JP2006258469A - 核酸プローブ形成用基板 - Google Patents
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Abstract
【課題】 複雑な配線や駆動回路を設けることなく、かつ、チップサイズを増大させることなく、所望の領域における選択的な核酸合成を容易に制御することができる核酸プローブ形成用基板を提供する。
【解決手段】 電気化学的に制御して核酸合成を行うための第1電極および第2電極で構成される電極対が一次元または二次元に複数配列されてなり、各電極対の第1電極同士が相互に電気的に接続されて共通電極として形成されたことを特徴とする、核酸プローブ形成用基板。
【選択図】 図1
【解決手段】 電気化学的に制御して核酸合成を行うための第1電極および第2電極で構成される電極対が一次元または二次元に複数配列されてなり、各電極対の第1電極同士が相互に電気的に接続されて共通電極として形成されたことを特徴とする、核酸プローブ形成用基板。
【選択図】 図1
Description
本発明は、化学反応を微小な領域で行うマイクロ化学反応デバイスである核酸プローブ形成用基板に関するものであり、その応用としてDNAチップ、健康チップまたはμTASに展開できるものである。
従来の遺伝子解析法は、電気泳動などによって遺伝子を分子量の違いにより分別し、その後DNAチップを用いて、目的の遺伝子の有無および定量を行っている。DNAチップには、特定の遺伝子と反応(ハイブリダイゼーション)する相補的なDNA(DNAプローブ)が設けられており、上記操作で分離した遺伝子に蛍光色素をつけて当該チップ内に設けられた種々のDNAプローブと反応させる。反応後、DNAプローブ形成領域からの蛍光を測定することで、DNAプローブとハイブリダイゼーションを生じた遺伝子の有無および量が検出できる。
従来、DNAチップ内にDNAプローブを設ける方法としては、以下のものがある。たとえば、特許文献1、2に記載のものでは、フォトリソグラフィー技術を応用して所望のヌクレオチド配列をもつプローブをチップ内の所望の領域に形成する方法が開示されている。この方法では、まず、基板表面を所望の領域に光により解離可能な保護基をつけたヌクレオチドAを固定し、その後、所望のヌクレオチドBを結合する領域のみに、フォトマスクなどを用いて光を照射して、照射領域に固定されているヌクレオチドAの保護基を取り去る。次にヌクレオチドBをチップ内に導入すると、光照射を行った領域のヌクレオチドAは、保護基が取り去られているので、当該領域のヌクレオチドAとのみヌクレオチドBは反応する。この操作を種々のヌクレオチドについて繰り返すことで、所望の領域に、所望のヌクレオチド配列をもったプローブが形成される。他のプローブ形成方法としては、特許文献3、4に開示されるような、ノズルまたはインクジェットヘッドを用いて、チップ内の所望の領域に、所望のヌクレオチド配列を持つ分子を含む液体を吐出させ、固定化することによってプローブを形成する方法も知られている。
しかしながら、フォトリソグラフィーによる方法は、高価なフォトマスクを多数使用する必要があること、ノズルまたはインクジェットを用いる方法は、基板表面に滴下される液滴量の制御が難しく、また、滴下後液が広がることから、プローブの形成領域および密度のばらつきが生じるなどの問題がある。
最近、これらの問題を解決する形成方法として、電気化学的にプローブを形成するものが提案されている(たとえば非特許文献1を参照。)。以下に、図10を用いて詳細に説明する。この方法では、幅40μmのストライプ状の電極102a,102b,102cがその幅方向(長手方向に垂直な方向)Xに関し40μmの間隔を置いて複数形成されたプローブ形成用基板101が、チップ基板103の表面と対向するように配置され、密封状態に保持される。プローブ形成用基板101には、密封された空間に反応液を注入、流出するための穴(図示せず)が設けてある。ここでは、チップ表面の所望の領域に電気化学的にヌクレオチドを成長させる方法を説明するため、チップ基板103の表面に還元反応により解離する保護基105a,105b,105cを各々つけたヌクレオチド104a,104b,104cが固定化している状態(図10(a))から説明を行う。
ハイドロキノンなど電気化学的に酸化反応を生じる化合物107をチップ基板103とプローブ形成用基板101の間に導入し、ヌクレオチド104a,104b,104cが固定化された領域106a,106b,106cのうち、ヌクレオチド108を結合させる所望の領域106bに対応する電極102bに正電位、それを挟む電極102a,102cに負電位を印加する。たとえば、化合物107としてハイドロキノンを用いた場合、正電位の電極102b付近のハイドロキノンは、電極102bに電子を渡すことで、下記のような酸化反応を起こして水素イオンを発生し、この水素イオンは電極102bに対応したチップ基板103表面の領域106bの保護基105b付きヌクレオチド104bと反応して、保護基105bを解離する(図10(b))。
引き続き、保護基付きのヌクレオチド108を導入する(図10(c))と、保護基105bが取れたヌクレオチド104bとのみ反応し、ヌクレオチドを成長させる(図10(d))。この操作を繰り返すことで、チップ基板103の所望の領域に所望の塩基配列を有するDNAプローブを形成することができる。この方法によれば、電気化学的な反応によりDNAプローブ形成ができ、形成領域は電極サイズ、印加電圧または電流値および印加時間により制御できるので、フォトリソグラフィーやノズルまたはインクジェットを用いる方法に比べ低コストで、精度よくプローブを形成できる。
米国特許5,143,854号明細書
特開2000−32998号公報
米国特許6,040,193号明細書
特開2003−254970号公報
Ryanら、Anal. Chem. 2002, 74, 1590-1596
しかしながら、上記手法を用い複数のプローブの形成を行う場合、電圧印加を隣接電極間で行うため、形成するプローブ数より少なくとも1つ以上多い電極を幅方向Xに配置する必要が生じる。さらに任意のプローブ形成を同時並行して行うためには、プローブ数の2倍の電極を幅方向Xに配置しなければならず、チップサイズの増大を招くことになる。また、各電極から外部制御回路に接続される配線数も増大し、制御も困難となる。
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、その目的とするところは、複雑な配線や駆動回路を設けることなく、かつ、チップサイズを増大させることなく、所望の領域における選択的な核酸合成を容易に制御することができる核酸プローブ形成用基板を提供することである。
本発明の核酸プローブ形成用基板は、電気化学的に制御して核酸合成を行うための第1電極および第2電極で構成される電極対が一次元または二次元に複数配列されてなり、各電極対の第1電極同士が相互に電気的に接続されて共通電極として形成されたことを特徴とする。
ここにおいて、各電極対の第2電極に対し1または複数の電源線の選択接続を行うスイッチング素子と、前記スイッチング素子の接続を決定する選択情報を保持するメモリ素子と、前記メモリ素子に選択情報の書込み動作を行う書込み回路とを有するセルが一次元または二次元に複数配置されてなるのが好ましい。
本発明の核酸プローブ形成用基板において、前記スイッチング素子は、2回路スイッチング素子または1回路スイッチング素子にて構成されるのが好ましい。
また本発明の核酸プローブ形成用基板は、以下の(1)〜(3)のいずれかの形態で実現されるのが好ましい。
(1)スイッチング素子および書込み回路をMOSFETで構成するとともに、メモリ素子を容量素子で構成する、
(2)スイッチング素子および書込み回路をMOSFETで構成するとともに、メモリ素子をCMOSロジック回路で構成する、
(3)スイッチング素子および書込み回路をTFTで構成するとともに、メモリ素子を容量素子で構成する。
(2)スイッチング素子および書込み回路をMOSFETで構成するとともに、メモリ素子をCMOSロジック回路で構成する、
(3)スイッチング素子および書込み回路をTFTで構成するとともに、メモリ素子を容量素子で構成する。
本発明により、複雑な配線や駆動回路を設けることなく、かつ、チップサイズを増大させることなく、所望の領域における選択的な核酸合成を容易に制御することができる核酸プローブ形成用基板を提供することができる。
図1および図2は、本発明の概念的な回路構成を示す図である。本発明の核酸プローブ形成用基板1は、電気化学的に制御して核酸合成を行うための第1電極4および第2電極5で構成される電極対3が一次元または二次元に複数配列されてなり、各電極対の第1電極4同士が相互に電気的に接続されて共通電極として形成されてなることを特徴とする。ここで、本明細書における「核酸」はDNAまたはRNAを指し、好ましくはDNAである。また本明細書における「一次元に配列」とは上記電極対3が線状に配列(たとえば電極対3が行列状に配列される場合には、1行複数列または複数行1列)されてなることを指し、「二次元に配列」とは上記電極対3が面状に配列(たとえば電極対3が行列状に配列される場合には、複数行複数列)されてなることを指す。本発明の核酸プローブ形成用基板によれば、複雑な配線や駆動回路を設けることなく、かつ、チップサイズを増大させることなく、所望の領域における選択的な核酸合成を容易に制御することができる核酸プローブ形成用基板を提供することができる。
本発明の核酸プローブ形成用基板1は、各電極対3のうち共通電極として形成されていない第2電極5に対し1または複数の電源線の選択接続を行うスイッチング素子8と、前記スイッチング素子8の接続(オンオフ)を決定する選択情報を保持するメモリ素子9と、前記メモリ素子に選択情報の書込み動作を行う書込み回路10とを有するセル7が一次元または二次元に複数配置されてなるのが好ましい。図1および図2に示す例では、上述した電極対3、ならびに各電極対3のうち共通電極として形成されていない第2電極5に電気的に接続された回路部11(上述したスイッチング素子8、メモリ素子9および書込み回路10で構成される)を有するセル7が、二次元のアレイ状に複数配置されてなる。各回路部11を構成するスイッチング素子8と、メモリ素子9と、書込み回路10とは、互いに電気的に接続されてなる。また図1に示すように、各電極対3の第2電極5は、それぞれセル7内の回路部11を介して、セル7外に設けられた共通の信号電源発生部12に電気的に接続されてなる。また、図2に示す例では、各書込み回路10は、それぞれ共通するデータレジスタ回路13および走査回路14に電気的に接続されてなる。
本発明の核酸プローブ形成用基板は、上述のような構成を備えることで、選択情報書込み期間に上記走査回路に順次もしくは個別に選択されたセルに、上記信号線およびセル内書込み回路を介し、セル内メモリ素子に選択情報の書込みを行う。そして、核酸プローブ形成のためのヌクレオチド合成に際しては、上記メモリ素子に書き込まれた選択情報に基づき、上記スイッチング部を制御し所望の電源線と接続し、さらに制御回路により上記セル内電極に接続された電源を駆動し、ヌクレオチド合成でき得る環境を上記電極対近傍に形成する。これによって、上記選択情報によってヌクレオチドを合成すべきセルの指定が複雑な配線や駆動回路を設けることなく実現できる。また、それを繰り返すことにより複数のヌクレオチドの合成による核酸プローブの形成が容易に達成できる。
また、上記構成によれば、セル間の配線は、複数のセルで共通の信号線ならびに制御線および複数の電源線などに限られるため、配線の加工ルールを変えることなく、セル数の増大も容易にできるという利点もある。
さらに、各電極対の第1電極4同士が相互に電気的に接続されて共通電極として形成されてなることにより、ヌクレオチド合成の際に非選択となったセル内の第2電極が浮遊電位になり、誤ったセルにヌクレオチド合成される誤動作を抑えることができるという効果もある。
ここで、本発明の核酸プローブ形成用基板は、具体的には、以下の(1)〜(3)のいずれかの構成で実現されるのが好ましい。
(1)スイッチング素子および書込み回路をMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)で構成するとともに、メモリ素子を容量素子で構成する、
(2)スイッチング素子および書込み回路をMOSFETで構成するとともに、メモリ素子をCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)ロジック回路で構成する、
(3)スイッチング素子および書込み回路をTFT(Thin Film Transistor)で構成するとともに、メモリ素子を容量素子で構成する。
(2)スイッチング素子および書込み回路をMOSFETで構成するとともに、メモリ素子をCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)ロジック回路で構成する、
(3)スイッチング素子および書込み回路をTFT(Thin Film Transistor)で構成するとともに、メモリ素子を容量素子で構成する。
スイッチング素子および書込み回路をMOSFETで構成するとともに、メモリ素子を容量素子で構成した場合、全体としての構造を簡略化して本発明の核酸プローブ形成用基板を実現できるという利点がある。メモリ素子を構成する容量素子としては、MOSFETやポリシリコン、メタル−絶縁膜−メタルで作製されたものを好ましく用いることができる。MOSFETで作製された容量素子でメモリ素子を構成することで、単位面積あたりの容量が大きいMOS容量を利用することができ、実効的には容量の面積を小さくできるという利点がある。また、MOSトランジスタのゲート電極材や配線材として広く使用されるポリシリコンで作製された容量素子でメモリ素子を構成すると、作製が容易であるという利点がある。さらに、メタル−絶縁膜−メタルで作製された容量素子でメモリ素子を構成すると、容量を形成する絶縁膜のみ独自に設定して作製できるため、単位面積あたりの容量を大きくでき、リーク電流によるエラーの発生を低減できるという利点がある。
また、スイッチング素子および書込み回路をMOSFETで構成するとともに、メモリ素子をCMOSロジック回路で構成した場合、単純容量素子で起こり得る書込み回路などのリーク電流による情報エラーを回避することができるという利点がある。
またスイッチング素子および書込み回路をTFTで構成するとともに、メモリ素子を容量素子で構成する場合には、全体としての構造を簡略化して本発明の核酸プローブ形成用基板を実現できるという利点がある。この場合において容量素子として好適に用いられるものは上述したとおりであり、それぞれ上述した利点を有する。
図3は、本発明の好ましい一例の核酸プローブ形成用基板21を模式的に示す図である。なお、図3(a)は上面図であり、図3(b)は図3(a)の切断面線IIIB−IIIBからみた断面図である。この例では、図3(a)の上面図より明らかなように、4個の第2電極25a,25b,25c,25dを市松状に配列し、第1電極24を共通電極として形成している。そして、たとえばMOS(Metal Oxide Semiconductor)回路で構成された回路部を有するセルが二次元のアレイ状に複数配置された支持基板22上に、第2電極25a,25b,25c,25dが形成され、その上に第2電極25a,25b,25c,25dを一部露出させた状態で絶縁膜36が形成され、絶縁膜36上に第1電極24が形成されてなる。支持基板22はたとえばシリコン基板で形成されており、第2電極25a,25b,25c,25dがこのシリコン基板に電気的に接続されることにより、第2電極25a,25b,25c,25dと回路部との電気的な接続を実現している。このようにして電極対23を形成することで、容易に本発明を実現することが可能となるが、本発明における電極対23の配置はこの例に限定されるものではないことは勿論である。
図3に示した例において、電極を形成する材料としては、金、白金、イリジウム、ニッケル、銅、チタン膜などの金属薄膜およびそれらを重ね合わせた膜が挙げられ、特に制限されるものではない。また、支持基板22としては、シリコン基板以外に、ガラス基板、ポリカーボネート樹脂やアクリル樹脂などからなるプラスチック基板なども適宜用いることが可能である。
図4は、図3に示した例の核酸プローブ形成用基板21の回路構成を示す図である。図4に示す例において、第1電極24は、それぞれ共通の電源26に電気的に接続されて共通電極として形成されている。4つの第2電極25a,25b,25c,25dのうちのいずれか1つと、そのいずれかの第2電極に電気的に接続された回路部を有する4個のセル27a,27b,27c,27dが支持基板22に市松状に配置され(セル27a〜27dには、第2電極25a〜25dがそれぞれ対応して配置されている。)、第1電極24は、支持基板22の表面の4個のセル27a〜27d以外の部分に形成されてなる。回路部は、図1および図2に示した例と同様に、互いに電気的に接続されたスイッチング素子28、メモリ素子29および書込み回路30で構成される。また第2電極25a〜25dは、それぞれセル27a〜27d内の回路部を介して、セル27a〜27d外に設けられた共通の信号電源発生部32に電気的に接続される。さらに各書込み回路30は、それぞれ共通するデータレジスタ回路33および走査回路34に電気的に接続されてなる。また図4に示す例では、データレジスタ回路33および走査回路34は、制御部35に電気的に接続される。制御部35は外部PCなどに接続されており(図示せず)、外部PCの制御により各セルの選択、非選択の情報をデータレジスタ回路33に転送し、さらに走査回路34を介し、上記メモリ素子29に書込みを行う。
以下、図3および図4に示した例の本発明の核酸プローブ形成用基板21を用いた、核酸プローブの形成方法について、図5を用いて説明する。当該核酸プローブの形成には、従来公知の適宜のチップ基板(たとえばDNAチップ)を併せて用い、図10を参照して説明した従来技術と同様に、チップ基板の核酸プローブを形成する領域に第2電極の位置を対応させて対向させて行う。チップ基板は、本発明の核酸プローブ形成用基板21と対向させたときにその間に形成される空間を密封することができる構成のものを用いるのが好ましい。さらに、チップ基板または核酸プローブ形成用基板には、前記密封された空間に反応液を注入でき、また当該空間から反応液を流出できるための穴が形成されてなるのが好ましい。
図10に示したのと同様に、第2電極の位置を対応させた核酸プローブを形成する領域に保護基付きのヌクレオチドが予め形成されたチップ基板を用いる場合、電気化学的に酸化反応を生じる化合物(たとえばハイドロキノン)をチップ基板とプローブ形成用基板との間の空間に導入する。たとえば、第2電極25a,25bに対応したチップ基板表面に形成された保護基付きのヌクレオチドに新たにヌクレオチドを結合させる場合、その第2電極25a,25bを選択し、残りの電極25c,25dを選択しないという情報信号が、制御部35からデータレジスタ回路33に送られ、さらに走査回路34によって選択されたセル列ごとに書込み回路30を介してその情報がメモリ素子29に記憶され、選択された第2電極25a,25bに電気的に接続されたスイッチング素子28がオン状態となる。
そうすると、選択された第2電極25a,25b付近のハイドロキノンは、第2電極25a,25bに電子を渡すことで、
というような酸化反応を起こして水素イオンを発生し、この水素イオンは第2電極25a,25bに対応したチップ基板表面の保護基付きヌクレオチドと反応して、保護基を解離する。引き続き、保護基つきのヌクレオチドを含んだ液を注入して反応させることで、選択された第2電極25a,25cに対向する位置におけるチップ表面のヌクレオチドにのみ新規のヌクレオチドが結合する。
このような本発明の核酸プローブ形成用基板21を用いた核酸プローブの形成において、次のヌクレオチド結合反応に必要な酸化性の化合物を含む液の注入前に、全てのセルの電極を電気的にリセット(すなわち、セル内の共通電極である第1電極24の電位と同電位にする)ことが好ましい。このようにすることによって、前のステップで選択していたセルが、次のステップで非選択状態となった場合、容量性の浮遊電荷の影響により非選択状態にもかかわらず、酸化性の化合物を含んだ液の注入後に酸化反応が生じることを防ぐという効果が生じる。
なお、上記の説明では、酸化性の化合物を用いて還元性の保護基を解離する例で説明したが、本発明はこれに限るものではなく、還元性の化合物を用いて酸化性の保護基を解離する方法も可能であり、その場合は、上記電極への印加極性を逆にすればよい。
また、上記説明では、電極に一定の電位を与える定電圧方式で説明したが、一定の電流を供給する定電流方式でも構わない。
本発明の核酸プローブ形成用基板における前記スイッチング素子は、2回路スイッチング素子、1回路スイッチング素子のいずれで構成されていてもよい。図6および図7は、スイッチング素子を2回路スイッチング素子で構成した場合の回路図(図6)およびタイミング図(図7)を示し、図8および図9は、スイッチング素子を1回路スイッチング素子で構成した場合の回路図(図8)およびタイミング図(図9)を示す。なお、図6〜図9において、上述と同様の構成を有する部分については、図4において付したのと同じ参照符を付して説明を省略する。
図6に示す例の核酸プローブ形成用基板21’において、スイッチング素子28’は、電源26に電気的に接続可能な基準電位線41と、信号電源発生部32に電気的に接続可能な信号電位線42とに選択的に切り換え可能な2回路スイッチング素子で構成される。そして、セル内のメモリ素子29に書き込まれた情報が非選択である場合には基準電位線41を介して電源(基準電源)26に電気的に接続され、またセル内のメモリ素子29に書き込まれた情報が選択である場合には、信号電位線42を介して信号電源発生部(外部電源)32に電気的に接続可能に切り換わるように実現される。このように2回路スイッチング素子28’を用いることで、核酸プローブ形成用基板21’において選択セルと非選択セルを電気的に決定し、所望の反応を実現させることができる。
なお、かかる構成において、メモリ量を増やし、スイッチング素子2回路ともオープン状態とし、電極をフローティングすることも可能である。フローティング状態を設けることで、スイッチング時に急激な電位変動による影響を抑えることができる。
図6に示した例の核酸プローブ形成用基板21’を用いた場合のタイミング図を図7に示している。前述のように、本発明の核酸プローブ形成用基板21’を従来公知の適宜のDNAチップ基板と一定の間隔をあけて配置しておき、密封した状態で、核酸プローブの形成を行う。
まず、核酸プローブ形成用基板21’を用い形成する核酸プローブ(たとえばDNAプローブ)に関し、その塩基配列の末端に結合させるヌクレオチドのセル座標情報をPCから逐次または一括して読み込み、保持しておく。
初期状態として、制御部35からデータレジスタ回路33および走査回路34をリセットするとともに、セル内のメモリ素子29を非選択状態としておく(すなわち、基準電源に電気的に接続する)。なお、スイッチング素子28’には、信号電源発生部(外部電源)32への接続が選択された場合には、制御部35などの回路用電源(図示せず)も選択的に電気的に接続可能なように構成される。
時刻t0において、基準電源である電源26を基準として、外部電源である信号電源発生部32を基準電源と同じ電位にしておく。この後、チップ基板または核酸プローブ形成用基板21’に設けられた注入孔より、生理食塩水などを注入洗浄し、さらに反応液を注入し、保持させる。このメモリ素子29は、上述のように初期状態で非選択的に設定されており、反応液内の電位は一定であり反応は起こらない。
次に、以下の手順でメモリ書込み動作を実施する。以下では、1行1列、2行1列、1行2列、2行2列で指定されるセル27a,27b,27c,27dに関して、それぞれ選択、非選択、非選択、選択と設定する動作について記載する。
時刻t1において、制御部35によって、二次元に配置されたセル群のうち、選択セル列を決定し、まず選択セル列の各セルのデータがデータレジスタ回路33に送られる。図7に示す例では、第1列が選択され、データレジスタ回路33の1番目のレジスタには1行目のデータである選択情報が、2番目のレジスタには2行目のデータである非選択の情報が設定される。
次に時刻t2では、選択セル列情報を走査回路34に送り、走査回路34により選択されたセル列の書込み回路をオンにすることにより、データレジスタ回路33に保持された各セルの選択情報が、各セル内のメモリ素子29に書き込まれる。図7では、走査回路34の1列が選択され、データレジスタ回路33の1番目および2番目のレジスタに保持された選択、非選択の情報が、1行1列、2行1列のセルに転送される。
この動作を繰り返し全てのメモリ素子29に選択情報を書き込む。また図7には、第2列の動作についても記載している。
なお、この動作は上述のように線順位にセル列を選択してもよいし、またPCから送られたDNAチップの生成情報に基づき、選択画素を有するセル列だけ行うようにしてもよい。このときスイッチング素子に接続された第2電極は、メモリ素子29に書き込まれた情報に応じ、基準電位線41を介して電源26に電気的に接続されるか、または、信号電位線42を介して信号電源発生部32に電気的に接続される。しかしながら、信号電位線は上述したように基準電位となっているため、全ての電極電位は基準電位のままである。
この後、時刻t3に信号電位線に接続された信号電源発生部32が、反応条件を満たす電位に切り換わる。このとき、メモリ素子29に書き込まれた情報に基づき第2電極25a,25cが信号電位線に接続されているセル27a,27cにおいて、たとえばハイドロキノンなどの酸化性の化合物を含んだ液を反応液とした場合、選択した第2電極25a,25cではスイッチング素子28’がオン状態となっているので、第2電極25a,25cに正電位が印加され、上述のように予めチップ表面に固定化している保護基つきのヌクレオチドから保護基を解離する。引き続き、保護基つきのヌクレオチドを含んだ液を注入して反応させることで、選択された第2電極25a,25cに対向する位置におけるチップ表面のヌクレオチドにのみ新規のヌクレオチドが結合する。
図7においては、1行1列、2行1列、1行2列、2行2列で指定されるセルの電極電位のうち、選択セルである1行1列および2行2列のセルのみ電位が基準電源電位から正電位に切り替わる。
一定時間の反応完了後、制御部35から信号電源回路(図示せず)を操作し選択された第2電極25a,25cの電位を基準電源電位に切り換える(時刻t4)。その後、反応液を排出し、洗浄工程を1回もしくは複数回行い、1つのサイクルが完了する。このサイクルを1回ないし複数回繰り返すことにより所望のDNAプローブの形成を行う。
また図8に示す例の核酸プローブ形成用基板21’’において、スイッチング素子28’’は、信号電源発生部32への電気的な接続可能を切り換え可能な1回路スイッチング素子で構成される。このように図8に示す例の核酸プローブ形成用基板21’’においては、第2電極25a〜25dと信号電源発生部とのオンオフ動作のみを行うように実現される。このような1回路スイッチング素子28’’を用いることで、上述した2回路スイッチング素子28’を用いた場合と比較して、回路部品点数や配線を削減することができ、容易に作製することができるという利点がある。
図8に示した例の核酸プローブ形成用基板21’’を用いた場合のタイミング図を図9に示している。まず、核酸プローブ形成用基板21’’を用い形成する核酸プローブ(たとえばDNAプローブ)に関し、その塩基配列の末端に結合させるヌクレオチドのセル座標情報をPCから逐次または一括して読み込み、保持しておく。
初期状態として、制御部35からデータレジスタ回路33および走査回路34をリセットするとともに、セル内のメモリ素子29を非選択状態としておく(すなわち、基準電源に電気的に接続する)。信号電源発生部は基準電源電位を出力するようにしておく。
この後、全セル内メモリに対して選択情報を書き込む。すなわち、制御部35からデータレジスタ回路33の全てのレジスタに選択情報を転送し(時刻t1)、さらに走査回路34を同時にオンにすることによって、全メモリ素子29に選択情報を書き込む(時刻t2)。これにより全てのセルは選択状態になるが、第2電極25a〜25dの電位は基準電源電位である。このとき、各セル内の第1電極および第2電極はともに基準電極電位に保たれており、反応液内の電位は一定であり反応は起こらない。
次に、セル内メモリ素子にセルの選択情報の書込みを行う。以下に、1行1列、2行1列、1行2列、2行2列で指定されるセル27a、27b、27c、27dに関して、それぞれ選択、非選択、非選択、選択と設定する動作について記載する。制御部35によって、二次元に配置されたセル群のうち、選択セル列を決定し、まず選択セル列の各セルのデータがデータレジスタ回路33に送られる(時刻t3)。図9では1列が選択され、データレジスタ回路33の1番目のレジスタには選択情報、2番目のレジスタには非選択の情報が設定される。
次に、選択セル列情報を走査回路34に送り、走査回路34により選択されたセル列の書込み回路30をオンすることにより、データレジスタ回路33に保持された各セルの選択情報が、各セル内のメモリ素子29に書き込まれる(時刻t4)。図9では、走査回路の1列が選択され、データレジスタの1番目および2番目のレジスタに選択、非選択の情報が、1行1列、2行1列のセルに転送される。この動作を繰り返し全てのメモリ素子に選択情報を書き込む。
図9では、2列の動作についても記載している。なお、この動作は上述のように線順位にセル列を選択してもよいし、またPCから送られたDNAチップの生成情報に基づき、選択画素を有するセル列だけ行うようにしてもよい。
このとき、メモリ素子29に書き込まれた情報が選択情報の場合は、スイッチング素子28’’に接続された第2電極は信号電位線42に接続されている。しかしながら、信号電位線42は上述のように基準電位となっているため、第2電極の電位は基準電位のままである。
またこのとき、メモリ素子29に書き込まれた情報が非選択情報の場合は、スイッチング素子28’’に接続された電極はフローティング状態になるが、電極対そのものが容量を形成するので前の電極電位を保持することになり、第2電極の電位は基準電位のままである。
この後、時刻t3において、信号電位線42に接続された信号電源発生部32が、正電位に切り替わる。このとき、ハイドロキノンなどの酸化性の化合物を含んだ液を注入し、メモリ素子29に書き込まれた情報に基づき、第2電極25a,25cが信号電位線42に接続されているセル27a,27cに、信号電源発生部32を介して第2電極25a,25cに第1電極24を基準として正電位を印加する。選択した電極25a,25cでは、スイッチング素子がオン状態となっているので電極に正電位が印加され、上述と同様にハイドロキノンなど酸化性の化合物が酸化されて水素イオンが生じ、予めチップ表面に固定化している保護基つきのヌクレオチドから保護基を解離する。引き続き、保護基つきのヌクレオチドを含んだ液を注入して反応させることで、選択された第2電極25a,25cに対応したチップ表面のヌクレオチドにのみ新規のヌクレオチドが結合する。
一定時間の反応完了後、制御部35から信号電源回路(図示せず)を操作し、選択された第2電極25a,25cの電位を基準電源電位に切り替える(時刻t4)。その後、反応液を排出し、洗浄工程を1回もしくは複数回行い、1つのサイクルが完了する。
なお本発明の構成は核酸プローブ形成用基板に関するものとして、対向したDNAチップ基板上にDNAプローブを形成するように記述しているが、対向基板としてガラス基板などを設け、核酸プローブ形成用基板上に直接プローブ形成を行うこともできる。
本発明の核酸プローブ形成用基板は、その応用としてDNAチップ、健康チップまたはμTAS(Micro Total Analysis System)への展開が期待できるものである。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
1,21 核酸プローブ形成用基板、2,22 支持基板、3,23 電極対、4,24 第1電極、5,25a,25b,25c,25d 第2電極、6,26 電極、7,27a,27b,27c,27d セル、8,28 スイッチング素子、9,29 メモリ素子、10,30 書込み回路、11,31 回路部、12,32 信号電源発生部、13,33 データレジスタ回路、14,34 走査回路、15,35 制御部。
Claims (7)
- 電気化学的に制御して核酸合成を行うための第1電極および第2電極で構成される電極対が一次元または二次元に複数配列されてなり、各電極対の第1電極同士が相互に電気的に接続されて共通電極として形成されたことを特徴とする、核酸プローブ形成用基板。
- 各電極対の第2電極に対し1または複数の電源線の選択接続を行うスイッチング素子と、前記スイッチング素子の接続を決定する選択情報を保持するメモリ素子と、前記メモリ素子に選択情報の書込み動作を行う書込み回路とを有するセルが一次元または二次元に複数配置されてなることを特徴とする、請求項1に記載の核酸プローブ形成用基板。
- 前記スイッチング素子を2回路スイッチング素子で構成したことを特徴とする請求項2に記載の核酸プローブ形成用基板。
- 前記スイッチング素子を1回路スイッチング素子で構成したことを特徴とする請求項2に記載の核酸プローブ形成用基板。
- スイッチング素子および書込み回路をMOSFETで構成するとともに、メモリ素子を容量素子で構成したことを特徴とする請求項2に記載の核酸プローブ形成用基板。
- スイッチング素子および書込み回路をMOSFETで構成するとともに、メモリ素子をCMOSロジック回路で構成したことを特徴とする請求項2に記載の核酸プローブ形成用基板。
- スイッチング素子および書込み回路をTFTで構成するとともに、メモリ素子を容量素子で構成したことを特徴とする請求項2に記載の核酸プローブ形成用基板。
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WO2008044779A1 (en) * | 2006-10-06 | 2008-04-17 | Sharp Kabushiki Kaisha | Micro-pixelated fluid-assay structure, micro-pixelated fluid-assay precursor structure, and making method and performing method thereof |
WO2010016431A1 (en) * | 2008-08-04 | 2010-02-11 | Sharp Kabushiki Kaisha | Selectively functionized transducer microarray |
-
2005
- 2005-03-15 JP JP2005073161A patent/JP2006258469A/ja not_active Withdrawn
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JP2011528783A (ja) * | 2008-08-04 | 2011-11-24 | シャープ株式会社 | 選択的に機能化されたトランスデューサーマイクロアレイ |
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