JP2006252485A - リガンド探索装置、リガンド探索方法、プログラム、および記録媒体 - Google Patents

リガンド探索装置、リガンド探索方法、プログラム、および記録媒体 Download PDF

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Abstract

【課題】本発明は、誘導適合型受容体も含めた受容体/リガンド結合の解析を研究するためのリガンド探索装置、リガンド探索方法、プログラム、および記録媒体を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明は、受容体の基準振動解析計算をまず行い、定常状態の受容体の主鎖二面角の揺らぎを計算する。そして、その揺らぎを基にした拘束を各原子にかけながら分子動力学計算を行うことでより精度の良い受容体の動的構造を予測する。また、本発明は、分子動力学計算より得た動的構造及び相互作用関数を用いることで、誘導適合型受容体にも応用できる受容体/リガンド結合を精度良く予測する。
【選択図】 図1

Description

本発明は、タンパク質の立体構造座標を用いたリガンド探索装置、リガンド探索方法、プログラム、および記録媒体に関し、特に、タンパク質の立体構造座標が既知の場合、相互作用すると考えられるリガンドを予測するリガンド探索装置、リガンド探索方法、プログラム、および記録媒体に関するものである。
酵素や受容体等の生体機能を維持するために必要なタンパク質には、基質特異性と呼ばれる性質があり、活性部位が基質分子構造の細部にわたり常に一致しているLock&Key型と、基質が無いときには活性部位が不活性なランダムな状態にあり、基質が来るとこれを取り込むために活性部位が活性な状態に変化するInduced−Fit(誘導結合)型がある。誘導適合型とは、リガンドと結合する際にリガンド結合部位の立体構造が変化しリガンドを取り込むことが可能になる受容体をいう。
タンパク質の立体構造を用いたリガンド分子探索のための計算化学的手法としては、まず、AutoDocK(非特許文献1)、DOCK(非特許文献2)、FlexX(非特許文献3)、GOLD(非特許文献4)、ADAM&EVE(非特許文献5)といった3次元化合物データベースサーチ(Virtual Screening)が知られている。これらは高速ドッキング・スタディーとも呼ばれ、大規模な化合物ライブラリ・サーチが可能である。しかし、本手法では評価に粗い近似を用いるため、結合配座や結合エネルギーの予測能は低い。さらにタンパク質とリガンドとの結合に大変重要な「誘導結合」に対応する計算式パラメータを充分に取り込んでいないので、たとえあったとしても、乱数を発生させ受容体の側鎖を動かす程度であり、計算結果の精度は充分なものとはいえない。
タンパク質とリガンドとの結合に重要な「誘導結合」をシミュレーションする方法としては、MD(分子動力学計算)やMM(分子力学計算)、MC(モンテカルロ法)が知られている。これらの方法は比較的精度良く、結合配座や結合エネルギーの予測が可能である。ここで、分子動力学法(MD)と呼ばれる手法に関しては、ある分子を構成する各原子において、古典力学に基づく運動方程式を逐次的に解くことにより、その分子の動的構造を計算する方法であり、タンパク質の動的挙動を高精度でシミュレーションすることが可能である。しかし、計算に時間を要するため、多数の分子を扱うことは困難であり必ずしも有用な手法とはなっていない。さらに、従来法では該当タンパク質に対して分子動力学計算を行うと、タンパク質立体構造はX線やNMR等で解析された座標から大きくズレる。こうしたズレはタンパク質の動的挙動の物理化学的描写を含んでいるが、NMR等で示される動的挙動の実験的な結果と矛盾する挙動となる場合があり、必ずしも精度の高いシミュレーションとならないことが多い。
このように、従来のin silico screening関連では、タンパク質とリガンドとの結合に大変重要な「誘導結合」に対応する計算式パラメータを充分に取り込んでいないので、計算結果の精度は充分なものとはいえない。
一方、分子シミュレーションでは、上記の誘導結合を表現し解析することは可能であるが、高精度の結果を得るためには相当の時間を必要とする。多くの結果は、初期構造座標に依存してしまう。
Morris, G. M. Goodsell, D. S. Halliday, R. S. Huey, R. Hart, W. E. Belew, R. K. Olson, A. J. (1998) Automated docking using a Lamarckian genetic algorithm and an empirical binding free energy function. J. Comput. Chem. 19: 1639−1662; Goodsell, D. S. Morris, G. M. Olson, A. J. (1996) Automated docking of flexible ligands: applications of AutoDock. J. Mol. Recognit. 9: 1−5 Ewing, T. J. Makino, S. Skillman, A. G. Kuntz I. D. (2001) DOCK 4.0: search strategies for automated molecular docking of flexible molecule databases. J. Comput. Aided Mol. Des. 15: 411−28 Rarey, M, Kramer, B, Lengauer, T, Klebe, G. (1996) A fast flexible docking method using an incremental construction algorithm. J. Mol. Biol. 261: 470−89; Rarey, M. Wefing, S. Lengauer, T. (1996) Placement of medium−sized molecular fragments into active sites of proteins. J. Comput. Aided Mol. Des. 10: 41−54 Jones, G. Willett, P. Glen, R. C. (1995) Molecular recognition of receptor sites using a genetic algorithm with a description of desolvation. J. Mol. Biol. 245: 43−53; Jones, G. Willett, P. Glen, R. C. Leach, A. R. Taylor, R. (1997) Development and validation of a genetic algorithm for flexible docking. J. Mol. Biol. 267: 727−48 Mizutani, M. Y. Itai, A. (2004) Efficient method for high−throughput virtual screening based on flexible docking: discovery of novel acetylcholinesterase inhibitors. J. Med. Chem. 47: 4818−4828
本発明者等は、任意のタンパク質の立体構造が与えられたとき、該当タンパク質に結合するリガンドを探索する方法について検討した。上述したように、現在流通している受容体・リガンド結合解析ソフトには、リガンドのフレキシビリティを考慮しているものはあるが、受容体側のフレキシビリティを考慮しているものはほとんどない。また、たとえあったとしても、乱数を発生させ受容体の側鎖を動かす程度であり、Lock&Key型の受容体に対応しているものばかりであった。そこで、Induced−Fit型の受容体を対象にした受容体・リガンド結合解析ソフトを開発することにした。
本発明が解決しようとする課題は、農薬や医薬品等の開発に特に重要な鍵となる、該当タンパク質に結合するリガンドを、従来法に比べてはるかに効率的に精度よく探索するリガンド探索装置、リガンド探索方法、プログラム、および記録媒体を提供することである。また、リガンド分子の多様な改変や受容体等のタンパク質の改変を迅速かつ効率的に行うリガンド探索装置、リガンド探索方法、プログラム、および記録媒体を提供することである。さらに、本発明により、リガンド−タンパク質間の相互作用様式を解明し、それら相互作用の認識機構を明確化することで、疾病の原因を特定したり、関連する薬物の開発を促進したりすること等を目的とする。
本発明者等は、任意のタンパク質立体構造が与えられたとき、該当タンパク質に結合するリガンドを探索する方法について検討を重ねた結果、下記のリガンド探索装置、リガンド探索方法、コンピュータプログラム、および記録媒体を開発した。
ここで、分子動力学法(MD)と呼ばれる手法があり、これはある分子を構成する各原子において、古典力学に基づく運動方程式を逐次的に解くことにより、その分子の動的構造を計算する方法である。つまり、これはある分子を構成する各原子における古典力学を土台とした動的挙動を計算する方法である。従って、この手法をうまく取り込むことができれば、リガンドを取り込んでいない状態のInduced−Fit型受容体を初期状態に選んでも、受容体・リガンド結合を再現できると考えた。MD計算は古典力学を土台にしているため、各原子にある程度の拘束をかける必要がある。そこで、まず初めに受容体の基準振動解析を行い受容体の主鎖二面角揺らぎを計算し、この主鎖二面角揺らぎに基づいて各原子に拘束をかけてMDを計算する手法を開発した。具体的には、基準振動解析計算をまず行い、定常状態の主鎖二面角の揺らぎを計算する。そして、その揺らぎを基にした拘束を各原子にかけながら分子動力学計算を行うことで、受容体の動的構造をより精度良く予測する。また、分子動力学計算より得た動的構造及び相互作用関数を用いることで、誘導適合型受容体にも応用できる受容体/リガンド結合を精度良く予測する。つまり、本発明は、より真に近い受容体/リガンド結合を精度良く予測する。従って、本発明は、医農薬分子の設計に極めて有用である。
このような目的を達成するために、本発明にかかる請求項1に記載のリガンド探索装置は、単数または複数鎖のタンパク質の座標データが与えられた場合に、当該タンパク質と結合するリガンドを探索するリガンド探索装置において、上記タンパク質の座標データに対して、誘導適合を反映した誘導適合パラメータを用いて動的挙動を考慮した構造変化を行い、構造変化後タンパク質座標データを選択する構造変化後タンパク質座標データ選択手段と、上記構造変化後タンパク質座標データ選択手段にて選択された上記構造変化後タンパク質座標データから、上記リガンドと重ね合わせを行う空間点を指定する空間点指定手段と、上記空間点指定手段にて指定された上記空間点と、上記リガンドのリガンド座標データとを用いて、上記タンパク質と上記リガンドとが結合した場合の相互作用関数を計算する相互作用関数計算手段と、上記相互作用関数計算手段により計算された上記相互作用関数に基づいて当該タンパク質と結合する上記リガンドを評価するリガンド評価手段と、を備えたことを特徴とする。
また、本発明にかかる請求項2に記載のリガンド探索装置は、請求項1に記載のリガンド探索装置において、上記相互作用関数計算手段は、以下の数式1に示すSscore(i,j)を用いて上記相互作用関数を計算することを特徴とする。
Figure 2006252485
・・・(数式1)
(ここで、dij sは該当タンパク質中のi番目とj番目の空間点距離である。また、dij Cは化合物中のi番目とj番目の原子間距離である。また、αは、該当タンパク質中の空間点群と化合物が完全に重なりあった場合にSscore(i,j)を最大値とするための定数である。また、βは重なりと定義できる限界値を与えるための定数である。)
また、本発明にかかる請求項3に記載のリガンド探索装置は、請求項1または2に記載のリガンド探索装置において、上記相互作用関数計算手段は、上記相互作用関数のスコアが最大になるように最適化する相互作用関数最適化手段、をさらに備えたことを特徴とする。
また、本発明にかかる請求項4に記載のリガンド探索装置は、請求項3に記載のリガンド探索装置において、上記相互作用関数計算手段は、上記相互作用関数最適化手段により上記相互作用関数を最適化した後に、重ねあわせた上記リガンドに対して、上記タンパク質との相互作用エネルギーを計算し、当該相互作用エネルギーについてリガンド立体構造データのコンフォメーションを微調整しながら最適化する相互作用エネルギー最適化手段、をさらに備えたことを特徴とする。
また、本発明にかかる請求項5に記載のリガンド探索装置は、請求項4に記載のリガンド探索装置において、上記リガンド評価手段は、上記相互作用エネルギー最適化手段により最適化した後に、上記リガンド立体構造データのコンフォメーションを大きく変動させた後、再度、上記相互作用関数計算手段を実行し、上記相互作用関数計算手段により計算された上記相互作用関数に基づいて当該タンパク質と結合する上記リガンドの再評価を行う再評価手段、をさらに備えたことを特徴とする。
また、本発明にかかる請求項6に記載のリガンド探索装置は、請求項1から5のいずれか1つに記載のリガンド探索装置において、上記構造変化後タンパク質座標データ選択手段は、上記誘導適合パラメータおよび/または上記構造変化後タンパク質座標データを算出するときに、上記タンパク質座標データに対し基準振動計算を行い、各アミノ酸のゆらぎの大きさを求め、当該ゆらぎの大きさを拘束条件として、分子動力学計算を行うこと、を特徴とする。
また、本発明にかかる請求項7に記載のリガンド探索装置は、請求項6に記載のリガンド探索装置において、上記構造変化後タンパク質座標データ選択手段は、基準振動計算より主鎖原子の2面角のゆらぎの値を算出し、当該ゆらぎ値を以下の数式2または数式3に示す分子動力学計算における力の定数Kとすることにより、分子動力学計算を行うこと、を特徴とする。

Erot=Krot(φ―φ0)2 ・・・(数式2)

(Erotはタンパク質の立体構造中において主鎖原子の2面角のエネルギーを示す。φは主鎖原子の2面角である。φ0は主鎖原子の2面角の標準値である。ここで、Krotの値が大きい場合は、φはφ0に拘束される。)

Epos=Kpos(r−r0)2 ・・・(数式3)

(Eposはタンパク質の立体構造中において主鎖原子の位置のエネルギーを示す。rは主鎖原子の座標である。r0は主鎖原子の座標の標準値である。ここで、Kposの値が大きい場合は、rはr0に拘束される。)
また、本発明にかかる請求項8に記載のリガンド探索装置は、請求項1から7のいずれか1つに記載のリガンド探索装置において、上記相互作用関数計算手段は、上記相互作用関数として、相互作用エネルギー関数にタンパク質の動的性質を表現する動的性質関数を「弾性エネルギー」として加えて用いること、を特徴とする。
また、本発明にかかる請求項9に記載のリガンド探索装置は、請求項8に記載のリガンド探索装置において、上記相互作用関数計算手段は、「弾性エネルギー」として、タンパク質の局所的な柔らかさを考慮し、以下の数式4に示す関数「U衝突」を適応すること、を特徴とする。
Figure 2006252485
ψ(i,j)=K衝突 * (R衝突(i,j)−R)2
・・・(数式4)
(Mは衝突を不許可とする活性部位の原子の数であり、Nはリガンドの原子の数である。活性部位における動的挙動の少ない側鎖原子及び主鎖原子のみのi番目の原子とリガンドのj番目の原子との原子間距離Rが衝突距離「R衝突(i,j)」以内のとき、ψ(i,j)を計算するように定義する。)
また、本発明にかかる請求項10に記載のリガンド探索装置は、請求項1から7のいずれか1つに記載のリガンド探索装置において、上記相互作用関数計算手段は、上記相互作用関数として、相互作用エネルギー関数に、当該タンパク質の基準振動解析結果または二次構造判定結果をタンパク質の動的性質を表現する動的性質関数として加えて用いること、を特徴とする。
また、本発明はリガンド探索方法に関するものであり、本発明にかかる請求項11に記載のリガンド探索方法は、単数または複数鎖のタンパク質の座標データが与えられた場合に、当該タンパク質と結合するリガンドを探索するリガンド探索方法において、上記タンパク質の座標データに対して、誘導適合を反映した誘導適合パラメータを用いて動的挙動を考慮した構造変化を行い、構造変化後タンパク質座標データを選択する構造変化後タンパク質座標データ選択ステップと、上記構造変化後タンパク質座標データ選択ステップにて選択された上記構造変化後タンパク質座標データから、上記リガンドと重ね合わせを行う空間点を指定する空間点指定ステップと、上記空間点指定ステップにて指定された上記空間点と、上記リガンドのリガンド座標データとを用いて、上記タンパク質と上記リガンドとが結合した場合の相互作用関数を計算する相互作用関数計算ステップと、上記相互作用関数計算ステップにより計算された上記相互作用関数に基づいて当該タンパク質と結合する上記リガンドを評価するリガンド評価ステップと、を含むことを特徴とする。
また、本発明にかかる請求項12に記載のリガンド探索方法は、請求項11に記載のリガンド探索方法において、上記相互作用関数計算ステップは、以下の数式1に示すSscore(i,j)を用いて上記相互作用関数を計算することを特徴とする。
Figure 2006252485
・・・(数式1)
(ここで、dij sは該当タンパク質中のi番目とj番目の空間点距離である。また、dij Cは化合物中のi番目とj番目の原子間距離である。また、αは、該当タンパク質中の空間点群と化合物が完全に重なりあった場合にSscore(i,j)を最大値とするための定数である。また、βは重なりと定義できる限界値を与えるための定数である。)
また、本発明にかかる請求項13に記載のリガンド探索方法は、請求項11または12に記載のリガンド探索方法において、上記相互作用関数計算ステップは、上記相互作用関数のスコアが最大になるように最適化する相互作用関数最適化ステップ、をさらに含むことを特徴とする。
また、本発明にかかる請求項14に記載のリガンド探索方法は、請求項13に記載のリガンド探索方法において、上記相互作用関数計算ステップは、上記相互作用関数最適化ステップにより上記相互作用関数を最適化した後に、重ねあわせた上記リガンドに対して、上記タンパク質との相互作用エネルギーを計算し、当該相互作用エネルギーについてリガンド立体構造データのコンフォメーションを微調整しながら最適化する相互作用エネルギー最適化ステップ、をさらに含むことを特徴とする。
また、本発明にかかる請求項15に記載のリガンド探索方法は、請求項14に記載のリガンド探索方法において、上記リガンド評価ステップは、上記相互作用エネルギー最適化ステップにより最適化した後に、上記リガンド立体構造データのコンフォメーションを大きく変動させた後、再度、上記相互作用関数計算ステップを実行し、上記相互作用関数計算ステップにより計算された上記相互作用関数に基づいて当該タンパク質と結合する上記リガンドの再評価を行う再評価ステップ、をさらに含むことを特徴とする。
また、本発明にかかる請求項16に記載のリガンド探索方法は、請求項11から15のいずれか1つに記載のリガンド探索方法において、上記構造変化後タンパク質座標データ選択ステップは、上記誘導適合パラメータおよび/または上記構造変化後タンパク質座標データを算出するときに、上記タンパク質座標データに対し基準振動計算を行い、各アミノ酸のゆらぎの大きさを求め、当該ゆらぎの大きさを拘束条件として、分子動力学計算を行うこと、を特徴とする。
また、本発明にかかる請求項17に記載のリガンド探索方法は、請求項16に記載のリガンド探索方法において、上記構造変化後タンパク質座標データ選択ステップは、基準振動計算より主鎖原子の2面角のゆらぎの値を算出し、当該ゆらぎ値を以下の数式2または数式3に示す分子動力学計算における力の定数Kとすることにより、分子動力学計算を行うこと、を特徴とする。

Erot=Krot(φ―φ0)2 ・・・(数式2)

(Erotはタンパク質の立体構造中において主鎖原子の2面角のエネルギーを示す。φは主鎖原子の2面角である。φ0は主鎖原子の2面角の標準値である。ここで、Krotの値が大きい場合は、φはφ0に拘束される。)

Epos=Kpos(r−r0)2 ・・・(数式3)

(Eposはタンパク質の立体構造中において主鎖原子の位置のエネルギーを示す。rは主鎖原子の座標である。r0は主鎖原子の座標の標準値である。ここで、Kposの値が大きい場合は、rはr0に拘束される。)
また、本発明にかかる請求項18に記載のリガンド探索方法は、請求項11から17のいずれか1つに記載のリガンド探索方法において、上記相互作用関数計算ステップは、上記相互作用関数として、相互作用エネルギー関数にタンパク質の動的性質を表現する動的性質関数を「弾性エネルギー」として加えて用いること、を特徴とする。
また、本発明にかかる請求項19に記載のリガンド探索方法は、請求項18に記載のリガンド探索方法において、上記相互作用関数計算ステップは、「弾性エネルギー」として、タンパク質の局所的な柔らかさを考慮し、以下の数式4に示す関数「U衝突」を適応すること、を特徴とする。
Figure 2006252485
ψ(i,j)=K衝突 * (R衝突(i,j)−R)2
・・・(数式4)
(Mは衝突を不許可とする活性部位の原子の数であり、Nはリガンドの原子の数である。活性部位における動的挙動の少ない側鎖原子及び主鎖原子のみのi番目の原子とリガンドのj番目の原子との原子間距離Rが衝突距離「R衝突(i,j)」以内のとき、ψ(i,j)を計算するように定義する。)
また、本発明にかかる請求項20に記載のリガンド探索方法は、請求項11から17のいずれか1つに記載のリガンド探索方法において、上記相互作用関数計算ステップは、上記相互作用関数として、相互作用エネルギー関数に、当該タンパク質の基準振動解析結果または二次構造判定結果をタンパク質の動的性質を表現する動的性質関数として加えて用いること、を特徴とする。
また、本発明はプログラムに関するものであり、本発明にかかる請求項21に記載のリガンド探索方法をコンピュータに実行させることを特徴とするプログラムは、単数または複数鎖のタンパク質の座標データが与えられた場合に、当該タンパク質と結合するリガンドを探索するリガンド探索方法をコンピュータに実行させるプログラムにおいて、上記タンパク質の座標データに対して、誘導適合を反映した誘導適合パラメータを用いて動的挙動を考慮した構造変化を行い、構造変化後タンパク質座標データを選択する構造変化後タンパク質座標データ選択ステップと、上記構造変化後タンパク質座標データ選択ステップにて選択された上記構造変化後タンパク質座標データから、上記リガンドと重ね合わせを行う空間点を指定する空間点指定ステップと、上記空間点指定ステップにて指定された上記空間点と、上記リガンドのリガンド座標データとを用いて、上記タンパク質と上記リガンドとが結合した場合の相互作用関数を計算する相互作用関数計算ステップと、上記相互作用関数計算ステップにより計算された上記相互作用関数に基づいて当該タンパク質と結合する上記リガンドを評価するリガンド評価ステップと、を含むことを特徴とする。
また、本発明にかかる請求項22に記載のプログラムは、請求項21に記載のプログラムにおいて、上記相互作用関数計算ステップは、以下の数式1に示すSscore(i,j)を用いて上記相互作用関数を計算することを特徴とする。
Figure 2006252485
・・・(数式1)
(ここで、dij sは該当タンパク質中のi番目とj番目の空間点距離である。また、dij Cは化合物中のi番目とj番目の原子間距離である。また、αは、該当タンパク質中の空間点群と化合物が完全に重なりあった場合にSscore(i,j)を最大値とするための定数である。また、βは重なりと定義できる限界値を与えるための定数である。)
また、本発明にかかる請求項23に記載のプログラムは、請求項21または22に記載のプログラムにおいて、上記相互作用関数計算ステップは、上記相互作用関数のスコアが最大になるように最適化する相互作用関数最適化ステップ、をさらに含むことを特徴とする。
また、本発明にかかる請求項24に記載のプログラムは、請求項23に記載のプログラムにおいて、上記相互作用関数計算ステップは、上記相互作用関数最適化ステップにより上記相互作用関数を最適化した後に、重ねあわせた上記リガンドに対して、上記タンパク質との相互作用エネルギーを計算し、当該相互作用エネルギーについてリガンド立体構造データのコンフォメーションを微調整しながら最適化する相互作用エネルギー最適化ステップ、をさらに含むことを特徴とする。
また、本発明にかかる請求項25に記載のプログラムは、請求項24に記載のプログラムにおいて、上記リガンド評価ステップは、上記相互作用エネルギー最適化ステップにより最適化した後に、上記リガンド立体構造データのコンフォメーションを大きく変動させた後、再度、上記相互作用関数計算ステップを実行し、上記相互作用関数計算ステップにより計算された上記相互作用関数に基づいて当該タンパク質と結合する上記リガンドの再評価を行う再評価ステップ、をさらに含むことを特徴とする。
また、本発明にかかる請求項26に記載のプログラムは、請求項21から25のいずれか1つに記載のプログラムにおいて、上記構造変化後タンパク質座標データ選択ステップは、上記誘導適合パラメータおよび/または上記構造変化後タンパク質座標データを算出するときに、上記タンパク質座標データに対し基準振動計算を行い、各アミノ酸のゆらぎの大きさを求め、当該ゆらぎの大きさを拘束条件として、分子動力学計算を行うこと、を特徴とする。
また、本発明にかかる請求項27に記載のプログラムは、請求項26に記載のプログラムにおいて、上記構造変化後タンパク質座標データ選択ステップは、基準振動計算より主鎖原子の2面角のゆらぎの値を算出し、当該ゆらぎ値を以下の数式2または数式3に示す分子動力学計算における力の定数Kとすることにより、分子動力学計算を行うこと、を特徴とする。

Erot=Krot(φ―φ0)2 ・・・(数式2)

(Erotはタンパク質の立体構造中において主鎖原子の2面角のエネルギーを示す。φは主鎖原子の2面角である。φ0は主鎖原子の2面角の標準値である。ここで、Krotの値が大きい場合は、φはφ0に拘束される。)

Epos=Kpos(r−r0)2 ・・・(数式3)

(Eposはタンパク質の立体構造中において主鎖原子の位置のエネルギーを示す。rは主鎖原子の座標である。r0は主鎖原子の座標の標準値である。ここで、Kposの値が大きい場合は、rはr0に拘束される。)
また、本発明にかかる請求項28に記載のプログラムは、請求項21から27のいずれか1つに記載のプログラムにおいて、上記相互作用関数計算ステップは、上記相互作用関数として、相互作用エネルギー関数にタンパク質の動的性質を表現する動的性質関数を「弾性エネルギー」として加えて用いること、を特徴とする。
また、本発明にかかる請求項29に記載のプログラムは、請求項28に記載のプログラムにおいて、上記相互作用関数計算ステップは、「弾性エネルギー」として、タンパク質の局所的な柔らかさを考慮し、以下の数式4に示す関数「U衝突」を適応すること、を特徴とする。
Figure 2006252485
ψ(i,j)=K衝突 * (R衝突(i,j)−R)2
・・・(数式4)
(Mは衝突を不許可とする活性部位の原子の数であり、Nはリガンドの原子の数である。活性部位における動的挙動の少ない側鎖原子及び主鎖原子のみのi番目の原子とリガンドのj番目の原子との原子間距離Rが衝突距離「R衝突(i,j)」以内のとき、ψ(i,j)を計算するように定義する。)
また、本発明にかかる請求項30に記載のプログラムは、請求項21から27のいずれか1つに記載のプログラムにおいて、上記相互作用関数計算ステップは、上記相互作用関数として、相互作用エネルギー関数に、当該タンパク質の基準振動解析結果または二次構造判定結果をタンパク質の動的性質を表現する動的性質関数として加えて用いること、を特徴とする。
また、本発明は記録媒体に関するものであり、本発明にかかる請求項31に記載の記録媒体は、請求項21から30のいずれか1つに記載されたプログラムを記録したことを特徴とする。
本発明によれば、(1)タンパク質の座標データに対して、誘導適合を反映した誘導適合パラメータを用いて動的挙動を考慮した構造変化を行い、構造変化後タンパク質座標データを選択し、(2)選択された構造変化後タンパク質座標データから、リガンドと重ね合わせを行う空間点を指定し、(3)指定された空間点と、リガンドのリガンド座標データとを用いて、タンパク質とリガンドとが結合した場合の相互作用関数を計算し、(4)計算された相互作用関数に基づいて当該タンパク質と結合するリガンドを評価する。これにより、リガンドのフレキシビリティだけでなく受容体側のフレキシビリティも考慮して、Induced−Fit型の受容体タンパク質に結合するリガンドを効率的に精度よく探索することができるという効果を奏する。
また、本発明によれば、タンパク質とリガンドとの結合に大変重要であるタンパク質の動的挙動を反映したパラメータを取得し、タンパク質の動的挙動を反映したリガンドとの新規な相互作用評価関数を用いて、該当タンパク質の立体構造と結合する新規リガンドを予測することができる。これにより、従来法と比較して、より信頼性の高いかつ医薬品設計等に適したタンパク質の立体構造を、世界中で解析されている大量のゲノム配列に関しても対応するスピードで、構築することができる。従来、in silico スクリーニングにおいては、タンパク質とリガンドとの相互作用に重要な誘導結合を充分に取り扱うことのできるアルゴリズムが見出されていなかったが、本発明では、タンパク質とリガンドとの相互作用エネルギー関数に、基準振動計算結果、もしくは二次構造予測から得られるタンパク質の「ゆらぎ」を表すパラメータを簡易にとりこむ計算式を導入することで、誘導結合を充分に取り扱うことができる。
さらに、分子動力学シミュレーションにおいては、本発明では、該当タンパク質の動的挙動を反映したパラメータとリガンドとの相互作用評価関数に関して、該当タンパク質についての基準振動計算を行い、その計算結果を分子動力学計算に反映させることを特徴とする。従来、タンパク質の動的挙動のシミュレーションを行うためには分子動力学計算を用いていたが、従来法で該当タンパク質に対して分子動力学計算を行うと、タンパク質立体構造はX線やNMR等で解析された座標と大きくズレる。こうしたズレはタンパク質の動的挙動の物理化学的描写を含んでいるが、NMR等で示される動的挙動の実験的な結果と矛盾する挙動となる場合があり、必ずしも精度の高いシミュレーションとならないことが多い。そこで、分子動力学計算を行う際には、タンパク質の立体構造をある程度固定してシミュレーションを行う必要があり、本発明において、分子動力学計算におけるエネルギー関数中で主鎖原子の2面角に拘束をかける手法を開発した。さらに、2面角の拘束条件としては、そのパラメータとして予め該当タンパク質の基準振動計算を行い、主鎖原子の2面角のゆらぎを算出し、そのゆらぎの大きさにより例えばゆらぎの大きい部分は拘束条件を緩め、ゆらぎの小さい部分は拘束条件を強めるパラメータとして用いることとした。よって、本発明によれば、こうした条件でタンパク質の分子動力学シミュレーションを行うことで、精度よく動的挙動を描写することができる。加えて、こうして算出された分子シミュレーションからタンパク質の動的挙動を描写した座標を取得することができ、これを利用することで、さまざまなリガンド結合部位の形状を用いたリガンド探索を行うことができる。
これらの結果、本発明によれば、今までのin silico スクリーニングでは見出すことができなかった新規なリガンドを発見することを可能にするとともに、今までは長時間を必要とする分子シミュレーションでしか解析できなかった「誘導結合」を含めたタンパク質−リガンドとの相互作用解析を短時間で行うことを可能にした。
本発明では、既存ソフトウェアよりも誘導結合現象をより深く考慮した“in silico screening”に対応可能とし、誘導結合現象と疎水相互作用の正しい理解のもと単純化している。本発明は単純化されているので、自動化により多くのターゲットタンパク質を処理可能とする。その結果、例えば100万以上の化合物データベースから、新規で、もっともらしい化合物を探索することができるので、実験では対応できない規模のデータベースから、もっともらしい化合物を現実的な時間内に探索することができる。
また、本発明によれば、タンパク質−リガンドとの相互作用解析を短時間で行うことが可能になるので、例えば代謝、毒性の原因となる数多くのタンパク質と薬物との相互作用解析が可能となり、in silicoでの薬物の代謝、毒性予測を行うことができる。
本発明において、リガンドとして取り扱うことのできる分子は、使用するリガンドの種類や数を限定しないため、蛋白質、ペプチド、DNA、薬剤成分、金属、イオン、糖類、核酸成分、ホルモンを含む全ての物質を当該リガンドと見なすことができる。本発明によって、具体的に農薬、医薬品等の分子設計を行うことができる。
また、リガンドとタンパク質との相互作用エネルギー評価関数には、従来、ドッキング法では静電エネルギー項、van del waals項、さらにはソフトドッキング法等に見られる動的挙動を表現するための調整項が主に用いられているが、本発明においてはタンパク質とリガンドとの相互作用中にはソフトドッキング法等に見られる動的挙動を表現するための調整項を用いる代わりに古典力学で用いられている弾性衝突の理論を適応し、タンパク質とリガンドとの相互作用に関して、その物理化学的性質をより明確にした。このことにより、タンパク質の構造変化と相互作用との関係を得ることができ、リガンドの機能の理解を迅速かつ正確に行うための手助けとなる。
尚、本発明で利用するタンパク質の立体構造は、X線結晶構造解析等により3次元座標が決定されたタンパク質の立体構造以外に、タンパク質の経験的なモデリング法(特にホモロジーモデリング法やスレッディング法など)を利用して作成した立体構造座標も適応することができる。
以下に、本発明にかかるリガンド探索装置、リガンド探索方法、プログラム、および記録媒体の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態により本発明が限定されるものではない。
本明細書において幾つかの用語を使用するが、特に明記しない限り、次の意味を有する。
「標的タンパク質」とは、立体構造の詳細がX線結晶解析やNMR解析、ホモロジーモデリング法により既に決定されており、リガンド探索の対象とするタンパク質を意味する。
「原子座標」とは、三次元空間上で立体構造を記述するものである。それは空間上のある点を原点とする互いに垂直な三方向の相対的な距離であり、タンパク質中に存在する水素原子を除く原子1つあたりに3個の数字からなるベクトル量である。
[本発明の基本原理]
ここでは、本発明の基本原理について、図1を参照して説明する。図1は、本発明の基本原理を示す概念図である。本発明は、単数または複数鎖のタンパク質立体構造が与えられた場合において、当該タンパク質の立体構造から誘導適合を反映したパラメータおよび構造変化した立体構造座標を例えば基準振動計算方法や分子動力学計算方法により予め算出し、当該パラメータおよび構造変化した立体構造座標を用いて該当タンパク質と別の物質(リガンド)が結合した場合の相互作用関数を定義し、当該相互作用関数によって該当タンパク質と結合する物質(リガンド)を評価し、選定するリガンド探索装置、リガンド探索方法、コンピュータプログラム、および記録媒体に関する。
まず、本発明は、化合物データベースからリガンドを1つ選択し、そのリガンドの立体構造データを取得する(ステップS−1)。また、対象となるタンパク質の立体構造データを取得する(ステップS−2)。
つぎに、本発明は、当該タンパクの立体構造データに基づいて、誘導適合を反映する誘導適合パラメータを用いて動的挙動を考慮した構造変化を行い、複数の構造変化後タンパク質座標データを用意し、ランダムに1つの構造変化後タンパク質座標データを選択する(ステップS−3)。
つぎに、本発明は、リガンドと重ね合わせを行う、構造変化後タンパク質座標データ中の空間点を指定する(ステップS−4)。ここで、当該空間点は、例えば、以下に示す(1)や(2)などの方法で指定してもよい。
(1)ダミー原子の発生による空間点の指定(ステップS−4−1)
リガンドとタンパク質との相互作用における水素結合に着目し、タンパク質中の水素結合サイトを空間点として指定する。水素結合における重要事項は距離と角度である。つまり、角度を計算するためには、水素結合ドナー(以後、ドナー)に水素原子が必要になる。
そこで、本発明では、活性部位及びリガンドに水素原子が含まれていない場合、以下の規則によりダミー水素原子を発生させる。
1)sp2軌道原子を中心とする正三角形状にダミー原子を発生させる(図2)。すなわち、図2に示すように、sp2軌道原子の窒素原子(A)を中心とする正三角形の空いている位置にダミー水素原子(B)を発生させる。
2)sp3軌道原子では、水素結合を形成する距離にある場合、水素原子を共有するように回転できると考え、水素結合相互作用を計算するときには距離のみを考慮する。このため、sp3軌道原子にはダミー原子を発生させない。
また、金属及び水では、活性部位・リガンド結合の仲介役となり得るので、相互作用する位置に以下のようにダミー原子を発生させる。
1)鉄のような金属には、正八面体状にダミー原子を発生させる(図3)。すなわち、図3に示すように、亜鉛(A)を中心とする正八面体の空いている位置にダミー原子(B)を発生させる。
2)水には、正四面体状にダミー原子を発生させる。
ただし、活性部位と相互作用している方向にはダミー原子を発生させなくてもよい。
(2)構造活性相関情報を利用した空間点の指定(ステップS−4−2)
また、本発明は、リガンドの構造活性相関(SAR)情報に着目し、以下の(A)〜(D)の項目を入力情報にすることにより、空間点を指定する。
(A)SAR情報から得られた活性部位の原子(以後、「A原子」)。PDB形式に従う。
(B)「A原子」と相互作用するであろうリガンドの原子タイプ(以後、「Bタイプ」)。SYBYLのMOL2形式に従う。
(C)「A原子」と「Bタイプ」との相互作用の強さ(以後、「C強さ」)。
(D)「A原子」と「Bタイプ」との相互作用する距離(以後、「D距離」)(単位はÅ)。
なお、本発明では、上記(A)〜(D)の入力情報に基づいて、タンパク質中の活性部位内におけるリガンドの初期座標を利用し、以下の1)〜4)に示す規則により空間点を作成してもよい。
1)「A原子」がドナーまたは金属及び水の場合(SAR情報の活性部位側の指定が水素結合ドナー、金属原子の場合)には、ステップS−4−1で発生させたダミー原子の方向に対して「A原子」から「D距離」の位置及びその周囲を初期座標に選ぶ(図4、図5)。
2)「A原子」がsp3軌道原子の場合(SAR情報の活性部位側の指定がsp3軌道原子の場合)には、「A原子」から「D距離」の周囲を初期座標に選ぶ(図6)。
3)「A原子」が水素結合アクセプター(以後、アクセプター)の場合(SAR情報の活性部位側の指定が水素結合アクセプターの場合)には、「A原子」の結合延長上「D距離」の位置及びその周囲を初期座標に選ぶ(図7)。
4)その他の場合(SAR情報の活性部位側の指定がその他の原子の場合)には、「A原子」を中心とする半径が「D距離」の球表面上の点を初期座標に選ぶ(図8)。
ここで、上記1)〜4)とは異なり、リガンドの初期座標を直接指定してもよい。
再び図1に戻り、本発明は、ステップS−1において選択したリガンド座標データ中の原子と、ステップS−4で指定したタンパク質座標データ中の空間点とのペアを重複がないようにランダムに選択する(ステップS−5)。
つぎに、本発明は、以下の数式1に示す相互作用関数であるスコアSscore(i,j)を計算する(ステップS−6)。
Figure 2006252485
・・・(数式1)
ここで、dij sは該当タンパク質中のi番目とj番目の空間点距離である。また、dij Cは化合物中のi番目とj番目の原子間距離である。αは、該当タンパク質中の空間点群と化合物が完全に重なりあった場合にSscore(i,j)を最大値とするための定数である。βは重なりと定義できる限界値を与えるための定数である。
また、αは1.5、βは0.8とするのが好ましい。
つぎに、本発明は、ステップS−6により求めた相互作用関数のスコアが最大になるように調整(最適化)する(ステップS−7)。ここで、スコアを最大にする手法としては、例えば、シミュレーティッドアニーリング法が挙げられる。また、時間短縮にはステップS−5およびステップS−6を複数回(例えば10000回)繰り返し、Sscore(i,j)が最大になるペアを探し、そのペア情報をもとにリガンドを初期座標に重ね合わせる方法を適応することが好ましい。
つぎに、本発明は、ステップS−7により相互作用関数を最適化したときに、重ね合わせたリガンドに対して、タンパク質との相互作用エネルギーを計算し、当該相互作用エネルギーについてリガンド座標データのコンフォメーションを微調整しながら最適化する(ステップS−8)。リガンドのコンフォメーションの微調整は、ステップS−7で算出されたリガンド座標を中心に、例えば、並進、回転、または、シングルボンドまわりの角度をRSMDで0.3を越えない程度に座標変化などをさせることで、行ってもよい。
ここで、リガンド座標データのコンフォメーションの微調整は例えばランダムサーチで最適化することが好ましい。なお、ランダムサーチでは、以下の1)〜3)の項目に従って、タンパク質の活性部位とリガンドとの微小変化を例えば8000回行い、最適エネルギー「U最適」が最小になるようにする。
1)回転可能な結合のうち最大で5つを乱数で選び、結合ごとにランダムに±10.0°の範囲内で回転させ、リガンドのコンフォメーションを換える。この過程を例えば3回に一度行う。
2)x、y、z軸方向それぞれにおいて、ランダムに±1.0Åの範囲内でリガンドの並進運動を行う。この過程を例えば2回に一度行う。
3)回転中心座標それぞれにおいて、ランダムに±1.0Åの範囲内で回転中心座標を移動させ、さらに3次元方向の角度それぞれに対して、ランダムに±5.0°の範囲内でリガンドの回転運動を行う。この過程を例えば5回に一度行う。
つぎに、本発明は、リガンド座標データのコンフォメーションを大きく変動して、ステップS−5から再スタートを行い、ステップS−8までを繰り返して最適化を繰り返し行う(ステップS−9)。なお、コンフォメーション改変は、ステップS−7で算出されたリガンド座標を中心に、例えば、並進、回転、または、シングルボンドまわりの角度をRSMDで0.3以上になるよう座標変化などをさせることで、行ってもよい。
ここで、リガンドのコンフォメーションを大きく動かした最適化は、例えばステップS−8で最適化したエネルギー「U最適」でのコンフォメーションに対して、回転可能な結合をランダムに5つ選び、原子タイプごとに決められた回転角度間隔に従ってランダムに回転させる。その後ステップS−5以降の過程を、例えば5000回繰り返し行う。
また、リガンドのコンフォメーションを変化させた後、リガンドの内部エネルギー「U内部」を計算し、その値が500.0以上のときは、その後の計算をスキップし、次のリガンドコンフォメーションを発生させるようにしてもよい。
つぎに、本発明は、ステップS−4〜ステップS−9までの過程を、ステップS−3で用意した複数の構造変化後タンパク質座標データに対して行い、最適なタンパク質とリガンドとの複合体座標、および最適エネルギー「U最適」を算出する(ステップS−10)。
つぎに、本発明は、以上の過程を、ステップS−1で用意した化合物データベース中の全てのリガンドに対して行い、化合物データベース中から該当タンパク質と結合する可能性のあるリガンドを選択する(ステップS−11)。
以上、本発明の基本原理について説明したが、本発明は、タンパク質の誘導適合を反映するパラメータおよび/または構造変化した立体構造座標を分子動力学計算方法を用いて算出する場合、該当タンパク質の立体構造に対し基準振動計算を行い、各アミノ酸のゆらぎの大きさを求め、そのゆらぎの大きさを拘束条件として、分子動力学計算を行うことで、タンパク質の立体構造をエネルギー最適構造より大きく離れないようにして分子動力学計算を行ってもよい。
また、本発明において、本分子動力学計算方法による分子動力学計算は、例えば、基準振動計算より主鎖原子の2面角のゆらぎの値を算出し、当該ゆらぎ値を以下の数式2または数式3のように分子動力学計算における力の定数Kの部分に入れてもよい。

Erot=Krot(φ―φ0)2 ・・・(数式2)

Erotはタンパク質の立体構造中において主鎖原子の2面角のエネルギーを示す。φは主鎖原子の2面角である。φ0は主鎖原子の2面角の標準値である。ここで、Krotの値が大きい場合は、φはφ0に拘束される。

Epos=Kpos(r−r0)2 ・・・(数式3)

Eposはタンパク質の立体構造中において主鎖原子の位置のエネルギーを示す。rは主鎖原子の座標である。r0は主鎖原子の座標の標準値である。ここで、Kposの値が大きい場合は、rはr0に拘束される。
また、本発明は、リガンドとタンパク質との相互作用を評価する際の目的関数(相互作用関数)として、従来の相互作用エネルギー関数に、タンパク質の動的性質を表現する動的性質関数を「弾性エネルギー」として加えてもよい。これにより、タンパク質の立体構造座標から相互作用エネルギーを高速に算出するとともに、タンパク質の動的挙動に関する物理化学的性質を明確に描写することができる。
ここで、「弾性エネルギー」として、タンパク質の局所的な柔らかさを考慮し、以下の数式4に示す関数「U衝突」を適応してもよい。なお、以下の例においては、活性部位における動的挙動の少ない側鎖原子及び主鎖原子のみのi番目の原子とリガンドのj番目の原子との原子間距離Rが衝突距離「R衝突(i,j)」以内のとき、ψ(i,j)を計算するように定義する。
Figure 2006252485
ψ(i,j)=K衝突 * (R衝突(i,j)−R)2
・・・(数式4)
Mは衝突を不許可とする活性部位の原子の数であり、Nはリガンドの原子の数である。また、「K衝突」は1000.0であることが好ましい。「R衝突(i,j)」は、活性部位のi番目の原子とリガンドのj番目の原子それぞれのVan der Waals半径の和とする。
ここで、活性部位の各原子に対し、衝突を許す重み付けw(i)が定義された場合、以下の数式5に示す関数「U衝突」を用いる。ただし、w(i)は0〜1の範囲の実数とする。
Figure 2006252485
ψ(i,j)=w(i) * K衝突 * (R衝突(i,j)−R)2
・・・(数式5)
Mは活性部位の原子の数であり、Nはリガンドの原子の数である。また、「K衝突」は1000.0であることが好ましい。「R衝突(i,j)」は、活性部位のi番目の原子とリガンドのj番目の原子それぞれのVan der Waals半径の和とする。
また、「弾性エネルギー」として、以下の数式6に示す関数を用いて定義することも可能である。

Ev=w(hard shape region)、
E=0(soft shape region)
・・・(数式6)
ここで、「hard shape region」は、タンパク質の立体構造中、動的挙動の小さい部分のことを指し、「soft shape region」は、動的挙動の大きい部分のことを指す。また、Wは定数で100であることが好ましい。
また、本発明は、タンパク質の動的性質関数としてタンパク質の基準振動解析結果または二次構造判定結果を用いてもよい。なお、二次構造判定においては、タンパク質のへリックスやシート部分では揺らぎは小さいと考え、それ以外では揺らぎは大きいと考え、相互作用の評価関数、分子動力学計算の拘束条件に適応する。
また、本発明によれば、計算された該当タンパク質(タンパク質座標データ)が代表的な複数の立体構造座標である場合や、該当タンパク質の立体構造が例えば核磁気共鳴スペクトルの解析結果のような複数の立体構造座標である場合についても、該当タンパク質と結合するリガンドの探索について、複数座標すべてを全自動的にかつ短時間で同等に評価することができる。
[システム構成]
ここでは、本発明が適用される本システムの構成について、図116を参照して詳細に説明する。図116は、本発明が適用される本システムの構成の一例を示すブロック図であり、該構成のうち本発明に関係する部分のみを概念的に示している。
図116に示すように、本システムは、概略的に、タンパク質と結合する物質(リガンド)を評価し、選定するリガンド探索装置100と、リガンド立体構造データやタンパク質立体構造データなどに関する外部データベースや各種の外部プログラムなどを提供する外部システム200とを、ネットワーク300を介して通信可能に接続して構成されている。
ネットワーク300は、リガンド探索装置100と外部システム200とを相互に接続する機能を有し、例えばインターネットやLANなどである。
外部システム200は、ネットワーク300を介して、リガンド探索装置100と相互に接続され、利用者に対してリガンド立体構造データやタンパク質立体構造データなどに関する外部データベースや各種の外部プログラムを実行するウェブサイトを提供する機能を有する。ここで、外部システム200は、WEBサーバやASPサーバ等として構成してもよく、そのハードウェア構成は、一般に市販されるワークステーション、パーソナルコンピュータ等の情報処理装置およびその付属装置により構成してもよい。また、外部システム200の各機能は、外部システム200のハードウェア構成中のCPU、ディスク装置、メモリ装置、入力装置、出力装置、通信制御装置等、およびそれらを制御するプログラム等により実現される。
リガンド探索装置100は、概略的に、リガンド探索装置100の全体を統括的に制御するCPU等の制御部102と、通信回線等に接続されるルータ等の通信装置(図示せず)に接続される通信制御インターフェース部104と、各種のデータベースやファイルなどを格納する記憶部106と、入力装置112や出力装置114に接続される入出力制御インターフェース部108と、を備えて構成されており、これら各部は任意の通信路を介して通信可能に接続されている。さらに、リガンド探索装置100は、ルータ等の通信装置および専用線等の有線または無線の通信回線を介して、ネットワーク300に通信可能に接続されている。
記憶部106に格納される各種のデータベースやテーブルやファイル(リガンド座標データベース106a〜リガンド評価結果ファイル106f)は、固定ディスク装置等のストレージ手段であり、各種処理に用いる各種のプログラムやテーブルやファイルやデータベースやウェブページ用ファイルなどを格納する。
これら記憶部106の各構成要素のうち、リガンド座標データベース106aは、リガンド座標データを格納するリガンド座標データ格納手段である。タンパク質座標データベース106bは、タンパク質座標データを格納するタンパク質座標データ格納手段である。構造変化後タンパク質座標データファイル106cは、後述する構造変化後タンパク質座標データ選択部102aにより選択された構造変化後タンパク質座標データを格納する構造変化後タンパク質座標データ格納手段である。指定空間点ファイル106dは、後述する空間点指定部102bにより指定された空間点に関する情報を格納する指定空間点格納手段である。相互作用関数計算結果ファイル106eは、後述する相互作用関数計算部102cにより計算された相互作用関数の計算結果に関する情報を格納する相互作用関数計算結果格納手段である。リガンド評価結果ファイル106fは、後述するリガンド評価部102dにより評価されたリガンドの評価結果に関する情報を格納するリガンド評価結果格納手段である。
通信制御インターフェース部104は、リガンド探索装置100とネットワーク300(またはルータ等の通信装置)との間における通信制御を行う。すなわち、通信制御インターフェース部104は、他の端末と通信回線を介してデータを通信する機能を有する。
入出力制御インターフェース部108は、入力装置112や出力装置114の制御を行う。ここで、出力装置114としては、モニタ(家庭用テレビを含む)の他、スピーカ等を用いることができる(なお、以下においては出力装置114をモニタとして記載する場合がある。)。また、入力装置112としては、キーボードやマウス、マイクなどを用いることができる。また、モニタも、マウスと協働してポインティングデバイス機能を実現する。
制御部102は、OS(Operating System)等の制御プログラム、および所要データを格納するための内部メモリを有し、これらのプログラム等により種種の処理を実行するための情報処理を行う。制御部102は、機能概念的に、構造変化後タンパク質座標データ選択部102aと、空間点指定部102bと、相互作用関数計算部102cと、リガンド評価部102dと、を含んで構成されている。
これら制御部102の各構成要素のうち、構造変化後タンパク質座標データ選択部102aは、タンパク質の座標データに対して、誘導適合を反映した誘導適合パラメータを用いて動的挙動を考慮した構造変化を行い、構造変化後タンパク質座標データを選択する構造変化後タンパク質座標データ選択手段である。空間点指定部102bは、構造変化後タンパク質座標データ選択部102aにより選択された構造変化後タンパク質座標データから、リガンドと重ね合わせを行う空間点を指定する空間点指定手段である。
相互作用関数計算部102cは、空間点指定部102bにより指定された空間点とリガンドのリガンド座標データとを用いて、タンパク質とリガンドとが結合した場合の相互作用関数を計算する相互作用関数計算手段である。ここで、相互作用関数計算部102cは、図117に示すように、相互作用関数最適化部102c1と、相互作用エネルギー最適化部102c2と、をさらに含んで構成されている。相互作用関数最適化部102c1は、相互作用関数のスコアが最大になるように最適化する相互作用関数最適化手段である。相互作用エネルギー最適化部102c2は、相互作用関数最適化部102c1により相互作用関数を最適化した後に、重ねあわせたリガンドに対してタンパク質との相互作用エネルギーを計算し、当該相互作用エネルギーについてリガンド立体構造データのコンフォメーションを微調整しながら最適化する相互作用エネルギー最適化手段である。
再び図116に戻り、リガンド評価部102dは、相互作用関数計算部102cにより計算された相互作用関数に基づいて当該タンパク質と結合するリガンドを評価するリガンド評価手段である。ここで、リガンド評価部102dは、図118に示すように、再評価部102d1をさらに含んで構成されている。再評価部102d1は、相互作用エネルギー最適化部102c2により最適化した後に、リガンド立体構造データのコンフォメーションを大きく変動させた後、再度、相互作用関数計算部102cを実行し、相互作用関数計算部102cにより計算された相互作用関数に基づいて当該タンパク質と結合するリガンドの再評価を行う再評価手段である。
なお、これら各部によって行われる処理の詳細については、後述する。
[システムの処理]
ここでは、上述のように構成された本実施の形態における本システムのメイン処理の一例について、図115などを参照して詳細に説明する。図115は、本実施形態における本システムのメイン処理の一例を示すフローチャートである。ここでは、図115を参照して、タンパク質立体構造と誘導適合を利用したリガンドの探索に関して説明する。
まず、リガンド探索装置100は、制御部102の処理により、3次元座標を含むリガンドのデータベースを用意し、用意したデータベースを記憶部106のリガンド座標データベース106aに格納する(ステップS0)。ここで、リガンドのデータベースとしては、例えば、ACD等のような市販化合物データベースや、化合物を描いて収集した仮想化合物データなどを用いてもよい。なお、リガンドのデータベースは、分子力学法等を用いて3次元化することが望ましい。
つぎに、リガンド探索装置100は、制御部102の処理により、ステップS0で用意したリガンドデータベースから、特定リガンドを探索するための標的タンパク質の立体構造を選択し、当該選択したタンパク質の立体構造データ(3次元座標)を入手し、記憶部106のタンパク質座標データベース106bに格納する(ステップS10)。なお、3次元座標には、公共データベースであるPDBやホモロジーモデリング法等で作成した立体構造座標を用いることが望ましい。
つぎに、リガンド探索装置100は、構造変化後タンパク質座標データ選択部102aの処理により、ステップS10により選択された標的タンパク質の基準振動計算を行い、主鎖原子の位置のゆらぎと2面角のゆらぎを求める(ステップS20)。具体的には、まず、ステップS10で定められた標的タンパク質の動的挙動を表すパラメータを基準振動解析法による計算結果のデータベースから取得する、もしくは当該パラメータを二次構造判定計算を行って取得する。
まず、ステップS20において、タンパク質の動的挙動を表すパラメータを基準振動解析法により取得する方法について説明する。基準振動解析法とは、ポテンシャルエネルギーを変位の二次関数として近似し、運動方程式を厳密に解き、最適化構造の周りの微小な振動を解析する方法である。解くべき運動方程式は下記の式(1)または式(2)である。なお、基準振動解析法の詳細については、「Wilson,E.B.,Decius,J.C.,and Cross,P. C. 1955. Molecular Vibration. McGraw−Hill.」に記載されている。
Figure 2006252485
・・・(1)
Figure 2006252485
・・・(2)
Figure 2006252485
ここで、ωkは固有値、Uikは固有ベクトルであり、δijはクロネッカーのデルタである。また、TijとVijはそれぞれ、運動エネルギーEkとポテンシャルエネルギーVに関係し、下記の式(3)および式(4)の通りである。
Figure 2006252485
・・・(3)
Figure 2006252485
・・・(4)
ここで、qiは振動の自由度に対応した座標である。また、qi’(式(
3)における「qiドット」を意味する)はqiの時間による微分である。また、qjは、下記の式(5)の通りである。
Figure 2006252485
・・・(5)
ここで、Ajkは、集団運動Qkと個々の原子運動qjとを結ぶ係数である。また、qj 0は最適化座標である。ただし、Qkは、下記の式に示す基準振動である。
Figure 2006252485
ここで、αkとδkは初期条件で定められる。
つぎに、ステップS20において、参照タンパク質に対して、上記で得られた固有値および固有ベクトルを用いて、ある温度・ある固有値での各Cα原子の位置ゆらぎを計算し、このゆらぎの値をCαが含まれるアミノ酸のゆらぎの値とする。また、目的タンパク質の各アミノ酸のゆらぎの値は、ステップS50におけるアライメントを利用して、目的配列と参照配列の比較から対応するアミノ酸残基ペアにおいて、目的タンパク質のゆらぎの値として参照タンパク質と同一のものを当てはめておく。なお、ゆらぎの値を求められなかったものについては、予め設定した値をあてはめる。こうして得た目的タンパク質の各アミノ酸のゆらぎの値を目的タンパク質の動的な挙動を表すパラメータとする。
また、ステップS20において、タンパク質の動的挙動を表すパラメータを二次構造判定計算を行って取得する方法について説明する。二次構造判定はタンパク質の立体構造座標から計算される。なお、ソフトウェアとしては、DSSP、STRIDE等が好ましいが、基本的にはタンパク質の主鎖のねじれ角と水素結合パターンから判別される方法を用いればよい。ここで、「DSSP(Dictionary of protein secondary structure of protein)」とは、PDB書式のファイルを入力ファイルとして、主鎖の水素結合パターンと、内部回転角等を解析しαへリックスとβシートとを判定するソフトウェアである。DSSPの詳細は、「Kabsch,W. & Sander,C. (1983) Dictionary of protein secondary structure:pattern recognition of hydrogen−bonded and geometrical features. Biopolimers, 22:2577−2637」に記載されている。また、「STRIDE(Protein secondary structure assignment from atomic coordinate)」とは、PDB書式のファイルを入力ファイルとして、主鎖の水素結合パターンと、内部回転角等を解析しαへリックスとβシートとを判定するソフトウェアである。STRIDEの詳細は、「Frishman, D & Argos,P.(1995) Knowledge−based secondary structure assignment. Proteins: structure, function and genetics, 23, 566−579」に記載されている。
参照タンパク質に対して、上記ソフトウェア等を用いて二次構造計算を行い、各アミノ酸がとるαへリックス構造、βシート構造、ループ構造を判定する。目的タンパク質の各アミノ酸の二次構造は、ステップS50におけるアライメントを利用して、目的配列と参照配列の比較から対応するアミノ酸残基ペアにおいて、目的タンパク質の二次構造判定として参照タンパク質と同一のものを当てはめておく。二次構造判定を求められなかったものについては、予め設定しておいた結果をあてはめる。こうして得た目的タンパク質の各アミノ酸の二次構造判定結果を目的タンパク質の動的な挙動を表すパラメータとする。
ここで、ステップS20において、目的タンパク質の動的挙動を表すパラメータとしては、参照タンパク質の基準振動解析法により取得した計算結果を用いることが好ましい。なお、該当計算結果は別途データベースとして保存されているものを使用する。また、二次構造判定計算結果は、基準振動解析が行われていない参照タンパク質を用いる際に基準振動解析計算の代用として使用する。
再び図115のメイン処理の説明に戻り、リガンド探索装置100は、構造変化後タンパク質座標データ選択部102aの処理により、ステップS20において求めた標的タンパク質のゆらぎを拘束条件として用いた分子動力学計算を行う(ステップS30)。
具体的には、まず、下記の式6に示す主鎖の位置拘束エネルギー「U位置」を導入し、初期の受容体骨格の変動を抑えながらAPRICOT[Yoneda S. & Umeyama H. (1992) Free energy perturbation calculations on multiple mutation bases J. Chem. Phys. 97, 6730−6736]を用いて最小化(条件:温度300K、受容体の表面から水分子が最低2分子配置できる箱状水槽、力場:AMBER[S. J. Weiner, P.A. Kollman, D.A. Case, U.C. Singh, C. Ghio, G. Alagona, S. Profeta, &, P. Weiner (1984) A new force field for molecular mechanical simulation of nucleic acids and proteins J. Am. Chem. Soc. 106, 765−784])を行う。

U位置 = K位置 * R2
・・・(6)
ここで、「K位置」は例えば300.0とし、Rは基準座標からのずれとする。
つぎに、APRICOTに、下記の式7に示す二面角拘束エネルギー「U二面角」を導入して、最小化した受容体のMD計算(条件:温度300K、受容体の表面から水分子が最低2分子配置できる箱状水槽、力場:AMBER)を行う。

U二面角 = K二面角 * (θ−θ平衡)2
・・・(7)
θは二面角(単位rad)である。「K二面角」には、最大値と最小値を指定することで、その範囲内で主鎖二面角揺らぎに対応するように各二面角に対して不均一な拘束がかかるようにする。以後、主鎖二面角を拘束しながら行うMDを二面角拘束MDと呼ぶことにする。
つぎに、二面角拘束MD計算によりタンパク質構造座標を入手するには、受容体動的構造のクラスタリングを行う。あらかじめ指定した活性部位に対して、MDの途中経過100fsecごとの受容体を重ね合わせた構造及び初期構造の活性部位を母集団とする。まず初めに、クラスタリングすることにより側鎖の動的情報が失われる可能性が高いことから、側鎖の二面角χにおいて母集団のα%が平均角度±20.0°の範囲で保存されている全側鎖二面角を収集する。ただし、主鎖の根元に近い方からχが保存されていないと判定された場合はそれ以降のχは保存されていないものとする。
つぎに、収集した保存側鎖二面角をすべて網羅している構造を母集団から抽出する。そして、抽出した構造の類似性を比較するために全原子rms(root mean square)がβÅ以下の場合、同一構造と判断して一方を削除、最終的に選ばれた構造をもとに受容体動的構造クラスターを作成する。なお、保存されていなかった二面角χを構成する原子では、変動する可能性が高いことから活性部位・リガンド結合計算において衝突しても良いことにする。ただし、α、βは定数である。
再び図115のメイン処理の説明に戻り、リガンド探索装置100は、空間点指定部102bの処理により、標的タンパク質のリガンド結合部位に、リガンドを配置するための空間点群を指定する(ステップS40)。具体的には、ステップS30で作成した複数のタンパク質立体構造座標のうち、1つをランダムに選択する。ここで、タンパク質座標中の空間点は、例えば以下の(1)または(2)などの方法で指定させる。
(1)ダミー原子の発生による空間点の指定
リガンドとタンパク質との相互作用における水素結合に着目し、タンパク質中の水素結合サイトを空間点として指定する。水素結合における重要事項は距離と角度である。つまり、角度を計算するためには、水素結合ドナー(以後、ドナー)に水素原子が必要になる。
そこで、本実施形態では、活性部位及びリガンドに水素原子が含まれていない場合、以下の規則によりダミー水素原子を発生させる。
1)sp2軌道原子を中心とする正三角形状にダミー原子を発生させる(図2)。すなわち、図2に示すように、sp2軌道原子の窒素原子(A)を中心とする正三角形の空いている位置にダミー水素原子(B)を発生させる。
2)sp3軌道原子では、水素結合を形成する距離にある場合、水素原子を共有するように回転できると考え、水素結合相互作用を計算するときには、距離のみを考慮する。このため、sp3軌道原子にはダミー原子を発生させない。
また、金属及び水では、活性部位・リガンド結合の仲介役となり得るので、相互作用する位置に以下の規則によりダミー原子を発生させる。
1)鉄のような金属には、正八面体状にダミー原子を発生させる(図3)。すなわち、図3に示すように、亜鉛(A)を中心とする正八面体の空いている位置にダミー原子(B)を発生させる。
2)水には、正四面体状にダミー原子を発生させる。
ただし、活性部位と相互作用している方向にはダミー原子を発生させなくてもよい。
(2)構造活性相関情報を利用した空間点の指定
また、本実施形態では、リガンドの構造活性相関(SAR)情報に着目し、以下の(A)〜(D)項目を入力情報にすることにより、空間点を指定する。
(A)SAR情報から得られた活性部位の原子(以後、「A原子」)。PDB形式に従う。
(B)「A原子」と相互作用するであろうリガンドの原子タイプ(以後、「Bタイプ」)。SYBYLのMOL2形式に従う。
(C)「A原子」と「Bタイプ」との相互作用の強さ(以後、「C強さ」)。
(D)「A原子」と「Bタイプ」との相互作用する距離(以後、「D距離」)(単位はÅ)。
なお、本実施形態では、(A)〜(D)の入力情報に基づいてタンパク質中の活性部位内におけるリガンドの初期座標を利用し、以下の1)〜4)に示す規則により空間点を作成してもよい。
1)「A原子」がドナーまたは金属及び水の場合(SAR情報の活性部位側の指定が水素結合ドナー、金属原子の場合)には、「(1)ダミー原子の発生による空間点の指定」で発生させたダミー原子の方向に対して「A原子」から「D距離」の位置及びその周囲を初期座標に選ぶ(図4、図5)。
2)「A原子」がsp3軌道原子の場合(SAR情報の活性部位側の指定がsp3軌道原子の場合)には、「A原子」から「D距離」の周囲を初期座標に選ぶ(図6)。
3)「A原子」が水素結合アクセプター(以後、アクセプター)の場合(SAR情報の活性部位側の指定が水素結合アクセプターの場合)には、「A原子」の結合延長上「D距離」の位置及びその周囲を初期座標に選ぶ(図7)。
4)その他の場合(SAR情報の活性部位側の指定がその他の原子の場合)には、「A原子」を中心とする半径が「D距離」の球表面上の点を初期座標に選ぶ(図8)。
ここで、上記1)〜4)とは異なり、リガンドの初期座標を直接指定してもよい。
再び図115のメイン処理の説明に戻り、リガンド探索装置100は、相互作用関数計算部102cの処理により、ステップS0で定められた1つのリガンドに対し、リガンドの各原子をステップS30で定められた空間点群に重ね合わせる(ステップS50)。具体的には、距離行列を用いたアライメント作成アルゴリズム(DALI)[Holm, L., & Sander, C. (1993) Protein Structure Comparison by Alignment of Distance Matrices J. Mol. Biol. 233, 123−138]を低分子用に改良した以下の(1)〜(4)に示す手法により初期座標とリガンドとを重ね合わせる。
(1)1つの「Bタイプ」には、リガンドの原子タイプが複数対応することが多い。そこで、乱数を用いて「Bタイプ」とリガンドの原子タイプで同一視できるペアを作成する。ただし、ペアにおいてリガンドの原子タイプが重複しないようにする。
(2)「Bタイプ」には、ステップS40により複数の初期座標が含まれているので、初期座標も乱数を用いて選択する。
(3)選択された初期座標とリガンドそれぞれの距離行列を作成し、以下の相互作用関数であるSscore(i,j)を計算する。
Figure 2006252485
ここで、dij sは該当タンパク質中のi番目とj番目の空間点距離である。また、dij Cは化合物中のi番目とj番目の原子間距離である。αは、該当タンパク質中の空間点群と化合物が完全に重なりあった場合にSscore(i,j)を最大値とするための定数である。βは重なりと定義できる限界値を与えるための定数である。
また、αは1.5、βは0.8とするのが好ましい。
(4)(1)〜(3)を複数回(例えば10000回)繰り返し、Sscore(i,j)が最大になるペアを探し、そのペア情報をもとにリガンドを初期座標に重ね合わせる。
つぎに、リガンド探索装置100は、相互作用関数計算部102cの処理により、ステップS50での重ね合わせに対して、ステップS20およびステップS30で定められた計算結果によりタンパク質の動的挙動を表すパラメータを取得し、該当パラメータを用いてリガンドとタンパク質との相互作用エネルギーを、リガンドのコンフォメーションを微調整しながら計算する(ステップS60)。つまり、ステップS50で重ね合わせたリガンドに対して、タンパク質との相互作用エネルギーを、コンフォメーションを微調整しながら最適化して計算する。リガンドのコンフォメーションの微調整は、ステップS50で算出されたリガンド座標を中心に、例えば、並進、回転、または、シングルボンドまわりの角度をRSMDで0.3を越えない程度の座標変化などをさせることで、行ってもよい。
ここで、リガンド座標データのコンフォメーションの微調整は、例えばランダムサーチで最適化することが好ましい。ランダムサーチでは、以下の1)〜3)の項目に従って、タンパク質の活性部位とリガンドとの微小変化を例えば8000回行い、最適エネルギー「U最適」が最小になるようにする。
1)回転可能な結合のうち最大5つ乱数で選び、結合ごとにランダムに±10.0°の範囲内で回転させリガンドのコンフォメーションを換える。この過程を例えば3回に一度行う。
2)x、y、z軸方向それぞれにおいて、ランダムに±1.0Åの範囲内でリガンドの並進運動を行う。この過程を例えば2回に一度行う。
3)回転中心座標それぞれにおいて、ランダムに±1.0Åの範囲内で回転中心座標を移動させ、さらに3次元方向の角度それぞれに対して、ランダムに±5.0°の範囲内でリガンドの回転運動を行う。この過程を例えば5回に一度行う。
ここで、最適エネルギー「U最適」は以下の式で定義する。なお、当該式の右辺に示した各エネルギー関数については以下で順に説明する。

U最適=USAR+U水素+U疎水+Uスタッキング+U衝突+U内部
ここで、原子のVan der Waals半径及び原子間相互作用距離は、AMBER99[J. Wang, P. Cieplak & P.A. Kollam (2000) How well does a restrained electrostatic potential (RESP) model perform in calculating conformational energies of organic and biological molecules? J. Comput. Chem. 21, 1049−1074]、およびMM3パラメータ[Ma B., Lii J.−H., Allinger N.L. (2000) Molecular polarizabilities and induced dipole moments in molecular mechanics J. Comput. Chem. 21, 813−825]を参考にした。
(a)SAR情報に関するエネルギー関数「USAR
SAR情報に従う指標としてエネルギーUSARを定義する。
Figure 2006252485
ψ(i)=KSAR(i) * (RSAR(i)−R)2−δ

NはSAR情報の数であり、Rは「A原子」からリガンド側の相互作用原子までの距離であり、KSAR(i)はi番目の「C強さ」であり、RSAR(i)はi番目の「D距離」である。また、δは例えば20.0である。
(b)水素結合に関するエネルギー関数「U水素」
リガンドの1つのドナー(アクセプター)に対して1つだけ水素結合を形成すると考え、最短にある活性部位側のアクセプター(ドナー)を選び、水素を介した結合角θ(図9参照。ただし、複数の水素原子が付加されているドナー原子の場合には、最小の水素結合角をθと定義する。)を算出して、次の条件により分岐して、ψ(i)を計算するように定義する。なお、図9において、Aはドナー、Bは水素、Cはアクセプター、θは水素結合角を示す。
Figure 2006252485
(1)ドナー原子がsp3軌道原子、または水素結合角θが±30.0°以内のとき
Figure 2006252485
(2)水素結合角θが±30.0°以上のとき
Figure 2006252485
Nはリガンドのドナー+アクセプターの数であり、Rは水素結合を形成する二原子間距離であり、「K水素(i)」及び「R水素(i)」は原子タイプごとに決めた水素結合の相互作用の強さ及び距離である。
(c)疎水相互作用エネルギー関数「U疎水」
活性部位(ALA、CYS、PHE、ILE、LEU、MET、PRO、VAL、TRP、TYRの側鎖。ただし、TYRの水酸基は除く)及びリガンド(炭素原子)の疎水相互作用し得る原子に通し番号を付け、活性部位のi番目とリガンドのj番目との原子間距離Rがカットオフ以内にあるときψ(i,j)を計算するように定義する。
Figure 2006252485
Figure 2006252485
Mは活性部位の疎水相互作用し得る原子の数であり、Nはリガンドの疎水相互作用し得る原子の数であり、「K疎水(i,j)」及び「R疎水(i,j)」は原子タイプごとに決めた疎水相互作用の強さ及び距離である。また、カットオフは例えば8.0Åとする。
(d)スタッキングエネルギー関数「Uスタッキング」
活性部位及びリガンドの芳香環を形成する原子に通し番号を付け、活性部位においては芳香環の中心座標を算出した。活性部位のi番目とリガンドのj番目との原子間距離Rがカットオフ以内にあるとき、i番目の原子が形成する芳香環の中心座標をi’、j番目の最短距離あり共に同じ芳香環を形成するリガンドの原子をj’としたとき、∠ii’j=θi'j、∠i’ij=θij、∠ii’j’=θi'j'、∠i’ij’=θij'を算出し(図10)、θi'jとθijとが90.0°±10.0°のとき、「R境界」と「θ境界」を求め次の条件により分岐してψ(i,j)を計算するように定義する。図10において、i’は活性部位の芳香環中心を示し、iは活性部位の芳香環原子を示し、jおよびj’はリガンドの芳香環原子を示す。
Figure 2006252485
If R境界<0.0,
ψ(i,j)=−Kスタッキング(i,j) * R境界
Else,
ψ(i,j)=−Kスタッキング(i,j) * θ境界

R境界=1.0−(Rスタッキング(i,j)−R)2
θ境界=|1.0−Θ|
Figure 2006252485
Mは活性部位の芳香環を形成する原子の数であり、Nはリガンドの芳香環を形成する原子の数であり、「Kスタッキング(i,j)」及び「Rスタッキング(i,j)」は原子タイプごとに決めたスタッキングの強さ及び距離である。πは円周率であり、θはθi'j'とθij'においてΘが最小になる角度である。また、カットオフは例えば5.0Åとする。
(e)分子間衝突エネルギー関数(弾性衝突エネルギー関数)「U衝突」
「弾性エネルギー」として、タンパク質の局所的な柔らかさを考慮し、以下の式に示す関数「U衝突」を適応してもよい。活性部位における動的挙動の少ない(保存されている)側鎖原子及び主鎖原子のみのi番目の原子とリガンドのj番目の原子との原子間距離Rが衝突距離「R衝突(i,j)」以内のとき、ψ(i,j)を計算するように定義する。
Figure 2006252485
ψ(i,j)=K衝突 * (R衝突(i,j)−R)2

Mは衝突を不許可とする活性部位の原子の数であり、Nはリガンドの原子の数である。また、「K衝突」は1000.0であることが好ましい。「R衝突(i,j)」は活性部位のi番目の原子とリガンドのj番目の原子それぞれのVan der Waals半径の和とする。
ここで、活性部位の各原子に対し、衝突を許す重み付けw(i)が定義された場合、以下の式に示す関数「U衝突」を用いる。ただし、w(i)は0〜1の範囲の実数とする。
Figure 2006252485
ψ(i,j)=w(i) * K衝突 * (R衝突(i,j)−R)2

Mは活性部位の原子の数であり、Nはリガンドの原子の数である。また、「K衝突」は1000.0であることが好ましい。「R衝突(i,j)」は活性部位のi番目の原子とリガンドのj番目の原子それぞれのVan der Waals半径の和とする。
(f)リガンド内部エネルギー「U内部」
回転可能な結合を微小に変動させていくと、誤差で結合が切れる恐れがあるために「ψ結合長(i)」を、また、リガンド内部で原子衝突が起こることも避けるために「ψ衝突(i,j)」を計算するように定義する。
Figure 2006252485
ψ結合長(i)=K結合長*{1000.0 * (R結合長(i)−R1)}2
ψ衝突(i,j)=K衝突*(R衝突−R22

Lは回転可能な結合の数であり、Mはリガンドの原子数であり、Nはi番目の原子の非結合原子数である。また、「K結合長」は100.0であることが好ましい。「R結合長(i)」は初期構造の結合長である。「K衝突」は150.0であり、「R衝突」は2.2Åであることが好ましい。また、R1とR2は二原子間距離とする。
再び図115のメイン処理の説明に戻り、リガンド探索装置100は、相互作用関数計算部102cの処理により、ステップS50で定められたリガンドに対して、リガンド座標データのコンフォメーションを大きく変動して、ステップS50から再スタートを行い、ステップS60までを繰り返して最適化を繰り返し行う(ステップS70)。なお、コンフォメーション改変は、ステップS50で算出されたリガンド座標を中心に、例えば、並進、回転、または、シングルボンドまわりの角度をRSMDで0.3以上になるよう座標変化などさせることで、行ってもよい。
ここで、リガンドのコンフォメーションを大きく動かした最適化は、例えばステップS50で最適化したエネルギー「U最適」でのコンフォメーションに対して、回転可能な結合をランダムに5つ選び、原子タイプごとに決められた回転角度間隔に従ってランダムに回転させる。その後ステップS50、ステップS60の過程を、例えば5000回繰り返し行う。
また、リガンドのコンフォメーションを変化させた後、リガンドの内部エネルギー「U内部」を計算しその値が例えば500.0以上のときは、その後の計算をスキップし、次のリガンドコンフォメーションを発生させてもよい。
つぎに、リガンド探索装置100は、相互作用関数計算部102cの処理により、ステップS70まで得られた標的タンパク質とリガンドとの相互作用エネルギーを決定する(ステップS80)。具体的には、ステップS40からステップS70まで「U最適」が最適値となる最適なタンパク質とリガンドとの複合体座標、および最適エネルギー「U最適」を算出する。
つぎに、リガンド探索装置100は、制御部102の処理により、ステップS40に戻り、ステップS0中の別のリガンドを選択し、各処理部の処理により、ステップS80まで計算する(ステップS90)。なお、ステップS40からステップS90まではステップS0中の化合物データベース中のリガンド全てについて行う。
つぎに、リガンド探索装置100は、リガンド評価部102dの処理により、ステップS0中でのリガンドに対し、ステップS90において定められた相互作用エネルギーを比較し、標的タンパク質に結合すると予想されるリガンドを選択する(ステップS100)。具体的には、ステップS90まで評価されたタンパク質とリガンドとの複合体座標および最適エネルギー「U最適」に基づいて、ステップS0中のデータベース中から該当タンパク質と結合する可能性のある化合物(リガンド)を選択する。
以上、本システムのメイン処理の説明を終了する。
以上、説明したように、リガンド探索装置100によれば、相互作用関数によって、該当タンパク質と結合する物質(具体的にはリガンド)を評価し、選定することができる。具体的には、該当タンパク質の立体構造に際し、基準振動計算を行い、各アミノ酸のゆらぎの大きさを求め、そのゆらぎの大きさを拘束条件として分子動力学計算を行うことで、タンパク質の立体構造をエネルギー最適構造よりおおきく離れないようにして分子動力学計算を行うことができる。また、タンパク質の動的挙動に関する物理化学的性質を明確に描写することができる。また、タンパク質の動的性質を表現する関数として基準振動解析結果またはタンパク質の二次構造判定結果を用いることができる。また、核磁気共鳴スペクトルの解析結果のような複数の立体構造座標である場合についても、該当タンパク質と結合するリガンドの探索について、複数座標すべてを全自動的にかつ短時間で同等に評価することができる。
また、リガンド探索装置100によれば、任意の単数を含む複数鎖のタンパク質立体構造が与えられた場合において、該当タンパク質の立体構造から誘導適合を反映したパラメータおよび構造変化した立体構造座標を例えば基準振動計算方法や分子動力学計算方法よりあらかじめ算出し、当該パラメータおよび構造変化した立体構造座標を用いて該当タンパク質と別の物質が結合した場合の相互作用関数を定義し、当該相互作用関数によって該当タンパク質と結合する物質をコンピュータプログラムにより評価し、選定する。
また、リガンド探索装置100によれば、該当タンパク質に結合するリガンドを選択する際に(0)〜(8)に示した一連の処理を全自動または手動的に行う。
(0)化合物データベースからリガンドを1つ選択する。該当タンパク立体構造として、誘導適合を反映するパラメータを用いて動的挙動を考慮した複数の構造変化座標を用意し、ランダムに1つの構造を選択する。
(1)重ね合わせを行う該当タンパク中の空間点を指定する。
(2)(0)で選択したリガンド中の原子と(1)で指定した空間点とのペアを重複がないようにランダムに選択する。
(3)以下のスコアSscore(i,j)を計算する。
Figure 2006252485
ij Sは該当タンパク質中のi番目とj番目の空間点距離である。dij Cは化合物中のi番目とj番目の原子間距離である。αは、該当タンパク質中の空間点群と化合物が完全に重なりあった場合にSscore(i,j)を最大値とするための定数である。βは重なりと定義できる限界値を与えるための定数である。
(4)(3)のスコアが最大になるように調整する。
(5)(4)で重ねあわせたリガンドに対してタンパク質との相互作用エネルギーをコンフォメーションを微調整しながら最適化計算する。
(6)リガンドのコンフォメーションを大きく動かして、(2)から再スタートを行い、(5)までを繰り返して最適化を行う。
(7)(1)〜(6)までの過程を(0)で用意した複数の構造変化座標に対して行い、最適なタンパク質とリガンドとの複合体座標、最適エネルギー「U最適」を算出する。
(8)(1)〜(7)までの過程を(0)で用意した化合物データベース中の全てのリガンドに対して行い、化合物データベース中から該当タンパク質と結合する可能性のあるリガンドを選択する。
また、リガンド探索装置100によれば、タンパク質の誘導適合を反映するパラメータおよび構造変化した立体構造座標を分子動力学計算方法を用いて算出する場合、該当タンパク質の立体構造に際し、基準振動計算を行い、各アミノ酸のゆらぎの大きさを求め、そのゆらぎの大きさを拘束条件として、分子動力学計算を行うことで、タンパク質の立体構造をエネルギー最適構造よりおおきく離れないようにして分子動力学計算を行う。
また、リガンド探索装置100によれば、リガンドとタンパク質との相互作用を評価する際の目的関数として、従来の相互作用エネルギー関数に、タンパク質の動的性質を表現する関数を弾性エネルギーとして加え、タンパク質の立体構造座標から相互作用エネルギーを高速に算出するとともに、タンパク質の動的挙動に関する物理化学的性質を明確に描写する。
また、リガンド探索装置100によれば、タンパク質の動的性質を表現する関数として基準振動解析結果またはタンパク質の二次構造判定結果を用いる。
また、リガンド探索装置100によれば、計算された該当タンパク質が代表的な複数の立体構造座標である場合や、該当タンパク質の立体構造が例えば核磁気共鳴スペクトルの解析結果のような複数の立体構造座標である場合についても、該当タンパク質と結合するリガンドの探索について、複数座標すべてを全自動的にかつ短時間で同等に評価することを可能とする。
(二面角拘束MDおよびクラスタリングにおけるパラメータ定数の決定)
上述した実施形態におけるリガンド探索装置100を用いて、基準振動解析により二面角のゆらぎ値を計算した。なお、本実施例1においては、二面角のゆらぎ値を、分子動力学計算における拘束条件として、以下の式中の「K二面角」に適応した。

U二面角 = K二面角 * (θ−θ平衡)2

θは二面角(単位rad)である。実際には、「K二面角」の最大値と最小値を指定することにより、その範囲内で主鎖二面角揺らぎに対応するように各二面角に対して不均一な拘束がかかるようにした。そのため、本実施例1では、「K二面角」の適切な最大値と最小値を決定することを目的とした。
また、分子動力学計算後、構造変化した座標をクラスター解析し、代表構造を選択した。その際、あらかじめ指定した活性部位に対して、MDの途中経過100fsecごとの受容体を重ね合わせた構造の活性部位及び初期構造の活性部位を母集団とした。具体的には、まず、クラスタリングすることにより側鎖の動的情報が失われる可能性が高いことから、側鎖の二面角χにおいて母集団のα%が平均角度±20.0°の範囲で保存されている全側鎖二面角を収集した。ただし、主鎖の根元に近い方からχが保存されていないと判定された場合はそれ以降のχは保存されていないものとした。つぎに、収集した全側鎖二面角(保存側鎖二面角)をすべて網羅している構造を母集団から抽出した。つぎに、抽出した構造の類似性を比較するために、全原子rms(root mean square)がβÅ以下の場合には同一構造と判断して一方を削除した。そして、最終的に選ばれた構造をもとに受容体動的構造クラスターを作成した。ただし、保存されていなかった二面角χを構成する原子では、変動する可能性が高いことから、活性部位・リガンド結合計算において衝突しても良いことにした。なお、α、βは定数であり、本実施例1では、適切なα、βを決定することも目的とした。
さらに、本実施例1では、リガンドと接触している活性部位において最も良い主鎖の動的構造を得ることも目的とした。そのため、rms(root mean square)を計算するときは、活性部位における主鎖原子(N、Cα、C、O)の4原子のみを対象とした。
「K二面角」の最大値と最小値、およびクラスタリング定数のαとβは、NMRで解析された構造を再現できる値が適切であると考えた。そこで、まず、NMRで解析された構造のジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR、PDB code:1LUD)のMODEL1を初期構造に基準振動解析を行い、ゆらぎ値を求め、その後、分子動力学計算を行った。そして、分子動力学計算後は、受容体動的構造クラスタリングまで行った。なお、1LUD(MODEL1)に含まれていたリガンドの各原子から半径6Å以内に含まれる受容体残基を活性部位と定義した。また、MDは0〜0.1nsecまでの結果を使用した。ここで、MDでの拘束の最小値と最大値は0から1000まで(100ごと)の数値、クラスタリングにおいて定数αは0%から90%まで(10%ごと)の数値、定数βはNMR構造平均値rmsを参考に0.1Åから0.6Åまで(0.1Åごと)の数値に対して網羅的に行って、1LUDにおけるNMR構造すべてと比較することにより、定数を決定した。
受容体動的構造クラスタリングにおける定数βを決定するための参考としてNMR構造平均値を求めた。PDB(the Protein Data Bank)のNMR構造のうち、受容体が単純タンパク質であり且つ1つのPDBファイル内に記載されていたNMR構造が10パターン以上あった。そのため、リガンドを含む117種類を対象に活性部位のNMR構造平均値rmsを求めることにした。
まず、MODEL1において、リガンドの各原子から半径6Å以内に含まれる受容体残基を活性部位と定義した。そして、MODEL1以外の構造において、MODEL1の活性部位とのrmsをそれぞれ求め、さらにその平均rmsを求めた。ここで、平均rmsが1.0Å以上の場合は、明らかな動的構造と見なせるので、そのようなPDBファイルを対象からはずした。これにより、対象となるPDBファイルは71種類となった。そして、71種類の平均rmsをさらに平均化した値をNMR構造平均値rmsとした。このようにして得られたNMR構造平均値rmsは0.62となった。
「K二面角」の適切な最大値と最小値の決定、およびクラスタリングにおける定数αとβの決定に関しては、各パラメータ値とNMR構造との比較を行った。
1LUDには24種類のMODELが含まれており、また本実施例1ではMODEL1を対象にしたので、これを除く23種類のMODELの活性部位を正解構造とした。計算の結果として出力された各受容体動的構造クラスターにおいて、各正解構造とrmsを計算した。なお、計算したrmsの中で最小のrmsを「RMS最小」とし、各受容体動的構造クラスターから得られた「RMS最小」の平均値をスコアとした。そして、このスコアが最小となるパラメータを採用することにした。
図11に1LUDのMODEL1における基準振動解析結果を示し、図12、図13、図15〜18にスコアとパラメータとの比較の結果を示した。図11では、二面角φ(橙色A)、ψ(緑色B)の揺らぎの大きさを示した。揺らぎが0.0に近いほど分子動力学法(MD)計算において二面角拘束が強くなる。また、STRIDEによる二次構造判定でα−へリックス(赤色D)、β−シート(青色D)を表示した。紫色Cは活性部位である。図12において、基準振動解析の結果、定数αは70%が良いという結果になった。しかし、一般性を持たせときに70%ではクラスタリングの精度が低下した場合もあったので、本実施例1では80%を定数αの値にした。図13、図15〜18において、クラスタリング定数をα=80.0%、β=0.4Åに固定した。なお、黒色に近いほどスコアが小さいことを表わす。
これらの結果より、スコアが小さくなる拘束条件としては図14の値が最適であると判断された。これらの値の妥当性は、例えば、主鎖原子のみではなく、Cα原子、側鎖原子、全原子について調査しても図14のパラメータ値が最適であることが分かった。
(拘束パラメータ有無による分子動力学計算の相違)
上述したリガンド探索装置100により算出された拘束パラメータを適応した分子動力学計算を2.0nsecまで行った。そして、活性部位の主鎖原子の動的挙動において、拘束パラメータを適応しない場合と比較して、構造がどの程度変化するかを調べた。
Case1)
ジヒドロ葉酸還元酵素(1LUDのMODEL1)を対象に検証した。検証結果を図19〜図21に示した。なお、基準振動計算結果は上述した実施例1で求めた値を適応した。
図19では、1LUDのPDBファイル内に記載されている24種類の各モデル構造をMODEL1と活性部位の主鎖原子においてrmsを計算し、その平均rmsを点線で表示した。二面角拘束があるとき(A)と、二面角拘束がないとき(B)において、活性部位の主鎖原子の初期構造からのずれをrmsで表示した。
図20に、二面角拘束なしでMDを計算させた時のNMR構造との比較結果を示した。図20において、白色はNMR構造(1lud)であり、黒色はMD構造(1lud)である。
表1に、二面角拘束なしでMDを計算させた時のNMR構造との比較結果を示した。
(表1)
Figure 2006252485
図21に、二面角拘束ありでMDを計算させた時のNMR構造との比較結果を示した。
表2に、二面角拘束ありでMDを計算させた時のNMR構造との比較結果を示した。
(表2)
Figure 2006252485
Case2)
ここでは、FAMS[Ogata K., Umeyama H. (2000) An automatic homology modeling method consisting of database searches and simulated annealing J. Mol. Graphics Mod. 18, 258−272]によりモデリングした構造(モデル構造)とX線構造を初期構造に選び、初期構造及び拘束の有無に依存することを検証した。なお、リガンドの各原子から半径10Å以内に含まれる受容体残基を活性部位と定義した。
cellular retinoic acid binding protein type II(CRABP−II)(PDB code:1CBQ)のX線構造(立体構造)を利用した。また、参照タンパク質にホモロジー32.1%のintestinal fatty acid binding protein(PDB code:1ICM)を選び、図22のアライメントでモデル構造を作成した。図23、図24、図25に、X線とモデルとの構造比較結果を示した。
図23には、1CBQの立体構造(X線構造(赤色A)およびモデル構造(青色B))を示した。図24には、図23の緑色Cで示される物質である6−(2,3,4,5,6,7−hexahydro−2,4,4−trimethyl−1−methyleneinden−2−yl)−3−methylhexa−2,4−dienoic acidの構造を示した。図25には、1CBQのX線構造とモデル構造の相違をrmsで表示した。
図26は、1CBQのX線構造の基準振動解析の結果を示す図であり、図27は1CBQのモデル構造の基準振動解析の結果を示す図である。図26および図27では、二面角φ(橙色A)、ψ(緑色B)の揺らぎの大きさを示した。揺らぎが0.0に近いほど分子動力学法(MD)計算において二面角拘束が強くなる。また、STRIDEによる二次構造判定でα−へリックス(赤色D)、β−シート(青色D)を表示した。紫色Cは活性部位である。
図28には、1CBQのX線構造とモデル構造の分子動力学法(MD)計算の結果を示した。X線構造の活性部位の主鎖原子とのrmsを求めた。図28において、Aは初期構造がX線構造で二面角拘束なし、Bは初期構造がX線構造で二面角拘束あり、Cは初期構造がモデル構造で二面角拘束なし、Dは初期構造がモデル構造で二面角拘束あり、である。
Case3)
FlavodoxinのX線構造(PDB code:1J9G)を利用した。また、参照タンパク質にホモロジー29.2%のflavodoxin(PDB code:1AHN)を選び、図29のアライメントでモデル構造を作成した。図29には、1J9Gおよび1AHNのアライメントを示した。
図30には、1J9Gの立体構造(X線構造(赤色A)およびモデル構造(青色B))を示した。図31には、図30における緑色Cで示される物質であるflavin mononucleotideの構造を示した。図32には、1J9GのX線構造とモデル構造との相違をrmsで表示した。
図33には1J9GのX線構造の基準振動解析の結果を、図34には1J9Gのモデル構造の基準振動解析の結果を示した。図33および図34において、二面角φ(橙色A)、ψ(緑色B)の揺らぎの大きさを示した。揺らぎが0.0に近いほど分子動力学法(MD)計算において二面角拘束が強くなる。また、STRIDE[8]による二次構造判定でα−へリックス(赤色D)、β−シート(青色D)を表示した。紫色Cは活性部位である。
図35には、1J9GのX線構造とモデル構造の分子動力学法(MD)計算の結果を示した。X線構造の活性部位の主鎖原子とのrmsを求めた。図35において、Aは初期構造がX線構造で二面角拘束なし、Bは初期構造がX線構造で二面角拘束あり、Cは初期構造がモデル構造で二面角拘束なし、Dは初期構造がモデル構造で二面角拘束あり、である。
Case4)
Matrix metalloproteinase−8(MMP−8)のX線構造(PDB code:1MMB)を利用した。また、参照タンパク質にホモロジー55.0%のMMP−3(PDB code:1B3D)を選び、図36のアライメントでモデル構造を作成した。図36には、1MMBおよび1B3D_Aのアライメントを示した。
図37には、1MMBの立体構造(X線構造(赤色A)およびモデル構造(青色B))を示した。図38には、図37における緑色Cで示される物質であるbatimastatの構造を示した。図39には、1MMBのX線構造とモデル構造との相違をrmsで表示した。
図40には1MMBのX線構造の基準振動解析の結果を、図41には1MMBのモデル構造の基準振動解析の結果を示した。図40および図41において、二面角φ(橙色A)、ψ(緑色B)の揺らぎの大きさを示した。揺らぎが0.0に近いほど分子動力学法(MD)計算において二面角拘束が強くなる。また、STRIDE[8]による二次構造判定でα−へリックス(赤色D)、β−シート(青色D)を表示した。紫色Cは活性部位である。
図42には、1MMBのX線構造とモデル構造の分子動力学法(MD)計算の結果を示した。X線構造の活性部位の主鎖原子とのrmsを求めた。図42において、Aは初期構造がX線構造で二面角拘束なし、Bは初期構造がX線構造で二面角拘束あり、Cは初期構造がモデル構造で二面角拘束なし、Dは初期構造がモデル構造で二面角拘束あり、である。
Case1)〜Case4)に示したとおり、拘束パラメータを適応した分子動力学計算結果は、拘束パラメータを適応しない場合と比較して、大きな構造変化は少ない。このことは古典力学を適応しているため大きな構造変化をしてしまう分子動力学法において、拘束パラメータを適応することで大きな構造変化を合理的に拘束することができ,理想的な構造座標を得ることが可能であるということを示している。また、ホモロジーが高ければ、FAMSの構造構築精度も上がる。すなわち、X線に近い構造を得られるので、アミノ酸の数個異なるミューテーションタンパク質にも本発明は利用できる。
(タンパク質/リガンド複合体モデルの検証)
上述した実施形態におけるリガンド探索装置100により、該当タンパク質に結合するリガンドの複合体立体構造を予測した。本実施例3では、予測された複合体立体構造座標の予測精度を検証した。なお、当該検証には、複合体の立体構造が既知で、リガンドの有無もしくはリガンドの種類により活性部位の形が異なるInduced−Fit型のタンパク質を用いた。また、リガンドの各原子から半径10Å以内の残基をタンパク質の活性部位と定義した。また、X線構造またはNMR構造を初期構造に選んだMDでは、ほぼ一定の構造を保ち続けることが分かったのでMDを1.0nsecまで行うことにした。ただし、水素原子を除いて計算した。複合体モデル構築は、上述した実施形態に従って行った。
Case1)
ジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR)である1BZFと1LUDとはホモロジーが100.0%でかつ結合しているリガンドが異なることにより活性部位の形が異なる。そこで、1BZF(MODEL18)を初期構造として選択し、リガンドとして2,4−diamino−5−(3,4,5−trimethoxy−benzyl)−pyrimidin−1−ium(図49)を用い、上述した実施形態におけるリガンド探索装置100によってタンパク質/リガンド複合体モデルを作成し、正解構造である1LUD(MODEL4)と比較することで検証した(図43)。図43には、ジヒドロ葉酸還元酵素の立体構造を示した。図43では、1LUD(MODEL4)受容体(緑色A)とリガンド(赤色B)、1BZF(MODEL18)の受容体(青色C)とリガンド(水色D)を示した。
図44には、1BZFの基準振動計算解析を示した。図44では、二面角φ(橙色A)、ψ(緑色B)の揺らぎの大きさを示した。揺らぎが0.0に近いほど分子動力学法(MD)計算において二面角拘束が強くなる。また、STRIDEによる二次構造判定でα−へリックス(赤色D)、β−シート(青色D)を表示した。紫色Cは活性部位である。
図45、図47に1BZFを用いた拘束二面角分子動力学の結果を示した。図45には、正解構造1LUD(MODEL4)の活性部位とのrmsを表示した。図45において、Aは主鎖原子、Bは側鎖原子、Cは全原子、である。図47は、1BZF(MODEL18)における活性部位・リガンド結合解析の結果である。MD計算を0.1nsecまで行ったときの結合解析及び1.0nsecまで行ったとき、また、受容体動的構造クラスタリングを行うときの母集団を100fsecごと及び1000fsecごとで行ったときの結合解析の結果である。評価法は、正解構造との活性部位及びリガンドのrmsで行った。図46にリガンドドッキングにおける空間点指定のパラメータ値を示した。図46は、1LUD(MODEL4)より得られた構造活性相関情報である。
図48〜図50にタンパク/リガンド複合体と正解構造との比較を示した。図48は、0〜1.0nsecの範囲内で100fsecごとの母集団により作られたクラスターを用いて行った活性部位・リガンド結合である。緑色Aは正解構造の1LUD(MODEL4)、青色Bは初期構造の1BZF(MODEL18)、赤色Cはリガンド結合における最適構造、要素色Dはリガンドの正解構造、水色Eは計算結果によるリガンド、である。リガンドのrmsは0.9614であった。図50のリガンドを結合させることにより活性部位の主鎖原子のrmsで0.2791の誘導が生じた。図49において、黒色は正解構造(1ludのmodel 4)を表し、灰色は初期構造(1bzfのmodel 18)を表し、白色は最適構造を表す。図50は、2,4−diamino−5−(3,4,5−trimethoxy−benzyl)−pyrimidin−1−iumである。1LUDのリガンドである。
Case2)
heat shock protein 90(HSP90)である1YERと1YETは、ホモロジーが100.0%でリガンド結合の有無により活性部位の形が異なる。そこで、リガンド結合していない1YERを初期構造に選び、リガンドとしてgeldanamycinを用い、正解構造である1YETと比較することで検証した(図51)。図51は、heat shock protein 90の立体構造である。1YETの受容体(緑色A)とリガンド(赤色B)、1YERの受容体(青色C)、である。
図52に1YERの基準振動解析の結果を示した。二面角φ(橙色A)、ψ(緑色B)の揺らぎの大きさを示した。揺らぎが0.0に近いほど分子動力学法(MD)計算において二面角拘束が強くなる。また、STRIDEによる二次構造判定でα−へリックス(赤色D)、β−シート(青色D)を表示した。紫色Cは活性部位である。
図53、図55に1YERを用いた拘束二面角分子動力学の結果を示した。正解構造1YETの活性部位とのrmsを表示した。Aは主鎖原子、Bは側鎖原子、Cは全原子、である。図55は、1YERにおける活性部位・リガンド結合解析の結果である。MD計算を0.1nsecまで行ったときの結合解析及び1.0nsecまで行ったとき、また、受容体動的構造クラスタリングを行うときの母集団を100fsecごと及び1000fsecごとで行ったときの結合解析である。評価法は、正解構造との活性部位及びリガンドのrmsで行った。図54にリガンドドッキングにおける空間点指定のパラメータ値を示した。図54は、1YETより得られた構造活性相関情報である。
図56および図57にタンパク/リガンド複合体と正解構造との比較を示した。図56および図57は1YER・リガンド結合である。図56は、0〜0.1nsecの範囲内で100fsecごとの母集団により作られたクラスターを用いて行った活性部位・リガンド結合である。緑色Aは正解構造の1YET、青色Bは初期構造の1YER、赤色Cはリガンド結合における最適構造、要素色Dはリガンドの正解構造、水色Eは計算結果によるリガンド、である。リガンドのrmsは1.2081である。図57のリガンドを結合させることにより活性部位の主鎖原子のrmsで0.1619の誘導が生じた。図57は、geldanamycinである。1YETのリガンドである。
Case3)
mitogen−activated protein kinase(MAP kinase)である1A9Uと1OUKはホモロジー100.0%でかつ結合しているリガンドが異なることにより活性部位の形が異なる。そこで、1A9Uを初期構造に選び、リガンドとして1OUK中に含まれるリガンドを用い、正解構造である1OUKと比較することでと検証した(図58)。図58はmitogen−activated protein kinaseの立体構造である。図58において、1OUKの受容体(緑色A)とリガンド(赤色B)、1A9Uの受容体(青色C)とリガンド(水色D)、である。
図59に基準振動解析結果を示した。二面角φ(橙色A)、ψ(緑色B)の揺らぎの大きさを示した。揺らぎが0.0に近いほど分子動力学法(MD)計算において二面角拘束が強くなる。また、STRIDEによる二次構造判定でα−へリックス(赤色D)、β−シート(青色D)を表示した。紫色Cは活性部位である。
図60、図62に1YERを用いた拘束二面角分子動力学の結果を示した。図60は1A9UのMD計算の結果である。図60に正解構造1OUKの活性部位とのrmsを表示した。Aは主鎖原子、Bは側鎖原子、Cは全原子、である。図62は1A9Uにおける活性部位・リガンド結合解析の結果である。MD計算を0.1nsecまで行ったときの結合解析及び1.0nsecまで行ったとき、また、受容体動的構造クラスタリングを行うときの母集団を100fsecごと及び1000fsecごとで行ったときの結合解析の結果である。評価法は、正解構造との活性部位及びリガンドのrmsで行った。
図61にリガンドドッキングにおける空間点指定のパラメータ値を示した。図61は1OUKより得られた構造活性相関情報である。
図63〜図65にタンパク/リガンド複合体と正解構造との比較を示した。図63〜図65は1A9U・リガンド結合である。図63は、0〜0.1nsecの範囲内で100fsecごとの母集団により作られたクラスターを用いて行った活性部位・リガンド結合である。緑色Aは正解構造の1OUK、青色Bは初期構造の1A9U、赤色Cはリガンド結合における最適構造、要素色Dはリガンドの正解構造、水色Eは計算結果によるリガンド、である。リガンドのrmsは1.6112であった。図65のリガンドを結合させることにより活性部位の主鎖原子のrmsで0.1871の誘導が生じた。図64において、黒色は正解構造(1ouk)、灰色は初期構造(1a9u)、白色は最適構造、である。図65は1OUKのリガンドである。4−[5−[2−(1−phenyl−ethylamino)−pyrimidin−4−yl]−1−methyl−4−(3−trifluoromethylphenyl)−1H−imidazol−2−yl]−piperidineである。
Case1)〜Case3)に示す通り、リガンド探索装置100により作成されるタンパク質/リガンド複合体モデルは、誘導結合型のタンパク質/リガンド複合体の立体構造を精度よく予測可能であることが分った。
(Fxaを用いたin silico Screeningへの応用例)
上述した実施形態のリガンド探索装置100により、セリンプロテアーゼの1種であるFxaの立体構造(図66)を用い、化合物データベースからFxaに結合する可能性のあるリガンドを探索した。立体構造には1AIXを用い、リガンドデータベースとしてPDBデータベースより収集した3633種類のリガンドを用いた。上述した実施形態に従い、in silico screeningを行った。その結果を図67に示した。
図67は、化合物データベース中のリガンドのうち、1AIXとの相互作用エネルギーの上位100個を示している。図67において、太字は1AIX中に含まれているリガンドであり、斜線はセリンプロテアーゼである。PDB codeとは、リガンドが含まれているもとのPDBcodeを示す。図67には、1AIXにもともと含まれているリガンドがランキング19位に入っている。
ランキング19位におけるタンパク質/リガンド複合体構造を図68および図69に示した。図68において、白色は受容体、黒色は1AIXのリガンドである。図69は1AIX中のリガンドである。
図67中のランキング35位、38位、80位はすべてセリンプロテアーゼに結合するリガンドである。
これらの構造とタンパク質/リガンド複合体構造を、図70および図71、図72および図73、図74および図75に示した。図70および図71はランキング35位におけるタンパク質/リガンド複合体構造である。図70において、白色は受容体、黒色は1AUJのリガンドである。図71は1AUJ中のリガンドである。図72および図73はランキング38位におけるタンパク質/リガンド複合体構造である。図72において、白色は受容体、黒色は正解(1FOR)のリガンドであり、RMSは1.500であった。図73は1FOR中のリガンドである。図74および図75はランキング80位におけるタンパク質/リガンド複合体構造である。図74において、白色は受容体、黒色は1K1Mのリガンドである。図75は1K1M中のリガンドである。
これらの結果から、本発明により、化合物データベースからもっともらしい化合物を選択することが可能であることが分かった。
(異なる条件でのin silicoスクリーニング)
上述した実施形態のリガンド探索装置100により、構造活性相関(SAR)の情報により順位が変動することを検証した。また、受容体を固定した場合の順位の変動も検証した。
ここでは、severe acute respiratory syndrome(SARS)のプロテアーゼを用いたin silico screeningを行った。初期構造にはリガンドを含まない1UK3(B鎖)を、またリガンドを含む1UK4(B鎖)のリガンド結合様式を構造活性相関情報として利用した。活性部位は1UK4(B鎖)のリガンドの各原子から半径10Å以内に含まれる受容体残基部位である。リガンドデータベースとして、PDBより収集した3633種類のリガンドを用いた。ただし、結合解析で利用する受容体動的構造クラスターには0〜0.1nsecの範囲内で100fsecごとの母集団で作られたものを使用した。また、水素原子を除いて計算した。
図76はSARSプロテアーゼの立体構造である。1UK4(B鎖)の受容体(緑色A)とリガンド(赤色B)、1UK3(B鎖)の受容体(青色C)が示されている。
図77に1UK3(B鎖)の基準振動解析の結果を示した。二面角φ(橙色A)、ψ(緑色B)の揺らぎの大きさを示した。揺らぎが0.0に近いほど分子動力学法(MD)計算において二面角拘束が強くなる。また、STRIDEによる二次構造判定でα−へリックス(赤色D)、β−シート(青色D)を表示した。紫色Cは活性部位である。
図78に1UK3の分子動力学計算の結果を示した。図78は1UK3(B鎖)のMD。1UK4(B鎖)の活性部位とのrmsを表示した。Aは主鎖原子、Bは側鎖原子、Cは全原子、である。
Case1)SAR4ヵ所指定
図79に1UK4の活性部以内での空間指定を示した。図79は1UK4(B鎖)より得られた構造活性相関情報である。図80に、1UK3(B鎖)におけるin silico スクリーニングの結果を示した。
図81には、1UK3と1UK4とに関し、正解構造との比較を示した。順位は25位である。緑色Aは1UK4(B鎖)、青色Bは初期構造の1UK3(B鎖)、赤色Cはリガンド結合における最適構造、要素色Dは1UK4のペプチド性リガンド(ASN−SER−THR−LEU−GLN)の正解構造、水色Eは計算結果によるリガンド、である。リガンドのrmsは2.5721であった。正解構造との活性部位の主鎖原子のrmsは、初期構造では1.0248、最適構造では1.0792、であった。
図82および図83に、in silico スクリーニングの順位1を示した。図83には1QF4のリガンド(C8−R)−hydantocidin 5’−phosphateを示した。
Case2)SAR3ヵ所指定
図84に1UK3の活性部位内での空間指定を示した。図84は1UK3(B鎖)より得られた構造活性相関情報である。
図85には、1UK3(B鎖)と1UK4(B鎖)との比較結果であり、1UK3での最適構造と正解構造との比較を示した。順位は49である。緑色Aは1UK4(B鎖)、青色Bは初期構造の1UK3(B鎖)、赤色Cはリガンド結合における最適構造、要素色Dは1UK4のペプチド性リガンド(ASN−SER−THR−LEU−GLN)の正解構造、水色Eは計算結果によるリガンドである。リガンドのrmsは2.0057であった。正解構造との活性部位の主鎖原子のrmsは、初期構造では1.0248、最適構造では1.0469であった。
図86には、SAR3ヵ所指定で実行したin silicoスクリーニングの結果を示した。
Case3)SAR5ヵ所指定
図87には1UK3の活性部位内での空間指定を示した。図87は1UK3(B鎖)より得られた構造活性相関情報に関する図である。図88には、SAR5ヵ所指定で実行したin silicoスクリーニング(ハイスループットスクリーニング)結果を示した。
図89には、1UK3での最適構造と正解構造との比較を示した。図89は1UK3(B鎖)と1UK4(B鎖)との比較結果である。順位は2位である。緑色Aは1UK4(B鎖)、青色Bは初期構造の1UK3(B鎖)、赤色Cはリガンド結合における最適構造、要素色Dは1UK4のペプチド性リガンド(ASN−SER−THR−LEU−GLN)の正解構造、水色Eは計算結果によるリガンド、である。リガンドのrmsは1.2578であった。正解構造との活性部位の主鎖原子のrmsは、初期構造では1.0248、最適構造では1.1620であった。
Case4)リガンド原子タイプ指定の変更
図90に1UK3の活性部位内での空間指定を示した。図90は1UK3(B鎖)より得られた構造活性相関情報に関する図である。図91には、リガンド原子タイプ指定変更で実行したin silicoスクリーニング(ハイスループットスクリーニング)の結果を示した。
図92には、1UK3での最適構造と正解構造との比較を示した。図92は1UK3(B鎖)と1UK4(B鎖)との比較結果である。順位は774位である。緑色Aは1UK4(B鎖)、青色Bは初期構造の1UK3(B鎖)、赤色Cはリガンド結合における最適構造、要素色Dは1UK4のペプチド性リガンド(ASN−SER−THR−LEU−GLN)の正解構造、水色Eは計算結果によるリガンド、である。リガンドのrmsは2.5216であった。正解構造との活性部位の主鎖原子のrmsは、初期構造では1.0248、最適構造では1.0792であった。
Case5)受容体固定
図93に活性部位内での空間指定を示した。図93は1UK4(B鎖)より得られた構造活性相関情報に関する図である。図94に、受容体を固定した状態で実行したin silico スクリーニング(ハイスループットスクリーニング)の結果を示した。
図95には、1UK3と1UK4を重ね合わせたリガンドと計算結果のリガンドとの比較を示した。順位は39位である。灰色は1UK3の活性部位構造、黒色は1UK3と1UK4を重ね合わせたリガンド、白色は計算結果のリガンド、である。
Case1)〜Case4)を見ると、SARの指定が多いほど、参考にしたリガンドの順位が良くなった。つまり、参考にできるリガンドの結合情報が信頼できる場合にはSARの情報を多くしたin silicoスクリーニングを行い、信頼性に欠ける場合にはSARの情報数を減らし、さらにリガンド原子タイプ指定の幅を広げることで、様々なリガンドがランキング上位に分布した。そして、その分布情報をもとにSAR情報を作り変えてin silicoスクリーニングを実行するとより信頼性の持てる結果が出力された。
Case1)とCase5)を見ると、受容体の動的構造の有無による順位変動を示している。これは、リガンドの動きのみの最適化に比べ、リガンド及び受容体それぞれが動く最適化の方が原子のぶつかりをさけることに優れている。従って、同じ位置に配置するための最適化エネルギーに差が生じた。
(二面角拘束分子動力学計算のパラメータに関するMDパラメータの分布)
FMN−binding proteinにおける二面角拘束MDパラメータの分布に関し説明する。ここでは、上述した実施形態のリガンド探索装置100により、1LUD以外のNMR構造でも二面角拘束分子動力学計算及びクラスタリングのパラメータが同様の結果を生じるのかを検証した。そこで、FMN−binding proteinのNMR構造(PDB code:1AXJ)のMODEL1を初期構造に選んだ。評価法は、受容体動的構造クラスタリングのパラメーター(α=80.0%、β=0.4Å)を固定したこと以外は実施例1に従った。
図96に1AXJにおける二面角拘束分子動力学計算のパラメータ決定のスコアの分布状況を示した。図96は1AXJにおける二面角拘束MDパラメータの分布である。Aに近い部分ほどスコアで小さい。1LUDの時と同様に二面角拘束の最大値800、最小値0では良い結果を示した。
(二面角拘束MD)
ここでは、上述した実施形態のリガンド探索装置100により、主鎖二面角拘束MDで各原子の動的構造を検証した。なお、時として基準振動解析が収束せず二面角揺らぎ情報が得られないことがある。そこで、図13により主鎖二面角に対して均一な拘束(500)でMDを行ったときでも良い結果になっていることから、この場合における動的構造も検証した。実施例1に従い、拘束なし、二面角揺らぎを用いた拘束及び均一な拘束(500)の条件のもとMDを行った。
図97〜図108に1LUDに対して行った分子動力学計算の各原子における動的挙動の結果を示した。図97〜図108は1LUD(MODEL1)のMD計算の結果である。図97および図98は活性部位の主鎖原子、図99および図100は受容体の主鎖原子、図101および図102は活性部位の側鎖原子、図103および図104は受容体の側鎖原子、図105および図106は活性部位の全原子、図107および図108は受容体の全原子、における動的挙動の結果を示す図である。1LUDのPDBファイル内に記載されている24種類の各モデル構造をMODEL1と活性部位の主鎖原子においてrmsを計算し、その平均rmsを点線で表示した。二面角拘束があるとき(A)とないとき(B)及び二面角拘束が500で一定(C)において、活性部位の主鎖原子の初期構造からのずれをrmsで表示した。
ここには記載しないが、1CBQ、1J9G、1MMB、1BZF(MODEL18)、1YER、1A9U及び1UK3(B鎖)に関しても主鎖二面角揺らぎに基づく拘束MDの結果を見ると、図109〜図111と同様に主鎖原子の抑制があると、拘束のない側鎖原子にも一定動きを示した。よって、受容体の動きにおいて主鎖原子の動きの比重が大きいことが理解できた。
(異なる条件での結合解析)
ここでは、上述した実施形態のリガンド探索装置100により、二面角拘束MD及びクラスタリングのパラメータが異なっても誘導が生じることを検証した。拘束の最大値を100に、最小値を0に設定し、受容体動的構造クラスタリング定数をα=80.0%およびβ=1.0Åに設定して、その他は実施例2に従った。ただし、受容体動的構造クラスターには0〜0.1nsecの範囲内で100fsecごとの母集団で作られたものを使用した。また、活性部位の定義は、リガンドの各原子から半径6Å以内にある受容体残基とした。
図109〜図111には、異なる条件で受容体/リガンド結合の結果を示した。
(i)1BZF(MODEL18)で、リガンド結合により活性部位の主鎖原子rmsで0.2686の誘導が生じた(図109)。活性部位全体のrmsでは0.1224の誘導が生じた。リガンドのrmsは0.8526であった。
(ii)1YERで、リガンド結合により活性部位の主鎖原子rmsで0.2376の誘導が生じた(図110)。活性部位全体のrmsでは0.0816の誘導が生じた。リガンドのrmsは0.7246であった。
(iii)1A9Uで、リガンド結合により活性部位の主鎖原子rmsで0.2150の誘導が生じた(図111)。活性部位全体のrmsでは0.0464の誘導が生じた。リガンドのrmsは0.9464であった。
ただし、緑色は正解構造、青色は初期構造、赤色は最適構造。要素色は正解リガンド、水色は最適リガンド、である。
図109〜図111で示すように、各条件が異なっていても、与えられた条件の中で最適な結果を生じることができた。
(正解構造を初期構造に選んだときの結合解析)
ここでは、DHFRの1BZF及び1LUDはリガンドの結合様式が似ているので、上述した実施形態のリガンド探索装置100により、構造活性相関情報を一部変更し1BZFのリガンドの結合解析を行った。条件としては、初期構造に1BZF(MODEL18)を使用し、0〜0.1nsecまでの母集団より作成したクラスターを使用した。
図112には、1BZFの活性部位内における空間指定を示した。図112は1BZF用に変更した構造活性相関情報に関する図である。図113および図114には、1BZFにおける受容体/リガンド結合の結果を示した。図113および図114は1BZF(MODEL18)のリガンド結合解析の結果である。
(i)最適化したときの受容体には初期構造を選択した。リガンドのrmsは0.8884であった(図113)。
(ii)trimetrexate、1BZF(MODEL18)のリガンドである(図114)。
初期構造が元々PDBに登録されていた構造、つまり最適構造であったため、計算結果でもそれが図113および図114のように再現できた。
以上のように、本発明にかかるリガンド探索装置、リガンド探索方法、プログラム、および記録媒体は、医農薬の分子設計等を中心に、受容体/リガンド結合の解析を行う分野(医薬品設計)において、極めて有用であると考えられる。本発明は、産業上多くの分野、特に医薬品、食品、化粧品、医療、構造解析、機能解析等の分野で広く実施することができ、故に極めて有用である。
本発明の基本原理を示す概念図である。 sp2軌道原子におけるダミー水素原子を示す図である。 金属原子におけるダミー原子を示す図である。 構造活性相関(SAR)情報をもとに活性部位内にリガンドを入れるための初期座標(B)を示す図である。 構造活性相関(SAR)情報をもとに活性部位内にリガンドを入れるための初期座標(B)を示す図である。 構造活性相関(SAR)情報をもとに活性部位内にリガンドを入れるための初期座標(B)を示す図である。 構造活性相関(SAR)情報をもとに活性部位内にリガンドを入れるための初期座標(B)を示す図である。 構造活性相関(SAR)情報をもとに活性部位内にリガンドを入れるための初期座標(B)を示す図である。 水素結合角の定義を示す図である。 スタッキングにおける角度の定義を示す図である。 1LUDのMODEL1における基準振動解析の結果を示す図である。 MD及びクラスタリングのパラメータとスコアとの比較の結果を示す図である。 クラスタリング定数を固定した時のMDでの二面角拘束の最大値および最小値の分布を示す図である。 拘束パラメータを示す図である。 クラスタリングのパラメータを固定した時の二面角拘束パラメータの分布を示す図である。 クラスタリングのパラメータを固定した時の二面角拘束パラメータの分布を示す図である。 クラスタリングのパラメータを固定した時の二面角拘束パラメータの分布を示す図である。 クラスタリングのパラメータを固定した時の二面角拘束パラメータの分布を示す図である。 1LUD(MODEL1)のMDの結果を示す図である。 二面角拘束なしでMDを計算させた時のNMR構造との比較結果を示す図である。 二面角拘束ありでMDを計算させた時のNMR構造との比較結果を示す図である。 1CBQのアライメントを示した図である。 1CBQの立体構造を示す図である。 1CBQの立体構造を示す図である。 1CBQのX線構造とモデル構造の相違をrmsで表示した図である。 1CBQのX線構造とモデル構造の基準振動解析の結果を示す図である。 1CBQのX線構造とモデル構造の基準振動解析の結果を示す図である。 1CBQのX線構造とモデル構造のMD計算の結果を示す図である。 1J9Gのアライメントを示す図である。 1J9Gの立体構造を示す図である。 1J9Gの立体構造を示す図である。 1J9GのX線構造とモデル構造の相違をrmsで表示した図である。 1J9GのX線構造とモデル構造の基準振動解析の結果を示す図である。 1J9GのX線構造とモデル構造の基準振動解析の結果を示す図である。 1J9GのX線構造とモデル構造のMD計算の結果を示す図である。 1MMBのアライメントを示す図である。 1MMBの立体構造を示す図である。 1MMBの立体構造を示す図である。 1MMBのX線構造とモデル構造の相違をrmsで表示した図である。 1J9GのX線構造とモデル構造の基準振動解析の結果を示す図である。 1J9GのX線構造とモデル構造の基準振動解析の結果を示す図である。 1MMBのX線構造とモデル構造のMD計算の結果を示す図である。 ジヒドロ葉酸還元酵素の立体構造を示す図である。 1BZF(MODEL18)の基準振動解析の結果を示す図である。 1BZF(MODEL18)のMD計算の結果を示す図である。 1LUD(MODEL4)より得られた構造活性相関情報を示す図である。 1BZF(MODEL18)における活性部位・リガンド結合解析の結果を示す図である。 1BZF(MODEL4)・リガンド結合を示す図である。 1BZF(MODEL4)・リガンド結合を示す図である。 1BZF(MODEL4)・リガンド結合を示す図である。 heat shock protein 90の立体構造を示す図である。 1YERの基準振動解析の結果を示す図である。 1YERのMD計算の結果を示す図である。 1YETより得られた構造活性相関情報を示す図である。 1YERにおける活性部位・リガンド結合解析の結果を示す図である。 1YER・リガンド結合を示す図である。 1YER・リガンド結合を示す図である。 mitogen−activated protein kinaseの立体構造を示す図である。 1A9Uの基準振動解析の結果を示す図である。 1A9UのMD計算の結果を示す図である。 1OUKより得られた構造活性相関情報を示す図である。 1A9Uにおける活性部位・リガンド結合解析の結果を示す図である。 1A9U・リガンド結合を示す図である。 1A9U・リガンド結合を示す図である。 1A9U・リガンド結合を示す図である。 1AIXの立体構造を示す図である。 in silico screeningの結果を示す図である。 タンパク質/リガンド複合体構造を示す図である。 タンパク質/リガンド複合体構造を示す図である。 タンパク質/リガンド複合体構造を示す図である。 タンパク質/リガンド複合体構造を示す図である。 タンパク質/リガンド複合体構造を示す図である。 タンパク質/リガンド複合体構造を示す図である。 タンパク質/リガンド複合体構造を示す図である。 タンパク質/リガンド複合体構造を示す図である。 SARSプロテアーゼの立体構造を示す図である。 1UK3(B鎖)の基準振動解析の結果を示す図である。 1UK3(B鎖)のMD計算の結果を示す図である。 1UK4(B鎖)より得られた構造活性相関情報を示す図である。 1UK3(B鎖)におけるin silicoスクリーニングの結果を示す図である。 1UK3と1UK4との比較結果を示す図である。 in silicoスクリーニングの順位1を示す図である。 in silicoスクリーニングの順位1を示す図である。 1UK3(B鎖)より得られた構造活性相関情報を示す図である。 1UK3(B鎖)と1UK4(B鎖)との比較結果を示す図である。 SAR3ヵ所指定で実行したin silicoスクリーニングの結果を示す図である。 1UK3(B鎖)より得られた構造活性相関情報を示す図である。 SAR5ヵ所指定で実行したハイスループットスクリーニングの結果を示す図である。 1UK3(B鎖)と1UK4(B鎖)との比較結果を示す図である。 1UK3(B鎖)より得られた構造活性相関情報を示す図である。 リガンド原子タイプ指定変更で実行したハイスループットスクリーニングの結果を示す図である。 1UK3(B鎖)と1UK4(B鎖)との比較結果を示す図である。 1UK4(B鎖)より得られた構造活性相関情報を示す図である。 受容体を固定した状態で実行したハイスループットスクリーニングの結果を示す図である。 1UK3と1UK4を重ね合わせたリガンドと計算結果のリガンドとの比較結果を示す図である。 1AXJにおける二面角拘束MDパラメータの分布を示す図である。 1LUD(MODEL1)のMD計算の結果を示す図である。 1LUD(MODEL1)のMD計算の結果を示す図である。 1LUD(MODEL1)のMD計算の結果を示す図である。 1LUD(MODEL1)のMD計算の結果を示す図である。 1LUD(MODEL1)のMD計算の結果を示す図である。 1LUD(MODEL1)のMD計算の結果を示す図である。 1LUD(MODEL1)のMD計算の結果を示す図である。 1LUD(MODEL1)のMD計算の結果を示す図である。 1LUD(MODEL1)のMD計算の結果を示す図である。 1LUD(MODEL1)のMD計算の結果を示す図である。 1LUD(MODEL1)のMD計算の結果を示す図である。 1LUD(MODEL1)のMD計算の結果を示す図である。 異なる条件で受容体/リガンドの結合結果を示す図である。 異なる条件で受容体/リガンドの結合結果を示す図である。 異なる条件で受容体/リガンドの結合結果を示す図である。 1BZF用に変更した構造活性相関情報を示す図である。 1BZF(MODEL18)のリガンド結合解析の結果を示す図である。 1BZF(MODEL18)のリガンド結合解析の結果を示す図である。 本実施形態における本システムのメイン処理の一例を示すフローチャートである。 本発明が適用される本システムの構成の一例を示すブロック図である。 本発明が適用される本システムの相互作用関数計算部102cの構成の一例を示すブロック図である。 本発明が適用される本システムのリガンド評価部102dの構成の一例を示すブロック図である。
符号の説明
100 リガンド探索装置
102 制御部
102a 構造変化後タンパク質座標データ選択部
102b 空間点指定部
102c 相互作用関数計算部
102d リガンド評価部
104 通信制御インターフェース部
106 記憶部
106a リガンド座標データベース
106b タンパク質座標データベース
106c 構造変化後タンパク質座標データファイル
106d 指定空間点ファイル
106e 相互作用関数計算結果ファイル
106f リガンド評価結果ファイル
108 入出力制御インターフェース部
112 入力装置
114 出力装置
200 外部システム
300 ネットワーク

Claims (31)

  1. 単数または複数鎖のタンパク質の座標データが与えられた場合に、当該タンパク質と結合するリガンドを探索するリガンド探索装置において、
    上記タンパク質の座標データに対して、誘導適合を反映した誘導適合パラメータを用いて動的挙動を考慮した構造変化を行い、構造変化後タンパク質座標データを選択する構造変化後タンパク質座標データ選択手段と、
    上記構造変化後タンパク質座標データ選択手段にて選択された上記構造変化後タンパク質座標データから、上記リガンドと重ね合わせを行う空間点を指定する空間点指定手段と、
    上記空間点指定手段にて指定された上記空間点と、上記リガンドのリガンド座標データとを用いて、上記タンパク質と上記リガンドとが結合した場合の相互作用関数を計算する相互作用関数計算手段と、
    上記相互作用関数計算手段により計算された上記相互作用関数に基づいて当該タンパク質と結合する上記リガンドを評価するリガンド評価手段と、
    を備えたことを特徴とするリガンド探索装置。
  2. 請求項1に記載のリガンド探索装置において、上記相互作用関数計算手段は、以下の数式1に示すSscore(i,j)を用いて上記相互作用関数を計算することを特徴とするリガンド探索装置。
    Figure 2006252485
    ・・・(数式1)
    (ここで、dij sは該当タンパク質中のi番目とj番目の空間点距離である。また、dij Cは化合物中のi番目とj番目の原子間距離である。また、αは、該当タンパク質中の空間点群と化合物が完全に重なりあった場合にSscore(i,j)を最大値とするための定数である。また、βは重なりと定義できる限界値を与えるための定数である。)
  3. 請求項1または2に記載のリガンド探索装置において、上記相互作用関数計算手段は、
    上記相互作用関数のスコアが最大になるように最適化する相互作用関数最適化手段、
    をさらに備えたことを特徴とするリガンド探索装置。
  4. 請求項3に記載のリガンド探索装置において、上記相互作用関数計算手段は、
    上記相互作用関数最適化手段により上記相互作用関数を最適化した後に、重ねあわせた上記リガンドに対して、上記タンパク質との相互作用エネルギーを計算し、当該相互作用エネルギーについてリガンド立体構造データのコンフォメーションを微調整しながら最適化する相互作用エネルギー最適化手段、
    をさらに備えたことを特徴とするリガンド探索装置。
  5. 請求項4に記載のリガンド探索装置において、上記リガンド評価手段は、
    上記相互作用エネルギー最適化手段により最適化した後に、上記リガンド立体構造データのコンフォメーションを大きく変動させた後、再度、上記相互作用関数計算手段を実行し、上記相互作用関数計算手段により計算された上記相互作用関数に基づいて当該タンパク質と結合する上記リガンドの再評価を行う再評価手段、
    をさらに備えたことを特徴とするリガンド探索装置。
  6. 請求項1から5のいずれか1つに記載のリガンド探索装置において、上記構造変化後タンパク質座標データ選択手段は、
    上記誘導適合パラメータおよび/または上記構造変化後タンパク質座標データを算出するときに、上記タンパク質座標データに対し基準振動計算を行い、各アミノ酸のゆらぎの大きさを求め、当該ゆらぎの大きさを拘束条件として、分子動力学計算を行うこと、
    を特徴とするリガンド探索装置。
  7. 請求項6に記載のリガンド探索装置において、上記構造変化後タンパク質座標データ選択手段は、
    基準振動計算より主鎖原子の2面角のゆらぎの値を算出し、当該ゆらぎ値を以下の数式2または数式3に示す分子動力学計算における力の定数Kとすることにより、分子動力学計算を行うこと、
    を特徴とするリガンド探索装置。

    Erot=Krot(φ―φ0)2 ・・・(数式2)

    (Erotはタンパク質の立体構造中において主鎖原子の2面角のエネルギーを示す。φは主鎖原子の2面角である。φ0は主鎖原子の2面角の標準値である。ここで、Krotの値が大きい場合は、φはφ0に拘束される。)

    Epos=Kpos(r−r0)2 ・・・(数式3)

    (Eposはタンパク質の立体構造中において主鎖原子の位置のエネルギーを示す。rは主鎖原子の座標である。r0は主鎖原子の座標の標準値である。ここで、Kposの値が大きい場合は、rはr0に拘束される。)
  8. 請求項1から7のいずれか1つに記載のリガンド探索装置において、上記相互作用関数計算手段は、
    上記相互作用関数として、相互作用エネルギー関数にタンパク質の動的性質を表現する動的性質関数を「弾性エネルギー」として加えて用いること、
    を特徴とするリガンド探索装置。
  9. 請求項8に記載のリガンド探索装置において、上記相互作用関数計算手段は、
    「弾性エネルギー」として、タンパク質の局所的な柔らかさを考慮し、以下の数式4に示す関数「U衝突」を適応すること、
    を特徴とするリガンド探索装置。
    Figure 2006252485
    ψ(i,j)=K衝突 * (R衝突(i,j)−R)2
    ・・・(数式4)
    (Mは衝突を不許可とする活性部位の原子の数であり、Nはリガンドの原子の数である。活性部位における動的挙動の少ない側鎖原子及び主鎖原子のみのi番目の原子とリガンドのj番目の原子との原子間距離Rが衝突距離「R衝突(i,j)」以内のとき、ψ(i,j)を計算するように定義する。)
  10. 請求項1から7のいずれか1つに記載のリガンド探索装置において、上記相互作用関数計算手段は、
    上記相互作用関数として、相互作用エネルギー関数に、当該タンパク質の基準振動解析結果または二次構造判定結果をタンパク質の動的性質を表現する動的性質関数として加えて用いること、
    を特徴とするリガンド探索装置。
  11. 単数または複数鎖のタンパク質の座標データが与えられた場合に、当該タンパク質と結合するリガンドを探索するリガンド探索方法において、
    上記タンパク質の座標データに対して、誘導適合を反映した誘導適合パラメータを用いて動的挙動を考慮した構造変化を行い、構造変化後タンパク質座標データを選択する構造変化後タンパク質座標データ選択ステップと、
    上記構造変化後タンパク質座標データ選択ステップにて選択された上記構造変化後タンパク質座標データから、上記リガンドと重ね合わせを行う空間点を指定する空間点指定ステップと、
    上記空間点指定ステップにて指定された上記空間点と、上記リガンドのリガンド座標データとを用いて、上記タンパク質と上記リガンドとが結合した場合の相互作用関数を計算する相互作用関数計算ステップと、
    上記相互作用関数計算ステップにより計算された上記相互作用関数に基づいて当該タンパク質と結合する上記リガンドを評価するリガンド評価ステップと、
    を含むことを特徴とするリガンド探索方法。
  12. 請求項11に記載のリガンド探索方法において、上記相互作用関数計算ステップは、以下の数式1に示すSscore(i,j)を用いて上記相互作用関数を計算することを特徴とするリガンド探索方法。
    Figure 2006252485
    ・・・(数式1)
    (ここで、dij sは該当タンパク質中のi番目とj番目の空間点距離である。また、dij Cは化合物中のi番目とj番目の原子間距離である。また、αは、該当タンパク質中の空間点群と化合物が完全に重なりあった場合にSscore(i,j)を最大値とするための定数である。また、βは重なりと定義できる限界値を与えるための定数である。)
  13. 請求項11または12に記載のリガンド探索方法において、上記相互作用関数計算ステップは、
    上記相互作用関数のスコアが最大になるように最適化する相互作用関数最適化ステップ、
    をさらに含むことを特徴とするリガンド探索方法。
  14. 請求項13に記載のリガンド探索方法において、上記相互作用関数計算ステップは、
    上記相互作用関数最適化ステップにより上記相互作用関数を最適化した後に、重ねあわせた上記リガンドに対して、上記タンパク質との相互作用エネルギーを計算し、当該相互作用エネルギーについてリガンド立体構造データのコンフォメーションを微調整しながら最適化する相互作用エネルギー最適化ステップ、
    をさらに含むことを特徴とするリガンド探索方法。
  15. 請求項14に記載のリガンド探索方法において、上記リガンド評価ステップは、
    上記相互作用エネルギー最適化ステップにより最適化した後に、上記リガンド立体構造データのコンフォメーションを大きく変動させた後、再度、上記相互作用関数計算ステップを実行し、上記相互作用関数計算ステップにより計算された上記相互作用関数に基づいて当該タンパク質と結合する上記リガンドの再評価を行う再評価ステップ、
    をさらに含むことを特徴とするリガンド探索方法。
  16. 請求項11から15のいずれか1つに記載のリガンド探索方法において、上記構造変化後タンパク質座標データ選択ステップは、
    上記誘導適合パラメータおよび/または上記構造変化後タンパク質座標データを算出するときに、上記タンパク質座標データに対し基準振動計算を行い、各アミノ酸のゆらぎの大きさを求め、当該ゆらぎの大きさを拘束条件として、分子動力学計算を行うこと、
    を特徴とするリガンド探索方法。
  17. 請求項16に記載のリガンド探索方法において、上記構造変化後タンパク質座標データ選択ステップは、
    基準振動計算より主鎖原子の2面角のゆらぎの値を算出し、当該ゆらぎ値を以下の数式2または数式3に示す分子動力学計算における力の定数Kとすることにより、分子動力学計算を行うこと、
    を特徴とするリガンド探索方法。

    Erot=Krot(φ―φ0)2 ・・・(数式2)

    (Erotはタンパク質の立体構造中において主鎖原子の2面角のエネルギーを示す。φは主鎖原子の2面角である。φ0は主鎖原子の2面角の標準値である。ここで、Krotの値が大きい場合は、φはφ0に拘束される。)

    Epos=Kpos(r−r0)2 ・・・(数式3)

    (Eposはタンパク質の立体構造中において主鎖原子の位置のエネルギーを示す。rは主鎖原子の座標である。r0は主鎖原子の座標の標準値である。ここで、Kposの値が大きい場合は、rはr0に拘束される。)
  18. 請求項11から17のいずれか1つに記載のリガンド探索方法において、上記相互作用関数計算ステップは、
    上記相互作用関数として、相互作用エネルギー関数にタンパク質の動的性質を表現する動的性質関数を「弾性エネルギー」として加えて用いること、
    を特徴とするリガンド探索方法。
  19. 請求項18に記載のリガンド探索方法において、上記相互作用関数計算ステップは、
    「弾性エネルギー」として、タンパク質の局所的な柔らかさを考慮し、以下の数式4に示す関数「U衝突」を適応すること、
    を特徴とするリガンド探索方法。
    Figure 2006252485
    ψ(i,j)=K衝突 * (R衝突(i,j)−R)2
    ・・・(数式4)
    (Mは衝突を不許可とする活性部位の原子の数であり、Nはリガンドの原子の数である。活性部位における動的挙動の少ない側鎖原子及び主鎖原子のみのi番目の原子とリガンドのj番目の原子との原子間距離Rが衝突距離「R衝突(i,j)」以内のとき、ψ(i,j)を計算するように定義する。)
  20. 請求項11から17のいずれか1つに記載のリガンド探索方法において、上記相互作用関数計算ステップは、
    上記相互作用関数として、相互作用エネルギー関数に、当該タンパク質の基準振動解析結果または二次構造判定結果をタンパク質の動的性質を表現する動的性質関数として加えて用いること、
    を特徴とするリガンド探索方法。
  21. 単数または複数鎖のタンパク質の座標データが与えられた場合に、当該タンパク質と結合するリガンドを探索するリガンド探索方法をコンピュータに実行させるプログラムにおいて、
    上記タンパク質の座標データに対して、誘導適合を反映した誘導適合パラメータを用いて動的挙動を考慮した構造変化を行い、構造変化後タンパク質座標データを選択する構造変化後タンパク質座標データ選択ステップと、
    上記構造変化後タンパク質座標データ選択ステップにて選択された上記構造変化後タンパク質座標データから、上記リガンドと重ね合わせを行う空間点を指定する空間点指定ステップと、
    上記空間点指定ステップにて指定された上記空間点と、上記リガンドのリガンド座標データとを用いて、上記タンパク質と上記リガンドとが結合した場合の相互作用関数を計算する相互作用関数計算ステップと、
    上記相互作用関数計算ステップにより計算された上記相互作用関数に基づいて当該タンパク質と結合する上記リガンドを評価するリガンド評価ステップと、
    を含むリガンド探索方法をコンピュータに実行させることを特徴とするプログラム。
  22. 請求項21に記載のプログラムにおいて、上記相互作用関数計算ステップは、以下の数式1に示すSscore(i,j)を用いて上記相互作用関数を計算することを特徴とするプログラム。
    Figure 2006252485
    ・・・(数式1)
    (ここで、dij sは該当タンパク質中のi番目とj番目の空間点距離である。また、dij Cは化合物中のi番目とj番目の原子間距離である。また、αは、該当タンパク質中の空間点群と化合物が完全に重なりあった場合にSscore(i,j)を最大値とするための定数である。また、βは重なりと定義できる限界値を与えるための定数である。)
  23. 請求項21または22に記載のプログラムにおいて、上記相互作用関数計算ステップは、
    上記相互作用関数のスコアが最大になるように最適化する相互作用関数最適化ステップ、
    をさらに含むことを特徴とするプログラム。
  24. 請求項23に記載のプログラムにおいて、上記相互作用関数計算ステップは、
    上記相互作用関数最適化ステップにより上記相互作用関数を最適化した後に、重ねあわせた上記リガンドに対して、上記タンパク質との相互作用エネルギーを計算し、当該相互作用エネルギーについてリガンド立体構造データのコンフォメーションを微調整しながら最適化する相互作用エネルギー最適化ステップ、
    をさらに含むことを特徴とするプログラム。
  25. 請求項24に記載のプログラムにおいて、上記リガンド評価ステップは、
    上記相互作用エネルギー最適化ステップにより最適化した後に、上記リガンド立体構造データのコンフォメーションを大きく変動させた後、再度、上記相互作用関数計算ステップを実行し、上記相互作用関数計算ステップにより計算された上記相互作用関数に基づいて当該タンパク質と結合する上記リガンドの再評価を行う再評価ステップ、
    をさらに含むことを特徴とするプログラム。
  26. 請求項21から25のいずれか1つに記載のプログラムにおいて、上記構造変化後タンパク質座標データ選択ステップは、
    上記誘導適合パラメータおよび/または上記構造変化後タンパク質座標データを算出するときに、上記タンパク質座標データに対し基準振動計算を行い、各アミノ酸のゆらぎの大きさを求め、当該ゆらぎの大きさを拘束条件として、分子動力学計算を行うこと、
    を特徴とするプログラム。
  27. 請求項26に記載のプログラムにおいて、上記構造変化後タンパク質座標データ選択ステップは、
    基準振動計算より主鎖原子の2面角のゆらぎの値を算出し、当該ゆらぎ値を以下の数式2または数式3に示す分子動力学計算における力の定数Kとすることにより、分子動力学計算を行うこと、
    を特徴とするプログラム。

    Erot=Krot(φ―φ0)2 ・・・(数式2)

    (Erotはタンパク質の立体構造中において主鎖原子の2面角のエネルギーを示す。φは主鎖原子の2面角である。φ0は主鎖原子の2面角の標準値である。ここで、Krotの値が大きい場合は、φはφ0に拘束される。)

    Epos=Kpos(r−r0)2 ・・・(数式3)

    (Eposはタンパク質の立体構造中において主鎖原子の位置のエネルギーを示す。rは主鎖原子の座標である。r0は主鎖原子の座標の標準値である。ここで、Kposの値が大きい場合は、rはr0に拘束される。)
  28. 請求項21から27のいずれか1つに記載のプログラムにおいて、上記相互作用関数計算ステップは、
    上記相互作用関数として、相互作用エネルギー関数にタンパク質の動的性質を表現する動的性質関数を「弾性エネルギー」として加えて用いること、
    を特徴とするプログラム。
  29. 請求項28に記載のプログラムにおいて、上記相互作用関数計算ステップは、
    「弾性エネルギー」として、タンパク質の局所的な柔らかさを考慮し、以下の数式4に示す関数「U衝突」を適応すること、
    を特徴とするプログラム。
    Figure 2006252485
    ψ(i,j)=K衝突 * (R衝突(i,j)−R)2
    ・・・(数式4)
    (Mは衝突を不許可とする活性部位の原子の数であり、Nはリガンドの原子の数である。活性部位における動的挙動の少ない側鎖原子及び主鎖原子のみのi番目の原子とリガンドのj番目の原子との原子間距離Rが衝突距離「R衝突(i,j)」以内のとき、ψ(i,j)を計算するように定義する。)
  30. 請求項21から27のいずれか1つに記載のプログラムにおいて、上記相互作用関数計算ステップは、
    上記相互作用関数として、相互作用エネルギー関数に、当該タンパク質の基準振動解析結果または二次構造判定結果をタンパク質の動的性質を表現する動的性質関数として加えて用いること、
    を特徴とするプログラム。
  31. 請求項21から30のいずれか1つに記載のプログラムを記録したことを特徴とするコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
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