JP2006323796A - システムの最適制御方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】システムの方程式の一般解を部分積分し,その残余項をテイラー展開して1次近似する方法を用いて制御則を求め,これとReceding Horizon制御を組み合わせる方法を,エネルギ回生機能付きシステムの最適制御に適用し、従来の状態量フィードバック制御より優れた効果が得られることを明らかにした.
【選択図】 図5
Description
H=xTQx+uTRx+λT(Ax+Bu) (2)
ここでλは未定乗数ベクトルである.さらに従来の最適制御理論に従い、次の連立微分方程式よりuとλを求めることを試みる.
従来の最適制御理論に従えば、式(3)からuを求めることになるが、式(3)からはuが出てこないので求まらない.また式(4)にはuが含まれるがλの微分方程式を解かなければ求まらず、従来手法で解析解を求めることができない.このように、エネルギ回生機能付きシステムの制御については、制御設計の理論的な見通しがないため、個別制御対象毎に試行錯誤的な制御開発が行われているのが実情である.
末松啓吾,須田義大,中野公彦,椎葉太一,自動車における電磁サスペンションの研究,自動車技術会学術講演会前刷集,No.4−00(2000),1−4. 野波健蔵編著,MATLABによる制御系設計,東京電機大学出版局P50
エネルギ回生機能の無い制御システムの例として一般的な油圧制御系の構成例を図1に示す.ポンプaから送られた作動油は,図のように圧力制御バルブbと切り替えバルブcを介して油圧シリンダdに導かれ,ロッドeの先に繋がれた負荷を制御する.圧力制御バルブbは制御指令値に応じて調圧する.図の断面A,Bでの単位時間当たりのエネルギフローをEa,Ebとするとこれらの概略図も示している.ここで,ロッドの速度をxa,伝達力をFa,ポンプ吐出圧をP,流量をQとすると,Ea=Faxa,Eb=PQである.負荷はばね要素としこの負荷を正弦波状に駆動している状況を想定する.断面Aではエネルギは双方向に移動するが,断面Bのエネルギフローはポンプから圧力制御バルブへ一方向であり,Eb−Eaが制御系の単位時間当たりの損失エネルギになる.
システムの状態量をx,制御をuとすると,EaはuTRxのように一般化できる.Rはアクチュエータ配置によって決まる定数マトリックスであり,これに重みの意味を含めれば最適制御のための評価関数は次のように表される.
この場合は、
ここで,Lr(τ)は式(1)の被積分関数のtを仮想時間τに置き換えた関数であり,次式で与えられる.
ここでQは対称正定マトリックス,Rは定数マトリックスである.
式(7)を最小化する制御u(τ)を求めることが最適制御問題になる.これは現在の状態x(t)を初期値としてTだけ未来までの最適制御を求める問題であるから最適制御はuopt(τ,x(t))と表わすことができる.τは仮想時間であり,これをゼロに近い適当な数値αで固定し実時間上の最適状態フィードバック制御uopt(α,x(t))を得る.
式(7),(8)の評価関数を最小化するための準最適制御則を導く.ここで準最適制御則とは,最適制御則との誤差が少なく実用上は最適制御則と同等という意味である.
非特許文献4に示されている常微分方程式の近似解法を、次のシステムの状態方程式、
に適用すると,近似解x*(右肩の*印は近似解であることを示す)は次式で表される.
ここで,D(t)=eAt(x0+A−1Bu0),E,G,Hは定数ベクトルである.この近似解を用いることで比較的容易に準最適制御則を求めることができるが,この手法は,厳密解の一部を1次近似しているため,このままでは評価区間が長い最適制御問題に対しては誤差が大きくなる傾向にある.この問題を解消するためReceding Horizon制御を併用している.
初期値がx(t)であることを考慮すると,式(10)の近似解はReceding Horizon制御では次式のようにかける.
x*(τ,x(t))=D(τ,x(t))+Eu(τ)+Gτ+H (11)
ここで,D(τ,x(t))=eAτ(x(t)+A−1Bu0)である.
式(8)のxをx*に置き換えた関数をLr *(τ)とし、Lr *(τ)を式(7)のLr(τ)と置き換えた関数をJr *とする.Jr *を最小にする条件は良く知られたオイラーの方程式であるが,この場合は代数方程式になる.これより容易に準最適制御則u* opt(τ,x(t))を求めることができる.
また未定定数ベクトルG,Hや,未定定数マトリックスEは境界条件や合理的な仮定から決定することができる.
ここで、ばね下(車輪)質量M1:55Kg,ばね上(車体)質量M2:500Kg,ダンパの減衰定数C2:1200Nsec/m,タイヤばね定数K1:200000N/m,サスペンションばね定数K2:18000N/mである.uは制御入力を表わし、これを受けてアクチュエータにより発生力uが生ずる.z0は路面の変位、z1はばね下の変位、z2はばね上の変位である.
ここで,
a31=−(K1+K2)/M1,a32=K2/M1,a33=−C2/M1,a34=C2/M1
a41=K2/M2,a42=−K2/M2,a43=C2/M2,a44=−C2/M2
b3=−1/M1,b4=1/M2
である
ここで,R1,Rは重み定数である.
評価関数は式(14)を式(7)に代入したものになる.
ここで,d3(τ,x(t)),e3,g3,h3とd4(τ,x(t)),e4,g4,h4は各々式(11)のベクトルD,E,G,Hの3,4番目の要素である.
ここで,e=2(e4 2+Re4+R1e3 2−Re3)である.e3,g3,h3とe4,g4,h4は未定定数であるため,これらを境界条件や合理的に導かれた条件から求める.
h3=kx3(t)
h4=kx4(t) (17)
とするのが適切である.kの求め方については,後述する.
g3,g4については,式(16)の右辺〔 〕内の第3項より明らかなようにτの係数を構成しているだけであるから,これらをまとめてgとおく.
g=2e4g4+Rg4+2R1e3g3−Rg3 (18)
αは,実装を想定した場合のコントローラの制御周期程度に選ぶ.ここではα=0.01secとした.Tはシステムの時定数程度に選び,T=0.3secとした.
最終的な未定定数kとe4は,式(24)を用いた制御シミュレーションにより評価関数を最小にする値を探索的に求める.未定定数を決めた後,性能評価を行う.
北野英司,沖良二,佐藤栄次,岡村賢樹,HEV用昇圧コンバータ内蔵パワーコントロールユニットの開発,自動車技術会学術講演会前刷集,No.77−04(2004),5−8 福島直人,変分法をベースとした最適制御問題の近似解法,第1報,日本機械学会論文集(C編)Vol.70,No.700(2004),72−77
路走行相当(ISO/TC108/クラスC)を60Km/hでの走行相当になるように設定した.
車両運動については,10−4secの固定ステップで2sec間のシミュレーションを行い,データは10−2secのサンプリングで収集・分析した.
路面入力を考慮し,システム状態方程式(9)を次のように変更した.
則への影響はない.
上記シミュレーション条件において,Jを最小にするkとe4を探索的に求めた結果を図4に示す.
これより最適値は,k=10,e4=2.3×10−4であることがわかる.
前記評価関数Jを振動に関する部分J1とエネルギに関する部分J2に分離して比較した.
式(28)から明らかなように,J2が負の場合は回生されたエネルギを,正の場合は車両側に伝達されたエネルギを示す.振動はスカイフックダンパで大きく改善され,本制御ではさらに改善されていることがわかる.エネルギ回生については,スカイフックダンパではJ2が正の値であり回生ができていないが,パッシブダンパ制御と本制御では同等のエネルギ回生ができていることがわかる.従って,本制御ではスカイフックダンパ以上の振動制御効果を達成しながら,従来車両のダンパで発生させていたのと同等のエネルギを回生させることができることが明らかである.このような制御則を従来の制御理論から導出することは困難であるが,本手法のステップを踏めば比較的容易に求めることができる.
制御システムと回生装置の効率を100%とすれば,今回の極良路60Km/h一定走行のケースでは,エネルギ回生値は2sec間で16.8J(ジュール)である.回生電力としては1輪当り8.4W,4輪では33.6Wになる.
車両の振動乗り心地性能とタイヤ接地性能はそれぞれ,ばね上,ばね下の振動加速度のPSDで評価されることが多いため,本論文でもPSDの比較評価を行う.
まずハミルトニアンHを次のように置く.
H(x,u,λ,t)=R1x3 2+x4 2+Ru(x4−x3)+λT(Ax+Bu) (29)
ここでA,Bは式(9),(13)に記したマトリクスとベクトル,λは未定乗数ベクトルである.変分法に従うと,制御が最適であるなら次の式(30),(31)を満たすことになる.
式(29),(31)より,次式が得られる.
本手法の制御則が最適制御に近いことを示すには,次の2段階のステップを踏めばよい.
▲1▼本手法の制御則u* optを用いたシミュレーションにより得られるx3,x4の各時刻歴データを用いて,微分方程式(32)〜(35)よりλ1〜λ4を計算する.
▲2▼次に,上記で得られたλ3,λ4を用いて次式を計算する.
この値がゼロになっていれば,結果的に本手法の制御則u* optは最適制御になっているとみなすことができる.あるいはゼロにならなくても,同様にして求めたスカイフックダンパ制御とパッシブダンパ制御の場合の∂H/∂uの値と比べてゼロに近ければ,u* optは準最適制御とみなすことができる.
結果を図11に示す.スカイフックダンパ制御とパッシブダンパ制御の場合の∂H/∂uの値は急激に発散していくのに対して,本制御則u* optは発散の傾向はわずかであり,他の2つに比べ微小値を維持していることがわかる.
以上から,本制御則u* optは厳密な最適制御に極めて近いこと確認できた.
福島直人他,油圧アクティブサスペンションによる車両の振動制御,日本機械学会論文集(C編),Vol.57,No.535(1991),76−80
双方向ポンプ11は誘導モータ12で回される.誘導モータ12が右回転する場合はポンプ11からシリンダ3の上室に作動油が送られ、左回転する場合は下室に作動油が送られる.誘導モータはインバータ13の3相出力で駆動され,この3相出力は制御指令値によって制御される.バッテリー15とインバータ13の間には可逆チョッパ回路14が設けられモータ駆動時にはバッテリー電圧を昇圧し,充電時にはモータからの電圧を調整しモータ電圧がバッテリー電圧を下回っても回生可能にする.
他の車輪も同様の構成である.
により準最適制御則u* optを演算し出力する.u* optの+−符号に応じてモータの回転方向を変え大きさに応じてモータの電流を変えれば、制御指令値に応じて力を発生させる制御系が実現でき
最適制御則u* optとからモータ駆動時か回生時かを判断し、モータ駆動時にはバッテリー電圧を昇圧し,回生時にはモータ電圧を昇圧する指令値ueを出力する.
2 車体(ばね上質量)
3 油圧シリンダ
4 ピストンロッド
5 アキュームレータ
6 上下Gセンサ(ばね上用)
7 上下Gセンサ(ばね下用)
8 サスペンション変位センサ
9 サスペンション伝達力センサ
10 制御回路
11 双方向ポンプ
12 誘導モータ
13 インバータ
14 可変チョッパ回路
15 バッテリ
20 制御則演算部
21 ばね上速度演算部
22 ばね下速度演算部
23 タイヤ変位演算部
Claims (6)
- システムの最適制御において、評価関数の被積分関数L(t)を制御性能評価項とエネルギ評価項の和の形で記述し、エネルギ評価項をシステムの状態ベクトルをx、制御入力ベクトルをu、重みマトリックスRとしたときuとxの相乗積uTRx(右肩の添え字のTは転置ベクトルを表す)で表すことを特徴とし、このような評価関数を最小化する制御方法.
- 請求項2において、制御ベクトルu(t)が、ベクトルeATx(t)の少なくとも一部要素を含むことを特徴とする制御方法.
- 請求項3において、システムの固有値σh+jωhのうちωhの最小値をωminとすると0<T≦2/ωminの範囲に時間Tを設定したことを特徴とする最適制御方法.
- 請求項2において、制御ベクトルu(t)が、ベクトルeAαx(t)の少なくとも一部要素を含むことを特徴とする制御方法.ただし、定数αは本制御を行う制御装置の制御周期程度とする.
- 請求項1において、制御装置を誘導モータとインバータと可逆チョッパ回路とこれらを制御する制御回路による構成としたことを特徴とする最適制御方法.
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