JP2006325524A - 神経幹細胞及び脳神経疾患のためのマーカー - Google Patents

神経幹細胞及び脳神経疾患のためのマーカー Download PDF

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Abstract

【課題】神経発生に重要な役割を果たすZic2蛋白質と相互作用する蛋白質を見出し、その蛋白質の発現パターンや分子的機能を解明すること、ならびに、得られた情報をもとに、その蛋白質を神経発生・分化に関連する医療用途に用いること。
【解決手段】Zic2蛋白質と相互作用し、特定なる配列に示すアミノ酸配列からなるRines蛋白質又は該蛋白質をコードするポリヌクレオチドからなる神経幹細胞検出用マーカー又は脳腫瘍診断用マーカー、及び神経幹細胞検出用又は脳腫瘍診断用キット。
【選択図】なし

Description

本発明は、神経制御因子Zic2結合性蛋白質及びそれをコードする遺伝子の医療用途、より詳しくは神経幹細胞検出用マーカー又は脳腫瘍診断用マーカー、ならびにZic2の発現異常に関連する疾患の治療及び/又は予防用医薬などに関する。
Zicファミリーは神経発生をはじめとする脊椎動物の様々な発生過程を制御するZinc finger 型転写因子である。
ヒト及びマウスにおいて、Zicファミリーは、5つのタンデムに反復するC2H2モチーフを共有する5つの構造的に関連する蛋白質(Zic1-5)から成る(Aruga, J., et al., 1994. J. Neurochem. 63, 1880-1890.; Aruga, J., et al., 1996a. J. Biol. Chem. 271, 1043-1047.; Aruga, J., et al., 1996b. Gene 172, 291-294.; Furushima, K., et al., 2000. Opr. Mech. Dev. 98, 161-164.)。それらの相同体はショウジョウバエ(odd-paired (Opa), Benedyk, M.J., et al., 1994. Genes Dev. 8, 105-117.)及びシーエレガンス(REF-2)(Alper, S., et al., 2002. Development 129, 3335-3348.)を含む、様々な種において同定されており、それらのいずれもが無脊椎動物において本質的な役割を有している。本発明者らも、アフリカツメガエルの神経胚cDNAライブラリーからZic3遺伝子をクローニングしている(特許文献1)。機能取得(Gain-of-function)及び機能損失(loss-of-fuction)研究により、Zic遺伝子が神経発生において重要な役割を有している証拠が提示された。これまでの報告では、Zic遺伝子は、神経外胚葉分化(Brewster, R., et al., 1998. Nature 393, 579-583.; Kuo, J.S., et al., 1998. Development 125, 2867-2882.; Nakata, K., et al., 1997. Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A. 94, 11980-11985.; Nakata, K., et al., 1998. Mech. Dev. 75, 43-51.)、神経管形成(Carrel, T., et al., 2000. Hum. Mol. Genet. 9, 1937-1942.; Klootwijk, R., et al., 2000. Hum. Mol. Genet. 9, 1615-1622.; Nagai, T., et al., 2000. Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A. 97, 1618-1623.; Inoue, T., et al., 2004. Dev. Biol. 270, 146-162.)、前脳及び小脳の形態形成(Brown, S.A., et al., 1998. Nat. Genet. 20, 180-183.; Brown, L.Y., et al., 2001. Hum. Mol. Genet. 10, 791-796.; Nagai, T., et al., 2000. Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A. 97, 1618-1623.; Aruga, J., et al., 1998. J. Neurosci. 18, 284-293.; Aruga, J., et al., 2002. J. Neurosci. 22, 218-225.)、及び網膜の軸索ガイダンス(Herrera, E., et al., 2003. Cell 114, 545-557.)を制御することがわかっている。神経発生のほか、Zic蛋白質はまた、神経堤形成(Nakata, K., et al., 1997. Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A. 94, 11980-11985.; Nakata, K., et al., 2000. Mech. Dev. 99, 83-91.; Inoue, T., et al., 2004. Dev. Biol. 270, 146-162.)、軸骨格のパターンニング(Aruga, J., et al., 1999. Mech. Dev. 89, 141-150.; Nagai, T., et al., 2000. Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A. 97, 1618-1623.)、及び内部器官の左右パターン形成(Gebbia, M., et al., 1997. Nat. Genet. 17, 305-308.; Purandare, S.M., et al., 2002. Development 129, 2293-2302.)のような、脊椎動物発達における他の機能をも有する。
ヒトZic2変異は、全前脳症(haloprosencephaly:HPE, Brown, S.A., et al., 1998. Nat. Genet. 20, 180-183.)として知られる先天性の前脳異常の原因である。マウスにおけるZic2の発現減少はHPEだけではなく、それぞれ前部及び後部神経管の不十分な封鎖に起因する脳脱出又は外脳症、あるいは脊椎披裂に至る(Nagai, T., et al., 2000. Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A. 97, 1618-1623.)。それとは反対に、カエルZic2の過剰発現は、神経外胚葉及び神経堤組織の拡張を誘導し(Brewster, R., et al., 1998. Nature 393, 579-583.; Nakata, K., et al., 1998. Mech. Dev. 75, 43-51.)、ZIC2は神経発生の初期段階に関与していることが示唆される。
このように、Zicファミリー蛋白質が生物学的に重要であることを示す多数の証拠があるが、Zic蛋白質による発生制御に内在する分子的機構はあまり知られていない。近年の分子生物学的研究(Mizugishi, K., et al., 2001. J. Biol. Chem. 276, 2180-2188.)では、Zic蛋白質が、Gli蛋白(Zic蛋白質に類似したzincフィンガードメインを含む)よりは低親和性であるが、DNA配列(GBD:Gli binding sequence)に配列特異的な様式で結合できることが示されている。転写制御の点では、ZicもGliも、リポーター遺伝子コトランスフェクション法において、様々なプロモーターからの転写を活性化した。
先の研究では、Zicと蛋白質-蛋白質間相互作用を持つ2種の蛋白質が報告されている。一つはGliファミリーである。Gli蛋白質はそのzincフィンガードメインによって物理的にかつ機能的にZic蛋白質と相互作用し、そしてZic2蛋白質はGli蛋白質の細胞内分布と配列依存的転写促進に影響を与える(Koyabu, Y., et al., 2001. J. Biol. Chem. 276, 6889-6892.)。他の一つはI-mfa蛋白質である。Mizugishiら(Mizugishi, K., et al., 2004. Biochem. Biophys. Res. Commun. 320, 233-240.)は、Zic2のN-末端領域を用いる酵母ツーハイブリッド法を行い、I-mfaをZic結合蛋白質として同定した。I-mfaは、MyoD、Myf5、及びmyogeninのような筋発生を促進する転写因子の阻害剤として知られているが、細胞質においてZic蛋白質を保持することによってZic蛋白質のリプレッサーとして機能する。これらの2つの知見はZic蛋白質の分子的機能に関する幾つかの局面を表わすが、本質的な分子的機能は十分に理解されていない。特に、Zic蛋白質のターンオーバーと分解に内在する機構はまだ着目もされていない。
最近になって、RINGフィンガーモチーフを有する幾つかの蛋白質が、特定の蛋白質の分解経路を担っていることが示されている。RINGフィンガーモチーフを含む蛋白質は、ユビキチン-プロテアソーム経路においてE3ユビキチンリガーゼとしてしばしば機能する(Jackson, P. K., et al., 2000. Trends. Cell Biol. 10, 429-439.; Joazeiro, C. A. P. and Weissman, A. M., 2000. Cell 102, 549-552.)。プロテアソーム経路による蛋白質分解は様々な細胞プロセスにおける多数の制御性蛋白質をモニタリングすることにおいて重要な役割を果たす。分化、増殖、アポトーシスに関与する多くの蛋白質がこの系において分解され、そしてそれらの量を適切にコントロールしている。さらに、この系による標的蛋白質の分解は適切な神経機能を確保するのに必須であると推定されている(Pickart, C. M., 2001. Annu. Rev. Biochem. 70, 503-533.; Johnston, J. A., et al., 2004. Progr. Neurobiol. 73, 227-257.)。プロテアソーム経路は2つのカテゴリー:ユビキチン依存性経路とユビキチン非依存性経路に分類される。大多数の蛋白質はユビキチン依存性経路によって分解されるが、ユビキチン非依存性蛋白質分解もまた、いくつかの細胞蛋白質のターンオーバーを制御するための共通の経路として出現する(Sheaff, R. J., et al., 2000. Mol. Cell 5, 403-410.; Verma, R. and Deshaies, R. J., 2000. Cell 101, 341-344.; Hoyt, M. A., et al., 2003. J. Biol. Chem., 278, 12135-12143.; Orlowski,M. and Wilk,S., 2003. Arch. Biochem. Biophys., 415, 1-5.)。ユビキチン-プロテアソーム経路において、分解の標的となる蛋白質基質はユビキチンの共有結合を受ける。ユビキチン化基質蛋白質はその後認識され、26Sプロテアソームによって分解される。ユビキチン化は、ユビキチンがまずE1ユビキチン−活性化酵素によって活性化され、E2ユビキチン-結合酵素にトランスファーされ、そして最後にE3ユビキチン-蛋白質リガーゼによって基質に結合されるという、高度に特異的な酵素カスケードによって生じる(図1、Hershko, A. and Ciechanover, A., 1998. Annu. Rev. Biochem. 67, 425-479.; Weissman, A. M., 2001. Nature Reviews 2, 169-178.)。これらの中でも、E3ユビキチンリガーゼは、基質ユビキチン化の特異性とタイミング、及び続く蛋白質分解を決定する上で重要な役割を果たす。RINGドメインは亜鉛イオンを配位するのに必要なアミノ酸構造を決定し、E2酵素との特異的な会合を可能にする(Pickart, C. M., 2001. Annu. Rev. Biochem. 70, 503-533.)。最近の研究ではRING-型E3リガーゼがユビキチン-非依存性プロテアソーム分解を促進することもまた示されている(Jin, Y., et al., 2003. EMBO. J. 22, 6365-6377.)。
特開平11−341985号公報
本発明の課題は、神経発生、筋発生、骨格パターニングを含む様々な発生過程において重要な役割を果たすZic2蛋白質と相互作用する蛋白質を見出し、その蛋白質の発現パターンや分子的機能を解明すること、ならびに、得られた情報をもとに、その蛋白質を神経発生・分化に関連する医療用途に用いることを課題とする。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、酵母ツーハイブリッド法を用いてZic2と相互作用する蛋白質を探索し、新規のRING finger蛋白質を見い出した。
また、このZic2結合活性を持つ 新規のRING finger蛋白質(「Rines蛋白質」という)の構造、発現パターン及び分子機能を解析した結果、Rines蛋白質は、神経幼若細胞及び脳腫瘍に特異的に発現すること、また、Rines蛋白質はZic2蛋白質のプロテアソームによる分解を促進し、その結果、Zic2による転写活性を阻害することを明らかにした。本発明はかかる知見をもとに完成されたものである。
すなわち、本発明は以下の発明を包含する。
(1) 以下の(a)又は(b)のポリヌクレオチドからなる神経幹細胞検出用遺伝子マーカー。
(a)配列表の配列番号1又は3に示す塩基配列からなるポリヌクレオチド
(b) 配列表の配列番号1又は3に示す塩基配列からなるポリヌクレオチドと相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、Zic2蛋白質の分解促進活性を有する蛋白質をコードするポリヌクレオチド
(2) 以下の(a)又は(b)のポリヌクレオチドからなる脳腫瘍診断用遺伝子マーカー。
(a)配列表の配列番号1又は3に示す塩基配列からなるポリヌクレオチド
(b) 配列表の配列番号1又は3に示す塩基配列からなるポリヌクレオチドと相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、Zic2蛋白質の分解促進活性を有する蛋白質をコードするポリヌクレオチド
(3) 脳腫瘍が、神経膠腫、髄芽腫、髄膜腫、下垂体腺腫、神経鞘腫、頭蓋咽頭腫、胚細胞腫、又は膠芽腫である、(2)に記載の遺伝子マーカー。
(4) 以下の(c)又は(d)の蛋白質からなる神経幹細胞検出用蛋白質マーカー。
(c) 配列表の配列番号2又は4に示すアミノ酸配列からなる蛋白質
(d) 配列表の配列番号2又は4に示すアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、Zic2蛋白質の分解促進活性を有する蛋白質
(5) 以下の(c)又は(d)の蛋白質からなる脳腫瘍診断用蛋白質マーカー。
(c) 配列表の配列番号2又は4に示すアミノ酸配列からなる蛋白質
(d) 配列表の配列番号2又は4に示すアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、Zic2蛋白質の分解促進活性を有する蛋白質
(6) 脳腫瘍が、神経膠腫、髄芽腫、髄膜腫、下垂体腺腫、神経鞘腫、頭蓋咽頭腫、胚細胞腫、又は膠芽腫である、(5)に記載の蛋白質マーカー。
(7) 配列表の配列番号1又は3に示す塩基配列を増幅するための、15塩基から40塩基の長さを有するプライマーセット。
(8) 配列表の配列番号1又は3に示す塩基配列からなるポリヌクレオチドにストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、該遺伝子を検出するための少なくとも15塩基以上の長さを有するプローブ。
(9) 配列番号2又は4に示すアミノ酸配列からなる蛋白質に特異的に結合する抗体。
(10) 抗体が、モノクローナル抗体又はポリクローナル抗体である、(9)に記載の抗体。
(11) 下記の(i)〜(iv)からなる群から選ばれる少なくとも1種を含む、神経幹細胞検出用又は脳腫瘍診断用キット。
(i) 配列表の配列番号1又は3に示す塩基配列を増幅するための、15塩基から40塩基の長さを有するプライマーセット。
(ii) 配列表の配列番号1又は3に示す塩基配列からなるポリヌクレオチドにストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、該ポリヌクレオチドを検出するための少なくとも15塩基以上の長さを有するプローブ
(iii) 配列番号2又は4に示すアミノ酸配列からなる蛋白質に特異的に結合する抗体
(iv) 上記(iii)の抗体に特異的に結合する二次抗体
(12) 生体試料中の配列番号1若しくは3に示す塩基配列からなる遺伝子、及び/又は配列番号2若しくは4に示すアミノ酸配列からなる蛋白質の発現を解析することを特徴とする、神経幹細胞の検出方法。
(13) 生体試料中の配列番号1若しくは3に示す塩基配列からなるポリヌクレオチド、及び/又は配列番号2若しくは4に示すアミノ酸配列からなる蛋白質の発現を解析することを特徴とする、脳腫瘍の診断方法。
(14) 脳腫瘍が、神経膠腫、髄芽腫、髄膜腫、下垂体腺腫、神経鞘腫、頭蓋咽頭腫、胚細胞腫、又は膠芽腫である、(13)に記載の方法。
(15) 配列番号1若しくは3に示す塩基配列からなるポリヌクレオチド、又は該塩基配列のアンチセンス鎖からなるポリヌクレオチドを有効成分として含有する、Zic2蛋白質の発現異常に関連する疾患の治療及び/又は予防のための医薬。
(16) 配列番号2若しくは4に示すアミノ酸配列からなる蛋白質、又は該蛋白質に対する抗体を有効成分として含有する、Zic2蛋白質の発現異常に関連する疾患の治療及び/又は予防のための医薬。
(17) Zic2蛋白質の発現異常に関連する疾患が、神経の先天性奇形である、(15)又は(16)に記載の医薬。
本発明によれば、Zic2と相互作用する蛋白質及び該蛋白質をコードする遺伝子が提供される。この蛋白質及び遺伝子は、神経幹細胞や脳腫瘍細胞の検出用マーカー、神経の発生・分化機構の解明及び制御のためのツール、Zic2蛋白質の発現異常に関連する疾患の治療及び予防用医薬として用いることができる。上記マーカーは、神経損傷や中枢神経疾患のための再生医療分野の基盤となる神経幹細胞の検出・分離手段として、あるいは、悪性脳腫瘍の診断手段として臨床上非常に有用である。
1.神経幹細胞検出用又は脳腫瘍診断用遺伝子マーカー
本発明者らは、後記実施例において示すように、酵母ツーハイブリッド法を用いてZic2と相互作用する蛋白質を探索した結果、RING finger (C3HC4-type Zinc finger)ドメインをもつ蛋白質を同定した。該蛋白質をRines(RING finger protein in neural stem cell)と命名し、発現部位を解析したところ、ヒト、マウスにおいて脳での発現が強く(図3A、C、D)、マウス胎児において神経前駆細胞の存在が示されている側脳室脳室層で特に強い発現を示すことがわかった(図3B)。また、発生段階の側脳室脳室層では、Zic2の発現が内側部位で強いのに対し、Rinesは外側部位で強く、その境界で発現が重なっている(図4)。さらにRinesは、Zicと同様に特定の脳腫瘍組織においても発現が見られた(図3E,F)。
上記知見に基づき、本発明によれば、Rines遺伝子からなる神経幹細胞検出用遺伝子マーカー又は脳腫瘍診断用遺伝子マーカーが提供される。
本発明における神経幹細胞検出用遺伝子マーカーとは、主に側脳室周囲(上位細胞、脳室下層)に存在し、ニューロンやグリア細胞への分化能と自己複製能を有する神経幹細胞の検出に用いることのできる遺伝子マーカーをいう。本発明において神経幹細胞には、ニューロンやグリア細胞に至るまでの神経前駆細胞、幼若神経細胞、グリア前駆細胞をも含む。
また、本発明における脳腫瘍診断用遺伝子マーカーとは、脳腫瘍部位の検出、脳腫瘍の悪性度の判定などに用いられる遺伝子マーカーをいう。ここで、「診断」とは、被験者が脳腫瘍に羅患しているか否かの判定、将来的に脳腫瘍に羅患する危険性が存在するか否かの判定、治療の効果の判定、及び治療後に脳腫瘍を再発する危険性が存在するか否か(予後)の判定を意味する。また、脳腫瘍とは、脳組織そのものから発生する腫瘍のほか、脳組織の外側にある、例えば髄膜等に発生する腫瘍を含み、具体的には、神経膠腫(星細胞腫、乏突起膠腫、脈絡叢乳頭腫、神経膠芽腫、上衣腫)、髄芽腫、髄膜腫、下垂体腺腫、神経鞘腫、頭蓋咽頭腫、胚細胞腫、膠芽腫などが挙げられる。また、原発性脳腫瘍又は転移性脳腫瘍のいずれであるかも問わない。
上記遺伝子マーカーとしては、Zic2蛋白質と相互作用するRines蛋白質をコードする遺伝子、具体的には配列番号1に示す塩基配列からなるポリヌクレチド、配列番号3に示す塩基配列からなるからポリヌクレチドを用いることができる。配列番号1に示す塩基配列からなるポリヌクレチドはヒトRines遺伝子、配列番号3に示す塩基配列からなるポリヌクレチドはマウスRines遺伝子としていずれも公知であり、その塩基配列情報は、NCBIの遺伝子データベースにおいて、それぞれアクセッションナンバーAL832580、BC046775により入手可能である。なお、AL832580、BC046775に対応するアミノ酸配列のアクセッションナンバーはそれぞれCAD89939、AAH46775である。
本発明における上記遺伝子マーカーは、実質的に同一の機能・活性を有する限り、変異遺伝子であってもよい。例えば、変異遺伝子としては、配列番号1又は3に示す塩基配列からなるポリヌクレオチドと相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、Zic2蛋白質の分解促進活性を有する蛋白質をコードするポリヌクレオチドが挙げられる。
ここで、ストリンジェントな条件とは、特異的なハイブリッドが形成され、非特異的なハイブリッドが形成されない条件、例えば、高い相同性(相同性が80%以上、好ましくは90%以上)を有する遺伝子がハイブリダイズする条件をいう。より具体的には、例えば、0.5〜1.0 M 程度の NaClを含むハイブリダイゼーション溶液中、60℃〜68℃でハイブリダイゼーションを行い、その後ハイブリダイゼーションと同じ温度で0.11〜1×SSC中(1×SSC: 150mM NaCl, 15mMクエン酸ナトリウムからなる)で1時間洗浄する条件をいう。
また、上記の「Zic2蛋白質の分解促進活性を有する」とは、Zic2蛋白質と相互作用(結合)し、Zic2蛋白質のプロテアソームによる分解を促進する活性をいい、その活性が、上記各塩基配列で示されるポリヌクレオチドが有する活性と実質的に同等であることをいう。
上記変異遺伝子の機能確認は、例えば該遺伝子マーカーを含む組換えベクター作成し、これをZic2遺伝子とともに適当な宿主細胞に導入して、公知のプロテアソーム阻害剤の存在下又は非存在下で培養し、培養後の細胞内におけるZic2遺伝子発現量を比較することによって確認できる。なお、遺伝子に変異を導入するには、Kunkel法又は Gapped duplex法等の公知手法又はこれに準ずる方法により行うことができ、例えば部位特異的突然変異誘発法を利用した変異導入用キット(例えばMutant-K(TAKARA社製)やMutant-G(TAKARA社製))などを用いて、あるいは、TAKARA社のLA PCR in vitro Mutagenesis シリーズキットを用いて変異が導入される。
本発明において、神経幹細胞の検出又は脳腫瘍診断は、生体試料中の上記遺伝子マーカーの発現を公知の遺伝子発現解析方法に従って解析することによって行う。例えば、上記の遺伝子マーカーにハイブリダイズするオリゴ(ポリ)ヌクレオチドをプローブとしたハイブリダイゼーション法、又は遺伝子マーカーにハイブリダイズするオリゴヌクレオチドをプライマーとした遺伝子増幅法等を利用することができる。具体的には、ドットブロット法、ノーザンブロット法、RNアーゼプロテクションアッセイ法、RT-PCR法、Real−Time PCR法、DNAマイクロアレイ法などが挙げられる。ここで、発現解析は、遺伝子マーカーの有無の検出又は発現量の測定のいずれをも含む。また、検出された神経幹細胞の分離は、FACS(蛍光セルソーター)などの公知の細胞分離手段によればよい。
生体試料としては、胎生期又は成熟期、好ましくは胎生期のヒトを含む哺乳動物、又は脳腫瘍が疑われる患者などの脳組織又は細胞から調製したmRNA、該mRNAから逆転写したcDNAのいずれを用いることができる。組織又は細胞からのRNAの抽出は、当該技術分野において通常用いられる手法、例えば、グアニジン/塩化セシウム法、グアニジン/チオシアネート法(グアニジン/セシウムTFA法)、塩化リチウム/尿素法、ホットフェノール法、AGPC法(アシッドグアニジウム−フェノール−クロロホルム法)などに従って行うことができる。RNA抽出に際しては、RNeasy等の市販のRNA抽出用キットに添付される抽出プロトコルを改良した独自のプロトコルに従って行うことが好ましい。mRNAの調製は、得られた全RNA画分をオリゴ(dT)セルロースカラムやセファロース2Bを担体とするポリU−セファロース等を用いたアフィニティーカラム法により処理することによって行う。また、cDNAの調製は、得られたmRNAを鋳型として、オリゴdTプライマー及び逆転写酵素を用いて一本鎖cDNAを合成し、該一本鎖cDNAからDNA合成酵素I、DNAリガーゼ及びRnaseH等を用いて二本鎖cDNAを合成することにより行う。
2.プローブ又はプライマー
本発明によればまた、上記遺伝子マーカーの発現解析に用いられるプローブ又はプライマー(セット)が提供される。プライマー(セット)は、前記の遺伝子マーカーの各塩基配列に基づき設計し、合成・精製の各工程を経て調製することができる。プライマーのサイズ(塩基数)は、鋳型DNAとの間の特異的なアニーリングが可能とするために、15〜40塩基、好ましくは20〜30塩基である。プライマーの設計は、センス鎖(5'末端側)とアンチセンス鎖(3'末端側)からなる1組あるいは1対(2本)のプライマーが互いにアニールしないよう、両プライマー間の相補的配列を避けると共に、プライマー内のヘアピン構造の形成を防止するため自己相補配列をも避けるようにする。さらに、鋳型DNAとの安定な結合を確保するため、GC含量を約50%にし、プライマー内においてGC-richあるいはAT-richが偏在しないようにする。アニーリング温度はTm(melting temperature)に依存するので、特異性の高いPCR産物を得るため、Tm値が55〜65℃で互いに近似したプライマーを選定する。また、PCRにおけるプライマー使用の最終濃度が約0.1〜1μMになるよう調整する等を留意することも必要である。また、プライマー設計用の市販のソフトウェア、例えばOligoTM[National Bioscience Inc.(米国)製]、GENETYX[ソフトウェア開発(株)(日本)製]等を用いることもできる。
本発明における上記の遺伝子マーカーを増幅できるプライマーとして、具体的には後記実施例に示す配列番号7、8に示す塩基配列を有するプライマーが例示できる。
また、プローブとしては、前記遺伝子マーカーの塩基配列の連続する部分配列からなるポリ(オリゴ)ヌクレオチド、あるいは、遺伝子マーカーの塩基配列に対する相補配列の連続する部分配列からなるポリ(オリゴ)ヌクレオチド断片が用いられる。プローブの長さは特に限定されないが、例えば10塩基以上、好ましくは20塩基以上、より好ましくは30塩基以上であれば目的とする遺伝子の間で特異的なハイブリッドを形成できる。上記ヌクレオチド断片は、例えば、各塩基配列を有する遺伝子(cDNA)を適当な制限酵素で切断するか、あるいは、周知の化学合成技術により、in vitroにおいて合成することができる。
上記ヌクレオチド断片をプローブとして使用する場合、標識物質により標識化する。標識物質は、特に限定はされないが、例えば、蛍光物質、放射性同位体、酵素、アビジン若しくはビオチンなどを用いることができる。蛍光物質としては、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)、テトラメチルローダミンイソチオシアネート(TRIC)、シアニン色素(例えば、Cy DyeTMシリーズのCy3、Cy5等)、アセチルアミノフルオレン(AFF)などが挙げられ、酵素としては、ペルオキシダーゼ、β−ガラクトシダーゼ、アルカリホスファターゼなどが挙げられ、放射性同位体としては、125IやHなどが挙げられる。
上記のプローブとして用いるポリ(オリゴ)ヌクレオチド断片は、前記遺伝子マーカーとストリンジェントな条件下でハイブリダイゼーションすることを特徴とする。ここで、ストリンジェントな条件とは、前記遺伝子マーカーとポリ(オリゴ)ヌクレオチド断片との選択的かつ検出可能な特異的結合を可能とする条件である。ストリンジェンシーは、塩濃度、有機溶媒(例えば、ホルムアミド)、温度、及びその他公知の条件によって定義される。ストリンジェンシーは、塩濃度を減じるか、有機溶媒濃度を増加させるか、又はハイブリダイゼーション温度を上昇させるかによって増加する。例えば、ストリンジェントな塩濃度は、通常、NaCl約750 mM以下及びクエン酸三ナトリウム約75mM以下、より好ましくはNaCl約500 mM以下及びクエン酸三ナトリウム約50 mM以下、最も好ましくはNaCl約250 mM以下及びクエン酸三ナトリウム約25 mM以下である。ストリンジェントな有機溶媒濃度は、ホルムアミド約35%以上、好ましくは約50%以上である。ストリンジェントな温度条件は、約30℃以上、好ましくは約37℃以上、より好ましくは約42℃以上である。その他の条件としては、ハイブリダイゼーション時間、洗浄剤(例えば、SDS)の濃度、及びキャリアーDNAの存否等であり、これらの条件を組み合わせることによって、様々なストリンジェンシーを設定することができる。
また、プローブはマイクロアレイなどの固定化担体に固定化して用いてもよい。マイクロアレイの形成方法は特に限定されず、当業者が利用可能ないかなる方法を用いてもよく、例えば、固相担体表面で直接プローブを合成する方法(オン・チップ法)、又は予め調製したプローブを固相担体表面に結合する方法などがある。固相担体表面で直接プローブを合成する場合には、光照射で選択的に除去される保護基を用い、半導体製造に利用されるフォトリソグラフィー技術及び固相合成技術を組み合わせて所定の微少なマトリックス領域でのオリゴヌクレオチドの選択的な合成を行う方法が一般的である。一方、予めプローブを調製して固相担体表面に結合する方法では、プローブ核酸の種類や固相担体の種類に応じて、スポッタ装置によりポリ陽イオン化合物やアミノ基、アルデヒド基、エポキシ基等を有するシランカップリング剤などで表面処理した固相担体の表面に点着する方法、反応活性基を導入したプローブ核酸を合成し、予め反応性基を形成させるように表面処理した固相担体表面に該プローブ核酸を点着して該プローブ核酸を固相担体表面に共有結合により結合固定させる方法などが利用できる。
3.蛋白質マーカー
本発明における神経幹細胞の検出、脳腫瘍診断は、別の態様として、上記遺伝子マーカーによりコードされる蛋白質(以下、蛋白質マーカーという)を用いることによって行うこともできる。
かかる蛋白質マーカーとしては、Zic2蛋白質と相互作用するRines蛋白質、具体的には配列番号2に示すアミノ酸配列からなる蛋白質、配列番号4に示すアミノ酸配列からなる蛋白質を用いることができる。配列番号2に示すアミノ酸配列からなる蛋白質はヒトRines蛋白質、配列番号4に示すアミノ酸配列からなる蛋白質はマウスRines蛋白質としていずれも公知であり、そのアミノ酸情報は、NCBIの遺伝子データベースにおいて、前記のアクセッションナンバーにより入手可能である。
上記の蛋白質マーカーは、実質的に同一の機能・活性を有する限り、変異蛋白質であってもよい。例えば、変異蛋白質としては、配列番号2又は4に示すアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、Zic2蛋白質の分解促進活性を有する蛋白質が挙げられる。ここで、1若しくは数個とは、例えば、1〜10個、好ましくは1〜5個をいう。
また、蛋白質マーカーには、該蛋白質と機能的に同等であり、かつ該蛋白質のアミノ酸配列と相同性を有する蛋白質も含まれる。相同性を有する蛋白質とは、配列番号2又は4に示されるアミノ酸配列と約70%以上、好ましくは約80%以上、より好ましくは約90%以上、最も好ましくは約95%以上の相同性を有する蛋白質を意味する。蛋白質の相同性を決定するには、文献(Wilbur, W.J. and Lipman, D.J., Proc.Natl.Acad., Sci. USA(1983) 80, 726-730)に記載のアルゴリズムに従えばよい。
本発明において、蛋白質マーカーの発現解析は、公知の蛋白質発現解析方法に従って行うことができる。例えば、該蛋白質マーカーに結合する抗体を利用したウェスタンブロッティング法、ドットブロット法、免疫沈降法、酵素免疫測定法 (ELISA; enzyme-linked immunosorbent assay)、放射線免疫測定法(RIA;radioimmuno assay)、蛍光抗体法、免疫細胞染色等が挙げられる。
4.蛋白質マーカーに対する抗体
上記の検出・診断に用いられる蛋白質マーカーに対する抗体は、当業者に周知の方法を用いて得ることができる。かかる抗体は、ポリクローナル抗体、あるいはモノクローナル抗体のいずれであってもよい。また、抗体としては、抗体の活性フラグメントであってもよい。活性フラグメントとしては、F(ab')2、Fab'、Fab、Fvなどが挙げられる。
例えば、ポリクローナル抗体は、抗原を感作した哺乳動物(例えば、ウサギ、ラット、マウスなど)から血液を採取し、この血液から公知の方法により血清を分離する。ポリクローナル抗体としては、ポリクローナル抗体を含む血清を使用することができる。また、モノクローナル抗体を得るには、上記抗原を感作した哺乳動物から抗体産生細胞(脾臓細胞、リンパ節細胞など)を取り出して骨髄腫細胞などと細胞融合させる。こうして得られたハイブリドーマをクローニングして、その培養物から抗体を回収しモノクローナル抗体とすることができる。
抗原に用いる蛋白質もしくはその部分ペプチドは、例えば前記の塩基配列を有するマーカー遺伝子又はその部分遺伝子を発現ベクターに組込み、これを適当な宿主細胞に導入して、形質転換体を作成し、該形質転換体を培養して組み換え蛋白質を発現させ、発現させた組み換え蛋白質を培養体又は培養上清から精製することにより得ることができる。あるいは、これらの遺伝子によってコードされるアミノ酸配列、あるいは全長cDNAによってコードされるアミノ酸配列の部分アミノ酸配列からなるオリゴペプチドを化学的に合成し、免疫原として用いることもできる。
蛋白質マーカーの検出には、これらの抗体を適宜標識すればよい。標識物質は、前記の酵素、放射性同位体、蛍光色素を使用することができる。また、抗体を標識せずに、該抗体に特異的に結合する物質、例えば、プロテインAやプロテインGを標識して間接的に検出することもできる。
5.キット
本発明の上記遺伝子マーカー(蛋白質)の検出のための試薬を予め組み合わせてキット化することもできる。例えば、キットには、前記のプライマー、プローブとして用いるポリ(オリゴ)ヌクレオチド又は抗体のいずれかを少なくとも含んでいればよい。また、該キットには、固定化担体、細胞株、PCRに必要な試薬を含んでいてもよく、さらに、標識物質、標識の検出に用いられる基質化合物、細胞の培養のための培地や容器、陽性や陰性の標準試料、キットの使用方法を記載した指示書等を含めることもできる。
6.Zic2蛋白質の発現異常に関連する疾患の治療及び/又は予防用医薬
発明者らは、Rines蛋白質とZic2蛋白質との結合は、通常では確認されず、プロテアソーム阻害剤存在下でのみで確認されること、Rines蛋白質の過剰発現によりZic2蛋白質の分解が促進され、その効果はプロテアソーム阻害剤でのみ抑制され、リソソームプロテアーゼ阻害剤では抑制されないこと、Zic2蛋白質と同様に、Rines蛋白質も、プロテアソーム阻害剤存在下でのみ増加すること、Rines蛋白質がZic2蛋白質の半減期を早めているという知見を得た(後記実施例4〜6)。以上から、Rines蛋白質はZic2蛋白質の分解を促進する機能を有することから、Rines蛋白質及び遺伝子は、Zic2蛋白質の発現異常(発現量が異常に高い又は異常に低い、あるいは変異Zic2の発現など)を制御し、その発現異常に関連する疾患の治療及び/又は予防用医薬として用いることができる。例えば、Rines蛋白質の発現を減少させるとZic2の発現を増加させることできるので、Zic2の発現減少が原因とされる疾患に対する治療及び/又は予防が可能となり、また、Rines蛋白質の発現を増加させるとZic2の発現を減少させることできるので、Zic2の発現増加や異常Zic2の発現が原因とされる疾患に対する治療及び/又は予防が可能となる。Zic2蛋白質の発現異常に関連する疾患としては、中枢神経の先天性奇形があり、例えば、これまで報告のあるものとしては全前脳症などが挙げられる。
従って、本発明の医薬には、Zic2の発現の制御に応じて、配列番号1若しくは3に示す塩基配列からなるポリヌクレオチド、又は該塩基配列のアンチセンス鎖からなるポリヌクレオチド、配列番号2若しくは4に示すアミノ酸配列からなる蛋白質、又は該蛋白質に対する抗体のいずれをもを有効成分として用いることができる。
本発明の医薬は、製剤上通常用いられる担体を用いて各種製剤形態に調製し、経口又は非経口的に全身又は局所投与することができる。本発明の医薬を経口投与する場合は、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、丸剤、内用水剤、懸濁剤、乳剤、シロップ剤等に製剤化するか、使用する際に再溶解させる乾燥生成物にしてもよい。また、本発明の医薬を非経口投与する場合は、静脈内注射剤(点滴を含む)、筋肉内注射剤、腹腔内注射剤、皮下注射剤、坐剤などに製剤化し、注射用製剤の場合は単位投与量アンプル又は多投与量容器の状態で提供される。遺伝子治療剤とする場合は、上記遺伝子を注射により直接投与する方法のほか、該遺伝子が組込まれたベクターを投与する方法が挙げられる。ベクターとしては、アデノウイルスベクター、アデノ関連ウイルスベクター、ヘルペスウイルスベクター、ワクシニアウイルスベクター、レトロウイルスベクター等が挙げられ、これらのウイルスベクターを用いることにより効率よく投与することができる。また、遺伝子をリポソームなどのリン脂質小胞に導入し、そのリポソームを投与する方法を採用してもよい。遺伝子治療剤の投与形態としては、通常の静脈内、動脈内等の全身投与のほか、脳組織に局所投与を行うことができる。さらに、カテーテル技術、外科的手術等と組み合わせた投与形態を採用することもできる。本発明の医薬の投与量は、投与対象の年齢、性別、症状、投与経路、投与回数により異なり、適宜決定すればよい。
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。但し、本発明はこれらに限定されるものではない。
A.材料と方法
(1) 動物
発生段階の動物及び成熟動物におけるRinesの発現はNihon SLC (Shizuoka, Japan)により購入したICRマウスにて調べた。朝に膣栓が最初に観察された日の正午を胎齢(E)0.5と定義した。マウスは、理研脳科学総合研究センターリサーチリソースセンター(Research Resource Center of RIKEN BSI)にて維持した。
(2) 酵母ツーハイブリッドスクリーニング
酵母ツーハイブリッドスクリーニングは、マウスZic2蛋白質のアミノ末端領域(アミノ酸番号1-255)をbait蛋白質として用い、Mizugishi, K., et al., 2004. Biochem. Biophys. Res. Commun. 320, 233-240.に従って行った。候補クローンのcDNA インサートをBigdye terminator cycle sequencing kit (ABI)を用いてシークエンスした。
(3) cDNAクローニングとプラスミド構築
全長マウスcDNA (アクセッション番号: AAH46775)を、cDNA ライブラリースクリーニング及びPCRを用いてクローニングした。酵母ツーハイブリッドスクリーニングにおいて得られた一つのcDNAクローン由来のcDNA断片を、マウス小脳λgt11 cDNA ライブラリー (Dr. T. Furuichiより譲与)のスクリーニングに用いた。そのスクリーニングによって、Rines遺伝子の部分cDNA断片を得た。次に、マウスRines cDNAの5’末端をE15マウス胚性脳cDNAからPCRを用いてクローニングした。プライマーは、NCBI データベースアクセッション番号: AK013941由来の5’-TAGCAGCTAATCTCGGTTGC-3’(配列番号5)、及びライブラリースクリーニングによって得られたcDNA断片由来の5’-GGACATGCACTGATCAGTAA-3’(配列番号6)を用いた。PCR 条件は、94℃15分, 58℃1分, 72℃2分を1サイクルとして35サイクル行った。 発現ベクター Flag-Rinesは、Rinesの全蛋白質コード領域を、pCMVtag2 (Stratagene)のAviII/SrfI-EcoRI部位にin-frameで挿入することによって構築した。
Flag-タグ化、ヘマグルチニン(HA)-タグ化、及びMyc-タグ化蛋白質を発現させるために、関連する配列をPCRによって増幅し、DNAシーケンスによって確認し、pCMVtag2 (Strategene)、pcDNA3HA (Dr. T. Nakajima から譲与)、及び pCS2+MT (Turner, D. L. and Weintraub, H., 1994. Genes Dev. 8, 1434-1447.)にサブクローニングした。Myc-タグ化Rines構築物については、全長のRines(1-591)断片をプライマー:5’-CGCGGATCCATGAAAAGAAGCGAAGAGT-3’(配列番号7)と5’-CGCGAATTCAGCAGAGTACAACGATTCC-3’(配列番号8)を用いてPCRによって増幅し、BamHI-EcoRIで消化してpCS2+MTに挿入した。Flag-タグ化欠失構築物としては、Rines-N-(1-94), Rines-ΔRING-(431-472), Rines-ΔCoil-(332-431)を用いた(カッコ内の数字はそのアミノ酸配列の部位を示す)。また、用いたプライマーを以下に示す。
Rines-N-(1-94):
5’primer ;5’-CGCGGATCCATGAAAAGAAGCGAAGAGT-3’(配列番号9)
3’primer ;5’-CGCGAATTCTAATCGGGCCCCACAGAAA-3’ (配列番号10)
Rines-ΔRING-(431-472):
5’primer ;5’-CGCGGATCCATGAAAAGAAGCGAAGAGT-3’ (配列番号11)
3’primer ;5’-CGCGAATTCCATGTAGCTGTCCTTCTCC-3’(配列番号12)
及び
5’primer ;5’-CGCGAATTCCGGACAATTATTTCTAGAG-3’ (配列番号13)
3’primer ;5’-CGCCTCGAGCTAAAACGGAAAGAAAAAA-3’ (配列番号14)
Rines-ΔCoil-(332-431):
5’primer ;5’-CGCGGATCCATGAAAAGAAGCGAAGAGT-3’ (配列番号15)
3’primer ;5’-CGCGAATTCGAATGGCAGGCTGTTAGCG-3’ (配列番号16)
及び
5’primer ;5’-CGCGAATTCTGTGCAGTGTGCCTGGATG-3’ (配列番号17)
3’primer ;5’-CGCCTCGAGCTAAAACGGAAAGAAAAAA-3’ (配列番号18)
Rines-N-(1-94)の場合、PCRによって増幅した断片は、BamHI- EcoRIで消化してpCMVtag2に挿入した。Rines-ΔRING-(431-472)、及びRines-ΔCoil-(332-431)の場合、各断片はBamHI-EcoRI、及びEcoRI-XhoIで消化し、pCMV tag2に一緒に結合させた。GST-Zic1, Zic2 及びZic3は、mouse Zic1,Zic2 及び Zic3の全ORFを含むcDNA断片を、pGEX-4T3 vector (Pharmacia)のEcoRI (Zic1, 2) 又はSalI (Zic3)部位に挿入することによって構築した。GST-Rines-欠失構築物については、断片をBamHI-EcoRI部位を含むプライマーを用いてPCRによって増幅し、シークエンスし、そして pGEX-4T1 vector (Pharmacia)のBamHI-EcoRIにクローニングした。
用いたプライマーを以下に示す。
GST-Rines (431-489):
5’primer ;5’-CGCGGATCCATGAAAAGAAGCGAAGAGT-3’(配列番号19)
3’primer ;5’-CGCGAATTCGAATGGCAGGCTGTTAGCG-3’(配列番号20)
GST-Rines (282-489):
5’primer ;5’-CGCGGATCCAGCCCACCTAGTTTTGATC-3’(配列番号21)
3’primer ;5’-CGCGAATTCGAATGGCAGGCTGTTAGCG-3’(配列番号22)
GST-Rines (282-431):
5’primer ;5’-CGCGGATCCAGCCCACCTAGTTTTGATC-3’(配列番号23)
3’primer ;5’-CGCGAATTCCATGTAGCTGTCCTTCTCC-3’(配列番号24)
GST-Rines (473-489):
5’primer ;5’-CGCGGATCCCGGACAATTATTTCTAGAG-3’(配列番号25)
3’primer ;5’-CGCGAATTCGAATGGCAGGCTGTTAGCG-3’ (配列番号26)
GST-Rines (431-472):
5’primer ;5’-CGCGGATCCATGAAAAGAAGCGAAGAGT-3’(配列番号27)
3’primer ;5’-CGCGAATTCGCACAGTGGGCAGGGAGTG-3’(配列番号28)
GST-Rines (282-472):
5’primer ;5’-CGCGGATCCAGCCCACCTAGTTTTGATC-3’(配列番号29)
3’primer ;5’-CGCGAATTCGCACAGTGGGCAGGGAGTG-3’ (配列番号30)
GST-Rines (1-94):
5’primer ;5’-CGCGGATCCATGAAAAGAAGCGAAGAGT-3’ (配列番号31)
3’primer ;5’-CGCGAATTCTAATCGGGCCCCACAGAAA-3’ (配列番号32)
GST-Rines (282-331):
5’primer ;5’-CGCGGATCCAGCCCACCTAGTTTTGATC-3’(配列番号33)
3’primer ;5’-CGCGAATTCGAATGGCAGGCTGTTAGCG-3’ (配列番号34)
GST-Rines (332-381):
5’primer ;5’-CGCGGATCCCTGATGGATCTGCCCTCAG-3’(配列番号35)
3’primer ;5’-CGCGAATTCCCTCAACTTGCTTCTCTCC-3’ (配列番号36)
GST-Rines (382-431):
5’primer ;5’-CGCGGATCCACTCTGCGAAGGCAGCAGA-3’(配列番号37)
3’primer ;5’-CGCGAATTCCATGTAGCTGTCCTTCTCC-3’ (配列番号38)
GST-Rines (351-400):
5’primer ;5’-CGCGGATCCCACCTCTCCCAGCTGGGACT-3’ (配列番号39)
3’primer ;5’-CGCGAATTCTCCTGAGTATTTACCCTGC-3’ (配列番号40)
GST-Rines (332-431):
5’primer ;5’-CGCGGATCCCTGATGGATCTGCCCTCAG-3’ (配列番号41)
3’primer ;5’-CGCGAATTCCATGTAGCTGTCCTTCTCC-3’ (配列番号42)
HA-Zic2 及びFlag-Zic2 は、pcDNA3HA又はpCMVtag2 (Mizugishi, K., et al., 2001. J. Biol. Chem. 276, 2180-2188.)のBamHI-EcoRI部位に、マウスZic2の全オープンリーディングフレームを含むcDNA断片を挿入することによって構築した。HA-タグ化 Zic2欠失変異体発現ベクターは、関連するcDNA配列をpcDNA3HAに導入することによって作成した。作成した欠失体は以下の通りである:
HA-Zic2 -(1-140), -(1-255), -(1-333), -(1-363), -(1-393), -(1-419), -(1-485), -(57-531), -(102-531), -(141-531), and -(256-531) (Mizugishi, K., et al., 2004. Biochem. Biophys. Res. Commun. 320, 233-240.)。Flag-2HA-Zic2 は、pCMVtag2-Flag-Zic2 (Dr. A. Ishiguroにより譲与)のSrfI-BamHI部位にヘマグルチニン(HA)の2つのタンデムリピートを含むcDNA断片を挿入することによって構築した。
Myc-UbcH5a, H5b, H5c, H6, H7, H8, 及びHA-タグ化ユビキチン発現ベクターはDr. Y. Imai 及び Dr. R. Takahashiにより供与された。TK プロモーターによって駆動するルシフェラーゼリポータープラスミド;TK-Luchaは、plasmid pRL-TK (Promega)由来のヘルペスシンプレックスウイルスチミジンキナーゼプロモーター(TK promoter)を、pGL2-Basic vector (Promega, Mizugishi, K., et al., 2001. J. Biol. Chem. 276, 2180-2188.)のHindIII-BglII部位に結合することによって構築した。内部標準;pRL-EF(Renilla luciferaseが、elongation factor 1 プロモーターによって駆動する)は、pRL-TK vector (Promega) のRenillaルシフェラーゼ遺伝子をpEF-BOS vector (Mizushima, S and Nagata, S., 1990. pEF-BOS, a powerful mammalian expression vector. Nucleic Acids Res. 18, 5322.; Mizugishi, K., et al., 2001. J. Biol. Chem. 276, 2180-2188.)に挿入することによって構築した。
(4) 細胞培養及びトランスフェクション
293T 及び NIH3T3 細胞は、10% ウシ胎児血清(FBS)を補足したDulbecco’s Modified Eagle’s Medium (DMEM, Sigma)中で、37℃、5% CO2で維持した。トランスフェクションのために、細胞を3.5×104cells/ cm2 の濃度でプレーティングし、プレーティング24時間後に、293T細胞をEffectene transfection reagent (Qiagen)を用いて、また、NIH3T3細胞をSuperfect transfection reagent (Qiagen) 又はLipofectamine Plus transfection reagent (Invitrogen)を用いて製造業者の指示に従ってトランスフェクトした。細胞を適当な時間に採取し、免疫沈降、GST pull-down法、分解アッセイ、in vivo ユビキチン化アッセイ、及びルシフェラーゼアッセイに供した。
(5) ウェスタンブロッティング
蛋白質を10-15% SDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動によって分離し、PVDF 膜(Immobilon, Millipore)に移した。その膜を3-6% スキムミルクに4℃にて一晩浸し、第1抗体とともにインキュベートした。結合した抗体をホースラディッシュパーオキシダーゼ−結合第2抗体 (抗-マウス、ウサギ、又はラットIgG)及びECL reagents (Amersham Pharmacia Biotech)を用いて検出した。
(6) GST pull down法
グルタチオンS-トランスフェラーゼ(GST) 融合蛋白質は、Escherichia coli JM109で発現させ、1% Triton X-100を含むPBS (-) バッファー内で超音波処理後、可溶性画分から調製した。これらの蛋白質をグルタチンセファロース4B (Pharmacia)を用いてアフィニティー精製し、50 mM Tris HCl, pH8.0中に10 mM の還元グルタチンを含むバッファーにて溶出した。Flag-2HA-タグ化 Zic2 蛋白質は293T細胞内で発現させ、まず抗-HAアガロースビーズ (Sigma) と HA-ペプチド (100 ng/ml, Sigma)を用いてアフィニティー精製し、続いて、抗-Flag アガロースビーズ(Sigma) とFlag-ペプチド (100 ng/ml, Sigma) を用いて連続アフィニティー精製した。
293T細胞を、Flag-タグ化 Zic2、 Flag-タグ化 Rines、 又はHA-タグ化Zic2 欠失変異体発現ベクターにて一過的にトランスフェクトした。トランスフェクション24時間後、細胞を採取し、免疫沈降バッファーA (25 mM Hepes, pH 7.2, 0.5% NP-40, 150 mM NaCl, 50 mM NaF, 2 mM Na3VO4, 1 mM phenylmethylsulfonyl fluoride, 及び20 μg/ml aprotinin) 又はバッファーB(20 mM Hepes, pH 7.4, 150 mM NaCl, 5 mM EDTA, 10% glycerol, 0.5% Triton X-100, 0.5 mM N-ethylmaleimide, 0.5 mM iodoacetamide, 1 mM phenylmethylsulfonyl fluoride, 及び20 μg/ml aprotinin)に溶解した。12,570 g で15分間遠心分離後、これらの上清及びFlag-2HA-タグ化Zic2蛋白質を適当なGST-融合蛋白質とともに4℃にて2時間インキュベートし、その後、グルタチンセファロース4Bビースの50%懸濁液20μlを添加し、さらに4℃にて2時間インキュベートした。同じ免疫沈降バッファーにて5回洗浄した後、結合した蛋白質を3×SDS バッファー (0.2 M Tris-HCl, pH6.8, 9% SDS, 3% glycerol, 15% 2-mercaptoethanol)中で沸騰させることによって溶出し、SDS-PAGEによって分離し、その後、抗-Flag M2 モノクローナル抗体(Sigma)又は抗-HA Y-11 ポリクローナル抗体(Santa Cruz Biotechnology)又は抗-HA 3F10 ラットモノクローナル抗体 (Roche)にてイムノブロットし、ECL system (Amersham)によって検出した。
(7) 免疫沈降法
293T細胞を、HA-タグ化Zic2 (0.5 μg)とFlag-タグ化Rines (0.5μg)又はFlag-タグ化ベクター (0.5μg)を用いてトランスフェクトした。トランスフェクト48時間後に、細胞をプロテアソーム阻害剤MG132 (Carbobenzoxy-Leu-Leu-Leu-CHO, 20 μM; Calbiochem), E64 (50 μM; Sigma) 又はベヒクルMe2SO;DMSO (最終濃度 (0.2%)) にて12時間処理した。その後、細胞を免疫沈降バッファーAにて溶解し、溶解物を12,570 g にて15分間遠心分離した。これらの上清を23μgの抗-Flag M2 モノクローナル抗体(Sigma)とともに4℃にて2時間インキュベートし、続いて、プロテインGアガロースビース (Pierce)の50%懸濁液20μlを加えた後、さらに4℃にて2時間培養した。バッファーAにて5回洗浄後、結合蛋白質を上記のようにしてSDS-PAGE及びイムノブロッティングによって分析した。
(8) 分解アッセイ
NIH3T3 cells を、HA-タグ化Zic2(1μg)とFlag-タグ化 Rines (5 又は6μg)又はFlag-タグ化Rines欠失変異体(5μg)又はFlag-タグ化コントロール(5 又は6μg)発現ベクターを用いてトランスフェクトした。タンパク分解阻害剤処理アッセイの場合は、細胞をトランスフェクション43時間後に、プロテアソーム阻害剤:MG132 (10μM), Epoxomicin (10μM; BostonBiochem), clasto-Lactacystin-β-lactone (10μM; BostonBiochem), Lactacystin (10又は20μM; BostonBiochem 又は PeptideInstitute), ALLN (Ac-Leu-Leu-Nle-CHO (MG101), 25μM; Calbiochem)、カルパイン阻害剤: Calpastatine peptide (1又は2μM ; Calbiochem)、又はベヒクル(DMSO 又は蒸留水, 最終濃度0.2 又は0.4%)にて9時間処理した。種々のRinesの変異体を用いるZic2分解アッセイの場合は、細胞をPBS(-) バッファー内でトランスフェクション50時間後に集め、503 g にて5 分間遠心分離することによりペレット化し、予め沸騰させたSDS-溶解バッファー(50 mM Tris-HCl, pH 7.5, 0.5 mM EDTA, 1% SDS, 1 mM dithiothreitol) 100 ml に溶解し、さらに、10分間沸騰させた。溶解物を遠心分離によって除去した。上清を0.5% NP-40 バッファーを加えることによって10倍量に希釈し、3×SDS -サンプルバッファーと等量の各溶解物を添加し、その後、SDS-PAGE 及び抗-Flag M2 モノクローナル抗体(Sigma), 3F10 ラットモノクローナル抗体 (Roche), 又は抗-アクチンポリクローナル抗体 (Sigma)を用いてイムノブロットした。
(9) シクロヘキシミドchaseアッセイ
NIH3T3 細胞を「分解アッセイ」において記載したように、HA-タグ化Zic2 (1μg)と Flag-タグ化 Rines (5μg)又はFlag-タグ化コントロールベクター(5μg)を用いて一過的にコトランスフェクトした。トランスフェクション26時間後に、培養培地をシクロヘキシミド(25μg/ml)を含む10% FBSを加えたDMEMに置き換えた。細胞をシクロヘキシミド添加0, 2, 4, 6 時間後、PBS(-)バッファーに集め、溶解し、続いて「分解アッセイ」において記載したようにイムノブロッティングを行った。HA-Zic2 バンドとアクチンバンドのデンシトメトリーはNIH Image (ver 1.61, http://rsb.info.nih.gov/nih-image/)を用いて定量化し、HA-Zic2 量を各時点においてアクチンにて標準化した。
(10) in vivoユビキチン化アッセイ
NIH 3T3 細胞をプラスミド:HA-タグ化ユビキチン(4μg), Flag-タグ化 Rines (1μg), Flag-タグ化Zic2 (1μg), Myc-タグ化Rines (5μg), Flag-タグ化コントロールベクター(1μg), Myc-タグ化コントロールベクター(5μg), 及びHA-タグ化コントロールベクター(4μg)の組み合わせを用いて一過的にトランスフェクトした。トランスフェクション24時間後、細胞を10μM MG132と18時間インキュベートした。細胞を分解アッセイにおいて記載した通り、溶解し、各溶解物からの等量の蛋白質を抗-Flagアガロースビーズ(15μl, Sigma)を用いて免疫沈降し、4℃にて一晩インキュベートした。同じ溶解バッファーにて3回洗浄した後、結合蛋白質とインプット蛋白質をSDS-PAGE及びイムノブロッティングにより分析した。
(11) ルシフェラーゼアッセイ
NIH 3T3 細胞を24-ウェルディッシュにて培養した。コトランスフェクション試験を
ルシフェラーゼリポータープラスミド(pTK-luciferase) 各180 ng、発現構築物各400 ngを、内部標準5ngのpRL-EFとともに用いて行った。発現ベクターをコトランスフェクトしたとき、発現ベクターの全量を、空ベクターを添加することによって一定に保った。トランスフェクション72時間後、細胞のルシフェラーゼ活性をDual luciferase reporter assay system (Promega)及び Minilumat LB 9506 luminometer (Berthold)を用いて製造業者の指示に従い測定した。ホタルルシフェラーゼ活性は、ウミシイタケルシフェラーゼにて標準化した。相対倍数-活性を、三重サンプルからの空ベクタートランフェクタントからの値に対する標準化された値の比として表わした。試験は少なくとも3回繰り返し、平均値を標準エラーとともに示した。
(12) ノーザンブロット分析
4種のノーザンブロットシート (Mouse Adult Tissue Blot, Mouse Embryo Full Stage Blot, Seegene, Human Brain Multiple Tissue Northern Blot II and Human Fetal Multiple Tissue Northern Blot, Clontech) をマウス及びヒトRines遺伝子の発現プロフィールを決定するのに用いた。Rines cDNAの1.1 kb 断片に対応する32P-標識 Rines cDNA プローブを、最後のRING フィンガーモチーフから3’側と3’非翻訳領域を含む領域を用いて、Random Primed DNA Labeling Kit (Roche)を用いて合成した。ハイブリダイゼーションは、1 M Na2HPO4, pH7.2, 7.0% SDS, 1% BSA, 1 mM EDTA, pH8.0, 100 μg/ml ニシン精液 DNA からなるバッファー中で65℃にて一晩行った。これらの膜を2×SSC-0.1% SDS を用いて室温にて5分間3回洗浄し、最後に0.1×SSC-0.1% SDS を用いて56℃にて40 分間洗浄し、そして、X-線フィルムを洗浄した膜に対して増感スクリーンを用いて24時間から7日間暴露した。像をデジタル化し、コントラストと明度を最適化した。
(13) RT-PCR分析
ヒト脳腫瘍に対する全てのサンプルリング手順は、文部科学省によって発行されたヒトゲノム・遺伝子解析研究のためのガイドライン(guideline for Human Genome Research and Gene Analyses published by the Japanese Ministry of Education, Culture, Sports, Science and Technology)に従って行った。RNA 試料はTRIZOL (Invitrogen)を用いて調製した。ヒト全脳、ヒト肝臓、ヒト肺、ヒト腎臓、及びヒト腎癌からの全RNAはClontech から購入した。全 RNA 試料を逆転写反応の前にRNase-free DNaseIhにて処理し、増幅産物の不存在を、示したサイクルで逆転写したRNA試料において確認した。逆転写及びPCRはそれぞれM-MLV reverse transcriptase (Invitrogen) 及びTakara ExTaq (TAKARA BIO)を用いて行った。
プライマー配列及びPCR条件は、5’-ACCAAGCTGCAGAAAAGCAT- 3’ (配列番号43)
及び5’-GCCCCAATTCCATGTTCTAA- 3’ (配列番号44)、26サイクル; β-actin, 5’- CAACCGCGAGAAGATGACC-3’ (配列番号45)及び 5’-TCCAGGGCGACATAGCACA- 3’ (配列番号46)、24 サイクルであった。各PCRサイクルは94℃1分、62℃0.5分、72℃1分とした。
RT-PCR は、それらが示したPCRサイクルで増幅カーブのlog-linear phaseになった後、実施した。PCR産物を2.0% アガロースゲルにて電気泳動し、NIH Image (ver 1.61, http://rsb.info.nih.gov/nih-image/)を用いるエチジウムブロミド染色バンドのデンシトメトリーによって定量化した。RT-PCR 試験は3回繰り返し、再現性を確認した。代表的な結果を示した。
(14) in situ ハイブリダイゼーション
In situ ハイブリダイゼーションを一本鎖ジゴキシゲニン(DIG)-UTP (Boehringer Mannheim)-標識RNAプローブ)を用い、基本的にWilkinson (1992)に記載されるようにして行った。簡単にいうと、胚を4%パラホルムアルデヒドの0.1 M リン酸ナトリウムバッファー(pH7.4)溶液中で、4℃にて一晩固定させた。固定した胚を30%ショ糖液に浸し、Tissue-Tek OCT Compound(Sakura Finetechnical Co.)にて包埋した。8-15 μm 薄さの切片を、クリオスタットを用いて調製した。ハイブリダイゼーションは、ハイブリダイゼーションバッファー(50% formamide, 5×SSPE, 5% SDS, 1mg/ml yeast transfer RNA)とアンチセンスRines RNA プローブ中で62℃にて一晩実施した。DIG-標識分子をアルカリホスファターゼ(Roche)を結合させた抗-DIG抗体に対する基質としてNBT/BCIPを用いることによって検出した。Rinesに対するプローブは、Rines cDNAの1.1kb断片(該蛋白質コード領域の3’側半分と3’非翻訳領域を含む)から調製した。Zic2 プローブは既報(Nagai, T., et al., 2000. Zic2 regulates the kinetics of neurulation. Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A. 97, 1618-1623.)に従い調製した。
B.結果
(実施例1) Zic2-相互作用性蛋白質のスクリーニングと新規RINGフィンガー蛋白質(Rines)
Zic2-結合性蛋白質を同定するために、E10.5のマウス胚のcDNAライブラリーを酵母ツーハイブリッド選択によってスクリーニングした。bait蛋白質として、マウスZic2蛋白質(1-255)のN-末端半分(本領域は転写制御における重要なドメインを含む)を用いた。このスクリーニングによって幾つかの候補クローンを単離するに至った。
これらのクローンの一つが、Rines(神経細胞におけるRINGフィンガー蛋白質の意)と称する新規なRINGフィンガー蛋白質の部分をコードすることがわかった。Rinesの207bp cDNA断片を酵母ツーハイブリッド法にて得た。また、cDNA断片を用いるRines発現パターンの予備試験ではRines発現がZic2とオーバーラップすることが確認された。これらの知見によりRinesをさらなる研究対象として選択するに至った。まず、マウスcDNAファージライブラリーのスクリーニングを行い、3つの独立したオーバーラップするクローンを単離した。全コード配列を、NCBIデータベースアクセッション(AK013941)由来のフォワードプライマーとライブラリースクリーニングから得たcDNA断片由来のリバースプライマーを用いるマウスcDNAプールのPCR増幅によって取得した。
(実施例2) Rines遺伝子及び蛋白質の構造的特徴
Rines cDNAのヌクレオチド配列から、Rinesの予想されるオープンリーディングフレーム(ORF)は1733ヌクレオチド(591アミノ酸、アクセッション:BC046775)からなることが明らかとなった。演繹されたRines蛋白質は、推定上のcoiled-coilドメイン及びRINGフィンガードメイン(図2A、B)を含む65kDaの蛋白質である。RINGフィンガードメインは、システイン/ヒスチジンリッチ(C3HC4)なZn2+結合ドメインであり、それは、多くの真核蛋白質に見出され、他の蛋白質と結合させる促進剤及び分子状足場と考えられる(Borden K. L. B., 2000. J. Mol. Biol. 295, 1103-1112.)。
BLAST/NCBIに対するホモロジーサーチでは、ヒト、ニワトリ、ゼブラフィッシュにおいてマウスRines相同体の存在が明らかとなった(図2C)。注目すべきは、これらのRines相同体が、高度に保存されたRINGフィンガーモチーフとC末端領域を含むことである。さらに、これらのRines相同体はまた、コンピュータープログラム(ISREC-Coil server, http://www.isrec.isb-sib.ch/cgi-bin/COILS-from-paser)によって演繹される保存領域において推定上のcoiled-coilドメインを有する。異なる種由来のRines相同体間のホモロジー及び保存ドメイン構造は、Rinesは脊椎動物において進化的に保存された蛋白質であることを示す。
NCBIデータベースからのゲノムBlastサーチにより、マウスRines遺伝子は、染色体13(13D1)に、ヒトRines遺伝子は染色体5(5q12.3)に位置することが明らかとなった。マウスRines遺伝子及びヒトRines遺伝子のいずれもが7つのエキソンと6つのイントロンを有しているようで(図2E)、両遺伝子のエキソンとイントロン間の境界もまた保存されている(データは示さず)。
(実施例3) Rinesの発現パターン
ノーザンブロット分析及びRT-PCR分析によってマウス及びヒトにおけるRines発現パターンを調べた(図3A-D及び3E,F:レーン14-17)。
成熟マウス(6-10週齢ICRマウス)では、Rines mRNAが、脳には強く、腎臓、精巣、及び子宮には中程度に、肺及び胸腺には弱く検出された(図3A)。ヒト胎児及び成人の器官では、発現レベルは脳において高く、腎臓及び肺において弱く、肝臓ではほとんどなかった(図3D及び3E,F:レーン14-17)。ヒト成人の脳由来のRNAに対するノーザンブロット分析では(図3C)、大脳皮質において最も高い発現を示し、脳の他の部位−小脳、後頭極、前頭葉、側頭葉、被殻−は中程度レベルの発現であった。従って、Rines mRNAはヒト及びマウスの両方において脳に有意に発現した。異なる器官間の総発現プロフィールはこれらの2つの種間で保存されていると考えられる。
発生中におけるRines発現プロフィールを調べるために、様々な発生段階におけるマウス胚由来のRNAを用いてノーザンブロット分析を行った(図3B)。E10.5から顕著な発現が検出され、mRNAレベルは徐々に増加し、E13.5ころにピークに達し、そしてその後、徐々に減少した。これらの結果は基本的にRinesが妊娠後期の発達において役割を果たすことを示唆した。
さらに、種々のタイプのヒト脳腫瘍におけるRines遺伝子の発現を調べた(図3E、F;レーン1−13)。12の独立した脳腫瘍由来の全RNAを、Rines特異的プライマーを用いるRT-PCR分析に供した。成人及び子供それぞれにおいて、多形性膠芽細胞腫及び髄芽細胞腫が主要な悪性脳腫瘍である。コントロールとして、腎細胞腫瘍由来RNAをシリーズに含めた。PCR産物をデンシトメトリー法で定量し、β−アクチン転写物の量にて標準化した。結果は、全脳における転写物含有量に対する相対的転写物レベルとして表わした。その結果、Rines遺伝子の発現は脳腫瘍の半分以上に検出された。Rines遺伝子は主に、星状膠細胞腫及び乏突起膠腫、膠芽細胞腫、神経節膠腫、星状膠細胞分化を伴うPNET、及び髄芽細胞腫を含む、上衣下腫、星状膠細胞腫おいて全脳のそれと匹敵するレベルで発現した。Rinesは、3つの髄芽細胞腫中、髄芽細胞腫−2,3症例では発現せず、神経鞘腫ではずっと低かった。
Rinesの空間的な発現パターンを調べるために、E13.5〜E17.5のマウス胚由来の脳を用いて一連のin situハイブリダイゼーション組織化学染色を行った。Rines(A-E, G, I) 又はZic2(F,H) mRNA分布は、E13.5(A)、E14.5(F, G)、E15.5(B), E17.5(C,D,E,H,I)胚からの脳切片に見られ、これらのステージを通じて、高レベルなRines発現が側脳室の脳室層に検出されたが、その一方、他の脳領域中には低レベルな発現しか観察されなかった(図4A−E)。E13.5では、Rines発現が側脳室に向きあう薄層に検出され、その発現はE13.5及びE17.5の脳室層において継続したが(図4A−C)、染色層は後期ステージのほうが薄かった。これらのステージでは、Rinesは水晶体形成細胞においても強く発現した。E17.5の矢状断面では、Rines発現は嗅球、側脳室及び第4脳室の両方に向き合う脳室層に検出され、視床においても弱く検出された(図4D)。大領皮質の高拡大によれば、Rines発現が未成熟な神経前駆細胞を含んでいる脳室層に限定されることが明らかとなった(図4E)。
Zic2-発現領域とRines-発現領域のオーバーラップを調べるために、E14.5及びE17.5胚由来の脳を用いてin situハイブリダイゼーションを行った(図4F−I)。その結果、Zic2 mRNAが外側中隔核における強い発現に加えてE14.5及びE17.5の側脳室に向き合う脳室層の内側面に顕著に検出された(図4F,H)。他方、Rines発現は側脳室に面した脳質層中に検出されたが、Zic2発現領域において弱いようにみえた。
結果として、Zic2とRinesの発現は大脳皮質内の脳室層の内側面にオーバーラップしており、そのZic2-強発現領域とRines-強発現領域間に位置するオーバーラップ領域は、肉眼では2つの領域間の境界を形成していた。
(実施例4) Zic2蛋白質及びRines蛋白質間の物理的相互作用
酵母において検出されるZic-Rines相互作用が実際にin vitroでも起っているかどうかを調べるために、Zic1、Zic2、及びZic3を含むGST-融合蛋白質を調製し、その融合蛋白質を、Flag-タグ化Rinesをトランスフェクトした293T細胞溶解物とともにGST pull-down法に用いた。その沈殿物を、Flag-Rines蛋白質を検出するためにイムノブロットした(図5A)。その結果、Zic2同様、全長のZic1及びZic3を有するGST-融合蛋白質がRines蛋白質に結合した。
RinesにおけるZic2-結合ドメインを同定するために、予想されるcoiled-coilドメイン及びRINGフィンガードメインを含む酵母ツーハイブリッド法で見出されたZic2結合領域(TBR=two-hybrid-binding region:282-489)、又はRines蛋白質のもうひとつの部分を含むGST-融合蛋白質を調製した(図6A)。それらの融合蛋白質はFlag-タグ化Zic2をトランスフェクトした293T細胞の溶解物とともにGST pull-down法に用いた。沈殿物を、Flag-Zic2蛋白質を検出するためにイムノブロットした(図6B)。その結果、Zic2への結合は予想されるcoiled-coilドメイン及びRINGフィンガードメインの両方によって媒介された。
次に、Zic2におけるRines-結合ドメインをN-末端及びC-末端欠失の一連のZic2変異体及びGST-Rines-TBR(282-489; TBR)を用いるGST pull-down法によって決定した(図7A、B)。その結果、Zic-Opa保存モチーフ(Aruga, J., et al., 1996. J. Biol. Chem. 271, 1043-1047.; Mizugishi, K., et al., 2004. Biochem. Biophys. Res. Commun. 320, 233-240.)とジンクフィンガーモチーフ(残基141-255)間の領域がRines結合活性に必要であることがわかった。
Zic2-Rines間の結合は、293T細胞において発現し精製されたFlag-2HA-Zic2蛋白とGST-Rines-TBR(282-489)融合蛋白質間においてもまた観察され(図8)、このことはZic2蛋白質とRines蛋白質は互いに直接的に結合していることを示唆するものである。
(実施例5) Rines蛋白質の過剰発現によるプロテアソーム-介在性Zic2蛋白質の分解促進
次に、細胞におけるZic2及びRines蛋白質間の物理的相互作用を調べるために、293T細胞を、HA-タグ化Zic2とFlag-タグ化Rines又はFlag-タグ化ベクターコントロールとを用いてコトランスフェクトした。その結果物の細胞溶解物を抗-Flag抗体で免疫沈降し、抗-HA抗体でイムノブロットした。しかしながら、共沈したZic2はいずれのケースも検出されなかった(図9A、レーン2)。標的蛋白質に結合し、ユビキチン化プロテアソーム経路を介してそれらを分解する、RINGフィンガードメインを有する幾つかの蛋白質はE3-ユビキチンリガーゼであると同定されているので、Rines蛋白質もE3-ユビキチンリガーゼとして作用し、そしてプロテアソーム経路による分解に際してZic2を標的にする可能性を考えた。
そこで、プロテアソーム機能の阻害剤(MG132)又はリソソームシステインプロテアーゼの阻害剤(E64)で処理した細胞で再び物理的相互作用を調べた。コトランスフェクション48時間後、ジメチルスルホキシド(DMSO, 最終濃度で0.2%)、プロテアソーム阻害剤MG132(20μM)、又はリソソームプロテアーゼ阻害剤E64(50μM)を培養培地に加え、12時間培養後、細胞を溶解し、各細胞溶解物からの等量の蛋白質を示した抗体を用いる免疫沈降及びイムノブロッティングに供した(上のパネル)。HA-タグ化、Flag-タグ化蛋白質及びアクチン蛋白(内部コントロール)の発現分析を細胞抽出物のイムノブロッティングによって行った(下の3つのパネル)。免疫沈降及びイムノブロッティングに用いた蛋白質の割合は40:1であった。図9Aに示すように、293T細胞におけるZic2とRinesの相互作用はMG132で処理されたときだけ観察され、E64処理でした場合は観察されなかった。さらに、インプット溶解物中のZic2蛋白質の量はRinesでトランスフェクトした細胞において減少し、その蛋白質レベルはMG132で処理した細胞において回復した。同様に、Rines蛋白質自身もまたMG132処理によって増加したが、E64処理では増加しなかった。これらの結果から、MG132で処理しない細胞溶解物にZic2-Rines複合体の明確な存在がないことは、プロテアソームにおけるこの複合体の迅速な分解によるものであることが示唆された。
さらに、Rinesの過剰発現がプロテアソーム経路によるZic2の分解を促進するか否かを調べるために、一連のプロテアソーム阻害剤又はカルパイン阻害剤を用いてNIH3T3細胞においてウェスタンブロット分析することによってZic2蛋白質量を調べた。結果は、Rines-誘導Zic2の分解は、MG132、Epoxomicin、clasto-Lactacystin-β-lactone、Lactacystin、及びALLNを含む全ての試験したプロテアソーム阻害剤の存在下で阻害されるが(図9B、C)、カルパイン阻害剤:Calpastatine peptide (IC50=20μM, Eto, A., et al., 1995. J. Biol. Chem. 270, 25115-25120.)の高濃度(1又は2μM)の存在下でも阻害されなかった。これらの結果は、Rinesがプロテアソーム経路によるZic2の分解を促進することを裏付けた。
(実施例6) Rines蛋白質の過剰発現によるZic2蛋白質のターンオーバーの増加
Zic2蛋白質量のRinesに誘導される減少が、その蛋白質分解の増加の原因となっているのかどうかを明らかにするために、シクロヘキシミドchase試験を行った。HA-Zic2をFlag-タグ化Rines又はFlag-タグ化ベクターコントロールとともにNIH3T3細胞において共発現させた。シクロヘキシミドをトランスフェクション26時間後に加え、新規な蛋白質合成を止め、そして細胞を所定の時点で採取した。等量の蛋白質を抗-HA抗体、抗-Flag抗体、又は抗-actin(内部コントロール)抗体を用いてウェスタンブロッティングによって分析した。Zic2の安定性に関する明確な効果が、シクロヘキシミドchase試験にて観察された(図10A、B)。Rinesの存在下では、Zic2蛋白質のレベルがシクロヘキシミド追加から4時間及び6時間で顕著に減少した。一方、この効果はRinesの不存在下では見られなかった。これらの結果はRines蛋白質の過剰発現はZic2蛋白質の半減期を実際に短くすることを示した。
(実施例7) Rinesのcoiled-coil及びRINGフィンガードメインのZic2蛋白質の分解への関与
Rinesのcoiled-coil及びRINGフィンガードメインがZic2蛋白質の分解に必要であるかどうかを調べた。この目的のために、Rinesの種々の欠失変異体を構築し、それらのZic2分解-向上活性に対して分析した(図11A)。Rines-NはRinesのN-末端領域を含み(アミノ酸残基1-94)、Rines-ΔRINGは全RINGフィンガードメインを欠き(アミノ酸残基Δ431-472)、及びRines-ΔCoilは全coiled-coilドメインを欠く(アミノ酸残基Δ332-430)。HA-タグ化Zic2を、Flag-タグ化Rinesの欠失変異体、又はFlag-タグ化ベクターコントロールとともにNIH3T3細胞にコトランスフェクトした(図11B)。Rines-N及びRines-ΔCoilは、Zic2蛋白質量を減少させなかったが、Rines-ΔRING はZic2蛋白質を穏やかに分解した(図11B、C)。これらの結果は、coiled-coilドメインはZic2蛋白質の分解に必要であり、そしてRINGフィンガードメインもまた分解過程において役割を果たしていることを示唆する。
(実施例8) RinesのZic2-依存性転写活性の阻害
上記の結果からRinesがZic2介在性転写活性に影響を与えるのかどうかという新たな疑問をいだくに至った。この疑問の解明を目的として、リポーターアッセイを行って、Zic2とRinesのコトランスフェクションの効果を調べた(図12)。チミジンキナーゼ(TK)プロモーターによって制御されたホタルルシフェラーゼ遺伝子をリポーター遺伝子として用い、そして、HA-Zic2(50ng)及びFlag-Rines;Rines-FL(全長)、Rines-N(1-94)、Rines-ΔRING、及びRines-ΔCoil(Flag-Rines は、50, 150ng)を発現ベクターとして調製した。Zic2蛋白質はTKリポーター遺伝子を活性化することが示され(図12、レーン2;Mizugishi, K., et al., 2004. Biochem. Biophys. Res. Commun. 320, 233-240.)、Rines蛋白質はTKリポーター遺伝子に対して何ら活性化又は抑制化活性を持たなかった(データは示さず)。Rines-FL発現ベクターをZic2発現ベクターとともに用いてNIH3T3細胞を異なる割合でコトランスフェクトしたとき、Rinesは用量依存的にZic2による転写活性化を効率的に抑制することが見出された。一方、Rines-N及びRines-ΔCoilはZic2による転写活性化を顕著には抑制しなかった。Rines-ΔRINGもまた、その抑制能はRines-FLよりは低いものの、用量依存的に転写活性化を抑制した。これらの結果は、Rines又はRines欠失変異体のZic2-依存的転写活性阻害能は、そのZic2蛋白質分解能に対応していることを示している。結果的に、RinesはZic2-介在性転写活性化をZic2蛋白質の分解を促進することによって阻害していると考えられる。
(実施例9) E3ユビキチンリガーゼとしてのRinesの作用
RINGフィンガーモチーフを含む幾つかの蛋白質はE3ユビキチンリガーゼであることが示されており(Imai, Y., et al., 2000. J. Biol. Chem. 275, 35661-35664.; Pickart, C. M., 2001. Annu. Rev. Biochem. 70, 503-533.)、RING-型E3におけるRINGフィンガーモチーフが、特異的なE2ユビキチン-結合酵素のための動員モチーフとして働く。よって、まず、293T細胞において発現させた、RINGフィンガーモチーフを含むGST-Rines-TBR(282-489)及びMyc-タグ化E2S(UbcH5a, H5b, H5c, H6, H7, 及びH8)のセットを用いてGST pull-down法を行った(図13A)。その結果、GST-Rines-TBR(282-489)は、Myc-UbcH6とは結合したが、Myc-UbcH5a, H5b, H5c, H7, 又はH8とは結合しなかった。
ほとんど全ての公知のRING-型E3リガーゼがそれら自身のユビキチン化を介在できることが知られている(Fang, S. and Weissman, A. M., 2004. Cell. Mol. Life Sci. 61, 1546-1561.)。293T細胞、NIH3T3細胞、及びCOS7細胞におけるFlag-Rinesの過剰発現は抗-Flag抗体を用いるウェスタンブロットによって認識されるより高分子量の蛋白質の形成をもたらした(データは示さず)。これらのより高い分子量バンドはポリユビキチン化されたRines蛋白質を反映している可能性があった。よって、Rinesがユビキチン修飾を受けるどうかを調べた。NIH3T3細胞に以下のプラスミドの組み合わせを一時的にトランスフェクトとした:HA-タグ化ユビキチン(4μg)、Flag-タグ化Rines(1μg)、Flag-タグ化Zic2(1μg)、Myc-タグ化Rines(5μg)、Flag-タグ化コントロールベクター(1μg)、Myc-タグ化コントロールベクター(5μg)、及びHA-タグ化コントロールベクター(5μg)。組み合わせは図13Bのパネルに示す。トランスフェクションから26時間後、細胞を10μMのMG132と18時間インキュベートした。細胞を溶解し、各溶解物からの等量の蛋白質を、抗-Flagアガロースビースを用いて免疫沈降した。抗-HA抗体を用いた免疫沈降のウェスタンブロット分析では、HA-ユビキチン及びFlag-Rinesを共発現したときだけ、高分子量を有するブロードなバンドが示された。同じサンプルを抗-Flag抗体でイムノブロットしたとき、高分子量を有するブロードなバンドがHA-ユビキチンの存在の如何に関わらず現われた。これらの結果は、Flag-Rinesが重度にユビキチン化され、そしてFlag-Rinesが外来性ユビキチン同様に内在性ユビキチンで改良されうることを示す。
最後に、RinesがZic2蛋白質のユビキチン化を促進するためにE3ユビキチンリガーゼとして働くかどうかを試験した。しかしながら、Zic2の顕著なユビキチン化はたとえRines蛋白質のユビキチン化が明らかに促進されてもこのケースでは観察されなかった(図13A)。これらの結果はRinesがZic2の分解をZic2ユビキチン化とは独立して促進することを示唆した。
以上の結果から、Rinesが標的蛋白質のユビキチン化とは関係なく標的蛋白質を分解することができるというユニークな特徴を有するRING-型E3ユビキチンリガーゼであるといえる。図14A、BはRines蛋白質によるZic2分解の2つのモデルを示す。図14Aは、Zic2のユビキチン化によるZic2分解のモデルを示す。Rines蛋白質はZic2のユビキチン化を促進するE3ユビキチンリガーゼとして作用すると考えられ、ポリユビキチン化されたZic2がプロテアソームによって分解される。しかしながら、Zic2のユビキチンは本実施例では検出されなかった。図14Bは、Rinesのユビキチン化によるZic2-分解のモデルを示す。Rines蛋白質はそれ自身のユビキチンリガーゼ活性(ルート1)によって、または他のユビキチンリガーゼ活性(ルート2)によってポリユビキチン化され、続いて、Rines蛋白質と結合したZic2蛋白質とともにプロテアソームによって分解される。
図1は、ユビキチン−プロテアソーム経路を示す(E1:ユビキチン活性化酵素、E2:ユビキチン結合酵素、E3:ユビキチン−蛋白リガーゼ、Ub:ユビキチン)。 図2Aは、マウスRines蛋白質のドメイン構造を示す。図2Bは、マウスRines(アクセッション番号:AAH46775)のアミノ酸配列を示す(破線部分はcoiled-coilドメイン、下線部分はRINGフィンガードメインであり、その中でキーとなるシステインとヒスチジン残基はアスターリスク(*)でマークを付けている)。図2Cは、ヒト(アクセッション番号:CAD89939)、マウス、ニワトリ(アクセッション番号:XP_429137)、ゼブラフィッシュ(アクセッション番号:NP_956723) Rinesのアラインメントを示す(ダークグリーンボックスは4種間で保存されたアミノ酸、ライトグリーンボックスは3種間で保存されたアミノ酸を示す。下線を付けた配列はRINGフィンガードメインを示す)。図2Dは、マウスRines, ヒトTRIMS2, ヒトSMARCA3, ヒトBRCA1間のRINGフィンガードメインアミノ酸配列の比較を示す。図2Eは、マウス及びヒトRinesの染色体位置とゲノム構造を示す。 図3Aは、成熟マウスにおけるRines mRNAの組織分布に関するノーザンブロット分析結果を示す。図3Bは、E4.5〜E18.5のマウス胚におけるRines mRNA発現変化に関するノーザンブロット分析結果を示す。図3Cは、ヒト成人の脳におけるRines mRNAの発現に関するノーザンブロット分析結果を示す。図3Dは、ヒト胎児の脳におけるRines mRNAの組織分布に関するノーザンブロット分析結果を示す。図3E、Fは、正常組織及び脳腫瘍組織におけるヒトRines発現のRT-PCR分析結果を示す(E:電気泳動写真、F:転写物の相対量)。 発生中の脳におけるRines及びZic2発現のIn situ ハイブリダイゼーション分析を示す(A−C及びF−Iは大脳皮質切片を示し、D及Eは矢状切断を示す。EはDのアスターリスク(*)によって示される領域の高拡大図。FとG、及びHとIはそれぞれ近くに位置する切片由来である。CC:大脳皮質、LV:側脳室、FV:第4脳室、OB:嗅球、Th:視床、Le;水晶体、LS:外側中隔核、CP:皮質プレート、SP:サブプレート、SV:下脳室層、VZ:脳室層、スケールバー:200μm)。 Zic蛋白質とRines蛋白質のin vitroにおける相互作用をGST-Pull down法により分析した結果を示す(上側のパネル:抗-Flag抗体によるイムノブロティング分析、下側のパネル:GST-Zic1, Zic2及びZic3のアミドブラック染色)。 図6Aは、Rines、その欠失変異体の模式図、及びRines蛋白質中のZic2-結合領域のマッピング結果を示す(数はアミノ酸番号を示す)。図6Bは、Zic蛋白質と種々のRines欠失変異体のin vitroにおける相互作用をGST- Pull down法により分析した結果を示す(上側のパネル:抗-Flag抗体によるイムノブロティング分析、下側のパネル:GST-Rinesのアミドブラック染色)。 図7Aは、Zic2、その欠失変異体の模式図、及びZic2蛋白質中のRines-結合領域のマッピング結果を示す(数はアミノ酸番号を示す)。図7Bは、GST-Rines-TBR(282-489)と種々のZic2欠失変異体のin vitroにおける相互作用をGST-Pull down法により分析した結果を示す(上側のパネル:抗-Flag抗体によるイムノブロティング分析、下側のパネル:GST-Rines-TBR(282-489)のアミドブラック染色)。 図8は、GST-Rines-TBR(282-489)と種々のZic2のin vitroにおける相互作用をGST- Pull down法により分析した結果を示す(上側のパネル:抗-Flag抗体によるイムノブロティング分析、下側左のパネル:GST-Rines-TBR(282-489)のアミドブラック染色、下側右のパネル:インプットした精製Flag-2HA-Zic2蛋白質の銀染色)。 図9Aは、293Tトランスフェクト細胞におけるZic2蛋白質とRines蛋白質間の結合を、該細胞溶解物に対する抗-Flag抗体を用いた免疫沈降及び抗-HA抗体を用いたイムノブロッティングにより分析した結果(上のパネル)、ならびに該細胞溶解物における蛋白質を抗HA-抗体、抗-Flag抗体、及び又は抗-actin(内部コントロール)抗体を用いてイムノブロッティングによって分析した結果を示す(下の3つのパネル)。図9B、Cは、各種のプロテアソーム阻害剤又はカルパイン阻害剤で処理したNIH3T3トランスフェクト細胞溶解物における蛋白質を抗HA-抗体、抗-Flag抗体、及び又は抗-actin(内部コントロール)抗体によって分析した結果を示す。 図10Aは、シクロヘキシミドで処理したNIH3T3トランスフェクト細胞溶解物における蛋白質を、処理後一定時間において抗HA-抗体、抗-Flag抗体、及び又は抗-actin(内部コントロール)抗体によって分析した結果を示す。図10Bは、Zic2蛋白質の相対量を示す(Zic2量はt=OのZic2量に対する値が1.0となるようにアクチンにて標準化した。プロットは4回の独立した分析の平均を示す。エラーバーは標準エラーを示す。アスターリスクはシクロヘキシミド添加4時間後のRines発現ベクター−トランスフェクト細胞溶解物とコントロールベクター−トランスフェクト細胞溶解物間のZic2蛋白質量における統計学的有意差を示す。*: Student's t testによりp<0.01)。 図11Aは、Rines-FL(全長)及びその欠失変異体、Rines-N-1-94、Rines-ΔRING、及びRines-ΔCoilの模式図を示す(数字はアミノ酸番号を示す)。図11Bは、NIH3T3トランスフェクト細胞溶解物における蛋白質を抗HA-抗体、抗-Flag抗体、及び又は抗-actin(内部コントロール)抗体によって分析した結果を示す。図11Cは、Zic2蛋白質の相対量を示す(Zic2量は空ベクタートランスフェクタントからのZic2量に対する値が1.0となるようにアクチンにて標準化した。試験は3回繰り返し、平均値を標準エラーとともに示した)。 図12は、NIH3T3トランスフェクト細胞におけるルシフェラーゼ活性を示す(3つの独立した試験における三重サンプルからの平均ルシフェラーゼ活性をレポータープラスミド及び空発現ベクターでトランスフェクトした細胞のそれに対する値として表示した。エラーバーは標準エラーを示す。アスターリスクは線で結んだ2つのトランスフェクタントのルシフェラーゼ活性間の統計学的有意差を表わす(Student-Newman-Kuels(SNK) testを用いる一元配置分散分析(one-way analysis of variance = one-way ANOVA)よって*:P<0.05、**:P<0.01)。 図13Aは、GST-Rines-TBR(282-489)と種々のユビキチン結合E2酵素(Myc-タグ化-UbcH5a, H5b, H5c, H6, H7, H8)のin vitroにおける相互作用をGST- Pull down法により分析した結果を示す(上側のパネル:抗-Myc抗体によるイムノブロティング分析、下側左のパネル:GST-Rines-TBR(282-489)のアミドブラック染色)。図13Bは、in vivoユビキチン化アッセイの結果を示す。 図14A、BはRines蛋白質によるZic2分解の2つのモデルを示す。

Claims (17)

  1. 以下の(a)又は(b)のポリヌクレオチドからなる神経幹細胞検出用遺伝子マーカー。
    (a)配列表の配列番号1又は3に示す塩基配列からなるポリヌクレオチド
    (b) 配列表の配列番号1又は3に示す塩基配列からなるポリヌクレオチドと相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、Zic2蛋白質の分解促進活性を有する蛋白質をコードするポリヌクレオチド
  2. 以下の(a)又は(b)のポリヌクレオチドからなる脳腫瘍診断用遺伝子マーカー。
    (a)配列表の配列番号1又は3に示す塩基配列からなるポリヌクレオチド
    (b) 配列表の配列番号1又は3に示す塩基配列からなるポリヌクレオチドと相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、Zic2蛋白質の分解促進活性を有する蛋白質をコードするポリヌクレオチド
  3. 脳腫瘍が、神経膠腫、髄芽腫、髄膜腫、下垂体腺腫、神経鞘腫、頭蓋咽頭腫、胚細胞腫、又は膠芽腫である、請求項2に記載の遺伝子マーカー。
  4. 以下の(c)又は(d)の蛋白質からなる神経幹細胞検出用蛋白質マーカー。
    (c) 配列表の配列番号2又は4に示すアミノ酸配列からなる蛋白質
    (d) 配列表の配列番号2又は4に示すアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、Zic2蛋白質の分解促進活性を有する蛋白質
  5. 以下の(c)又は(d)の蛋白質からなる脳腫瘍診断用蛋白質マーカー。
    (c) 配列表の配列番号2又は4に示すアミノ酸配列からなる蛋白質
    (d) 配列表の配列番号2又は4に示すアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、Zic2蛋白質の分解促進活性を有する蛋白質
  6. 脳腫瘍が、神経膠腫、髄芽腫、髄膜腫、下垂体腺腫、神経鞘腫、頭蓋咽頭腫、胚細胞腫、又は膠芽腫である、請求項5に記載の蛋白質マーカー。
  7. 配列表の配列番号1又は3に示す塩基配列を増幅するための、15塩基から40塩基の長さを有するプライマーセット。
  8. 配列表の配列番号1又は3に示す塩基配列からなるポリヌクレオチドにストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、該遺伝子を検出するための少なくとも15塩基以上の長さを有するプローブ。
  9. 配列番号2又は4に示すアミノ酸配列からなる蛋白質に特異的に結合する抗体。
  10. 抗体が、モノクローナル抗体又はポリクローナル抗体である、請求項9に記載の抗体。
  11. 下記の(i)〜(iv)からなる群から選ばれる少なくとも1種を含む、神経幹細胞検出用又は脳腫瘍診断用キット。
    (i) 配列表の配列番号1又は3に示す塩基配列を増幅するための、15塩基から40塩基の長さを有するプライマーセット
    (ii) 配列表の配列番号1又は3に示す塩基配列からなるポリヌクレオチドにストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、該ポリヌクレオチドを検出するための少なくとも15塩基以上の長さを有するプローブ
    (iii) 配列番号2又は4に示すアミノ酸配列からなる蛋白質に特異的に結合する抗体
    (iv) 上記(iii)の抗体に特異的に結合する二次抗体
  12. 生体試料中の配列番号1若しくは3に示す塩基配列からなる遺伝子、及び/又は配列番号2若しくは4に示すアミノ酸配列からなる蛋白質の発現を解析することを特徴とする、神経幹細胞の検出方法。
  13. 生体試料中の配列番号1若しくは3に示す塩基配列からなるポリヌクレオチド、及び/又は配列番号2若しくは4に示すアミノ酸配列からなる蛋白質の発現を解析することを特徴とする、脳腫瘍の診断方法。
  14. 脳腫瘍が、神経膠腫、髄芽腫、髄膜腫、下垂体腺腫、神経鞘腫、頭蓋咽頭腫、胚細胞腫、又は膠芽腫である、請求項13に記載の方法。
  15. 配列番号1若しくは3に示す塩基配列からなるポリヌクレオチド、又は該塩基配列のアンチセンス鎖からなるポリヌクレオチドを有効成分として含有する、Zic2蛋白質の発現異常に関連する疾患の治療及び/又は予防のための医薬。
  16. 配列番号2若しくは4に示すアミノ酸配列からなる蛋白質、又は該蛋白質に対する抗体を有効成分として含有する、Zic2蛋白質の発現異常に関連する疾患の治療及び/又は予防のための医薬。
  17. Zic2蛋白質の発現異常に関連する疾患が、神経の先天性奇形である、請求項15又は16に記載の医薬。
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