働率増加は、室外機からの熱風量増加を意味し、これにより外気温を上昇させて、さらなる冷房機の利用を誘発するという悪循環を生み出す結果、ヒートアイランド現象に拍車をかけると共に、電力使用量の増加に伴って二酸化炭素の放出量も増え、地球温暖化をさらに深刻化させる原因となっていることは、今や周知である。
そこで、輻射熱の放出による夜間気温の上昇を抑制すべく、まず昼間における蓄熱量を抑制するために、建物の外壁や屋根に太陽光の反射作用を有した遮熱技術を適用する試みが行われている。一例を挙げると、有機樹脂をバインダとして無機セラミックからなる熱反射層を塗設した外装材としての金属板(特許文献1)、セラミックの中空粒子を混合した熱反射剤により表面に反射層を形成した外装材としての不織布(特許文献2)、所定の日射反射率を有する外装材用遮熱塗料(特許文献3)、当該遮熱塗料により反射塗膜を形成した熱反射性屋根材(特許文献4)などが、それである。
特開平11−240099号公報 特開2002−333093号公報 特開2002−36877号公報 特開2005−90042号公報
特許文献1に記載の太陽熱反射性表面処理板を屋根材等の外装材として使用した場合、その熱反射効果によって輻射熱の蓄積こそ低減されるものの、その基板は金属板であるから、熱伝導性が高く、室内温度が容易に上昇する。基板そのものの温度上昇を抑制するためには、反射層の厚みを厳格に設定したり、メッキ層を下地として施すなどの必要があり、加工性に劣る。また、基板として新窯業系の瓦材も適用対象になり得ることが記載されているが、何れにしても当該技術で使用する熱反射層形成のバインダとしての有機樹脂は経年的に劣化しやすく、耐久性に劣る。
特許文献2に記載の可撓性熱反射材は、屋根や外壁の構築とは別にこれら外装材に対する貼り付け作業が必要となるから、非常に手間であると共に、外装費用も嵩む。
特許文献3の遮熱塗料は、やはり外装材(建物)の構築とは別に、現場において塗装作業を行うものであるから、手間であると共に工期が長く、また塗装技術にも熟練を要するものである。
これに対して、特許文献4に記載の熱反射性屋根材は、当該塗料による反射塗膜の形成を製造工場において既に行っておくため、現場での作業性向上という点では有利であるが、素地(基材)の製造と反射塗膜の形成とは焼成温度などの作業条件が異なることから別工程で行われる上、塗膜と素地の定着性を図るためシーラーやプライマーといった下地処理(下塗塗装)が必要となることから、生産性向上の面で改善の余地があった。
本発明は上述した課題に鑑みなされたもので、その目的とするところは、素地(陶製外装材)との定着性がよく、また耐候性、耐久性に優れた太陽熱反射性施釉剤と、製造が容易で、且つ、現場での施工性もよい前記施釉剤を用いた遮熱陶製外装材を提供することである。
上述した目的を達成するために本発明では、釉薬にその溶融温度より高い温度で焼成する熱反射性セラミック粒を拡散して太陽熱反射性施釉剤を得るという手段を用いる。釉薬は、従来から陶器瓦に使用されるものであり、長石、珪石、粘土等に適宜着色剤や顔料を添加したものである。この釉薬に拡散される熱反射性セラミック粒は、素地(基材)への焼成固定後、熱反射層を形成し、太陽熱を反射して、輻射熱の蓄積を抑制すると共に、素地およびその裏面への熱伝達を阻止する。熱反射性セラミック粒は、熱反射性樹脂塗料(例えば、長嶋特殊塗料株式会社製サーモシールド(商品名))に使用されているものが該当する。
溶融剤としてガラスフリットを含有する釉薬とすることで、施釉時に溶融したガラスフリットがバインダとして機能して、素地表面に熱反射性セラミック粒を固定できる。
これら手段により構成される施釉剤を陶製素地に塗布し、釉薬が溶融する温度以上で、且つ、熱反射性セラミック粒が溶融する温度未満で焼成することにより、表面に熱反射層を形成した遮熱陶製外装材を得るという手段を用いる。施釉による熱反射層の形成と陶製素地の焼成を同一の焼成窯で同時に行うことができる。
陶製素地は、屋根材としての瓦、外壁材としてのタイルによって構成するという手段を用いる。
以上の手段を採用することとした本発明によれば、釉薬の溶融温度より高い温度で焼成する熱反射性セラミック粒を釉薬に拡散したので、施釉時に釉薬をバインダとして陶製素地の表面に太陽熱の反射能に優れたセラミックにより熱反射層を簡易に形成することができる。また、ガラスフリットを溶融剤としてバインダに使用したものにあっては、従来の熱反射性樹脂塗料のように有機樹脂をバインダとして使用したものに比して、耐候性および耐久性に優れる。さらに、この施釉剤を用いることで、焼成と表面熱反射層の形成を同時に行うことで生産性に優れた遮熱陶製外装材を得ることができる。また、本発明外装材は、既に熱反射層が形成された状態で出荷されるので、現場での表面処理は別途不要であり、施工性に優れる。これを陶製屋根材(瓦)や陶製外壁材(タイル)に適用することで、建物の外装ほぼ全てを熱反射層で構成できるため、輻射熱の蓄熱量の大幅な減少によってヒートアイランド現象が解消され、夜間冷房の利用低下によって二酸化炭素の放出量も低減させることができる。
以下、本発明の好ましい実施の形態を添付した図面に従って説明する。図1は、本発明に係る遮熱陶製外装材の断面を模式的に示したものである。図中、1は外装材、2は外装材1の表面に形成された熱反射層である。熱反射層2は、溶融した釉薬4をバインダとして外装材表面に粒状の熱反射セラミック3が固定され形成されたものである。
外装材1の表面に形成される熱反射層2は、外装材1を陶製として、その焼成時に釉薬が溶融して熱反射セラミック3を外装材1の表面に固着させてなり、太陽光を高率で反射し、輻射熱による外装材1の温度上昇を抑制すると共に、外装材1の裏面に太陽熱が伝達することも防止する。なお、外装材1は陶製であるから、その内部に含まれる微細なポーラスが断熱効果を発揮し、当該外装材1を用いた建築物を太陽熱から遮断して、室内温度の上昇を相乗的に抑制することも期待できる。
この遮熱陶製外装材の製造手順を説明すると、先ず基材となる陶製素地は、通法に従って瓦またはタイルとして成型される。一方、施釉剤は、従来の陶製用釉薬に熱反射セラミックを拡散したものである。一般的に釉薬は、長石、珪石等を主成分として、金属酸化物や顔料を添加してなる。そして、焼成時の定着のために溶融剤を含むが、本発明では溶融剤としてガラスフリットを使用する。このとき釉薬の溶融温度は約700〜900℃が好ましい。陶製素地の焼成温度(通常、950〜1150℃)で充分に溶融させるためである。これに対して、熱反射セラミックは従来、熱反射樹脂塗料に拡散されていたものと同じ原料を使用することができる。その粒度や拡散量を厳格に定めるものではないが、その反射能を発揮しうる条件に合うものを使用する。そして、熱反射性セラミック粒の焼成温度は約1200℃であるから、これをボールミルにて釉薬と拡散することによって、本発明の施釉剤を得ることができる。
而して、所望の形状に成型された陶製素地に上記施釉剤を種々の塗装機または浸漬槽を用いて塗布し、これを焼成窯にて釉薬(ガラスフリット)が溶融する温度以上で、且つ、熱反射性セラミック粒が溶融しない温度で焼成する。焼成時間は従来の瓦やタイルの焼成時間に見合って調整する。この焼成作業により、釉薬(ガラスフリット)が溶融してバインダの役目をして陶製素地の表面に熱反射性セラミック粒を固定することにより上述した熱反射層2を形成することができる。
本発明の遮熱陶製外装材の断面を模式的に示した説明図
符号の説明
1 外装材
2 熱反射層
3 熱反射性セラミック粒
4 釉薬

Claims (4)

  1. 釉薬にその溶融温度より高い温度で焼成する熱反射性セラミック粒を拡散したことを特徴とする太陽熱反射性施釉剤。
  2. 釉薬は溶融剤としてガラスフリットを含む請求項1記載の太陽熱反射性施釉剤。
  3. 請求項1または2記載の太陽熱反射性施釉剤を焼成前の陶製素地に塗布し、当該陶製素地を釉薬が溶融する温度以上で、且つ、熱反射性セラミック粒が溶融する温度未満で焼成したことを特徴とする遮熱陶製外装材。
  4. 陶製素地は瓦またはタイルである請求項3記載の遮熱陶製外装材。
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