JP2006346690A - 高寸法精度管の高能率安定製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】肉厚偏差等の良好な高寸法精度管を押し抜き加工によって製造するに際し、焼き付き疵等の発生を防止して、高寸法精度管を高能率に安定して製造することができる高寸法精度管の高能率安定製造方法を提供する。
【解決手段】予め管1の内外面に潤滑被膜を形成させて、管1の内部にプラグ3を装入しフローティングさせながら、ダイス2の入側に設けられた管押し機4によって押し込み力5を加えて、ダイス2で押し抜き加工を行うに際して、ダイス入側において、管1外面とダイス2との間に所定の大きさの隙間6を設け、その隙間6に潤滑剤を保持させるようにする。
【選択図】図1
【解決手段】予め管1の内外面に潤滑被膜を形成させて、管1の内部にプラグ3を装入しフローティングさせながら、ダイス2の入側に設けられた管押し機4によって押し込み力5を加えて、ダイス2で押し抜き加工を行うに際して、ダイス入側において、管1外面とダイス2との間に所定の大きさの隙間6を設け、その隙間6に潤滑剤を保持させるようにする。
【選択図】図1
Description
本発明は、自動車駆動系部品などの高い寸法精度が要求される管を高能率に安定して製造する方法に関わる。
金属管、例えば鋼管は、通常、溶接管と継目無管に大別される。溶接管は、例えば電縫鋼管のように、帯板の幅を丸めて、概丸めた幅の両端を突き合わせて溶接する方法で製造し、一方、継目無管は、材料の塊を高温で穿孔後にマンドレルミル等で圧延する方法で製造する。溶接管の場合、溶接後に溶接部分の盛り上がりを研削して管の寸法精度を向上させているが、その板厚偏差は3.0%を超える。また、継目無管の場合、穿孔工程で偏芯しやすくて、概偏芯により大きな肉厚偏差が生じやすい。この肉厚偏差は後工程で低減させる努力が払われているが、それでも充分低減することができず、製品の段階で8.0%以上残存する。
自動車部品等の管には、肉厚、内径、外径の各偏差として3.0%以下、さらに厳しくは1.0%以下の高寸法精度が要求される。
金属管(以下、単に管ともいう)の肉厚、内径、外径の精度を高める手段として、従来、一般に、例えば特許文献1等に記載されるように、金属管(溶接管、継目無管とも)を造管後にダイスとプラグを用いて冷間で管を引き抜く製造方法(いわゆる冷牽法)がとられている。
しかし、従来の冷牽法では、設備上の制約や管の肉厚・径が大きくて引き抜き応力が充分得られずに縮径率を低くせざるを得ない場合などでは、加工バイト(プラグとダイス孔内面との隙間)内で管の応力が引張力であるがゆえにダイスと管、および、引き抜きプラグと管の接触が不十分となり、管の内面、外面の平滑化が不足して凹凸が残留しやすい。そのため、冷牽で管の縮径率を大きくして加工バイト内で管の内外面とプラグ、ダイスの接触を向上させることが行われている。しかし、ダイスを用いて管を冷牽した場合、管の内面に凹凸が発生して管の縮径率が大きくなるほど凹凸による粗さが増加する。その結果、冷牽法では高寸法精度の管を得ることが難しく、寸法精度のさらに良好な管が強く求められていた。
前述のように、従来、ダイスとプラグを用いて管を引き抜いた場合、管の寸法精度を向上することが困難である理由は、引き抜きであるがゆえに加工バイト中のダイスと管外面、プラグと管内面の接触が不十分となることに由来する。すなわち、図3に示すように、プラグ3を装入してダイス2から管1を引き抜くことにより、ダイス2の出側で管引き機8によって加えられた引き抜き力9によって加工バイト中には張力が発生して、加工バイト入側では、プラグ3に管1の内面が沿って変形するため、管1の外面はダイス2に接触しないかあるいは軽度にしか接触せず、逆に、加工バイト出側では、ダイス2に管1の外面が接触して変形するため、管1の内面はプラグ3に接触しないかあるいは軽度にしか接触しない。そのため、管1の内面および外面ともに加工バイト中に自由変形の部分が存在して凹凸を十分平滑化できずに、引き抜き後には精度の低い管しか得られていなかった。
これに対して、発明者らは、外径偏差、内径偏差、円周方向肉厚偏差の良好な高寸法精度管を得るために、特許文献2において、管内にプラグを装入した状態で管をダイスの孔に押し込んで通過させる押し抜きを行うという高寸法精度管の製造方法を提案している。
押し抜きの場合、図2に示すように、プラグ3を装入してダイス2に管1を押し込むことにより、ダイス2の入側で管押し機4によって加えられた押し抜き力5によって加工バイトの内部は全て圧縮応力が作用する。その結果、加工バイト入側、出側を問わずに、管1はプラグ3およびダイス2に十分接触できる。しかも、軽度の縮径率であっても、加工バイト内部は圧縮応力となるため、引き抜きに比較して管1とプラグ3、管1とダイス2が十分接触しやすくて、管1は平滑化しやすくなって高寸法精度の管が得られる。
特開平07−032030号公報
特開2004−314083号公報
しかし、押し抜き加工による高寸法精度管の製造においては、引き抜き加工と異なり、加工バイトが圧縮場であるため、ダイスと管、プラグと管との間の面圧が大きくなりやすく、プラグ表面と管内面、ダイス表面と管外面との摩擦力を可能な限り低減しないと、加工中に管表面に焼き付き等の疵が発生して、加工後の管の表面品質が低下し、その管は製品にならないだけでなく、加工時の荷重が著しく増加して加工そのものが不可能になる場合がある。その場合は、加工条件を変更するために、加工途中で一旦止めて管を抜き出して、ダイスを交換し、プラグを抜き出す必要がある。その結果,管の生産能率が著しく低下してしまう。
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、肉厚偏差等の良好な高寸法精度管を押し抜き加工によって製造するに際し、焼き付き疵等の発生を防止して、高寸法精度管を高能率に安定して製造することができる高寸法精度管の高能率安定製造方法を提供することを目的とするものである。
肉厚偏差等の良好な高寸法精度管を押し抜き加工によって製造するに際して、焼き付きの発生を適切に防止する手段として、本発明者らはダイス入側形状に着目した。
すなわち、管の押し抜き加工にあたり、加工当初は管内面が焼き付きやすいが、連続して押し抜きを継続すると、管の内面が焼き付きにくくなるのに対して、管の外面が焼き付きやすくなる。この原因について、管を加工途中でかみ止めて調査したところ、押し抜き加工当初は、管の内外面ともに予め形成された潤滑被膜が薄いままで押し抜き加工されるが、連続して押し抜き加工すると、管内部にはプラグの入側に潤滑剤が蓄積して、その潤滑剤の塊が管内面とプラグとの潤滑剤の供給源となるため、常に充分な潤滑がなされることが判明した。従って、管内面は、押し抜き加工当初は焼き付きやすくても、連続して押し抜き加工すると焼き付きにくくなるわけである。これに対して、管外面はダイスとの隙間がわずかであることから、連続して押し抜き加工しても潤滑剤の塊が形成されにくく、常に管表面の薄い被膜で潤滑されており、その結果、連続して押し抜き加工するとダイスの温度が上昇して焼き付きやすくなるわけである。
そこで、本発明者らは、管内部のプラグ入側に潤滑剤の塊が蓄積されるのと同様に、管内面のダイス入側に潤滑剤の塊が蓄積されるようにすれば、その潤滑剤の塊が管外面とダイスとの潤滑剤の供給源になって、連続して押し抜き加工しても、常に充分な潤滑がなされ、ダイスの温度の上昇が抑止されて焼き付きが防止できると考えた。
そして、ダイス入側に潤滑剤の塊が蓄積されるようにするには、ダイス入側において、ダイス孔型部分と管との間に適切な大きさの隙間を形成させて、その隙間に潤滑剤を保持させればよいとの考えに至った。
上記の考えに基づいて、本発明は以下の特徴を有する。
[1]金属管の内面および外面に潤滑被膜を形成させて、金属管の内部にプラグを装入しフローティングさせながら、金属管を送ってダイスで押し抜き加工を行うに際し、ダイス入側において、ダイス孔型部分と金属管との間に所定の大きさの隙間を形成させて、その隙間に潤滑剤を保持させることを特徴とする高寸法精度管の高能率安定製造方法。
[2]ダイス孔型部分と金属管との間の隙間は、押し抜き加工方向に2mm以上の長さを有することを特徴とする前記[1]に記載の高寸法精度管の高能率製造方法。
[3]潤滑剤として乾燥性樹脂を用いることを特徴とする前記[1]または[2]に記載の高寸法精度管の高能率製造方法。
[4]樹脂、あるいは樹脂を溶剤で希釈した液、あるいは樹脂のエマルジョンを金属管に塗布し、温熱風をあてて、潤滑被膜を形成させることを特徴とする前記[1]〜[3]のいずれかに記載の高寸法精度管の高能率安定製造方法。
本発明においては、ダイス入側において、ダイス孔型部分と金属管との間に適切な大きさの隙間を形成させて、その隙間に潤滑剤を保持させるようにしているので、隙間に保持された潤滑剤が管外面とダイスとの潤滑剤の供給源となるため、連続して押し抜き加工しても、常に充分な潤滑がなされ、ダイスの温度の上昇が抑止されて焼き付きが防止できる。それにより、肉厚偏差等の良好な高寸法精度管を高能率に安定して製造することができる。
本発明の一実施形態を図1に基づいて説明する。
図1に示すように、この実施形態においては、予め管1の内外表面に潤滑被膜を形成させて、管1の内部にプラグ3を装入しフローティングさせながら、ダイス2の入側に設けられた管押し機4によって押し込み力5を加えて管1を送り、ダイス2で押し抜き加工を行うようにしている。
そして、従来、図2に示すように、ダイス入側での管1外面とダイス2との間の隙間6がわずかであったのに対して、この実施形態においては、ダイス入側での管1外面とダイス2との間の隙間6の体積を増加させて、所定の大きさの隙間6としている。
管1外面とダイス2との間の隙間6の体積を増加させて、適切な大きさの隙間6とするには、ダイス角度を大きくするか、ダイス孔型の長さを増加させるとよいが、ダイス角度は押し抜き荷重に大きく影響するため、最適値からの変更は難しいので、ここでは、ダイス孔型の長さを増加させている。それによって、ダイス孔型の入側から管外径との接触部までの長さ(ダイス入側の隙間長さ)7を長くしている。
上記のようにすることによって、この実施形態においては、ダイス2の入側で管押し機4によって加えられた押し込み力5によって加工バイトの内部は全て圧縮応力が作用するため、管1とプラグ3、管1とダイス2が十分接触し、肉厚偏差等の良好な高寸法精度の管が得られるとともに、ダイス入側に形成された隙間6に潤滑剤を保持させるようにしているので、その隙間6に保持された潤滑剤が管1外面とダイス2との潤滑剤の供給源となり、連続して押し抜き加工しても、常に充分な潤滑がなされ、ダイス2の温度の上昇が抑止されて焼き付きが防止できる。その結果、押し抜き加工途中で一旦止めて管1を抜き出して、ダイス2を交換し、プラグ3を抜き出すといったことがなくなり、生産能率を向上させることができる。
このようにして、この実施形態においては、肉厚偏差等の良好な高寸法精度管を高能率に安定して製造することができる。
なお、ダイス孔型の入側から管外径との接触部までの長さ7について、本発明者らが鋭意検討した結果、2mm以上あれば、確実に潤滑剤の塊が隙間6に蓄積されて、ダイスと管外面との焼き付きを充分防止できることを把握した。
また、用いる潤滑剤については、ダイス入側で潤滑剤の塊を形成させるようにするために、乾燥性樹脂がよく、ポリエチレンワックス、ポリアクリレートなどがよい。
また、予め管表面に潤滑被膜を形成させるには、樹脂、あるいは樹脂を溶剤で希釈した液、あるいは樹脂のエマルジョンを管に塗布して、温熱風をあてるとよい。
以下、実施例に基づいて説明する。
一例として、φ40mm×6.0mmt×5.5mLの鋼管を素管とし、鏡面のプラグと一体型固定ダイス(テーパ角度11度)を用いて、プラグをフローティングさせて鋼管内部に装入し、縮径率を10%、ダイス出側の鋼管肉厚を入側と同じ6.0mmtとして、下記の条件で10本ずつ押し抜き加工または引き抜き加工を行った。
本発明例1として、図1に示した押し抜き加工において、ダイス入側の隙間長さ7を5mmとして、潤滑剤の塊を形成可能な構造とし、予め管表面に潤滑被膜を形成させるために、ポリエチレンワックスの樹脂エマルションを管内外面に塗布して、温熱風をあてて乾燥性樹脂被膜を付着させて10本連続して押し抜き加工した。
本発明例2として、図1に示した押し抜き加工において、ダイス入側の隙間長さ7を2mmとして、潤滑剤の塊を形成可能な構造とし、予め管表面に潤滑被膜を形成させるために、溶剤で希釈した樹脂を管内外面に塗布して、温熱風をあてて、ポリアクリレートからなる乾燥性樹脂被膜を付着させて10本連続して加工した。
比較例として、図2に示した押し抜き加工において、ダイス入側の隙間長さ7を1mmとして、潤滑剤の塊が形成しにくい構造のままとし、予め管表面に潤滑被膜を形成させるために、ポリエチレンワックスの樹脂エマルションを管内外面に塗布して、温熱風をあてて乾燥性樹脂被膜を付着させて10本連続して加工した。
従来例として、図3に示した引き抜き加工において、ダイス孔型の入側から管外径との接触部までの長さ7を1mmとして、潤滑剤の塊が形成しにくい構造のままとし、予め管表面に潤滑被膜を形成させるために、ポリエチレンワックスの樹脂エマルションを管に塗布して、温熱風をあてて乾燥性樹脂被膜を付着させて10本連続して加工した。
これらにより製造した鋼管の表面疵の発生状態、加工能率および加工後の肉厚精度について、結果を表1に示す。なお、加工能率は、1時間当たりの加工本数について、従来例の1時間当たりの加工本数を1(基準)として、その比率で示した。
表1より、比較例および従来例では、加工後の鋼管表面に疵が発生し、ダイスおよびプラグを交換せざるを得なくなり、そのために加工能率が著しく低下したが、本発明例1および2の場合、焼き付き疵は全く発生せず良好な表面であり、加工能率も著しく良好であった。また、充分な寸法精度も得られている。
1 管
2 ダイス
3 プラグ
4 管押し込み機
5 押し抜き力
6 ダイス入側のダイス孔型部分と管との間の隙間
7 ダイス孔型の入側から管外径との接触部までの長さ(ダイス入側の隙間長さ)
8 管引き抜き機
9 引き抜き力
2 ダイス
3 プラグ
4 管押し込み機
5 押し抜き力
6 ダイス入側のダイス孔型部分と管との間の隙間
7 ダイス孔型の入側から管外径との接触部までの長さ(ダイス入側の隙間長さ)
8 管引き抜き機
9 引き抜き力
Claims (4)
- 金属管の内面および外面に潤滑被膜を形成させて、金属管の内部にプラグを装入しフローティングさせながら、金属管を送ってダイスで押し抜き加工を行うに際し、ダイス入側において、ダイス孔型部分と金属管との間に所定の大きさの隙間を形成させて、その隙間に潤滑剤を保持させることを特徴とする高寸法精度管の高能率安定製造方法。
- ダイス孔型部分と金属管との間の隙間は、押し抜き加工方向に2mm以上の長さを有することを特徴とする請求項1に記載の高寸法精度管の高能率製造方法。
- 潤滑剤として乾燥性樹脂を用いることを特徴とする請求項1または2に記載の高寸法精度管の高能率製造方法。
- 樹脂、あるいは樹脂を溶剤で希釈した液、あるいは樹脂のエマルジョンを金属管に塗布し、温熱風をあてて、潤滑被膜を形成させることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の高寸法精度管の高能率安定製造方法。
Priority Applications (1)
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JP2005173085A JP2006346690A (ja) | 2005-06-14 | 2005-06-14 | 高寸法精度管の高能率安定製造方法 |
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