JP2006269471A - 非線形素子、電気光学装置、及び非線形素子の製造方法 - Google Patents

非線形素子、電気光学装置、及び非線形素子の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 製造プロセスの複雑化を招くことなく、電気的特性のばらつきを抑えることができ、かつ、下部電極あるいはそれと同時形成した配線の抵抗率を低く抑えることのできる非線形素子、この非線形素子を備えた電気光学装置、及び非線形素子の製造方法を提供することにある。
【解決手段】 非線形素子10は、下部電極13と、下部電極13の表面を陽極酸化してなる酸化膜14と、酸化膜14を介して下部電極13に対向する上部電極15とを有している。下部電極13は、下層側に窒素含有のタンタル層131からなる立方晶系のタンタル層を備えるとともに、その上層側には、酸素含有のタンタル層132を備えている。
【選択図】 図1

Description

本発明は、下部電極、酸化膜及び上部電極がこの順に積層された非線形素子、この非線形素子を画素スイッチング素子として備えた電気光学装置、及び非線形素子の製造方法に関するものである。
従来から、非線形の電圧電流特性を有する素子、例えばTFT(Thin Film Transistor:薄膜トランジスタ)やTFD(Thin Film Diode:薄膜ダイオード)などの非線形素子を画素スイッチング素子として画素毎に備えた液晶装置が市販されている。このような非線形素子の例として、MIM(Metal−Insulator−Metal:金属−絶縁体−金属)の積層構造を備えたダイオード型の非線形素子がある。
このようなMIM型の非線形素子を備えた液晶装置の製造工程では、図19に示す非線形素子を備えた素子基板の製造プロセスとして、例えば以下の工程を行っている。まず、ガラス基板11′にタンタル酸化膜(Ta)からなる下地層12′を全面的に形成し、この下地層12′の上にタンタル(Ta)により下部電極13′と、これに接続された配線層(図示せず)を含む通電パターンを形成する。次に、電解液内において上記の通電パターンを介して下部電極13′に通電し、陽極酸化法により下部電極13′の表面側にTaからなる酸化膜14′を形成する。また、このようにして構成されたMIM構造の電気特性(電流電圧特性)をさらに改善するために、320〜400℃程度の温度で酸化膜14に対して熱処理(アニール処理)を行う。その後、上記の酸化膜14′の上層側にクロム(Cr)からなる上部電極15′を形成することによってMIM構造を形成する。
ここで、タンタルの結晶構造は、立方晶系(α相)と正方晶系(β相)の2相あり、そのうち、立方晶系のタンタル相は抵抗率が低いが、正方晶系のタンタル相は抵抗率が高い。このため、上記のMIM構造を備えた非線形素子、あるいはタンタルを配線として用いる技術分野においては、その電気特性を改善することを目的に、タンタル膜を立方晶系とするための種々の改良が提案されている。
例えば、ニオブあるいは窒素を含有させて立方晶系のタンタルを得る技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
また、窒素を含有するタンタル層の上に、窒素を含有しないタンタル膜を積層する技術が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
さらに、基板や基板保護膜に窒素をドープしておき、その上に、窒素を含有しないタンタル膜を積層する技術が提案されている(例えば、特許文献3参照)。
さらにまた、タンタル膜を急加熱、急冷却して立方晶系のタンタル膜とする技術が提案されている(例えば、特許文献4参照)。
特開平5−171417号公報 特開平5−289091号公報 特開平5−341324号公報 特開平6−75250号公報
しかしながら、立方晶系のタンタル層は、その結晶構造に起因して、表面に針状の自形が発生しやすく、それが原因で下部電極と酸化膜との界面、あるいは酸化膜と上部電極との界面の安定性が低下すると、非線形素子の特性がばらつくという問題点がある。また、表面に針状の自形が発生した立方晶系のタンタルをドライエッチングすると、ドライエッチングが進行するに伴って、ドライエッチングガスがあたる表面で粗さが増大する結果、非線形素子の特性ばらつきがさらに顕著になるという問題点がある。
また、上記の非線形素子の製造プロセスでは、MIM構造の特性改善のために熱処理を行う場合があるが、この場合、熱処理によって下部電極13′が膨張し、これによって、図19に示すように酸化膜14′の端縁140′が側方へ張り出したヒサシ構造が形成されることが判明した。この状態で上部電極15′を成膜すると、酸化膜14′の端縁140′及び下地層12′の表面と上部電極15′との間に隙間Gが形成されやすくなるので、上部電極15′のパターニング時において上記の隙間Gにエッチャントが侵入して、上部電極15′の断線が発生し、歩留まりや信頼性が低下するという問題点がある。また、一般に、上部電極15′を厚くすれば配線抵抗を低くすることができるので、縦クロストークを防止することができる点で好ましいが、上部電極15′を厚くするとそのパターニング時間も長くなるため、上記の断線が発生する確率も大きくなるという問題点がある。
上記問題点に鑑みて、本発明の課題は、製造プロセスの複雑化を招くことなく、電気的特性のばらつきを抑えることができ、かつ、下部電極あるいはそれと同時形成した配線の抵抗率を低く抑えることのできる非線形素子、この非線形素子を画素スイッチング素子として備えた電気光学装置、及び非線形素子の製造方法を提供することにある。
上記課題を解決するために、本発明では、主成分がタンタルからなる下部電極と、該下部電極の上層側に形成された酸化膜と、該酸化膜を介して前記下部電極に対向する上部電極とを備えた非線形素子において、前記下部電極は、立方晶系のタンタル層と、該立方晶系のタンタル層の上層側で前記下部電極の最上層を構成する酸素含有のタンタル層とを備えていることを特徴とする。
本発明において、前記立方晶系のタンタル層としては、窒素含有のタンタル層を用いることができる。
本願発明者らが鋭意研究を重ねたところ、立方晶系のタンタルは、その結晶構造に起因して、表面に針状の自形が発生しやすいのに対して、酸素含有のタンタル層は、全体として結晶性の存在しないランダムな構造(無定形若しくはアモルファス構造に類似した構造)であるため、前記の自形が発生せず、下部電極の表面が平滑であることが判明した。そこで、本発明では、下部電極を立方晶系のタンタル層と酸素含有のタンタル層とを備えた構造とし、下部電極の最上層については酸素含有のタンタル層としてある。このため、本発明によれば、下部電極の表面を平滑にすることができ、このような平滑化は、酸化膜の平滑化をも生じさせる。従って、本発明によれば、酸化膜で構成される接合面の高品位化を図ることができるので、非線形素子の電気的特性の向上及び安定化を得ることができる。また、下部電極の表面の平滑化は、上層の酸化膜の表面の平滑性や膜質をも向上させる効果を奏するので、特に酸化膜を陽極酸化法により形成する場合には、陽極酸化工程の定電圧ステップを短縮若しくは省略することができるという利点がある。さらに、タンタルに酸素を含有させると、配向性が乱され、その結晶性が低下するので、構造的均一性が向上するとともに、非線形素子の電気的特性のばらつきが低減されることが確認された。
また、酸素含有のタンタル層のみでは下部電極の抵抗率が高いので、本発明では、下部電極の下層側は立方晶系のタンタル層で構成してある。それ故、下部電極全体としての抵抗率を低減できるので、非線形素子及び下部電極と同時形成される配線の抵抗率を低減することができる。
さらに、本発明では、非線形素子の電気的特性や信頼性を向上するにあたって、下部電極に酸素を含有させるだけでよいので、本質的に新たな製造工程を導入する必要がなく、製造時間の延長も不要である。例えば、下部電極をスパッタ法により成膜する場合、スパッタ装置に不活性ガス(アルゴンなど)とともに酸素を導入するだけでよいため、実質的に何等、製造工程を変える必要がない。それ故、本発明によれば、製造コストの増大を回避できる。
また、本願発明者らが鋭意研究を重ねたところ、図19に示す構造において、矢印O2で示すように、熱処理の際に酸化膜中の酸素が下部電極のタンタル内に侵入拡散することにより、下部電極が膨張することが判明したが、下部電極の成膜時に酸素を導入する検討を行ったところ、熱処理を行っても上記のヒサシ構造はほとんど発生しなくなり、その結果、上部電極の断線も発生しなくなることが確認された。このことは、熱処理温度を400℃程度と高温にしても同様であり、これにより、上部電極の断線不良を招くことなく、高温のアニール処理を行って非線形素子の電気的特性を向上させることが可能になった。
さらに、下部電極に酸素を導入することにより、酸化膜中の酸素空孔などの欠陥が少なくなるとともに、上記のように下部電極の表面粗さの低減による接合界面の平滑化、及び酸化膜の膜質向上などを実現できるため、素子特性の経時変化、特に、可逆的な素子特性の経時変化であるドリフト現象を低減することができる。
本発明において、前記酸素含有のタンタル層は、上層側に向けて酸素含有率が連続的に増加する酸素含有率傾斜増加層からなることが好ましい。このような構成であれば、スパッタ装置内の酸素分圧を時間とともに変化させるだけでよいため、酸素分圧が所定の条件になるまで成膜を中断する必要がない。また、下部電極の上面部の酸素含有率のみを高い値にしているので、下部電極全体としての酸素含有量が低い。それ故、下部電極あるいはそれと同時形成した配線の抵抗率を低く抑えることができる。
本発明において、前記下部電極の最表面における酸素含有率が10原子%から53原子%であることが好ましい。この範囲を下回ると、酸素導入の効果が低下し、具体的には下部電極の表面の平滑化効果が低くなる。逆に上記範囲を上回ると、下部電極の電気抵抗が増大し、非線形素子としての電気的特性を確保することが難しくなる。特に、下部電極への酸素導入効果を確実に得るためには、下部電極の最表面における酸素含有率が20原子%から36原子%であることが好ましい。この範囲内であれば、上述の全ての効果、すなわち、上部電極の断線不良の防止効果や、下部電極の表面の平滑化効果を得ることができる。しかも、電気抵抗が酸素を導入しない場合とほとんど変わらないので、非線形素子を構成する上で最も望ましい。
本発明において、前記酸化膜は、前記下部電極の陽極酸化膜であることが好ましい。陽極酸化膜は高品位の絶縁膜を形成することができる点で非線形素子の製造に適している。従来においては陽極酸化膜の膜質向上のために定電流制御期間の後に定電圧制御期間を設けていたが、本発明では、下部電極の表面が平滑化されているので、短時間で高品位の膜質を得ることができる。従って、定電圧制御期間を短縮したり、省略したりすることが可能になり、その結果、陽極酸化工程の工程時間を短縮することができる。
本発明を適用した非線形素子は、電気光学装置において画素スイッチング用非線形素子として用いることができ、このような電気光学装置において、非線形素子は、電位供給経路を構成する配線と画素電極との間に接続され、非線形素子を介して画素電極が駆動される。本発明によれば、非線形素子の電気的特性を向上することができるので、電気光学装置の光学特性の向上や安定化を図ることができる。また、前述と同様の理由により電気光学装置の製造コストの増大も回避でき、かつ、その歩留まりや信頼性の向上を図ることができる。このような電気光学装置は、例えば、携帯電話機やモバイルコンピュータなどといった電子機器に用いられる。
本発明では、主成分がタンタルからなる下部電極を形成する下部電極形成工程と、前記下部電極の表面側に酸化膜を形成する酸化膜形成工程と、前記酸化膜を介して前記下部電極に対向する上部電極を形成する上部電極形成工程とを有する非線形素子の製造方法において、前記下部電極形成工程では、立方晶系のタンタル層を形成する第1の成膜処理と、該立方晶系のタンタル層の上層側で前記下部電極の最上層を構成する酸素含有のタンタル層を形成する第2の成膜処理とを備えていることが好ましい。
本発明において、前記第1の成膜処理では、前記立方晶系のタンタル層として、例えば、窒素含有のタンタル層を形成する。
本発明において、前記第2の成膜処理では、酸素ガス存在雰囲気下でスパッタ法によりタンタル層の成膜を行うことが好ましい。
本発明において、前記第2の成膜処理では、酸素ガス存在雰囲気下でスパッタ法によりタンタル層の成膜を行うとともに、スパッタ時の酸素分圧を連続的に増加させて前記下部電極の膜厚方向で上層側に向けて酸素含有率が連続的に増加する酸素含有率傾斜増加層を形成することが好ましい。このような構成であれば、スパッタ装置内の酸素分圧を時間とともに変化させるだけでよいため、酸素分圧が所定の条件になるまで成膜を中断する必要がない。
本発明においては、前記酸化膜形成工程を行った後、さらに、前記酸化膜に熱処理を行う熱処理工程を有することが好ましい。この熱処理工程は、非線形素子の電気的特性の向上及び安定化に大きく寄与する。通常、加熱温度は320〜400℃程度であるが、特に陽極酸化膜の場合、この範囲であれば加熱温度が高いほど、非線形素子の電気的特性の向上及び安定化効果が高くなる傾向が見られる。しかし、従来構造では加熱温度を高くすると上述のように、ヒサシ構造の発生に起因する断線不良が発生しやすくなるので、加熱温度を最適化することができなかった。しかるに本発明では、加熱温度を高めても支障が生じないので、非線形素子の電気的特性の向上及び安定化を最大限、図ることができるという利点を有する。ここで、前記酸化膜は、前記下部電極側面の最下部の上にも形成され、前記上部電極は、前記下部電極の上面から当該下部電極の側面の最下部上を経て前記下部電極の下地面まで連続するように形成されていることが好ましい。この構造では、酸化膜を介した非線形素子の接合面積を充分に確保することができ、しかも基板上などに非線形素子を容易に構成することが可能になり、しかも、上部電極が下部電極の上方からその端縁上を経て下地面上に亘る範囲に形成されるので、非線形素子と他の層(例えば画素電極)との接続も容易に行うことができるなどといった利点がある。このような構造では、上述のように、従来、下部電極の膨張によりその端縁が側方へ張り出すことにより、酸化膜及び下地面と上部電極との間に隙間が発生しやすくなり、上部電極の断線という問題が顕著になっていたが、本発明ではこれを確実に防止することができる。なお、下地面とは、基板上に下地層が形成されている場合には、この下地層のことを意味し、基板上に下地層が形成されていない場合には、この基板面自身のことをいう。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
[実施の形態1]
(非線形素子の構成)
図1は、本発明の実施の形態1に係る非線形素子の構造を模式的に示す拡大縦断面図である。図1に示す非線形素子10(TFD(Thin Film Diode)素子)は、ガラス、石英、プラスチックなどで構成された基板11と、この基板11の上に形成された下地層16と、下地層16の上に形成された下部電極13と、この下部電極13の表面を覆うように設けられた酸化膜14と、酸化膜14を覆うように設けられた上部電極15とを有している。ここで、下地層16は、タンタル酸化物(Ta)で構成され、基板11と下部電極13との密着性を高めるなどの機能を担っている。
下部電極13は、主成分がタンタルからなる金属、すなわち、タンタル単体膜、若しくはタンタルを主成分とする合金から構成されている。タンタルを主成分とする合金としては、タンタルとタングステンとの合金(Ta−W:Wは0.1〜1.0wt%程度)などが好ましい。また、基本的にはタンタルに0.1〜6.0wt%程度の他元素(例えば、タングステン、クロム、モリブデン(Mo)、シリコン(Si)、レニウム(Re)、イリジウム(Ir)など、周期律表において第6族〜第8族に属する元素)を混入したもの、或いは、これに不可避不純物を含むものを用いることができる。下部電極13の厚さは特に限定されないが、例えば50〜200nm程度、典型的には約100nmとする。
酸化膜14は、下部電極13の表面上に形成されている。酸化膜14はタンタル酸化物(Ta)で構成されることが好ましく、特に、後述するように陽極酸化膜であることが望ましい。但し、充分な素子特性が得られるのであれば、シリコン酸化物(SiO)やチタン酸化物(TiO)などの他の素材で構成された酸化膜を用いることができる場合もある。酸化膜14は、本実施形態の場合、下部電極13の表面を全て覆うように構成され、下部電極13の端縁130上にも形成されている。ただし、酸化膜14は、下部電極13の表面を全て覆う必要はなく、下部電極13と上部電極15とが対向する部分に形成されていれば非線形素子を構成することができる。酸化膜14の厚さは通常10〜100nm程度であり、特に20〜40nm程度であることが望ましい。
上部電極15は、適宜の金属材料で構成することができるが、配線抵抗の低さ、特性の安定性などから、クロム、モリブデン、タングステンなどで構成することが好ましい。このとき、酸化膜14が下部電極13の端縁130(下部電極13の側面の最下部)上にも形成されていれば、上部電極15を酸化膜14上から上記端縁130の上方を経て下部電極13の下地面(図示例では基板11の表面)上に亘って連続して形成することができるので、上部電極15と他の層(例えば、画素電極や他の配線など)との導電接続が容易になる。上部電極15の厚さは特に限定されないが、100〜500nm程度であることが好ましい。一般的には、厚くなるほど配線抵抗が低下するため、特に液晶表示装置を構成する場合の縦クロストークを防止する上で好ましいが、成膜時間やパターニング時間も増大するため、上記範囲内の厚さであることが望ましい。
このように構成した非線形素子10において、本形態では、下部電極13の下層側が窒素含有のタンタル層131で構成され、この窒素含有のタンタル層131は、立方晶系のタンタル層である。これに対して、下部電極13の上層側は、酸素含有のタンタル層132で構成されている。ここで、酸素含有のタンタル層132は、厚さ方向において酸素含有率が略一定であり、酸素含有のタンタル層における酸素含有率は10原子%から53原子%、好ましくは20原子%から36原子%になっている。このように構成した酸素含有のタンタル層132は、全体として結晶性の存在しないランダムな構造(無定形若しくはアモルファス構造に類似した構造)である。
本形態において、下部電極13の最上層が酸素含有のタンタル層132であればよいことから、窒素含有のタンタル層131と酸素含有のタンタル層132の厚さに格別の限定はなく、本形態では、窒素含有のタンタル層131及び酸素含有のタンタル層132のいずれもが約50nmに設定されている。
(非線形素子の製造方法)
図2を参照して、本発明に係る非線形素子10の製造方法を説明する。図2に示すように、本発明に係る非線形素子10の製造工程P1では、基板11の上に下地層16を形成した後、ステップS01において下部電極13の材料(タンタル)を基板11上にスパッタ法などによって成膜し、次に、ステップS02において、成膜された層をフォトリソグラフィ法などを利用してパターニングし、下部電極13を形成する(下部電極形成工程)。
スパッタ法では、RFスパッタ装置やマグネトロンスパッタ装置などで行われる。このような成膜装置において、チャンバー内に下部電極用の原料(タンタルあるいはタンタル−タングステン合金など)のターゲットを配置し、真空ポンプなどの排気装置でチャンバー内を減圧し、アルゴンなどの不活性ガスを導入した状態で、高周波電界を印加してプラズマを形成する。その結果、プラズマ中の正イオンがターゲットに加速衝突し、その反動でターゲット材料が基板11上に堆積する。
このような下部電極形成工程として、本形態では、チャンバー内に上記不活性ガスとともに窒素Nを導入して窒素含有のタンタル層131からなる立方晶系のタンタル層を形成する第1の成膜処理S11と、チャンバー内に上記不活性ガスとともに酸素ガスOを導入して酸素含有のタンタル層132を形成する第2の成膜処理S12とを行い、第2の成膜処理S12では、酸素分圧によって、酸素含有のタンタル層132の酸素含有率を制御する。
図3は、第2の成膜処理S12におけるチャンバー内の酸素分圧と、成膜された酸素含有のタンタル層132の酸素含有率との関係を示すグラフである。成膜時の酸素分圧が上昇するほど、下部電極13の酸素含有率も高まるが、全体として酸素分圧が高くなるほど、酸素含有率の上昇率は低下していく。
なお、酸素含有のタンタル層132の形成方法としては、上記方法に限らず、例えば、酸素を含有したターゲット材料を用いる方法も考えられる。この場合、スパッタ条件が一定であれば、ターゲット材料の酸素含有率と成膜された層の酸素含有率との間にも所定の関係が得られるので、ターゲット材料とスパッタ条件とを設定することによって、酸素含有率が所定の酸素含有のタンタル層132を容易に形成することができる。もちろん、スパッタ法に限らず、蒸着法やCVD法などの他の成膜方法を用いて酸素含有のタンタル層132を形成しても構わない。
図4は、上記のように形成した酸素含有のタンタル層132のX線回析プロファイルを示す。ここで、図4には酸素含有率が異なる5種類のグラフが描いてあるが、図示の都合上、そのうち酸素含有率0%の実線で示すグラフを矢印Sで示す量だけ上方にシフトさせて(ずらして)描いてある。また、図中下に重ねて示してあるグラフは実験用スパッタ装置により比較的低速で成膜した場合の無酸素層及び酸素含有層のX線回折プロファイルを示し、図中矢印Sだけ上方にシフトさせて示すグラフは量産ラインのスパッタ装置で比較的高速に成膜した無酸素層のX線回折プロファイルを示す。一般に、ガラス基板上に形成された通常のTa層はβ−Ta構造を有し、それに対応するのがピークAであると考えられる。ここで、量産ラインで比較的高速に成膜させると、ピークAの脇の領域に小さなピーク群Bが見られるようになる。これらのピーク群Bは、β−Taの配向性が悪化することによる配向のばらつきに起因するものであると思われる。このような配向性のばらつきは、非線形素子10の電気的特性のばらつきや歩留まりの低下を生ずる可能性があり好ましくない。
一方、酸素含有のタンタル層132中の酸素含有率が比較的低い場合(10原子%未満の場合)は上記と同様にピークAが観測されるが、酸素含有率が高くなる(15原子%を越える)と、上記のピークAは消失し、その代わりに上記ピーク群Bが存在した領域になだらかなピークCが発生する。酸素含有率がさらに高くなると、このピークCも小さくなり、やがてほとんど消失する。この結果から、酸素含有のタンタル層132中の酸素含有率が高まると、徐々に配向性が悪化し、ピーク群Bと同じ領域に一旦ピークCが現れるが、このピークCがなだらかな形状をしていることから、配向の乱れは全体に無秩序かつ均一に発生していて、やがてさらに配向性が低下することによって全体として結晶性の存在しないランダムな構造(無定形若しくはアモルファス構造に類似した構造)になっていくものと考えられる。これによって、結晶性は悪いものの、全体としては均一な構造を有し、その結果、非線形素子10の基板面内均一性が安定したものになると思われる。
再び図2において、上記のように下部電極13の形成が完了すると、次に、ステップS03において陽極酸化法により下部電極13の表面に酸化膜14を形成する(酸化膜形成工程)。この酸化膜形成工程では、下部電極13の陽極酸化によってタンタル酸化物(Ta)からなる酸化膜14が形成される。図5(a)は、タンタルの陽極酸化時の電流及び電圧の経時変化を示すグラフである。陽極酸化法では、燐酸塩、クエン酸塩、サリチル酸塩やフタル酸塩などの芳香族カルボン酸塩の水溶液或いはアルコール溶液などの電解液(化成液)に基板を浸漬させ、電解液中において陰極板と対向させた状態で、図示しない通電パターンを介して下部電極13と陰極板との間に電圧を印加する。上記の芳香族カルボン酸塩としては、サリチル酸アンモニウム、安息香酸アンモニウム、γ−レゾルシン酸アンモニウム、フタル酸水素アンモニウム、フタル酸ジアンモニウムなどを用いることができる。このとき、下部電極13の表面が露出している当初、あるいは酸化膜が極めて薄い期間は電流が流れ易いので、通常は、最初に定電流制御下で(或いは定電流源に接続して)電圧を印加し(定電流酸化過程:t=0〜t1)、陽極酸化が進行して下部電極13の表面に或る程度の厚さの酸化膜が形成され、電圧が所定値まで上昇した時点(t1)で、定電圧制御下で(或いは低電圧源に接続して)酸化処理を続ける(定電圧酸化過程:t=t1〜t2)といった方法が採用されている。ここで、定電圧酸化過程には、図5(b)、(c)、(d)に示すように、膜密度を安定させるとともに、酸化膜14の表面粗さを低減し、かつ、膜厚を制御するといった狙いがある。これによって酸化膜14の膜質が良好になり、非線形素子10の電気的特性が向上し、安定するのである。
本実施形態でも、上記と同様に定電流酸化過程と定電圧酸化過程とを順次に行うことができる。ただし、後述するように、本実施形態では、下部電極13の表面が滑らかであるので、上記定電圧酸化過程を大幅に短縮したり、或いは、定電圧酸化過程を省略したりすることも可能である。
次に、ステップS04において、上記酸化膜14の膜質や絶縁性を向上させ、素子特性のばらつきを低減するとともに素子特性の経時的安定性を得るために、320〜400℃で10〜120分程度、熱処理工程を行う。この熱処理工程において、従来は、酸化膜から下部電極へ酸素原子が拡散し、タンタル層からなる下部電極が膨張して図19に示すようなヒサシ構造が発生したが、本発明では、下部電極13の上層側が酸素含有のタンタル層132であるため、この熱処理工程における酸化膜14から下部電極13への酸素の侵入が少なくなる。通常、この熱処理工程の温度が高いほど素子特性は良好になるが、その分、下部電極への酸素原子の拡散も発生しやすくなる。本実施形態では、下部電極13の上層側が酸素含有のタンタル層132であるため、熱処理時における酸素原子の拡散量が大幅に低減される。
この後、上部電極15の形成工程を行う(上部電極形成工程)。すなわち、ステップS05において基板11の表面にクロムをスパッタ法などにより堆積させ、その後、ステップS06においてその上にレジストを用いるフォトリソグラフィ法などによりマスクを形成し、このマスクを介してエッチングを行うことなどにより、パターニングを行い、上部電極15を形成する。
(酸素含有のタンタル層132における酸素含有率と表面粗さとの関係)
図6は、上記実施形態の下部電極13における酸素含有のタンタル層132における酸素含有率と、その表面粗さとの関係を示すグラフである。なお、図6には、本形態の下部電極13のように、酸素含有のタンタル層132の下層側に窒素含有のタンタル層131(立方晶系のタンタル層)が形成されている場合の酸素含有率と表面粗さとの関係を図6に円と実線L11で示す一方、比較例として、酸素含有のタンタル層132の下層側に、酸素も窒素も含有しない正方晶系のタンタル層を形成した場合の酸素含有率と表面粗さとの関係を図6に四角と点線L21で示してある。
図6から明らかなように、酸素含有のタンタル層132における酸素含有率が10原子%以上であれば平滑性の改善がみられ、20原子%以上であれば平滑性の改善効果が顕著である。例えば、実線L11で示すように、酸素含有率が0原子%でRa=約0.82nmであったのが、酸素含有率が10原子%でRa=約0.53nm、酸素含有率が20原子%で約0.45nm以下、酸素含有率が36原子%で約0.25nmと改善されている。この原因は必ずしも明らかではないが、酸素を導入することで、酸素含有のタンタル層132の膜質の均一性が改善され、多結晶化、さらには無定形化されることにより、その表面が平滑化されたものと思われる。
なお、実線L11と点線L21とを比較してわかるように、表面粗さに関しては、酸素含有のタンタル層132の下層側に、窒素含有のタンタル層131(立方晶系のタンタル層)に代えて、正方晶系のタンタル層が形成されている方がやや良好である。すなわち、点線L21で示すように、酸素含有率が0原子%でRa=約0.50nm、酸素含有率が10原子%でRa=約0.35nm、酸素含有率が20原子%以上で約0.2nmである。その理由は、窒素含有のタンタル層131は立方晶系であり、その結晶構造に起因して、表面に針状の自形が発生しやすく、それが酸素含有のタンタル層132に影響を及ぼしているためと考えられる。
上記の下部電極13の表面粗さの改善は、非線形素子10の接合面(特に下部電極13と酸化膜14との界面)の平滑性に直結し、電気的特性の向上をもたらす。特に、酸化膜14を上記のように陽極酸化法によって形成された陽極酸化膜で構成する場合、陽極酸化膜は下部電極13の表層自体を酸化することによって得られるので、下部電極13の表面の平滑性はそのまま酸化膜14の表面の平滑性に繋がり、その結果、酸化膜14と上部電極15との界面の平滑性も向上する。このように接合面の平滑性が向上すると、電気的特性の改善及び安定化(経時的変化の低減)に大きな効果が得られる。従って、表面の平滑性という観点からすれば、酸素含有のタンタル層132における酸素含有率は、10原子%以上、好ましくは、20原子%以上であることが好ましい。
(酸素含有のタンタル層132における酸素含有率と抵抗率との関係)
図7は、上記実施形態の下部電極13における酸素含有のタンタル層132における酸素含有率と、下部電極の電気抵抗率との関係を示すグラフである。ここで、縦軸(電気抵抗率)は対数スケールとなっている。なお、図7には、本形態の下部電極13のように、酸素含有のタンタル層132の下層側に窒素含有のタンタル層131(立方晶系のタンタル層)が形成されている場合の酸素含有率と抵抗率との関係を図7に円と実線L12で示す一方、比較例として、酸素含有のタンタル層132の下層側に、酸素も窒素も含有しない正方晶系のタンタル層を形成した場合の酸素含有率と抵抗率との関係を図7に四角と点線L22で示してある。
図7に四角と点線L22で示したように、酸素含有のタンタル層132の下層側に窒素含有のタンタル層131(立方晶系のタンタル層)が形成されていない場合、すなわち、酸素含有のタンタル層132の下層側に、窒素含有のタンタル層131に代えて、正方晶系のタンタル層が形成されている場合、酸素含有のタンタル層132の酸素含有率が増えるに従って電気抵抗率が急激に上昇するが、図7に円と実線L12で示したように、酸素含有のタンタル層132の下層側に窒素含有のタンタル層131が形成されている場合、酸素含有のタンタル層132の酸素含有率が増えても、下部電極13全体としての電気抵抗率の上昇はなだらかである。その理由は、酸素含有のタンタル層132は、立方晶系であり、抵抗率が高いのに対して、立方晶系のタンタル層は、抵抗率が高いからである。従って、低い抵抗率を確保するという観点からすれば、酸素含有のタンタル層132における酸素含有率は、53原子%以下、好ましくは、36原子%以下であることが好ましい。
よって、図6および図7に示す結果から、表面の平滑性および抵抗率の双方を考慮すると、下部電極13の最表面の酸素含有率(酸素含有のタンタル層132における酸素含有率)は、10原子%から53原子%であることが好ましい。この範囲を下回ると、酸素導入の効果が低下し、具体的には下部電極13の表面の平滑化効果が低くなる。逆に上記範囲を上回ると、下部電極13の電気抵抗が増大し、非線形素子10としての電気的特性を確保することが難しくなる。特に、下部電極131の酸素導入効果を確実に得るためには、下部電極13の最表面における酸素含有率が20原子%から36原子%であることが好ましい。
(本形態の主な効果)
以上のように、本実施形態の非線形素子10では、下部電極13の最上層が酸素含有のタンタル層132で構成されているため、下部電極13の表面粗さが大きく低減されている。従って、非線形素子10の接合面を平滑化することができるため、素子特性の向上及び安定化を図ることができ、製品の歩留まりも高めることができる。特に、酸化膜14を下部電極13の陽極酸化膜として形成する場合には非線形素子10の接合面の平滑化効果がさらに高いものとなる。また、本実施形態の非線形素子10において、下部電極13の酸素含有のタンタル層132は、金属構造が変質し、その均一性が向上するので、製品の特性ばらつきを低減することができ、歩留まりも向上する。
また、下部電極13に酸素を含有させたことにより、酸化膜14の熱処理時における下部電極13の体積変化が低減され、その結果、ヒサシ構造が発生しにくくなるので、上部電極15のパターニング時において断線不良が発生しにくくなる。特に、従来においては上部電極15を厚くして配線抵抗を低減させようとした場合に上部電極15のパターニング時間が長くなると上記の断線不良が発生しやすくなるが、本実施形態では、逆に、断線不良を防止することのできるために上部電極15の厚肉化が可能になり、その結果、配線抵抗の低減を図ることができる。
ここで、酸素含有のタンタル層13のみで下部電極13を構成すると、抵抗率が上昇するが、本形態では、下部電極13の下層側は、窒素含有のタンタル層131からなる立方晶系のタンタル層で構成してある。それ故、下部電極13全体としての抵抗率を低減できるので、非線形素子10及び下部電極13と同時形成される配線の抵抗率を低減することができる。
しかも、本実施形態の非線形素子10の製造方法では、下部電極13の製造工程において、第2の成膜処理S12を行う際、スパッタ室内に酸素ガスを供給するだけでよいので、製造工数を増やす必要がなく、製造時間も製造コストもほとんど増大することがない。
本実施形態の非線形素子10では、上記以外に、電流(I)・電圧(V)特性の可逆的経時変化(以下、単に「ドリフト現象」という。)を抑制できるという効果も得られる。このドリフト現象は、素子に電圧を印加することで一時的に現れる現象であり、電圧印加を解除して一定時間が経過すれば元の特性に戻るが、素子特性の変化により当該素子を用いた各種装置、例えば、以下の電気光学装置などの表示特性に残像などの悪影響を与える。
ここで、非線形素子の電気特性に関する作用効果を説明するために、まず、一般的な非線形素子の電流・電圧特性について説明する。図8は、一般的な非線形素子の電流(I)・電圧(V)特性を示すグラフであり、図9は同非線形素子のlog(I/V)とV1/2の関係を示すグラフである。非線形素子のIV特性の非線形性は、以下の式
I/V=α・exp[β・V1/2]…(1)
で表されることが知られている。上記(1)式中のαは導電係数、βは非線形係数であり、下記の式
α=(nμq/d)・exp[−φ/kT]…(2)
β=(1/kT)・(q/πεεd)1/2…(3)
で表される。ここで、nはキャリア密度、μはキャリアの移動度、qは電子の電荷量、dは絶縁膜の厚さ、φはトラップ深さ、kはボルツマン定数、Tは周囲温度、εは真空中の誘電率、εは絶縁膜の比誘電率である。
従って、図9のグラフはほぼ直線になり、その傾きが上記βを示すことになる。そこで、以下、上記のβの値を単にβ値という。このβ値は、非線形素子の非線形の度合を示す値であり、その値が大きいほど、非線形性が高いことになる。上記(3)式に示すように、非線形素子の非線形は絶縁膜の誘電率εが小さくなるほど大きくなり、また、この誘電率εが小さくなると非線形素子の静電容量も小さくなる。非線形性が高くなると、リーク電流が小さくなり、静電容量も小さくなるため、電圧の保持特性が向上することから、非線形素子を備えた電気光学装置(表示装置)の駆動特性も向上する。図8及び図9に示す点線で示すグラフ、破線で示すグラフ及び実線で示すグラフは、この順で非線形性が徐々に高くなっている様子を示す。
上記のドリフト現象は、非線形素子に対する電圧印加に起因する可逆的な経時変化であり、具体的には、図8及び図9のグラフが一時的に平行移動する態様でシフトする(すなわち、横軸方向に移動する)現象である。このドリフト現象が生ずると、例えば、電気光学装置へ素子を介して供給する電圧が変化してしまうため、所定の電圧で駆動したときに各画素の表示階調が変動し、残像が発生するなど、良好な表示品位を保つことができない。
上記のドリフト現象は、通常は絶縁膜中の酸素空孔や結合不良などの欠陥が原因と考えられる。絶縁膜が陽極酸化膜である場合には、X線回折などでは特定の面方位に対応する回折ピークが弱く、ある程度巨視的に見ると非晶質のように見えるが、微視的に見ると多結晶構造を有する。たとえば、絶縁膜が酸化タンタルで構成されている場合には、その微細な結晶粒はタンタル酸化物(Ta)の結晶構造を有する。このような結晶粒において酸素空孔や欠陥が存在すると、絶縁膜中における局所的な電荷の偏りに起因して、素子に対する電圧の印加履歴に応じた一時的な電気特性の変化が生ずるものと考えられる。
本実施形態では、下部電極13の上層側が酸素含有のタンタル層132で形成されているため、下部電極13の密度が低下していることから、酸素イオンの移動が容易である。その結果、絶縁膜14中の酸素空孔や欠損が低減され、組成がより完全なものに近づいているものと考えられる。例えば、表1には、従来の酸素をほとんど含有しない下部電極(Ta−W)の表面に陽極酸化によって形成した絶縁膜(比較例1)と、本実施形態の下部電極13(Ta−W)の表面に同じ条件で陽極酸化を施して形成した絶縁膜(実施例)の密度、組成比、及び、Taと結合している酸素原子の割合を示す。
Figure 2006269471
ここで、絶縁膜の密度は、GIXR法(X線反射率法)にて得た数値であり、また、絶縁膜の組成比は、ESCA法(X線光電子分光法)の分光スペクトルのピーク強度比(ピーク面積の比)にて得た数値である。さらに、酸素原子のうちTaと結合した酸素原子の割合は、ESCA法で得られた分光スペクトルのピーク強度比(ピーク面積の比)により得たものである。すなわち、例えば、Taと結合した酸素原子の割合は、図10に示すように、分光スペクトルのうち、酸素原子の1s軌道の電子に相当する2つのスペクトルピークOa、Obを相互に分離して(ガウス曲線などで両ピークのフィッティングを行うことによりそれぞれのピークOa、Obの形状寸法を求め)、Taに結合した酸素原子に相当するスペクトルピークOaと、Taに結合していない酸素原子に相当するスペクトルピークObとの面積比により、Taに結合した酸素原子の割合を算出したものである。
上記の表1によれば、実施例は比較例1よりも密度が小さく、これに対応して、酸素原子の組成比率も高くなっており、さらに、この酸素原子のうち、Taに結合した酸素原子の割合も高くなっている。従って、実施例の絶縁膜の組成は、従来の絶縁膜よりも化学量論的組成(Ta)に近くなっているだけでなく、金属原子と結合した酸素原子が多いため、酸素空孔その他の結晶欠陥が大幅に少なくなっているものと考えられる。
また、下部電極13と絶縁膜14との接合界面、並びに、絶縁膜14と上部電極15との接合界面の平滑性が優れているため、これらの界面の電気的安定性も向上している。それ故、本実施形態では、絶縁膜14の欠陥が少ないとともに接合界面の電気的安定性も高くなっていることにより、以下に説明するドリフト現象が少なくなり、安定した電気的特性を得ることができる。
なお、非線形素子10において、下部電極13は、その上面部138及び側面部139が酸化膜14と接しているが、下部電極13の上面部138と酸化膜14との接触面積は、下部電極13の側面部139と酸化膜14との接触面積に比較して十分、広いため、下部電極13の少なくとも最上層131に酸素を含有させておけば、上記の効果を奏する。
[実施の形態2]
図11(a)、(b)は、本発明の実施の形態2に係る非線形素子の下部電極の構造を示す拡大縦断面図、及びその製造条件を示す説明図である。
図11(a)に示す非線形素子10も、実施の形態1と同様、基板11と、この基板11の上に形成された下地層16と、下地層16の上に形成された下部電極13と、この下部電極13の表面を覆うように設けられた酸化膜14と、酸化膜14を覆うように設けられた上部電極15とを有している。
本形態でも、実施の形態1と同様、下部電極13は、主成分がタンタルからなる金属、すなわち、タンタル単体膜、若しくはタンタルを主成分とする合金から構成されている。酸化膜14は、下部電極13の表面上に形成されている。酸化膜14はタンタル酸化物(Ta)で構成されている。上部電極15は、クロム、モリブデン、タングステンなどで構成されている。
また、本形態でも、実施の形態1と同様、下部電極13の下層側が窒素含有のタンタル層131で構成され、この窒素含有のタンタル層131は、立方晶系のタンタル層である。これに対して、下部電極13の上層側は、酸素含有のタンタル層132で構成されている。
ここで、酸素含有のタンタル層132は、上層側に向けて酸素含有率が連続的に増加する酸素含有率傾斜増加層133になっており、その上面部138における酸素含有率は10原子%から53原子%、好ましくは20原子%から36原子%になっている。このように構成した酸素含有のタンタル層132は、全体として結晶性の存在しないランダムな構造(無定形若しくはアモルファス構造に類似した構造)である。
本形態において、下部電極13の最上層が酸素含有のタンタル層132であればよいことから、窒素含有のタンタル層131と酸素含有のタンタル層132の厚さに格別の限定はないが、本形態では、窒素含有のタンタル層131及び酸素含有のタンタル層132のいずれもが約50nmに設定されている。
このような構成の非線形素子10を製造するにあたって、本形態では、図11(b)に示すように、下部電極13の形成工程において、窒素含有のタンタル層131を構成するための第2の成膜処理S12では、タンタル膜をスパッタ法で形成する際、スパッタ装置のチャンバー内の酸素分圧を連続的に変化させる。
より具体的には、まず、スパッタ装置のチャンバー内に窒素を導入した状態での第1の成膜処理S11によって、厚さが50nmの窒素含有のタンタル層131を形成した後、第2の成膜処理S12では、酸素の導入を開始した以降、酸素導入量を連続的に増大させていくことにより酸素分圧を連続的に高めながら厚さ50nmの上層側のタンタル膜を形成する。その結果、例えば、上層側に向けて酸素含有率が0原子%から連続的に増加する酸素含有率傾斜増加層からなる酸素含有のタンタル層131を形成することができる。ここで、酸素含有のタンタル層131の上面部138の酸素含有率を10原子%にする場合には、図3から明らかなように、最終的な酸素分圧を約0.01Paに設定すればよく、20原子%にする場合には、最終的な酸素分圧を約0.02Paに設定すればよく、36原子%にする場合には、最終的な酸素分圧を約0.045Paに設定すればよい。
このように本形態では、下部電極13の上層側は、表面の平滑化、構造的均一性の向上、熱処理の際の下部電極13内への酸素の侵入拡散防止などに効果的な酸素含有のタンタル層132であるとともに、下層側は、窒素含有のタンタル層131からなる立方晶系のタンタル層である。それ故、非線形素子10の電気的特性のばらつきを抑えることができ、かつ、下部電極13あるいはそれと同時形成した配線の抵抗率を低く抑えることができる。また、成膜時、スパッタ装置のチャンバー内への導入ガスを制御するだけでよいので、製造プロセスの複雑化を招くことがない。しかも、本形態では、酸素含有のタンタル層131については、上層側に向けて酸素含有率が連続的に増加する酸素含有率傾斜増加層として形成することにより、下部電極13の上面部138の酸素含有率のみを高い値にし、下部電極13全体としての酸素含有量を低くしてある。それ故、実施の形態1と比較して、下部電極13あるいはそれと同時形成した配線の抵抗率を低く抑えることができる。
また、酸素含有のタンタル層132は、上層側に向けて酸素含有率が連続的に増加する酸素含有率傾斜増加層になっているため、下部電極13をスパッタ法により成膜する場合、酸素を導入しない状態で成膜を行った以降、酸素の導入を開始し、その後、酸素分圧を高めていけばよい。このため、成膜工程を途中で中断する必要がないので、非線形素子10を製造する際のスループットが低下しない。
なお、非線形素子10において、下部電極13は、その上面部138及び側面部139が酸化膜14と接しているが、下部電極13の上面部138と酸化膜14との接触面積は、下部電極13の側面部139と酸化膜14との接触面積に比較して十分、広いため、下部電極13の少なくとも最上層131に酸素を含有させておけば、上記の効果を奏する。
[非線形素子10のその他の実施の形態]
上記形態では、下部電極13の下層側を立方晶系のタンタル層とするにあたって、窒素含有のタンタル層131を用いたが、例えば、ニオブを含有させて立方晶系のタンタル層を形成してもよい。また、最下層に窒素を含有するタンタル層の上に窒素を含有しないタンタル層を積層して、立方晶系のタンタル層を形成してもよい。さらに、基板や基板保護膜に窒素をドープしておき、その上に、窒素を含有しないタンタル膜をして、立方晶系のタンタル層を形成してもよい。さらにまた、タンタル膜を急加熱、急冷却して立方晶系のタンタル層を形成してもよい。
[電気光学装置の構成]
(全体構成)
図12は、本発明が適用される電気光学装置(液晶装置)の電気的構成を示すブロック図である。図13は、電気光学装置の構成を模式的に示す断面図である。
図12に示すように、本形態の電気光学装置100では、複数本の走査線51が行(X)方向に延在して形成され、また、複数本のデータ線52が列(Y)方向に延在して形成されている。また、走査線51とデータ線52との各交差点に対応する位置に画素53が形成され、これらの画素53は、マトリクス状に配置されている。各画素53では、液晶層54と、前記した非線形素子10(TFD素子)とが直列接続しており、図12に示す例では、液晶層54が走査線51の側に、非線形素子10がデータ線52の側にそれぞれ接続されている。なお、液晶層54がデータ線52の側に、非線形素子10が走査線51の側にそれぞれ接続されることもある。また、各走査線51は、走査線駆動回路57によって駆動される一方、各データ線52は、データ線駆動回路58によって駆動される構成となっている。
このような電気光学装置100は、具体的には、例えば、図13に示すように構成される。ここで、対向配置された一対の基板のうち、一方の基板は、前記の非線形素子10や画素電極が形成される素子基板20であり、他方の基板は、対向基板30である。これらの基板のうち、素子基板20の内側表面には、複数本のデータ線52と、それらのデータ線52に接続される複数の非線形素子10と、それらの非線形素子10と1対1に接続される画素電極23とが形成されている。データ線52は、図13において紙面に対して垂直方向に延在して形成される一方、非線形素子10及び画素電極23は、ドットマトリクス状に配列している。そして、画素電極23などの表面には、一軸配向処理、例えばラビング処理が施された配向膜24が形成されている。
対向基板30の内側表面には、カラーフィルタ38が形成されており、「R」、「G」、「B」の3色の着色層を構成している。なお、これら3色の着色層の隙間には、ブラックマトリクス39が形成されて、着色層の隙間からの入射光を遮蔽する構成となっている。カラーフィルタ38及びブラックマトリクス39の表面には平坦化膜37が形成され、さらにその表面には、走査線51として機能する対向電極31が、データ線52と直交する方向に形成されている。なお、平坦化膜37は、カラーフィルタ38及びブラックマトリクス39の平滑性を高めて、対向電極31の断線を防止する目的などのために設けられる。さらに、対向電極31の表面には、ラビング処理が施された配向膜34が形成されている。なお、配向膜24、34は、一般にポリイミド等から形成される。
素子基板20と対向基板30とは、スペーサ(図示省略)を含むシール材104によって一定の間隙を保って接合され、この間隙に、液晶105が封入された構成となっている。素子基板20の外側表面には、配向膜24へのラビング方向に対応した光軸を有する偏光板217などが貼着され、対向基板30の外側表面には、配向膜34へのラビング方向に対応した光軸を有する偏光板317などが貼着されている。なお、本形態の電気光学装置100は、COG(Chip On Glass)技術が適用されており、素子基板20の表面に直接、液晶駆動用ICチップ260が実装されている。
(画素の構成)
図14は、電気光学装置において、非線形素子を含む数画素分のレイアウトを示す平面図であり、図15は、各画素に形成された非線形素子の説明図である。
図14及び図15に示すように、本形態の非線形素子10は、第1の非線形素子10a及び第2の非線形素子10bからなり、素子基板20の表面に形成された下地層201上において、下部電極13と、この下部電極13の表面に陽極酸化によって形成された酸化膜14と、この表面に形成されて相互に離間した上部電極15a、15bとから構成されている。上部電極15aは、そのままデータ線52となる金属層15cと一体に形成されている一方、上部電極15bは、画素電極23に接続されている。なお、データ線52は、下部電極13と同時形成された金属層13aを備えている。下地層201は、例えば、厚さが50〜200nm程度のタンタル酸化膜などの絶縁膜によって構成され、下部電極13の構成によっては省略してもよい。
本形態の非線形素子10において、金属層13a及び下部電極13は、例えば、厚さが100〜150nm程度のタンタル膜によって形成され、酸膜膜14は、陽極酸化法によって金属層13a及び下部電極13の表面を酸化することによって形成された厚さが20〜40nmの陽極酸化膜である。上部電極15a、15bは、例えばクロム(Cr)等といった金属膜によって100〜500nm程度の厚さに形成されている。
ここで、第1の非線形素子10aは、データ線52の側からみると順番に、上部電極15a/酸化膜14/下部電極13となって、金属(導電体)/絶縁体/金属(導電体)のサンドイッチ構造を採るため、ダイオードスイッチング特性を有することになる。一方、第2の非線形素子10bは、データ線52の側からみると順番に、下部電極13/酸化膜14/上部電極15bとなって、第1の非線形素子10aとは、反対のダイオードスイッチング特性を有することになる。従って、非線形素子10は、2つのダイオードを互いに逆向きに直列接続した形となっているため、1つのダイオードを用いる場合と比べると、電流−電圧の非線形特性が正負の双方向にわたって対称化されることになる。なお、このように非線形特性を厳密に対称化する必要がないのであれば、1つの非線形素子のみを用いても良い。
画素電極23は、透過型として用いられる場合には、ITO(Indium Tin Oxide)などの導電性の透明膜から形成される一方、反射型として用いられる場合には、アルミニウムや銀などの反射率の大きな反射性金属膜から形成されることがある。なお、画素電極23は、反射型であってもITOなどの透明性金属から形成される場合もある。この場合には、反射層としての反射性金属が形成された後、絶縁層を介して透明な画素電極23が形成される。一方、半透過反射型として用いられる場合には、反射層を薄く形成して半透過反射膜とするか、あるいは、スリットが設けられる構成となる。素子基板20自体は、例えば、石英やガラスなどの絶縁性を有するものが用いられる。なお、透過型として用いる場合には、透明であることも素子基板20の要件となるが、反射型として用いる場合には、透明であることが要件にならない。また、素子基板20の表面に下地層201が設けられる理由は、熱処理により、下部電極13などが下地から剥離しないようにするとともに、下部電極13、13aに不純物が拡散しないようにするためである。したがって、これが問題とならない場合には、下地層201は省略可能である。
(電気光学装置の製造方法)
図16は、本形態の電気光学装置100の製造方法の一例を示す工程図である。図17は、素子基板形成工程の一部を示す工程断面図である。
本形態において、電気光学装置100を製造するにあたっては、図16に示す非線形素子形成工程P1〜シール材印刷工程P5からなる素子基板形成工程と、カラーフィルタ形成工程P6〜ラビング処理工程P10からなる対向基板形成工程とは別々に行われる。また、これらの工程は、素子基板20及び対向基板30を多数取りできる大型の元基板の状態で行われるが、以下の説明では、単品サイズ及び大型の元基板については区別せず、素子基板20及び対向基板30と称する。
本形態では、大型の素子基板20に対して、まず、非線形素子形成工程P1を行うことにより、電気光学装置複数個分のデータ線52及び非線形素子10を形成する。この非線形素子形成工程P1では、まず、図17に示す下地層形成工程(a)において、大型の素子基板20の表面にタンタル酸化物などの絶縁膜を一様な厚さに成膜して下地層201を形成する。下地層201は、下部電極13の構成によっては省略してもよい。
次に、第1金属層形成工程(b)において、例えば、タンタルをスパッタ法等によって一様な厚さで成膜し、さらにフォトリソグラフィ技術を用いてデータ線52の金属層13a、及び非線形素子10の下部電極13を同時に形成する(図2に示す下部電極形成工程に相当する)。このとき、データ線52の金属層13aと下部電極13とはブリッジ部(図示せず)で繋がっている。また、この工程では給電パターン(図示せず)も形成する。
このような第1金属層形成工程(b)においてタンタル膜を形成する際、図1および図11(a)、(b)を参照して説明した構成を適用する。
次に、絶縁層形成工程(c)においては、大型の素子基板20を電解槽内で電解液に浸漬した状態で、素子基板20に給電し、陽極酸化を行う(図2に示す陽極酸化処理に相当する)。その際、データ線52の金属層13aを介して下部電極13に給電され、それらの表面には、酸化膜14として作用する陽極酸化膜が形成される。
次に、アニール工程(d)においては、素子基板20を加熱炉内で加熱する(図2に示す熱処理工程に相当する)。その結果、酸化膜14内の転位や空孔などの欠陥密度が低減されるので、非線形素子10のI/V値を高くすることができるなどの効果を奏する。
次に、第2金属層形成工程(e)において、Crをスパッタ等によって一様な厚さで成膜した後、フォトリソグラフィ技術を利用して、データ線52の最上層としての金属層15c、第1の非線形素子10aの上部電極15a、及び第2の非線形素子10bの上部電極15bを形成する(図2に示す上部電極形成工程に相当する)。以上により、非線形素子である非線形素子10が素子基板20の表面に必要な数だけ形成される。
次に、ブリッジ部除去及び下地層除去工程(f)においては、例えば、ドライエッチングによりブリッジ部を大型の素子基板20から除去する。これにより、第1非線形素子10a及び第2非線形素子10bの下部電極13及び酸化膜14が、データ線52から島状に分断される。なお、この工程では、ブリッジ部の他に、給電パターンのうち、大型の素子基板200を切断した際に素子基板20に残ってしまう不要な部分についても除去する。また、画素電極23に相当する領域の下地層201を除去する。
次に、図16の画素電極形成工程P2が行われる。具体的には、電極形成工程(g)において、画素電極23を形成するためのITOをスパッタ等によって一様な厚さで成膜し、さらに、フォトリソグラフィ技術により、1画素分の大きさに相当する所定形状の画素電極23をその一部が上部電極15bに重なるように形成する。これらの一連の工程により、図14及び図15に示す非線形素子10及び画素電極23が形成される。
しかる後には、図16の配向膜工程P3において、元基板200の表面にポリイミド、ポリビニルアルコール等を一様な厚さに形成することによって配向膜24を形成した後、ラビング処理工程P4において、配向膜24に対してラビング処理その他の配向処理を行う。
次に、シール材印刷工程P5において、ディスペンサーやスクリーン印刷等によってシール材104を環状に塗布する。なお、シール材104の一部分には、液晶注入口を形成しておく。
以上の素子基板形成工程とは別に、対向基板形成工程(カラーフィルタ形成工程P6〜ラビング処理工程P10)を行う。それには、まず、ガラス基板等といった透光性材料によって形成された大型の対向基板30を用意した後、カラーフィルタ形成工程P6において、大型の対向基板30の表面上にブラックマトリクス39、及びカラーフィルタ38を形成する。ここで、カラー表示が必要でない場合には、カラーフィルタ38を形成する必要はない。
次に、平坦化層形成工程P7において、カラーフィルタ38の上に平坦化膜37を一様な厚さに形成して表面を平坦化する。
次に、対向電極形成工程P8において、ITO膜等によりストライプ状の対向電極31、すなわち、走査線51を形成する。
次に、配向膜形成工程P9において、走査線51等の上にポリイミド等によって一様な厚さの配向膜34を形成した後、ラビング処理工程P10において、配向膜34に対してラビング処理等といった配向処理を施す。
その後、大型の素子基板200と大型の対向基板30とを位置合わせした上でシール材104を間に挟んで貼り合わせ(貼り合わせ工程P11)、さらに紫外線硬化その他の方法でシール材104を硬化させる(シール材硬化工程P12)。これにより、液晶表示装置複数個分を含んでいる空のパネル構造体が形成される。その後、空のパネル構造体を短冊状のパネル構造体に切断する(1次切断工程P13)。この短冊状のパネル構造体の切断個所では、シール材104の途切れ部分からなる液晶注入口が外部に開口しているので、露出した液晶注入口からパネル構造体の内側に液晶を減圧注入した後(液晶注入工程P14)、各液晶注入口に対して樹脂等の封止材を塗布して、各液晶注入口を封止する(注入口封止工程P15)。なお、この工程により、パネル構造体に液晶が付着するので、液晶を注入し終えたパネル構造体を洗浄する(洗浄工程P16)。その後、パネル構造体をさらに切断することにより、複数個の電気光学装置100が切り出される(2次切断工程P17)。しかる後に、電気光学装置100に液晶駆動用ICチップ260などを実装し、電気光学装置100が完成する(実装工程P18)。
(電気光学装置のその他の例)
以上説明した実施形態では、非線形素子を備えた電気光学装置として液晶表示装置を構成した例を示したが、本発明はこれに限られるものではなく、例えば、エレクトロルミネッセンス装置、有機エレクトロルミネッセンス装置、プラズマディスプレイ装置、電気泳動ディスプレイ装置、電子放出素子を用いた装置(Field Emission Display 及びSurface−Conduction Electron−Emitter Display等)などの各種の電気光学装置においても本発明を同様に適用することが可能である。
(電子機器の実施形態)
図18は、本発明に係る電気光学装置が搭載される電子機器の一例を示す携帯電話機の説明図である。図18に示すように、携帯電話機90は、複数の操作ボタン91と、本発明を適用した電気光学装置1を有している。なお、本形態の電気光学装置は、携帯電話機の他、モバイル型のパーソナルコンピュータなどに用いることもできる。
本発明の実施の形態1に係る非線形素子の構造を示す拡大縦断面図である。 図1に示す非線形素子の製造プロセスを示す工程図である。 非線形素子の下部電極の成膜工程において、スパッタ装置内の酸素分圧と酸素含有率との関係を示すグラフである。 酸素含有率別のX線回析プロファイルを示すグラフである。 (a)、(b)、(c)、(d)はそれぞれ、陽極酸化工程における電流・電圧の経時変化を示すグラフ、膜密度の経時変化を示すグラフ、表現粗さの経時変化を示すグラフ、及び膜厚の経時変化を示すグラフである。 下部電極の酸素含有のタンタル層における酸素含有率と、下部電極の表面粗さとの関係を示すグラフである。 下部電極の酸素含有のタンタル層における酸素含有率と、下部電極の抵抗率との関係を示すグラフである。 非線形素子の電流・電圧特性を示すグラフである。 非線形素子のβ値を傾きとして表したグラフである。 絶縁膜中の酸素原子のうち、Taと結合した酸素原子の割合を算出する方法を説明するためのESCAの分光スペクトルの一部を示す拡大説明図である。 (a)、(b)は、本発明の実施の形態2に係る非線形素子の下部電極の構造を示す拡大縦断面図、及びその製造条件を示す説明図である。 本発明が適用される電気光学装置(液晶表示装置)の電気的構成を示すブロック図である。 電気光学装置の構成を模式的に示す断面図である。 電気光学装置において、非線形素子を含む数画素分のレイアウトを示す平面図である。 電気光学装置において、各画素に形成された非線形素子の説明図である。 本発明を適用した電気光学装置の製造方法の一例を示す工程図である。 本発明を適用した電気光学装置の製造工程のうち、素子基板形成工程の一部を示す工程断面図である。 本発明に係る液晶表示装置を用いた電子機器の一実施形態としての携帯電話機の説明図である。 従来の非線形素子の構造を示す拡大縦断面図である。
符号の説明
10 非線形素子、11 基板、13 下部電極、14 酸化膜、15 上部電極、131 窒素含有のタンタル層、132 酸素含有のタンタル層

Claims (11)

  1. 主成分がタンタルからなる下部電極と、該下部電極の上層側に形成された酸化膜と、該酸化膜を介して前記下部電極に対向する上部電極とを備えた非線形素子において、
    前記下部電極は、立方晶系のタンタル層と、該立方晶系のタンタル層の上層側で前記下部電極の最上層を構成する酸素を含有したタンタル層と、を備えていることを特徴とする非線形素子。
  2. 前記立方晶系のタンタル層は、窒素を含有したタンタル層によって形成されることを特徴とする請求項1に記載の非線形素子。
  3. 前記酸素を含有したタンタル層は、上層側に向けて酸素含有率が連続的に増加する酸素含有率傾斜増加層からなることを特徴とする請求項1または2に記載の非線形素子。
  4. 前記下部電極の最表面における酸素含有率が10原子%から53原子%であることを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載の非線形素子。
  5. 前記酸化膜は、前記下部電極の陽極酸化膜であることを特徴とする請求項1乃至5の何れか一項に記載の非線形素子。
  6. 請求項1乃至5のいずれか一項に記載の非線形素子と、当該非線形素子を介して駆動される画素電極とを備えたことを特徴とする電気光学装置。
  7. 主成分がタンタルからなる下部電極を形成する下部電極形成工程と、前記下部電極の表面側に酸化膜を形成する酸化膜形成工程と、前記酸化膜を介して前記下部電極に対向する上部電極を形成する上部電極形成工程と、を有する非線形素子の製造方法において、
    前記下部電極形成工程では、立方晶系のタンタル層を形成する第1の成膜処理と、該立方晶系のタンタル層の上層側で前記下部電極の最上層を構成する酸素を含有したタンタル層を形成する第2の成膜処理と、を備えていることを特徴とする非線形素子の製造方法。
  8. 前記第1の成膜処理において、前記立方晶系のタンタル層として、窒素を含有したタンタル層を形成することを特徴とする請求項7に記載の非線形素子の製造方法。
  9. 前記第2の成膜処理では、酸素ガス存在雰囲気下でスパッタ法によりタンタル層の成膜を行うことを特徴とする請求項7または8に記載の非線形素子の製造方法。
  10. 前記第2の成膜処理では、酸素ガス存在雰囲気下でスパッタ法によりタンタル層の成膜を行うとともに、スパッタ時の酸素分圧を連続的に増加させて膜厚方向で上層側に向けて酸素含有率が連続的に増加する酸素含有率傾斜増加層を形成することを特徴とする請求項9に記載の非線形素子の製造方法。
  11. 前記酸化膜形成工程を行った後、前記酸化膜に熱処理を行う熱処理工程を有することを特徴とする請求項7乃至10の何れか一項に記載の非線形素子の製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP6039795B2 (ja) * 2013-04-17 2016-12-07 京セラ株式会社 サーマルヘッドおよびサーマルプリンタ
EP4389942A1 (en) * 2022-12-22 2024-06-26 Murata Manufacturing Co., Ltd. A method of manufacturing an integrated device comprising anodic porous oxide with limited roughness

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