JP2006252136A - 消波ブロックで被覆した防波堤の維持管理支援方法およびそのプログラム - Google Patents
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Abstract
【課題】モンテカルロシミュレーションに基づく被災度解析により消波ブロックの被災進行状況を予測することにより、合理的な保守・補修計画を立案する。
【解決手段】事前に、消波ブロックの被災状態に応じて、消波ブロック被災度を1又は複数の被災度レベルに区分し、消波ブロックの変形量調査結果に基づいて、現状の消波ブロック被災度を算定する第1ステップと、モンテカルロシミュレーションに基づく被災度解析によって、将来の消波ブロック被災度の進行状況を、経過年数に対する累積被災度の確率分布によって予測する第2ステップと、前記累積被災度の確率分布において、補修要の被災度レベルの超過確率が任意に設定した許容超過確率を超える経過年次に基づいて補修時期を判断する第3ステップとからなる。
【選択図】図1
【解決手段】事前に、消波ブロックの被災状態に応じて、消波ブロック被災度を1又は複数の被災度レベルに区分し、消波ブロックの変形量調査結果に基づいて、現状の消波ブロック被災度を算定する第1ステップと、モンテカルロシミュレーションに基づく被災度解析によって、将来の消波ブロック被災度の進行状況を、経過年数に対する累積被災度の確率分布によって予測する第2ステップと、前記累積被災度の確率分布において、補修要の被災度レベルの超過確率が任意に設定した許容超過確率を超える経過年次に基づいて補修時期を判断する第3ステップとからなる。
【選択図】図1
Description
本発明は、モンテカルロシミュレーション(以下、MCSともいう。)に基づく被災度解析により、消波ブロックの被災進行状況を予測することにより、合理的な保守・補修計画を立案可能とした消波ブロックで被覆した防波堤の維持管理支援方法およびそのプログラムに関する。
港湾施設の一つとして、港内の静穏を維持し、荷役の円滑化、船舶の運航・停泊の安全及び港内施設の保全等を図るために、沿岸水域に防波堤が設けられている。この防波堤は、構造形式で分類すると、傾斜堤、直立堤、混成堤、消波ブロック被覆堤などに分類されるが、中でも消波ブロックで港外側前面を被覆した防波堤の場合は、沖から迫る波を消波ブロックによって打ち消す作用があり、防波堤の波越えを効果的に防ぐことができる等の点から多用されている(下記非特許文献1等参照)。
前記消波ブロックは、波浪の消波が効率的に行われるように、積み重ねて設置されるが、波浪が強い場合には波浪によって消波ブロックが移動し、徐々に消波機能が低下するとともに、法肩部の堤体が露出する段階になると、堤体を構成する捨石や袋詰めコンクリートが侵食されるとともに、上部工が不安定になる。さらに、侵食が進行すると、基礎捨石が吸い出され、上部工の滑落や堤体の崩壊が生じることになる。
前記消波ブロックは、波浪の消波が効率的に行われるように、積み重ねて設置されるが、波浪が強い場合には波浪によって消波ブロックが移動し、徐々に消波機能が低下するとともに、法肩部の堤体が露出する段階になると、堤体を構成する捨石や袋詰めコンクリートが侵食されるとともに、上部工が不安定になる。さらに、侵食が進行すると、基礎捨石が吸い出され、上部工の滑落や堤体の崩壊が生じることになる。
従って、下記非特許文献2では、港湾施設の機能を良好に維持し、安全性の低下を防止するために、点検、評価、補修等の総合的な維持管理に努めることとされ、構造物の点検、調査の結果、劣化の進行が認められた場合、或いは劣化の進行が予測される場合には、残存耐用年数を考慮した上で、維持管理対策を選定するように規定されている。
このようなマニュアル指針の下で、消波ブロックで被覆された防波堤においても、定期的に防波堤の沈下測量や、消波ブロックの変形(移動)調査測量などを実施し、補修対策を講じている。
社団法人日本港湾協会、"港湾の施設の技術上の基準・同解説"、平成11年4月 財団法人沿岸開発技術研究センター、"港湾構造物の維持・補修マニアル"、平成11年6月
社団法人日本港湾協会、"港湾の施設の技術上の基準・同解説"、平成11年4月 財団法人沿岸開発技術研究センター、"港湾構造物の維持・補修マニアル"、平成11年6月
しかしながら、防波堤に必要な機能や経年劣化した構造物の現状での機能が明確でないこと、更には今後の変形程度の想定や被災リスクを評価する方法がないことなどが相まって、変形量などの調査を行っても、その結果を用いて補修の可否判断や今後の補修時期の評価を定量的に行う方法が確立していなかった。そのため現実的には、ある程度の変形が進行していることが確認されたならば、即時に補修を実施していたが、このような維持管理方法では、十分に性能を維持可能な防波堤までもが補修対象となってしまい、経費的な無駄が大きかった。
そこで本発明の主たる課題は、モンテカルロシミュレーションに基づく被災度解析により、消波ブロックの被災進行状況を予測することにより、合理的な保守・補修計画を立案することが可能な消波ブロックを用いた防波堤の維持管理支援方法およびそのプログラムを提供することにある。
そこで本発明の主たる課題は、モンテカルロシミュレーションに基づく被災度解析により、消波ブロックの被災進行状況を予測することにより、合理的な保守・補修計画を立案することが可能な消波ブロックを用いた防波堤の維持管理支援方法およびそのプログラムを提供することにある。
前記課題を解決するために請求項1に係る本発明として、消波ブロックで港外側前面を被覆した防波堤の維持管理支援方法であって、
事前に、消波ブロックの被災状態に応じて、消波ブロック被災度を1又は複数の限界レベルに区分し、
消波ブロックの変形量調査結果に基づいて、現状の消波ブロック被災度を算定する第1ステップと、
モンテカルロシミュレーションに基づく被災度解析によって、将来の消波ブロック被災度の進行状況を、経過年数に対する累積被災度の確率分布によって予測する第2ステップと、
前記累積被災度の確率分布において、補修要の限界レベルの超過確率が任意に設定した許容超過確率を超える経過年次に基づいて補修時期を判断する第3ステップと、からなることを特徴とする消波ブロックで被覆した防波堤の維持管理支援方法が提供される。
事前に、消波ブロックの被災状態に応じて、消波ブロック被災度を1又は複数の限界レベルに区分し、
消波ブロックの変形量調査結果に基づいて、現状の消波ブロック被災度を算定する第1ステップと、
モンテカルロシミュレーションに基づく被災度解析によって、将来の消波ブロック被災度の進行状況を、経過年数に対する累積被災度の確率分布によって予測する第2ステップと、
前記累積被災度の確率分布において、補修要の限界レベルの超過確率が任意に設定した許容超過確率を超える経過年次に基づいて補修時期を判断する第3ステップと、からなることを特徴とする消波ブロックで被覆した防波堤の維持管理支援方法が提供される。
請求項2に係る本発明として、前記第3ステップにおいて、消波ブロックの補修時期が先送り可能であるならば、ライフサイクルコストに基づく被災リスク評価により、消波ブロックの最適補修年次を検討する請求項1記載の消波ブロックで被覆した防波堤の維持管理支援方法が提供される。
請求項3に係る本発明として、前記限界レベルの設定は、消波ブロック被災度の進行状態を、健全状態、進行状態、危険状態、崩壊状態に4区分し、前記進行状態と危険状態との境界を補修要の限界レベルとして設定し、かつ前記危険状態と崩壊状態との境界を機能喪失の限界レベルとして設定する請求項1,2いずれかに記載の消波ブロックで被覆した防波堤の維持管理支援方法が提供される。
請求項4に係る本発明として、前記補修要の限界レベル及び機能喪失の限界レベルとは別に、1年以内に前記補修要の限界レベルに到達し得ると想定される補修要レベル換算値を設定し、前記第1ステップにおける現状の消波ブロック被災度の算定時に、該消波ブロック被災度が前記補修要レベル換算値を超えているならば、第2ステップに進むことなく、即時補修要と判断とする請求項3記載の消波ブロックで被覆した防波堤の維持管理支援方法が提供される。
請求項5に係る本発明として、コンピューターにおいて、消波ブロックの変形量調査結果に基づいて、現状の消波ブロック被災度を算定する第1ステップと、
モンテカルロシミュレーションに基づく被災度解析によって、将来の消波ブロック被災度の進行状況を、経過年数に対する累積被災度の確率分布によって予測する第2ステップと、
前記累積被災度の確率分布において、事前に消波ブロックの被災状態に応じて設定された補修要の限界レベルの超過確率が、任意に設定した許容超過確率を超える経過年次に基づいて補修時期を判断する第3ステップと、を実行させるための消波ブロックで被覆した防波堤の維持管理支援プログラムが提供される。
モンテカルロシミュレーションに基づく被災度解析によって、将来の消波ブロック被災度の進行状況を、経過年数に対する累積被災度の確率分布によって予測する第2ステップと、
前記累積被災度の確率分布において、事前に消波ブロックの被災状態に応じて設定された補修要の限界レベルの超過確率が、任意に設定した許容超過確率を超える経過年次に基づいて補修時期を判断する第3ステップと、を実行させるための消波ブロックで被覆した防波堤の維持管理支援プログラムが提供される。
以上詳説のとおり本発明によれば、モンテカルロシミュレーションに基づく被災度解析により、将来の消波ブロックの被災進行状況を予測することにより、消波ブロックの最適補修時期を的確に判断し得るようになるため、合理的な保守・補修計画を立案することが可能となる。
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳述する。
図1のフロー図に示されるように、消波ブロックで被覆された傾斜堤(以下、単に傾斜堤ともいう。)の維持管理支援方法に関し、本発明では先ず、事前設定項目として、被災レベルの設定(レベル0被災度、レベル1被災度、レベル2被災度)を行う。
次に、第1ステップに進み、消波ブロック被覆傾斜堤における消波ブロックの変形(移動)を測量等によって調査し、現状の消波ブロック被災度を算定する。算定の結果、現状の消波ブロックの被災度がレベル0被災度に達していなければ、第2ステップに進み、超える場合には即時に補修工事を実施する。
その後第2ステップにおいて、消波ブロックの被災進行の将来予測をモンテカルロシミュレーション(MCS)に基づく被災度解析により行い、経過年ごとに消波ブロック被災度の発生確率の予測を行う。その解析結果に基づいて、1年後のレベル1被災度の超過確率が許容超過確率を超える場合には、1年以内に補修工事を実施し、先送りが可能であるならば、第3ステップにおいて、消波ブロックの最適補修時期の検討として、前記モンテカルロシミュレーション(MCS)に基づく被災度解析に基づいて、レベル1被災度及びレベル2被災度の超過確率の経年変化と、ライフサイクルコスト(以下、LCCともいう。)に基づく被災リスク評価による検討を行い、これら2つの手法に基づいて、消波ブロックの最適補修時期を検討する。さらに、第4ステップにおいて、将来の保守・補修計画の策定(点検不要期間の設定、詳細点検開始時期、予想次期補修時期)を行うものである。
図1のフロー図に示されるように、消波ブロックで被覆された傾斜堤(以下、単に傾斜堤ともいう。)の維持管理支援方法に関し、本発明では先ず、事前設定項目として、被災レベルの設定(レベル0被災度、レベル1被災度、レベル2被災度)を行う。
次に、第1ステップに進み、消波ブロック被覆傾斜堤における消波ブロックの変形(移動)を測量等によって調査し、現状の消波ブロック被災度を算定する。算定の結果、現状の消波ブロックの被災度がレベル0被災度に達していなければ、第2ステップに進み、超える場合には即時に補修工事を実施する。
その後第2ステップにおいて、消波ブロックの被災進行の将来予測をモンテカルロシミュレーション(MCS)に基づく被災度解析により行い、経過年ごとに消波ブロック被災度の発生確率の予測を行う。その解析結果に基づいて、1年後のレベル1被災度の超過確率が許容超過確率を超える場合には、1年以内に補修工事を実施し、先送りが可能であるならば、第3ステップにおいて、消波ブロックの最適補修時期の検討として、前記モンテカルロシミュレーション(MCS)に基づく被災度解析に基づいて、レベル1被災度及びレベル2被災度の超過確率の経年変化と、ライフサイクルコスト(以下、LCCともいう。)に基づく被災リスク評価による検討を行い、これら2つの手法に基づいて、消波ブロックの最適補修時期を検討する。さらに、第4ステップにおいて、将来の保守・補修計画の策定(点検不要期間の設定、詳細点検開始時期、予想次期補修時期)を行うものである。
以下、上記各ステップ毎に詳述する。
〔事前設定項目〕
(被災レベルの設定)
図3(A)〜(C)の被災進行状況の模式図に示されるように、消波ブロック被覆傾斜堤の被災は、下記の順序で進行するものと認められる。
(Step-1);消波ブロックの法先部洗掘およびロッキング
年最大波クラスの高波浪来襲時に傾斜堤法先部の海底面が洗掘し、最下端の消波ブロックが沈下する。それに伴って、咬み合わさっていた消波ブロックにゆるみが生じ、波浪によるロッキングが発生する。
(Step-2);表層の消波ブロックの移動
消波ブロックの法先部の洗掘に伴う沈下や水面付近で繰り返されるロッキング等により、斜面部の表層の消波ブロックが水面下方向に沈下、移動する。
(Step-3);上部工前面の消波ブロックの移動
斜面部の表層の消波ブロックが移動すると、法肩部の消波ブロックがなくなり、さらに上部工前面の消波ブロックも移動して、上部工港外側の壁面が露出する。
(Step-4);上部工の滑動移動
上部工港外側の壁面が露出して上部工に高波浪が作用すると、上部工下面の袋詰コンクリートや基礎砕石が吸い出され、上部工が不安定になり滑動移動する。上部工が滑動移動すると、さらに基礎砕石が吸い出され、上部工の滑落、堤体の崩壊は生じる。
〔事前設定項目〕
(被災レベルの設定)
図3(A)〜(C)の被災進行状況の模式図に示されるように、消波ブロック被覆傾斜堤の被災は、下記の順序で進行するものと認められる。
(Step-1);消波ブロックの法先部洗掘およびロッキング
年最大波クラスの高波浪来襲時に傾斜堤法先部の海底面が洗掘し、最下端の消波ブロックが沈下する。それに伴って、咬み合わさっていた消波ブロックにゆるみが生じ、波浪によるロッキングが発生する。
(Step-2);表層の消波ブロックの移動
消波ブロックの法先部の洗掘に伴う沈下や水面付近で繰り返されるロッキング等により、斜面部の表層の消波ブロックが水面下方向に沈下、移動する。
(Step-3);上部工前面の消波ブロックの移動
斜面部の表層の消波ブロックが移動すると、法肩部の消波ブロックがなくなり、さらに上部工前面の消波ブロックも移動して、上部工港外側の壁面が露出する。
(Step-4);上部工の滑動移動
上部工港外側の壁面が露出して上部工に高波浪が作用すると、上部工下面の袋詰コンクリートや基礎砕石が吸い出され、上部工が不安定になり滑動移動する。上部工が滑動移動すると、さらに基礎砕石が吸い出され、上部工の滑落、堤体の崩壊は生じる。
消波ブロックの被災は上述の順序で進行すると考えられるが、消波ブロックの被災は地震による被災と異なり、1回のみの外力に対する変形ではなく、経年的に発生する外力によって進行する変形の累積である。このため、消波ブロックの被災の検討に当たっては、経年的に発生する不規則な外力に対する変形を求め、その累積値に対して照査する必要がある。
以上より、消波ブロックの被災の進行過程は、図4に示されるように、被災状態に応じて次の4段階に区分することができる。
(1)健全状態;消波ブロックの変形がなく、全く健全な状態
(2)進行状態;消波ブロックの変形が、ロッキング等の微小変形で、上部工の移動等の防波堤の性能に影響を及ぼさない状態
(3)危険状態;消波ブロックの変形が進行して、表層部の消波ブロックが移動し、上部工の移動等の防波堤の性能に対して影響を及ぼす可能性がある状態
(4)崩壊状態;消波ブロックが顕著に変形して上部工前面が露出し、防波堤の性能が損なわれ、機能が喪失する可能性がある状態
消波ブロックが健全状態から進行状態にある場合は、傾斜堤の機能が保持されるため、その間は補修等の必要はなく、消波ブロックの補修は進行状態から危険状態に進行する段階で実施することが望ましいと考えられる。また、崩壊状態は防波堤としての機能喪失状態であり、この状態になることがないように避けなければならない。
(1)健全状態;消波ブロックの変形がなく、全く健全な状態
(2)進行状態;消波ブロックの変形が、ロッキング等の微小変形で、上部工の移動等の防波堤の性能に影響を及ぼさない状態
(3)危険状態;消波ブロックの変形が進行して、表層部の消波ブロックが移動し、上部工の移動等の防波堤の性能に対して影響を及ぼす可能性がある状態
(4)崩壊状態;消波ブロックが顕著に変形して上部工前面が露出し、防波堤の性能が損なわれ、機能が喪失する可能性がある状態
消波ブロックが健全状態から進行状態にある場合は、傾斜堤の機能が保持されるため、その間は補修等の必要はなく、消波ブロックの補修は進行状態から危険状態に進行する段階で実施することが望ましいと考えられる。また、崩壊状態は防波堤としての機能喪失状態であり、この状態になることがないように避けなければならない。
従って、本維持管理支援方法では、表1に示されるように、進行状態と危険状態との境界をレベル1被災度、危険状態と崩壊状態との境界をレベル2被災度と設定し、経過年数に対して求めた累積被災度がどのレベルに達しているか(どの状態の目標性能を満足しているか)を判断することによって、最も適切な補修時期を判断するものである。
経過年数に対する累積被災度は、モンテカルロシミュレーション(MCS)による被災度解析を用いて、発生確率分布として予測されることから、それぞれの被災度レベルと、それに対する許容超過確率を設定する。また、現状の消波ブロックの即時補修の判断をするための被災度レベルとしてレベル0を設定する。これは1年以内に前記補修要の被災度レベルに達しうると想定される補修要被災度レベル換算値で、レベル1被災度の期待値に対応した値とする。
〔第1ステップ〕
第1ステップでは、消波ブロックの変形量調査により、消波ブロック断面形状の計測と共に、消波ブロックの移動が生じた領域面積を測量し、下式(1)に基づいて、現状における消波ブロックの被災度N0を算出する。この消波ブロックの被災度N0は、消波ブロックの移動個数として定義されるもので、消波ブロックの変形量を示す指標値となるものである。
そして、この現状の消波ブロック被災度N0が、レベル0被災度に到達しているならば、次の第2ステップに進むことなく、即時補修要と判断とする。
第1ステップでは、消波ブロックの変形量調査により、消波ブロック断面形状の計測と共に、消波ブロックの移動が生じた領域面積を測量し、下式(1)に基づいて、現状における消波ブロックの被災度N0を算出する。この消波ブロックの被災度N0は、消波ブロックの移動個数として定義されるもので、消波ブロックの変形量を示す指標値となるものである。
〔第2ステップ〕
第2ステップは、将来の消波ブロック被災度の進行状況を、モンテカルロシミュレーションに基づく被災度解析によって予測するものである。
1.消波ブロックの被災度解析
(1)消波ブロックの安定性に関する評価式
消波ブロックの波浪に対する安定性を評価する方法としては、一般に下式(2)に示す一般化されたハドソン式が用いられる。
この評価式を適用する場合に問題となるのは、消波ブロックの安定数NSである。この安定数NSは、被覆材の形状、勾配、被害率のほかに、堤体設置水深、波浪条件などによっても変化するものである。
第2ステップは、将来の消波ブロック被災度の進行状況を、モンテカルロシミュレーションに基づく被災度解析によって予測するものである。
1.消波ブロックの被災度解析
(1)消波ブロックの安定性に関する評価式
消波ブロックの波浪に対する安定性を評価する方法としては、一般に下式(2)に示す一般化されたハドソン式が用いられる。
前記安定数NSの具体的算定方法として、〔期待被災度を「考慮した消波ブロックの安定重量−消波ブロック被覆堤の設計法の再検討、第1法−、港湾技術研究所報告第37巻第1号(1998.3)、高橋ら〕(以下、高橋ら(1998)という。)において安定数算定式が提案されている。この算定式は、消波ブロックの安定性に関する水理模型実験データを用いて、既往の安定数算定式であるファン・デル・メーヤ式を修正したもので、下式(3)で表されるものである。
ブロックの代表径Dnの幅あたりの移動個数N0が「被災度」と定義されるものであるため、1回の高波浪に対する被災度N0は、式(3)を変形した下式(4)にて算定することができる。
上式(3)、上式(4)に含まれる消波ブロックの種類、形状によって決まる定数a〜cに関し、aはブロックの移動個数や波数の変化に対する影響度合いを示し、bはブロックの移動個数をゼロとした場合の安定数を示すものである。
(2)モンテカルロシミュレーションを用いた消波ブロック被災度解析の諸条件
来襲波浪に対する消波ブロックの被災個数は、前式(4)を用いて求めることができる。しかし、消波ブロックの被害の進行を推定するにあたっては、主要外力である波浪の統計的変動性や各種条件の不確定要因を考慮する必要がある。
そこで本手法では、これらの確率論的な問題をモンテカルロシミュレーションを用いて検討する。モンテカルロシミュレーションとは、不確定要因をその確率分布に合わせた乱数により発生させ、これを用いて現象を繰り返し試行し、その結果を統計処理することにより確率分布を求める方法で、複雑で多段階にわたる現象を統計的に取り扱うのに適した方法である。
図2にモンテカルロシミュレーションを用いた消波ブロックの被災度解析手法の検討フローを示す。
この方法では、まず、所要期間中の高波浪の来襲頻度を仮定して1回の高波浪による消波ブロックの被災度を求める。これを所要期間中の来襲波浪回数分繰り返して、経過年に対して被災度の累積値(累積被災度)を求める。モンテカルロシミュレーションでは、これを1回の試行(1シミュレーション)として繰り返し試行するが、波浪やその他条件は、それぞれの不確定性に応じた確率分布から乱数を発生させて1シミュレーションごとに設定し直す。これらの試行を最終的に求める消波ブロックの被災度が安定するまで繰り返す。
来襲波浪に対する消波ブロックの被災個数は、前式(4)を用いて求めることができる。しかし、消波ブロックの被害の進行を推定するにあたっては、主要外力である波浪の統計的変動性や各種条件の不確定要因を考慮する必要がある。
そこで本手法では、これらの確率論的な問題をモンテカルロシミュレーションを用いて検討する。モンテカルロシミュレーションとは、不確定要因をその確率分布に合わせた乱数により発生させ、これを用いて現象を繰り返し試行し、その結果を統計処理することにより確率分布を求める方法で、複雑で多段階にわたる現象を統計的に取り扱うのに適した方法である。
図2にモンテカルロシミュレーションを用いた消波ブロックの被災度解析手法の検討フローを示す。
この方法では、まず、所要期間中の高波浪の来襲頻度を仮定して1回の高波浪による消波ブロックの被災度を求める。これを所要期間中の来襲波浪回数分繰り返して、経過年に対して被災度の累積値(累積被災度)を求める。モンテカルロシミュレーションでは、これを1回の試行(1シミュレーション)として繰り返し試行するが、波浪やその他条件は、それぞれの不確定性に応じた確率分布から乱数を発生させて1シミュレーションごとに設定し直す。これらの試行を最終的に求める消波ブロックの被災度が安定するまで繰り返す。
(3)高波浪の出現回数と極大波高の設定方法
消波ブロックの被災度算定にあたっては、消波ブロックの被災に寄与する高波浪の所要期間中の出現回数とそれぞれの極大波高を設定する必要がある。
高波浪の出現回数については、高波浪に対する極値統計分布に従って発生するものとする。高波浪に対する極値統計分布としては、一般に下式(5.1)(5.2)に示すGumbel分布またはWeibull分布が用いられ、式中の各種母数は対象地点の極大波データに基づいて設定される。
所要期間中の高波浪の極大波高値は、上式(5.1)または式(5.2)で求められる波高の未超過確率分布に乱数を当てはめて算定する。なお、高波浪の出現回数は、適用する極値統計分布が年最大波に対する分布型であることから、所要期間中に年1回とする。
消波ブロックの被災度算定にあたっては、消波ブロックの被災に寄与する高波浪の所要期間中の出現回数とそれぞれの極大波高を設定する必要がある。
高波浪の出現回数については、高波浪に対する極値統計分布に従って発生するものとする。高波浪に対する極値統計分布としては、一般に下式(5.1)(5.2)に示すGumbel分布またはWeibull分布が用いられ、式中の各種母数は対象地点の極大波データに基づいて設定される。
(4)高波浪の経時変化モデルの設定方法
前項で設定した各高波浪の極大波高をもとに、消波ブロックの被災度を推定するためには、さらに高波浪の継続時間とその間の有義波高、有義波周期の経時変化を設定する必要がある。この高波浪の出現パターンは、実際には一回一回の高波浪によって異なるが、本手法では、対象となる防波堤における過去の被災度に基づく再現計算の結果などをもとに、これをモデル化することとする。
前項で設定した各高波浪の極大波高をもとに、消波ブロックの被災度を推定するためには、さらに高波浪の継続時間とその間の有義波高、有義波周期の経時変化を設定する必要がある。この高波浪の出現パターンは、実際には一回一回の高波浪によって異なるが、本手法では、対象となる防波堤における過去の被災度に基づく再現計算の結果などをもとに、これをモデル化することとする。
(5)高波浪の履歴を考慮した消波ブロックの被災度の算定方法
1回の高波浪に対する消波ブロックの被災度は、前記(4)式で求めることができる。しかし、実際の消波ブロックの被災は所要期間中の何度かの高波浪によって被害が進行していくため、消波ブロックの被災度の算定においても高波浪による被害の履歴を考慮する必要がある。
高波浪の履歴を考慮するためには、対象とする高波浪よりも以前の高波浪による累積被災度より相当波数を求める必要がある。すなわち、n−1回目までの累積被災度を(N0)N−1とすると、その被災がn回目の高波浪で生じるために必要な相当波数N’を求める。ここでは、前記(4)式を変形した下式(6)を用いる。
高波浪の履歴を考慮した累積被災度(N0)Nは、上式(6)で求めた相対波数N’にn回目の高波浪の波数(N)nを加えた波数(N)Nを用いて下式(7)で求める。また、砂地盤などで洗掘が予想される箇所については、法先部の洗掘による被災度の割り増しαを考慮する。
1回の高波浪に対する消波ブロックの被災度は、前記(4)式で求めることができる。しかし、実際の消波ブロックの被災は所要期間中の何度かの高波浪によって被害が進行していくため、消波ブロックの被災度の算定においても高波浪による被害の履歴を考慮する必要がある。
高波浪の履歴を考慮するためには、対象とする高波浪よりも以前の高波浪による累積被災度より相当波数を求める必要がある。すなわち、n−1回目までの累積被災度を(N0)N−1とすると、その被災がn回目の高波浪で生じるために必要な相当波数N’を求める。ここでは、前記(4)式を変形した下式(6)を用いる。
(6)ばらつきを考慮した被災度の増分の設定
消波ブロックの被災度には多くのばらつきを持っていることから、上式(7)で求めた累積被災度はそのばらつきを考慮して実際の被災度を求め直す必要がある。 前掲高橋ら(1998)は、既往の消波ブロックの安定性に関する水理模型実験データより被災度N0の増分の頻度分布を整理し、被災度の増分ΔN0の頻度分布は概ね正規分布とみなせ、その標準偏差は下式(8)で表せることを明らかにしている。
これをもとに、ばらつきを考慮した被災度の増分を求めるためには、まず下式(9)にて仮の累積被災度の増分を求める。
消波ブロックの被災度には多くのばらつきを持っていることから、上式(7)で求めた累積被災度はそのばらつきを考慮して実際の被災度を求め直す必要がある。 前掲高橋ら(1998)は、既往の消波ブロックの安定性に関する水理模型実験データより被災度N0の増分の頻度分布を整理し、被災度の増分ΔN0の頻度分布は概ね正規分布とみなせ、その標準偏差は下式(8)で表せることを明らかにしている。
次に、上式(8)による標準偏差を用いて、累積被災度の増分のばらつきの分布形を正規分布で規定する。そして、その分布形に対して乱数を当てはめて累積被災度の増分ΔN0を求め直す。求めた累積被災度の増分はその前回までの累積被災度に加えることによって当該回目までの累積被災度を求めることができる。
(7)各種解析条件の推定誤差・ばらつき
モンテカルロシミュレーションによる消波ブロックの被災度解析においては、高波浪の統計的変動性、潮位の変動性、波の屈折・浅水変形等の推定誤差などの種々の不確定要因や変動を考慮する必要があり、これらは以下のように設定される。
a.高波浪の極大波高および波浪変形係数の推定誤差
極値統計分布から求める高波浪の極大波高と、波の屈折・浅水等の変形を求める波浪変形係数は、その推定誤差を考慮することとし、対象とする地点の波浪特性に応じた推定誤差のモデル分布を設定する。既往の研究では、平均的偏りを0.0、変動係数を0.1とする正規分布を推定誤差の分布形とした事例がある。
b.潮位のばらつき
高波浪の極大波高から防波堤に作用する有義波高を求めるには、潮位を設定する必要がある。潮位は常に変動するものであることから、そのばらつきを考慮することとし、対象とする地点の潮位変動特性に応じたばらつきのモデル分布形を設定する。その具体的な方法として、対象とする地点の潮位観測データから、中央値を平均潮位、標準偏差を朔望平均満潮位または朔望平均干潮位と平均潮位の差の半分として正規分布を規定し、上下限値を朔望平均満潮位と朔望干潮位とする方法がある。
c.消波ブロックの質量のばらつき
消波ブロックはコンクリート製であることから、その質量はコンクリート製品としてのばらつきをモデル分布形により考慮する。ただし、一般的にはコンクリート製品としての質量のばらつきは非常に小さく、ばらつきを考慮しないことが多い。
モンテカルロシミュレーションによる消波ブロックの被災度解析においては、高波浪の統計的変動性、潮位の変動性、波の屈折・浅水変形等の推定誤差などの種々の不確定要因や変動を考慮する必要があり、これらは以下のように設定される。
a.高波浪の極大波高および波浪変形係数の推定誤差
極値統計分布から求める高波浪の極大波高と、波の屈折・浅水等の変形を求める波浪変形係数は、その推定誤差を考慮することとし、対象とする地点の波浪特性に応じた推定誤差のモデル分布を設定する。既往の研究では、平均的偏りを0.0、変動係数を0.1とする正規分布を推定誤差の分布形とした事例がある。
b.潮位のばらつき
高波浪の極大波高から防波堤に作用する有義波高を求めるには、潮位を設定する必要がある。潮位は常に変動するものであることから、そのばらつきを考慮することとし、対象とする地点の潮位変動特性に応じたばらつきのモデル分布形を設定する。その具体的な方法として、対象とする地点の潮位観測データから、中央値を平均潮位、標準偏差を朔望平均満潮位または朔望平均干潮位と平均潮位の差の半分として正規分布を規定し、上下限値を朔望平均満潮位と朔望干潮位とする方法がある。
c.消波ブロックの質量のばらつき
消波ブロックはコンクリート製であることから、その質量はコンクリート製品としてのばらつきをモデル分布形により考慮する。ただし、一般的にはコンクリート製品としての質量のばらつきは非常に小さく、ばらつきを考慮しないことが多い。
(8)被災度係数a、b、c等の設定
消波ブロックの被災度解析式(上式(4))に含まれる無次元係数(被災度係数)については、高橋ら(1998)が既往の水理模型実験等をもとに標準的な値を提案しているが、これらの値は、対象とする傾斜堤よりも設置水深が深いケースを対象に設定されている。また、防波堤の屈曲部や傾斜堤の勾配が変化する箇所では、被災が多く発生している。このため本手法では過去の被災実績の再現計算を行い、被災度係数を設定することとした。
消波ブロックの被災度解析式(上式(4))に含まれる無次元係数(被災度係数)については、高橋ら(1998)が既往の水理模型実験等をもとに標準的な値を提案しているが、これらの値は、対象とする傾斜堤よりも設置水深が深いケースを対象に設定されている。また、防波堤の屈曲部や傾斜堤の勾配が変化する箇所では、被災が多く発生している。このため本手法では過去の被災実績の再現計算を行い、被災度係数を設定することとした。
すなわち、被災度係数aについては、被災度係数aをパラメータとして再現計算を行い、実績値の被災度に最も近い期待被災度を与える被災度係数aを設置水深に応じた最適値として設定する。このとき、斜面勾配などの構造変化箇所については、被災度係数aに適切な補正係数を考慮する。被災度係数bについては、斜面勾配に起因する係数で、被災の進行に応じて変化するものとし、正規分布を仮定し、乱数によって設定することとする。被災度係数cについては、ブロックの種類や斜面勾配によらず一定(c=0.2)とする。
(9)モンテカルロシミュレーションにおける繰り返し回数
モンテカルロシミュレーションにおける繰り返し回数は、事前解析を行って、期待被災度及び95%超過被災度が安定解になる回数を設定する。
モンテカルロシミュレーションにおける繰り返し回数は、事前解析を行って、期待被災度及び95%超過被災度が安定解になる回数を設定する。
〔第3ステップ〕
上記モンテカルロシミュレーション(MCS)に基づく被災度解析を終えたならば、この解析結果およびライフサイクルコスト(LCC)に基づく被災リスク評価に基づいて消波ブロックの最適補修時期の予測を行う。
1.MCS被災度解析結果に基づく消波ブロックの最適補修時期の予測
前記モンテカルロシミュレーションに基づく被災度解析結果は、図5に示される被災度進行予測グラフによって表される。ここで、横軸は時間の流れ、縦軸は被災度であり、原点は建設時または補修時(原形復旧時)である。実線は建設時または補修時から現時点までの被災度の進行を示し、●が上式(1)により算出した現時点での消波ブロック被災度N0である。
上記モンテカルロシミュレーション(MCS)に基づく被災度解析を終えたならば、この解析結果およびライフサイクルコスト(LCC)に基づく被災リスク評価に基づいて消波ブロックの最適補修時期の予測を行う。
1.MCS被災度解析結果に基づく消波ブロックの最適補修時期の予測
前記モンテカルロシミュレーションに基づく被災度解析結果は、図5に示される被災度進行予測グラフによって表される。ここで、横軸は時間の流れ、縦軸は被災度であり、原点は建設時または補修時(原形復旧時)である。実線は建設時または補修時から現時点までの被災度の進行を示し、●が上式(1)により算出した現時点での消波ブロック被災度N0である。
また、現時点以降の被災度(中心の破線及びその両側の鎖線)は、モンテカルロシミュレーションに基づく被災度解析によって予測された経過年後の期待被災度(中央値)と被災度のばらつき分布である。
また、図中に表示した、レベル0被災度、レベル1被災度、レベル2被災度は、上記事前設定項目で設定した被災度レベルに対応した被災度である。そして、
(a)上記第1ステップで説明したように、現時点での消波ブロックの被災度N0を上式(1)により算出し、この値がレベル0被災度に達している場合は、即時補修要と判断することとする。
(b)1年後の被災度の確率分布において、レベル1被災度の超過確率(確率分布がレベル1被災度を超える確率)が、任意に設定された許容超過確率を超えている場合には1年以内に補修することとする。
(c)1年後のレベル1被災度の超過確率が、許容超過確率を超えていない場合には、耐用期間中の被災度解析結果をもとに、レベル1被災度またはレベル2被災度の超過確率が前記許容超過確率を超えることになる年次による補修時期の検討を行う。すなわち、モンテカルロシミュレーションによる被災度解析による予測結果(累積被災度の確率分布)において、レベル1被災度に達する超過確率が、設定された許容超過確率を超えることになる年次をもって補修時期と判断する。
(a)上記第1ステップで説明したように、現時点での消波ブロックの被災度N0を上式(1)により算出し、この値がレベル0被災度に達している場合は、即時補修要と判断することとする。
(b)1年後の被災度の確率分布において、レベル1被災度の超過確率(確率分布がレベル1被災度を超える確率)が、任意に設定された許容超過確率を超えている場合には1年以内に補修することとする。
(c)1年後のレベル1被災度の超過確率が、許容超過確率を超えていない場合には、耐用期間中の被災度解析結果をもとに、レベル1被災度またはレベル2被災度の超過確率が前記許容超過確率を超えることになる年次による補修時期の検討を行う。すなわち、モンテカルロシミュレーションによる被災度解析による予測結果(累積被災度の確率分布)において、レベル1被災度に達する超過確率が、設定された許容超過確率を超えることになる年次をもって補修時期と判断する。
また、上記モンテカルロシミュレーションによる被災度解析に基づく補修時期の検討に加えて、後述するライフサイクルコスト(LCC)に基づく被災リスク評価による補修年次検討を行い、これらから総合的に消波ブロックの次回補修年次を検討する。
なお、前記許容超過確率は、別途管理者が設定するものであり、一般的には3〜25×10−3(0.3〜2.5%)とされる。
2.LCC被災リスク評価に基づく消波ブロックの最適補修時期の予測
(1)MCSにより被災度解析に基づく各年の被災度の算定
前記モンテカルロシミュレーション(MCS)による被災度解析手法を用いて、各年の被災度の出現率を算定する。なお、解析は初期被災度を考慮した解析(現時点から次回補修年次までに適用)と、初期被災度をゼロとした解析(補修後に適用)の2ケースについて実施する。
(2)被災階級ごとの補修単価・復旧単価の算定
傾斜堤の被災状況を考慮して、被災度階級ごとの補修・復旧単価を算定する。
2.LCC被災リスク評価に基づく消波ブロックの最適補修時期の予測
(1)MCSにより被災度解析に基づく各年の被災度の算定
前記モンテカルロシミュレーション(MCS)による被災度解析手法を用いて、各年の被災度の出現率を算定する。なお、解析は初期被災度を考慮した解析(現時点から次回補修年次までに適用)と、初期被災度をゼロとした解析(補修後に適用)の2ケースについて実施する。
(2)被災階級ごとの補修単価・復旧単価の算定
傾斜堤の被災状況を考慮して、被災度階級ごとの補修・復旧単価を算定する。
具体的には、被災度階級毎に下記のように設定する。
(a)被災状態I(健全状態)及び被災状態II(進行状態)
被災状態I及び被災状態IIでは、消波ブロックのみが移動した状態を想定して、消波ブロックの補修費を考慮する。すなわち、被災度(ブロック代表径あたりの移動個数)に消波ブロックの製作・設置単価を乗じて算定する。
(b)被災状態III(危険状態)
被災状態IIIでは、上部工が滑動した状態を想定し、移動した消波ブロックの補修費と上部工の再設置費を考慮することとする。消波ブロックの補修費は、被災状態I及び被災状態IIと同様に、被災度に消波ブロックの製作・設置単価を乗じて算定する。上部工の復旧費は、既設上部コンクリートの破砕費と上部コンクリート構築費を考慮して算定する。
(c)被災状態IV(崩壊状態)
被災状態IVでは、傾斜堤が崩壊した状態を想定し、傾斜堤の再構築費(撤去費及び建設費)を考慮することとする。
(a)被災状態I(健全状態)及び被災状態II(進行状態)
被災状態I及び被災状態IIでは、消波ブロックのみが移動した状態を想定して、消波ブロックの補修費を考慮する。すなわち、被災度(ブロック代表径あたりの移動個数)に消波ブロックの製作・設置単価を乗じて算定する。
(b)被災状態III(危険状態)
被災状態IIIでは、上部工が滑動した状態を想定し、移動した消波ブロックの補修費と上部工の再設置費を考慮することとする。消波ブロックの補修費は、被災状態I及び被災状態IIと同様に、被災度に消波ブロックの製作・設置単価を乗じて算定する。上部工の復旧費は、既設上部コンクリートの破砕費と上部コンクリート構築費を考慮して算定する。
(c)被災状態IV(崩壊状態)
被災状態IVでは、傾斜堤が崩壊した状態を想定し、傾斜堤の再構築費(撤去費及び建設費)を考慮することとする。
(3)各年の期待補修費と期待リスクの算定
上記(1)で求めた被災度階級ごとの出現率と、上記(2)で求めた補修・復旧単価をもとに、各経過年数ごとの期待補修費と期待復旧費を算定する。y年目の期待補修費と期待復旧費の算定式を下式(10.1)〜(10.3)に示す。
期待リスクについては、期待復旧費Aと、期待復旧費Bを考慮する。ただし、上記(10.2)、(10.3)で求められる期待復旧費A,Bは該当年までの総期待復旧費となっていることから、次式(11)により該当前年から該当年の増分を求め、これを各年の期待リスクとする。
上記(1)で求めた被災度階級ごとの出現率と、上記(2)で求めた補修・復旧単価をもとに、各経過年数ごとの期待補修費と期待復旧費を算定する。y年目の期待補修費と期待復旧費の算定式を下式(10.1)〜(10.3)に示す。
(4)次回補修年次をパラメータとした期待総費用の算定
(3)の算定結果をもとに、次回補修年次をパラメータとして、耐用期間中の補修パターンを仮定し、期待総費用を算出する。
(3)の算定結果をもとに、次回補修年次をパラメータとして、耐用期間中の補修パターンを仮定し、期待総費用を算出する。
耐用期間中の補修パターンについては、初期被災度を考慮した被災度解析結果から次回補修年次の被災度を設定し、2回目以降の補修は、初期被災度をゼロとした被災度解析結果から算定する初回補修年次の被災度と同程度の被災度になったときに補修することとする。
〔第4ステップ〕
以上の第3ステップにより、消波ブロックの最適補修時期が決定されたならば、第4ステップにおいて、最終的判断として、将来の保守・補修計画の策定(点検不要期間の設定、詳細点検開始時期、予想次期補修時期)が成される。
以上の第3ステップにより、消波ブロックの最適補修時期が決定されたならば、第4ステップにおいて、最終的判断として、将来の保守・補修計画の策定(点検不要期間の設定、詳細点検開始時期、予想次期補修時期)が成される。
本維持管理支援方法により、実際に存在する防波堤について試算検討を行った例について詳述する。
(1)検討条件
・対象の堤防形状 図6(A)(B)に示される平面形状及び断面形状参照
・設置水深 D.L.-7.35m
・設計潮位 H.W.L=D.L.+1.7m、L.W.L=D.L.±0.00m
・設計波高 H0=10.75m、H1/3=6.44m、T1/3=12.0s
波浪変形係数;k=0.98
Weibull分布(形状母数k=1.50、尺度母数A=2.33、位置母数B=4.85)
(2)MCSにおける被災度解析条件
(a)被災度算定における不確定要素は、高波浪の極大波高、波浪変形係数の推定誤差、潮位のばらつきの3項目とした。
(b)シミュレーションの繰り返し回数は、10,000回とした。
(c)被災度算定式(式(4))における定数a、b,c
当該防波堤の既往の補修履歴をもとに、再現計算により次のように設定した。
・被災度係数 a=1.26、b=1.47(ばらつき考慮)、c=0.2
・洗掘による沈下割増 α=0.022
(d)被災度レベル
レベル1;N0=i、レベル2;N0=j
なお、i、jは管理者によって設定される値である。
(e)許容超過確率;0.3%
(1)検討条件
・対象の堤防形状 図6(A)(B)に示される平面形状及び断面形状参照
・設置水深 D.L.-7.35m
・設計潮位 H.W.L=D.L.+1.7m、L.W.L=D.L.±0.00m
・設計波高 H0=10.75m、H1/3=6.44m、T1/3=12.0s
波浪変形係数;k=0.98
Weibull分布(形状母数k=1.50、尺度母数A=2.33、位置母数B=4.85)
(2)MCSにおける被災度解析条件
(a)被災度算定における不確定要素は、高波浪の極大波高、波浪変形係数の推定誤差、潮位のばらつきの3項目とした。
(b)シミュレーションの繰り返し回数は、10,000回とした。
(c)被災度算定式(式(4))における定数a、b,c
当該防波堤の既往の補修履歴をもとに、再現計算により次のように設定した。
・被災度係数 a=1.26、b=1.47(ばらつき考慮)、c=0.2
・洗掘による沈下割増 α=0.022
(d)被災度レベル
レベル1;N0=i、レベル2;N0=j
なお、i、jは管理者によって設定される値である。
(e)許容超過確率;0.3%
(3)MCSによる被災度解析結果
以上の条件に基づいて、MCSによる被災度解析を実施した。ここで、初期の被災度はN0=0.2とした。
図7はMCSに基づく被災度解析によって得られた6年目の被災度の確率分布である。これによれば、6年目の被災度の期待値はm、レベル1被災度を超える確率は0.4%、レベル2被災度を超える確率は0.0%である。
以上の条件に基づいて、MCSによる被災度解析を実施した。ここで、初期の被災度はN0=0.2とした。
図7はMCSに基づく被災度解析によって得られた6年目の被災度の確率分布である。これによれば、6年目の被災度の期待値はm、レベル1被災度を超える確率は0.4%、レベル2被災度を超える確率は0.0%である。
また、図8は各年の被災度の確率分布から求めた経過年数と被災度との関係図であり、*印線が期待被災度、●印線が0.3%超過確率に対応する被災度である。これをもとに、補修可否判断の被災度レベルをN0=i[レベル1被災度]、許容超過確率を消波ブロック被覆堤の標準値である0.3%とすれば、次回の補修時期は約6年後となる。また、このときの被災度の期待値はmであり、6年目までの設備点検ではN0=m[レベル0被災度]を即時補修の可否判断の指標とすればよい。
(4)LCCによる被災リスク評価
前記(3)項で求めた各年の被災度の確率分布をもとに、耐用期間を50年とした場合の期待総費用(LCC)を算定する。
(4)LCCによる被災リスク評価
前記(3)項で求めた各年の被災度の確率分布をもとに、耐用期間を50年とした場合の期待総費用(LCC)を算定する。
算定条件は次のとおりである。
(a)補修単価
図9に示すとおり。
(b)補修費とリスクの算定方法
・補修費は補修年次の被災度の確率分布より、被災状態I〜IIの被災度の出現率に消波ブロック補修費(被災度×ブロック単価)を乗じて算定した。
・被災状態IIIのリスクは、毎年の被災状態IIIの出現率増分に消波ブロック補修費と、上部工拡幅費を乗じて毎年のリスクを求め、これを初年次から補修年次まで累積することによって算定した。
・被災状態IVのリスクは、毎年の被災状態IVの出現率増分に堤体再構築費を乗じて毎年のリスクを求め、これを初年次から補修年次まで累積することによって算定した。
・補修年次の翌年は被災度をゼロに戻し、再び同程度の被災度になった場合に再度補修することとし、50年間の総費用を算定した。
(c)LCC算定結果
図10に次回補修年次をパラメータとしたLCC算定結果を示す。図中、▲印線が消波ブロックの補修費、●印線が被災状態III及びIVの被災リスク、■印線がそれらの合計で表される期待総費用(LCC)である。
(a)補修単価
図9に示すとおり。
(b)補修費とリスクの算定方法
・補修費は補修年次の被災度の確率分布より、被災状態I〜IIの被災度の出現率に消波ブロック補修費(被災度×ブロック単価)を乗じて算定した。
・被災状態IIIのリスクは、毎年の被災状態IIIの出現率増分に消波ブロック補修費と、上部工拡幅費を乗じて毎年のリスクを求め、これを初年次から補修年次まで累積することによって算定した。
・被災状態IVのリスクは、毎年の被災状態IVの出現率増分に堤体再構築費を乗じて毎年のリスクを求め、これを初年次から補修年次まで累積することによって算定した。
・補修年次の翌年は被災度をゼロに戻し、再び同程度の被災度になった場合に再度補修することとし、50年間の総費用を算定した。
(c)LCC算定結果
図10に次回補修年次をパラメータとしたLCC算定結果を示す。図中、▲印線が消波ブロックの補修費、●印線が被災状態III及びIVの被災リスク、■印線がそれらの合計で表される期待総費用(LCC)である。
これによれば、LCCが最小となるのは、次回補修年次を5年目とした場合である。この結果は、前記MCSによる被災度解析において、レベル1被災度の超過確率から求めた次回補修時期と概ね一致する結果となった。
〔他の形態例〕
(1)上記形態例では、防波堤形式として消波ブロック被覆傾斜堤を対象としたが、直立壁前面に消波ブロックを設置した消波ブロック被覆堤に対しても同様に適用が可能である。
(2)上記形態例では、第3ステップにおいて、消波ブロックの最適補修時期の検討として、前記モンテカルロシミュレーション(MCS)に基づく被災度解析に基づいて、レベル1被災度及びレベル2被災度の超過確率の経年変化と、LCC(ライフサイクルコスト)に基づく被災リスク評価による検討を行い、これら2つの手法に基づいて消波ブロックの最適補修時期を検討するようにしたが、前者の前記モンテカルロシミュレーション(MCS)に基づく被災度解析による、レベル1被災度及びレベル2被災度の超過確率の経年変化のみの検討で、消波ブロックの補修時期を判断するようにしてもよい。
(1)上記形態例では、防波堤形式として消波ブロック被覆傾斜堤を対象としたが、直立壁前面に消波ブロックを設置した消波ブロック被覆堤に対しても同様に適用が可能である。
(2)上記形態例では、第3ステップにおいて、消波ブロックの最適補修時期の検討として、前記モンテカルロシミュレーション(MCS)に基づく被災度解析に基づいて、レベル1被災度及びレベル2被災度の超過確率の経年変化と、LCC(ライフサイクルコスト)に基づく被災リスク評価による検討を行い、これら2つの手法に基づいて消波ブロックの最適補修時期を検討するようにしたが、前者の前記モンテカルロシミュレーション(MCS)に基づく被災度解析による、レベル1被災度及びレベル2被災度の超過確率の経年変化のみの検討で、消波ブロックの補修時期を判断するようにしてもよい。
Claims (5)
- 消波ブロックで港外側前面を被覆した防波堤の維持管理支援方法であって、
事前に、消波ブロックの被災状態に応じて、消波ブロック被災度を1又は複数の被災度レベルに区分し、
消波ブロックの変形量調査結果に基づいて、現状の消波ブロック被災度を算定する第1ステップと、
モンテカルロシミュレーションに基づく被災度解析によって、将来の消波ブロック被災度の進行状況を、経過年数に対する累積被災度の確率分布によって予測する第2ステップと、
前記累積被災度の確率分布において、補修要の被災度レベルの超過確率が任意に設定した許容超過確率を超える経過年次に基づいて補修時期を判断する第3ステップと、からなることを特徴とする消波ブロックで被覆した防波堤の維持管理支援方法。 - 前記第3ステップにおいて、消波ブロックの補修時期が先送り可能であるならば、ライフサイクルコストに基づく被災リスク評価により、消波ブロックの最適補修年次を検討する請求項1記載の消波ブロックで被覆した防波堤の維持管理支援方法。
- 前記限界レベルの設定は、消波ブロック被災度の進行状態を、健全状態、進行状態、危険状態、崩壊状態に4区分し、前記進行状態と危険状態との境界を補修要の限界レベルとして設定し、かつ前記危険状態と崩壊状態との境界を機能喪失の限界レベルとして設定する請求項1,2いずれかに記載の消波ブロックで被覆した防波堤の維持管理支援方法。
- 前記補修要の限界レベル及び機能喪失の被災度レベルとは別に、1年以内に前記補修要の被災度レベルに到達し得ると想定される補修要被災度レベル換算値を設定し、前記第1ステップにおける現状の消波ブロック被災度の算定時に、該消波ブロック被災度が前記補修要被災度レベル換算値を超えているならば、第2ステップに進むことなく、即時補修要と判断とする請求項3記載の消波ブロックで被覆した防波堤の維持管理支援方法。
- コンピューターにおいて、消波ブロックの変形量調査結果に基づいて、現状の消波ブロック被災度を算定する第1ステップと、
モンテカルロシミュレーションに基づく被災度解析によって、将来の消波ブロック被災度の進行状況を、経過年数に対する累積被災度の確率分布によって予測する第2ステップと、
前記累積被災度の確率分布において、事前に消波ブロックの被災状態に応じて設定された補修要の限界レベルの超過確率が、任意に設定した許容超過確率を超える経過年次に基づいて補修時期を判断する第3ステップと、を実行させるための消波ブロックで被覆した防波堤の維持管理支援プログラム。
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- 2005-03-10 JP JP2005067246A patent/JP2006252136A/ja active Pending
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