JP2006296209A - 変異型アスコルビン酸パーオキシダーゼ - Google Patents

変異型アスコルビン酸パーオキシダーゼ Download PDF

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Abstract

【課題】高温・低温・乾燥などの各種ストレスに対して耐性を備えた植物を作出することを目標にして、過酸化水素によってアポ酵素とヘムとの間に共有結合が生じず、失活しにくいアスコルビン酸パーオキシダーゼを作出する。
【解決手段】この発明の変異型アスコルビン酸パーオキシダーゼは、ヘムポケットに面しており、ヘム面のDistal側にあって、過酸化水素によってヘムと共有結合するアミノ酸残基(置換元アミノ酸残基)を、過酸化水素によってヘムと共有結合しないアミノ酸残基(置換先アミノ酸残基)に置換すること主要な特徴とする。例えば、タバコ葉緑体局在性アスコルビン酸パーオキシダーゼのアミノ酸配列の第35位に位置するトリプトファンをフェニルアラニンに置換することにより、過酸化水素による酵素活性の半減期が6.6倍長くなることが確認できた。
【選択図】なし

Description

この発明は、変異型アスコルビン酸パーオキシダーゼ、特に過酸化水素に対する耐性の向上した変異型アスコルビン酸パーオキシダーゼに関するものである。
植物は移動することができないため、常に高温・低温・乾燥等のストレスにさらされており、極端な環境条件下では、植物は生育阻害、枯死等の障害を受ける。そして、これら障害の原因の一つは、植物体内で発生する活性酸素であることが知られている。
活性酸素は酸素が変化してできる物質であり、通常の光化学反応によっても生成している。活性酸素の除去は、ある一定の量までであれば、図1の実線で示す経路に沿って、葉緑体に存在するアスコルビン酸パーオキシダーゼ(APX)が一時的に酸化され、これをアスコルビン酸が還元する(この際、アスコルビン酸はモノヒドロキシアスコルビン酸(MDA)に酸化される。)ことによって行われる。しかし、植物が前記環境ストレスに曝されると、還元剤であるアスコルビン酸が大量に消費されて欠乏し、アスコルビン酸パーオキシダーゼは過酸化水素の攻撃を受けて、図1に点線で示す経路によって速やかに失活する。これによって、過酸化水素が蓄積し、この過酸化水素によって、核酸、タンパク質、脂質膜が損傷して植物が枯死等の障害を受ける。
そこで、従来から、遺伝子組み換え技術を利用して、葉緑体の過酸化水素を効率的に消去することによって、植物にストレス耐性を与えることが研究されている(非特許文献及び非特許文献2を参照。) 。また、アスコルビン酸パーオキシダーゼ遺伝子を導入してその発現量を増やすことによって、ストレス耐性を向上させたストレス耐性植物についても研究がなされている(特許文献1を参照。)
しかし、葉緑体内の Redox制御の生理を考慮すれば、失活しないアスコルビン酸パーオキシダーゼを作出して葉緑体内に蓄積させることには、最大の効果が期待できる。それにもかかわらず、アスコルビン酸パーオキシダーゼが過酸化水素によって失活するメカニズムは、三宅ら(非特許文献3を参照。)の研究以来ほとんど進展がなかった。
そこで、発明者らは、前記の観点からアスコルビン酸パーオキシダーゼの失活について鋭意研究し、葉緑体型アスコルビン酸パーオキシダーゼは、過酸化水素によって失活するとその立体構造が変化すること、失活によってヘムとアポ酵素との間に共有結合が形成されること、を明らかにした(非特許文献4参照)。また、発明者らは、前記共有結合に関与するアミノ酸残基として、ヘム面のDistal側に位置するトリプトファン残基(タバコ葉緑体局在性アスコルビン酸パーオキシダーゼの場合は、そのアミノ酸配列の第35位に位置する。)であるとの知見もすでに得ている。
特開2003−9692号公報 深海ら(Shikanai)、「葉緑体内に細菌由来のカラターゼを有するタバコにおける、酸化ストレス下でのアスコルビン酸パーオキシダーゼの阻害( Inhibition of ascorbate peroxidase under oxidative stress in tobacco having bacterial catalase in chlorolasts.)」、欧州生化学会連盟学会誌(Federation of European Biochemical Societies letters)、 オランダ、欧州生化学会連盟(The Federation of European Biochemical Societies)、出版社Elsevier、通巻428号、1998、p. 47-51 宮川(Miyagawa)ら、「大腸菌由来のカタラーゼを発現する遺伝子組換えタバコを使用した、パラコートによって引起される光酸化ストレスに対する葉緑体の防御機構の進化(Evaluation of the defense system in chloroplasts to photooxidative stress caused by paraquat using transgenic tobacco plants expressing catalase from Escherichia coli.)」、植物と細胞の生理学( Plant and Cell Physiology) 、日本植物生理学会、March, 2000 、第41巻、第3号 p.311-320. 三宅(Miyake)ら、「低濃度アスコルビン酸下におけるアスコルビン酸パーオキキシダーゼの非活性化機構、過酸化水素はアスコルビン酸パーオキシダーゼの化合物Iを変質する。( Inactivation mechanism of ascorbate peroxidase at low concentrations of ascorbate: hydrogen peroxide decomposes compound I of ascorbate peroxidase.)」、 植物と細胞の生理学( Plant and Cell Physiology)、日本植物生理学会、1996、第37巻、第4号、p. 423-430 北島佐紀人ら、「植物の葉緑体アスコルビン酸パーオキシダーゼの失活に伴う活性部位の変化」、 平成15年度日本農芸化学会会関西支部大会発表要旨(発表日2004年10月5日、発表番号:B8)、日本農芸化学会関西支部
そこで、この発明は前記の知見に基づいて、高温・低温・乾燥などの各種ストレスに対して耐性を備えた植物を作出することを目標にして、過酸化水素によってアポ酵素とヘムとの間に共有結合が生じず、失活しにくいアスコルビン酸パーオキシダーゼを作出することを課題とする。
この発明の変異型アスコルビン酸パーオキシダーゼは、そのヘムポケットに面しており、ヘム面のDistal側にあって、過酸化水素によってヘムと共有結合するアミノ酸残基(置換元アミノ酸残基)を、過酸化水素によってヘムと共有結合しないアミノ酸残基(置換先アミノ酸残基)に置換すること主要な特徴とする。
この発明の変異型アスコルビン酸パーオキシダーゼは、置換により共有結合が生じなくなり、過酸化水素に対して強い耐性を備えている。そのため、この変異型アスコルビン酸パーオキシダーゼを植物に遺伝子導入すれば、高温・低温・乾燥などの各種ストレスに対して耐性を備えた植物を作出できる可能性がある。
このような植物、例えば、高温と乾燥に対する高い耐性を備えた植物の場合、現在植物の生えることのできない砂漠も大量に栽培することができ、これによって大気中の二酸化炭素を吸収させれば、地球温暖化問題の解決にも貢献することができる。
この発明の変異型アスコルビン酸パーオキシダーゼ、蛋白質、DNA、ベクター、形質転換体について、以下にその詳細を説明する。
(野生型アスコルビン酸パーオキシダーゼ)
この発明が変異の対象とする酵素の種類は、アスコルビン酸を還元剤として、過酸化水素を還元する野生型アスコルビン酸パーオキシダーゼである。ここで、ヘムと共有結合するアミノ酸残基以外のアミノ酸残基を欠失、置換、又は付加し、かつアスコルビン酸パーオキシダーゼ酵素活性を備えたアスコルビン酸パーオキシダーゼも、この発明が変異の対象とする「野生型アスコルビン酸パーオキシダーゼ」に含まれる。
野生型アスコルビン酸パーオキシダーゼの中でも、特に好ましいのが、高等植物での発現量が多く、作物植物に導入した場合の効果が大きい葉緑体局在性アスコルビン酸パーオキシダーゼであり、なかでも研究が進んでいることから、タバコ葉緑体局在性アスコルビン酸パーオキシダーゼが好ましい。
(置換元アミノ酸残基)
野生型アスコルビン酸パーオキシダーゼにおいて置換の対象となるアミノ酸残基(置換元アミノ酸残基)は、ヘムを収容するヘムポケットに面し、ヘム面のdistal側に存在するとともに、過酸化水素によってヘムと共有結合するアミノ酸残基である。ここで、「面する」とは立体構造の一部分又は大部分がヘムポケットの空洞に対して露出していることを言う。また、「ヘム面のdistal側に存在」とは、ミオグロビンの例に習って、ヘム面を境に第5配位子ヒスチジンのある側をProximal(近位)、反対側をdistal(遠位)と呼ぶ場合のdistal側にあることをいう。さらに、「過酸化水素によって共有結合を形成」とは、ヘムとアミノ酸残基とが、過酸化水素の酸化作用によって不可逆的に共有結合を形成することをいう。
このような置換元アミノ残基としては、具体的にはトリプトファン残基などが挙げられる。また、野生型アスコルビン酸パーオキシダーゼが、タバコ葉緑体局在性アスコルビン酸パーオキシダーゼ(そのアミノ酸配列を配列番号1に示す。)に由来する場合、置換元アミノ酸残基は、配列番号1に示すアミノ酸配列における第35位のトリプトファン残基である。その場合の置換先アミノ酸としては、トリプトファン以外の天然アミノ酸であれば特に限定する必要はないが、分子構造が類似していることから、触媒活性への予期せぬ影響が少ないと期待されるため、フェニルアラニンが好ましい。
(蛋白質、DNA、形質転換体、ベクター)
この発明の蛋白質は、配列番号1(その塩基配列の一例を配列番号2に記載する。)に示すアミノ酸配列における第35位のトリプトファン残基を、トリプトファン残基以外のアミノ酸残基、好ましくはフェニルアラニン残基に置換したものである。
なお、配列番号1に示すアミノ酸配列における第35位のトリプトファン残基をトリプトファン残基以外のアミノ酸残基に置換し、かつ、発明の効果を阻害しない限りにおいて、それ以外のアミノ酸残基のうち、1又は数個のアミノ酸残基を置換、欠失又は付加されたアミノ酸配列を有するとともに、アスコルビン酸パーオキシダーゼ活性を有する蛋白質もこの発明の変異型アスコルビン酸パーオキシダーゼに含まれる。
また、この発明のDNAは、前記の変異型アスコルビン酸パーオキシダーゼをコードする遺伝子であり、例えば、配列番号1のアミノ酸に対応する配列番号2に記載の塩基配列のうち、配列番号1の第35位のトリプトファン残基をコードする塩基を、フェニルアラニンをコードする塩基に置換したもの等が挙げられる。なお、酵素活性に関係のないアミノ酸残基をコードする塩基配列を置換したDNA、塩基配列としては異なるものの、コードしているアミノ酸配列が同一であるDNAもこの発明のDNAに含まれる。
さらに、この発明の形質転換体は公知の手段により、前記DNAをその遺伝子機能が発現可能な状態で宿主細胞または動植物個体に導入して得られる形質転換体である。なお、形質転換体の宿主としては、前記DNAの遺伝子機能が発現可能な状態で含むことができれば、特に限定することなく使用することができる。
具体的には、宿主細胞としては、細菌などの原核細胞、糸状菌、酵母等の微生物細胞、動物細胞、昆虫細胞、植物細胞等、目的とする遺伝子を発現できるものであればいずれも使用することができる。また、動物個体や植物個体を使用してもよい。
なかでも、アスコルビン酸パーオキシダーゼを大量に発現させてその性質を調べる場合には大腸菌などが好ましく、スーパー植物などを育種する場合には、食用作物、そのなかでも経済的な価値の高さから、イネなどが好ましい。なお、「遺伝子機能が発現可能な状態」とは、当該遺伝子の産物(酵素)が酵素活性を有する状態で発現することをいう。
また、ベクターとしては、宿主細胞において自立複製が可能、または染色体中への組込みが可能で、前記DNAの転写に適した位置にプロモーターを含有しているものが使用できる。
(蛋白質、DNA、ベクター、形質転換細胞の製造方法)
これらの蛋白質、DNA、ベクター、形質転換細胞は、すでに公知になっている任意の方法により製造することができる。
例えば、蛋白質は、これらの蛋白質をコーディングするDNAを含む発現ベクターを構築して、これを適当な宿主細胞に導入して培養し、この宿主細胞が生産した変異型アスコルビン酸パーオキシダーゼを塩析、カラムクロマトグラフィーなどの既存の方法を利用して精製し、高効率に生産することができる。なお、発現ベクターの種類及び内容、宿主細胞の種類、宿主細胞の培養条件、生産された変異型アスコルビン酸パーオキシダーゼの分離・精製方法等は必要に応じて任意に決定することができる。
また、前記DNAは、公知の任意の方法、例えば、前記の野生型蛋白質をコードするDNAの塩基配列のうち、置換元アミノ酸残基をコードする塩基を、置換先アミノ酸残基をコードする塩基に置換したプライマーを準備し、これをプライマーとして使用して野生型アスコルビン酸パーオキシダーゼの遺伝子DNAを鋳型とするPCR法を行う等の方法により、効率的に調製することができる。そして、このようなDNAを適当な発現ベクターの発現プロモーターの下流に配置することにより、前記ベクターを製造することができる。
また、形質転換体を得る方法としては、宿主に応じて公知の任意の方法を使用できる。具体的には、塩化カルシウム法、アグロバクテリウム法、エレクトロポレーション法、パーティクルガン法、リン酸カルシウム共沈法、DEAE-デキストラン法、エレクトロポレーション法、リポフェクション法/リポソーム法などが挙げられる。
以下、この発明について実施例に基づいてより詳細に説明するが、この発明の特許請求の範囲は如何なる意味においても以下の実施例によって制限されるものではない。
変異型アスコルビン酸パーオキシダーゼを、(1)野生型パーオキシダーゼ遺伝子のクローニング及び発現ベクターの調製、(2)変異型アスコルビン酸パーオキシダーゼの発現ベクターの調製、(3)野生型及び変異型アスコルビン酸パーオキシダーゼの精製、の手順によって得た。そこで、以下にその詳細について説明する。なお、以下に記載する一般的な組み換えDNAの実験は、とくに断りのない限り、〔6〕中山と西方(1995)、〔1〕 Ausubel et al. 1997、〔4〕Sambrook et al. 1989に従って行った。
(1)野生型パーオキシダーゼ遺伝子のクローニング及び発現ベクターの調製
まず、タバコ葉より抽出した全RNAとオリゴdTプライマー、逆転写酵素を用いて一本鎖cDNAを合成した。
そして、この1本鎖cDNAを、特異的プライマー及びEnhanced DNA Polymerase (Stratagene、アメリカ)を使用して増幅した。なお、PCR反応は、95℃、30秒の変性工程、55度、30秒のアーニリング工程、68℃、60秒の伸張工程からなる反応サイクルを30サイクル行った。
ここで、前記特異的プライマーには、プライマー1 (5'- AGATATCCATGGGCGCCGCGTCTGATTCTGATCAGTTG -3'、配列番号3)及びプライマー2 (5'-CCCCCTCGAGGGCAAATTAAAACAAACGGCAGAAC -3'、配列番号4)を使用した。なお、このプライマーには成熟型(葉緑体シグナルが除去されている。)タバコ葉緑体局在性アスコルビン酸パーオキシダーゼの5'側に翻訳開始点とするためのNcoI認識部位が付与してあり、3'非翻訳領域にXhoIが附与してある。したがって、これらのプライマーを使用したRT-PCR産物の塩基配列は、成熟型アスコルビン酸パーオキシダーゼのN末端にメチオニン残基を付加したタンパク質をコードしている。
つぎに、得られたPCR産物を制限酵素NcoIとXhoIで処理し、同じくNcoI及びXhoIで部分消化した発現ベクターpET16b(Novagen、アメリカ)に挿入した。得られた5つのクローンについてその塩基配列を決定して、それら同士を比較することにより正しい塩基配列を推定し、それに一致する配列(配列番号1)を有するクローンをこれ以降の実験に使用した。そして、このようにして得られたプラスミドをpET16tsAPX、これがコードする野生型パーオキシダーゼ遺伝子をtsAPXと命名した。また、これがコードするアミノ酸残基の位置は、tsAPXの第一番目のメチオニンを第1位として相対的に表示することとした。なお、前記のtsAPXの塩基配列は、既報の塩基配列(Genbank/EMBL/DDBJ AB022274)とはその一部が異なっている。
(2)変異型アスコルビン酸パーオキシダーゼ発現ベクターの調製
第35位にあるトリプトファン残基をフェニルアラニン残基に置換するため、図2に示すように、(2a)野生型アスコルビン酸パーオキシダーゼのN末端側とC末端側をPCR反応によって別々に増幅し、(2b)得られたPCR産物をライゲーションにより結合させたのち、(2c)この結合物をPCRで増幅して、(2d)ベクターに組み込んだ。以下にその詳細について説明する。
(2a)まず、PCR反応によるtsAPXのN末端側領域の増幅は、pET16tsAPXを鋳型に、リン酸化したプライマー3(5'- GAAGCCCAATCTAACCAAAATAGGATGAC -3'、配列番号5、トリプトファンをフェニルアラニンに置換するため5'末端側から1、2位の塩基をGAに置換しあり、制限酵素TaqIによる認識部位を欠失させるため、5'末端側から第12位にある塩基をTに置換してある。)及びベクターのT7プロモーターに結合するプライマー4(5'-TAATACGACTCACTATAGG-3'、配列番号6)をプライマーとして、Pfu Turbo DNA Polymerase (Stratagene、アメリカ)を使用して行った。また、PCRによるC末端側断片の増幅は、プライマー5(5'- CATGATGCTGGAACTTATAACAAG-3'、配列番号7)およびプライマー6(5'- CGCAGAAACGTCTACTCTCC-3'、 配列番号8)をプライマーとして、Herculase Enhanced DNA Polymerase (Stratagene、アメリカ)を使用して行った。 なお、この1段階目のPCR反応は、N末端側とC末端側とも、それぞれ95℃、30秒の変性工程、55度、30秒のアーニリング工程、68℃、30秒の伸張工程からなる反応サイクルを30サイクル行った。
(2b)つぎに、得られたN末端側断片とC末端側断片とをライゲーションした。(2c)ライゲーションしたのち、この結合物を鋳型に使用して、プライマー4とプライマー6とをプライマーに使用し、2段階目のPCR反応を行った。そして、この2段階目のPCR産物をNcoIおよびNdeIで消化して挿入DNAとした。なお、2段階目のPCR反応は、95℃、30秒の変性工程、55度、30秒のアーニリング工程、68℃、60秒の伸張工程からなる反応サイクルを30サイクル行った。
一方、pET16tsAPXを NcoIおよびNdeIで消化して、このベクターから前記挿入DNAに対応する部分を除去し、被挿入ベクターを作成した。
(2d)最後に、前記挿入DNAと前記被挿入ベクターとをライゲーションして、変異型アスコルビン酸パーオキシダーゼ発現ベクターを調製した。なお、得られたプラスミドの変異配列についてはその塩基基配列を決定し、第35位のトリプトファンがフェニルアラニンに置換されていること、及びTaq I認識部位が破壊されていること、およびそれ以外の変異が導入されていないことを確認した。なお、このプラスミドはpET16tsAPXW35Fと命名し、これがコードする変異型変異型アスコルビン酸パーオキシダーゼをtsAPXW35Fと命名した。
(3)野生型及び変異型アスコルビン酸パーオキシダーゼの精製
まず、(1)及び(2)で調製したpET16tsAPX、pETtsAPXW35Fをそれぞれ大腸菌BL21 ( DE3)株に形質転換した。そして、形質転換した大腸菌を50 mg/L アンピシリンを加えた 3LのLB培地で30 ℃下で、OD600 = 0.4となるまで24時間攪拌培養したのち、1 mMの i sopropyl-β-D-thiogalactoside(IPTG) を添加し、O.D.600 = 0.5となるまでさらに5時間培養した。培養が完了したのち、大腸菌を4 ℃下で遠心分離(2800g,15 min)して集菌し、1 mMアスコルビン酸を含む50 mM リン酸ナトリウムバッファー(pH 7.0)で洗浄したのち、液体窒素によって凍結し- 80°Cで保存した。 なお、同様の方法によって、計12 LのLB培地を使用して形質転換した大腸菌を培養し、その菌体を回収した。
つぎに、LB培地12 Lより得た大腸菌ペレットを40 mLのbuffer B(50 mM リン酸カリウム, pH 7.0, 1 mM EDTA, 1 mMアスコルビン酸)に懸濁し、標準ホーンHNN-0200を装着した超音波破砕機VP-15S(TAITEC)を用いて破砕した。破砕は出力4、cycle 20%、5分を2回くりかえし、その後出力5、cycle 20%、5分を1回おこなった。
そして、この破砕物を13,000g で30分間遠心し、その上清をフィルター(DISMIC-25CS 0.45 μm, ADVANTEC)濾過し、DEAEカラム(Hi Prep 16/10 DEAE FF, Pharmacia、アメリカ)に供した。供してからbuffer Bを流速5 mL/min で20分間流し、その後20分間かけて0から0.3 MまでKCl濃度を上昇させながら、2.5 mLごとに溶出液を分取した。
分取したフラクションの中から酵素活性の有無によって、アスコルビン酸パーオキシダーゼ活性を含むフラクションを選択し、選択されたフラクションに40%飽和度となるように硫安を加え、氷上で1時間おだやかに撹拌して硫安沈殿した。これを13,000gで30分間遠心したのち、上清をフィルター(DISMIC-25CS 0.45 μm, ADVANTEC)で濾過した。
得られた上澄みを疎水カラム(HiLoad 16/10 Phenyl sepharose, Pharmacia、アメリカ)に供し、40%硫安を含むbuffer Bにより流速2 mL/minで40分間かけて非吸着タンパク質をカラムから取り除き、その後100分間かけて40から0%まで硫安濃度を降下させながら、2.5 mLごとに溶出液を分取した。
分取したフラクションの中からSDS-PAGEによりアスコルビン酸パーオキシダーゼを含むフラクションを選択し、選択したフラクションをゲル濾過カラム(Hiload 16/60 Superdex 75 prep grade, Pharmacia)に供して、0.15 M塩化カリウムを含むbuffer Bにより流速0.5 mL/minで溶出しながら、2.5 mLごとに溶出液を分取した。
分取したフラクションの中からSDS-PAGEによって、アスコルビン酸パーオキシダーゼと同じ分子量のバンドを示したフラクションを再度選択し、選択したフラクションを限外濾過Centriprep(MILLIPORE)によりSoret peakが約2になるまで濃縮した。最後に、この精製酵素液を200 μLずつマイクロチューブに分注して液体窒素で凍らせ、使用時まで- 80°Cで保存した。
なお、前記クロマトグラフィーによる精製にはBioLogic Duo Flowクロマトグラフィーシステム(BIORAD、アメリカ)を使用し、操作はすべて氷上又は4℃で行った。
実施例1で得られた精製酵素を使用して、アミノ酸置換が、(4)アスコルビン酸パーオキシダーゼの触媒部位に与える影響、(5)ヘムとアポ酵素との間の共有結合形成に与える影響、(6)過酸化水素による失活に与える影響、について調べた。以下にその詳細について説明する。
(4)アスコルビン酸パーオキシダーゼの触媒部位に与える影響
アミノ酸置換が、(4a)アスコルビン酸パーオキシダーゼの酵素活性、ヘム周辺の状態を示す(4b)紫外可視スペクトルに与えた影響を調べた。
(4a)アスコルビン酸パーオキシダーゼの活性測定
野生型及び変異型アスコルビン酸パーオキシダーゼの活性測定は、反応液(50mMリン酸カリウムバッファー(pH7.0)、0.5mM アスコルビン酸、0.1mM 過酸化水素)1mlを使用して、中野らの方法(〔3〕NakanoとAsada,1981)に沿って行った。ここで、過酸化水素によるアスコルビン酸の減少は、290nm(モル吸光係数2.8mM-1・cm-1)における吸光度の減少を紫外可視分光光度計UV-1700 PharmaSpec(島津製作所)を使用して25℃で測定した。
なお、タンパク質の定量は、Bradford法(1976)に従ってCBB color solution(ナカライテスク製)を使用して行った。具体的には、CBB 1mlに対して20μlのサンプルを添加して595nmの吸収光度を測定することによって行った。その際、検量線はBSAをもちいて作製した。さらに、野生型及び変異型アスコルビン酸パーオキシダーゼのモル吸光係数は、Pyridine-hemochromogen法(〔2〕Kitajima,2002)により決定した。その際に、標準品としてHorseradish peroxidase(ナカライテスク)を使用し、Horseradish peroxidaseのモル吸光係数は100mM-1・cm-1とした。
その結果、野生型及び変異型アスコルビン酸パーオキシダーゼ活性は、何れも1.3×103 mol ASA(アスコルビン酸)sec-1 mol heme-1であり、同一の値であった。このことはアミノ酸残基の置換が酵素活性に影響しないことを示している。
(4b)紫外可視スペクトルに与えた影響
まず、アスコルビン酸除去後に残るごく微量のアスコルビン酸と溶存酸素との反応による過酸化水素の生成を防ぐため、精製酵素溶液から溶存酸素とアスコルビン酸を除去して、嫌気リン酸ナトリウムバッファーにバッファー交換し、嫌気酵素溶液をえた。具体的には、窒素ガスにより嫌気化した50mMリン酸ナトリウムバッファー(pH7.0)で平衡化したゲル濾過カラムNAP5(Pharmacia,アメリカ)及びPD10(Pharmacia,アメリカ)に前記精製酵素溶液を順に通すことにより、3.5mlの嫌気酵素溶液を得た。
なお、酵素濃度は、嫌気条件に保ったままSoret吸収を測定して決定した。また、野生型及び変異型アスコルビン酸パーオキシダーゼの、この条件下でのモル吸光係数は、それぞれ105 mM-1・cm-1、122mM-1・cm-1であった。なお、いずれのサンプルにおいても、酵素濃度が約2μMとなるようにあらかじめゲル濾過カラムに供する量を調節した。
このようにして嫌気50mMリン酸ナトリウムバッファー(pH7.0)に溶解した野生型及び変異型アスコルビン酸パーオキシダーゼについて、未処理の場合、0.5mMシアン化カリウムを添加した場合、又は数粒のジチオナイトを添加した場合について、それぞれの紫外可視スペクトルを測定した。なお、測定は、紫外可視分光光度計UV-1700 PharmaSpec(島津製作所)を使用して25℃で行った。その結果を図3に示す。なお、(a)は野生型の、(b)は変異型のアスコルビン酸パーオキシダーゼの紫外可視スペクトルをそれぞれ示している。
図3からも明らかなように、変異型アスコルビン酸パーオキシダーゼの紫外可視スペクトルには、野生型アスコルビン酸パーオキシダーゼには存在したSoret吸収帯の短波長側の肩(図中に点線矢印で示す。)が消失していた。このことは、第35位のトリプトファン残基をフェニルアラニン残基に置換することによって、ヘム面のdistal側に存在する水分子がトリプトファン残基の窒素原子との水素結合を失ってヘム鉄に配位し、これによってヘム鉄が5配位から6配位に変わったことを示している。なお、同様の影響は、おなじ遺伝子ファミリーに属するシトクロームcパーオキシダーゼにおいても報告されている(〔5〕Smelevich et al. 1988)。
また、シトクロームcパーオキシダーゼではシアンイオンが存在すると、前記水分子の位置にシアンイオンが入ってヘム鉄に配位するとされている。そこで、シアン化カリウムを添加した場合について、野生型及び野生型アスコルビン酸パーオキシダーゼの紫外可視スペクトルを比較すると、両者は類似していた。また、ジチオナイトを添加してヘム鉄をFe(II)に還元した場合について、野生型及び変異型アスコルビン酸パーオキシダーゼのスペクトルを比較すると、両者は類似していた。
一方、可視領域のスペクトルを比較すると、野生型と変異型アスコルビン酸パーオキシダーゼのいずれにおいてもCTバンドが存在し、αバンド及びβバンドは存在しなかった。このことは、変異型アスコルビン酸パーオキシダーゼに含まれるヘムの電子は、天然変異型アスコルビン酸パーオキシダーゼと同様にhigh-spin状態であることを示している。
以上の結果から、第35位のトリプトファンをフェニルアラニンに置換しても、予想通り、水分子がヘム鉄に配位しているだけであり、それ以外には触媒部位に顕著な影響を及ぼしていないことが確認できた。
(5)ヘムとアポ酵素との間の共有結合形成に与える影響
アミノ酸置換が、過酸化水素処理よるヘムとアポ酵素との間の共有結合形成に与える影響について調べた。具体的には、(5a)嫌気酵素溶液に過酸化水素を添加して失活反応を開始させたのち、一定時間後に失活反応を停止させ、(5b)強酸処理によって蛋白質を変性させたのち、逆相クロマトグラフィーに供してその可視紫外スペクトルを測定した。その結果を図4に示す。なお、図4(a)及び(b)は野生型の、図4(c)及び(d)は変異型のアスコルビン酸パーオキシダーゼの結果をそれぞれ示している。また、図4(a)及び(c)は失活反応前の、(b)及び(d)は失活反応後のアスコルビン酸パーオキシダーゼの結果をそれぞれ示している。
図4(a)からも明らかなように、野生型アスコルビン酸パーオキシダーゼの場合、過酸化水素により処理していなければ、すなわち失活していなければ、ペプチドの吸収ピークとヘムの吸収ピークは一致しなかった。反対に、図(b)に示すように、過酸化水素処理すれば、すなわち失活すれば、両ピークが一致した。一方、図(c)及び(d)に示すように、変異型アスコルビン酸パーオキシダーゼの場合は過酸化水素未処理、処理の場合いずれも220 nmと400 nmの吸収ピークは一致しなかった。なお、220nmはペプチド(蛋白質)の吸収ピークであり、 400nmはヘムの吸収ピークである。
このことは、野生型アスコルビン酸パーオキシダーゼでは、失活にともなってヘムとアポ酵素の間に共有結合が形成するのに対して、変異型アスコルビン酸パーオキシダーゼは失活しても共有結合を形成しないこと、を示している。
なお、(5a)は、具体的には次のようにして行った。(4)に記載の方法により得た野生型及び変異型アスコルビン酸パーオキシダーゼの嫌気酵素溶液に、20倍モル当量の過酸化水素をマイクロシリンジにより注入してよく混合することにより失活反応を開始し、それぞれ20秒および2分後に0.5 mMのアスコルビン酸を加えて失活反応を停止させた。なお、過酸化水素の濃度は、240 nmのモル吸光係数0.0394 mM-1・cm-1から算出した。
また、(5b)は、具体的には次のようにして行なった。嫌気50 mMリン酸ナトリウムバッファー(pH7.0)で平衡化したゲル濾過カラムeconopack10DG(Biorad、アメリカ)に全量を供し、得られた蛋白質溶液に半量の塩酸・酢酸混合液(8:3)を加えて蛋白質を変性させ、そのうちの500 μLをHPLCに注入した。ここで、HPLCにはLC-VPシステム(島津製作所)、カラムにはC4カラム(4.6 mm×250 mm、 Vydac、カラム温度は40℃)を使用した。測定は流速1ml/minで35% アセトニトリル, 0.1%TFAを含む水溶液を14分間流し、その後15分間かけてアセトニトリル濃度を45%まで上げて行った。ペプチドとヘムの検出は、それぞれ220 nm、400 nmにおける吸光度を、フォトダイオードアレイUV-VIS検出器SPD-M10AVP(島津製作所)で測定することによって行った。
(6)過酸化水素による失活に与える影響
アミノ酸置換が過酸化水素による失活に与える影響について調べた。具体的には、嫌気酵素液に20倍モル当量の過酸化水素を添加して、一定時間ごとにその一部を取り出し、速やかに50 mMリン酸ナトリウム(pH7.0), 0.5 mM アスコルビン酸, 0.01 mg/mL BSAを含む水溶液に混合して失活反応を停止させたのち、(4a)と同様の方法により残存酵素活性を測定した。その結果を図5に示す。なお、図5中の□と■は、それぞれ失活反応前と後の野生型アスコルビン酸パーオキシダーゼの残存活性を示しており、○と●とはそれぞれ失活反応前と後の変異型アスコルビン酸パーオキシダーゼの残存活性を示している。
図5からも明らかなように、過酸化水素添加後に残存するアスコルビン酸パーオキシダーゼ活性を調べた結果、野生型アスコルビン酸パーオキシダーゼ(■)ではその半減期がわずか10秒以内であったのに対して、変異型アスコルビン酸パーオキシダーゼ(●)ではその半減期が66秒であった。すなわち、第35位のトリプトファンからフェニルアラニンへの置換により過酸化水素処理によるヘムとアポタンパク質間の共有結合が阻害されると、少なくとも6.6倍まで過酸化水素耐性が向上することを示された。
このことは、過酸化水素によるアスコルビン酸パーオキシダーゼの失活の原因は、ヘムと第35位のトリプトファンとの間に共有結合が形成されることにあることを示している。ただ、半減期が長くなったとはいえ、変異型アスコルビン酸パーオキシダーゼも3分以内にほぼその活性を失った。この原因としては、過酸化水素に攻撃を受けたアスコルビン酸パーオキシダーゼの反応中間体が、第35位のトリプトファンと反応できないため別の産物へと崩壊したことにあると推定される。
前記の実施例1及び実施例2の結果から、タバコ葉緑体局在性アスコルビン酸パーオキシダーゼの第35位のトリプトファンをフェニルアラニンに置換しても、酵素活性は変化せず、過酸化水素に対する耐性は向上することが明らかとなった。
最後に、この実施例で引用した文献の詳細を以下に記載する。
〔1〕Ausubel, F. M., Brent, R., Kingston, R. E., Moore, D. D., Seidman, J. G., Smith, J. A. and Struhl, K., Current Protocols in Molecular Biology. Greene Publishing Associates/John Wiley and Sons, New York (1997)
〔2〕Kitajima, S., Ueda, M., Sano, S., Miyake, C., Kohchi, T., Tomizawa, K., Shigeoka, S. and Yokota, A. A stable form of ascorbate peroxidase from sulfur dioxide-tolerant red algae, Galdieria partita, is a hybrid-type enzyme of chloroplastic and cytosolic forms of higher plant. Bioscience, Biotechnology, and Biochemistry 66(11), 2367-2375 (2002)
〔3〕Nakano, Y. and Asada, K., Hydrogen peroxide is scavenged by ascorbate-specific peroxidase in spinach chloroplasts. Plant Cell Physiol., 22, 867-880 (1981)
〔4〕Sambrook, J., Fritsch, E. F., and Maniatis, T., Molecular Cloning: a Laboratory Manual 2nd Ed. Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor (1989).
〔5〕Smulevich G, Mauro JM, Fishel LA, English AM, Kraut J, Spiro TG. Heme pocket interactions in cytochrome c peroxidase studied by site-directed mutagenesis and resonance Raman spectroscopy. Biochemistry. 1988 Jul 26;27(15):5477-85.
〔6〕中山広樹、西方敬人 バイオ実験イラストレイテッド2 遺伝子解析の基礎2 遺伝子解析の基礎 秀潤社、東京 (1995)
この発明により、溶液中で失活しにくいアスコルビン酸パーオキシダーゼを生産することが可能となり、その商品化の道が開けた。そして、その用途としては、例えば、まず研究用試薬があげられる。また、この酵素の基質であるアスコルビン酸は、化粧品の添加物としてよく使用されるものであるが、この酵素を併用すればアスコルビン酸による過酸化水素の還元速度を増加できるため、その美容効果のさらなる向上が期待できる。
アスコルビン酸パーオキシダーゼによって触媒される過酸化水素の反応経路を模式的に示す図である。 変異型アスコルビン酸パーオキシダーゼ発現ベクターの調製方法を模式的に示す図である。 野生型(a)及び変異型(b)のアスコルビン酸パーオキシダーゼ紫外可視スペクトルを測定した結果を示す図である。 アミノ酸残基の置換が、過酸化水素処理によるヘムとアポ酵素との間の共有結合形成に与えた影響を可視紫外スペクトルの違いにより比較した図である。なお、(a)、(b)は野生型の、(c)、(d)は変異型のアスコルビン酸パーオキシダーゼの可視紫外スペクトルを示している。 アミノ酸残基の置換が、過酸化水素処理による酵素活性の低下に与えた影響を示す図である。

Claims (9)

  1. 野生型アスコルビン酸パーオキシダーゼのヘムポケットに面し、ヘム面のDistal側にあるとともに、過酸化水素によってヘムと共有結合するアミノ酸残基(置換元アミノ酸残基)を、過酸化水素によってヘムと共有結合しないアミノ酸残基(置換先アミノ酸残基)に置換した変異型アスコルビン酸パーオキシダーゼ。
  2. 置換元アミノ酸残基がトリプトファン残基であり、置換先アミノ酸残基がトリプトファン残基以外のアミノ酸残基である請求項1に記載の変異型アスコルビン酸パーオキシダーゼ。
  3. 置換先アミノ酸残基が、フェニルアラニン残基である請求項2に記載の変異型アスコルビン酸パーオキシダーゼ。
  4. 野生型アスコルビン酸パーオキシダーゼが、タバコ葉緑体局在性アスコルビン酸パーオキシダーゼである請求項1から請求項3の何れかに記載の変異型アスコルビン酸パーオキシダーゼ。
  5. 以下の(a)又は(b)の蛋白質。
    (a)配列番号1に示すアミノ酸配列における第35位のトリプトファン残基をトリプトファン以外のアミノ酸残基(置換先アミノ酸残基)に置換してなる蛋白質、
    (b)配列番号1に示すアミノ酸配列における第35位のトリプトファン残基をトリプトファン以外のアミノ酸残基(置換先アミノ酸残基)に置換し、置換先アミノ酸残基以外の1又は数個のアミノ酸残基が欠失、置換、又は付加されたアミノ酸配列からなり、ヘムと混合することによってアスコルビン酸パーオキシダーゼ活性を示す蛋白質。
  6. 置換先アミノ酸残基がフェニルアラニン残基である請求項5に記載の蛋白質。
  7. 請求項5又は請求項6に記載の蛋白質をコードする塩基配列を有するDNA。
  8. 請求項7に記載のDNAを、そのDNAの遺伝子機能が発現可能な状態で含むベクター。
  9. 請求項7に記載のDNAを、そのDNAの遺伝子機能が発現可能な状態で含む形質転換体。


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