JP2006274098A - ゼラチンゲルの製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 良好な弾力性や徐放性、粘着性及び温度保持性を損なうことなく、力学的強度や耐熱性を改善でき、しかもハイドロゲルに比較して形状変化、物性変化、表面の固化、カビの発生を確実に抑制できるようにしたゼラチンゲルを製造する。
【解決手段】 多価アルコールを溶媒としてこの溶媒にゼラチンを溶解させ、この溶液を放置し冷却することによってゲルを調製する。溶媒にはエチレングリコール又はプロピレングリコールを用いることができる。必要に応じて架橋剤を添加することができる。架橋剤にはグルタルアルデヒド水溶液、あるいは有機化合物で希釈したグルタルアルデヒドの希釈液、エチレングリコールジグルタルエーテルなどの2官能性又は多官能性エポキシ化合物、あるいは有機化合物で希釈した2官能性又は多官能性エポキシ化合物の希釈液を用いることができる。
【選択図】 なし

Description

本発明は多価アルコールを溶媒とするゼラチンゲルの製造方法に関し、特に良好な弾力性や徐放性、粘着性及び温度保持性を損なうことなく、力学的強度や耐熱性を改善でき、しかも従来のハイドロゲルに比して形状変化、物性変化、表面の固化、カビの発生を確実に抑制できるようにしたゼラチンゲルの製造方法に関する。
ゼラチンは骨や皮を酸処理又はアルカリ処理したのち熱湯で抽出して得られる変性コラーゲンであり、従来は粉末、シ−トあるいはスポンジの形態に製造され、主として食品素材、写真乳剤、医薬用カプセル等に用いられてきたが、最近ではゼラチンの生体適合性(低抗原性及び高生体吸収性)を有することから、医療関係材料への展開が期待され、又生分解性を有することから、生分解性の素材、いわゆる環境に優しい素材への展開が期待されている。
ゼラチンの他の形態としてゲルがある。ゲル状物質は、近年、その柔軟性や弾力性、徐放性、粘着性、温度保持性等が注目され、ソフトマテリアルとして様々な用途に用いられてきている。ソフトマテリアルの原材料にはハイドロゲル等の種々のゲルが主に用いられ、ゼラチンもその水溶液やそれに架橋剤を加えたものが容易にゲル化することから、その候補として挙げられる。また、ゼラチンは前述のように生体適合性や生分解性を有することから、これらの特徴を有する新たな付加価値を持つソフトマテリアルの原料としても注目されている。
現在、ゼラチンゲルは主に食品用途に用いられているが、これはゼラチンを水に膨潤させた後に加熱して溶解させあるいはゼラチンを温水に溶解させ、その後に冷却しあるいは第三成分を添加してゲル化させたものである。また、他の用途の場合もゼラチンを水に溶かし、そのうえで架橋剤によりゲル化させたものが用いられている。
さらに、ゼラチン水溶液にプロピレングリコール等のポリオールを添加してゲル化させ、力学的強度及び形状安定性を改善するようにしたゼラチンのハイドロゲルが提案されている(特許文献1)。
特開昭58−162249号公報
この水を溶媒に用いた、いわゆるゼラチンのハイドロゲルは食品として嗜好されているが、他の用途に用いられる場合でも極めて商品寿命の短いものに限定されている。それはゼラチンのハイドロゲルが良好な弾力性や徐放性、粘着性、温度保持性を持ち合わせているにもかかわらず、力学的強度、耐熱性が低く、特に長期間が経過すると水分の蒸発による形状変化、物性変化、表面の固化、カビ等の発生などが起こることから、中長期的な使用に供する製品、あるいはその製品に組み入れる素材としては問題があった。
本発明はかかる問題点に鑑み、良好な弾力性や徐放性、粘着性及び温度保持性を損なうことなく、力学的強度や耐熱性を改善でき、しかも従来のハイドロゲルに比較して形状変化、物性変化、表面の固化、カビの発生を確実に抑制できるようにしたゼラチンゲルの製造方法を提供することを課題とする。
そこで、本発明に係るゼラチンゲルの製造方法は、多価アルコールを溶媒としてゼラチンを溶解させ、この溶液をゲル化するようにしたことを特徴とする。
本発明の特徴はゲル調製の溶媒として従来用いられてきた水あるいは水を主成分とする溶液に代え、多価アルコールを溶媒に用いるようにした点にある。
ゲル化の方法はゼラチン溶液を放置し、冷却し、あるいは第3の成分を添加することによりゲル化させることができるが、従来と同様の方法であるので、その詳細な説明は省略する。
多価アルコールを溶媒に用いることよって良好な弾力性や徐放性、粘着性及び温度保持性を損なうことなく、力学的強度や耐熱性を改善でき、しかも従来のハイドロゲルに比較して形状変化、物性変化、表面の固化、カビの発生を確実に抑制できる理由は詳細には不明であるが次の通りと考えられる。まず、多価アルコールを溶媒として用いるとゼラチン分子間の架橋密度が水を溶媒として用いる場合に比べて高くなることが予想されること、又分散媒としての粘性は水よりも多価アルコールの方が一般的に高く(特に、高温時にその差が大きい)、さらに架橋ネットワーク間における分散媒が移動し難いことが、力学的強度や耐久性の向上にむすびついていると考えられる。また、一般に多価アルコールは水よりも沸点が高いために、ゲル形成後の表面からの分散媒の蒸発が少なく、形状変化や物性変化が小さく、又表面固化が少なくなり、設計時の品質がより長期にわたって維持できることが予想される。さらに、分散媒が多価アルコールの場合には水の場合に比較してカビ等の微生物が発生し難い。
多価アルコールにはエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリンなどを用いることができるが、エチレングリコールが最も安定した効果が得られることが判明した。また、例えばゼラチンゲルになった時の強度や柔軟性や耐熱性を調整し、着色や防腐性あるいは徐放性を付与する目的で、この溶媒としての多価アルコールには他の成分を必要に応じて添加してもよいが、多価アルコールに可溶な物質であるのが好ましい。例えば、水、あるいはメタノール、エタノールなどのアルコール類の他、ジメチルスルホキシドなどの有機化合物が挙げられる。つまり、溶媒は多価アルコールであるか、又は多価アルコールが主成分として含まれていればよい。
ゼラチンのエチレングリコール等の多価アルコールに対する溶解性は、水の場合に比べて若干劣る。そこで、ゼラチンとエチレングリコール等の多価アルコールを混合した後充分に膨潤させる時間を与え、あるいは混合した後に十分に加温して完全に溶解させるのがよい。また、ゼラチンを粉砕して、例えばメッシュ#30以下に粉砕して用いるようにしてもよく、又ゼラチンと溶媒を混合する際に溶媒を加温して用いるようにしてもよい。
また、ゼラチンゲルの溶媒として多価アルコールを用いる場合でも、ゼラチンとして特殊なものを必要とはせず、従来一般に用いられてきた牛由来、豚由来、鶏由来、魚由来のゼラチンを広く使用し得る。
ゼラチンを多価アルコールの溶媒に溶解し、これを放置しあるいは冷却することによってゲルを調製した場合、このゼラチンゲルは用途によっては強度や耐熱性が充分ではないこともある。このような場合には架橋剤を適宜添加するのがよい。
架橋剤は例えばグルタルアルデヒド水溶液、あるいはグルタルアルデヒドをエチレングリコールなどの有機化合物で希釈したものが推奨できる。また、架橋剤は、エチレングリコールジグルタルエーテルなどの2官能性又は多官能性エポキシ化合物、あるいは2官能性又は多官能性エポキシ化合物を有機化合物で希釈したものが推奨できる。
本発明に係るゼラチンゲルの製造方法では上述の架橋剤以外にも、他のアルデヒド化合物やエポキシ化合物、その他にも活性ハロゲン化合物、活性エステル化合物、アジリジン化合物、ジビニル化合物などを用いることができ、さらにゼラチンのカルボキシル基やアミノ基と錯体形成する塩類も用いることができる。
特に、主成分がエチレングリコールジグルタルエーテルなどの2官能性又は多官能性エポキシ化合物を架橋剤として用いた場合にはグルタルアルデヒドを主成分とする架橋剤に比べて、ゲル生成時の成型加工性が良く、又架橋反応以外の副反応が起こりにくいので、ゼラチンゲルの不要な着色が避けられ、得られたゲルはほぼ透明であり、光透過性を必要とするゲルやソフトマテリアルとしての用途に利用でき、又顔料や染料によって任意の色に着色することが可能である。
本発明の製造方法で調製されたゼラチンゲルは同じ濃度で調製された水を溶媒とするゼラチンゲルに比べて、高い力学的強度を示す。特に、グルタルアルデヒドやエチレングリコールジグルタルエーテルを架橋剤として用いた場合はその傾向が顕著であり、極めて強度の高いゼラチンゲルが製造できる。具体例を示すと、エチレングリコールを溶媒として8%の濃度を持つゼラチン溶液を調製し、これにゼラチンに対する重量比で0.00025mol/gのグルタルアルデヒドを加えることによってゲルを調製すると、このゼラチンゲルは同濃度条件でつくった水を溶媒にしたゼラチンゲルに比べて約3倍近い圧縮強度を示す。
また、本発明の製造方法で調製されたゼラチンゲルは同じ濃度で調製された水を溶媒とするゼラチンゲルに比べて、高い耐熱性を示す。特に、グルタルアルデヒドやエチレングリコールジグルタルエーテルを架橋剤として用いた場合はその傾向が顕著であり、極めて耐熱性の高いゼラチンゲルが製造できる。具体例を示すと、水を溶媒として8%の濃度を持つゼラチン溶液を調製し、これにゼラチンに対する重量比で0.00025mol/gのグルタルアルデヒドを加えることによってゲルを調製したところ、このゼラチンゲルは20°Cでは最大で9.6gf/mm2の圧縮強度であるが、50°Cではその強度はほとんど0になる。一方、同濃度条件でつくったエチレングリコールを溶媒にしたゼラチンゲルは20°Cでは最大で26gf/mm2の圧縮強度であり、50°Cでも14gf/mm2の圧縮強度を有する。また、このゼラチンゲルは70°C〜80°Cにおいても形状が安定しており、ゾル化や流動化が見られない。
本発明の製造方法で調製されたゼラチンゲルは水を溶媒とするゼラチンゲルに比べて形状安定性に優れている。特に、グルタルアルデヒドやエチレングリコールジグルタルエーテルを架橋剤として用いた場合はその傾向が顕著である。
本発明の製造方法においてグルタルアルデヒドやエチレングリコールジグルタルエーテルを架橋剤として用いてゲルを調製すると、このゼラチンゲルは水を溶媒とするゼラチンゲルに比べて、水中あるいは海水などに浸漬した時に容易に溶解することがなく、長期に渡って形状が安定している。
本発明の製造方法においてエチレングリコールジグルタルエーテルを架橋剤として用いた場合には室温でのゲル化の進行が遅く、また初期の粘性が低いために、複雑な形態をもった製品や加工精度を要するソフトマテリアルの製造に適する。
例えば、本発明によって得られるゼラチンゲルは医療用品、医療診断用用品、超音波診断・教育用の人体模型や臓器模型あるいは組織模型等の製品、あるいは生分解性の製品、使い捨てを前提とする製品、ごみや埃等を除去する目的あるいは洗浄を目的とする製品に適用できる。さらに、本発明によって得られたゼラチンゲルはその弾力性、衝撃吸収性、圧力緩和性、クッション性、流動性などを利用した製品、、その温度保持性や清涼感を利用した製品、又徐放性を目的とする製品、−50°C等の極低温における不凍性を利用した製品に適用できる。
本発明の製造方法で得られたゼラチンゲルは気泡を残留しない限り、超音波を当てて画像処理すると、画像処理モニターには造形物が黒い色調として現れ、その状態を視覚によって認識することができる。この黒い色調は照射した超音波がゼラチン造形物で反射されずに透過することによって生ずるものである。
そこで、ゼラチンゲルに大きさの比較的均一な微粒子を均一に混入して成形し、この造形物に超音波を当てると、画像処理モニターの色調は混入した微粒子の濃度の増加に伴って黒色から白色に変化する。これは照射した超音波が微粒子で反射しその反射波が捕捉されることによって起る現象である。
また、ゼラチンゲルを袋状に造形し、この袋状の造形物内に無菌の水や超音波特性が水に類似した液体(例えば、透明ゼリー)を充填することによって胆嚢模型とすることができる。さらに、ゼラチンゲルを門脈、静脈あるいは膵管の形状に造形し、これを微粒子混入ゼラチンゲルで成形した肝臓あるいは膵臓内に埋設すると、正確な肝臓又は膵臓の模型となる。
ゼラチンゲルに混入する微粒子は平均粒径を数μm〜100μmとするのがよく、カーボングラファイトパウダー、ゲル濾過担体の粉粒、石膏の粉粒などが用いられることができ、混入量はゼラチンに対して0〜20容量%程度の範囲から選択されることができる。
また、微粒子に代え、太さが比較的均一な細い繊維を綿状又はスポンジ状の形態でゼラチンゲルに混入し造形することもできる。この場合の繊維の太さは数μm〜100μmとするのがよく、ポリエステル、ナイロン、塩化ビニール等が用いられることができ、又その太さや密度を変えることにより超音波画像処理によるモニター上の色調を変化させることができる。
さらに、微粒子と細い繊維とを組合わせてゼラチンゲルに混入して成形するようにしても、上記と同様に色調を変化させることができる。
また、本発明の製造方法によって得られたゼラチンゲルでは上記と同様にして他の臓器模型(例えば、胎児、胃、腸、脾臓、子宮、卵巣、膀胱等)を造形し、これらを皮膚によく似た性質のゼラチンゲルの造形物である人体の胴部模型(胸部及び腹部を含む)に内蔵し密着させて人体模型を製作する。なお、胎児は一般的には臓器には含まれないが、子宮内の胎児も臓器と同様に超音波診断の対象とされている。
また、ゼラチンゲルの造形物はそのまま外気に露出しても溶媒の蒸発はほとんど起こらないが、その超音波特性が経時変化してしまうのを防止する観点から、胴部模型の表面及び/又は臓器模型の表面には保護被膜、例えばラテックスや液状シリコンゴムの被膜で被覆するのがよい。
さらに、ゼラチンゲル製の臓器模型や胴部模型は黴や腐敗によって長期使用に耐えないおそれがある。そこで、臓器模型や胴部模型の成形時に、ゼラチンゲルに防黴剤及び/又は防腐剤を添加し、塩酸や硫酸等の酸を加えてpHを2〜4に調整し、あるいはこれらの方法を併用するのがよい。防腐剤・防黴剤には公知の薬品、例えば、亜硫酸ナトリウム、安息香酸、安息香酸ナトリウム、イマザリル、オルトフェニルフェノール、オルトフェニルフェノールナトリウム、ジフェニル、次亜硫酸ナトリウム、ソルビン酸カリウム、チアベンダゾール、デヒドロ硫酸ナトリウム、パラオキシ安息香酸イソブチル、パラオキシ安息香酸イソプロピル、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸ブチル、パラオキシ安息香酸プロピル、プロピオン酸、プロピオン酸カリウム、プロピオン酸ナトリウム等、等を用いることができる。
〔実施例1〕
100gのゼラチンを粉砕して30番のメッシュを通す。これに700mlのエチレングリコールを加えて、60°Cに加温して攪拌しながら完全に溶解させる。この溶液に、25%グルタルアルデヒド水溶液を予めエチレングリコールで10分の1の濃度に希釈した溶液120mlを加えさらに攪拌する。これを成形鋳型にとり、室温中でしばらく放置するとゲルが生成する。
〔実施例2〕
100gのゼラチンに720mlのエチレングリコールを加えて室温にて充分に膨潤させる。その後、攪拌しながら60°Cにまで徐々に加温して完全に溶解させる。この溶液に1%グルタルアルデヒド水溶液150mlを加えさらに攪拌する。これを成形鋳型にとり、室温中でしばらく放置するとゲルが生成する。
〔実施例3〕
100gのゼラチンを粉砕し、これに1.1リットルのエチレングリコールを加えて室温にて充分に膨潤させる。その後、攪拌しながら50°Cまで徐々に加温して完全に溶解させる。この溶液に、グルタルアルデヒド水溶液を予めエチレングリコールで5分の1の濃度に希釈した溶液120mlを加えさらに攪拌する。この間、ゼラチン分子の無用な分解を避けるために、不活性ガス例えば窒素ガスを吹き込みながら行う。この溶液を室温中でしばらく放置し、ゲルを製造する。
〔実施例4〕
100gのゼラチンを粉砕し、これに720mlのエチレングリコールを加えて室温にて充分に膨潤させる。その後、攪拌しながら50°Cまで徐々に加温して完全に溶解させる。この溶液に、エチレングリコールジグルタルエーテルを予めエチレングリコールで10分の1の濃度に希釈した溶液50mlを加えさらに攪拌する。これを室温中でしばらく放置するとゲルが生成する。
〔実施例5〕
100gのゼラチンを粉砕し、これに1.1リットルのエチレングリコールを加えて室温にて充分に膨潤させる。その後、攪拌しながら60°Cまで徐々に加温して完全に溶解させる。この溶液に、エチレングリコールジグルタルエーテルを予めエチレングリコールで10分の1の濃度に希釈した溶液100mlを加えさらに攪拌する。この溶液を60°Cに保ったまま超音波を照射し液中の気泡を除く。その後溶液を徐々に室温に戻し、ゲル化させる。
〔実施例6〕
100gのゼラチンを粉砕し、これに730mlのエチレングリコールを加えて室温にて充分に膨潤させる。その後、攪拌しながら50°Cまで徐々に加温して完全に溶解させる。この溶液に、エチレングリコールジグルタルエーテルを予めエチレングリコールで20分の1の濃度に希釈した溶液75mlを加えさらに攪拌する。これを室温中でしばらく放置するとゲルが生成する。
〔実施例7〕
100gのゼラチンを粉砕して30番のメッシュを通す。これに600mlのプロピレングリコールを加えて、60°Cに加温して攪拌しながら完全に溶解させる。この溶液に、25%のグルタルアルデヒド水溶液を予めエチレングリコール10分の1の濃度に希釈した溶液60mlを加えさらに攪拌する。これを成形鋳型にとり、室温中でしばらく放置するとゲルが生成する。
〔実施例8〕
100gのゼラチンに600mlのプロピレングリコールを加えて室温にて充分に膨潤させる。その後、攪拌しながら70°Cにまで徐々に加温して完全に溶解させる。この溶液に5%グルタルアルデヒド水溶液150mlを加えさらに攪拌する。これを成形鋳型にとり、室温中でしばらく放置するとゲルが生成する。
〔実施例9〕
100gのゼラチンを粉砕し、これに800mlのプロピレングリコールを加えて室温にて充分に膨潤させる。その後、攪拌しながら60°Cまで徐々に加温して完全に溶解させる。この溶液に、エチレングリコールジグルタルエーテルを予めエチレングリコールで20分の1の濃度に希釈した溶液80mlを加えさらに攪拌する。この溶液を60°Cに保ったまま超音波を照射し液中の気泡を除く。その後溶液を徐々に室温に戻し、ゲル化させる。
〔製品例1〕
実施例1〜6のゼラチン溶液を肝臓内部にある門脈及び静脈の形状の成形鋳型に入れ、ゲル化させて造形し、その形状に固定する。次に、肝臓実質を再現するために、実施例1〜6のゼラチン溶液にゲルろ過担体(商品名:Sephadex)の粉末をゼラチンに対する重量比で約0.1%混入し、すでに造形した門脈及び静脈の模型とともに肝臓全体の形状の整形鋳型に入れ、その形状に固定した後、その表面に0.25mmのラテックスの皮膜をかぶせて肝臓模型とする。
〔製品例2]
同様に、実施例1〜6のゼラチン溶液を膵臓内部にある膵管の形状の成形鋳型に入れ、ゲル化させて造形し、その形状に固定する。次に、膵臓実質を再現するために、実施例1〜6のゼラチン溶液にカーボングラファイトパウダーをゼラチンに対する重量比で約1%混入し、既に成形した膵管模型とともに膵臓全体の形状の成形鋳型に入れてゲル化させて造形し、その形状に固定し、その表面に0.25mmのラテックスの皮膜をかぶせて膵臓模型を成形する。
〔製品例3〕
腎臓内部にある髄質部は超音波処理画像モニター上白っぽく抽出される。これを再現するために、実施例1〜6のゼラチン溶液に、ゲルろ過担体(商品名:Sephadex)の粉末をゼラチンに対する重量比で約0.2%混入するとともに、太さの均一なポリエステル繊維(ニッソー社製、鑑賞魚用上部フィルター、繊維の太さ6デニール実測値約30μm)を綿の塊状に混入し、髄質部の形状の整形鋳型に入れて造形し、その形状に固定して髄質部模型を製作する。次に、腎皮質部を再現するために、実施例1〜6のゼラチン溶液にゲルろ過担体(商品名:SephadexG−25Superfine)の粉末をゼラチンに対する重量比で約0.1%混入し、既に成形した髄質部の模型とともに腎臓全体の形状の整形鋳型に入れ、ゲル化させて造形し、その形状に固定した後、その表面に0.25mmのラテックスの皮膜をかぶせて腎臓模型を成形する。
〔胆嚢模型〕
胆嚢壁は袋状をなしている。そこで、0.25mmのラテックスで胆嚢形状の袋を製作し、その中に水、グリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコール、ゼラチン液、アルコール等の液体を入れ、さらに胆石模型を入れ、封入して胆嚢模型とする。
〔製品例4〕
上述と同様の方法により、他の臓器(胎児、胃、腸、脾臓、子宮、卵巣、膀胱等)も再現する。そして、個別に成形したそれぞれの臓器模型をゼラチンを使って密着させ、実施例1のゼラチン溶液を密着させた個々の臓器模型とともに人体の胴部の形状の成形鋳型に入れ、ゲル化させて造形し、その形状に固定し、さらに表面に0.25mmのラテックスの皮膜をかぶせると、人体模型が得られる。
この人体模型は、人体の超音波特性及び人体構造を忠実に再現したものであり、解剖学上の知識や超音波診断に関する技術を習得するために、何度でも、何時間でもトレーニングをすることができる。さらには、様々な疾患も再現することができるため、施設によっては実際の患者ではなかなか経験出来ない疾患も学ぶことができる。また、この人体模型は各種の超音波装置を高精度に校正する標準模型として用いることができる。

Claims (6)

  1. 多価アルコールを溶媒としてゼラチンを溶解させ、この溶液をゲル化するようにしたことを特徴とするゼラチンゲルの製造方法。
  2. 上記溶媒としてエチレングリコール又はプロピレングリコールを用いるようにした請求項1記載のゼラチンゲルの製造方法。
  3. 上記多価アルコールにゼラチンを溶解させた溶液に、架橋剤を添加するようにした請求項1記載のゼラチンゲルの製造方法。
  4. 上記架橋剤として、グルタルアルデヒド水溶液、あるいは有機化合物で希釈したグルタルアルデヒドの希釈液を用いるようにした請求項3記載のゼラチンゲルの製造方法。
  5. 上記架橋剤として、エチレングリコールジグルタルエーテルなどの2官能性又は多官能性エポキシ化合物、あるいは有機化合物で希釈した2官能性又は多官能性エポキシ化合物の希釈液を用いるようにした請求項3記載のゼラチンゲルの製造方法。
  6. 多価アルコールをゼラチンの溶媒としてゼラチンをゲル化し、力学的強度、形状安定性、重量安定性、耐熱性及び弾力性のうちの少なくとも1つの特性がハイドロゲルに比して優れていることを特徴とするゼラチンゲル。
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